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特許7560484車両ホイール用のタイヤを構築するためのプロセス及び装置、並びにそれから得られるタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】車両ホイール用のタイヤを構築するためのプロセス及び装置、並びにそれから得られるタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/21 20190101AFI20240925BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20240925BHJP
   B29C 48/31 20190101ALI20240925BHJP
   B29C 48/37 20190101ALI20240925BHJP
   B29C 48/07 20190101ALI20240925BHJP
【FI】
B29C48/21
B29D30/06
B29C48/31
B29C48/37
B29C48/07
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021568324
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 IB2020054964
(87)【国際公開番号】W WO2020240407
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】102019000007590
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】598164186
【氏名又は名称】ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アムリ,チェザレ エマヌエレ
(72)【発明者】
【氏名】デ コル,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】カントゥ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】バジリコ,ロジャー
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/007420(WO,A1)
【文献】特開2007-260963(JP,A)
【文献】国際公開第2008/026275(WO,A1)
【文献】特開2007-008388(JP,A)
【文献】特開2012-040845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0096697(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ホイール用のタイヤを構築するためのプロセスであって、タイヤ(2)の少なくとも1つのエラストマー構成要素が、幾何学的回転軸(X)の周りを回転する形成ドラム(15)の周りに複数のターン(C)に従って少なくとも1つの連続的な細長い要素(14)を適用することによって作られ、
前記連続的な細長い要素(14)が、
出ノズル(16)の出口開口部(18)から出る前記連続的な細長い要素(14)によって内側コア(33)を形成するために、前記押出ノズル(16)を介して第1の材料を押し出す動作、及び
前記内側コア(33)を取り囲むコーティング層(32)を形成するために、前記押出しの間に、前記押出ノズル(16)で、及び前記出口開口部(18)の上流側で、前記第1の材料の周りに前記第1の材料とは異なる第2の材料を搬送する動作、
によって構築され
前記第2の材料は、前記押出ノズル(16)を長手方向に横断して前記出口開口部(18)につながる出口チャネル(17)の周りに配置された注入チャンバ(30)につながる第2の供給ダクト(29)に導入され、前記注入チャンバ(30)は、前記出口チャネル(17)自体の周りに閉じた線に沿って延びる半径方向取り込みスリット(31)を介して前記出口チャネル(17)に通じ、
前記半径方向取り込みスリット(31)が、その周辺延在部に沿って可変の軸方向寸法を有する、プロセス。
【請求項2】
前記適用が前記押し出しと同時に行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第2の材料が存在しない状態で前記第1の材料を押し出す動作をさらに含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1の材料が存在しない状態で前記第2の材料を押し出す動作をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記内側コア(33)の周りに適用される前記コーティング層(32)の厚さを修正するために、前記内側コア(33)の周りに搬送される前記第2の材料の流量を調節する動作をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記出口開口部(18)を通る前記第1及び第2の材料の全体的な流量を実質的に一定に保つために、前記第1の材料の流量が前記第2の材料の流量調節と連動して調節される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記内側コア(33)を取り囲むカバー層(36)を形成するために、前記押出しの間に、前記押出ノズル(16)で、及び前記出口開口部(18)の上流側で、前記第1の材料の周りに前記第1の材料及び前記第2の材料とは異なる第3の材料を搬送する動作がさらに行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第3の材料を搬送する動作が、前記第2の材料を搬送しない状態で行われる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記内側コア(33)の周りに適用されるカバー層(36)の厚さを修正するために、前記内側コア(33)の周りに搬送される前記第3の材料の流量を調節する動作をさらに含む、請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記出口開口部(18)を通る前記第1及び第3の材料の全体的な流量を実質的に一定に保つために、前記第1の材料の流量が前記第3の材料の流量調節と連動して調節される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
車両ホイール用のタイヤを構築する装置であって、
出口開口部(18)につながる出口チャネル(17)によって長手方向に横断された押出ノズル(16)を有する押出アセンブリ(13)と、
前記押出ノズル(16)の前記出口チャネル(17)に軸方向に収束する第1の供給ダクト(20)に第1の材料を導入する第1の供給ユニット(19)と、
前記押出ノズル(16)の前記出口開口部(18)の前で回転動作可能な形成ドラム(15)とを備え、
前記押出アセンブリ(13)が、
前記押出ノズル(16)の前記出口チャネル(17)の周りに配置された注入チャンバ(30)であって、前記出口チャネル自体の周りに閉じた線に沿って延びる半径方向取り込みスリット(31)を介してそこに流れる注入チャンバ(30)と、
前記注入チャンバ(30)につながる第2の供給ダクト(29)第2の材料を導入するための第2の供給ユニット(23)と
をさらに備え
前記半径方向取り込みスリット(31)が、その周辺延在部に沿って可変の軸方向寸法を有する、装置。
【請求項12】
前記第1の供給ユニット(19)が、前記第1の材料に対して動作する第1の混合グループ(19a)と、前記第1の混合グループ(19a)と前記押出ノズル(16)との間に動作可能に介在するギアポンプ(21)とを備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2の供給ユニット(23)が、混合チャンバ(26)内で回転動作可能なスクリュー(25)を有する第2の混合グループ(24)を備える、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記第2の材料を前記注入チャンバ(30)に送り込むために、前記スクリュー(25)が前記混合チャンバ(26)内で軸方向に移動可能である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の材料及び/又は第2の材料を前記押出ノズル(16)の前記出口チャネル(17)に向けて選択的且つ制御しながら供給するために、前記第1の供給ユニット(19)及び第2の供給ユニット(23)が互いに独立して動作可能である、請求項11~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記注入チャンバ(30)につながる第3の供給ダクト(35)に第3の材料を導入するための第3の供給ユニット(34)をさらに備える、請求項11~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の供給ダクト(20)が、前記押出ノズル(16)に関連付けられた分配器(50)で終了し、前記分配器(50)は、前記第1の材料を通過させるための内側チャネルを有する円錐リング形状を有する、請求項11~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
車両ホイール用のタイヤであって、
それぞれの環状アンカー構造(6)に係合するそれぞれのエンドフラップ(4a)を有する少なくとも1つのカーカスプライ(4)を有するカーカス構造(3)と、
前記カーカス構造(3)の周囲に円周方向に延びるベルト構造(8)と、
前記カーカス構造(3)及び前記ベルト構造(8)に適用されたエラストマー構成要素(5、6b、9、10、11)とを備え、
前記エラストマー構成要素(5、6b、9、10、11)が、サイドウォール(11)とトレッドバンド(9)とを備え、
前記トレッドバンド(9)が、前記タイヤの回転軸(X1)を中心に同心円状のターン(C)に巻かれた連続的な細長い要素(14)を備え、前記ターン(C)の1つ又は複数が、第1の材料で構成された内側コア(33)と、前記内側コア(33)を取り囲むコーティング層(32)とを有し、前記コーティング層(32)が、前記第1の材料とは異なる第2の材料であって、前記タイヤの前記サイドウォール(11)の製造に使用されるエラストマー材料と同じ組成を有する第2の材料で構成される、車両ホイール用のタイヤ。
【請求項19】
前記ターン(C)の1つ又は複数において、前記コーティング層(32)が、他のターン(C)に存在する前記コーティング層の厚さと異なる厚さを有する、請求項18に記載のタイヤ。
【請求項20】
それぞれ異なる厚さを有するコーティング層を有する複数のターン(C)が、等しい断面寸法をそれぞれ有する、請求項19に記載のタイヤ。
【請求項21】
複数の前記ターン(C)に前記コーティング層(32)がない、請求項18に記載のタイヤ。
【請求項22】
前記コーティング層(32)のないターン(C)と、前記コーティング層(32)を備えたターン(C)とが、同じ断面寸法をそれぞれ有する、請求項18に記載のタイヤ。
【請求項23】
前記ターン(C)の1つ又は複数が、前記内側コア(33)を取り囲むカバー層(36)を有し、前記カバー層(36)が、前記第1の材料とは異なる第3の材料で構成されている、請求項18に記載のタイヤ。
【請求項24】
前記第3の材料が前記第2の材料とは異なる、請求項23に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ホイール用のタイヤを構築するためのプロセス及び装置に関する。また、本発明は、上記プロセス及び/又は装置を用いて得られる、車両ホイール用タイヤに関する。
【0002】
特に、本発明は、タイヤの構築に使用されるトレッドバンド及び/又は他のエラストマー構成要素の構造を改善するために便利に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
車両ホイール用のタイヤは、対向するエンドフラップを有する少なくとも1つのカーカスプライを備えるカーカス構造を一般的に備えており、かかる対向するエンドフラップは、それぞれの取り付けリム上のタイヤのいわゆる「フィッティング径」に実質的に一致する内径を有する、一般に「ビード」という名称によって識別される領域に一体化された、それぞれの環状アンカー構造に係合する。
【0004】
カーカス構造は、1つ又は複数のベルト層を含み得るベルト構造と関連付けられ、ベルト層は、互いに及びカーカスプライに対して半径方向に重ねて配置され、交差した配向の繊維又は金属製の補強コード、及び/又はタイヤの周延在方向に実質的に平行(0度)な繊維又は金属製の補強コードを有する。ベルト構造の半径方向外側の位置には、タイヤを構成する他の半製品と同様にエラストマー材料で作られたトレッドバンドが適用される。
【0005】
エラストマー材料のそれぞれのサイドウォールが、カーカス構造の側面に、軸方向の外側位置においてさらに適用され、それぞれがトレッドバンドの横方向縁部の一方から、それぞれの環状アンカー構造を介して、ビードまで延びている。「チューブレス」タイヤでは、一般に「ライナ」と呼ばれる気密性の高いコーティング層がタイヤの内側表面を覆っている。
【0006】
それぞれの構成要素を組み立てることによって、グリーンタイヤを構築した後、エラストマー組成物の架橋によりタイヤの構造的安定性を決定し、さらに必要に応じて所望のトレッドパターンを付与し、タイヤサイドウォールに任意の識別又は情報のグラフィカル表示を付与するために、成形及び加硫処理が一般的に行われる。
【0007】
「半径方向」及び「軸方向」という用語、並びに「半径方向内側/外側」及び「軸方向内側/外側」という表現は、タイヤ又は形成ドラムの半径方向(すなわち、タイヤ又は形成ドラムの回転軸に垂直な方向)及びタイヤ又は形成ドラムの回転軸の方向に言及するために使用される。タイヤ又は形成ドラムの半径方向の平面は、それぞれの回転軸を含む。
【0008】
「エラストマー材料」という用語は、少なくとも1種のエラストマーポリマーと、少なくとも1種の補強フィラーとを含む組成物を指すために使用される。好ましくは、このような組成物は、例えば、架橋剤及び/又は可塑剤などの添加剤をさらに含む。架橋剤の存在により、そのような材料は、最終的な製造品を形成するように、加熱によって架橋されることができる。
【0009】
「渦巻状に巻き付ける」という用語は、例えばテープ状のエラストマー材料で作られた少なくとも1つの連続的な細長い要素を幾何学的な軸の周りに円周方向に巻いて、それぞれ軸方向に接近した、及び/又は半径方向に重ね合わせられた複数のコイルを形成する作業を意味する。
【0010】
「構造部品」という用語は、典型的には金属、繊維、又はハイブリッドコードの形態の構造補強要素を一体化したタイヤ構成要素を指す。例えば、カーカスプライ、ベルト層、ビードコア、及びいくつかのフィラーは構造部品である。
【0011】
「エラストマー構成要素」という用語は、コード又は他の構造補強要素もない状態で、エラストマー材料で作られたタイヤの構成要素を意味する。しかしながら、エラストマー材料には、例えば分散した繊維の形態で、結合用又は補強用のフィラーが含まれていてもよい。エラストマー構成要素は、例えば、トレッドバンド、サイドウォール、アンダーレイヤー、ライナ、アンダーライナ、摩耗防止要素、フィラーインサート、又はタイヤのエラストマー材料の他の構成要素である。
【0012】
本出願人による国際公開第2006/046259号は、エラストマー材料のトレッドバンド、サイドウォール、及び/又はその他の構造要素が、少なくとも第1の構成要素と、第1の構成要素とは異なる組成を有する材料の少なくとも第2の構成要素とを含む層状構造を有する車両ホイール用タイヤを記載している。第1及び第2の構成要素は、相互に機械的に係合する要素を画定する、波形の界面プロファイルを有している。
【0013】
本出願人による国際公開第2006/046162号は、自動車用タイヤの構造を記載しており、例えばトレッドバンドなど、それぞれの基材を備えたエラストマー材料の1つ又は複数の構造要素は、共通の押出ノズルに属するそれぞれの押出機から来る2つの異なるエラストマー材料の押出成形によって得られた、第1及び第2の相互に結合された部分に長手方向に分割された連続的な細長い要素を、カーカス構造又は他の形成支持体上に敷設することによって作られる。第1の材料及び第2の材料が、それぞれ、第1の層、及び第1の層に重なる第2の層を形成するように、ターンの堆積が行われる。
【0014】
米国特許出願公開第2006/0096697号は、タイヤの製造方法を提案しており、ここで、トレッドバンドの構造は、第1の非導電性エラストマー材料で作られた連続的な細長い要素と、第2の導電性エラストマー材料で作られた細長いインサートとを、それぞれがベルトコンベヤを含むそれぞれのアプリケータによって同時に渦巻状に巻き付けることによって、実質的に円筒状の形成ドラム上に円筒状の頂部が形成されることで提供される。各ベルトコンベヤは、それぞれの細長い要素又はインサートを、形成ドラムの表面上の所定の巻き取り位置に連続的に送り込む。細長い要素及びインサートはそれぞれ、ベルトコンベヤの上流にあるそれぞれのディスペンサ、特に押出機又はカレンダーから連続的に供給されるが、その際、ディスペンサからの排出速度を制御するためのフェストンが介在する。アプリケータは、移動ユニットによって支持され、代替的に、形成ドラムに対して少なくとも軸方向に沿って移動可能である。
【0015】
米国特許出願公開第2013/0133811号は、それぞれの押出機から送られてくる2つの連続したリボン状の要素を、回転式に作動する形成ドラムの堆積面に直接、同時に渦巻状に巻き付けることで、トレッドバンドを作ることを提供する。押出機の1つは、同じ押出ノズルに流入する第1の非導電性エラストマー材料と第2の導電性エラストマー材料をそれぞれ処理するために使用される2つの異なる混合ユニットを備える。第2の導電性エラストマー材料の処理に使用される混合ユニットは、処理中に選択的に起動及び停止することができ、押出ヘッドから出てくるそれぞれのリボン状要素に沿って並んで結合されるリボン状の導電性インサートの分配を必要に応じて決定する。
【0016】
いくつかのエラストマー構成要素の製造において、実際に2つ以上の異なるエラストマー材料の結合が必要になることがある。典型的には、個々のエラストマー構成要素に特定の基本特性を付与するように設計された組成のエラストマー基本材料が提供され、当該エラストマー構成要素に所望の追加の特性を付与するように設計された組成の追加エラストマー材料で1つ又は複数のインサートが作られる。
【0017】
例えば、トレッドバンドの構造について、シリカフィラーを含むエラストマー基本材料を使用することが知られており、これは、特定の基本特性、例えば高摩擦係数、耐摩耗性、低ヒステリシス、その他を得る必要性を満たすためである。この基本材料は通常、非導電性であるため、静電気を地面に逃がす機能をトレッドバンドに付与する必要性を満たすために、追加の導電性エラストマー材料で作られた少なくとも1つのインサートを挿入することが一般に必要である。
【0018】
また、例えば、トレッドバンドの軸方向に対向する端部のそれぞれに、及び/又は各サイドウォールの半径方向外側の頂部に、エラストマー基本材料及び/又は追加のエラストマー材料とは異なる第3のエラストマー材料で作られた1つ又は複数のさらなるインサートの使用が要求される場合があるが、それは、後続の構築ステップでの相互結合が困難になり得るそれぞれのエラストマー材料で典型的に作られているサイドウォールとトレッドバンドとの間の正しい結合を促進するためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、本出願人は、連続的な細長い要素を渦巻状に巻き付けることを使用してタイヤを構築する際に、例えば、成形及び加硫処理中にタイヤの構造全体に誘発される高圧の影響下で、連続的な細長い要素によって形成される個々のターンが受ける変形及び変位の結果として、追加のインサートの使用によって求められる追加の特性が損なわれる可能性があることを観察した。
【0020】
本出願人はさらに、要求される追加特性を付与するためにエラストマー構成要素に導入される追加のエラストマー材料の量が多ければ多いほど、要求される他の基本特性に関連して、当該エラストマー構成要素の性能に対する悪影響が大きくなることを観察した。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本出願人は、連続的な細長い要素における追加のエラストマー材料の量及び分配を最適化するための適切な手段を実施することによって、製品の質的な改善を得ることが可能であり、連続的な細長い要素自体の構築及び/又は適用のために使用される装置の簡素化、並びにタイヤの構築に必要な時間の便利な削減を達成することが可能であることを認識した。
【0022】
特に、本出願人は、押出成形する間に、連続的な細長い要素に沿って延びる、断面において連続的な細長い要素の輪郭を囲むコーティング又はカバー層を構築することにより、エラストマー構成要素自体に通常要求される他の基本的な特性に大きな影響を与えることなく、特定の設計ニーズによって決定される所望の追加的な特性を、後に渦巻状に巻き付けることによって得られるエラストマー構成要素に付与することが可能であることを見出した。さらに、コーティング又はカバー層は、追加のエラストマー材料の量を減らして、適切に制限された厚さに従って作ることができる。必要とされる追加のエラストマー材料の量が減ると、得られるエラストマー構成要素の他の基本的な特性への影響が減ることに加えて、押出装置を大幅に簡素化し、製造コストを低減することができる。
【0023】
より詳細には、その第1の態様において、本発明は、車両ホイール用のタイヤを構築するためのプロセスに関する。
【0024】
好ましくは、タイヤの少なくとも1つのエラストマー構成要素は、少なくとも1つの連続的な細長い要素を、幾何学的回転軸の周りを回転する形成ドラムの周りに複数のターンに従って適用することによって作られる。
【0025】
好ましくは、前記連続的な細長い要素は、前記押出ノズルの出口開口部から出る前記連続的な細長い要素によって内側コアを形成するために、押出ノズルを介して第1の材料を押し出す動作によって作られる。
【0026】
好ましくは、前記連続的な細長い要素は、前記内側コアを(全体的に)取り囲む被覆コーティング層を形成するために、前記押出の間に、前記押出ノズルで、及び前記出口開口部の上流で、前記第1の材料の周りに、前記第1の材料とは異なる第2の材料を搬送する動作によって作られる。
【0027】
別の態様によれば、本発明は、車両ホイール用のタイヤを構築するための装置に関する。
【0028】
好ましくは、出口開口部につながる出口チャネルによって長手方向に横断された押出ノズルを有する押出アセンブリが提供される。
【0029】
好ましくは、押出ノズルの出口チャネルに軸方向に収束する第1の供給ダクトに第1のエラストマー材料を導入するための第1の供給ユニットが提供される。
【0030】
好ましくは、押出ノズルの出口開口部の前に回転動作可能な形成ドラムが提供される。
【0031】
好ましくは、押出アセンブリは、押出ノズルの出口チャネルの周りに配置され、出口チャネル自体の周りの閉じた線に沿って延びる半径方向の取り込みスリットを介してそこに流入する注入チャンバを備える。
【0032】
好ましくは、押出アセンブリは、注入チャンバにつながる第2の供給ダクトに第2のエラストマー材料を導入するための第2の供給ユニットを備える。
【0033】
さらなる態様によれば、本発明は、車両ホイール用のタイヤに関する。
【0034】
好ましくは、それぞれの環状アンカー構造に係合されたそれぞれのエンドフラップを有する少なくとも1つのカーカスプライを有するカーカス構造が提供される。
【0035】
好ましくは、カーカス構造の周囲に円周方向に延びるベルト構造が提供される。
【0036】
好ましくは、カーカス構造及びベルト構造に適用されるエラストマー構成要素が提供される。
【0037】
好ましくは、前記エラストマー構成要素の少なくとも1つは、タイヤの回転軸の周りの同心円状のターンに従って巻かれた連続的な細長い要素を備える。
【0038】
好ましくは、前記ターンの1つ又は複数は、第1のエラストマー材料で構成された内側コアと、前記内側コアを(一体的に)取り囲む、第1のエラストマー材料とは異なる第2のエラストマー材料で構成されたコーティング層とを有する。
【0039】
本出願人は、このようにして形成されたエラストマー構成要素の外面は、渦巻状の細長い要素のコーティング層又はカバー層を構成するエラストマー材料によってもたらされる追加の特性を示し得ると考えている。同時に、連続的な細長い要素の内側コアを構成するエラストマー材料は、エラストマー構成要素に、必要とされる基本特性を与える。
【0040】
本出願人は、タイヤの構築中及び/又は使用中に接触しなければならない他の要素に対するエラストマー構成要素の振る舞いにおいて、所望の付加的な特性が示されなければならない場合に、この状況を特に便利に利用することができると考えている。
【0041】
例えば、トレッドバンドでは、走行中に車両に蓄積された電荷を地面に放出することを可能にするために、さらなる特性として細長い要素の少なくとも一部に高い導電性を持たせることが可能である。また、コーティングカバー層を配置することにより、又は厚さを最小又は十分に小さくすることで、路面グリップ性、低ヒステリシス性、耐摩耗性、その他などの基本特性に大きな影響を与えることなく、静電気の分散を効果的に促進することが可能である。
【0042】
さらに、コーティング層又はカバー層の断面積と内側コアの断面積は、細長い要素の押出成形中に、要求に応じて互いに対して容易に調節することができる。
【0043】
例えば、コーティング層又はカバー層、及び/又は内側コアの厚さ及びその結果としての断面積を、押出成形中に徐々に又はほぼ瞬時にヌル値に低下させ、一方の面積の減少と他方の面積の対応する増加を同時に一体化することで、それぞれ異なる化合物で作られた複数の部分を有するタイヤのトレッドバンドや他のエラストマー構成要素を得ることが可能であり、また、それぞれ異なる化合物で作られたより多くのエラストマー構成要素を得ることも可能である。
【0044】
特に、トレッドバンドの軸方向に対向する端部において、半径方向に外側のサイドウォールの部分であって、タイヤのサイドウォールの残りの部分を構築するために一般的に使用されるエラストマー材料と適合性のある又は同一のエラストマー材料で作られた、サイドウォールの前述の残りの部分との接触面を有する当該部分を一体化して、それにより、タイヤの構築及びその後の成形及び加硫ステップの間にサイドウォールとトレッドバンドとの間の十分な結合を促すことが可能になる。
【0045】
少なくとも1つの好都合な実施形態において、本発明は、以下の好ましい特徴の1つ又は複数をさらに含み得る。
【0046】
好ましくは、連続的な細長い要素の適用は押し出しと同時に行われる。
【0047】
好ましくは、前記適用は、前記ターンを相互に接近する関係で分配するために、前記形成ドラムと前記押出ノズルとの間で横方向の分配動作を伝達することを含む。
【0048】
好ましくは、第2の材料が存在しない状態で第1の材料を押し出す動作も提供される。
【0049】
好ましくは、第2の材料が存在しない状態で第1の材料を押し出す動作は、第2の材料を搬送する動作に先行する。
【0050】
好ましくは、第2の材料が存在しない状態で第1の材料を押し出す動作は、第2の材料を搬送する動作の後に行われる。
【0051】
好ましくは、第2の材料が存在しない状態で第1の材料を押し出すために、第2の材料を搬送することを中断する動作も提供される。
【0052】
好ましくは、第1の材料が存在しない状態で第2の材料を押し出す動作も提供される。
【0053】
好ましくは、第1の材料が存在しない状態で第2の材料を押し出す動作は、第1の材料を搬送する動作に先行する。
【0054】
好ましくは、第1の材料が存在しない状態で第2の材料を押し出す動作は、第1の材料を搬送する動作の後に行われる。
【0055】
好ましくは、第1の材料が存在しない状態で第2の材料を押し出すために、第1の材料を搬送することを中断する動作も提供される。
【0056】
好ましくは、内側コアの周りに適用されるコーティング層の厚さを修正するために、内側コアの周りに搬送される第2の材料の流量を調節する動作が提供される。
【0057】
好ましくは、第1及び第2の材料の全体的な流量を出口開口部を通して実質的に一定に保つために、第1の材料の流量は、第2の材料の流量調節と連動して調節される。
【0058】
好ましくは、第2の材料の流量の減少又は増加にそれぞれ連動して、第1の材料の流量を増加又は減少させる動作も提供される。
【0059】
好ましくは、内側コアを(全体的に)取り囲むコーティング層を形成するために、前記押出しの間に、押出ノズルで、及び出口開口部の上流側で、第1の材料の周囲に、第1の材料及び第2の材料とは異なる第3の材料を搬送する動作がさらに行われる。
【0060】
好ましくは、第3の材料を搬送する動作は、第2の材料を搬送しない状態で行われる。
【0061】
好ましくは、第2及び第3の材料を搬送しない状態で第1の材料を押し出す動作も提供される。
【0062】
好ましくは、第1の材料が存在しない状態で第3の材料を押し出す動作も提供される。
【0063】
好ましくは、第1及び第2の材料が存在しない状態で第3の材料を押し出す動作も提供される。
【0064】
好ましくは、内側コアの周囲に適用されるカバー層の厚さを修正するために、内側コアの周囲に搬送される第3の材料の流量を調節する動作が提供される。
【0065】
好ましくは、第1及び第3の材料の全体的な流量を出口開口部を通して実質的に一定に保つために、第1の材料の流量は、第3の材料の流量調節と連動して調節される。
【0066】
好ましくは、第3の材料の流量の減少又は増加にそれぞれ連動して、第1の材料の流量を増加又は減少させる動作も提供される。
【0067】
好ましくは、第1の供給ユニットは、第1のエラストマー材料に対して動作する第1の混合グループと、第1の混合グループ及び前記押出ノズルの間に動作可能に介在するギアポンプとを備える。
【0068】
好ましくは、第2の供給ユニットは、混合チャンバ内で回転動作可能なスクリューを有する第2の混合グループを備える。
【0069】
好ましくは、前記スクリューは、第2のエラストマー材料を注入チャンバに送り込むために、混合チャンバ内で軸方向に移動可能である。
【0070】
好ましくは、前記第1の供給ユニット及び第2の供給ユニットは、第1の材料及び/又は第2の材料を押出ノズルの出口チャネルに向けて選択的且つ制御しながら供給するために、互いに独立して動作可能である。
【0071】
好ましくは、注入チャンバにつながる第3の供給ダクトに第3のエラストマー材料を導入するための第3の供給ユニットも提供される。
【0072】
好ましくは、第3の供給ユニットは、第3のエラストマー材料を注入チャンバに送り込むために、混合チャンバ内で回転動作可能であり、且つ混合チャンバ内で軸方向に移動可能なスクリューを有する混合グループを備える。
【0073】
好ましくは、前記第1の供給ダクトは、前記押出ノズルに関連付けられた分配器で終了し、前記分配器は、前記第1のエラストマー材料を通すための内側チャネルを有する円錐リング形状を有する。
【0074】
好ましくは、前記半径方向スリットは、その周辺延在部に沿って可変の軸方向寸法を有する。
【0075】
好ましくは、前記連続的な細長い要素によって形成されたエラストマー構成要素は、トレッドバンドである。
【0076】
好ましくは、前記第2のエラストマー材料は、導電性である。
【0077】
好ましくは、第2のエラストマー材料は、タイヤのサイドウォールの製造に使用されるエラストマー材料と同じ組成を有する。
【0078】
好ましくは、前記ターンの1つ又は複数において、コーティング層は、他のターンに存在するコーティング層の厚さと異なる厚さを有する。
【0079】
好ましくは、それぞれ異なる厚さのコーティング層を有するターンは、それぞれ等しい断面寸法を有する。
【0080】
好ましくは、複数の前記ターンは、コーティング層が存在しない。
【0081】
好ましくは、コーティング層のないターンとコーティング層を提供されたターンは、それぞれ等しい断面寸法を有する。
【0082】
好ましくは、前記ターンの1つ又は複数は、内側コアを(全体的に)取り囲むカバー層を有し、前記カバー層は、第1のエラストマー材料とは異なる第3のエラストマー材料で構成される。
【0083】
好ましくは、前記第3のエラストマー材料は、前記第2のエラストマー材料とは異なる。
【0084】
好ましくは、前記第3のエラストマー材料は、タイヤのサイドウォールの製造に使用されるエラストマー材料と同じ組成を有する。
【0085】
さらなる特徴及び利点は、本発明による、車両ホイール用タイヤを製造するためのプロセス及び装置、並びに前述の方法及び/又は装置を用いて得られる車両ホイール用タイヤの、好ましいが排他的ではない実施形態の詳細な記載から明らかになるであろう。このような記載は、もっぱら説明のために、したがって限定しない目的で提供される添付の図面を参照して、以下に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】本発明による、車両ホイール用のタイヤを構築するための装置の斜視図を示す。
図2図1の装置を長手方向の断面で示す。
図3】変形実施形態を強調する、図2の拡大された詳細を示す。
図4図3に対して直交する平面に沿って長手方向に断面状にされた図3の変形実施形態の詳細を示す。
図5図2の詳細を拡大して示し、押出ノズルによって分配される連続的な細長い要素を強調している。
図6】細長い要素の拡大断面図である。
図7】本発明による車両ホイール用タイヤの半径方向断面を概略的に示す。
図8図7のタイヤのトレッドバンドを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
上記の図を参照すると、参照番号1は、本発明による、車両ホイール用のタイヤを構築するための装置を示している。
【0088】
装置1は、少なくとも1つのカーカスプライ4を有するカーカス構造3を本質的に含むタイヤ2(図7)を構築するために便利に使用することができる。カーカスプライ4には、エラストマー材料の気密層、いわゆるライナ5が内側に適用されていてもよい。カーカスプライ4のそれぞれのエンドフラップ4aには、半径方向外側の位置にエラストマーフィラー6bを担持したいわゆるビードコア6aをそれぞれ備える2つの環状アンカー構造6が係合している。環状アンカー構造6は、通常「ビード」という名称で識別される領域7の近傍に一体化されており、この領域で、タイヤ2とそれぞれの取り付けリムとの間の係合が通常行われる。
【0089】
1つ又は複数のベルト層8a、8bを備えるベルト構造8が、カーカス構造3の周りに円周方向に延びており、トレッドバンド9がベルト構造8に円周方向に重なっている。
【0090】
ベルト構造8は、カーカスプライ4と、ベルト構造8の軸方向に対向する端縁の1つとの間にそれぞれ配置された、いわゆる「アンダーベルトインサート」10と関連していてもよい。
【0091】
カーカスプライ4の横方向に対向する位置に2つのサイドウォール11が適用されている。各サイドは、対応するビード7に接合された半径方向内側の頂部11aと、軸方向外側の端部9aでトレッドバンド9によって担持された半径方向外側の頂部12に接合される可能性のある半径方向外側の端部11bとを有する。
【0092】
上に例示した定義を参照すると、図示したタイヤの例では、カーカスプライ4、ベルト層8a、8b、及びビードコア6aが構造部品を表し、一方、サイドウォール11、ライナ5、フィラー6a、アンダーベルトインサート10、及びいずれかの半径方向外側の頂部12を有するトレッドバンド9が、カーカス構造3及び/又はベルト構造8に適用されるエラストマー構成要素を表す。
【0093】
本明細書に記載の好ましい実施形態の例では、装置1はトレッドバンド9を作るために使用される。しかしながら、本発明は、いずれかの他のエラストマー構成要素、例えばサイドウォール11、ライナ5、フィラー6a、アンダーベルトインサート10及び/又はタイヤ2の構築に必要な他のエラストマー構成要素を渦巻状に巻き付けるために便利に使用することができる。
【0094】
装置1は、少なくとも1つの連続的な細長い要素14を、好ましくは形成ドラム15の外面Sの近傍に分配するように配置された押出アセンブリ13を備える。形成ドラム15は、例えばロボットアーム15aによって、押出装置の近傍で適切に支持される。ロボットアーム15aは、形成ドラム15がその幾何学的な回転軸Xの周りを回転する間に、形成ドラム15自体の外面Sの周りの複数のターンに従って、連続的な細長い要素14の適用を決定するように、形成ドラム15を適切に支持し、移動させる。
【0095】
押出アセンブリ13は、連続的な細長い要素14が分配される出口開口部18につながる出口チャネル17によって長手方向に横断された少なくとも1つの押出ノズル16を有する。
【0096】
押出ノズル16の上流には、第1の供給ユニット19が配置されており、押出ノズル16の出口チャネル17に軸方向に収束する第1の供給ダクト20に第1のエラストマー材料を導入するように構成されている。
【0097】
好ましくは、第1の供給ユニット19は、第1のエラストマー材料で動作する、既知の方法で構成できることにおいて単に概略的に示されている第1の混合グループ19aを備えている。ギアポンプ21が、第1の供給ダクト20に沿って、第1の混合グループ19aと押出ノズル16との間に動作可能に介在されている。アクチュエータユニット22に関連付けられたプログラマブルロジックコントローラ(PLC)によって作動速度を適切に調整できるギアポンプ21を使用することで、押出ノズル16に送られる第1のエラストマー材料の流量を瞬間ごとに適切な精度で制御することができる。
【0098】
押出アセンブリ13は、第1のエラストマー材料とは異なる第2のエラストマー材料を、押出ノズル16の出口チャネル17に導入するように構成された第2の供給ユニット23をさらに備える。
【0099】
より詳細には、第2の供給ユニット23は、好ましくは、混合チャンバ26内に動作可能に収容され、モータ27によって回転動作可能なスクリュー25を有する第2の混合グループ24を備える。好ましくは、スクリュー25は、例えば軸方向移動ユニット28の指令により、混合チャンバ26内で軸方向にさらに移動可能であり、第2のエラストマー材料を、出口チャネル17に対して半径方向に延在し、注入チャンバ30につながる第2の供給ダクト29に移送することを容易にする。好ましくは環状の構成を有する注入チャンバ30は、押出ノズル16の出口チャネル17の周囲に配置され、出口チャネル17を完全に取り囲む、出口チャネル17自体の周りの閉じた線に沿って延在する半径方向の取り込みスリット31を介して、出口チャネル17に流れる(図2)。
【0100】
供給ダクト20は、押出ノズル16に関連付けられた分配器50で終了し得る。分配器50は、出口セクション51で終了する上記第1のエラストマー材料の通過のための内部チャネルを有する円錐リング形状を有する。出口セクション51は、押出ノズル16の入口セクション52からわずかに離間している。半径方向スリット31は、分配器50の出口セクション51と押出ノズル16の入口セクション52との間で軸方向に区切られている。出口セクション51は、実質的に楕円形の周辺プロファイル、或いは場合によっては、出口開口部18の、したがってそこから出てくる連続的な細長い要素14の周辺プロファイルに対して、大きいとしても幾何学的に類似した周辺プロファイルを有し得る。図3及び図4に示す実施形態の変形例に例示されるように、分配器50の出口セクション51、及び/又は、押出ノズルの入口セクション52は、チャネル20及び押出ノズル16のそれと一致するその長手方向軸に直交する平面において、凹状のプロファイル、又は、異なる方法で平坦ではないなどのプロファイルを有し得る。このような非平面的なプロファイルの結果、分配器50と押出ノズル16との間には、出口セクション51及び入口セクション52の周辺延在部上に沿って可変の距離が生じる。言い換えれば、半径方向スリット31は、その周辺延在部上に沿って可変の軸方向寸法を有し得る。装置1の動作中、第1の供給ユニット19及び第2の供給ユニット23は、第1の材料及び/又は第2の材料を押出ノズル16の出口チャネル17に向けて選択的且つ制御しながら供給するように、互いに独立して動作するように適合されている。
【0101】
第1の材料の使用により、形成ドラム15が回転して出口開口部18の前で適切に動いている間に、第1の供給ユニット19が作動して第1の材料を押出ノズル16の出口チャネル17に供給することができる。したがって、第1の材料は、押出ノズル16を介して押し出され、第2の材料がない状態で出口開口部18から出てきて、形成ドラム15の外面Sの周りに同時に適用される。その幾何学的な回転軸Xの周りで形成ドラム15に与えられる回転は、連続するターンCの形成を決定し、一方、ロボットアーム15aによって形成ドラム15に与えられる横方向の動きは、予め定義されたスキームに従って、例えば形成ドラム15の外面Sの軸方向の延在に沿って相互に接近する関係で、ターンCの分布を決定する。
【0102】
押出中の任意の所望の瞬間に、第2の供給ユニット23は、第2の材料を注入チャンバ30に押し込むために、例えば、スクリュー25の軸方向の動きによって、起動されるようになっている。押出ノズル16で、及び出口開口部18の上流側で、注入チャンバ30に押し込まれた第2の材料は、半径方向スリット31を通って、第1の供給ダクト20から来る第1の材料の周りに、好ましくは前記分配器50を通って搬送される。したがって、第2の材料は、押出ノズル16を介して押し出されようとしている第1の材料の周りに分配される。その結果、第2の材料は、出口開口部18から分配された連続的な細長い要素14の外側に、第1の材料によって画定された内側コア33を完全に取り囲む前記コーティング層32を形成する。分配器50の出口セクション51及び/又は押出ノズル16の入口セクション52の上述の凹状又は非平面状の形状を使用することにより、最初に、すなわち、コーティング層32の半径方向スリット31の近傍において、可変の層厚を形成することが可能であり、それはその後、押出ノズル16に沿った経路の断面の変化により第2のエラストマー材料(及び/又は後述する第3のエラストマー材料)が受ける横方向の変位に起因して、上記出口開口部18の近傍で実質的に一定となる。コーティング層32を作る目的での第2の材料の分配は、形成ドラム15の周りに所望の数のターンCを形成するのに必要な時間だけ維持されてもよい。第2の供給ユニット23は、その後、第2の材料の搬送を中断し、第2の材料がない状態で第1の材料の分配を用いて構築されるべきエラストマー構成要素の他の部分の構築を継続するように、停止されてもよい。
【0103】
さらに、又は代わりに、必要に応じて、第1の材料がない状態で第2の材料を押し出すために、第1の供給ユニット19の停止を提供してもよい。この技術的手段は、例えば、構築されるエラストマー構成要素の特定の領域で第2の材料のみで作られたターンCを得るために、或いは、第2の材料のみを使用して上記エラストマー構成要素の一部を作るために使用することができる。
【0104】
要求に応じて、他の材料がない状態で第1又は第2の材料を押し出す動作は、同じ他の材料を押し出す動作に先行してもよいし、又は後続してもよい。
【0105】
内側コア自体の周りに適用されるコーティング層32の厚さを修正するために、内側コア33の周りに搬送される第2の材料の流量を調節する動作が、例えば、スクリュー25の軸方向の移動速度を調節することによって、有利に提供されてもよい。
【0106】
また、ギアポンプ21の作動速度を調整することにより、第1の材料の流量を、場合によっては第2の材料の流量の変動と連動して、有利に調節することができる。より具体的には、第2の材料の流量の減少又は増加とそれぞれ連動して、第1の材料の流量を増加又は減少させることが可能である。例えば、第2の材料の流量の増加は、第1の材料の流量の等しい減少に対応し得、これにより、出口開口部18を通る第1及び第2の材料の全体的な流量、すなわち流量の合計を維持し、したがって、断面における連続的な細長い要素14の寸法を実質的に一定に保つことができる。
【0107】
流量調節は、一方の材料のみが他方の材料の不存在下で押し出される状態から、他方の材料のみが押し出される動作状態へと徐々に変化させるために使用することもできる。
【0108】
考えられる好ましい変形例によれば、装置1は、第1の材料とは異なるが、好ましくは必ずしも第2の材料とも異なるわけではない第3の材料を、注入チャンバ30につながる第3の供給ダクト35に導入するように構成された第3の供給ユニット34をさらに備え得る。
【0109】
図2に破線で概略的に示されている第3の供給ユニット34は、第2の供給ユニット23と実質的に同一に作られていてもよい。
【0110】
第3の供給ユニット34は、第1の供給ユニット19及び第2の供給ユニット23の起動とは独立して、選択的に起動されてもよい。好ましくは、第3の供給ユニット34の起動は、少なくとも第2の供給ユニット23が停止状態のままであるときに行われる。
【0111】
第1の材料の押し出し中の第3の供給ユニット34の起動により、好ましくは第2の材料が搬送されていない状態で、第3の材料が注入チャンバ30に搬送され、第1の材料自体によって形成された内側コア33を完全に取り囲むカバー層36が形成される。
【0112】
内側コア33の周りに搬送される第3の材料の流量を調節する動作は、第2の供給ユニット23を参照して述べたのと同様の方法で第3の供給ユニット34上で作動することによって有利に提供して、第3の材料によって形成されるカバー層36の厚さを修正することができる。
【0113】
また、第2及び/又は第3の材料を搬送していない状態で第1の材料を押し出す動作、及び第1及び/又は第3/第2の材料がない状態で第2/第3の材料を押し出す動作を行うことも可能である。
【0114】
第3の材料の流量の減少又は増加にそれぞれ連動して第1の材料の流量を増加又は減少させることにより、第3の材料の流量調節に連動して第1の材料の流量を調節することができる。例えば、第3の材料の流量の増加は、第1の材料の流量の等しい減少に対応し得、これにより、出口開口部18を通る第1及び第3の材料の全体的な流量、すなわち流量の合計を維持し、したがって、断面における連続的な細長い要素14の寸法を実質的に一定に保つことができる。
【0115】
第3の材料と等しい第2の材料を提供する好ましい実施形態では、必要に応じて、第2の供給ユニット23の動作と第3の供給ユニット34の動作とを交互に行い、一方を動作(注入)ステップに置き、他方を材料装填ステップに置くことにより、所望の高さのターン数で、及び連続的な細長い要素14を渦巻状に巻き付けるステップ全体で、内側コア33の周りに連続コーティング層を形成することが可能になる。
【0116】
さらなる好ましい実施形態(図示せず)では、第2の供給ユニット23及び第3の供給ユニット34にそれぞれ別個の注入チャンバを設け、各別個の注入チャンバが出口チャネル17の長手方向の展開に沿って他方から軸方向に離れている場合、第2の供給ユニット23及び第3の供給ユニット34を同時に動作させて、第1の材料によって画定された内側コア33の周りにそれぞれ第2の材料及び第3の材料を用いて2つのコーティング層を作り、連続的な細長い要素14で形成されたタイヤのエラストマー構成要素に特定の物理的特徴を与えることが可能である。
【0117】
トレッドバンド9又は他のエラストマー構成要素の構造は、通常、エラストマー構成要素自体の大部分に第1の材料のみを使用する必要があるかもしれない。しかしながら、エラストマー構成要素の一部、例えばトレッドバンド9の軸方向中心線Yに隣接する軸方向中心部分A(図6)では、例えば、ベルト構造8と、タイヤ2の使用中に地面との接触を意図した同じトレッドバンド9の半径方向外面9bとの間の所望の導電性を決定するために、第2の材料の使用が必要となる場合がある。
【0118】
トレッドバンド9の構築中の第3の供給ユニット34の優先的な使用は、前記半径方向外側頂部12の実現を目的とすることができる。この点において、第3の供給ユニット34は、トレッドバンド9の対向する軸方向端部9aのそれぞれに近い軸方向外側部分B(図6)におけるターンCの堆積中に起動されるのに適している。このような状況で分配された連続的な細長い要素14は、第3の材料で構成されたカバー層36を備えることになる。
【0119】
カバー層36の厚さ及び連続的な細長い要素14の全体的な断面寸法は、例えば、トレッドバンド9の軸方向端部9aに次第に近づくターンCの堆積中に、第1の材料のみで形成された内側コア33の寸法を、場合によっては第1の材料の分配が完全に中断されるまで徐々に小さくすることによって、堆積中に変更することができ、その結果、軸方向端部9aに最も近いターンCは第3の材料のみで構成されるようになる。
【0120】
本発明に従って得られたタイヤ2では、トレッドバンド9について記載したケースにおいて、エラストマー構成要素の少なくとも1つは、タイヤ自体の幾何学的な回転軸Xの周りの同心円状のターンCに従って巻かれた連続的な細長い要素14によって形成される。
【0121】
ターンCの1つ又は複数において、第1のエラストマー材料から構成された内側コア33が、第2のエラストマー材料から構成されたコーティング層32又は第3のエラストマー材料から構成されたカバー層36によって完全に取り囲まれていることが識別できる。
【0122】
トレッドバンド9を製造する目的で、第1のエラストマー材料は、例えば、化合物100重量部のうち、例えば30重量部を超える比較的多量のシリカを含み得る。
【0123】
前記トレッドバンド9を製造する目的で、第2のエラストマー材料は、例えば、適切な導電性を得るために、化合物100重量部のうち、例えば50重量部を超える適切な量のカーボンブラックを含有し得る。
【0124】
前記半径方向外側頂部12を作る目的で、第3のエラストマー材料は、タイヤ2の構築中にサイドウォール11の半径方向外側頂部12とトレッドバンド9の軸方向端部9aとの間の最適な結合のために、サイドウォール11の構築に使用されたエラストマー材料のものと実質的に同一の組成及び物理化学的特性を有する。
【0125】
例えば、トレッドバンド9の軸方向中心線Yに近いターンCは、第2の導電性材料で形成されたコーティング層32で覆われていてもよく、トレッドバンド9の軸方向端部9aに配置されて半径方向外側頂部12を形成するターンCは、サイドウォール11の材料と実質的に同一の第3の材料で構成されたカバー層36で覆われていてもよく、最後に、半径方向外側頂部12とトレッドバンド9の軸方向中心線Yに近い領域との間に配置された複数のターンCは、第1の材料のみで形成され、コーティング層32及び/又はカバー層36がなくてもよい。
【0126】
1つ又は複数のターンCにおいて、コーティング層32又はカバー層36は、他のターンCに存在するコーティング層32又はカバー層36の厚さとは異なる厚さを有していてもよい。
【0127】
それぞれ異なる厚さを有するコーティング層32又はカバー層36を有するターンCは、互いに及び/又はコーティング層32又はカバー層36のないターンCに対して同等の断面寸法を有し得る。
【0128】
内側コア33を完全に取り囲んでいるので、第2の材料で作られたコーティング層32は、例えば、構築後の加硫又は他の処理ステップ中にターンCが被る変形においても、トレッドバンド9を介した電気的導通を遮断する危険性なく、有利に薄い厚さで作ることができる。
【0129】
同じことが、第3の材料で形成されたカバー層36にも当てはまり、個々のターンCに変形や破砕が生じても、内側コア33の効果的なカバーを保証し得る。
【0130】
連続的な長手方向要素14のターンCの堆積パターンは、図8に示すように作られなくてもよく、また、例えばトレッドバンド9の構築において、単一のターンCが、トレッドの半径方向外面に露出する半径方向外側部分と、導電性材料の構造部品(例えばベルトストリップ8a、8b)と接触する半径方向内側部分とを同時に有するようにする必要はない。
【0131】
頻繁に単一のターンCが他のターンCの上に配置されることがあり、その結果、例えばトレッドバンド9の構築において、各単一のターンCの外面を完全に覆うコーティング層32は、導電性材料の構造部品(ベルトストリップ8a、8b)と接触して配置されたターンCと、その半径方向外側に配置されたターンCとの間で、ゆえにトレッドの半径方向外面まで、接触及び導電を可能にし、例えば導電を有利にするために特定のスキームを尊重することを余儀なくされることなく、構築作業の最大の柔軟性を促進することができる。
【0132】
第2の材料及び/又は第3の材料の使用量を減らすことで、エラストマー構成要素に要求される基本的な性能に与える影響を低減することができる。さらに、第2の材料の使用量を減らすことで、第2の供給ユニット23及び装置全体の寸法及びコストを有利に抑制することができる。
【0133】
また、動作のために第2の供給ユニット23に第2及び/又は第3の材料を継続的に供給する必要性も排除される。実際、第2の供給ユニット23及び/又は第3の供給ユニット34の停止期間は、構築を中断することなく、混合チャンバ26内の第2及び/又は第3の材料の供給を回復するために利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8