(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】Si-HとSi-O-Siとの反応のための熱トリガとしての架橋型フラストレイティドルイスペア
(51)【国際特許分類】
C08L 83/05 20060101AFI20240925BHJP
C08K 5/55 20060101ALI20240925BHJP
C08G 77/08 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C08L83/05
C08K5/55
C08G77/08
(21)【出願番号】P 2021571819
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 US2020035637
(87)【国際公開番号】W WO2020247330
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-19
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クルトマンシュ、マーク-アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ウンシル
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、イェンフー
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530601(JP,A)
【文献】特表2008-537753(JP,A)
【文献】特表2003-531925(JP,A)
【文献】特開2009-256670(JP,A)
【文献】Cornelia M.Momming, Edwin Otten et al.,Reversible Metal-Free Carbon Dioxide Binding by Frustrated Lewis Pairs,Angewandte Chmie,2009年,Vol.48, No.36,p.6643-6646
【文献】Andreas Berkefeld, Warren E.Piers and Masood Parvez,Tandem Frustrated Lewis Pair/Tris(pentafluorophenyl)borane-Catalyzed Deoxygenative Hydrosilylation of Carbon Dioxide,J. Am. Chem. Soc,2010年07月15日,Vol.132, No.31,p.10660-10661
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 5/55
C08G 77/00-77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリルヒドリド、シロキサン、及び架橋型フラストレイテッドルイスペアの混合物を含む、組成物
であって、
前記架橋型フラストレイテッドルイスペアが、
(a)フッ素化アリールボランであるルイス酸と、
(b)PR
3
、NR
3
、グアニジン、アミジン及びホスファゼン(式中、Rは、各出現において独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択される)からなる群から選択されるルイス塩基と、
(c)前記ルイス酸及びルイス塩基に結合する架橋分子であって、二酸化炭素、ニトリル、アルケン及びアルキンからなる群から選択される、架橋分子と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記ルイス酸が、フッ素化アリールボランであり、前記ルイス塩基が、PR
3及びNR
3(式中、Rは、各出現において独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択される)からなる群から選択され、前記架橋分子が、二酸化炭素、アルケン、アルキン、及びニトリルからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記シリルヒドリド及び前記シロキサンが、同じ分子である、請求項
1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋型フラストレイテッドルイスペアが、光酸発生剤を含まないか、又は紫外線放射へ曝露するとルイス酸を生成する他の成分を含まない、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(a)請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物を提供するステップと、
(b)前記組成物を、前記架橋型フラストレイテッドルイスペアから前記ルイス酸を解離するのに十分な温度に加熱するステップと、
を含む、化学反応プロセス。
【請求項6】
ステップ(a)が、架橋型フラストレイテッドルイスペア、シリルヒドリド及びシロキサンを一緒に混合することを含む、請求項
5に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(a)の後及びステップ(b)の前に、前記組成物が、基材に塗布されるか、又は金型内に配置される、請求項
5又は6に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の分野
本発明は、シリルヒドリドとシロキサンとの化学反応のための熱トリガとしての架橋型フラストレイテッドルイスペア(bridged frustrated Lewis pair)の使用に関する。架橋型フラストレイテッドルイスペアは、加熱すると解離して、ルイス酸を放出する。ルイス酸は、シリルヒドリドとシロキサンとの化学反応のための触媒として機能する。
【0002】
序論
フラストレイテッドルイスペア(「FLP」)は、ルイス酸及びルイス塩基のペアのうち、立体的混雑(steric congestion)により、ルイス酸及びルイス塩基が互いに錯化及び中和することができないペアを指す用語である。FLPのルイス酸及びルイス塩基は混合されると、混合して互いを中和するのではなく、互いから独立した状態を保つ。更に、FLPは、架橋型フラストレイテッドルイスペア(「B-FLP」)の形態で互いに間接的に結合することが見出されており、B-FLPでは、架橋分子がFLPの酸及び塩基の両方に結合し、ルイス酸とルイス塩基との間に架橋分子をもつ錯体を形成する。場合によっては、架橋分子の一部が、ルイス酸及びルイス塩基の各々と錯化し、更なる錯化又は反応をブロックしている状態で、架橋分子は開裂し、ブロックされたルイス酸及びブロックされたルイス塩基を生成することができる。水素(H2)は、B-FLPを形成すると、このような様式で開裂する架橋分子の一例である。
【0003】
B-FLPは、化学反応に使用する架橋分子を活性化するために使用されてきた。例えば、水素(H2)は、水素添加反応に使用する水素を活性化するために、B-FLP中の架橋分子として使用され(例えば、JACS 2015,137,10018-10032を参照されたい)、二酸化炭素は、脱酸素ヒドロシリル化の二酸化炭素を活性化するために、B-FLP中の架橋分子として使用されてきた(例えば、JACS 2010,132,10660-10661を参照されたい)。化学反応のために活性化するのに使用するB-FLP中の架橋分子として使用される他の分子としては、亜酸化窒素(N2O)、二酸化硫黄(SO2)、アルケン、及びアルキンが挙げられる。例えば、Angew.Chem.Int.Ed.2009,48,6643-6646、Angew.Chem.Int.Ed.2015,54,6400-6441及びJACS 2015,137,10018-10032を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特にこのような使用が架橋分子を伴う化学反応以外の化学反応を制御することを可能にする場合は、B-FLPの追加の使用を発見することは、驚くべきことであり、有用である。
【0005】
本発明は、シリルヒドリド(Si-H)とシロキサン結合(Si-O-Si)との反応の熱トリガとして、B-FLPの驚くべきかつ予想外の使用を提供する。
【0006】
Si-H及びSi-O-Siは、シロキサン結合からのケイ素がシリルヒドリドの水素に結合し、一方、シリルヒドリドのケイ素がシロキサン結合の酸素に結合している強ルイス酸の存在下で転位反応を起こすことが見出された。驚くべきことに、転位反応に関与するシリルヒドリド及びシロキサン結合は、同じ分子上にあってもよく、又は異なる分子上にあってもよい。この転位反応は、強ルイス酸の存在下で迅速である傾向がある。このような反応は、水又は水分を必要とせずにSi-H及びシロキサン結合を含有する急速硬化系に有用であり得る。しかしながら、そのような硬化が所望されるまで、シリルヒドリドとシロキサン結合との組み合わせからルイス酸触媒を遠ざける保存のために二液系を必要とする。23℃で貯蔵安定性があるが、硬化するようにトリガされ得る転位反応を利用した、貯蔵安定性がある一成分系を提供することができることが望ましい。
【0007】
本発明は、熱トリガされる潜在的なルイス酸触媒として、B-FLPがこれらの転位反応系において使用できることを発見した結果である。すなわち、ルイス酸PR反応触媒を含むB-FLPは、シリルヒドリド及びシロキサン結合と混合されて、貯蔵安定性である反応系を形成することができるが、加熱されたときに硬化するようにトリガされ得る。十分な加熱により、ルイス酸はB-FLPから解離し、ルイス酸が、シリルヒドリドとシロキサン結合との転位反応を開始する酸触媒として機能することを可能にする。
【0008】
B-FLPは、いったん破壊されると再混合しにくいため、特に効率的なトリガ剤であることが見出された。これは、ルイス酸が遊離すると、B-FLPの再形成によって阻害されることなく反応を触媒し続けることを意味する。すなわち、ルイス塩基が溶液中に残留し、遊離ルイス酸と再混合して、ルイス酸を中和することができるため、ルイス塩基で直接阻害されたルイス酸に比べて利点である。B-FLPは、ルイス酸と塩基との間の架橋錯体の再形成を必要とし、この再形成はランダムに起こる可能性がはるかに低い。これは、ガス状であり、B-FLPが破壊されると反応系から避けてしまうものなどの、不安定な架橋分子に特に当てはまる。結果として、B-FLPの使用により、B-FLPを解離させるのに十分に加熱されると、酸触媒は不可逆的に放出されて迅速な転位反応を触媒するため、触媒阻害剤を形成することなく、反応を不可逆的にトリガすることに対する前例のない制御を提供する。
【0009】
第1の態様では、本発明は、シリルヒドリド、シロキサン、及び架橋型フラストレイテッドルイスペアの混合物を含む組成物である。
【0010】
第2の態様では、本発明は、(a)第1の態様の組成物を提供するステップと、(b)組成物を、架橋型フラストレイテッドルイスペアからルイス酸を解離するのに十分な温度に加熱するステップと、を含む化学反応プロセスである。
【0011】
本発明は、コーティング、接着剤、及びエラストマーを調製するために有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
試験方法は、日付が試験方法番号と共に示されていない場合、本文書の優先日現在での直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)を指し、ENは欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fuer Normung)を指し、ISOは国際標準化機構(International Organization for Standardization)を指す。
【0013】
商品名で識別される製品は、本出願の優先日に、それらの商品名でサプライヤーから入手可能な組成物を指す。
【0014】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、端点を含む。商品名で識別される製品は、本明細書に別途記載のない限り、本文書の優先日において、それらの商品名でサプライヤーから入手可能な組成物を指す。
【0015】
本発明の組成物は、シロキサン、シリルヒドリド、及び架橋型フラストレイテッドルイスペアの混合物を含む。
【0016】
「シロキサン」は、少なくとも1つのシロキサン(Si-O-Si)結合を含有する分子を指す。望ましくは、本発明のシロキサンは、複数のSi-O-Si結合を含有する分子を指す「ポリシロキサン」である。ポリシロキサンは、典型的には、M、D、T、又はQ単位と呼ばれるシロキサン単位を含む。標準M単位は、式(CH3)3SiO1/2を有する。標準D単位は、式(CH3)2SiO2/2を有する。標準T単位は、式(CH3)SiO3/2を有する。標準Q単位は、式SiO4/2を有する。M型、D型、及びT型単位は、水素、又はいくつかの他の部分で置き換えられる1つ以上のメチル基を有することができる。
【0017】
「シリルヒドリド」は、ケイ素-水素(Si-H)結合を含有する分子であり、複数のSi-H結合を含有することができる。
【0018】
「アルキル」は、水素原子を除去することによってアルカンから誘導される炭化水素基である。「置換アルキル」は、少なくとも1つの炭素又は水素の代わりに炭素及び水素以外の原子、又は化学的部分を有するアルキルである。
【0019】
「アリール」は、水素原子を除去することによって芳香族炭化水素から誘導される基である。「置換アリール」は、少なくとも1つの炭素又は水素の代わりに炭素及び水素以外の原子、又は化学的部分を有するアリールである。
【0020】
「フラストレイテッドルイスペア」、又は「FLP」は、ルイス酸及びルイス塩基が、その立体的混雑により、互いに錯化及び完全中和(「ブロック」)を不可能にするルイス酸及びルイス塩基の系である。FLPは、当該技術分野において既知であり、JACS 2015,137,10018-10032などの論文及びその中で識別された論文で特徴付けられる。望ましくは、FLPは、混雑(congestion)により、摂氏20度(℃)で錯化及び中和を不可能にするルイス酸及びルイス塩基の系である。FLPは、当該技術分野において既知であるが、任意のルイスペアが、両方を溶解する溶媒中で、等モル量のルイス酸とルイス塩基とを20℃で組み合わせることによって、FLPであるかどうかを判定することができる。ルイス酸及びルイス塩基の10モルパーセント超が解離したままである場合、そのとき、ルイス酸及びルイス塩基は、FLPと見なすことができる。核磁気共鳴分光法、又は好ましくは導電率検出器若しくは光度検出器を用いたイオンクロマトグラフィなどの合理的な任意の手段によって解離の程度を判定する。
【0021】
本発明の組成物を加熱すると、B-FLPは、シロキサンとシリルヒドリドとの反応を触媒するルイス酸を放出する。組成物を80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上の温度に加熱し、同時に、一般に、300℃以下、250℃以下、240℃以下、230℃以下、220℃以下、210℃以下、200℃以下、175℃以下、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下、又は更に100℃以下では、組成物が23℃でゲル化するのに必要な半分未満の時間で、好ましくは1/5以下の時間で、より好ましくは1/10以下の時間で、組成物中の成分を反応及び硬化させる。
【0022】
シロキサンとシリルヒドリドとのルイス酸触媒反応は、以下の反応によって一般に表される転位反応である。
Si’-H+Si-O-Si+ルイス酸→Si’-O-Si+Si-H+ルイス酸
【0023】
この転位反応は、新しいシロキサン結合を形成し、架橋ポリシロキサン系を形成するのに有用である。Piers-Rubinsztajn(PR)反応などの他のルイス酸触媒反応に勝るこの反応の特に望ましい特性は、この反応が典型的に、到底PR反応ほど揮発性の副生成物を生成しないことである。揮発性の副生成物は、反応がシロキサンポリマーを硬化させるために使用されるときに気泡を生成し、濁ったシロキサンポリマーを得ることができる。したがって、反応は、透明な硬化組成物及びフィルムを作製するのに理想的である。
【0024】
本発明の組成物は、貯蔵安定性がある。「貯蔵安定性」とは、組成物が23℃で5時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは48時間以下、更により好ましくは1週間以下でゲルを形成しないことを意味する。
【0025】
シロキサン
望ましくは、シロキサン成分は、複数のシロキサン結合を含有するポリシロキサンである。ポリシロキサンは、複数のシロキシ(SiO)基を含む。シロキシ含有基は、典型的には、M、D、T、又はQ基として指定される。ポリシロキサンは、直鎖状であってもよく、M(≡SiO1/2)型及びD(=SiO2/2)型単位のみを含んでもよい。あるいは、ポリシロキサンは、分枝状であってもよく、T(-SiO3/2)型及び/又はQ(SiO4/2)型単位を含有してもよい。典型的には、M、D、T、及びQ単位は、酸素が結合していないケイ素原子に結合したメチル基を有し、各ケイ素原子に対する4の価数を提供し、各酸素は、別の単位のケイ素に結合する。これらをM、D、T及びQ「型」単位と呼ぶと、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から選択されるものなどの基が、1つ以上のメチルの代わりにケイ素原子に結合し得ることを意味する。例えば、MHは、1つのメチルが水素で置き換えられるM型単位である。
【0026】
ポリシロキサンは、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上の重合度(DP)を有することができ、40以上、50以上、75以上、100以上、250以上、500以上、1000以上、2,000以上、4,000以上、6,000以上、及び8,000以上であってもよいが、同時に、典型的には10,00以下、好ましくは8,000以下、6,000以下、4,000以下、2,000以下、1,000以下、800以下、600以下、400以下、200以下、又は更には100以下である。DPは、分子中に存在するシロキシ基の数に対応し、ケイ素-29核磁気共鳴(29Si NMR)分光法によって判定することができる。
【0027】
シロキサン成分は、Si-H結合を含有してもよく、これは、シリルヒドリド成分としても機能してもよいことを意味する。実際に、シロキサン成分及びシリルヒドリド成分は、本発明において同じ分子であってもよい。あるいは、シロキサン成分及びシリルヒドリド成分は、異なる分子であってもよい。実際に、シロキサン分子は、Si-H結合を含まなくてもよく、かつ/又はシリルヒドリド成分は、Si-O-Si結合を含まなくてもよい。
【0028】
Si-H結合を有さない好適なシロキサンの例としては、Dow Chemical Companyから入手可能なXIAMETER(商標)PMX-200シリコン流体が挙げられる。
【0029】
Si-H結合を含有する好適なシロキサンの例としては、ポリ(メチルヒドロシロキサン及びポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルヒドロシロキサン)、トリメチルシリル末端が挙げられ、これらは両方ともSigma-Aldrichから入手可能である。Si-H結合を含有する好適なシロキサンの更なる例としては、商品名DMS-H03、DMS-H25、DMS-H31、及びDMS-H41でGelestから入手可能なものなどの、ペンタメチルジシロキサン、ビス(トリメチルシロキシ)メチル-シラン、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン(tetramethycyclotetrasiloxane)、及びヒドリド末端ポリ(ジメチルシロキサン)が挙げられる。
【0030】
典型的には、組成物中のシロキサンの濃度は、組成物中のシリルヒドリド、シロキサン、及びB-FLPの総合重量に基づいて、70重量パーセント(重量%)以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、更には90重量%以上であるが、同時に、典型的には90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、又は更には75重量%以下である。
【0031】
シリルヒドリド
シリルヒドリドは、1つ、好ましくは2つ以上のSi-H結合を含有する。Si-H結合は、典型的には、ポリシラン(複数のSi-H結合を含有する分子)又はポリシロキサンの一部である。複数のSi-H結合を含有するシリルヒドリドは、複数のシロキサン結合と反応可能であるため、本発明の組成物中の架橋剤として望ましい。
【0032】
本発明のシリルヒドリドは、ポリマーであってもよい。シリルヒドリドは、直鎖状、分枝状であってもよく、又は直鎖状及び分枝状シリルヒドリドの組み合わせを含有してもよい。シリルヒドリドは、ポリシラン、ポリシロキサン、又はポリシランとポリシロキサンとの組み合わせであってもよい。
【0033】
望ましくは、シリルヒドリドは、1つのSi-H結合又は2つ以上のSi-H結合を有するポリシロキサン分子である。シリルヒドリドがポリシロキサンである場合、Si-H結合は、M型又はD型シロキサン単位のケイ素原子上にある。ポリシロキサンは、直鎖状であってもよく、M型及びD型単位のみを含んでもよい。あるいは、ポリシロキサンは、分枝状であってもよく、T型及び/又はQ型単位を含有してもよい。
【0034】
好適なシリルヒドリドの例としては、商品名DMS-H03、DMS-H25、DMS-H31、及びDMS-H41でGelestから入手可能なものなどの、ペンタメチルジシロキサン、ビス(トリメチルシロキシ)メチル-シラン、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、及びヒドリド末端ポリ(ジメチルシロキサン)が挙げられる。
【0035】
シリルヒドリドの濃度は、典型的には、0.2以上、0.5以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.2以上、1.4以上、1.6以上、1.8以上、2.0以上、2.2以上、更には2.5以上である、Si-H基のシロキサン結合に対するモル比を提供するのに十分であるが、同時に、典型的には5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.8以下、2.5以下、2.3以下、2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、1.2以下、又は更には1.0以下である。
【0036】
シロキサン又はシリルヒドリド(又はその両方)は、反応において架橋剤として機能することができる。架橋剤は、1分子中に少なくとも2つの反応性基を有し、これらの反応性基を介して2つの異なる分子と反応して、それらの分子を一緒に架橋する。架橋剤中の反応性基間の直鎖の長さを増加させることは、得られた架橋物の可撓性を増加させる傾向がある。対照的に、架橋剤中の反応性基間の直鎖の長さを短くすることは、得られた架橋物の可撓性を低減させる傾向がある。一般に、より高い可撓性の架橋物を得るためには、直鎖状架橋剤が所望され、反応性部位間の長さは、所望の可撓性を得るように選択される。より低い可撓性の架橋物を得るためには、架橋分子間の可撓性を低減させるのにより短い直鎖状架橋剤又は更には分枝状架橋剤が所望される。
【0037】
シリルヒドリドは、シロキサンと同じ分子であってもよく、すなわち、シロキサン結合及びシリルヒドリド官能基の両方を含有する単一分子は、シリルヒドリド及びシロキサンの両方としてロールを提供することができる。あるいは、シリルヒドリドは、シロキサンとは異なる分子であってもよい。シリルヒドリドは、シロキサン結合を含まなくてもよい。シロキサンは、シリルヒドリド基を含まなくてもよい。
【0038】
本発明の組成物(及び反応プロセス)は、2つ以上のシリルヒドリド、2つ以上のシロキサン、並びに/又はシリルヒドリド及びシロキサンの両方として機能する2つ以上の成分を含むことができる。
【0039】
典型的には、組成物中のシリルヒドリドの濃度は、組成物中のシリルヒドリド、シロキサン、及びB-FLPの総合重量に基づいて、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、更には25重量%以上であるが、同時に、典型的には30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、又は更には5重量%以下である。
【0040】
架橋型フラストレイテッドルイスペア
架橋型フラストレイテッドルイスペア(「B-FLP」)は、FLPを含む錯体であり、FLPのルイス酸及びルイス塩基は、両方とも架橋分子に結合して、ルイス酸とルイス塩基との間に存在する(すなわち、「架橋」)架橋分子と中和された錯体を形成する。H2の場合のように、架橋分子の一部がルイス酸をブロックし、架橋分子の別の部分がルイス塩基をブロックしている状態で、架橋分子は開裂することができる。あるいは、好ましくは、架橋分子はそのまま維持され、B-FLPは、FLPのルイス酸及びFLPのルイス塩基に同時に結合した架橋分子と安定した錯体(少なくとも23℃で)である。
【0041】
ルイス酸は、アルミニウムアルキル、アルミニウムアリール、トリアリールボランを含むアリールボラン(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含むフッ素化アリールボランなどの置換アリール及びトリアリールボランを含む)、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化アルミニウム、ガリウムアルキル、ガリウムアリール、ハロゲン化ガリウム、シリウムカチオン、及びホスホニウムカチオンからなる群から選択される。好適なアルミニウムアルキルの例としては、トリメチルアルミニウム及びトリエチルアルミニウムが挙げられる。好適なアルミニウムアリールの例としては、トリフェニルアルミニウム及びトリス-ペンタフルオロフェニルアルミニウムが挙げられる。トリアリールボランの例としては、以下の式:
【化1】
(式中、Rは、各出現において独立して、H、F、Cl、及びCF
3から選択される)を有するものが挙げられる。好適なハロゲン化ホウ素の例としては、(CH
3CH
2)
2BCl及びボロントリフルオリドが挙げられる。好適なハロゲン化アルミニウムの例としては、三塩化アルミニウムが挙げられる。好適なガリウムアルキルの例としては、トリメチルガリウムが挙げられる。好適なガリウムアリールの例としては、トリフェニルガリウムが挙げられる。好適なハロゲン化ガリウムの例としては、トリクロロガリウムが挙げられる。好適なシリウムカチオンの例としては、(CH
3CH
2)
3Si
+X
-及びPh
3Si
+X
-が挙げられる。好適なホスホニウムカチオンの例としては、F-P(C
6F
5)
3
+X
-が挙げられる。
【0042】
ルイス塩基は、以下の塩基:PR
3、P(NR
2)
3、NR
3、N(SiR
3)
xR
3-x、RC(NR)N、P(N-R)R
3、グアニジン(C(=NR)(NR
2)
2)、アミジン(RC(=NR)NR
2)、ホスファゼン、及び
【化2】
、
(式中、Rは、各出現において独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択される)からなる群から選択される。構造PR
3の好適なルイスベイス(Lewis basis)の例としては、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、PhP(tBu)
2、(シクロヘキシル)P(tBu)
2、nBuP(tBu)
2、Me(tBu)
2、tBuP(i-Pr)
2、P(C
6H
11)
3、P(iBu)
3、及びP(n-Bu)
3が挙げられる。構造RC(NR)Nの好適なルイスベイスの例としては、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ4.4.0デカ-5-エン、2,3,4,6,7,8,9,10-オクタヒドロピリミドール[1,2-a]アゼピン(DBU)が挙げられる。好適なグアニジンの例としては、グアニジン、ビグアニジン、及び1,1-ジメチルグアニジンが挙げられる。好適なアミジンの例としては、ジエチルアミド、及びジイソプロピルアミドが挙げられる。好適なホスファゼンの例としては、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホン、tert-オクチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホレン(phosphorene)、及び2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリンが挙げられる。以下の構造の好適なルイスベイスの例としては
【化3】
1,3-ジメシチル-イミダゾール-4,5-ジヒドロ-2-イリデン、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン、及び1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデンが挙げられる。
【0043】
本発明の最も広い範囲内の架橋分子としては、B-FLPを形成するために、FLPのルイス酸及びルイス塩基に同時に結合してブロックする任意の分子が挙げられる。架橋分子とルイス酸及びルイス塩基との相互作用は、ルイス酸及びルイス塩基が、23℃で架橋分子(又はその一部)によってブロックされるが、少なくともルイス酸が、120℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは100℃以上、更により好ましくは90℃以上、80℃以上、又は更には70℃以上、同時に、望ましくは300℃以下、240℃以下、220℃以下、200℃以下、180℃以下、160℃以下、150℃以下、125℃以下、又は更には100℃以下の温度で非ブロックされるようなものである。B-FLPのルイス酸を非ブロックすることは、23℃でゲル化するのに必要な半分未満の時間でのB-FLP硬化を含有する本発明の組成物によって証明することができる。
【0044】
好適な架橋分子の例としては、二酸化炭素、水素分子(H2)、ニトリル、アルケン、アルキン、ケトン、エステル、及びアルデヒドが挙げられる。望ましくは、架橋分子は、10個以下、好ましくは9個以下の炭素原子を含有し、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、及び更には1個以下又は0個の炭素原子を含有してもよいが、同時に、架橋分子は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、及び更には6個以上の炭素原子を含有してもよい。本明細書で先に述べたように、架橋分子の一部がルイス酸をブロックし、架橋分子の一部がルイス塩基をブロックしている状態で、B-FLPにおいて、いくつかの架橋分子は開裂することができる。架橋分子は、FLPのルイス酸及びルイス塩基を架橋しながら、非開裂のままであることが好ましい。その点において、架橋分子は、好ましくはH2でない。より好ましくは、架橋分子は、FLPのルイス酸及びルイス塩基を架橋しながら開裂するいかなる分子も含まない。
【0045】
B-FLPは、本発明の組成物中で望ましくは「安定」であり、これは、23℃以下の温度で解離してルイス酸を放出しないことを意味する。B-FLPは、30℃以下、50℃以下、70℃以下、更には80℃以下の温度で安定であってもよい。同時に、B-FLPは、120℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは110℃以上、100℃以上、90℃以上、及び更には80℃以上の温度で解離する。B-FLPが、核磁気共鳴分光法(ルイス酸に基づいて適宜1H及び31P、11B及び/又は27Al)による遊離ルイス酸の証拠を調べることによって解離するかどうかを判定する。あるいは、B-FLPの解離は、所定温度でB-FLPを含まない同一組成物よりも速く硬化する組成物によって検出することができる。
【0046】
B-FLPを調製するための1つの方法は、FLPのルイス酸及びルイス塩基とを、溶媒中の架橋分子と一緒に、23℃で混合することによる。混合することにより、B-FLPの形成を促進する。B-FLPは、通常、溶媒を蒸発させるか、又はB-FLPが溶媒から沈殿した場合、そのとき、濾過することによって溶媒から単離されてもよい。B-FLPは、23℃以下で長期間保存することができる。B-FLPは、シリルヒドリド及びシロキサンと混合して、本発明の組成物を形成することができる。
【0047】
典型的なブロックされたルイス酸系とは対照的に、本発明のB-FLPのルイス酸は、架橋分子を介してルイス塩基と錯化させ、そのため2分子と錯化させる。従来技術は、紫外線(UV)光に感光性であるブロッキング剤とルイス酸とを直接錯化させ、そのためUV光を照射すると、ブロッキング剤がルイス酸から解離することを示唆している。本発明のB-FLPは、UV感光性ブロッキング剤を必要とせず、UV光を照射するとルイス酸をB-FLPから遊離させる成分を含まなくてもよい。本発明のB-FLP及び組成物は、光酸発生剤を含まなくてもよく、UV放射へ曝露するとルイス酸を生成するいかなる他の成分も含まなくてもよい。
【0048】
本発明の組成物は、UV光に曝露されたときでも貯蔵安定性がある一成分反応系の利点を提供する。従来技術とは異なり、組成物はUV光を反応させる必要はなく、組成物をUV光への曝露からブロックして貯蔵安定性を維持する必要がない。望ましくは、本発明のB-FLPの安定性は、UV光への曝露に依存しない(すなわち、これから独立している)。
【0049】
本発明の組成物は、典型的には、組成物中のシリルヒドリドとシロキサンとの総合重量に基づいて、0.1重量部/百万重量部(ppm)以上、1ppm以上、10ppm以上、50ppm以上、100ppm以上、200ppm以上、300ppm以上、400ppm以上、500ppm以上、600ppm以上、700ppm以上、800ppm以上、900ppm以上1000ppm以上であるが、同時に、典型的には10,000ppm以下、5,000ppm以下、1,000ppm以下であるルイス酸濃度を提供するのに十分なB-FLPを含有する。
【0050】
本発明の組成物は、水を含まなくてもよい。あるいは、本発明の組成物は、組成物の重量に基づいて、好ましくは1重量パーセント(重量%)以下、0.75重量%以下、0.5重量%以下、0.25重量%以下0.1重量%以下、0.05重量%以下又は更には0.01重量%以下の濃度で水を含むことができる。
【0051】
任意選択成分
本発明の組成物は、シリルヒドリド、シロキサン、及びB-FLPからなることができる。あるいは、本発明の組成物は、1つの任意選択成分又は2つ以上の任意選択成分の組み合わせを更に含むことができる。任意選択成分は、組成物の重量に基づいて、望ましくは50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、又は更には1重量%以下の濃度で存在する。
【0052】
可能な任意選択成分の例としては、ヒドロカルビル溶媒(典型的には、組成物重量に基づいて10重量%以下、5重量%以下、更には1重量%以下の濃度で)、カーボンブラック又は二酸化チタンなどの顔料、SiO2を含む金属酸化物などの充填剤(典型的には、組成物重量に基づいて50重量%以下の濃度で)、水分捕捉剤(moisture scavengers)、蛍光増白剤、安定剤(酸化防止剤及び紫外線安定剤など)、及び腐食防止剤からなる群から選択される1つの成分又は2つ以上の成分の組み合わせが挙げられる。本発明の組成物はまた、このような追加成分を1つ又は2つ以上の組み合わせを含まなくてもよい。
【0053】
特に、本発明の組成物は、組成物重量に対して1重量%以下、0.5重量%以下の水を含有することができる。望ましくは、組成物は、水を含まない。
【0054】
化学反応プロセス
本発明は、(a)本発明の組成物を提供するステップと、(b)組成物を、B-FLPからルイス酸を解離するのに十分な温度に加熱するステップと、を含む化学反応プロセスを含む。本発明の組成物を加熱すると、ルイス酸は、B-FLPから放出され、上記に述べたように、シリルヒドリドとシロキサンとの反応を触媒する。本発明の組成物は、B-FLP、シリルヒドリド、及びシロキサンを一緒に混合することによって、ステップ(a)において提供され得る。上述したように、シリルヒドリド及びシロキサンは、同じ分子であってもよい。
【0055】
化学反応プロセスは、ステップ(a)で提供される組成物の重量に基づいて、水の非存在下で、又は1重量パーセント(重量%)以下、0.75重量%以下、0.5重量%以下、0.25重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下若しくは更には0.01重量%以下である水の濃度で実行することができる。
【0056】
組成物は、例えば、熱トリガされる硬化反応を起こすコーティング剤として、又は流体が金型内に配置され、加熱されて硬化をトリガして成形物品を形成する、成形用途のための反応性組成物としての用途を有する。このような用途では、本発明のプロセスは、ステップ(a)の後及びステップ(b)の前に、組成物が、基材に塗布されるか、又は金型内に配置されるステップを更に含む。
【実施例】
【0057】
B-FLP(1)の調製
グローブボックス内で、電磁撹拌棒を装着したシュレンクフラスコに、トリ(t-ブチル)ホスフィン(200ミリグラム(mg)、1.0ミリモル(mmol)、1当量(equiv))及びトリス-ペンタフルオロフェニルボラン(500mg、1mmol、1当量)を入れ、成分を10ミリリットル(mL)のトルエンに溶解する。シュレンクフラスコを封止し、グローブボックスから取り出す。シュレンクフラスコをシュレンクラインに接続する。次のステップの間ずっと、シュレンクフラスコの内容物を撹拌する。シュレンクラインを窒素でパージし、次いで、ライン中の二酸化炭素を2分間気泡化する。シュレンクフラスコを二酸化炭素雰囲気にさらし、次いで、セプタムでフラスコのキャップを交換する。セプタムを通して針を挿入し、二酸化炭素ガスの出口を作りだし、二酸化炭素循環を改善する。5分後、反応混合物から白色固形物が沈殿する。フラスコを封止し、室温で更に1時間撹拌する。フラスコをグローブボックスに移動させる。20mLのヘキサンを添加し、ガラスフリットを通した濾過によって白色固形物を分離する。白色固形物をヘキサンで3回洗浄する(各時間10m)。白色固形物は、B-FLP(1)(540mg、収率71%)である。B-FLP(1)は、UV光に曝露されたときでも分解せずに保存することができる。
1H、
31P、及び
11B核磁気共鳴分光法(NMR)によって固形物を特性決定して、不純物及び出発材料の不存在を確認する。B-FLP(1)の予想される反応及び構造は、以下のとおりである。
【化4】
【0058】
比較例(Comp Ex)A:ルイス酸なし
最大10gの歯科用カップに5.0gのMHDH
8D20MH(GelestからHMS-271として入手可能)を添加する。材料を、FlackTek SpeedMixerで毎分3500回転(rpm)で1分間回転させる。得られた材料をアルミニウムパンに注ぎ、ホットプレート上で100℃に加熱する。2分後気泡ははっきりと見られず、反応がないことを示している。材料を23℃で2週間放置しても、硬化は依然としてはっきりと見られない。比較例Aは、23℃又は100℃のいずれかでMHDH
8D20MHを硬化させる硬化触媒に対する必要性を示す。
【0059】
比較例B:比較例A+BCF
MHD376MHの百万重量部当たり0.0253gのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(「BCF」)を含む以外は、比較例Aを繰り返す。たとえ100℃に加熱しなくても、回転後に混合物をアルミニウムパンに注ぐと、気泡ははっきりと見られる。混合物を加熱せずに23℃で放置し、23℃で2時間以内に硬質材料に硬化させた。比較例Bは、23℃でもルイス酸触媒の存在下でMHD376MHが急速に硬化することを示す。
【0060】
実施例(Ex)1:比較例A+B-FLP(1)
0.0253gのBCFの代わりに0.253gのB-FLP(1)を使用する以外は、比較例Bを繰り返す。混合物を23℃で14日間放置した後、依然として硬化せず、又は反応の兆候も示さなかった。試験中、組成物は、周囲(紫外線を含む)光にさらされる。混合物をホットプレース上で100℃に加熱し、2分以内に気泡が形成し始めることは、反応が起こっていたことを示していた。ホットプレート上で5分後、混合物を取り出し、23℃で放置した。混合物は、24時間以内に硬く硬化した。
【0061】
実施例2:混合反応物
最大10gの歯科用カップに、0.243gのB-FLP(1)、2.5gのMHDH
8D20MH(GelestからHMS-271として市販されている)及び2.5gのMD80M(Dow Chemical Companyから、XIAMETER(商標)100センチストーク(cSt)PMX-200流体として市販されている)を添加し、混合する。FlackTek SpeedMixerで3500rpmで1分間成分を一緒に回転させて、混合物を形成する。混合物をアルミニウムパンに注ぎ、23℃で放置する。14日後、反応又は硬化の兆候は存在しない。試験中、組成物は、周囲(紫外線を含む)光にさらされる。アルミニウムパン中の混合物を100℃に加熱する。2分後気泡ははっきりと見られ、反応が起こっていることを示している。5分間加熱した後、ホットプレートから混合物及びアルミニウムパンを取り出し、23℃で放置する。混合物は、48時間以内に硬化する。
【0062】
実施例3:混合反応物
最大10gの歯科用カップに、0.243gのB-FLP(1)、2.5gのMHDH
8D20MH(GelestからHMS-271として市販されている)及び2.5gのMD185M(Dow Chemical Companyから、XIAMETER(商標)350cSt PMX-200流体として市販されている)を添加し、混合する。FlackTek SpeedMixerで3500rpmで1分間成分を一緒に回転させて、混合物を形成する。混合物をアルミニウムパンに注ぎ、23℃で放置する。14日後、反応又は硬化の兆候は存在しない。試験中、組成物は、周囲(紫外線を含む)光にさらされる。アルミニウムパン中の混合物を100℃に加熱する。2分後気泡ははっきりと見られ、反応が起こっていることを示している。5分間加熱した後、ホットプレートから混合物及びアルミニウムパンを取り出し、23℃で放置する。混合物は、36時間以内に硬化する。
【0063】
実施例1~3は、B-FLPが反応系に潜在性触媒を提供して、23℃で貯蔵安定性がある反応系を提供することができるが、加熱されるとルイス酸触媒が放出され、混合物を再び23℃に冷却しても、継続する反応を起こすことを示しており、加熱すると不可逆的に非ブロックされるブロック触媒をB-FLPが提供することを示している。