(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20240925BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61F13/534 100
A61F13/534 200
A61F13/539
(21)【出願番号】P 2021572734
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2021001639
(87)【国際公開番号】W WO2021149669
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2024-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2020009521
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 建偉
(72)【発明者】
【氏名】恩田 藍子
(72)【発明者】
【氏名】蔵前 亮太
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-081652(JP,A)
【文献】特開2018-050987(JP,A)
【文献】特開2000-238161(JP,A)
【文献】特開2011-078476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シート、裏面シート、及びこれらのシート間に配された吸収体を備え、
前記表面シートは、前記吸収体における肌対向面を被覆しているとともに、該吸収体の各側縁から側方にそれぞれ延出した一対の延出部を有し、該各延出部が該吸収体の各側縁でそれぞれ折り返されて該吸収体における非肌対向面の各側部をそれぞれ被覆しており、
前記各延出部は、前記吸収体と非肌対向面において隣接する非肌側部材にそれぞれ接合されており、
前記吸収体は、同一の又は異なる
第1繊維シート
及び第2繊維シートと、該
第1繊維シート
及び該第2繊維シート間に配された吸収性ポリマーの粒子とを備えた吸収性シートを有しており、
前記吸収性シートは、1.7kPaの圧力付与下にて測定された厚みが0.3mm以上4mm以下であり、
前記吸収性シートは、前記両繊維シートが接着剤によって接合されており、
前記吸収性ポリマーが配されている領域において、該吸収性ポリマーは、巨視的に視認され得る隙間が観察されない態様で配されており、
前記領域において、両繊維シートが、前記吸収性ポリマーを介さずに前記接着剤によって直接に接合された直接接合部位と、該両繊維シートが、該吸収性ポリマーを介して該接着剤によって接合された部位とを有し、
前記直接接合部位は、これを前記吸収性シートの厚み方向に断面視したとき、前記接着剤が柱状となって前記両繊維シートどうしを直接接合しており、
第1繊維シートにおける第2繊維シートとの接合領域に、前記接着剤が非塗布部を有するように不連続に塗布されており、且つ該第2繊維シートにおける該第1繊維シートとの接合領域の全域に、該接着剤が隙間なく連続して塗布されており、
前記吸収性シートの第1繊維シート側における外面を、受液面として用い、
前記吸収体における各側縁に沿って、該吸収体と前記表面シートとの間に、弾性部材がそれぞれ配されており、
前記各弾性部材の収縮によって、前記吸収体は、該吸収体と前記非肌側部材との接合位置を起点として、該吸収体の各側部がそれぞれ起立可能になされており、
前記吸収体のうち、前記各弾性部材の収縮によって起立可能な部位に、前記吸収性シートが少なくとも存在している、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性シートにおける、前記
両繊維シートを含めない形成材料の80質量%以上が吸収性ポリマーである、請求項
1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体が、前記吸収性シートとは別構造の補助層を更に有する、請求項1
又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記補助層が、前記吸収体のうち、前記起立可能な部位間に配されている、請求項
3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、前記吸収性物品の幅方向の中央域における剛性値が、前記吸収性シート単独での剛性値の2倍以上である、請求項
4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記補助層は、少なくとも吸水性天然繊維及び吸収性ポリマーを含む混合積繊体からなる、請求項
3ないし
5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性シートにおける前記
両繊維シート以外の吸液性材料と、前記補助層における吸液性材料との合計量に対する吸収性ポリマーの質量比をFSRと定義したとき、
前記吸収体のうち、前記起立可能な部位におけるFSRが、該起立可能な部位間の部位におけるFSRよりも大きい、請求項
6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記補助層が、前記吸収性物品の長手方向に延びる低剛性部位を有し、
前記低剛性部位は、前記吸収体のうち、前記起立可能な部位間に位置している、請求項
3ないし
7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
吸液の前後における厚み変化量が、前記吸収性シートよりも、前記補助層の方が大きい、請求項
3ないし
8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収体における前記起立可能な部位は、該吸収体の側縁を基準として内方に向けて少なくとも75%の長さの領域に前記吸収性シートが位置している、請求項1ないし
9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
粘弾性測定によって得られる前記接着剤の緩和時間が、50℃において1秒以上である、請求項
1ないし10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
第2繊維シートにおける前記接着剤の塗布面積が、
第1繊維シートにおける前記接着剤の塗布面積よりも大きく、
前記接着剤が塗布された部位において、
第1繊維シートにおける該接着剤の坪量は、
第2繊維シートにおける該接着剤の坪量よりも高い、請求項
1ないし
11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収性シートの、下記式(1)で算出される吸液前後の厚み変化量あたりの曲げ剛性変化率をBRとした場合、互いに直交する二方向及び該二方向と直交せずに交差する他の方向の三方向から任意に選択される二方向の該BRが、それぞれ5.0/mm以下である、請求項
1ないし
12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
BR=(B
w/B
d)/T0
c (1)
B
w:前記吸収性シートの吸液後の曲げ剛性
B
d:前記吸収性シートの吸液前の曲げ剛性
T0
c:下記式(2)で算出される前記吸収性シートの吸液前後の厚み変化量
T0
c=T0
w-T0
d (2)
T0
w:前記吸収性シートの吸液後の4.9mN/cm
2荷重下での厚み
T0
d:前記吸収性シートの吸液前の4.9mN/cm
2荷重下での厚み
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の着用状態において、股下部でのフィット性や漏れ防止性を高める目的で、吸収体を変形させる技術が知られている。例えば特許文献1には、使い捨ておむつの吸収体を中央吸収体と一対のサイド吸収体とから構成し、吸収体の両側にサイド吸収体立ち上げ用の弾性部材を配することが記載されている。このおむつによれば、着用状態においてサイド吸収体が弾性部材の収縮力によって立ち上がるので、股下部の幅が狭くなってフィット感が良好になるとともに、立ち上がったサイド吸収体によって横漏れが起こりづらくなるという利点がある。
【0003】
吸収体を薄型化することによっておむつのフィット性を高める技術も提案されている。例えば特許文献2には、上層吸収体及び下層吸収体の2層からなる吸収体を備えた使い捨ておむつにおいて、上層吸収体をパルプ及び吸収性ポリマーから構成し、下層吸収体を2枚のシート間に吸収性ポリマーが配置されたものから構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-341061号公報
【文献】特開2018-50987号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の吸収性物品は、表面シート、裏面シート、及びこれらのシート間に配された吸収体を備える。
前記表面シートは、前記吸収体における肌対向面を被覆しているとともに、該吸収体の各側縁から側方にそれぞれ延出した一対の延出部を有し、該各延出部が該吸収体の各側縁でそれぞれ折り返されて該吸収体における非肌対向面の各側部をそれぞれ被覆している。
前記各延出部は、前記吸収体と非肌対向面において隣接する非肌側部材にそれぞれ接合されている。
前記吸収体は、同一の又は異なる2枚の繊維シートと、該繊維シート間に配された吸収性ポリマーの粒子とを備えた吸収性シートを有する。
前記吸収体における各側縁に沿って、該吸収体と前記表面シートとの間に、弾性部材がそれぞれ配されている。
前記各弾性部材の収縮によって、前記吸収体は、該吸収体と前記非肌側部材との接合位置を起点として、該吸収体の各側部がそれぞれ起立可能になされている。
前記吸収体のうち、前記各弾性部材の収縮によって起立可能な部位に、前記吸収性シートが少なくとも存在している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態としてのパンツ型おむつの模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すおむつをサイドシール部で切り離して展開し、各部の弾性部材を伸長させて平面状に拡げた状態について一部破断して示す模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すおむつにおける吸収体の概略構成を説明する模式的な幅方向断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線断面を模式的に示す横断面図である。
【
図5】
図5は、
図2のV-V線断面を模式的に示す横断面図である。
【
図6】
図6(a)は吸収体の吸液前の状態を模式的に示す拡大図であり、(b)は吸収体の吸液後の状態を模式的に示す拡大図である。
【
図7】
図7は、着用時における本発明の実施形態の座った状態を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、吸収体の変形例の概略構成を説明する模式図である。
【発明の詳細な説明】
【0007】
上述のとおり、おむつの着用状態におけるフィット性を高める技術は種々知られているが、液を吸収した後であってもフィット性が維持され且つ着用状態での違和感が生じにくいおむつはこれまで提案されていなかった。
したがって本発明は、液を吸収した後であっても吸収体が柔軟であり、着用状態での違和感が生じにくい吸収性物品に関する。
【0008】
以下に、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態は吸収性物品の一例としての使い捨ておむつ(以下、「おむつ」ともいう。)に係るものである。
図1ないし
図5に示すように、おむつ1は、いわゆるパンツ型のものであり、表面シート2、裏面シート3、及びこれらのシート間に配された液保持性の吸収体4を備えた吸収性本体5を具備する。表面シート2は液透過性のものである。裏面シート3は、液不透過性ないし液難透過性のものである。更におむつ1は、吸収性本体5の非肌当接面側に外装体10を具備する。
吸収性本体5は、
図1及び
図2に示すように、全体として、おむつ1の長手方向Xに沿って略縦長の矩形状の平面視形状をなしており、その全体が、ティッシュペーパーや透水性の不織布からなる透水性の被覆シート(図示せず)で被覆されている。
おむつ1は、
図2に示すように、着用時に着用者の腹側に配される腹側部Aと、着用者の背側に配される背側部Bと、その間に位置する股下部Cとに区分される。
【0009】
本明細書において、「非肌当接面側」とは、吸収性本体などの各部材の表裏両側(面)のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に配される側(面)である。また、以下、「肌当接面側」という語句を使用することがあるが、これは、各部材の表裏両側(面)のうち、着用時に着用者の肌側に配される側(面)である。「長手方向X」とは、各部材の長辺と平行な方向である。また、以下、「幅方向Y」という語句を使用することがあるが、これは、該長手方向Xと直交する方向である。
【0010】
図2に示すように、吸収性本体5は縦長の矩形形状をなし、その長手方向Xを、おむつの長手方向Xに一致させて、腹側部Aから背側部Bまでに亘るように、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段により外装体10の幅方向中央部に接合されている。外装体10は、腹側部Aに位置する部分の両側部と背側部Bに位置する部分の両側部とが、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等の公知の接合方法によって互いに接合されることで、
図1に示すように一対のサイドシール部が形成されている。また、その接合によって、おむつ1に、ウエスト開口部7及び一対のレッグ開口部8,8が形成されている。
【0011】
外装体10は、おむつの輪郭を成している。平面視における外装体のうち、長手方向Xの中央域は両側縁が幅方向Yの中央へ向けて湾曲している。この領域が股下部Cである。股下部Cから長手方向Xの前後に延出した領域が腹側部A及び背側部Bである。
外装体10は、
図2、
図4及び
図5に示すように、2枚の外装体形成用シートと、これら2枚のシート間に固定された各部の弾性部材とからなる。
図5は、弾性部材が収縮した自然状態を示す図である。2枚の外装体形成用シートを構成する外層シート11と内層シート12との間には、ウエスト開口部7の周縁部にウエストギャザーを形成するウエスト弾性部材71、レッグ開口部8の周縁部にレッグギャザーを形成するレッグ弾性部材81、及び胴周り部D(ウエスト開口部7の周縁端から下方に離間した位置からレッグ開口部8の上端までの領域)に左右に分割された状態の胴周りギャザーを形成する胴周り弾性部材91が、それぞれ伸長状態で、ホットメルト接着剤等の接合方法により接合固定されている。
【0012】
外層シート11及び内層シート12は、好ましくはいずれも通気性の不織布から構成されている。これら2枚のシートのうち、非肌当接面側に位置する外層シート11は、その長手方向Xにおいて、肌当接面側に位置する内層シート12の前後端縁からそれぞれ延出した延出部を有する。これらの延出部はそれぞれ、内層シート12上に吸収性本体5が配置された後、吸収性本体5の前後端部(長手方向Xの両端)を覆うように吸収性本体5側に折り返されて接着されている。
【0013】
図4に示すように、表面シート2は、吸収体4における肌対向面を被覆している。これに加えて、表面シート2は、吸収体4の幅方向Yの各側縁4c,4dから幅方向Y外方にそれぞれ延出した一対の延出部2a,2bを有している。表面シート2の各延出部2a,2bは、吸収体4の各側縁4c,4dでそれぞれ折り返されて吸収体4における非肌対向面の各側部4e,4fをそれぞれ被覆している。表面シート2の各延出部2a,2bは、吸収体4と非肌対向面において隣接する非肌側部材としての裏面シート3にそれぞれ接合されている。
表面シート2は、その両側縁部21,21において、裏面シート3及び防漏カフ形成用シート60に接合固定されて、接合位置となる本体接合固定部67,67を形成している。本体接合固定部67は、ヒートシール、高周波シール、超音波シール、ホットメルト型の接着剤等の公知の接合手段を用いて、防漏カフ形成用シート60と表面シート2の側縁部21と裏面シート3とを接合することにより形成されている。
【0014】
外装体10の肌当接面側には、防漏カフ形成用シート60及び吸収性本体5が順次接合されている。外装体10と防漏カフ形成用シート60とは、外装体接合固定部13によって接合されている。外装体接合固定部13は、本体接合固定部67よりもおむつ幅方向外方の位置に配されている。これら各部材の接合には、ホットメルト接着剤等の接合方法が利用できる。
【0015】
吸収性本体5の幅方向Yの両側には、一対の防漏カフ6,6が形成されている。防漏カフ6は、おむつ長手方向Xへ延びるように形成されており、防漏カフ形成用シート60、複数本の防漏カフ形成用の弾性部材61及び1本の防漏カフ引き寄せ用の弾性部材62を備えている。防漏カフ形成用シート60は吸収性本体5に接合されている。防漏カフ形成用の弾性部材61は、防漏カフ形成用シート60の自由端近傍に伸長状態で固定されている。防漏カフ引き寄せ用の弾性部材62は、防漏カフ6の固定端を構成する本体接合固定部67と、自由端との間に伸長状態で固定されている。防漏カフ引き寄せ用の弾性部材62は、防漏カフ6における防漏カフ形成用の弾性部材61と本体接合固定部67との間に、防漏カフ形成用シート60(防漏カフ6)の長手方向全体に連続して配されている。
【0016】
本実施形態においては、防漏カフ形成用シート60として、所定幅の帯状の撥水性シート1枚を、その長手方向Xに沿う折り曲げ軸で二つ折りして、相対向する層間をホットメルト接着剤又は部分的な熱シール若しくは超音波シール等で接合した2層構造のシートを用いている。防漏カフ形成用の弾性部材61及び1本の防漏カフ引き寄せ用の弾性部材62は、この2層構造シートの層間に伸長状態で固定されている。
【0017】
防漏カフ形成用シート60は、
図2に示すように、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、より具体的には、吸収性本体5の長手方向Xの両端部それぞれにおいて、吸収性本体5の肌当接面側を覆った状態で、該吸収性本体5の肌当接面と当接している。防漏カフ形成用シート60は、吸収性本体5との接合部以外の部分おいて吸収性本体5と非接合状態となっている。その結果、防漏カフ6は、
図5に示すように、少なくとも股下部Cにおいて起立可能になっている。上述のとおり、防漏カフ6の自由端(防漏カフ形成用シート60の折り返し端)近傍には、複数本の防漏カフ形成用の弾性部材61が、吸収性本体5の幅方向Yに並べた状態で、防漏カフ形成用シート60(防漏カフ6)の長手方向全体にわたって固定されている。斯かる構成により、起立した防漏カフ6の先端部分が着用者の肌に面接触するようになる。その結果、おむつ1の体への密着性が高まって防漏性能が向上するとともに、防漏カフ6を肌にやさしく接触させることが可能となる。
【0018】
おむつ1においては、吸収体4における各側縁4c,4dに沿って、吸収体4と表面シート2との間に、弾性部材9がそれぞれ配されている。弾性部材9は一方向に伸長状態で固定されることで、同方向に伸縮可能に配されている。弾性部材9は、吸収体立ち上げ用の弾性部材であって、おむつ1の展開状態において防漏カフ6側の弾性部材62よりもおむつ幅方向内方の位置にそれぞれ設けられている。これにより、吸収体4は、股下部Cにおける幅方向Yの両側部4e,4fが起立するように構成されている。すなわち、一対の弾性部材9の収縮によって、
図5に示すように、吸収体4は、吸収体4と裏面シート3との接合位置となる本体接合固定部67,67を起点として、吸収体4の各側部4e,4fがそれぞれ起立可能に構成されている。
【0019】
吸収体4は、吸収性シート42と、吸収性シート42とは別構造の補助層41を有している。吸収性シート42は、後述する
図6(a)及び(b)に示すように、第1繊維シート421と第2繊維シート422との2枚のシートを最外面に有している。補助層41は吸収性シート42の上面に積層されて吸収性シート42の幅方向Yの中央部に配されている。おむつ1においては、吸収体4のうち、各弾性部材9の収縮によって起立可能な部位に、吸収性シート42が少なくとも存在するようになされている。本実施形態において、吸収体4の起立可能な部位とは、
図3に示すように、吸収体4の幅方向Yにおいて吸収体4が最も外方に突出したときの、本体接合固定部67,67から表面シート2の幅方向Y外方に位置する部位2c,2dまでの領域にある部位である。吸収性シート42を基準に述べると、本体接合固定部67,67との接合箇所から、本体接合固定部67,67よりも外側に位置する吸収性シート42の両側縁42a,42bの外に存在している表面シート2の部位2c,2dまでの直線距離区間Lに位置する部位である。本実施形態において、吸収体4の各側部4e,4fが、この直線距離区間Lに位置する部位となる。
【0020】
従来の使い捨ておむつは、着用状態において股下部Cのだぶつきが大きいので、足が動かしにくく、装着感がよくなかった。従来、吸収体4自体の厚みを薄くする技術はあるものの、吸収体4の薄型化とともに、吸収体4の各側部4e,4fの起立性向上に着目したものはない。更に、吸収体4の各側部4e,4fを起立させる技術はあるが、吸収体4を薄くする技術を用いて、吸収後の装着違和感を改善することに着目した技術もない。
【0021】
これに対し、本実施形態のおむつ1は、吸収体4のうち、弾性部材9,9の収縮によって本体接合固定部67,67を起点として起立可能な部位となる側部4e、4fに、吸収性シート42が存在しているので、吸収体4の幅方向Y両側部4e,4fの吸液後の厚さ変化を抑制できる。このことに起因して、吸収体4の肌当接面側の面4a及び非肌当接面側の面4bが吸液後であっても柔軟であり、着用状態での違和感が生じにくいおむつ1を提供できる。
【0022】
また、
図7に示すように、防漏カフ6に防漏カフ引き寄せ用の弾性部材62が設けられているので、該弾性部材62による収縮力によって、防漏カフ6における、防漏カフ形成用の弾性部材61が存在する自由端と、固定端を構成する外装体接合固定部13との間の領域が着用者の足周り側に引っ張られる。このことに起因して、防漏カフ形成用シート60に接合された表面シート2を介して、吸収体4の幅方向Y両側部を構成する吸収性シート42の側部4e,4fが着用者の足周り側に引っ張られ、足周りに沿いやすくなる。更に、吸収性シート42の側部4e,4fが起立して足周り側に引っ張られることで、幅方向中央部に位置する補助層41も幅方向外方に引っ張られ、補助層41の形状が安定する(保形性向上)。その結果、股下部Cのすっきり感が向上し、防漏性能も向上する。
【0023】
また、外装体接合固定部13が、本体接合固定部67よりおむつ幅方向外方の位置に配されているので、レッグ開口部8に配されたレッグ弾性部材81の収縮力によって、外装体10が幅方向外方に引っ張られると、外装体接合固定部13、防漏カフ形成用シート60及び本体接合固定部67を介して吸収体4(吸収性シート42、補助層41)も幅方向外方に効率的に引っ張られる。その結果、股下部Cのすっきり感や防漏性能が更に向上する。
【0024】
本実施形態においては、吸収体4が有する吸収性シート42とは別構造の補助層41が、起立可能な部位間Ya(
図3参照)に配されているので、両側部4e,4fの起立が補助層41によって阻害されることがなく、着用状態での違和感がより生じにくくなる。更に、補助層41による吸液が行われるので、吸収性シート42による吸液が少なく、吸液後の吸収性シート42の厚み変化を抑制することとなり、保形性がよく、吸液性を確保しながら、着用状態での違和感がより生じにくくなるので好ましい。更に、吸収体4の肌当接面側の面4a及び非肌当接面側の面4bが吸液後においても柔らかく、装着時の擦れ感を低減することができるので好ましい。
【0025】
吸収体4は、おむつ1の中央域における剛性値が、吸収性シート42が単独での剛性値の2倍以上に設定されていることが好ましい。こうすることで、おむつ1の装着状態において、起立可能な部位である側部4e,4fが股下部Cにおいて起立した場合でも、その剛性を確保することができ、保形性がよいという利点を生じる。おむつ1の中央域における剛性値は、吸収性シート42が単独での剛性値の好ましくは2.0倍以上、より好ましくは3.0倍以上、更に好ましくは4.0倍以上であると、保形性が一層向上する。
【0026】
吸収性シート42の厚みは、液吸収性向上の観点から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.6mm以上である。また、吸収性シート42を含む吸収性物品を使用したときの使用者の使用感向上の観点から、吸収性シート42の厚みは、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下、更に好ましくは2mm以下である。上述した吸収性シート42の厚みは、1.7kPaの圧力付与下にて測定された吸収性シート全体の厚みである。
【0027】
補助層41は、例えば合成繊維及び/若しくは吸水性天然繊維の積繊体、又は、合成繊維及び/若しくは吸水性天然繊維と吸収性ポリマーの粒子との積繊体から構成される。特に補助層41は、フラッフパルプと吸収性ポリマーの粒子との混合積繊体から構成されることが、吸収体4の吸収容量を高める点から好ましい。補助層41が例えばフラッフパルプと吸収性ポリマーの粒子との混合積繊体から構成される場合、吸収性ポリマーの坪量は、好ましくは65~800g/m2、より好ましくは70~600g/m2であり、フラッフパルプの坪量は、好ましくは80~600g/m2、より好ましくは100~400g/m2である。
【0028】
本実施形態においては、吸収体4を構成する吸収性シート42における各繊維シート421,422以外の吸液性材料と、該吸収体4を構成する補助層41における吸液性材料との合計量に対する吸収性ポリマーの質量比をFSRと定義したとき、吸収体4のうち、起立可能な部位である側部4e,4fにおけるFSRが、該起立可能な部位間の部位4gにおけるFSRよりも大きくなされていることが好ましい。こうすることで、吸収体4の幅方向両側部4e,4fよりも中央部の吸液性が高くなり、吸液後であっても、高い保形性が維持されやすい。
【0029】
上述の利点を一層顕著にする観点から、部位4gにおけるFSRに対する側部4e,4fにおけるFSRの比率は、1.1以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましい。また、該比率は、5.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましい。特に、該比率は1.1以上5.0以下であることが好ましく、1.3以上3.5以下であることがより好ましい。「吸収性シート42における繊維シート421,422以外の吸液性材料」とは、吸収性シート42における繊維シート421,422以外の繊維材料、及び吸収性ポリマーのことである。「補助層41における吸液性材料」とは、補助層41に含まれる繊維材料、及び吸収性ポリマーのことである。
【0030】
補助層41の構成材料の総質量に対する該補助層41の吸収性ポリマーの含有質量の比率をPR1とし、吸収性シート42の構成材料の総質量に対する該吸収性シート42の吸収性ポリマーの含有質量の比率をPR2としたときに、PR1に対するPR2の比率(PR2/PR1)は、1.1以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましい。また、該比率は、5.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましい。特に、該比率は1.1以上5.0以下であることが好ましく、1.3以上3.5以下であることがより好ましい。
【0031】
吸収体4は、吸液の前後における厚み変化量が、吸収性シート42よりも、補助層41の方が大きくなされていることが好ましい。このように構成することで、
図6(b)に示すように、吸液後における吸収性シート42の厚み変化を補助層41に比べて抑制することができる。その結果、吸収体4の肌当接面側の面4a及び非肌当接面側の面4bが吸液後においても柔らかく、装着時の擦れ感を低減することができるので好ましい。また吸収体4の中央部における、保形性が向上するので好ましい。
この効果を一層顕著にする観点から、補助層41における厚み変化量から吸収性シート42における厚み変化量を引いたときの差は、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。また、補助層41における厚み変化量と吸収性シート42における厚み変化量との差は、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましい。特に、補助層41における厚み変化量と吸収性シート42における厚み変化量との差は1mm以上20mm以下であることが好ましく、2mm以上15mm以下であることがより好ましい。
【0032】
補助層41又は吸収性シート42における厚み変化量T0cは、次の式から求めることができる。
T0c=T0w-T0d
T0w:補助層41又は吸収性シート42の吸液後の4.9mN/cm2荷重下での厚み
T0d:補助層41又は吸収性シート42の吸液前の4.9mN/cm2荷重下での厚み
【0033】
吸収性シート42の厚み変化量T0cは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、好ましくは25mm以下、より好ましくは15mm以下である。また、厚み変化量T0cは、好ましくは0.5mm以上25mm以下、より好ましくは1mm以上15mm以下である。
吸収性シート42の吸液前の厚みT0dは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。吸液前の厚みT0dは、また、好ましくは0.1mm以上5mm以下、より好ましくは0.3mm以上3mm以下である。
吸収性シート42の吸液後の厚みT0wは、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは15mm以下である。また、吸液後の厚みT0wは、好ましくは1mm以上30mm以下、より好ましくは2mm以上15mm以下である。
【0034】
補助層41の厚み変化量T0cは、好ましくは2mm以上、より好ましくは4mm以上であり、好ましくは45mm以下、より好ましくは35mm以下であり、また、好ましくは2mm以上45mm以下、より好ましくは4mm以上35mm以下である。
補助層41の吸液前の厚みT0dは、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上であり、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下であり、また、好ましくは1mm以上15mm以下、より好ましくは3mm以上12mm以下である。
補助層41の吸液後の厚みT0wは、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上であり、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下であり、また、好ましくは5mm以上50mm以下、より好ましくは10mm以上30mm以下である。
【0035】
次に、吸液前後の厚み変化量T0cの測定方法について説明する。
測定装置として、カトーテック株式会社製のKES-G5ハンディー圧縮試験機を用いる。サンプルを測定装置の試験台に取りつけ、面積2cm2の円形平面を持つ合板間でサンプルを圧縮することで、サンプルに4.9mN/cm2(=0.5gf/cm2)の荷重をかけ、その状態でサンプルの厚みを測定する。圧縮速度は0.5mm/sec、圧縮最大荷重は490mN/cm2(=50gf/cm2)とする。
吸液前の4.9mN/cm2荷重下での厚みT0d(mm)を測定する場合、乾燥状態のサンプルをそのまま測定サンプルとして使用する。
吸液後の4.9mN/cm2荷重下での厚みT0w(mm)を測定する場合、乾燥状態のサンプルを生理食塩水に30分浸した後、キムタオル等の吸水性シートを用いて、サンプルから水分が漏出しない程度に水分をふき取ったもの(吸液後サンプル)を測定サンプルとして使用する。
吸液後の厚みT0w(mm)から吸液前の厚みT0
d
(mm)を差し引く(T0w-T0d)ことにより、吸液前後の厚み変化量T0c(mm)を算出する。
【0036】
図3に示すように、幅方向Yに沿う補助層41の長さL1は、本体接合固定部67,67間の長さL2よりも長くなるように設けられている。詳細には、本体接合固定部67,67に対して補助層41の両側縁41a,41bが幅方向Yに突出している。このため、補助層41は、起立可能な部位の長さLよりも幅方向Yにおける補助層41の両側縁41a,41bから表面シート2の部位2c,2dまでの長さL3が短くなるように形成されている。
吸収体4における起立可能な部位となる幅方向側部4e,4fは、吸収体4の幅方向側縁4c、4dを基準として内方に向けて少なくとも75%の長さの領域に吸収性シート42が占めるように位置していることが好ましい。すなわち、吸収体の幅方向側部4e,4fは、吸収性シート42が存在し、且つ補助層41が存在しない領域を有することが好ましい。こうすることで、起立性を阻害することなく、吸液性を確保できる。この利点を一層顕著にする観点から、吸収性シート42が占める割合は、好ましくは78%以上、より好ましくは82%以上、更に好ましくは85%以上とする。
【0037】
補助層41は、
図8に示すように、おむつ1の長手方向Xに延びる低剛性部位となる凹部45を有していてもよい。この場合、凹部45を、吸収体4のうち、起立可能な部位間Yaに位置するように、補助層41に形成してもよい。補助層41において、凹部45を形成した箇所は、凹部45を形成していない部位よりも繊維及び吸収性ポリマーの単位面積当たりの量が少なく、剛性が低い低剛性部位を成している。このため、装着後の股下部Cにおいて、補助層41が幅方向Yにおいて変形しやすくなるので、保形性を維持しつつもごわつき感を低減することができるので好ましい。
【0038】
上述した実施形態においては、弾性部材9,9を表面シート2と吸収性シート42の間に配したが、この実施形態以外の配置も可能である。
【0039】
次に吸収性シート42の構成について説明する。
吸収性シート42は、同一の2枚の繊維シート421と繊維シート422が接着剤425によって接合されている。
図6(a)及び(b)に示す実施形態における接着剤425は、繊維シート421と、繊維シート422における吸収性ポリマー423に対向する面にそれぞれ配されている。
図6(a)は吸液前の吸収体4の状態を模式的に示し、
図6(b)は吸液後の吸収体4の状態を模式的に示す。同図において、矢印Zは、吸収体4の厚み方向を示す。
【0040】
吸収性シート42は、これを平面視したときに、吸収性ポリマー423が配されている領域において、吸収性ポリマー423が、巨視的に視認され得る隙間が観察されない態様で配されている。「巨視的に視認され得る隙間が観察されない」とは、吸収性ポリマー423が散布されている領域を肉眼でみたときに、吸収性ポリマー423が繊維シートの一方の面を満遍なく被覆するように配されているが、該領域を微視的に見たときに、吸収性ポリマー423どうしの間の空隙が意図せず形成されることは許容される趣旨である。この空隙は、概ね10~1000μm程度である。以下の説明では、吸収性ポリマー423が散布されている領域において微視的に観察される吸収性ポリマー423どうしの間の空隙を、「微視的空隙」ともいう。
【0041】
吸収性ポリマー423が散布されている領域において、繊維シート421及び繊維シート422は、吸収性ポリマー423を介さずに、接着剤425によって直接接合されている部位427(以下、これを「直接接合部位427」ともいう。)を有する。直接接合部位427は、上述した微視的空隙にそれぞれ形成されている。直接接合部位427は、これをシートの厚み方向Zに断面視したときに、接着剤425が柱状となって両各繊維シート421,422どうしを直接接合している。直接接合部位427は、吸収性シート42をシート平面方向に視たときに、規則的な又は不規則的な散点状となって複数形成されている。直接接合部位427が形成されていることによって、吸収性ポリマー423を吸収性シート42の所定の位置に保持させつつ、吸収性ポリマー423の液吸収性を十分に発揮させることができる。直接接合部位427は、例えば後述するように、吸収性ポリマー423の坪量や粒径、あるいは接着剤425の塗布量及び面積を適宜調整することによって形成できる。
【0042】
吸収性シート42は、直接接合部位427に加えて、両各繊維シート421,422が吸収性ポリマー423を介して接着剤425によって接合された部位428(以下、これを「間接接合部位428」ともいう。)を有することが好ましい。間接接合部位428は、吸収性シート42を断面視したときに、繊維シート421における接着剤425の塗布部位、吸収性ポリマー423の存在部位、及び繊維シート422における接着剤425の塗布部位がそれぞれシート厚み方向Zで重なっている。このような構成となっていることによって、吸収性ポリマー423を吸収性シート42の所定の位置に保持させることができ、吸収性ポリマー423の意図しない移動や偏在をより低減できるとともに、吸収性シート42の液吸収性をより高めることができる。
【0043】
接着剤425としては、吸収性ポリマー423の液吸収に伴う膨潤変化に追随して伸長し得る柔軟性を有するものを用いることが好ましい。このような原料としては、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、シアノアクリレート、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル等をはじめとするビニルモノマーの(共)重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体など)等を一種以上含有するアクリル系接着剤、ポリジメチルシロキサンポリマー重合体等を含有するシリコーン系接着剤、並びに、天然ゴム等を含む天然ゴム系接着剤、ポリイソプレン、クロロプレン等を一種以上含有するイソプレン系接着剤、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)を一種以上含有するスチレン系接着剤等といった、ゴム系接着剤等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
図6(a)及び(b)に示すように、接着剤425が、各繊維シート421,422における吸収性ポリマー423に対向する面にそれぞれ配されている場合、繊維シート421に配されている接着剤と、繊維シート422に配されている接着剤とは、同種であってもよく、異種であってもよい。
【0044】
これらのうち、柔軟性及び伸縮性に優れ、吸収性ポリマー423の膨潤後においても各繊維シート421,422間が直接接合された状態を維持しておくとともに、収縮力を発現させて、両各繊維シート421,422間に吸収性ポリマー423を保持させやすくする観点から、接着剤425としてゴム系接着剤を用いることが好ましく、またゴム系接着剤のうちスチレン系接着剤を用いることがより好ましい。
【0045】
接着剤の柔軟性と、シートへの接着性とを両立させる観点から、接着剤425は、ホットメルト接着剤であることが好ましい。ホットメルト接着剤としては、例えば、上述した各種接着剤に、石油樹脂やポリテルペン樹脂等の粘着付与剤、パラフィン系オイル等の可塑剤、並びに、必要に応じてフェノール系、アミン系、リン系、ベンズイミダゾール系などの酸化防止剤を含むものとすることができる。
【0046】
本発明に用いられる繊維シートは、繊維の集合体であり、1.7kPaの圧力付与下にて測定された厚みが5mm以下のものである。繊維シートの厚みは、例えばレーザー式変位計を用いて測定することができる。各繊維シート421,422の構成繊維としては、例えば木材パルプ、コットン及び麻等の天然パルプ、マーセル化パルプ及び化学架橋パルプ等の改質パルプ、ポリエチレン及びポリプロピレン等の樹脂を含んで構成される合成繊維等の各種繊維が挙げられる。各繊維シート421,422の形態としては、紙、織布、又は不織布である。
【0047】
接着剤425は、粘弾性測定によって得られる緩和時間が、50℃において好ましくは1秒以上、より好ましくは2秒以上、更に好ましくは3秒以上である。接着剤425がこのような値を有していることによって、適度な柔軟性及び伸縮性を発現させ、吸収性ポリマーの膨潤後においても繊維シート421,422間が直接接合された状態で吸収性ポリマーを保持することができる。
一般的に、緩和時間は、材料の流動性の程度を表す物性であるところ、緩和時間が短いと接着剤が流動しやすくなるので、接着剤が伸長されたときに作用する表面張力によって伸長された部分が細くなり、該部分が破断しやすくなってしまう。その結果、各繊維シート421,422間の接合状態が維持されないおそれがある。この点に関して、本発明者が鋭意検討した結果、50℃における緩和時間と、接着剤との伸長性との関連性が高く、また、50℃における緩和時間が長いほど、接着剤の伸長によって生じた伸長部分が破断しづらくなり、本発明に好適に用いられる接着剤であることを見出した。
【0048】
粘弾性測定によって得られる接着剤425の50℃における緩和時間は、以下の条件で接着剤425の動的粘弾性を測定したときに得られるtanθの値の逆数として算出される。詳細には、回転式レオメーター(Anton paar社製、型式「Physica MCR301」)を用い、測定サンプルを下方から支持する平面視円形状の受け板と、該受け板の上方に対向配置される平面視円形状の押し当て板との間に、測定対象の接着剤425を介在配置させる。この状態での接着剤425は平面視円形状をなし、厚み1.5mm、直径12mmとなる。測定時の振動数を1Hz、ひずみ振幅を0.05%、冷却速度を2℃/分に設定し、120℃から-10℃までの温度範囲で測定する。tanθは損失弾性率G”を貯蔵弾性率G’で除した値である。
【0049】
上述した粘弾性測定は、測定対象の接着剤425が吸収性シート42の構成要素となっている場合は、以下に示す溶媒抽出法により、吸収性シート42から接着剤を採取し、その採取した接着剤を測定対象とする。また、測定対象の接着剤425が吸収性シート42の構成要素となっておらず、未使用のものである場合は、その未使用の接着剤をそのまま測定対象とする。接着剤の緩和時間は、吸収性シート42の構成要素となっているか否かにかかわらず、少なくとも一方の場合において、上述した範囲内であればよい。
【0050】
接着剤の溶媒抽出法は、例えば以下の方法で行うことができる。まず、ビーカー等の容器中にて、接着剤425を含む吸収性シート42と、接着剤425を溶解可能な溶媒とを混合し、接着剤425を溶媒に溶解させる。次に、繊維シート等の固形物と接着剤溶液とを分離して接着剤溶液を採取し、該接着剤溶液を、ロータリーエバポレーター等を用いて減圧乾固して、固形状の接着剤を得る。このようにして得られた接着剤を、緩和時間の測定における測定対象として用いる。接着剤の溶解に用いる溶媒は、接着剤の種類等に応じて適宜選択すればよい。測定対象の接着剤がホットメルト接着剤である場合、該接着剤の溶解に用いる溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、ヘプタン等の有機溶媒の一種以上を用いることができる。
【0051】
以上の構成を有する吸収性シート42によれば、直接接合部位に存在する接着剤425によって、吸収性ポリマー423の移動や脱落が生じない程度の適度な接合力を各繊維シート421,422間に発現させて、吸収性ポリマー423を繊維シート間の適切な位置に担持させることができる。また、吸収性ポリマー423が十分に膨潤できる程度の適度な接合力が発現しているので、吸収性ポリマー423が有する液吸収性を十分に発揮させることができる。
本発明の好適な態様によれば、接着剤425は伸縮性を有しているので、吸収性ポリマー423の膨潤に起因した直接接合部位に存在する接着剤の伸長と、これに伴う接着剤の収縮との力のつり合いが生じやすくなり、吸収性ポリマー423の適切な位置での担持と、吸収性ポリマー423が膨潤可能な空間の確保とを両立可能な接合力を効率よく発現させることができる。その結果、吸収性シート42の液吸収性が更に向上したものとなる。
【0052】
上述した効果を顕著なものとする観点から、接着剤425は、25℃におけるその貯蔵弾性率G’が好ましくは10000Pa以上、より好ましくは50000Pa以上である。また、25℃における損失弾性率G”が好ましくは10000Pa以上、より好ましくは50000Pa以上である。接着剤425がこのような値を有していることによって、吸収性ポリマーの適切な位置での担持と、吸収性ポリマーが膨潤可能な空間の確保とを両立可能な挟持力を更に効率よく発現させることができる。貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”は、例えば上述した粘弾性測定の方法と同様の方法で測定することができる。貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”は、接着剤425に含まれるベースポリマーの組成及び分子量、並びに可塑剤の含有量などを適宜変更することで調整できる。
【0053】
接着剤425は、各繊維シート421,422における吸収性ポリマー423に対向する面と、各繊維シート421,422を構成する繊維間の空隙とにそれぞれ存在していることが好ましい。このような構成となっていることによって、各繊維シート421,422と、接着剤425との界面での剥離が生じづらくなり、その結果、直接接合部位427に存在する接着剤425の伸縮力によって、吸収性ポリマー423を長時間挟持させることができる。接着剤425が各繊維シート421,422を構成する繊維間の空隙に存在することを確認するためには、測定対象の繊維シートを所定の寸法に切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(例えば日本電子株式会社製走査電子顕微鏡「JCM-6000」)を用いて倍率50~500倍で観察することにより確認できる。
【0054】
繊維シート421の吸収性ポリマー423と対向する面と、繊維シート422の吸収性ポリマー423と対向する面とのそれぞれに接着剤425が塗布されていることが好ましい。このような構成となっていることによって、各繊維シート421,422に塗布された接着剤どうしを結合させて、吸収性シート42に直接接合部位427を効率よく形成するとともに、吸収性ポリマー423の適切な位置での担持と、吸収性ポリマー423が膨潤可能な空間の確保とを両立させることができる。これに加えて、接着剤425が、各繊維シート421,422を構成する繊維間の空隙に存在しやすくすることができるので、各繊維シート421,422と接着剤425との界面での剥離が生じづらくなるという利点もある。
【0055】
図6(a)及び(b)に示すように、繊維シート422における接着剤425の塗布面積が、繊維シート421における接着剤425の塗布面積よりも大きいことが好ましい。このような構成になっていることによって、接着剤425の塗布面積が繊維シート421よりも大きい繊維シート422上に吸収性ポリマー423を均一に保持して、吸収性ポリマー423の意図しない移動や脱落を抑制するとともに、接着剤425の塗布面積が繊維シート422よりも小さい繊維シート421側からの通液性を確保して、液の吸収速度を高めることができる。両各繊維シート421,422の塗布面積は、同一の形状及び面積を有する各繊維シート421,422を、シートの重ならない部分が生じないように積層して比較するものとする。接着剤425の塗布面積は、例えば各繊維シート421,422の接着剤425が付着している側の面に対して、インクトナー等を用いて接着剤425の存在部位を可視化し、その部位の面積を、画像処理ソフト等を用いて、それぞれ算出することができる。識別が困難な場合、コールドスプレーなどを用いて両シートを剥がしてから測定してもよい。
【0056】
吸収性ポリマー423の意図しない移動や脱落を抑制するとともに、液の吸収速度を更に高める観点から、繊維シート421における繊維シート422との接合領域に、接着剤425が非塗布部を有するように不連続に塗布されており、且つ繊維シート422における繊維シート421との接合領域の全域に、接着剤425が隙間なく連続して塗布されていることが好ましい。また、繊維シート421における接着剤425の非存在面、すなわち吸収性シート42の繊維シート421側における外面を、吸収性シート42と液とが最初に接する面である受液面として用いることも好ましい。接合領域とは、吸収性ポリマー423が巨視的に視認され得る隙間が観察されない態様で配されている領域である。
【0057】
繊維シート421において、非塗布部を有するように不連続に接着剤425を塗布する形態としては、例えばスパイラル状、サミット状、オメガ状、カーテン状、ストライプ状等が挙げられる。
【0058】
吸収性シート42の厚み方向Zにおける吸収性ポリマー423と接着剤425との位置関係について説明すると、吸収性ポリマー423が存在する領域と、接着剤425が存在する領域とは一致している。詳細には、(a)吸収性ポリマー423の存在領域と繊維シート421に塗布された接着剤425の存在領域とは一致しているが、繊維シート422に塗布された接着剤425の存在領域とは一致していない態様、(b)吸収性ポリマー423の存在領域と繊維シート422に塗布された接着剤425の存在領域とは一致しているが、繊維シート421に塗布された接着剤425の存在領域とは一致していない態様、及び(c)吸収性ポリマー423の存在領域と、一方の繊維シートに塗布された接着剤425の存在領域とが一致しており、且つこの領域と、他方の繊維シートに塗布された接着剤の存在領域とが重なっている態様のうち少なくとも一つである。本実施形態において、吸収性ポリマー423の存在領域と、繊維シート422における接着剤425の存在領域とは一致している。また、繊維シート421における接着剤425は、非塗布部を有するように不連続に塗布されているので、前記領域と、繊維シート421における接着剤425の塗布領域とが重なっている部位を有する。
【0059】
各繊維シート421,422における接着剤425が塗布された部位についてそれぞれ着目すると、繊維シート421に塗布された接着剤425の第1坪量は、繊維シート422に塗布された接着剤425の第2坪量よりも高いことが好ましい。このような構成となっていることによって、繊維シート421に塗布された接着剤425を介して、繊維シート422との直接接合部位427を形成しやすくするとともに、繊維シート422に塗布された接着剤425を介して吸収性ポリマー423を適切な位置に保持させることができるので、液の吸収性能を更に向上させることができる。
【0060】
これに加えて、第1坪量と第2坪量との合計が500g/m2以下であることが好ましく、300g/m2以下であることがより好ましく、200g/m2以下であることが更に好ましい。また第1坪量と第2坪量との合計は10g/m2以上であることが好ましく、50g/m2以上であることがより好ましく、80g/m2以上であることが更に好ましい。このような構成とすることによって、吸収性ポリマー423の繊維シート間での保持性を高めつつ、吸収性ポリマー423の膨潤を阻害しづらくなるので、液の吸収性能を更に向上させることができる。
【0061】
同様の観点から、第1坪量は、好ましくは400g/m2以下、より好ましくは250g/m2以下、更に好ましくは100g/m2以下であり、また、20g/m2以上が現実的である。第2坪量は、好ましくは30g/m2以下、より好ましくは15g/m2以下、更に好ましくは10g/m2以下であり、また、2g/m2以上が現実的である。
【0062】
上述した第1坪量及び第2坪量は、各繊維シート421,422において接着剤425が塗布されている塗布部のみを対象として、それぞれ測定、算出されるものである。詳細には、吸収性シート42における各繊維シート421,422をそれぞれ分離した後、接着剤425が付着した繊維シート421の質量A1(g)を計測する。また、繊維シート421の接着剤425が付着している側の面に対して、インクトナー等を用いて接着剤425の存在部位を可視化し、この状態で、画像処理ソフトを用いて、接着剤425の存在部位の総面積S(m2)を計測する。次いで、繊維シート421を有機溶媒に浸漬させて、付着した接着剤425を溶解させた後の繊維シートの質量A2(g)を計測する。第1坪量(g/m2)は、「(A1-A2)/S」として算出することができる。同様に、第2坪量(g/m2)は、繊維シート422を対象として、上述した方法と同様に算出することができる。
【0063】
また、繊維シート421の面上に存在する接着剤425の厚みが、繊維シート422の面上に存在する接着剤425の厚みよりも厚いことも好ましい。このような構成となっていることによって、繊維シート421に塗布された接着剤425を介して、繊維シート422との直接接合部位427を形成しやすくするとともに、繊維シート422に塗布された接着剤425を介して吸収性ポリマー423を適切な位置に保持させることができるので、液の吸収性能を更に向上させることができる。
【0064】
同様の観点から、繊維シート421の面上に存在する接着剤425の厚みは、繊維シート422の面上に存在する接着剤425の厚みよりも厚いことを条件として、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。また、繊維シート422の面上に存在する接着剤425の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。各繊維シート421,422の面上に存在する接着剤425の厚みは、測定対象の繊維シートを所定の寸法に切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(例えば日本電子株式会社製走査電子顕微鏡「JCM-6000」)を用いて倍率50~500倍で観察したときに、測定対象の繊維シートの界面から突出した接着剤425の厚みを5箇所測定し、その算術平均値を接着剤425の厚み(mm)とする。
【0065】
吸収性シート42は、乾燥状態での両各繊維シート421,422間の剥離強度が、好ましくは0.1N/cm以上、より好ましくは0.2N/cm以上、更に好ましくは0.3N/cm以上であり、好ましくは3N/cm以下、より好ましくは2N/cm以下、更に好ましくは1.5N/cm以下である。このような剥離強度を有することによって、吸収性シート42の使用時に十分な強度を発現することができ、また吸収性シートの液吸収後も強度が維持されたものとなる。乾燥状態とは、105℃環境下で一晩熱した前後の重量変化から下記式によって算出した吸収性シート42の含水量が20質量%以下であることをいう。
含水率%=(乾燥前質量―乾燥後質量)/乾燥前質量×100
【0066】
剥離強度は、例えば以下の方法で測定することができる。乾燥状態の吸収性シートを切り出して試験片を作製する。試験片の形状は、吸収性シートの長手方向Xの長さを80mm超とし且つ幅方向Yの長さを25mmとした矩形とする。この試験片の長手方向Xの一端において、繊維シート421と繊維シート422との間を剥がし、剥がした部位を引張試験機の各チャックにT字状にセットする。引張試験機としては、例えば株式会社島津製作所製オートグラフAG-Xを用いる。チャック間距離は20mmとする。引張速度300mm/minで剥離を行い、試験力平均強度を測定する。測定は3回行い、試験力平均強度の算術平均値を剥離強度(単位:N/25mm)とする。
【0067】
吸収性シート42は、生理食塩水に30分間浸漬したときの厚み変化が好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは4mm以上であり、20mm以下が現実的である。生理食塩水に30分間浸漬したときの吸収性シート42の厚み変化は上述した範囲で増加することが好ましい。
また、生理食塩水に30分間浸漬した後の両繊維シート421,422間を剥離したときに、両繊維シート421,422間が接着剤425によって直接接着されている箇所が1cm2当たり、好ましくは1個以上、より好ましくは2個以上、更に好ましくは3個以上存在する。このような構成を有していることによって、吸収性ポリマーの膨潤性と固定性とを両立して向上させることができ、液吸収性が更に高いものとなる。
【0068】
吸収性シート42は、湿潤状態での圧縮変形率が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上であり、70%以下が現実的である。このような構成となっていることによって、吸収性ポリマーが液吸収によって膨潤した後も吸収性シート42の柔軟性を維持することができるので、液吸収後の吸収性シート42の肌触りが良好なものとなる。湿潤状態とは、乾燥状態の吸収性シート42を、吸収性シート42の重量の200倍量の生理食塩水に30分間浸漬させた後、網上に静置して余分な水分を紙で拭き取った後の状態をいう。
【0069】
圧縮変形率は、例えば、カトーテック株式会社製のKES-G5ハンディー圧縮試験機を用いて測定することができる。具体的には、5cm×5cmの寸法を有する吸収性シートを吸収性シート42の重量の200倍量の生理食塩水に30分浸漬させた後、試験台に取り付ける。次いで、浸漬後の吸収性シートを面積2cm2の円形平面を持つ鋼板間で圧縮する。圧縮速度は20μm/sec、圧縮最大荷重は490mN/cm2(=50gf/cm2)とする。4.9mN/cm2(0.5gf/cm2)荷重時の厚みを厚みT0(mm)とし、490mN/cm2(50gf/cm2)荷重時の厚みを厚みTm(mm)としたときに、圧縮変形率(%)は、「100×(T0-Tm)/T0」として算出することができる。
【0070】
吸収性シート42は、各繊維シート421,422のうち少なくとも一方の繊維シートにおける接着剤425の非存在面が凹凸構造を有していることが好ましい。特に、繊維シート421における接着剤425の非存在面が凹凸構造を有しており、また、繊維シート422における接着剤425の非存在面が凹凸構造を有していないことが更に好ましい。このような構成を有していることによって、繊維シートの表面積を高めて、液との接触面積を高めることができる。また、吸収性シート42を他の部材とともに使用したときに、摩擦を発生しやすくしてズレを低減することができる。
【0071】
凹凸構造としては、例えば、凸部及び凹部を規則的又は不規則的な散点状に形成された構造や、畝部と溝部とを交互に有する形状等が挙げられる。凹凸構造を有するか否かは、例えば、下記方法で測定したSMDが5μm以上であるときに「凹凸構造を有する」とし、5μm未満であるときには「凹凸構造を有しない」とする。
【0072】
〔表面粗さの平均偏差SMDの測定法〕
表面粗さの平均偏差SMDは、以下の書籍に記載の方法に従い、カトーテック株式会社製のKESFB4-AUTO-A(商品名)を用いて以下の方法で測定される。
川端季雄著、「風合い評価の標準化と解析」、第2版、社団法人日本繊維機会学会 風合い計量と規格化研究委員会、昭和55年7月10日発行。
【0073】
詳細には、吸収性シート42をそのまま用いるか、又は該シート42を切り出して、10cm×10cmの試験片を用意する。この試験片を平滑な金属平面の試験台に取り付ける。次いで、0.5mm径のピアノ線を幅5mmでU字状に曲げたものを接触子として用い、該接触子を9.8cN(誤差±0.49cN以内)で接触面を試験片に圧着する。この状態で、試験片を0.1cm/secの一定速度で水平に2cm移動させる。試験片には19.6cN/cmの一軸張力が与えられる。接触子は、ばねで圧着された状態とし、ばねの定数は24.5cN/mm(誤差±0.98cN/mm以内)とし、共振周波数は表面接触から離れた状態で30Hz以上とする。
【0074】
表面粗さの平均偏差の測定値はSMD値として表される。この測定を試験片の一辺に沿う方向(MD方向)と、MD方向に直交する方向(CD方向)とに対してそれぞれ行い、MD方向におけるSMD値(SMDMD)と、CD方向におけるSMD値(SMDCD)とをそれぞれ求める。得られたSMDMDとSMDCDとから、以下の式(1)から表面粗さの平均偏差SMD(μm)を算出する。10cm×10cmの試験片が用意できない場合には、MD方向又はCD方向のいずれか一方のSMD値を用いて算出する。
表面粗さの平均偏差SMD(μm)={(SMDMD
2+SMDCD
2)/2}1/2 ・・・(1)
【0075】
吸収性シート42に含まれる吸収性ポリマー423について説明すると、吸収性ポリマー423の坪量は、好ましくは60g/m2以上、より好ましくは80g/m2以上、更に好ましくは100g/m2以上であり、好ましくは700g/m2以下、より好ましくは500g/m2以下、更に好ましくは400g/m2以下である。吸収性ポリマー423の坪量をこのような範囲にすることによって、吸収性ポリマー423による液吸収性と、直接接合部位427による吸収性ポリマー423の保持性とを両立した吸収性シート42を効率よく製造することができる。
【0076】
同様の観点から、吸収性ポリマー423のメジアン粒子径は、好ましくは800μm以下、より好ましくは650μm以下、更に好ましくは500μm以下である。また吸収性シートの製造時におけるハンドリングを良好にする観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上、更に好ましくは150μm以上である。吸収性ポリマー423のメジアン粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA-920、株式会社堀場製作所製)を用いて得られた粒径分布を累積分布としてグラフ化し、累積比率50%に相当する粒子径として求めることができる。測定条件は、エタノール90質量%及び蒸留水10質量%を混合した分散媒に、吸収性ポリマー423を0.1質量%となるように添加し、攪拌及び内蔵超音波にて3分間分散処理する。分散処理したポリマー分散液を、上述した測定装置でフロー法にて測定して、メジアン粒子径を得る。
【0077】
吸収性シート42に含まれる吸収性ポリマー423は、その膨潤率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。これに加えて、湿潤状態での両各繊維シート421,422間の剥離強度が、好ましくは0.1N/25mm以上、より好ましくは0.2N/25mm以上、更に好ましくは0.3N/25mm以上であり、好ましくは2.0N/25mm以下、より好ましくは1.5N/25mm以下、更に好ましくは1.0N/25mm以下である。このような膨潤率と剥離強度とを備えることによって、吸収性ポリマー423による液吸収性と、液吸収後のシート強度とが一層優れたものとなる。
本実施形態において、吸収性シート42の形成材料の80%以上が吸収性ポリマーである。ここでいう、吸収性シート42の形成材料とは、2枚の繊維シート421,422を含まない吸収性材料である。つまり、吸収性シート42における、繊維シート421,422を含めない形成材料のうち、80質量%以上が吸収性ポリマーである。
別な表現をすると、吸収性シート42における、吸水性ポリマー占有率は、少なくとも80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0078】
吸収性ポリマーの膨潤率は、ナイロン製の織布(三力製作所販売、品名:ナイロン網、規格:250メッシュ)を幅15cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅15cm(内寸14cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製する。次いで、乾燥状態の吸収性シート42を2枚用意し、同部位において10cm×10cmの寸法で切り出して試験片とし、うち一方の試験片を折らないようにして作製したナイロン袋に入れ、該試験片の質量の200倍量の生理食塩水に60分間浸漬し、その後、該試験片を143×gで10分間遠心処理して脱水する。このときの試験片をナイロン袋に収容した状態の質量X1(g)を測定する。次いで、他方の試験片(乾燥状態)を、コールドスプレー等を用いて繊維シート、繊維シート、及び吸収性ポリマーに分離させた後、同様にナイロン袋に入れ、該試験片の質量の200倍量の生理食塩水に30分間浸漬し、その後、該試験片を143×gで10分間遠心処理して脱水する。このときの試験片をナイロン袋に収容した状態の質量X2(g)を測定する。膨潤率(%)は、「{(X1―Y1)/(X2-Y2)}×100」で算出する。前記式中のY1,Y2はそれぞれ、質量X1、X2測定時に用いたナイロン袋の遠心脱水後の質量(g)を表す。湿潤状態での両各繊維シート421,422間の剥離強度は、測定対象の吸収性シートに上述した条件で生理食塩水を含浸させて湿潤状態とし、その後、乾燥状態での剥離強度と同様に測定することができる。
【0079】
吸収性シート42における吸収性ポリマー423の存在量の分布は、吸収性ポリマー423の膨潤後における吸収性シート42全体の意図しない凹凸の形成を低減する観点から、吸収性ポリマー423はシート面方向に均一に存在していることが好ましい。均一に存在するとは、吸収性シートの任意の部位において測定された吸収性ポリマー423の坪量の変化が、標準偏差/算術平均値の式で表される変動係数として0.5以下であることをいう。
【0080】
一方、液吸収性と吸収性ポリマーの保持性とを維持しつつ、シート中央領域での液吸収性能を更に高め、シート端部からの吸収性ポリマーの脱落を防ぐ観点から、吸収性シート42の中央領域における吸収性ポリマーの存在量が、吸収性シート42の一方向両端部における吸収性ポリマー423の存在量よりも多いことが好ましく、吸収性シート42の中央領域における吸収性ポリマーの存在量が、吸収性シート42の周縁領域における吸収性ポリマー423の存在量よりも多いことが更に好ましい。
【0081】
吸収性シート42の中央領域における吸収性ポリマーの存在量が、吸収性シート42の一方向両端部又は周縁における吸収性ポリマー423の存在量よりも多い場合、吸収性シート42の一方向両端部又は周縁に存在する直接接合部位427の個数は、吸収性シート42の中央領域における直接接合部位427の個数よりも多いことが好ましい。この場合、吸収性シート42の中央領域における接着剤の塗布パターンと、吸収性シート42の一方向両端部又は周縁における接着剤の塗布パターンとはそれぞれ同一であることも好ましい。このような構成となっていることによって、吸収性シート42を通して同一パターンにて塗布する加工的容易さと、周辺部での接着力が向上することによって吸収性ポリマーが端部からこぼれるのを防ぐといった効果が奏される。
【0082】
本実施形態において用いられる吸収性ポリマー423の形状は特に制限されず、例えば、球状、房状、塊状、俵状、繊維状、不定形状及びこれらの組み合わせの粒子であり得る。吸収性シート42の製造時における吸収性ポリマー423の散布の均一性を高め、且つ直接接合部位427を有する吸収性シート42を容易に形成可能とする観点から、吸収性ポリマー423は同一の形状の粒子を用いることが好ましく、また、吸収性ポリマー423の粒子の粒径分布における変動係数が0.5以下であることが更に好ましい。
【0083】
粒径分布における変動係数は、例えば以下の方法で測定することができる。すなわち、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA-920、株式会社堀場製作所製)を用いて、エタノール90質量%及び蒸留水10質量%を混合した分散媒に、吸収性ポリマー423を0.1質量%となるように添加し、攪拌及び内蔵超音波にて3分間分散処理する。分散処理したポリマー分散液を、上述した測定装置でフロー法にて測定して、粒子径の算術平均値及び粒子径の標準偏差を得る。これによって得られた標準偏差/算術平均値で算出される値を変動係数とする。
【0084】
吸収性ポリマー423としては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられ、具体的には、アクアリックCA、アクアリックCAW(ともに株式会社日本触媒製)等のアクリル酸重合体部分ナトリウム塩が挙げられる。
【0085】
吸収性シート42は、下記式で算出される吸液前後の厚み変化量あたりの曲げ剛性変化率をBRとした場合、互いに直交する二方向及び該二方向と直交せずに交差する他の方向の三方向から任意に選択される二方向のBRが、それぞれ好ましくは5.0/mm以下であり、より好ましくは4.8/mm以下であり、更に好ましくは4.5/mm以下である。BRの値の下限は特にないが、吸収体4の形状保持の観点から、好ましくは0.1/mm以上、より好ましくは0.3/mm以上である。
BR=(Bw/Bd)/T0c
Bw:吸収性シート42の吸液後の曲げ剛性
Bd:吸収性シート42の吸液前の曲げ剛性
T0c:吸収性シート42の吸液前後の厚み変化量
【0086】
(曲げ剛性の測定方法)
測定には、JIS L1096(一般織物試験方法)に規定された剛軟性測定法に適合した株式会社大栄科学精器製作所製:ハンドロメーター試験機を使用した。測定対象(吸収性シート42)から、測定対象方向に100mm、該測定対象方向と直交する方向に100mmの平面視正方形形状を切り出し、その切り出したものを2枚重ねたものを試験片とした。試験機が備える試料台におけるスロット間を10mmに調整し、試験片をスロット間に架け渡すように配置し、該試験片の四隅を粘着テープで試料台の上面に固定した。このとき、試験片の測定対象方向がスロット間方向と一致し、且つ該試験片の測定対象方向の中央がスロット間の中央に位置し、且つ試験片が水平となるように、試験片を配置した。試料台の上面から7mm下方の位置(最下位置)まで下降するように調整したブレードを、試験片の上方から一定の速度200mm/minで下降させ、ブレードで試験片を押圧したときの指示計(荷重計)が示す最高値(cN)を読み取った。斯かる測定を5回行い、その平均値を算出して、当該試験片の曲げ剛性値とした。測定は室温23±2℃、相対湿度50%RH±5%で実施した。
【0087】
曲げ剛性Bwは前述したとおり、吸液後の吸収性シート42の一方向における曲げ剛性であるので、前記測定方法で使用する試験片は、「吸液後の試験片」である。この吸液後の試験片は以下の手順で調製する。乾燥状態の試験片を生理食塩水に30分浸した後、キムタオル等の吸水性シートを用いて、試験片から水分が漏出しない程度に水分をふき取ったもの(吸液後試験片)を試験片として使用する。
【0088】
なお、吸収体4における吸収性シート42のように、測定対象となる部材が、接着剤によって他の部材と接合されている場合は、その接合部分を、繊維の接触角に影響を与えない範囲で、コールドスプレーの冷風を吹き付ける等の方法で接着力を除去してから取り出す。この手順は、本明細書中の全ての測定において共通である。
【0089】
吸液前後の厚み変化量あたりの曲げ剛性変化率BRは、吸収性シート42における吸収性ポリマー423の分布状況の指標となるものである。つまり吸収性ポリマー423の分布に関する事項である。曲げ剛性変化率BRが5.0/mm以下あるということは、吸収性シート42についての所定の一方向の吸液前後での曲げ剛性変化、特に曲げ剛性Bd,Bwの支配的要素である吸収性シート42についてのそれが小さいということであり、これは、吸収性シート42において吸収性ポリマー423が均一に分布していることの指標となる。曲げ剛性変化率BRが前記特定範囲にある、すなわち吸収性シート42において吸収性ポリマー423が均一に分布していることにより、吸収性シート42の液吸収性能が向上するとともに、吸収性シート42の吸液に伴う厚みの増加が抑制され、また、吸液後も優れた柔軟性及び液吸収性能を発揮し得るようになる。互いに直交する二方向及び該二方向と直交せずに交差する他の方向の三方向から任意に選択される二方向のBRはそれぞれ、好ましくは0.1/mm以上、より好ましくは0.3/mm以上、そして、好ましくは4.8/mm以下、より好ましくは4.5/mm以下である。
【0090】
吸収性シート42において吸収性ポリマー423が均一に分布していることによる作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点からは、吸収性シート42における所定の領域、例えば股下部Cに位置する領域について、一方向の曲げ剛性変化率BRだけでなく、複数の方向の曲げ剛性変化率BRが、それぞれ特定範囲にあることが好ましい。より具体的には、吸収性シート42の任意の三方向、例えば、縦方向X、横方向(幅方向Y)及び斜め方向Dから任意に選択される二方向についての曲げ剛性変化率BRが、それぞれ、特定範囲にあることが好ましい。最も好ましい形態は、吸収性シート42における任意の領域について、任意の三方向についての曲げ剛性変化率BRが、それぞれ、前記特定範囲にある形態である。斜め方向Dとは、縦方向X及び横方向(幅方向Y)以外の任意の方向のことであり、一般的には縦方向Xに対して45度(したがって横方向Yに対して45度)の方向のことである。
【0091】
吸収性シート42の吸液前の一方向、具体的には例えば、縦方向X、横方向(幅方向Y)又は斜め方向Dの曲げ剛性は、好ましくは0.1mN・cm2/cm以上、より好ましくは0.2mN・cm2/cm以上、そして、好ましくは19.6mN・cm2/cm以下、より好ましくは15.0mN・cm2/cm以下である。
【0092】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0093】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸収性物品を開示する。
<1>
表面シート、裏面シート、及びこれらのシート間に配された吸収体を備え、
前記表面シートは、前記吸収体における肌対向面を被覆しているとともに、該吸収体の各側縁から側方にそれぞれ延出した一対の延出部を有し、該各延出部が該吸収体の各側縁でそれぞれ折り返されて該吸収体における非肌対向面の各側部をそれぞれ被覆しており、
前記各延出部は、前記吸収体と非肌対向面において隣接する非肌側部材にそれぞれ接合されており、
前記吸収体は、同一の又は異なる2枚の繊維シートと、該繊維シート間に配された吸収性ポリマーの粒子とを備えた吸収性シートを有しており、
前記吸収体における各側縁に沿って、該吸収体と前記表面シートとの間に、弾性部材がそれぞれ配されており、
前記各弾性部材の収縮によって、前記吸収体は、該吸収体と前記非肌側部材との接合位置を起点として、該吸収体の各側部がそれぞれ起立可能になされており、
前記吸収体のうち、前記各弾性部材の収縮によって起立可能な部位に、前記吸収性シートが少なくとも存在している、吸収性物品。
【0094】
<2>
前記吸収性シートにおける、前記繊維シートを含めない形成材料の80質量%以上が吸収性ポリマーである、前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記吸収体が、前記吸収性シートとは別構造の補助層を更に有する、前記<1>又は前記<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記補助層が、前記吸収体のうち、前記起立可能な部位間に配されている、前記<3>に記載の吸収性物品。
<5>
前記吸収体は、前記吸収性物品の幅方向の中央域における剛性値が、前記吸収性シート単独での剛性値の2倍よりも大きい、前記<4>に記載の吸収性物品。
【0095】
<6>
前記補助層が、フラッフパルプと吸収性ポリマーの粒子との混合積繊体からなる、前記<3>ないし前記<5>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<7>
前記補助層における前記吸収性ポリマーの坪量は、好ましくは65~800g/m2、より好ましくは70~600g/m2である、前記<6>に記載の吸収性物品。
<8>
前記補助層における前記フラッフパルプの坪量は、好ましくは80~600g/m2、より好ましくは100~400g/m2である、前記<6>又は前記<7>に記載の吸収性物品。
<9>
前記補助層の構成材料の総質量に対する該補助層の吸収性ポリマーの含有質量の比率をPR1とし、前記吸収性シートの構成材料の総質量に対する該吸収性シートの吸収性ポリマーの含有質量の比率をPR2としたときに、PR1に対するPR2の比率PR2/PR1は、1.1以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、5.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、1.1以上5.0以下であることが好ましく、1.3以上5.0以下であることがより好ましい、前記<6>ないし前記<8>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<10>
前記吸収体を構成する材料(ただし、前記補助層を構成する繊維材料以外の繊維材料、及び接着剤は含まない。)に対する吸収性ポリマーの質量比をFSRと定義したとき、
前記吸収体のうち、前記起立可能な部位におけるFSRが、該起立可能な部位間の部位におけるFSRよりも大きい前記<6>ないし前記<9>のいずれか一に記載の吸収性物品。
【0096】
<11>
前記補助層が、前記吸収性物品の長手方向に延びる低剛性部位を有し、
前記低剛性部位は、前記吸収体のうち、前記起立可能な部位間に位置している、前記<3>ないし前記<10>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<12>
吸液の前後における厚み変化量が、前記吸収性シートよりも、前記補助層の方が大きい、前記<3>ないし前記<11>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<13>
吸液の前後における吸収性シートの厚み変化量は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、好ましくは25mm以下、より好ましくは15mm以下であり、また、好ましくは0.5mm以上25mm以下、より好ましくは1mm以上15mm以下である、前記<12>に記載の吸収性物品。
<14>
吸液の前後における補助層の厚み変化量は、好ましくは2mm以上、より好ましくは4mm以上であり、好ましくは45mm以下、より好ましくは35mm以下であり、また、好ましくは2mm以上45mm以下、より好ましくは4mm以上35mm以下である、前記<12>又は前記<13>に記載の吸収性物品。
【0097】
<15>
前記補助層における厚み変化量から前記吸収性シートにおける厚み変化量を引いたときの差は、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、また1mm以上20mm以下であることが好ましく、2mm以上15mm以下であることがより好ましい、前記<12>ないし前記<14>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<16>
前記補助層は、前記吸収性物品の長手方向に延びる低剛性部位となる凹部を有しており、
前記凹部は、前記吸収体のうち、起立可能な部位間に位置するように、前記補助層に形成されている、前記<12>ないし前記<15>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<17>
前記吸収性シートは、その両側縁及びその近傍の部位において、前記繊維シート間が非接合状態になっており、
前記非接合状態になっている部位に前記弾性部材が配されている、前記<1>ないし前記<16>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<18>
前記吸収体における前記起立可能な部位は、該吸収体の側縁を基準として内方に向けて少なくとも75%の長さの領域に前記吸収性シートが位置している、前記<1>ないし前記<17>のいずれか一に記載の吸収性物品。
【0098】
<19>
前記吸収性シートが占める割合は、好ましくは78%以上、より好ましくは82%以上、更に好ましくは85%以上とする、前記<18>に記載の吸収性物品。
<20>
前記吸収性シートは、前記両繊維シートが接着剤によって接合されており、
前記吸収性ポリマーが配されている領域において、該吸収性ポリマーは、巨視的に視認され得る隙間が観察されない態様で配されており、
前記領域において、両繊維シートが、前記吸収性ポリマーを介さずに前記接着剤によって直接に接合された部位を有する、前記<1>ないし前記<19>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<21>
前記両繊維シートが前記吸収性ポリマーを介さずに前記接着剤によって直接接合された部位と、前記両繊維シートが前記吸収性ポリマーを介して前記接着剤によって接合された部位とを有する、前記<20>に記載の吸収性物品。
【0099】
<22>
粘弾性測定によって得られる前記接着剤の緩和時間が、50℃において1秒以上である、前記<20>又は前記<21>に記載の吸収性物品。
<23>
一方の前記繊維シートにおける前記接着剤の塗布面積が、他方の前記繊維シートにおける前記接着剤の塗布面積よりも大きく、
前記接着剤が塗布された部位において、他方の繊維シートにおける該接着剤の坪量は、一方の繊維シートにおける該接着剤の坪量よりも高い、前記<20>ないし前記<22>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<24>
前記接着剤は、25℃における貯蔵弾性率が好ましくは10000Pa以上、より好ましくは50000Pa以上である、前記<20>ないし前記<23>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<25>
前記接着剤は、25℃における損失弾性率が好ましくは10000Pa以上、より好ましくは50000Pa以上である、前記<20>ないし前記<24>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<26>
一方の前記繊維シートにおける他方の前記繊維シートとの接合領域に、前記接着剤が非塗布部を有するように不連続に塗布されており、且つ他方の前記繊維シートにおける一方の前記繊維シートとの接合領域の全域に、前記接着剤が隙間なく連続して塗布されている、前記<20>ないし前記<25>のいずれか一に記載の吸収性物品。
【0100】
<27>
一方の前記繊維シートに塗布された接着剤の第1坪量と、他方の前記繊維シートに塗布された接着剤の第2坪量との合計が500g/m2以下であることが好ましく、300g/m2以下であることがより好ましく、200g/m2以下であることが更に好ましく、第1坪量と第2坪量との合計は10g/m2以上であることが好ましく、50g/m2以上であることがより好ましく、80g/m2以上であることが更に好ましい、前記<20>ないし前記<26>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<28>
第1坪量は、好ましくは400g/m2以下、より好ましくは250g/m2以下、更に好ましくは100g/m2以下であり、また、20g/m2以上が現実的である、前記<27>に記載の吸収性物品。
<29>
第2坪量は、好ましくは30g/m2以下、より好ましくは15g/m2以下、更に好ましくは10g/m2以下であり、また、2g/m2以上が現実的である、前記<27>又は前記<28>に記載の吸収性物品。
<30>
一方の前記繊維シートの面上に存在する前記接着剤の厚みが、他方の前記繊維シートの面上に存在する前記接着剤の厚みよりも厚い、前記<20>ないし前記<29>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<31>
一方の前記繊維シートの面上に存在する前記接着剤の厚みは、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である、前記<30>に記載の吸収性物品。
【0101】
<32>
他方の前記繊維シートの面上に存在する接着剤の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である、前記<30>又は前記<31>に記載の吸収性物品。
<33>
前記吸収性シートの、下記式(1)で算出される吸液前後の厚み変化量あたりの曲げ剛性変化率をBRとした場合、互いに直交する二方向及び該二方向と直交せずに交差する他の方向の三方向から任意に選択される二方向の該BRが、それぞれ5.0/mm以下である、前記<20>ないし前記<32>のいずれか一に記載の吸収性物品。
BR=(Bw/Bd)/T0c (1)
Bw:前記吸収性シートの吸液後の曲げ剛性
Bd:前記吸収性シートの吸液前の曲げ剛性
T0c:下記式(2)で算出される前記吸収性シートの吸液前後の厚み変化量
T0c=T0w-T0d (2)
T0w:前記吸収性シートの吸液後の4.9mN/cm2荷重下での厚み
T0d:前記吸収性シートの吸液前の4.9mN/cm2荷重下での厚み
<34>
前記曲げ剛性変化率BRが、好ましくは4.8/mm以下であり、より好ましくは4.5/mm以下である、前記<33>に記載の吸収性物品。
<35>
前記曲げ剛性変化率BRが、好ましくは0.1/mm以上、より好ましくは0.3/mm以上である、前記<33>又は前記<34>に記載の吸収性物品。
【0102】
<36>
前記吸収性シートの吸液前の一方向、具体的には例えば、縦方向X、横方向(幅方向Y)又は斜め方向Dの曲げ剛性は、好ましくは0.1mN・cm2/cm以上、より好ましくは0.2mN・cm2/cm以上、そして、好ましくは19.6mN・cm2/cm以下、より好ましくは15.0mN・cm2/cm以下である、前記<33>ないし前記<35>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<37>
吸収体の長手方向の両側には、防漏カフが形成されており、
前記防漏カフに防漏カフ引き寄せ用の弾性部材が設けられている、前記<1>ないし前記<36>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<38>
前記防漏カフは、防漏カフ形成用シートを備えており、
前記表面シートは、その両側縁において、前記裏面シート及び防漏カフ形成用シートに接合固定されて、接合位置となる本体接合固定部を形成しており、
前記吸収性物品は、前記吸収体の非肌当接面側に外装体を具備しており、
前記外装体と前記防漏カフ形成用シートとは外装体接合固定部によって接合されており、
前記外装体接合固定部が、前記本体接合固定部より吸収性物品幅方向外方の位置に配されている、前記<37>に記載の吸収性物品。
【0103】
<39>
前記吸収性物品の中央域における剛性値は、前記吸収性シートが単独での剛性値の好ましくは2.0倍以上、より好ましくは3.0倍以上、更に好ましくは4.0倍以上である、前記<1>ないし前記<38>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<40>
前記吸収性シートの両側縁及びその近傍の部位において、各繊維シートの間が非接合状態に形成されており、非接合状態になっている部位に弾性部材がそれぞれ配されている、前記<1>ないし前記<39>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<41>
前記吸収性シートは、乾燥状態での両各繊維シート間の剥離強度が、好ましくは0.1N/cm以上、より好ましくは0.2N/cm以上、更に好ましくは0.3N/cm以上であり、好ましくは3N/cm以下、より好ましくは2N/cm以下、更に好ましくは1.5N/cm以下である、前記<1>ないし前記<40>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<42>
前記吸収性シートに含まれる前記吸収性ポリマーは、その膨潤率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である、前記<1>ないし前記<41>のいずれか一に記載の吸収性物品。
【0104】
<43>
湿潤状態での両各繊維シート間の剥離強度が、好ましくは0.1N/25mm以上、より好ましくは0.2N/25mm以上、更に好ましくは0.3N/25mm以上であり、好ましくは2.0N/25mm以下、より好ましくは1.5N/25mm以下、更に好ましくは1.0N/25mm以下である、前記<1>ないし前記<42>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<44>
前記吸収性シートは、1.7kPaの圧力付与下にて測定された厚みが、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.6mm以上であり、また、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下、更に好ましくは2mm以下である、前記<1>ないし前記<43>のいずれか一に記載の吸収性物品。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、液を吸収した後であっても吸収体の両側が柔軟であり、着用中に着用者の動作によって生じる擦れ感を低減させ得る吸収性物品が提供される。