(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】バスバモジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/507 20210101AFI20240925BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/519 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/583 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M50/507
H01M50/284
H01M50/298
H01M50/519
H01M50/569
H01M50/583
H01M50/588
H01M50/591
(21)【出願番号】P 2022080406
(22)【出願日】2022-05-16
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】向笠 博貴
(72)【発明者】
【氏名】雄鹿 達也
(72)【発明者】
【氏名】小池 弘訓
(72)【発明者】
【氏名】青嶋 良樹
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-534540(JP,A)
【文献】特開2020-013767(JP,A)
【文献】特開2020-087666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池が積層された電池集合体に取り付けられるバスバモジュールであって、
複数の電線から構成され、前記複数の単電池の積層方向に沿って延びるように配置されることになる本線回路体と、
配線パターンを有する回路基板から構成され、前記本線回路体から枝分かれするように延びる少なくとも一つの前記電線に前記配線パターンが電気的に接続される中継回路体と、
前記複数の単電池の各々の電極に接続されることになるバスバと、
前記配線パターンと前記バスバとを繋ぐように、前記中継回路体が有する実装面に取り付けられる電子部品と、
前記バスバを保持するとともに前記積層方向に沿って伸縮可能なホルダと、を備える、
バスバモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のバスバモジュールにおいて、
前記中継回路体の前記回路基板は、
フレキシブル基板又はリジッド基板から構成される、
バスバモジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のバスバモジュールにおいて、
前記中継回路体の前記配線パターンは、
前記少なくとも一つの前記電線が有する導体芯線に直接的に接続される、又は、前記導体芯線に接続された端子を介して前記導体芯線に間接的に接続される、
バスバモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バスバモジュールは、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などに搭載される駆動用電源としての電池集合体(複数の電池セルが積層配置された電池モジュール)に組み付けられるように用いられる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載のバスバモジュールは、積層されて隣接する電池セル間の正極と負極との間を接続する複数のバスバと、複数のバスバの各々に接続されて各電池セルを監視するための複数の電圧検出線と、を備えている。複数の電圧検出線の各々は、芯線が絶縁被覆に覆われた一般的な構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バスバモジュールの機能向上等の観点から、個々の電圧検出回路(即ち、バスバと、ECU等の処理装置と、の間を繋ぐ個々の電圧検出線に相当する回路)に、ヒューズ等の電子部品を設けることが考えられる。しかしながら、従来のバスバモジュールでは、そのような電子部品の実装を前提として電圧検出回路が設計されていないため、個々の電圧検出回路上に電子部品を実装することが困難である。更に、従来のバスバモジュールの電圧検出回路上に不用意に電子部品を設けると、バスバモジュールとしての本来の機能(例えば、電池集合体の変形や製造ばらつきへの対応等)が損なわれる可能性もある。
【0006】
本発明の目的の一つは、バスバモジュールとしての本来の機能を損なうことなく電圧検出回路上に電子部品が実装されたバスバモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るバスバモジュールは、以下を特徴としている。
【0008】
複数の単電池が積層された電池集合体に取り付けられるバスバモジュールであって、
複数の電線から構成され、前記複数の単電池の積層方向に沿って延びるように配置されることになる本線回路体と、
配線パターンを有する回路基板から構成され、前記本線回路体から枝分かれするように延びる少なくとも一つの前記電線に前記配線パターンが電気的に接続される中継回路体と、
前記複数の単電池の各々の電極に接続されることになるバスバと、
前記配線パターンと前記バスバとを繋ぐように、前記中継回路体が有する実装面に取り付けられる電子部品と、
前記バスバを保持するとともに前記積層方向に沿って伸縮可能なホルダと、を備える、
バスバモジュールであること。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバスバモジュールによれば、複数の電線から構成された本線回路体(以下、幹線ともいう。)から枝分かれするように延びる電線(以下、枝線ともいう。)に、回路基板から構成された中継回路体が電気的に接続される。中継回路体には電子部品が取り付けられ(即ち、実装され)、その電子部品を介して、中継回路体の配線パターンとバスバとが繋がれる。即ち、バスバと電線(枝線)とが、中継回路体の電子部品を介して、電気的に接続される。これにより、個々の電圧検出回路上に電子部品を設けることが実現される。更に、各単電池の熱変形に起因して電池集合体が積層方向に伸縮した際、枝線が屈曲等することで、各バスバが単電池の積層方向に移動可能となる。同様に、枝線が屈曲等することで、単電池の組み付け公差に起因する電池集合体の積層方向における大きさのばらつきを吸収できる。換言すると、本構成のバスバモジュールは、枝線が変形することで、電池集合体の伸縮や製造ばらつきに容易に対応できる。したがって、本構成のバスバモジュールは、バスバモジュールとしての本来の機能を損なうことなく、電圧検出回路上に電子部品が実装された構成を有する。
【0010】
更に、上記構成のバスバモジュールによれば、本線回路体と中継回路体とが、別体として準備された上で、電気的に接続される。そのように別体として準備される中継回路体に電子部品を取り付ければ(即ち、実装すれば)、本線回路体と中継回路体とを一体の回路基板(例えば、一繋がりのフレキシブル基板)で構成する場合に比べ、電子部品の実装のために大型の実装装置を必要としない。換言すると、本線回路体の長さや大きさにかかわらず、一般的な実装装置を用いて中継回路体に電子部品を適正に実装することができ、バスバモジュールの製造コストを低減することができる。加えて、本線回路体が回路基板で構成されている場合に比べ、電線の場所の入れ替えが容易であるので、ECU等の制御装置への入力用コネクタ等に所望の順序(例えば、バスバの電位順)に電線を並べて配置することが容易になる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るバスバモジュールを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すバスバモジュールが組み付けられる電池集合体を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本線回路体に接続された複数の中継回路体の各々にバスバが接続された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本線回路体に接続された1つの中継回路体を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本線回路体に接続された1つの中継回路体にバスバが接続された状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すホルダ及びカバーを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、中継回路体とバスバとの接続箇所を示す下面図である。
【
図8】
図8は、本線回路体から枝分かれするように延びる枝線に中継回路体を接続する際の様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るバスバモジュール10について説明する。本実施形態に係るバスバモジュール10は、例えば、電気自動車に搭載される駆動用電源としての長尺の電池集合体1(
図2参照。複数の単電池が積層配置された電池モジュール)に組み付けられるように用いられる。
【0014】
以下、説明の便宜上、
図1等に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、電池集合体1を構成する複数の単電池2の積層方向(
図1及び
図2参照)と一致している。なお、これら方向は、説明の便宜上定義されているものであり、バスバモジュール10の車両搭載時における車両の前後方向、左右方向及び上下方向に必ずしも対応する必要はない。
【0015】
まず、バスバモジュール10を説明する準備として、
図2を参照しながら、バスバモジュール10が取り付けられる電池集合体1について説明する。
図2に示すように、電池集合体1は、上下方向及び左右方向に延びる矩形平板状の複数の単電池2を前後方向に積層して構成される。複数の単電池2の各々は、矩形平板状の電池本体3と、電池本体3の上面6の左右方向両端部から上方に突出する正極4及び負極5と、で構成されている。
【0016】
電池集合体1では、前後方向に隣り合う単電池2の正極4及び負極5の左右方向の位置を互いに逆とすることで、電池集合体1の上面の左端部及び右端部の各々にて正極4及び負極5が前後方向に交互に並ぶように、複数の単電池2が積層されている。
【0017】
以下、バスバモジュール10について説明する。バスバモジュール10は、
図1、
図3及び
図6等に示すように、前後方向に延びる本線回路体20(
図3参照)と、本線回路体20に接続される複数の中継回路体30と、複数の中継回路体30にそれぞれ接続される複数のバスバ40と、複数の中継回路体30にそれぞれ実装される複数の電子部品50と、本線回路体20、中継回路体30及びバスバ40を保持するホルダ60と、本線回路体20及び中継回路体30を覆うカバー70と、を備える。以下、バスバモジュール10を構成する各部材について順に説明する。
【0018】
まず、本線回路体20について説明する。本線回路体20は、容易に屈曲可能な複数の電線から構成されており、
図1及び
図3から理解できるように、左右方向に間隔を空けて前後方向に延びる左右一対の幹線21と、一対の幹線21を構成する全ての電線の一端部が集合された集合部22と、を備える。集合部22には、外部の電圧検出装置(図示省略)等に電気的に接続されるコネクタ(図示省略)が実装される。各電線は、導体芯線の周囲が絶縁被覆で囲まれた構造を有している。よって、近接する電線同志が互いに導通(短絡)することはない。
【0019】
左右一対の幹線21の各々の前後方向複数箇所からは、それぞれ、幹線21を構成する対応する1本の電線の他端部(以下、「枝線23」と呼ぶ)が、幹線21から枝分かれするように左右方向外側に延びている(
図3参照)。各枝線23には、金属製の端子24を介して、対応する中継回路体30がそれぞれ接続されることになる。端子24は、
図8に示すように、枝線23の導体芯線が加締め固定される加締部25と、中継回路体30の後述する開口部31aから露出する配線パターン37に接続される平板状の接続部26と、を一体に備える。
【0020】
中継回路体30の本線回路体20への接続時、枝線23に接続されている端子24の接続部26と、中継回路体30の配線パターン37とが、ハンダ付けによって電気的に接続される(
図8参照)。これにより、各中継回路体30の配線パターン37が、個別に(即ち、他の中継回路体30の配線パターン37とは絶縁された状態で)、端子24、枝線23、幹線21、集合部22、及び、集合部22に実装されるコネクタを、この順に介して、外部の電圧検出装置(図示省略)に導通接続される。中継回路体30は、容易に屈曲可能な枝線23を介して幹線21(本線回路体20)に接続されるため、幹線21(本線回路体20)に対する中継回路体30の前後・左右・上下方向の相対移動に対する柔軟性が高められている(
図5の白矢印を参照)。なお、ハンダ付けは、典型的には、ペースト状のハンダを端子24の接続部26と配線パターン37とで挟んだ後、ハンダを溶融可能な温度に加熱可能なヒータチップをハンダ付け箇所に押し当てるとともにヒータチップを加熱し、ハンダ付けを行う方式(いわゆるパルスヒート方式)により行われ得る。なお、ハンダ付けは、加熱炉を用いたリフロー方式によって行うこともできる。更に、端子24の接続部26と配線パターン37との電気的な接続は、上述したハンダ付けに代えて、超音波接合によって行われてもよいし、導電性の接着剤を用いて行われてもよい。
【0021】
次いで、中継回路体30について説明する。中継回路体30は、容易に屈曲可能なフレキシブル基板(FPC)から構成されている。中継回路体30は、
図3等に示すように、本線回路体20の左右一対の幹線21の各々から左右方向外側に枝分かれする枝線23に端子24を介して接続される。
【0022】
中継回路体30は、
図8に示すように、全体として、前後方向及び左右方向に延び且つ前後方向に長い平板状の形状を有している。中継回路体30は、その表面全体が、後述する開口部31a,36a、36b(
図8参照)を除いて樹脂層で構成されており、且つ、後述する配線パターン37,38(
図7及び
図8参照)を内包している。配線パターン37,38は、典型的には、帯状に延びる銅製の導体パターンである。
【0023】
中継回路体30の前後方向略中央部には、端子側接続部31が設けられている。端子側接続部31は、幹線21(本線回路体20)から枝分かれする枝線23に接続される端子24に接続される箇所である。端子側接続部31の上面には、表面の樹脂層が除去されて配線パターン37が露出する一対の開口部31aが設けられている(
図8参照)。開口部31aに露出する配線パターン37は、中継回路体30の内部を経て、後述するバスバ側接続部36に設けられた開口部36aまで延びている(
図7及び
図8参照)。
【0024】
中継回路体30の後端部には、バスバ側接続部36が設けられている。バスバ側接続部36は、バスバ40が接続される箇所である(
図5等参照)。
図7及び
図8に示すように、バスバ側接続部36の下面において、左右方向中央部には、表面の樹脂層が除去された開口部36aが設けられ、開口部36aを左右方向に挟む左右一対の位置には、表面の樹脂層が除去された開口部36bがそれぞれ形成されている。開口部36aの前側領域には、配線パターン37の端部が露出しており、開口部36aの後側領域には、配線パターン37と離間してバスバ側接続部36に内包されている配線パターン38の一部が露出している。一対の開口部36bの各々には、配線パターン38の他部が露出している。
【0025】
バスバ40の中継回路体30への接続時、一対の開口部36bに露出する配線パターン38と、バスバ40の後述する延出部42(
図3、
図5及び
図7参照)とが、ハンダH(
図7参照)を用いてハンダ付けされることになる。
【0026】
中継回路体30の開口部36aには、電子部品50が実装される(
図8等参照)。電子部品50は、典型的にはチップヒューズである。電子部品50は、開口部36aに露出する配線パターン38及び配線パターン37を跨ぐように、配線パターン38及び配線パターン37にハンダH(
図7参照)を用いてハンダ付けされる。これにより、配線パターン38(即ち、バスバ40)と、配線パターン37(即ち、本線回路体20から枝分かれする枝線23)とが、電子部品50を介して電気的に接続される。これにより、個々のバスバ40と電圧検出装置との間を結ぶ個々の電圧検出回路上に電子部品50を設けることが実現される。
【0027】
このような電子部品50の中継回路体30への実装は、中継回路体30が前後方向に長い長尺の本線回路体20に接続される前の状態(中継回路体30単独の状態)にて、行われることが望ましい。中継回路体30単独の状態で電子部品50を実装することで、本線回路体20と中継回路体30とを共通の回路基板(例えば、フレキシブル基板)で構成する場合に比べ、大型の実装装置を要しない。換言すると、本線回路体20と中継回路体30とが別体であることで、本線回路体20の長さや大きさにかかわらず、中継回路体30に電子部品50を適正に実装することができ、バスバモジュール10の製造コストを低減することができる。加えて、本線回路体20が複数の電線で構成されているため、本線回路体20が回路基板で構成されている場合に比べ、電線の場所の入れ替えが容易である。このため、集合部22に実装されるコネクタに所望の順序(例えば、バスバ40の電位順)に電線を並べて配置することが容易になる。
【0028】
次いで、バスバ40について説明する。バスバ40は、1枚の金属板に対してプレス加工(打ち抜き加工)及び曲げ加工等を施すことで形成される。バスバ40は、
図3に示すように、略矩形平板状のバスバ本体41と、バスバ本体41の前後方向に延びる左右方向内側縁部の後端部から左右方向内側に延びる延出部42と、を備える。延出部42の延出端部には、厚さ方向(上下方向)に開口する貫通孔43(
図5及び
図7参照)が形成されている。貫通孔43は、バスバ40の中継回路体30への接続時にて、バスバ40の延出部42の延出端部と電子部品50との干渉を避けるための逃げ部として機能する。
【0029】
次いで、ホルダ60について説明する。ホルダ60は、樹脂成形品であり、
図6に示すように、左右方向に間隔を空けて前後方向に延びる左右一対の帯状の回路体保持部61と、左右一対の回路体保持部61を前後方向の複数箇所にて左右方向に連結する複数の連結部62と、を一体に備える。左右一対の回路体保持部61には、本線回路体20の左右一対の本線回路体20(幹線21)、及び、本線回路体20(幹線21)から枝分かれする複数の枝線23にそれぞれ接続される複数の中継回路体30が、載置されることになる。
【0030】
前後方向に延びる一対の回路体保持部61の各々は、具体的には、前後方向に並ぶように配置された複数の分割体61aと、前後方向に隣接する分割体61a同士を前後方向に連結する伸縮部63と、で構成されている。各伸縮部63は、弾性変形により前後方向に伸縮容易な形状を有している。このため、一対の回路体保持部61は、前後方向に沿って伸縮可能に構成されている。
【0031】
左右一対の回路体保持部61の各々について、前後方向に並ぶ複数の分割体61aの各々には、バスバ保持部64が左右方向外側に隣接するように一体で設けられている。即ち、左右一対の回路体保持部61の各々の左右方向外側にて、複数のバスバ保持部64が前後方向に並ぶように配置されている。各バスバ保持部64が対応する分割体61aに設けられているため、前後方向に隣り合うバスバ保持部64同士の前後方向の間隔が、伸縮部63の機能により変動可能となっている。
【0032】
バスバ保持部64には、バスバ40のバスバ本体41が収容されることになる。このため、バスバ保持部64は、バスバ本体41の外形状に対応して、上方に開口する略矩形箱状の形状を有している。バスバ保持部64の矩形枠状の側壁部のうちバスバ40の延出部42が横断する箇所には、延出部42との干渉を避けるため、切欠き65が形成されている。バスバ保持部64の底壁部には、前後方向に延びる開口66が形成されている。ホルダ60の電池集合体1への取り付け時、各バスバ保持部64の開口66には、前後方向に隣り合う対応する正極4及び負極5が配置されることになる。
【0033】
次いで、カバー70について説明する。樹脂成形品であるカバー70は、ホルダ60の前後方向に長尺の左右一対の回路体保持部61に載置された、前後方向に長尺の本線回路体20の左右一対の幹線21、及び、幹線21から枝分かれする複数の枝線23にそれぞれ接続される複数の中継回路体30を覆う機能を果たす(
図1参照)。このため、カバー70は、
図6に示すように、前後方向に長尺に延びる帯状の形状を有している。以上、バスバモジュール10を構成する各部材について説明した。
【0034】
バスバモジュール10が電池集合体1に取り付けされた取付完了状態では、電池集合体1において、積層された複数の単電池2が複数のバスバ40を介して電気的に直列に接続される。更に、各バスバ40が、対応する中継回路体30の配線パターン38、電子部品50、対応する中継回路体30の配線パターン37、端子24、対応する枝線23、幹線21、集合部22、及び、集合部22に実装されるコネクタをこの順に介して、外部の電圧検出装置に導通接続される。これにより、各バスバ40の電圧(電位)が、個別に、外部の電圧検出装置によって検出可能となる。なお、何らかの理由により、電子部品50にて定格電流以上の過大電流が流れた場合には、電子部品50のヒューズ機能の発揮により、電子部品50により配線パターン37,38間の電気的接続が遮断される。これにより、電圧検出装置への過大電流の流入が防止されるので、電圧検出装置が保護され得る。
【0035】
バスバモジュール10が取り付けられた電池集合体1の使用状態では、電池集合体1を構成する各単電池2は、充放電に伴う作動熱や外部環境の温度などに起因して積層方向(前後方向)に膨張および収縮する。その結果、電池集合体1も、積層方向(前後方向)に膨張および収縮するように変形する。また、複数の単電池2を積層配置する際の組み付け公差に起因し、一般に、電池集合体1の積層方向(前後方向)における大きさは、製造した電池集合体1ごとに相違し得る(製造ばらつきが生じ得る)ことになる。
【0036】
この点、バスバモジュール10では、各単電池2の熱変形に起因する電池集合体1の積層方向(前後方向)への伸縮や電池集合体1の製造ばらつきが発生しても、ホルダ60が有する複数の伸縮部63の各々が前後方向に伸縮すること、並びに、本線回路体20(幹線21)から枝分かれする枝線23が容易に屈曲することで、電池集合体1の熱変形に起因する伸縮や製造ばらつきが容易に吸収され得る。
【0037】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るバスバモジュール10によれば、複数の電線から構成された本線回路体20(幹線21)から枝分かれするように延びる電線(枝線23)に、回路基板から構成された中継回路体30が電気的に接続される。中継回路体30には電子部品50が取り付けられ(即ち、実装され)、その電子部品50を介して、中継回路体30の配線パターン38とバスバ40とが繋がれる。即ち、バスバ40と電線(枝線23)とが、中継回路体30の電子部品50を介して、電気的に接続される。これにより、個々の電圧検出回路上に電子部品50を設けることが実現される。更に、各単電池2の熱変形に起因して電池集合体1が積層方向に伸縮した際、枝線23が屈曲等することで、各バスバ40が単電池2の積層方向に移動可能となる。同様に、枝線23が屈曲等することで、単電池2の組み付け公差に起因する電池集合体1の積層方向における大きさのばらつきを吸収できる。換言すると、本実施形態に係るバスバモジュール10は、枝線23が変形することで、電池集合体1の伸縮や製造ばらつきに容易に対応できる。したがって、本実施形態に係るバスバモジュール10は、バスバモジュールとしての本来の機能を損なうことなく、電圧検出回路上に電子部品が実装された構成を有する。
【0038】
更に、本実施形態に係るバスバモジュール10によれば、本線回路体20と中継回路体30とが別体として準備された上で電気的に接続される。そのように別体として準備される中継回路体30に電子部品50を取り付ければ(即ち、実装すれば)、本線回路体20と中継回路体30とを一体の回路基板(例えば、フレキシブル基板)で構成する場合に比べ、電子部品50の実装のために大型の実装装置を必要としない。換言すると、本線回路体20の長さや大きさにかかわらず、一般的な実装装置を用いて中継回路体30に電子部品50を適正に実装することができ、バスバモジュール10の製造コストを低減することができる。加えて、本線回路体20が回路基板で構成されている場合に比べ、電線の場所の入れ替えが容易であるので、ECU等の制御装置への入力用コネクタ等に所望の順序(例えば、バスバ40の電位順)に電線を並べて配置することが容易になる。
【0039】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0040】
上記実施形態では、中継回路体30は、フレキシブル基板(FPC)から構成されている。これに対し、中継回路体30は、リジッド基板から構成されてもよい。
【0041】
更に、上記実施形態では、中継回路体30の配線パターン37は、本線回路体20から枝分かれする枝線23が有する導体芯線に接続された端子24を介して枝線23の導体芯線に間接的に接続されている。これに対し、中継回路体30の配線パターン37は、本線回路体20から枝分かれする枝線23が有する導体芯線に直接的に接続されてもよい。
【0042】
ここで、上述した本発明に係るバスバモジュール10の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0043】
[1]
複数の単電池(2)が積層された電池集合体(1)に取り付けられるバスバモジュール(10)であって、
複数の電線から構成され、前記複数の単電池(2)の積層方向に沿って延びるように配置されることになる本線回路体(20)と、
配線パターン(37,38)を有する回路基板から構成され、前記本線回路体(20)から枝分かれするように延びる少なくとも一つの前記電線(23)に前記配線パターン(37)が電気的に接続される中継回路体(30)と、
前記複数の単電池(2)の各々の電極(4,5)に接続されることになるバスバ(40)と、
前記配線パターン(38)と前記バスバ(40)とを繋ぐように、前記中継回路体(30)が有する実装面に取り付けられる電子部品(50)と、
前記バスバ(40)を保持するとともに前記積層方向に沿って伸縮可能なホルダ(60)と、を備える、
バスバモジュール(10)。
【0044】
上記[1]の構成のバスバモジュールによれば、複数の電線から構成された本線回路体(以下、幹線ともいう。)から枝分かれするように延びる電線(以下、枝線ともいう。)に、回路基板から構成された中継回路体が電気的に接続される。中継回路体には電子部品が取り付けられ(即ち、実装され)、その電子部品を介して、中継回路体の配線パターンとバスバとが繋がれる。即ち、バスバと電線(枝線)とが、中継回路体の電子部品を介して、電気的に接続される。これにより、個々の電圧検出回路上に電子部品を設けることが実現される。更に、各単電池の熱変形に起因して電池集合体が積層方向に伸縮した際、枝線が屈曲等することで、各バスバが単電池の積層方向に移動可能となる。同様に、枝線が屈曲等することで、単電池の組み付け公差に起因する電池集合体の積層方向における大きさのばらつきを吸収できる。換言すると、本構成のバスバモジュールは、枝線が変形することで、電池集合体の伸縮や製造ばらつきに容易に対応できる。したがって、本構成のバスバモジュールは、バスバモジュールとしての本来の機能を損なうことなく、電圧検出回路上に電子部品が実装された構成を有する。
【0045】
更に、上記構成のバスバモジュールによれば、本線回路体と中継回路体とが、別体として準備された上で、電気的に接続される。そのように別体として準備される中継回路体に電子部品を取り付ければ(即ち、実装すれば)、本線回路体と中継回路体とを一体の回路基板(例えば、一繋がりのフレキシブル基板)で構成する場合に比べ、電子部品の実装のために大型の実装装置を必要としない。換言すると、本線回路体の長さや大きさにかかわらず、一般的な実装装置を用いて中継回路体に電子部品を適正に実装することができ、バスバモジュールの製造コストを低減することができる。加えて、本線回路体が回路基板で構成されている場合に比べ、電線の場所の入れ替えが容易であるので、ECU等の制御装置への入力用コネクタ等に所望の順序(例えば、バスバの電位順)に電線を並べて配置することが容易になる。
【0046】
[2]
上記[1]に記載のバスバモジュール(10)において、
前記中継回路体(30)の前記回路基板は、
フレキシブル基板又はリジッド基板から構成される、
バスバモジュール(10)。
【0047】
上記[2]の構成のバスバモジュールによれば、フレキシブル基板又はリジッド基板を用いることで、上述したように電子部品を実装した中継回路体を、既存の汎用の実装装置を用いて製造することができる。
【0048】
[3]
上記[1]に記載のバスバモジュール(10)において、
前記中継回路体(30)の前記配線パターン(37)は、
前記少なくとも一つの前記電線(23)が有する導体芯線に直接的に接続される、又は、前記導体芯線に接続された端子(24)を介して前記導体芯線に間接的に接続される、
バスバモジュール(10)。
【0049】
上記[3]の構成のバスバモジュールによれば、電線(枝線)の導体芯線が、中継回路体の配線パターンに直接的に接続される、又は、導体芯線に接続された端子を介して導体芯線に間接的に接続される。既存の電気的接続の技術を用いることで、多大なコストを要することなく、バスバモジュールに中継回路体を導入することができる。なお、この接続は、接続処理に要するコストや接続強度等を考慮して、適宜、選択されればよい。この接続には、例えば、ハンダ付け、超音波接合、及び、導電性の接着剤を用いた接合等の手法を用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 電池集合体
2 単電池
4 正極(電極)
5 負極(電極)
10 バスバモジュール
20 本線回路体
23 枝線(電線)
24 端子
30 中継回路体
37 配線パターン
38 配線パターン
40 バスバ
50 電子部品
60 ホルダ