(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】エネルギ貯蔵器システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6557 20140101AFI20240925BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240925BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240925BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240925BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/658
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022194015
(22)【出願日】2022-12-05
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】10 2021 132 072.0
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501479868
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2-4, D-69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター クリッツァー
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト ツーバー
(72)【発明者】
【氏名】ティム ライヒナー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ ヴォル
(72)【発明者】
【氏名】アルミン シュトリーフラー
(72)【発明者】
【氏名】ディアク メーリング
(72)【発明者】
【氏名】グラジーナ ジェドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン モアゲンシュテアン
(72)【発明者】
【氏名】マイク ヨーエ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ハイネマン
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206605(JP,A)
【文献】特表2020-532078(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107560(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0328251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6557
H01M 10/625
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ貯蔵器システム(1)であって、ケーシング(2)を含んでおり、該ケーシング(2)内に複数の貯蔵器セル(3)が配置されており、該貯蔵器セル(3)が、該貯蔵器セル(3)間に配置された構造(4)により互いに分離されており、前記構造(4)が、少なくとも2つの層(5,6)を有している、エネルギ貯蔵器システム(1)において、
第1の層(5)が押付け層を形成し、第2の層(6)が絶縁層を形成
しており、
前記押付け層が、前記絶縁層を縁部に沿って少なくとも部分的に取り囲んでいることを特徴とする、エネルギ貯蔵器システム。
【請求項2】
前記押付け層が、弾性的に形成されている、請求項1記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項3】
前記押付け層が、変形可能に構成されている、請求項1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項4】
前記押付け層が、弾性的な材料から形成されている、請求項1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項5】
前記押付け層が、少なくとも、貯蔵器セル(3)に面した側で構造化されている、請求項1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項6】
前記押付け層が、隣接する貯蔵器セル(3)に接触する、請求項
1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項7】
前記絶縁層が、前記押付け層内に埋め込まれている、請求項
1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項8】
流体をガイドする構造体が前記押付け層から形成されている、請求項1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項9】
前記絶縁層が、非圧縮性に構成されている、請求項1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項10】
前記絶縁層が、多孔質の材料から形成されている、請求項1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項11】
前記絶縁層が、少なくとも部分的に無機材料から形成されている、請求項1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項12】
前記絶縁層が、繊維性材料を含んでいる、請求項1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項13】
前記絶縁層が、熱絶縁性の粒子を含んでいる、請求項1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項14】
前記熱絶縁性の粒子が、中空球、高多孔質の粒子および/またはエアロゲルを含んでいる、請求項
13記載のエネルギ貯蔵器システム。
【請求項15】
前記押付け層と前記絶縁層との間に、補強層が配置されている、請求項1または2記載のエネルギ貯蔵器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ貯蔵器システムであって、ケーシングを含んでおり、該ケーシング内に複数の貯蔵器セルが配置されており、貯蔵器セルは、貯蔵器セルの間に配置された装置によって互いに分離されており、装置が少なくとも2つの層を有している、エネルギ貯蔵器システムに関する。
【0002】
このようなエネルギ貯蔵器システムは、独国特許出願公開第102018113185号明細書から知られている。エネルギ貯蔵器システム、特に電気的なエネルギのための再充電可能な蓄電器は、特にモバイルシステムで広く普及している。電気的なエネルギのための再充電可能な蓄電器は、例えば、スマートフォンまたはノートパソコンのような携帯型の電子機器において使用されている。さらに、電気的なエネルギのための再充電可能な蓄電器は、電気的に駆動される車両のためにエネルギを提供するためにますます使用されている。この場合、乗用車の他に、例えば二輪車、バンまたはトラックのような、電気的に駆動される車両の大きな帯域が考えられる。ロボット、船舶、航空機および携帯型の作業機械における用途も同様に考えられる。電気的なエネルギ貯蔵器システムの別の使用領域は、例えばバックアップシステムおよびネットワーク安定化システムにおける定置の用途ならびに再生可能エネルギ源からの電気エネルギの貯蔵のための定置の用途である。
【0003】
しばしば使用されるエネルギ貯蔵器システムは、リチウムイオン蓄電池の形態の再充電可能な蓄電器である。リチウムイオン蓄電池は、別の電気的なエネルギのための再充電可能な蓄電器と同様に、大抵は複数の貯蔵器セルを有している。これらの貯蔵器セルは、一緒に1つのケーシング内に設置されている。通常、互いに電気的に接続された複数の貯蔵器セルは大抵の場合組み合わせられて1つのモジュールを形成する。
【0004】
エネルギ貯蔵器システムは、リチウムイオン電池に限定されるものではない。リチウム硫黄電池、固体電池、ナトリウムイオン電池、金属空気電池のような別の再充電可能なバッテリシステムも可能なエネルギ貯蔵器システムである。さらに、スーパーキャパシタも、エネルギ貯蔵器システムとして考慮される。
【0005】
再充電可能な蓄電器の形態のエネルギ貯蔵器システムは、限られた温度範囲においてのみ、最高の電気容量と最良の入力および出力を有している。最適動作温度範囲が上回られるか下回られると、蓄電器の容量、入力性能および出力性能は著しく低下し、エネルギ貯蔵器の機能が損なわれる。さらに過度に高い温度は、エネルギ貯蔵器を不可逆的に損傷してしまう。したがって、持続的に発生する高められた温度と短期的な温度ピークとは、何としても避けなければならない。例えばリチウムイオン蓄電池では、50℃を超える持続的な温度と、80℃を超える短期的な温度ピークとが上回られないようにする必要がある。
【0006】
特に乗用車において使用する場合、エネルギ貯蔵器システムの迅速な充電性が要求される。この場合、エネルギ貯蔵器システムを構成する蓄電池は、短期間で、例えば15分以内に完全に充電またはほぼ完全に充電されることが望ましい。充電システムの約90%~95%の効率に基づいて、充電工程中には、エネルギ貯蔵器システムにおいて大きな熱量が放出され、この熱量はエネルギ貯蔵器システムから導出しなければならない。この熱量は通常の運転状態には放出されない。したがって、充電工程時に発生する熱量を吸収することができるように、エネルギ貯蔵器システムの冷却システムを設計することが必要である。
【0007】
過度に高い温度は、エネルギ貯蔵器を不可逆的に損傷してしまう。これに関連して、特にリチウムイオン電池では、いわゆる熱暴走(「thermal runaway」)が知られている。この場合、短時間で高い熱エネルギ量と、ガス状の分解生成物が放出され、その結果、ケーシング内で高圧および高温が生じる。この効果は、例えば電気的に駆動される車両において電気的なエネルギを提供するために要求されるような、高いエネルギ密度を有するエネルギ貯蔵器システムにおいて特に問題となる。個別のセルのエネルギ量が増大し、ケーシング内に配置されたセルの充填密度が高まることにより、熱暴走の問題は大きくなる。
【0008】
連続したセルの領域において、セルのケーシング壁において数分間の間、600℃~1000℃の範囲の温度が発生し得る。熱絶縁のための装置は、このような使用に耐え、隣接するセルの温度負荷が最大で150℃でしかないように、隣接するセルへのエネルギ伝達を低減しなければならない。重要であるのは、隣接するセルも熱暴走してしまうことを阻止するために、隣接するセルへのエネルギ伝達を制限することである。
【0009】
特にエレクトロモビリティの分野では、小さなスペースで高いエネルギ密度を実現することが求められているが、このことは、セルを絶縁するために使用することのできるスペースを制限する。また、個別の貯蔵器セルが過度に高い熱負荷にさらされないように、貯蔵器セルから放出される熱を導出させることも必要である。したがって、蓄電池を単に絶縁するだけでは、大抵の場合は不十分である。
【0010】
耐用期間にわたって観察すると、リチウムイオン蓄電池は、耐用期間が長くなるにつれて体積が増大する「体積変化」をうける。パウチ形セルの場合、このことは例えば膨張によって認められる。さらに、各充放電工程時に周期的な体積変化が生じる。貯蔵器セルの体積変化は装置により補償しなければならない。この補償は、貯蔵器セルを互いに緊締することにより行われるが、このことは極めて大きな圧力上昇を伴う。代替的には、貯蔵器セル間に圧縮要素が配置され、この圧縮要素が貯蔵器セルの体積変化を吸収する。
【0011】
先行技術から知られている装置では、押しつぶされるにつれて熱絶縁効果が低下し、ほとんどの場合、熱伝導は貯蔵器セル同士の間隔に反比例する。
【0012】
本発明の根底にある課題は、高いエネルギ密度で長寿命および高い動作確実性を確保するエネルギ貯蔵器システムを提供することである。
【0013】
この課題は、請求項1に記載の特徴により解決される。有利な構成は従属請求項が参照される。
【0014】
本発明に係るエネルギ貯蔵器システムは、ケーシングを含んでおり、ケーシング内に複数の貯蔵器セルが配置されており、貯蔵器セルは、貯蔵器セル間に配置された装置により互いに分離されており、装置が、少なくとも2つの層を有しており、第1の層が押付け層を形成しており、第2の層が絶縁層を形成している。第2の層は、好適には非圧縮性に形成されている。
【0015】
この構成では、絶縁層が熱絶縁に最適化されている一方で、押付け層は機械的な特性に最適化されている。熱絶縁は、絶縁層の非圧縮性の構成により改善することができる。
【0016】
複数の第1の層および/または複数の第2の層が設けられていてもよい。装置の全体厚さは、好適には0.5mm~6mmである。0.5mm~6mmの全体厚さは、好適には装置に100kPaまでの面圧が加えられる場合に与えられている。押付け層と絶縁層とは、好適には直列に相並んで配置されている。
【0017】
装置が、絶縁層および押付け層の他に、別の層を含んでいることも可能である。これに関連して、塗布層、防火層、粒子保持層および/または冷却体層を設けることが可能である。全体的に、最適化された機械的特性を有し、これにより貯蔵器セルの高いエネルギ密度およびコンパクトな配置が可能となる一方で、絶縁層が熱に関して最適化されており、隣接する貯蔵器セル同士の絶縁を引き起こす装置が生じる。
【0018】
絶縁層は、付加的に吸熱特性を有していてもよい。絶縁層は、好適には150℃~500℃の温度範囲の吸熱特性を有している。この構成では、押付け要素が、貯蔵器セルから放出されるエネルギを吸収することができ、これにより貯蔵器セル内、または貯蔵器セルにおける許容できない高い温度上昇を回避することができる。また、押付け層が熱伝導性を備えていることも可能である。例えば、金属-水酸化物や金属-炭酸塩を設けることが可能である。
【0019】
押付け層は、吸熱特性を有していてもよい。押付け層が吸熱性かつ/または熱伝導性に形成されていてもよいことによって、絶縁層が高い熱絶縁性を有するように設計されていてもよい。したがって、絶縁層により、隣接する貯蔵器セル間の許容できないほど高い熱交換が行われることを阻止することができる。これに対して、例えば急速充電工程時に発生し得る温度ピークは、押付け層を介して、吸熱性もしくは熱伝導性を備えていることに基づいて、導出することができる。押付け層は吸熱反応する材料、例えば金属-水酸化物または金属-炭酸塩またはクエン酸を含んでいてもよい。押付け層に吸熱反応する材料から成る繊維を備えることも可能である。
【0020】
好適には、押付け層は、1.5W/(m・K)までの熱伝達率を有している。絶縁層は、好適には、最大0.2W/(m・K)の熱伝達率を有している。
【0021】
押付け層は、弾性的に形成されていてもよい。これにより、一方では、貯蔵器セルを意図的に押しつぶすことが可能である。他方では、押付け層は、貯蔵器セルの体積変化を吸収することができる。このため、押付け層が変形可能に構成されていることが可能である。このことは、例えば、押付け層の賦形によって行うことができる。押付け層の材料は変形可能であってもよく、または押付け層は変形可能な材料を含んでいてもよい。変形可能な材料は、例えば、固有の空隙率を有する材料を有していてもよい。
【0022】
好適には、押付け層は機械的に変形可能である。特に好適には、30kPa~1500kPaの面圧で、少なくとも50%の変形性が与えられている。つまり、面圧が上昇するにつれて押付け層の厚さが減少し、その際に初期厚さの少なくとも50%にまで減少可能である。
【0023】
好適には、絶縁層は、押付け層よりも機械的に少なく変形可能である。特に好適には、絶縁層にとって、30kPa~1500kPaの面圧で、最大30%の変形性が与えられている。つまり、絶縁層の厚さも、面圧が上昇するにつれて減少することができるが、絶縁層は、好適には、初期厚さの最大70%までしか減少可能ではない。これにより、絶縁層は、装置が強く押しつぶされた場合でも、まだ良好な熱絶縁特性を提供する。
【0024】
機械的に負荷を加えた場合、押付け層の圧縮率は、好適には絶縁層の圧縮率の少なくとも2倍である。
【0025】
押付け層は、弾性的な材料から形成されていてもよい。特に、押付け層がエラストマ材料から形成されていることも可能である。
【0026】
押付け層は、貯蔵器セルに面した側で構造化されていてもよい。この構造化は、一方では押付け層の変形特性を改善し、他方では熱的な効果も有している。構造化の構成に応じて、貯蔵器セルと押付け層との間に通路が生じ、これらの通路を介して貯蔵器セルから放出された熱を導出することができる。構造化が、熱絶縁を引き起こすことも可能である。したがって、流体をガイドする構造体を押付け層から形成することが可能である。また、流体をガイドする構造体は、熱暴走時に貯蔵器セルから流出するガスを排出することも可能にする。
【0027】
押付け層は、絶縁層を縁部に沿って少なくとも部分的に取り囲んでいてもよい。この構成では、押付け層が少なくとも部分的に絶縁層の周囲に達している。この場合、押付け層は、絶縁層が押付け層内に埋め込まれているように形成されていてもよい。
【0028】
絶縁層は、多孔質の材料から形成されていてもよい。多孔質の材料は、例えば、不織布のような繊維材料、ポリマベースの発泡材、または別の発泡材状の固体材料である。さらに、多孔質の材料は、ゼオライト、エアロゲル、PyroBubbles(パイロバブルス)またはガス充填された中空球を含んでいてよい。さらに、活性炭の使用も可能である。絶縁層は繊維ベースの面構造体であってもよい。また、粒子状の絶縁材が埋め込まれている発泡材ベースの基材も可能である。さらに、押付け層内の予め規定された領域内への粉末状の絶縁材料の注ぎ込みも可能である
【0029】
絶縁層と押付け層との間に補強層が配置されていてもよい。補強層は、箔から形成されていて、プラスチック、金属またはグラファイトから成っていてもよい。
【0030】
絶縁層が部分的に無機材料から形成されていてもよい。絶縁層は、好適には非圧縮性であるが、弾性変形可能である。特に、絶縁層が、繊維性材料を含んでいることが可能である。好適には、絶縁層は、装置に1MPaの面圧が加えられる場合に、絶縁層が少なくとも40%の空隙率を有しているように形成されている。熱伝達率は、最大の圧力負荷時でも、最高0.15W/(m・K)であることが望ましい。絶縁層の空隙率は、負荷を加えられていない状態で、好適には少なくとも60%である。
【0031】
絶縁層における無機材料の割合は、少なくとも60重量パーセントであってよい。無機材料として、特に繊維、中空球、エアロゲル、高多孔質の粒子および/またはその類が考慮される。
【0032】
押付け層は、ポリマ材料、例えばエラストマ、熱可塑性エラストマ、熱可塑性樹脂またはDuroplast(熱硬化性樹脂)から成っていてもよい。押付け層は、金属および/またはセラミックから成っていてもよい。
【0033】
以下、本発明に係るエネルギ貯蔵器システムのいくつかの構成を、以下に図面につきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】装置を備えたエネルギ貯蔵器システムを概略的に示す図である。
【
図2】装置の機械的な作動範囲を概略的に示す図である。
【
図3】第1の構成による装置を概略的に示す断面図である。
【
図4】第2の構成による装置を概略的に示す断面図である。
【
図5】第3の構成による装置を概略的に示す断面図である。
【
図6】第4の構成による装置を概略的に示す断面図である。
【
図7】第5の構成による装置を概略的に示す断面図である。
【
図8】
図6に示した装置を概略的に示す図であり、上図は負荷を加えられていない状態で、下図は機械的に負荷を加えられた状態で示している。
【
図9】第6の構成による装置を概略的に示す図であり、上図は負荷を加えられていない状態で、下図は機械的に負荷を加えられた状態で示している。
【
図10】第7の構成による装置を概略的に示す図であり、上図は負荷を加えられていない状態で、下図は機械的に負荷を加えられた状態で示している。
【
図11】付加的な層を備えた、
図6に示した装置を概略的に示す図であり、上図は負荷を加えられていない状態で、下図は機械的に負荷を加えられた状態で示している。
【
図12】付加的な層を備えた、
図9に示した装置を概略的に示す図である。
【
図13】
図12に示した装置を別の構成で概略的に示す図である。
【
図14】付加的な層を備えた、
図10に示した装置を概略的に示す図である。
【
図15】両側の絶縁層を備えた、
図9に示した装置を概略的に示す図であり、絶縁層が押付け層を全ての側で取り囲んでいる。
【
図16】両側の絶縁層を備えた、
図9に示した装置を概略的に示す図であり、絶縁層が主面に沿って押付け層を覆っている。
【
図17】第1の構成によるフレーム要素を備えた装置を概略的に示す図である。
【
図18】第2の構成によるフレーム要素を備えた装置を概略的に示す図である。
【
図19】第3の構成によるフレーム要素を備えた装置を概略的に示す図である。
【
図20】
図17、
図18または
図19に示した装置を概略的に示す図であり、フレーム要素が、装置を縁部に沿って全ての側で取り囲んでいる。
【
図21】
図17、
図18または
図19に示した装置を概略的に示す図であり、フレーム要素が互いに反対側に位置する2つの縁部に沿って装置を覆っている。
【
図22】付加的な縁部要素を備えた
図3に示した装置を概略的に示す図である。
【
図23】付加的な縁部要素を備えた
図17に示した装置を概略的に示す図である。
【
図24】付加的な縁部要素を備えた
図16に示した装置を概略的に示す図である。
【
図25】絶縁層と面一に接続する付加的なカバー層を備えた
図6に示した装置を概略的に示す図である。
【
図26】付加的な接着層を備えた
図6に示した装置を概略的に示す図である。
【
図27】付加的な2つの接着層を備えた
図6に示した装置を概略的に示す図である。
【0035】
図面は、電気的なエネルギを貯蔵するためのエネルギ貯蔵器システム1を示している。ここでは、エネルギ貯蔵器システム1は、ケーシング2を含んでおり、ケーシング2内には、電気化学的な蓄電池の形態の複数の貯蔵器セル3が配置されている。貯蔵器セル3は、ここではリチウムイオン蓄電池として構成されている。代替的な1つの構成では、貯蔵器セル3が、固体蓄電池として構成されていてもよい。貯蔵器セル3は、角柱状のセルの形態で形成されている。代替的な構成では、貯蔵器セル3はまた、パウチ型セルとして、または丸型セルとして形成されていてよい。貯蔵器セル3は、ケーシング2内で相並んで配置され、スタックを形成している。
【0036】
貯蔵器セル3は、貯蔵器セル3間に配置された構造4によって互いに熱的に分離され、かつ機械的に支持されている。構造4は、少なくとも2つの層5,6を含んでおり、1つの層5が押付け層を形成し、もう1つの層6が絶縁層を形成している。
【0037】
図1は、上述のエネルギ貯蔵器システム1の第1の構成を示している。2つの貯蔵器セル3間に配置された構造4は、第2の層6を含んでおり、この第2の層は、非圧縮性であり絶縁層を形成する。第2の層6の両側には、第1の層5が配置されており、この第1の層5は、圧縮性であり、押付け層を形成する。
【0038】
押付け層5は、突出部または凹設部を有している。さらに、押付け層5は、エラストマ材料から形成されている。押付け層5の構造化とエラストマ材料とにより、押付け層5は極めて変形しやく構成されている。さらに押付け層5は、貯蔵器セル3から放出される熱を吸収し、導出するために形成されている。これに対して絶縁層6は、隣接する貯蔵器セル3同士の熱絶縁を引き起こす。
【0039】
本構成では、絶縁層6の熱伝達率は、0.1W/(m・K)である。構造4は、少なくとも300kJ/kgの吸熱性を有している。本構成では、構造4の厚さは、負荷が加えられていない状態で4mm、組み付けられた緊締状態では3mmである。
【0040】
図2は、構造4の理想的な機械的な作動範囲を示している。貯蔵器セル3の膨張(つまり、貯蔵器セル3間のギャップの減少)は、作動範囲において機械的な力の過度に著しい増加をもたらさないことが確認できる。
【0041】
図3~
図7は、
図1に示したエネルギ貯蔵器システム1の構造4を詳細に示している。構造4は、これらの構成では2つの層5,6を含んでおり、第1の層5は押付け層を形成し、第2の層6は絶縁層を形成している。
図3に示した構成では、押付け層5と絶縁層6とが連続した2つの層として構成されている。
図4に示した構成では、絶縁層6が、両側で押付け層5,5’によって取り囲まれている。
図5に示した構成では、押付け層5は、両側で絶縁層6,6’によって取り囲まれている。
図6に示した構成では、押付け層が、絶縁層6を2つの端面に沿って取り囲んでいる。
図7に示した構成では、絶縁層6は、押付け層5内に埋め込まれている。
【0042】
図8は、
図6に示した構造4を示している。この場合、装置の押付け層5は、貯蔵器セル3の体積変化により変形させられる。この場合、主に押付け層5が変形させられる。その構成に基づいて、この層5は熱的な絶縁にとって低い程度しか重要ではなく、押付け層5の押しつぶしは、構造4の熱特性の悪化につながらない。これに対して絶縁層6は、変形時に圧縮されないか、低い程度にしか圧縮されない。これにより、絶縁層6は、押しつぶされるシステムであっても熱絶縁性を維持する。本実施例では、押付け層5は、シリコーンベースの発泡材から成っている。絶縁層6は、無機の絶縁要素、ここではエアロゲルから成る充填物を備えた主に無機繊維から成る不織布から成っている。代替的な構成では、無機の中空球または多孔質の無機粒子を使用することもできる。
【0043】
図9は、
図1に示したエネルギ貯蔵器システム1を示しており、装置の押付け層5は、貯蔵器セル3の体積変化により変形させられる。この場合、変形は、押付け層5により形成された変形可能な構造要素7により行われる。この構成では、押付け層5は、機械的に堅牢な中実材料、ここではシリコーンエラストマから成っている。機械的に負荷が加えられた場合、変形可能な構造要素7は押しつぶされた状態7’となり、これにより押付け層5が貯蔵器セル3の体積膨張を吸収することができる。
【0044】
図10は、構造4の別の構成を示しており、この構成では押付け層5が、貯蔵器セル3の体積変化により変形させられる。この構成では、変形は、押付け層5の変形可能な構造要素7により行われる。この場合、押付け層5の構造全体が変形させられる。
【0045】
図11は、
図6に示した構造4を示しており、ここでは押付け層5と絶縁層6との間に補強層8が配置されている。補強層8は、堅い層であり、無機材料から成っている。無機材料は、セラミック、グラファイト、金属またはDuroplastであってよい。押付け層5の変形時に、補強層8は構造4の表面にわたって押しつぶしを分散させる。さらに、補強層8は構造4の平面内で熱を分散させる。
【0046】
図12および
図13はそれぞれ、
図9に示した構造4を示し、この場合、押付け層5と絶縁層6との間に補強層8が配置されている。補強層8は、押付け層5と絶縁層6との間に配置されている。補強層8は、変形可能な構造要素7により引き起こされる押付け層5の変形により発生する圧力不均一性を分散させる。補強層8により、絶縁層6への圧力は、十分に均等に分散される。このことは、絶縁層6を局所的な圧力ピークから保護する。変形可能な構造要素7は、絶縁層6とは反対に(
図12)、または絶縁層6(
図13)に向けられていてよい。
【0047】
図14は
図10に示した装置を示しており、ここでは、押付け層5と絶縁層6との間に補強層8が配置されている。補強層8は、堅い層であり、無機材料から成っている。無機材料は、セラミック、グラファイト、金属、またはDuroplastであってよい。押付け層5の変形時に、補強層8は構造4の表面わたって押しつぶしを分散させる。さらに、補強層8は構造4の平面内で熱を分散させる。
【0048】
図15および
図16はそれぞれ、
図9に示した構造4を示しており、ここでは2つの押付け層5が設けられており、これらの押付け層5は、絶縁層6を面状に取り囲んでいる。押付け層5は、絶縁層6を付加的に2つの端面において取り囲んでいる(
図15)。この配置は、構造に基づいて粒子が放出され得る絶縁層6の使用を可能にする。
図16による構成では、2つの押付け層5が絶縁層6をその面状に覆っている。この構成は、容易に製造可能である。
【0049】
図17~
図19は、絶縁層6が端面のみにおいて、またはフレーム状に押付け層5により取り囲まれている構造4を示している。この構成は、より少ない圧力安定性の絶縁層6の使用を可能にする。押付け層5は、変形可能な構造要素7を有していてよい。
図17に示した構成では、変形可能な構造要素7は、シリコーンエラストマから成っている。完全に変形させられた状態で、フレームを形成する押付け層5の厚さは、絶縁層6の厚さよりもいまだ大きい。
図18に示した構成では、変形可能な構造要素7を挿入することができる切欠き9が設けられている。フレームを形成する押付け層5の厚さは、完全に変形させられた状態では、絶縁層6の厚さとほぼ同じである。
図19に示した構成では、別の切欠き10が設けられており、この切欠き10内に、特に柔らかいシリコーン材料を圧入することができる。この構成でも、押付け層5のフレームの厚さは、完全に変形させられた状態で絶縁層6の厚さに相当する。
【0050】
全ての実施形態において、押付け層の変形性を、絶縁層6の機械的な特性に適合させることができる。押付け層5の比較的小さな載置面に基づいて、比較的硬い材料を使用することができる。なぜならば、結果として押付け層5に加えられる力が大きくなるからである。他方で、これにより特に容易に変形可能な絶縁層6を使用することもできる。
【0051】
図20は、押付け層5が絶縁層6を縁部に沿って全ての側で取り囲んでいる、
図17~
図19に示した構造4の構成を示している。
図21は、押付け層5が2つの互いに反対側に位置する縁部に沿って絶縁層6を取り囲んでいる
図17~
図19に示した構造4の構成を示している。
【0052】
図22~
図24は、絶縁層6が、端面側または全面的に別のフレーム要素11によって取り囲まれている構造4を示している。フレーム要素11は、絶縁層6とほぼ同じ厚さを有している。フレーム要素11は、比較的硬い材料、例えば、高ショア硬度のシリコーンエラストマから成っていてもよい。これにより、絶縁層6は、高い機械的な力が加えられた場合でも、変形から保護される。
【0053】
図25は、絶縁層6がカバー層12により覆われている構造4を図示している。カバー層12は、構造4の組付けおよび作動時に、粒子が絶縁層6から放出されないことを確実にする。このようなカバー層12の存在により、絶縁層6のために、あまりバインダを含まない材料も使用することができる。例えばエアロゲル、中空球または超多孔質充填材から成る粒子ばら材の使用も可能である。
【0054】
図26および
図27は、構造4の別の構成を示している。
図26に示した構成では、絶縁層6上に外側の接着テープ13が設けられ、この接着テープ13が絶縁層6を保護し、貯蔵器セル3のケーシングに構造4を組み付けるためにも使用することができる。
図27に示した構成では、絶縁層6が内側の接着層14をさらに含んでいる。この内側の接着層14は、押付け層5と絶縁層6との先行する組付けのために働く。これにより、それ自体が最適化された2つの層を製造することができ、これらの層を、例えばラミネートプロセスにおいて統合することができる。