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特許7560542磁場計測用ケーブルおよび分布式坑内磁場計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】磁場計測用ケーブルおよび分布式坑内磁場計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/032 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
G01R33/032
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022512412
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 MY2020050071
(87)【国際公開番号】W WO2021034186
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】PI2019004848
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(73)【特許権者】
【識別番号】522062092
【氏名又は名称】ペトロリアム・ナショナル・ブルバド・(ペトロナス)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】岸田 欣増
(72)【発明者】
【氏名】アマド・リザ・ガザーリー
(72)【発明者】
【氏名】モハマド・ファイザル・ビン・アブド・ラヒム
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0180658(US,A1)
【文献】特開平6-230091(JP,A)
【文献】特開平9-280908(JP,A)
【文献】特開平6-307896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地点の磁場を計測するための光ファイバを有する磁場計測用ケーブルであって、
前記磁場計測用ケーブルの軸心部に配設された電気ケーブル、
複数のケーブルと、前記光ファイバを覆うように螺旋状に巻回された複数の鋼線と前記光ファイバとで構成される光ケーブルとが、前記電気ケーブルの外周を覆うように螺旋状に巻回された外周ケーブル、
を備え、前記所定の地点に設置された前記光ファイバの散乱光による周波数シフトを検出することを特徴とする磁場計測用ケーブル。
【請求項2】
前記外周ケーブルは、内周側に配置された第1の外周ケーブルと外周側に配置された第2の外周ケーブルとで構成され、前記第1の外周ケーブルは、温度計測用光ファイバ内蔵ケーブルを有し、前記第2の外周ケーブルには、前記光ケーブルが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁場計測用ケーブル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の磁場計測用ケーブルと、信号を演算し記憶する演算装置と、を備え、
予め測定して求めた光ファイバの散乱光による周波数シフトと磁場との関係を基に、前記演算装置により、前記磁場計測用ケーブルにより検出された前記周波数シフトの信号を演算して、被測定体である坑井の内部の測定位置に配置した前記光ケーブルの設置位置に対応させて磁場の分布を求めることを特徴とする分布式坑内磁場計測システム。
【請求項4】
請求項2に記載の磁場計測用ケーブルと、信号を演算し記憶する演算装置と、を備え、
予め測定して求めた光ファイバの散乱光による周波数シフトと磁場との関係を基に、
前記演算装置により、前記周波数シフトの信号および前記温度計測用光ファイバ内蔵ケーブルで計測した信号を演算して、被測定体である坑井の内部の測定位置に配置した前記光ケーブルの設置位置に対応させて、前記光ケーブルの設置位置での温度の影響を補正した磁場を求めることを特徴とする分布式坑内磁場計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、磁場計測用ケーブルおよび分布式坑内磁場計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油井の電気計測法としての電計検層は、油井計測の基本技術であり、歴史上の豊富な資料が収集されており、油田開発に重要な役割を果たしてきた。最近、この電気計測法に代わって、光ファイバを用いる方式が普及されつつある(例えば、特許文献1、2参照)。
しかし、光ファイバは、電磁物に影響されないことが一般的に認識されている特徴であり、電計検層に類似する技術は、現状では実用化されていない。
【0003】
しかし、最近、レイリー散乱の偏波に注目した分布計測技術が実現された(例えば、非特許文献1参照)。この技術では、光ファイバ中に生じた複屈折ベクトルβに注目して、式(1)が提示されている。
【0004】
【数1】
【0005】
ここで、jは光ファイバの軸方向を示す変数であり、右辺の第1項は、直線性の複屈折を表し、右辺第2項は、周回性の複屈折を表している。
なお、直線性の複屈折は、被測定物の形状、あるいは変形などによって生ずるものであり、周回性の複屈折は、被測定物のねじり、あるいは磁場によるファラデー効果(Faraday effect)によって生ずるものである。
【0006】
また、上記の式(1)において、βは、以下に示す式(2)で表される(非特許文献2参照)。
【数2】
【0007】
ここで、gは、弾光弾性係数(g≒0.15)、τは、ねじり角、νはVerdet係数、Bは磁場強度、φは光の回転角(例えば、非特許文献3参照)を示す。
なお、νは、ν=1.43/λ(λの単位はμm)で表され、通常(λ=1.5μmの場合)、0.6rad/T/mで与えられる。
【0008】
磁場によるファラデー効果については、電流の分布計測を実現するためのPOFDR(Polarimetric Optical Frequency Domain Reflectometerの略。標準のOFDRに偏光制御器が附属している)法が知られている。
【0009】
これについて、Palmieriらは、電流計測の実験装置を用いて、100Aの分解能で最大2.5kAまで電流強度を変化させた時の、磁場変化によるファラデー効果(回転角の変化)について調べており、測定位置が変わると上記回転角が変化していることを計測により明らかにした。
【0010】
ここで、Palmieriらが用いた実験装置においては、長さ20mの2つの電流回路が互いに1.2m離れて平行に設置され、この電流回路を用いて、中央の導体1から大きさIの電流が、その外側に位置する2本の導体(うち1本が今回の計測に供される導体3)に、それぞれ半分ずつに分かれて大きさI/2の電流が流れるように接続されている。また、上記導体1、および導体3の外周部には、センシング機能を持つ計測用ケーブルが螺旋状にピッチpで巻かれており、この実験装置において、上述のPOFDR法が適用され、測定位置の変化に対する上記回転角の変化、すなわち、磁場変化によるファラデー効果が測定されている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2011-27533号公報
【文献】特表2005-517105号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】Luca Palmieri, ”Distributed polarimetric measurements for optical fiber sensing”, Optical Fiber Technology 19, December 2013,pp.720-728.
【文献】Andrea Galtarossa et al., “Distributed polarization sensing”, Proc. SPIE 10323, 25th International Conference on Optical Fiber Sensors, 1032318, 23 April 2017.
【文献】Zhenyang Ding, et al.,” Distributed Optical Fiber Sensors Based on Optical Frequency Domain Reflectometry:A review”, Sensors 2018,18,1072;doi10.3390/s18041072.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記、Verdet係数は、光ファイバの偏光感度を決定するものであるが、その大きさは、大幅には改善できていない。具体的には、現実に要求される精度は10-4Aであるのに対して、上記文献による研究では、0.1KAの電流計測精度しか実現されていない。
また、上述のように、複屈折ベクトルβは、「ねじり」に対する依存性があるため、この影響が無視できないが、実際の坑内での使用条件、すなわち、長尺(例えば3km以上)の光ファイバが必要となること、また厳しい環境中での使用となること、等を考慮すると、ねじれない条件は保証困難である。
【0014】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、Verdet係数の精度の課題およびねじれの課題を解決した、光ファイバを用いた磁場計測用ケーブルあるいは分布式坑内磁場計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願に開示される磁場計測用ケーブルは、
所望の地点の磁場を計測するための光ファイバを有する磁場計測用ケーブルであって、
前記磁場計測用ケーブルの軸心部に配設された電気ケーブル、
複数のケーブルと、前記光ファイバを覆うように螺旋状に巻回された複数の鋼線と前記光ファイバとで構成される光ケーブルとが、前記電気ケーブルの外周を覆うように螺旋状に巻回された外周ケーブル、
を備え、前記所望の地点に設置された前記光ファイバの散乱光による周波数シフトを検出することを特徴とする。
【0016】
本願に開示される分布式坑内磁場計測システムは、
上記磁場計測用ケーブルと、信号を演算し記憶する演算装置と、を備え、
予め測定して求めた光ファイバの散乱光による周波数シフトと磁場との関係を基に、前記演算装置により、前記磁場計測用ケーブルにより検出された前記周波数シフトの信号を演算して、被測定体である坑井の内部の測定位置に配置した前記光ケーブルの設置位置に対応させて磁場の分布を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願に開示される磁場計測用ケーブルあるいは分布式坑内磁場計測システムによれば、Verdet係数の精度の課題およびねじれの課題を解決した、光ファイバを用いた磁場計測用ケーブルあるいは分布式坑内磁場計測システムを提供できるという顕著な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1による分布式坑内磁場計測システムの原理を説明するための光ファイバの物性の一例を示した図である。
図2】実施の形態1による分布式坑内磁場計測システムの原理を説明するための磁場変化と光散乱光の時間変化の関係を示す図である。
図3】実施の形態1による磁場と光散乱光の時間変化と空間変化の関係を説明するための図である。
図4】実施の形態1による分布式坑内磁場計測システムに用いられる磁場計測用ケーブルの一例を示す図である。
図5図4の磁場計測用ケーブルの軸に垂直な面の断面図である。
図6図4の磁場計測用ケーブルに使用される電気ケーブルの仕様例を示す表図である。
図7】実施の形態1による分布式坑内磁場計測システムの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
まず、本願の課題を解決するために用いた光ファイバの物性、特に磁場との関係について、以下説明する。
従来、通常、通信用光ファイバは、上記で説明したような磁場反応はないと言われていた。ところが、円柱状の電磁石の円柱の軸心位置に設置した光ファイバを用いて試験したところ、この光ファイバが磁場反応を示すことが判明した。これについて、以下具体的に、図を用いて説明する。
【0020】
図1は、磁場中における光ファイバの後方散乱光であるレイリーおよびブリルアン散乱光の周波数シフトの空間分布の一例を示す図である。図において、横軸は距離(単位:m)を表し、縦軸はブリルアン散乱光の周波数シフト(単位:MHz)、およびレイリー散乱光の周波数シフト(単位:GHz)を表している。そこで、光ファイバの距離の座標59.9mから60.3m間に相当する位置に電磁石を設置し、この電磁石に流す電流の値を変化させ電磁石によって発生する磁場強度を変化させた所、ブリルアン散乱光、およびレイリー散乱光ともに、この図のグラフに示すように、設置した電磁石位置に対応して周波数シフトが現れた。このことから逆に、ブリルアン散乱光、およびレイリー散乱光を用いて、磁場の変化を計測できることが予想できる。
【0021】
そこで次に、この磁場強度の変化と周波数シフトとの定量的な関係を調べるため、レイリー散乱光を用いて、磁場強度変化(ここでは磁束密度の変化の意味)の時間変化と(レイリー散乱光の)周波数シフトとの関係を定量的に測定した。この結果を図2に示す。
【0022】
図2において、横軸は測定開始後の時間を分単位で表している。一方、縦軸は、レイリー散乱光の周波数シフトをGHz単位で示している。図中、点を繋いだ曲線は、レイリー散乱光の周波数シフトの変化を示している。一方、太い実線で示した曲線は、磁束密度の時間変化を示している。磁束密度は、この図に示すように、測定時間30分間で0から8T(テスラ)まで上昇させ、その後また、0まで変化させた。
【0023】
この図に示すように、磁場(磁束密度)Mの値が0(ゼロ)から8T(テスラ)まで上昇するにつれて、レイリー散乱光の周波数シフトは、0(ゼロ)から約10GHz程度まで変化していることが判る。また、磁束密度の値が8Tの間(測定開始後約15分から28分の間)においては、レイリー散乱光の周波数シフト(量)は、若干の変化はあるものの、約10GHz~12GHzと、ほぼ一定といえる値を示している。
【0024】
以上の結果から、磁束密度の変化に伴って、レイリー散乱光の周波数シフト(量)が変化すると言える。すなわち、光ファイバの散乱光を用いて磁場強度を計測することができることが明らかとなった。なお、1GHz当たりのレイリー散乱光の周波数シフトに対する光ファイバの歪変化量は25~30μεである。
【0025】
図3は、磁場強度とこれに対するレイリー散乱光の周波数シフトの時間変化と空間変化を同時に表示した図である。この図において、横軸は、磁場中心位置を0(ゼロ)としたときの磁場中心(位置)からの距離(m単位)を表している。縦軸は、磁場中心位置(中心軸位置)では、1から9T(テスラ)まで、1テスラ単位飛びに目盛りをつけて、磁場強度を表したものである。また、図の左側では、2GHz飛びに目盛りをつけて、レイリー散乱光の周波数シフトを表したものである。
【0026】
また、図中のグラフは、図の中心軸位置から左半分の側に、四角の菱形形状で示したものが磁場強度(磁束密度)の空間変化(位置変化による強度変化)を示したものであり、この図に示すように、ガウス分布状に変化している。
一方、この場合において、レイリー散乱光の周波数シフトは、連続して繋がった曲線で示した各1個のデータ(ここで、中心軸上でほぼ同じ値で対となったデータは、それぞれ、磁場強度としては同じ値に対応するが、時間的には、磁場強度を増加させた場合のデータと磁場強度を減少させた場合のデータを合わせて示したものである)が、時間が経過するにつれて、横軸の対応する位置に合わせて、変化する様子を示したものである。
【0027】
このように、この図は、磁場強度とこれに対するレイリー散乱光の周波数シフトの時間変化と空間変化とを同時に表示した図となっており、レイリー散乱光の周波数シフトは、中心軸に対して、ほぼ左右対称な分布が得られていると言える(磁場強度を一定値まで大きくしていく場合と一定値から小さくしていく場合におけるヒステリシスは、ほぼないと言える)。
【0028】
以上を前提として、分布式坑内磁場計測システムに使用可能な、磁場計測用ケーブル10を作製した。この磁場計測用ケーブル10について、以下、図を用いて詳しく説明する。
【0029】
図4および図5に、分布式坑内磁場計測システムに使用される磁場計測用ケーブル10の一例を示す。これらの図において、磁場計測用ケーブル10の中心軸位置には、螺旋状に巻回されたFIMT(Fiber in Metal Tube)タイプの、複数個の導線で構成された導体ケーブルであるアーマードケーブル形態の電気ケーブル1が配置されている。
【0030】
また、この電気ケーブル1のすぐ外側には、この電気ケーブル1を保護するためもあり、2つの層で形成された外周ケーブル2が構成されている。この外周ケーブル2について以下、さらに詳しく説明する。
【0031】
まず、この外周ケーブル2の内周位置には、螺旋状に巻回された、複数の鋼線から構成される第1の外周ケーブル2aが配置されている。また、この第1の外周ケーブル2aを構成する複数の鋼線の一部には、例えば、温度計測用光ファイバ内蔵ケーブル4で置き換えられている。
【0032】
また、上記第1の外周ケーブル2aの外周(複数の鋼線および温度計測用光ファイバ内蔵ケーブル4の外周)には、同様に、螺旋状に巻回された、複数の鋼線から構成される第2の外周ケーブル2bが配置されている。また、第2の外周ケーブル2bの一部には、この第2の外周ケーブル2bを構成する鋼線の一部を置き換える形態で、電磁物性を持つ被測定体の磁場の分布を測定する磁場計測用光ケーブル3が配置されている。
【0033】
ここで、上記の磁場計測用光ケーブル3は、その中心軸位置に配置され、磁場を計測するための光ファイバケーブル3a、およびこの光ファイバケーブル3aを保護するため、その外周に、螺旋状に巻回して配置された、複数の鋼線から構成される外周保護層3bから構成されている。
【0034】
以上のように構成した磁場計測用ケーブル10は、磁場計測用光ケーブル3を、その外周位置に配置しており、また、この磁場計測用光ケーブル3は、磁場計測用として、光ファイバケーブル3aを使用しているため、上述の図1図3で説明したレイリー散乱光の周波数シフトを、この磁場計測用光ケーブル3で計測して、その計測で得られた信号を演算し記憶する演算装置20を備えた分布式坑内磁場計測システム100を用いて演算することにより、被測定対象の油井(以下、被測定体とも呼ぶ)における坑内磁場の分布を、測定することができる(図7参照)。
ここで、この磁場計測用光ケーブル3は、その外周に螺旋状に構成した外周保護層3bにより、油井の坑内のような、長尺で厳しい環境下においても、ケーブル自体が捩れる恐れはない。また、以上において用いられる鋼線は、すべて、磁気シールドしない材料(非磁気シールド材料とも呼ぶ。以下同様)によって構成されている。なお、この鋼線は、鋼線以外でできた非磁気シールド材料によって構成されていてもよい。
【0035】
また、この磁場測定に温度の影響がある場合でも、上記磁場計測用ケーブル10は、温度計測用光ファイバ内蔵ケーブル4を有しているため、上記磁場計測用光ケーブル3で計測した信号と、この温度計測用光ファイバ内蔵ケーブル4で計測した信号の2つの信号を用いて、坑内の各測定場所での温度の影響を補正する(温度について補償する)ことにより、より精度の高い、坑内磁場の計測をすることができる。
【0036】
さらに、この磁場計測用ケーブル10の構造は検査済みのものを使用しており、多数コアの銅製の電気ケーブル1は、図6の表に示す仕様を満足可能なものである。また、図4の記号ODは、磁場計測用ケーブル10の外径を示し、具体的には、上記電気ケーブル1としてAWG(American wire gauge)16仕様のものを採用する場合には、7.3mmである。ここで、AWGは主に北米で1857年以降使用されている、固体、非鉄のワイヤの直径、断面積、電気抵抗などを定めた標準規格のことであり、数字が大きいほど外径が小さくなっている。例えば、AWG16ではワイヤの直径dn(単位:mm)は以下に示す式(3)でn=16とすればよい。
【0037】
【数3】
【0038】
また、この規格は撚り線ワイヤ(例えば、互いに螺旋状に巻回されたワイヤが該当)でも使用されている。AWG標準規格では、個々の撚り線の断面積の合計値で表している(撚り線間の空隙は算入されない)。ワイヤ面積の25%を占める螺旋状の撚り線の場合の外径は、等価の固体ワイヤの約13%増しとなる。この撚り線ワイヤでは、AWG全体のサイズ、撚り線の数、撚り線のAWGサイズの3つの数値で特徴付けられる。
【0039】
なお、本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0040】
1 電気ケーブル、
2 外周ケーブル、
2a 第1の外周ケーブル、
2b 第2の外周ケーブル、
3 磁場計測用光ケーブル、
3a 光ファイバケーブル、
3b 外周保護層、
4 温度計測用光ファイバ内蔵ケーブル、
10 磁場計測用ケーブル、
20 演算装置、
100 分布式坑内磁場計測システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7