(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】遺伝子スプライシングを調節するために有用な化合物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/712 20060101AFI20240925BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K31/712
C12N15/113 Z ZNA
(21)【出願番号】P 2022517824
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2020023598
(87)【国際公開番号】W WO2021055011
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-03-06
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522108253
【氏名又は名称】アルネー サイエンシズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル、スディール
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-537952(JP,A)
【文献】特表2004-507272(JP,A)
【文献】特表平09-506248(JP,A)
【文献】国際公開第2019/040923(WO,A1)
【文献】特表2012-515547(JP,A)
【文献】特表2009-534578(JP,A)
【文献】Nucleic Acid Therapeutics,2019年02月,Vol.29, No.1,pp.44-50
【文献】Molecular Therapy: Nucleic Acids,2017年,Vol.7,pp.20-30
【文献】ACS Chem. Biol.,2017年,Vol.12, No.10,pp.2503-2509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAプロセシングを調節するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
を含み、前記少なくとも12個の連続する核酸塩基は、標的RNAの同じ長さの部分に相補的
であり、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、
2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1個の領域を含み
、残りのヌクレオチドが、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせであ
り、
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端、又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端にある、
医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも2つのmRNA転写物を含む遺伝子において第1のmRNA転写物を選択するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチ
ドを含み、前記少なくとも12個の連続する核酸塩基は、標的プレ-mRNAの同じ長さの部分に相補的
であり、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、第2のmRNA転写物に対する前記プレ-mRNAのスプライス部位を標的とし、それにより、前記第2のmRNA転写物に対する前記スプライス部位を遮断し、前記第1のmRNA転写物への前記プレ-mRNAのスプライシングを指示し、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、
2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1個の領域を含み
、残りのヌクレオチドが、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせであ
り、
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端、又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端にある、
医薬組成物。
【請求項3】
RNAプロセシングの調節が対象を治療するのに有益である、前記対象の疾患または障害を治療する
ための医薬組成物であって
、前記医薬組成物は、少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチ
ドを含み、前記少なくとも12個の連続する核酸塩基は、標的RNAの同じ長さの部分に相補的
であり、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、
2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1個の領域を含み
、残りのヌクレオチドが、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせであ
り、
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端、又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端にある、
医薬組成物。
【請求項4】
標的RNAのナンセンス変異依存分解を誘導するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
を含み、前記少なくとも12個の連続する核酸塩基は、標的RNAの同じ長さの部分に相補的であり、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、
2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1個の領域を含み
、残りのヌクレオチドが、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせであ
り、
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端、又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端にある、
医薬組成物。
【請求項5】
タンパク質または機能性mRNAをコードするmRNAのレベルを増加させて、前記タンパク質または前記機能性mRNAの発現を増加させるための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
を含み、前記少なくとも12個の連続する核酸塩基は、標的RNA同じ長さの部分に相補的であり、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、
2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1の領域を含み
、残りのヌクレオチドが、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせであ
り、
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端、又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端にある、
医薬組成物。
【請求項6】
前記標的RNAが、保持されたイントロンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
前記2’-置換ヌクレオチドが、2’O-メチルリボヌクレオチドまたは2’-MOEから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの前記5’末端にある、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの前記3’末端にある、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、2~4ヌクレオチドの長さである、請求項1~
9のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、4ヌクレオチドの長さである、請求項
10に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
エクソンが
、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項13】
エクソンが
、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項14】
エクソンが
、保持されたイントロン
の5’スプライス部位に隣接し、エクソンが
、保持されたイントロン
の3’スプライス部位に隣接する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項15】
エクソンが、前記第2のmRNA転写物の前記スプライス部位
の5’側に隣接する、請求項2および請求項2に従属する場合の請求項6~
14のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項16】
エクソンが、前記第2のmRNA転写物の前記スプライス部位
の3’側に隣接する、請求項2および請求項2に従属する場合の請求項6~
14のいずれか一項に記載のに記載の
医薬組成物。
【請求項17】
エクソンが、前記第2のmRNA転写物の前記スプライス部位
の5’側に隣接し、エクソンが、前記第2のmRNA転写物の前記スプライス部位
の3’側に隣接する、請求項2および請求項2に従属する場合の請求項6~
14のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項18】
前記
医薬組成物が、タンパク質の量もしくは活性の欠乏また
はプレ-mRNAから発現する機能性mRNAの量もしくは活性の欠乏に起因する状態の対象を治療するのに有用である、請求項1~
17のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項19】
標的タンパク質または前記機能性mRNAの量または活性の欠乏が、前記タンパク質または前記機能性RNAのハプロ不全によって引き起こされる、請求項
18に記載の
医薬組成物。
【請求項20】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、薬学的に許容され得る担体を含む組成物の一部である、請求項1~
19のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項21】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、局所投与される、請求項1~
20のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項22】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つのホスホロチオアートヌクレオチド間結合を含む、請求項1~
21のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項23】
前記ヌクレオチド間結合の少なくとも半分が、ホスホロチオアートである、請求項
22に記載の
医薬組成物。
【請求項24】
前記ヌクレオチド間結合のすべてが、ホスホロチオアートである、請求項
22に記載の
医薬組成物。
【請求項25】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、一本鎖である、請求項1~
24のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項26】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、その全長にわたって前記標的mRNAの一部と少なくとも90%相補的である、請求項1~
25のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項27】
前記
標的RNAが、プレ-mRNA、mRNA、非コードRNAから選択される、請求項1~
26のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項28】
少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、
前記少なくとも12個の連続する核酸塩基は、保持されたイントロンを含む標的プレ-mRNAの同じ長さの部分に相補的であり、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、
2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1個の領域を含み
、残りのヌクレオチドが、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせであ
り、
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端、又は前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端にある、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項29】
前記2’-置換ヌクレオチドが、2’O-メチルリボヌクレオチドまたは2’-MOEから選択される、請求項
28に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの前記5’末端にある、請求項
28に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項31】
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの前記3’末端にある、請求項
28に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項32】
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、2~4ヌクレオチドの長さである、請求項
28~
31のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項33】
前記連続するデオキシリボヌクレオチドが、4ヌクレオチドの長さである、請求項
32に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項34】
エクソンが、前記保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接する、請求項
28~
33のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項35】
エクソンが、前記保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接する、請求項
28~
33のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項36】
エクソンが、前記保持されたイントロン
の5’スプライス部位に隣接し、エクソンが、前記保持されたイントロン
の3’スプライス部位に隣接する、請求項
28~
33のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項37】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、局所投与される、請求項
28~
36のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項38】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つのホスホロチオアートヌクレオチド間結合を含む、請求項
28~
37のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項39】
前記ヌクレオチド間結合の少なくとも半分が、ホスホロチオアートである、請求項
38に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項40】
前記ヌクレオチド間結合のすべてが、ホスホロチオアートである、請求項
38に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項41】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、一本鎖である、請求項
28~
40のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項42】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、その全長にわたって前記標的mRNAの一部と少なくとも90%相補的である、請求項
28~
41のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項43】
前記RNAが、プレ-mRNA、mRNA、および非コードRNAから選択される、請求項
28~
42のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項44】
請求項
28~
43のいずれか一項に記載の前記オリゴヌクレオチドと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項45】
RNAのプロセシングが、スプライシングを含む、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項46】
RNAのプロセシングが、スプライシングを含む、請求項3に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年9月19日に出願された米国仮出願第62/902,603号および2019年12月4日に出願された米国仮出願第62/943,539号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
アンチセンスオリゴヌクレオチド治療手法の開発の可能性は、1978年に発表された論文で最初に示唆された。Zamecnik and Stephenson、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:280-284 and 285-288(1978)は、ラウス肉腫ウイルス(RSV)ゲノムの一部に相補的な13塩基長の合成オリゴヌクレオチドが、感染したニワトリ線維芽細胞におけるRSV複製を阻害し、悪性肉腫細胞への初代ニワトリ線維芽細胞のRSV媒介性形質転換を阻害することを開示している。
【0003】
アンチセンスオリゴヌクレオチド手法は、選択されたmRNA、マイクロRNA、プレRNAまたはミトコンドリアRNAの標的へのDNAおよび/またはRNA系オリゴヌクレオチドの配列特異的結合およびそれに起因する翻訳の阻害を利用するものである。翻訳および最終的に遺伝子発現のこのオリゴヌクレオチドに基づく阻害は、1つ以上の細胞機構の結果であり、これには、(i)翻訳の直接的(立体的)妨害、(ii)RNaseHが媒介する阻害、および(iii)RNAiが媒介する阻害(例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、スプライシングの調節、非コードRNAおよび一本鎖RNAi(ssRNAi)の阻害)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0004】
アンチセンス技術の歴史から、mRNAに結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドの決定は比較的容易であるが、遺伝子発現を阻害する真の潜在能力を有し、したがって良好な臨床候補であるアンチセンスオリゴヌクレオチドの最適化は、容易ではないことが明らかになっている。オリゴヌクレオチドに基づくため、アンチセンス技術は、インビボで不安定であり、オフターゲット効果、例えば意図しない免疫刺激(Agrawal&Kandimalla(2004)Nature Biotech.22:1533-1537)を生じる可能性があるという固有の問題を有する。
【0005】
これらの各技術を最適化する手法は、生体安定性、RNA標的に対する親和性、細胞透過性、およびインビボ活性に対処することに焦点を当ててきた。多くの場合、これらは競合する考慮事項を示している。例えば、従来のアンチセンスオリゴヌクレオチドはホスホジエステルヌクレオチド間結合を利用したが、これは生物学的に不安定すぎて有効ではないことが判明した。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドを修飾して、より生物学的に安定にすることに焦点が当てられた。初期の手法では、ヌクレオチド間結合を修飾して、それらを細胞ヌクレアーゼによる分解に対してより耐性にすることに焦点が当てられた。しかしながら、これらの修飾により、分子の標的特異性が低下し、望ましくない生物学的活性が生じ得る。
【0006】
さらに、オリゴヌクレオチド研究を通して、これらの分子はインビボでエキソヌクレアーゼによる分解を受けやすく、一次分解は分子の3’末端から起こることが認識されている(Temsamani et al(1993)Analytical Bioc.215:54~58)。したがって、このエキソヌクレアーゼ活性を回避するための手法が利用されてきた。
【0007】
多くの研究にもかかわらず、オフターゲット効果なしに安定性を改善し、RNA標的認識を維持する努力によっては、一般に、臨床的成功の可能性がより高いと認知されるであろうオリゴヌクレオチドは生成しなかった。したがって、遺伝子発現をダウンレギュレーションするためのオリゴヌクレオチド系手法が成功することになる場合、この結果を最も効率的に達成する最適化されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが依然として必要とされる。アンチセンス活性の主に2つの重要な機構がある。第1の機構は、標的RNAにハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み、形成された二重鎖がRNaseHを活性化し、それによって標的RNAを切断し、発現を阻害する。第2の機構は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的にハイブリダイズし、スプライシングを含む標的RNAのプロセシングを遮断し、それによって遺伝子発現を阻害または増加させる場合である。アンチセンス結合のこの機構はまた、ナンセンス変異依存分解ももたらし、それによって遺伝子発現を阻害または増加させ得る。これらの両手法の使用において、オフターゲット効果が観察されており、オフターゲット活性を軽減し、効力を増加させるためにアンチセンスの新しい設計が必要とされている。
【0008】
スプライシング調節のために、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、高い親和性および選択性で標的RNAに結合するように設計される。今日まで、この機構に用いられるアンチセンス候補には、細胞でのスプライシングを調節するために、まさに最初の研究で使用された2’-O-メチルオリゴリボヌクレオシドなどの修飾RNAオリゴヌクレオチドが含まれる。(Sierakowska et al.,(1996)Proc Natl Acad Sci USA、v93(23):12840-4;Wilton et al.,Neuromuscul Discord(1999)v9(5):330~8)。それ以降、2’-メトキシエトキシ、LNA、HNA、CeNa、ANAまたはこれらの修飾の混合物を有するオリゴヌクレオチドなど、いくつかの他の修飾オリゴヌクレオチドが評価されている。
しかしながら、他の新しい設計が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、RNAプロセシングを調節する方法を提供し、該方法は、標的RNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1~3個の領域を含み、各領域は、独立して、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0010】
本発明はまた、少なくとも2つのmRNA転写物を含む遺伝子において第1のmRNA転写物を選択するための方法も提供し、該方法は、標的プレ-mRNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、第2のmRNA転写物に対するプレ-mRNAのスプライス部位を標的とし、それにより、第2のmRNA転写物に対するスプライス部位を遮断し、第1のmRNA転写物へのプレ-mRNAのスプライシングを指示し、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1~3個の領域を含み、各領域は、独立して、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0011】
本発明はまた、対象の疾患または障害を治療する方法も提供し、RNAプロセシングの調節は対象を治療するのに有益であり、該方法は、標的RNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含み、該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1個~3個の領域を含み、各領域は、独立して、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0012】
本発明はまた、標的RNAのナンセンス変異依存分解を誘導する方法も提供し、該方法は、標的RNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1~3個の領域を含み、各領域は、独立して、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0013】
本発明はまた、タンパク質または機能性mRNAをコードするmRNAのレベルを増加させて、タンパク質または機能性mRNAの発現を増加させる方法も提供し、該方法は、標的RNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1~3個の領域を含み、各領域は、独立して、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0014】
本発明はまた、保持されたイントロンを含む標的プレ-mRNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供し、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1~3個の領域を含み、各領域は、独立して、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、遺伝子スプライシングを調節するのに有用な化合物、組成物および方法に関する。いくつかの実施形態では、遺伝子スプライシングの調節は、標的タンパク質の発現を増加させ、望ましくないタンパク質または標的機能性RNAの発現を抑制する。
【0017】
慣例により、本明細書で論じられる配列は、別段の定めがない限り、5’から3’に示される。さらに、配列番号の配列を含む鎖は、別段の定めがない限り、5’から3’のその配列を有する。
【0018】
「3’」という用語は、方向に関して使用される場合、一般に、同一のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの別の領域または位置から(ヌクレオチドの3’末端に向かって)ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド3’の領域または位置を指す。「3’末端」という用語は、一般に、成分オリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオチドを指す。
【0019】
「5’」という用語は、方向に関して使用される場合、一般に、同一のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの別の領域または位置から(ヌクレオチドの5’末端に向かって)ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド5’の領域または位置を指す。本明細書で使用される場合、「5’末端」という用語は、一般に、成分オリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドを指す。
【0020】
「約」という用語は、一般に、正確な数が重要ではないことを意味する。したがって、1つもしくは2つのより少ないヌクレオシド残基、または1~数個のさらなるヌクレオシド残基を有するオリゴヌクレオチドは、上記の各実施形態の均等物として企図される。
【0021】
「アンチセンス活性」とは、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物のその標的核酸へのハイブリダイゼーションに起因する任意の検出可能な活性または測定可能な活性を意味する。特定の実施形態では、アンチセンス活性とは、そのような標的核酸によってコードされる標的核酸またはタンパク質の量または発現の減少である。特定の実施形態では、アンチセンス活性とは、スプライシングの調節であり、それによって、そのような標的核酸によってコードされるタンパク質の発現を阻害または増加させる。
【0022】
「アンチセンス阻害」とは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの非存在下での標的核酸レベルまたは標的タンパク質レベルと比較して、標的核酸に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの存在下での標的核酸レベルまたは標的タンパク質レベルの減少を意味する。
【0023】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、標的核酸の対応する領域またはセグメントへのハイブリダイゼーションを可能にする核酸塩基配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0024】
「同時投与」または「同時投与される」という用語は、一般に、少なくとも2つの異なる物質の投与を指す。同時投与とは、単回用量または別個の用量のいずれかで、任意の順序で少なくとも2つの異なる物質を同時投与すること、ならびに時間的に最長数日の間隔を空けた順序を指す。
【0025】
「と併用して」という用語は、一般に、本発明によるオリゴヌクレオチド系化合物と、患者を治療する過程で該化合物の活性を消失させずに疾患または状態を治療するのに有用な別の薬剤とを投与することを意味する。そのような投与は、同時投与、ならびに時間的に数秒から最長数日の間隔を空けた順序を含む任意の順序で行うことができる。そのような併用処置はまた、本発明による化合物および/または独立して他の薬剤の2回以上の投与も含み得る。本発明による化合物および他の薬剤の投与は、同じ経路または異なる経路によるものであり得る。
【0026】
「個体」または「対象」または「患者」という用語は、一般に、ヒトなどの哺乳動物を指す。「哺乳動物」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、雌ウシ、ブタ、ヒツジおよびウサギを含むが、これらに限定されない温血脊椎動物を含むことが明確に意図される。本明細書で使用される場合、「それを必要とする個体」とは、そのような処置または治療を必要としている処置または治療のために選択されたヒトまたは非ヒト動物を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「発現または活性を阻害する」とは、RNAまたはタンパク質の発現または活性の減少または遮断を指し、必ずしも発現または活性の完全消失を示すものではない。
【0028】
「ヌクレオシド」という用語は、一般に、糖、通常はリボース、デオキシリボース、ペントース、アラビノースまたはヘキソース、およびプリン塩基またはピリミジン塩基からなる化合物を指す。本発明の目的のために、塩基は、グアニン、シトシン、アデニン、チミンまたはウラシルでなければ非天然であると考えられ、糖は、β-リボフラノシドまたは2’-デオキシリボフラノシドでなければ非天然であると考えられる。
【0029】
「ヌクレオチド」という用語は、一般に、糖に結合したリン含有基を含むヌクレオシドを指す。本明細書で使用される場合、「連結ヌクレオシド」は、ホスファート架橋によって連結されていてもされていなくてもよく、したがって、限定されるものではないが、「連結ヌクレオチド」を含む。本明細書で使用される場合、「連結ヌクレオシド」は、連続した配列(すなわち、連結されたヌクレオシド間に追加のヌクレオシドは存在しない)で連結されたヌクレオシドである。
【0030】
「核酸」という用語は、ゲノム領域またはそれから転写されたRNA分子を包含する。いくつかの実施形態では、核酸はmRNAである。いくつかの実施形態では、核酸はマイクロRNAである。いくつかの実施形態では、核酸はncRNAである。
【0031】
本明細書で使用される場合、「核酸塩基」とは、オリゴヌクレオチドに組み込むことができるヌクレオシドを生成するために糖部分に連結することができる原子の基を意味し、該原子の基は、別のオリゴヌクレオチドまたは核酸の相補的な天然に存在する核酸塩基と結合することができる。核酸塩基は、天然に存在してもよく、または修飾されてもよい。本明細書で使用される場合、「核酸塩基配列」とは、任意の糖、結合または核酸塩基修飾とは無関係の連続する核酸塩基の順序を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「未修飾核酸塩基」または「天然に存在する核酸塩基」という用語は、RNAまたはDNAの天然に存在する複素環式核酸塩基、すなわち、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)(5-メチルCを含む)、およびウラシル(U)を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「修飾核酸塩基」とは、天然に存在する核酸塩基ではない任意の核酸塩基を意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「修飾ヌクレオシド」とは、天然に存在するRNAまたはDNAヌクレオシドと比較して、少なくとも1つの化学修飾を含むヌクレオシドを意味する。修飾ヌクレオシドは、修飾糖部分および/または修飾核酸塩基を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」とは、複数の連結されたヌクレオシドを含む化合物を意味する。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の未修飾リボヌクレオシド(RNA)および/または未修飾デオキシリボヌクレオシド(DNA)を含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、未修飾リボヌクレオシド(RNA)および/または未修飾デオキシリボヌクレオシド(DNA)のみを含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、「修飾オリゴヌクレオチド」は、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドおよび/または少なくとも1つの修飾糖を含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド間結合」とは、オリゴヌクレオチドでの隣接するヌクレオシド間の共有結合を意味する。本明細書で使用される場合、「天然に存在するヌクレオシド間結合」とは、3’と5’のホスホジエステル結合を意味する。本明細書で使用される場合、「修飾ヌクレオシド間結合」とは、天然に存在するヌクレオシド間結合以外の任意のヌクレオシド間結合を意味する。
【0038】
「一本鎖RNA配列に相補的なオリゴヌクレオチド」などの語句は、生理学的条件下で一本鎖RNA配列と二重らせんを形成するために、オリゴヌクレオチドが、その核酸塩基と一本鎖RNA配列の核酸塩基とのワトソン・クリック相互作用によって、十分な数の水素結合を形成することを意味する。これは、フーグスティーン水素結合を介して二本鎖DNAまたはRNAと三重らせんを形成するオリゴヌクレオチドとは対照的である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「化学修飾」とは、天然に存在する対応物と比較した場合の化合物の化学的相違を意味する。オリゴヌクレオチドの化学修飾には、ヌクレオシド修飾(糖部分修飾および核酸塩基修飾を含む)およびヌクレオシド間結合修飾が含まれる。オリゴヌクレオチドに関して、化学修飾は、核酸塩基配列の相違のみを含まない。
【0040】
「相補的」という用語は、生理学的条件下で、例えばワトソン-クリック塩基対合(オリゴヌクレオチドと一本鎖核酸との間の相互作用)によって、またはフーグスティーン塩基対合(オリゴヌクレオチドと二本鎖核酸との間の相互作用)によって、またはオリゴヌクレオチドの場合にはRNAに結合してシュードノット形成を引き起こすことを含む任意の他の手段によって、核酸配列に結合するオリゴヌクレオチドを意味することを意図している。生理学的条件下でのワトソン-クリックまたはフーグスティーン塩基対合による結合は、実際問題として、核酸配列の機能との干渉を観察することによって測定される。
【0041】
「完全に相補的」または「100%相補的」とは、第1の核酸の各核酸塩基が第2の核酸と相補的な核酸塩基を有することを意味する。特定の実施形態では、第1の核酸はアンチセンス化合物であり、標的核酸は第2の核酸である。
【0042】
「ハイブリダイゼーション」とは、相補的核酸分子のアニーリングを意味する。特定の実施形態では、相補的核酸分子は、アンチセンス化合物および標的核酸を含む。
【0043】
「ナンセンス変異依存分解」とは、mRNAまたはプレ-mRNAを分解する、RNaseHまたはRISCとは独立した任意の数の細胞機構を意味する。特定の実施形態では、ナンセンス変異依存分解は、未成熟終止コドンを含有するmRNA転写物を排除および/または分解する。特定の実施形態では、ナンセンス変異依存分解は、異常なmRNA転写物および/またはプレmRNA転写物の任意形態を排除および/または分解する。
【0044】
「薬学的に許容される」という用語は、本発明による化合物の有効性または本発明による化合物の生物学的活性を妨げない非毒性物質を意味する。
【0045】
「一部」とは、核酸の規定数の連続する(すなわち、連結された)核酸塩基を意味する。特定の実施形態では、一部とは、標的核酸の所定数の連続する核酸塩基である。特定の実施形態では、一部とは、アンチセンス化合物の規定数の連続する核酸塩基である。
【0046】
「予防上有効な量」という用語は、一般に、望ましくない生物学的効果の発生を予防または低減するのに十分な量を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「糖部分」とは、ヌクレオシドの天然に存在する糖部分または修飾された糖部分を意味する。本明細書で使用される場合、「天然に存在する糖部分」とは、天然に存在するRNAに見出されるリボフラノシルまたは天然に存在するDNAに見出されるデオキシリボフラノシルを意味する。本明細書で使用される場合、「修飾糖部分」とは、置換された糖部分または糖代替物、例えば限定されるものではないが、2’修飾糖または制約付きの糖を意味する。
【0048】
「治療上有効な量」または「薬学的に有効な量」という用語は、一般に、所望の生物学的効果、例えば、限定されるものではないが、疾患または障害の徴候または症状の予防、減少、改善または排除を含む有益な結果をもたらすのに十分な量を指す。したがって、医薬組成物または方法の各活性成分の総量は、有意な患者利益、例えば、限定されるものではないが、免疫刺激によって特徴付けられる慢性状態の治癒を示すのに十分である。したがって、「薬学的に有効な量」は、それが投与されている状況に依存する。薬学的に有効な量は、1回以上の予防投与または治療投与で投与され得る。単独で投与される個々の有効成分に適用される場合、この用語はその成分単独を指す。組み合わせに適用される場合、この用語は、併用投与、連続投与、または同時投与にかかわらず、治療効果をもたらす有効成分の併用量を指す。
【0049】
「処置」という用語は、一般に、症状の緩和、または疾患進行の遅延もしくは改善を含み得る有益な結果または所望の結果を得ることを意図した手法を指す。
【0050】
「遺伝子発現」という用語は、一般に、タンパク質であり得る機能的遺伝子産物の合成において遺伝子からの情報が使用されるプロセスを指す。このプロセスは、転写、RNAスプライシング、翻訳、およびタンパク質の翻訳後修飾を含み、mRNA、プレ-mRNA、非コードRNA、snoRNA、リボソームRNA、およびタンパク質合成用の他の鋳型を含み得る。
【0051】
「標的化」または「標的」とは、標的核酸に特異的にハイブリダイズし、所望の効果を誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計および選択のプロセスを意味する。「標的遺伝子」、「標的対立遺伝子」、「標的核酸」、「標的RNA」、「標的mRNA」および「標的RNA転写物」はすべて、特異的にハイブリダイズする核酸およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを指す。「標的対立遺伝子」は、その発現が選択的に標的とされる対立遺伝子である。「標的セグメント」、「標的領域」および「標的部位」はすべて、アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的とする標的核酸のヌクレオチドの配列を指す。
【0052】
標的領域は、標的核酸の構造的に定義された領域である。例えば、標的領域は、3’UTR、5’UTR、エクソン、イントロン、エクソン/イントロン接合部、コード領域、翻訳開始領域、翻訳終結領域、または他の定義された核酸領域を包含し得る。
【0053】
特定の実施形態は、組成物、および本明細書に開示されるアンチセンス化合物または組成物を動物に投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、アンチセンス化合物の投与は、遺伝子の発現またはタンパク質の活性に関連する疾患または状態の進行を予防、治療、改善または遅延させる。特定の実施形態では、動物はヒトである。
【0054】
本発明は、スプライシングを調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの新規設計を提供する。この設計では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは2つのドメイン(
図1参照)を有する。第1のドメインは、標的RNAに対する親和性を提供するリボヌクレオチド(RNA)、修飾RNAまたはそれらの組み合わせから構成される。第2のドメインは、RNaseHの動員を可能にするが、RNaseHがアンチセンスオリゴヌクレオチド-標的RNA二重鎖を切断することはできないホスホジエステルまたはホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチド(DNA)から構成される。RNaseHの動員およびオリゴヌクレオチド-標的RNA二重鎖へのその結合は、二重鎖部位に立体障害を提供し、スプライシングを促進する。本明細書で使用される場合、修飾RNAには、2’-置換、非イオン性または制約付きの糖ヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書に開示される方法のいずれも、本明細書に開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明は、スプライシングを調節する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、RNAスプライシングを調節する方法を提供する。実施形態では、RNAは、プレ-mRNA、mRNA、非コードRNAを含むが、これらに限定されない。実施形態では、RNAはプレ-mRNAである。実施形態では、RNAはmRNAである。実施形態では、RNAは、非コードRNAである。いくつかの実施形態では、標的RNAは保持されたイントロンを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、標的プレ-mRNAは、保持されたイントロンを含む。いくつかの実施形態では、保持されたイントロンは、エクソンによって片側または両側に隣接している。いくつかの実施形態では、エクソンは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接する。いくつかの実施形態では、エクソンは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接する。いくつかの実施形態では、エクソンは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接し、エクソンは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接する。
【0058】
いくつかの実施形態では、保持されたイントロンは、標的RNAから構成的にスプライシングされ、それによって、タンパク質または機能性mRNAをコードするmRNAのレベルを増加させ、タンパク質または機能性mRNAの発現を増加させる。いくつかの実施形態では、本発明は、タンパク質または機能性mRNAをコードするmRNAのレベルを増加させ、タンパク質または機能性mRNAの発現を増加させる方法を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態では、スプライシングを調節する方法は、タンパク質の量もしくは活性の欠乏または機能性mRNAの量もしくは活性の欠乏によって引き起こされる状態の対象を治療するために有用であり、タンパク質または機能性mRNAの量または活性の欠乏は、標的タンパク質または標的機能性RNAのハプロ不全によって引き起こされる。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象の疾患または障害を治療する方法を提供し、スプライシングの調節は、対象を治療するのに有益であろう。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、タンパク質の量もしくは活性の欠乏または機能性mRNAの量もしくは活性の欠乏によって引き起こされる。複数の実施形態では、タンパク質または機能性mRNAの量または活性の欠乏は、標的タンパク質または標的機能性RNAのハプロ不全によって引き起こされる。
【0061】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、標的RNAの領域に相補的な配列を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、保持されたイントロンを含む標的RNAの領域に相補的な配列を含む。
【0062】
一実施形態では、本発明は、少なくとも2つのmRNA転写物を含む遺伝子において第1のmRNA転写物を選択するための方法も提供し、該方法は、標的プレ-mRNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、第2のmRNA転写物に対するプレ-mRNAのスプライス部位を標的とし、それにより、第2のmRNA転写物に対するスプライス部位を遮断し、第1のmRNA転写物へのプレ-mRNAのスプライシングを指示し、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1~3個のヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0063】
本明細書の実施形態のいずれかにおいて、保持されたイントロンは、標的RNAから構成的にスプライシングされ、それによって、タンパク質または機能性mRNAをコードするmRNAのレベルを増加させ、タンパク質または機能性mRNAの発現を増加させる。いくつかの実施形態では、本発明は、タンパク質または機能性mRNAをコードするmRNAのレベルを増加させ、タンパク質または機能性mRNAの発現を増加させる方法を提供する。
【0064】
複数の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1個のヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0065】
複数の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む2個のヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、2つのヌクレオチド領域は連続していない。
【0066】
複数の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む3個のヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、デオキシリボヌクレオチド領域は連続していない。
【0067】
一実施形態では、本発明は、少なくとも2つのmRNA転写物を含む遺伝子において第1のmRNA転写物を選択するための方法も提供し、該方法は、標的プレ-mRNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、第2のmRNA転写物に対するプレ-mRNAのスプライス部位を標的とし、それにより、第2のmRNA転写物に対するスプライス部位を遮断し、第1のmRNA転写物へのプレ-mRNAのスプライシングを指示し、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1~3個のヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0068】
複数の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1個のヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0069】
複数の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む2個のヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、2つのヌクレオチド領域は連続していない。
【0070】
複数の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む3個のヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、デオキシリボヌクレオチド領域は連続していない。
【0071】
一実施形態では、本発明は、少なくとも2つのmRNA転写物を含む遺伝子において第1のmRNA転写物を選択するための方法も提供し、該方法は、標的プレ-mRNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、第2のmRNA転写物に対するプレ-mRNAのスプライス部位を標的とし、それにより、第2のmRNA転写物に対するスプライス部位を遮断し、第1のmRNA転写物へのプレ-mRNAのスプライシングを指示し、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含むデオキシリボヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端に4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含むデオキシリボヌクレオチド領域および残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0072】
一実施形態では、本発明は、少なくとも2つのmRNA転写物を含む遺伝子において第1のmRNA転写物を選択するための方法も提供し、該方法は、標的プレ-mRNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、第2のmRNA転写物に対するプレ-mRNAのスプライス部位を標的とし、それにより、第2のmRNA転写物に対するスプライス部位を遮断し、第1のmRNA転写物へのプレ-mRNAのスプライシングを指示し、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端に2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含むデオキシリボヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端に4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含むデオキシリボヌクレオチド領域および残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0073】
特定の実施形態では、本発明は、細胞を本明細書に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドと接触させることを含む、標的RNAのプロセシングを調節する方法を提供し、標的前駆体転写物のプロセシングが調節される。いくつかの実施形態では、標的RNAのプロセシングには、スプライシング、切断、輸送、翻訳、コードRNAおよび非コードRNAの分解が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、RNAプロセシングは、RNA結合タンパク質を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、RNAプロセシングは、コードRNAおよび非コードRNAのスプライシングを含む。いくつかの実施形態では、RNAプロセシングは、コードRNAおよび非コードRNAの切断を含む。いくつかの実施形態では、RNAプロセシングは、コードRNAおよび非コードRNAの輸送を含む。いくつかの実施形態では、RNAプロセシングは、コードRNAおよび非コードRNAの翻訳を含む。いくつかの実施形態では、RNAプロセシングは、コードRNAおよび非コードRNAの分解を含む。
【0074】
特定の実施形態では、標的前駆体転写物のプロセシングを調節することによって疾患または状態を治療する方法であって、本明細書に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含む方法。
【0075】
特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含む、標的RNAのナンセンス変異依存分解を誘導する方法を提供する。
【0076】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の標的核酸のスプライシングを調節し、そのような調節は、ナンセンス変異依存分解を介して標的核酸の分解および/または減少を引き起こす。
【0077】
特定の実施形態では、標的核酸に相補的な本明細書に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソンの包含を増加させ得、その包含により、ナンセンス変異依存分解経路は、エクソンを含有するmRNAを認識し分解する。
【0078】
特定の実施形態では、標的核酸に相補的な本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソンの排除を増大させ、その排除により、ナンセンス変異依存分解経路は、エクソンを含まないmRNAを認識して分解し得る。
【0079】
ナンセンス変異依存分解は、異常なmRNA転写物の排除および/または分解を通じて異常な遺伝子発現のエラーを減少させるのに役立つ監視経路の一種である。特定の実施形態では、ナンセンス変異依存分解機構は、プレmRNAプロセシングのエラーに起因するmRNAを選択的に分解する。例えば、多くのプレmRNA転写物は、選択的にスプライシングされて、エクソンの様々な組み合わせを含む任意の数のmRNA転写物を生成し得るいくつかのエクソンおよびイントロンを含む。次いで、mRNA転写物は、任意の数のタンパク質イソ型に翻訳される。特定の実施形態では、プレmRNAは、1つ以上のエクソンを含有するようにプロセシングされ、その含有により、非機能性タンパク質またはミスフォールディングタンパク質をコードするかまたはコードするであろうmRNAが産生される。特定の実施形態では、プレmRNAは、1つ以上のエクソンを含有するようにプロセシングされ、その含有により、未成熟終止コドンを含有するmRNAが産生される。このような特定の実施形態では、ナンセンス変異依存分解機構は、余分なエクソンを含有するmRNA転写物を認識し、翻訳前に該mRNA転写物を分解する。このような特定の実施形態では、ナンセンス変異依存分解機構は、未成熟終止コドンを含有するmRNA転写物を認識し、翻訳前に該mRNA転写物を分解する。
【0080】
特定の実施形態では、プレmRNAは、1つ以上のエクソンを排除するようにプロセシングされ、その排除により、非機能性タンパク質をコードするmRNAが産生される。特定の実施形態では、プレmRNAは、1つ以上のエクソンを排除するようにプロセシングされ、その排除により、未成熟終止コドンを含有するmRNAが産生される。このような特定の実施形態では、ナンセンス変異依存分解機構は、エクソンを欠くmRNA転写物を認識し、翻訳前に該mRNA転写物を分解する。このような特定の実施形態では、ナンセンス変異依存分解機構は、エクソンを欠き、未成熟終止コドンを含有するmRNA転写物を認識し、翻訳前に該mRNA転写物を分解する。
【0081】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的RNAに結合し、RNaseHと複合体を形成することを可能にするが、アンチセンスオリゴヌクレオチドはRNaseH不活性になる。言い換えれば、アンチセンスオリゴヌクレオチド/標的RNA-RNaseH複合体は、RNaseHによって切断されない。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは局所投与される。
【0082】
特定の実施形態では、アンチセンス化合物は、標的核酸に相補的な領域を含むオリゴヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。特定の実施形態では、標的核酸は内因性RNA分子である。特定の実施形態では、標的核酸は、プレ-mRNAである。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、プレ-mRNAのスプライシングを調節する。
【0083】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的プレ-mRNAのヌクレオチド配列に相補的であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的プレ-mRNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1~3個のヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0084】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的プレ-mRNAのヌクレオチド配列に相補的であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的プレ-mRNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1~3個のヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0085】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的プレ-mRNAのヌクレオチド配列に相補的であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的プレ-mRNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含むデオキシリボヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0086】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的プレ-mRNAのヌクレオチド配列に相補的であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的プレ-mRNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を有する14~30個の連結されたヌクレオチドを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端に2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含むデオキシリボヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性、もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0087】
実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2個のデオキシリボヌクレオチド領域を含み、各領域は、独立して、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3個のデオキシリボヌクレオチド領域を含み、各領域は、独立して、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0088】
実施形態では、デオキシリボヌクレオチド領域は、2~5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。実施形態では、デオキシリボヌクレオチド領域は、2~4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。実施形態では、デオキシリボヌクレオチド領域は、4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0089】
いくつかの実施形態では、2’-置換ヌクレオチドは、2’-O-メチルリボヌクレオチド、2’-O-メトキシ-エチル(2’-MOE)リボヌクレオチド、2’-ハロゲン(例えば、フルオロ)ヌクレオチドおよびモルホリノ修飾核酸から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、制約付きの糖ヌクレオチドは、二環式ヌクレオシドを含んでいた。いくつかの実施形態では、二環式ヌクレオシドは、ロックドヌクレオシドおよび架橋ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、制約付き糖ヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、アルトリトール核酸(ANA)、制約付きMOE(cMOE)、制約付きエチル(cEt)、エチレン架橋核酸(ENA)、セリノール核酸(SNA)、およびねじれ挿入核酸(TINA)から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、非イオン性には、メチルホスホナート、ホスホトリエステル、およびモルホリノ(PMO)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、2’-置換されてもよく、制約付きの糖を有してもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2、3、4または5個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1つのデオキシリボヌクレオチド領域を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2、3、または4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1つのデオキシリボヌクレオチド領域を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1つのデオキシリボヌクレオチド領域を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1つのデオキシリボヌクレオチド領域を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む1つのデオキシリボヌクレオチド領域を含む。いくつかの実施形態では、連続するデオキシリボヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端にある。
【0092】
いくつかの実施形態では、連続するデオキシリボヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端にある。
【0093】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2つのデオキシリボヌクレオチド領域を含み、各領域は、独立して、2、3、または4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3つのデオキシリボヌクレオチド領域を含み、各領域は、独立して、2、3、または4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、連続するデオキシリボヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端にあり、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端にあり、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖オリゴヌクレオチド、またはそれらの組み合わせに隣接している。いくつかの実施形態では、連続するデオキシリボヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端にある。いくつかの実施形態では、連続するデオキシリボヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端にある。いくつかの実施形態では、連続するデオキシリボヌクレオチドは、2’-置換オリゴリボヌクレオチドに隣接している。
【0095】
いくつかの実施形態では、連続するデオキシリボヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、連続するデオキシリボヌクレオチドは、未修飾である。いくつかの実施形態では、1つ以上の連続するデオキシリボヌクレオチドが修飾される。
【0096】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは薬学的に許容される。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは注射可能である。いくつかの実施形態では、標的RNAはmRNAであり得る。特定の実施形態は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが一本鎖であるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0097】
いくつかの実施形態では、本発明は、標的配列の等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を含む、長さが17ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物を提供する。
【0098】
いくつかの実施形態では、本発明は、標的配列の等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を含む、長さが18~25ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物を提供する。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、18ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、19ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、20ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、21ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、22ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、23ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、24ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、25ヌクレオチドの長さである。
【0099】
いくつかの実施形態では、本発明は、標的配列の等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を含む、長さが20ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物を提供する。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に2~4個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含むヌクレオチド領域を含み、残りのヌクレオチドは、2’-置換、非イオン性もしくは制約付きの糖ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせである。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも14ヌクレオチドの長さであり、例えば14~30ヌクレオチドの長さであり得る。したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、14~25ヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、17~22ヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、19~28ヌクレオチドの長さであり得る。
【0101】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、17、18、19、20、21または22ヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、17ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、18ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、19ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、20ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、21ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、22ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、23ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、24ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、25ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、26ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、27ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、28ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、29ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、30ヌクレオチドの長さであり得る。
【0102】
RNAの天然塩基または非修飾塩基は、アデニン(A)およびグアニン(G)であり、ピリミジン塩基のシトシン(C)およびウラシル(U)である(DNAはチミン(T)を有する)。対照的に、複素環塩基部分とも呼ばれる修飾塩基には、他の核酸塩基、例えば5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、ピリミジン塩基の5-プロピニルウラシルおよびシトシンおよび他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ(5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシンを含む)、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニンおよび3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンが含まれる。
【0103】
特定の実施形態では、修飾核酸塩基は、本明細書で定義されるユニバーサル塩基、疎水性塩基、無差別(promiscuous)塩基、サイズ拡大塩基、およびフッ素化塩基から選択される。2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6およびO-6置換プリン;5-プロピニルシトシン;5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、およびピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に、5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンが含まれる。さらなる修飾核酸塩基としては、フェノキサジンシチジン([5,4-b][1,4]ベンゾオキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン)などの三環式ピリミジン、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)などのG-クランプが挙げられる。修飾核酸塩基には、プリン塩基またはピリミジン塩基が他の複素環、例えば7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジンおよび2-ピリドンで置換されたものも含まれ得る。特定の実施形態では、修飾核酸塩基は5-メチルシトシンである。
【0104】
代表的な修飾された糖には、炭素環式糖または非環式糖、それらの2’、3’または4’位の1つ以上に置換基を有する糖、および糖の1つ以上の水素原子の代わりに置換基を有する糖が含まれる。特定の実施形態では、糖は、2’位に置換基を有することによって修飾される。さらなる実施形態では、糖は、3’位に置換基を有することによって修飾される。他の実施形態では、糖は、4’位に置換基を有することによって修飾される。糖は、それらの位置の2つ以上に修飾を有してもよく、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つの位置に糖修飾を有する1つ以上のヌクレオチドを有してもよく、異なる位置に糖修飾を有する1つ以上のヌクレオチドを有してもよいことも企図される。
【0105】
アンチセンスオリゴヌクレオチドで企図される糖修飾としては、限定されるものではないが、OH;F;O-、S-またはN-アルキル;O-、S-またはN-アルケニル;O-、SまたはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルから選択される糖置換基が挙げられ、該アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換のC1~C10アルキルまたはC2~C10アルケニルおよびアルキニルであり得る。いくつかの実施形態では、これらの基は、O(CH2)xOCH3、O((CH2)xO)yCH3、O(CH2)xNH2、O(CH2)xCH3、O(CH2)xONH2、およびO(CH2)xON((CH2)xCH3)2から選択されてもよく、式中、xおよびyは、独立して、1~10である。
【0106】
いくつかの実施形態では、修飾糖は、以下から選択される置換基を含む:C1~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリールまたはO-アラルキル、SH、SCH3、Cl、Br、CN、OCN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、アンチセンスオリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基、および同様の特性を有する他の置換基。一実施形態では、修飾は、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても知られている2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3(Martin et al.,1995)、すなわち、アルコキシアルコキシ基を含む。別の修飾としては、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、2’-DMAOEとしても知られるO(CH2)2ON(CH3)2基および2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野で2’-O-ジメチル-アミノ-エトキシ-エチルまたは2’-DMAEOEとしても知られている)、すなわち、2’-O-CH2-O-CH2-N(CH3)2が挙げられる。
【0107】
さらなる糖置換基としては、アリル(-CH2-CH=CH2)、-O-アリルCH2-CH=CH2)、メトキシ(-O-CH3)、アミノプロポキシ(-OCH2CH2CH2NH2)およびフルオロ(F)が挙げられる。2’位(2’-)の糖置換基は、アラビノ(上)位またはリボ(下)位にあり得る。1つの2’-アラビノ修飾は2’-Fである。オリゴマー化合物の他の位置、特に3’末端ヌクレオシドまたは2’-5’連結オリゴヌクレオチドの糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位で他の同様の修飾を行うこともできる。オリゴマー化合物はまた、ペントフラノシル糖の代わりに、糖模倣物、例えばシクロブチル部分も有し得る。修飾された糖構造の調製を開示する米国特許の例としては、限定されるものではないが、米国特許第4,981,957号、第5,118,800号、第5,319,080号、第5,359,044号、第5,393,878号、第5,446,137号、第5,466,786号、第5,514,785号、第5,519,134号、第5,567,811号、第5,576,427号、第5,591,722号、第5,597,909号、第5,610,300号、第5,627,053号、第5,639,873号、第5,646,265号、第5,658,873号、第5,670,633号、第5,792,747号および第5,700,920号が挙げられ、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
代表的な糖置換基としては、米国特許出願公開第2005/0261218号に記載されている基が挙げられ、該号は参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、糖修飾は、6’位の炭素に結合したカルボキシ基の2’-O-Me修飾、2’F修飾、2’H修飾、2’アミノ修飾、4’チオリボース修飾もしくはホスホロチオアート修飾、またはそれらの組み合わせである。
【0109】
特定の実施形態では、2’-置換非二環式修飾ヌクレオシドは、F、OCH3およびOCH2CH2OCH3から選択される非架橋2’-置換基を含む糖部分を含む。
【0110】
特定の修飾された糖部分は、フラノシル環の2つの原子を架橋して第2の環を形成し、二環式糖部分(制約付きの糖とも呼ばれる)をもたらす置換基を含む。このような特定の実施形態では、二環式糖部分は、4’と2’フラノース環原子との間に架橋を含む。そのような4’から2’への架橋糖置換基の例には、4’-CH2-2’、4’-(CH2)2-2’、4’-(CH2)3-2’、4’-CH2-O-2’(「LNA」)、4’-CH2-S-2’、4’-(CH2)2-O-2’(「ENA」)、4’-CH(CH3)-O-2’(「制約付きのエチル」または「cEt」と呼ばれる)、4’-CH2-O-CH2-2’、4’-CH2-N(R)-2’、4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(「制約付きのMOE」または「cMOE」)およびその類似体(例えば、Seth et al.,米国第7,399,845号、Bhat et al.,米国第7,569,686号、Swayze et al.,米国第7,741,457号、およびSwayze et al.,米国第8,022,193号を参照)、4’-C(CH3)(CH3)-O-2’およびその類似体(例えば、Seth et al.,米国第8,278,283号を参照)、4’-CH2-N(OCH3)-2’およびその類似体(例えば、Prakash et al.,米国第8,278,425号を参照)、4’-CH2-O-N(CH3)-2’(例えば、Allerson et al.,米国第7,696,345号およびAllerson et al.,米国第8,124,745号を参照)、4’-CH2-C(H)(CH3)-2’(例えば、Zhou et al.,J.Org.Chem.,2009,74,118-134)、4’-CH2-C(=CH2)-2’およびその類似体(例えば、Seth et al.,米国第8,278,426号を参照)、4’-C(RaRb)-N(R)-O-2’、4,-C(RaRb)-O-N(R)-2’,4’-CH2-O-N(R)-2’および4’-CH2-N(R)-O-2’が含まれるが、これらに限定されるものではなく、式中、各R、RaおよびRbは、独立して、H、保護基またはC1~C12アルキルである(例えば、Imanishi et al.,米国第7,427,672号を参照)。
【0111】
特定の実施形態では、そのような4’から2’への架橋は、独立して、-[C(Ra)(Rb)]n-、-[C(Ra)(Rb)]n-O-、-C(Ra)=C(Rb)-、-C(Ra)=N-、-C(=NRa)-、-C(=O)-、-C(=S)-、-O-、-Si(Ra)2-、-S(=O)x-および-N(Ra)-から独立して選択される1~4個の連結した基を含み、
式中、
xは0、1、または2であり、
nは、1、2、3または4であり、
各RaおよびRbは、独立して、H、保護基、ヒドロキシル、C1-C12アルキル、置換C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、置換C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、置換C2-C12アルキニル、C5-C20アリール、置換C5-C20アリール、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C5-C7脂環式ラジカル、置換C5-C7脂環式ラジカル、ハロゲン、OJ1、NJ1J2、SJ1、N3、COOJ1、アシル(C(=O)-H)、置換アシル、CN、スルホニル(S(=O)2-J1)、またはスルホキシル(S(=O)-J1)であり、各J1およびJ2は、独立して、H、C1-C12アルキル、置換C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、置換C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、置換C2-C12アルキニル、C5-C20アリール、置換C5-C20アリール、アシル(C(=O)-H)、置換アシル、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、C1-C12アミノアルキル、置換C1-C12アミノアルキル、または保護基である。
【0112】
さらなる二環式糖部分は、当技術分野で知られており、例えば、Freier et al.,Nucleic Acids Research,1997,25(22),4429-4443、Albaek et al.,J.Org.Chem.,2006,71,7731-7740、Singh et al.,Chem.Commun.,1998,4,455-456、Koshkin et al.,Tetrahedron,1998,54,3607-3630、Kumar et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1998,8,2219-2222、Singh et al.,J Org.Chem.,1998,63,10035-10039、Srivastava et al.,J Am.Chem.Soc,20017,129,8362-8379、Wengel et al.,米国第7,053,207号、Imanishi et al.,米国第6,268,490号、Imanishi et al.,米国第6,770,748号、Imanishi et al.,米国RE第44,779号、Wengel et al.,米国第6,794,499号、Wengel et al.,米国第6,670,461号、Wengel et al.,米国第7,034,133号、Wengel et al.,米国第8,080,644号、Wengel et al.,米国第8,034,909号、Wengel et al.,米国第8,153,365号、Wengel et al.,米国第7,572,582号、およびRamasamy et al.,米国第6,525,191号、Torsten et al.,国際公開第2004/106356号、Wengel et al.,国際公開第1999/014226号、Seth et al.,国際公開第2007/134181号、Seth et al.,米国第7,547,684号、Seth et al.,米国第7,666,854号、Seth et al.,米国第8,088,746号、Seth et al.,米国第7,750,131号、Seth et al.,米国第8,030,467号、Seth et al.,米国第8,268,980号、Seth et al.,米国第8,546,556号、Seth et al.,米国第8,530,640号、Migawa et al.,米国第9,012,421号、Seth et al.,米国第8,501,805号、および米国特許出願公開、Allerson et al.,米国第2008/0039618号およびMigawa et al.,米国第2015/0191727号である。
【0113】
特定の実施形態では、二環式糖部分およびそのような二環式糖部分を組み込むヌクレオシドは、異性体配置によってさらに定義される。例えば、LNAヌクレオシド(本明細書に記載)は、α-L配置またはβ-D配置であり得る。
【化1】
α-L-メチレンオキシ(4’-CH2-0-2’)またはα-L-LNA二環式ヌクレオシドは、アンチセンス活性を示したオリゴヌクレオチドに組み込まれている(Frieden et al.,Nucleic Acids Research,2003,21,6365~6372)。本明細書において、二環式ヌクレオシドの一般的な説明は、両異性体の配置を含む。具体的な二環式ヌクレオシド(例えば、LNAまたはcEt)の位置が本明細書の例示の実施形態で特定される場合、別段の定めがない限り、それらはβ-D配置である。
【0114】
特定の実施形態では、修飾された糖部分は、1つ以上の非架橋糖置換基および1つ以上の架橋糖置換基(例えば、5’-置換および4’-2’架橋糖)を含む。
【0115】
特定の実施形態では、修飾された糖部分は、糖代替物である。このような特定の実施形態では、糖部分の酸素原子は、例えば、硫黄、炭素または窒素原子で置き換えられる。このような特定の実施形態では、このような修飾された糖部分は、本明細書に記載の架橋および/または非架橋の置換基も含む。例えば、特定の糖代替物は、4’-硫黄原子ならびに2’位(例えば、Bhat et al.,米国第7,875,733号およびBhat et al.,米国第7,939,677号を参照)および/または5’位の置換を含む。
【0116】
特定の実施形態では、糖代替物は、5個以外の原子を有する環を含む。例えば、特定の実施形態では、糖代替物は、6員テトラヒドロピラン(「THP」)を含む。このようなテトラヒドロピランは、さらに修飾または置換されてもよい。そのような修飾テトラヒドロピランを含むヌクレオシドとしては、限定されるものではないが、ヘキシトール核酸(「HNA」)、アニトール核酸(「ANA」)、マンニトール核酸(「MNA」)(例えば、Leumann,CJ.Bioorg.&Med.Chem.2002,10,841-854参照)、フルオロHNA:
【化2】
(「F-HNA」、例えば、Swayze et al.,米国第8,088,904号、Swayze et al.,米国第8,440,803号、Swayze et al.,米国第8,796,437号、およびSwayze et al.,米国第9,005,906号参照、F-HNAは、F-THPまたは3’-フルオロテトラヒドロピランとも呼ばれ得る)、および式:
【化3】
を有するさらなる修飾THP化合物を含むヌクレオシドが挙げられ、
式中、該修飾THPヌクレオシドのそれぞれについて、独立して、
Bxは、核酸塩基部分であり、
T3およびT4は、それぞれ独立して、修飾THPヌクレオシドをオリゴヌクレオチドの残部に連結するヌクレオシド間連結基であるか、またはT3およびT4の一方は、修飾THPヌクレオシドをオリゴヌクレオチドの残部に連結するヌクレオシド間連結基であり、T3およびT4の他方は、Hであるか、ヒドロキシル保護基、連結されたコンジュゲート基、または5’もしくは3’末端基であり、
q
1、q
2、q
3、q
4、q
5、q
6およびq
7は、それぞれ独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換C
1~C
6アルキル、C
2~C
6アルケニル、置換C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニルまたは置換C
2~C
6アルキニルであり、R
1およびR
2の各々は、独立して、水素、ハロゲン、置換または非置換アルコキシ、NJ
1J
2、SJ
1、N
3、OC(=X)J
1、OC(=X)NJ
1J
2、NJ
3C(=X)NJ
1J
2、およびCNであり、式中、XはO、SまたはNJ
1の中から選択され、各J
1、J
2およびJ
3は、独立して、HまたはC
1~C
6アルキルである。
【0117】
特定の実施形態では、q1、q2、q3、q4、q5、q6およびq7がそれぞれHである修飾THPヌクレオシドが提供される。特定の実施形態では、q1、q2、q3、q4、q5、q6およびq7のうちの少なくとも1つは、H以外である。特定の実施形態では、q1、q2、q3、q4、q5、q6およびq7のうちの少なくとも1つは、メチルである。特定の実施形態では、R1およびR2の一方がFである修飾THPヌクレオシドが提供される。特定の実施形態では、R1はFであり、R2はHであり、特定の実施形態では、R1はメトキシであり、R2はHであり、特定の実施形態では、R1はメトキシエトキシであり、R2はHである。
【0118】
特定の実施形態では、糖代替物は、6個以上の原子および2個以上のヘテロ原子を有する環を含む。例えば、モルホリノ糖部分を含むヌクレオシドおよびオリゴヌクレオチドにおけるそれらの使用が報告されている(例えば、Braasch et al.,Biochemistry,2002,41,4503-4510およびSummerton et al.,米国第5,698,685号、Summerton et al.,米国第5,166,315号、Summerton et al.,米国第5,185,444号、およびSummerton et al.,米国第5,034,506号)。本明細書で使用される場合、「モルホリノ」という用語は、以下の構造を有する糖代替物を意味する。
【化4】
【0119】
特定の実施形態では、モルホリノは、例えば、上記のモルホリノ構造から様々な置換基を付加または変更することによって修飾され得る。そのような糖代替物は、本明細書では「修飾モルホリノ」と呼ばれる。
【0120】
特定の実施形態では、糖代替物は、非環式部分を含む。そのような非環式糖代替物を含むヌクレオシドおよびオリゴヌクレオチドの例には、ペプチド核酸(「PNA」)、非環式ブチル核酸(例えば、Kumar et al.,Org.Biomol.Chem.,2013,11,5853-5865を参照)、ならびにManoharan et al.,国際公開第2011/133876号に記載されるヌクレオシドおよびオリゴヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
修飾ヌクレオシドに使用することができる他の多くの二環式および三環式の糖および糖代替環系が当技術分野で知られている。
【0122】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのヌクレオシド残基は、多数の既知のヌクレオシド間結合のいずれかによって互いに結合することができる。ヌクレオシド間連結基の2つの主要なクラスは、リン原子の有無によって定義される。代表的なリン含有ヌクレオシド間結合には、ホスホジエステル結合(「P=O」)を含有するホスファート(非修飾または天然に存在する結合とも呼ばれる)、ホスホトリエステル、メチルホスホナート、ホスホルアミダートおよびホスホロチオアート(「P=S」)およびホスホロジチオアート(「HS-P=S」)が含まれるが、これらに限定されない。代表的な非リン含有ヌクレオシド間連結基には、メチレンメチルイミノ(-CH2-N(CH3)-O-CH2-)、チオジエステル、チオノカルバマート(-O-C(=O)(NH)-S-)、シロキサン(-O-SiH2-O-)、およびΝ、Ν’-ジメチルヒドラジン(-CH2-N(CH3)-N(CH3)-)が含まれるが、これらに限定されない。リン含有ヌクレオシド間結合およびリン非含有ヌクレオシド間結合の調製方法は、当業者に周知である。
【0123】
そのようなヌクレオシド間結合には、ホスホジエステル、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、メチルホスホナート、アルキルホスホナート、アルキルホスホノチオアート、ホスホトリエステル、ホスホルアミダート、シロキサン、カルボナート、カルボアルコキシ、アセトアミダート、カルバマート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホルアミダート、架橋メチレンホスホナート、架橋ホスホロチオアート、およびスルホンヌクレオシド間結合が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の合成アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド間結合の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の合成アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアートおよびホスホジエステルヌクレオチド間結合の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド間結合の過半数ではあるが、すべてがホスホロチオアートヌクレオチド間結合であることは少ない。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド間結合のすべてが、ホスホロチオアートヌクレオチド間結合である。
【0124】
キラル中心を有するヌクレオシド間結合を含む修飾オリゴヌクレオチドは、立体的に無作為なヌクレオシド間結合を含む修飾オリゴヌクレオチドの集合として、またはホスホロチオアート結合、特に立体化学的配置を含む修飾オリゴヌクレオチドの集合として調製することができる。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの集合は、ホスホロチオアートヌクレオシド間結合を含み、ホスホロチオアートヌクレオシド間結合のすべてが立体的に無作為である。そのような修飾オリゴヌクレオチドは、各ホスホロチオアート結合の立体化学的配置の無作為抽出をもたらす合成方法を使用して生成することができる。それにもかかわらず、当業者によって十分に理解されるように、個々のオリゴヌクレオチド分子の個々のホスホロチオアートは、定義された立体配置を有する。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの集合は、特定の独立して選択される立体化学配置の1つ以上の特定のホスホロチオアートヌクレオシド間結合を含む修飾オリゴヌクレオチドが濃縮されている。
【0125】
特定の実施形態では、ホスホロチオアート結合は、RpおよびSpエナンチオマーの混合物であってもよく、またはそれらは、RpまたはSp形態のいずれかで立体規則性または実質的に立体規則性にされてもよい。結合がRpおよびSpエナンチオマーの混合である実施形態では、RpおよびSp形態は、アンチセンスオリゴヌクレオチド内の所定の場所に存在してもよく、またはオリゴヌクレオチド全体にわたって不規則に配置されてもよい。
【0126】
特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるようなアンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびに任意で1つ以上のコンジュゲート基および/または末端基を提供する。コンジュゲート基は、1つ以上のコンジュゲート部分と、コンジュゲート部分をオリゴヌクレオチドに連結するコンジュゲートリンカーとからなる。コンジュゲート基は、オリゴヌクレオチドの一方もしくは両方の末端および/または任意の内部位置に結合してもよい。特定の実施形態では、コンジュゲート基は、修飾オリゴヌクレオチドのヌクレオシドの2’位に結合している。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドの一方または両方の末端に結合しているコンジュゲート基は、末端基である。このような特定の実施形態では、コンジュゲート基または末端基は、オリゴヌクレオチドの3’および/または5’末端で結合している。このような特定の実施形態では、コンジュゲート基(または末端基)は、オリゴヌクレオチドの3’-末端で結合している。特定の実施形態では、コンジュゲート基は、オリゴヌクレオチドの3’-末端付近で結合している。特定の実施形態では、コンジュゲート基(または末端基)は、オリゴヌクレオチドの5’-末端で結合している。特定の実施形態では、コンジュゲート基は、オリゴヌクレオチドの5’-末端付近で結合している。
【0127】
末端基の例には、コンジュゲート基、キャッピング基、ホスファート部分、保護基、脱塩基性ヌクレオシド、修飾または非修飾ヌクレオシド、および独立して修飾または非修飾の2つ以上のヌクレオシドが含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
特定のコンジュゲート基およびコンジュゲート部分、例えば、コレステロール部分(Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86,6553-6556)、コール酸(Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1994,4,1053-1060)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al.,Ann.N Y.Acad.Sci.,1992,660,306-309;Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett,1993,3,2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20,533-538)、脂肪族鎖、例えば、ド-デカン-ジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al.,EMBO J.,1991,10,1111-1118;Kabanov et al.,FEBSLett.,1990,259,327-330;Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75,49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチル-アンモニウムl、2-ジ-0-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホナート(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36,3651-3654;Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18,3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides&Nucleotides,1995,14,969-973)、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264,229-237)、オクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277,923-937)、トコフェロール基(Nishina et al.,Molecular Therapy Nucleic Acids,2015,4,e220;and Nishina et al.,Molecular Therapy,2008,16,734-740)、またはGalNAcクラスター(例えば、国際公開第2014/179620号)が以前に記載されている。
【0129】
本発明の合成アンチセンス化合物は、手動または自動合成機によって行うことができるホスホラミダイトまたはH-ホスホナート化学などの当技術分野で認識されている方法によって調製することができる。本発明の合成アンチセンス化合物は、mRNAにハイブリダイズする能力を損なうことなく、いくつかの方法で修飾することもできる。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチド系化合物は、線形合成手法によって合成される。
【0131】
線形合成プロトコルまたは平行合成プロトコルのいずれかによる合成の最後に、本発明のオリゴヌクレオチド系化合物は、修飾ヌクレオシドが組み込まれる場合、濃縮アンモニア溶液で、またはホスホラミダイト供給元によって推奨されるように、簡便に脱保護され得る。生成物のオリゴヌクレオチド系化合物は、好ましくは逆相HPLCによって精製され、脱トリチル化され、脱塩され、透析される。
【0132】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの非限定的な列挙を表1に示す。表1のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、マウスのジストロフィン遺伝子転写物においてエクソン23のスキッピングを誘導するように設計されている。他に明記しない限り、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアート(PS)骨格架橋を有する。しかしながら、当業者は、ホスホジエステルまたは非ホスホジエステル部分に基づく他の結合が含まれ得ることを認識するであろう。
【表1】
【0133】
特定の実施形態では、標的核酸は、標的のマウス配列である。特定の実施形態では、標的核酸は、標的のヒト配列である。
【0134】
本発明は、本明細書に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。「担体」という用語は、一般に、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、油、脂質、脂質含有小胞、ミクロスフェア、リポソームカプセル化、または医薬製剤に使用するための他の材料を包含する。担体、賦形剤または希釈剤の特性は、特定用途の投与経路に依存することが理解されよう。これらの材料を含有する薬学的に許容される製剤の調製は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,ed.A.Gennaro、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1990に記載されている。
【0135】
組成物は、1つ以上の他の薬剤をさらに含んでもよい。そのような薬剤には、ワクチン、抗原、抗体、細胞傷害剤、化学療法剤(伝統的な化学療法および現代の標的療法の両方)、キナーゼ阻害剤、アレルゲン、抗生物質、アゴニスト、アンタゴニスト、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNAi分子、siRNA分子、miRNA分子、アプタマー、タンパク質、遺伝子治療ベクター、DNAワクチン、アジュバント、共刺激分子またはそれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0136】
本発明によるオリゴヌクレオチドが相補的である核酸配列は、阻害される薬剤に応じて変化する。例えば、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞遺伝子または遺伝子転写物に相補的なオリゴヌクレオチド配列を有することができ、その異常な発現または産物は、疾患状態をもたらす。いくつかのそのような細胞遺伝子の核酸配列は、当技術分野で記載されている。本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列が標的RNAヌクレオチド配列に部分的または完全に相補的である限り、任意のオリゴヌクレオチド配列を有し得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAの一部に対して、その全長にわたって少なくとも90%相補的であり得る。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAの一部に対して、その全長にわたって少なくとも93%相補的であり得る。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAの一部に対して、その全長にわたって少なくとも95%相補的であり得る。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAの一部に対して、その全長にわたって少なくとも98%相補的であり得る。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAの一部に対して、その全長にわたって少なくとも99%相補的であり得る。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAの一部に対して、その全長にわたって100%相補的であり得る。
【0138】
特定の実施形態は、遺伝子を標的とする化合物を提供し、該化合物は、任意の標的RNAの等長部分に相補的な少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個または22個の連続する核酸塩基を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAの等長部分に相補的な少なくとも12個の連続する核酸塩基を含み得る。
【0139】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、単独投与または任意の他の薬剤もしくは治療と併用して投与され得る。薬剤または治療は、同時投与または同時に投与することができる。そのような薬剤または治療は、疾患または状態を治療または予防するために有用であり得、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの遺伝子発現調節効果を低下させない。疾患または状態を治療または予防するのに有用な薬剤には、ワクチン、抗原、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、細胞傷害剤、キナーゼ阻害剤、アレルゲン、抗生物質、siRNA分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアンタゴニスト(例えば、TLR3および/またはTLR7のアンタゴニストおよび/またはTLR8のアンタゴニストおよび/またはTLR9のアンタゴニスト)、化学療法剤(伝統的な化学療法と現代の標的療法の両方)、標的治療剤、活性化細胞、ペプチド、タンパク質、遺伝子治療ベクター、ペプチドワクチン、タンパク質ワクチン、DNAワクチン、アジュバント、および共刺激分子(例えば、サイトカイン、ケモカイン、タンパク質リガンド、トランス活性化因子、ペプチドまたは修飾アミノ酸を含むペプチド)、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドを他の化合物(例えば、脂質またはリポソーム)と併用投与して、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの遺伝子発現調節の特異性または規模を増強することができる。
【0140】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、非経口、粘膜送達、経口、舌下、経皮、局所、吸入、腫瘍内、静脈内、皮下、髄腔内、鼻腔内、エアロゾル、眼内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃、皮膚パッチまたは点眼剤もしくは口腔洗浄の形態を含むが、これらに限定されない任意の適切な経路によって投与することができる。本発明による方法のいずれにおいても、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを単独投与または任意の他の薬剤と併用投与することは、限定されるものではないが、膀胱、肝臓、肺、腎臓または肺などの組織または器官に直接投与することができる。特定の実施形態では、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの単独投与または任意の他の薬剤との併用投与は、筋肉内投与によるものである。特定の実施形態では、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの単独投与または任意の他の薬剤との併用投与は、粘膜投与によるものである。特定の実施形態では、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの単独投与または任意の他の薬剤との併用投与は、経口投与によるものである。特定の実施形態では、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの単独投与または任意の他の薬剤との併用投与は、直腸内投与によるものである。特定の実施形態では、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの単独投与または任意の他の薬剤との併用投与は、髄腔内投与によるものである。特定の実施形態では、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの単独投与または任意の他の薬剤との併用投与は、腫瘍内投与によるものである。
【0141】
非経口、皮内、または皮下の適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射用水などの滅菌希釈剤、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、もしくは他の合成溶媒;ベンジルアルコールもしくはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸もしくは重亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;アセタート、シトラートもしくはホスファートなどの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧を調整するための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与バイアルに封入することができる。
【0142】
本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与は、疾患の症状または代替マーカーを減少させるのに有効な有効量および期間を用いて既知の手順を用いて行うことができる。例えば、疾患および/または障害を治療するための本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量は、症状を緩和もしくは軽減するため、または腫瘍、がん、または細菌、ウイルスもしくは真菌の感染を遅延もしくは改善するために必要な量であり得る。遺伝子発現を調節する組成物の投与に関連して、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量は、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの非存在下での遺伝子発現と比較して、所望の調節を達成するのに十分な量である。任意の特定用途の有効量は、治療される疾患もしくは状態、投与される特定のオリゴヌクレオチド、対象のサイズ、または疾患もしくは状態の重症度などの因子に応じて変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量を経験的に決定することができる。
【0143】
全身投与される場合、治療組成物は、好ましくは、約0.0001マイクロモル~約10マイクロモルの本発明による化合物の血中レベルを達成するのに十分な投与量で投与される。局所投与の場合、これよりはるかに低い濃度が有効であり得、はるかに高い濃度が許容され得る。好ましくは、本発明による化合物の総投与量は、約0.001mg/患者/日~約200mg/kg体重/日の範囲である。特定の実施形態では、総投与量は、毎日、週に2回または毎週投与される0.08、0.16、0.32、0.48、0.32、0.64、1、10または30mg/kg体重であり得る。治療上有効な量の1つ以上の本発明の治療用組成物を単一の処置エピソードとして個体に同時投与または連続投与することが望ましい場合がある。
【0144】
本発明のこの態様による方法は、遺伝子発現のモデル研究に有用である。本方法はまた、ヒトまたは動物の疾患の予防処置または治療処置に有用である。例えば、本方法は、遺伝子発現適用の小児および獣医学的阻害に有用である。
【0145】
特定の実施形態は、本明細書に記載の疾患、障害または状態を治療、予防または改善するためのキットを提供し、該キットは、(i)本明細書に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドと、任意で、(ii)本明細書に記載の第2の薬剤または治療とを含む。本発明のキットは、本明細書に記載の疾患、障害または状態を治療、予防または改善するためにキットを使用するための説明書をさらに含み得る。
【0146】
細胞培養およびアンチセンス化合物治療
標的核酸のレベル、活性または発現におよぼすアンチセンス化合物の効果は、様々な細胞型においてインビトロで試験することができる。そのような分析に使用される細胞型は、市販の供給業者(例えば、American Type Culture Collection,Manassas,Va.;Zen-Bio,Inc.,Research Triangle Park,N.C.;Clonetics Corporation、Walkersville、Md.)から入手可能であり、市販の試薬(例えば、Invitrogen Life Technologies,Carlsbad,Calif.)を使用して供給業者の説明書に従って培養される。例示的な細胞型には、HepG2細胞、Hep3B細胞、および初代肝細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのインビトロ試験
アンチセンスオリゴヌクレオチドで細胞を処理するための方法が本明細書に記載され、該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、他のアンチセンス化合物を用いた処理用に適切に修飾され得る。
【0148】
細胞が培養物で約60~80%の密集度に達した場合、細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理することができる。
【0149】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために一般的に使用される試薬の1つには、カチオン性脂質トランスフェクション試薬LIPOFECTIN(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)が含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの所望の最終濃度および100nMのアンチセンスオリゴヌクレオチドあたり2~12ug/mLの範囲であり得るLIPOFECTIN濃度を達成するために、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、LIPOFECTINを含むOPTI-MEM1(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)と混合してもよい。
【0150】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために使用される別の試薬としては、LIPOFECTAMINE(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、LIPOFECTAMINEを含むOPTI-MEM1還元血清培地(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)と混合して、所望の濃度のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび100nMアンチセンスオリゴヌクレオチドあたり2~12ug/mLの範囲であり得るLIPOFECTAMINE濃度を達成する。
【0151】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために使用される別の技術には、エレクトロポレーションが含まれる。
【0152】
細胞を、通常の方法によってアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理する。アンチセンスオリゴヌクレオチド処理の16~24時間後に細胞を回収することができ、その時点で、標的核酸のRNAまたはタンパク質レベルが、当該分野で公知であり、本明細書に記載される方法によって測定される。一般に、複数回の反復で処理が行われる場合、データは反復処理の平均として提示される。
【0153】
使用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度は、細胞株によって異なる。特定の細胞株に最適なアンチセンスオリゴヌクレオチド濃度を決定する方法は、当技術分野で周知である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には、LIPOFECTAMINEでトランスフェクションした場合、1nM~300nMの範囲の濃度で使用される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エレクトロポレーションを使用してトランスフェクションした場合、625~20,000nMの範囲のより高い濃度で使用される。
【0154】
RNA単離
RNA分析は、全細胞RNAまたはポリ(A)+mRNAについて行うことができる。RNA単離の方法は当技術分野で周知である。RNAは、当技術分野で周知の方法を使用して、例えば、TRIZOL試薬(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)を製造業者の推奨プロトコルに従って使用して調製される。
【0155】
標的レベルまたは発現の阻害の分析
標的核酸のレベルまたは発現の阻害は、当技術分野で知られる様々な方法でアッセイすることができる。例えば、標的核酸レベルは、例えば、ノーザンブロット分析、競合ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または定量的リアルタイムPCRによって定量することができる。RNA分析は、全細胞RNAまたはポリ(A)+mRNAについて行うことができる。RNA単離の方法は当技術分野で周知である。ノーザンブロット分析も当技術分野で日常的である。定量的リアルタイムPCRは、カリフォルニア州フォスターシティのPE-Applied Biosystemsから入手可能な市販のABI PRISM 7600、7700、または7900 Sequence Detection Systemを使用して簡便に達成することができ、製造業者の説明書に従って使用される。
【0156】
標的RNAレベルの定量的リアルタイムPCR分析
標的RNAレベルの定量は、製造者の説明書に従って、ABI PRISM 7600、7700、または7900 Sequence Detection System(カリフォルニア州フォスターシティのPE-Applied Biosystems)を使用する定量的リアルタイムPCRによって達成することができる。定量的リアルタイムPCRの方法は、当技術分野で周知である。
【0157】
リアルタイムPCRの前に、単離されたRNAを逆転写酵素(RT)反応に供し、これにより相補的DNA(cDNA)を作製し、次いでこれをリアルタイムPCR増幅用の基質として使用する。RTおよびリアルタイムPCR反応は、同じ試料ウェルで連続的に行われる。RTおよびリアルタイムPCR試薬は、Invitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)から入手することができる。RTリアルタイムPCR反応は、当業者に周知の方法によって行われる。
【0158】
リアルタイムPCRによって得られた遺伝子(またはRNA)標的量は、シクロフィリンAなどの発現が一定である遺伝子の発現量を用いて、またはRIBOGREEN(Invitrogen,Inc.、カリフォルニア州カールスバッド)を用いて全RNAを定量することによって正規化される。シクロフィリンAの発現は、標的と同時に、多重化して、または別々に実行することによって、リアルタイムPCRにより定量される。総RNAは、RIBOGREEN RNA定量試薬(Invitrogen,Inc.Eugene,Oreg.)を用いて定量する。RIBOGREENによるRNA定量の方法は、Jones,L.J.,et al、(Analytical Biochemistry,1998,265,368-374)に教示されている。CYTOFLUOR4000装置(PE Applied Biosystems)を使用して、RIBOGREEN蛍光を測定する。
【0159】
プローブおよびプライマーは、標的核酸にハイブリダイズするように設計される。リアルタイムPCRのプローブおよびプライマーを設計するための方法は、当技術分野で周知であり、PRIMER EXPRESS Software(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)などのソフトウェアの使用を含み得る。
【0160】
タンパク質レベルの分析
タンパク質レベルは、免疫沈降、ウェスタンブロット分析(イムノブロッティング)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、定量的タンパク質アッセイ、タンパク質活性アッセイ(例えば、カスパーゼ活性アッセイ)、免疫組織化学、免疫細胞化学または蛍光活性化細胞選別(FACS)などの当技術分野で周知の様々な方法で評価または定量することができる。標的に対する抗体は、抗体のMSRSカタログ(Aerie Corporation、ミシガン州バーミングハム)などの様々な供給元から同定および入手することができ、または当技術分野で周知の従来のモノクローナルもしくはポリクローナル抗体作製方法によって調製することができる。
【0161】
アンチセンス化合物のインビボ試験
試験は、正常動物または実験疾患モデルで実施され得る。動物への投与用に、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、薬学的に許容され得る希釈剤、例えば、ホスファート緩衝生理食塩水に製剤化する。投与には、腹腔内、静脈内および皮下などの非経口投与経路が含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与量および投与頻度の計算は、当業者の能力の範囲内であり、投与経路および動物の体重などの因子に依存する。アンチセンスオリゴヌクレオチドでの処理期間の後、RNAを単離し、核酸発現の変化を測定する。
【0162】
特定の表示
特定の実施形態では、本明細書中に記載される1つ以上の医薬組成物を投与することを含む、個体を治療する方法が本明細書に提供される。特定の実施形態は、本明細書に記載される治療上有効な量のアンチセンス化合物を個体に投与することによって、それを必要とする個体を治療することを含む。
【0163】
一実施形態では、アンチセンス化合物の投与に対する個体の応答を決定するために、核酸を標的とする治療上有効な量のアンチセンス化合物の投与は、個体における対応する標的レベルのモニタリングを伴う。アンチセンス化合物の投与に対する個体の応答は、治療的介入の量および期間を決定するために医師によって使用され得る。
【0164】
例
アンチセンスオリゴヌクレオチドの合成
本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、手動または自動合成機によって行うことができるホスホルアミダートまたはH-ホスホナート化学などの当技術分野で周知の手順によって合成することができる。例えば、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、線形合成手法によって合成され得る。
【0165】
研究に用いたARNA化合物は、ホスホラミダイト化学を用いて合成されている。これらのプロトコルは、例えば、参照により本明細書に組み込まれるhttps://pubs.rsc.org/en/content/chapter/bk9781788012096-00453/978-1-78801-209-6に詳細に記載されている。
【0166】
細胞培養およびトランスフェクション
H-2Kb-tsA58 mdx筋芽細胞42、43(H2K mdx細胞)は、当技術分野で以前に記載されたように培養および分化することができる。簡潔に言えば、60%~80%集密な筋芽細胞培養物をトリプシン(Thermo Fisher Scientific)で処理し、50μg/mLポリ-D-リジン(Merck Millipore)、続いて100μg/mL Matrigel(Corning、In Vitro Technologiesから供給される)で2×104細胞/ウェルの密度で前処理した24ウェルプレートに播種する。5%ウマ血清を含有するDMEM(Thermo Fisher Scientific)で、37℃、5%CO2で24時間インキュベーションすることによって、細胞を筋管に分化させることができる。AOは、リポフェクチン(Thermo Fisher Scientific)と2:1(w/w)(リポフェクチン/AO)の比で複合体化し、製造業者の説明書に従って、24ウェルプレート中500μL/ウェルの最終トランスフェクション容量で使用することができる。
【0167】
RNA抽出およびRT-PCR
RNAは、Direct-zol RNA MiniPrep Plus with TRI Reagent(Zymo Research、Integrated Sciencesを通じて供給)を製造者の説明書に従って使用して、トランスフェクションされた細胞から抽出することができる。次いで、ジストロフィン転写物を、エクソン20~26にわたるSuperScriptIII逆転写酵素(Thermo Fisher Scientific)を使用するRT-PCRによって分析することができる。PCR産物は、Tris-アセタート-EDTA緩衝液中で2%アガロースゲルで分離することができ、画像は、Fusion Fxゲル文書管理システム(Vilber Lourmat、フランス、マルヌ=ラ=ヴァレ)で取込まれる。濃度測定は、ImageJソフトウェアによって行うことができる。実際のエクソンスキッピング効率は、エクソン23がスキップされたRT-PCR産物の量を全ジストロフィン転写産物のパーセンテージとして表すことによって決定することができる。結果を以下の表に示す。
【表2】
【0168】
本発明は、その好ましい実施形態を参照して具体的に示され説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細に様々な変更がなされ得ることは、当業者によって理解されるであろう。
【配列表フリーテキスト】
【0169】
配列表1~16 <223>2-置換ヌクレオチド
<223>2’-O-メチルヌクレオチド
【配列表】