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特許7560553アドヒアランスの標準偏差メトリックに基づいた行動異常検知のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】アドヒアランスの標準偏差メトリックに基づいた行動異常検知のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20240925BHJP
   G16H 50/30 20180101ALI20240925BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20240925BHJP
【FI】
G16H20/00
G16H50/30
G16H10/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022527473
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2020026617
(87)【国際公開番号】W WO2021002480
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】62/869,525
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/970,095
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ナイツ,ジョナサン ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ヘイダリ,ザハラ
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0116389(US,A1)
【文献】特表2019-526114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0182497(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アドヒアランスのパターンにおける行動異常を検知するための方法であって、
(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという表示、又は(ii)前記エンティティが前記治療レジメンに従っていないという表示を表すデータを構成する第1のフィールドを有する1つ又はそれ以上の第1のデータ構造を、1つ又はそれ以上のコンピュータによって取得するステップと、
前記1つ又はそれ以上の第1のデータ構造によって記述される前記データに基づいて、初期標準偏差メトリックを前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって測定するステップと、
将来の少なくともn期間にわたって前記エンティティの前記アドヒアランスの初期標準偏差メトリックにおける中心傾向を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって求めるステップであって、ここでnが任意の非ゼロ整数である、ステップと、
前記中心傾向の周辺にある複数の境界範囲を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって特定するステップであって、前記複数の境界範囲が、前記中心傾向の上限を表す第1の閾値、及び前記中心傾向の下限を表す第2の閾値を含む、ステップと、
(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという後続の表示、又は(ii)前記エンティティが前記治療レジメンに従っていないという後続の表示を表すデータを構成する第2のフィールドを有する1つ又はそれ以上の第2のデータ構造を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって取得するステップと、
前記1つ又はそれ以上の第2のデータ構造によって記述される前記データに基づいて、現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックを前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって測定するステップと、
前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を満たしているかどうかを、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって判定するステップと、
前記1つ又はそれ以上のコンピュータによる、前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を満たしていることの判定に基づいて、異常候補が検出されたことを示すデータを含む異常候補データログレコードを生成するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという表示、又は(ii)前記エンティティが前記治療レジメンに従っていないという表示を表すデータを構成する前記第1のフィールドが、
(a)前記エンティティによるある物質の摂取が起こったこと、又は(b)前記エンティティによるある物質の摂取が起こらなかったことを表すデータを含み、また、
(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという後続の表示、又は(ii)前記エンティティが前記治療レジメンに従っていないという後続の表示を表すデータを構成する前記第2のフィールドが、(a)前記エンティティによるある物質の摂取がその後起こったこと、又は(b)前記エンティティによるある物質の摂取がその後起こらなかったことを表すデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又はそれ以上の第1のデータ構造あるいは前記1つ又はそれ以上の第2のデータ構造が、前記エンティティに接続されたパッチによって生成される摂取データに基づいて、あるモバイル機器によって生成され、かつ送信されたものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パッチが、前記物質内の摂取可能センサからの信号の前記パッチによる検出に基づいて、前記摂取データを生成したものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記物質が薬剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記上限及び前記下限が、前記アドヒアランスの標準偏差メトリックにおける許容可能範囲を定義している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を満たしているかどうかを、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって判定する前記ステップが、観測される標準偏差メトリックを表すデータを連続的に取得するステップと、
前記連続的に取得されるデータを、前記第1の閾値及び前記第2の閾値によって定義された前記境界範囲と比較して、前記連続的に取得されたデータが、前記アドヒアランスの標準偏差メトリックにおける許容可能範囲内に収まっているかどうかを判定するステップと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を満たしているかどうかを、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって判定するステップが、前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックを、2値マルコフ連鎖モデルを用いて評価して、前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を超えたかどうかを判定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アドヒアランスの標準偏差メトリックが、マルコフパラメータのエントロピーレートに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記将来のn期間が、前記将来のn日間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記将来のn期間が、前記将来のn時間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
アドヒアランスのパターンにおける行動異常を検知するための方法のデータ処理装置であって、
1つ又はそれ以上のコンピュータと、
前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって実行されると、1つ又はそれ以上の動作を前記1つ又はそれ以上のコンピュータに実施させる命令を格納している1つ又はそれ以上のストレージデバイスであって、前記1つ又はそれ以上の動作が、
(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという表示、又は(ii)前記エンティティが前記治療レジメンに従っていないという表示を表すデータを構成する第1のフィールドを有する1つ又はそれ以上の第1のデータ構造を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって取得するステップと、
前記1つ又はそれ以上の第1のデータ構造によって記述される前記データに基づいて、初期標準偏差メトリックを前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって測定するステップと、
将来の少なくともn期間にわたって前記エンティティの前記アドヒアランスの初期標準偏差メトリックにおける中心傾向を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって求めるステップであって、ここでnが任意の非ゼロ整数である、ステップと、
前記中心傾向の周辺にある複数の境界範囲を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって特定するステップであって、前記複数の境界範囲が、前記中心傾向の上限を表す第1の閾値、及び前記中心傾向の下限を表す第2の閾値を含む、ステップと、
(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという後続の表示、又は(ii)前記エンティティが前記治療レジメンに従っていないという後続の表示を表すデータを構成する第2のフィールドを有する1つ又はそれ以上の第2のデータ構造を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって取得するステップと、
前記1つ又はそれ以上の第2のデータ構造によって記述される前記データに基づいて、現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックを前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって測定するステップと、
前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を満たしているかどうかを、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって判定するステップと、
前記1つ又はそれ以上のコンピュータによる、前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を満たしていることの判定に基づいて、異常候補が検出されたことを示すデータを含む異常候補データログレコードを生成するステップと、ストレージデバイスと、
を備える、データ処理装置。
【請求項13】
1つ又はそれ以上のコンピュータによって実行可能であり、そのように実行されると、1つ又はそれ以上の動作を前記1つ又はそれ以上のコンピュータに実施させる命令を含むソフトウェアを格納する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記1つ又はそれ以上の動作が、
(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという表示、又は(ii)前記エンティティが前記治療レジメンに従っていないという表示を表すデータを構成する第1のフィールドを有する1つ又はそれ以上の第1のデータ構造を、1つ又はそれ以上のコンピュータによって取得するステップと、
前記1つ又はそれ以上の第1のデータ構造によって記述される前記データに基づいて、初期標準偏差メトリックを前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって測定するステップと、
将来の少なくともn期間にわたって前記エンティティのアドヒアランスの初期標準偏差メトリックにおける中心傾向を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって求めるステップであって、ここでnが任意の非ゼロ整数である、ステップと、
前記中心傾向の周辺にある複数の境界範囲を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって特定するステップであって、前記複数の境界範囲が、前記中心傾向の上限を表す第1の閾値、及び前記中心傾向の下限を表す第2の閾値を含む、ステップと、
(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという後続の表示、又は(ii)前記エンティティが前記治療レジメンに従っていないという後続の表示を表すデータを構成する第2のフィールドを有する1つ又はそれ以上の第2のデータ構造を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって取得するステップと、
前記1つ又はそれ以上の第2のデータ構造によって記述される前記データに基づいて、現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックを前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって測定するステップと、
前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を満たしているかどうかを、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって判定するステップと、
前記1つ又はそれ以上のコンピュータによる、前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を満たしていることの判定に基づいて、異常候補が検出されたことを示すデータを含む異常候補データログレコードを生成するステップと、を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月1日に出願された、仮特許出願第62/869,525号の利益を主張するものである。本出願はまた、2020年2月4日に出願された、仮特許出願第62,970,095号の利益を主張するものである。これらの出願の各々の全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
デジタル医療とは、服薬アドヒアランスの管理を向上させることを期待して、モバイル及びウェブベースのツールと組み合わせた、活性医薬品とウェアラブル/摂取可能センサとの効果的な融合に関するものである。
【発明の概要】
【0003】
本開示の1つの革新的な態様によれば、アドヒアランスのパターンにおける行動異常を検知するための方法が開示される。一態様では、方法は、(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという表示、又は(ii)前記エンティティが前記治療レジメンに従っていないという表示を表すデータを構成する第1のフィールドを有する1つ又はそれ以上の第1のデータ構造を、1つ又はそれ以上のコンピュータによって取得するステップと、前記1つ又はそれ以上の第1のデータ構造によって記述される前記データに基づいて、初期標準偏差メトリックを前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって測定するステップと、将来の少なくともn期間にわたって前記エンティティの前記アドヒアランスの初期標準偏差メトリックにおける中心傾向を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって求めるステップであって、ここでnが任意の非ゼロ整数である、ステップと、前記中心傾向の周辺にある複数の境界範囲を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって特定するステップであって、前記複数の境界範囲が、前記中心傾向の上限を表す第1の閾値、及び前記中心傾向の下限を表す第2の閾値を含む、ステップと、(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという後続の表示、又は(ii)前記エンティティが前記治療レジメンに従っていないという後続の表示を表すデータを構成する第2のフィールドを有する1つ又はそれ以上の第2のデータ構造を、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって取得するステップと、前記1つ又はそれ以上の第2のデータ構造によって記述される前記データに基づいて、現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックを前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって測定するステップと、前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を満たしているかどうかを、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによって判定するステップと、前記1つ又はそれ以上のコンピュータによる、前記現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックが前記第1の閾値又は前記第2の閾値を満たしていることの判定に基づいて、異常候補が検出されたことを示すデータを含む異常候補データログレコードを生成するステップと、を含む。
【0004】
他の形態は、コンピュータ可読ストレージデバイス上に符号化された命令によって定義されている方法の動作を実行するための対応するシステム、装置、及びコンピュータプログラムを含む。
【0005】
これら及び他の形態は、必要に応じて、以下の特徴のうちの1つ又はそれ以上を含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施態様では、(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという表示、又は(ii)当該エンティティが治療レジメンに従っていないという表示を表すデータは、(a)当該エンティティによるある物質の摂取が起こったこと、又は(b)当該エンティティによるある物質の摂取が起こらなかったことを表すデータを含み得、また(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという後続の表示、又は(ii)当該エンティティが治療レジメンに従っていないという後続の表示を表すデータは、(a)当該エンティティによるある物質の摂取がその後起こったこと、又は(b)当該エンティティによるある物質の摂取がその後起こらなかったことを表すデータを含み得る。
【0006】
いくつかの実施態様では、1つ又はそれ以上の第1のデータ構造あるいは1つ又はそれ以上の第2のデータ構造は、当該エンティティに接続されたパッチによって生成される摂取データに基づいて、あるモバイル機器によって生成され、かつ送信されたものである。
【0007】
いくつかの実施態様では、このパッチは、当該物質内の摂取可能センサからの信号のパッチによる検出に基づいて、摂取データを生成したものである。
【0008】
いくつかの実施態様では、この物質は薬剤を含み得る。
【0009】
いくつかの実施態様では、上限及び下限は、アドヒアランスの標準偏差メトリックにおける許容可能範囲を定義している。
【0010】
いくつかの実施態様では、現在観測される標準偏差メトリックが第1の閾値又は第2の閾値を満たしているかどうかを、1つ又はそれ以上のコンピュータによって判定するステップは、観測される標準偏差メトリックを表すデータを連続的に取得するステップと、これらの連続的に取得されるデータを、第1の閾値及び第2の閾値によって定義された境界範囲と比較して、これらの連続的に取得されたデータが、アドヒアランスの標準偏差メトリックにおける許容可能範囲内に収まっているかどうかを判定するステップと、を含み得る。
【0011】
いくつかの実施態様では、現在観測される標準偏差メトリックが第1の閾値又は第2の閾値を満たしているかどうかを、1つ又はそれ以上のコンピュータによって判定するステップは、現在観測される標準偏差メトリックを、2値マルコフ連鎖モデルを用いて評価して、現在観測される標準偏差メトリックが第1の閾値又は第2の閾値を超えたかどうかを判定するステップを含み得る。
【0012】
いくつかの実施態様では、このアドヒアランスの標準偏差メトリックは、マルコフパラメータのエントロピーレートに基づいている。
【0013】
いくつかの実施態様では、将来のn期間は、将来のn日間を含む。
【0014】
いくつかの実施態様では、将来のn期間は、将来のn時間を含む。
【0015】
本開示のこれら及び他の革新的な態様については、本明細書、図面、並びに特許請求の範囲においてより詳述している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、アドヒアランスの標準偏差メトリックを使用して行動異常を検知するためのシステムのコンテキスト図である。
図2図2は、アドヒアランスの標準偏差メトリックを使用して行動異常を検知するためのプロセスのフローチャートである。
図3図3は、アドヒアランスの標準偏差メトリックを使用して行動異常を検知するためのシステムを実装する際に使用できる、システム構成要素のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、治療アドヒアランスのパターンにおける行動異常を検知するための方法、システム、装置、及びコンピュータプログラムに関する。いくつかの態様では、本開示は、個々のエンティティレベルで相対的な行動異常を際立たせるために、リアルタイムで活用することができる。本開示による行動異常、即ち変容は、治療計画に関連する個々のエンティティの行動の変化又は転換を意味する。この治療計画は、例えば投薬レジメンを含み得る。しかしながら、開示している異常検知方法の1つの実際的用途は、これまでに観察された患者データの異常を検知することを含み得るものの、本開示をそのように限定すべきではない。代わりに、開示している異常検知方法は、マルコフモデルの特性フィッティングを有する任意の2値データ系列に適用され得る。
【0018】
本開示の利点は、あるモデルの事前訓練を必要としない、異常検知システム及び方法を含む。代わりに、本明細書ではアドヒアランスの標準偏差と呼ばれ、例えばアドヒアランスの標準偏差メトリック追跡によって表される患者自身の変化していく行動を使用して、複数の将来の時間間隔において推定値の範囲を構築している。次いで、構築されたこれら推定値の範囲は、訓練を必要とせずに、又は任意の参照シーケンスとの差に依存せずに、現在観測されるあるエンティティの標準偏差メトリックに関して監視され得、これによって異常を検知することができる。
【0019】
従来のシステムと比較した本開示の別の利点は、摂取データなどの新たに受信し、かつ解析された観測データを使用して、推定値の範囲を定義する将来の時間間隔が動的に更新され得るということである。したがって、本開示のシステムは、新たにデータが受信されるときに推定値の範囲を定義する新たな将来の時間間隔を生成することができ、それによって、新たに受信されるデータに基づいて、推定値の範囲が経時的に変化することができる。いくつかの実施態様では、この推定値の範囲を定義する将来の時間間隔は、2値マルコフ連鎖を用いて求められ得る。
【0020】
しかしながら、本開示は、2値マルコフ連鎖を用いて求められる2つの状態に限定されない。代わりに、いくつかの実施態様では、3つ又はそれ以上の状態を有するデータが監視され得、例えば、本プロセスが既約不可能で均質である場合、複数状態によるマルコフ連鎖を用いて、それぞれの状態において変化する将来値が求められ得る。
【0021】
異常検知のためのプロセスでは、あるエンティティが治療レジメンに従ったか、又は治療レジメンに従っていないかを表すデータを構成するフィールドを有する1つ又はそれ以上のデータ構造を、1つ又はそれ以上のコンピュータを使用することによって取得し始めることができる。いくつかの実施態様では、そのようなデータは、(i)あるエンティティによるある物質の摂取が起こったこと、又は(ii)あるエンティティによるある物質の摂取が起こらなかったことを表すデータを含み得る。これら1つ又はそれ以上のコンピュータは、1つ又はそれ以上のクラウドベースの、あるいはネットワーク上のコンピュータを含み得る。これら1つ又はそれ以上のコンピュータは、エンティティに関連付けられたスマートフォン、タブレット、又はスマートウォッチなどの1つ又はそれ以上のモバイル機器から1つ又はそれ以上のデータ構造を取得するように構成され得る。このモバイル機器は、当該エンティティに接続されたパッチによって生成された摂取データに基づいて、ある物質の摂取の有無を表すデータを構成する、1つ又はそれ以上のデータ構造を生成するように構成され得る。このパッチは、当該物質内の摂取可能センサからの信号のパッチによる検出に基づいて、摂取データを生成するように構成され得る。この物質は薬剤を含み得る。
【0022】
図1は、アドヒアランスの標準偏差メトリックを使用して行動異常を検知するためのシステム100のコンテキスト図である。システム100は、第1のユーザデバイス110と、ネットワーク120と、アプリケーションサーバ130と、第2のユーザデバイス140と、を備え得る。
【0023】
図1の例では、人105などのエンティティは、薬剤レジメンなどの療法を開始している。例えば、人105は、処方された薬剤の服用を開始することができる。第1のユーザデバイス110を使用して、人105の当該レジメンへの参加について記述する観測データ112、114を収集し、人105の当該レジメンへの参加について記述するこれらの収集された観測データ112、114を、ネットワーク120を介してアプリケーションサーバ130に送信することができる。このネットワーク120は、有線Ethernetネットワーク、光ネットワーク、WiFiネットワーク、LAN、WAN、セルラネットワーク、インターネット、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0024】
第1のユーザデバイス110は、図示のためにスマートフォンとして示されている。また、いくつかの実施態様では、第1のユーザデバイス110をスマートフォンとすることができる。例えば、スマートフォンは、Bluetoothなどの短波無線信号を使用して、人105の当該レジメンへの参加について記述するデータをブロードキャストする、1つ又はそれ以上のウェアラブル端末と同期させるなどのいくつかの方法で、人105の当該レジメンへの参加について記述するデータを収集することができる。その後、スマートフォンは、人105の当該レジメンへの参加について記述する観測データ112、114をアプリケーションサーバ130に送信することができる。ただし、本開示は、ユーザデバイス110がスマートフォンであることに限定されるものではない。
【0025】
例えば、いくつかの実施態様では、このユーザデバイス110を、スマートウォッチ、人105の皮膚に接着するパッチ、又はモノのインターネット(IOT)センサを有する衣服の形態などの、任意のウェアラブル端末とすることができる。そのような実施態様では、ユーザデバイス110は、人105の当該レジメンへの参加について記述するデータを取得し、この人105の当該レジメンへの参加について記述するデータを最初に別のユーザデバイスに送信することなく、人105の当該レジメンへの参加について記述するデータをアプリケーションサーバ130に送信することができる。
【0026】
アプリケーションサーバ130は、複数の処理モジュールを含み得る。例えば、アプリケーションサーバ130は、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(「API」)モジュール131、アドヒアランスの標準偏差モジュール132、中心傾向モジュール133、CT範囲モジュール134、判定モジュール135、異常候補解析モジュール138、及び通知モジュール139を含み得る。さらに、アプリケーションサーバ130は、異常候補データベース137を含み得るか、又はこれにアクセスすることができる。本明細書において、モジュールという用語は、本明細書によってそれぞれのモジュールに帰する機能を実行するために使用できる1つ又はそれ以上のソフトウェア構成要素、1つ又はそれ以上のハードウェア構成要素、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0027】
ソフトウェア構成要素は、例えば実行されると、本明細書によるそれぞれのモジュールに帰する機能をコンピュータに実行させる、1つ又はそれ以上のソフトウェア命令を含み得る。ハードウェア構成要素は、例えば、本明細書によるモジュールに帰する機能をこれら1つ又はそれ以上のプロセッサに実行させるために、ソフトウェア命令を実行するように構成された中央処理装置(CPU)又はグラフィック処理装置(GPU)などの1つ又はそれ以上のプロセッサ、このソフトウェア命令を格納するように構成されたメモリデバイス、又はそれらの組み合わせを含み得る。あるいは、ハードウェア構成要素は、本明細書によるモジュールに帰する機能を実行するために、ハードワイヤードロジックを使用して動作を実行するように構成されているフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又は特定用途向け集積回路(ASIC)などの1つ又はそれ以上の回路を含み得る。
【0028】
図1の例を参照すると、システム100は、アプリケーションサーバ130が観測データ112、114を受信することにより、アドヒアランスの標準偏差メトリックを使用して行動異常を検知するプロセスを開始することができる。これらの観測データ112、114は、例えば、人105が治療レジメンに従ったか、又は治療レジメンに従っていないかを表すデータを含み得る。いくつかの実施態様では、治療レジメンは、人105による薬剤などの物質の摂取を含み得る。そのような実施態様では、人105が治療レジメンに従ったかどうかを表すデータは、(i)ある物質の摂取が起こったこと、又は(ii)ある物質の摂取が起こらなかったことを表すデータを含み得る。
【0029】
ある物質の摂取が起こったことを記述するデータは、例えば、人105の皮膚に接続されたパッチによって生成され、人105がある物質を摂取したことを表すデータを含み得る。このパッチは、ある人の胃内にあって、その人が摂取した薬剤に埋め込まれているセンサが出力したデータのパッチによって検出されたことに応答して、このデータを生成することができる。このパッチによって生成されるデータを、データ112、114とすることができ、また、これらのデータ112、114はネットワークを使用して、アプリケーションサーバ130にパッチによって送信され得る。そのような実施態様では、パッチをユーザデバイス110とすることができる。他の実施態様では、パッチによって生成されるデータは、スマートフォン又はスマートウォッチなどのユーザデバイス110によって検出され得、次いでユーザデバイス110は、これらの検出された観測データ112、114をアプリケーションサーバ130に送信することができる。
【0030】
ある物質の摂取が起こったことを表すデータを、観測データ112又は114などの観測データとすることができる。ある物質の摂取の有無について記述するデータは、パッチ、ユーザデバイス110、又はその両方によって生成され得、このデータは、パッチ、ユーザデバイス110、又はその両方が、閾値時間を超えて、ある物質の摂取が起こったことを表すデータを検出しなかったことを示す。例えば、24時間にわたって摂取が全く検出されない場合、パッチ、ユーザデバイス110、又はその両方は、ある物質の摂取が起こらなかったことを表すデータを生成することができる。ある物質の摂取が起こらなかったことを表すデータを、観測データ112又は114などの観測データとすることができる。
【0031】
ただし、本開示がそのように限定される必要はない。代わりに、いくつかの実施態様では、アプリケーションサーバ130に提供される観測データ112、114は、(i)ある物質の摂取が起こったこと、又は(ii)ある物質の摂取が起こらなかったことを表すデータが取得されたかどうかを示すことができる。いくつかの実施態様では、治療レジメンは、ある人による複数の物質の摂取、物質の摂取及び身体的運動若しくは精神的運動の実行、又はただ単に、身体的運動若しくは精神的運動の実行を含み得る。それぞれの実施態様では、人105が治療レジメンに従ったか、又は治療レジメンに従っていないかを表す観測データ112、114を生成することができる。
【0032】
例えば、治療レジメンにおいて、人105が5つの薬剤を摂取する必要がある場合などのいくつかの実施態様では、システム100は、人105が治療レジメンに従ったか、又は治療レジメンに従っていないかを表すデータを、いくつかの異なる方法で生成することができる。例えば、特定の一実施態様では、特定の期間に人105が5つすべての薬剤を摂取したことを示すデータが得られた場合、システム100は、人105が治療レジメンに従ったことを表すデータを生成してもよい。ただし、別の実施態様では、人105が5つの薬剤の閾値量を超えて摂取した場合、システム100は、当該人が治療レジメンに従ったことを表すデータを生成することができる。他の複数の実施態様も同様に、本開示の範囲内に含まれていてもよい。
【0033】
引き続き図1の例を参照すると、アプリケーションサーバ130は、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)・モジュール131を使用して、観測データ112、114を受信することができる。このAPIモジュール131は、ユーザデバイス110又はユーザデバイス140とアプリケーションサーバ130との間のインターフェースとして機能するソフトウェア、ハードウェア、又はそれらの組み合わせを含み得る。例えば、このAPIモジュールは、それぞれ異なるエンティティのユーザデバイス110などの異なるユーザデバイスから、観測データ112、114などの観測データを受信することができる。さらに、APIモジュール131は、アプリケーションサーバ130の処理モジュールを使用してプロセス200などのプロセスを実行した後に、ユーザデバイス110又は別のユーザデバイス140に通知を提供するように機能することができる。アプリケーションサーバ130は、観測データ112を処理し、観測データ112、113に基づいてアドヒアランスの標準偏差メトリック112a、114aを計算し、この計算されたアドヒアランスの標準偏差メトリック112aにおける中心傾向を求め、この中心傾向の周辺にある複数の境界範囲を特定し、次いで、現在のアドヒアランスの標準偏差メトリック114aなどの現在の標準偏差メトリックが、これら複数の境界範囲のうちの少なくとも1つを満たすかどうかに基づいて、行動異常の候補が出現したかどうかを判定することができる。
【0034】
図1の例を参照すると、アプリケーションサーバは、APIモジュール131を使用して観測データ112を受信することができる。この観測データ112は、例えば1時間の期間、4時間の期間、又は24時間の期間などの単一の期間にわたって摂取が観察されたこと、又は摂取が観察されなかったこと示す観測データを含み得る。あるいは、観測データ112は、例えば1時間の期間を5つ、4時間の期間を5つ、又は24時間の期間を5つとするなど、複数の連続した期間にわたって摂取が観察されたこと、又は観察されなかったことを示す観測データを含み得る。APIモジュール131は、この観測データ112をアドヒアランスの標準偏差メトリックモジュール132に提供することができる。このアドヒアランスの標準偏差メトリックモジュール132は、観測データ112などの観測データに基づいて、人105のアドヒアランスの標準偏差を計算することができる。アドヒアランスの標準偏差は、本明細書ではアドヒアランスの標準偏差メトリックと呼ばれる数値として記述してもよく、物質の摂取行動が、履歴観測データに基づく行動推定値に適合する度合いを表す数値である。
【0035】
いくつかの実施態様では、このアドヒアランスの標準偏差モジュール132は、ある人を特定の薬剤で治療している間に生成された観測データから生成された、単一の2値マルコフ連鎖のエントロピーレートにおける長期的変化を測定することにより、アドヒアランスの標準偏差メトリックと呼ばれるアドヒアランスの標準偏差の代表値を生成することができる。本実施例では、観測データは、ある特定の日に摂取が観察されたことを示す「1」などの成功状態、又はある特定の日の摂取が不成功に終わったか、若しくは摂取が観察されなかったことを示す「0」などの無観察状態を含み得る。アドヒアランスの標準偏差を記述するエントロピーレートを使用すると、極限(定常)依存構造及び条件付き依存構造の両方における変化に関する情報を同時に提供することができ、行動(コンテキスト)異常を検知するための有望な手段となる。
【0036】
【数1】
【0037】
アプリケーションサーバ130は、アドヒアランスの標準偏差メトリックモジュール132によって生成されたアドヒアランスの標準偏差メトリック112aを、中心傾向モジュール133への入力データとして提供することができる。中心傾向モジュール133は、アドヒアランスの標準偏差メトリック112aの入力データを取得し、将来の少なくともn期間にわたって人105のアドヒアランスの標準偏差メトリック112aにおける中心傾向を求めるように構成され、ここでnは任意の非ゼロ整数である。n期間は、将来のn時間、n日間、又はn週間などを含み得、ここでnは任意の非ゼロ整数である。したがって、中心傾向は、将来のn期間にわたる観測データセットの推定値として機能している。例えば、いくつかの実施態様では、観測データのエントロピーレートとしていくつかの実施態様で記述することができるアドヒアランスの標準偏差メトリックにおける中心傾向は、将来のn-日間にわたって人105で予想されるすべてのエントロピーレートの加重平均として計算され得る。したがって、この中心傾向は、人105の摂取行動を記述する履歴観測データに基づく、人105の既存のアドヒアランスの標準偏差測定値を所与とする、将来のn日間にわたるある物質の摂取を含む薬剤レジメンなどのレジメンに対する、人105の将来の推定アドヒアランスである。
【0038】
中心傾向(CT)範囲モジュール134は、中心傾向モジュール132によって求められた、アドヒアランスの標準偏差における中心傾向周辺にある複数の境界閾値を特定するように構成されている。これら複数の境界閾値は、中心傾向推定値よりも大きい第1の境界閾値と、中心傾向推定閾値よりも小さい第2の境界閾値とを含み得る。これらの境界閾値は、中心傾向を計算するために使用されるアドヒアランスの標準偏差メトリック112aによって証明される、人105のアドヒアランス履歴の変動に基づいて、将来の時間間隔ベースで動的に計算される。
【0039】
いくつかの実施態様では、これら将来の時間間隔のそれぞれは、1時間の期間を5つ、4時間の期間を5つ、又は24時間の期間を5つとするなど、一定数の期間に対応してもよく、また値nに対応することもできる。これらの境界範囲は、n期間の将来の時間間隔にわたる、エントロピーレートの中心傾向からの変動の予測レベルを定義している。判定モジュール135は、特定の時間間隔における人105のアドヒアランスの標準偏差を記述する後続のエントロピーレートが、特定の時間間隔の境界範囲を満たすかどうかを判定することができる。ユーザデバイスからの観測に基づいて求められた後続のエントロピーレートが、これらの境界範囲のうちの1つを満たした場合、行動異常の候補が検知されたことを示すログレコードが作成され得、次いで異常候補データベース137に格納され得る。行動異常は、薬剤治療法に対する人々105のアドヒアランスの変化を含み得る。これらの境界範囲が、nの時間間隔それぞれにおいて動的に再計算され得、かつ更新され得るということが重要である。これにより、システム100は、事前に訓練されることなく、人105にとっては通常の摂取行動パターンに動的に適応することができる。
【0040】
ここで、将来の時間間隔の静的な期間を、本実施態様では持続期間nであるとして述べ、これら将来の時間間隔のそれぞれは同じ持続期間nである。ただし、本開示がそのように限定される必要はない。例えば、いくつかの実施態様では、将来の時間間隔が、静的な持続期間中の期間に限定される必要はない。代わりに、いくつかの実施態様では、それぞれ異なる長さである将来の時間間隔が使用され得る。例えば、第1の将来の時間間隔は3日間の期間であってもよく、第2の将来の時間間隔は6日間の期間であってもよく、また、第3の将来の時間間隔は2日間の期間であってもよい、などとなる。
【0041】
このように境界条件の動的適応を用いることにより、いくつかの実施態様では適応外れ値検知に使用することができる、コンテキスト異常検知のためのシステムが使用可能になる。この境界判定プロセスのための擬似コードアルゴリズムを、以下の表1に示す。
【表1】
【0042】
より詳細には、初期観測期間の後、n日間などの次の「n」期間にわたるアドヒアランスのエントロピーレート観測値の中心傾向は、将来のn日間にわたって予想されるすべてのエントロピーレートの加重平均として計算される。いくつかの実施態様では、この初期観測期間は、24時間/1日などの所定の時間であってもよい。ただし、本開示が初期観測のためのそのような期間に限定される必要はなく、いくつかの実施態様では、この初期観測期間を、24時間/1日よりも短い時間又は長い時間とすることができる。2値マルコフ連鎖及びn-日間の観測ウィンドウにおいては、2の将来の状態候補が存在する。重みは、その時点までの履歴観測データを所与として、各イベントの発生確率として計算される。いくつかの実施態様では、中心傾向の周辺にある境界範囲の推定値は、観測された加重分散から計算される1標準偏差に設定され得る。したがって、本開示を使用して、中心傾向推定値及び次の「n」日間にわたって観測されるエントロピーレートの変動の範囲が同時に生成され得る。
【0043】
ひとたび推定値の範囲が設定されるか、又はこれら推定値の範囲を計算している間に、次のn期間中の特定の観測ウィンドウにおいて、アプリケーションサーバ130は、次のn期間にわたって観測データを観測し続けることができる。これは、現在の観測データ114などの現在の観測データを受信するステップを含み得る。この現在の観測データ114は、観測データ112が基づく摂取観察の後の時点で発生した摂取観察に基づいて生成される観測データである。APIモジュール131は現在の観測データ114を受信し、アドヒアランスの標準偏差メトリックモジュール132を使用して、現在のアドヒアランスの標準偏差メトリック114aを求めることができる。現在のアドヒアランスの標準偏差メトリック114aは、観測データ114のエントロピーレートを計算することによって求められ得る。いくつかの実施態様では、このエントロピーレートは、2値マルコフ連鎖を用いて求められ得る。
【0044】
アプリケーションサーバ130は、判定ロジック135を使用して、現在のアドヒアランスの標準偏差メトリック132が、アドヒアランスの標準偏差メトリックの変動推定値を定義する中心傾向の周辺にある複数の境界範囲のうちの1つ又はそれ以上を満たすかどうかを判定することができる。この判定ロジックによって、現在のアドヒアランスの標準偏差メトリック133が複数の境界範囲のうちの1つ又はそれ以上を満たしていないと判定された場合、アプリケーションサーバ130はモジュール136のプログラムロジックを実行して、人105の摂取を記述する観測データの監視を継続することができる。これは、例えば、観測データの後続のセットを取得するステップ、後続のアドヒアランスの標準偏差メトリックを生成するステップ、及び判定ロジック135で後続のアドヒアランスの標準偏差メトリックをテストするステップを含み得る。このサイクルは、n期間の時間ウィンドウが満了するまで継続することができる。n期間の時間ウィンドウの満了時に、後続のn期間の時間ウィンドウが決定され得、後続の観測データが取得され得、また、本プロセスは上述したように反復し続けることができる。
【0045】
あるいは、アプリケーションサーバ130が判定ロジック135を使用して、現在のアドヒアランスの標準偏差メトリック133が複数の境界範囲のうちの1つ又はそれ以上を満たしていると判定した場合、アプリケーションサーバ130は、異常候補ログレコードを異常候補データベース137に格納することができる。この異常候補ログレコードは、異常候補ログレコードが作成された時点又はその近時における当該人の状態を記述する、任意のデータを含み得る。例えば、この異常候補ログレコードは、現在のアドヒアランスの標準偏差メトリックが基づく1つ又はそれ以上の観測データ114、アドヒアランスの標準偏差メトリック、1つ又はそれ以上の先行するn期間からの履歴観測データ、又は現在の境界範囲の絶対値など、あるいはそれらの任意の組み合わせを記述するデータを含み得る。異常候補の検知後、アプリケーションサーバは、モジュール136のプログラムロジックを実行して、人105の摂取を記述する観測データの監視を継続することができる。
【0046】
いくつかの実施態様では、上記の反復プロセスは、ある終了基準に達するまで継続され得る。いくつかの実施態様では、この終了基準を、薬剤レジメンなどの治療の完了とすることができる。いくつかの実施態様では、終了基準は、本明細書に記載しているように、行動異常を検知することができるサービスへのサブスクリプションの終了を含んでいてもよい。
【0047】
行動異常の候補の検知は、これ単独で、当技術分野において重要な利点をもたらすものである。これは、この検知により、人105の摂取行動を監視するユーザが、人105が典型的な摂取パターンから逸脱し始める可能性のある時点を特定できるようになるためである。本明細書に記載のシステム及び方法は、中心傾向の範囲が、人105の固有の行動パターンに対して当該範囲の動的なカスタマイズができるように、初期観測期間、あるいは1つ又はそれ以上の観測サイクルを処理した後の2つの期間のいずれかで動的に特定されるという点で、従来の方法と比較してとりわけ革新的である。こうした動的なカスタマイズは、本明細書に記載しているように、ユーザの先行観測ウィンドウに基づいて中心傾向を更新し、次いでその中心傾向の周辺にある境界範囲を更新した結果として生じている。したがって、本開示のシステム及び方法は、従来の方法よりもより有効かつ正確に異常候補を特定る。
【0048】
また一方で、本開示は、異常候補データベース137に格納された特定済みの異常候補ログレコードに基づいて、データ解析、通知、及びレポート機能をさらに提供している。例えば、いくつかの実施態様では、異常候補解析モジュール138は、異常候補データベース137に格納される、新たに追加された異常候補ログレコードを検出し、ネットワーク120を使用してユーザデバイス110又は140に送信されて、異常が検知されたことについてユーザに警告することができる通知139aを生成するように、通知モジュール139に命令することができる。いくつかの実施態様では、この警告は、ユーザデバイス110にユーザのことを通知することができる。この通知は、例えば、ユーザの摂取パターンが変化した可能性があることをユーザに警告する、ポップアップ通知を含み得る。そのような変化は、投薬量の増加又は投薬量の不足であってもよい。あるいは、この通知139aは、医師、看護師、薬剤師、他の医療従事者、又は、例えば人105の妻若しくは夫など、人105のアカウント若しくはプロファイルに関連付けられた他の任意のユーザに属し得る、異なるユーザデバイス140に送信され得る。いくつかの実施態様では、この通知139aは、下流予測モデリングで使用するために、ユーザデバイス140に送信され得る。
【0049】
いくつかの実施態様では、異常候補解析モジュール138は、異常候補ログレコードに対して他の動作を実行するようにさらに構成され得る。例えば、いくつかの実施態様では、異常候補解析モジュール138は、異常候補データベース137から異常候補ログレコード、及びアプリケーションサーバ130によって収集されたか、又はアプリケーションサーバ130によって生成された他のデータを取得することができる。このデータは、例えば履歴観測データ、中心傾向データ、境界範囲データ、又は観測ウィンドウ長データなどを含み得る。異常候補解析モジュール138、又はアプリケーションサーバ130の他のモジュールは、ユーザデバイス110、140によって受信され、かつ処理されると、このユーザデバイスに視覚化150などの視覚化を生成させることができる、レンダリングデータを生成することができる。いくつかの実施態様では、異常候補解析モジュール138は、通知モジュール又はAPIモジュールを使用して、このレンダリングデータをユーザデバイス150などの別のコンピュータに伝達することができる。
【0050】
視覚化150は、アプリケーションサーバ130によって解析されたデータの視覚表示をもたらすことができる。例えば、視覚化150は、人105について計算された中心傾向151、境界範囲152/153、152a/153a、152b/153b、摂取が観察されたことを「1」が表し、摂取が観察されなかったことを「0」が表す、視覚化150の上部にわたって表示される複数の1及び複数の0からなる文字列などの観測データ、及び、n=5日間のアクセスウィンドウを表示することができる。本実施例では、n=5日間の静的期間を使用し、観測ウィンドウはそれぞれ、同じ長さであった。ただし、本開示がそのように限定される必要はない。例えば、いくつかの実施態様では、当該期間又はこの静的な持続期間中の期間にアクセスウィンドウが限定される必要はない。代わりに、いくつかの実施態様では、それぞれ異なる長さであるアクセスウィンドウが使用され得る。例えば、第1の時間ウィンドウは3日間の期間であってもよく、第2の時間ウィンドウは6日間の期間であってもよく、また、第3の時間ウィンドウは2日間の期間であってもよい、などとなる。
【0051】
視覚化150は、縮尺通りに示されておらず、また数学的に計算されてもいない。代わりに、ユーザが、「01110」からなるユーザ自身の個人的な行動パターン160、161、162(例えば、1日目には摂取は観察されず、2日目、3日目及び4日目には摂取が観察され、そして5日目には摂取が観察されなかったなど)を続けるにつれて、初期観測期間の後、平坦であり、かつ境界範囲152及び153内に入るなど、比較的安定した中心傾向が維持されているなど、本開示に関連する概念を示すことが意図されている。次いで、163でその行動が変化したため、中心傾向が調整され(例えば、上方に)、境界範囲152、153の外側に移動する。次いで、次の時間ウィンドウ内の境界範囲152、153が再計算されて、中心傾向の周辺に境界範囲152a、153aの新たなセットが設定され得る。

【0052】
さらに他の実施態様では、異常候補解析モジュール138は、異常候補データベース137に格納された異常候補ログレコードを解析し、異常候補が実際の異常であるかどうかを判定することができる。その異常候補が異常であると判定された場合、アプリケーションサーバ130によって、1つ又はそれ以上の動作が開始され得る。例えば、アプリケーションサーバ130は、実際の異常が検知されたことをユーザデバイス110又は140に通知することができる。あるいは、その異常候補が異常であると判定されなかった場合、アプリケーションサーバ130は、検知された異常候補についてユーザデバイス110又は140に通知しない決定を行うことができる。そのような機能は、ユーザデバイスと通信するために使用される帯域幅を大幅に低減することができ、なおかつユーザデバイス110又は140への誤った通知を減少させることができる。
【0053】
図2は、アドヒアランスの標準偏差メトリックを使用して行動異常を検知するためのプロセス200のフローチャートである。一態様では、プロセス200は、(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという表示、又は(ii)当該エンティティが治療レジメンに従っていないという表示を表すデータを構成するフィールドを有する1つ又はそれ以上の第1のデータ構造を、1つ又はそれ以上のコンピュータによって取得するステップ(210)と、これら1つ又はそれ以上の第1のデータ構造によって記述されるデータに基づいて、初期標準偏差メトリックを1つ又はそれ以上のコンピュータによって測定するステップ(220)と、将来の少なくともn期間にわたって当該エンティティのアドヒアランスの初期標準偏差メトリックにおける中心傾向を、1つ又はそれ以上のコンピュータによって求めるステップ(230)であって、ここでnは任意の非ゼロ整数である、ステップ(230)と、この中心傾向の周辺にある複数の境界範囲を、1つ又はそれ以上のコンピュータによって特定するステップ(240)であって、これら複数の境界範囲は、中心傾向の上限を表す第1の閾値、及び中心傾向の下限を表す第2の閾値を含む、ステップ(240)と、(i)あるエンティティが治療レジメンに従ったという後続の表示、又は(ii)当該エンティティが治療レジメンに従っていないという後続の表示を表すデータを構成するフィールドを有する1つ又はそれ以上の第2のデータ構造を、1つ又はそれ以上のコンピュータによって取得するステップ(250)と、これら1つ又はそれ以上の第2のデータ構造によって記述されるデータに基づいて、現在観測されるアドヒアランスの標準偏差メトリックを1つ又はそれ以上のコンピュータによって測定するステップ(260)と、この現在観測される標準偏差メトリックが第1の閾値又は第2の閾値を満たしているかどうかを、1つ又はそれ以上のコンピュータによって判定するステップ(270)と、現在の標準偏差メトリックが第1の閾値又は第2の閾値を満たしているかどうかに関するこの1つ又はそれ以上のコンピュータによる判定に基づいて、異常候補のデータログレコードを生成するステップ(280)であって、この異常候補のデータログレコードは、ある異常候補が検知されたことを示すデータを含む、ステップ(280)と、を含み得る。
【0054】
図3は、アドヒアランスの標準偏差メトリックを使用して行動異常を検知するためのシステムを実装する際に使用できる、システム構成要素のブロック図である。
【0055】
コンピューティングデバイス300は、ラップトップ、デスクトップ、ワークステーション、携帯情報端末、サーバ、ブレードサーバ、メインフレーム、及び他の適切なコンピュータなどの様々な形態のデジタルコンピュータを表すことを意図している。コンピューティングデバイス350は、携帯情報端末、携帯電話、スマートフォン、及び他の同様のコンピューティングデバイスなどの様々な形態のモバイル機器を示すことを意図している。さらに、コンピューティングデバイス300又は350は、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)フラッシュドライブを含み得る。このUSBフラッシュドライブは、オペレーティングシステム及び他のアプリケーションを格納することができる。このUSBフラッシュドライブは、別のコンピューティングデバイスのUSBポートに挿入することができる、無線送信機又はUSBコネクタなどの入出力構成要素を含み得る。ここに示している構成要素、それらの接続及び関係性、並びにそれらの機能は例示的なものにすぎず、本明細書に記載し、かつ/又は特許請求している本発明の実装形態を限定することを意図していない。
【0056】
コンピューティングデバイス300は、プロセッサ302と、メモリ304と、ストレージデバイス306と、メモリ304及び高速拡張ポート310に接続されている高速インターフェース308と、低速バス314及びストレージデバイス306に接続されている低速インターフェース312と、を含む。構成要素302、304、306、308、310、及び312は、様々なバスを使用して相互接続され、共通のマザーボード上に、又は必要に応じて他の方法で実装され得る。プロセッサ302は、高速インターフェース308に接続されたディスプレイ316などの外部入出力デバイスにGUI用のグラフィック情報を表示するために、メモリ304内又はストレージデバイス306上に格納された命令を含む、コンピューティングデバイス300内で実行するための命令を処理することができる。他の実施態様では、複数のプロセッサ及び/又は複数のバスが、必要に応じて、複数のメモリ及び各種メモリと共に使用され得る。また、複数のコンピューティングデバイス300は、例えば、サーババンク、ブレードサーバ群、又はマルチプロセッサシステムとして、必要な動作の一部をもたらす各デバイスと接続され得る。
【0057】
メモリ304は、コンピューティングデバイス300内に情報を格納している。一実施態様では、メモリ304は1つ又はそれ以上の揮発性メモリユニットである。別の実施態様では、メモリ304は1つ又はそれ以上の不揮発性メモリユニットである。メモリ304を、磁気ディスク又は光ディスクなどのコンピュータ可読媒体の別の形態とすることもできる。
【0058】
ストレージデバイス306は、コンピューティングデバイス300に大容量ストレージを提供することができる。一実施態様では、ストレージデバイス306は、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、若しくはテープデバイス、フラッシュメモリ若しくは他の同様のソリッドステートメモリデバイス、又はストレージ・エリア・ネットワーク若しくは他の構成のデバイスを含むデバイスのアレイなどのコンピュータ可読媒体であるか、あるいはそれを含み得る。情報担体内に、コンピュータプログラム製品が有形に具現化され得る。このコンピュータプログラム製品は、実行されると、上記のような1つ又はそれ以上の方法を実施する命令をさらに含み得る。この情報担体は、メモリ304、ストレージデバイス306、又はプロセッサ302上のメモリなどのコンピュータ可読媒体又は機械可読媒体である。
【0059】
高速コントローラ308は、コンピューティングデバイス300の帯域幅集約的な動作を管理している一方、低速コントローラ312は、より低い帯域幅集約的な動作を管理している。このような機能の割り当ては、単なる例示にすぎない。一実施態様では、高速コントローラ308は、例えばグラフィックスプロセッサ又はアクセラレータを介してメモリ304、ディスプレイ316に接続されており、様々な拡張カード(図示せず)を受け入れることができる高速拡張ポート310にも接続されている。本実施態様では、低速コントローラ312は、ストレージデバイス306及び低速拡張ポート314に接続されている。例えば、USB、Bluetooth、Ethernet、ワイヤレスEthernetなどの様々な通信ポートを含み得る低速拡張ポートは、例えばネットワークアダプタを介して、キーボード、ポインティングデバイス、マイクロフォン対/スピーカ対、スキャナ、又はスイッチ若しくはルータなどのネットワークデバイスなどの1つ又はそれ以上の入出力デバイスに接続され得る。コンピューティングデバイス300は、図に示すように、いくつかの異なる形態で実装され得る。例えば、このコンピューティングデバイス300は標準サーバ320として、又はそのようなサーバ群において複数回実装され得る。また、コンピューティングデバイス300は、ラックサーバシステム324の一部としても実装され得る。また、コンピューティングデバイス300は、ラップトップコンピュータ322などのパーソナルコンピュータに実装され得る。あるいは、コンピューティングデバイス300の構成要素は、デバイス350などのモバイル機器(図示せず)内の他の構成要素と組み合わせられ得る。そのようなデバイスのそれぞれは、コンピューティングデバイス300、350のうちの1つ又はそれ以上を含み得、またシステム全体は、互いに通信し合う複数のコンピューティングデバイス300、350から構成され得る。
【0060】
コンピューティングデバイス300は、図に示すように、いくつかの異なる形態で実装され得る。例えば、このコンピューティングデバイス300は標準サーバ320として、又はそのようなサーバ群において複数回実装され得る。また、コンピューティングデバイス300は、ラックサーバシステム324の一部としても実装され得る。また、コンピューティングデバイス300は、ラップトップコンピュータ322などのパーソナルコンピュータに実装され得る。あるいは、コンピューティングデバイス300の構成要素は、デバイス350などのモバイル機器(図示せず)内の他の構成要素と組み合わせられ得る。そのようなデバイスのそれぞれは、コンピューティングデバイス300、350のうちの1つ又はそれ以上を含み得、またシステム全体は、互いに通信し合う複数のコンピューティングデバイス300、350から構成され得る。
【0061】
コンピューティングデバイス350は、他の構成要素の中でもとりわけ、プロセッサ352、メモリ364、並びにディスプレイ354、通信インターフェース366、及びトランシーバ368などの入出力デバイスを含む。デバイス350は、追加の記憶容量を提供するために、マイクロドライブ又は他のデバイスなどのストレージデバイスをさらに備え得る。構成要素350、352、364、354、366、及び368は、様々なバスを使用して相互接続され、共通のマザーボード上に、又は必要に応じて他の方法で実装され得る。
【0062】
プロセッサ352は、メモリ364内に格納された命令を含む、コンピューティングデバイス350内の命令を実行することができる。このプロセッサは、独立した複数のアナログプロセッサ及びデジタルプロセッサを含むチップのチップセットとして実装され得る。さらに、このプロセッサは、いくつかのアーキテクチャのいずれかを使用して実装され得る。例えば、プロセッサ310を、CISC(複合命令セットコンピュータ(Complex Instruction Set Computer))プロセッサ、RISC(縮小命令セットコンピュータ(Reduced Instruction Set Computer))プロセッサ、又はMISC(最小命令セットコンピュータ(Minimal Instruction Set Computer))プロセッサとすることができる。このプロセッサは、例えば、ユーザインターフェース、デバイス350によって実行されるアプリケーション、及びデバイス350による無線通信などを制御するものとして、デバイス350の他の構成要素の調整をもたらすことができる。
【0063】
プロセッサ352は、ディスプレイ354に接続された制御インターフェース358及びディスプレイインターフェース356を介して、ユーザと通信することができる。ディスプレイ354を、例えば、TFT(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(Thin-Film-Transistor Liquid Crystal Display))ディスプレイ又はOLED(有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode))ディスプレイ、若しくは他の適切なディスプレイ技術とすることができる。ディスプレイインターフェース356は、ディスプレイ354を駆動してグラフィック情報及び他の情報をユーザに対して表示するための適切な回路を含み得る。制御インターフェース358は、ユーザからコマンドを受信し、プロセッサ352に送信するためにそれらのコマンドを変換することができる。さらに、外部インターフェース362を設けてプロセッサ352と通信させることにより、デバイス350と他のデバイスとの近エリア通信を行うことができる。外部インターフェース362は、例えばいくつかの実施態様では有線通信を、又は他の実施態様では無線通信を提供することができ、また、複数のインターフェースも同様に使用され得る。
【0064】
メモリ364は、コンピューティングデバイス350内に情報を格納している。このメモリ364は、1つ又はそれ以上のコンピュータ可読媒体、1つ又はそれ以上の揮発性メモリユニット、又は1つ又はそれ以上の不揮発性メモリユニットのうちの1つ又はそれ以上として実装され得る。拡張メモリ374がさらに設けられ得、また、例えば、SIMM(シングル・インライン・メモリ・モジュール(Single In Line Memory Module))カードインターフェースを含み得る拡張インターフェース372を介して、デバイス350に接続され得る。そのような拡張メモリ374は、デバイス350に追加のストレージ空間をもたらすことができ、あるいはデバイス350のアプリケーション又は他の情報を格納することもできる。具体的には、拡張メモリ374は、上述したプロセスを実行又は補足するための命令を含み得、またセキュア情報も含み得る。このため、拡張メモリ374は例えば、デバイス350のセキュリティモジュールとして設けられ得、また、デバイス350をセキュアに使用できるようにする命令でプログラムされ得る。さらに、例えば、ハッキングできない方法でSIMMカード上に識別情報を配置するなどして、追加情報と共に、SIMMカードを介してセキュアなアプリケーションが設けられ得る。
【0065】
このメモリは、後述するように、例えばフラッシュメモリ及び/又はNVRAMメモリを含み得る。一実施態様では、情報担体内にコンピュータプログラム製品が有形に具現化され得る。このコンピュータプログラム製品は、実行されると、上記のような1つ又はそれ以上の方法を実施する命令を含む。この情報担体は、例えばトランシーバ368又は外部インターフェース362を介して受け入れられ得る、メモリ364、拡張メモリ374、又はプロセッサ352上のメモリなどのコンピュータ可読媒体又は機械可読媒体である。
【0066】
デバイス350は、必要に応じてデジタル信号処理回路を含み得る通信インターフェース366を介して、無線で通信することができる。通信インターフェース366は、中でもとりわけGSM音声通話、SMSメッセージング、EMSメッセージング、又はMMSメッセージング、CDMA(符号分割多元接続(Code Division Multiple Access))、TDMA(時分割多元接続(Time Division Multiple Access))、PDC(パーソナル・デジタル・セルラ(Personal Digital Cellular))、WCDMA(登録商標)(広帯域符号分割多元接続(Wideband Code Division Multiple Access))、CDMA 2000方式、又はGPRS(汎用パケット無線サービス(General Packet Radio Service))などの様々なモード又はプロトコルの下での通信を提供することができる。そのような通信は、例えば無線周波トランシーバ368を介して行うことができる。さらに、Bluetooth、Wi-Fi、又は他のそのようなトランシーバ(図示せず)を使用するなどして、短距離通信を行うことができる。さらに、GPS(全地球測位システム)受信モジュール370は、デバイス350上で実行されているアプリケーションによって適切に使用され得る、追加のナビゲーション関連無線データ及び位置関連無線データをデバイス350に提供することができる。
【0067】
デバイス350はまた、音声コーデック360を使用して音声で通信することができ、この音声コーデックは、ユーザから音声情報を受信し、それを使用可能なデジタル情報へと変換することができる。音声コーデック360は、同様に、例えばデバイス350の携帯端末内のスピーカなどを介して、ユーザに向けた可聴音を生成することができる。そのような音は音声通話からの音を含み得、例えば音声メッセージ、音楽ファイルなどの録音された音を含み得、また、デバイス350上で動作するアプリケーションによって生成される音も同様に含み得る。
【0068】
コンピューティングデバイス350は、図に示すように、いくつかの異なる形態で実装され得る。例えば、コンピューティングデバイス350は携帯電話380として実装され得る。また、コンピューティングデバイス350はスマートフォン382、携帯情報端末、又は他の同様のモバイル機器の一部としても実装され得る。
【0069】
本明細書に記載しているシステム及び方法の様々な実施態様は、デジタル電子回路、集積回路、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はそれらの実装の組み合わせにおいて実現され得る。これらの様々な実施態様は、ストレージシステム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信し、かつそれらにデータ及び命令を送信するように接続された、専用又は汎用であり得る少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能かつ/又は解釈可能な、1つ又はそれ以上のコンピュータプログラムにおける実装を含み得る。
【0070】
これらのコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション又はコードとも呼ばれる)は、プログラマブルプロセッサ用の機械命令を含み、また、高レベル手続き型プログラミング言語及び/又はオブジェクト指向プログラミング言語で、かつ/又はアセンブリ言語/機械言語で実装され得る。本明細書で使用される場合、「機械可読媒体」「コンピュータ可読媒体」という用語は、機械命令及び/又は機械データをプログラマブルプロセッサに提供するために使用される任意のコンピュータプログラム製品、装置及び/又はデバイス、例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)を指し、これには、機械命令を機械可読信号として受信する機械可読媒体が含まれる。この「機械可読信号」という用語は、プログラマブルプロセッサに機械命令及び/又は機械データを提供するために使用される任意の信号を指す。
【0071】
ユーザとの対話を行うために、本明細書に記載しているシステム及び技術は、ユーザに対して情報を表示するためのCRT(陰極線管)モニタ又はLCD(液晶ディスプレイ)モニタなどのディスプレイデバイスと、ユーザがコンピュータに入力を行うことができるマウス又はトラックボールなどのキーボード及びポインティングデバイスと、を有するコンピュータ上に実装され得る。他の種類のデバイスを使用して、ユーザとの対話を行うこともでき、例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、一例として視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバックなどの任意の形態の感覚フィードバックとすることができ、また、ユーザからの入力は、音響入力、音声入力、又は触覚入力を含む任意の形態で受け取られ得る。
【0072】
本明細書に記載のシステム及び技術は、例えばデータサーバとしてのバックエンド構成要素を含むか、又は例えばアプリケーションサーバなどのミドルウェア構成要素を含むか、又はフロントエンド構成要素、例えば、ユーザが本明細書に記載のシステム及び技術の実装と対話することができるグラフィカル・ユーザ・インターフェース又はウェブブラウザを有するクライアントコンピュータ、又はそのようなバックエンド構成要素、ミドルウェア構成要素、若しくはフロントエンド構成要素の任意の組み合わせを含むコンピューティングシステムに実装され得る。本システムの構成要素は、例えば通信ネットワークなどの任意の形式又は媒体のデジタルデータ通信によって相互接続され得る。通信ネットワークの例には、ローカル・エリア・ネットワーク(「LAN」)、ワイド・エリア・ネットワーク(「WAN」)、及びインターネットが含まれる。
【0073】
本コンピューティングシステムは、クライアントとサーバとを備え得る。クライアントとサーバとは概して、互いから遠く離隔しており、通常は通信ネットワークを介して対話している。このクライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され、かつ互いに対してクライアント/サーバ関係を有するコンピュータプログラムが存在することから生じている。
【0074】
他の実施態様
いくつかの実施態様について説明した。それでもなお、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正をなすことが可能であることが理解されよう。また、図に示しているロジックフローは、望ましい結果を得るために、示している特定の順序、又は連続した順序を必要としていない。さらに、記載しているフローに他のステップを設けたり、このフローからステップを除外したりすることができ、また、記載しているシステムに他の構成要素を追加したり、このシステムから構成要素を省略したりすることができる。したがって、他の実施態様も、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3