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特許7560554液圧式の非人力車両ブレーキ設備のハイドロリックユニットのためのハイドリックブロック
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  • 特許-液圧式の非人力車両ブレーキ設備のハイドロリックユニットのためのハイドリックブロック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】液圧式の非人力車両ブレーキ設備のハイドロリックユニットのためのハイドリックブロック
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/138 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B60T13/138 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022530146
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2020080386
(87)【国際公開番号】W WO2021104790
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】102019218481.2
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヴェー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハグスピエル,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】カゼラー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,マティアス
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0345934(US,A1)
【文献】特開2005-178620(JP,A)
【文献】特開2012-210906(JP,A)
【文献】特表2018-533521(JP,A)
【文献】特開2003-137084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/138
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧式の非人力車両ブレーキ設備のハイドロリックユニットのためのハイドロリックブロックであって、前記ハイドロリックブロック(2)は、非人力ピストン(5)が軸方向へスライド可能に収容された、ピストンシール材(9,10)により封止される非人力シリンダボア(4)を有し、前記非人力シリンダボア(4)は前記ピストンシール材(9,10)の圧力側に、前記非人力ピストン(5)を径方向で案内する案内区域(6)と前記案内区域(6)より大きな径を有する大径部とを有する、ハイドロリックブロックにおいて、前記ハイドロリックブロック(2)は、前記非人力ピストン(5)の圧力側で前記案内区域(8)と前記大径部の境界から前記ピストンシール材(9)まで前記案内区域(6)を貫くブレーキ液通路(11)を前記非人力シリンダボア(4)の円周面に有し、
前記シリンダボア(4)の前記案内区域(6)に、前記非人力ピストン(5)が引き込まれた基本位置にあるとき前記非人力ピストン(5)の圧力側にブレーキ液パイプ(15)が連通する周回する溝(14)を有することを特徴とする、ハイドロリックブロック。
【請求項2】
前記非人力ピストン(5)は引き戻された基本位置にあるとき前記ピストンシール材(9)に密封式に当接することを特徴とする、請求項1に記載のハイドロリックブロック。
【請求項3】
前記ピストンシール材(9,10)は、弾性的な素材のみからなる、および/または軸方向への圧力負荷に対する独立した軸方向の支持部を有さない、シールリングを有することを特徴とする、請求項1または2に記載のハイドロリックブロック。
【請求項4】
前記非人力シリンダボア(4)は2つのピストンシール材(9,10)を有し、前記案内区域(6)は両方の前記ピストンシール材(9,10)の間にも延びていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のハイドロリックブロック。
【請求項5】
前記非人力ピストン(5)のための前記非人力シリンダボア(4)の前記案内区域(6)は前記非人力ピストン(5)の圧力側で前記非人力シリンダボア(4)の長さの一部にわたってのみ延びており、かつ、圧力側から遠い前記ピストンシール材(10)の圧力側と反対を向く側には延びていないことを特徴とする、請求項4に記載のハイドロリックブロック。
【請求項6】
前記非人力シリンダボア(4)は前記ハイドロリックブロック(2)にある逆止め弁または差圧弁(28)および制御可能な吸込弁(27)によってマスタブレーキシリンダボア(24)および/またはブレーキ液貯蔵容器に接続されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のハイドロリックブロック。
【請求項7】
前記逆止め弁または前記差圧弁(28)は制御可能な分離弁(26)に組み込まれ、該分離弁によってホイールブレーキが前記非人力シリンダボア(4)に接続されることを特徴とする、請求項6に記載のハイドロリックブロック。
【請求項8】
前記ハイドロリックブロック(2)は前記非人力シリンダボアの中で前記非人力ピストン(5)をスライドさせるための非人力駆動装置(22)を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のハイドロリックブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項の構成要件を有する、液圧式の車両ブレーキ設備のハイドロリックユニットのためのハイドロリックブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、スリップコントロールされる液圧式の非人力車両ブレーキ設備のためのハイドロリックユニットを開示している。このハイドロリックユニットは、車両ブレーキ設備の筋力操作のためのマスタブレーキシリンダピストンが軸方向へスライド可能に収容されたマスタブレーキシリンダボアが穿設されたハイドロリックブロックを有している。マスタブレーキシリンダピストンは、マスタブレーキシリンダピストンおよびフットブレーキペダルと枢着結合されたペダルロッドを介して、マスタブレーキシリンダボアの中でスライドさせることができる。車両ブレーキ設備の非人力操作のために、ハイドロリックブロックは、電気モータによりねじ伝動装置を介して非人力ピストンが中でスライド可能である非人力シリンダボアを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/023953A1号パンフレット
【発明の概要】
【0004】
請求項1の構成要件を有する本発明のハイドロリックブロックは、液圧式の、特にスリップコントロール式の、非人力車両ブレーキ設備のハイドロリックユニットのために意図される。スリップコントロールは、特にロック防止コントロール、トラクションコントロール、および/またはビークルダイナミックコントロール/エレクトロニックスタビリティプログラムであり、これらについて略語ABS、ASR、および/またはFDR/ESPが慣用される。これらは日常語では「横滑りコントロール」とも呼ばれる。スリップコントロールは周知であり、ここでは詳しくは説明しない。
【0005】
ハイドロリックブロックは、車両ブレーキ設備ないしそのブレーキ圧コントロールおよび/またはスリップコントロールの液圧コンポーネントの機械的な取付、および液圧的な配管の役目を果たす。このような液圧コンポーネントは、特に、電磁弁、逆止め弁、ハイドロリックリザーバ、ダンパチャンバ、および圧力センサである。液圧コンポーネントは、多くの場合に円筒状の貫通孔または止まり穴として部分的に直径段差を有するように構成される、ハイドロリックブロックの収容部に取り付けられる。「配管」とは、収容部ないしその中に取り付けられた液圧コンポーネントがハイドロリックブロックのパイプを通して、車両ブレーキ設備ないしそのスリップコントロールの液圧配線図に即して接続されることを意味する。パイプは、典型的にはハイドロリックブロックに穿孔される。
【0006】
ハイドロリックブロックは、車両ブレーキ設備ないしそのスリップコントロールの液圧コンポーネントが実装されてハイドロリックユニットを構成し、ここで「実装される」とは、液圧コンポーネントが、そのためにそれぞれ意図されるハイドロリックブロックの収容部に取り付けられることを意味する。
【0007】
ブレーキパイプを介して、車両ブレーキ設備の液圧ホイールブレーキがハイドロリックブロックに接続されており、または接続される。
【0008】
車両ブレーキ設備の非人力操作のために、本発明によるハイドロリックブロックは、非人力ピストンが軸方向へスライド可能に収容された非人力シリンダボアを有する。非人力シリンダボアはしばしばプランジャシリンダとも呼ばれ、非人力ピストンはプランジャピストンとも呼ばれる。ブレーキ圧を生成するために、非人力ピストンは、たとえば電気モータとねじ伝動装置とを有する非人力駆動装置によって、非人力シリンダボアの中でスライド可能である。非人力ピストンの軸方向へのスライドを案内するために、非人力シリンダボアは、非人力シリンダボアの軸方向長さの一部にわたって延びて非人力ピストンを径方向で案内する案内区域を有する。特に非人力シリンダボアは案内区域で、非人力ピストンと等しい直径を有する。非人力シリンダボアは案内区域で、非人力ピストンが引っ掛かることなく軸方向へスライド可能であるために必要である、非人力ピストンよりもわずかに大きい直径を有することもできる。非人力シリンダボアは案内区域の外部ではさらに大きい直径を有し、それにより、そこで非人力ピストンが非人力シリンダボアの円周面に当接しないという利点がある。
【0009】
非人力ピストンはピストンシール材によって、特にシールリングによって、非人力シリンダボアの中で封止される。非人力ピストンのための非人力シリンダボアの案内区域は、本発明によると、ピストンシール材の圧力側にある。圧力側とは、非人力ピストンが非人力シリンダボアの中でスライドしたときに、車両ブレーキ設備を操作するためのブレーキ圧を生成する側である。すなわち、案内区域はピストンシール材から非人力シリンダボアの作業室の中へと延びており、非人力ピストンが該作業室を一方の側で区切り、該作業室の容積を非人力ピストンがブレーキ操作のためのスライドのときに縮小し、それによりブレーキ液を作業室から液圧ホイールブレーキの方向へと押し除ける。非人力ピストンのための非人力シリンダボアの案内区域はピストンシール材のところで終わるか、または、圧力側と向かい合う側でピストンシール材を超えて、たとえば第2のピストンシール材まで延びることができる。
【0010】
本発明によるとハイドロリックブロックは、非人力ピストンの圧力側の案内区域における非人力シリンダボアの円周面に、ピストンシール材まで達するブレーキ液通路を有する。ブレーキ液通路は、たとえば非人力シリンダボアの案内区域にある刻み目または溝であり、たとえば軸平行または螺旋状に延びることができる。ブレーキ液通路を通して、ブレーキ液が非人力シリンダボアの作業室からピストンシール材へと到達して、これを潤滑する。ブレーキ液通路を通じて非人力シリンダボアの作業室が、案内区域の内部で非人力シリンダボアへと連通するブレーキ液パイプと連通する。ブレーキ液パイプを通じて非人力シリンダボアの作業室が、たとえばブレーキ液貯蔵容器および/またはホイールブレーキと連通する。
【0011】
ここで「ボア」と呼んでいるハイドロリックブロックの穴は、たとえば非人力シリンダボアやマスタブレーキシリンダボアなどは、穿孔によるものとは別様に製作されていてもよい。
【0012】
従属請求項は、独立請求項に記載されている発明の発展例や好ましい実施形態を対象としている。
【0013】
本明細書および図面に開示されている一切の構成要件は、それ自体として単独で、または基本的に任意の組合せとして、本発明の実施形態で具体化されていてよい。本発明の1つの請求項または1つの実施形態のすべての構成要件ではなく、1つまたは複数の構成要件だけを有している本発明の実施形態も、原則として可能である。
【0014】
次に、図面に示されている実施形態を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるハイドロリックブロックを軸方向で非人力シリンダボアを切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す本発明によるハイドロリックユニット1は、スリップコントロールを有する液圧式の非人力車両ブレーキ設備でのブレーキ圧生成のために意図される。このようなスリップコントロールは、たとえばロック防止コントロール、トラクションコントロール、および/またはビークルダイナミックコントロール/エレクトロニックスタビリティプログラムであり、これらについて略語ABS、ASR、FDR/ESPが慣用される。
【0017】
本発明によるハイドロリックユニット1は、電磁弁、逆止め弁、ハイドロリックリザーバ、ダンパチャンバなどの、スリップコントロールの液圧コンポーネントおよびその他のコンポーネントの機械的な取付と液圧的な配管の役目を果たすハイドロリックブロック2を有している。これらのコンポーネントがハイドロリックブロック1の表面や内部に配置され、ハイドロリックブロック2の図示しない穿孔を通じて、非人力車両ブレーキ設備とスリップコントロールの液圧配線図に即して液圧的に互いに接続される。2つの電磁弁3が、例示として配管記号として示されている。
【0018】
図示して説明している本発明の実施形態では、ハイドロリックブロック2は、スリップコントロールのコンポーネントを収容するためのボアを備え、車両ブレーキ設備とスリップコントロールの液圧配線図に即して穿孔された、たとえばアルミニウム合金からなる直方体の平たい金属ブロックである。
【0019】
ハイドロリックブロック2は、非人力ピストン5が軸方向へスライド可能なように収容された非人力シリンダボア4を有している。非人力シリンダボア4はハイドロリックブロック2を通って横向きに延びており、一方の端部で開いている。これと向かい合う側のハイドロリックブロック2の閉じた他方の端部に、ハイドロリックブロック2は、外方に向かって突出する、ハイドロリックブロック2と一体的な、非人力シリンダボア4に対して同軸の円筒状のカップ状の成形部7を有していて、これが非人力シリンダボア4を軸方向に延長している。非人力ピストン5を軸方向へスライド可能に案内するために、非人力シリンダボア4は、軸方向で非人力シリンダボア4の長さの一部にわたって延びて非人力ピストン5を非人力シリンダボア4の中で径方向に案内する案内区域6を有している。案内区域6において非人力シリンダボア4は、非人力ピストン5と等しい直径を有している。案内区域6において非人力シリンダボア4の直径は、非人力ピストン5がクリアランスを有し、引っ掛かることなく軸方向へスライド可能である程度に、これよりわずかに大きくなっていてもよい。案内区域6の外部で軸方向の両側に、非人力シリンダボア4は非人力ピストン5よりも大きい直径を有しており、それにより非人力ピストン5を取り囲む環状間隙8が生じている。
【0020】
非人力シリンダボア4は案内区域6に、軸方向で間隔をおく、周回する2つのシール溝を有していて、その中に、非人力シリンダボア4と非人力ピストン5との間で封止をするピストンシール材9,10がそれぞれ配置されている。成形部7のほうを向くピストンシール材9は高圧シール材9として把握することもでき、非人力シリンダボア4の開いた端部のほうを向くピストンシール材10は低圧シール材10として把握することもできる。両方のピストンシール材9,10は、エラストマーまたはその他の弾性変形可能なプラスチックもしくはその他の素材からなるシールリングである。ピストンシール材9,10はエラストマーのみで構成されており、金属またはたとえば変形し難いプラスチックからなる支持リング、支持ウェブ、あるいはその他の支持部材などを有さない。本実施例では、両方のピストンシール材9,10は、非人力ピストン5の外側円周に密封式に当接する内側の周回するシールリップを有するリップシールである。
【0021】
非人力シリンダボア4の開いた端部の方向には、案内区域6は低圧シール材10で終わるか、または、好ましくは1ミリメートルもしくは数ミリメートルを超えない短い部分が軸方向に低圧シール材10から延出する。成形部7の方向には、案内区域6は、図示している引き戻された基本位置にある非人力ピストン5と、成形部7における非人力シリンダボア4の閉じた端部との間隔のほぼ半分だけ延出する。非人力ピストン5の引き戻された基本位置は、非人力シリンダボア4の閉じた端部から作動時にもっとも遠く離れる位置である。非人力ピストン5および高圧シール材9の、閉じた端部のほうを向く側はその圧力側である。非人力ピストン5は成形部7の中へとスライドしたときに成形部7の中で、およびこれに伴って非人力シリンダボア4の中で、ブレーキ圧を生成するからである。
【0022】
案内区域6は、非人力ピストン5ないし高圧シール材9の圧力側に、引き戻された基本位置にある非人力ピストン5まで達する、もしくは高圧シール材9まで達する、ブレーキ液通路11としての刻み目を有している。ブレーキ液通路11は、図面に示すように軸平行に、あるいはたとえば螺旋状に(図示せず)延びることができる。複数のブレーキ液通路11が円周にわたって配分されて存在していてよい(図示せず)。
【0023】
非人力シリンダボア4は、両方のピストンシール材9,10の間に、ハイドロリックブロック2に装着される図示しないブレーキ液貯蔵容器へと通じるブレーキ液パイプ13が連通する周回する溝12を有している。ブレーキ液パイプ13と溝12とを通して、ブレーキ液が非人力ピストン5とピストンシール材9,10を潤滑するために非人力ピストン5の円周に到達し、これが非人力シリンダボア4の中へ軸方向にスライドしたときにブレーキ液を軸方向に配分して、それにより非人力ピストン5が非人力シリンダボア4の案内区域6で潤滑されるとともに、ピストンシール材9,10が潤滑される。
【0024】
引き戻された基本位置にある非人力ピストン5の圧力側の端部にすぐ接するように、非人力シリンダボア4は、区切られた円周区域にわたって延び、同じくブレーキ液パイプ15に連通する別の周回する溝14を有しており、この溝により電磁弁3を介して、ブレーキパイプを通して液圧ブロック2に接続される図示しない液圧ホイールブレーキが非人力シリンダボア4に接続される。非人力ピストン5が閉じた端部の方向へスライドすることで、ホイールブレーキを操作するために非人力シリンダボア4の中でブレーキ圧を生成することができる。非人力シリンダボア4の案内区域6を溝14まで貫くブレーキ液通路11により、溝14およびこれに連通するブレーキ液パイプ15は、非人力ピストン5がスライドしたときにも、非人力ピストン5と非人力シリンダボア4の閉じた端部との間で非人力シリンダボア4と連通する。ブレーキ液通路11が、非人力シリンダボア4の案内区域6と閉じた端部との間で、非人力シリンダボア4の大径部にまで達しているからである。
【0025】
図1に見られるように高圧シール材9は、非人力ピストン5が引き戻された基本位置にあるときでもこれに当たって封止し、高圧シール材9が非人力ピストン5に当たって封止をしない非人力ピストン5のスライド位置は存在しない。それによってデッドストロークが回避され、非人力ピストン5は非人力シリンダボア4の中でスライドするとき、その引き戻された基本位置を起点として最初からブレーキ液を非人力シリンダボア4から押し除ける。
【0026】
非人力によるブレーキ圧の生成のために非人力シリンダボア4の中で非人力ピストン5をスライドさせるために、ハイドロリックユニット1は、減速ギヤとしてのプラネタリギヤ17とボールねじ18とを介して非人力ピストン5を非人力シリンダボア4の中でスライドさせる電気モータ16を有している。ボールねじ18は、一般的にはねじ伝動装置または回転/並進・変換伝動装置として把握することができる。ボールねじ18は、非人力ピストン5と非人力シリンダボア4に対して同軸に、部分的に非人力ピストン5の中に配置され、非人力ピストンはこの目的のために中空ピストンとして製作される。ボールねじ18は、管状の軸受ホルダ20によってハイドロリックブロック2の外側に配置された球軸受19により回転可能に支承されている。プラネタリギヤ17も同じく非人力シリンダボア4と非人力ピストン5に対して同軸に、ボールねじ18と電気モータ16との間に配置される。電気モータ16は、同じく非人力シリンダボア4と非人力ピストン5に対して同軸にハイドロリックブロック2の外側にねじ止めされたモータハウジング21を有する。電気モータ16、プラネタリギヤ17、およびボールねじ18が電気機械式の非人力駆動装置22を形成し、これによって非人力ピストン5が車両ブレーキ設備のための非人力によるブレーキ圧を生成するために、非人力シリンダボア4の中で軸方向へスライド可能である。非人力シリンダボア4および非人力ピストン5とともに、非人力駆動装置22が本発明によるハイドロリックユニット1の非人力ブレーキ圧生成器23を形成する。非人力によるブレーキ圧の電気機械式の生成とは異なる生成も、本発明は排除するものではない。
【0027】
図示して説明した本発明の実施形態では、ハイドロリックブロック2はマスタブレーキシリンダボア24を有していて、その中に、図示しないフットブレーキペダルまたはハンドブレーキレバーによりピストンロッドを介して機械的にマスタブレーキシリンダボア24の中でスライド可能である図示しないマスタブレーキシリンダピストンを配置可能である。さらにハイドロリックブロック2は、たとえばばね付勢される図示しないシミュレータピストンのためのシミュレータシリンダボア25を有する。車両ブレーキ設備の非人力操作のときマスタブレーキシリンダピストンをマスタブレーキシリンダボア24の中でスライドさせることができるようにするために、マスタブレーキシリンダボア24からブレーキ液をシミュレータシリンダボア25の中へと押除け可能である。非人力ブレーキ圧生成器23以外に、筋力によってもマスタブレーキシリンダボア24の中でマスタブレーキシリンダピストンをスライドさせることで車両ブレーキ設備を操作することができ、このことは、特に非人力ブレーキ圧生成器23の障害や失陥が生じた場合に意図される。
【0028】
非人力シリンダボア4、マスタブレーキシリンダボア24、および/またはシミュレータシリンダボア25は、穿孔による以外で製作されていてもよい。
【0029】
非人力シリンダボア4ないし非人力ブレーキ圧生成器23は、1つの分離弁26ないし液圧的に並列につながれた2つの分離弁によって、および分離弁26と液圧的に直列につながれた図示しない取込弁によって、液圧ホイールブレーキと接続されている。さらに非人力シリンダボア4ないし非人力ブレーキ圧生成器23は、分離弁26によって、およびこれと液圧的に直列につながれた吐出弁27によって、マスタブレーキシリンダボア24または図示しないブレーキ液貯蔵容器に接続される。少なくとも1つの分離弁26に、非人力シリンダボア4の中の最大圧力を制限する差圧弁28が組み込まれている。それにより、たとえば非人力ピストン5がスライドすることなく非人力シリンダボア4の中のブレーキ液が熱膨張したケースでも、非人力シリンダボア4の中での許容されない高い圧力が防止される。
【0030】
分離弁26と吸込弁27は、ハイドロリックブロック2が装備する、車両ブレーキ設備のスリップコントロールの電磁弁3である。分離弁26と吸込弁27は2/2ウェイ電磁弁であり、分離弁26は無通電の基本位置にあるときに閉じられ、吸込弁27は無通電の基本位置にあるときに開く。分離弁26のうちの少なくとも1つに、上述したように差圧弁28が組み込まれる。
【符号の説明】
【0031】
2 ハイドロリックブロック
4 非人力シリンダボア
5 非人力ピストン
6 案内区域
9,10 ピストンシール材
14 溝
15 ブレーキ液パイプ
22 非人力駆動装置
24 マスタブレーキシリンダボア
26 分離弁
27 吸込弁
28 差圧弁
図1