(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲート及びその調製物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240925BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240925BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240925BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240925BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240925BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240925BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240925BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/26
A61P35/00
A61P37/02
A61P35/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P25/00
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K38/07
(21)【出願番号】P 2022567138
(86)(22)【出願日】2020-05-03
(86)【国際出願番号】 CN2020088564
(87)【国際公開番号】W WO2021223048
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】519058745
【氏名又は名称】シャンハイ ミラコーケン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】チャオホン フー
(72)【発明者】
【氏名】リー フー
(72)【発明者】
【氏名】シアオ リーリー
(72)【発明者】
【氏名】リウ ウェンチャオ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/217455(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/183438(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/197428(WO,A1)
【文献】ARTIFICIAL CELLS, NANOMEDICINE, AND BIOTECHNOLOGY,2018年,Vol.46, No,S2,pp.S1-S8,https://doi.org/10.1080/21691401.2018.1449119
【文献】HAN AQ, et al.,“Next-Generation Antibody-Drug Conjugate Technologies”,Antibody‐Drug Conjugates Future Perspectives in Antibody‐Drug Conjugate Development,pp.473-503,2016年,https://doi.org/10.1002/9781119060727.ch18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む抗体-薬物コンジュゲート調製物であって、
1~
10mg/mLの濃度
を有する抗体-薬物コンジュゲート;
5~
15mMの濃度を有するヒスチジン緩衝液
、及び
5.8~6.2のpH
;
濃度が
3%~
9%であるスクロース
;
濃度が
0.02%~
0.06%であるTween-80
(登録商標);
抗体-薬物コンジュゲートは、式II:
Ab-(L-D)q 式II:
に示される構造を有し、式中、
Abは、抗CD20モノクローナル抗体を表し、抗CD20モノクローナル抗体は、リツキシマブ又はそのバイオシミラー
であり;
Dは、細胞毒性剤であり、細胞毒性剤はモノメチルアウリスタチンE(MMAE)であり;
Lは、抗CD20モノクローナル抗体を細胞毒性剤とリンキングするためのリンカーを表し、リンカーは、6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)であり;
qは3.3~4.3
である、上記抗体-薬物コンジュゲート調製物。
【請求項2】
5mg/mLの濃度を有する抗体-薬物コンジュゲート;
pH5.8の10mMヒスチジン緩衝液;
6%スクロース;および
0.035%のTween-80(登録商標)
を含む、請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲート調製物。
【請求項3】
請求項
1又は2に規定される抗体-薬物コンジュゲート調製物の調製方法であって、
工程1:抗CD20モノクローナル抗体及び還元剤の還元反応を行い、還元
された抗CD20モノクローナル抗体を得る工程であって、抗CD20モノクローナル抗体がリツキシマブ又はそのバイオシミラー
である工程;
工程2:還元された抗CD20モノクローナル抗体とvc-MMAEの間でカップリング反応を行う工程;
工程3:カップリング反応を停止する工程;
工程4:停止されたカップリング反応生成物の緩衝液置換を行い、抗体-薬物コンジュゲート調製物を得る工程であって、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、
1~
10mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート
;
5~
15mMのヒスチジン緩衝液
、pH5.0~6.2
;
3~
9%のスクロース
;及び
0.02%~
0.06%のTween-80
(登録商標)
を含む工程
を含む、上記調製方法。
【請求項4】
前記方法が、
1)抗CD20モノクローナル抗体10mgを採取し、15mLの30KD限外濾過装置を用いて還元緩衝液
に置換し、計3回の置換を行い、約1mLの最終体積を得、得られた溶液を新しいエッペンドルフ遠心管に移
し、タンパク質濃度を検出し、総タンパク質量を算出し;
2)DTTを抗体に2.0~3.0倍モルで添加し、室温で2時間インキュベートし、連続的に混合した後、15mLの30KD限外ろ過装置を用いてカップリング緩衝液
中に置換し、3回の置換を行い、濃縮液を採取し、タンパク質濃度をA
280
で検出し、質量を量り、総タンパク質量を求
め、試料10μLを採取し、エルマン法により遊離スルフヒドリル基数を求め;
遊離スルフヒドリル基のモル濃度は、次式:
【数1】
で計算され、
b:キュベットの光路
長
遊離スルフヒドリル基のモル数は、遊離スルフヒドリル基のモル濃度及び全タンパク質溶液の体積に従って計算され;
3)vc-MMAE
を、遊離スルフヒドリル基のモル数の1.0~1.5倍の数で還元された抗体に添加し、十分に混合し、次に、室温で2時間、間欠撹拌しながら反応させ;反応系に、N-アセチルシステインを、vc-MMAEモル数の20倍で反応溶液に添加し、よく混合し、5分間放置し;
4)工程3で得られた溶液を15mLの30KD限外濾過装置を用いてコンジュゲート原液
に置換し、計3回の置換を行い、抗体-薬物コンジュゲート調製物を得て4℃で保存
し、原液は10mMヒスチジン、6%スクロース、0.035% Tween-80(登録商標)、pH5.8で構成される
ことを含む、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
CD20発現がん又は免疫疾患を予防及び/又は治療するための組成物であって、該組成物は
、請求項
1又は2に規定される抗体-薬物コンジュゲート調製物
を含
み、任意に、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含む上記組成物。
【請求項6】
CD20発現がんまたは免疫疾患がリンパ腫
、関節リウマチ
、多発血管炎を伴う肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎または多発性硬化症であ
る、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
対象がヒトである場合、それを必要とする対象に投与される用量は、0.1~5mg/kg
であり;
あるいは、対象がNHL PDXモデルである場合、それを必要とする対象に投与される用量は、0.3~10mg/kg
である、請求項5に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野、特に抗体-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲートを含む調製物、抗体-薬物コンジュゲートを含む組成物、及び抗体-薬物コンジュゲートの医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療には、従来の手術、化学療法、放射線療法、骨髄又は造血幹細胞移植、免疫療法及び標的療法が含まれる。従来の化学療法は、NHL患者に対してある種の治癒効果を有するが、重篤な全身性副作用、不良な耐性、及び容易な再発を有し、患者への適用を制限する。標的薬、特に抗体医薬は、その顕著な治癒効果と治療介入中の最小の全身性副作用のために、大きな注目を集めている。
【0003】
近年、多くのCD20標的モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ、リツキサン(登録商標))が開発され、それらの抗腫瘍活性が臨床試験で検証されている。
【0004】
しかしながら、臨床応用が深まるにつれて、リツキシマブ治療の限界が次第に明らかになってきており、すなわち、治療プロセス中にリツキシマブに対する原発性及び獲得耐性を有する患者が存在し、その結果、リツキシマブの治療効果が低下又は無効となる。さらに、既存のCD20標的モノクローナル抗体は、腫瘍を治療する有効率に関して理想的ではなく、抗腫瘍効果を改善するために化学療法薬との併用が必要であり、これは疑いなく毒性のリスクを増加させる。この観点から、リツキシマブに代表される市販のCD20標的モノクローナル抗体は、再発又は難治性B細胞NHL(DLBCL及びFLなど)の治療のための臨床診療の必要性を満たすにはほど遠い。
【0005】
既存のCD20標的モノクローナル抗体の上述の問題点を考慮すると、CD20標的ADC薬剤ADC-1の開発の主な目的は、より良好な有効性、より低い毒性及び副作用、及びより少ない薬剤耐性を有する治療方法を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の内容
本発明者らは、多くの実験及び創造的研究を通して抗CD20抗体-薬物コンジュゲートを調製し、良好な生物学的活性及び製剤安定性を有することを確認し、それによって本発明を完成させた。
【0007】
この目的のため、本発明の第1の態様において、本発明は、式Iに示される構造:
Ab-(L-D)p 式I
を有する抗体-薬物コンジュゲートを提供し、式中、
Abは、抗CD20モノクローナル抗体を表し、抗CD20モノクローナル抗体は、リツキシマブ又はそのバイオシミラーのようなCD20を標的とする任意の抗体であり;
Dは、細胞毒性剤であり、細胞毒性剤はモノメチルアウリスタチンE(MMAE)であり;
Lは、抗CD20モノクローナル抗体を細胞毒性剤とリンキングするためのリンカーを表し、リンカーは、6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)であり;
pは3.6~4.0である。
【0008】
いくつかの実施形態において、pは3.7~3.9である。
いくつかの実施形態において、pは3.8である。
【0009】
いくつかの実施形態において、式IのL-Dはvc-MMAEであり、次の式に示される構造を有する。
【0010】
【0011】
いくつかの実施形態において、抗体-薬物コンジュゲートの構造は、以下の式に示される構造を有する。
【0012】
【0013】
式中、
Abは、抗CD20モノクローナル抗体を表し、抗CD20モノクローナル抗体はCD20を標的とする抗体、例えばリツキシマブ又はそのバイオシミラーである。
pは3.6~4.0である。
【0014】
いくつかの実施形態において、pは3.7~3.9である。
いくつかの実施形態において、pは3.8である。
【0015】
本発明の第2の態様において、本発明は、以下を含む抗体-薬物コンジュゲート調製物を提供する:
1~60mg/mL(例えば、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、13mg/mL、15mg/mL、17mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、又は60mg/mL)の濃度を有する抗体-薬物コンジュゲート;
5~35mM(例えば、5mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、15mM、20mM、25mM、30mM又は35mM)の濃度、及び5.0~6.2(例えば、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1~6.2)のpHを有するヒスチジン緩衝液;
2%~10%(例えば、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%)の濃度を有するスクロース;
0.01%~0.1%(例えば、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.031%、0.032%、0.033%、0.034%、0.035%、0.036%、0.037%、0.038%、0.039%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.08%、0.09%又は0.1%)の濃度を有するTween-80;
抗体-薬物コンジュゲートは、式IIに示される構造::
Ab-(L-D)q 式II
を有し、式中、
Abは、抗CD20モノクローナル抗体を表し、抗CD20モノクローナル抗体は、リツキシマブ又はそのバイオシミラーのようなCD20を標的とする任意の抗体であり;
Dは、細胞毒性剤であり、細胞毒性剤はモノメチルアウリスタチンE(MMAE)であり;
Lは、抗CD20モノクローナル抗体を細胞毒性剤とリンキングするためのリンカーを表し、リンカーは、6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)であり;
qは、3.3~4.3(例えば、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2or4.3)である。
【0016】
いくつかの実施形態において、qは3.6~4.0である。
いくつかの実施形態において、qは3.7~3.9である。
いくつかの実施形態において、qは3.8である。
いくつかの実施形態において、抗体-薬物コンジュゲートは、1~20mg/mLの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、抗体-薬物コンジュゲートは、1~10mg/mLの濃度を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、抗体-薬物コンジュゲートは、3~7mg/mLの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、抗体-薬物コンジュゲートは、5mg/mLの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、5~15mMの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、8~12mMの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、10mMの濃度を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、5.8~6.2のpHを有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、5.6~6.0のpHを有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、5.4~6.0のpHを有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、5.4~6.2のpHを有する。
いくつかの実施形態において、スクロースは、3%~9%の濃度を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、スクロースは、4%~8%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、スクロースは、5%~7%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、スクロースは、6%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、Tween-80は、0.02%~0.06%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、Tween-80は、0.02%~0.05%の濃度を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、Tween-80は、0.03%~0.04%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、Tween-80は、0.035%の濃度を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、調製物は、以下:
5mg/mLの濃度を有する抗体-薬物コンジュゲート;
10mMの濃度及び5.8のpHを有するヒスチジン緩衝液;
6%スクロース;及び
0.035%のTween-80
を含む。
【0022】
なお、「2~10%スクロース」は質量体積濃度(w/v%)を表し、抗体-薬物コンジュゲート調製物の1000mLあたりのスクロース質量が20~100gであること意味し、「0.01~0.1%のTween-80」は質量体積濃度(w/v%)を表し、その意味は、前述の「2~10%スクロース」と同様に理解することができる。
【0023】
さらに、「ヒスチジン緩衝液」の濃度とは、ヒスチジン及び塩酸ヒスチジンの濃度を指し、そのpHは、ヒスチジン対ヒスチジン塩酸塩の比を調整することによって得られる。
【0024】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、25±2℃/60%±5%RHの条件下で6週間安定である。
【0025】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、25℃で6週間放置されると、無色で透明な外観を呈する。
【0026】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、それが6週間25℃で放置されると、pHにおいて変化しない。
【0027】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、それが6週間25℃で放置されると、濃度変化しない。
【0028】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、6週間25℃で放置すると、2%未満(又は1%未満)のSECモノマー%含量の減少を有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、6週間25℃で放置されると、2%以下(又は1%以下)のSECポリマー%含有量の増加を有する。
【0030】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、それが6週間25℃で放置されると、DAR値に有意な変化を有さない。
【0031】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、40℃で4週間放置されると、無色で外観上透明である。
【0032】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、40℃で4週間放置されたとき、pHにおいて変化しない。
【0033】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、40℃で4週間放置された場合、濃度変化しない。
【0034】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、40℃で4週間放置すると、5%未満(又は4%未満)のSECモノマー%含量の減少を有する。
【0035】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、40℃で4週間放置されると、5%未満(又は4%未満)のSECポリマー%含有量の増加を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、pHが5.0~6.2(例えば、5.6~6.0)である場合、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、40℃で4週間放置された場合、DAR値に有意な変化を有さない。
【0037】
なお、「有意な変化なし」又は「変化なし」とは、統計学的に有意な変化がないことを指す。
【0038】
さらに、上述の「抗体-薬物コンジュゲート」は、同じ又は異なるDAR値を有するADC分子を含有する組成物を指すことに留意されたい。
【0039】
具体的には、本発明は、複数の抗CD20 ADC分子を含む組成物を提供する。ある例では、本明細書に記載される組成物中の各ADCは、同一数の1つ以上の薬物分子を含む。他の例では、本明細書に記載される組成物中の各ADCは、異なる数の1つ以上の薬物分子を含む。
【0040】
本明細書に記載の抗体薬物コンジュゲートにおいて、各抗CD20抗体は、1、2、3、4、5、6、7、8個またはそれ以上(好ましくは2、4、6または8個、より好ましくは2または4個)の薬物分子とコンジュゲートすることができる。
【0041】
上記の薬物-抗体比(DAR)は、抗CD20抗体に結合した抗がん剤の分子数を指す。本明細書に記載されるADCに含まれる抗がん剤の分子数は、通常、整数であり、本明細書中に記載されるADCに含まれる抗がん剤の分子数(例えば、式I中のp、又は式II中のq)が画分である場合、画分は、複数のADC分子を含む組成物中の各抗CD20抗体に結合した抗がん剤の平均分子数を指す。
【0042】
本発明の第3の態様において、本発明は、前記抗体-薬物コンジュゲート調製物を調製する方法を提供し、以下を含む:
還元型抗CD20モノクローナル抗体を得るために、還元剤を用いて抗CD20モノクローナル抗体の還元反応を実施し、ここで、抗CD20モノクローナル抗体は、CD20を標的とする任意の抗体(例えば、リツキシマブ又はそのバイオシミラー)であること;
還元された抗CD20モノクローナル抗体とvc-MMAEとの間でカップリング反応を行うこと;
カップリング反応を停止すること;
停止されたカップリング反応生成物が緩衝液置換を受けて抗体-薬物コンジュゲート調製物を得ることを可能にし、抗体-薬物コンジュゲート調製物は、以下を含む:
1~60mg/mL(例えば、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、13mg/mL、15mg/mL、17mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、又は60mg/mL)の濃度を有する抗体-薬物コンジュゲート;
5~35mM(例えば、5mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、15mM、20mM、25mM、30mM又は35mM)の濃度、及び5.0~6.2(例えば、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1~6.2)のpHを有するヒスチジン緩衝液;
2%~10%(例えば、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%)の濃度を有するスクロース;
0.01%~0.1%(例えば、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.031%、0.032%、0.033%、0.034%、0.035%、0.036%、0.037%、0.038%、0.039%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.08%、0.09%又は0.1%)の濃度を有するTween-80。
【0043】
いくつかの実施形態において、抗体-薬物コンジュゲートは、1~20mg/mLの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、抗体-薬物コンジュゲートは、1~10mg/mLの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、抗体-薬物コンジュゲートは、3~7mg/mLの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、抗体-薬物コンジュゲートは、5mg/mLの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、5~15mMの濃度を有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、8~12mMの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、10mMの濃度を有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、5.8~6.2のpHを有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、5.6~6.0のpHを有する。
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、5.4~6.0のpHを有する。
【0045】
いくつかの実施形態において、ヒスチジン緩衝液は、5.4~6.2のpHを有する。
いくつかの実施形態において、スクロースは、3%~9%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、スクロースは、4%~8%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、スクロースは、5%~7%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、スクロースは、6%の濃度を有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、Tween-80は、0.02%~0.06%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、Tween-80は、0.02%~0.05%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、Tween-80は、0.03%~0.04%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、Tween-80は、0.035%の濃度を有する。
いくつかの実施形態において、還元剤はDTTである。
【0047】
いくつかの実施形態において、調製方法は、
1)10mgの抗CD20モノクローナル抗体を採取し、15mLの30KD限外濾過装置を用いて還元緩衝液(25mMホウ酸ナトリウム、pH8.0、25mM NaCl、5mM EDTA)に置換し、計3回の置換を行い、約1mLの最終体積を得て、得られた溶液を新しいエッペンドルフ遠心分離管に移し(秤量)、タンパク質濃度を検出し、総タンパク質量を算出すること;
2)モル数2.0~3.0倍のDTTを抗体に加え、室温で2時間インキュベートし、連続混合した後、15mLの30KD限外ろ過装置を用いてカップリング緩衝液(50mM Tris、pH 7.2、150mM NaCl、5mM EDTA)に置換し、3回の置換を行い、濃縮液を採り、タンパク質濃度をA280(波長280nmにおける吸光度)で検出し、質量を量り、総タンパク質量を求め、10μLの試料を採取し、エルマン法により遊離スルフヒドリル基数を求め、
遊離スルフヒドリル基のモル濃度は、次式で計算され(ここで、A412は波長412nmにおける吸光度を表す):
【0048】
【0049】
b:キュベットの光路長(通常1cm)
遊離スルフヒドリル基のモル数は、遊離スルフヒドリル基のモル濃度及び全タンパク質溶液の体積に従って計算すること;
3)vc-MMAE(DMSOに溶解)を、遊離スルフヒドリル基のモル数の1.0~1.5倍の数で還元された抗体に添加し、十分に混合し、次に、室温で2時間、間欠撹拌しながら反応させ;反応系に、N-アセチルシステインを、vc-MMAEモル数の20倍で反応溶液に添加し、よく混合し、5分間放置すること;
4)工程3で得られた溶液を、15mLの30KD限外濾過装置を用いて、コンジュゲート原液(10mMヒスチジン、6%スクロース、0.035%PS80、pH5.8)に置換し、計3回の置換を行い、抗体-薬物コンジュゲート調製物を得て、4℃で保存することを含む。
【0050】
本発明の第4の態様において、本発明は、前記抗体-薬物コンジュゲート、又は前記抗体-薬物コンジュゲート調製物、又は前記方法によって調製される抗体-薬物コンジュゲート調製物を含む組成物を提供する。
【0051】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、組成物は、腫瘍の治療のための既知の化学療法薬をさらに含み、化学療法剤は、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シクロホスファミドおよびタキサン[パクリタキセル(タキソール)およびドセタキセル(タキソテール)]、カペシタビン(Xeloda)、ゲムシタビン(Gemzar)、ビノレルビン(Navelbine)、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤(Arimidex、Femara、Aromasin)、5-FU/ロイコボリン、イリノテカン(カンプトサール)、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、エストラムスチン、ミトキサントロン(Novantrone)、プレドニゾン、ビンクリスチン(Oncovin)、ドキソルビシン、プレドニゾンなど、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、組成物は、(1)コルチゾン及びプレドニゾンのようなグルココルチコイド;(2)シクロスポリン及びタクロリムスなどの微生物代謝産物;(3)アザチオプリン及び6-メルカプトプリンなどのような抗代謝産物;(4)抗リンパ球グロブリン及びOKT3などのようなポリクローナル及びモノクローナル抗リンパ球抗体;(5)シクロホスファミドなどのアルキル化剤から選択される免疫抑制剤をさらに含む。具体的には、免疫抑制剤は、例えば、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、アザチオプリン、Prograf、Zenapax、Simulect、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ミゾリビン、シクロホスファミド、Fingolimodなどである。
【0054】
本発明の第5の態様において、本発明は、CD20発現がん又は免疫疾患を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における、前記抗体-薬物コンジュゲート、又は前記抗体-薬物コンジュゲート調製物、前記方法によって調製された前記抗体-薬物コンジュゲート調製物、又は前記組成物の使用を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態において、CD20発現がんは、リンパ腫又は白血病である。
【0056】
いくつかの実施形態において、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、濾胞性非ホジキンリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0057】
いくつかの実施形態において、白血病は、慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、B細胞前リンパ球性白血病、又は急性リンパ球性白血病である。
【0058】
いくつかの実施形態において、CD20発現免疫疾患は、関節リウマチ、多発血管炎を伴う肉芽腫症、ヴェーゲナー肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、又は多発性硬化症である。
【0059】
いくつかの実施形態において、関節リウマチは、少なくとも1つのTNFアンタゴニストによる治療が失敗した重度の活動性関節リウマチである。
【0060】
好ましくは、いくつかの実施形態において、CD20発現がんは、CD20陽性B細胞リンパ腫である。
【0061】
いくつかの実施形態において、CD20陽性B細胞リンパ腫は、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)耐性CD20陽性B細胞リンパ腫である。
【0062】
いくつかの実施形態において、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である。
【0063】
いくつかの実施形態において、リンパ腫は、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)耐性非ホジキンリンパ腫である。
【0064】
いくつかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0065】
いくつかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)耐性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0066】
本発明の第6の態様において、本発明は、CD20発現がん又は免疫疾患を予防及び/又は治療する方法を提供し、それを必要とする対象に、予防的及び/又は治療的に有効な量の前記抗体-薬物コンジュゲート、又は前記抗体-薬物コンジュゲート調製物、又は前記方法によって調製された前記抗体-薬物コンジュゲート調製物、又は前記組成物を投与することを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、CD20発現がんは、リンパ腫又は白血病である。
【0068】
いくつかの実施形態において、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、濾胞性非ホジキンリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0069】
いくつかの実施形態において、白血病は、慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、B細胞前リンパ球性白血病、又は急性リンパ球性白血病である。
【0070】
いくつかの実施形態において、CD20発現免疫疾患は、関節リウマチ、多発血管炎を伴う肉芽腫症、ヴェーゲナー肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、又は多発性硬化症である。
【0071】
いくつかの実施形態において、関節リウマチは、少なくとも1つのTNFアンタゴニストによる治療が失敗した重度の活動性関節リウマチである。
【0072】
いくつかの実施形態において、CD20発現がんは、CD20陽性B細胞リンパ腫であることが好ましい。
【0073】
いくつかの実施形態において、CD20陽性B細胞リンパ腫は、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)耐性CD20陽性B細胞リンパ腫である。
【0074】
いくつかの実施形態において、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である。
【0075】
いくつかの実施形態において、リンパ腫は、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)耐性非ホジキンリンパ腫である。
【0076】
いくつかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0077】
いくつかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)耐性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0078】
いくつかの実施形態において、対象がNHL PDXモデルである場合、それを必要とする対象に投与される用量は、0.3~10mg/kg(例えば、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg)である。
【0079】
いくつかの実施形態において、対象がNHL PDXモデルである場合、それを必要とする対象に投与される用量は、0.3~3mg/kg、1~3mg/kg、1~10mg/kg、又は3~10mg/kgである。
【0080】
いくつかの実施形態において、対象がヒトである場合、それを必要とする対象に投与される用量は、0.1~5mg/kg(例えば、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg又は5mg/kg)である。
【0081】
いくつかの実施形態では、予防的および/または治療的に有効な量の前述の抗体-薬物コンジュゲート、または前述の抗体-薬物コンジュゲート調製物、または前述の方法によって調製された抗体-薬物コンジュゲート調製物、または前述の組成物が、それを必要とする対象に1、2、3、4、5、または6週間ごとに1回投与される。
【0082】
いくつかの実施形態において、予防的及び/又は治療的に有効な量の前記抗体-薬物コンジュゲート、又は前記方法によって調製された前記抗体-薬物コンジュゲート調製物、又は前記方法によって調製された抗体-薬物コンジュゲート調製物、又は前記組成物が、それを必要とする対象に18~24日に1回投与される。
【0083】
いくつかの実施形態において、本方法は、さらに、腫瘍の治療のための追加の化学療法剤又は免疫抑制剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、組成物は、化学療法剤は、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シクロホスファミドおよびタキサン[パクリタキセル(タキソール)およびドセタキセル(タキソテール)]、カペシタビン(Xeloda)、ゲムシタビン(Gemzar)、ビノレルビン(Navelbine)、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤(Arimidex、Femara、Aromasin)、5-FU/ロイコボリン、イリノテカン(カンプトサール)、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、エストラムスチン、ミトキサントロン(Novantrone)、プレドニゾン、ビンクリスチン(Oncovin)、ドキソルビシン、プレドニゾンなど、またはそれらの組み合わせである。
【0085】
いくつかの実施形態において、免疫抑制剤は、(1)コルチゾン及びプレドニゾンのようなグルココルチコイド;(2)シクロスポリン及びタクロリムスなどの微生物代謝産物;(3)アザチオプリン及び6-メルカプトプリンなどのような抗代謝産物;(4)抗リンパ球グロブリン及びOKT3などのようなポリクローナル及びモノクローナル抗リンパ球抗体;(5)シクロホスファミドなどのアルキル化剤から選択される。具体的には、免疫抑制剤は、例えば、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、アザチオプリン、Prograf、Zenapax、Simulect、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ミゾリビン、シクロホスファミド、Fingolimodなどである。
【0086】
本発明の第7の態様において、本発明は、CD20発現がん又は免疫疾患の予防及び/又は治療に使用するための、前記抗体-薬物コンジュゲート、又は前記抗体-薬物コンジュゲート調製物、又は前記方法によって調製された前記抗体-薬物コンジュゲート調製物、又は前記組成物を提供する。
【0087】
いくつかの実施形態において、CD20発現がんは、リンパ腫又は白血病である。
【0088】
いくつかの実施形態において、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、濾胞性非ホジキンリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0089】
いくつかの実施形態において、白血病は、慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、B細胞前リンパ球性白血病、又は急性リンパ球性白血病である。
【0090】
いくつかの実施形態において、CD20発現免疫疾患は、関節リウマチ、多発血管炎を伴う肉芽腫症、ヴェーゲナー肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、又は多発性硬化症である。
【0091】
いくつかの実施形態において、関節リウマチは、少なくとも1つのTNFアンタゴニストによる治療が失敗した重度の活動性関節リウマチである。
【0092】
いくつかの実施形態において、CD20発現がんは、CD20陽性B細胞リンパ腫であることが好ましい。
【0093】
いくつかの実施形態において、CD20陽性B細胞リンパ腫は、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)耐性CD20陽性B細胞リンパ腫である。
【0094】
いくつかの実施形態において、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である。
【0095】
いくつかの実施形態において、リンパ腫は、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)耐性非ホジキンリンパ腫である。
【0096】
いくつかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0097】
いくつかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)耐性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0098】
いくつかの実施形態において、対象がNHL PDXモデルである場合、投与される用量は、0.3~10mg/kg(例えば、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg)である。
【0099】
いくつかの実施形態において、対象がNHL PDXモデルである場合、投与される用量は、0.3~3mg/kg、1~3mg/kg、1~10mg/kg、又は3~10mg/kgである。
【0100】
いくつかの実施形態において、対象がヒトである場合、投与される用量は、0.1~5mg/kg(例えば、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、又は5mg/kg)である。
【0101】
有益な効果
1.ADC-1は、リツキシマブバイオシミラーMAB801をvc-MMAEとカップリングさせることによって形成されるADCであり、腫瘍細胞の表面上のCD20受容体に結合し、エンドサイトーシス及びMMAEの放出を行い、それによって腫瘍増殖を制御し、腫瘍退縮を引き起こすことによって、CD20陽性非ホジキンリンパ腫(NHL)細胞を死滅させる。
2.ADC-1は、種々のCD20を発現するNHL細胞株及び種々のCD20を発現するヒトNHL PDX腫瘍モデルにおいて、腫瘍細胞増殖を阻害する有意な薬力学的効果を示し、特に、それは、リツキサン(登録商標)耐性NHL PDXモデルにおいて、腫瘍細胞増殖に対しても有意な阻害効果を示す。
3.ADC-1の調製工程では、中間精製工程を経ずに1つの容器で反応工程全体を順次完了させるだけで、他の調製工程よりも優れている。
4.ADC-1の調製工程では、工程全体に1段階の限外ろ過精製工程しか必要とせず、他の調製工程よりも優れたクロマトグラフィー工程を必要としない。
5.ADC-1は良好な製剤安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】
図1は、本発明の実施例のADC-1のHIC-HPLCスペクトルを示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施例によるDaudi細胞株におけるADC-1及びRituxan(登録商標)の代表的な細胞死滅作用曲線を示し、阻害は阻害率を表す。
【
図3】
図3は、本発明の実施例によるJeko-1細胞株におけるADC-1及びRituxan(登録商標)の代表的な細胞死滅作用曲線を示し、阻害率を表す。
【
図4】
図4は、本発明の実施例によるRaji細胞株におけるADC-1及びRituxan(登録商標)の代表的な細胞死滅作用曲線を示し、阻害は阻害率を表す。
【
図5】
図5は、本発明の実施例によるラモス細胞株におけるADC-1及びリツキサン(登録商標)の代表的な細胞死滅作用曲線を示し、阻害は阻害率を表す。
【
図6】
図6は、本発明の実施例によるCD20陽性ヒトリンパ腫(NHL)PDXモデルLYM#004の腫瘍体積に対するADC-1及びリツキサン(登録商標)の効果の概略図を示す。
【
図7】
図7は、本発明の実施例によるCD20陽性ヒトリンパ腫(NHL)PDXモデルLYM#013の腫瘍体積に対するADC-1及びリツキサン(登録商標)の効果の概略図を示す。
【
図8】
図8は、本発明の実施例によるCD20陽性ヒトリンパ腫(NHL)PDXモデルLYM#016の腫瘍体積に対するADC-1及びリツキサン(登録商標)の効果の概略図を示す。
【
図9】
図9は、活性物質ADC-1(10mMヒスチジン緩衝系)のSEC安定性に対するpHの影響の概略図を示し、ADC-1は異なるpHの10mMヒスチジン系中にあり、左図は25℃で6週間及び40℃で4週間のADC-1のSECモノマー含有量の変化傾向を示し、右図は25℃で6週間及び40℃で4週間のADC-1のSECポリマー含有量の変化傾向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0103】
本発明を実施するための具体的なモデル
本発明の実施形態は、実施例を参照して以下に詳細に説明されるが、当業者は、以下の実施例は本発明を例示するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解するであろう。実施例に特定の条件が記載されていない場合は、従来の条件、又はメーカーが提示する条件に従って実施する。メーカーの指示なしに使用される試薬又は器具は、市場から入手可能な従来品である。
【0104】
本発明では、特に断らない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用されるタンパク質及び核酸の化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学、免疫学関連用語及び実験手順は、対応する分野で広く使用される用語及びルーチン手順である。一方、本発明をよりよく理解するために、関連用語の定義及び説明を以下に提供する。
【0105】
本発明では、特に断らない限り、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲又は数値範囲は、記載された範囲内の任意の整数値、及び、適宜、範囲内の任意の分数値を含むと理解されるべきである。
【0106】
本発明において、用語「抗体」は、一般に2つの同一のポリペプチド鎖対から構成される免疫グロブリン分子を指し、各対は1つの「軽」(L)鎖及び1つの「重」(H)鎖を有する。抗体の軽鎖は、κとλの2つのカテゴリーに分けられる。重鎖は、μ、δ、γ、α、εの5種類に分けられ、抗体は重鎖の違いに応じてIgM、IgD、IgG、IgA、IgEの5種類に分けられる。軽鎖及び重鎖内では、可変領域及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約3個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常部は3つのドメイン(CH1、CH2、CH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLからなる。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び補体系の成分C1qを含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる高い可変性を有する領域に細分することもでき、それらはフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域と散在している。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へのFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列された3つのCDR及び4つのFRからなる。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VH及びVL)は、それぞれ抗体結合部位を形成する。アミノ酸の領域又はドメインへの割り当ては、免疫学的関心のあるタンパク質のKabat配列の定義に従う(National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991)、又はChothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917; Chothia et al. (1989) Nature 342:878-883)。
【0107】
本発明での使用に適した抗体は、CD20を標的とする抗体であり、抗CD20モノクローナル抗体は、リツキシマブ又はそのバイオシミラーのような、CD20を標的とする任意の抗体である。これらのうち、バイオシミラーとは、リツキシマブと同じ配列、同じ物理化学的特性及び生物学的活性、ならびにリツキシマブと同じ臨床的安全性及び有効性を有する抗体産物をいう。
【0108】
本発明において、MMAEの構造は、以下のとおりである。
【0109】
【0110】
本発明において、薬物:抗体比(DAR)又は薬物負荷(負荷)は、p又はq、すなわち、整数又は画分のいずれかであり得る、式I:Ab-(L-D)p又は式II:Ab-(L-D)qの分子における抗体当たりの薬物モジュール(すなわち、細胞毒性剤)の平均数によって表される。式IのADCは、範囲(3.6~4.0)の薬物モジュールと結合された抗体のコレクションを含み、式IIのADCは、範囲(3.3~4.3)の薬物モジュールと結合された抗体のコレクションを含む。コンジュゲーション反応からのADC調製物中の抗体当たりの薬物モジュールの平均数は、質量分析、ELISAアッセイ、HIC及びHPLCのような従来の手段によって確認することができる。p又はqに関するADCの定量的分布も決定することができる。場合によっては、p又はqが他の薬物負荷を伴うADCからのある値である均質ADCの分離、精製及び検証は、逆相HPLC又は電気泳動のような手段によって達成することができる。
【0111】
いくつかの実施形態において、理論的最大未満の量の薬物モジュールは、コンジュゲート化反応において抗体に結合される。一般に、抗体は、薬物モジュールを結合することができる多くの遊離及び反応性システインチオール基を含まない;実際、抗体中のシステインチオール基の大部分は、ジスルフィド架橋として存在する。いくつかの実施形態において、抗体は、反応性システインチオール基を生成するための部分的又は完全な還元条件下で、還元剤、例えばジチオスレイトール(DTT)又はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で還元することができる。
【0112】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、腫瘍の治療のために既知の化学療法薬または免疫抑制剤と組み合わせて使用することができ、化学療法薬は、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シクロホスファミドおよびタキサン[パクリタキセル(タキソール)およびドセタキセル(タキソテール)]、カペシタビン(Xeloda)、ゲムシタビン(Gemzar)、ビノレルビン(Navelbine)、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤(Arimidex、Femara、Aromasin)、5-FU/ロイコボリン、イリノテカン(カンプトサール)、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、エストラムスチン、ミトキサントロン(Novantrone)、プレドニゾン、ビンクリスチン(Oncovin)、ドキソルビシン、プレドニゾンなど、またはそれらの組み合わせであり得る;免疫抑制剤は、(1)コルチゾン及びプレドニゾンのようなグルココルチコイド;(2)シクロスポリン及びタクロリムスなどの微生物代謝産物;(3)アザチオプリン及び6-メルカプトプリンなどのような抗代謝産物;(4)抗リンパ球グロブリン及びOKT3などのようなポリクローナル及びモノクローナル抗リンパ球抗体;(5)シクロホスファミドなどのアルキル化剤から選択される。具体的には、免疫抑制剤は、例えば、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、アザチオプリン、Prograf、Zenapax、Simulect、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ミゾリビン、シクロホスファミド、Fingolimodなどである。
【0113】
本発明において、「治療」とは、予防のために、又は臨床病理学の過程において、治療される個体又は細胞の自然経過を変化させることを試みる臨床的介入を指す。治療の望ましい効果には、疾患の発生又は再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的結果の減弱、転移の予防、疾患進行速度の遅延、疾患状態の改善又は軽減、及び予後の緩和又は改善が含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、疾患又は障害の発症を遅延させるため、又は疾患又は障害の進行を遅延させるために使用される。治療の成功及び疾患の改善を評価するために使用される上記パラメータは、医師によく知られた日常的な手順によって容易に測定することができる。がん治療については、効力は、例えば、疾患の進行までの時間(TTP)を評価することによって、及び/又は奏効率(RR)を決定することによって測定することができる。
【0114】
本発明において、「対象」とは、脊椎動物をいう。ある種の実施形態において、脊椎動物は、哺乳動物を指す。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ)、ペット(例えば、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類、マウス、およびラットが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、哺乳動物は、ヒトを指す。
【0115】
本発明において、「有効量」とは、所望の治療効果又は予防効果を達成するのに必要な用量及び時間で有効な量を指す。本発明の物質/分子の「治療有効量」は、病態、個体の年齢、性別及び体重、ならびに個体において所望の応答を引き出す物質/分子の能力などの因子に依存して変化し得る。治療上有効な量はまた、物質/分子の毒性又は有害な結果が治療上有益な効果によって打ち消される量を含む。「予防的に有効な量」とは、所望の予防効果を達成するために必要な用量及び時間で有効な量を指す。予防的投与量は、疾患の発症前又は疾患の初期段階で対象に投与されるので、通常、しかし必ずしもそうではないが、予防的に有効な量は、治療的に有効な量よりも少ないであろう。がんの場合、治療的に有効な量の薬物は、がん細胞の数を減少させる;腫瘍サイズを縮小させる;がん細胞の周囲臓器への浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅く、好ましくは停止させる);腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅く、好ましくは停止させる);腫瘍増殖をある程度阻害する;及び/又はがんに関連する1以上の症状をある程度低減することができる。
【0116】
疾患の予防又は治療のために、本発明の抗体-薬物コンジュゲートの適切な用量(単独で使用される場合、又は化学療法剤のような1以上のさらなる治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患のタイプ、抗体-薬物コンジュゲートのタイプ、疾患の重症度及び経過、予防又は治療目的のために抗体-薬物コンジュゲートが投与されるかどうか、以前の治療、患者の臨床歴及び抗体-薬物コンジュゲートに対する反応性、ならびに主治医の判断に依存するであろう。抗体-薬物コンジュゲートは、一度に、又は一連の治療を通して患者に投与されることが適切である。抗体-薬物コンジュゲートの例示的用量は、約0.1mg/kg~約5mg/kgの範囲であり得る。従って、抗体-薬物コンジュゲートの約0.1mg/kg、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg、又は5mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の1つ以上の用量を患者に投与することができる。
【0117】
本発明で使用される「薬学的に許容される担体」には、薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤が含まれ、これらは、それらが曝露される細胞又は哺乳動物に使用される投与量及び濃度において無毒性である。典型的には、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の例には、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液が含まれ、例えば、アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質:ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、スクロース、トレハロースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)およびPLURONICSTMなどの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0118】
本発明では、20の慣用的なアミノ酸及びその略語は、慣用的な用法に従う。参照により本明細書に組み込まれるImmunology-A Synthesis (2nd Edition, E.S. Golub and D.R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland, Massを参照されたい。
【0119】
本発明は、具体的な実施例と共に、以下にさらに説明される。
【0120】
実施例1:抗体MAB801(抗体-薬物コンジュゲートADC-1の裸の抗体部分に使用される)のための生産細胞株の構築
市販薬Mabthera(リツキサン(登録商標)、リツキシマブ)をLC/MS/MSで分析し、抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を決定した。軽鎖及び重鎖の全遺伝子配列は、特許(Anderson-1998、特許番号:US5736137A)の配列情報に従ってさらに確認され、MAB801の軽鎖及び重鎖遺伝子DNA配列は、それぞれ、遺伝子合成により得られ、次に、軽鎖(軽鎖、LC)及び重鎖(重鎖、HC)遺伝子発現プラスミドは、二重プラスミドベクター発現系(Invitrogen Companyからの)を用いて別々に構築され、2つのプラスミドは、哺乳類宿主細胞CHO DG44(Invitrogen Companyからの)に同時トランスフェクトされ、2段階ストレススクリーニング後、軽鎖及び重鎖遺伝子配列と同時に統合された細胞集団が得られた。細胞集団の抗体発現能を評価し、必要条件を満たすことを見出した。単一細胞クローンを半固体培地を用いてスクリーニングし、得られた単一細胞クローンを、最も高い発現レベルの抗体を有するクローン化細胞株を選択するために、供給バッチ実験によりスクリーニングし、この細胞株に基づいて、MAB801の生産細胞バンクを調製した。
【0121】
遺伝子配列決定をモノクローナル細胞株で行い、配列決定の結果、MAB801の軽鎖及び重鎖をコードする配列は市販のリツキシマブと完全に一致することが示された。
【0122】
実施例2:抗体MAB801の調製(抗体-薬物コンジュゲートADC-1の裸の抗体部分について)
MAB801は、抗体分野で広く使用されているフィードバッチ細胞培養プロセスによって調製された。このプロセスは、ワーキングセルバンクの細胞シードの回収から始まり、以下の主なステップで構成された:振とうフラスコ接種、振とうフラスコ細胞増殖、リアクター内での段階的な細胞増殖培養、およびフェドバッチ培養用の生産リアクターへの接種、続いて、以下を含む精製プロセス:発酵ブロス清澄化(深層ろ過)、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、低pHウイルス不活化および深層ろ過、PBインキュベーション、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、ウイルス除去ろ過、接線流限外ろ過および透析ろ過などの工程を経て、製品を得るためにろ過と包装が行われる。
【0123】
検出結果から、産生されたリツキシマブの生物学的類似性は、分子量及び他の物理的及び化学的指標に関してリツキシマブと非常に類似していることが示された。
【0124】
実施例3:ADC-1、CD20標的化抗体-薬物コンジュゲートの調製方法
1)MAB801抗体10mgを採取し、15mL 30KD限外濾過装置を用いて還元緩衝液(ホウ酸ナトリウム25mM、pH8.0、25mM NaCl、5mM EDTA)に置換し、合計3回の置換を行い、最終体積を約1mLとし、得られた溶液を新たなEppendorf遠心分離管に移し(秤量)、タンパク質濃度を検出し、総タンパク質濃度を算出した。
2)2.5倍モルのDTTを抗体に添加し、室温で2時間インキュベートし、連続的に混合した;得られた溶液を、15mL 30KD限外濾過装置を用いてカップリング緩衝液(50mM Tris、pH7.2、150mM NaCl、5mM EDTA)中に置換し、合計3回の置換を行った。濃縮液を採り、A280を用いてタンパク質濃度を測定し、秤量して総タンパク質量を算出し、10μLの試料を採取し、エルマン法により遊離スルフヒドリル基数を測定した。遊離スルフヒドリル基のモル濃度を次式で計算した。
【0125】
【0126】
b:キュベットの光路長(通常1cm)
遊離スルフヒドリル基のモル数を遊離スルフヒドリル基のモル濃度と総タンパク質溶液体積に基づいて計算した。
3)vc-MMAE(DMSOに溶解)を、遊離スルフヒドリル基のモルの1.1倍で還元抗体に添加し、十分に混合し、次に、室温で2時間間欠攪拌しながら反応させた。反応系に、N-アセチルシステインを反応溶液中にvc-MMAEのモル数の20倍で添加し、十分に混合し、5分間放置した。
4)工程3で得られた溶液を、15mLの30KD限外濾過装置を用いてコンジュゲート原液(10mMヒスチジン、6%スクロース、0.035%PS80、pH5.8)に置換し、合計3回の置換を行い、4℃で保存した抗体-薬物コンジュゲートADC-1を得、活性成分抗体-薬物コンジュゲートの濃度は5mg/mLであった。
【0127】
実施例4:ADC-1における薬物/抗体比の決定
調製された抗体-薬物コンジュゲートADC-1をHIC-HPLC(Ouyang-2013)により分析し、薬物/抗体比(DAR)を決定し、その結果を
図1に示し、その中で、スペクトルのピーク面積の計算により、平均薬物負荷DARは3.8であった。
【0128】
実施例5:CD20発現NHL細胞上のADC-1のインビトロ死滅活性
CD20発現NHL細胞に対するADC-1の殺傷効果を調べるために、4種類のCD20発現NHL細胞株Daudi、Jeko-1、Raji、及びRamosを選択し、PrestoBlue(商標)検出試薬を採用して、上記の4つの細胞株に対するADC-1および市販の参照薬Rituxan(登録登録商標)の死滅効果を測定し、結果を表2および
図2、
図3、
図4および
図5に示した。
【0129】
【0130】
注釈:CD20発現レベルの参照はBarth-2015、Law-2004であった。
IC50値は、2つの96ウェルプレートについて計算されたIC50の平均値であり、NDは、増殖阻害の最高パーセンテージ(阻害%)が50%未満であることを示し、IC50値は計算できなかった。
【0131】
実験結果は、ADC-1が4つのCD20発現NHL細胞株に対して有意な細胞殺傷効果を有し、その効果は市販の基準薬リツキサン(登録商標)よりも有意に良好であることを示した。
【0132】
実施例6:NHL PDXモデルにおけるADC-1の抗腫瘍効果
ヒト由来腫瘍組織異種移植片モデル(PDXモデル)は、ヒト原発腫瘍組織を用いて免疫不全マウスで確立された腫瘍モデルであり、原発腫瘍の不均一性、分子多様性及び組織学的特徴を最大限に保持する。薬物の臨床的治療効果に対する高い予測値を有し、近年、がん研究(Hidalgo、2014年)においてますます使用されている。将来の臨床適応におけるADC-1の有効性を効果的に評価するために、3つのCD20発現ヒトリンパ腫細胞がん(NHL)PDXモデルで実験を行った。すべての実験において、市販されているCD20標的モノクローナル抗体リツキサン(登録商標)を参照薬として使用し、腫瘍抑制活性を比較した。これら3つのNHL PDXモデルのうち、2つはリツキサン(登録商標)に耐性を示した。
【0133】
本研究で使用した3つのPDXモデルの情報を表3に示した。
【0134】
【0135】
1.CD20陽性NHL PDXモデルLYM#004におけるADC-1の有効性に関する研究
LYM#004はリツキサン(登録商標)耐性DLBCL PDXモデルであり、実験結果を
図6に示した。ADC-1を1、3及び10mg/kgの用量で投与した後、18日目にT/C(%)はそれぞれ45.90%(P>0.05)、4.46%(P<0.001)及び2.05%(P<0.001)であり、TGI%はそれぞれ54.10%、95.54%及び97.95%であった。ADC-1を3mg/kgの用量で投与した後、全ての腫瘍は18日目に部分的に退縮し、ADC-1を10mg/kgの用量で投与した後、5/8の腫瘍は部分的に退縮し、3/8の腫瘍はそれぞれ18日目に完全に退縮した。3及び10mg/kgのリツキサン(登録商標)投与後、18日目のT/C(%)はそれぞれ50.76%(P>0.05)及び51.50%(P>0.05)であり、TGI%はそれぞれ49.24%及び48.50%であった。
【0136】
実験結果から、ADC-1(3及び10mg/kg)は腫瘍増殖に対して有意な阻害活性を有し、ADC-1(1mg/kg)及び参照薬リツキサン(登録商標)(3及び10mg/kg)は有意な抗腫瘍活性を示さなかった。ADC-1及びリツキサン(登録商標)はいずれも、担がんマウスで良好な忍容性を示した。
【0137】
2.CD20陽性NHL PDXモデルLYM#013におけるADC-1の有効性の検討
LYM#013はリツキサン(登録商標)耐性DLBCL PDXモデルであり、実験結果を
図7に示した。ADC-1を0.3、1及び3mg/kgの用量で投与した後、28日目のT/C(%)はそれぞれ31.90%(P<0.05)、0.00%(P<0.001)、0.00%(P<0.001)であった;TGI%はそれぞれ68.10%、100.00%、100.00%であった。それぞれ、2/8、0/8、および0/8の腫瘍が部分的に退縮し、0/8、8/8、および8/8の腫瘍が完全に退行した。リツキサン(登録商標)を3mg/kgで投与した場合、28日目のT/C(%)は79.86%(P>0.05)、TGI%は20.14%であった。
【0138】
実験結果は、ADC-1(0.3、1及び3mg/kg)が用量依存的に腫瘍増殖を有意に阻害できることを示したが、対照薬リツキサン(登録商標)(3mg/kg)は有意な抗腫瘍活性を示さなかった。ADC-1及びリツキサン(登録商標)はいずれも、担がんマウスで良好な忍容性を示した。
【0139】
3.CD20陽性NHL PDXモデルLYM#016におけるADC-1の有効性に関する研究
LYM#016はDLBCL PDXモデルであり、実験結果を
図8に示した。ADC-1を0.3、1及び3mg/kgの用量で投与した後、14日目のT/C(%)はそれぞれ37.76%(P>0.05)、4.27%(P<0.01)及び1.91%(P<0.01)であり、TGI%はそれぞれ62.24%、95.73%及び98.09%であった。ADC-1を1mg/kgの用量で投与した後、全ての腫瘍は14日目に部分的に退縮し、3mg/kgの用量でADC-1を投与した後、それぞれ6/8の腫瘍は部分的に退縮し、2/8の腫瘍は14日目に完全に退縮した。リツキサン(登録商標)3mg/kgを投与した場合、14日目にT/C(%)は30.98%(P>0.05)、TGI%は69.02%であった。
【0140】
実験結果は、ADC-1(1及び3mg/kg)が腫瘍増殖に対して有意な阻害効果を有する一方で、ADC-1(0.3mg/kg)及び基準薬物リツキサン(3mg/kg)は有意な抗腫瘍活性を持たないことを示した。ADC-1及びリツキサン(登録商標)はいずれも、担がんマウスで良好な忍容性を示した。
【0141】
3つのCD20陽性ヒト由来リンパ腫(NHL)PDXモデルにおけるADC-1のインビボ有効性実験結果を表4に示した。
【0142】
【0143】
注釈:「/」は「利用不可」を表す。腫瘍体積(TV)を計算する公式は、TV=l×w2/2であり、ここで、l及びwは、それぞれ、腫瘍の測定された長さ及び幅を表す。相対腫瘍体積(RTV)は、測定結果RTV=Vf/V0に従って計算した。ここで、V0は、グループ化及び投与時(すなわち、0日目)に測定された腫瘍体積を表し、Vfは、最終日に測定された腫瘍体積を表した。相対腫瘍増殖率T/C(%)=(投与群のRTV/溶媒群のRTV)×100%。腫瘍増殖抑制率TGI%=(溶媒群の平均腫瘍体積-投与群の平均腫瘍体積)/溶媒群の平均腫瘍体積×100%。++++はT/Cを表し(%0以上10%以下)、「+++」はT/Cを表し(%10%以上20%以下)、「++」はT/Cを表し(%20%以上40%以下)、「+」はT/Cを表す(%40%以上)。ADC-1及びリツキサン(登録商標)の抗腫瘍活性の分割は、モデルの最高用量でのT/C(%)値に基づいた。
【0144】
結論として、インビボ有効性実験の結果は、ADC-1が3つのヒトリンパ腫(NHL)PDXモデル(全てのモデルはDLBCL)において有意な腫瘍増殖阻害効果を示し、腫瘍担持マウスにおいて非常に良好な耐性を示すことを示した。これら3つのDLBCL PDXモデルのうち2つがリツキサン(登録商標)に耐性であったことは指摘に値する。
【0145】
実施例7:ADC-1製剤の安定性に及ぼすpHの影響
ADC-1の調製に関する研究及びこれまでの経験に基づいて、本出願の発明者らは、調製物が5mg/mL抗体-薬物コンジュゲート(緩衝液及び他の成分を含まない裸の抗体-薬物コンジュゲート)、10mMヒスチジン緩衝液(pH5.8)、6%スクロース、及び0.035%Tween-80(PS80)であることを最終的に決定した。
【0146】
ADC-1の品質に対する10mMヒスチジン緩衝液中の異なるpHの影響を調べるために、ADC-1の溶液を調べる製剤F1からF4(pH:5.8~7.0)に変更し、それぞれ6週間及び4週間、調査のために25±2℃/60%±5%RH及び40±2℃/75%±5%RHで放置し、試料を設定した時点で分析のために採取した。検出項目は外観、pH、タンパク質濃度、SEC、iCIEF及びHICであった。試料に明らかな乳濁が認められた場合は、その後の関連解析は実施しない。具体的な実験計画を表5に示した。
【0147】
【0148】
注釈:Wは週を表し、2Wは2週間を表し、チェックは検出されたことを表す。
【0149】
実験結果は、ADC-1が10mMヒスチジン緩衝液中にある場合、その安定性はpHの増加と共に低下することを示した。
【0150】
25℃で6週間放置した後、全ての試料は無色で、pHと濃度に変化のない透明な溶液であった;iCIEFの純度は減少し、酸性ピークの含有量は増加し、変化速度はpHの増加と共に増加した;SECの純度は減少傾向を示し、ポリマー(HMW)の含有量は増加し、変化速度はpHの増加と共に増加した;DAR値は有意に変化しなかった。
【0151】
40℃で4週間放置した後、試料の安定性は同じ傾向を示したが、変化の程度は悪化した。pHが6.7と7.0の場合、試料の外観は40℃で1週間以内に変化し、乳光が現れ、乳光の程度はpHの上昇とともに増加し、粒子状物質の存在によりUV検出結果が歪められた(タンパク光)。計算されたタンパク質含有量が実際の値から逸脱した。SECの純度が低下し、ポリマーと低分子量断片(LMW)の含有量が増加し、変化速度がpHの増加とともに増加した。iCIEFの純度は低下し、酸性ピークの含有量は増加し、塩基性ピークの含有量は減少し、変化速度はpHの増加とともに増加した。
【0152】
pHの関数としての試料のSEC純度の傾向図を
図9に示した。
【0153】
本発明の特定の実施形態を詳細に説明したが、当業者であれば、開示されたすべての教示に照らして、これらの詳細の様々な修正及び置換が行われ得、これらの変更は本発明の範囲内であることを理解するであろう。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物によって与えられる。