(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】レールブラケット
(51)【国際特許分類】
B66B 7/02 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B66B7/02 E
(21)【出願番号】P 2023033130
(22)【出願日】2023-03-03
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2022034672
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕基
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕
(72)【発明者】
【氏名】中田 好彦
(72)【発明者】
【氏名】高草木 康史
(72)【発明者】
【氏名】石川 佳延
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-147645(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路を移動する乗りかごを案内するガイドレールを、前記昇降路内で固定するレールブラケットであって、
前記ガイドレールを保持する第1のブラケットと、前記昇降路の壁面に固定される第2のブラケットと、を有する保持部と、
前記保持部に対して頭部が前記ガイドレール側に露出した第1のボルトを有し、前記第1のボルトが回転されることにより前記第1のブラケットと前記第2のブラケットとを互いに固定する固定機構と、
を備
え、
前記固定機構は、
前記保持部に設けられた第1の部材と、
前記ガイドレール側で前記保持部に支持され、前記第1の部材を前記ガイドレール側に移動させる移動部材と、
前記保持部に設けられ、前記第1の部材に当接し、前記移動部材による前記第1の部材の前記ガイドレール側への移動に連動して、前記保持部に固定される第2の部材と、
第2のボルトと、
を備え、
前記第2の部材は、上面と、下面と、前記上面と前記下面のうちの一方に設けられ前記壁面に対して傾斜した傾斜面とを備え、前記上面と前記下面とを貫通する貫通孔が形成され、
前記第1の部材は、前記ガイドレール側の端面に開口してネジ山が設けられた孔部が形成され、前記第2の部材の前記傾斜面と当接し、
前記第1のボルトは、前記ガイドレール側で前記保持部に支持され、前記孔部に螺合し、
前記第2のボルトは、前記保持部と前記貫通孔とを貫通し、
前記第1のボルトを第1の方向に回転させて前記第1のボルトを前記孔部に進入させた場合に、前記第1の部材が前記傾斜面に当接しながら前記ガイドレール側に移動し、前記第2の部材は、前記第1の部材の移動に連動して鉛直方向のうちの一方向に移動し、前記第2のボルトが前記第2の部材を前記保持部に固定する、
レールブラケット。
【請求項2】
エレベータの昇降路を移動する乗りかごを案内するガイドレールを、前記昇降路内で固定するレールブラケットであって、
前記ガイドレールを保持する第1のブラケットと、前記昇降路の壁面に固定される第2のブラケットと、を有する保持部と、
前記保持部に対して頭部が前記ガイドレール側に露出した第1のボルトを有し、前記第1のボルトが回転されることにより前記第1のブラケットと前記第2のブラケットとを互いに固定する固定機構と、
を備え、
前記第1のブラケットには、前記ガイドレールの位置決めを行うための第1の長孔部が形成され、
前記第2のブラケットには、前記ガイドレールの位置決めを行うための第2の長孔部が形成された、
レールブラケット。
【請求項3】
エレベータの昇降路を移動する乗りかごを案内するガイドレールを、前記昇降路内で固定するレールブラケットであって、
前記ガイドレールを保持する第1のブラケットと、前記昇降路の壁面に固定される第2のブラケットと、を有する保持部と、
前記保持部に対して頭部が前記ガイドレール側に露出した第1のボルトを有し、前記第1のボルトが回転されることにより前記第1のブラケットと前記第2のブラケットとを互いに固定する固定機構と、
前記第1のブラケットに前記ガイドレールを固定するクリップと、
前記壁面に前記第2のブラケットを固定する固定ボルトと、
を備え
るレールブラケット。
【請求項4】
エレベータの昇降路を移動する乗りかごを案内するガイドレールを、前記昇降路内で固定するレールブラケットであって、
前記ガイドレールを保持する第1のブラケットと、前記昇降路の壁面に固定される第2のブラケットと、を有する保持部と、
前記保持部に対して頭部が前記ガイドレール側に露出した第1のボルトを有し、前記第1のボルトが回転されることにより前記第1のブラケットと前記第2のブラケットとを互いに固定する固定機構と、
を備え、
前記第1のブラケットの下面と前記第2のブラケットの上面とは、当接する、
レールブラケット。
【請求項5】
エレベータの昇降路を移動する乗りかごを案内するガイドレールを、前記昇降路内で固定するレールブラケットであって、
前記ガイドレールを保持する第1のブラケットと、前記昇降路の壁面に固定される第2のブラケットと、を有する保持部と、
前記保持部に対して頭部が前記ガイドレール側に露出した第1のボルトを有し、前記第1のボルトが回転されることにより前記第1のブラケットと前記第2のブラケットとを互いに固定する固定機構と、
を備え、
前記第1のブラケットと前記第2のブラケットとは、前記昇降路に設けられた建屋梁に固定された板状部材を上下方向から挟持することで、前記壁面に前記ガイドレールを固定する、
レールブラケット。
【請求項6】
エレベータの昇降路を移動する乗りかごを案内するガイドレールを、前記昇降路内で固定するレールブラケットであって、
前記ガイドレールを保持する第1のブラケットと、前記昇降路の壁面に固定される第2のブラケットと、を有する保持部と、
前記保持部に対して頭部が前記ガイドレール側に露出した第1のボルトを有し、前記第1のボルトが回転されることにより前記第1のブラケットと前記第2のブラケットとを互いに固定する固定機構と、
を備え、
前記固定機構は、
前記第2のブラケットに向かって移動することにより、前記第1のブラケットを前記第2のブラケットとによって挟む移動部材と、
前記第1のボルトの回転運動を前記移動部材の直動運動に変換する変換機構と、
を備える、
レールブラケット。
【請求項7】
前記変換機構は、
前記移動部材と螺合した第2のボルトと、
前記第1のボルトに設けられ、前記第1のボルトと一体に回転する第1の歯車と、
前記第2のボルトに設けられ、前記第1の歯車と噛み合い、前記第2のボルトと一体に回転する第2の歯車と、
を備えた、請求項
6に記載のレールブラケット。
【請求項8】
前記固定機構は、
前記保持部に設けられた第1の部材と、
前記ガイドレール側で前記保持部に支持され、前記第1の部材を前記ガイドレール側に移動させる移動部材と、
前記保持部に設けられ、前記第1の部材に当接し、前記移動部材による前記第1の部材の前記ガイドレール側への移動に連動して、前記保持部に固定される第2の部材と、
を備える、請求項
2~5のうちいずれか一項に記載のレールブラケット。
【請求項9】
前記第2の部材は、上面と、下面と、前記上面と前記下面のうちの一方に設けられ前記壁面に対して傾斜した傾斜面とを備え、前記上面と前記下面とを貫通する貫通孔が形成され、
前記第1の部材は、前記ガイドレール側の端面に開口してネジ山が設けられた孔部が形成され、前記第2の部材の前記傾斜面と当接し、
前記第1のボルトは、前記ガイドレール側で前記保持部に支持され、前記孔部に螺合し、
前記固定機構は、
前記保持部と前記貫通孔とを貫通する第2のボルト、をさらに備え、
前記第1のボルトを第1の方向に回転させて前記第1のボルトを前記孔部に進入させた場合に、前記第1の部材が前記傾斜面に当接しながら前記ガイドレール側に移動し、前記第2の部材は、前記第1の部材の移動に連動して鉛直方向のうちの一方向に移動し、前記第2のボルトが前記第2の部材を前記保持部に固定する、
請求項
8に記載のレールブラケット。
【請求項10】
前記固定機構は、
前記ガイドレール側で前記保持部に支持され、前記第1の部材の前記ガイドレール側の端面に当接する第3のボルト、をさらに備え、
前記第3のボルトを回転させて前記第3のボルトを前記壁面側に進入させた場合に、前記第1の部材が前記傾斜面に当接して前記壁面側に移動し、前記第2のボルトの前記保持部への固定が解除される、
請求項
1に記載のレールブラケット。
【請求項11】
前記固定機構は、
前記ガイドレール側で前記保持部に支持され、前記第1の部材の前記ガイドレール側の端面に当接する第3のボルト、をさらに備え、
前記第3のボルトを回転させて前記第3のボルトを前記壁面側に進入させた場合に、前記第1の部材が前記傾斜面に当接して前記壁面側に移動し、前記第2のボルトの前記保持部への固定が解除される、
請求項9に記載のレールブラケット。
【請求項12】
前記第1の部材は、前記鉛直方向及び前記第1のボルトの移動方向と交差する方向への前記第2のボルトの移動を制限する制限部を有する、
請求項
1に記載のレールブラケット。
【請求項13】
前記第1の部材は、前記鉛直方向及び前記第1のボルトの移動方向と交差する方向への前記第2のボルトの移動を制限する制限部を有する、
請求項9に記載のレールブラケット。
【請求項14】
前記制限部は、前記交差する方向に前記第2のボルトを挟む複数の爪部を有する、
請求項
12に記載のレールブラケット。
【請求項15】
前記制限部は、前記交差する方向に前記第2のボルトを挟む複数の爪部を有する、
請求項13に記載のレールブラケット。
【請求項16】
前記第1のブラケットには、前記ガイドレールの位置決めを行うための第1の長孔部が形成され、
前記第2のブラケットには、前記ガイドレールの位置決めを行うための第2の長孔部が形成された、
請求項3、4または5に記載のレールブラケット。
【請求項17】
前記第1のブラケットに前記ガイドレールを固定するクリップと、
前記壁面に前記第2のブラケットを固定する固定ボルトと、
を備える、請求項4、6または7に記載のレールブラケット。
【請求項18】
前記第1のブラケットの下面と前記第2のブラケットの上面とは、当接する、
請求項5に記載のレールブラケット。
【請求項19】
前記第1のブラケットと前記第2のブラケットとは、前記昇降路に設けられた建屋梁に固定された板状部材を上下方向から挟持することで、前記壁面に前記ガイドレールを固定する、
請求項6または7に記載のレールブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レールブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの据付作業において、安全性や生産性を改善するため、ロボット等の機械装置を用いた作業の自動化が従来から種々試みられている。例えば、ロボットアームの先端にアンカーボルト用の穿孔機と、穿孔作業の安定性を得るためにアームを支持するリニアガイドからなるユニットを取り付ける技術が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなリニアガイドによる支持機構は、アームの先に穿孔機以外を取り付けることによって、他の作業にも活用することが可能となっている。
【0003】
また、シムによるブラケット高さ調整の代替として、補助ブラケットの上下角度が調整可能なブラケットの技術が従来から知られている(例えば、特許文献2参照)。このような従来技術によれば、機械装置を用いてブラケットの角度を調整することが容易になり、大幅な作業軽減につながる。
【0004】
さらに、機械装置を使用してブラケットを昇降路壁に据付するために、建屋側ブラケットにスリット状の長孔が空けられたブラケットの技術が従来から知られている(例えば、特許文献3参照)。このような従来技術の構造では、建屋側ブラケットの孔にアンカーボルトを通した上でナットを装着しなくてはならなかったが、この長孔の工夫によって、アンカーボルトをナットに装着した上で、ブラケットを上からアンカーボルトに嵌め込むだけで据付ができ、機械装置に不向きな作業の技術的ハードルを下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-125194号公報
【文献】特開平6-255941号公報
【文献】国際公開第2020/240721号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エレベータの据付時に、これまで人手で行っていた乗りかごを案内するガイドレールの位置調整をロボットアーム等の機械装置で代替することが考えられている。さらにこのような作業に加えて、ガイドレールを昇降路内で固定するレールブラケットの固定作業もロボットアーム等の機械装置で実現することができれば、ガイドレール位置の調整作業を、機械装置で一貫して自動的に行うことが可能となる。
【0007】
しかしながら、従来のレールブラケットは、その形態から、海外では上方からボルトで締結し、国内では二つのブラケットを溶接、あるいは二つのブラケットを上方からドリルねじで締結することで固定していた。このため、ロボットアーム等の機械装置によってブレールラケットの固定を行う場合、ロボットアームの先端にインパクトドライバー等の作業具を取付けた上で、このロボットアームをガイドレールの裏側に回して固定作業を行うことが必要となる。このような作業を実現するためには、作業の安定性を確保しながらロボットアームの関節を増加させる必要が生じ、ロボットアームの機構や機械装置のシステムが複雑になるという問題がある。
【0008】
また、人手でレールブラケットの固定作業を行う場合にも、上方からの固定が必要となるため、作業者の手が届きづらく、無理のある体勢での作業となり、レールブラケットの固定作業を行うことが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態にかかるレールブラケットは、エレベータの昇降路を移動する乗りかごを案内するガイドレールを、前記昇降路内で固定するレールブラケットであって、前記ガイドレールを保持する第1のブラケットと、前記昇降路の壁面に固定される第2のブラケットと、を有する保持部と、前記保持部に対して頭部が前記ガイドレール側に露出した第1のボルトを有し、前記第1のボルトが回転されることにより前記第1のブラケットと前記第2のブラケットとを互いに固定する固定機構と、を備える。前記固定機構は、前記保持部に設けられた第1の部材と、前記ガイドレール側で前記保持部に支持され、前記第1の部材を前記ガイドレール側に移動させる移動部材と、前記保持部に設けられ、前記第1の部材に当接し、前記移動部材による前記第1の部材の前記ガイドレール側への移動に連動して、前記保持部に固定される第2の部材と、第2のボルトと、を備え、前記第2の部材は、上面と、下面と、前記上面と前記下面のうちの一方に設けられ前記壁面に対して傾斜した傾斜面とを備え、前記上面と前記下面とを貫通する貫通孔が形成され、前記第1の部材は、前記ガイドレール側の端面に開口してネジ山が設けられた孔部が形成され、前記第2の部材の前記傾斜面と当接し、前記第1のボルトは、前記ガイドレール側で前記保持部に支持され、前記孔部に螺合し、前記第2のボルトは、前記保持部と前記貫通孔とを貫通し、前記第1のボルトを第1の方向に回転させて前記第1のボルトを前記孔部に進入させた場合に、前記第1の部材が前記傾斜面に当接しながら前記ガイドレール側に移動し、前記第2の部材は、前記第1の部材の移動に連動して鉛直方向のうちの一方向に移動し、前記第2のボルトが前記第2の部材を前記保持部に固定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るガイドレールの設置状態の一例を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るレールブラケットの一例を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る下部ブラケットの一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る上部ブラケットの一例を示す斜視図である。
【
図6-1】
図6-1は、第1の実施形態に係る下向き楔型ブロックの一例を示す正面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る上向き楔型ブロックの一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す上面図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す正面図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す側面図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係るレールブラケットの構造の一例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態に係るレールブラケットの固定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第2の実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す上面図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す正面図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す側面図である。
【
図17】
図17は、第3の実施形態に係るレールブラケットの一例を示す正面図である。
【
図18】
図18は、第3の実施形態に係るレールブラケットの一例を示す分解斜視図である。
【
図20】
図20は、従来のレールブラケットの設置例を示す上面図である。
【
図21】
図21は、従来のレールブラケットの設置例を示す正面図である。
【
図22】
図22は、従来のレールブラケットの設置例を示す側面図である。
【
図23】
図23は、従来のレールブラケットの設置例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態に係るレールブラケットについて説明する。なお、以下に示す実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
[第1実施形態]
まず、
図1を用いて、実施形態に係るガイドレールの設置状態について説明する。
図1は、実施形態に係るガイドレールの設置状態の一例を説明するための模式図である。
図1では、エレベータの昇降路を正面から見た図を示している。また、
図1では、鉛直方向の上方向をZ方向、Z方向と直交するX方向、X方向及びZ方向と直交するY方向により表現される3軸直交座標を示している。鉛直方向の下方向は、鉛直方向の上方向及び下方向のうちの一方向の一例である。
【0013】
図1に示すように、ガイドレール15は、エレベータELの昇降路Rに沿って2列設けられる。また、各列のガイドレール15は、鉛直方向(Z軸方向)に複数が連結して設けられる。そして、各ガイドレール15は、レールブラケット30を介して建屋の壁等に固定される。
【0014】
具体的には、レールブラケット30は、鉛直方向に複数設けられ、例えば、ボルト等の締結具によって建屋の壁1´の面である壁面1に固定される。なお、
図1に示す例では、1つのガイドレール15に1つのレールブラケット30が配置される場合を示しているが、1つのガイドレール15に複数のレールブラケット30が配置されてもよい。
【0015】
また、鉛直方向に隣り合うガイドレール15同士は、レールジョイント102によって連結される。具体的には、1つのレールジョイント102は、鉛直方向に隣り合う2つのガイドレール15にボルト及びナット等によって固定されることで、2つのガイドレール15を連結する。つまり、エレベータELの最上階までの昇降路Rの高さは、複数のガイドレール15をレールジョイント101により連結することで実現される。
【0016】
次に、レールブラケット30の詳細について説明する。
【0017】
X軸に沿う正方向(X軸の矢印が示す方向、右方向)及びX軸に沿う負方向(X軸の矢印の反対方向、左方向)は、左右方向と称される。Y軸に沿う正方向(Y軸の矢印が示す方向、前方向、ガイドレール15側の方向とも称する。)及びY軸に沿う負方向(Y軸の矢印の反対方向、後方向、壁面1側の方向とも称する。)は、前後方向と称される。Z軸に沿う正方向(Z軸の矢印が示す方向、上方向、鉛直方向と反対方向とも称する。)及びZ軸に沿う負方向(Z軸の矢印の反対方向、下方向、鉛直方向とも称する。)は、上下方向と称される。なお、上記の方向の定義は、レールブラケット30の説明のための一例であり、これに限定されない。例えば、乗りかごNのドアを正面とした場合、ドアの左右を左右方向とし、ドアの前後を前後方向と定義してもよい。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係るレールブラケット30の設置例を示す斜視図である。
図3は、第1の実施形態に係るレールブラケット30の設置例を示す分解斜視図である。
【0019】
第1の実施形態に係るレールブラケット30は、エレベータELの乗りかごNの昇降を誘導するガイドレール15を、昇降路の壁面1に固定する。
【0020】
図2及び
図3に示すように、レールブラケット30は、固定機構150を有する。固定機構150は、上部ブラケット9と、下部ブラケット4と、二つのジャッキボルト5a,5bと、二つの水平ボルト6a,6bと、二つの鉛直ボルト10a,10bと、下向き楔型ブロック7と、上向き楔型ブロック8と、を備える。固定機構150は、水平ボルト6a,6bが回転されることにより上部ブラケット9と下部ブラケット4とを互いに固定する。
【0021】
図4は、第1の実施形態に係るレールブラケットの下部ブラケット4の構造の一例を示す斜視図である。
図5は、第1の実施形態に係るレールブラケットの上部ブラケット9の構造の一例を示す斜視図である。
図6-1は、第1の実施形態に係る下向き楔型ブロックの一例を示す正面図である。
図6-2は、
図6-1のE-E断面図である。
図6-3は、
図6-1のD-D断面図である。
図7は、第1の実施形態にかかる上向き楔型ブロックの断面図である。
図8は、第1の実施形態に係るレールブラケット30の設置例を示す上面図である。
図9は、第1の実施形態に係るレールブラケット30の設置例を示す正面図である。
図10は、第1の実施形態に係るレールブラケット30の設置例を示す側面図である。
【0022】
ここで、下向き楔型ブロック7は、第1の部材に相当し、上向き楔型ブロック8は、第2の部材に相当する。また、上部ブラケット9は、ガイドレール15を保持する第1のブラケットに相当し、下部ブラケット4は、壁面1に固定される(取り付けられる)第2のブラケットに相当する。上部ブラケット9と下部ブラケット4とは、保持部100(保持部材)を構成する。二つの水平ボルト6a,6bは、第1のボルトに相当する。二つの鉛直ボルト10a,10bは、第2のボルトに相当する。二つのジャッキボルト5a,5bは、第3のボルトに相当する。水平ボルト6a,6bは、移動部材とも称される。
【0023】
なお、二つのジャッキボルト5a,5bを区別しない場合には、ジャッキボルト5と称する。二つの水平ボルト6a,6bを区別しない場合には、水平ボルト6と称する。二つの鉛直ボルト10a,10bを区別しない場合には、鉛直ボルト10と称する。
【0024】
下部ブラケット4と上部ブラケット9について説明する。
下部ブラケット4は、昇降路の壁面1に固定されるものである。下部ブラケット4は、
図2~4に示すように、板状部材を、断面が略コ字形状になるように2箇所で屈曲した形状に形成されている。下部ブラケット4の壁面1側の面の両端部近傍のそれぞれには、二つの下部ブラケットアンカーボルト用横孔16a,16bが設けられている。また、ガイドレール15側の面の両端部近傍には、二つの下部ブラケットジャッキボルト用横孔17a,17b(以下、「横孔17a,17b」と称する場合がある。)が設けられ、二つの横孔17a,17bの間で横孔17a,17bの近傍に、二つの下部ブラケット水平ボルト用孔18a,18b(以下、「横孔18a,18b」と称する場合がある。)が設けられている。また、下部ブラケット4の上面のガイドレール15側の屈曲部分には、一つの下部ブラケット鉛直ボルト用横孔19(以下、「横孔19」と称する場合がある。)が設けられている。ここで、二つの横孔18a,18bと横孔19は、いずれもX方向(左右方向)に延びる長孔となっており、ガイドレール15及び壁面1への取付位置の調整のために使用される。また、二つの下部ブラケットアンカーボルト用横孔16a,16bもX方向(左右方向)に延びる長孔となっており、ガイドレール15のX方向(左右方向)の取付位置の調整を行うために使用される。また、二つの下部ブラケットアンカーボルト用横孔16a,16bもX方向(左右方向)に延びる長孔となっており、昇降路の壁面1への取付位置の調整に使用される。
【0025】
下部ブラケット4は、
図2,3に示すように、下部ブラケットアンカーボルト用横孔16aを貫通するアンカーボルト2aとアンカーボルト2aに螺合するアンカーボルト用ナット3a、及び下部ブラケットアンカーボルト用横孔16bを貫通するアンカーボルト2bとアンカーボルト2bに螺合するアンカーボルト用ナット3bとにより、二箇所で昇降路の壁面1に固定される。
【0026】
上部ブラケット9は、ガイドレール15を保持するものである。上部ブラケット9は、
図2,3,5に示すように、板状部材を断面L字形状になるように屈曲した形状で形成される。
上部ブラケット9の底面の中央付近には、二つの上部ブラケット鉛直ボルト用横孔20a,20b(以下、「横孔20a,20b」と称する場合がある。)が設けられている。この二つの上部ブラケット鉛直ボルト用横孔20a,20bは、Y方向に延在する長孔となっており、ガイドレール15のY方向(前後方向)の取付位置の調整に使用される。また、上部ブラケット9の立設面には、その両端部近傍のそれぞれに、二つの上部ブラケットレールクリップ丸孔21a,21bが設けられている。
【0027】
上部ブラケット9の下面9aは、下部ブラケット4の上面4aに当接するように設置される。上部ブラケット9には、
図2、3に示すように、二つのレールクリップ12a,12bがそれぞれレールクリップ用ボルト13a,13bと、レールクリップ用ボルト13a,13bのそれぞれに螺合するレールクリップ用ナット14a,14bとによって取り付けられている。そして、この二つのレールクリップ12a,12bにより、ガイドレール15の両側が保持され、これによってガイドレール15が上部ブラケット9に固定されている。レールクリップ12a,12bは、上部ブラケット9にガイドレール15を固定するクリップの一例である。
【0028】
次に、下向き楔型ブロック7と上向き楔型ブロック8について説明する。
下向き楔型ブロック7は、
図3,6に示すように、X方向に延びる略直方体形状である。下向き楔型ブロック7は、ジャッキボルト5a,5bに当接する側面71と、下部ブラケット4と略当接する上面73と、上面73と反対側の下面74と、を有する。
【0029】
下向き楔型ブロック7の側面71には、二つの孔部511a,511bが設けられる。孔部511a,511bのそれぞれには、水平ボルト6a,6bのそれぞれと螺合するネジ山としての雌ねじ部72が形成されている。
【0030】
下向き楔型ブロック7の下面74は、後述する上向き楔型ブロック8と嵌合する切り欠き部75を有する。切り欠き部75を形成する上面は、ガイドレール15側から壁面1側に向けて(すなわち、Y軸に沿う負方向に)下るように形成された傾斜面76を有し、この傾斜面76が後述する上向き楔型ブロック8の傾斜面と当接する。
【0031】
また、
図3、
図6-1、
図6-2、及び
図6-3に示すように、下向き楔型ブロック7は、側面71から突出した突出部201を有する。突出部201は、制限部の一例である。
【0032】
突出部201には、複数(一例として三つ)の爪部201c~201eを有する。隣り合う爪部201c~201eの間には、鉛直ボルト10a,10bの軸部10dが入れられる開口部201a,201bが設けられている。開口部201a,201bは、一例として溝である。
【0033】
隣り合う爪部201c~201eは、開口部201a,201bに入れられた鉛直ボルト10a,10bの軸部10dを挟む。これにより、突出部201は、水平ボルト6a,6bの移動方向(Y方向に沿った方向)と交差する方向(一例として、X方向)への鉛直ボルト10a,10bの移動を制限する。このとき、爪部201c~201eが軸部10dと当接することで鉛直ボルト10a,10bの移動が阻止される。
【0034】
図2、3に示すように、二本のジャッキボルト5a,5bは、下部ブラケット4の横孔17a,17bをそれぞれ貫通し、後述する下向き楔型ブロック7の側面71に当接する。
【0035】
詳細は後述するが、ジャッキボルト5を後方向に押し出すと、これに連動して下向き楔型ブロック7が後方向に押し出され、上向き楔型ブロック8との嵌合が外れる。これにより、下向き楔型ブロック7を前後方向に自在に移動させることができるようになる。
【0036】
水平ボルト6a,6bのそれぞれは、頭部6cと軸部6d(胴部)とを有し、軸部6dには雄ねじが形成される。水平ボルト6a,6bは、保持部100に対して頭部6cがガイドレール15側に露出した状態で設けられる。
図2、3、8~10に示すように、二本の水平ボルト6a,6bのそれぞれは、下部ブラケット4の横孔18a,18bのそれぞれを貫通し、後述する下向き楔型ブロック7とY軸方向に螺合する。そのため、水平ボルト6a、6bをY軸周りに回転させることで下向き楔型ブロック7を移動させることができる。
【0037】
また、水平ボルト6の頭部6cは、下部ブラケット4より前方向に突出する。そのため、前方向(ガイドレール15側)から水平ボルト6の操作を行うことができる。
【0038】
上向き楔型ブロック8は、
図3に示すように、板状に形成される。上向き楔型ブロック8は、上面83と、上面83の反対側の下面84とを有する。
図3,7に示すように、上向き楔型ブロック8の上面83のうち、壁面1側の部分は、壁面1に向かう方向(すなわち、後方向)に下るように形成された傾斜面81を形成している。すなわち、上向き楔型ブロック8は、壁面1に対して傾斜した傾斜面81を有する。
また、上面83には、下面84に向けて貫通する二つの貫通孔711a,711bが形成されている。詳細には、貫通孔711a,711bは、上面83のうち傾斜面81を貫通している。貫通孔711a,711bのそれぞれには、鉛直ボルト10a,10bのそれぞれと螺合するネジ山としての雌ねじ部85が形成されている。
【0039】
上向き楔型ブロック8の傾斜面81は、下向き楔型ブロック7と切り欠き部75の傾斜面76と当接する。このため、下向き楔型ブロック7がガイドレール15側(前方向)に移動すると、傾斜面76に作用する前方向の力によって、上向き楔型ブロック8の傾斜面81に下向きの力が作用する。これにより、上向き楔型ブロック8は下方向に押し下げられる。
【0040】
二本の鉛直ボルト10a,10bのそれぞれは、頭部10c(胴部)と軸部10dから構成され、軸部10dには雄ねじが形成される。鉛直ボルト10a,10bは、保持部100に対して頭部6cが上方向側に露出した状態で設けられる。ここで、二本の鉛直ボルト10a,10bのそれぞれは第2のボルトに相当する。
【0041】
図3、8~10に示すように、二本の鉛直ボルト10a,10bのそれぞれは、上部ブラケット9の横孔20a,20bのそれぞれと、下部ブラケット4の横孔19と、をそれぞれ貫通し、上向き楔型ブロック8とZ軸方向に螺合する。
このため、上向き楔型ブロック8が下方向に押し下げられると、鉛直ボルト10が連動して押し下げられる。また、鉛直ボルト10a,10bのそれぞれの頭部10cは、上部ブラケット9より上方向に突出する。これにより、鉛直ボルト10a,10bそれぞれの移動に伴って、上部ブラケット9と下部ブラケット4とが押さえつけられて互いに固定される。
【0042】
また、
図3、8~10に示すように、上部ブラケット9の二つの横孔20a,20bのそれぞれは、それぞれY軸方向に延びた長孔となっている。また、下部ブラケット4の横孔19は、X軸方向に延びる長孔となっている。即ち、横孔20a,20bのそれぞれと、横孔19とは、それぞれ直交する方向に延びており、横孔20a,20bのそれぞれは、横孔19と重複する位置に設けられる。また、横孔20a,20bのそれぞれは、横孔19と同じ幅寸法を有する。
【0043】
このため、横孔20a,20bのそれぞれが、横孔19と重複した任意の位置に、鉛直ボルト10を挿入し、その位置で鉛直ボルト10を締結することができる。即ち、上部ブラケット9の位置をX軸方向(左右方向)や、Y軸方向(前後方向)に調整することができるようになっている。
【0044】
次に、上向き楔型ブロック8、下向き楔型ブロック7を利用したレールブラケット30の固定の動作について説明する。
【0045】
図11は、第1の実施形態にかかるレールブラケット30による固定を説明するための図であり、
図9におけるA-A断面図である。
図11の(a)は緩み時の状態を示し、
図11の(b)は締結状態を示している。
【0046】
図11の(a)に示す緩みの状態で、水平ボルト6a,6bの手前側から水平ボルト6a,6bのそれぞれを右回り(第1の方向)に回転させると水平ボルト6a,6bを孔部511a,511bに螺合しながら孔部511a,511b内に進入する。このとき、下向き楔型ブロック7の傾斜面76が上向き楔型ブロック8の傾斜面81に当接しながら下向き楔型ブロック7が前記ガイドレール側(前方)に移動し、上向き楔型ブロック8を押圧する。これにより、上向き楔型ブロック8が鉛直方向の下方に引っ張られる。すると、上向き楔型ブロック8は、下向き楔型ブロック7の移動に連動して鉛直方向の下方向に移動する(下がる)。これによって鉛直ボルト10a,10bのそれぞれが上向き楔型ブロック8を下部ブラケット4に固定し、上部ブラケット9と下部ブラケット4とを固定する。この結果、
図11の(b)に示すレールブラケット30の締結状態となる。このようにして、下向き楔型ブロック7の先端が上向き楔型ブロック8の壁面1側からガイドレール15側まで入り込む。下向き楔型ブロック7が上向き楔型ブロック8におけるガイドレール15側の奥まで入り込むことで、締結時の緩みやがたつきを押さえることができる。また、このとき、下向き楔型ブロック7の突出部201の開口部201a,201bに入れられた鉛直ボルト10a,10bが突出部201の爪部201c~201eに挟まる。突出部201は、水平ボルト6a,6bの移動方向(Y方向に沿った方向)と交差する方向(一例として、X方向)への鉛直ボルト10a,10bの移動を制限するので、鉛直ボルト10a,10bの緩みやがたつきを抑制することができる。
【0047】
一方、
図11の(b)の締結状態から、水平ボルト6a,6bのそれぞれを左回りに回転させると、下向き楔型ブロック7が壁面1側に移動する。また、ジャッキボルト5a,5bを例えば右回りに回転させると、ジャッキボルト5a,5bは壁面1側に進入していく。このとき、ジャッキボルト5a,5bの先端は、下向き楔型ブロック7に当接しているため、下向き楔型ブロック7が壁面1側に押圧されて壁面1側に押し出され、下向き楔型ブロック7と上向き楔型ブロック8の締結が緩む。換言すると、噛み合っていた下向き楔型ブロック7と上向き楔型ブロック8との噛み合いが外れる。そして、水平ボルト6a,6bのそれぞれを左回りに回転させると、下向き楔型ブロック7が壁面1側に送られ、上向き楔型ブロック8を鉛直方向の上方向に動かすことができる隙間が生じる。これにより、上向き楔型ブロック8に繋がった鉛直ボルト10が緩み、上部ブラケット9を水平方向に動かすことができるようになる。すなわち、鉛直ボルト10a,10bの下部ブラケット4への固定が解除され、レールブラケット30は緩んで
図11の(a)に示す状態となる。
【0048】
なお、レールブラケット30が、ガイドレール15の固定に利用される際には、上述のレールブラケット30を構成する部材のそれぞれは、1つのユニットとして用いられる。
【0049】
即ち、レールブラケット30を構成するそれぞれの部材は相互に連結された構成であるため、部材ごとではなく1つのユニットとして扱うことができる。そのため例えば、ボルトの落下飛散等を防ぐことができるようになり、安全性の向上につなげることができる。
【0050】
次に、
図12を用いて、作業用ロボットが行う第1実施形態のレールブラケットの固定処理について説明する。
【0051】
図12は、作業用ロボットが行うレールブラケット30の固定処理を示すフローチャートである。
【0052】
まず、作業用ロボットは、ロボットアーム等により、レールブラケット30の下部ブラケット4を、アンカーボルト2a,2bによって壁面1に固定する(ステップS101)。アンカーボルト2a,2bは、壁面1に下部ブラケット4を固定する固定ボルトの一例である。
【0053】
次に、作業用ロボットは、ガイドレール15を立設し、レールクリップ12、レールクリップ用ボルト13、及びレールクリップ用ナット14によって、ガイドレール15を仮決めした位置に固定する(ステップS102)。
【0054】
次に、作業用ロボットは、センサを用いた所定の方法により、ガイドレール15の形状を測定する(ステップS103)。具体的には例えば、レールジョイントによって連結された複数のガイドレール15の位置のそれぞれが基準線に対してどのくらい変位しているか、目標以内に収まっているか、等を測定する。
【0055】
作業用ロボットは、レールブラケット30の水平ボルト6a,6bを一旦緩める。これにより、上部ブラケット9の位置をX軸(左右)方向や、Y軸(前後)方向に移動することができる。
そして,作業用ロボットは、測定結果に基づいて、ガイドレール15を目標とする調整位置(例えば地面に対して鉛直になるよう)に、ロボットアーム等によって調整する(ステップS104)。
【0056】
ガイドレール15の位置の調整が終了すると、次に、作業用ロボットは、ロボットアームの先端に付いた工具、例えばインパクトドライバー等によって、ガイドレール15側(前方)から水平ボルト6a,6bを時計回りに回転する(ステップS105)。
【0057】
図11(b)に示すように、水平ボルト6aが、Y軸に沿って時計回りに回されると、回転に連動して、下向き楔型ブロック7が、前方向(
図11(b)の例ではY軸の正方向)に送られる。すると、下向き楔型ブロック7に当接した上向き楔型ブロック8が、下方向(
図11(b)の例ではZ軸の負方向)に押し下げられる。
【0058】
そして、上向き楔型ブロック8と螺合する鉛直ボルト10aが上向き楔型ブロック8に連動して押し下げられることによって、上部ブラケット9と下部ブラケット4とが上下方向から押さえつけられ、レールブラケット30が締結される。このようにしてガイドレール15は、調整された位置で固定される。
【0059】
なお、例えば、センサを用いた所定の方法により、再度、ガイドレール15の形状を測定してもよい(ステップS106)。
【0060】
作業用ロボットは、ガイドレール15の形状が、目標以内に収まっているか否かを判定し(ステップS107)、ガイドレール15の形状が、目標以内に収まっていないと判定された場合(ステップS107:No)、処理は、ステップS108へ進む。
【0061】
固定されたガイドレール15の位置を変更する場合、即ち、一度締結されたレールブラケット30を緩める場合、
図11(a)に示すように、ロボットアームの先端に付いた工具等で、前方からジャッキボルト5を後方向に押し出す(ステップS108)。
すると、下向き楔型ブロック7が、後方向(
図11(a)の例ではY軸の負方向)に押し出され、嵌合していた上向き楔型ブロック8と、下向き楔型ブロック7とが外れる。
【0062】
これにより、水平ボルト6a,6bを回転させるだけで容易に下向き楔型ブロック7を前後に移動させることができる。
【0063】
前方から水平ボルト6を反時計周りに回転する(ステップS109)と、当該回転に連動して、下向き楔型ブロック7が、後方向(
図11(a)の例ではY軸の負方向)に送られる。上向き楔型ブロック8と下向き楔型ブロック7との間に隙間が生じる。
【0064】
これにより、上向き楔型ブロック8と螺合する鉛直ボルト10の押し付けが緩むため、上部ブラケット9と下部ブラケット4とを自由に動かすことができる。
【0065】
そして、処理はステップS104に戻り、ガイドレール15の位置の調整が再開される。
【0066】
一方で、ステップS107において、ガイドレール15の形状が目標以内に収まっていると判定された場合(ステップS107:Yes)、処理は終了する。
【0067】
以上のように、本実施形態では、レールブラケット30は、エレベータELの昇降路Rを移動する乗りかごNを案内するガイドレール15を、昇降路R内で固定するものである。レールブラケット30は、保持部100と、固定機構150と、を備える。保持部100は、ガイドレール15を保持する上部ブラケット9(第1のブラケット)と、昇降路Rの壁面1に固定される下部ブラケット4(第2のブラケット)と、を有する。固定機構150は、保持部100に対して頭部6cがガイドレール15側に露出した水平ボルト6a,6b(第1のボルト)を有し、水平ボルト6a,6bが回転されることにより上部ブラケット9と下部ブラケット4とを互いに固定する。
【0068】
このような構成によれば、水平ボルト6a,6bの頭部6cが保持部100に対してガイドレール15側に露出している。よって、レールブラケット30の手前側から水平ボルト6a,6bに対する作業(締め付け作業等)を行うことができるので、レールブラケット30に対する作業性が向上し、エレベータELの据付作業が容易になる。本実施形態の効果について、下記に詳しく説明する。
【0069】
まず、従来のガイドレールの設置方法について比較のために説明する。
【0070】
図20は、従来のレールブラケットの設置例を示す斜視図である。
図21は、従来のレールブラケットの設置例を示す上面図である。
図22は、従来のレールブラケットの設置例を示す正面図、及び側面図である。
図23は、従来のレールブラケットの設置例を示す側面図である。
【0071】
図20~23に示すように、従来のブラケットの設置の際には、下部ブラケット4と上部ブラケット9とを、上方向からボルト50で締結する手法や、ここでは図示しないが上部ブラケットと下部ブラケットとを溶接する手法や、下部ブラケット4と上部ブラケット9とを上方からドリルねじで締結する手法が採用されてきた。
【0072】
そのため、ロボットアーム等でレールブラケット固定を行う場合、インパクトドライバー等の作業具が付いたアーム先端を、ガイドレールの裏側に回して作業することが求められる。そのため、作業の安定性を確保しながらロボットアームの関節を増やす必要が生じ、機構やシステムが複雑になるという課題があった。また、下方向からもナット等を螺合させる必要があるため、ロボットアームをさらに1本要するという課題もあった。
【0073】
また、人の手でブラケットを固定する場合にも、上方からの固定は手が届きづらく、無理のある体勢での作業になっていた。
【0074】
このように従来技術では、ガイドレール据付作業が困難なために、据付時間が長時間に亘る上、ガイドレール据付作業の全自動化を図るためには、ロボットアーム等の機械装置を複雑な機構とする必要があった。
【0075】
これに対して本実施形態では、上向き楔型ブロック8は、壁面1に向かって下る傾斜面81を有し、上面83と下面84を貫通する貫通孔711a,711bが形成され、下向き楔型ブロック7は、ガイドレール15側の端面に開口してネジ山が設けられた孔部511a,511bが形成され、上向き楔型ブロック8の傾斜面81と当接し、水平ボルト6a,6bは、ガイドレール15側で下部ブラケット4に支持され、孔部511a,511bに螺合し、水平ボルト6a,6bを時計回りに回転させて水平ボルト6a,6bを孔部511a,511bに進入させた場合に、下向き楔型ブロック7が傾斜面81に当接しながらガイドレール15側に移動し、上向き楔型ブロック8は、下向き楔型ブロック7の移動に連動して鉛直方向に移動し、鉛直ボルト10a,10bが上向き楔型ブロック8を下部ブラケット4に固定することで、レールブラケット30が固定される。
【0076】
ジャッキボルト5a,5bを回転させてジャッキボルト5a,5bを壁面1側に進入させた場合に、下向き楔型ブロック7が傾斜面81に当接して壁面1側に移動する。この結果、鉛直ボルト10a,10bの下部ブラケット4への固定が解除され、レールブラケット30が外される。
【0077】
このため、本実施形態によれば、従来技術と異なり、レールブラケット30の前方からジャッキボルト5及び水平ボルト6を適宜操作するだけで、調整された所定の位置にガイドレール15を設置し、昇降路壁に固定することができる。
【0078】
即ち、例えば、本発明によれば、ガイドレール15の裏側にアクセスしてボルト締め等の作業をする必要がなくなるため、ロボットアーム等の機械装置の構造を複雑にする必要なく、既存の装置で容易にガイドレール15の固定作業を行うことができる。
【0079】
これによりガイドレール15の固定作業を自動化することができるため、ガイドレール15の形状測定の工程と、固定工程とを組み合わせて、一連の工程を一貫して自動化することができるようになる。このようにガイドレール据付作業の全自動化を実現することで、据付時間短縮を図ることができる。
【0080】
また、人の手で作業する場合でも、ガイドレール15の裏側に手を回してボルト締め等の作業をする必要がなくなるため、無理のない姿勢で安全に作業を行うことができる。
【0081】
[第2の実施形態]
次に、
図13から
図16を参照して、第2実施形態に係るレールブラケットの設置例、及びレールブラケットの固定方法について説明する。
【0082】
図13は、第2実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す斜視図である。
図14は、第2実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す上面図である。
図15は、第2実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す正面図である。
図16は、第2実施形態に係るレールブラケットの設置例を示す側面図である。
【0083】
なお、第2の実施形態に係るレールブラケット130は、レールブラケット130の下部ブラケット4が固定される対象が昇降路壁ではなく、建屋梁22であるという点で第1実施形態のものと異なっているが、他の部分は第1の実施形態と共通している。このため、主として異なる部分について説明し、共通する部分については共通の符号を付して説明を省略する。
【0084】
第2の実施形態に係るレールブラケット130は、エレベータELの乗りかごNの昇降を誘導するガイドレール15を、建屋梁22に固定する。
【0085】
まず、
図13に示すように、建屋梁22には、板状の部材で構成されるフィッシュプレート23が固定される。そして、レールブラケット30の上部ブラケット9と下部ブラケット4とで、フィッシュプレート23の先端部分を挟み込んで締め付けることで、レールブラケット30を建屋梁22に固定する。すなわち、上部ブラケット9と下部ブラケット4とが、フィッシュプレート23を上下方向から挟持する。
【0086】
ガイドレール15の形状の測定結果に基づいて、ガイドレール15の位置の調整がなされた後、水平ボルト6aをY軸に沿って時計回りに回転する。すると、鉛直ボルト10に荷重が伝わり、フィッシュプレート23に、レールブラケット30が締結される。このようにしてガイドレール15は、調整された位置で固定される。
【0087】
このように、第2の実施形態のレールブラケット130によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する他、昇降路の壁面1だけでなく、建屋梁22を一例とする梁に対しても容易に固定することができる。このため、本実施形態によれば、前方からの操作だけで容易に建屋梁22とガイドレール15とを固定することができるので、様々な仕様の建屋にエレベータELを据付けることができるようになる。
【0088】
[第3の実施形態]
次に、
図17から
図19を参照して、第3の実施形態に係るレールブラケットの設置例、及びレールブラケットの固定方法について説明する。
図17は、第3の実施形態に係るレールブラケットの一例を示す正面図である。
図18は、第3の実施形態に係るレールブラケットの一例を示す分解斜視図である。
図19は、
図17のF-F断面図である。
【0089】
本実施形態は、
図17~
図19に示す固定機構150Aが第1の実施形態の固定機構150と異なる。
【0090】
図18及び
図19に示すように、固定機構150Aは、移動部材230と、変換機構250と、を有する。移動部材230は、下部ブラケット4に向かって移動することにより、上部ブラケット9を下部ブラケット4とによって挟むものである。変換機構250は、水平ボルト6a,6bの回転運動を移動部材230の直動運動に変換するものである。
【0091】
移動部材230は、上部ブラケット9の上方に重ねられている。移動部材230は、鉛直ボルト10aA,10bAと螺合する雌ネジ230aを有する。移動部材230は、締結部材とも称される。
【0092】
変換機構250は、鉛直ボルト10aA,10bAと、第1の歯車221と、第2の歯車222と、カバー210と、を有する。
【0093】
鉛直ボルト10aA,10bAは、移動部材230と螺合している。また、下部ブラケット4には、二つの横孔19a,19bが設けられている。鉛直ボルト10aA,10bAは、横孔19a,19bに挿入されている。鉛直ボルト10aA,10bAは、第2のボルトの一例である。
【0094】
第1の歯車221は、各水平ボルト6a,6b(第1のボルト)の先端部に設けられている(固定されている)。第1の歯車221は、水平ボルト6a,6bと一体に回転する。第2の歯車222は、各鉛直ボルト10aA,10bA(第2のボルト)に設けられている(固定されている)。第2の歯車222は、鉛直ボルト10aA,10bAと一体に回転する。第2の歯車222は、第1の歯車221と噛み合っている。
【0095】
カバー210は、三つの壁211~213を有する。壁211には、水平ボルト6a,6bの軸部6dを回転可能に支持する軸受211aが形成されている。また、壁213には、鉛直ボルト10a,10bの軸部を回転可能に支持する軸受213aが形成されている。第1の歯車221及び第2の歯車222は、カバー210の内部に収納されている。
【0096】
次に、本実施形態のレールブラケット30を用いた場合の工程について説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分は説明を省略する。
【0097】
まず、上部ブラケット9、下部ブラケット4、水平ボルト6a,6b、鉛直ボルト10aA,10bA、第1の歯車221、第2の歯車222は、カバー210、移動部材230が一体となったユニットを壁面1にアンカーボルト2a,2bを用いて固定する。
【0098】
次に、第1の実施形態と同様の調整を行う。
【0099】
次に、ロボットアームの先端に付いた工具、例えばインパクトドライバー等で、水平ボルト6a,6bを前方から回していく。すると、第1の歯車221が回転し、それに接した第2の歯車222が回転する。これにより、第2の歯車222に繋がった鉛直ボルト10aA,10bAが回転し、鉛直ボルト10aA,10bAが通った移動部材230が鉛直方向の下方に送られる(移動する)。これにより、移動部材230が、上部ブラケット9を下部ブラケット4に押し付ける。すなわち、移動部材230と下部ブラケット4とが、上部ブラケット9を挟む(挟持する)。これにより、上部ブラケット9と下部ブラケット4とが互いに固定される(締結される)。
【0100】
一度締結されたレールブラケット30を緩める場合、ロボットアームの先端に付いた工具で、水平ボルト6a,6bを前方から締結時とは逆向きに回していく。すると、第1の歯車221、第2の歯車222を介して鉛直ボルト10aA,10bAが回転する。これにより、移動部材230が鉛直方向の上方に送られることで、上部ブラケット9を押さえつけていた力が抜け、上部ブラケット9を水平方向に動かせるようになる。
【0101】
以上のように、本実施形態では、固定機構150は、移動部材230と、変換機構250と、を有する。移動部材230は、下部ブラケット4に向かって移動することにより、上部ブラケット9を下部ブラケット4とによって挟む。変換機構250は、水平ボルト6a,6bの回転運動を移動部材230の直動運動に変換する。
【0102】
このような構成によれば、水平ボルト6a,6bの回転運動を移動部材230の直動運動に変換することにより、上部ブラケット9と下部ブラケット4とを互いに固定することができる。
【0103】
また、変換機構250は、移動部材230と螺合した鉛直ボルト10aA,10bA(第2のボルト)と、水平ボルト6a,6bに設けられ、水平ボルト6a,6bと一体に回転する第1の歯車221と、鉛直ボルト10aA,10bAに設けられ、第1の歯車221と噛み合い、鉛直ボルト10aA,10bAと一体に回転する第2の歯車222と、を有する。
【0104】
このような構成によれば、比較的簡素な構成で変換機構250を構成することができる。
【0105】
なお、上記実施形態では、ガイドレール15とレールブラケット30、130とを別物として説明したが、ガイドレール15の構成の一部にレールブラケット30、130を備える構成としてもよい。また、各実施形態は、組み合わせてよい。
【0106】
また、上記実施形態では、鉛直方向のうちの一方向が鉛直方向の下方向の例が示されたがこれに限定されない。すなわち、鉛直方向のうちの一方向は、鉛直方向の上方向であってもよい。この場合、例えば、下向き楔型ブロック7すなわち第1の部材と、上向き楔型ブロック8すなわち第2の部材とを、上下を逆にして設ければよい。この場合、第1の部材の傾斜面及び第2の部材の傾斜面は、壁面に向かう方向に上るように形成される。
【0107】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0108】
1…壁面、2a,2b…アンカーボルト、3a,3b…アンカーボルト用ナット、4…下部ブラケット(第2のブラケット)、5a,5b…ジャッキボルト(第3のボルト)、6a,6b…水平ボルト(第1のボルト)、7…下向き楔型ブロック(第1の部材)、8…上向き楔型ブロック(第2の部材)、9…上部ブラケット(第1のブラケット)、10…鉛直ボルト(第2のボルト)、12a,12b…レールクリップ(クリップ)、13a,13b…レールクリップ用ボルト、14a,14b…レールクリップ用ナット、15…ガイドレール、16a,16b…下部ブラケットアンカーボルト用横孔、17a,17b…下部ブラケットジャッキボルト用横孔、18a,18b…下部ブラケット水平ボルト用孔、19…下部ブラケット鉛直ボルト用横孔、20a,20b…上部ブラケット鉛直ボルト用横孔、21a,21b…上部ブラケットレールクリップ用孔、22…建屋梁、23…フィッシュプレート、75…切り欠き部、76…傾斜面、81…傾斜面、83…上面、84…下面、100…保持部、150…固定機構、201…突出部(制限部)、201a,201b…開口部、201c~201e…爪部、221…第1の歯車、222…第2の歯車、230…移動部材、250…変換機構、EL…エレベータ、N…乗りかご。