(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】モジュール式時計
(51)【国際特許分類】
G04B 27/08 20060101AFI20240925BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20240925BHJP
G04B 19/02 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G04B27/08
G04B45/00 J
G04B19/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023060668
(22)【出願日】2023-04-04
【審査請求日】2023-04-04
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ジャック・ボルン
(72)【発明者】
【氏名】ソフィ・ナーポリ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】パブロ・ロドリゲス
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-66093(JP,U)
【文献】特開昭63-229387(JP,A)
【文献】特表2018-533743(JP,A)
【文献】米国特許第5844863(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部(10)と、
背面(11)と、
ダイアル、時間表示手段、風防および第1の磁気歯車手段を備える表示モジュール(12)と、
前記表示モジュール(12)の前記
第1の磁気歯車手段と協働するように配置された第2の磁気歯車手段を有する時計ムーブメントを備える時計モジュール(13)と、
一対のホーン(20、
21)において前記中央部(10)と一体式の第1のブレスレット・ストランドおよび第2のブレスレット・ストランドとを少なくとも備えるモジュール式時計(1)であって、
前記表示モジュール(12)および前記時計モジュール(13)は、他方の頂部に装着され、前記表示モジュール(12)は、それが前記中央部(10)に対して固定されるように装着されており、前記時計モジュール(13)は、時間を設定するために、それが前記背面(11)と前記表示モジュール(12)との間で回転することができるように装着されていることを特徴とする、モジュール式時計(1)。
【請求項2】
前記
第1の磁気歯車手段は、少なくとも1つの磁石を有する第1の分車を備え、前記第1の分車は、前記第2の磁気歯車手段の第2の分車と協働するように配置され、前記第2の分車もまた少なくとも1つの磁石を有することを特徴とする、請求項1に記載のモジュール式時計(1)。
【請求項3】
前記表示モジュール(12)および前記時計モジュール(13)は共に耐水性である、請求項1に記載のモジュール式時計(1)。
【請求項4】
前記表示モジュール(12)および前記時計モジュール(13)は共に耐水性である、請求項2に記載のモジュール式時計(1)。
【請求項5】
前記時計モジュールは、特定された角度位置に前記時計モジュールを維持するために、前記表示モジュール(12)または前記中央部(10)と一体式の弾性手段と協働する環状の角度位置決め歯部を備える、請求項1に記載のモジュール式時計(1)。
【請求項6】
前記時間表示手段は、時針(3)および分針(4)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール式時計(1)。
【請求項7】
前記時計モジュール(13)の回転をロックするための
回転ロック手段を備え、前記
回転ロック手段は、中央部のホーンの各対(20、
21)の間の前記ブレスレット・ストランドの一部によって形成されており、前記時計モジュールと協働していることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール式時計(1)。
【請求項8】
前記回転ロック手段は、前記時計モジュール(13)の外側周辺部に形成された溝(40)を備えることを特徴とする、請求項7に記載のモジュール式時計(1)。
【請求項9】
前記時計モジュール(13)の前記外側周辺部に形成された前記溝(40)は、Nx60個のノッチを備え、Nは厳密にゼロより大きいことを特徴とする、請求項8に記載のモジュール式時計(1)。
【請求項10】
前記表示モジュールに面する前記時計モジュールの面は、非強磁性プレートによって閉鎖される、請求項1に記載のモジュール式時計(1)。
【請求項11】
前記時計モジュール(13)は、機械ムーブメントまたはクオーツムーブメントを備える、請求項1に記載のモジュール式時計(1)。
【請求項12】
前記時計モジュールの回転の中心、前記第1の分車の回転の中心および前記第2の分車の回転の中心は同軸であることを特徴とする、請求項
2に記載のモジュール式時計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール式機械部品に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、複数の互換性のあるモジュールによって形成されたモジュール式機械時計に関する。
【背景技術】
【0003】
時計の外観は一般的に、中央部の形状および/または色、竜頭、ならびに場合によってはガラス、ダイアルおよび針によって決まる。ブレスレットもまた、時計の審美的な外観の一因となり得る。
【0004】
今日、例えば自分の服装に合うように、または他の時計のモデルと差をつけるために、自分の時計の外観を変えることが可能であることが着用者にとって特に関心のあることである。
【0005】
よって、最新の流行にふさわしくなるように、着用者によってその外観を容易に変更することができる、および/またはカスタマイズすることができる時計を提案することに関心がある。
【0006】
同様に、外側の部品は、時計が日々着用される際に擦り傷または他の摩耗を負うことが多いのに対して、ムーブメントは完璧な状態のままである。よって、ケースがひどく損傷した場合、またはひどく摩耗した場合、着用者は、それを交換するために専門店に行かなければならない。
【0007】
モジュール式時計は、例えば、欧州特許文献第0862098号から知られており、そこでは、時計の外観は、様々な度合いの容易さで変更することができる。そのような時計は、ダイアル、針および保護ガラスが装着された表示モジュールと、ムーブメントを収容する時計モジュールとを備え、2つのモジュールは、互いから取り外し可能であるように設計されている。したがって、そのような時計はよって、時計モジュールを保護しつつ、その表示モジュールの外観を変更することを可能にする。
【0008】
この解決法は、ある程度満足のいくものであるが、2つのモジュール間の防水性に関して問題が生じる。より具体的には、そのような時計の耐水性は、時計モジュールの外側に延びる複数の心棒のために、決して信頼できるものではない。同様に、そのような解決法は、表示ケースが別のものと交換される際、これは表示針を切り離すことを示唆するために問題を提起し、これは、時計モジュールが再度組み立てる際に明らかになる針の脱同期化につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主な目的は、その外観が着用者によって容易に変更され、信頼できる耐水性を備え、モジュールが交換された後、時計を設定する必要がない、モジュール式時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は、
- 中央部と、
- 背面と、
- ダイアル、時間表示手段、風防および第1の磁気歯車手段を備える表示モジュールと、
- 表示モジュールの磁気歯車手段と協働するように配置された第2の磁気歯車手段を有する時計ムーブメントを備える時計モジュールと、
- 一対のホーンにおいて中央部と一体式の第1のブレスレット・ストランドおよび第2のブレスレット・ストランドとを少なくとも備えるモジュール式時計に関する。
【0012】
本発明によると、表示モジュールおよび時計モジュールは、他方の頂部に装着されており、前記表示モジュールは、それが中央部に対して固定されるように装着されており、時計モジュールは、時間を設定するために、それが背面と表示モジュールとの間で回転することができるように装着されている。
【0013】
本発明の他の有利な代替の実施形態によると、
- 磁気歯車手段は、少なくとも1つの磁石を有する第1の分車を備え、前記第1の分車は、第2の磁気歯車手段の第2の分車と協働するように配置され、前記第2の分車もまた少なくとも1つの磁石を有し、
- 表示モジュールおよび時計モジュールは共に耐水性であり、
- 時計モジュールは、特定された角度位置に時計モジュールを維持するために、表示モジュールまたは中央部と一体式の弾性手段と協働する角度位置決め歯部を備え、
- 時間表示手段は、時針および分針を備え、
- モジュール式時計は、時計モジュールの回転をロックするための手段を備え、前記ロック手段は、時計モジュールと協働する中央部のホーンの各対の間のブレスレット・ストランドの一部によって形成されており、
- 回転ロック手段は、時計モジュールの外側周辺部に形成された溝を備え、
- 時計モジュールの外側周辺部に形成された溝は、Nx60個のノッチを備え、Nは厳密にゼロより大きく、
- 表示モジュールに面する時計モジュールの頂部面は、非強磁性プレートによって閉鎖され、
- 時計モジュールは、機械ムーブメントまたはクオーツムーブメントを備え、
- 時計モジュールの回転の中心、第1の分車の回転の中心および第2の分車の回転の中心は同軸である。
【0014】
発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して非制限的な例として与えられる以下の発明を実施するための形態を読んだとき、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるモジュール式時計の分解組立斜視図である。
【
図2】本発明によるモジュール式時計の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明によるモジュール式時計1を示す。時計は、中央部10と、背面11と、ダイアル2、時間表示手段、風防5を備える表示モジュール12と、時計ムーブメントを備える時計モジュール13とを備える。時計1は、2対のホーン20、21において中央部10に固定された2つのブレスレット・ストランドXおよびYをさらに備え、ストランドは、バーを利用して固定されている。時計1は、回転式ベゼルまたは非回転式ベゼル14をさらに備える場合がある。
【0017】
表示手段は従来より、時針3と、分針4とを備える。表示手段は、第2の針をさらに備える場合もあるが、これは、時間を設定する動作をあまり実用向きにしない。
【0018】
時間モジュール13は、機械ムーブメントまたはクオーツムーブメントを受け入れるように構成され、表示モジュール12の時針3および分針4の回転軸Aを中心とした回転を確実にすることを可能にするように適合された第1の歯車手段を備える。表示モジュールは、ダイアル2、針3、4、風防5、および時計モジュール13の第1の歯車手段と協働する第2の歯車手段を備える。
【0019】
第1の歯車手段および第2の歯車手段は、表示モジュールと時計モジュールとに間に磁気伝達を形成する磁気車の形態である。
【0020】
このような磁気歯車手段は、そのようなモジュール式時計にとりわけ十分に適合され、針を動かすために何らかの心棒を結合することについて、針の脱同期化について、または耐水性問題について憂慮することなく、2つのモジュール12、13間の容易な組み立てまたは分解を可能にする。
【0021】
より具体的には、磁気伝達は、それが表示針を動かすためにそれらの間で使用されるべき伝達心棒(または複数の同軸の支え)を必要としないため、表示モジュール12の構造および時計モジュール13の構造を耐水性にすることを可能にする。
【0022】
従来より、時針3および分針4は各々、ダイアル2に平行に延在するプレート30を備え、その端部は、ダイアル上で現在の時間および分を示すように配置される。針3、4は、パイプ31、41と呼ばれる円筒形部分をさらに備え、これは、回転軸Aと一致する対称の軸を有し、各パイプは、それが時車122および分車120とそれぞれ一体式になるように設けられている。
【0023】
従来より、分針のパイプ41は、時針3のパイプ31と同じ方向に延在し、分針4のパイプ41は、時針3のパイプ31に嵌合している。このようにして、各針は、それが同じ回転軸Aを中心として回転するように動かされるように適合される。
【0024】
本発明によると、第1の歯車手段および第2の歯車手段は、磁気車の形態であり、車の各々は、その周辺部で少なくとも1つの磁石121、131を収容している。有利には、磁気車は、少なくとも1つの磁石121を有する第1の分車120を備え、第1の分車120は、第2の磁気歯車手段の第2の分車130と協働するように配置されており、第2の分車130もまた少なくとも1つの磁石131を有する。
【0025】
時間モジュールは、例えばサファイアプレートなどの非強磁性プレートによって表示モジュールに面する側で、または頂部面で閉鎖される。時計モジュールの底部面は、内径を見るために従来の金属背面、すなわちサファイア風防によって閉鎖される場合がある、またはさらにはモジュールと一体式に作製される場合もある。
【0026】
図1および
図2に見ることができるように、時計モジュール13は、その底部面に、背面11と協働するように配置された2つの連続する肩部134、135を有する。そのような構成は、簡素で信頼できる組立体を可能にする一方で、時計モジュール13が背面11に対して回転することを可能にする。
【0027】
表示モジュール12は、時計モジュール13を覆うように配置され、それが中央部10に対して固定されるように装着される。表示モジュール12は、それを中央部10の下から、または上から配置することによって中央部10に固定することができ、例えばベゼル14によって保持することができる。
【0028】
表示モジュール12が中央部10の下から配置される場合では、表示モジュール12は、表示モジュール12と一体式であり、中央部10に形成されたノッチ124と協働するように配置された隆起部123などの位置決め手段を介して中央部10に対して割り出しされる。表示モジュール12はよって、背面11がひとたび中央部10に固定されると、中央部10と時計モジュール13との間に保持される。
【0029】
表示モジュール12が中央部10の上から配置される場合では、表示モジュール12はここでもまた、表示モジュール12と一体式であり、中央部10に形成されたノッチ124と協働するように配置された隆起部123などの位置決め手段を介して中央部10に対して割り出しされる。表示モジュール12を中央部10上で所定の場所に保持するために、ベゼル14が表示モジュール12を覆うように中央部10にねじ込まれ、時計モジュール13は、ベゼル14がひとたび中央部10に固定されると、中央部10と背面11との間に保持される。
【0030】
大幅な修正を必要とせずに、表示モジュールを装着するための他の方法を使用することができることは言うまでもなく、例えば、表示モジュール12をその中にねじ込むために、中央部10の内壁にねじ山を配置することができる。
【0031】
本発明によるモジュール式時計1は、時計モジュール13の回転をロックするための手段を備える。有利には、ロック手段は、中央部のホーンの対20、30の間のブレスレット・ストランドの一部によって形成される。この部分の各々は、時計モジュールと協働するように配置され、時計モジュール13は、その外側周辺部に形成され、ロック手段と協働するように配置された溝40を備える。
【0032】
有利には、溝は、分針を正確に位置決めすることができるように、Nx60個のノッチを備えた多数の分円に対応しており、Nは、厳密にゼロより大きい。
【0033】
よって、静止位置またはロック位置では、ホーンの各対20、30の間のブレスレット・ストランドの一部は、外側周辺部にもたれかかり、その回転を阻止する。
【0034】
第1の実施形態によると、ブレスレット・ストランドは、摩擦力を最大にし、時計モジュールの確実なロックを提供するために弾性材料から作製される。
【0035】
第2の実施形態によると、少なくとも1つのブレスレット・ストランドは、時計モジュールと協働する剛性キャッチを備え、キャッチは、2つの溝の中のノッチの間に収容され、時計モジュールを完全にロックする。
【0036】
時計モジュール13が回転し、いわゆる自由に回転可能な位置に移動するのを可能にするためには、ホーンの対20、30の近傍で少なくとも1つのブレスレット・ストランドを単純につまんで、ストランドをバーの周りで枢動させ、それを中央部に取り付ける、またはストランドを時計の下で枢動させ、キャッチをノッチから解放させ、これにより回転することができるように時計モジュールを自由にする。
【0037】
そのようなロック手段はよって、モジュール式時計に対して、および時計モジュールの意図しない回転を阻止し、時間を変更させるのにとりわけ十分に適合される。
【0038】
別の実施形態によると、時計モジュールは、その頂部面(すなわち表示モジュールと接触している面)の周辺部に、環状の角度位置決め歯部(図面には示されない)を備え、歯部は、時計モジュールを特定された角度位置に維持するために弾性手段と協働している。
【0039】
本発明によると、時計モジュール13は、時間を設定するために、それが背面と表示モジュール12との間で回転することができるように装着される。時間を設定するには、時計モジュール全体を単に回転させるだけでよい。
【0040】
時計モジュールの回転の中心は、磁石を担持する第1の分車および第2の分車の中心と同じであるため、モジュールの回転は、表示モジュールの分針の回転をもたらすことになる。本発明によると、時計モジュールの完全な一回転は、分針の完全な一回転と等しい。必要ならば、異なる歯車比が考慮される場合があることは言うまでもない。
【0041】
そのような構造は、時計ムーブメントの機構を簡素化し、耐水性の点で高いリスクの領域を最小限にするという利点を有する。これは、そのような時計は、竜頭またはOリングの付いた押し込み部品を持たないためである。よって、1つの接合部しか存在せず、すなわち、時計モジュールを閉鎖する風防の接合部または背面の接合部のみである。
【0042】
より具体的には、時間を設定するのに通常使用される構成要素の全てがもはや必須ではなく、最低限のものだけが残っており、すなわち、パイプから脱進機への連鎖だけが残る。
【0043】
本発明のこれらの異なる態様のおかげで、本発明は、ムーブメントと針との間の伝達について憂慮することも、何らかの耐水性問題について憂慮することもなく、着用者によって容易にカスタマイズすることができるモジュール式時計を提供する。
【0044】
本発明は、示される例に限定されず、当業者に明らかであり得る種々の代替形態および修正形態をそれに対して作成することができ、それでもなお特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内に留まっていることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 モジュール式時計
2 ダイアル
3 時針
4 分針
5 風防
10 中央部
11 背面
12 表示モジュール
13 時計モジュール
14 ベゼル
20、21 ホーン
30 プレート
31、41 パイプ
120 第1の分車
121、131 磁石
122 時車
123 隆起部
124 ノッチ
130 第2の分車
134、135 肩部
A 回転軸
X、Y ブレスレット・ストランド