(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20240925BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240925BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H02K11/33
H02M7/48 Z
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2023079050
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2022541212の分割
【原出願日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2021019895
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021140808
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021140809
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 匡一
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/221726(WO,A1)
【文献】特開2018-207639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
H02M 7/48
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータの回転を制御する電子制御装置と、を備えた電動駆動装置であって、
前記モータは、
負荷側から反負荷側へ軸方向に延びるシャフトと、
前記シャフトと連動するモータロータと、
モータコイルと、前記モータコイルに給電するためのモータコイル配線を有し、前記モータロータを回転させるモータステータと、
前記モータロータ、及び前記モータステータを内側に収容する第1ハウジングと、
前記シャフトの前記反負荷側に設けられた磁石と、を含み、
前記電子制御装置は、
前記モータコイルを励磁する電流を出力するトランジスタと、前記シャフトの前記軸方向の延長線上に配置された回転角度センサとが実装され、前記シャフトの前記反負荷側に配置された第1回路基板と、
前記トランジスタに供給する電流を制御する制御回路を有する第2回路基板と、
前記第1回路基板の前記負荷側に設けられ、かつ前記第2回路基板の前反負荷側に設けられ、前記第2回路基板を収容する第2ハウジングと、
前記第2ハウジングを覆う金属製の蓋体と、
前記蓋体を貫通する電源入力端子を有するコネクタと、
前記蓋体に固定され、一端が前記電源入力端子に接続され、前記第1回路基板及び前記第2回路基板に電力を供給するリードフレーム配線と、前記第1回路基板へ接続する第1電源端子と、前記第2回路基板へ接続する第2電源端子とが樹脂でモールドされた電源配線モジュールと、を含み、
前記第1電源端子は、前記第2電源端子よりも長く、前記第2ハウジングを貫通し、前記第2ハウジングの貫通部分は、樹脂でモールドされて
おり、前記電源配線モジュールにおいて、前記第1電源端子及び前記第2電源端子の基部の樹脂が、前記基部の周囲よりも肉厚である、
電動駆動装置。
【請求項2】
前記電源配線モジュール内で、前記第1回路基板へ電力を供給する前記第1電源端子と、前記第2回路基板へ電力を供給する前記第2電源端子とが分岐されている、請求項
1に記載の電動駆動装置。
【請求項3】
前記モータコイルは、第1コイル系統と、第2コイル系統を含み、
前記第1回路基板は、前記第1コイル系統に電流を供給する第1パワー回路と、前記第2コイル系統に電流を供給する第2パワー回路とを含み、
前記電源配線モジュールは、前記リードフレーム配線が第1電源回路と、第2電源回路とを含み、
前記第1電源回路の第1電源端子が、前記第1パワー回路に接続され、
前記第2電源回路の第1電源端子が、前記第2パワー回路に接続される、
請求項
1に記載の電動駆動装置。
【請求項4】
前記第2回路基板は、前記第1コイル系統に電流を供給する第1パワー回路を制御する第1制御回路と、前記第2コイル系統に電流を供給する第2パワー回路を制御する第2制御回路とを含み、
前記第1電源回路の第2電源端子が、前記第1制御回路に接続され、
前記第2電源回路の第2電源端子が、前記第2制御回路に接続される、
請求項
3に記載の電動駆動装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の電動駆動装置を備え、
前記電動駆動装置が補助操舵トルクを生じさせる電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転を制御する電子制御装置を備えた電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータによって補助操舵トルクを発生させる電動パワーステアリング装置は、モータを制御する装置である電子制御装置を備えている。例えば特許文献1には、モータと当該モータを制御するコントロールユニットとを一体にした駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動駆動装置では、モータのモータ配線とパワーモジュールの端子とを接続するターミナルブロック(ターミナルホルダ)を有している。これにより、特別な道具を必要とせず容易にモータとコントロールユニットとの電気的な接続又は切断をすることができる。
【0005】
これに対して、回路基板に、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を実装し、パワーモジュールが占める高さを減らし、小型にしたい要求がある。
【0006】
しかしながら、ターミナルブロックとモータ配線とは、ネジで押圧することで電気的に結合しているので、押圧に伴う応力が、回路基板へかかることがある。回路基板は、電界効果トランジスタの発熱により、熱応力も加わるので、ターミナルブロックからの応力が抑制されることが望ましい。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、軸方向に小型化にしつつ、ターミナルブロックを取り付けても、モータと回路基板との電気的な接続に伴う回路基板への応力が抑制されている、電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、一態様に係る電動駆動装置は、モータと、前記モータの回転を制御する電子制御装置と、を備えた電動駆動装置であって、前記モータは、負荷側から反負荷側へ軸方向に延びるシャフトと、前記シャフトと連動するモータロータと、モータコイルと、前記モータコイルに給電するためのモータコイル配線を有し、前記モータロータを回転させるモータステータと、前記モータロータ、及び前記モータステータを内側に収容する第1ハウジングと、前記シャフトの前記反負荷側に設けられた磁石と、を含み、前記電子制御装置は、前記モータコイルを励磁する電流を出力するトランジスタと、前記シャフトの前記軸方向の延長線上に配置された回転角度センサとが実装され、前記シャフトの前記反負荷側に配置された第1回路基板と、前記第1回路基板の前記反負荷側に設けられた第1のヒートシンクと、前記第1回路基板の前記負荷側に設けられ、前記第1のヒートシンクとの間で前記第1回路基板を挟む第2のヒートシンクと、前記第2のヒートシンクの側面に固定され、前記モータコイル配線と前記第1回路基板とを電気的に接続するターミナルブロックと、を含む。
【0009】
これにより、第1回路基板は、第1ヒートシンクと第2ヒートシンクとで軸方向に挟まれる。このため、モータのシャフトに平行な軸方向の大きさが抑制され、電動駆動装置が小さくなる。ターミナルブロックは、第2ヒートシンクの側面に固定され、支持されている。このため、ターミナルブロックがネジで押圧されても、押圧に伴う応力が、第2ヒートシンクにかかり、第1回路基板へかかる応力が低減する。その結果、第1回路基板の寿命が延び、電子駆動装置の信頼性が向上する。
【0010】
望ましい態様として、前記第1ハウジングには工具挿入孔があり、前記モータは、前記工具挿入孔を塞ぎ、前記第1ハウジングに着脱可能な側面カバーを備える。これにより、モータと電子制御装置との電気的な接続又は切断は、側面カバーの着脱により、容易に可能となる。
【0011】
望ましい態様として、前記第1回路基板は、前記第1のヒートシンク側に前記トランジスタが実装され、前記第2のヒートシンク側に電解コンデンサが実装されている。これにより、第1回路基板の両面が有効活用され、第1回路基板の径方向も小型にできる。
【0012】
望ましい態様として、前記第2のヒートシンクは、前記電解コンデンサを覆う天板を有し、前記電解コンデンサとは重なり合わない位置の前記天板に開けられた前記軸方向の貫通孔には、前記磁石が挿入される。これにより、電解コンデンサの冷却が第2ヒートシンクの天板への熱伝導で促進される。そして、電解コンデンサの軸方向の大きさで生じる第2ヒートシンクの側面をターミナルブロックとの当接面として利用することができる。また、電解コンデンサとは重なり合わない位置も、磁石が挿入されることで、磁石の径方向外側の空間も電解コンデンサの配置領域として利用することができる。その結果、電動駆動装置の軸方向の大きさが小さくなる。
【0013】
望ましい態様として、前記天板は、複数の前記電解コンデンサの高さに応じて、段差がある。これにより、第2ヒートシンクは、各電解コンデンサの大きさに応じた最小限の容積となり、電動駆動装置の軽量化に寄与する。
【0014】
望ましい態様として、前記トランジスタを有するパワー回路を制御する制御回路を有する第2回路基板を有し、前記第2回路基板は、前記第1のヒートシンクの前記反負荷側に配置され、前記第1のヒートシンクに開けられた前記軸方向の貫通孔に挿入された基板間コネクタにより、前記第1回路基板と電気的に接続されている。これにより、第1ヒートシンクの軸方向の両面を放熱面として利用することができる。
【0015】
望ましい態様として、前記トランジスタに供給する電流を制御する制御回路を有する第2回路基板をさらに備え、前記第2回路基板は、前記第1のヒートシンクに設けられた収容空間に収容される。これにより、電動駆動装置の軸方向の大きさが小さくなる。
【0016】
望ましい態様として、前記モータステータは、第1コイルグループに接続される第1モータコイル配線と、第2コイルグループに接続される第2モータコイル配線とを備え、前記第1モータコイル配線と前記第1回路基板とを電気的に接続する一方のターミナルブロックと、前記第2モータコイル配線と前記第1回路基板とを電気的に接続する他方のターミナルブロックとは、前記第2のヒートシンクを挟む位置に配置される。これにより、コイル配線が冗長化されても、第2ヒートシンクの複数の側面を利用することにより、モータの径方向の大きさは抑制される。
【0017】
望ましい態様として、前記第1のヒートシンクと前記第2のヒートシンクとは、固定部材で連結されている。これにより、ターミナルブロックがネジで押圧されても、押圧に伴う応力が、第2ヒートシンクにかかり、ボルトを介して第1ヒートシンクへ伝達される。その結果、第1回路基板へかかる応力がさらに低減する。
【0018】
望ましい態様として、前記第1のヒートシンクを覆う金属製の蓋体と、前記蓋体を貫通する電源入力端子を有するコネクタと、ノイズ除去用のチョークコイル及びコンデンサと、一端が前記電源入力端子に接続され、前記第1回路基板及び前記第2回路基板に電力を供給するリードフレーム配線と、前記第1回路基板へ接続する第1電源端子と、前記第2回路基板へ接続する第2電源端子とが樹脂でモールドされた電源配線モジュールと、前記蓋体との間に、前記電源配線モジュールを挟む第3のヒートシンクと、をさらに備える。これにより、電源配線モジュール内の電源配線があるので、第1回路基板にある電源配線の面積が抑制される。その結果、第1回路基板の面積が抑制され、電子制御装置は、径方向の大きさが小さくなる。また、電源配線モジュールが第3のヒートシンク及び蓋体に挟まれるので、チョークコイルの放熱性を高めることができる。その結果、第1のヒートシンク内の温度上昇が抑制される。
【0019】
望ましい態様として、前前記電源配線モジュールは、複数の第1位置決め凸部が前記蓋体側に突出し、前記第1位置決め凸部が前記蓋体の位置決め穴に挿入されている。これにより、蓋体に電源配線モジュールを組み付けしやすくなり、誤って電源配線モジュールがコネクタに接触しにくくなる。
【0020】
望ましい態様として、前記第3のヒートシンクは、第1凹部を有し、前記蓋体は、第2凹部を有し、前記チョークコイルの第1面は、前記電源配線モジュールの第1面から突出し、前記第1凹部に挿入され、前記チョークコイルの第2面は、前記電源配線モジュールの第1面とは反対側の前記電源配線モジュールの第2面から突出し、前記第2凹部に挿入されている。これにより、チョークコイルの両面の放熱性が高くなる。
【0021】
望ましい態様として、前記第1電源端子は、前記第2電源端子よりも長い。これにより、電源配線モジュールから軸方向に位置が異なる第1回路基板及び第2回路基板の両方に電力が供給される。
【0022】
望ましい態様として、前記電源配線モジュールにおいて、前記第1電源端子及び前記第2電源端子の基部の樹脂が、前記基部の周囲よりも肉厚である。これにより、第1電源端子及び第2電源端子が軸方向に対して、傾きにくくなる。
【0023】
望ましい態様として、前記モータコイルは、第1コイル系統と、第2コイル系統を含み、前記第1回路基板は、前記第1コイル系統に電流を供給する第1パワー回路と、前記第2コイル系統に電流を供給する第2パワー回路とを含み、前記電源配線モジュールは、前記リードフレーム配線が第1電源回路と、第2電源回路とを含み、前記第1電源回路の第1電源端子が、前記第1パワー回路に接続され、前記第2電源回路の第1電源端子が、前記第2パワー回路に接続される。これにより、電源配線モジュールは、2系統の電力を独立して受け入れている。その結果、仮に一方の電力系統が機能しなくても、他方の電力系統が機能でき、電動駆動装置の機能継続が高まる。
【0024】
望ましい態様として、前記リードフレーム配線の電力入力部に隣接する空間には、前記樹脂に電力入力用の貫通孔が開けられており、前記蓋体を貫通した前記コネクタの前記電源入力端子が前記電力入力用の貫通孔に挿入され、前記電力入力部と前記電源入力端子とが電気的に接続されている。これにより、絶縁性を確保し、かつ軸方向の厚みを抑制しつつ、コネクタと電源配線モジュールとが電気的に接続できる。
【0025】
望ましい態様として、前記第3のヒートシンクは、第1ベース面と、前記第1ベース面とは反対側の第2ベース面とを有し、前記第2回路基板は、集積回路を有し、前記集積回路は、前記第1ベース面と対向し、前記電源配線モジュールの前記ノイズ除去用のチョークコイル及び前記コンデンサは、前記第2ベース面と対向する。これにより、集積回路の発熱は、ヒートシンクへ伝熱され、集積回路の温度上昇が抑制される。また、ノイズ除去用のチョークコイル及びコンデンサの発熱は、ヒートシンクへ伝熱される。
【0026】
望ましい態様として、前記第3のヒートシンクは、前記第1ベース面より前記第2回路基板側に突出する放熱面を有し、前記放熱面は、前記集積回路に前記軸方向で重なる位置にある。これにより、制御回路を構成する集積回路の発熱が効率よくヒートシンクに伝達される。
【0027】
望ましい態様として、電動パワーステアリング装置は、上述した電動駆動装置を備え、前記電動駆動装置が補助操舵トルクを生じさせる。これにより、モータのシャフトに平行な軸方向の大きさが抑制され、電動パワーステアリング装置の配置の自由度が向上する。電動駆動装置の信頼性が向上するので、電動パワーステアリング装置の信頼性も向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、軸方向に小型化にしつつ、ターミナルブロックを取り付けても、モータと第1回路基板との電気的な接続に伴う第1回路基板への応力が抑制されている、電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置を搭載した車両を模式的に示した斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るECUの配置例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るモータの断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るモータの配線を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るモータとECUとの関係を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る電動駆動装置の構成例を示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るECUの構成例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るECUの構成例を示す分解斜視図である。
【
図10A】
図10Aは、実施形態に係るターミナルブロックをパワー基板に取り付ける構成例を示す分解斜視図である。
【
図10B】
図10Bは、実施形態に係るターミナルブロックにモータコイル配線を取り付ける構成例を示す分解斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るターミナルブロックをパワー基板に取り付ける構成例を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る制御基板を配線モジュールに取り付ける構成例を示す分解斜視図である。
【
図13B】
図13Bは、実施形態に係るヒートシンクの放熱面と第2回路基板との位置関係を説明するための説明図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る第2回路基板が取り付けられたカバー及びコネクタの上面を示す平面図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係るカバー及びコネクタの構成例を示す分解斜視図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る第2ハウジングに蓋体を組み付ける治具を示す説明図である。
【
図19A】
図19Aは、実施形態に係る電源配線モジュールの反負荷側を示す平面図である。
【
図19B】
図19Bは、実施形態に係る電源配線モジュールの負荷側を示す平面図である。
【
図20】
図20は、実施形態の電源配線モジュールの等価回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0031】
図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置を搭載した車両を模式的に示した斜視図である。
図2は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図1に示すように、車両101は、電動パワーステアリング装置100を搭載している。
図2を参照して電動パワーステアリング装置100の概要を説明する。
【0032】
電動パワーステアリング装置100は、運転者(操作者)から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール191と、ステアリングシャフト192と、ユニバーサルジョイント196と、インターミディエイトシャフト197と、ユニバーサルジョイント198と、第1ラックアンドピニオン機構199と、タイロッド172と、を備える。また、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングシャフト192の操舵トルクを検出するトルクセンサ194と、モータ30と、モータ30を制御する電子制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)という。)10と、減速装置175と、第2ラックアンドピニオン機構170と、を備える。車速センサ182、電源装置183(例えば車載のバッテリ)、及びイグニッションスイッチ184は、車体に備えられる。車速センサ182は、車両101の走行速度を検出する。車速センサ182は、検出した車速信号SVをCAN(Controller Area Network)通信によりECU10に出力する。ECU10には、イグニッションスイッチ184がオンの状態で電源装置183から電力が供給される。
【0033】
電動駆動装置1は、モータ30と、モータ30のシャフト31の反負荷側に固定したECU10とを備える。また、電動駆動装置1は、ECU10とモータ30とを接続するアダプタを備えてもよい。
【0034】
図2に示すように、ステアリングシャフト192は、入力軸192Aと、出力軸192Bと、トーションバー192Cと、を備える。入力軸192Aは、一方の端部がステアリングホイール191に接続され、他方の端部がトーションバー192Cに接続される。出力軸192Bは、一方の端部がトーションバー192Cに接続され、他方の端部がユニバーサルジョイント196に接続される。なお、トルクセンサ194は、トーションバー192Cのねじれを検出することで、ステアリングシャフト192に加わる操舵トルクを検出する。トルクセンサ194は、検出した操舵トルクに応じた操舵トルク信号TをECU10に出力する。ステアリングシャフト192は、ステアリングホイール191に付与された操舵力により回転する。
【0035】
インターミディエイトシャフト197は、アッパーシャフト197Aと、ロアシャフト197Bとを有し、出力軸192Bのトルクを伝達する。アッパーシャフト197Aは、ユニバーサルジョイント196を介して出力軸192Bに接続される。一方、ロアシャフト197Bは、ユニバーサルジョイント198を介して第1ラックアンドピニオン機構199の第1ピニオンシャフト199Aに接続される。アッパーシャフト197Aとロアシャフト197Bとは、例えば、スプライン結合されている。
【0036】
第1ラックアンドピニオン機構199は、第1ピニオンシャフト199Aと、第1ピニオンギヤ199Bと、ラックシャフト199Cと、第1ラック199Dと、を有する。第1ピニオンシャフト199Aは、一方の端部がユニバーサルジョイント198を介してロアシャフト197Bに接続され、他方の端部が第1ピニオンギヤ199Bに接続される。ラックシャフト199Cに形成された第1ラック199Dは、第1ピニオンギヤ199Bと噛み合う。ステアリングシャフト192の回転運動は、インターミディエイトシャフト197を介して第1ラックアンドピニオン機構199に伝達される。この回転運動は、第1ラックアンドピニオン機構199によりラックシャフト199Cの直線運動に変換される。タイロッド172は、ラックシャフト199Cの両端にそれぞれ接続される。
【0037】
モータ30は、運転者の操舵をアシストするための補助操舵トルクを発生させるモータである。モータ30は、ブラシレスモータでもよいし、ブラシ及びコンミテータを有するブラシモータでもよい。
【0038】
ECU10は、回転角度センサ23aを備える。回転角度センサ23aは、モータ30の回転位相を検出する。ECU10は、回転角度センサ23aからモータ30の回転位相信号を取得し、トルクセンサ194から操舵トルク信号Tを取得し、車速センサ182から車両101の車速信号SVを取得する。ECU10は、回転位相信号と操舵トルク信号Tと車速信号SVとに基づいて、アシスト指令の補助操舵指令値を算出する。ECU10は、算出された補助操舵指令値に基づいて、電流をモータ30に供給する。
【0039】
減速装置175は、モータ30のシャフト31と一体に回転するウォームシャフト175Aと、ウォームシャフト175Aと噛み合うウォームホイール175Bと、を備える。したがって、シャフト31の回転運動は、ウォームシャフト175Aを介してウォームホイール175Bに伝達される。なお、本実施形態において、シャフト31の減速装置175側を負荷側端部といい、シャフト31の減速装置175とは反対側を反負荷側端部という。
【0040】
第2ラックアンドピニオン機構170は、第2ピニオンシャフト171Aと、第2ピニオンギヤ171Bと、第2ラック171Cと、を有する。第2ピニオンシャフト171Aは、一方の端部がウォームホイール175Bと同軸、かつ一体に回転するように固定される。第2ピニオンシャフト171Aは、他方の端部が第2ピニオンギヤ171Bに接続される。ラックシャフト199Cに形成された第2ラック171Cは、第2ピニオンギヤ171Bと噛み合う。モータ30の回転運動は、減速装置175を介して第2ラックアンドピニオン機構170に伝達される。この回転運動は、第2ラックアンドピニオン機構170によりラックシャフト199Cの直線運動に変換される。
【0041】
ステアリングホイール191に入力された運転者の操舵力は、ステアリングシャフト192、及びインターミディエイトシャフト197を介して、第1ラックアンドピニオン機構199に伝達される。第1ラックアンドピニオン機構199は、伝達された操舵力をラックシャフト199Cの軸方向に加わる力としてラックシャフト199Cに伝達する。この際、ECU10は、ステアリングシャフト192に入力された操舵トルク信号Tをトルクセンサ194から取得する。ECU10は、車速信号SVを車速センサ182から取得する。ECU10は、モータ30の回転位相信号を回転角度センサ23aから取得する。そして、ECU10は、制御信号を出力してモータ30の動作を制御する。モータ30が作り出した補助操舵トルクは、減速装置175を介して第2ラックアンドピニオン機構170に伝達される。第2ラックアンドピニオン機構170は、補助操舵トルクをラックシャフト199Cの軸方向に加わる力としてラックシャフト199Cに伝達する。このようにして、運転者のステアリングホイール191の操舵が電動パワーステアリング装置100によりアシストされる。
【0042】
図2に示すように、電動パワーステアリング装置100は、第2ラックアンドピニオン機構170にアシスト力が付与されるディアルピニオン方式であるがこれに限定されない。電動パワーステアリング装置100は、第1ピニオンギヤ199Bのみにアシスト力が付与されるシングルピニオンアシスト方式でもよい。電動パワーステアリング装置100は、プーリ装置と、ボールねじ装置と、を備えたラックパラレル方式であってもよい。これに限定されず、電動パワーステアリング装置100は、例えば、ステアリングシャフト192にアシスト力が付与されるコラムアシスト方式でもよい。
【0043】
図3は、実施形態に係るECUの配置例を示す側面図である。
図3に示すように、電動駆動装置1は、ECU10及びモータ30を備える。モータ30のシャフト31の負荷側端部には、歯車30Gがあり、歯車30Gが減速装置175に挿入されている。
図3に示すコネクタCNTは、
図2に示すラックシャフト199Cの延びる方向と平行に、ワイヤーハーネスが挿抜可能である。本実施形態において、軸方向Axとは、モータ30のシャフト31(
図4参照)の延びる方向と平行な方向をいう。
【0044】
モータ30は、第1ハウジング930を備える。第1ハウジング930は筒状である。第1ハウジング930は、モータハウジングとも呼ばれる。第1ハウジング930には、工具挿入孔36Hがあり、工具挿入孔36Hを塞ぎ、第1ハウジング930に着脱可能な側面カバー36を備える。側面カバー36が第1ハウジング930から取り外されると、工具挿入孔36Hから、後述するターミナルブロック80が露出する。
【0045】
また、ECU10の筐体であるヒートシンクには、防水通気フィルタ10Bが設けられている。防水通気フィルタ10Bは、通気可能であるが、防水性があり、水分の侵入を防ぐことができる。例えば、温度変化により、ECU10の内部と外部との圧力差が大きくなると、防水通気フィルタ10Bを介して空気が移動して圧力差を小さくする。
【0046】
図4は、実施形態に係るモータの断面を模式的に示す断面図である。
図5は、実施形態に係るモータの配線を示す模式図である。本実施形態において、周方向とは、シャフト31を中心とした同心円において、同心円に沿う方向である。径方向とは、軸方向Axに直交する平面において、シャフト31から離れる方向である。モータ30は、
図4に示すように、第1ハウジング930と、モータステータ931と、モータロータ932と、を備える。円筒状であるモータステータ931は、複数の第1モータコイル37と、複数の第2モータコイル38を含む。モータステータ931は、環状のバックヨーク931aと、バックヨーク931aの内周面から突出する複数のティース931bと、を備える。ティース931bは、周方向に12個配置されている。モータロータ932は、ロータヨーク932aと、マグネット932bとを含む。マグネット932bは、ロータヨーク932aの外周面に設けられている。マグネット932bの数は、例えば8つである。モータロータ932の回転は、シャフト31の回転と連動する。
【0047】
図4に示すように、第1モータコイル37は、複数のティース931bのそれぞれに集中巻きされている。第1モータコイル37は、ティース931bの外周にインシュレータを介して集中巻きされる。全ての第1モータコイル37は、第1コイル系統に含まれる。実施形態に係る第1コイル系統は、第1パワー回路25Aに含まれるインバータ回路251(
図6参照)によって、電流が供給され、励磁される。第1コイル系統は、例えば第1モータコイル37を6つ含む。6つの第1モータコイル37は、2つの第1モータコイル37が周方向で互いに隣接するように配置されている。隣接する第1モータコイル37を1つのグループとした第1コイルグループGr1が、周方向に等間隔に3つ配置されている。すなわち、第1コイル系統は、周方向に等間隔に並べられた3つの第1コイルグループGr1を備えている。なお、第1コイルグループGr1は、必ずしも3つでなくてもよく、nを自然数としたときに周方向に等間隔に3n個配置されていればよい。また、nは奇数である方が望ましい。以上説明したように、本実施形態では、コイルグループは、複数あり、3相毎に少なくとも第1コイルグループgr1と、第2コイルグループGr2の2系統に分けられ、かつステータコアが3相交流で励磁される。
【0048】
図4に示すように、第2モータコイル38は、複数のティース931bのそれぞれに集中巻きされている。第2モータコイル38は、ティース931bの外周にインシュレータを介して集中巻きされる。第2モータコイル38が集中巻きされるティース931bは、第1モータコイル37が集中巻きされるティース931bとは異なるティース931bである。全ての第2モータコイル38は、第2コイル系統に含まれる。第2コイル系統は、第2パワー回路25Bに含まれるインバータ回路251(
図6参照)によって電流が供給され、励磁される。第2コイル系統は、例えば第2モータコイル38を6つ含む。6つの第2モータコイル38は、2つの第2モータコイル38が周方向で互いに隣接するように配置されている。隣接する第2モータコイル38を1つのグループとした第2コイルグループGr2が、周方向に等間隔に3つ配置されている。すなわち、第2コイル系統は、周方向に等間隔に並べられた3つの第2コイルグループGr2を備えている。なお、第2コイルグループGr2は、必ずしも3つでなくてもよく、nを自然数としたときに周方向に等間隔に3n個配置されていればよい。また、nは奇数である方が望ましい。
【0049】
図5に示すように、6つの第1モータコイル37は、第1U相電流I1uにより励磁される2つの第1U相モータコイル37Ua及び第1U相モータコイル37Ubと、第1V相電流I1vにより励磁される2つの第1V相モータコイル37Va及び第1V相モータコイル37Vbと、第1W相電流I1wにより励磁される2つの第1W相モータコイル37Wa及び第1W相モータコイル37Wbと、を含む。第1U相モータコイル37Ubは、第1U相モータコイル37Uaに対して直列に接続されている。第1V相モータコイル37Vbは、第1V相モータコイル37Vaに対して直列に接続されている。第1W相モータコイル37Wbは、第1W相モータコイル37Waに対して直列に接続されている。第1モータコイル37のティース931bに対する巻き方向は、全て同じ方向である。また、第1U相モータコイル37Ub、第1V相モータコイル37Vb及び第1W相モータコイル37Wbは、スター結線(Y結線)で接合されている。
【0050】
図5に示すように、6つの第2モータコイル38は、第2U相電流I2uにより励磁される2つの第2U相モータコイル38Ua及び第2U相モータコイル38Ubと、第2V相電流I2vにより励磁される2つの第2V相モータコイル38Va及び第2V相モータコイル38Vbと、第2W相電流I2wにより励磁される2つの第2W相モータコイル38Wa及び第2W相モータコイル38Wbと、を含む。第2U相モータコイル38Ubは、第2U相モータコイル38Uaに対して直列に接続されている。第2V相モータコイル38Vbは、第2V相モータコイル38Vaに対して直列に接続されている。第2W相モータコイル38Wbは、第2W相モータコイル38Waに対して直列に接続されている。第2モータコイル38のティース931bに対する巻き方向は、全て同じ方向であり、第1モータコイル37の巻き方向と同じである。また、第2U相モータコイル38Ub、第2V相モータコイル38Vb及び第2W相モータコイル38Wbは、スター結線(Y結線)で接合されている。
【0051】
図4に示すように、3つの第1コイルグループGr1は、第1UVコイルグループGr1UVと、第1VWコイルグループGr1VWと、第1UWコイルグループGr1UWと、からなる。第1UVコイルグループGr1UVは、周方向で互いに隣接する第1U相モータコイル37Ub及び第1V相モータコイル37Vaを含む。第1VWコイルグループGr1VWは、周方向で互いに隣接する第1V相モータコイル37Vb及び第1W相モータコイル37Waを含む。第1UWコイルグループGr1UWは、周方向で互いに隣接する第1U相モータコイル37Ua及び第1W相モータコイル37Wbを含む。
【0052】
図4に示すように、3つの第2コイルグループGr2は、第2UVコイルグループGr2UVと、第2VWコイルグループGr2VWと、第2UWコイルグループGr2UWと、からなる。第2UVコイルグループGr2UVは、周方向で互いに隣接する第2U相モータコイル38Ub及び第2V相モータコイル38Vaを含む。第2VWコイルグループGr2VWは、周方向で互いに隣接する第2V相モータコイル38Vb及び第2W相モータコイル38Waを含む。第2UWコイルグループGr2UWは、周方向で互いに隣接する第2U相モータコイル38Ua及び第2W相モータコイル38Wbを含む。
【0053】
第1U相電流I1uにより励磁される第1モータコイル37は、第2U相電流I2uにより励磁される第2モータコイル38に、モータステータ931の径方向で対向している。以下の説明において、モータステータ931の径方向は、単に径方向と記載される。例えば、
図4に示すように、径方向で第1U相モータコイル37Uaが第2U相モータコイル38Uaに対向し、第1U相モータコイル37Ubが第2U相モータコイル38Ubに対向している。
【0054】
第1V相電流I1vにより励磁される第1モータコイル37は、第2V相電流I2vにより励磁される第2モータコイル38に、径方向で対向している。例えば、
図4に示すように、径方向で第1V相モータコイル37Vaが第2V相モータコイル38Vaに対向し、第1V相モータコイル37Vbが第2V相モータコイル38Vbに対向している。
【0055】
第1W相電流I1wにより励磁される第1モータコイル37は、第2W相電流I2wにより励磁される第2モータコイル38に、径方向で対向している。例えば、
図4に示すように、径方向で第1W相モータコイル37Waが第2W相モータコイル38Waに対向し、第1W相モータコイル37Wbが第2W相モータコイル38Wbに対向している。
【0056】
図6は、実施形態に係るモータとECUとの関係を示す模式図である。
図6に示すように、ECU10は、検出回路23と、制御回路24と、第1パワー回路25Aと、第2パワー回路25Bと、を備える。検出回路23は、回転角度センサ23aと、モータ回転数演算部23bと、を有する。制御回路24は、制御演算部241と、ゲート駆動回路242と、遮断駆動回路243と、を有する。第1パワー回路25Aは、インバータ回路251と、電流遮断回路255と、を有する。第2パワー回路25Bは、インバータ回路251と、電流遮断回路255と、を有する。また、インバータ回路251は、複数のスイッチング素子252と、電流値を検出するためのシャント抵抗SRと、を有する。シャント抵抗SRは、電流検出回路254のオペアンプOPに接続されている。なお、
図6において、説明が不要な回路については、適宜省略している。3つのシャント抵抗SRは、3つのスイッチング素子252にそれぞれ接続されている。1つのシャント抵抗SRのみとし、1つのシャント抵抗SRに3つのスイッチング素子252が接続されていてもよい。
【0057】
制御演算部241は、モータ電流指令値を演算する。モータ回転数演算部23bは、モータ電気角θmを演算し、制御演算部241に出力する。ゲート駆動回路242は、制御演算部241から出力されるモータ電流指令値が入力される。ゲート駆動回路242は、モータ電流指令値に基づいて、第1パワー回路25A及び第2パワー回路25Bを制御する。ゲート駆動回路242は、電源ラインに、後述するコンデンサ256を含む。
【0058】
ECU10は、
図6に示すように、回転角度センサ23aを備えている。回転角度センサ23aは、例えば、磁気センサである。回転角度センサ23aの検出値がモータ回転数演算部23bに供給される。モータ回転数演算部23bは、回転角度センサ23aの検出値に基づいてモータ電気角θmを演算し、制御演算部241に出力する。
【0059】
制御演算部241には、トルクセンサ194で検出された操舵トルク信号Tと、車速センサ182で検出された車速信号SVと、モータ回転数演算部23bから出力されるモータ電気角θmと、が入力される。制御演算部241は、操舵トルク信号T、車速信号SV及びモータ電気角θmに基づいてモータ電流指令値を算出し、ゲート駆動回路242に出力する。
【0060】
ゲート駆動回路242は、モータ電流指令値に基づいて第1パルス幅変調信号を演算し、第1パワー回路25Aのインバータ回路251に出力する。インバータ回路251は、第1パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるようにスイッチング素子252をスイッチングして第1U相電流I1u、第1V相電流I1v及び第1W相電流I1wを含む3相交流を生成する。第1U相電流I1uが第1U相モータコイル37Ua及び第1U相モータコイル37Ubを励磁し、第1V相電流I1vが第1V相モータコイル37Va及び第1V相モータコイル37Vbを励磁し、第1W相電流I1wが第1W相モータコイル37Wa及び第1W相モータコイル37Wbを励磁する。
【0061】
ゲート駆動回路242は、モータ電流指令値に基づいて第2パルス幅変調信号を演算し、第2パワー回路25Bのインバータ回路251に出力する。インバータ回路251は、第2パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるようにスイッチング素子252をスイッチングして第2U相電流I2u、第2V相電流I2v及び第2W相電流I2wを含む3相交流を生成する。第2U相電流I2uが第2U相モータコイル38Ua及び第2U相モータコイル38Ubを励磁し、第2V相電流I2vが第2V相モータコイル38Va及び第2V相モータコイル38Vbを励磁し、第2W相電流I2wが第2W相モータコイル38Wa及び第2W相モータコイル38Wbを励磁する。
【0062】
インバータ回路251は、直流電力を交流電力に変換する電力変換回路である。上記のように、インバータ回路251は、複数のスイッチング素子252を有する。スイッチング素子252は、例えば、電界効果トランジスタである。インバータ回路251には、コンデンサ253が並列に接続される。第1回路基板60は、並列に接続された複数のコンデンサ253を備える。
【0063】
また、上記のように、インバータ回路251に電流検出回路254が接続される。電流検出回路254は、例えば、シャント抵抗SRと接続されている。電流検出回路254で検知した電流値は、制御演算部241に送出される。なお、電流検出回路254は、モータ30の各相の電流値を検出するように接続してもよい。
【0064】
電流遮断回路255は、インバータ回路251と、第1モータコイル37又は第2モータコイル38との間に配置されている。電流検出回路254で検知した電流値が異常と判断される場合は、制御演算部241は、遮断駆動回路243を介して電流遮断回路255を駆動し、インバータ回路251から第1モータコイル37へ流れる電流を遮断できる。また、制御演算部241は、遮断駆動回路243を介して電流遮断回路255を駆動し、インバータ回路251から第2モータコイル38へ流れる電流を遮断できる。このように、第1モータコイル37へ流れる電流と、第2モータコイル38へ流れる電流は、制御演算部241にそれぞれ独立して制御される。また、制御演算部241には、操舵トルク信号T、車速信号SV等の入出力信号が、コネクタCNTを介して伝送される。
【0065】
図7は、実施形態に係る電動駆動装置の構成例を示す分解斜視図である。
図8は、実施形態に係るECUの構成例を示す斜視図である。
図7に示すように、電動駆動装置1は、モータ30と、モータ30の反負荷側に配置されるECU10とを備える。
【0066】
シャフト31の反負荷側の端部には、磁石フォルダ32Aを介して磁石32が取り付けられている。磁石32は、半分がS極、半分がN極に着磁されている。あるいは、磁石32は、周方向にみて交互に配置されたS極及びN極を外周面に有するようにしてもよい。
【0067】
図7に示すように、ECU10は、第1回路基板60と、第2回路基板20と、第2ハウジング11と、蓋体40と、電源配線モジュール90と、コネクタCNTとを有する。第2ハウジング11は、放熱性の高いアルミニウム、銅などの金属で構成されている。第2ハウジング11は、第1回路基板60及び第2回路基板20が発する熱を放熱するヒートシンクとして作用する。蓋体40は、放熱性の高いアルミニウム、銅などの金属で構成されており、第2ハウジング11と接合されている。これにより、第1回路基板60及び第2回路基板20が発する熱が第2ハウジング11から伝わっても、蓋体40から外部に効率よく放熱する。
【0068】
第2ハウジング11は、底部115と、底部115の周りを囲む側壁部116とを有する。側壁部116の内側には、収容空間11Rがある。蓋体40が、封止部材OR2を介して、第2ハウジング11の収容空間11Rを覆うことにより、第2ハウジング11の収容空間11Rが密閉される。封止部材OR2は、ゴムやエラストマーで形成された、いわゆるOリングである。底部115の反負荷側には、電子部品を収容する凹部117がある。
【0069】
蓋体40の負荷側の一方の面には、第2回路基板20と、電源配線モジュール90とが取り付けられ、蓋体40の反負荷側の他方の面には、コネクタCNTが取り付けられている。蓋体40が第2ハウジング11に取り付けられると、第2回路基板20及び電源配線モジュール90が、第2ハウジング11の収容空間11Rに収容される。これにより、ECU10の軸方向Axの大きさが小さくなる。
【0070】
モータ30の第1ハウジング930の反負荷側の端部には、フランジ39が設けられている。フランジ39には、軸方向Axに雌ねじ部39Hが設けられている。第2ハウジング11の負荷側の端部には、フランジ111が設けられている。フランジ111には、軸方向Axに貫通孔111Hが設けられている。ネジなどの固定部材B1は、貫通孔111Hを通り、雌ねじ部39Hに締結することにより、第1ハウジング930と、第2ハウジング11とを固定する。
【0071】
第2ハウジング11の反負荷側の端部には、複数のフランジ131、132、141、142、143が設けられている。フランジ131には、軸方向Axに貫通孔131Hが設けられている。フランジ132には、軸方向Axに貫通孔132Hが設けられている。フランジ141には、軸方向Axに雌ねじ部141Hが設けられている。フランジ142には、軸方向Axに雌ねじ部142Hが設けられている。フランジ143には、軸方向Axに雌ねじ部143Hが設けられている。
【0072】
図8に示すように、第2ハウジング11は、支持体70との間で、第1回路基板60を挟む。支持体70は、放熱性の高いアルミニウム、銅などの金属で構成されており、放熱性に優れるヒートシンクである。支持体70の側面には、2つのターミナルブロック80が取り付けられている。
【0073】
図9は、実施形態に係るECUの構成例を示す分解斜視図である。
図10Aは、実施形態に係るターミナルブロックをパワー基板に取り付ける構成例を示す分解斜視図である。
図9及び
図10Aに示すように、ターミナルブロック80は、基台81と、取付金具82と、導電端子83とを有している。基台81は、絶縁性の材料で形成され、端子間の絶縁性を確保する。導電端子83の一端部は、第1回路基板60に挿入され、第1回路基板60と電気的に接続される。
【0074】
図10Bは、実施形態に係るターミナルブロックにモータコイル配線を取り付ける構成例を示す分解斜視図である。導電端子83の他端部は、取付金具82と電気的に接続されている。
図10A及び
図10Bに示すように、取付金具82には、
図7及び
図10Bに示すネジなどの固定部材BMが貫通する貫通孔82Hを備える。モータ30の第1モータコイル配線321又は第2モータコイル配線322は、貫通孔32Hを有している。第1モータコイル配線321又は第2モータコイル配線322は、基台81の挿入穴81Hに挿入され、貫通孔82Hと貫通孔32Hとが連通する位置で、固定部材BMが貫通し、第1モータコイル配線321又は第2モータコイル配線322の裏面にあるナット(不図示)と締結する。これにより、一方のターミナルブロック80は、第1回路基板60とモータ30の第1モータコイル配線321とを電気的に接続し、他方のターミナルブロック80は、第1回路基板60とモータ30の第2モータコイル配線322とを電気的に接続する。なお、取付金具82は、導電端子83と密着固定されていてもよく、取付金具82が導電端子83と一体となり、1つの部品となっていてもよい。
【0075】
支持体70は、高さの異なる第1天板71と第2天板79とを有している。第1天板71及び第2天板79は、第1回路基板60との間にあるコンデンサ253、256の高さに応じて大きさが異なっている。コンデンサ253、256と、第1天板71及び第2天板79との間には、放熱材を介在させており、コンデンサ253、256の熱が第1天板71及び第2天板79へ伝達されるので、コンデンサ253、256の劣化が抑制される。コンデンサ253、256は、例えば、電解コンデンサである。
【0076】
図9に示すように、第2ハウジング11の負荷側には、平坦な放熱面112と、凹部113と、凸部114とがある。第2ハウジング11には、第1貫通孔119と第2貫通孔118とが軸方向Axに貫通している。第2貫通孔118には、電源配線モジュール90の一部が挿入され、第1電源端子93が第1回路基板60へ到達する。第1貫通孔119には、基板間コネクタのプラグ62が挿入され、第2回路基板20のレセプタクル61(
図12参照)へ到達する。この基板間コネクタは、第1回路基板60と第2回路基板20との間で信号を伝達する。また、プラグ62と、レセプタクル61とを有する基板間コネクタは、フローティングコネクタと呼ばれ、可動部を備えており、プラグ62とレセプタクル61とが結合した嵌合時の位置ずれを吸収できる。
【0077】
凸部114には、負荷側の上面から軸方向Axに開けられた雌ねじ部114Hがある。複数の凸部114のうち、一部の凸部114は、第1回路基板60の切欠き60Nの中で、支持体70に対向する。他の一部の凸部114は、
図10Aに示す第1回路基板60の貫通孔60H2に対向する。支持体70には、軸方向Axに貫通する貫通孔72Hがある。ネジなどの固定部材B2は、貫通孔72H、第1回路基板60の切欠き60N又は貫通孔60H2を通り、雌ねじ部114Hに締結される。
【0078】
図10Aに示すように、支持体70は、基部72と、基部72から負荷側に突出した第1天板71を有する。また、支持体70は、2つの第1側面74と、2つの第2側面75と、を有している。第1側面74及び第2側面75は、基部72と第1天板71との間をそれぞれ接続している。支持体70は、2つの第2側面75からそれぞれ遠ざかるように、第2方向に延びている2つの第2天板79を有している。
【0079】
支持体70の第1天板71には、軸方向Axに貫通する貫通孔76が開けられている。貫通孔76には、シャフト31の反負荷側の端部にある、磁石32(
図7参照)が挿入される。その結果、磁石32が、第1回路基板60に実装された回転角度センサ23aの近傍に配置される。また、支持体70の側面にも、貫通孔77が開けられている。ターミナルブロック80が支持体70に取り付けられると、貫通孔77が塞がれる。貫通孔77の大きさの分、支持体70が軽量化される。
【0080】
図11は、実施形態に係るターミナルブロックをパワー基板に取り付ける構成例を示す斜視図である。
図11に示す支持体70には、反負荷側に開口する雌ねじ部78が4つ設けられている。ネジなどの固定部材B3が第1回路基板60の貫通孔60H1を貫通して、雌ねじ部78に締結されると、
図11に示すように、支持体70と第1回路基板60とが密着した状態で固定される。対角に位置する反負荷側に開口する雌ねじ部78が、それぞれ点対称であることが望ましい。これにより、支持体70と第1回路基板60とが組み付け易くなる。
【0081】
図10A及び
図11に示すように、第1回路基板60は、基板本体の両面に実装された複数の電子部品と、を有する。第1回路基板60の基板本体は、例えば、樹脂等で形成されたプリント基板である。1枚の基板本体に実装された複数の電子部品には、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、磁気センサ、電解コンデンサ、抵抗素子、ダイオード、サーミスタ、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等が含まれる。これら複数の電子部品により、
図6に示した検出回路23、第1パワー回路25A及び第2パワー回路25Bが構成されている。
【0082】
図10Aに示すように、第1回路基板60の第1面60Aには、コンデンサ253、256が実装されている。
図9に示すように、第1回路基板60に支持体70が取り付けられると、コンデンサ253、256は、支持体70に覆われる。
【0083】
図10Aに示すように、第1回路基板60の第1面60Aには、回転角度センサ23aが実装されている。回転角度センサ23aは、例えば、スピンバルブセンサである。スピンバルブセンサは、反強磁性層等で磁化の向きが固定された強磁性体のピン層と、強磁性体のフリー層とで非磁性層を挟んだ素子で、磁束の向きの変化を検出できるセンサである。スピンバルブセンサには、GMR(Giant Magneto Resistance)センサ、TMR(Tunnel Magneto Resistance)センサがある。なお、回転角度センサ23aは、磁石32の回転を検出可能なセンサであればよい。回転角度センサ23aは、例えば、AMR(Anisotropic Magneto Resistance)センサ、又はホールセンサでもよい。
【0084】
図10Aに示すように、第1回路基板60の第2面60Bには、発熱する電子部品である電界効果トランジスタTR、シャント抵抗SRが配置されている。電界効果トランジスタTRは、
図6に示すスイッチング素子252のみならず、電流遮断回路255、遮断駆動回路243や、電源電圧Vdcを供給する配線上にも設けられる。
図6に示すように、シャント抵抗SRは、電流検出回路254に接続されている。
【0085】
電界効果トランジスタTRは、TIM(Thermal Interface Material)と呼ばれる放熱材を介して、
図9に示す第2ハウジング11の放熱面112に接している。放熱材は、例えば、シリコーンポリマーに熱伝導性フィラーを混合した材料であり、第1回路基板60の基板本体よりも熱伝導率が大きい材料であれば、上記材料以外の他の材料でもよい。シャント抵抗SRは、
図9に示す第2ハウジング11の凹部113の中に配置される。凹部113の中には、放熱材がある。
【0086】
図10Aに示すように、ターミナルブロック80の基台81の両側には、脚部84が支持体70側に延びており、脚部84の端部85には、貫通孔85Hが開けられている。ネジなどの固定部材B4が貫通孔85Hを通して、第1側面74の当接面73にある雌ねじ部73Hに締結される。
【0087】
ここで、
図10Aに示す第1側面74の当接面73と、
図10Bに示す取付金具82の固定部材BMの当接面とは、平行である。このため、ターミナルブロック80がネジなどの固定部材BMで押圧されても、押圧に伴う応力が、脚部84の端部85を介して、第1側面74の当接面73で受け止められる。その結果、導電端子83の変形や、第1回路基板60に加わる応力が抑制される。
【0088】
以上説明したように、ECU10は、第1回路基板60と、第2ハウジング11と、ヒートシンクとなる支持体70と、ターミナルブロック80とを含む。第1回路基板60には、第1モータコイル37又は第2モータコイル38を励磁する電流を出力する電界効果トランジスタTRと、シャフト31の軸方向Axの延長線上に配置された回転角度センサ31aとが実装されている。第2ハウジング11は、第1回路基板60の反負荷側に設けられている。支持体70は、第1回路基板60の負荷側に設けられ、第2ハウジング11との間で第1回路基板60を挟む。ターミナルブロック80は、ヒートシンクである支持体70の第1側面74の当接面73に固定され、第1モータコイル配線321又は第2モータコイル配線322と、第1回路基板60とを電気的に接続する。
【0089】
これにより、第1回路基板60は、第2ハウジング11とヒートシンクである支持体70とで軸方向Axに挟まれる。このため、モータ30のシャフト31に平行な軸方向Axの大きさが抑制され、電動駆動装置1が小さくなる。ターミナルブロック80は、支持体70の第1側面74の当接面73に固定され、支持されている。このため、ターミナルブロック80がネジなどの固定部材BMで押圧されても、押圧に伴う応力が、支持体70にかかり、第1回路基板60へかかる応力が低減する。その結果、第1回路基板60の寿命が延び、電動駆動装置1の信頼性が向上する。
【0090】
第1ハウジング930には工具挿入孔36Hがある。そして、モータ30は、工具挿入孔36Hを塞ぎ、第1ハウジング930に着脱可能な側面カバー36を備える。これにより、モータ30とECU10との電気的な接続又は切断は、側面カバー36の着脱により、容易に可能となる。
【0091】
第1回路基板60は、第2ハウジング11側の第2面60Bに電界効果トランジスタTRが実装され、支持体70側の第1面60Aに電解コンデンサであるコンデンサ253、256が実装されている。これにより、第1回路基板60の両面が有効活用され、第1回路基板60の径方向も小型にできる。
【0092】
支持体70は、コンデンサ253を覆う第1天板71を有し、コンデンサ253とは重なり合わない位置の天板に開けられた軸方向の貫通孔76には、磁石32が挿入される。これにより、コンデンサ253の冷却が第1天板71への熱伝導で促進される。そして、コンデンサ253の軸方向Axの大きさで生じる支持体70の第1側面74をターミナルブロック80との当接面73として利用することができる。また、コンデンサ253とは重なり合わない位置も、磁石32が挿入されることで、磁石32の径方向外側の空間もコンデンサ253の配置領域として利用することができる。その結果、電動駆動装置1の軸方向Axの大きさが小さくなる。
【0093】
第1天板71及び第2天板79との間には段差がある。これにより、支持体70は、各コンデンサ253、256の大きさに応じた最小限の容積のヒートシンクとなり、電動駆動装置1の軽量化に寄与する。
【0094】
図12は、実施形態に係る制御基板を配線モジュールに取り付ける構成例を示す分解斜視図である。
図12に示すようにECU10は、それぞれ電界効果トランジスタTRを有する第1パワー回路25A、第2パワー回路25Bを制御する制御回路24を有する第2回路基板20を有する。第2回路基板20は、第2ハウジング11の反負荷側に配置される。第2ハウジング11に開けられた軸方向Axの第1貫通孔119に挿入された基板間コネクタにより、第1回路基板60と第2回路基板20とは電気的に接続されている。これにより、第2ハウジング11の軸方向の両面が放熱面として利用され、第2ハウジングは、ヒートシンクとして作用する。
【0095】
第2回路基板20は、第2ハウジング11に設けられた収容空間11Rに収容される。これにより、電動駆動装置1の軸方向Axの大きさが小さくなる。
【0096】
モータステータ931は、第1コイルグループGr1に接続される第1モータコイル配線321と、第2コイルグループGr2に接続される第2モータコイル配線322とを備える。ターミナルブロック80は、2つあり、一方のターミナルブロック80と、他方のターミナルブロック80とは、支持体70を挟む位置に配置される。ここで、一方のターミナルブロック80は、第1モータコイル配線321と第1回路基板60とを電気的に接続し、他方のターミナルブロック80は、第2モータコイル配線322と第1回路基板60とを電気的に接続する。これにより、モータコイル配線が冗長化されても、支持体70の複数の側面を利用することにより、モータ30の径方向の大きさは抑制される。
【0097】
第2ハウジング11と支持体70とは、ネジなどの固定部材B2で連結されている。これにより、ターミナルブロック80がネジなどの固定部材BMで押圧されても、押圧に伴う応力が、支持体70、固定部材B2、第2ハウジング11へ伝達される。その結果、第1回路基板60へかかる応力がさらに低減する。
【0098】
図13Aは、実施形態に係るヒートシンクの上面斜視図である。
図13Bは、実施形態に係るヒートシンクの放熱面と第2回路基板との位置関係を説明するための説明図である。
図13Cは、実施形態に係る第2回路基板の上面斜視図である。
図14は、実施形態に係る第2回路基板が取り付けられたカバー及びコネクタの上面を示す平面図である。
図15は、
図14のXV―XV断面を示す断面図である。
図16は、
図14のXVI―XVI断面を示す断面図である。
図17は、実施形態に係るカバー及びコネクタの構成例を示す分解斜視図である。
【0099】
図12に示すように、第2回路基板20は、基板本体の両面に実装された複数の電子部品と、を有する。第2回路基板20の基板本体は、例えば、樹脂等で形成されたプリント基板である。1枚の基板本体に実装された複数の電子部品には、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、電力制御用集積回路(Power Management Integrated Circuit)、コンデンサ、抵抗素子、ダイオード、サーミスタ、レセプタクル61等が含まれる。これら複数の電子部品により、
図6に示した制御回路24が構成されている。
【0100】
第2回路基板20には、貫通孔CNTIN1、貫通孔CNTIN3、貫通孔PWCHが開けられている。
【0101】
電源配線モジュール90と、第2回路基板20とは、ヒートシンク29を挟む。ヒートシンク29は、金属製であり、電源配線モジュール90のノイズ除去用のチョークコイル91及びコンデンサ92の熱を放熱するとともに、第2回路基板20に生じる熱を放熱する。
【0102】
図12に示すように、ヒートシンク29は、第2回路基板20側の第1ベース面291と、第1ベース面291から第2回路基板側に突出する突起部292、放熱面293、及び放熱面294がある。ヒートシンク29には、軸方向に貫通する貫通孔29Hがある。貫通孔29Hの中にコネクタCNT2の端子が配置される。これにより、コネクタCNT2の端子がヒートシンク29に接触して、短絡することを防止できる。
【0103】
突起部292は、円錐台形状を有している。突起部292は、放熱面293及び放熱面294よりも第2回路基板20側に突出している。
【0104】
図13Aに示すように、ヒートシンク29は、電源配線モジュール90側の第2ベース面295と、第2ベース面295から第2回路基板側に凹む凹部296及び凹部297がある。
【0105】
図12に示すように、電源配線モジュール90は、コネクタCNT2(
図17参照)に接続された電源装置183から電力を伝送する電力配線PW(
図2参照)をモジュール内のリードフレーム配線に接続し、第1回路基板60及び第2回路基板20へ伝送する。リードフレーム配線は、例えば、銅合金で形成されている。電源配線モジュール90には、チョークコイル91、コンデンサ92が取り付けられ、電源装置183からの電力配線PWの高周波成分を除去する。電源配線モジュール90の樹脂は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybutylene terephthalate)である。
【0106】
モータを駆動する電力が大きくなればなるほど、基板内の電源配線は、大きくする必要があり、基板の面積が大きくなってしまう。そこで、基板内の電源配線を少なくすることが望まれている。電源配線モジュール90内のリードフレーム配線があるので、第1回路基板60にある電源配線の面積が抑制される。その結果、第1回路基板60の面積が抑制され、ECU10は、径方向の大きさが小さくなる。
【0107】
蓋体40の負荷側では、コネクタCNT1の入出力端子、コネクタCNT2の電源入力端子PWCH1及び電源入力端子PWCH2、コネクタCNT3の入出力端子が、蓋体40を軸方向に貫通し、蓋体40の本体より突出している。
【0108】
コネクタCNT1の入出力端子は、電源配線モジュール90の外側、ヒートシンク29の外側を通り、第2回路基板20の貫通孔CNTIN1に挿入され、電気的に接続される。同様に、コネクタCNT3の入出力端子は、電源配線モジュール90の外側、ヒートシンク29の外側を通り、第2回路基板20の貫通孔CNTIN3に挿入され、電気的に接続される。
【0109】
蓋体40の負荷側の基準面490に対し、凹ませた位置決め穴421Hと、負荷側に突出する支持凸部422、423、424が配置されている。
【0110】
蓋体40の負荷側の基準面490より凹む凹部491には、チョークコイル91が挿入される。凹部491の底面は、TIM(Thermal Interface Material)と呼ばれる放熱材を介して、チョークコイル91及び1つのコンデンサ92の放熱面となる。
【0111】
図12及び
図13Aに示すように、第2ベース面295は、第1ベース面291の軸方向の反対側の面である。凹部296には、チョークコイル91及び1つのコンデンサ92が挿入される。凹部296の底面は、TIM(Thermal Interface Material)と呼ばれる放熱材を介して、チョークコイル91及び1つのコンデンサ92の放熱面となる。凹部297には、2つのコンデンサ92が挿入される。凹部297の底面は、TIM(Thermal Interface Material)と呼ばれる放熱材を介して、2つのコンデンサ92の放熱面となる。これにより、ノイズ除去用のチョークコイル91の冷却がヒートシンク29により、促進されるとともに、電子制御装置の軸方向の大きさが小さくなる。
【0112】
以上説明したように、ヒートシンクは、第1の凹部296を有し、蓋体40は、第2の凹部491を有する。チョークコイル91の第1面は、電源配線モジュール90の第1面90Aから突出し、第1の凹部296に挿入されている。チョークコイル91の第2面は、第1面90Aとは反対側の第2面90Bから突出し、第2の凹部491に挿入されている。これにより、チョークコイル91の両面の放熱性が高くなる。
【0113】
図13B及び
図13Cに示すように、第2回路基板20には、集積回路24IC1と、電力制御用の集積回路24IC2とが実装されている。そして、放熱面293は、集積回路24IC1と軸方向に重なる位置にある。また放熱面294は、集積回路24IC2と軸方向に重なる位置にある。これにより、集積回路24IC1及び集積回路IC24IC2の発熱が効率よくヒートシンク29に伝達される。集積回路24IC1及び電力制御用の集積回路IC24IC2は、
図6に示す制御演算部241(制御回路24)を構成する。集積回路24IC1と、電力制御用の集積回路IC24IC2とが2つずつあるのは、
図6に示すように、制御演算部241が独立して2つずつあるからである。仮に、一方の制御演算部241が動作しなくても、他方の制御演算部241が機能するので、機能継続性が高くなる。
【0114】
図13Cに示すように、第2回路基板20には、ヒートシンク29の突起部292に対向する位置に、突起部292が入る大きさの凹部20Hがある。
【0115】
図14に示すように、蓋体40は、貫通孔131H、132H(
図7参照)と軸方向に重なる位置に、貫通孔401H、402Hを有している。貫通孔401Hは、丸孔であるのに対し、貫通孔402Hは、長孔である。蓋体は、雌ねじ部141H、142H、143Hと軸方向に重なる位置に、貫通孔411H、412H、413Hを有している。
【0116】
図15に示すように、ボルトなどの固定部材B6で、電源配線モジュール90は、蓋体40に締結され、固定されている。
図15に示すように、ボルトなどの固定部材B7で、第2回路基板20は、蓋体40に締結され、固定されている。
図16に示すように、ヒートシンク29は、ボルトなどの固定部材B8で、蓋体40に締結され、固定されている。これにより、電源配線モジュール90、ヒートシンク29、第2回路基板20は、蓋体40を介して組み合わされ、上部組み立て体となる。
【0117】
図12から
図16に示すように、集積回路24IC1及び集積回路24IC2は、第1ベース面291と対向し、電源配線モジュール90のノイズ除去用のチョークコイル91及びコンデンサ92は、第2ベース面295と対向する。これにより、集積回路24IC1及び集積回路24IC2の発熱は、ヒートシンク29へ伝熱され、集積回路24IC1及び集積回路24IC2の温度上昇が抑制される。また、ノイズ除去用のチョークコイル91及びコンデンサ92の発熱は、ヒートシンク29へ伝熱される。
【0118】
図12、
図15及び
図16に示すように、第2回路基板20と、ヒートシンク29と、電源配線モジュール90とは、蓋体40に組み付けられる。軸方向にみて、第2回路基板20と、ヒートシンク29と、電源配線モジュール90とは、蓋体40の外形の内側に配置可能な大きさである。蓋体40が、第2ハウジング11の収容空間11Rを塞ぐように組み付けると、第2回路基板20と、ヒートシンク29と、電源配線モジュール90とは、収容空間11Rに収容される。
【0119】
コネクタCNT3(
図17参照)に接続されたCAN通信を行う通信用端子と、コネクタCNT1(
図17参照)に接続されたトルクセンサ194(
図2参照)のデータを入出力する入出力端子とは、電源配線モジュール90を介さず、直接第2回路基板20へ接続される。
【0120】
図17に示すように、コネクタCNTは、機能別に、コネクタCNT1と、コネクタCNT2と、コネクタCNT3とに分割されている。コネクタCNT1、コネクタCNT2、コネクタCNT3は、それぞれ、Oリングなどの封止部材CNO1、CNO2、CNO3を介して、蓋体40に取り付けられる。コネクタCNT1、コネクタCNT2、コネクタCNT3には、それぞれ、軸方向Axに貫通する貫通孔CNTHが開けられている。蓋体40には、雌ねじ部44Hが開けられている。ボルトなどの固定部材B5は、貫通孔CNTHを通り、雌ねじ部44Hとそれぞれ締結される。その結果、コネクタCNT1、コネクタCNT2、コネクタCNT3は、それぞれ、蓋体40に固定される。コネクタCNT1、コネクタCNT2、コネクタCNT3の端子は、それぞれ、蓋体40に軸方向Axに開けられた貫通孔41H、42H、43Hを通り、蓋体40の反対側に到達する。
【0121】
電源配線モジュール90と、第2回路基板20との間には、ヒートシンク29が挟まれる。ヒートシンク29は、放熱性の高いアルミニウム、銅などの金属で構成されており、第2回路基板20、チョークコイル91及びコンデンサ92の熱を放熱することができる。
【0122】
図18は、実施形態に係る第2ハウジングに蓋体を組み付ける治具を示す説明図である。
図7、
図9、
図18を参照して、電子制御装置の製造方法を説明する。
【0123】
(準備工程)
準備工程では、上述した第1回路基板60、第2回路基板20、第2ハウジング11及び蓋体40を準備する。
【0124】
(第1工程)
図9に示すように、準備工程の後、第1工程では、固定部材B2で、第2ハウジング11に第1回路基板60を固定する。基板間コネクタのレセプタクル61は、第1貫通孔119に挿入され、第1貫通孔119の内部にレセプタクル61が配置される。
【0125】
(第2工程)
図18に示す治具Jを準備し、第1工程で、第1回路基板60が固定された第2ハウジングを治具Jに取り付ける。治具Jには、2つのピンJPが突出しており、各ピンJPは、
図7に示す貫通孔131H、132Hにそれぞれ挿入されている。ここで、2つのピンJPは、フランジ131、132から突出する長さを有している。貫通孔131H、132Hの直径は、ピンJPの直径とほぼ等しい。このため、治具Jに対して、ピンJPにより第2ハウジング11が位置決めされる。
【0126】
(第3工程)
図15、
図16に示すように、準備工程の後、第3工程では、蓋体40に第2回路基板20を固定する。
図19Aは、実施形態に係る電源配線モジュールの反負荷側を示す平面図である。
図19Bは、実施形態に係る電源配線モジュールの負荷側を示す平面図である。
図19Cは、実施形態の電源配線モジュールの斜視図である。
【0127】
具体的には、
図12に示す蓋体40に電源配線モジュール90が組み付けられる。
図19A、
図19B及び
図19Cに示すように、電源配線モジュール90には、支持凸部422を覆う円柱体94が一体成形されている。円柱体94の中心には、貫通孔が空いており、円柱体94の内部には中空空間94Hがある。円柱体94は、電源配線モジュール90の第1面90Aから突出しており、第2面90Bからは突出していない。
【0128】
図12、
図19A、
図19B及び
図19Cに示すように、電源配線モジュール90は、第1面90Aから突出する第2位置決め凸部95PUと、第2面90Bから突出する第1位置決め凸部95PDとを有している。
【0129】
図12に示すように、3つの円柱体94の内部の中空空間94H(
図19B)に支持凸部422を挿入する。次に2つの第1位置決め凸部95PD(
図19B、
図19C)が2つの位置決め穴421Hに挿入され、蓋体40に対する電源配線モジュール90の位置が定まる。これにより、電源配線モジュール90が電源入力端子PWCH1などに接触しにくくなる。
図15に示すように、ボルトなどの固定部材B6が円柱体94を貫通し、支持凸部422の頂部に設けられた雌ねじ部に締結される。
【0130】
図12、
図19Aに示すように、電源配線モジュール90は、第1面90Aから突出する第1電源端子93及び第2電源端子96を備える。電源配線モジュール90において、第1電源端子93及び第2電源端子96の基部97の樹脂が、基部97の周囲よりも肉厚である。これにより、第1電源端子93及び第2電源端子96が軸方向に対して、傾きにくくなる。
【0131】
図19Aに示すように、リードフレーム配線の電力入力部PWin1、電力入力部PWin2に隣接する空間には、樹脂に電力入力用の貫通孔INHが開けられている。蓋体40に電源配線モジュール90が取り付けられると、貫通孔INHに、電源入力端子PWCH1、電源入力端子PWCH2が差し込まれる。電力入力部PWin1と電源入力端子PWCH1とをハンダや溶接で電気的に接続し、電力入力部PWin2と電源入力端子PWCH1とをハンダや溶接で電気的に接続する。これにより、絶縁性を確保し、かつ軸方向Axの厚みを抑制しつつ、コネクタCNT2と電源配線モジュール90とが電気的に接続できる。
【0132】
次に、蓋体40にヒートシンク29を固定する。
図12に示すように、ヒートシンク29は、取付部298と、取付部298の軸方向Axに開けられた貫通孔298Hと、位置決め部299と、位置決め部299の軸方向Axに開けられた貫通穴299Hとを有する。
【0133】
電源配線モジュール90の2つの第2位置決め凸部95PUがヒートシンク29の2つの貫通穴299Hに挿入されると、電源配線モジュール90に対するヒートシンク29の位置が定まる。取付部298は、支持凸部424に当接し、貫通孔298Hと、支持凸部424の雌ねじ部424Hとが一直線上に並ぶ。
図16に示すボルトなどの固定部材B8が、支持凸部424の雌ねじ部424H(
図12参照)に締結されると、蓋体40と、ヒートシンク29とが固定される。貫通孔29Hの内側には、電源入力端子PWCH1、電源入力端子PWCH2、電力入力部PWin1、PWin2が配置され、ヒートシンク29と、電源配線との短絡が抑制される。
【0134】
次に、第2回路基板20が電源配線モジュール90に取り付けられる。第2電源端子96が貫通孔PWCHに挿入され、電気的に接続される。また、コネクタCNT1の入出力端子は、第2回路基板20の貫通孔CNTIN1に挿入され、電気的に接続される。同様に、コネクタCNT3の入出力端子は、第2回路基板20の貫通孔CNTIN3に挿入され、電気的に接続される。
【0135】
第2回路基板20は、支持凸部423に当接し、支持される。
図15及び
図16に示すように、ボルトなどの固定部材B7が第2回路基板20を貫通し、支持凸部423の頂部に設けられた雌ねじ部に締結される。
【0136】
(第4工程)
図18に示すように、第2工程と第3工程の後に、蓋体40の貫通孔401H、402Hにフランジ131、132から突出するピンJPを貫通させる。第2ハウジング11に蓋体40を近づけていくと、第1貫通孔119から露出するレセプタクル61に、基板間コネクタのプラグ62が接近し、レセプタクル61に、基板間コネクタのプラグ62が接続する。同様に、第2貫通孔118から露出する第1回路基板60の貫通孔PWPH(
図11参照)に第1電源端子93が挿入される。ピンJPが第2ハウジング11及び蓋体40の位置を規制しているので、第2ハウジング11の貫通孔131H、132H、蓋体40の貫通孔401H、402Hが位置決めの基準となる。このため、作業者は、第2ハウジング11と蓋体40との組み立てを容易にする。
【0137】
第1電源端子93は、第2電源端子96よりも長い。これにより、電源配線モジュール90から軸方向Axに位置が異なる第1回路基板60及び第2回路基板20の両方に電力が供給される。
【0138】
(第5工程)
図18に示すように、ネジなどの固定部材BT1は、貫通孔411H、412H、413Hを通り、雌ねじ部141H、142H、143Hに締結することにより、蓋体40と、第2ハウジング11とを固定する。基板間コネクタは、レセプタクル61に対するプラグ62の位置の変位を許容するが、レセプタクル61に対するプラグ62の位置のばらつきを抑制して組み付けられる。底部115に設けられた凹部117には、第2回路基板20に実装された、
図15及び
図16に示すコンデンサ等の電子部品69が挿入される。
【0139】
図20は、実施形態の電源配線モジュールの等価回路を示す回路図である。
図19A及び
図20に示すように、異なる電力入力部PWin1、電力入力部PWin2から、それぞれ独立した第1電源回路90Rと第2電源回路90Lとで電力を受け入れる。チョークコイル91及びコンデンサ92の回路も、第1電源回路90Rと第2電源回路90Lのそれぞれで別にある。そして、ノイズ除去された電力は、電源配線モジュール90内で、第1回路基板60へ電力を供給する第1電源端子93と、第2回路基板20へ電力を供給する第2電源端子96とに分岐する。
【0140】
第1電源回路90Rの第1電源端子93が、第1パワー回路25A(
図6参照)に接続される。第2電源回路90Lの第1電源端子93が、第2パワー回路25B(
図6参照)に接続される。
【0141】
第1電源回路90Rの第2電源端子96が、一方の制御演算部241(
図6参照)に接続される。第2電源回路90Lの第2電源端子96が、他方の制御演算部241(
図6参照)に接続される。
【0142】
このように、実施形態の電動駆動装置1は、2系統の電力を独立して受け入れ、第1コイルグループgr1と、第2コイルグループGr2の2系統に分けて駆動するので、機能継続性が高くなる。
【0143】
図21は、
図14のXXI―XXIの矢視部分断面を示す断面図である。
図22は、
図14のXXII―XXIIの矢視部分断面を示す断面図である。
図23は、
図14のXXIII―XXIIIの矢視部分断面を示す断面図である。電動駆動装置では、車両101の足回りに配置されることを想定して、外部から塵や水分がハウジング内に侵入しないように、防塵性及び防水性を高める必要がある。そこで、
図21から
図23に示すように、第1ハウジング930の内周面と、第2ハウジング11の外周面とは、封止部材OR1(第1封止部材)を介して封止されている。封止部材OR1は、ゴムやエラストマーで形成された、いわゆるOリングである。第2ハウジング11の反負荷側端部と、蓋体40の負荷側端部とは、封止部材OR2(第2封止部材)を介して封止されている。これにより、電動駆動装置の密閉性が高まる。密閉性が高まると、第1回路基板60の電子部品及び第2回路基板20の電子部品の熱が外部へ放出されにくくなり、電動駆動装置内の温度上昇を抑制する必要がある。
【0144】
ヒートシンクである支持体70は、軸方向にみて第1封止部材OR1の内側に入る外形を有している。これにより、支持体70は、第1ハウジング930の内側に収容可能になる。ヒートシンク29は、軸方向にみて第2封止部材OR2の内側に入る外形を有している。これにより、ヒートシンク29は、第2ハウジング11の内側に収容可能になる。その結果、電動駆動装置内の温度上昇を抑制しつつ、電動駆動装置が小型化される。
【0145】
ここで、支持体70及びヒートシンク29には、第1ハウジング930の内側又は第2ハウジング11の内側に収容されるため、体積の上限がある。そこで、第2ハウジング11(ヒートシンク)の体積は、支持体70(ヒートシンク)の体積よりも大きくし、第2ハウジング11(ヒートシンク)の熱容量を大きくしている。支持体70は、第2ハウジング11(ヒートシンク)と金属製の固定部材B2(第1固定部材)で固定されている。第1回路基板60及び第2回路基板20においては、電子部品が両面実装可能である。
図21に示すように、第1回路基板60の一方の面に実装された電子部品の熱は、支持体70及び固定部材B2を介する第1伝熱経路HTP1で第2ハウジング11(ヒートシンク)に伝熱される。その結果、支持体70は、熱飽和しにくくなる。また、第1回路基板60の他方の面に実装された電子部品の熱は、第2伝熱経路HTP2で第2ハウジング11(ヒートシンク)に伝熱される。
【0146】
図22に示すように、電源配線モジュール90のノイズ除去用のチョークコイル91及びコンデンサ92の熱は、ヒートシンク29へ伝わる第3伝熱経路HTP3と、蓋体40へ伝わる第4伝熱経路HTP4へ放熱される。第2回路基板20の一方の電子部品の熱がヒートシンク29へ伝わる第3伝熱経路HTP3へ伝熱され(
図22参照)、第2回路基板20の他方の電子部品の熱が第2ハウジング11へ伝わる第5伝熱経路HTP5へ伝熱される(
図23参照)。
【0147】
また、蓋体40の体積は、ヒートシンク29の体積よりも大きくし、蓋体40の熱容量を大きくしている。
図23に示すように、ヒートシンク29の熱は、金属製の固定部材B8(第2固定部材)を介する第3伝熱経路HTP3で蓋体40に伝熱される。その結果、ヒートシンク29は、熱飽和しにくくなる。
【0148】
以上説明したように、実施形態に係る電動駆動装置1は、モータ30と、モータ30を駆動制御するために、シャフト31の反負荷側に設けられたECU10と、を備える。モータ30は、シャフト31と、モータロータ932と、モータステータ931と、第1ハウジング930とを有する。シャフト31は、負荷側から反負荷側へ軸方向Axに延びている。モータロータ932の回転は、シャフト31の回転と連動する。モータステータ931は、第1モータコイル37及び第2モータコイル38と、第1モータコイル37及び第2モータコイル38のそれぞれに給電するための第1モータコイル配線321及び第2モータコイル配線322を有し、モータロータ932を回転させる。第1ハウジング930は、モータロータ932、及びモータステータ931を内側に収容する。シャフト31の反負荷側には、モータ30を駆動制御するために、設けられた磁石32がある。
【0149】
ECU10は、第1回路基板60と、第2ハウジング11と、第2ヒートシンクとなる支持体70と、ターミナルブロック80とを含む。第1回路基板60には、第1モータコイル37又は第2モータコイル38を励磁する電流を出力する電界効果トランジスタTRと、シャフト31の軸方向Axの延長線上に配置された回転角度センサ31aとが実装されている。第2ハウジング11は、第1回路基板60の反負荷側に設けられている。支持体70は、第1回路基板60の負荷側に設けられ、第2ハウジング11との間で第1回路基板60を挟む。ターミナルブロック80は、第2ヒートシンクである支持体70の第1側面74の当接面73に固定され、第1モータコイル配線321又は第2モータコイル配線322と、第1回路基板60とを電気的に接続する。
【0150】
これにより、第1回路基板60は、第2ハウジング11と第2ヒートシンクである支持体70とで軸方向Axに挟まれる。このため、モータ30のシャフト31に平行な軸方向Axの大きさが抑制され、電動駆動装置1が小さくなる。ターミナルブロック80は、支持体70の第1側面74の当接面73に固定され、支持されている。このため、ターミナルブロック80がネジなどの固定部材BMで押圧されても、押圧に伴う応力が、支持体70にかかり、第1回路基板60へかかる応力が低減する。その結果、第1回路基板60の寿命が延び、電動駆動装置1の信頼性が向上する。
【0151】
第1ハウジング930には工具挿入孔36Hがある。そして、モータ30は、工具挿入孔36Hを塞ぎ、第1ハウジング930に着脱可能な側面カバー36を備える。これにより、モータ30とECU10との電気的な接続又は切断は、側面カバー36の着脱により、容易に可能となる。
【0152】
第1回路基板60は、第2ハウジング11側の第2面60Bに電界効果トランジスタTRが実装され、支持体70側の第1面60Aに電解コンデンサであるコンデンサ253、256が実装されている。これにより、第1回路基板60の両面が有効活用され、第1回路基板60の径方向も小型にできる。
【0153】
支持体70は、コンデンサ253を覆う第1天板71を有し、コンデンサ253とは重なり合わない位置の天板に開けられた軸方向の貫通孔76には、磁石32が挿入される。これにより、コンデンサ253の冷却が第1天板71への熱伝導で促進される。そして、コンデンサ253の軸方向Axの大きさで生じる支持体70の第1側面74をターミナルブロック80との当接面73として利用することができる。また、コンデンサ253とは重なり合わない位置も、磁石32が挿入されることで、磁石32の径方向外側の空間もコンデンサ253の配置領域として利用することができる。その結果、電動駆動装置1の軸方向Axの大きさが小さくなる。
【0154】
第1天板71及び第2天板79との間には段差がある。これにより、支持体70は、各コンデンサ253、256の大きさに応じた最小限の容積のヒートシンクとなり、電動駆動装置1の軽量化に寄与する。
【0155】
それぞれ電界効果トランジスタTRを有する第1パワー回路25A、第2パワー回路25Bを制御する制御回路24を有する第2回路基板20を有し、第2回路基板20は、第2ハウジング11の反負荷側に配置され、第2ハウジング11に開けられた軸方向Axの第1貫通孔119に挿入された基板間コネクタにより、第1回路基板60と第2回路基板20とは電気的に接続されている。これにより、第2ハウジング11の軸方向の両面を放熱面として利用することができる。
【0156】
第2回路基板20は、第2ハウジング11に設けられた凹部11Rに収容される。これにより、電動駆動装置1の軸方向Axの大きさが小さくなる。
【0157】
モータステータ931は、第1コイルグループGr1に接続される第1モータコイル配線321と、第2コイルグループGr2に接続される第2モータコイル配線322とを備える。ターミナルブロック80は、2つあり、一方のターミナルブロック80と、他方のターミナルブロック80とは、支持体70を挟む位置に配置される。ここで、一方のターミナルブロック80は、第1モータコイル配線321と第1回路基板60とを電気的に接続し、他方のターミナルブロック80は、第2モータコイル配線322と第1回路基板60とを電気的に接続する。これにより、コイル配線が冗長化されても、支持体70の複数の側面を利用することにより、モータ30の径方向の大きさは抑制される。
【0158】
第2ハウジング11と支持体70とは、ネジなどの固定部材B2で連結されている。これにより、ターミナルブロック80がネジなどの固定部材BMで押圧されても、押圧に伴う応力が、支持体70、固定部材B2、第2ハウジング11へ伝達される。その結果、第1回路基板60へかかる応力がさらに低減する。
【0159】
ECU10は、第1回路基板60と、第2回路基板20と、第2回路基板20を収容し、軸方向Axに貫通する第1貫通孔119を有する第2ハウジング11と、第2ハウジング11を覆う蓋体40と、基板間コネクタを含む。第1回路基板60は、モータコイルを励磁する電流を出力する電界効果トランジスタである複数のスイッチング素子252と、シャフト31の軸方向Axの延長線上に配置された回転角度センサ23aとが実装されている。第1回路基板は、シャフト31の反負荷側に配置されている。第2回路基板20は、複数のスイッチング素子252に供給する電流を制御する制御回路24を有する。基板間コネクタは、第2ハウジング11の反負荷側に配置されている第2回路基板20と、第2ハウジング11の負荷側に配置されている第1回路基板60とを接続し、第1貫通孔119に配置される。
【0160】
これにより、基板間コネクタが制御信号の伝送を確保しつつ、第2のヒートシンクが第1回路基板及び第2回路基板の放熱性を高める。
【0161】
第2ハウジング11は、第2回路基板20を収容し、かつ第1回路基板60と第2回路基板20とに挟まれ、第1回路基板60の電子部品及び第2回路基板20の電子部品の熱を受熱するヒートシンクとなる。支持体70は、第1回路基板60の負荷側に設けられ、第1回路基板60の電子部品の熱を受熱するヒートシンクとなっている。ヒートシンク29は、第2回路基板20の反負荷側に設けられ、第2回路基板20の電子部品の熱を受熱する。蓋体40は、第2ハウジング11の反負荷側を覆い、蓋体40と第2ハウジング11とは、第2回路基板20、ヒートシンク29及び電源配線モジュール90を取り囲む。
【0162】
これにより、軸方向に、ヒートシンクである支持体70、第1回路基板60、ヒートシンクである第2ハウジング11、第2回路基板20、ヒートシンク29、電源配線モジュール90、蓋体40が順に配置されている。その結果、ハウジング内の容積を抑制しつつ、ハウジング内の密閉性を高め、ハウジング内の温度上昇を抑制することができる。
【0163】
ECU10は、第1回路基板60と、第2回路基板20と、第2回路基板20を収容する第2ハウジング11と、第2ハウジング11を覆う金属製の蓋体40と、蓋体40を貫通する電源入力端子PWCH1及び電源入力端子PWCH2を有するコネクタCNT2と、電源配線モジュール90と、ヒートシンク29と、を含む。第1回路基板60は、モータコイルを励磁する電流を出力する電界効果トランジスタである複数のスイッチング素子252と、シャフト31の軸方向Axの延長線上に配置された回転角度センサ23aとが実装されている。第1回路基板は、シャフト31の反負荷側に配置されている。第2回路基板20は、複数のスイッチング素子252に供給する電流を制御する制御回路24を有する。電源配線モジュール90は、ノイズ除去用のチョークコイル91及びコンデンサ92と、一端が前記電源入力端子PWinに接続され、第1回路基板60及び第2回路基板に電力を供給するリードフレーム配線と、前記第1回路基板へ接続する第1電源端子と、前記第2回路基板へ接続する第2電源端子とが樹脂でモールドされている。ヒートシンク29は、電源配線モジュール90と第2回路基板20とに挟まれ、蓋体40との間に、電源配線モジュール90を挟む。
【0164】
これにより、電源配線モジュール90内の電源配線があるので、第1回路基板60にある電源配線の面積が抑制される。その結果、第1回路基板60の面積が抑制され、ECU10は、径方向の大きさが小さくなる。また、電源配線モジュール90が蓋体40及びヒートシンク29に挟まれるので、チョークコイル91の放熱性を高めることができる。その結果、第2ハウジング11内の温度上昇が抑制される。
【0165】
また、電動パワーステアリング装置100は、上述の電動駆動装置1を備え、電動駆動装置1が補助操舵トルクを生じさせる。これにより、モータ30のシャフト31に平行な軸方向Axの大きさが抑制され、電動パワーステアリング装置100の配置の自由度が向上する。ECU10の信頼性が向上するので、電動パワーステアリング装置100の信頼性も向上する。
【符号の説明】
【0166】
1 電動駆動装置
10 ECU
11 第2ハウジング(ヒートシンク)
11R 収容空間
12 封止部材
20 第2回路基板
23 検出回路
23a 回転角度センサ
24 制御回路
25A 第1パワー回路
25B 第2パワー回路
29 第3ヒートシンク
30 モータ
30G 歯車
31 シャフト
32 磁石
32A 磁石フォルダ
36 側面カバー
36H 工具挿入孔
37 第1モータコイル
38 第2モータコイル
40 蓋体
60 第1回路基板
61 レセプタクル
62 プラグ
70 支持体(ヒートシンク)
90 電源配線モジュール
91 チョークコイル
92 コンデンサ
93 第1電源端子
930 第1ハウジング(モータハウジング)
100 電動パワーステアリング装置
101 車両
112 放熱面
113 凹部
114 凸部
114H 雌ねじ部
118 第2貫通孔
119 第1貫通孔