(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20240925BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20240925BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20240925BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G06F1/16 312U
G06F3/02 400
G06F1/16 312E
G06F1/16 312Z
H04R1/02 102Z
H04R1/00 311
(21)【出願番号】P 2023085190
(22)【出願日】2023-05-24
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂東 正明
(72)【発明者】
【氏名】佐野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】梅島 一哉
(72)【発明者】
【氏名】細貝 達哉
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-286874(JP,A)
【文献】特開2000-122793(JP,A)
【文献】特開2023-071361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16
G06F 3/02
H04R 1/02
H04R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の上面にキーボードが設けられ、前記筐体内に一対のスピーカを有する電子機器であって、
前記キーボードは、
プレートと、
操作面を形成するキートップおよび前記プレートに対して前記キートップを昇降自在にガイドするガイド機構を備える複数のキースイッチと、
を有しており、隣接する前記キートップ同士がフレームによって仕切られており、
前記
プレートには前記スピーカの音を上方に伝える通音孔が
前記フレームと前記キートップとの隙間を臨む位置に形成されて
おり、
前記スピーカは上方に向かって音を出す向きで、上面に設けられた音を出す振動板が前記プレートの下で前記通音孔を臨む位置に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
一対の前記スピーカはそれぞれブラケットを介して前記キーボードに固定されており、
前記ブラケットは、
前記スピーカを支持するスピーカ支持部と、
前記スピーカ支持部とは異なる位置で前記キーボードの下面に固定されるキーボード固定部と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項
1に記載の電子機器において、
複数の前記キースイッチのうち2つは左右に離れた位置にある横長形状のシフトキーであり、
前記通音孔は、少なくとも左側の前記シフトキーの前記キートップと前記フレームとの隙間を臨む位置に形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項
1に記載の電子機器において、
複数の前記キースイッチのうち2つは左右に離れた位置にある横長形状のシフトキーであり、
少なくとも左側の前記スピーカにおける前記振動板は、左側の前記シフトキーと重なる位置に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子機器において、
前記通音孔はスリット形状である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1に記載の電子機器において、
前記通音孔は通音防水膜で塞がれている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の上面にキーボードが設けられ、該筐体内に一対のスピーカを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型パーソナルコンピュータ(以下、ノート型PCという)やタブレット型PC等の電子機器には、キーボードを含む本体筐体に一対のスピーカが設けられる場合がある。本体筐体にはスピーカの音声を外部に出力するための通音孔が設けられる。通音孔は本体筐体の上面に形成すると目立つことから下部に形成し、これに合わせてスピーカを下向きに配置することがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スピーカおよび通音孔を筐体の下部に設けると音はユーザの耳に直接届かず、机などの載置面で反射することから籠ったように聞こえる傾向がある。音がなるべく鮮明に聞こえるようにするためには通音孔の数を増やすなどの対策が考えられる。しなしながら筐体のカバーはある程度の厚みがあり、CNC加工などで多数の通音孔を形成することは加工時間増およびコスト増となる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、低コストで鮮明な音を出力することのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様に係る電子機器は、筐体の上面にキーボードが設けられ、前記筐体内に一対のスピーカを有する電子機器であって、前記スピーカは上方に向かって音を出す向きで、少なくとも音を出す振動板が前記キーボードの下側に配置されており、前記キーボードには前記スピーカの音を上方に伝える通音孔が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、キーボードにはスピーカの音を上方に伝える通音孔が形成されていることからユーザに対して鮮明な音を出力することができ、その他の筐体を構成するカバーには通音孔が不要または数が抑制されることで低コストとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器の斜視図である。
【
図2】
図2は、下カバー部材を取り外した状態の筐体の底面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す筐体からさらにマザーボード、バッテリー、サーマルモジュール、SSD、通信モジュールを取り外した状態の底面図である。
【
図4】
図4は、筐体における左右のスピーカとその間の部分を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、キーボード、下カバー部材、左右のスピーカ、およびブラケットの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、キーボードの一部拡大模式断面図である。
【
図8】
図8は、筐体における左側のシフトキーとその周辺部の平面図である。
【
図9】
図9は、筐体における右側のシフトキーとその周辺部の平面図である。
【
図10】
図10は、右のスピーカとフラットケーブルとの接続部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器10の斜視図である。
図1に示すように、電子機器10は、キーボード12を搭載した筐体14と、ディスプレイ16を搭載したディスプレイ筐体18とを備える。本実施形態では、筐体14とディスプレイ筐体18とをヒンジ20で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである電子機器10を例示する。
図1は、ディスプレイ筐体18を筐体14から開いた使用形態を示す。電子機器10は、キーボードを搭載した電子機器であれば、クラムシェル型に限定されず、例えばキーボード単体であってもよい。
【0011】
以下、筐体14及びこれに搭載されたキーボード12等の各要素について、ディスプレイ16を見ながらキーボード12を使用するユーザから見た方向を基準とし、手前側を前、奥側を後、厚み方向を上下、幅方向を左右と呼んで説明する。
【0012】
ディスプレイ筐体18は、筐体14よりも薄い扁平な箱体であり、前面にディスプレイ16を有する。ディスプレイ16は、例えば有機ELや液晶等で構成される。ディスプレイ筐体18は、下端部が筐体14の後端部とヒンジ20を介して連結されている。
【0013】
筐体14は薄い扁平な箱体であり、キーボード12およびタッチパッド22が上面14aに臨んでいる。上面14aにおいてキーボード12は後側で左右ほぼ全幅に亘って設けられ、タッチパッド22は前側の略中央部分に設けられている。
【0014】
キーボード12は、筐体14の上部にて支持されている。キーボード12は、複数のキースイッチ24を有する。キーボード12は、各キースイッチ24のキートップ24a同士がフレーム26で仕切られたアイソレーション型のキーボード装置である。キーボード12の内部構造については後述する(
図6参照)。
【0015】
フレーム26は、樹脂や金属等で形成された網目状の枠体である。本実施形態の筐体14は、上面14a及び四周側面を形成する上カバー部材27と、上カバー部材27の下面開口を閉じる下カバー部材28とで構成されている。フレーム26は、上面14aを形成する上カバー部材27に一体成形されている。フレーム26は上カバー部材27と別体に構成されてもよい。フレーム26は、各キートップ24aが上下動可能に挿入される複数のキー孔26aを有する。フレーム26は、左右方向に延びた横枠部26bと、前後方向に延びた縦枠部26cとで囲まれた部分がキー孔26aとなる。
【0016】
キースイッチ24のうち2つはシフトキー29L,29Rである。周知のようにシフトキー29L,29Rは修飾キーであり他の文字キーと一緒に押し下げることで、入力される文字を切り替えるものである。シフトキー29L,29Rは小指による操作が容易となるように左右に離れた位置で横長形状となっている。
【0017】
図2は、下カバー部材28を取り外した状態の筐体14の底面図である。
図2に示すように、筐体14の内部には後側にマザーボード30、前側にバッテリー32が設けられている。バッテリー32における本体部32aの中央後側には突出部32bがあり、該突出部32bがマザーボード30と隣接している。突出部32aはマザーボード30などと接続する部分であり、バッテリー32の横方向全幅の略半分程度の幅である。マザーボード30はキーボード12と重なる範囲に設けられている。バッテリー32は突出部32b以外がキーボード12と重ならない範囲に設けられている。バッテリー32の横幅は筐体14のほぼ全幅を占める。
【0018】
筐体14内では前縁から左右側方に亘ってL字状の2つのアンテナユニット34L,34Rが設けられている。マザーボード30にはCPU等を冷却するためのサーマルモジュール36が接続されている。サーマルモジュール36は左右2つのファン36L,36Rおよびヒートパイプ36aを有する。右側のファン36Rの前にはSSD(Solid State Drive)38が設けられ、左側のファン36Lの前側には通信モジュール40が設けられている。
【0019】
筐体14内には、ステレオ音源を再生可能な左右一対のスピーカ42L,42Rが設けられている。一対のスピーカ42L,42Rを代表的にスピーカ42とも呼ぶ。スピーカ42は上方に向かって音を出す向きであり、音を出す矩形の振動板44が上面に設けられている。振動板44は高音用と低音用とに分かれていてもよい。左側のスピーカ42Lはバッテリー32の本体部32aよりも後で、かつ突出部32bの左側の区画を占めるように設けられており、通信モジュール40を避けるように中央部はやや細く左側に向かって広がる変則形状となっている。スピーカ42Lでは、振動板44が斜辺に沿ってやや傾斜して設けられている。
【0020】
右側のスピーカ42Rは、バッテリー32の本体部32aとSSD38との間で、かつ突出部32bの右側の区画を占めるように設けられており、略矩形である。スピーカ42Rでは、振動板44が右寄り位置で横長の向きで傾斜なく設けられている。スピーカ42Rはハーネス46によってマザーボード30と接続されている。
【0021】
スピーカ42は中央寄りの内側取付片48および側方の外側取付片50を有する。外側取付片50は他の部分よりやや上側位置となるような段差形状となっている(
図4参照)。スピーカ42には内側取付片48に1つ、外側取付片50に2つで合計3つの取付部52が設けられている。外側取付片50の2つの取付部52は前後方向に並列している。スピーカ42は、外側取付片50以外の部分がキーボード12の下側に配置されている(
図3参照)。また、左右の振動板44は、シフトキー29L,29Rと重なる位置に設けられている。ただし、キーボード12が右側にテンキーなどを含むフルサイズである場合には、少なくとも左側の振動板44がシフトキー29Lと重なる位置に設けられているとよい。
【0022】
図3は、
図2に示す筐体14からさらにマザーボード30、バッテリー32、サーマルモジュール36、SSD38、通信モジュール40を取り外した状態の底面図である。
図4は、筐体14における左右のスピーカ42L,42Rとその間の部分を示す斜視図である。
図5は、キーボード12、下カバー部材28、左右のスピーカ42L,42R、およびブラケット58の分解斜視図である。
図5の上カバー部材27はフレーム26、キー孔26aなどを省略した模式表現としている。キーボード12は多数のネジ66によってフレーム26(
図1参照)に固定される。
【0023】
スピーカ42L,42Rの各外側取付片50は、2つの取付部52に形成されたピン孔に対して上カバー部材27から下向きに突出するピン54が小さいゴム筒56を介して挿入されることによって弾性的に固定される。ゴム筒56はシリコンゴム、ラバーなどの樹脂弾性体である。詳細については省略するが、ピン54およびゴム筒56は取付部52に対する適度な強度の抜け止め構造を有している。
【0024】
ブラケット58はスピーカ42Lとスピーカ42Rとの間に設けられた横長の金属板である。ブラケット58は薄く、バッテリー32における突出部32の一部が厚み方向に重なっている(
図2参照)。ブラケット58は両端に設けられた下向きのピン(スピーカ支持部)54と、横方向に分散配置された4つのネジ孔(キーボード固定部)60と、中央に設けられたカバー止めボス62と、2つの位置決め部64とを有する。ブラケット58は4つのネジ孔60をそれぞれ通るネジ66によってキーボード12の下面に固定される。カバー止めボス62は下カバー部材28の固定に用いられる。ブラケット58におけるピン54が設けられている両端部はキーボード12の下面に対して僅かに隙間が確保されている。
【0025】
両端の2つのピン54と4つのネジ孔60の合計の6つはほぼ等間隔に設けられている。つまり、各ピン54はネジ孔60と適度に離れている。スピーカ42L,42Rの各内側取付片48は、取付部52に形成されたピン孔に対してブラケット58の両端のピン54に対してゴム筒56を介して固定される。これは、外側取付片50における取付部52と上カバー部材27のピン54との固定構造と同じである。
【0026】
ピン54と取付部52とは、ゴム筒56を介して固定されることで、前後、左右、上下の各方向について弾性的に固定され、スピーカ42の音響出力による振動が筐体14に伝達されることがない。また、フローティング構造が実現され所謂オーディオインシュレータとして作用することでスピーカ42の音質が向上する。
【0027】
ブラケット58は、内側取付片48と固定されるピン54とは異なる位置にあるネジ孔60でネジ66によってキーボード12に固定されるため、スピーカ42の振動はピン54とネジ孔60との間で減衰されてキーボード12に直接伝わることがなく、キートップ24aが共振したり、ユーザに違和感を与えることがない。また、ピン54が設けられているブラケット58の両端部はキーボード12の下面に対して隙間が確保されていることから、該キーボード12に対して直接的に振動を加えることがない。さらに、ブラケット58は複数(本実施例では4か所)のネジ孔60で固定されるため、キーボード12に加わる振動が分散され、局所的に大きい振動を加えることがない。ブラケット58をある程度の長さを有する両面テープなどでキーボード12に固定しても実質的に複数個所で固定されていることになり、同様の振動分散効果が得られる。
【0028】
筐体14内の後側にはブラケット58とは別のブラケット68(
図3参照)がネジ66によってキーボード12の下面に固定されている。ブラケット68はマザーボード30の固定に用いられる。ブラケット58はブラケット68と同様にマザーボード30の固定用に兼用してもよい。
【0029】
左右のスピーカ42L,42Rは各内側部分がフラットケーブル70で接続されている。フラットケーブル70は音響信号を伝送するものである。フラットケーブル70とブラケット58とは前後方向に隣接しており、フラットケーブル70が前側、ブラケット58が後側にある。フラットケーブル70はFFC(Flexible Flat Cable)である。フラットケーブル70についてはさらに後述する。
【0030】
図5に示すように、キーボード12における前側の左右両端近傍には、それぞれ複数の通音孔72が形成されている。通音孔72は振動板44で発する音響を上方に通音するためのものである。通音孔72は横方向に長尺のスリット形状であり、キーボード12の左右両端でそれぞれ複数が2列に形成されている。左右2か所に分かれて形成されている複数の通音孔72は、それぞれ通音防水膜74によって塞がれる。通音防水膜74は通気性、通音性、防水性を有するフィルタや防水音響メッシュシートなどであり、振動板44の音響を通過させるとともに、外部から液体や異物の侵入を防止する。通音孔72のうち後側の列のものには符号72aを付し、前側の列のものには符号72bを付す。
【0031】
図6は、キーボード12の一部拡大模式断面図である。キーボード12は、プレート76と、該プレート76上に設けられる複数のキースイッチ24とを有する。プレート76はベースプレート76aとメンブレンシート76bとが積層して形成されている。プレート76には、さらに導光板や遮光板などが含まれる場合がある。キースイッチ24は、キートップ24a、プレート76に対してキートップ24aを昇降自在にガイドするガイド機構24b、およびラバードーム24cを備える。キートップ24aは、ユーザが押圧操作する操作部となる部品である。ガイド機構24bはキートップ24aをプレート76の上面側で上下動可能にガイドするパンタグラフ機構である。ラバードーム24cは、キートップ24aが押下された場合にメンブレンシート76bを押圧すると共に、キートップ24aの押下操作が解除された際にキートップ24aを元の位置に復帰させる弾性部材である。
図6における符号78は、シフトキー29L,29Rの前側のキー(カーソルキーやコントロールキーなど)を示す。本実施例のキーボード12はメンブレン式であるが、メカニカル式や静電容量無接点方式などであってもよい。また、
図1に示すように、キーボード12はテンキーのないコンパクト式であるが、テンキーや独立配置のカーソルキーなどを有するフルサイズ式であってもよい。
【0032】
スピーカ42は、概ねシフトキー29および隣接する前側のキー78の下側に配置されている。また、振動板44はシフトキー29と前側のキー78とに亘る範囲の下側部分で通音孔72を臨む位置にある。スピーカ42の上面には、振動板44および通音孔72を囲う枠状のスポンジ80が設けられている。スポンジ80はスピーカ42の振動がプレート76に伝わることを防止するとともに、仮に通音防水膜74が破れるなどして水がプレート76の下方まで浸入した場合に周囲へ拡散することを防止する。
【0033】
図7は、単体のキーボード12の平面図である。
図8は、筐体14における左側のシフトキー29Lとその周辺部の平面図である。
図9は、筐体14における右側のシフトキー29Rとその周辺部の平面図である。
【0034】
図6~
図9に示すように、通音孔72は、フレーム26とキートップ24aとの隙間82を臨む位置で、プレート76に形成されている。具体的には、通音孔72aはシフトキー29とフレーム26との隙間82aを臨む位置にあり、通音孔72bはキー78とフレーム26との隙間82bを臨む位置にある。これにより、
図6の矢印で示すように、振動板44から上方に向けて発せられる音は通音防水膜74および通音孔72を通り、そのまま隙間82から上方へ向けて抜けることになる。したがってユーザに対しては振動板44からほとんど遮られることのない鮮明な音を伝えることができる。
【0035】
なお、上カバー部材27や下カバー部材に孔を開ける場合はCNC加工になる為、孔の数だけ加工時間が発生して加工費が上がってしまう。一方、本実施例のようにプレート76に通音孔72を形成する場合はプレスで一度に孔を開ける事出来る為、加工時間が短縮され低コストとなる。ただし、設計条件によっては上カバー部材27や下カバー部材28に別途の通音孔を補助的に設けてもよい。
【0036】
図7に示すように、通音孔72はキーボード12の単体では多少視認されるが、
図8、
図9に示すように筐体14に組み込んだ状態ではフレーム26に覆われ、しかも奥まった位置にあるためほとんど視認されることなく意匠上好適である。スピーカ42は少なくとも振動板44がキーボード12の下側に配置されており、筐体14内でキーボード12以外の範囲にレイアウト上の余裕が生じ、例えばアンテナユニット34L,34R(
図2参照)を配置しやすくなる。
【0037】
図8、
図9に示すように通音孔72aは、シフトキー29のキートップ24aとフレーム26との隙間82aを臨む位置に形成されている。キーボード12は対応言語により左右のシフトキー29の長さが異なる場合があるが、通音孔72aは横長のシフトキー29に応じて適度に長く形成することができ、音が通りやすい。
【0038】
図10は、右のスピーカ42Rとフラットケーブル70との接続部の拡大斜視図である。
図4、
図10に示すように、スピーカ42Rは前方内側の端の位置で、内側取付片48と壁80を隔てて切欠82が形成されている。フラットケーブル70は左右方向に延在しており、スピーカ42Rとスピーカ42Lとを直線状に接続しており、短くて足り低コストとなる。フラットケーブル70は筐体14の扁平面に沿う向きで配置されており、該筐体14の薄型化に寄与する。
【0039】
フラットケーブル70は右端の切欠82内に折筋部70aを形成しており、該折れ筋部70a以外の長尺延在部70bは平面視でバッテリー32の突出部32aと重なるように配置されており(
図2参照)、スペース効率がよい。また、フラットケーブル70は薄いためバッテリー32の突出部32bとキーボード12との間を通るように配置可能である。折筋部70aはフラットケーブル70の全長と比較して極短い。具体的には、フラットケーブル70の全長は例えば150mm程度であり、折筋部70aは波形に沿って9mm程度である。
【0040】
折筋部70aはバッテリー32と重ならない位置に形成されており、スピーカ42Rの筐体に近い側から順に谷折れ筋88a,山折れ筋86、および谷折れ筋88bがそれぞれ前後方向に沿うように形成されている。山折れ筋86は下面が凸で、谷折れ筋88a,88bは下面が凹で上面が凸の折れ筋である。山折れ筋86および谷折れ筋88a,88bは形状が不定の湾曲とは異なり、筋形状が安定している。山折れ筋86および谷折れ筋88a、88bは自動機または治具によって形成してもよいし、作業者が手作業で形成してもよい。
【0041】
図11は、折筋部70aとその周辺の側面図である。フラットケーブル70は切欠82内でスピーカ42Rに対してやや上方の位置で接続されている。フラットケーブル70の長尺延在部70bは、スピーカ42Rの上面42Raよりもやや上側にあってバッテリー32の突出部32bと積層しやすくなっている。
図11では突出部32bの範囲を仮想線で示している。
【0042】
スピーカ42Rおよびスピーカ42Lの組付け位置が設計値に整合している場合、山折れ部86は、横方向に関しては2つの谷折れ筋88a,88bの略中間位置にあり、上下方向に関してはスピーカ42Rの下面42Rbよりもやや上側にある。また、谷折れ筋88bはスピーカ42Rの内側面42Rcよりやや右側にある。この場合本実施例では、山折れ部86が90度程度、谷折れ筋88a,88bが135度程度となっている。
【0043】
スピーカ42Rとスピーカ42Lとが想定される組付け位置の誤差範囲で最も近づいて配置された場合、折筋部70aでは山折れ筋86、谷折れ筋88a,88bの角度がそれぞれやや小さくなって仮想線90で示す経路となる。この場合、谷折れ筋88bはやや右側に移動する。また、山折れ部86はやや下側に移動するが下面42Rbを超えることがないように設定されている。
【0044】
スピーカ42Rとスピーカ42Lとが想定される組付け位置の誤差範囲で最も離れて配置された場合、折筋部70aでは山折れ筋86、谷折れ筋88a,88bの角度がそれぞれやや大きくなって仮想線92で示す経路となる。この場合、山折れ部86はやや上側に移動する。また、谷折れ筋88bはやや左側に移動するがスピーカ42Rの内側面42Rcを超えることがないように設定されている。
【0045】
谷折れ筋88bは、仮想線90における位置と仮想線92における位置で横方向の差Δが、例えば2mm程度であり、この幅の範囲内でスピーカ42L,42R間の配置誤差を好適に吸収することができる。
【0046】
折れ筋部70aは小さい切欠82に配置可能であって、他の部分のスペースを圧迫することがない。なお、仮に折れ筋部70aを折れ筋のない湾曲形状とすると、湾曲部は弾性によっては元の形状の戻ろうとする力を発生させてスピーカ42L,42Rに横方向の圧力を加えてしまうことになる。これに対して折れ筋部70aは、山折れ筋86および谷折れ筋86a,86bが折れて、その分フラットケーブル70の見かけ長さがやや短くなっている状態で安定しており、スピーカ42L,42Rに対してほとんど圧力を加えることがない。
【0047】
本実施例のキーボード12はアイソレーション型を例示したが、アイソレーション型でない場合においても少なくとも音を出す振動板44がキーボード12の下側に配置されており、キーボード12に通音孔72が形成されていればユーザに対して鮮明な音を出力することができる。
【0048】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10 電子機器
12 キーボード
24 キースイッチ
24a キートップ
26 フレーム
29,29L,29R シフトキー
29 シフトキー
32 バッテリー
32b 突出部
42L,42R スピーカ
44 振動板
52 取付部
54 ピン(スピーカ支持部)
56 ゴム筒
58 ブラケット
60 ネジ孔(キーボード固定部)
66 ネジ
70 フラットケーブル
70a 折筋部
70b 長尺延在部
72,72a,72b 通音孔
74 通音防水膜
76 プレート
76a ベースプレート
76b メンブレンシート
86 山折れ筋
86a,86b 谷折れ筋
【要約】
【課題】低コストで鮮明な音を出力することのできる電子機器を提供する。
【解決手段】
【請求項1】電子機器10は、筐体14の上面にキーボード12が設けられ、筐体14内に一対のスピーカ42L,42Rを有する。スピーカ42L,42Rは上方に向かって音を出す向きで、少なくとも音を出す振動板44がキーボード12の下側に配置されている。キーボード12にはスピーカ42L,42Rの音を上方に伝える通音孔72が形成されている。スピーカ42L,42Rはそれぞれブラケット58を介してキーボード12に固定されている。ブラケット58は、スピーカ42L,42Rを支持するピン54と、該ピン54とは異なる位置でキーボード12の下面に固定されるネジ孔60とを有する。
【選択図】
図5