IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】対象物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240925BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20240925BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
B23K26/53
H01L21/304 601Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023111451
(22)【出願日】2023-07-06
(62)【分割の表示】P 2020553982の分割
【原出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2023129454
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2018204107
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】奥間 惇治
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-022283(JP,A)
【文献】特開2013-049161(JP,A)
【文献】特開2016-215231(JP,A)
【文献】国際公開第2018/192689(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にレーザ光を照射し、前記対象物の内部において仮想面に沿って改質領域を形成し、前記改質領域を境界として前記対象物の一部を剥離する加工方法であって、
回転軸を中心に回転可能なステージ上に前記対象物を配置する工程と、
前記ステージ上の前記対象物において、鉛直方向から見て、前記回転軸を含む円形状の領域と、前記円形状の領域以外の環状の領域と、を定める工程と、
前記対象物における前記環状の領域に対して、前記改質領域に含まれる複数の改質スポットのピッチが第1ピッチになるように、前記レーザ光を照射して前記仮想面に沿って前記改質領域を形成する工程と、
前記対象物における前記円形状の領域に対して、複数の前記改質スポットのピッチが第1ピッチ未満となるように、前記レーザ光を照射して前記仮想面に沿って前記改質領域を形成する工程と、を備える、対象物の加工方法。
【請求項2】
前記円形状の領域に対して前記改質領域を形成する工程では、含まれる複数の前記改質スポットのピッチが一定にならないように前記改質領域を形成する、請求項1に記載の対象物の加工方法。
【請求項3】
対象物にレーザ光を照射し、前記対象物の内部において仮想面に沿って改質領域を形成し、前記改質領域を境界として前記対象物の一部を剥離する加工方法であって、
回転軸を中心に回転可能なステージ上に前記対象物を配置する工程と、
前記ステージ上の前記対象物において、鉛直方向から見て、前記回転軸を含む円形状の領域と、前記円形状の領域以外の環状の領域と、を定める工程と、
前記対象物における前記環状の領域に対して、前記レーザ光を照射すると共に、前記レーザ光の集光点を前記仮想面に沿って移動することにより、前記仮想面に沿って前記改質領域を形成する工程と、
前記対象物における前記円形状の領域に対して、前記レーザ光を照射すると共に、前記レーザ光の集光点を前記仮想面に沿って移動することにより、前記仮想面に沿って前記改質領域を形成する工程と、を備え、
前記環状の領域に対して前記改質領域を形成する工程と前記円形状の領域に対して前記改質領域を形成する工程とでは、加工進行方向が互いに異なる、対象物の加工方法。
【請求項4】
前記環状の領域に対して前記改質領域を形成する工程では、曲線状に延びる前記改質領域を形成し、
前記円形状の領域に対して前記改質領域を形成する工程では、直線状に延びる前記改質領域を形成する、請求項3に記載の対象物の加工方法。
【請求項5】
前記環状の領域に対して前記改質領域を形成する工程及び前記円形状の領域に対して前記改質領域を形成する工程では、含まれる複数の改質スポットのピッチが、前記環状の領域に対して前記改質領域を形成する工程と前記円形状の領域に対して前記改質領域を形成する工程とで同じピッチで一定になるように前記改質領域を形成する、請求項3又は4に記載の対象物の加工方法。
【請求項6】
対象物にレーザ光を照射し、前記対象物の内部において仮想面に沿って改質領域を形成し、前記改質領域を境界として前記対象物の一部を剥離する加工方法であって、
回転軸を中心に回転可能なステージ上に前記対象物を配置する工程と、
前記ステージ上の前記対象物において、鉛直方向から見て、前記回転軸を含む円形状の領域と、前記円形状の領域以外の環状の領域と、を定める工程と、
前記対象物における前記環状の領域に対して、前記ステージを回転させながら前記レーザ光を照射し、前記仮想面に沿って前記改質領域を形成する工程と、
前記対象物における前記円形状の領域に対して、前記ステージを回転させながら前記レーザ光を照射し、前記仮想面に沿って前記改質領域を形成する工程と、を備え、
前記ステージの回転速度は、最低回転速度から最大回転速度まで変更可能であり、
前記環状の領域に対して前記改質領域を形成する工程では、前記回転軸に前記レーザ光の集光点が近づくにつれて段階的に大きくなる回転速度で前記ステージを回転させ、
前記円形状の領域に対して前記改質領域を形成する工程では、前記最大回転速度で前記ステージを回転させる、対象物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、対象物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の加工方法に関する技術として、特許文献1には、ワークを保持する保持機構と、保持機構に保持されたワークにレーザ光を照射するレーザ照射機構と、を備えるレーザ加工装置が記載されている。特許文献1に記載のレーザ加工装置では、集光レンズを有するレーザ照射機構が基台に対して固定されており、集光レンズの光軸に垂直な方向に沿ったワークの移動が保持機構によって実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5456510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物の加工方法では、効率よい剥離加工を実現することが望まれる。
【0005】
本発明の一側面は、効率よい剥離加工を実現することが可能な対象物の加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る対象物の加工装置は、対象物にレーザ光を照射し、対象物の内部において仮想面に沿って改質領域を形成し、改質領域を境界として対象物の一部を剥離する加工方法であって、回転軸を中心に回転可能なステージ上に対象物を配置する工程と、ステージ上の対象物に対して、鉛直方向から見て、回転軸を含む円形状の領域と、円形状の領域以外の環状の領域と、を設定する工程と、対象物における環状の領域に対して、改質領域に含まれる複数の改質スポットのピッチが第1ピッチになるように、レーザ光を照射して仮想面に沿って改質領域を形成する工程と、対象物における円形状の領域に対して、複数の改質スポットのピッチが第1ピッチ未満となるように、レーザ光を照射して仮想面に沿って改質領域を形成する工程と、を備える。
【0007】
本発明の一側面に係る対象物の加工装置は、円形状の領域に対して改質領域を形成する工程では、含まれる複数の改質スポットのピッチが一定にならないように改質領域を形成してもよい。
【0008】
本発明の一側面に係る対象物の加工装置は、対象物にレーザ光を照射し、対象物の内部において仮想面に沿って改質領域を形成し、改質領域を境界として対象物の一部を剥離する加工方法であって、回転軸を中心に回転可能なステージ上に対象物を配置する工程と、ステージ上の対象物に対して、鉛直方向から見て、回転軸を含む円形状の領域と、円形状の領域以外の環状の領域と、を設定する工程と、対象物における環状の領域に対して、レーザ光を照射すると共に、レーザ光の集光点を仮想面に沿って移動することにより、仮想面に沿って改質領域を形成する工程と、対象物における円形状の領域に対して、レーザ光を照射すると共に、レーザ光の集光点を仮想面に沿って移動することにより、仮想面に沿って改質領域を形成する工程と、を備え、環状の領域に対して改質領域を形成する工程と円形状の領域に対して改質領域を形成する工程とでは、加工進行方向が互いに異なる。
【0009】
本発明の一側面に係る対象物の加工装置は、環状の領域に対して改質領域を形成する工程では、曲線状に延びる改質領域を形成し、円形状の領域に対して改質領域を形成する工程では、直線状に延びる改質領域を形成してもよい。
【0010】
本発明の一側面に係る対象物の加工装置は、環状の領域に対して改質領域を形成する工程及び円形状の領域に対して改質領域を形成する工程では、含まれる複数の改質スポットのピッチが一定になるように改質領域を形成してもよい。
【0011】
本発明の一側面に係る対象物の加工装置は、対象物にレーザ光を照射し、対象物の内部において仮想面に沿って改質領域を形成し、改質領域を境界として対象物の一部を剥離する加工方法であって、回転軸を中心に回転可能なステージ上に対象物を配置する工程と、ステージ上の対象物に対して、鉛直方向から見て、回転軸を含む円形状の領域と、円形状の領域以外の環状の領域と、を設定する工程と、対象物における環状の領域に対して、ステージを回転させながらレーザ光を照射し、仮想面に沿って改質領域を形成する工程と、対象物における円形状の領域に対して、ステージを回転させながらレーザ光を照射し、仮想面に沿って改質領域を形成する工程と、を備え、ステージの回転速度は、最低回転速度から最大回転速度まで変更可能であり、環状の領域に対して改質領域を形成する工程では、回転軸にレーザ光の集光点が近づくにつれて段階的に大きくなる回転速度でステージを回転させ、円形状の領域に対して改質領域を形成する工程では、最大回転速度でステージを回転させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、効率よい剥離加工を実現することが可能な対象物の加工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態のレーザ加工装置の斜視図である。
図2図2は、図1に示されるレーザ加工装置の一部分の正面図である。
図3図3は、図1に示されるレーザ加工装置のレーザ加工ヘッドの正面図である。
図4図4は、図3に示されるレーザ加工ヘッドの側面図である。
図5図5は、図3に示されるレーザ加工ヘッドの光学系の構成図である。
図6図6は、変形例のレーザ加工ヘッドの光学系の構成図である。
図7図7は、変形例のレーザ加工装置の一部分の正面図である。
図8図8は、変形例のレーザ加工装置の斜視図である。
図9図9は、第1実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す平面図である。
図10図10(a)は、対象物の例を示す平面図である。図10(b)は、図10(a)に示す対象物の側面図である。
図11図11(a)は、第1実施形態に係るトリミング加工を説明するための対象物の側面図である。図11(b)は、図11(a)の続きを示す対象物の平面図である。図11(c)は、図11(b)に示す対象物の側面図である。
図12図12(a)は、図11(b)の続きを示す対象物の側面図である。図12(b)は、図12(a)の続きを示す対象物の平面図である。
図13図13(a)は、図12(b)の続きを示す対象物の平面図である。図13(b)は、図13(a)に示す対象物の側面図である。図13(c)は、第1実施形態に係る剥離加工を説明するための対象物の側面図である。
図14図14(a)は、図13(c)の続きを示す対象物の平面図である。図14(b)は、図14(a)に示す対象物の側面図である。図14(c)は、図14(a)の続きを示す対象物の側面図である。図14(d)は、第1実施形態に係る研磨加工を説明するための対象物の側面図である。
図15図15(a)は、第1実施形態に係る第1剥離処理を説明するための対象物の平面図である。図15(b)は、図15(a)の続きを示す対象物の平面図である。
図16図16(a)は、図15(b)の続きを示す対象物の平面図である。図16(b)は、図16(a)の続きを示す対象物の平面図である。
図17図17は、図16(b)の続きを示す対象物の平面図である。
図18図18(a)は、第1及び第2レーザ光を分岐する場合の例を説明する図である。図18(b)は、第1及び第2レーザ光を分岐する場合の他の例を説明する図である。
図19図19(a)は、第2実施形態に係るトリミング加工を説明するための対象物の側面図である。図19(b)は、図19(a)の続きを示す対象物の側面図である。図19(c)は、図19(b)の続きを示す対象物の側面図である。
図20図20は、図19(c)の続きを示す対象物の斜視図である。
図21図21(a)は、対象物の例を示す平面図である。図21(b)は、第3実施形態に係る第1剥離処理を説明するための対象物の平面図である。図21(c)は、図21(b)の続きを示す対象物の平面図である。
図22図22は、変形例に係る第1剥離処理を説明するための対象物の平面図である。
図23図23は、第4実施形態に係る第1剥離処理を説明するための対象物の平面図である。
図24図24は、図23の続きを示す対象物の平面図である。
図25図25は、図24の続きを示す対象物の平面図である。
図26図26は、図25の続きを示す対象物の平面図である。
図27図27は、第5実施形態に係る剥離加工を説明するための対象物の平面図である。
図28図28は、図27の続きを示す対象物の平面図である。
図29図29は、第6実施形態に係る剥離加工を説明するための対象物の平面図である。
図30図30は、第7実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す平面図である。
図31図31は、第8実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す平面図である。
図32図32(a)は、第8実施形態に係る周縁処理を説明するための対象物の平面図である。図32(b)は、図32(a)の続きを示す対象物の平面図である。
図33図33(a)は、図32(b)の続きを示す対象物の平面図である。図33(b)は、図33(a)に示す対象物の側面図である。図33(c)は、図33(a)に示す対象物の他の側面図である。
図34図34(a)は、第8実施形態に係る除去処理を説明するための対象物の平面図である。図34(b)は、図34(a)の続きを示す対象物の平面図である。
図35図35は、図34(b)の続きを示す対象物の平面図である。
図36図36は、変形例に係る除去処理を説明するための対象物の平面図である。
図37図37は、第9実施形態に係る周縁処理における第1~第4レーザ光の照射及び停止のタイミングを示すグラフである。
図38図38は、第10実施形態に係る第1剥離処理を説明するための対象物の平面図である。
図39図39は、第11実施形態に係る第1剥離処理を説明するための対象物の平面図である。
図40図40は、第12実施形態に係る第1剥離処理を説明するための対象物の平面図である。
図41図41は、第13実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す平面図である。
図42図42は、第14実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す平面図である。
図43図43(a)は、トリミング加工後の対象物の除去領域を示す写真図である。図43(b)は、トリミング加工後の対象物の有効領域を示す写真図である。
図44図44(a)は、剥離加工により対象物に形成された改質領域を示す撮像画像である。図44(b)は、剥離加工後の対象物を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
まず、レーザ加工装置の基本的な構成、作用、効果及び変形例について説明する。
【0016】
[レーザ加工装置の構成]
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、複数の移動機構5,6と、支持部7と、1対のレーザ加工ヘッド(第1レーザ加工ヘッド、第2レーザ加工ヘッド)10A,10Bと、光源ユニット8と、制御部9と、を備えている。以下、第1方向をX方向、第1方向に垂直な第2方向をY方向、第1方向及び第2方向に垂直な第3方向をZ方向という。本実施形態では、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0017】
移動機構5は、固定部51と、移動部53と、取付部55と、を有している。固定部51は、装置フレーム1aに取り付けられている。移動部53は、固定部51に設けられたレールに取り付けられており、Y方向に沿って移動することができる。取付部55は、移動部53に設けられたレールに取り付けられており、X方向に沿って移動することができる。
【0018】
移動機構6は、固定部61と、1対の移動部(第1移動部、第2移動部)63,64と、1対の取付部(第1取付部、第2取付部)65,66と、を有している。固定部61は、装置フレーム1aに取り付けられている。1対の移動部63,64のそれぞれは、固定部61に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、Y方向に沿って移動することができる。取付部65は、移動部63に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。取付部66は、移動部64に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。つまり、装置フレーム1aに対しては、1対の取付部65,66のそれぞれが、Y方向及びZ方向のそれぞれに沿って移動することができる。移動部63,64のそれぞれは、第1及び第2水平移動機構(水平移動機構)をそれぞれ構成する。取付部65,66のそれぞれは、第1及び第2鉛直移動機構(鉛直移動機構)をそれぞれ構成する。
【0019】
支持部7は、移動機構5の取付部55に設けられた回転軸に取り付けられており、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。つまり、支持部7は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動することができ、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。支持部7は、対象物100を支持する。対象物100は、例えば、ウェハである。
【0020】
図1及び図2に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、移動機構6の取付部65に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光L1(「第1レーザ光L1」とも称する)を照射する。レーザ加工ヘッド10Bは、移動機構6の取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光L2(「第2レーザ光L2」とも称する)を照射する。
【0021】
光源ユニット8は、1対の光源81,82を有している。光源81は、レーザ光L1を出力する。レーザ光L1は、光源81の出射部81aから出射され、光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Aに導光される。光源82は、レーザ光L2を出力する。レーザ光L2は、光源82の出射部82aから出射され、別の光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Bに導光される。
【0022】
制御部9は、レーザ加工装置1の各部(複数の移動機構5,6、1対のレーザ加工ヘッド10A,10B、及び光源ユニット8等)を制御する。制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。これにより、制御部9は、各種機能を実現する。
【0023】
以上のように構成されたレーザ加工装置1による加工の一例について説明する。当該加工の一例は、ウェハである対象物100を複数のチップに切断するために、格子状に設定された複数のラインのそれぞれに沿って対象物100の内部に改質領域を形成する例である。
【0024】
まず、対象物100を支持している支持部7がZ方向において1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと対向するように、移動機構5が、X方向及びY方向のそれぞれに沿って支持部7を移動させる。続いて、対象物100において一方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0025】
続いて、一方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、一方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
【0026】
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、一方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し且つ一方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動するように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
【0027】
続いて、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0028】
続いて、他方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、他方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
【0029】
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、他方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し且つ他方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動するように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
【0030】
なお、上述した加工の一例では、光源81は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L1を出力し、光源82は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L2を出力する。そのようなレーザ光が対象物100の内部に集光されると、レーザ光の集光点に対応する部分においてレーザ光が特に吸収され、対象物100の内部に改質領域が形成される。改質領域は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。
【0031】
パルス発振方式によって出力されたレーザ光が対象物100に照射され、対象物100に設定されたラインに沿ってレーザ光の集光点が相対的に移動させられると、複数の改質スポットがラインに沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポットは、1パルスのレーザ光の照射によって形成される。1列の改質領域は、1列に並んだ複数の改質スポットの集合である。隣り合う改質スポットは、対象物100に対するレーザ光の集光点の相対的な移動速度及びレーザ光の繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
[レーザ加工ヘッドの構成]
【0032】
図3及び図4に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、を備えている。
【0033】
筐体11は、第1壁部21及び第2壁部22、第3壁部23及び第4壁部24、並びに、第5壁部25及び第6壁部26を有している。第1壁部21及び第2壁部22は、X方向において互いに対向している。第3壁部23及び第4壁部24は、Y方向において互いに対向している。第5壁部25及び第6壁部26は、Z方向において互いに対向している。
【0034】
第3壁部23と第4壁部24との距離は、第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さい。第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも小さい。なお、第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離と等しくてもよいし、或いは、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも大きくてもよい。
【0035】
レーザ加工ヘッド10Aでは、第1壁部21は、移動機構6の固定部61側に位置しており、第2壁部22は、固定部61とは反対側に位置している。第3壁部23は、移動機構6の取付部65側に位置しており、第4壁部24は、取付部65とは反対側であってレーザ加工ヘッド10B側に位置している(図2参照)。第5壁部25は、支持部7とは反対側に位置しており、第6壁部26は、支持部7側に位置している。
【0036】
筐体11は、第3壁部23が移動機構6の取付部65側に配置された状態で筐体11が取付部65に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部65は、ベースプレート65aと、取付プレート65bと、を有している。ベースプレート65aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている(図2参照)。取付プレート65bは、ベースプレート65aにおけるレーザ加工ヘッド10B側の端部に立設されている(図2参照)。筐体11は、第3壁部23が取付プレート65bに接触した状態で、台座27を介してボルト28が取付プレート65bに螺合されることで、取付部65に取り付けられている。台座27は、第1壁部21及び第2壁部22のそれぞれに設けられている。筐体11は、取付部65に対して着脱可能である。
【0037】
入射部12は、第5壁部25に取り付けられている。入射部12は、筐体11内にレーザ光L1を入射させる。入射部12は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。つまり、X方向における入射部12と第2壁部22との距離は、X方向における入射部12と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における入射部12と第4壁部24との距離は、X方向における入射部12と第3壁部23との距離よりも小さい。
【0038】
入射部12は、光ファイバ2の接続端部2aが接続可能となるように構成されている。光ファイバ2の接続端部2aには、ファイバの出射端から出射されたレーザ光L1をコリメートするコリメータレンズが設けられており、戻り光を抑制するアイソレータが設けられていない。当該アイソレータは、接続端部2aよりも光源81側であるファイバの途中に設けられている。これにより、接続端部2aの小型化、延いては、入射部12の小型化が図られている。なお、光ファイバ2の接続端部2aにアイソレータが設けられていてもよい。
【0039】
調整部13は、筐体11内に配置されている。調整部13は、入射部12から入射したレーザ光L1を調整する。調整部13が有する各構成は、筐体11内に設けられた光学ベース29に取り付けられている。光学ベース29は、筐体11内の領域を第3壁部23側の領域と第4壁部24側の領域とに仕切るように、筐体11に取り付けられている。光学ベース29は、筐体11と一体となっている。調整部13が有する各構成は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている調整部13が有する各構成の詳細については後述する。
【0040】
集光部14は、第6壁部26に配置されている。具体的には、集光部14は、第6壁部26に形成された孔26aに挿通された状態で、第6壁部26に配置されている。集光部14は、調整部13によって調整されたレーザ光L1を集光しつつ筐体11外に出射させる。集光部14は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。つまり、X方向における集光部14と第2壁部22との距離は、X方向における集光部14と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における集光部14と第4壁部24との距離は、X方向における集光部14と第3壁部23との距離よりも小さい。
【0041】
図5に示されるように、調整部13は、アッテネータ31と、ビームエキスパンダ32と、ミラー33と、を有している。入射部12、並びに、調整部13のアッテネータ31、ビームエキスパンダ32及びミラー33は、Z方向に沿って延在する直線(第1直線)A1上に配置されている。アッテネータ31及びビームエキスパンダ32は、直線A1上において、入射部12とミラー33との間に配置されている。アッテネータ31は、入射部12から入射したレーザ光L1の出力を調整する。ビームエキスパンダ32は、アッテネータ31で出力が調整されたレーザ光L1の径を拡大する。ミラー33は、ビームエキスパンダ32で径が拡大されたレーザ光L1を反射する。
【0042】
調整部13は、反射型空間光変調器34と、結像光学系35と、を更に有している。調整部13の反射型空間光変調器34及び結像光学系35、並びに、集光部14は、Z方向に沿って延在する直線(第2直線)A2上に配置されている。反射型空間光変調器34は、ミラー33で反射されたレーザ光L1を変調する。反射型空間光変調器34は、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。結像光学系35は、反射型空間光変調器34の反射面34aと集光部14の入射瞳面14aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。結像光学系35は、3つ以上のレンズによって構成されている。
【0043】
直線A1及び直線A2は、Y方向に垂直な平面上に位置している。直線A1は、直線A2に対して第2壁部22側(一方の壁部側)に位置している。レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1は、入射部12から筐体11内に入射して直線A1上を進行し、ミラー33及び反射型空間光変調器34で順次に反射された後、直線A2上を進行して集光部14から筐体11外に出射する。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。また、アッテネータ31は、ミラー33と反射型空間光変調器34との間に配置されていてもよい。また、調整部13は、他の光学部品(例えば、ビームエキスパンダ32の前に配置されるステアリングミラー等)を有していてもよい。
【0044】
レーザ加工ヘッド10Aは、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を更に備えている。
【0045】
ダイクロイックミラー15は、直線A2上において、結像光学系35と集光部14との間に配置されている。つまり、ダイクロイックミラー15は、筐体11内において、調整部13と集光部14との間に配置されている。ダイクロイックミラー15は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。ダイクロイックミラー15は、レーザ光L1を透過させる。ダイクロイックミラー15は、非点収差を抑制する観点では、例えば、キューブ型、又は、ねじれの関係を有するように配置された2枚のプレート型であってもよい。
【0046】
測定部16は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。測定部16は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。測定部16は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)と集光部14との距離を測定するための測定光L10を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された測定光L10を検出する。つまり、測定部16から出力された測定光L10は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14を介して測定部16で検出される。
【0047】
より具体的には、測定部16から出力された測定光L10は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられたビームスプリッタ20及びダイクロイックミラー15で順次に反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15及びビームスプリッタ20で順次に反射され、測定部16に入射し、測定部16で検出される。
【0048】
観察部17は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。観察部17は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。観察部17は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)を観察するための観察光L20を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された観察光L20を検出する。つまり、観察部17から出力された観察光L20は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14を介して観察部17で検出される。
【0049】
より具体的には、観察部17から出力された観察光L20は、ビームスプリッタ20を透過してダイクロイックミラー15で反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15で反射され、ビームスプリッタ20を透過して観察部17に入射し、観察部17で検出される。なお、レーザ光L1、測定光L10及び観察光L20のそれぞれの波長は、互いに異なっている(少なくともそれぞれの中心波長が互いにずれている)。
【0050】
駆動部18は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。筐体11の第6壁部26に取り付けられている。駆動部18は、例えば圧電素子の駆動力によって、第6壁部26に配置された集光部14をZ方向に沿って移動させる。
【0051】
回路部19は、筐体11内において、光学ベース29に対して第3壁部23側に配置されている。つまり、回路部19は、筐体11内において、調整部13、測定部16及び観察部17に対して第3壁部23側に配置されている。回路部19は、例えば、複数の回路基板である。回路部19は、測定部16から出力された信号、及び反射型空間光変調器34に入力する信号を処理する。回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。一例として、回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて、対象物100の表面と集光部14との距離が一定に維持されるように(すなわち、対象物100の表面とレーザ光L1の集光点との距離が一定に維持されるように)、駆動部18を制御する。なお、筐体11には、回路部19を制御部9(図1参照)等に電気的に接続するための配線が接続されるコネクタ(図示省略)が設けられている。
【0052】
レーザ加工ヘッド10Bは、レーザ加工ヘッド10Aと同様に、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を備えている。ただし、レーザ加工ヘッド10Bの各構成は、図2に示されるように、1対の取付部65,66間の中点を通り且つY方向に垂直な仮想平面に関して、レーザ加工ヘッド10Aの各構成と面対称の関係を有するように、配置されている。
【0053】
例えば、レーザ加工ヘッド10Aの筐体(第1筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10B側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部65に取り付けられている。これに対し、レーザ加工ヘッド10Bの筐体(第2筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10A側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部66に取り付けられている。
【0054】
レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付部66側に配置された状態で筐体11が取付部66に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部66は、ベースプレート66aと、取付プレート66bと、を有している。ベースプレート66aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている。取付プレート66bは、ベースプレート66aにおけるレーザ加工ヘッド10A側の端部に立設されている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付プレート66bに接触した状態で、取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、取付部66に対して着脱可能である。
[作用及び効果]
【0055】
レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1を出力する光源が筐体11内に設けられていないため、筐体11の小型化を図ることができる。更に、筐体11において、第3壁部23と第4壁部24との距離が第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さく、第6壁部26に配置された集光部14がY方向において第4壁部24側に片寄っている。これにより、集光部14の光軸に垂直な方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第4壁部24側に他の構成(例えば、レーザ加工ヘッド10B)が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。よって、レーザ加工ヘッド10Aは、集光部14をその光軸に垂直な方向に沿って移動させるのに好適である。
【0056】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12が、第5壁部25に設けられており、Y方向において第4壁部24側に片寄っている。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側の領域に他の構成(例えば、回路部19)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
【0057】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、集光部14が、X方向において第2壁部22側に片寄っている。これにより、集光部14の光軸に垂直な方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第2壁部22側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。
【0058】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12が、第5壁部25に設けられており、X方向において第2壁部22側に片寄っている。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域に他の構成(例えば、測定部16及び観察部17)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
【0059】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、測定部16及び観察部17が、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域に配置されており、回路部19が、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側に配置されており、ダイクロイックミラー15が、筐体11内において調整部13と集光部14との間に配置されている。これにより、筐体11内の領域を有効に利用することができる。更に、レーザ加工装置1において、対象物100の表面と集光部14との距離の測定結果に基づいた加工が可能となる。また、レーザ加工装置1において、対象物100の表面の観察結果に基づいた加工が可能となる。
【0060】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、回路部19が、測定部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。これにより、対象物100の表面と集光部14との距離の測定結果に基づいてレーザ光L1の集光点の位置を調整することができる。
【0061】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12、並びに、調整部13のアッテネータ31、ビームエキスパンダ32及びミラー33が、Z方向に沿って延在する直線A1上に配置されており、調整部13の反射型空間光変調器34、結像光学系35及び集光部14、並びに、集光部14が、Z方向に沿って延在する直線A2上に配置されている。これにより、アッテネータ31、ビームエキスパンダ32、反射型空間光変調器34及び結像光学系35を有する調整部13をコンパクトに構成することができる。
【0062】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、直線A1が、直線A2に対して第2壁部22側に位置している。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域において、集光部14を用いた他の光学系(例えば、測定部16及び観察部17)を構成する場合に、当該他の光学系の構成の自由度を向上させることができる。
【0063】
以上の作用及び効果は、レーザ加工ヘッド10Bによっても同様に奏される。
【0064】
また、レーザ加工装置1では、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14が、レーザ加工ヘッド10Aの筐体11においてレーザ加工ヘッド10B側に片寄っており、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14が、レーザ加工ヘッド10Bの筐体11においてレーザ加工ヘッド10A側に片寄っている。これにより、1対のレーザ加工ヘッド10A,10BのそれぞれをY方向に沿って移動させる場合に、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14とレーザ加工ヘッド10Bの集光部14とを互いに近付けることができる。よって、レーザ加工装置1によれば、対象物100を効率良く加工することができる。
【0065】
また、レーザ加工装置1では、1対の取付部65,66のそれぞれが、Y方向及びZ方向のそれぞれに沿って移動する。これにより、対象物100をより効率良く加工することができる。
【0066】
また、レーザ加工装置1では、支持部7が、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動し、Z方向に平行な軸線を中心線として回転する。これにより、対象物100をより効率良く加工することができる。
[変形例]
【0067】
例えば、図6に示されるように、入射部12、調整部13及び集光部14は、Z方向に沿って延在する直線A上に配置されていてもよい。これによれば、調整部13をコンパクトに構成することができる。その場合、調整部13は、反射型空間光変調器34及び結像光学系35を有していなくてもよい。また、調整部13は、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32を有していてもよい。これによれば、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32を有する調整部13をコンパクトに構成することができる。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。
【0068】
また、筐体11は、第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23及び第5壁部25の少なくとも1つがレーザ加工装置1の取付部65(又は取付部66)側に配置された状態で筐体11が取付部65(又は取付部66)に取り付けられるように、構成されていればよい。また、集光部14は、少なくともY方向において第4壁部24側に片寄っていればよい。これらによれば、Y方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第4壁部24側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。また、Z方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、対象物100に集光部14を近付けることができる。
【0069】
また、集光部14は、X方向において第1壁部21側に片寄っていてもよい。これによれば、集光部14の光軸に垂直な方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第1壁部21側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。その場合、入射部12は、X方向において第1壁部21側に片寄っていてもよい。これによれば、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第2壁部22側の領域に他の構成(例えば、測定部16及び観察部17)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
【0070】
また、光源ユニット8の出射部81aからレーザ加工ヘッド10Aの入射部12へのレーザ光L1の導光、及び光源ユニット8の出射部82aからレーザ加工ヘッド10Bの入射部12へのレーザ光L2の導光の少なくとも1つは、ミラーによって実施されてもよい。図7は、レーザ光L1がミラーによって導光されるレーザ加工装置1の一部分の正面図である。図7に示される構成では、レーザ光L1を反射するミラー3が、Y方向において光源ユニット8の出射部81aと対向し且つZ方向においてレーザ加工ヘッド10Aの入射部12と対向するように、移動機構6の移動部63に取り付けられている。
【0071】
図7に示される構成では、移動機構6の移動部63をY方向に沿って移動させても、Y方向においてミラー3が光源ユニット8の出射部81aと対向する状態が維持される。また、移動機構6の取付部65をZ方向に沿って移動させても、Z方向においてミラー3がレーザ加工ヘッド10Aの入射部12と対向する状態が維持される。したがって、レーザ加工ヘッド10Aの位置によらず、光源ユニット8の出射部81aから出射されたレーザ光L1を、レーザ加工ヘッド10Aの入射部12に確実に入射させることができる。しかも、光ファイバ2による導光が困難な高出力長短パルスレーザ等の光源を利用することもできる。
【0072】
また、図7に示される構成では、ミラー3は、角度調整及び位置調整の少なくとも1つが可能となるように、移動機構6の移動部63に取り付けられていてもよい。これによれば、光源ユニット8の出射部81aから出射されたレーザ光L1を、レーザ加工ヘッド10Aの入射部12に、より確実に入射させることができる。
【0073】
また、光源ユニット8は、1つの光源を有するものであってもよい。その場合、光源ユニット8は、1つの光源から出力されたレーザ光の一部を出射部81aから出射させ且つ当該レーザ光の残部を出射部82bから出射させるように、構成されていればよい。
【0074】
また、レーザ加工装置1は、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えていてもよい。1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1でも、集光部14の光軸に垂直なY方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第4壁部24側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。よって、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1によっても、対象物100を効率良く加工することができる。また、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1において、取付部65がZ方向に沿って移動すれば、対象物100をより効率良く加工することができる。また、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1において、支持部7が、X方向に沿って移動し、Z方向に平行な軸線を中心線として回転すれば、対象物100をより効率良く加工することができる。
【0075】
また、レーザ加工装置1は、3つ以上のレーザ加工ヘッドを備えていてもよい。図8は、2対のレーザ加工ヘッドを備えるレーザ加工装置1の斜視図である。図8に示されるレーザ加工装置1は、複数の移動機構200,300,400と、支持部7と、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと、1対のレーザ加工ヘッド10C,10Dと、光源ユニット(図示省略)と、を備えている。
【0076】
移動機構200は、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれの方向に沿って支持部7を移動させ、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0077】
移動機構300は、固定部301と、1対の取付部(第1取付部、第2取付部)305,306と、を有している。固定部301は、装置フレーム(図示省略)に取り付けられている。1対の取付部305,306のそれぞれは、固定部301に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、Y方向に沿って移動することができる。
【0078】
移動機構400は、固定部401と、1対の取付部(第1取付部、第2取付部)405,406と、を有している。固定部401は、装置フレーム(図示省略)に取り付けられている。1対の取付部405,406のそれぞれは、固定部401に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、X方向に沿って移動することができる。なお、固定部401のレールは、固定部301のレールと立体的に交差するように配置されている。
【0079】
レーザ加工ヘッド10Aは、移動機構300の取付部305に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Aから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。レーザ加工ヘッド10Bは、移動機構300の取付部306に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Bから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。
【0080】
レーザ加工ヘッド10Cは、移動機構400の取付部405に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Cは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Cから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。レーザ加工ヘッド10Dは、移動機構400の取付部406に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Dは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Dから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。
【0081】
図8に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの構成は、図1に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの構成と同様である。図8に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10C,10Dの構成は、図1に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10A,10BをZ方向に平行な軸線を中心線として90度回転した場合の1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの構成と同様である。
【0082】
例えば、レーザ加工ヘッド10Cの筐体(第1筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10D側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部65に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Cの集光部14は、Y方向において第4壁部24側(すなわち、レーザ加工ヘッド10D側)に片寄っている。
【0083】
レーザ加工ヘッド10Dの筐体(第2筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10C側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Dの集光部14は、Y方向において第4壁部24側(すなわち、レーザ加工ヘッド10C側)に片寄っている。
【0084】
以上により、図8に示されるレーザ加工装置1では、1対のレーザ加工ヘッド10A,10BのそれぞれをY方向に沿って移動させる場合に、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14とレーザ加工ヘッド10Bの集光部14とを互いに近付けることができる。また、1対のレーザ加工ヘッド10C,10DのそれぞれをX方向に沿って移動させる場合に、レーザ加工ヘッド10Cの集光部14とレーザ加工ヘッド10Dの集光部14とを互いに近付けることができる。
【0085】
また、レーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置は、対象物100の内部に改質領域を形成するためのものに限定されず、他のレーザ加工を実施するためのものであってもよい。
【0086】
次に、各実施形態を説明する。以下、上述した実施形態と重複する説明は省略する。
【0087】
[第1実施形態]
図9に示される第1実施形態に係るレーザ加工装置101は、対象物100にトリミング加工及び剥離加工を施し、半導体デバイスを取得(製造)する装置である。レーザ加工装置101は、ステージ107、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10B、第1及び第2Z軸レール106A,106B、X軸レール108、アライメントカメラ110、並びに、制御部9を備える。
【0088】
トリミング加工は、対象物100において不要部分を除去する加工である。剥離加工は、対象物100の一部分を剥離する加工である。対象物100は、例えば円板状に形成された半導体ウェハを含む。対象物としては特に限定されず、種々の材料で形成されていてもよいし、種々の形状を呈していてもよい。対象物100の表面100aには、機能素子(不図示)が形成されている。機能素子は、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。なお、以下においては、X方向が上記レーザ加工装置1(図1参照)のY方向に対応し、Y方向が上記レーザ加工装置1(図1参照)のX方向に対応する。
【0089】
図10(a)及び図10(b)に示されるように、対象物100には、有効領域R及び除去領域Eが設定されている。有効領域Rは、取得する半導体デバイスに対応する部分である。ここでの有効領域Rは、対象物100を厚さ方向から見て中央部分を含む円板状の部分である。除去領域Eは、対象物100における有効領域Rよりも外側の領域である。除去領域Eは、対象物100において有効領域R以外の部分である。ここでの除去領域Eは、有効領域Rを囲う円環状の部分である。除去領域Eは、対象物100を厚さ方向から見て周縁部分(外縁のベベル部)を含む。
【0090】
対象物100には、仮想面M1が設定されている。仮想面M1は、対象物100のレーザ光入射面である裏面100bに対向する面である。仮想面M1は、裏面100bに平行な面であり、例えば円形状を呈している。仮想面M1は、有効領域Rに設定されている。仮想面M1は、仮想的な領域であり、平面に限定されず、曲面ないし3次元状の面であってもよい。有効領域R、除去領域E及び仮想面M1の設定は、制御部9において行うことができる。有効領域R、除去領域E及び仮想面M1は、座標指定されたものであってもよい。
【0091】
ステージ107は、対象物100が載置される支持部である。ステージ107は、上記支持部7(図1参照)と同様に構成されている。本実施形態のステージ107には、対象物100の裏面100bをレーザ入射面側である上側にした状態(表面100aをステージ107側である下側にした状態)で、対象物100が載置されている。ステージ107は、その中心に設けられた回転軸Cを有する。回転軸Cは、Z方向に沿って延びる軸である。ステージ107は、回転軸Cを中心に回転可能である。ステージ107は、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により回転駆動される。
【0092】
第1レーザ加工ヘッド10Aは、ステージ107に載置された対象物100に第1レーザ光L1をZ方向に沿って照射し、当該対象物100の内部に第1改質領域を形成する。第1レーザ加工ヘッド10Aは、第1Z軸レール106A及びX軸レール108に取り付けられている。第1レーザ加工ヘッド10Aは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、第1Z軸レール106Aに沿ってZ方向に直線的に移動可能である。第1レーザ加工ヘッド10Aは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、X軸レール108に沿ってX方向に直線的に移動可能である。
【0093】
第1レーザ加工ヘッド10Aでは、次のように、第1レーザ光L1の照射(出力)の開始及び停止(ON/OFF)を切替え可能である。レーザ発振器が固体レーザで構成されている場合、共振器内に設けられたQスイッチ(AOM(音響光学変調器)、EOM(電気光学変調器)等)のON/OFFが切り替えられることで、第1レーザ光L1の照射の開始及び停止が高速に切り替えられる。レーザ発振器がファイバレーザで構成されている場合、シードレーザ、アンプ(励起用)レーザを構成する半導体レーザの出力のON/OFFが切り替えられることで、第1レーザ光L1の照射の開始及び停止が高速に切り替えられる。レーザ発振器が外部変調素子を用いている場合、共振器外に設けられた外部変調素子(AOM、EOM等)のON/OFFが切り替えられることで、第1レーザ光L1の照射のON/OFFが高速に切り替えられる。また、第1レーザ加工ヘッド10Aでは、シャッタ等の機械式の機構によって第1レーザ光L1の光路を開閉してもよく、この場合、第1レーザ光L1が不意に出射されることが防止される。このような切り替えについては、他のレーザ加工ヘッドにおいても同様である。
【0094】
第1レーザ加工ヘッド10Aは、測距センサを備えている。測距センサは、対象物100のレーザ光入射面に対して測距用レーザ光を出射し、当該レーザ光入射面によって反射された測距用の光を検出することで、対象物100のレーザ光入射面の変位データを取得する。測距センサとしては、第1レーザ光L1と別軸のセンサである場合、三角測距方式、レーザ共焦点方式、白色共焦点方式、分光干渉方式、非点収差方式等のセンサを利用することができる。測距センサとしては、第1レーザ光L1と同軸のセンサである場合、非点収差方式等のセンサを利用することができる。第1レーザ加工ヘッド10Aの回路部19(図3参照)は、測距センサで取得した変位データに基づいて、集光部14がレーザ光入射面に追従するように駆動部18(図5参照)を駆動させる。これにより、対象物100のレーザ光入射面と第1レーザ光L1の第1集光点との距離が一定に維持されるように、当該変位データに基づき集光部14がZ方向に沿って移動する。このような測距用センサ及びその制御については、他のレーザ加工ヘッドにおいても同様である。
【0095】
第2レーザ加工ヘッド10Bは、ステージ107に載置された対象物100に第2レーザ光L2をZ方向に沿って照射し、当該対象物100の内部に第2改質領域を形成する。第2レーザ加工ヘッド10Bは、第2Z軸レール106B及びX軸レール108に取り付けられている。第2レーザ加工ヘッド10Bは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、第2Z軸レール106Bに沿ってZ方向に直線的に移動可能である。第2レーザ加工ヘッド10Bは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、X軸レール108に沿ってX方向に直線的に移動可能である。第1レーザ加工ヘッド10Aと第2レーザ加工ヘッドとは、内部構造が回転軸Cを介して互いに鏡像となっている。
【0096】
第1Z軸レール106Aは、Z方向に沿って延びるレールである。第1Z軸レール106Aは、取付部65を介して第1レーザ加工ヘッド10Aに取り付けられている。第1Z軸レール106Aは、第1レーザ光L1の第1集光点がZ方向に沿って移動するように、第1レーザ加工ヘッド10AをZ方向に沿って移動させる。第1Z軸レール106Aは、上記移動機構6(図1参照)又は上記移動機構300(図8参照)のレールに対応する。第1Z軸レール106Aは、第1鉛直移動機構(鉛直移動機構)を構成する。
【0097】
第2Z軸レール106Bは、Z方向に沿って延びるレールである。第2Z軸レール106Bは、取付部66を介して第2レーザ加工ヘッド10Bに取り付けられている。第2Z軸レール106Bは、第2レーザ光L2の第2集光点がZ方向に沿って移動するように、第2レーザ加工ヘッド10BをZ方向に沿って移動させる。第2Z軸レール106Bは、上記移動機構6(図1参照)又は上記移動機構300(図8参照)のレールに対応する。第2Z軸レール106Bは、第2鉛直移動機構(鉛直移動機構)を構成する。
【0098】
X軸レール108は、X方向に沿って延びるレールである。X軸レール108は、第1及び第2Z軸レール106A,106Bのそれぞれに取り付けられている。X軸レール108は、第1レーザ光L1の第1集光点がX方向に沿って移動するように、第1レーザ加工ヘッド10AをX方向に沿って移動させる。X軸レール108は、第2レーザ光L2の第2集光点がX方向に沿って移動するように、第2レーザ加工ヘッド10BをX方向に沿って移動させる。X軸レール108は、第1及び第2集光点が回転軸C又はその付近を通過するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bを移動させる。X軸レール108は、上記移動機構6(図1参照)又は上記移動機構300(図8参照)のレールに対応する。X軸レール108は、第1及び第2水平移動機構(水平移動機構)を構成する。
【0099】
アライメントカメラ110は、各種の調整に用いられる画像を取得するカメラである。アライメントカメラ110は、対象物100を撮像する。アライメントカメラ110は、第1レーザ加工ヘッド10Aが取り付けられた取付部65に設置されており、第1レーザ加工ヘッド10Aと同期して可動する。
【0100】
制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。これにより、制御部9は、各種機能を実現する。
【0101】
制御部9は、ステージ107の回転、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bからの第1及び第2レーザ光L1,L2の照射、及び、第1及び第2集光点の移動を制御する。制御部9は、ステージ107の回転量に関する回転情報(以下、「θ情報」ともいう)に基づいて、各種の制御を実行可能である。θ情報は、ステージ107を回転させる駆動装置の駆動量から取得されてもよいし、別途のセンサ等により取得されてもよい。θ情報は、公知の種々の手法により取得することができる。ここでのθ情報は、対象物100が0度方向の位置に位置するときの状態を基準にした回転角度である。
【0102】
制御部9は、ステージ107を回転させながら、対象物100における有効領域Rの周縁に沿った位置に第1及び第2集光点を位置させた状態で、θ情報に基づいて第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bにおける第1及び第2レーザ光L1,L2の照射の開始及び停止を制御することにより、有効領域Rの周縁に沿って改質領域を形成させる周縁処理を実行する。周縁処理の詳細は後述する。
【0103】
制御部9は、ステージ107を回転させずに、除去領域Eに第1及び第2レーザ光L1,L2を照射させると共に、当該第1及び第2レーザ光L1,L2の第1及び第2集光点を移動させることにより、除去領域Eに改質領域を形成させる除去処理を実行する。除去処理の詳細は後述する。
【0104】
制御部9は、ステージ107を回転させながら、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bから第1及び第2レーザ光L1,L2をそれぞれ照射させると共に、第1及び第2集光点のそれぞれのX方向における移動を制御することにより、対象物100の内部において仮想面M1に沿って第1及び第2改質領域を形成させる第1剥離処理を実行する。第1剥離処理の詳細は後述する。
【0105】
制御部9は、第1及び第2改質領域に含まれる複数の改質スポットのピッチ(加工進行方向に隣接する改質スポットの間隔)が一定になるように、ステージ107の回転、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bからの第1及び第2レーザ光L1,L2の照射、並びに、第1及び第2集光点の移動の少なくとも何れかを制御する。
【0106】
制御部9は、アライメントカメラ110の撮像画像から、対象物100の回転方向の基準位置(0度方向の位置)及び対象物100の直径を取得する。制御部9は、第1レーザ加工ヘッド10Aのみがステージ107の回転軸C上までX軸レール108に沿って移動できるように(第2レーザ加工ヘッド10Bがステージ107の回転軸C上までX軸レール108に沿って移動しないように)、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bの移動を制御する。
【0107】
次に、レーザ加工装置101を用いて、対象物100にトリミング加工及び剥離加工を施し、半導体デバイスを取得(製造)する方法の一例について、以下に説明する。
【0108】
まず、裏面100bをレーザ入射面側にした状態でステージ107上に対象物100を載置する。対象物100において機能素子が搭載された表面100a側は、支持基板ないしテープ材が接着されて保護されている。
【0109】
続いて、トリミング加工を実施する。トリミング加工では、制御部9により周縁処理を実行する。具体的には、図11(a)に示されるように、ステージ107を一定の回転速度で回転しながら、対象物100における有効領域Rの周縁に沿った位置に第1及び第2集光点P1,P2を位置させた状態で、θ情報に基づいて第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bにおける第1及び第2レーザ光L1,L2の照射の開始及び停止を制御する。このときの第1及び第2集光点P1,P2は移動しない。これにより、図11(b)及び11(c)に示されるように、有効領域Rの周縁に沿って改質領域4を形成する。形成した改質領域4は、改質スポット及び改質スポットから延びる亀裂を含む。
【0110】
トリミング加工では、制御部9により除去処理を実行する。具体的には、図12(a)に示されるように、ステージ107を回転させずに、除去領域Eにおいて第1及び第2レーザ光L1,L2を照射すると共に、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って互いに離れる方向に移動し、当該第1及び第2レーザ光L1,L2の第1及び第2集光点P1,P2を対象物100の中心から離れる方向に移動する。ステージ107を90度回転させた後、除去領域Eにおいて第1及び第2レーザ光L1,L2を照射すると共に、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って互いに離れる方向に移動し、当該第1及び第2レーザ光L1,L2の第1及び第2集光点P1,P2を対象物100の中心から離れる方向に移動する。
【0111】
これにより、図12(b)に示されるように、Z方向から見て除去領域Eに4等分するように延びるラインに沿って、改質領域4を形成する。ラインは、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。形成した改質領域4は、改質スポット及び改質スポットから延びる亀裂を含む。この亀裂は、表面100a及び裏面100bの少なくとも何れかに到達していてもよいし、表面100a及び裏面100bの少なくとも何れかに到達していなくてもよい。その後、図13(a)及び図13(b)に示されるように、例えば冶具又はエアーにより、改質領域4を境界として除去領域Eを取り除く。
【0112】
続いて、剥離加工を実施する。剥離加工では、制御部9により第1剥離処理を実行する。具体的には、図13(c)に示されるように、ステージ107を一定の回転速度で回転させながら、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bから第1及び第2レーザ光L1,L2をそれぞれ照射すると共に、第1及び第2集光点P1,P2が仮想面M1の外縁側からX方向に沿って互いに近づくように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動する。これにより、図14(a)及び図14(b)に示されるように、対象物100の内部において仮想面M1に沿って、回転軸Cの位置を中心とする渦巻状(インボリュート曲線)で且つ互いに重複しない第1及び第2改質領域4A,4Bを形成する。なお、以下では、第1及び第2改質領域4A,4Bそれぞれについて、単に改質領域4とも称する場合もある。
【0113】
続いて、図14(c)に示されるように、例えば吸着冶具により、仮想面M1に渡る第1及び第2改質領域4A,4Bを境界として、対象物100の一部を剥離する。対象物100の剥離は、ステージ107上で実施してもよいし、剥離専用のエリアに移動させて実施してもよい。対象物100の剥離は、エアーブロー又はテープ材を利用して剥離してもよい。外部応力だけで対象物100を剥離できない場合には、対象物100に反応するエッチング液(KOH又はTMAH等)で第1及び第2改質領域4A,4Bを選択的にエッチングしてもよい。これにより、対象物100を容易に剥離することが可能となる。図14(d)に示されるように、対象物100の剥離面100hに対して仕上げの研削、ないし砥石等の研磨材KMによる研磨を行う。エッチングにより対象物100を剥離している場合、当該研磨を簡略化することができる。以上の結果、半導体デバイス100Kが取得される。
【0114】
次に、上述した剥離加工の第1剥離処理について、より詳細に説明する。
【0115】
まず、図15(a)に示されるように、アライメントカメラ110が対象物100のアライメント対象100nの直上に位置し且つアライメント対象100nにアライメントカメラ110のピントが合うように、ステージ107を回転させると共にアライメントカメラ110が搭載されている第1レーザ加工ヘッド10AをX軸レール108及び第1Z軸レール106Aに沿って移動させる。ここでのアライメント対象100nは、ノッチである。なお、アライメント対象100nは、特に限定されず、対象物100のオリエンテーションフラットであってもよいし、機能素子のパターンであってもよい。
【0116】
アライメントカメラ110により撮像を行う。アライメントカメラ110の撮像画像に基づいて、対象物100の0度方向の位置を取得する。0度方向の位置とは、ステージ107の回転軸C回りの回転方向(以下、「θ方向」ともいう)において、基準となる対象物100の位置である。例えばアライメント対象100nは、0度方向の位置に対してθ方向に一定の関係を有することから、撮像画像からアライメント対象100nの位置を得ることで、0度方向の位置を取得できる。また、アライメントカメラ110の撮像画像に基づいて、対象物100の直径を取得する。なお、対象物100の直径は、ユーザからの入力により設定されてもよい。
【0117】
続いて、図15(b)に示されるように、ステージ107を回転させ、対象物100を0度方向の位置に位置させる。X方向において、第1及び第2集光点P1,P2が剥離開始所定位置に位置するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動させる。Z方向において第1及び第2集光点P1,P2が仮想面M1に位置するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをZ軸レールに沿って移動させる。例えば剥離開始所定位置は、対象物100における外周部の所定位置である。
【0118】
続いて、ステージ107の回転を開始する。測距センサによる裏面100bの追従を開始する。なお、測距センサの追従開始の前に、第1及び第2集光点P1,P2の位置が、測距センサの測長可能範囲内であることを予め確認する。ステージ107の回転速度が一定(等速)になった時点で、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を開始する。
【0119】
図16(a)に示されるように、Z方向から見て対象物100における回転軸Cから遠い外周側の第1領域G1においては、第1及び第2集光点P1,P2がX方向に沿って互いに近づくように第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動させる。このとき、回転軸Cから第1集光点P1までの間と回転軸Cから第2集光点P2までの間とを等距離に維持しながら、第1及び第2集光点P1,P2のそれぞれをX方向に移動させる。
【0120】
続いて、図16(b)に示されるように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bが互いに接触してしまう前に、Z方向から見て対象物100における回転軸Cに近い内側の第2領域G2にて、第1集光点P1のみが回転軸Cの位置に近づくように第1レーザ加工ヘッド10AのみをX軸レール108に沿って移動する。その際、第2レーザ加工ヘッド10Bの第2レーザ光L2の照射は停止する。第2レーザ加工ヘッド10Bに観察用のIRカメラが取り付けられている場合、当該IRカメラの観察結果に基づいて、目的の剥離加工が実施されているか否かの評価を実施してもよい。
【0121】
ちなみに、剥離加工の前にトリミング加工で除去領域Eを除去していない場合には、第1レーザ加工ヘッド10AのみをX軸レール108に沿って移動させて第2領域G2を加工している際、第2レーザ加工ヘッド10Bによりトリミング加工を行ってもよい。すなわち、ステージ107を回転しながら、対象物100における有効領域Rの周縁に沿った位置に第2集光点P2を位置させた状態で、θ情報に基づいて第2レーザ加工ヘッド10Bにおける第2レーザ光L2の照射の開始及び停止を制御し、有効領域Rの周縁に沿って改質領域4を形成してもよい。
【0122】
第1集光点P1が回転軸Cの位置又はその周辺に達した場合、第1レーザ光L1の照射を停止し、その後、ステージ107の回転を停止する。以上により、図17に示されるように、Z方向から見て回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状の第1改質領域4Aと、Z方向から見て回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状で且つ第1改質領域4Aに対して重畳しない第2改質領域4Bと、を対象物100の内部における仮想面M1に沿って形成する。
【0123】
以上、レーザ加工装置101では、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。
【0124】
レーザ加工装置101では、制御部9は、ステージ107を回転させながら、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bから第1及び第2レーザ光L1,L2をそれぞれ照射させると共に、第1及び第2集光点P1,P2のそれぞれのX方向における移動を制御することにより、対象物100の内部において仮想面M1に沿って第1及び第2改質領域4A,4Bを形成させる第1剥離処理を実行する。この場合、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bを用いて、効率よい剥離加工を行うことが可能となる。
【0125】
レーザ加工装置101において、第1剥離処理では、ステージ107を回転させながら、第1及び第2集光点P1,P2のそれぞれを互いに近づくようにX方向に移動させることで、ステージ107の回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状の第1改質領域4Aを形成させると共に、ステージ107の回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状で且つ第1改質領域4Aと重畳しない第2改質領域4Bを形成させる。これにより、これら第1及び第2改質領域4A,4Bを境界として対象物100の一部を剥離することができる。効率よい剥離加工を具体的に実現することが可能となる。
【0126】
レーザ加工装置101では、制御部9は、第1改質領域4Aに含まれる複数の第1改質スポットのピッチ及び第2改質領域4Bに含まれる複数の第2改質スポットのピッチが一定になるように、ステージ107の回転、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bからの第1及び第2レーザ光L1,L2の照射、並びに、第1及び第2集光点P1,P2の移動の少なくとも何れかを制御する。これにより、複数の第1及び第2改質スポットのピッチを一定になるように揃え、例えば第1及び第2改質領域4A,4Bを利用した分割時に生じ得る未分割等の加工不良を防ぐことが可能となる。
【0127】
レーザ加工装置101において、第1剥離処理では、ステージ107の回転軸Cから第1集光点P1までの間とステージ107の回転軸Cから第2集光点P2までの間とを等距離に維持しながら、第1及び第2集光点P1,P2のそれぞれをX方向に移動させる。これにより、対象物100における第1集光点P1の位置での周速度と第2集光点P2の位置での周速度が等しくなる。剥離加工を行う際、複数の第1及び第2改質スポットのピッチを、一定になるように揃えること(一定化,一様化)が可能となる。
【0128】
レーザ加工装置101において、制御部9は、ステージ107の回転速度が一定になった状態で、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bにおける第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を開始及び停止させる。これにより、複数の第1及び第2改質スポットのピッチを一定になるように揃えることが可能となる。
【0129】
レーザ加工装置101では、トリミング加工及び剥離加工の前に0度方向の位置を取得することで、トリミング加工及び剥離加工を品質良く行うことができる。また、対象物100のへき開面等の結晶面と0度方向の位置(アライメント対象100nの位置)とには一定の相関があることから、0度方向の位置を取得することで、対象物100の結晶面を考慮した加工(結晶面に合わせた加工)加工が可能となる。
【0130】
また、レーザ加工装置101では、周縁処理において、θ情報を利用して第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を開始及び停止させる。これにより、対象物100における有効領域Rの周縁に沿って改質領域4を形成する場合に、その改質領域4が重ならない(つまり、第1及び第2レーザ光L1,L2のそれぞれについて同箇所へ重複して照射されない)ように精度よく制御することが可能となる。トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0131】
レーザ加工装置101において、周縁処理では、ステージ107の回転速度が一定になった状態で、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bにおける第1及び第2レーザ光L1,L2それぞれの照射を開始及び停止させる。これにより、周縁処理により形成した改質領域4に含まれる複数の改質スポットのピッチを、一定になるように揃えることが可能となる。
【0132】
レーザ加工装置101では、制御部9は、ステージ107を回転させずに除去領域Eに第1及び第2レーザ光L1,L2を照射させると共に第1及び第2集光点P1,P2を移動させることにより、除去領域Eに改質領域4を形成させる除去処理を実行する。これにより、除去領域Eを容易に分断して除去することが可能となる。
【0133】
レーザ加工装置101において、除去処理では、対象物100の中心から離れる方向に第1及び第2集光点P1,P2を移動させる。この場合、上述した除去領域の分断を具体的に実現することができる。なお、除去処理では、対象物100の中心に近づく方向に第1及び第2集光点P1,P2を移動させてもよい。
【0134】
図18(a)は、第1及び第2レーザ光L1,L2を分岐する場合の例を説明する図である。図18(b)は、第1及び第2レーザ光L1,L2を分岐する場合の他の例を説明する図である。図18(a)及び図18(b)は、対象物100の横断面であり、剥離加工において仮想面M1に改質領域4を形成する場合の例を示す。図中の破線矢印は加工進行方向(照射した第1及び第2レーザ光L1,L2が進む方向,スキャン方向)である。
【0135】
図18(a)及び図18(b)に示されるように、第1レーザ光L1が複数の分岐第1レーザ光に分岐され、複数の分岐第1レーザ光の集光に応じて複数の第1改質スポット(改質スポット)SAが仮想面M1上に形成されていてもよい。第2レーザ光L2が複数の分岐第2レーザ光に分岐され、複数の分岐第2レーザ光の集光に応じて複数の第2改質スポット(改質スポット)SBが仮想面M1上に形成されていてもよい。第1及び第2レーザ光L1,L2の分岐は、例えば反射型空間光変調器34(図5参照)を利用して実現できる。
【0136】
特に、図18(a)に示されるように、加工進行方向と直交する直交方向に沿って一列に並ぶ第1改質スポットSAが仮想面M1上に形成されるように、第1レーザ光L1を分岐してもよい。加工進行方向と直交する直交方向に沿って一列に並ぶ第2改質スポットSBが仮想面M1上に形成されるように、第2レーザ光L2を分岐してもよい。或いは、図18(b)に示されるように、当該直交方向に対して傾斜する方向に沿って一列に並ぶ第1改質スポットSAが仮想面M1上に形成されるように、第1レーザ光L1を分岐してもよい。当該直交方向に対して傾斜する方向に沿って一列に並ぶ第2改質スポットSBが仮想面M1上に形成されるように、第2レーザ光L2を分岐してもよい。このような第1及び第2レーザ光L1,L2を分岐については、剥離加工で照射する何れのレーザ光にも適用することができる。
【0137】
本実施形態では、トリミング加工において、Z方向に複数の集光点が形成されるように第1レーザ光L1を分岐し、Z方向に複数の改質スポットを同時に形成してもよい。第1レーザ光L1の分岐は、例えば反射型空間光変調器34(図5参照)を利用して実現できる。このような第1レーザ光L1を分岐については、トリミング加工で照射する何れのレーザ光にも適用することもできる。
【0138】
本実施形態では、レーザ加工ヘッドは1つでもよいし、3つ以上でもよい。レーザ加工ヘッドが1つの場合、その1つのレーザ加工ヘッドが第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bと同様の動作を順次に行ってもよい。レーザ加工ヘッドが3つ以上の場合には、その一部のレーザ加工ヘッドが第1レーザ加工ヘッド10Aと同様な動作を行うと共に、その他部のレーザ加工ヘッドが第2レーザ加工ヘッド10Bと同様な動作を行ってもよい。
【0139】
本実施形態では、剥離加工のみを実施してもよいし、トリミング加工のみを実施してもよい。剥離加工のみを実施する場合、θ方向において対象物100の何れの位置から加工を開始しても同じ加工を実現できるため、アライメントカメラ110の撮像画像から0度方向の位置を取得する工程と、ステージ107を回転させて対象物100を0度方向の位置に位置させる工程と、は含まなくてもよい。同様の理由から、剥離加工のみを実施する場合、アライメントカメラ110は無くてもよい。
【0140】
本実施形態の第1剥離処理では、ステージ107を回転させながら、第1及び第2集光点P1,P2のそれぞれを互いに近づくようにX方向に移動(外側から内側へ移動)させたが、第1及び第2集光点P1,P2のそれぞれを互いに離れるようにX方向に移動(内側から外側へ移動)させてもよい。
【0141】
本実施形態では、測距センサが別軸のセンサである場合には、別途に測距センサによるレーザ光入射面の追従を行ってレーザ光入射面の変位データを取得する処理(いわゆる、トレース加工)を実施してもよい。本実施形態では、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bでは、上述したレーザ加工における出力調整等の各種調整(キャリブレーション)を、上述したレーザ加工の実施前に行ってもよい。
【0142】
本実施形態では、剥離加工において、第1及び第2改質スポットSA,SBのピッチが一定になるように制御しているが、対象物100が剥離可能なマージンの範囲内で当該ピッチが変動すること(ブレること)は許容可能である。
【0143】
本実施形態では、第1及び第2集光点P1,P2が移動するように第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bを移動させたが、これに限定されない。第1集光点P1が鉛直方向に沿って移動するようにステージ107及び第1レーザ加工ヘッド10Aの少なくとも一方を移動すればよい。第2集光点P2が鉛直方向に沿って移動するようにステージ107及び第2レーザ加工ヘッド10Bの少なくとも一方を移動すればよい。第1集光点P1が水平方向に沿って移動するようにステージ107及び第1レーザ加工ヘッド10Aの少なくとも一方を移動すればよい。第2集光点P2が水平方向に沿って移動するようにステージ107及び第2レーザ加工ヘッド10Bの少なくとも一方を移動すればよい。
【0144】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第2実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0145】
第2実施形態において、制御部9が実行する周縁処理は、第1周回処理及び螺旋処理を有する。第1周回処理では、ステージ107を回転させながら、Z方向における所定位置に第1及び第2レーザ光L1,L2の第1及び第2集光点P1,P2を位置させた状態で第1及び第2レーザ光L1,L2を照射し、第1及び第2レーザ光L1,L2の当該照射の開始からステージ107が1回転(360度回転)したときに第1及び第2レーザ光L1,L2の当該照射を停止させることで、有効領域Rの周縁に沿って環状の改質領域4を形成させる。
【0146】
第1周回処理は、有効領域Rの表面100a側(Z方向におけるレーザ光入射面側と反対側)の周縁に沿って環状の改質領域41を形成させる第1処理と、有効領域Rの裏面100b側(Z方向におけるレーザ光入射面側)の周縁に沿って環状の改質領域42を形成させる第2処理と、を含む。螺旋処理では、ステージ107を回転させながら、照射している第1及び第2レーザ光L1,L2の第1及び第2集光点P1,P2をZ方向に移動させることで、有効領域Rの表面100a側と裏面100b側との間の周縁に沿って、螺旋状の改質領域43を形成させる。
【0147】
第2実施形態に係るレーザ加工装置において、トリミング加工を施す際の動作の一例を具体的に説明する。
【0148】
まず、制御部9により第1周回処理の第1処理を実行する。第1処理では、具体的には、図19(a)に示されるように、対象物100における有効領域Rの表面100a側の位置に第1集光点P1を位置させると共に、対象物100における有効領域Rの表面100a側であってZ方向において第1集光点P1から離れた(ズレた)位置に第2集光点P2を位置させる。この状態でステージ107を一定の回転速度で回転しながら、第1及び第2レーザ光L1,L2を照射する。第1及び第2レーザ光L1,L2の当該照射の開始からステージ107が1回転したときに、第1及び第2レーザ光L1,L2の当該照射を停止する。このとき、第1及び第2集光点P1,P2は移動しない。これにより、有効領域Rの表面100a側の周縁に沿って環状の改質領域41を2列形成する。
【0149】
続いて、制御部9により螺旋処理を実行する。螺旋処理では、具体的には、図19(b)に示されるように、ステージ107を一定の回転速度で回転しながら、第1及び第2レーザ光L1,L2を照射すると共に、有効領域Rの表面100a側と裏面100b側との間の周縁において第1及び第2集光点P1,P2が裏面100b側に移動するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bを第1及び第2Z軸レール106A,106Bに沿ってそれぞれ移動する。ここでは、第1及び第2集光点P1,P2を、有効領域RのZ方向の中央において表面100a寄りの位置から裏面100b寄りの位置まで移動する。これにより、有効領域Rの表面100a側と裏面100b側との間の周縁に沿って、2重螺旋状の改質領域43を形成する。
【0150】
続いて、制御部9により第1周回処理の第2処理を実行する。第2処理では、具体的には、図19(c)に示されるように、対象物100における有効領域Rの裏面100b側の位置に第1集光点P1を位置させると共に、対象物100における有効領域Rの裏面100b側であってZ方向において第1集光点P1から離れた(ズレた)位置に第2集光点P2を位置させる。この状態でステージ107を一定の回転速度で回転しながら、第1及び第2レーザ光L1,L2を照射する。第1及び第2レーザ光L1,L2の当該照射の開始からステージ107が1回転したときに、第1及び第2レーザ光L1,L2の当該照射を停止する。このとき、第1及び第2集光点P1,P2移動しない。これにより、有効領域Rの裏面100b側の周縁に沿って環状の改質領域42を2列形成する。
【0151】
以上により、図20に示されるように、対象物100の有効領域Rの周縁に沿って、改質領域4を形成する。有効領域Rの周縁の表面100a側及び裏面100b側の改質領域41,42は、円環状である。有効領域Rの周縁の表面100aと裏面100b側との間の改質領域43は、二重螺旋状である。有効領域Rの周縁の表面100a側及び裏面100b側の改質領域41,42から延びる亀裂は、有効領域Rの周縁に沿いながら表面100a及び裏面100bに到達して露出している。
【0152】
以上、第2実施形態に係るレーザ加工装置においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。第2実施形態に係るレーザ加工装置においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0153】
第2実施形態に係るレーザ加工装置では、周縁処理は、ステージ107を回転させながら、Z方向における所定位置に第1及び第2集光点P1,P2を位置させた状態で第1及び第2レーザ光L1,L2を照射し、第1及び第2レーザ光L1,L2の当該照射の開始から支持部が1回転したときに第1及び第2レーザ光L1,L2の当該照射を停止させることで、有効領域Rの周縁に沿って環状の改質領域41,42を形成させる第1周回処理を有する。第1周回処理によれば、対象物100のZ方向における所定位置に、有効領域Rの周縁に沿って且つ当該周縁の1周分に亘って、重ならないように環状の改質領域41,42のそれぞれを形成することが可能となる。
【0154】
第2実施形態に係るレーザ加工装置では、第1周回処理は、有効領域Rの表面100a側の周縁に沿って環状の改質領域41を形成させる第1処理と、有効領域Rの裏面100b側の周縁に沿って環状の改質領域42を形成させる第2処理と、を含む。これにより、有効領域Rの表面100a側及び裏面100b側では、改質領域4から延びる亀裂を表面100a及び裏面100bに到達させ、表面100a及び裏面100bに露出する亀裂(ハーフカットないしフルカット)を確実に形成することができる。
【0155】
第2実施形態に係るレーザ加工装置では、周縁処理は、ステージ107を回転させながら、第1及び第2集光点P1,P2をZ方向に移動させることで、有効領域Rの表面100a側と裏面100b側との間の周縁に沿って、螺旋状の改質領域43を形成させる螺旋処理を有する。これにより、有効領域Rの表面100a側と裏面100b側との間では、螺旋状の改質領域43を周縁に沿って重ならないように形成して、効率よいトリミング加工が可能となる。
【0156】
なお、対象物100における表面100a側に1列又は3列以上の環状の改質領域41を形成してもよい。対象物100における表面100a側に環状の改質領域41を形成しなくてもよい。対象物100における裏面100b側に1列又は3列以上の環状の改質領域42を形成してもよい。対象物100における裏面100b側に環状の改質領域42を形成しなくてもよい。対象物100における表面100a側と裏面100b側との間に螺旋状の改質領域43を形成しなくてもよい。改質領域41,43から延びる亀裂は、場合によっては、表面100a及び裏面100bの少なくとも何れかに到達していなくてもよい。
【0157】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第3実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0158】
第3実施形態のレーザ加工装置において、制御部9が実行する第1剥離処理では、第1領域G1に改質領域4を形成する場合、第1回転速度vでステージ107を回転させる。第2領域G2に改質領域4を形成する場合、第1回転速度vよりも速い第2回転速度v’でステージ107を回転させる。つまり、制御部9は、下式を満たすようにステージ107の回転速度を制御する。制御部9は、第1及び第2改質領域4A,4Bの改質スポットのピッチがおおよそ一定になるように、第1回転速度vよりも第2回転速度v’を速める。
第1回転速度v<第2回転速度v'
【0159】
図21(a)に示されるように、第1領域G1は、Z方向から見て対象物100における回転軸Cから遠い外側の環状の領域である。第2領域G2は、Z方向から見て対象物100における回転軸Cに近い内側の円形状の領域である。第1及び第2領域G1,G2の設定は、制御部9において行うことができる。第1及び第2領域G1,G2は、座標指定されたものであってもよい。
【0160】
制御部9は、第1及び第2レーザ光L1,L2の加工条件を次のように設定する。すなわち、第1領域G1に改質領域4を形成する場合における第1及び第2レーザ光L1,L2の周波数(繰り返し周波数)と、第2領域G2に改質領域4を形成する場合における第1及び第2レーザ光L1,L2の周波数と、は、等しい。第1領域G1に改質領域4を形成する場合における第1及び第2レーザ光L1,L2のパルスの間引き間隔と、第2領域G2に改質領域4を形成する場合における第1及び第2レーザ光L1,L2のパルスの間引き間隔と、は、等しい。なお、第2領域G2に改質領域4を形成する場合、第1領域G1に改質領域4を形成する場合に比べて、第1及び第2レーザ光L1,L2の周波数が低くてもよいし、第1及び第2レーザ光L1,L2のパルスの間引き間隔が多くてもよい。
【0161】
第3実施形態に係るレーザ加工装置において実施される第1剥離処理の一例について、具体的に説明する。
【0162】
まず、X方向において、第1及び第2集光点P1,P2が剥離開始所定位置に位置するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動させる。例えば剥離開始所定位置は、第2領域G2の中央においてX方向に近接する一対の所定位置である。
【0163】
続いて、ステージ107の回転を開始する。ステージ107の回転速度が第2回転速度v’で一定になった時点で、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を開始する。図21(b)に示されるように、第2領域G2において、第1及び第2集光点P1,P2がX方向に沿って互いに離れるように第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動する。
【0164】
図21(c)に示されるように、第1及び第2集光点P1,P2が第1領域G1に到達した場合、ステージ107の回転速度を第1回転速度vで一定にし、第1領域G1において、引き続き第1及び第2集光点P1,P2がX方向に沿って互いに離れるように第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動する。以上により、Z方向から見て回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状の第1改質領域4Aと、Z方向から見て回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状で且つ第1改質領域4Aに対して重畳しない第2改質領域4Bと、を対象物100の内部における仮想面M1(図10参照)に沿って形成する。
【0165】
以上、第3実施形態に係るレーザ加工装置においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。第3実施形態に係るレーザ加工装置においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0166】
第3実施形態に係るレーザ加工装置において、第1剥離処理では、Z方向から見て対象物100におけるステージ107の回転軸Cから遠い側の第1領域G1に第1及び第2改質領域4A,4Bを形成する場合、第1回転速度vでステージ107を回転させる。第1剥離処理では、Z方向から見て対象物100におけるステージ107の回転軸Cに近い側の第2領域G2に第1及び第2改質領域4A,4Bを形成する場合、第1回転速度vよりも速い第2回転速度v’でステージ107を回転させる。これにより、剥離加工を行う際、第1領域G1に第1及び第2集光点P1,P2が位置する場合の当該位置での周速度と、第2領域G2に第1及び第2集光点P1,P2が位置する場合の当該位置での周速度とが、近い速度となる。第1改質領域4Aの第1改質スポットのピッチ及び第2改質領域4Bの第2改質スポットのピッチを、一定になるように揃えることが可能となる。
【0167】
本実施形態では、次の変形例に係る第1剥離処理を制御部9により実行してもよい。すなわち、第1領域G1に第1改質領域4Aを形成させると同時に、第2領域G2に第2改質領域4Bを形成させてもよい。このとき、ステージ107の回転速度は一定であってもよい。さらに、第1及び第2改質領域4A,4Bの改質スポットのピッチがおおよそ一定になるように、第1レーザ光L1の周波数が第2レーザ光L2の周波数よりも高くされていてもよいし、第1レーザ光L1のパルスが間引かれず且つ第2レーザ光L2のパルスが間引かれていてもよいし、第1レーザ光L1のパルスが間引かれた間引き量が第2レーザ光L2のパルスが間引かれた間引き量よりも小さくてもよい。パルスの間引きは、EOM又はAOMにより実現できる。
【0168】
このような変形例に係る第1剥離処理では、具体的には、X方向において、第1及び第2集光点P1,P2が剥離開始所定位置に位置するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動させる。例えば第1集光点P1に係る剥離開始所定位置は、第1領域G1の内縁側の所定位置である。例えば第2集光点P2に係る剥離開始所定位置は、第2領域G2の中心に位置する所定位置である。
【0169】
続いて、ステージ107の回転を開始する。ステージ107の回転速度が一定になった時点で、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を開始する。このとき、第1レーザ光L1の周波数を第2レーザ光L2の周波数よりも高くする。或いは、第1レーザ光L1のパルスを間引かず、第2レーザ光L2のパルスを間引く。さらに或いは、第1レーザ光L1のパルスが間引かれた間引き量を第2レーザ光L2のパルスが間引かれた間引き量よりも小さくする。
【0170】
第1及び第2集光点P1,P2がX方向に沿って互いに離れるように第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動する。第1集光点P1が第1領域G1の外縁側に到達した場合、第1レーザ光L1の照射を停止する。第2集光点Pが第2領域G2の外縁側に到達した場合、第2レーザ光L2の照射を停止する。以上により、図22に示されるように、Z方向から見て回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状の第1改質領域4Aを第1領域G1に形成し、Z方向から見て回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状の第2改質領域4Bを第2領域G2に形成する。
【0171】
変形例に係る第1剥離処理によっても、剥離加工を行う際、第1及び第2改質領域4A,4Bにおける改質スポットのピッチを一定になるように揃えることが可能となる。なお、このとき、第1改質領域4Aと第2改質領域4Bとを繋げ、一続きの渦巻き状の改質領域4を形成できる。すなわち、第1剥離処理では、ステージ107を回転させながら、第1及び第2集光点P1,P2のそれぞれをX方向に移動させることで、回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状の第1改質領域4Aを形成させると共に、回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状で且つ第1改質領域4Aと一続きに繋がる第2改質領域4Bを形成させることができる。この場合でも、効率よい剥離加工を具体的に実現することが可能となる。
【0172】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第4実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0173】
図23に示されるように、第4実施形態に係るレーザ加工装置410は、ステージ107がXYテーブル415を更に有する。XYテーブル415は、ステージ107上に設けられ、ステージ107と一体で回転する。XYテーブル415は、載置された対象物100を、回転軸Cに対して接近及び離間するようにX方向及びY方向に移動可能である。XYテーブル415としては、特に限定されず、公知の種々のXYテーブルを用いることができる。XYテーブル415は、その動作が制御部9により制御される。
【0174】
対象物100は、Z方向から見て、対象物100の中央に設定された中央領域100dと、中央領域100d以外の主領域100eと、を含む。中央領域100dは、円形状の領域である。主領域100eは、中央領域100dよりも広い領域であって、中央領域100dを囲む円環状の領域である。中央領域100dは、次のように定義可能な領域である。つまり、中央領域100dが回転軸C上に位置した状態で対象物100を回転させた場合において、中央領域100dの最外位置での周速度が、剥離加工に要される最低周速度を実現不可能な周速度となる領域である。例えば対象物が12インチウェハの場合には、中央領域100dはφ10mmの領域である。中央領域100d及び主領域100eについては、第5及び第6実施形態においても同様である。
【0175】
制御部9は、対象物100の中央領域100dが回転軸C上に位置した状態で、主領域100eに対して第1剥離処理を実行する。また、制御部9は、対象物100の主領域100eが回転軸C上に位置した状態で中央領域100dに対して第1剥離処理を実行する。ここでの第1剥離処理は、上述したように、ステージ107を回転させながら、照射している第1及び第2レーザ光L1,L2の第1及び第2集光点P1,P2を互いに近づくように又は遠ざかるようにX方向に移動させる処理である。
【0176】
第4実施形態に係るレーザ加工装置410において実施される第1剥離処理の一例について、具体的に説明する。
【0177】
まず、XYテーブル415を駆動し、対象物100の主領域100eが回転軸C上に位置した状態、つまり、対象物100の中央領域100dが回転軸C上から離れた状態とする。ステージ107を一定速度で回転させる。第1及び第2集光点P1,P2がX方向に沿って互いに近づくように第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動する。
【0178】
このとき、主領域100eに第1及び第2集光点P1,P2が位置する場合には、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を停止し、中央領域100dに第1及び第2集光点P1,P2が位置する場合には、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を実行する。これにより、図24に示されるように、中央領域100dにおいて、回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状の一部形状であって曲線状に延びる第1及び第2改質領域4A,4Bを形成する。なお、図24において、渦巻き状のラインにおけるグレーの領域は、第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を停止しているときの第1及び第2集光点P1,P2の軌跡である。
【0179】
続いて、図25に示されるように、XYテーブル415を駆動し、対象物100の中央領域100dが回転軸C上に位置した状態、具体的には、対象物100の中心が回転軸C上に位置する状態とする。ステージ107を一定速度で回転させる。第1及び第2集光点P1,P2がX方向に沿って互いに近づくように第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動する。
【0180】
このとき、主領域100eに第1及び第2集光点P1,P2が位置する場合には、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を実行し、中央領域100dに第1及び第2集光点P1,P2が位置する場合には、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を停止する。これにより、図26に示されるように、主領域100eにおいて、回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状の第1及び第2改質領域4A,4Bを形成する。
【0181】
以上、レーザ加工装置410においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。レーザ加工装置410においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0182】
ところで、改質領域4に含まれる改質スポットのピッチを一定にするためには、周速度を一定にする必要がある。周速度は、以下の式で定義できる。
周速度=(回転数N[rpm]/60)・(π・直径D)
【0183】
例えば回転数が最大500rpmのステージ107を利用する場合、12インチウェハの対象物100では、外周部では最大周速度を7850mm/secとすることができ、剥離加工に少なくとも必要な最低周速度(例えば800mm/sec)を十分に達成できる。対象物100のφ30mmの範囲の外縁付近位置までは、ステージの回転数を上げることで、最低周速度を達成できる。対象物100のφ10mmの範囲の外縁付近位置までは、周速度が最低周速度以下まで落ちるものの、第1及び第2レーザ光L1,L2の周波数等の加工条件を変えることで対応できる。しかし、対象物100の中央領域100d(ここではφ10mmの範囲)では、大幅に周速度が落ちるという懸念があり、加工条件の変更によっても周速度が最低周速度以下となり、改質領域4に含まれる改質スポットのピッチを一定にすることが困難となり、形成される改質スポットが密になり過ぎる可能性がある。
【0184】
この点、レーザ加工装置410では、対象物100の中央領域100dがステージ107の回転軸C上に位置した状態で、主領域100eに対して第1剥離処理を実行する。対象物100の主領域100eがステージ107の回転軸C上に位置した状態で、中央領域100dに対して第1剥離処理を実行する。これにより、中央領域100dに第1剥離処理を実行する際には、対象物100が回転軸Cに対して偏心したような状態となることから、中央領域100dの周速度が大幅に落ちるという上記懸念を解消することができる。中央領域100dに形成される改質領域4の改質スポットが密になり過ぎることを回避することが可能となる。また、改質領域4の改質スポットのピッチが詰まって対象物100を透過する第1及び第2レーザ光L1,L2によるダメージ(いわゆる抜け光ダメージ)が大きくなってしまうことを、抑制することが可能となる。
【0185】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第5実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0186】
第5実施形態に係るレーザ加工装置500において、制御部9は、主領域100eに対して第1剥離処理を実行する。また、制御部9は、少なくとも中央領域100dに対しては、ステージ107を回転させずに第1レーザ光L1を照射させる共に、第1集光点P1の移動を制御することにより、対象物100の内部において仮想面M1に沿って第1改質領域4Aを形成させる第2剥離処理を実行する。第2剥離処理では、第1集光点P1を直線的に移動させ、直線状に延びる第1改質領域4Aを形成させる。
【0187】
第5実施形態に係るレーザ加工装置500において実施される第1剥離処理の一例について、具体的に説明する。
【0188】
第1集光点P1を仮想面M1に位置させた状態で、ステージ107を回転させずに、少なくとも中央領域100dに設定された複数のラインに沿って、第1レーザ光L1を照射しながら第1集光点P1を移動させる。ラインは、Y方向に並び且つX方向に延在している。これにより、図27に示されるように、直線状に延びる複数の第1改質領域4Aを中央領域100dに形成させる。なお、主領域100eにおける中央領域100dの周辺まで、直線状の第1改質領域4Aが延出していてもよい。
【0189】
続いて、ステージ107を一定速度で回転させ、第1及び第2集光点P1,P2がX方向に沿って互いに近づくように第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動する。このとき、主領域100eに第1及び第2集光点P1,P2が位置する場合には、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を実行し、中央領域100dに第1及び第2集光点P1,P2が位置する場合には、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を停止する。これにより、図28に示されるように、主領域100eにおいて、回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状の第1及び第2改質領域4A,4Bを形成する。
【0190】
以上、レーザ加工装置500においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。レーザ加工装置500においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0191】
レーザ加工装置500では、主領域100eに対して第1剥離処理を実行する。中央領域100dに対しては、ステージ107を回転させずに第1レーザ光L1を照射させる共に、第1集光点P1の移動を制御することにより、対象物100の内部において仮想面M1に沿って第1改質領域4Aの形成させる第2剥離処理を実行する。第2剥離処理では、第1集光点P1を直線的に移動させ、直線状に延びる第1改質領域4Aを形成させる。この場合、中央領域100dに形成される第1改質領域4Aの改質スポットのピッチは、第1集光点P1を直線的に移動させる速度及び第1レーザ光L1の周波数等の加工条件によって制御可能となる。よって、中央領域100dに形成される改質スポットが密になり過ぎることを回避することが可能となる。
【0192】
なお、本実施形態の制御部9は、中央領域100dに対する第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を停止させてもよい。つまり、中央領域100dには、レーザ加工を施さなくてもよい。この場合、中央領域100dには改質領域4が形成されないことから、中央領域100dに形成される改質スポットが密になり過ぎることを回避することが可能となる。
【0193】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第6実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0194】
図29に示されるように、第6実施形態に係るレーザ加工装置600は、ステージ107(図9参照)に代えてステージ607を備える。ステージ607は、支持部である。ステージ607には、回転軸C上以外の位置に複数の対象物100が載置されている。つまり、ステージ607は、ステージ107よりも大型である。ステージ607には、複数(図示する例では4つ)の対象物100を、回転軸Cの位置を含む一定領域には載らないように配置可能である。ステージ107には、複数の対象物100のそれぞれを、回転軸Cの位置から等しい距離に位置するように配置可能である。
【0195】
制御部9は、ステージ607に複数の対象物100が回転軸C上以外の位置に載置された状態で、第1剥離処理を実行する。ここでの第1剥離処理は、上述したように、ステージ107を回転させながら、照射している第1及び第2レーザ光L1,L2の第1及び第2集光点P1,P2を互いに近づくように又は遠ざかるようにX方向に移動させる処理である。
【0196】
第6実施形態に係るレーザ加工装置600において、第1剥離処理の実行時の動作の一例を具体的に説明する。
【0197】
まず、ステージ107の回転軸C上以外の位置に複数の対象物100を載置する。複数の対象物100がステージ107の回転軸C上以外の位置に載置された状態で、制御部9により第1剥離処理を実行する。すなわち、ステージ107を一定速度で回転させ、第1及び第2集光点P1,P2がX方向に沿って互いに近づくように第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動させる。このとき、対象物100以外に第1及び第2集光点P1,P2が位置する場合には、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を停止し、対象物100に第1及び第2集光点P1,P2が位置する場合には、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を実行する。
【0198】
これにより、回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状の一部形状であって曲線状に延びる第1及び第2改質領域4A,4Bを、複数の対象物100のそれぞれに形成する。なお、図29において、渦巻き状のラインにおけるグレーの領域は、第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を停止しているときの第1及び第2集光点P1,P2の軌跡である。
【0199】
以上、レーザ加工装置600においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。レーザ加工装置600においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0200】
レーザ加工装置600では、ステージ107には、ステージ107の回転軸C上以外の位置に、複数の対象物100が載置されている。この場合においても、対象物100の中央領域100dで大幅に周速度が落ちるという上記懸念を解消することができ、中央領域100dに形成される改質スポットが密になり過ぎることを回避することが可能となる。
【0201】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第7実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0202】
図30に示されるように、第7実施形態に係るレーザ加工装置700は、X軸レール108(図9参照)に代えて、第1及び第2X軸レール108A,108Bを備える。第1X軸レール108Aは、X方向に沿って延びるレールである。第1X軸レール108Aは、第1Z軸レール106Aに取り付けられている。第1X軸レール108Aは、第1レーザ光L1の第1集光点P1がX方向に沿って移動するように、第1レーザ加工ヘッド10AをX方向に沿って移動させる。第1X軸レール108Aは、第1集光点P1(集光部14)が回転軸C又はその付近を通過するように第1レーザ加工ヘッド10AをX方向に沿って移動させる。第1X軸レール108Aは、上記移動機構6(図1参照)又は上記移動機構300(図8参照)のレールに対応する。第1X軸レール108Aは、第1水平移動機構(水平移動機構)を構成する。
【0203】
第2X軸レール108Bは、X方向に沿って延びるレールである。第2X軸レール108Bは、第2Z軸レール106Bに取り付けられている。第2X軸レール108Bは、第2レーザ光L2の第2集光点P2がX方向に沿って移動するように、第2レーザ加工ヘッド10BをX方向に沿って移動させる。第2X軸レール108Bは、第2集光点P2(集光部14)が回転軸C又はその付近を通過するように第2レーザ加工ヘッド10BをX方向に沿って移動させる。第2X軸レール108Bは、上記移動機構6(図1参照)又は上記移動機構300(図8参照)のレールに対応する。第2X軸レール108Bは、第2水平移動機構(水平移動機構)を構成する。
【0204】
第1X軸レール108Aは、ステージ107のX方向の一方側から、他方側へ回転軸Cの位置を越えた位置まで伸びる。第2X軸レール108Bは、ステージ107のX方向の他方側から、一方向側へ回転軸Cの位置を越えない位置まで伸びる。つまり、第1レーザ加工ヘッド10Aひいては第1集光点P1だけが、X方向においてステージ107の回転軸Cの位置まで移動できるように構成されている。第1X軸レール108Aと第2X軸レール108Bとは、Y方向に互いにずれて配置されている。図示する例では、第1レーザ加工ヘッド10Aと第2レーザ加工ヘッドとは、内部構造が回転軸Cを介して互いに鏡像ではないが、鏡像であってもよい。
【0205】
第7実施形態に係るレーザ加工装置700においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。レーザ加工装置700においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0206】
[第8実施形態]
次に、第8実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第8実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0207】
図31に示されるように、第8実施形態に係るレーザ加工装置800は、第3及び第4レーザ加工ヘッド10C,10D、第3及び第4Z軸レール106C,106D、並びに、Y軸レール109を更に備える。
【0208】
第3レーザ加工ヘッド10Cは、ステージ107に載置された対象物100に第3レーザ光L3(図33(c)参照)をZ方向に沿って照射し、当該対象物100の内部に第3改質領域4C(図33(a)参照)を形成する。第3レーザ加工ヘッド10Cは、第3Z軸レール106C及びY軸レール109に取り付けられている。第3レーザ加工ヘッド10Cは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、第3Z軸レール106Cに沿ってZ方向に直線的に移動可能である。第3レーザ加工ヘッド10Cは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、Y軸レール109に沿ってY方向に直線的に移動可能である。
【0209】
第4レーザ加工ヘッド10Dは、ステージ107に載置された対象物100に第4レーザ光L4(図33(c)参照)をZ方向に沿って照射し、当該対象物100の内部に第4改質領域4D(図33(a)参照)を形成する。第4レーザ加工ヘッド10Dは、第4Z軸レール106D及びY軸レール109に取り付けられている。第4レーザ加工ヘッド10Dは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、第4Z軸レール106Dに沿ってZ方向に直線的に移動可能である。第4レーザ加工ヘッド10Dは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、Y軸レール109に沿ってY方向に直線的に移動可能である。第3レーザ加工ヘッド10Cと第4レーザ加工ヘッド10Dとは、内部構造が回転軸Cを介して互いに鏡像となっている。
【0210】
第3Z軸レール106Cは、Z方向に沿って延びるレールである。第3Z軸レール106Cは、取付部65と同様な取付部865を介して第3レーザ加工ヘッド10Cに取り付けられている。第3Z軸レール106Cは、第3レーザ光L3の第3集光点P3(図33(c)参照)がZ方向に沿って移動するように、第3レーザ加工ヘッド10CをZ方向に沿って移動させる。第3Z軸レール106Cは、第3鉛直移動機構(鉛直移動機構)を構成する。
【0211】
第4Z軸レール106Dは、Z方向に沿って延びるレールである。第4Z軸レール106Dは、取付部66と同様な取付部866を介して第4レーザ加工ヘッド10Dに取り付けられている。第4Z軸レール106Dは、第4レーザ光L4の第4集光点P4(図33(c)参照)がZ方向に沿って移動するように、第4レーザ加工ヘッド10DをZ方向に沿って移動させる。第4Z軸レール106Dは、第4鉛直移動機構(鉛直移動機構)を構成する。
【0212】
Y軸レール109は、Y方向に沿って延びるレールである。Y軸レール109は、第3及び第4Z軸レール106C,106Dのそれぞれに取り付けられている。Y軸レール109は、第3レーザ光L3の第3集光点P3がY方向に沿って移動するように、第3レーザ加工ヘッド10CをY方向に沿って移動させる。Y軸レール109は、第4レーザ光L4の第4集光点P4がY方向に沿って移動するように、第4レーザ加工ヘッド10DをY方向に沿って移動させる。Y軸レール109は、第3及び第4集光点が回転軸C又はその付近を通過するように、第3及び第4レーザ加工ヘッド10C,10Dを移動させる。Y軸レール109は、移動機構400(図8参照)のレールに対応する。Y軸レール109は、水平移動機構(第3及び第4水平移動機構)を構成する。X軸レール108とY軸レール109とは、高さ位置が異なるように設置されている。例えばX軸レール108が下側で、Y軸レール109が上側に設置されている。
【0213】
第8実施形態において、制御部9が実行する周縁処理は、図31図32及び図33(a)~図33(c)に示されるように、ステージ107を回転させながら、対象物100に対して第1~第4レーザ加工ヘッド10A~10Dのそれぞれから第1~第4レーザ光L1~L4を照射させることで、有効領域Rの周縁に沿って環状の改質領域4を形成させる第2周回処理を有する。第2周回処理では、第1~第4レーザ光L1~L4の第1~第4集光点P1~P4を、Z方向における同位置に位置させ、第1~第4レーザ光L1~L4の照射で形成される第1~第4改質領域4A~4Dが互いに重ならないように、第1~第4レーザ加工ヘッド10A~10Dのそれぞれにおける第1~第4レーザ光L1~L4それぞれの照射の開始及び停止を制御する。
【0214】
第8実施形態に係るレーザ加工装置800において、トリミング加工を施す際の動作の一例を具体的に説明する。
【0215】
まず、図32(a)に示されるように、アライメントカメラ110が対象物100のアライメント対象100nの直上に位置し且つアライメント対象100nにアライメントカメラ110のピントが合うように、制御部9により、ステージ107を回転させると共にアライメントカメラ110が搭載されている第1レーザ加工ヘッド10AをX軸レール108及び第1Z軸レール106Aに沿って移動させる。
【0216】
アライメントカメラ110により撮像を行う。制御部9により、アライメントカメラ110の撮像画像に基づいて、対象物100の0度方向の位置を取得する。制御部9により、アライメントカメラ110の撮像画像に基づいて、対象物100の直径を取得する。制御部9によりステージ107を回転させ、θ方向において対象物100を基準位置(第3レーザ加工ヘッド10Cの加工位置(第3集光点P3の位置)が0度方向となる位置)に位置させる。
【0217】
続いて、制御部9により第2周回処理を実行する。第2周回処理では、図32(b)に示されるように、X方向において、第1及び第2集光点P1,P2がトリミング所定位置に位置するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動させる。Y方向において、第3及び第4集光点P3,P4がトリミング所定位置に位置するように、第3及び第4レーザ加工ヘッド10C,10DをY軸レール109に沿って移動させる。Z方向において第1~第4集光点P1~P4がZ方向における同位置に位置するように、第1~4レーザ加工ヘッド10A~10Dを第1~第4Z軸レール106A~106Dに沿って移動させる。例えばトリミング所定位置は、有効領域Rの外縁であって、対象物100の外周から径方向内側に所定距離入り込んだ位置である。なお、図32(b)では、有効領域R及び除去領域Eの境界を破線で示す(図33(b)及び図33(c)において同様)。
【0218】
続いて、図33(a)~図33(c)に示されるように、ステージ107の回転を開始させる。測距センサによる裏面100bの追従を開始する。ステージ107の回転速度が一定(等速)になり、且つ、θ方向における対象物100の位置が基準位置(例えば品質が安定する0度、90度、180度又は270度)となった時点で、第1~第4レーザ加工ヘッド10A~10Dによる第1~第4レーザ光L1~L4の照射を開始する。
【0219】
図34(a)に示されるように、第1~第4レーザ光L1~L4の当該照射の開始からステージ107が1/4回転したときに、第1~第4レーザ光L1~L4の当該照射を停止させる。これにより、有効領域Rの周縁に沿って、第1~第4改質領域4A~4Dが繋がって成る1つの環状の改質領域4を形成させる。測距センサを停止させると共に、θ方向において対象物100が基準位置に位置する状態でステージ107の回転を停止させる。
【0220】
続いて、制御部9により、除去領域Eに改質領域4を形成させる除去処理(外周部の切り出し処理)を実行する。除去処理では、有効領域Rの外縁から助走距離だけ径方向内側の位置へ、第1~第4レーザ加工ヘッド10A~10DをX方向及びY方向に移動させる。第1~第4集光点P1~P4が加工条件で指定されるZ方向の位置に位置するように、第1~第4レーザ加工ヘッド10A~10DをZ方向に移動させる。測距センサによる裏面100bの追従を開始する。
【0221】
ステージ107の回転を停止した状態で、第1~第4集光点P1~P4が径方向外側に一定速度で移動するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX方向に移動させると共に第3及び第4レーザ加工ヘッド10C,10DをY方向に移動させる。このとき、除去領域Eに第1~第4集光点P1~P4が位置するときには、第1~第4レーザ光L1~L4の照射を実行し、それ以外に第1~第4集光点P1~P4が位置するときには、第1~第4レーザ光L1~L4の照射を停止する。このような第1~第4レーザ光L1~L4のスキャンを、第1~第4集光点P1~P4のZ方向の位置を変えて複数回繰り返す。これにより、図34(b)に示されるように、Z方向から見て除去領域Eを4等分するラインM2(図34(a)参照)に沿って、改質領域4Jを形成する。形成した改質領域4Jからは、ラインM2に沿いながら表面100a及び裏面100bの少なくとも何れかに到達する亀裂が延びていてもよい。そして、図35に示されるように、冶具又はエアー等により、改質領域4A~4D,4Jを境界として、除去領域Eを取り除く。
【0222】
以上、第8実施形態に係るレーザ加工装置800においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。レーザ加工装置800においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0223】
レーザ加工装置800では、第2周回処理により、第1~第4集光点P1~P4をZ方向における同位置に位置させ、第1~第4レーザ光L1~L4の照射で形成される複数の改質領域4のそれぞれが互いに重ならないように、第1~第4レーザ加工ヘッド10A~10Dのそれぞれにおける第1~第4レーザ光L1~L4の照射の開始及び停止を制御する。これにより、第1~第4レーザ加工ヘッド10A~10Dを用いて環状の改質領域4を効率よく形成することができる。
【0224】
特に本実施形態では、複数のレーザ加工ヘッドのそれぞれからレーザ光を照射した後、360度/(レーザ加工ヘッドの数)だけステージ107が回転したときに、当該レーザ光の照射を停止する。対象物100における有効領域Rの周縁に沿って、複数の改質領域4を繋げて1つの環状の改質領域4を形成することが可能となる。なお、この場合における改質領域4が繋がることには、改質領域4が重なることには含まれない。
【0225】
レーザ加工装置800において、除去処理では、第1~第4集光点P1~P4の移動速度が一定になった状態で、第1~第4レーザ加工ヘッド10A~10Dにおける第1~第4レーザ光L1~L4の照射を開始及び停止させる。これにより、除去処理により形成した改質領域4に含まれる複数の改質スポットのピッチを、一定になるように揃えることが可能となる。
【0226】
レーザ加工装置800において、除去処理では、対象物100の中心から離れる方向に第1~第4集光点P1~P4を移動させる。この場合、上述した除去領域Eの細分化を具体的に実現することができる。なお、除去処理では、対象物100の中心に近づく方向に第1~第4集光点P1~P4を移動させてもよい。
【0227】
本実施形態では、除去処理において、ステージ107の回転を停止した状態で除去領域Eに改質領域4を形成したが、ステージ107を回転させながら除去領域Eに改質領域4を形成してもよい。これにより、例えば図36に示されるような改質領域4を除去領域Eに形成することができる。除去領域Eを細分化可能となり、その後の研削時に破片を飛ばすことができる。除去処理における各種の条件を調整することで、当該破片の制御(破片制御)が可能となる。
【0228】
本実施形態では、X軸レール108及びY軸レール109を設置したが、このような構成に特に限定されず、Z方向から見て互いに交差する第1軸及び第2軸を設置すればよい。なお、例えば対象物100がシリコンを含んで形成されている場合には、結晶方位及び切断品質の観点から、上記のように90度で交差するX軸レール108及びY軸レール109を備えていてもよい。
【0229】
本実施形態では、X軸レール108及びY軸レール109に加えて、第1~第4レーザ加工ヘッド10A~10Dの少なくとも何れかを移動させる1又は複数の水平軸を更に備えていてもよい。例えば、X軸レール108(第一軸)とY軸レール109(第二軸)とに加えて、第三軸を設置してもよく、この場合の第三軸は、X軸レール108に対して45度で交差してもよい。
【0230】
本実施形態では、第1レーザ加工ヘッド10Aひいては第1集光点P1だけが、X方向においてステージ107の回転軸Cの位置まで移動できるように制御されているが、これに限定されない。例えば第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bの双方ひいては第1及び第2集光点P1,P2の双方が、X方向においてステージ107の回転軸Cの位置まで移動できるように制御されていてもよい。本実施形態では、X方向及びY方向の少なくとも何れかにステージ107が移動可能に構成されていてもよい。本実施形態では、第3レーザ加工ヘッド10Cと第4レーザ加工ヘッド10Dとは内部構造が鏡像ではなくてもよい。
【0231】
なお、第1~第4集光点P1~P4でのビーム形状は、真円形状ではなく、楕円形状である。通常、0度又は90度等のへき開方向に沿って対象物100に改質領域4を形成する際には、ピーム形状に係る楕円形状の長軸方向(以下、「楕円長軸方向」ともいう)は、加工進行方向と一致する。しかし、円周状に改質領域4を形成する際、オリエンテーションフラットに対しての角度等によっては、へき開方向から楕円長軸方向がずれるため、加工品質が悪化する。加工品質の悪化を抑制するため、楕円長軸方向を、加工進行方向に対して異なる角度で加工するとよい。この場合、楕円長軸方向を可変させる方法と、全方位の加工で品質が平均的になるよう楕円長軸方向を固定する方法と、がある。
【0232】
[第9実施形態]
次に、第9実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第9実施形態の説明では、第8実施形態と異なる点を説明し、第8実施形態と重複する説明を省略する。
【0233】
第9実施形態において、周縁処理は、ステージ107を回転させながら、Z方向における第1位置に第1レーザ光L1の第1集光点P1を位置させた状態で第1レーザ光L1を照射し、第1レーザ光L1の当該照射の開始からステージ107が1回転したときに第1レーザ光L1の当該照射を停止させることで、有効領域Rの周縁に沿って環状の改質領域4を形成させる処理を実行する。
【0234】
周縁処理は、ステージ107を回転させながら、Z方向における第1位置よりもレーザ光入射面側の第2位置に第2レーザ光L2の第2集光点P2を位置させた状態で第2レーザ光L2を照射し、第2レーザ光L2の当該照射の開始からステージ107が1回転したときに第2レーザ光L2の当該照射を停止させることで、有効領域Rの周縁に沿って環状の改質領域4を形成させる処理を実行する。
【0235】
周縁処理は、ステージ107を回転させながら、Z方向における第2位置よりもレーザ光入射面側の第3位置に第3レーザ光L3の第3集光点P3を位置させた状態で第3レーザ光L3を照射し、第3レーザ光L3の当該照射の開始からステージ107が1回転したときに第3レーザ光L3の当該照射を停止させることで、有効領域Rの周縁に沿って環状の改質領域4を形成させる処理を実行する。
【0236】
周縁処理は、ステージ107を回転させながら、Z方向における第3位置よりもレーザ光入射面側の第4位置に第4レーザ光L4の第4集光点P4を位置させた状態で第4レーザ光L4を照射し、第4レーザ光L4の当該照射の開始からステージ107が1回転したときに第4レーザ光L4の当該照射を停止させることで、有効領域Rの周縁に沿って環状の改質領域4を形成させる処理を実行する。
【0237】
周縁処理において、第2集光点P2は第1集光点P1に対してステージ107の回転方向の順方向に90度離れており、第3集光点P3は第2集光点P2に対してステージ107の回転方向の順方向に90度離れており、第4集光点P4は第3集光点P3に対してステージ107の回転方向の順方向に90度離れており、第1集光点P1は第4集光点P4に対してステージ107の回転方向の順方向に90度離れている。
【0238】
周縁処理において、図37に示されるように、第2レーザ光L2の照射は、第1レーザ光L1の照射の開始からステージ107が90度回転した後に開始する。周縁処理において、第3レーザ光L3の照射は、第2レーザ光L2の照射の開始からステージ107が90度回転した後に開始する。周縁処理において、第4レーザ光L4の照射は、第3レーザ光L3の照射の開始からステージ107が90度回転した後に開始する。
【0239】
第9実施形態に係るレーザ加工装置では、トリミング加工を施す際の動作について、次の点が第8実施形態と異なる。すなわち、Z方向において第1~第4集光点P1~P4がこの順でZ方向におけるレーザ光入射面(裏面100b)から遠い位置に位置するように、制御部9により第1~4レーザ加工ヘッド10A~10Dを第1~第4Z軸レール106A~106Dに沿って移動させる。ステージ107の回転を開始し、ステージ107の回転速度が一定(等速)になり、且つ、θ方向における対象物100の位置が基準位置となった時点で、第1レーザ加工ヘッド10Aによる第1レーザ光L1の照射を開始する。第1レーザ光L1の照射の開始からステージ107が90度回転した時点で、第2レーザ光L2の照射を開始する。第2レーザ光L2の照射の開始からステージ107が90度回転した時点で、第3レーザ光L3の照射を開始する。第3レーザ光L3の照射の開始からステージ107が90度回転した時点で、第3レーザ光L3の照射を開始する。
【0240】
以上、第9実施形態に係るレーザ加工装置においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。第9実施形態に係るレーザ加工装置においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0241】
第9実施形態に係るレーザ加工装置では、周縁処理は、ステージ107を回転させながら、第1位置に第1集光点P1を位置させた状態で第1レーザ光L1を照射し、第1レーザ光L1の当該照射の開始からステージ107が1回転したときに第1レーザ光L1の当該照射を停止させることで、有効領域Rの周縁に沿って環状の改質領域4を形成させる処理を含む。周縁処理は、ステージ107を回転させながら、第1位置よりも裏面100b側の第2位置に第2集光点P2を位置させた状態で第2レーザ光L2を照射し、第2レーザ光L2の当該照射の開始からステージ107が1回転したときに第2レーザ光L2の当該照射を停止させることで、有効領域Rの周縁に沿って環状の改質領域4を形成させる処理を含む。第2集光点P2は第1集光点P1に対して、θ方向の順方向に所定角度(ここでは90度)離れており、第2レーザ光L2の照射は第1レーザ光L1の照射の開始からステージ107が所定角度回転した後に開始させる。これにより、Z方向の位置が異なる複数位置に環状の改質領域4を形成する場合において、レーザ光入射面である裏面100b側の改質領域4の存在が、レーザ光入射面の反対面である表面100a側の改質領域4の形成に悪影響を及ぼすということを防ぐことができる。
【0242】
[第10実施形態]
次に、第10実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第10実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0243】
第10実施形態において、制御部9が実行する第1剥離処理では、図38に示されるように、ステージ107を回転させながら、第1集光点P1をX方向の一方向及び他方向に往復するように繰り返し移動させることで、ステージ107の回転方向に沿って波状に延びる第1改質領域4Aを形成させる。また、第1剥離処理では、ステージ107を回転させながら、第2集光点P2をX方向の一方向に移動させることで、回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状で且つ第1改質領域4Aと交差する第2改質領域4Bを形成させる。
【0244】
第10実施形態に係るレーザ加工装置1000において実施される第1剥離処理の一例について、具体的に説明する。
【0245】
まず、X方向において、第1及び第2集光点P1,P2が剥離開始所定位置に位置するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動させる。例えば剥離開始所定位置は、対象物100における外周部の所定位置である。続いて、ステージ107の回転を開始する。ステージ107の回転速度が一定になった時点で、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を開始する。X方向において第1集光点P1が所定範囲内で往復するように第1レーザ加工ヘッド10AをX軸レール108に沿って往復移動させる。X方向において第2集光点P2が回転軸Cの位置に近づくように第2レーザ加工ヘッド10BをX軸レール108に沿って移動させる。
【0246】
以上により、Z方向から見て、ステージ107の回転方向に沿って波状に延びる第1改質領域4Aと、回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状で且つ第1改質領域4Aと交差する第2改質領域4Bと、を対象物100の内部における仮想面M1(図10参照)に沿って形成する。
【0247】
以上、第10実施形態に係るレーザ加工装置1000においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。レーザ加工装置1000においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0248】
レーザ加工装置1100では、第1剥離処理により、θ方向に沿って波状に延びる第1改質領域4A、及び、渦巻き状で且つ第1改質領域4Aと交差する第2改質領域4Bを、仮想面M1に沿って形成することができる。これにより、これら第1及び第2改質領域4A,4Bを境界として対象物100の一部を剥離することができる。効率よい剥離加工を具体的に実現することが可能となる。
【0249】
[第11実施形態]
次に、第11実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第11実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0250】
第11実施形態に係るレーザ加工装置1100では、Y方向において第1集光点P1の位置が回転軸Cから離れるように、第1レーザ加工ヘッド10Aが回転軸Cに対してY方向にずれて配置されている。このような配置は、例えば、第1レーザ加工ヘッド10AをY方向に移動させるY軸レールを更に備えることで実現できる。或いは、このような配置は、例えば、第1レーザ加工ヘッド10AをX方向に移動させるX軸レール108(図9参照)についてのY方向の固定位置を変えることで実現できる。
【0251】
第11実施形態において、制御部9が実行する第1剥離処理では、図39に示されるように、ステージ107を回転させながら、Z方向から見て対象物100と同心の仮想円M3に対する接線に沿ってX方向に第1集光点P1を往復移動させ、第1改質領域を形成させる。また、第1剥離処理では、ステージ107を回転させながら、第2集光点P2をX方向の一方向に移動させることで、回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状で且つ第1改質領域と交差する第2改質領域4Bを形成させる。
【0252】
第11実施形態に係るレーザ加工装置1100において実施される第1剥離処理の一例について、具体的に説明する。
【0253】
まず、X方向において、第1及び第2集光点P1,P2が剥離開始所定位置に位置するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動させる。例えば剥離開始所定位置は、対象物100における外周部の所定位置である。続いて、ステージ107の回転を開始する。ステージ107の回転速度が一定になった時点で、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を開始する。仮想円M3に対する接線に沿ってX方向に第1集光点P1が往復移動するように、第1レーザ加工ヘッド10AをX軸レール108に沿って往復移動させる。X方向において第2集光点P2が回転軸Cの位置に近づくように、第2レーザ加工ヘッド10BをX軸レール108に沿って回転軸C側に移動させる。以上により、Z方向から見て、対象物100の仮想円M3よりも外周側にて仮想円M3に接する曲線状に延びる第1改質領域(不図示)と、回転軸Cの位置を中心とする渦巻き状で且つ第1改質領域と交差する第2改質領域4Bと、を対象物100の内部における仮想面M1(図10参照)に沿って形成する。
【0254】
以上、第11実施形態に係るレーザ加工装置1100においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。レーザ加工装置1100においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0255】
レーザ加工装置1100では、第1剥離処理により、仮想円M3よりも外周側にて仮想円M3に接する曲線状の第1改質領域、及び、渦巻き状で且つ第1改質領域と交差する第2改質領域4Bを、仮想面M1に沿って形成することができる。これにより、これらの改質領域4を境界として対象物100の一部を剥離することができる。効率よい剥離加工を具体的に実現することが可能となる。
【0256】
[第12実施形態]
次に、第12実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第12実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0257】
第12実施形態に係るレーザ加工装置1200では、Y方向において第1集光点P1の位置が回転軸Cから一方側に離れるように、第1レーザ加工ヘッド10Aが回転軸Cに対してY方向の一方側にずれて配置されている。このような配置は、例えば、第1レーザ加工ヘッド10AをY方向に移動させるY軸レールを更に備えることで実現できる。或いは、このような配置は、例えば、第1レーザ加工ヘッド10AをX方向に移動させるX軸レール108(図9参照)についてのY方向の固定位置を変えることで実現できる。
【0258】
第12実施形態に係るレーザ加工装置1200では、Y方向において第2集光点P2の位置が回転軸Cから他方側に離れるように、第2レーザ加工ヘッド10Bが回転軸Cに対してY方向の他方側にずれて配置されている。このような配置は、例えば、第2レーザ加工ヘッド10BをY方向に移動させるY軸レールを更に備えることで実現できる。或いは、このような配置は、例えば、第2レーザ加工ヘッド10BをX方向に移動させるX軸レール108(図9参照)についてのY方向の固定位置を変えることで実現できる。
【0259】
第12実施形態において、制御部9が実行する第1剥離処理では、図40に示されるように、ステージ107を回転させながら、Z方向から見て対象物100と同心の仮想円M4に対する接線に沿ってX方向に第1集光点P1を往復移動させることで、第1改質領域を形成させる。また、第1剥離処理では、ステージ107を回転させながら、仮想円M4に対する接線に沿ってX方向に第2集光点P2を往復移動させることで、第2改質領域を形成させる。
【0260】
第12実施形態に係るレーザ加工装置1200において実施される第1剥離処理の一例について、具体的に説明する。
【0261】
まず、X方向において、第1及び第2集光点P1,P2が剥離開始所定位置に位置するように、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10BをX軸レール108に沿って移動させる。例えば剥離開始所定位置は、対象物100の外周部の所定位置である。続いて、ステージ107の回転を開始する。ステージ107の回転速度が一定になった時点で、第1及び第2レーザ加工ヘッド10A,10Bによる第1及び第2レーザ光L1,L2の照射を開始する。仮想円M4に対する接線に沿ってX方向に第1集光点P1が往復移動するように第1レーザ加工ヘッド10AをX軸レール108に沿って往復移動させる。仮想円M4に対する接線に沿ってX方向に第2集光点P2が往復移動するように第2レーザ加工ヘッド10BをX軸レール108に沿って往復移動させる。以上により、Z方向から見て、対象物100の仮想円M4よりも外周側にて仮想円M4に接する曲線状に延びる第1及び第2改質領域(不図示)を対象物100の内部における仮想面M1(図10参照)に沿って形成する。
【0262】
以上、第12実施形態に係るレーザ加工装置1200においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。レーザ加工装置1200においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0263】
レーザ加工装置1200では、第1剥離処理により、仮想円M4よりも外周側にて仮想円M4に接する曲線状の第1及び第2改質領域を形成することができる。これにより、これらの改質領域を境界として対象物100の一部を剥離することができる。効率よい剥離加工を具体的に実現することが可能となる。
【0264】
[第13実施形態]
次に、第13実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第13実施形態の説明では、第8実施形態と異なる点を説明し、第8実施形態と重複する説明を省略する。
【0265】
図41に示されるように、第13実施形態に係るレーザ加工装置1300は、X軸レール108に代えて、第1及び第2X軸レール108A,108Bを備える。第1X軸レール108Aは、X方向に沿って延びるレールである。第1X軸レール108Aは、第1Z軸レール106Aに取り付けられている。第1X軸レール108Aは、第1レーザ光L1の第1集光点P1がX方向に沿って移動するように、第1レーザ加工ヘッド10AをX方向に沿って移動させる。第1X軸レール108Aは、第1集光点P1(集光部14)が回転軸C又はその付近を通過するように第1レーザ加工ヘッド10AをX方向に沿って移動させる。第1X軸レール108Aは、第1水平移動機構(水平移動機構)を構成する。
【0266】
第2X軸レール108Bは、X方向に沿って延びるレールである。第2X軸レール108Bは、第2Z軸レール106Bに取り付けられている。第2X軸レール108Bは、第2レーザ光L2の第2集光点P2がX方向に沿って移動するように、第2レーザ加工ヘッド10BをX方向に沿って移動させる。第2X軸レール108Bは、第2集光点P2(集光部14)が回転軸C又はその付近を通過するように第2レーザ加工ヘッド10BをX方向に沿って移動させる。第2X軸レール108Bは、第2水平移動機構(水平移動機構)を構成する。
【0267】
第13実施形態に係るレーザ加工装置1300は、Y軸レール109に代えて、第1及び第2Y軸レール109A,109Bを備える。第1Y軸レール109Aは、Y方向に沿って延びるレールである。第1Y軸レール109Aは、第3Z軸レール106Cに取り付けられている。第1Y軸レール109Aは、第3レーザ光L3の第3集光点P3がY方向に沿って移動するように、第3レーザ加工ヘッド10CをY方向に沿って移動させる。第1Y軸レール109Aは、第3集光点P3(集光部14)が回転軸C又はその付近を通過するように第3レーザ加工ヘッド10CをY方向に沿って移動させる。第1Y軸レール109Aは、移動機構400のレールに対応する。第1Y軸レール109Aは、第3水平移動機構(水平移動機構)を構成する。
【0268】
第2Y軸レール109Bは、Y方向に沿って延びるレールである。第2Y軸レール109Bは、第4Z軸レール106Dに取り付けられている。第2Y軸レール109Bは、第4レーザ光L4の第4集光点P4がY方向に沿って移動するように、第4レーザ加工ヘッド10DをY方向に沿って移動させる。第2Y軸レール109Bは、第4集光点P4(集光部14)が回転軸C又はその付近を通過するように第4レーザ加工ヘッド10DをY方向に沿って移動させる。第2Y軸レール109Bは、移動機構400のレールに対応する。第2Y軸レール109Bは、第4水平移動機構(水平移動機構)を構成する。
【0269】
第1X軸レール108Aは、ステージ107のX方向の一方側から、他方側へ回転軸Cの位置を越えた位置まで伸びる。第2X軸レール108Bは、ステージ107のX方向の他方側から、一方向側へ回転軸Cの位置を越えない位置まで伸びる。第1Y軸レール109Aは、ステージ107のY方向の一方側から、他方側へ回転軸Cの位置を越えた位置まで伸びる。第2Y軸レール109Bは、ステージ107のY方向の他方側から、一方向側へ回転軸Cの位置を越えない位置まで伸びる。
【0270】
第1X軸レール108Aと第2X軸レール108Bとは、Y方向に互いにずれて配置されている。第1Y軸レール109Aと第2Y軸レール109Bとは、X方向に互いにずれて配置されている。図示する例では、第1レーザ加工ヘッド10Aと第2レーザ加工ヘッド10Bとは、内部構造が回転軸Cを介して互いに鏡像ではないが、鏡像であってもよい。第3レーザ加工ヘッド10Cと第4レーザ加工ヘッド10Dとは、内部構造が回転軸Cを介して互いに鏡像ではないが、鏡像であってもよい。
【0271】
以上、第13実施形態に係るレーザ加工装置1300においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。レーザ加工装置1300においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0272】
[第14実施形態]
次に、第14実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。第14実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0273】
図42に示されるように、第14実施形態に係るレーザ加工装置1400は、X軸レール108に代えて、第1及び第2回転アーム141A,141Bを備える。第1回転アーム141Aの先端側は、第1Z軸レール106Aに取り付けられている。第1回転アーム141Aの基端側は、ステージ107外に設けられZ方向に沿う軸142Aに固定されている。第1回転アーム141Aは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、軸142Aを中心に回転する。第1回転アーム141Aは、軸142Aを中心とする回転方向に円弧状の軌跡K1に沿って第1集光点P1が移動するように、第1レーザ加工ヘッド10Aを軌跡K1に沿って移動させる。軌跡K1は、回転軸C又はその付近を通過する。第1回転アーム141Aは、第1水平移動機構(水平移動機構)を構成する。
【0274】
第2回転アーム141Bの先端側は、第2Z軸レール106Bに取り付けられている。第2回転アーム141Bの基端側は、ステージ107外に設けられZ方向に沿う軸142Bに固定されている。第2回転アーム141Bは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、軸142Bを中心に回転する。第2回転アーム141Bは、軸142Bを中心とする回転方向に円弧状の軌跡K2に沿って第2集光点P2が移動するように、第2レーザ加工ヘッド10Bを軌跡K2に沿って移動させる。軌跡K2は、回転軸C又はその付近を通過しない。第2回転アーム141Bは、第2水平移動機構(水平移動機構)を構成する。
【0275】
以上、第14実施形態に係るレーザ加工装置1400においても、対象物100に対して種々の加工を行うに際し、同時ないし並列的に形成可能な改質領域4を増やし、タクトアップを実現することができる。対象物100に対する種々の加工を効率よく行うことが可能となる。レーザ加工装置1400においても、トリミング加工を精度よく行うことが可能となる。
【0276】
以上、本発明の一態様は、上述した実施形態に限定されない。
【0277】
上述した実施形態では、対象物100の裏面100bをレーザ光入射面としたが、対象物100の表面100aをレーザ光入射面としてもよい。上述した実施形態では、改質領域4は、例えば対象物100の内部に形成された結晶領域、再結晶領域、又は、ゲッタリング領域であってもよい。結晶領域は、対象物100の加工前の構造を維持している領域である。再結晶領域は、一旦は蒸発、プラズマ化あるいは溶融した後、再凝固する際に単結晶あるいは多結晶として凝固した領域である。ゲッタリング領域は、重金属等の不純物を集めて捕獲するゲッタリング効果を発揮する領域であり、連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。また、例えば加工装置は、アブレーション等の加工へ適用されてもよい。
【0278】
上述した実施形態では、前述のように、剥離加工における第1及び第2改質スポットSA,SBのピッチが変動することは許容可能である。その例を以下に説明する。
【0279】
例えば、制御部9は、主領域100eに対しては、当該ピッチが第1ピッチで一定になるように上記第1剥離処理を実行してもよい。制御部9は、中央領域100dに対しては、ステージ107,607を回転させながら又は回転させずに、第1及び第2レーザ光L1,L2の少なくとも一方を対象物100に照射させる共に、第1及び第2集光点P1,P2の少なくとも一方の移動を制御することにより、対象物100の内部における仮想面M1に沿って、当該ピッチが第1ピッチ未満となるように第1及び第2改質領域4A,4Bの少なくとも一方を形成させる第3剥離処理を実行してもよい。
【0280】
これにより、中央領域100dでは、主領域100eよりも当該ピッチが詰まった加工制御を実施できる。効率よい剥離加工を具体的に実現することが可能となる。ピッチが一定になることは、所定の誤差範囲内でピッチが変動することを含む。
【0281】
例えば上記第3剥離処理では、含まれる複数の改質スポットのピッチが一定にならないように、第1及び第2改質領域4A,4Bの少なくとも一方を中央領域100dに形成させてもよい。この場合、剥離加工を具体的に実現しつつ、中央領域100dでは当該ピッチを一定にする制御を不要にできる。ピッチが一定にならないとは、ピッチが一定値(ある決まった値)にならないこと、及び、この一定値の誤差範囲を超えた範囲でピッチが変動することを含む。ちなみに、上記第3剥離処理では、当該ピッチが一定になるように第1及び第2改質領域4A,4Bの少なくとも一方を中央領域100dに形成させても勿論よい。
【0282】
例えば制御部9は、ステージ107,607の回転速度を、最低回転速度から最大回転速度まで変更可能であってもよい。制御部9は、中央領域100dに対しては、最大回転速度でステージ107,607を回転させながら第1及び第2レーザ光L1,L2を照射させる第1剥離処理を実行してもよい。制御部9は、主領域100eに対しては、中央領域100dに第1及び第2集光点P1,P2が近づくにつれて段階的に大きくなる回転速度でステージ107,607を回転させながら第1及び第2レーザ光L1,L2を照射させる第1剥離処理を実行してもよい。この場合においても、効率よい剥離加工を具体的に実現することが可能となる。
【0283】
上述した実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。また、上述した実施形態又は変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
【0284】
上述した実施形態において、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2は、擬似連続発振(擬似CW)されたレーザ光であってもよい。擬似連続発振とは、ピークを持つパルスが、非常に高い繰返し周波数で発振する発振モードのことである。
【0285】
上述した実施形態において、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の照射には、バーストモード有りでの第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の照射、及び、バーストモード無しでの第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の照射を含む。バーストモードは、連続したひと続きのパルスを有するレーザ光を照射することである。
【0286】
例えば、厚さ485μmの小片の対象物100に対して、波長1028nm、パルス幅10psec、バーストモード有り及び無しで第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を照射して、剥離加工を行った。対象物100は、ガラス材料(例えばアルカリガラス)の小片ウェハとした。改質領域4を対象物100の厚さ方向の中央付近に形成した。その結果、バーストモード有りの場合、低エネルギで改質領域4が形成され、且つ、剥離(スライシング)に必要な水平方向の亀裂を得ることを確認した。特に、バースト間隔を狭くすると、当該効果が高いことを確認した。バーストモードを用いることで、剥離加工時の水平方向の亀裂力を落とすことなく、抜け光ダメージを低減できる可能性を確認した。なお、ここでの結果は、対象物100としてガラスウェハを用いた剥離結果であるが、対象物100としてシリコンウェハを用いてもよい。対象物100としてシリコンウェハを用いた場合にも、対象物100としてガラスウェハを用いた場合と同様の剥離結果を得られると想定できる。
【0287】
図43は、トリミング加工後の対象物100を示す写真図である。図43(a)は、対象物100の除去領域Eを示す写真図である。図43(b)は、対象物100の有効領域Rを示す写真図である。図中の対象物100は、直径12インチ、厚さ775μmのシリコンウェハであり、除去領域Eの幅は5mmである。図43(a)及び図43(b)に示されるように、上記実施形態では、精度よくトリミング加工できることを確認することができる。
【0288】
図44(a)は、剥離加工により対象物100に形成された改質領域4を示す撮像画像である。図中の撮像画像は、対象物100の厚さ方向視においてIRカメラで撮像した撮像画像である。図44(a)に示されるように、ここでの剥離加工では、厚さ方向から見て同心円状に改質領域4が形成されていることを確認できる。
【0289】
図44(b)は、剥離加工後の対象物100を示す写真図である。図44(b)では、面吸着パッドにより、対象物100の一部を吸着して剥離している。図44(b)に示されるように、上記実施形態では、精度よく剥離加工できることを確認することができる。
【0290】
上述した実施形態では、1つのレーザ加工ヘッドを備え、当該1つのレーザ加工ヘッドから複数のレーザ光を照射する構成を採用してもよい。すなわち、レーザ加工装置は、対象物が載置され、鉛直方向に沿う軸を中心に回転可能な支持部と、支持部に載置された対象物に第1レーザ光及び第2レーザ光を照射し、当該対象物の内部に第1改質領域及び第2改質領域を形成するレーザ加工ヘッドと、第1レーザ光の集光点である第1集光点が鉛直方向に沿って移動するように支持部及びレーザ加工ヘッドの少なくとも一方を移動させる第1鉛直移動機構と、第2レーザ光の集光点である第2集光点が鉛直方向に沿って移動するように支持部及びレーザ加工ヘッドの少なくとも一方を移動させる第2鉛直移動機構と、第1集光点が水平方向に沿って移動するように支持部及びレーザ加工ヘッドの少なくとも一方を移動させる第1水平移動機構と、第2集光点が水平方向に沿って移動するように支持部及びレーザ加工ヘッドの少なくとも一方を移動させる第2水平移動機構と、支持部の回転、レーザ加工ヘッドからの第1及び第2レーザ光の照射、並びに、第1及び第2集光点の移動を制御する制御部と、を備えていてもよい。この場合、複数のレーザ光を同時照射してもよいし、多段階で照射してもよい。このようなレーザ加工装置においても、上述した種々の効果が奏される。
【符号の説明】
【0291】
4…改質領域、4A…第1改質領域(改質領域)、4B…第2改質領域(改質領域)、4C…第3改質領域(改質領域)、4D…第4改質領域(改質領域)、4J…改質領域、9…制御部、10A…第1レーザ加工ヘッド、100…対象物、100d…中央領域、100e…主領域、101,410,500,600,700,800,1000,1100,1200,1300,1400…レーザ加工装置、106A…第1Z軸レール(第1鉛直移動機構,鉛直移動機構)、106B…第2Z軸レール(第2鉛直移動機構,鉛直移動機構)、107,607…ステージ(支持部)、108…X軸レール(第1水平移動機構,第2水平移動機構,水平移動機構)、109…Y軸レール(水平移動機構)、G1…第1領域、G2…第2領域、C…回転軸(軸)、E…除去領域、L1…第1レーザ光(レーザ光)、L2…第2レーザ光(レーザ光)、M1…仮想面、P1…第1集光点(集光点)、P2…第2集光点(集光点)、R…有効領域、SA…第1改質スポット(改質スポット)、SB…第2改質スポット(改質スポット)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44