(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240925BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H01L21/30 572B
H01L21/304 642F
H01L21/304 648F
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2023136047
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2019133656の分割
【原出願日】2019-07-19
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 敬次
(72)【発明者】
【氏名】内田 博章
(72)【発明者】
【氏名】真柄 啓二
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲弥
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-283297(JP,A)
【文献】特開2013-187548(JP,A)
【文献】特開2014-022433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/304
G03F 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置において、
硫酸と過酸化水素水とを含む混合液で前記基板を処理する処理槽と、
前記処理槽から溢れた前記混合液を回収する外槽と、
一端が前記外槽に回収された前記混合液中に流通接続され、他端が前記処理槽内に貯留された前記混合液中に流通接続され、前記混合液を前記外槽から前記処理槽に向けて循環させる循環路と、
前記循環路に配置され、前記外槽で回収された前記混合液を前記処理槽に向けて送液する混合液送液ポンプと、
前記循環路の前記混合液送液ポンプより下流側に配置され、前記循環路内を流通する前記混合液を加熱する加熱部と、
前記混合液送液ポンプと前記加熱部との間の前記循環路内に存在する前記混合液に対して前記過酸化水素水を補充する過酸化水素水補充部と、
を備え
、
前記過酸化水素水補充部は、
前記過酸化水素水を貯留する過酸化水素水貯留槽と、
一端が該過酸化水素水貯留槽に流通接続され、他端が前記混合液送液ポンプと前記加熱部との間の前記循環路に流通接続される過酸化水素水補充管と、
前記過酸化水素水を前記過酸化水素水補充管に送液する過酸化水素水送液ポンプと、
を有し、
さらに、前記混合液送液ポンプと前記過酸化水素水送液ポンプとを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記混合液送液ポンプと前記過酸化水素水送液ポンプとを制御して、前記過酸化水素水補充管が流通接続される前記循環路の部位における前記過酸化水素水の分解による濃度の低下を抑制することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記混合液送液ポンプが前記混合液を吐出するタイミングで前記過酸化水素水を供給するように前記過酸化水素水送液ポンプを制御することを特徴とする請求項
1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理槽内の前記混合液に対して前記硫酸を補充する硫酸補充部をさらに備えることを特徴とする請求項1
又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の基板処理装置を備える基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ、液晶ディスプレイ用基板、プラズマディスプレイ用基板、有機EL用基板、FED(Field Emission Display)、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板(以下、単に「基板」と称する)に対して、処理液によって処理を行う基板処理装置及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の表面に残存するレジストの剥離やその他の有機性の汚染物質を除去するために、洗浄能力の高いカロ酸を生じる硫酸過酸化水素水混合液(SPM:Sulfuric acid/hydrogen Peroxide Mixture)が用いられている。特に、混合液を満たした処理槽内に複
数枚の基板を同時に浸漬して洗浄を行うバッチ式の基板処理装置においては、SPM液内に数十枚の基板を浸漬し、所定時間経過後に基板を取り出した後に、次の基板を浸漬する動作を繰り返す。このように連続的に洗浄を行う場合には、処理槽内のSPM液が基板表面に付着し、処理槽外に持ち出されることにより、SPM液のレベルが低下するので、所定のタイミングで硫酸や過酸化水素水を補充している。
【0003】
また、過酸化水素水は比較的不安定な物質であり、徐々に分解して水を生成することから、液レベルの低下に合せて硫酸や過酸化水素水を補充してもSPM液中の硫酸濃度が経時的に低下し、これによりSPM液の洗浄能力も低下する。
【0004】
このような過酸化水素水の特性を考慮し、過酸化水素水の補充に関して種々の提案がなされている。例えば、特許文献1では、外槽と内槽とを接続して混合液を循環させる循環ラインに設けられたヒータと、内槽の底部に配置されるSPM供給ノズルとの間の部に過酸化水素水供給ラインが接続されている。ここでは、過酸化水素水供給ラインから循環ラインに供給された過酸化水素水がSPM供給ノズルの吐出孔から吐出するまでの時間が5秒以内、または、過酸化水素水供給ラインの循環ラインへの接続部からSPM供給ノズルの吐出孔までの距離が50cm以下とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このよう構成では、SPM供給ノズルから吐出される混合液においてカロ酸が十分に活性化していない可能性がある。
【0007】
そこで、開示の技術の1つの側面は、硫酸と過酸化水素水とを含む高活性の混合液を作成し、洗浄能力を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術の1つの側面は、次のような基板処理装置によって例示される。
すなわち、本基板処理装置は、
基板を処理する基板処理装置において、
硫酸と過酸化水素水とを含む混合液で前記基板を処理する処理槽と、
前記処理槽から溢れた前記混合液を回収する外槽と、
一端が前記外槽に回収された前記混合液中に流通接続され、他端が前記処理槽内に貯留された前記混合液中に流通接続され、前記混合液を前記外槽から前記処理槽に向けて循環させる循環路と、
前記循環路に配置され、前記循環路内を流通する前記混合液を加熱する加熱部と、
前記外槽内における前記循環路の前記一端の近傍に存在する前記混合液又は前記循環路内における前記加熱部よりも上流側に存在する前記混合液に対して前記過酸化水素水を補充する過酸化水素水補充部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
このような発明によれば、過酸化水素水が外槽内における循環路の一端の近傍に存在する混合液に補充されることにより、外槽内の混合液に希釈される前に循環路を流通する混合液に過酸化水素水を補充することができる。また、過酸化水素水が循環路内における加熱部よりも上流側に存在する混合液に補充されることにより、加熱部により加熱される前の低温の混合液に補充されるので、分解による過酸化水素水の濃度の低下を抑制することができる。従って、過酸化水素水の濃度が高く、高活性の混合液を作成することでき、基板の洗浄能力が向上する。
ここで、流通接続は、流体が流通可能な態様で接続されていることをいう。
【0010】
本発明においては、
前記過酸化水素水補充部は、
前記過酸化水素水を貯留する過酸化水素水貯留槽と、
一端が該過酸化水素水貯留槽に流通接続され、他端が前記外槽に回収された前記混合液中に接続される過酸化水素水補充管と、
を備え、
前記過酸化水素水補充管の前記他端は、前記循環路の前記一端の前記近傍に配置されるようにしてもよい。
【0011】
このように本発明によれば、過酸化水素水補充管の他端を循環路の一端の近傍に配することにより、外槽内の混合液に希釈される前に循環路を流通する混合液に過酸化水素水を補充することができる。従って、過酸化水素水の濃度が高く、高活性の混合液を作成することでき、基板の洗浄能力が向上する。
【0012】
本発明においては、
前記循環路の前記加熱部より上流側に、前記外槽で回収された前記混合液を前記処理槽に向けて送液する混合液送液ポンプを備え、
前記混合液送液ポンプにより前記外槽内の前記混合液が前記循環路の前記一端から吸引されるときに周囲の領域よりも負圧となる領域に、前記過酸化水素水補充管の前記他端が配置されるようにしてもよい。
【0013】
このように本発明によれば、混合液送液ポンプにより外槽内の混合液が循環路の一端から吸引されるときに周囲の領域よりも負圧となる領域に、過酸化水素水補充管の他端を配置することにより、補充された過酸化水素水が外槽内の混合液に希釈される前に混合液送液ポンプの次の吸引動作によって吸引されて循環路内の混合液に混合される。従って、過酸化水素水の濃度が高く、高活性の混合液を作成することでき、基板の洗浄能力が向上する。
【0014】
本発明においては、
前記過酸化水素水補充部は、
前記過酸化水素水を貯留する過酸化水素水貯留槽と、
一端が該過酸化水素水貯留槽に流通接続され、他端が前記循環路の前記加熱部よりも上
流側に流通接続される過酸化水素水補充管と、
を備えるようにしてもよい。
【0015】
このように本発明によれば、過酸化水素水補充管の他端が循環路の加熱部よりも上流側に流通接続されるので、過酸化水素水が循環路内における加熱部よりも上流側に存在する混合液に補充されることとなる。これにより、過酸化水素水が加熱部により加熱される前の低温の混合液に補充されるので、分解による過酸化水素水の濃度の低下を抑制することができる。従って、過酸化水素水の濃度が高く、高活性の混合液を作成することでき、基板の洗浄能力が向上する。
【0016】
本発明においては、
前記循環路の前記加熱部より上流側に、前記外槽で回収された前記混合液を前記処理槽に向けて送液する混合液送液ポンプを備え、
前記過酸化水素水補充管の前記他端は前記混合液送液ポンプよりも上流側において前記循環路に流通接続されるようにしてもよい。
【0017】
このように本発明によれば、混合液送液ポンプの上流側で生じる負圧によって、補充された過酸化水素水の混合液との混合が促進され、混合液の活性化が促進される。従って、高活性の混合液を作成することでき、基板の洗浄能力が向上する。
【0018】
本発明においては、
前記過酸化水素水補充部は、前記過酸化水素水を前記過酸化水素水補充管に送液する過酸化水素水送液ポンプをさらに有し、
前記混合液送液ポンプと前記過酸化水素水送液ポンプとを制御する制御部を、さらに備え、
前記制御部は、前記混合液送液ポンプの吸引動作が開始される前に、前記過酸化水素水補充部から前記過酸化水素水が補充されるように前記混合液送液ポンプと前記過酸化水素水送液ポンプとを制御するようにしてもよい。
【0019】
このように、本発明によれば、混合液送液ポンプの吸引動作が開始される前に、過酸化水素水補充部から過酸化水素水が補充されるように混合液送液ポンプと過酸化水素水送液ポンプが制御されるので、過酸化水素水の希釈や分解により過酸化水素水の濃度が低下する前に混合液に過酸化水素水が補充される。従って、過酸化水素水の濃度が高く、高活性の混合液を作成することでき、基板の洗浄能力が向上する。
【0020】
本発明においては、
前記処理槽内の前記混合液に対して前記硫酸を補充する硫酸補充部をさらに備えるようにしてもよい。
【0021】
このように、本発明によれば、硫酸補充部により硫酸を補充することができるので、混合液における硫酸の濃度を適切に維持することができる。従って、高活性の混合液を作成することでき、基板の洗浄能力が向上する。
【0022】
また、本発明は、前記基板処理装置を備える基板処理システムである。
【0023】
このように、本発明によれば、上述の基板処理装置から基板処理システムを構成することにより、基板処理システムにおける基板の洗浄能力が向上する。
【0024】
また、本発明は、
基板を処理する基板処理方法であって、
硫酸と過酸化水素水とを含む混合液で前記基板を処理する処理槽と、
前記処理槽から溢れた前記混合液を回収する外槽と、
一端が前記外槽に回収された前記混合液中に接続され、他端が前記処理槽内に貯留された前記混合液中に流通接続され、前記混合液を前記外槽から前記処理槽に向けて循環させる循環路と、
前記循環路に配置され、前記循環路内を流通する前記混合液を加熱する加熱部と、
前記循環路の前記加熱部より上流側に、前記外槽で回収された前記混合液を前記処理槽に向けて送液する混合液送液ポンプと、
前記外槽内における前記循環路の前記一端の近傍に存在する前記混合液又は前記循環路内における前記加熱部よりも上流側に存在する前記混合液に対して前記過酸化水素水を補充する過酸化水素水補充部であって、補充すべき前記過酸化水素水を送液する過酸化水素水送液ポンプを有する過酸化水素水補充部と、
を備える基板処理装置において、
前記混合液送液ポンプによって前記混合液を吸引するステップと、
前記混合液送液ポンプによる前記混合液の吸引を開始する前に、前記過酸化水素水送液ポンプによって前記過酸化水素水を吸引するステップと、
を含む基板処理方法である。
【0025】
このように、本発明によれば、混合液送液ポンプの吸引動作が開始される前に、過酸化水素水補充部から過酸化水素水が補充されるように混合液送液ポンプと過酸化水素水送液ポンプが制御されるので、過酸化水素水の希釈や分解により過酸化水素水の濃度が低下する前に混合液に過酸化水素水が補充される。従って、過酸化水素水の濃度が高く、高活性の混合液を作成することでき、基板の洗浄能力が向上する。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る基板処理装置によれば、硫酸と過酸化水素水とを含む高活性の混合液を作成し、洗浄能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施例1の基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1の基板処理方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施例2の基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施例2の基板処理方法の一部を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施例3の基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施例4の基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施例5の基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<実施例1>
以下、本発明の実施例1について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1は、実施例1に係る基板処理装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0029】
基板処理装置1は、複数枚の基板Wを一括してSPM液Lで洗浄処理するバッチ式の装置である。この基板処理装置1は、処理槽11とオーバーフロー槽12とを備える。処理槽11は複数枚の基板Wを収容可能な大きさを有し、SPM液Lを貯留して複数枚の基板Wに対してSPM液Lによる洗浄処理を行う。オーバーフロー槽12は、処理槽11の上縁の周囲に設けられ、処理槽11から溢れたSPM液を回収する。ここでは、SPM液が本発明の「混合液」に対応し、オーバーフロー槽12が本発明の「外槽」に対応する。
【0030】
処理槽11とオーバーフロー槽12とは、循環配管13によって流通接続されている。循環配管13は、一端側がオーバーフロー槽12の上部から底部に向って配置され、他端側が処理槽11の底部に配置されたSPM液供給管141,142に接続されている。循環配管13には、オーバーフロー槽12側に設けられたSPM液送液ポンプ15から、処理槽11側、すなわち処理液の下流側に向って、インラインヒータ16、フィルタ17、制御弁18が、その順に配置されている。ここでは、循環配管13が本発明の「循環路」に対応し、SPM液送液ポンプ15が本発明の「混合液送液ポンプ」に対応し、インラインヒータ16が本発明の「加熱部」に対応する。
【0031】
SPM液送液ポンプ15は、循環配管13を通じてSPM液を圧送する。インラインヒータ16は、循環配管13を流通するSPM液を加熱し、処理温度(例えば、約120℃~140℃)に温調する。フィルタ17は循環配管13を流通するSPM液中のパーティクル等の異物をろ過して除去する。制御弁18は、循環配管13中における処理液の流通を制御する。SPM液送液ポンプ15がオンされると、オーバーフロー槽12に貯留するSPM液が循環配管13に吸い込まれ、インラインヒータ16による温調と、フィルタ17によるろ過が行われて処理槽11に送られる。
【0032】
処理槽11には、硫酸を硫酸供給部19から処理槽11に供給する硫酸供給管20の一端が配置されている。硫酸供給部19には硫酸が貯留されている。硫酸供給管20には、硫酸供給部19から処理槽11への硫酸の供給を制御する制御弁21が設けられている。
【0033】
処理槽11には、過酸化水素水を過酸化水素水供給部22から処理槽11に供給する過酸化水素水供給管23の一端が配置されている。過酸化水素水供給部22には過酸化水素水が貯留されている。過酸化水素水供給管23には、過酸化水素水供給部22から処理槽11への過酸化水素水の供給を制御する制御弁24が設けられている。
【0034】
オーバーフロー槽12には、過酸化水素水貯留槽25からオーバーフロー槽12に過酸化水素水を補充する過酸化水素水補充管26の一端に設けられた吐出口26a(
図1では円で囲って示している。)が配置されている。過酸化水素水貯留槽25には過酸化水素水が貯留されている。過酸化水素水補充管26には、過酸化水素水貯留槽25からオーバーフロー槽12への過酸化水素水の供給を制御する制御弁27が設けられている。過酸化水素水貯留槽25は、循環配管13を流通するSPM液に過酸化水素水を補充する。ここでは、過酸化水素水貯留槽25及び過酸化水素水補充管26が、本発明の「過酸化水素水補充部」に対応する。
【0035】
ここでは、過酸化水素水補充管26の吐出口26aは、循環配管13の一端である吸引口13a(
図1では円で囲って示している。)の近傍に配置される。循環配管13の吸引口13aの近傍とは、SPM液送液ポンプ15の吸引動作により、吸引口13aから吸い込まれる領域であり、換言すれば吸引口13aの周囲の領域であって、その周辺に対して負圧となり圧力差が生じる領域である。SPM液送液ポンプ15の能力により、近傍の具体的な範囲は異なるが、例えば、吸引口13aから半径約100mmの範囲である。このように、過酸化水素水補充管26の吐出口26aを、循環配管13の一端である吸引口13aの近傍に配置することにより、循環配管13の一端である吸引口13aの近傍に存在するSPM液に対して過酸化水素水が補充される。このようにして、循環配管13の吸引口13aの近傍で過酸化水素水が補充されたSPM液は約10~約20秒後にSPM液の反応によって生じるカロ酸の活性が高い状態で処理槽11に到達する。
【0036】
このように、過酸化水素水補充管26の吐出口26aを、循環配管13の吸引口13aの近傍に配置することにより、過酸化水素水がオーバーフロー槽12内のSPM液に希釈される前に循環配管13に流通するSPM液に補充することができる。このため、高活性
のSPM液を生成することができ、処理槽11における基板Wの洗浄能力も向上する。
【0037】
過酸化水素水貯留槽25は、基板処理装置1内に設けられてもよいし、ファシリティごとの設備として設けられていてもよい。また、制御弁27の下流に流量計を設けてもよい。
【0038】
処理槽11には、硫酸を硫酸補充部28から処理槽11に供給する硫酸補充管29の一端が配置されている。硫酸補充部28には硫酸が貯留されている。硫酸補充管29には、硫酸補充部28から処理槽11への硫酸の補充を制御する制御弁30が設けられている。
【0039】
基板Wは、基板保持部31の本体板311の下部に設けられた保持棒312,313,314によって起立姿勢で保持される。昇降ユニット32により、基板保持部31は、
図1に示す基板Wが処理槽11内部で処理液に浸漬される処理位置と、処理槽11上方の待機位置との間で昇降移動する。
【0040】
上述した、SPM液送液ポンプ15、インラインヒータ16、フィルタ17、制御弁18、制御弁21、制御弁24、制御弁27、制御弁30及び昇降ユニット32は、制御部33によって統括制御される。制御部33は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM等の補助記憶装置を有するコンピュータにより構成することができる。補助記憶装置には、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。
【0041】
(基板処理方法)
以下に、
図2のフローチャートを参照して実施例1に係る基板処理方法について説明する。
処理槽11内のSPM液が廃棄され、空になった状態を初期状態として説明する。
【0042】
まず、処理槽11にSPM液Lを供給する(ステップS1)。具体的には、制御部33により制御弁24を制御し、過酸化水素水供給部22から過酸化水素水供給管23を介して処理槽11に過酸化水素水を供給する。同様に、制御部33により制御弁21を制御し、硫酸供給部19から硫酸供給管20を介して処理槽11に供給する。このようにして処理槽11内で生成されたSPM液Lは、処理槽11に貯留されるとともに、処理槽11から溢れてオーバーフロー槽12にも貯留される。
【0043】
処理槽11及びオーバーフロー槽12に所定量貯留されると、制御部33はSPM液送液ポンプ15をオンし、SPM液が処理槽11、オーバーフロー槽12、循環配管13を循環する(ステップS2)。このとき、制御部33は、インラインヒータ16をオンし、循環配管13を流通するSPM液を120℃~140℃に温調する。
【0044】
送液ポンプ15をオンし、インラインヒータ16がオンした状態で、制御部33は、制御弁27を制御し、過酸化水素水貯留槽25に貯留された過酸化水素水を、過酸化水素水補充管26を介して補充する(ステップS3)。また、必要に応じて、制御部33は、制御弁30を制御し、硫酸補充部28から硫酸補充管29を介して硫酸を補充する。
【0045】
SPM液が所定の温度に調整されると、制御部33は、昇降ユニット32を制御し、基板保持部31を待機位置から処理位置へと下降させて、複数の基板Wを処理槽11内に貯留されたSPM液Lに浸漬させる(ステップS4)。
【0046】
そして、制御部33は、処理槽11の底部に配置されたSPM液供給管141,142からSPM液Lを供給するとともに、SPM液Lを処理槽11、オーバーフロー槽12及び循環配管13を循環流通させて基板保持部31に保持された基板Wを洗浄する(ステップS5)。
【0047】
洗浄が終了すると、制御部33は、昇降ユニット32を制御し、基板保持部31を処理位置から待機位置へと上昇させ、洗浄処理済みの基板Wを搬送ロボットに受け渡す(ステップS6)。
【0048】
図2のフローチャートでは説明のためにステップS6で処理を終了しているが、実際には、ステップS3に戻り、必要に応じて過酸化水素水が補充されると、ステップS4に進み次の基板Wの洗浄を行い、この過程が繰り返される。
【0049】
ここでは、ステップS4における基板保持部31の待機位置から処理位置への下降の前に、過酸化水素水を補充しているが、ステップS4とステップS5との間に、過酸化水素水を補充してもよく、過酸化水素水を補充するタイミングはこれに限られない。
【0050】
<実施例2>
以下、本発明の実施例2について図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、実施例2に係る基板処理装置2の概略構成を示すブロック図である。実施例1と同様の構成については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0051】
実施例2に係る基板処理装置2は、過酸化水素水貯留槽25に貯留された過酸化水素水を過酸化水素水補充管26に送液する過酸化水素水送液ポンプ34を設けている。ここでは、過酸化水素水貯留槽25、過酸化水素水補充管26及び過酸化水素水送液ポンプ34が、本発明の「過酸化水素水補充部」に対応する。
基板処理装置2の構成は、過酸化水素水送液ポンプ34を除き、実施例1に係る基板処理装置1と同様である。また、基板処理装置2における基板Wの洗浄処理は、基本的に基板処理装置1と同様である。
【0052】
以下に、
図4に示すフローチャートを参照して、基板処理装置2に特有の基板処理方法について説明する。
図4は、
図2に示す基板処理方法全体のうち、過酸化水素水を補充する処理(ステップS3)の詳細を示す。
基板処理装置2では、制御部33により、SPM液送液ポンプ15と過酸化水素水送液ポンプ34の相互の吸引タイミングを制御する。
【0053】
まず、過酸化水素水送液ポンプ34及び制御弁27の制御により過酸化水素水貯留槽25から過酸化水素水を吸引して、過酸化水素水補充管26の吐出口26aからオーバーフロー槽12内に過酸化水素水を吐出させる(ステップS31)。
【0054】
そして、SPM液送液ポンプ15の吸引動作によって循環配管13の吸引口13aからオーバーフロー槽12内のSPM液を吸引する(ステップS32)。
【0055】
すなわち、SPM液送液ポンプ15の吸引動作によって循環配管13の吸引口13aからオーバーフロー槽12内のSPM液を吸引する吸引動作を開始する前に、過酸化水素水送液ポンプ34により過酸化水素水貯留槽25から過酸化水素水を吸引して、過酸化水素水補充管26の吐出口26aからオーバーフロー槽12内に過酸化水素水を吐出させる。
【0056】
このようにすれば、過酸化水素水の希釈や分解により過酸化水素水の濃度が低下する前にSPM液に過酸化水素水が補充され、過酸化水素水の濃度が高い状態で、循環配管13
を通じて処理槽11にSPM液を送液することができる。従って、処理槽11における基板Wの洗浄能力が向上する。
【0057】
なお、
図4では、過酸化水素水送液ポンプ34とSPM液送液ポンプ15の動作は1回のみ表示しているが、必要に応じて、これらの処理を繰り返す。
【0058】
<実施例3>
以下、本発明の実施例3について図面を参照しながら詳細に説明する。
図5は、実施例3に係る基板処理装置3の概略構成を示すブロック図である。実施例1と同様の構成については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0059】
実施例3に係る基板処理装置3は、過酸化水素水貯留槽25からSPM液に過酸化水素水を補充する過酸化水素水補充管26が、循環配管13の吸引口13aとSPM液送液ポンプ15との間の部位13bに接続されている。このように、過酸化水素水補充管26を、循環配管13の吸引口13aとSPM液送液ポンプ15との間の部位13bに接続することにより、循環配管13におけるSPM液送液ポンプ15の上流側、すなわちインラインヒータ16の上流側に存在するSPM液に対して過酸化水素水が補充される。
【0060】
このようにすれば、SPM液送液ポンプ15の上流側の循環配管13内においてSPM液が負圧となる領域で過酸化水素水が補充されるので、過酸化水素水がSPM液に効率よく混合され、かつ、濃度が低下することもないので、過酸化水素水の濃度が高いSPM液を処理槽11に供給することができる。従って、SPM液Lの活性化が促進され、処理槽11における基板Wの洗浄能力が向上する。
【0061】
なお、実施例3に係る基板処理装置3においても、実施例2に係る基板処理装置2と同様に、過酸化水素水貯留槽25から過酸化水素水補充管26に過酸化水素水を送液する過酸化水素水送液ポンプ34を設けてもよい。
【0062】
<実施例4>
以下、本発明の実施例4について図面を参照しながら詳細に説明する。
図6は、実施例4に係る基板処理装置4の概略構成を示すブロック図である。実施例1及び2と同様の構成については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0063】
実施例4に係る基板処理装置4は、過酸化水素水貯留槽25からSPM液に過酸化水素水を補充する過酸化水素水補充管26が、循環配管13のSPM液送液ポンプ15とインラインヒータ16との間の部位13cに接続されている。このように、過酸化水素水補充管26を、循環配管13のSPM液送液ポンプ15とインラインヒータ16との間の部位13cに接続することにより、循環配管13におけるインラインヒータ16の上流側に存在するSPM液に対して過酸化水素水が補充される。
【0064】
このようにすれば、インラインヒータ16によって加温される前のSPM液に対して、過酸化水素水が補充されるので、過酸化水素水の分解による濃度の低下を抑制することができ、過酸化水素水の濃度が高いSPM液を処理槽11に送液することができる。このように、過酸化水素水の濃度が高く、高活性のSPM液Lを作成することできるので、処理槽11における基板Wの洗浄能力が向上する。
【0065】
なお、実施例4に係る基板処理装置4においても、実施例2に係る基板処理装置2と同様に、過酸化水素水貯留槽25から過酸化水素水補充管26に過酸化水素水を送液する過酸化水素水送液ポンプ34を設けてもよい。
【0066】
<実施例5>
(基板処理システム)
図7は、本実施例に係る基板処理装置を適用した基板処理システム100の全体構成の概略を示す平面図である。基板処理システム100は、上述の実施例1~4に係る基板処理装置1~4を備えるシステムである。
【0067】
基板処理システム100は、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の装置である。基板処理システム100は、半導体ウェハなどの円板状の基板Wを収容するキャリアCが搬送されるロードポートLPと、ロードポートLPから搬送された基板Wを薬液やリンス液などの処理液で処理する処理ユニット102と、ロードポートLPと処理ユニット102との間で基板Wを搬送する複数の搬送ロボットと、基板処理システム100を制御する制御装置103とを含む。
【0068】
処理ユニット102は、複数枚の基板Wが浸漬される第1薬液を貯留する第1薬液処理槽104と、複数枚の基板Wが浸漬される第1リンス液を貯留する第1リンス処理槽105と、複数枚の基板Wが浸漬される第2薬液を貯留する第2薬液処理槽106と、複数枚の基板Wが浸漬される第2リンス液を貯留する第2リンス処理槽107とを含む。処理ユニット102は、さらに、複数枚の基板Wを乾燥させる乾燥処理槽108を含む。本基板処理システム100の第1薬液処理槽104、第2薬液処理槽106を、上述の実施例に係る基板処理装置1,2,3又は4により構成することができる。このように基板処理システム100を構成することにより、基板Wの洗浄能力が向上する。
なお、上述の実施例に係る基板処理装置1,2,3又は4を備える基板処理システムの構成は上述のものに限られない。
【0069】
ここでは、第1薬液および第2薬液は、SPM液である。第1リンス液および第2リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水)である。第1リンス液および第2リンス液は、純水以外のリンス液であってもよい。第1リンス液および第2リンス液は、互いに異なる種類のリンス液であってもよい。
【0070】
複数の搬送ロボットは、ロードポートLPと処理ユニット102との間でキャリアCを搬送し、複数のキャリアCを収容するキャリア搬送装置109と、キャリア搬送装置109に保持されているキャリアCに対して複数枚の基板Wの搬入および搬出を行い、水平な姿勢と鉛直な姿勢との間で基板Wの姿勢を変更する姿勢変換ロボット110とを含む。姿勢変換ロボット110は、複数のキャリアCから取り出した複数枚の基板Wで1つのバッチを形成するバッチ組み動作と、1つのバッチに含まれる複数枚の基板Wを複数のキャリアCに収容するバッチ解除動作とを行う。
【0071】
複数の搬送ロボットは、さらに、姿勢変換ロボット110と処理ユニット102との間で複数枚の基板Wを搬送する主搬送ロボット111と、主搬送ロボット111と処理ユニット102との間で複数枚の基板Wを搬送する複数の副搬送ロボット112とを含む。複数の副搬送ロボット112は、第1薬液処理槽104と第1リンス処理槽105との間で複数枚の基板Wを搬送する第1副搬送ロボット112Aと、第2薬液処理槽106と第2リンス処理槽107との間で複数枚の基板Wを搬送する第2副搬送ロボット112Bとを含む。
【0072】
主搬送ロボット111は、複数枚(たとえば50枚)の基板Wからなる1バッチの基板Wを姿勢変換ロボット110から受け取る。主搬送ロボット111は、姿勢変換ロボット110から受け取った1バッチの基板Wを第1副搬送ロボット112Aおよび第2副搬送ロボット112Bに渡し、第1副搬送ロボット112Aおよび第2副搬送ロボット112Bに保持されている1バッチの基板Wを受け取る。主搬送ロボット111は、さらに、1
バッチの基板Wを乾燥処理槽108に搬送する。
【0073】
第1副搬送ロボット112Aは、主搬送ロボット111から受け取った1バッチの基板Wを第1薬液処理槽104と第1リンス処理槽105との間で搬送し、第1薬液処理槽104内の第1薬液または第1リンス処理槽105内の第1リンス液に浸漬させる。同様に、第2副搬送ロボット112Bは、主搬送ロボット111から受け取った1バッチの基板Wを第2薬液処理槽106と第2リンス処理槽107との間で搬送し、第2薬液処理槽106内の第2薬液または第2リンス処理槽107内の第2リンス液に浸漬させる。
【符号の説明】
【0074】
1,2,3,4・・・基板処理装置
11・・・処理槽
12・・・オーバーフロー槽
13・・・循環配管
13a・・吸引口
15・・・SPM液送液ポンプ
16・・・インラインヒータ
25・・・過酸化水素水貯留槽
26・・・過酸化水素水補充管
26a・・吐出口
33・・・制御部
34・・・過酸化水素水送液ポンプ
L・・・・SPM液
W・・・基板