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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/04 20060101AFI20240925BHJP
   H02K 5/20 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H02K9/04 Z
H02K5/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023149589
(22)【出願日】2023-09-14
(62)【分割の表示】P 2021128351の分割
【原出願日】2017-03-01
(65)【公開番号】P2023161015
(43)【公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】野中 朋子
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-119911(JP,A)
【文献】特開2016-001974(JP,A)
【文献】特開2005-162448(JP,A)
【文献】特開2012-110130(JP,A)
【文献】特開平07-255648(JP,A)
【文献】特開2004-080910(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035358(WO,A1)
【文献】特開2000-050602(JP,A)
【文献】特開2010-001839(JP,A)
【文献】特開平05-344680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/04
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの端部を有する回転軸と、
ロータと、
前記回転軸を支持する軸受と、
前記軸受を保持するカバーと、
を備え、
前記カバーは開放された隙間を備え、
前記ロータは、環状の天面と、軸方向に延在する外周側面を有する筒と、前記筒に取り付けられた磁石と、を備え、
前記回転軸の2つの端部のうち、一方の端部は前記環状の天面側にあり、他方の端部は当該一方の端部に対して反対側にあり、
前記回転軸と前記環状の天面は互いに固定されており、
前記筒の外周側面は、軸周りにおいて、複数の開放された孔部を備え、
軸方向において、前記複数の開放された孔部は、前記磁石の前記天面側の端部に対して前記天面側にあり、前記筒の内部空間は前記複数の開放された孔部と前記開放された隙間を通して外部とつながっており、
前記ロータの回転に伴って、前記回転軸の他方の端部から一方の端部に向かって、外部から空気が前記筒の内部空間に流入し、
前記筒の内部空間に流入した空気が前記複数の開放された孔部を通って外部へ流れ出る、モータ。
【請求項2】
前記天面の外周と前記筒の前記天面側の端部とがつながっており、
前記筒の内部空間にある空気は、前記ロータの回転により前記筒とともに回転する、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
ステータコアと、
コイルと、
前記コイルが巻き回された絶縁部材と、を備える、請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記複数の開放された孔部は前記コイルに向けて開口している、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記複数の開放された孔部は前記ステータコアより前記天面側にある、請求項3又は4に記載のモータ。
【請求項6】
前記複数の開放された孔部は前記コイルの面に対向する位置にある、請求項3から5のいずれかに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータに関し、特に、インナーロータ型のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、駆動時に発熱する。そのため、モータの用途によっては、モータを冷却する必要がある。
【0003】
下記特許文献1には、ロータに冷却用孔が設けられているアウターロータ型のモータの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-116818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インナーロータ型のモータには、磁石と磁石が取り付けられた外周側面を有するヨークとを有するロータを用いたものがある。このようなインナーロータ型のモータにおいても、モータを冷却する必要がある場合がある。例えば、コイルの温度が上昇することにより、コイルとコアとを絶縁する部材の耐熱上の使用上限を超えてしまったり、銅損の増加により、トルクが低下してしまったりする。
【0006】
この発明は、モータの構成部材を冷却することができるモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータは、2つの端部を有する回転軸と、ロータと、回転軸を支持する軸受と、軸受を保持するカバーと、を備え、カバーは開放された隙間を備え、ロータは、環状の天面と、軸方向に延在する外周側面を有する筒と、筒に取り付けられた磁石と、を備え、回転軸の2つの端部のうち、一方の端部は環状の天面側にあり、他方の端部は当該一方の端部に対して反対側にあり、回転軸と環状の天面は互いに固定されており、筒の外周側面は、軸周りにおいて、複数の開放された孔部を備え、軸方向において、複数の開放された孔部は、磁石の天面側の端部に対して天面側にあり、筒の内部空間は複数の開放された孔部と開放された隙間を通して外部とつながっており、ロータの回転に伴って、回転軸の他方の端部から一方の端部に向かって、外部から空気が筒の内部空間に流入し、筒の内部空間に流入した空気が複数の開放された孔部を通って外部へ流れ出る。
【0008】
好ましくは、天面の外周と筒の天面側の端部とがつながっており、筒の内部空間にある空気は、ロータの回転により筒とともに回転する。
【0009】
好ましくは、ステータコアと、コイルと、コイルが巻き回された絶縁部材と、を備える。
【0010】
好ましくは、複数の開放された孔部はコイルに向けて開口している。
【0011】
好ましくは、複数の開放された孔部はステータコアより天面側にある。
【0012】
好ましくは、複数の開放された孔部はコイルの面に対向する位置にある。
【0013】
これらの発明に従うと、モータの構成部材を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るモータを示す斜視図である。
図2】モータの平面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】モータの回転軸及びロータ示す斜視図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係るモータを示す斜視図である。
図6】モータの平面図である。
図7図6のA-A線断面図である。
図8】モータの回転軸及びロータを示す斜視図である。
図9】本発明の第3の実施の形態に係るモータの側断面図である。
図10】モータの回転軸及びロータを示す斜視図である。
図11】第1の実施の形態に係るモータの温度についての熱流体シミュレーションの結果を示す図である。
図12】第2の実施の形態に係るモータの温度についての熱流体シミュレーションの結果を示す図である。
図13】第3の実施の形態に係るモータの温度についての熱流体シミュレーションの結果を示す図である。
図14】第2の実施の形態に係るモータにおける流速分布についての熱流体シミュレーションの結果を示す図である。
図15図14の部分拡大図である。
図16】自然対流による流速分布の熱流体シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態におけるモータについて説明する。
【0016】
以下の説明において、モータの回転軸に平行な方向を、回転軸方向ということがある。また、回転軸方向を、上下方向ということがある(モータのハウジングから見て回転軸が突出している方向が上方向)。ここでいう「上下」、「上」、「下」等は、モータのみに着目したときに便宜上採用する示し方であって、このモータが搭載される機器における方向や、このモータが使用される姿勢について何ら限定するものではない。
【0017】
[第1の実施の形態]
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るモータ1を示す斜視図である。図2は、モータ1の平面図である。図3は、図2のA-A線断面図である。
【0019】
図1に示されるように、モータ1は、ハウジング10と、回転軸2と、カバー4とを有している。
【0020】
ハウジング10は、筒11と、筒11の一端すなわち上端を塞ぐ天面12及び傾斜部13とを有している。ハウジング10は、大まかに、カップ形状すなわち底がある筒形状を有している。ハウジング10の他方の開口部すなわち下の開口部には、カバー4が取り付けられている。図2に示されるように、筒11は、上方から見て円形の、円筒形状を有する。
【0021】
回転軸2は、ハウジング10の天面12を貫通している。ハウジング10の天面12には軸受8が保持されている。回転軸2は、軸受8により支持されている。回転軸2は、ハウジング10に対して回転可能である。回転軸2は、天面12に対して略垂直に配置されている。回転軸2は、平面視で(上から見て)、筒11の中央に位置している。回転軸2は、ハウジング10から見て、天面12から上方に突出している。
【0022】
天面12は、平面視で筒11の略中央に位置する。天面12は、平坦部である。天面12は、円板状である。傾斜部13は、天面12の外周と、筒11の上端とを繋ぐ面である。傾斜部13は、回転軸2を中心として上に向けて先細りとなる円錐状のテーパ面である。
【0023】
第1の実施の形態において、ハウジング10は、孔部16を有している。孔部16は、ハウジング10の内側と外側とを繋ぐ。孔部16は、天面12に複数個(例えば6個)形成されている。また、孔部16は、傾斜部13にも複数個(例えば6個)形成されている。天面12及び傾斜部13のそれぞれにおいて、複数の孔部16は、回転軸2周りに略等間隔に配置されている。第1の実施の形態において、各孔部16は、回転軸2を中心とする円弧に沿って湾曲した長丸形状を有している。
【0024】
図3に示されるように、モータ1は、ハウジング10とカバー4とで囲まれた内部空間を有している。内部空間には、種々の部品が収容されている。種々の部品は、ハウジング10の内部空間に収容されている。すなわち、ハウジング10の内側には、ロータ2aと、コイル6と、コイル6が巻き回された絶縁部材(インシュレータ)としての樹脂部材6bと、ステータコア7等とが収容されている。以下、樹脂部材を絶縁部材として呼称する。
【0025】
カバー4の中央部には、軸受9が配置されている。軸受9は、カバー4に保持されている。回転軸2は、軸受9により支持されている。回転軸2は、上側の軸受8と下側の軸受9との2つの軸受によって、ハウジング10に対して、回転可能に支持されている。
【0026】
なお、カバー4の一部には、隙間4aがある。隙間4aがあることで、ハウジング10とカバー4とで囲まれた内部空間と外部との間で通気可能になっている。隙間4aは、例えば、カバー4に形成された、端子が設けられる穴であってもよいし、その他の穴であってもよい。また、隙間4aは、ハウジング10とカバー4との間に存在するものであってもよい。
【0027】
モータ1は、いわゆるインナーロータ型モータである。すなわち、ロータ2aは、コイル6に対して回転軸2側に配置されている。具体的には、コイル6、絶縁部材6b、及びステータコア7は、筒11の内周側面に沿って配置されている。コイル6、絶縁部材6b、及びステータコア7は、回転軸2を囲んでいる。ロータ2aは、コイル6、絶縁部材6b、及びステータコア7よりも内側すなわち回転軸2側に配置されている。換言すると、ロータ2aの外周面(すなわち、磁石3の外周面)は、コイル6、絶縁部材6b、及びステータコア7に囲まれている。
【0028】
ロータ2aは、磁石3と、ヨーク20とを有している。図3に示されるように、ヨーク20は、外周側面21aを有している。外周側面21aは、具体的には、回転軸2を囲むような円筒面(筒21の外周面に相当する)と、円筒面の上端から上に行くにつれて先細となる傾斜面(傾斜部23の外周面に相当する)とを含んでいる。磁石3は、環状である。磁石3は、磁石3の内周面がヨーク20の外周側面21aに面する状態で、磁石3に取り付けられている。
【0029】
ヨーク20は、外周側面21aを有する筒21と、天面(面の一例)22と、外周側面21aを有する傾斜部23とを有している。筒21は、天面22及び傾斜部22を囲んでいる。第1の実施の形態において、天面22及び傾斜部23は、筒21の一端すなわち上端を塞いでいる。すなわち、ヨーク20は、カップ形状すなわち底がある筒形状を有している。ヨーク20の下端は開口部となっている。ヨーク20は、内部空間20aを形成している。内部空間20aは、カバー4とステータコア7との間の空間と繋がっている。すなわち、内部空間20aは、隙間4aを通して、ハウジング10及びカバー4の外部につながっている。ヨーク20は、天面22と筒21とに加えて、傾斜部23を有している。したがって、ヨーク20の剛性を高くすることができる。
【0030】
磁石3の外周面は、ステータコア7の内周面に対向している。磁石3の上下方向の寸法は、ステータコア7の上下方向の寸法と略同じである。筒21の上下方向の寸法は、磁石3の上下方向の寸法と略同じである。傾斜部23及び天面22は、ステータコア7よりも上に位置している。
【0031】
回転軸2は、内部空間20aを通過している。天面22は、回転軸2に対して略垂直である。回転軸2は、天面22を貫通している。回転軸2は、天面22にはめ込まれている。これにより、回転軸2とロータ2aとは互いに固定されている。
【0032】
図4は、モータ1の回転軸2及びロータ2aを示す斜視図である。
【0033】
筒21は、上方から見て円形の、円筒形状を有する。回転軸2は、平面視で(上から見て)、筒21の中央に位置している。天面22は、平面視で筒21の略中央に位置する。天面22は、平坦部である。天面22は、円板状である。傾斜部23は、天面22の外周と、筒21の上端とをつなぐ面である。傾斜部23は、回転軸2を中心として上に向けて先細りとなる円錐状のテーパ面である。
【0034】
第1の実施の形態において、ヨーク20は、孔部26を有している。孔部26は、ヨーク20の内側の内部空間20aと、ヨーク20の外側とをつなぐ。第1の実施の形態において、孔部26は、傾斜部23に複数個(例えば12個)形成されている。一方、孔部26は、天面22には形成されていない。複数の孔部26は、回転軸2周りに略等間隔に配置されている。
【0035】
複数の孔部26は、ステータコア7よりも上方に位置している。すなわち、複数の孔部26は、回転軸方向において、ステータコア7よりも上側の軸受8に近い位置にある。ヨーク20の内側の内部空間20aは、孔部26を通して、ハウジング10の内側であってステータコア7やヨーク20よりも上側の空間につながっている。
【0036】
このように、第1の実施の形態では、ヨーク20に孔部26が形成されており、ハウジング10に孔部16が形成されている。ヨーク20の孔部26とハウジング10の孔部16とは、ハウジング10の外部とヨーク20の内部空間20aとをつないでいる。図3に示されるように、ヨーク20の天面22に対向するハウジング10の天面に、孔部16が形成されている。また、ヨーク20の孔部26に対向するハウジング10の傾斜部13に、孔部16が形成されている。
【0037】
モータ1は、上記のような構成を有することにより、駆動時において以下のような冷却機能を有している。すなわち、ハウジング10に孔部16が設けられており、ヨーク20に孔部26が設けられているので、ヨーク20より下方の空間の空気が、孔部26と孔部16とを通ってモータ1の外部に抜ける。そのため、コイル6で発生した熱を、モータ1の外部に逃がし、コイル6の温度を低減することができる。
【0038】
第1の実施の形態においては、ヨーク20の孔部26は、外周側面21aに形成されている。そのため、ヨーク20が回転すると、孔部26を通過して、内部空間20aからヨーク20の外部へ空気が流れ出る。流れ出た空気は、ハウジング10の孔部16からさらにモータ1の外部へと流れ出る。このような空気の流れが発生するので、したがって、空気が自然対流によってモータ1の外部に流れ出る場合と比較して、より多くの内部空間20aの熱を、モータ1の外に放出することができる。これにより、コイル6の下部から伝わった熱をもつヨーク20の内部空間20aの空気を、モータ1の外に放出することができる。ヨーク20内の温度が下がると、熱の放射源であるコイル6の温度を下げることができる。したがって、コイル6が巻き回された絶縁部材6bの温度上昇を抑止できる。また、銅損を低く抑えることができる。ロータ2aの回転によりハウジング10からの通気が妨げられることもなく、確実にコイル6の温度を低減させることができる。
【0039】
第1の実施の形態において、ヨーク20はカップ形状であるため、内部空間20aにある空気は、ヨーク20の回転により筒21とともに回転して、径方向に遠心力が作用する。この遠心力が作用した空気は逃げ場を求め、ヨーク20の孔部26からヨーク20の外へと逃げる。外に逃げた空気は、ハウジング10の孔部16からさらに外へと逃げる。このような空気の流路が形成されることで、ヨーク20内の熱せられた空気を効率的にモータ1の外に放出することができ、モータ1を効果的に冷却することができる。
【0040】
特に、モータ1を、回転軸2がハウジング10から突出する側が上側になる姿勢で駆動させる場合に、効果的にモータ1を冷却させることができる。しかしながら、これ以外の姿勢でモータ1を駆動させる場合であっても、上記のようにロータ2aの回転に伴って内部空間20aからモータ1の外部へと流れ出る気流が発生するので、モータ1を冷却することができる。
【0041】
[第2の実施の形態]
【0042】
第2の実施の形態におけるモータの基本的な構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰り返さない。第2の実施の形態においては、ハウジングの孔部の位置と、ヨークの形状及びヨークの孔部の位置とが第1の実施の形態と異なる。
【0043】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るモータ101を示す斜視図である。図6は、モータ101の平面図である。図7は、図6のA-A線断面図である。図8は、モータ101の回転軸2及びロータ102aを示す斜視図である。
【0044】
図5に示されるように、モータ101は、ハウジング110と、回転軸2と、カバー4とを有している。ハウジング110の大まかな形状は、第1の実施の形態のハウジング10と同様である。すなわち、ハウジング110は、筒11、天面12、及び傾斜部13を有するカップ形状を有している。
【0045】
第2の実施の形態において、ハウジング110は、複数(例えば6つ)の孔部116を有している。複数の孔部116は、傾斜部13に形成されている。天面12には、孔部は形成されていない。孔部116は、ハウジング110の内側と外側とをつなぐ。図6に示されるように、複数の孔部116は、回転軸2周りに略等間隔に配置されている。第2の実施の形態において、各孔部116は、角部分が丸みを帯びた矩形形状を有している。
【0046】
図7に示されるように、ロータ102aは、磁石3と、ヨーク120とを有している。ヨーク120は、外周側面121aを有している。図8に示されるように、磁石3は、磁石3の内周面がヨーク120の外周側面121aに面する状態で、磁石3に取り付けられている。
【0047】
ヨーク120は、外周側面121aを有する筒121と、天面(面の一例)122とを有している。筒121は、天面122を囲んでいる。第2の実施の形態において、天面122は、筒121の一端すなわち上端をふさいでいる。すなわち、ヨーク120は、カップ形状すなわち底がある筒形状を有している。ヨーク120の下端は、開口部となっている。ヨーク120は、内部空間20aを形成している。
【0048】
天面122は、回転軸2に対して略垂直である。回転軸2は、天面122を貫通している。回転軸2は、天面122にはめ込まれている。これにより、回転軸2とロータ102aとは互いに固定されている。
【0049】
図8に示されるように、筒121は、上方から見て円形の、円筒形状を有する。天面122は、平坦部である。天面122は、円板状である。天面122の外周と筒121の上端とがつながっている。
【0050】
第2の実施の形態において、ヨーク120は、孔部126を有している。孔部126は、ヨーク120の内側の内部空間20aと、ヨーク120の外側とを繋ぐ。第2の実施の形態において、孔部126は、筒121の上部に複数個(例えば13個)形成されている。換言すると、孔部126は、筒121の、天面122に近い位置に形成されている。一方、孔部126は、天面122には形成されていない。複数の孔部126は、回転軸2周りに略等間隔に配置されている。
【0051】
第2の実施の形態においても、複数の孔部126は、ステータコア7よりも上方に位置している。すなわち、複数の孔部126は、回転軸方向において、ステータコア7よりも上側の軸受8に近い位置にある。ヨーク120の内側の内部空間20aは、孔部126を通して、ハウジング110の内側であってステータコア7やヨーク120よりも上側の空間につながっている。
【0052】
図7に示されるように、第2の実施の形態では、複数の孔部126は、外周側面121aを有する筒121の上方に位置している。すなわち、内部空間20aから孔部126を通ってハウジング110の内側につながる経路は、回転軸方向に略垂直な方向に延びている。複数の孔部126は、コイル6の内側の面に対向する位置に形成されている。すなわち、ヨーク120の孔部126は、コイル6に向けて開口している。内部空間20aから孔部126を通ってハウジング110の内側につながる経路は、内部空間20aからコイル6の内側の面に向かって延びている。
【0053】
このように、第2の実施の形態では、ヨーク120に孔部126が形成されており、ハウジング110に孔部116が形成されている。ヨーク120の孔部126とハウジング110の孔部116とは、ハウジング110の外部とヨーク120の内部空間20aとをつないでいる。図7に示されるように、ヨーク120の孔部126は、コイル6に向けて開口している。
【0054】
モータ101は、上記のような構成を有することにより、第1の実施の形態のモータ1と同様に、冷却機能を有している。モータ101は、ヨーク120の孔部126がコイル6に向けて開口していることにより、第1の実施の形態のモータ1のような冷却機能に加えて、以下のような冷却機能を有している。すなわち、コイル6に対向するヨーク120の外周側面121aに孔部126が設けられているので、孔部126からコイル6に向けて気流が流れ出る。そのため、コイル6の周囲の気流の流速を大きくしてコイル6を冷却することができる。したがって、コイル6が巻き回された絶縁部材6bの温度上昇をより確実に抑止でき、絶縁部材6bを形成する樹脂部材の耐熱温度の範囲内で、モータ101を駆動させ続けることができる。
【0055】
[第3の実施の形態]
【0056】
第3の実施の形態におけるモータの基本的な構成は、第2の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰り返さない。第3の実施の形態においては、ヨークの形状とヨークの孔部の位置とが第2の実施の形態と異なる。
【0057】
図9は、本発明の第3の実施の形態に係るモータ301の側断面図である。図10は、モータ301の回転軸2及びロータ302aを示す斜視図である。
【0058】
図9において示されている断面は、上述の図7と同様の位置におけるものである。図9に示されるように、モータ301は、第2の実施の形態と同様に、ハウジング110と、回転軸2と、カバー4とを有している。ハウジング110とカバー4とで囲まれるモータ301の内部に収容されたロータ302aは、磁石3と、ヨーク320とを有している。ヨーク320は、外周側面321aを有している。図10に示されるように、磁石3は、磁石3の内周面がヨーク320の外周側面321aに面する状態で、磁石3に取り付けられている。
【0059】
ヨーク320は、外周側面321aを有する筒321と、天面(面の一例)322とを有している。筒321は、天面322を囲んでいる。第3の実施の形態において、天面322は、筒321の一端すなわち上端を塞いでいる。すなわち、ヨーク320は、カップ形状すなわち底がある筒形状を有している。ヨーク320の下端は、開口部となっている。ヨーク320は、内部空間20aを形成している。
【0060】
天面322は、回転軸2に対して略垂直である。回転軸2は、天面322を貫通している。回転軸2は、天面322にはめ込まれている。これにより、回転軸2とロータ102aとは互いに固定されている。
【0061】
図10に示されるように、筒321は、上方から見て円形の、円筒形状を有する。天面322は、平坦部である。天面322は、円板状である。天面322の外周と筒321の上端とが繋がっている。
【0062】
第3の実施の形態において、ヨーク320は、孔部326を有している。孔部326は、ヨーク320の内側の内部空間20aと、ヨーク320の外側とを繋ぐ。第3の実施の形態において、孔部326は、天面322に複数個(例えば7個)形成されている。各孔部326は、円形である。複数の孔部326は、回転軸2周りに略等間隔に配置されている。ヨーク320の内側の内部空間20aは、孔部326を通して、ハウジング110の内側であってステータコア7やヨーク320よりも上側の空間につながっている。
【0063】
このように、第3の実施の形態では、ヨーク320に孔部326が形成されており、ハウジング110に孔部116が形成されている。ヨーク320の孔部326とハウジング110の孔部116とは、ハウジング110の外部とヨーク320の内部空間20aとをつないでいる。図9に示されるように、ヨーク320の孔部326は、天面322に設けられており、ハウジング110の孔部116は、ヨーク320の孔部326に対向するハウジング110の天面122に設けられているといえる。換言すると、ハウジング110の孔部116は、ヨーク320の天面322に対向するハウジング110の面に形成されている。
【0064】
モータ301は、上記のような構成を有することにより、駆動時において以下のような冷却機能を有している。すなわち、ハウジング110に孔部116が設けられており、ヨーク320に孔部326が設けられているので、ヨーク320よりも下方の空間の空気が、孔部326と孔部116とを通ってモータ301の外部に抜ける。そのため、コイル6で発生した熱をモータ301の外部に逃がし、コイル6の温度を低減することができる。
【0065】
[冷却機能に関するシミュレーション結果の説明]
【0066】
上述の第1の実施の形態に係るモータ1、第2の実施の形態に係るモータ101、及び第3の実施の形態に係るモータ301のそれぞれの駆動時の状態の熱流体シミュレーションを行った。
【0067】
図11は、第1の実施の形態に係るモータ1の温度についての熱流体シミュレーションの結果を示す図である。図12は、第2の実施の形態に係るモータ101の温度についての熱流体シミュレーションの結果を示す図である。図13は、第3の実施の形態に係るモータ301の温度についての熱流体シミュレーションの結果を示す図である。
【0068】
図11から図13において、モータ1,101,301は、上下方向が図の上下方向と一致する姿勢で表れている。図11から図13に示されるように、モータ1及びモータ101については、ハウジング10,110の孔部16,116付近から温度が比較的高い気流が流れ出ていることがわかる。このようないわば強制対流が生じることにより、モータ1及びモータ101は、モータ301と比較して、全体として温度が低くなっている。
【0069】
各モータ1,101,301の各部の温度は、例えば次のようになった。コイル6の温度は、モータ301に対して、モータ1,101では、温度上昇が45%程度低減できることがわかった。
【0070】
第1の実施の形態に係るモータ1において、コイル6の温度は摂氏29.5度、絶縁部材6bの温度は摂氏22.5度、ハウジング10の温度は摂氏20.1度であった。
【0071】
第2の実施の形態に係るモータ101において、コイル6の温度が摂氏29.2度、絶縁部材6bの温度が摂氏22.5度、ハウジング110の温度は摂氏20.2度であった。
【0072】
第3の実施の形態に係るモータ301において、コイル6の温度が摂氏53.0度、絶縁部材6bの温度が摂氏44.5度、ハウジング110の温度は摂氏41.3度であった。
【0073】
図14は、第2の実施の形態に係るモータ101における流速分布についての熱流体シミュレーションの結果を示す図である。図15は、図14の部分拡大図である。
【0074】
図13,14においては、色が薄い部分において流速が高いことが示されている。上述のように、モータ101では、孔部126が筒121に設置されていることにより、遠心力によって内部空間20aから通気が促進される。そして、孔部126がコイル6に向けて開口しているので、コイル6の上部に気流が向かうことにより、コイルを確実に冷却することができ、コイル6の温度の低減を促すことができる。
【0075】
図16は、自然対流による流速分布の熱流体シミュレーションの結果を示す図である。
【0076】
図16においては、上述の第1の実施の形態に係るモータ1のハウジング10と、第3の実施の形態に係るモータ301のロータ302aとを組み合わせたモータについての流速分布の一例が示されている。図15において、色が薄い部分において流速が高いことが示されている。ロータ302aのように天面322に孔部126が設けられているような場合であっても、熱い空気が自然対流により上昇し、内部空間20aから孔部126,16を通過してモータの外部に流出することがわかる。したがって、モータが冷却される。
【0077】
[その他]
【0078】
モータの種類は限られない。例えばブラシレスモータであったり、その他のモータであったりしてもよい。
【0079】
ハウジングの形状や、孔部の場所は、上述の実施の形態のものに限られない。いずれの場所であっても、孔部を設けることで、内部空間から流出する空気をハウジングの外部に流出させることができる。
【0080】
モータは、カバーを有しなくてもよい。また、カバーに替えて、又はカバーに加えて、モータの駆動に用いられる回路部品等が登載された回路基板が設けられていてもよい。いずれにしても、ハウジングの内部から孔部を通して空気が流出するのに伴い、ハウジングの内部に流入する空気が通る通気口や隙間等が存在すればよい。
【0081】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1,101,301 モータ
2 回転軸
2a,102a,302a ロータ
3 磁石
4 カバー
4a 隙間
6 コイル
6b 絶縁部材
7 ステータコア
8,9 軸受
10,110 ハウジング
11 筒
12 天面
13 傾斜部
16,116 孔部
20,120,320 ヨーク
20a 内部空間
21,121,321 筒
21a,121a,321a 外周側面
22,122,322 天面(面の一例)
23 傾斜部
26,126,326 孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16