(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】モータの結線ミス検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/55 20200101AFI20240925BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G01R31/55
G05B19/18 X
(21)【出願番号】P 2023512588
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2021014818
(87)【国際公開番号】W WO2022215210
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】長田 玲於
(72)【発明者】
【氏名】辻川 敬介
(72)【発明者】
【氏名】篠田 翔吾
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-154772(JP,A)
【文献】特開2016-18445(JP,A)
【文献】特開2020-195198(JP,A)
【文献】特開2021-19477(JP,A)
【文献】特開2019-57963(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3076540(EP,A2)
【文献】中国特許出願公開第111722585(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/55
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンプによって制御されるモータの結線ミスを検出する結線ミス検出装置であって、
複数の前記アンプの一部によって前記モータを制御するために、制御に用いる前記アンプを選択し組み合わせて2以上の選択パターンを決定する制御アンプ選択部と、
前記制御アンプ選択部によって決定された選択パターン毎に、前記モータに予め定められた動作をさせるための指令を生成する指令生成部と、
前記選択パターン及び前記指令生成部からの前記指令に基づいて、前記モータを制御するトルク指令値を算出するサーボ制御部と、
2以上の前記選択パターンの間で、各前記選択パターンに対応する前記トルク指令値又は前記モータの電流フィードバック値を、互いに比較することによって、前記アンプと前記モータの系内の結線ミスの有無を判定する結線チェック確認部と、
を備える結線ミス検出装置。
【請求項2】
前記指令生成部は、全ての前記選択パターンにおいて、前記モータに同じ動作をさせるために、前記指令として同じ位置指令または速度指令、トルク指令を生成する、
請求項1に記載の結線ミス検出装置。
【請求項3】
前記制御アンプ選択部は、前記モータに接続されている前記アンプの数に基づいて、前記選択パターンを決定する、
請求項1又は2に記載の結線ミス検出装置。
【請求項4】
通常運転モードであるか、若しくは立ち上げモードであるかを確認する立ち上げモード確認部を備え、
立ち上げモードである場合に、結線ミスの検出を行う、
請求項1から3の何れか1項に記載の結線ミス検出装置。
【請求項5】
1つの制御対象の同一運動を複数のモータによって制御する機械制御システムにおける前記モータの結線ミスを検出する結線ミス検出装置であって、
前記複数のモータを駆動する複数のアンプの一部によって前記複数のモータの全部又は一部を制御するために、制御に用いる前記アンプを選択し組み合わせて2以上の選択パターンを決定する制御アンプ選択部と、
前記制御アンプ選択部によって決定された選択パターン毎に、前記制御対象に予め定められた動作をさせるための指令を生成する指令生成部と、
前記選択パターン及び前記指令生成部からの前記指令に基づいて、前記モータを制御するトルク指令値を算出するサーボ制御部と、
2以上の前記選択パターンの間で、各前記選択パターンに対応する前記トルク指令値又は前記モータの電流フィードバック値を、互いに比較することによって、前記アンプと前記モータの系内の結線ミスの有無を判定する結線チェック確認部と、
を備える結線ミス検出装置。
【請求項6】
前記指令生成部は、全ての前記選択パターンにおいて、前記制御対象に同じ動作をさせるために、前記指令として同じ位置指令または速度指令、トルク指令を生成する、
請求項5に記載の結線ミス検出装置。
【請求項7】
前記制御アンプ選択部は、前記アンプまたは前記モータの数に基づいて、前記選択パターンを決定する、
請求項5又は6に記載の結線ミス検出装置。
【請求項8】
通常運転モードであるか、若しくは立ち上げモードであるかを確認する立ち上げモード確認部を備え、
立ち上げモードである場合に、結線ミスの検出を行う、
請求項5から7の何れか1項に記載の結線ミス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの結線ミスを検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械工作の分野では、CNC(コンピュータ数値制御:Computerized Numerical Control)技術を適用し、工具の移動量や移動速度などをコンピュータで数値制御することにより、同一加工手順の繰り返し、複雑な形状の加工などを高度に自動化している。
【0003】
また、工作機械やロボットなどの産業用機械の制御システムには、CNC装置と機械のサーボモータとの間にサーボアンプを設け、CNC装置からの動作指令を受けたサーボアンプでサーボモータを駆動し、フィードバック制御するものが知られている。
【0004】
一方、CNC装置、サーボアンプ、サーボモータの間で結線ミスがあると、機械の立ち上げ時に予期せぬ動作が発生し、事故をもたらすおそれがある。そのような事態を防ぐ技術として、特許文献1は、複数のサーボモータと複数のサーボアンプを備える制御システムにおいて、サーボモータとサーボアンプとの間に結線ミスが生じた場合、その結線ミスを自動的に検出できる結線ミス検出装置を開示している。当該結線ミス検出装置は、サーボモータの現在位置のフィードバック値と位置指令値を比較して、結線ミスを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大きなトルクを必要とするサーボモータには、複数の独立した巻線を備え、それぞれの巻線に接続された複数のサーボアンプによって駆動及び制御が行われるサーボモータが存在する。このようなサーボモータについて、特許文献1に開示された技術によっては結線ミスが検出できない問題がある。
【0007】
例えば、独立した4つの巻線を備えたサーボモータに対して、4つのサーボアンプが、それぞれ各巻線に接続され、CNC装置からの位置指令に基づいて共同で当該サーボモータを制御するシステムを考える。この場合、4つの巻線のうち、たとえ巻線4と動力線の接続に結線ミスがあったとしても、正常の3つのアンプによってモータを動かすことができ、位置指令と位置のフィードバック値が一致するので、特許文献1に開示された技術によっては結線ミスが検出できない。
【0008】
本発明は、複数のアンプによって制御されるモータの結線ミスを検出できる結線ミス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る結線ミス検出装置は、複数のアンプによって制御されるモータの結線ミスを検出する結線ミス検出装置であって、複数の前記アンプの一部によって前記モータを制御するために、制御に用いる前記アンプを選択し組み合わせて2以上の選択パターンを決定する制御アンプ選択部と、前記制御アンプ選択部によって決定された選択パターン毎に、前記モータに予め定められた動作をさせるための指令を生成する指令生成部と、前記選択パターン及び前記指令生成部からの前記指令に基づいて、前記モータを制御するトルク指令値を算出するサーボ制御部と、2以上の前記選択パターンの間で、各前記選択パターンに対応する前記トルク指令値又は前記モータの電流フィードバック値を、互いに比較することによって、前記アンプと前記モータの系内の結線ミスの有無を判定する結線チェック確認部と、を備える。
本明細書でいう「アンプとモータの系内の結線」は、動力線、フィードバックケーブル、アンプの電源ケーブルなどを含む。
【0010】
本発明の他の実施形態に係る結線ミス検出装置は、1つの制御対象の同一運動を複数のモータによって制御する機械制御システムにおける前記モータの結線ミスを検出する結線ミス検出装置であって、前記複数のモータを駆動する複数のアンプの一部によって前記複数のモータの全部又は一部を制御するために、制御に用いる前記アンプを選択し組み合わせて2以上の選択パターンを決定する制御アンプ選択部と、前記制御アンプ選択部によって決定された選択パターン毎に、前記制御対象に予め定められた動作をさせるための指令を生成する指令生成部と、前記選択パターン及び前記指令生成部からの前記指令に基づいて、前記モータを制御するトルク指令値を算出するサーボ制御部と、2以上の前記選択パターンの間で、各前記選択パターンに対応する前記トルク指令値又は前記モータの電流フィードバック値を、互いに比較することによって、前記アンプと前記モータの系内の結線ミスの有無を判定する結線チェック確認部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
上記の実施形態によれば、工作機械やロボットなどの産業用機械のモータとそれを制御するアンプの系内の結線ミスを検出することができ、結線ミスに伴って機械側に予期せぬ動作が発生することを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の結線ミス検出装置を備える産業用機械の機械制御システムを示す模式図である。
【
図2】
図1の機械制御システムにおける結線ミス検出装置の構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態の結線ミス検出装置を備える他の機械制御システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態の結線ミス検出装置を備える産業用機械の機械制御システム100を示す模式図である。本実施形態では、産業用機械が工作機械であるものとして説明を行うが、本発明は、産業用ロボットなど、アンプによってその駆動が自動制御されるモータを有するあらゆる機械に適用可能である。
【0015】
図1に示すように、機械制御システム100は、NC旋盤やマシニングセンタなどの工作機械のサーボモータ103と、サーボモータ103の駆動及び制御を行うサーボアンプ102(102a、102b、102c及び102d)と、サーボアンプ102の上位で機械制御システム100全体を制御するCNC装置(コンピュータ数値制御装置)101とを備えている。CNC装置101は、結線ミス検出装置110を備える。本実施形態において、結線ミス検出装置110は、CNC装置101に組み込まれているが、別途設けられてもよい。
【0016】
機械制御システム100において、サーボモータ103は、独立した4つの巻線を備える。機械制御システム100は、4つのサーボアンプ102を有し、それぞれ「第1サーボアンプ102a」、「第2サーボアンプ102b」、「第3サーボアンプ102c」、「第4サーボアンプ102d」と称する。但し、何れのサーボアンプであるかを区別する必要がない場合、又は全ての4つのサーボアンプを指す場合には、「サーボアンプ102」と称することもある。
【0017】
4つのサーボアンプ102は、動力線104によってそれぞれサーボモータ103の各巻線に接続されている。4つのサーボアンプ102は、信号線105を通じてCNC装置101の結線ミス検出装置110から指令を受け取り、その指令に基づいて共同でサーボモータ103を制御する。本実施形態では、具体的に、
図1に示したように、結線ミス検出装置110からの指令は、まず信号線105を通じて第1サーボアンプ102aに伝達され、次にサーボアンプの間の信号線105を通じて順次第2サーボアンプ102b、第3サーボアンプ102c及び第4サーボアンプ102dに伝達される。なお、4つのサーボアンプ102は、信号線105を通じてサーボモータ103の各動力線104における電流値を結線ミス検出装置110にフィードバックする。4つのサーボアンプ102は、別途設けられたフィードバック線によって電流フィードバック値をフィードバックしてもよい。また、サーボモータ103は、フィードバック線108を通じて、サーボモータ103の現在位置を結線ミス検出装置110にフィードバックする。
【0018】
以下、本実施形態の結線ミス検出装置110がどのように結線ミスを検出するかについて、サーボモータ103の4つの巻線にうち、巻線4と第4サーボアンプ102dの間の接続に結線ミスがあることを例として説明する。
【0019】
図2は、
図1の機械制御システム100における結線ミス検出装置110の構成を示す模式図である。結線ミス検出装置110は、サーボアンプ102とサーボモータ103の系内の結線ミスを検出する装置である。結線ミス検出装置110は、立ち上げモード確認部111と、運転指令部112と、結線チェック指令部113と、第1記憶部114と、第2記憶部115と、異常検出部116と、サーボ制御部117と、表示部118と、警報部119と、結線チェック操作部120とを備える。
【0020】
立ち上げモード確認部111は、機械の立ち上げ操作を検知するとともに、通常運転モードであるか立ち上げモードであるかを確認し、特定する。例えば、立ち上げモード確認部111は、オペレーターなどの入力内容によって、通常運転モードであるか立ち上げモードであるかを特定する。なお、機械制御システム100の組み立てが完了し、必要な配線の接続が終了した場合、立ち上げモード確認部111は、機械制御システム100に最初に駆動電源を投入した信号をもって、立ち上げモードであると特定してもよい。
【0021】
立ち上げモード確認部111によって立ち上げモードであると確認された場合、スイッチS1とS2が自動的にa接点に接続されるので、結線ミス検出装置110は結線ミス検出を行うことができる状態になる。立ち上げモード確認部111によって通常運転モードであると確認された場合、スイッチS1とS2が自動的にb接点に切り替えられるので、機械制御システム100は、通常の運転を行うことができる。
【0022】
運転指令部112は、立ち上げモード確認部111で通常運転モードであることが確認された場合に、サーボ制御部117及びサーボアンプ102を介してサーボモータ103に運転指令を出力する。運転指令部112は、詳細を後述する異常検出部116で結線ミスが検出されなかった場合に、異常検出部116からこの検出結果を受け、CNC装置101からの指令値に従って、サーボモータ103に運転指令を出力する。
【0023】
結線チェック指令部113は、制御アンプ選択部131と、指令生成部132を含む。結線チェック指令部113が、立ち上げモード確認部111から機械の立ち上げモードである確認信号を受けると、制御アンプ選択部131は、複数のサーボアンプ102の一部によってサーボモータ103を制御して結線ミスの検出を行うために、制御に用いるサーボアンプ102を選択し組み合わせて2以上の選択パターンを決定する。制御アンプ選択部131は、サーボモータ103に接続されているサーボアンプ102の数に基づいて、選択パターンを決定する。
【0024】
例えば、表1のように、制御アンプ選択部131は4つの選択パターンを決定する。4つの選択パターンのうち、選択パターン1は、第1サーボアンプ102aを使用しないで、他の3つのサーボアンプを使用してサーボモータ103の制御及び駆動を行うパターンである。選択パターン2は、第2サーボアンプ102bを使用しないで、他の3つのサーボアンプを使用してサーボモータ103の制御及び駆動を行うパターンである。選択パターン3は、第3サーボアンプ102cを使用しないで、他の3つのサーボアンプを使用してサーボモータ103の制御及び駆動を行うパターンである。選択パターン4は、第4サーボアンプ102dを使用しないで、他の3つのサーボアンプを使用してサーボモータ103の制御及び駆動を行うパターンである。
【0025】
【0026】
指令生成部132は、制御アンプ選択部131によって決定された選択パターン毎に、サーボモータ103に予め定められた動作をさせるための指令を生成し、それを結線チェックを行う指令として、サーボ制御部117と異常検出部116に出力する。指令生成部132が生成する指令は、位置指令、速度指令又はトルク指令であってよい。本実施形態は、位置指令の例をもって説明する。例えば、指令生成部132は、全ての選択パターンにおいて、サーボモータ103に同じ動作をさせるための指令として、同じ位置指令を生成してよい。
【0027】
サーボ制御部117は、選択パターン、指令生成部132からの位置指令及びサーボモータ103の現在位置のフィードバック値に基づいて、サーボモータ103を制御するトルク指令値を算出して、信号線105を通じて各サーボアンプ102に出力すると共に、異常検出部116にフィードバックする。サーボアンプ102は、サーボ制御部117の指令に基づいて、動力線104を通じてサーボモータ103の駆動及び制御を行う。
【0028】
サーボ制御部117は、信号線105を通じて、サーボアンプ102からサーボモータ103の動力線104の電流値を取得して、電流フィードバック値とすることもできる。この場合、サーボ制御部117は、取得した電流フィードバック値を異常検出部116にフィードバックする。
【0029】
異常検出部116は、サーボアンプ102とサーボモータ103の系内の結線ミスの有無を確認し、特定するためのものである。異常検出部116は、指令値取得部121と、フィードバック値取得部122と、選択部123と、結線チェック確認部124とを備えている。
【0030】
指令値取得部121は、結線チェック指令部113から結線チェックの指令を受けるとともに、選択パターンの情報を取得する。指令値取得部121は、更にCNC装置101からの各種指令値(例えば、サーボモータ103の回転速度指令値など)を取得してもよい。
【0031】
フィードバック値取得部122は、サーボ制御部117からサーボモータ103を制御するトルク指令値を取得する。フィードバック値取得部122は、サーボ制御部117から電流フィードバック値を取得することもできる。
【0032】
このとき、フィードバック値取得部122は、例えば、タイマーを備え、サーボモータ103の駆動が開始されてから予め設定した一定の不感時間が経過した後の時刻(一定時間経過後の時刻)で、運転が安定した一定の時間のフィードバック値を取得するように構成されている。
なお、フィードバック値取得部122は、サーボモータ103の駆動が開始されてから予め設定した一定の不感時間が経過した後の任意の時間帯の複数の時刻(一定時間経過後の任意の時間帯の複数の時刻)でそれぞれフィードバック値を取得するように構成されてもよい。
【0033】
結線チェック確認部124は、フィードバック値取得部122が取得した各選択パターンに対応するトルク指令値又は電流フィードバック値を、4つの選択パターンの間で互いに比較することによって、サーボアンプ102とサーボモータ103の系内の結線ミスの有無を判定する。
【0034】
例えば、表1に示した4つの選択パターンにおいて、サーボモータ103に同じ動作をさせるために、指令生成部132は、同じ位置指令を生成してサーボ制御部117に出力したとする。選択パターン1から3は、サーボモータ103を駆動するために使用する3つのサーボアンプに、結線ミスのある第4サーボアンプ102dを含む。結線ミスのある第4サーボアンプ102dは、指令生成部132の指令が求めているサーボモータ103の動作に寄与しないので、指令生成部132の指令が求めているサーボモータ103の動作に寄与するのは、残りの2つのサーボアンプだけである。
その結果、残りの2つのサーボアンプでサーボモータ103を駆動するために、サーボ制御部117が算出するトルク指令値は、3つのサーボアンプで駆動する場合に比べて大きくなる。選択パターン1から3は、状況がほぼ同じなので、各選択パターンに対応するトルク指令値が同じか近い値になる。
【0035】
一方、選択パターン4は、サーボモータ103を駆動するために使用する3つのサーボアンプに、結線ミスのある第4サーボアンプ102dを含まない。したがって、3つのサーボアンプとも指令生成部132の指令が求めているサーボモータ103の動作に寄与できる。その結果、サーボモータ103を駆動するために、サーボ制御部117が算出するトルク指令値は、2つのサーボアンプで駆動する場合に比べて小さくなる。
【0036】
結線チェック確認部124は、4つの選択パターンに対応するトルク指令値を比較する。選択パターン1から3は、同じ若しくは近いトルク指令値を示すのに対して、選択パターン4は、選択パターン1から3と大きく異なる小さいトルク指令値を示すことになる。トルク指令値の差に異常があれば、結線チェック確認部124は、第4サーボアンプ102dとサーボモータ103の系内に結線ミスが生じていると判定する。
【0037】
結線ミスがない場合には、4つの選択パターンに対応するトルク指令値は、全て同じ若しくは近いトルク指令値を示すので、互いのトルク指令値の差はほとんど生じない。
【0038】
異常検出部116によって結線ミスが生じていると判定された場合、警報部119はその結果に基づいて警報を出し、表示部118は結線ミスが生じていることを表示して、オペレーター等に報知する。警報として、警告音を発してもよく、警告灯を点灯させてもよい。なお、結線ミスによってサーボモータ103に予期せぬ危険な動作/異常な動作が生じないように制御が行われる。例えば、通常運転モードに移行させない制御が行われる。
【0039】
異常検出部116によって結線ミスが生じていないと判定された場合には、正常な状態であることを表示部118で表示し、これをオペレーター等に報知する。
【0040】
異常検出部116によって結線ミスが生じていないと判定された場合には、スイッチS1とS2が、自動的にb接点に切り替えて、立ち上げモードを終了させる。その場合、運転指令部112は、CNC装置101の指令値に従った通常の運転を行うようにサーボ制御部117に指令を出す。
【0041】
異常検出部116は、上述したように結線ミスを判定するだけでなく、サーボモータ103の位置偏差をアラーム検出閾値と対比して、そのモータの異常を検出することもできる。ここでいう「位置偏差」とは、位置指令値とサーボモータ103の現在位置のフィードバック値との差分をいう。
【0042】
第1記憶部114及び第2記憶部115は、サーボモータ103が予期せぬ危険な動作をすることを防止するためのアラーム検出閾値を記憶している。第1記憶部114は、立ち上げモード用のアラーム検出閾値を記憶しており、第2記憶部115は、通常運転モード用のアラーム検出閾値を記憶している。例えば、立ち上げモード用のアラーム検出閾値として、駆動時の位置偏差限界値を10と設定してよく、通常運転モード用のアラーム検出閾値として、駆動時の位置偏差限界値を160000と設定してよい。
【0043】
異常検出部116の選択部123は、立ち上げモード用のアラーム検出閾値と通常運転用のアラーム検出閾値を選択的に第1記憶部114と第2記憶部115から取得する。例えば、立ち上げモード確認部111によって立ち上げモードであると確認された場合、スイッチS2が自動的にa接点に接続されるので、選択部123は、第1記憶部114から立ち上げモード用のアラーム検出閾値を取得する。なお、立ち上げモード確認部111によって通常運転モードであると確認された場合、スイッチS2が自動的にb接点に切り替えられるので、選択部123は、第2記憶部115から通常運転用のアラーム検出閾値を取得する。これにより、立ち上げモードの際には、機械のユーザ側(オペレーター側)が設定を変更しなくても、自動的に立ち上げモード用のアラーム検出閾値になる。また、通常運転時には、やはり、自動的にアラームの閾値が通常運転用のアラーム検出閾値になる。
【0044】
異常検出部116は、位置偏差がアラーム検出閾値を超えたことを検出すると、警報部119はその結果に基づいて警報を出し、表示部118は警報の内容を表示して、オペレーター等に報知する。これによって、サーボモータ103が予期せぬ危険な動作をすることを防止できる。
【0045】
なお、立ち上げモードで異常検出部116によって結線ミスが生じていないと判定された場合、スイッチS2が自動的にb接点に切り替えるので、選択部123は通常運転用アラーム検出閾値を第2記憶部115から取得して、立ち上げ用アラーム検出閾値を通常運転用アラーム検出閾値に替える。
【0046】
更に、
図2に示すように、結線ミス検出装置110に、結線チェック操作部120が設けられている。機械が立ち上げモードか通常運転モードかに関わらず、結線チェック操作部120を操作することで、結線チェック指令部113が指令を出し、上述したことと同様の結線チェックが行えるようになっている。
【0047】
これにより、例えば、システムの一部の結線作業のみが完了しているときや、保守部品の交換作業を行ったときなどの結線チェックを行いたい任意のタイミングで、結線チェック操作部120を操作して結線チェックが行える。
【0048】
上述したように、本実施形態の結線ミス検出装置は、複数のサーボアップによって制御されるサーボモータを含む機械制御システムにおけるサーボアップとサーボモータの系内の結線ミスを検出することができ、結線ミスに関連するサーボアンプを特定することができる。
【0049】
<第2実施形態>
図3は、本発明の一実施形態の結線ミス検出装置を備える他の機械制御システム200を示す模式図である。本実施形態の機械制御システム200は、第1実施形態の機械制御システム100の変形である。本実施形態において、第1実施形態と同じ又は類似の機能を有する部品、部材、部分、素子、要素については、第1の実施形態と同じ符号を付しており、且つその説明を省略することがある。
【0050】
機械制御システム200が第1実施形態の機械制御システム100との最大の違いは、1つの制御対象の同一運動を複数のモータによって制御することである。具体的に言うと、4つのサーボアンプによってそれぞれ4つのサーボモータの駆動及び制御を行い、その4つのサーボモータによって1つのテーブル202を共同で駆動して、
図3における左方向又は右方向に移動させる。4つのサーボモータの駆動によって、大きなトルクを得ることができる。
【0051】
4つのサーボモータは、それぞれ「第1サーボモータ103a」、「第2サーボモータ103b」、「第3サーボモータ103c」、「第4サーボモータ103d」と称する。但し、何れのサーボモータであるかを区別する必要がない場合、又は全ての4つのサーボアンプを指す場合には、「サーボモータ103」と称することもある。
図3に示した例では、4つのサーボモータの全ては、1つのサーボアンプによって駆動されるサーボモータであるが、4つのサーボモータの全て又は一部が、複数サーボアンプによって駆動されるサーボモータであってもよい。例えば、第1サーボモータ103aと第4サーボモータ103dが複数サーボアンプによって駆動されるサーボモータであって、第2サーボモータ103bと第3サーボモータ103cが1つのサーボアンプによって駆動されるサーボモータであってもよい。
【0052】
機械制御システム200が備える結線ミス検出装置110は、機械制御システム100の結線ミス検出装置と同じ構成を有する。しかし、各部分の機能及び扱う信号などにおいて少し異なる点があるので、以下それを説明する。
【0053】
制御アンプ選択部131は、4つのサーボモータ103を駆動する複数のサーボアンプの一部によって4つのサーボモータの全部(4つのサーボモータに複数サーボアンプによって駆動されるサーボモータが含まれる場合)又は一部を制御し、テーブル202を駆動して結線ミスの検出を行うために、サーボモータ103の制御に用いるサーボアンプ102を選択し組み合わせて2以上の選択パターンを決定する。例えば、本実施形態においても、表1のように、4つの選択パターンを決定することができる。制御アンプ選択部131は、サーボアンプ102又はサーボモータ103数に基づいて、選択パターンを決定する。
【0054】
指令生成部132は、制御アンプ選択部131によって決定された選択パターン毎に、テーブル202に予め定められた動作をさせるための指令を生成し、それを結線チェックを行う指令として、サーボ制御部117と異常検出部116に出力する。指令生成部132が生成する指令は、位置指令、速度指令又はトルク指令であってよい。本実施形態は、テーブル202の位置指令の例をもって説明する。例えば、指令生成部132は、全ての選択パターンにおいて、テーブル202に同じ動作をさせるための指令として、同じ位置指令を生成してよい。
【0055】
一方、テーブル202は、フィードバック線108を通じて、サーボ制御部117にテーブル202の現在位置をフィードバックする。
【0056】
サーボ制御部117は、選択パターン、指令生成部132からの位置指令及びテーブル202の現在位置のフィードバック値に基づいて、サーボモータ103を制御するトルク指令値を算出して、信号線105を通じて各サーボアンプ102に出力すると共に、異常検出部116にフィードバックする。サーボアンプ102は、サーボ制御部117の指令に基づいて、動力線104を通じてサーボモータ103の駆動及び制御を行う。
【0057】
サーボ制御部117は、信号線105を通じて、サーボアンプ102からサーボモータ103の動力線104の電流値を取得して、電流フィードバック値とすることもできる。この場合、サーボ制御部117は、取得した電流フィードバック値を異常検出部116にフィードバックする。
【0058】
結線チェック確認部124は、フィードバック値取得部122が取得した各選択パターンに対応するトルク指令値又は電流フィードバック値を、4つの選択パターンの間で互いに比較することによって、サーボアンプ102とサーボモータ103の系内の結線ミスの有無を判定する。
【0059】
例えば、第4サーボアンプ102dと第4サーボモータ103dの間の接続に結線ミスがあるとする。なお、表1に示した4つの選択パターンにおいて、テーブル202に同じ動作をさせるために、指令生成部132は、同じ位置指令を生成してサーボ制御部117に出力したとする。選択パターン1から3は、テーブル202を駆動するために使用する3つのサーボアンプに、結線ミスのある第4サーボアンプ102dを含む。結線ミスのある第4サーボアンプ102dと第4サーボモータ103dは、指令生成部132の指令が求めているテーブル202の動作に寄与しないので、指令生成部132の指令が求めているテーブル202の動作に寄与するのは、残りの2つのサーボアンプとそれに対応する2つのサーボモータだけである。
【0060】
その結果、残りの2つのサーボモータでテーブル202を駆動するために、サーボ制御部117が算出するトルク指令値は、3つのサーボモータで駆動する場合に比べて大きくなる。選択パターン1から3は、状況がほぼ同じなので、各選択パターンに対応するトルク指令値が同じか近い値になる。
【0061】
一方、選択パターン4は、テーブル202を駆動するために使用する3つのサーボアンプに、結線ミスのある第4サーボアンプ102dを含まない。したがって、3つのサーボアンプ及び対応する3つのサーボモータとも指令生成部132の指令が求めているテーブル202の動作に寄与できる。その結果、テーブル202を駆動するために、サーボ制御部117が算出するトルク指令値は、2つのサーボモータで駆動する場合に比べて小さくなる。
【0062】
結線チェック確認部124は、4つの選択パターンに対応するトルク指令値を比較する。選択パターン1から3は、同じ若しくは近いトルク指令値を示すのに対して、選択パターン4は、選択パターン1から3と大きく異なる小さいトルク指令値を示すことになる。トルク指令値の差に異常があれば、結線チェック確認部124は、第4サーボアンプ102dと第4サーボモータ103dの系内に結線ミスが生じていると判定する。
【0063】
上述したように、本実施形態の結線ミス検出装置は、複数のサーボアンプが制御する複数のサーボモータによって1つの制御対象を駆動する機械制御システムにおけるサーボアンプとサーボモータの系内の結線ミスを検出することができ、結線ミスに関連するサーボアンプを特定することができる。
【0064】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載の範囲に限定されるものではない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができることは当業者にとって明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、上記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであるが、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。なお、各実施形態の構成の一部について、他の構成によって置換することも可能であり、それを削除することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
100 機械制御システム
101 CNC装置
102 サーボアンプ
102a 第1サーボアンプ
102b 第2サーボアンプ
102c 第3サーボアンプ
102d 第4サーボアンプ
103 サーボモータ
103a 第1サーボモータ
103b 第2サーボモータ
103c 第3サーボモータ
103d 第4サーボモータ
104 動力線
105 信号線
108 フィードバック線
110 結線ミス検出装置
111 立ち上げモード確認部
112 運転指令部
113 結線チェック指令部
114 第1記憶部
115 第2記憶部
116 異常検出部
117 サーボ制御部
118 表示部
119 警報部
120 結線チェック操作部
121 指令値取得部
122 フィードバック値取得部
123 選択部
124 結線チェック確認部
131 制御アンプ選択部
132 指令生成部
200 機械制御システム
202 テーブル
S1、S2 スイッチ