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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】可動の家具部分のための駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 3/20 20060101AFI20240925BHJP
   E05D 15/40 20060101ALI20240925BHJP
   E05F 1/12 20060101ALI20240925BHJP
   E05F 1/14 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
E05F3/20 Z
E05D15/40
E05F1/12
E05F1/14 A
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2023524828
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 AT2021060381
(87)【国際公開番号】W WO2022082238
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】A50908/2020
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス フォーリエ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン フーバー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス クレス
(72)【発明者】
【氏名】フアン ヘスス ペドロサ フェルナンデス
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-511653(JP,A)
【文献】特表2017-532469(JP,A)
【文献】特表2017-515018(JP,A)
【文献】特表2019-511651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00-15/58
E05F 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動の家具部分(2)のための駆動装置(1)であって、
-家具キャビネット(3)に取付け可能な支持体(4)、
-前記支持体(4)に可動に支持され、前記可動の家具部分(2)に接続可能な作動アーム装置(5)、
-前記作動アーム装置(5)に力を負荷することができる蓄力器(6)、
-前記作動アーム装置(5)の閉鎖運動(S)および開放運動(O)を減衰することができる減衰装置(7)、および
-調節装置(8)であって、前記調節装置によって前記減衰装置(7)を、
i.減衰力に関して、
ii.前記支持体(4)に対して相対的な前記作動アーム装置(5)の角度位置に関する減衰開始位置(D)に関して、かつ/または
iii.減衰行程に関して
調節可能である調節装置(8)、
を備えた、駆動装置(1)において、
前記調節装置(8)は、少なくとも1つの調節手段(8a)を有していて、前記調節手段は、前記調節装置(8)によって行われる前記減衰力、前記減衰開始位置(D)、および/または前記減衰行程の調節が、前記減衰装置(7)による、前記閉鎖運動(S)の進行中に行われる前記作動アーム装置(5)の減衰の際にも、前記開放運動(O)の進行中に行われる前記作動アーム装置(5)の減衰の際にも作用するように、前記減衰装置(7)に連結されている
ことを特徴とする、駆動装置(1)。
【請求項2】
前記家具部分(2)は、家具フラップである、請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記減衰装置(7)は、前記開放運動(O)の際にも前記閉鎖運動(S)の際にも、前記作動アーム装置(5)の同じ側から負荷可能である、請求項1または2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記減衰装置(7)は、減衰器ケーシング(71)、前記減衰器ケーシング(71)に対して相対的に可動の減衰器ピストン(72)、および前記減衰器ケーシング(71)と前記減衰器ピストン(72)との間の相対運動を減衰するための減衰手段(73)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項5】
前記減衰手段(73)は、流体室内に配置された減衰流体である、請求項4記載の駆動装置。
【請求項6】
前記作動アーム装置(5)は、減衰運動の際に前記減衰器ピストン(72)に当接する、請求項4または5記載の駆動装置。
【請求項7】
前記減衰器ケーシング(71)は、減衰運動の際に、前記支持体(4)に対して相対的に不動である、請求項記載の駆動装置。
【請求項8】
前記調節装置(8)によって、前記減衰器ケーシング(71)と前記支持体(4)との間の相対位置が調節可能である、請求項からまでのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項9】
前記調節装置(8)によって、前記減衰器ケーシング(71)と前記支持体(4)との間の相対位置が、スイッチの形態の、工具なしで操作可能な調節手段(8a)の切替えにより、2つの位置の間で調節可能である、請求項4から7までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項10】
前記作動アーム装置(5)は、前記可動の家具部分(2)と前記家具キャビネット(3)との間の閉鎖位置(SS)に相当する第1の最大位置と、前記家具キャビネット(3)に対して相対的な前記可動の家具部分(2)の最大開放位置(OS)に相当する第2の最大位置との間で可動である、請求項1からまでのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項11】
前記減衰は前記減衰装置(7)を介して、前記可動の家具部分(2)の、前記閉鎖位置(SS)および前記最大開放位置(OS)の手前に位置する運動区分において行われる、請求項10記載の駆動装置。
【請求項12】
前記手前に位置する運動区分は、2°~25°の旋回角度範囲に相当する、請求項11記載の駆動装置。
【請求項13】
前記手前に位置する運動区分は、5°~15°の旋回角度範囲に相当する、請求項11記載の駆動装置。
【請求項14】
前記作動アーム装置(5)は、前記蓄力器(6)の力を前記作動アーム装置(5)の作動アーム(52)に伝達するための伝達機構(51)を有している、請求項1から13までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項15】
前記伝達機構(51)は、制御カム(53)と、前記蓄力器(6)によって負荷される押圧ローラ(54)とを有しており、前記押圧ローラ(54)は、前記少なくとも1つの作動アーム(52)が移動する際に、前記制御カム(53)に沿って移動可能である、請求項14記載の駆動装置。
【請求項16】
前記作動アーム装置(5)は、少なくとも1つの減衰伝達エレメント(5a,5b)を有していて、前記減衰伝達エレメントは、前記作動アーム装置(5)によって可動であり、減衰運動の際に、ストッパ(55)を介して、前記減衰装置(7)に当接する、請求項1から15までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項17】
前記作動アーム装置(5)は、2つの減衰伝達エレメント(5a,5b)を有している、請求項16記載の駆動装置。
【請求項18】
記減衰伝達エレメント(5a,5b)は、減衰運動の際に、ストッパ(55)を介して、前記減衰装置(7)の減衰器ピストン(72)に当接する、請求項16または17記載の駆動装置。
【請求項19】
第1の減衰伝達エレメント(5a)が、前記作動アーム(52)に形成されており、前記第1の減衰伝達エレメント(5a)を介して、前記作動アーム装置(5)の前記開放運動(O)が減衰可能である、請求項14を引用する請求項16から18までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項20】
前記第1の減衰伝達エレメント(5a)を介して、前記作動アーム装置(5)の前記開放運動(O)が、前記家具キャビネット(3)に対して相対的な前記可動の家具部分(2)の最大開放位置(OS)の手前に位置する運動区分で、減衰可能である、請求項19記載の駆動装置。
【請求項21】
第2の減衰伝達エレメント(5b)が、可動に前記支持体(4)に支持されており、少なくとも所定の区分で、前記伝達機構(51)に運動連結されており、前記第2の減衰伝達エレメント(5b)を介して、前記作動アーム装置(5)の前記閉鎖運動(S)が減衰可能である、請求項14を引用する請求項16から18までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項22】
前記第2の減衰伝達エレメント(5b)が、回転可能に前記支持体(4)に支持されている、請求項21記載の駆動装置。
【請求項23】
前記第2の減衰伝達エレメント(5b)を介して、前記作動アーム装置(5)の前記閉鎖運動(S)が、前記家具キャビネット(3)に対して相対的な前記可動の家具部分(2)の閉鎖位置(SS)の手前に位置する運動区分で、減衰可能である、請求項21または22記載の駆動装置。
【請求項24】
前記蓄力器(6)は、前記支持体(4)と前記作動アーム装置(5)との間に配置されていて、前記支持体(4)と前記作動アーム装置(5)との間で作用する、請求項1から23までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項25】
家具キャビネット(3)と、前記家具キャビネット(3)に可動に支持された家具部分(2)と、請求項1から24までのいずれか1項記載の駆動装置(1)とを備える家具(100)。
【請求項26】
前記家具部分(2)は、家具フラップの形態である、請求項25記載の家具(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動の家具部分のための、特に家具フラップのための駆動装置であって、家具キャビネットに取付け可能な支持体、支持体に可動に支持され、可動の家具部分に接続可能な作動アーム装置、作動アーム装置に力を負荷することができる蓄力器、作動アーム装置の閉鎖運動および開放運動を減衰することができる減衰装置、および調節装置であって、この調節装置によって減衰装置を、減衰力に関して、支持体に対して相対的な作動アーム装置の角度位置に関する減衰開始位置に関して、かつ/または減衰行程に関して調節可能である調節装置、を備えた駆動装置に関する。さらに本発明は、このような駆動装置を備えた家具に関する。
【0002】
作動アーム装置を備えた駆動装置は、とりわけ、開放のために水平方向の軸を中心として上方に向かって旋回可能な家具フラップにおいて使用される。このための一般的な例は、国際公開第2012/155165号および国際公開第2011/020130号に見られる。2番目の文献には、閉鎖方向に動かされる家具フラップの動きを減衰する減衰装置も記載されている。
【0003】
欧州特許出願公開第2607592号明細書によっても、家具フラップの閉鎖運動を減衰する減衰装置を備えた家具用金具が明らかとなっている。この場合、減衰器は衝突面を有しており、この衝突面は、負荷部材がない場合に、減衰開始位置に位置する。減衰器には、減衰開始位置を調節するための調節手段が配属されている。すなわち、このような家具用金具によって、この開始位置を調節することができるが、この家具用金具は、家具フラップの開放運動を減衰するためには適していない。
【0004】
これに対して、欧州特許出願公開第1707723号明細書には、フラップのための作動アーム駆動装置が示されており、この場合、上方終端位置に到達する前および下方終端位置に到達する前に減衰器が減衰作用を提供する。閉鎖の際には、作動アームに配置されたストッパが、減衰器の第1の端部を押し、他方、開放行程の終了時には、線形に移動可能なキャリッジが減衰器の第2の端部を押す。減衰器の減衰行程および減衰出力は調節可能である。
【0005】
国際公開第2020/112058号にも、家具フラップのための家具用金具が示されており、この家具用金具によって、閉鎖運動および開放運動の終端区分を減衰することができる。しかしながらこの文献では、各減衰運動のために互いに分離され、異なる個所に配置された複数の減衰装置が設けられている。
【0006】
したがって本発明の課題は、代替的なまたは改善された駆動装置を提供することにある。特に、従来技術で生じている欠点を少なくとも部分的に回避することが望ましい。この駆動装置は、できるだけコンパクトかつ単純であると同時に多用途であることが望ましい。
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を備えた駆動装置によって解決される。したがって、本発明によれば、調節装置が、少なくとも1つの調節手段を有していて、この調節手段は、調節装置によって行われる減衰力、減衰開始位置、および/または減衰行程の調節が、減衰装置による、閉鎖運動の進行中に行われる作動アーム装置の減衰の際にも、開放運動の進行中に行われる作動アーム装置の減衰の際にも作用するように、減衰装置に連結されていることが想定されている。
【0008】
1つの変化態様によれば、調節装置によって、減衰行程を延長または短縮することができる。すなわち、この調節は、減衰装置において直接行うことができる。
【0009】
代替的に、減衰装置の減衰力を相応に変更することができ、動かすべき家具フラップの重量に適合させることができる。
【0010】
代替的に-そして特に好適には、減衰開始位置が調節装置によって調節可能であり、ひいては変更可能であることが想定されている。これは具体的には、減衰開始位置の変更により、減衰運動開始の際の家具フラップの角度位置も変更されることを意味している。すなわち、家具フラップの別の角度位置もしくは変更された角度位置で、減衰開始を行うことができる。
【0011】
特に簡単で、かつ複雑ではない実施例では、減衰装置が、開放運動の際にも閉鎖運動の際にも、作動アーム装置の同じ側から負荷可能であることが想定されている。すなわち、減衰装置を、いわば「後方から」負荷するための複雑な運動の迂回は必要ない。
【0012】
減衰装置は、ばねとしてまたはその他の弾性的な減衰エレメントとして形成することができる。しかしながら、好適には、減衰装置が流体減衰器として形成されていることが想定されている。
【0013】
特に好適な実施例によれば、減衰装置は、減衰器ケーシング、減衰器ケーシングに対して相対的に可動の減衰器ピストン、および減衰器ケーシングと減衰器ピストンとの間の相対運動を減衰するための減衰手段、好ましくは流体室内に配置された減衰流体を有していることが想定されている。
【0014】
さらに好適には、作動アーム装置が、家具部分減衰運動の際に減衰器ピストンに当接することが想定されている。作動アーム装置が減衰器ピストンに接触するまたは当接する、もしくは減衰器ピストンを負荷し始める瞬間もしくは位置が、減衰開始位置である。
【0015】
減衰器ケーシングが、家具部分減衰運動の際に、支持体に対して相対的に不動であることが想定されていてよい。これにより、家具部分減衰運動の際には、減衰器ピストンのみが(家具キャビネット固定の)支持体に対して相対的に動く。
【0016】
減衰器ケーシングが、家具部分減衰運動の際にかつ/または調節運動の際に、支持体に対して相対的に可動であることが想定されていてよい。
【0017】
第1の実施例によれば、減衰器ケーシングが、支持体に対して相対的に旋回可能かつ並進運動可能であることが想定されていてよい。
【0018】
代替的には、減衰器ケーシングが、支持体に対して相対的に、好ましくは線形に、摺動可能であることが想定されていてよい。
【0019】
減衰力、減衰行程、または減衰開始位置の変更のためには、調節装置によって、減衰器ケーシングと支持体との間の相対位置が調節可能であることが想定されている。
【0020】
調節装置を介して調節を無段階式に行うことができる。代替的に(かつ特に好適には)、調節装置によって、工具なしで操作可能なスイッチの切替えにより、2つの位置の間で、減衰器ケーシングと支持体との間の相対位置が調節可能であることが想定されている。
【0021】
好適な実施例によれば、作動アーム装置が、可動の家具部分と家具キャビネットとの間の閉鎖位置に相当する第1の最大位置と、家具キャビネットに対して相対的な可動の家具部分の最大開放位置に相当する第2の最大位置との間で可動であることが想定されている。
【0022】
原則的に、減衰装置は、作動アーム装置の全運動行程を減衰することができる。しかしながら好適には、減衰は減衰装置を介して、可動の家具部分の、閉鎖位置および最大開放位置の手前に位置する運動区分において行われることが想定されている。
【0023】
具体的には、(それぞれ)手前に位置する運動区分は、2°~25°の、好ましくは5°~15°の作動アーム装置の(ひいては、間接的に可動の家具部分の)旋回角度範囲に相当することが想定されていてよい。
【0024】
自体公知のように、作動アーム装置は、蓄力器の力を、作動アーム装置の作動アームに伝達するための伝達機構を有していることが想定されている。
【0025】
特に好適には、伝達機構は、制御カムと、蓄力器によって負荷される押圧ローラとを有しており、この押圧ローラは、少なくとも1つの作動アームが移動する際に、制御カムに沿って移動可能であることが想定されている。
【0026】
さらに好適には、作動アーム装置は、少なくとも1つの減衰伝達エレメント(好ましくは2つの別個の減衰伝達エレメント)を有していて、減衰伝達エレメントは、作動アーム装置によって可動であり、家具部分減衰運動の際に、ストッパを介して、減衰装置に、好ましくは減衰装置の減衰器ピストンに当接することが想定されている。
【0027】
具体的には、特に、同じ側からの減衰装置の負荷を可能にするために、駆動装置で実施することができる2つの好適な態様がある。
【0028】
これによると、第1の減衰伝達エレメントが、作動アームに配置または形成されており、この第1の減衰伝達エレメントを介して、作動アーム装置の開放運動が、好ましくは可動の家具部分の最大開放位置の手前に位置する運動区分で、減衰可能であることが想定されている。
【0029】
さらに、第2の減衰伝達エレメントが、可動に、好ましくは回転可能に支持体に支持されており、少なくとも所定の区分で、伝達機構に運動連結されており、この第2の減衰伝達エレメントを介して、作動アーム装置の閉鎖運動が、好ましくは可動の家具部分の閉鎖位置の手前に位置する運動区分で、減衰可能であることが想定されている。
【0030】
コンパクトな設計のために、蓄力器は、支持体と作動アーム装置との間に配置されていて、支持体と作動アーム装置との間で作用することが想定されている。
【0031】
好適な実施例によれば、駆動装置が、可動の家具部分を閉鎖位置から開放位置へと押し出すためのエジェクト装置を有していることが想定されている。
【0032】
特に好適には、エジェクト装置は、可動の家具部分を、閉鎖位置の後方に位置する過剰押込み位置へと過剰に押し込むことによりロック解除されるロック装置を有していることが想定されている。
【0033】
蓄力器は、例えば、ガス圧ばねとして形成されていてよい。好適には、蓄力器は、ばねとして、好ましくは圧縮ばねとして形成されていることが想定されている。蓄力器は、ばねパッケージとして形成されていてもよい。
【0034】
家具キャビネットと、好ましくは家具フラップの形態の、家具キャビネットに可動に支持された家具部分と、本発明による駆動装置とを備えた家具にも特許請求がなされる。
【0035】
好適な実施例によれば、家具キャビネットの、対向する2つの側壁には、それぞれ1つの駆動装置が配置されており、これらの駆動装置は、それぞれの作動アーム装置を介して、同じ可動の家具部分を駆動することができることが想定されている。
【0036】
本発明のさらなる詳細および利点を、図面の説明につき、図面に示した実施例に関して以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】家具フラップのための駆動装置を備えた家具の概略図である。
図2a】作動アーム装置および蓄力器を備えた駆動装置を示す図である。
図2b図2aの詳細図である。
図3a】駆動装置の斜視図である。
図3b】駆動装置の斜視図である。
図4a】中間開放位置にある駆動装置の縦断面図である。
図4b】中間開放位置にある駆動装置の縦断面図である。
図5a図4aの詳細図である。
図5b図4bの詳細図である。
図6a】最大開放位置の手前の家具部分位置における駆動装置の縦断面図であり、減衰開始位置が示されている。
図6b】最大開放位置の手前の家具部分位置における駆動装置の縦断面図であり、減衰開始位置が示されている。
図7a】閉鎖位置の手前の家具部分位置における駆動装置の縦断面図であり、減衰開始位置が示されている。
図7b】閉鎖位置の手前の家具部分位置における駆動装置の縦断面図であり、減衰開始位置が示されている。
図8a】減衰装置の縦断面を示す図である。
図8b】減衰装置の縦断面を示す異なる図である。
図9a】調節装置の第2の実施例を詳細図と共に示す斜視図である。
図9b】調節装置の第2の実施例を詳細図と共に示す斜視図である。
図10a】調節装置の第3の実施例を示す斜視図である。
図10b】調節装置の第3の実施例を示す斜視図である。
図11a】線形に摺動可能な減衰器ケーシングを備えた実施例を示す図である。
図11b】線形に摺動可能な減衰器ケーシングを備えた実施例の別の図である。
図11c】線形に摺動可能な減衰器ケーシングを備えた実施例の別の図である。
【0038】
図1は、家具キャビネット3を備えた家具100を示しており、家具キャビネット3の側壁3aには、可動に支持された家具部分2を動かすための駆動装置1(家具用金具)が取り付けられている。
【0039】
図示した実施例では、可動の家具部分2は、2つの家具フラップ2a,2bを有していて、この場合、第1の家具フラップ2aは、水平方向に延在する回転軸を中心として旋回可能に、少なくとも2つのヒンジ9aを介して家具キャビネット3に接続されていて、第2の家具フラップ2bは、水平方向に延在する回転軸を中心として旋回可能に、少なくとも2つのヒンジ9bを介して第1の家具フラップ2aに接続されている。
【0040】
駆動装置1は、家具キャビネット3に、好ましくは家具キャビネット3の側壁3aに取り付けるべき支持体4と、この支持体4に対して相対的に旋回可能な少なくとも1つの作動アーム52とを有しており、作動アームは、可動の家具部分2に、好ましくは第2の家具フラップ2bに接続されている。
【0041】
図1の家具100は、部屋の天井10に対して離隔されて配置されていることが認められる。図1では、作動アーム52は、可動の家具部分2の最大開放位置OSに相当する比較的大きな旋回角度をなしている。
【0042】
図2aは、駆動装置1を側面図で示しており、この駆動装置1は、家具キャビネット3に取り付けるべき支持体4と、この支持体4に、回転軸Xを中心として旋回可能に支持されている少なくとも1つの作動アーム52とを有している。
【0043】
図示した実施例では、作動アーム52に、作動アーム延長部11が取り外し可能に配置されており、作動アーム延長部11は、互いに相対的に摺動可能な2つの作動アーム部分11a,11bを有している。好ましくは、作動アーム部分11a,11bは互いに相対的にテレスコピック式に摺動可能であって、この場合、第1の作動アーム部分11aは、作動アーム52に取り外し可能に接続可能である。第2の作動アーム部分11bは、可動の家具部分2に取り付けるべき金具部分に取り外し可能に接続可能な、好ましくは工具なしでロック可能かつロック解除可能な取付け装置12有している。
【0044】
作動アーム装置5の作動アーム52に力を負荷するために、例えば少なくとも1つのコイルばね、好適には少なくとも1つの圧縮ばねを有していてよい蓄力器6が設けられている。代替的に、蓄力器6は、例えば、ガス圧ばねの形態の流体アキュムレータのような別の蓄力器を有していてもよい。
【0045】
作動アーム装置5は、蓄力器6の力を少なくとも1つの作動アーム52に伝達するための伝達機構51を有している。好ましくは、伝達機構51は、制御カム53と、蓄力器6によって負荷される押圧ローラ54とを有しており、この押圧ローラ54は、少なくとも1つの作動アーム52が移動する際に、制御カム53に沿って移動可能である。
【0046】
制御カム53は、好適な実施例によれば、作動アーム52に配置または形成されていてよい。勿論、制御カム53を、作動アーム装置5の伝達機構51における別の個所に配置することも可能である。
【0047】
少なくとも1つの作動アーム52に対する蓄力器6の力は、力調節装置14によって調節可能である。好ましくは、
-力調節装置14は、回転可能に支持された少なくとも1つの調節ホイール14aを有しており、蓄力器6の、少なくとも1つの作動アーム52に作用する力は、調節ホイール14aの回転により調節可能であり、かつ/または
-力調節装置14は、少なくとも1つのねじスピンドル16を有していて、力調節装置14が操作される際に、蓄力器6の作用個所15がねじスピンドルに沿って可動であり、かつ/または
-支持体4は、少なくとも1つの開口17aを備えた端面を有しており、開放位置では、この開口から少なくとも1つの作動アーム52が突出しており、力調節装置14の調節ホイール14aは、1つの方向から端面に対して横方向に、開口17aを介して操作可能である、
ことが想定されていている。
【0048】
図2bは、図2aの円で取り囲んだ領域を拡大図で示している。伝達機構51は、支持体4に回転軸19aを中心として旋回可能に支持されている中間レバー19を有している。ねじスピンドル16は、中間レバー19に支持されている。工具により力調節装置14の調節ホイール14aを回転させることにより、ねじスピンドル16は回転可能であり、これにより、蓄力器6の作用個所15は、ねじスピンドル16に沿って移動する。これにより、作用個所15と、中間レバー19の回転軸19aとの間の相対間隔が拡大・縮小可能となり、ひいては作動アーム52に作用する、蓄力器6のトルクが拡大・縮小可能となる。
【0049】
駆動装置1はさらに、作動アーム装置5の少なくとも1つの作動アーム52の運動を減衰するための少なくとも1つの減衰装置7を有している。好ましくは、減衰装置7に関して、この減衰装置が、
-流体減衰器として形成されていて、かつ/または
-少なくとも1つのピストン・シリンダユニットを有していて、かつ/または
-閉鎖運動の際に、少なくとも1つの作動アーム52によって負荷可能であって、かつ/または
-少なくとも1つの作動アーム52の開放運動Oの際にも閉鎖運動Sの際にも、同じ側から負荷可能である、
ことが想定されている。
【0050】
図3aは、駆動装置1を斜視図で示しており、作動アーム装置5の伝達機構51によって、蓄力器6の力が少なくとも1つの作動アーム52に伝達可能である。力調節装置14は、例えば回転可能な調節ホイール14aを有していてよく、調節ホイール14aを回転させることにより、蓄力器6の作用個所15は、ねじスピンドル16に沿って調節可能であり、ひいては作動アーム52に作用するトルクが調節可能である。
【0051】
駆動装置1は、さらに、空の作動アーム52のための、すなわち、まだ可動の家具部分2が組み付けられていない作動アーム52のための、空の作動アーム52の開放速度を制限するための組付け安全装置20を有していてよく、この組付け安全装置20は、蓄力器6の力による空の作動アーム52の意図しない開放または振れを阻止する。好ましくは、組付け安全装置20は、少なくとも1つの遠心クラッチ20aを有していることが想定されている。
【0052】
図3bは、別の(ややずらされた)斜視図で、駆動装置1を示している。この図では、減衰装置7全体を良好に認めることができる。この減衰装置7は、減衰器ケーシング71と減衰器ピストン72とを有している。
【0053】
減衰装置7は、調節装置8を介して支持体4に対して相対的に調節可能である。調節装置8は、(スイッチの形態の)調節手段8aと、調節軸ピン8xとを有している。調節軸ピン8xは、支持体4に堅固に接続されている。
【0054】
図3bでは、調節手段8aが右に向かって旋回させられていて、これにより減衰装置7は、支持体4に対して相対的に、右側の最大位置に位置している。
【0055】
図3bでは、作動アーム52に、第1の減衰伝達エレメント5aが形成されていることが明らかである。この第1の減衰伝達エレメント5aは、減衰装置7に面した延長部の形態で形成されている。図3bには示された位置では、ストッパ55は、減衰器ケーシング71に形成されたストッパ対応部材74に対して(まだ)離隔されている。
【0056】
作動アーム装置5には、(ローラの形態の)ストッパエレメント56が配置されている。このストッパエレメント56は、軸ピン57を介して旋回可能に支持体4に支持されている第2の減衰伝達エレメント5bに対して(まだ)離隔されている。
【0057】
図4a~図7bは、駆動装置のそれぞれ1つの鉛直方向縦断面図を様々な位置で示している。
【0058】
図4aおよび図4bでは、作動アーム装置5は同じ開放位置に位置している。これは、ほぼ半分開放された可動の家具部分2に相当する。作動アーム52の開放角は、55°~80°の範囲のどこかにある。
【0059】
しかしながら図4aおよび図4bは、減衰装置7が異なる位置に位置している点で異なっている。図4bでは、減衰装置7は、右側の最大位置に位置している。図5bに示した所属の拡大図で明らかであるように、調節手段8aは、調節軸ピン8xを中心として右に向かって回転させられている。これにより、調節手段8aの比較的広幅の領域が、減衰器ケーシング71と調節軸ピン8xとの間に位置している。
【0060】
これに対して、図4aおよび所属の図5aでは、調節装置の調節手段8aは左に向かって90°回転させられている。これにより、調節手段8aの比較的狭幅の領域が、減衰器ケーシング71と調節軸ピン8xとの間に位置している。減衰装置7は、左側の最大位置に位置している。
【0061】
図4a~図5bのすべての位置で、減衰装置は負荷されておらず、したがって弛緩しており、完全に走出した位置にある。第2の圧力伝達エレメント5bは、減衰ピストン72に当接している。
【0062】
図5aと図5bとを比較すると、減衰器ケーシング71は、支持体4に対して相対的な並進摺動運動に加えて付加的に、支持体4に対して相対的に(僅かな)旋回運動も行ったことがわかる。
【0063】
図6aおよび図6bでは、前述の図4a~図5bを起点として、作動アーム装置5の開放運動Oが行われた。これにより作動アーム52は上方に向かって旋回させられている。この開放運動Oは、第1の減衰伝達エレメント5aのストッパ55が、ストッパ対応部材74に接触するまで行われた。この位置で、それぞれ減衰開始位置Dに到達している。
【0064】
図6aおよび図6bの減衰装置7は、異なる最大位置に位置しているので、それぞれ所与の減衰開始位置Dでは、作動アーム52は、別の角度位置をとっている。具体的には、図6aでは、約108°の開放角が生じていて、図6bでは100°の開放角が生じている。
【0065】
その都度のこれらの減衰開始位置Dから開放運動Oが継続されると、ストッパ対応部材74を介して、減衰ピストン72は減衰器ケーシング71内へと押され、これにより減衰装置7はその機能を発揮する。減衰器ピストン72が完全に走入されると、最大開放位置OSに到達する(図示せず)。
【0066】
したがって、可動の家具部分2の、最大開放位置OSの手前の運動区分は減衰され、この場合、減衰開始位置Dは、調節手段8aを介して様々に調節されている。これにより、減衰運動の開始のために、様々な開放角度を調節することができる。
【0067】
同じ原理は、閉鎖運動Sについても当てはまる。
【0068】
図7aおよび図7bでは、前述の図4a~図5bを起点として、作動アーム装置5の閉鎖運動Sが行われた。これにより作動アーム52は下方に向かって旋回させられている。この閉鎖運動Sは、回転軸Xを中心とした作動アーム52の回転運動により、ストッパエレメント56が第2の減衰伝達エレメント5bに接触するまで行われた。この位置で、それぞれ減衰開始位置Dに到達している。
【0069】
図7aおよび図7bの減衰装置7は、異なる最大位置に位置しているので、それぞれ所与の減衰開始位置Dでは、作動アーム52は、別の角度位置をとっている。具体的には、図7aでは、約22°の開放角が生じていて、図7bでは約33°の開放角が生じている。
【0070】
その都度のこれらの減衰開始位置Dから閉鎖運動Sが継続されると、ストッパエレメント56を介して、第2の減衰伝達エレメント5bは軸ピン57を中心として反時計回りに回転させられ、これにより減衰伝達エレメント5bは、ストッパ58を介して減衰ピストン72を押し、減衰ピストンを減衰器ケーシング71内へと押し込み、これにより減衰装置7は再びその機能を発揮する。減衰器ピストン72が完全に走入されると、閉鎖位置SSに到達する(図示せず)。
【0071】
図8aおよび図8bには、駆動装置1の他の構成部分を省いて減衰装置7が縦断面図で示されている。減衰ピストン72は走入しており、これにより減衰終端位置にほぼ達している。(減衰装置7の内部構造は、自体公知の流体減衰器に相当するので、詳しくは説明しない。)
【0072】
図9aおよび図9bは、調節装置8の別の実施例を示している。支持体4には同じく、減衰装置7が調節可能に支持されている。調節装置8の調節軸ピン8xは、支持体4に堅固に接続されている。調節手段8aは、翼状の延長部として減衰器ケーシング71表面に形成されている。減衰器ケーシング71は、その端面に、異なる深さの凹部8bおよび8cを有していて、これらの凹部は互いに横方向に(好ましくは直交方向に)配置されている。図9aおよび所属の詳細図では、深い方の凹部8c内に調節軸ピン8xが位置していて、これにより減衰装置7は左側の最大位置に位置している。
【0073】
図9bでは、減衰器ケーシング71は、調節手段8aを介して手動で、長手方向軸線を中心として約90°回転させられた。これにより、調節軸ピン8xは、今や、浅い方の凹部8b内に位置していて、これにより減衰開始位置Dは相応に調節されている。
【0074】
図10aは、やはり減衰装置7の別の実施例を示しており、この場合、調節手段8aとして、好ましくは手動で装着可能なスペーサ部材が使用される。これにより、図10aでは、右側の最大位置に達している。
【0075】
図10bでは、調節装置8の調節手段8aは除去されており、これにより、調節軸ピン8xは、減衰器ケーシング71の方向にさらに動かされていて、左側の最大位置が生じており、これもまた、別の開放角における減衰開始位置に相当する。
【0076】
図11a~図11cには、別の実施例が示されている。基本的な機能形式は、上述した実施例と同じであるので、主要な構成要素の説明は再度繰り返さない。
【0077】
図11a~図11cによるこの実施例は、減衰器ケーシング71が支持体4に線形にのみ摺動可能に支持されている点で異なっている。
【0078】
図11aでは、作動アーム52は、図6bとほぼ同じ位置を有している。図11bでは、作動アーム52の位置は、図6aの位置にほぼ相当する。調節装置8を介して、図11aおよび図11bにおける減衰器ケーシング71は、支持体4(および支持体4に配置された調節軸ピン8x)に対して相対的に異なる位置に位置していて、これにより異なる減衰開始位置Dが生じる。
【0079】
図11cでは、駆動装置1は、長手方向平面に沿って断面されて示されており、これにより減衰器ケーシング71の詳細を見ることができる。具体的には、減衰器ケーシング71にはガイド面76が形成されていて、このガイド面を介して、減衰器ケーシング71は、支持体4に配置されたガイドエレメント75に当接する。減衰器ケーシング71は、ガイド面76を介して、ガイドエレメント75に沿って線形に滑動することができる。
【0080】
左上方の詳細図ではさらに、それぞれ減衰器ケーシング71に当接している第1の減衰伝達エレメント5aと第2の減衰伝達エレメント5bとが認められる。
【符号の説明】
【0081】
1 駆動装置
2 可動の家具部分
2a 第1の家具フラップ
2b 第2の家具フラップ
3 家具キャビネット
3a 側壁
4 支持体
5 作動アーム装置
5a 第1の減衰伝達エレメント
5b 第2の減衰伝達エレメント
51 伝達機構
52 作動アーム
53 制御カム
54 押圧ローラ
55 ストッパ
56 ストッパエレメント
57 軸ピン
6 蓄力器
7 減衰装置
71 減衰器ケーシング
72 減衰器ピストン
73 減衰手段
74 ストッパ対応部材
75 ガイドエレメント
76 ガイド面
8 調節装置
8a 調節手段
8x 調節軸ピン
8b,8c 凹部
9a ヒンジ
9b ヒンジ
10 部屋の天井
11 作動アーム延長部
11a 第1の作動アーム部分
11b 第2の作動アーム部分
12 取付け装置
14 力調節装置
14a 調節ホイール
15 作用個所
16 ねじスピンドル
17a 開口
19 中間レバー
19a 回転軸
20 組付け安全装置
20a 遠心クラッチ
100 家具
D 減衰開始位置
S 閉鎖運動
O 開放運動
SS 閉鎖位置
OS 最大開放位置
X 回転軸
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c