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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023540959
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2022044764
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 太朗
(72)【発明者】
【氏名】米本 憲司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 碧惟
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-106181(JP,A)
【文献】特開2021-044307(JP,A)
【文献】特開平10-050813(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0411355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通し、上部開口の面積が下部開口の面積よりも大きい円錐台空間を有するプラグ配置穴と、
前記プラグ配置穴に配置され、上下方向のガスの流れを許容し、上面の面積が下面の面積よりも大きい円錐台形状のプラグと、
前記プラグ配置穴の内周面と前記プラグの外周面との間に設けられた接着層と、
前記セラミックプレートの下面に接合層を介して接合された導電性のベースプレートと、
前記ベースプレート及び前記接合層に設けられ、前記プラグにガスを供給するガス供給路と、
を備えた半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記ガス供給路のうち前記プラグに対向する位置には、前記プラグの進入を許容する空間が設けられている、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記プラグ配置穴の内周面の仰角及び前記プラグの外周面の仰角は、55°以上85°以下である、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記接着層は、上下方向の最大長さが0.2mmを超える気泡を有さない、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記接着層は、気泡を有さない、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用部材としては、上面にウエハ載置面を有する静電チャックを備えたものが知られている。例えば、特許文献1の静電チャックは、セラミックプレートの下面に設けられた円錐台空間の有底凹部に、円錐台形状の多孔質プラグを挿入して接着剤で固定し、セラミックプレートの下面と金属製のベースプレートとを接合したものである。特許文献2の静電チャックは、セラミックプレートに形成された円柱空間の貫通孔に、円柱形状の多孔質プラグを焼結により一体化し、セラミックプレートの下面と金属製のベースプレートとを接合したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-101773号公報
【文献】特開2019-29384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の静電チャックでは、多孔質プラグを収納する有底凹部がセラミックプレートの下面に設けられているため、多孔質プラグを交換する必要が生じた場合に簡単に交換できないという問題があった。また、特許文献2の静電チャックでは、多孔質プラグが貫通孔に焼結により一体化されているため、多孔質プラグを交換する必要が生じた場合にはやはり簡単に交換できないという問題があった。ここで、特許文献2の静電チャックにおいて、円柱形状の多孔質プラグを円柱空間の貫通孔に焼結で固定するのではなく接着剤で固定することも考えられるが、接着時に接着剤が流れ落ちやすいため、接着剤の内部に上下方向に長く延びる気泡が生じやすい。このような気泡が生じると、ウエハをプラズマで処理する際にその気泡内で放電が起こり、ウエハの裏面を焦がすおそれがある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、上下方向のガスの流れを許容するプラグを容易に交換でき、しかもプラグの周辺で放電が起きにくくすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通し、上部開口の面積が下部開口の面積よりも大きい円錐台空間を有するプラグ配置穴と、
前記プラグ配置穴に配置され、上下方向のガスの流れを許容し、上面の面積が下面の面積よりも大きい円錐台形状のプラグと、
前記プラグ配置穴の内周面と前記プラグの外周面との間に設けられた接着層と、
前記セラミックプレートの下面に接合層を介して接合された導電性のベースプレートと、
前記ベースプレート及び前記接合層に設けられ、前記プラグにガスを供給するガス供給路と、
を備えたものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、プラグを交換する必要が生じた場合、接着層を切断、溶融又は軟化させてプラグをセラミックプレートのプラグ配置穴から上方へ引き抜くことができる。また、新たなプラグをプラグ配置穴の上方から挿入してプラグ配置穴に接着することができる。そのため、プラグを容易に交換することができる。また、プラグ配置穴の内周面とプラグの外周面との間に接着層を設ける際、これらの面はテーパ面となっているため接着剤が流れ落ちにくい。そのため、これらの面が鉛直面の場合に比べて接着層に気泡(ウエハをプラズマで処理する際に放電が発生する大きさの気泡)が生じにくい。したがって、ウエハをプラズマで処理する際にプラグの周辺(接着層)で放電が起きにくい。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、半導体製造装置用部材の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
[2]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記ガス供給路のうち前記プラグに対向する位置には、前記プラグの進入を許容する空間が設けられていてもよい。こうすれば、プラグ配置穴にプラグを配置する際、プラグ配置穴やプラグに製造誤差があったとしても、プラグの進入を許容する空間によってそうした製造誤差を吸収することができる。
【0010】
[3]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]又は[2]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記プラグ配置穴の内周面の仰角及び前記プラグの外周面の仰角は、55°以上85°以下であることが好ましい。こうすれば、プラグ配置穴の内周面とプラグの外周面との間に接着層を設ける際、接着剤が均一に広がりやすいため、接着層に気泡が生じないかほとんど生じない。そのため、プラグの周辺(接着層)での放電を防止する効果が高まる。
【0011】
[4]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記接着層は、上下方向の最大長さが0.2mmを超える気泡を有さないことが好ましい。気泡の上下方向の最大長さが0.2mmを超えると、ウエハをプラズマで処理する際にその気泡の内部で放電が生じるおそれがあるが、気泡の上下方向の最大長さが0.2mmを超えなければその気泡の内部で放電が生じるおそれはほとんどない。
【0012】
[5]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記接着層は、気泡を有さないことが好ましい。こうすれば、プラグの周辺(接着層)での放電を防止する効果が一段と高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】半導体製造装置用部材10の縦断面図。
図2】セラミックプレート20の平面図。
図3図1の部分拡大図。
図4】半導体製造装置用部材10の製造工程図。
図5】半導体製造装置用部材110の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図、図2はセラミックプレート20の平面図、図3図1の部分拡大図である。
【0015】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、プラグ配置穴24と、ベースプレート30と、金属接合層40と、多孔質プラグ50とを備えている。
【0016】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面は、ウエハ載置面21となっている。セラミックプレート20は、電極22を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置面21には、図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド21aが形成され、全面に複数の円形小突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形小突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極22は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面及び円形小突起21bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面21への吸着固定が解除される。なお、ウエハ載置面21のうちシールバンド21aや円形小突起21bの設けられていない部分を、基準面21cと称する。
【0017】
プラグ配置穴24は、セラミックプレート20を上下方向に貫通する貫通穴であり、ベースプレート30のガス穴34に対向している。プラグ配置穴24は、電極22を上下方向に貫通しているが、プラグ配置穴24の内周面には電極22は露出していない。プラグ配置穴24は、上部開口の面積が下部開口の面積よりも大きい円錐台空間を有するテーパ穴である。プラグ配置穴24の内周面の仰角α(図3)は、55°以上85°以下であることが好ましく、65°以上85°以下であることがより好ましい。プラグ配置穴24は、図2に示すように、セラミックプレート20の複数箇所(例えば周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所)に設けられている。
【0018】
ベースプレート30は、熱伝導率の良好な円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。ベースプレート30の内部には、冷媒(例えばフッ素系不活性液体などの電気絶縁性の液体)が循環する冷媒流路32やガスを多孔質プラグ50へ供給するガス穴34が形成されている。ガス穴34は、ベースプレート30を上下方向に貫通するように設けられ、上方に大径部34aを有する。大径部34aは、平面視でプラグ配置穴24の下部開口を包含している。冷媒流路32は、平面視でベースプレート30の全面にわたって入口から出口まで一筆書きの要領で形成されている。ベースプレート30の材料としては、例えば、複合材料や金属などが挙げられる。複合材料としては、金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC))やセラミックマトリックス複合材料(セラミック・マトリックス・コンポジット(CMC))などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。金属としては、Moなどが挙げられる。ベースプレート30の材料としては、セラミックプレート20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。ベースプレート30は、RF電極としても用いられる。具体的には、ウエハ載置面21の上方には上部電極(図示せず)が配置され、その上部電極とベースプレート30とからなる平行平板電極間に高周波電力を印加するとプラズマが発生する。
【0019】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面とベースプレート30の上面とを接合している。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。金属接合層40は、はんだや金属ろう材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、貫通穴42を有している。貫通穴42は、ガス穴34の大径部34aと対向する位置に設けられている。貫通穴42は、大径部34aと同軸に設けられ、貫通穴42の直径は大径部34aの直径と一致している。本明細書で「一致」とは、完全に一致する場合のほか、実質的に一致する場合(例えば公差の範囲に入る場合など)も含む(以下同じ)。なお、ガス穴34及び貫通穴42が本発明のガス供給路に相当する。
【0020】
多孔質プラグ50は、プラグ配置穴24に固定されている。多孔質プラグ50は、ガスが上下方向に流通するのを許容する電気絶縁性の部材である。多孔質プラグ50の気孔率は30%以上が好ましく、平均気孔径は20μm以上が好ましい。多孔質プラグ50は、上面の面積が下面の面積よりも大きい円錐台形状の部材である。多孔質プラグ50の外周面の仰角βは、プラグ配置穴24の内周面の仰角αと一致している。多孔質プラグ50の外周面とプラグ配置穴24の内周面との間には、接着層60が設けられている。接着層60は、ウエハWをプラズマで処理する際に放電が発生する大きさの気泡(例えば上下方向の高さが2mm以上の気泡)を有していない。接着層60の材料としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。多孔質プラグ50の材料としては、例えばセラミックが挙げられ、具体的にはセラミックプレート20と同じ材料の多孔質体を用いることができる。多孔質プラグ50の上面50aは、プラグ配置穴24の上部開口に露出し、基準面21cと同一平面をなす。 本明細書で「同一」とは、完全に同一の場合のほか、実質的に同一の場合(例えば公差の範囲に入る場合など)も含む(以下同じ)。多孔質プラグ50の下面50bはプラグ配置穴24の下部開口に露出している。
【0021】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内に半導体製造装置用部材10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面21に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面)に吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極と半導体製造装置用部材10のベースプレート30との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。ウエハWの表面は、発生したプラズマによって処理される。ベースプレート30の冷媒流路32には、冷媒が循環される。ガス穴34には、図示しないガスボンベからバックサイドガスが導入される。バックサイドガスとしては、熱伝導ガス(例えばヘリウム等)を用いる。バックサイドガスは、ガス穴34、貫通穴42及び多孔質プラグ50を通って、ウエハWの裏面とウエハ載置面21の基準面21cとの間の空間に供給され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。
【0022】
次に、半導体製造装置用部材10の製造例について図4に基づいて説明する。図4は半導体製造装置用部材10の製造工程図である。まず、セラミックプレート20、ベースプレート30及び金属接合材90を準備する(図4A)。セラミックプレート20は、電極22を内蔵し、プラグ配置穴24を備えている。ベースプレート30は、冷媒流路32及びガス穴34を備えている。ガス穴34は、上方に大径部34aを有している。金属接合材90は、ガス穴34の大径部34aに対向する位置に貫通穴92を備えている。
【0023】
続いて、セラミックプレート20の下面とベースプレート30の上面との間に金属接合材90を挟み込むことにより、積層体とする。このとき、セラミックプレート20のプラグ配置穴24と金属接合材90の貫通穴92とベースプレート30のガス穴34とが同軸になるように積層する。そして、金属接合材90の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す(TCB)。これにより、金属接合材90及び貫通穴92はそれぞれ金属接合層40及び貫通穴42になり、セラミックプレート20とベースプレート30とが金属接合層40で接合された接合体94が得られる(図4B)。なお、金属接合材90としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。金属接合材90は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0024】
続いて、円錐台形状の多孔質プラグ50を用意する(図4B)。多孔質プラグ50の高さは、円錐台空間であるプラグ配置穴24の深さ(つまりセラミックプレート20の高さ)と同じである。この多孔質プラグ50の外周面の周方向に沿って少なくとも1周、接着剤70を塗布する。接着剤70は、有機接着剤でもよいし、無機接着剤でもよい。接着剤70を塗布した多孔質プラグ50をプラグ配置穴24に挿入する。このとき、接着剤70が多孔質プラグ50の外周面及びプラグ配置穴24の内周面に沿って広がるように、多孔質プラグ50を回したり上下に動かしたりする。これにより、接着剤70は、多孔質プラグ50の外周面とプラグ配置穴24の内周面との隙間に気泡を抱き込むことなく均一に伸ばされる。
【0025】
多孔質プラグ50をプラグ配置穴24に挿入すると、多孔質プラグ50の外周面とプラグ配置穴24の内周面とが接着剤70を介して合わさる。この状態で、多孔質プラグ50の上面は、セラミックプレート20の上面(基準面21c)と一致する。多孔質プラグ50は、高さの異なるものが複数用意されている。そのため、セラミックプレート20の実際の高さ(製造誤差により個体差がある)に応じて、複数用意された高さの異なる多孔質プラグ50の中から、多孔質プラグ50をプラグ配置穴24に挿入し終えたときに多孔質プラグ50の上面がセラミックプレート20の上面(基準面21c)と一致するものを選択する。その後、接着剤70が硬化して接着層60になると、半導体製造装置用部材10が得られる(図4C)。
【0026】
以上詳述した半導体製造装置用部材10では、多孔質プラグ50を交換する必要が生じた場合、接着層60を切断、溶融又は軟化させて多孔質プラグ50をプラグ配置穴24から上方へ引き抜くことができる。また、新たな多孔質プラグ50をプラグ配置穴24の上方から挿入してプラグ配置穴24に接着することができる。そのため、多孔質プラグ50を容易に交換することができる。
【0027】
また、プラグ配置穴24の内周面と多孔質プラグ50の外周面との間に接着層60を設ける際、これらの面はテーパ面となっているため接着剤70が流れ落ちにくい。そのため、これらの面が鉛直面の場合に比べて接着層60に気泡(ウエハWをプラズマで処理する際に放電が発生する大きさの気泡)が生じにくい。したがって、ウエハWをプラズマで処理する際に多孔質プラグ50の周辺(接着層60)で放電が起きにくい。
【0028】
更に、ガス供給路を構成するガス穴34及び貫通穴42のうち多孔質プラグに対向する位置には、多孔質プラグ50の進入を許容する空間(貫通穴42及び大径部34a)が設けられている。そのため、プラグ配置穴24に多孔質プラグ50を配置する際、プラグ配置穴24や多孔質プラグ50に製造誤差があったとしても、多孔質プラグ50の進入を許容する空間によってそうした製造誤差を吸収することができる。これに対して、プラグ配置穴24が底面を有している場合には、多孔質プラグ50はその底面に突き当たってしまうため、製造誤差を吸収することができない。
【0029】
更にまた、プラグ配置穴24の内周面の仰角α及び多孔質プラグ50の外周面の仰角βは、一致していることが好ましく、55°以上85°以下であることが好ましい。こうすれば、プラグ配置穴24の内周面と多孔質プラグ50の外周面との間に接着層60を設ける際、接着剤70が均一に広がりやすい。そのため、接着層60に気泡(ウエハWをプラズマで処理する際に放電が発生する大きさの気泡)が生じないかほとんど生じない。したがって、多孔質プラグ50の周辺(接着層60)での放電を防止する効果が高まる。
【0030】
そして、接着層60は、気泡を有さないことが好ましいが、気泡を有する場合にはその気泡は上下方向の最大長さが0.2mm以下であることが好ましい(つまり、上下方向の最大長さが0.2mmを超える気泡を有さないことが好ましい)。こうすれば、多孔質プラグ50の周辺(接着層60)での放電を防止する効果が高まる。例えばガス供給路に流すガスがヘリウムの場合、プラズマ発生時にヘリウムが電離するのに伴って生じた電子が加速して別のヘリウムに衝突することにより放電(グロー放電)が起きるが、気泡の上下方向の最大長さが0.2mm以下であれば、その気泡内では電子は十分加速することはできないため放電を抑制することができる。
【0031】
そしてまた、多孔質プラグ50の外周面とプラグ配置穴24の内周面とを接着剤70を介して合わせることで、セラミックプレート20の上面(基準面21c)の高さと多孔質プラグ50の上面の高さを比較的容易に一致させることができる。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0033】
上述した実施形態では、上下方向のガスの流れを許容するプラグとして、多孔質プラグ50を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、こうしたプラグとして、緻密質プラグで内部に上下方向のガスの流れを許容する流路(例えば螺旋状の流路)を有するものを用いてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、多孔質プラグ50の下面50bの高さは、セラミックプレート20の下面(プラグ配置穴24の下部開口)の高さと一致していてもよいが、セラミックプレート20の下面の高さと比べて高くてもよいし、低くてもよい。いずれの場合においても、多孔質プラグ50の上面50aの高さはセラミックプレート20の上面(基準面21c)の高さと一致していることが好ましい。
【0035】
上述した実施形態では、ガス穴34の上方に大径部34aを設けたが、特にこれに限定されない。例えば、ガス穴34はストレート形状の穴であって、その穴径がプラグ配置穴24の下部開口の径より大きくなるようにしてもよい。その場合でも、金属接合層40の貫通穴42及びガス穴34の上部は、多孔質プラグ50の進入を許容する空間となる。
【0036】
上述した実施形態では、ベースプレート30に、ガス供給路を構成するガス穴34を設けたが、特にこれに限定されない。例えば、図5に示す半導体製造装置用部材110のように、ベースプレート30に、平面視でベースプレート30と同心円のリング部64aと、ベースプレート30の裏面からリング部64aへガスを導入する導入部64bと、リング部64aから各多孔質プラグ50へガスを分配する分配部64cとを設けてもよい。図5では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。導入部64bの数は、分配部64cの数よりも少なく、例えば1本としてもよい。こうすれば、ベースプレート30に繋ぐガス配管の数を多孔質プラグ50の数よりも少なくすることができる。
【0037】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に内蔵される電極22として、静電電極を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、電極22に代えて又は加えて、セラミックプレート20にヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよいし、RF電極を内蔵してもよい。
【0038】
上述した実施形態では、セラミックプレート20とベースプレート30とを金属接合層40で接合したが、金属接合層40の代わりに樹脂接着層を用いてもよい。
【実施例
【0039】
[実験例1]
上述した半導体製造装置用部材10を模擬した可視化サンプルを作製した。具体的には、セラミックプレート20及びベースプレート30を透明なアクリル樹脂で作製し、両プレート20,30を接着した。多孔質プラグ50としては、気孔率が30%のアルミナ多孔質体を用いた。プラグ配置穴24の内周面及び多孔質プラグ50の外周面の仰角α、βは、75°とした。接着剤70としては、粘度が40,000cPのシリコーン接着剤を用いた。多孔質プラグ50の外周面の周方向に沿って少なくとも1周、接着剤70を塗布した後、その多孔質プラグ50をプラグ配置穴24に挿入した。このとき、接着剤70が多孔質プラグ50の外周面及びプラグ配置穴24の内周面に沿って広がるように、多孔質プラグ50を回したり上下に動かしたりした。その後、接着剤70を硬化させることにより、可視化サンプルを得た。この可視化サンプルの接着層60を目視で観察したところ、気泡はみつからなかった。この可視化サンプルに高周波電圧を印加させたところ、多孔質プラグ50の周辺(接着層60)での放電は生じなかった。
【0040】
[実験例2]
多孔質プラグ50の外周面及びプラグ配置穴24の内周面の仰角を85°とした以外は、実験例1と同様にして可視化サンプルを作製した。この可視化サンプルの接着層60を目視で観察したところ、気泡はみつからなかった。この可視化サンプルに高周波電圧を印加させたところ、多孔質プラグ50の周辺(接着層60)での放電は生じなかった。
【0041】
[実験例3]
多孔質プラグ50の外周面及びプラグ配置穴24の内周面の仰角を65°とした以外は、実験例1と同様にして可視化サンプルを作製した。この可視化サンプルの接着層60を目視で観察したところ、気泡はみつからなかった。この可視化サンプルに高周波電圧を印加させたところ、多孔質プラグ50の周辺(接着層60)での放電は生じなかった。
【0042】
[実験例4]
多孔質プラグ50の外周面及びプラグ配置穴24の内周面の仰角を55°とした以外は、実験例1と同様にして可視化サンプルを作製した。この可視化サンプルの接着層60を目視で観察したところ、いくつかの気泡が存在していた。これらの気泡を詳細に調べたところ、上下方向の最大長さが0.2mmを超える気泡はみつからなかった。この可視化サンプルに高周波電圧を印加させたところ、多孔質プラグ50の周辺(接着層60)での放電は生じなかった。そのため、ウエハWをプラズマで処理する際に放電が発生する大きさの気泡ではないと判断した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、半導体製造装置に用いられる部材、例えばセラミックヒータ、静電チャックヒータ、静電チャックなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 半導体製造装置用部材、20 セラミックプレート、21 ウエハ載置面、21a シールバンド、21b 円形小突起、21c 基準面、22 電極、24 プラグ配置穴、30 ベースプレート、32 冷媒流路、34 ガス穴、34a 大径部、40 金属接合層、42 貫通穴、50 多孔質プラグ、50a 上面、50b 下面、60 接着層、70 接着剤、90 金属接合材、92 貫通穴、94 接合体。
【要約】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、プラグ配置穴24と、多孔質プラグ50と、接着層60とを備える。セラミックプレート20は、上面にウエハ載置面21を有する。プラグ配置穴24は、セラミックプレート20を上下方向に貫通し、上部開口の面積が下部開口の面積よりも大きい円錐台空間を有する。多孔質プラグ50は、プラグ配置穴24に配置され、上面の面積が下面の面積よりも大きい円錐台形状の部材である。接着層60は、プラグ配置穴24の内周面と多孔質プラグ50の外周面との間に設けられている。
図1
図2
図3
図4
図5