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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】吸引具の霧化ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/167 20200101AFI20240925BHJP
   A24F 40/70 20200101ALI20240925BHJP
   A24B 15/28 20060101ALI20240925BHJP
   A24B 15/24 20060101ALI20240925BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20240925BHJP
【FI】
A24B15/167
A24F40/70
A24B15/28
A24B15/24
A24F40/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023550773
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035600
(87)【国際公開番号】W WO2023053185
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 亮祐
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063775(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/211332(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111329104(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/00 - 15/42
A24F 40/10; 40/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル液を収容する液体収容部と、前記液体収容部から導入された前記エアロゾル液を霧化してエアロゾルを発生させる電気的な負荷と、を有する、吸引具の霧化ユニットの製造方法であって、
アルカリ処理が施されたたばこ材料を加熱することで、当該たばこ材料から香味成分を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された後のたばこ材料であるたばこ残渣をペーハーが7.0以下の酸性の洗浄液で洗浄して当該たばこ残渣のペーハーを8.0未満にするとともに、この洗浄後のたばこ残渣を固めて所定の形状に成形して成形体を製造する成形工程と、
前記エアロゾル液と、前記成形工程で製造された前記成形体と、を前記液体収容部に収容する組立工程と、を含む、吸引具の霧化ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記成形工程は、前記成形体の全表面を、ポリビニルアルコール、かんてん、ゼラチン、キトサン、及び、アルギン酸の中から選択された少なくとも1つの物質からなる水溶性ポリマーを含むコーティング材でコーティングすることを含む、請求項1に記載の吸引具の霧化ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記抽出工程で抽出された前記香味成分を溶媒に添加することで、たばこ材料の抽出液を製造する抽出液製造工程をさらに含み、
前記組立工程で前記液体収容部に収容される前記エアロゾル液は、前記抽出液製造工程で製造された前記抽出液を含む、請求項1又は2に記載の吸引具の霧化ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記抽出工程で抽出された前記香味成分を溶媒に添加することで、たばこ材料の抽出液を製造する抽出液製造工程をさらに含み、
前記成形工程は、前記抽出液製造工程で製造された前記抽出液の一部を前記成形体に添加することを含み、
前記組立工程で前記液体収容部に収容される前記エアロゾル液は、前記抽出液製造工程で製造された前記抽出液の残部の少なくとも一部を含む、請求項1又は2に記載の吸引具の霧化ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記抽出工程で抽出された前記香味成分を溶媒に添加することで、たばこ材料の抽出液を製造する抽出液製造工程をさらに含み、
前記成形工程は、前記抽出液製造工程で製造された前記抽出液の全部を前記成形体に添加することを含む、請求項1又は2に記載の吸引具の霧化ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引具の霧化ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非燃焼加熱型の吸引具として、エアロゾル液を収容する液体収容部と、液体収容部から導入されたエアロゾル液を霧化してエアロゾルを発生させる電気的な負荷と、を有し、液体収容部のエアロゾル液の内部に、たばこ材料の粉体が分散されて配置されたことを特徴とする、吸引具の霧化ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような霧化ユニットによれば、たばこ材料の香味成分を液体収容部のエアロゾル液に溶出させることができる。これにより、ユーザはたばこ材料の香味を味わうことができる。
【0003】
なお、他の先行技術文献として、特許文献2や特許文献3が挙げられる。特許文献2には、非燃焼加熱型の吸引具の基本的な構成態様が開示されている。特許文献3には、たばこ材料から香味成分を抽出する技術が開示されており、具体的には、アルカリ処理が施されたたばこ材料を加熱することで、たばこ材料から香味成分を抽出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/211332号公報
【文献】特開2020-141705号公報
【文献】国際公開第2016/063775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に例示されるような従来の吸引具の霧化ユニットの場合、液体収容部のエアロゾル液の内部に分散されているたばこ材料が、電気的な負荷に付着するおそれがある。この場合、電気的な負荷に焦げが発生するおそれがある。
【0006】
また、上述した従来の吸引具の霧化ユニットの場合、液体収容部のエアロゾル液の内部に分散されているたばこ材料から、水溶性ポリフェノール類や多糖類等のような、「電気的な負荷に付着した場合に、電気的な負荷に焦げを発生させるような成分(これ以降、「焦げ成分」と称する場合がある)」が、エアロゾル液に多量に溶出するおそれがある。この場合においても、電気的な負荷に焦げが発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、吸引具の霧化ユニットの電気的な負荷に焦げが発生することを抑制することができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る吸引具の霧化ユニットの製造方法は、エアロゾル液を収容する液体収容部と、前記液体収容部から導入された前記エアロゾル液を霧化してエアロゾルを発生させる電気的な負荷と、を有する、吸引具の霧化ユニットの製造方法であって、アルカリ処理が施されたたばこ材料を加熱することで、当該たばこ材料から香味成分を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出された後のたばこ材料であるたばこ残渣をペーハーが7.0以下の酸性の洗浄液で洗浄して当該たばこ残渣のペーハーを8.0未満にするとともに、この洗浄後のたばこ残渣を固めて所定の形状に成形して成形体を製造する成形工程と、前記エアロゾル液と、前記成形工程で製造された前記成形体と、を前記液体収容部に収容する組立工程と、を含む。
【0009】
この態様によれば、液体収容部のエアロゾル液の内部に、たばこ残渣が固められて所定の形状に成形された成形体が配置されており、成形体と電気的な負荷とが物理的に分離されているので、たばこ残渣が電気的な負荷に付着することを抑制することができる。これにより、電気的な負荷に焦げが発生することを抑制することができる。
【0010】
さらに、この態様によれば、成形工程において、たばこ残渣をペーハーが7.0以下の酸性の洗浄液で洗浄してたばこ残渣のペーハーを8.0未満にするとともに、この洗浄後のたばこ残渣を固めて所定の形状に成形して成形体を製造しているので、このような洗浄を行わずに成形体を製造する場合に比較して、成形体に含まれる焦げ成分を低減させることができる。これにより、液体収容部に収容された成形体からエアロゾル液に焦げ成分が多量に溶出することを抑制することができる。この結果、吸引具の霧化ユニットの電気的な負荷に焦げが発生することを効果的に抑制することができる。
【0011】
(態様2)
上記の態様1において、前記成形工程は、前記成形体の全表面を、ポリビニルアルコール、かんてん、ゼラチン、キトサン、及び、アルギン酸の中から選択された少なくとも1つの物質からなる水溶性ポリマーを含むコーティング材でコーティングすることを含んでいてもよい。
【0012】
ポリビニルアルコール、かんてん、ゼラチン、キトサン、及び、アルギン酸の中から選択された少なくとも1つの物質からなる水溶性ポリマーは、相対的に分子量の小さい物質(低分子量物質)がこの水溶性ポリマーの結合隙間を通過することを許容しつつ、相対的に分子量の大きい物質(高分子量物質)が結合隙間を通過することは抑制する性質を有している。したがって、この態様によれば、このような水溶性ポリマーを材質とするコーティング材で成形体の全表面がコーティングされているので、成形体のたばこ材料に含まれる香味成分(これは、低分子量物質である)がエアロゾル液に溶出することは許容しつつ、焦げ成分(これは、高分子量物質である)がエアロゾル液に溶出することは抑制することができる。
【0013】
また、成形体のたばこ材料に含まれる香味成分と焦げ成分とを比較した場合、香味成分は上述した水溶性ポリマーに溶解することができるが、焦げ成分は水溶性ポリマーへの溶解が困難である。したがって、たばこ材料の香味成分は、水溶性ポリマーに溶解することができ、その後、エアロゾル液に溶出することができる。一方、焦げ成分は、水溶性ポリマーに溶解することが困難であるので、エアロゾル液に溶出することが抑制される。この観点においても、この態様によれば、香味成分がエアロゾル液に溶出することは許容しつつ、焦げ成分がエアロゾル液に溶出することは抑制することができる。
【0014】
(態様3)
上記の態様1又は2は、前記抽出工程で抽出された前記香味成分を溶媒に添加することで、たばこ材料の抽出液を製造する抽出液製造工程をさらに含み、前記組立工程で前記液体収容部に収容される前記エアロゾル液は、前記抽出液製造工程で製造された前記抽出液を含んでいてもよい。
【0015】
(態様4)
上記の態様1又は2は、前記抽出工程で抽出された前記香味成分を溶媒に添加することで、たばこ材料の抽出液を製造する抽出液製造工程をさらに含み、前記成形工程は、前記抽出液製造工程で製造された前記抽出液の一部を前記成形体に添加することを含み、前記組立工程で前記液体収容部に収容される前記エアロゾル液は、前記抽出液製造工程で製造された前記抽出液の残部の少なくとも一部を含んでいてもよい。
【0016】
(態様5)
上記の態様1又は2は、前記抽出工程で抽出された前記香味成分を溶媒に添加することで、たばこ材料の抽出液を製造する抽出液製造工程をさらに含み、前記成形工程は、前記抽出液製造工程で製造された前記抽出液の全部を前記成形体に添加することを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様によれば、吸引具の霧化ユニットの電気的な負荷に焦げが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る吸引具の外観を模式的に示す斜視図である。
図2】実施形態に係る吸引具の霧化ユニットの主要部を示す模式的断面図である。
図3図2のA1-A1線断面図である
図4】実施形態に係るたばこ消費材の模式的な斜視図である。
図5図4のたばこ消費材をX-Y平面で切断した模式的断面図である。
図6図4のたばこ消費材をY-Z平面で切断した模式的断面図である。
図7】実施形態に係る吸引具の霧化ユニットの製造方法を説明するためのフロー図である。
図8】実施形態の変形例1に係る吸引具の霧化ユニットの製造方法を説明するためのフロー図である。
図9】実施形態の変形例2に係る吸引具の霧化ユニットの製造方法を説明するためのフロー図である。
図10】実施形態の変形例3に係るたばこ消費材の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る吸引具10の霧化ユニット12の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。具体的には、最初に、本実施形態に係る製造方法によって製造される霧化ユニット12と、この霧化ユニット12を備える吸引具10の構成について説明し、次いで、本実施形態に係る製造方法について説明する。なお、本願の図面は、特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、図面には、必要に応じて、X-Y-Zの直交座標が図示されている。
【0020】
図1は、本実施形態に係る吸引具10の外観を模式的に示す斜視図である。本実施形態に係る吸引具10は、非燃焼加熱型の吸引具であり、具体的には、非燃焼加熱型の電子たばこである。
【0021】
本実施形態に係る吸引具10は、一例として、吸引具10の中心軸線CLの方向に延在している。具体的には、吸引具10は、一例として、「長手方向(中心軸線CLの方向)」と、長手方向に直交する「幅方向」と、長手方向及び幅方向に直交する「厚み方向」と、を有する外観形状を呈している。吸引具10の長手方向、幅方向、及び、厚み方向の寸法は、この順に小さくなっている。なお、本実施形態において、X-Y-Zの直交座標のうち、Z軸の方向(Z方向又は-Z方向)は長手方向に相当し、X軸の方向(X方向又は-X方向)は幅方向に相当し、Y軸の方向(Y方向又は-Y方向)は厚み方向に相当する。
【0022】
吸引具10は、電源ユニット11と、霧化ユニット12とを有している。電源ユニット11は、霧化ユニット12に着脱自在に接続されている。電源ユニット11の内部には、電源としてのバッテリや、制御装置等が配置されている。霧化ユニット12が電源ユニット11に接続されると、電源ユニット11の電源と、霧化ユニット12の後述する負荷40とが電気的に接続される。
【0023】
霧化ユニット12には、エア(すなわち、空気)を排出するための排出口13が設けられている。エアロゾルを含むエアは、この排出口13から排出される。吸引具10の使用時において、吸引具10のユーザは、この排出口13から排出されたエアを吸い込むことができる。
【0024】
電源ユニット11には、排出口13を通じたユーザの吸引により生じた吸引具10の内部の圧力変化の値を出力するセンサが配置されている。ユーザによるエアの吸引が開始すると、このエアの吸引開始をセンサが感知して、制御装置に伝え、制御装置が後述する霧化ユニット12の負荷40への通電を開始させる。また、ユーザによるエアの吸引が終了すると、このエアの吸引終了をセンサが感知して、制御装置に伝え、制御装置が負荷40への通電を終了させる。
【0025】
なお、電源ユニット11には、ユーザの操作によって、エアの吸引開始要求、及び、エアの吸引終了要求を制御装置に伝えるための操作スイッチが配置されていてもよい。この場合、ユーザが操作スイッチを操作することで、エアの吸引開始要求や吸引終了要求を制御装置に伝えることができる。このエアの吸引開始要求や吸引終了要求を受けた制御装置は、負荷40への通電開始や通電終了を行う。
【0026】
なお、上述したような電源ユニット11の構成は、例えば、特許文献2に例示されるような公知の吸引具の電源ユニットと同様であるので、これ以上詳細な説明は省略する。
【0027】
図2は、霧化ユニット12の主要部を示す模式的断面図である。具体的には図2は、霧化ユニット12の主要部を、中心軸線CLを含む平面で切断した断面を模式的に図示している。図3は、図2のA1-A1線断面(すなわち、中心軸線CLを法線とする切断面で切断した断面)を模式的に示す図である。図2及び図3を参照しつつ、霧化ユニット12について説明する。
【0028】
霧化ユニット12は、長手方向(中心軸線CLの方向)に延在する複数の壁部(壁部70a~壁部70g)を備えるとともに、幅方向に延在する複数の壁部(壁部71a~壁部71c)を備えている。また、霧化ユニット12は、エア通路20と、ウィック30と、電気的な負荷40と、液体収容部50とを備えている。液体収容部50の内部には、たばこ消費材60が配置されている。
【0029】
エア通路20は、ユーザによるエアの吸引時(すなわち、エアロゾルの吸引時)に、エア(Air)が通過するための通路である。本実施形態に係るエア通路20は、上流通路部と、負荷通路部22と、下流通路部23とを備えている。本実施形態に係る上流通路部は、一例として、複数の上流通路部、具体的には、上流通路部21a(「第1の上流通路部」)、及び、上流通路部21b(「第2の上流通路部」)を備えている。
【0030】
上流通路部21a,21bは、負荷通路部22よりも上流側(エア流動方向で上流側)に配置されている。上流通路部21a,21bの下流側端部は、負荷通路部22に連通している。負荷通路部22は、負荷40が内部に配置された通路部である。下流通路部23は、負荷通路部22よりも下流側(エア流動方向で下流側)に配置された通路部である。下流通路部23の上流側端部は負荷通路部22に連通している。また、下流通路部23の下流側端部は、前述した排出口13に連通している。下流通路部23を通過したエアは、排出口13から排出される。
【0031】
具体的には、本実施形態に係る上流通路部21aは、壁部70aと壁部70bと壁部70eと壁部70fと壁部71aと壁部71bとによって囲まれた領域に設けられている。また、上流通路部21bは、壁部70cと壁部70dと壁部70eと壁部70fと壁部71aと壁部71bとによって囲まれた領域に設けられている。負荷通路部22は、壁部70aと壁部70dと壁部70eと壁部70fと壁部71bと壁部71cとによって囲まれた領域に設けられている。下流通路部23は、筒状の壁部70gによって囲まれた領域に設けられている。
【0032】
壁部71aには、孔72a及び孔72bが設けられている。エアは、孔72aから上流通路部21aに流入し、孔72bから上流通路部21bに流入する。また、壁部71bには、孔72c及び孔72dが設けられている。上流通路部21aを通過したエアは、孔72cから負荷通路部22に流入し、上流通路部21bを通過したエアは、孔72dから負荷通路部22に流入する。
【0033】
本実施形態において、上流通路部21a,21bにおけるエアの流動方向は、下流通路部23におけるエアの流動方向の反対方向である。具体的には、本実施形態において、上流通路部21a,21bにおけるエアの流動方向は、-Z方向であり、下流通路部23におけるエアの流動方向は、Z方向である。
【0034】
また、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る上流通路部21a及び上流通路部21bは、上流通路部21aと上流通路部21bとによって液体収容部50を挟持するように、液体収容部50に隣接して配置されている。
【0035】
具体的には、本実施形態に係る上流通路部21aは、図3に示すように、中心軸線CLを法線とする切断面で切断した断面視で、液体収容部50を挟んで一方の側(-X方向の側)に配置されている。一方、上流通路部21bは、この断面視で、液体収容部50を挟んで他方の側(X方向の側)に配置されている。換言すると、上流通路部21aは、吸引具10の幅方向で、液体収容部50の一方の側に配置され、上流通路部21bは、吸引具10の幅方向で、液体収容部50の他方の側に配置されている。
【0036】
ウィック30は、液体収容部50の抽出液を負荷通路部22の負荷40に導入するための部材である。このような機能を有するものであれば、ウィック30の具体的な構成は特に限定されるものではないが、本実施形態に係るウィック30は、一例として、毛管現象を利用して、液体収容部50の抽出液を負荷40に導入している。
【0037】
負荷40は、液体収容部50の抽出液が導入されるとともに、この導入された抽出液を霧化してエアロゾルを発生させるための電気的な負荷である。負荷40の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、ヒータのような発熱素子や、超音波発生器のような素子を用いることができる。本実施形態では、負荷40の一例として、ヒータを用いている。このヒータとしては、発熱抵抗体(すなわち、電熱線)や、セラミックヒータ、誘電加熱式ヒータ等を用いることができる。本実施形態では、このヒータの一例として、発熱抵抗体を用いている。また、本実施形態において、負荷40としてのヒータは、コイル形状を有している。すなわち、本実施形態に係る負荷40は、いわゆるコイルヒータである。このコイルヒータは、ウィック30に巻き付けられている。
【0038】
負荷40は、前述した電源ユニット11の電源や制御装置と電気的に接続されており、電源からの電気が負荷40に供給されることで発熱する(すなわち、通電時に発熱する)。また、負荷40の動作は、制御装置によって制御されている。負荷40は、ウィック30を介して負荷40に導入された液体収容部50の抽出液を加熱することで霧化して、エアロゾルを発生させる。
【0039】
なお、このウィック30や負荷40の構成は、例えば特許文献2等に例示されるような公知の吸引具に用いられているウィックや負荷と同様であるので、これ以上詳細な説明は省略する。
【0040】
液体収容部50は、エアロゾル液Leを収容するための部位である。本実施形態に係る液体収容部50は、壁部70bと壁部70cと壁部70eと壁部70fと壁部71aと壁部71bとによって囲まれた領域に設けられている。
【0041】
また、本実施形態において、前述した下流通路部23は、一例として、液体収容部50を中心軸線CLの方向に貫通するように設けられている。但し、この構成に限定されるものではなく、例えば下流通路部23は、吸引具10の厚み方向(Y軸の方向)で液体収容部50に隣接するように配置されていてもよい。
【0042】
たばこ消費材60は、少なくとも吸引具10の使用時において、液体収容部50のエアロゾル液Leの内部に配置されている。本実施形態に係るたばこ消費材60は、液体収容部50のエアロゾル液Leの内部に2個配置されている。但し、たばこ消費材60の個数は、これに限定されるものではなく、1個でもよく、3個以上であってもよい。
【0043】
詳細は後述するが、たばこ消費材60は、たばこ材料を含んでいる。このたばこ消費材60に含まれるたばこ材料の香味成分は、液体収容部50のエアロゾル液Leに溶出する。
【0044】
吸引具10を用いた吸引は以下のように行われる。まず、ユーザがエアの吸引を開始した場合、エアはエア通路20の上流通路部21a,21bを通過して、負荷通路部22に流入する。負荷通路部22に流入したエアには、負荷40において発生したエアロゾルが付加される。このエアロゾルには、たばこ消費材60に含まれるたばこ材料から溶出した香味成分が含まれている。この香味成分を含むエアロゾルが付加されたエアは、下流通路部23を通過して排出口13から排出されて、ユーザに吸引される。
【0045】
図4は、たばこ消費材60の模式的な斜視図である。本実施形態に係るたばこ消費材60は、一例として、所定方向に延在するシート形状を有している。
【0046】
たばこ消費材60の全長(L1)、幅(L2)、及び、厚み(L3)の具体的な値は、特に限定されるものではないが、数値の一例を挙げると、以下のとおりである。すなわち、たばこ消費材60の全長(L1)として、例えば5mm以上50mm以下の範囲から選択された値を用いることができる。たばこ消費材60の幅(L2)として、例えば、2mm以上10mm以下の範囲から選択された値を用いることができる。たばこ消費材60の厚み(L3)として、例えば、1mm以上5mm以下の範囲から選択された値を用いることができる。但し、これらの値は、たばこ消費材60の寸法の一例に過ぎず、たばこ消費材60の寸法は、吸引具10のサイズに応じて適宜設定すればよい。
【0047】
図5は、図4のたばこ消費材60をX-Y平面で切断した模式的断面図である。図6は、図4のたばこ消費材をY-Z平面で切断した模式的断面図である。本実施形態に係るたばこ消費材60は、成形体61と、成形体61の全表面をコーティングするコーティング材62と、を備えている。
【0048】
成形体61は、たばこ材料が固められて所定の形状に成形されたものである。なお、本実施形態では、この成形体61を構成するたばこ材料として、後述する「たばこ残渣」を用いている。
【0049】
コーティング材62は、成形体61の外表面がたばこ消費材60の表面に露出しないように、成形体61の全表面(全ての外表面)をコーティングしている。したがって、本実施形態に係るたばこ消費材60の全表面は、コーティング材62の表面によって構成されている。
【0050】
続いて、本実施形態に係る霧化ユニット12の製造方法について説明する。図7は、本実施形態に係る霧化ユニット12の製造方法を説明するためのフロー図である。本実施形態に係る製造方法は、以下に説明するような、ステップS10に係る抽出工程、ステップS20に係る成形工程、ステップS30に係る抽出液製造工程、及び、ステップS40に係る組立工程を含んでいる。
【0051】
ステップS10に係る抽出工程においては、たばこ材料から香味成分を抽出する。具体的には、本実施形態に係るステップS10では、たばこ材料にアルカリ処理を施すとともに、このアルカリ処理が施されたたばこ材料を加熱することで、たばこ材料から香味成分を抽出する。このステップS10の詳細は以下のとおりである。
【0052】
まず、本実施形態では、「たばこ材料」の一例として、たばこ葉を用いている。このたばこ葉としては、「たばこラミナ」を用いてもよく、「たばこステム」を用いてもよく、あるいは、「たばこラミナ」及び「たばこステム」の両方を用いてもよい。また、たばこ葉の具体的な種類は、特に限定されるものではなく、オリエント葉、バージニア葉等、種々の種類を用いることができる。また、ステップS10で用いられるたばこ葉は、1種類のたばこ葉であってもよく、複数種類のたばこ葉であってもよい。
【0053】
ステップS10においては、最初に、アルカリ物質を、たばこ材料に付与する(この処理が「アルカリ処理」である)。アルカリ物質としては、例えば、炭酸カリウム水溶液等の塩基性物質を用いることができる。
【0054】
次いで、アルカリ処理が施されたたばこ材料を、所定の温度(例えば80℃以上且つ150℃未満の温度)で加熱する(この処理を加熱処理と称する)。そして、この加熱処理の際に、例えば、「グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及び、水からなる群の中から選択される一つの物質、または、この群の中から選択される2種類以上の物質(以下、この群の中から選択される一つの物質又は2種類以上の物質を、「特定溶媒物質」と称する)」を、たばこ材料に接触させる。
【0055】
この加熱処理によって、たばこ材料から気相中に放出される放出成分(ここには香味成分が含まれている)を、所定の捕集溶媒に捕集させる。捕集溶媒としては、例えば、上述した特定溶媒物質を用いることができる。これにより、香味成分を含む捕集溶媒を得ることができる(すなわち、たばこ葉から香味成分を抽出することができる)。
【0056】
あるいは、ステップS10は、上述したような捕集溶媒を使用しない構成とすることもできる。具体的には、この場合、アルカリ処理が施されたたばこ材料に対して上記の加熱処理を施した後に、コンデンサー等を用いて冷却することで、たばこ材料から気相中に放出された放出成分を凝縮して、香味成分を抽出することもできる。
【0057】
ステップS10の後に、以下に説明するステップS20に係る成形工程及びステップS30に係る抽出液製造工程を実行する。
【0058】
ステップS20においては、ステップS10に係る抽出工程で抽出された後のたばこ材料である「たばこ残渣」をペーハー(pH)が7.0以下の酸性の洗浄液で洗浄することで、たばこ残渣のペーハー(pH)を8.0未満にする。次いで、この洗浄後のたばこ残渣を固めて所定形状(本実施形態では、一例としてシート形状)に成形することで、たばこ消費材60としての成形体61を製造する。なお、たばこ残渣をシート形状に成形する際には、例えば、抄造加工、鋳造加工、圧延加工等を用いて、たばこ残渣をシート状にすればよい。
【0059】
ステップS10に係る抽出工程で抽出された後のたばこ残渣は、ペーハーがアルカリ側にあることが多いと考えられる。このため、本実施形態では、ステップS20において、たばこ残渣のペーハーが中性又は酸性側になるまで、酸性の洗浄液で洗浄することで、たばこ残渣を効果的に洗浄している。
【0060】
ステップS20で用いられる酸性の洗浄液の具体的な種類は、特に限定されるものではない。この酸性の洗浄液の具体例を挙げると、無機酸(例えば、塩酸等)を含む洗浄液を用いてもよく、あるいは、有機酸(例えば、酢酸やリンゴ酸等)を含む洗浄液を用いてもよい。
【0061】
また、洗浄の具体的な手法は特に限定されるものではないが、一例を挙げると、たばこ残渣を酸性の洗浄液の中に浸漬することで、たばこ残渣を洗浄すればよい。
【0062】
また、ステップS10で抽出された後のたばこ残渣を、粉末状にしてから、洗浄液で洗浄してもよい。そして、この粉末状のたばこ残渣を成形して成形体61を製造してもよい。あるいは、ステップS10で抽出された後のたばこ残渣を洗浄液で洗浄した後に、粉末状にしてもよい。そして、この粉末状のたばこ残渣を成形して成形体61を製造してもよい。すなわち、この場合、成形体61は、粉末状のたばこ残渣(たばこ材料)が複数固められて所定形状に成形されたものになる。
【0063】
上記のようにたばこ残渣を粉末状にする場合において、粉末状のたばこ残渣の平均粒径は、特に限定されるものではないが、例えば100μm以下であってもよい。このように、粉末状のたばこ残渣の平均粒径が100μm以下であることによって、平均粒径が100μmよりも大きい場合等に比較して、成形体61の表面を滑らかな表面にすることができる。これにより、成形体61の全表面を後述するコーティング材62によって均一にコーティングすることが容易にできる。
【0064】
なお、たばこ残渣の平均粒径が小さいほど、成形体61の表面の凹凸がより小さくなる傾向があり、この結果、成形体61の全表面をコーティング材62によって均一にコーティングすることがより容易にできる。この観点において、たばこ残渣の平均粒径は、80μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
【0065】
また、本実施形態に係るステップS20では、上記のように製造された成形体61の表面を、コーティング材62でコーティングする。これにより、所定形状に固められたたばこ残渣の表面がコーティング材62で覆われた構造の「たばこ消費材60」を製造することができる。
【0066】
コーティング材62によるコーティングの具体的な手法は、特に限定されるものではなく、例えば、コーティングされる前の成形体61を、コーティング材62を含む溶液に浸漬させた後に乾燥させることで、成形体61の表面にコーティング材62をコーティングすることができる。あるいは、コーティングされる前の成形体61の表面に、コーティング材62をスプレーで塗布することで、成形体61の表面にコーティング材62をコーティングすることもできる。
【0067】
コーティング材62の材質としては、水溶性ポリマーを用いることができる。この水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、かんてん、ゼラチン、キトサン、及び、アルギン酸の中から選択された少なくとも1つの物質からなる水溶性ポリマーを用いることができる。すなわち、コーティング材62の材質は、ポリビニルアルコールであってもよく、かんてんであってもよく、ゼラチンであってもよく、キトサンであってもよく、アルギン酸であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。ステップS20の内容は以上のとおりである。
【0068】
図7のステップS30に係る抽出液製造工程においては、ステップS10で抽出された香味成分を、所定の溶媒に添加することで、「たばこ材料の抽出液」を製造する。この所定の溶媒としては、例えば、前述した特定溶媒物質を用いることができる。
【0069】
本実施形態では、このステップS30で製造された抽出液を、液体収容部50に収容されるエアロゾル液Leとして用いる。すなわち、本実施形態に係るエアロゾル液Leは、ステップS30で製造された抽出液を少なくとも含んでいる。
【0070】
なお、ステップS30においては、ステップS10で抽出された香味成分を濃縮した後に、上述した所定の溶媒に添加することで、たばこ材料の抽出液を製造してもよい。この構成によれば、たばこ材料の抽出液に含まれる香味成分の濃度を高くすることができる。
【0071】
ステップS20及びステップS30の後に、ステップS40に係る組立工程を実行する。ステップS40においては、霧化ユニット12の液体収容部50に、ステップS20で製造されたたばこ消費材60(すなわち、本実施形態では、コーティング材62によって表面がコーティングされた成形体61)を収容するとともに、ステップS30で製造された抽出液(これがエアロゾル液Leになる)を収容する。
【0072】
なお、ステップS40で液体収容部50に収容されるエアロゾル液Leは、ステップS30で製造された抽出液に所定の溶媒がさらに追加されたものを用いてもよい。この所定の溶媒としては、例えば、前述した特定溶媒物質を用いることができる。
【0073】
以上の工程で、本実施形態に係る吸引具10の霧化ユニット12は製造される。
【0074】
以上説明したような本実施形態に係る製造方法によれば、たばこ残渣を成形体61の材料として有効的に活用しつつ、吸引具10の霧化ユニット12を製造することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、液体収容部50のエアロゾル液Leの内部に、たばこ残渣が固められて所定の形状に成形された成形体61が配置されており、成形体61と電気的な負荷40とが物理的に分離されているので、たばこ残渣が負荷40に付着することを抑制することができる。これにより、負荷40に焦げが発生することを抑制することができる。
【0076】
さらに、本実施形態によれば、ステップS20に係る成形工程において、たばこ残渣をペーハーが7.0以下の酸性の洗浄液で洗浄して、たばこ残渣のペーハーを8.0未満にするとともに、この洗浄後のたばこ残渣を固めて成形体61を製造しているので、このような洗浄を行わずに成形体61を製造する場合に比較して、成形体61に含まれる焦げ成分を低減させることができる。これにより、液体収容部50に収容された成形体61からエアロゾル液Leに焦げ成分が多量に溶出することを抑制することができる。この結果、負荷40に焦げが発生することを効果的に抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、ステップS20に係る成形工程において成形体61の全表面がコーティング材62によってコーティングされているので、以下の作用効果を奏することもできる。
【0078】
まず、コーティング材62として用いられている前述の水溶性ポリマーは、相対的に分子量の小さい物質(低分子量物質)がこの水溶性ポリマーの結合隙間を通過することを許容しつつ、相対的に分子量の大きい物質(高分子量物質)がこの結合隙間を通過することは抑制する性質を有している。したがって、本実施形態によれば、このような水溶性ポリマーを材質とするコーティング材62で成形体61の全表面がコーティングされているので、成形体61のたばこ材料に含まれる香味成分(これは、低分子量物質である)がエアロゾル液Leに溶出することは許容しつつ、焦げ成分(これは、高分子量物質である)がエアロゾル液Leに溶出することは抑制することができる。
【0079】
また、成形体61のたばこ材料に含まれる香味成分と焦げ成分とを比較した場合、香味成分は上述した水溶性ポリマーに溶解することができるが、焦げ成分は水溶性ポリマーへの溶解が困難である。したがって、香味成分は、水溶性ポリマーに溶解することができ、その後、エアロゾル液Leに溶出することができる。一方、焦げ成分は、水溶性ポリマーに溶解することが困難であるので、エアロゾル液Leに溶出することが抑制される。この観点においても、本実施形態によれば、香味成分がエアロゾル液Leに溶出することは許容しつつ、焦げ成分がエアロゾル液Leに溶出することは抑制することができる。
【0080】
但し、ステップS20に係る成形工程は、上述した構成に限定されるものではない。例えば、ステップS20に係る成形工程は、成形体61の全表面をコーティング材62によってコーティングすることを含んでいない構成とすることもできる。この場合、ステップS40に係る組立工程において、液体収容部50のエアロゾル液Leの内部には、コーティング材62によってコーティングされていない成形体61(すなわち、コーティング材62を含んでいない、たばこ消費材60)が配置されることになる。この場合においても、負荷40に焦げが発生することを抑制することは可能である。
【0081】
また、上述した本実施形態に係る霧化ユニット12の製造方法は、ステップS30に係る抽出液製造工程を含んでいるが、この構成に限定されるものではない。例えば、霧化ユニット12の製造方法は、ステップS30に係る抽出液製造工程を含んでいない構成とすることもできる。この場合、例えば、ステップS40に係る組立工程で液体収容部50に収容されるエアロゾル液Leとしては、香味成分を予め含んでいない所定の溶媒を用いることができる。この所定の溶媒としては、例えば、前述した特定溶媒物質を用いることができる。
【0082】
但し、本実施形態のように、霧化ユニット12の製造方法がステップS30に係る抽出液製造工程を含むことで、エアロゾル液Leは、成形体61からエアロゾル液Leに溶出した香味成分のみならず、ステップS30で製造された抽出液に含まれる香味成分も含むことができる。これにより、例えば、液体収容部50のエアロゾル液LeがステップS30で製造された抽出液を全く含まない場合に比較して、エアロゾル液Leに含まれる香味成分の濃度を高くすることができる。これにより、たばこ材料の香味を十分に味わうことができるようになる。
【0083】
(変形例1)
図8は、実施形態の変形例1に係る吸引具10の霧化ユニット12の製造方法を説明するためのフロー図である。本変形例に係る製造方法は、主として、ステップS20に代えてステップS20Aを含んでいる点において、図7で説明した実施形態に係る製造方法と異なっている。
【0084】
ステップS20Aに係る成形工程は、ステップS30に係る抽出液製造工程で製造された抽出液の一部を成形体61に添加することを含んでいる点において、ステップS20に係る成形工程と異なっている。
【0085】
すなわち、本変形例に係るステップS20Aにおいては、たばこ残渣を酸性の洗浄液で洗浄した後に固めて所定形状に成形することで成形体61を製造するとともに、この成形体61に、ステップS30で製造された抽出液の一部を添加する。なお、この抽出液の一部が添加された成形体61の全表面をコーティング材62でコーティングしてもよい。
【0086】
本変形例に係るステップS40において液体収容部50に収容されるエアロゾル液Leは、ステップS30で製造された抽出液の残部(成形体61に添加された残りの部分)の少なくとも一部を含んでいる。すなわち、本変形例に係るステップS40において、液体収容部50に収容されるエアロゾル液Leは、ステップS30で製造された抽出液の残部の全部を含んで入れもよく、ステップS30で製造された抽出液の残部の一部を含んでいてもよい。
【0087】
本変形例においても、前述した実施形態と同様に、負荷40に焦げが発生することを抑制することができる。
【0088】
(変形例2)
図9は、実施形態の変形例2に係る吸引具10の霧化ユニット12の製造方法を説明するためのフロー図である。本変形例に係る製造方法は、主として、ステップS20Aに代えてステップS20Bを含んでいる点において、図8で説明した変形例1に係る製造方法と異なっている。
【0089】
ステップS20Bに係る成形工程は、ステップS30に係る抽出液製造工程で製造された抽出液の全部を成形体61に添加することを含んでいる点において、ステップS20Aに係る成形工程と異なっている。
【0090】
すなわち、本変形例に係るステップS20Bにおいては、たばこ残渣を酸性の洗浄液で洗浄した後に固めて所定形状に成形することで成形体61を製造するとともに、この成形体61に、ステップS30で製造された抽出液の全部を添加する。なお、この抽出液が添加された成形体61の全表面を、コーティング材62でコーティングしてもよい。
【0091】
本変形例に係るステップS40において、液体収容部50に収容されるエアロゾル液Leとしては、香味成分を予め含んでいない所定の溶媒が用いられる。この所定の溶媒としては、例えば、前述した特定溶媒物質を用いることができる。
【0092】
本変形例においても、前述した実施形態と同様に、負荷40に焦げが発生することを抑制することができる。
【0093】
(変形例3)
上述した実施形態や変形例において、たばこ消費材60はシート形状を有しているが、たばこ消費材60の形状はこれに限定されるものではない。図10は、実施形態の変形例3に係るたばこ消費材60Aの模式的な斜視図である。例えば、たばこ消費材60Aは、ペレット形状(あるいは、錠剤形状)を有していてもよい。具体的には、たばこ消費材60Aは、ペレット形状の成形体61の全表面がコーティング材62によってコーティングされた構成を有している。
【0094】
なお、図10に例示するたばこ消費材60Aは、断面が円形であるが、この構成に限定されるものではない。たばこ消費材60Aの断面形状は、楕円形でもよく、角形(三角形、四角形、五角形等のn角形(nは3以上の数))でもよい。
【0095】
たばこ消費材60Aの具体的な寸法は、特に限定されるものではないが、一例を挙げると、以下のとおりである。たばこ消費材60Aの全長(L1)として、例えば1mm以上10mm以下の範囲から選択された値を用いることができる。たばこ消費材60Aの幅方向の最大寸法(D1)として、例えば1mm以上10mm以下の範囲から選択された値を用いることができる。但し、これらの値はたばこ消費材60Aの寸法の一例に過ぎず、たばこ消費材60Aの寸法は、吸引具10のサイズに応じて適宜設定すればよい。
【0096】
本変形例においても、前述した実施形態と同様に、負荷40に焦げが発生することを抑制することができる。
【0097】
<実施例>
たばこ残渣を洗浄液で洗浄してから成形体61を製造することの作用効果について、実験を行った。以下、この実験について説明する。
【0098】
(実験で使用したたばこ残渣)
まず、実験で使用した「たばこ残渣」は、以下のものである。たばこ材料に対して、乾燥重量で20(wt%)の炭酸カリウム(すなわち、アルカリ物質)を添加した(これがアルカリ処理に相当する)。次いで、この炭酸カリウムが添加されたたばこ材料に対して、水分濃度が30(%)、温度が100(℃)の条件下で加熱処理を行った。そして、この加熱処理後のたばこ残渣に対して、加熱処理前のたばこ材料の重量に対して15倍の量の水を加えて、10(min)間、水に浸漬させた後に、遠心脱水機で脱水した。次いで、この脱水後のたばこ残渣を乾燥機で乾燥した。この乾燥後のたばこ残渣を、後述するサンプルSA1~SA7のたばこ残渣として用いた。
【0099】
(洗浄方法)
後述するサンプルSA2、SA3、SA4、SA6、SA7は、洗浄前のたばこ残渣の重量に対して30倍の量の洗浄液で洗浄を行った。洗浄液としてペーハーが7.0以下の酸性の洗浄液を用いる場合には、塩酸を用いた。洗浄液として中性の洗浄液を用いる場合は、水を用いた。また、サンプルSA2、SA3、SA4は、洗浄を2回行った。
【0100】
(炭化物生成量の測定方法)
サンプルの重量に対して5倍の重量の「液体(プロピレングリコール:47.5(wt%)、グリセロール:47.5(wt%)、水:5(wt%))」を準備した。次いで、この液体をサンプルに加えて、60(℃)で、168時間(hr)、サンプルに含まれる成分を液体に抽出させた。次いで、この液体を遠心分離器にかけて、上清液を回収した。次いで、この回収された上清液を、0.45(μm)のフィルターで濾過した。
【0101】
この濾過後の液体(上清液)から、所定質量(g)の液体を取り出して、表面温度が250(℃)のアルミニウム製の容器で加熱した。次いで、この加熱後に容器に残存した炭化物の質量(mg)を測定した。そして、この炭化物の質量(mg)を濾過後の液体の質量(所定質量)で割ることで、濾過後の液体1g当たりに生成された炭化物の質量(mg)である「炭化物生成量(mg/g liq.)」を算出した。以上の手法で、各サンプルの炭化物生成量を測定した。なお、この炭化物生成量は、負荷40への焦げの発生し易さと相関を有している。すなわち、サンプルの炭化物生成量が多くなるほど、このサンプルを実際の吸引具10に適用した場合に負荷40に発生する焦げの量も多くなる。
【0102】
(実験結果)
実験結果を表1に示す。具体的には、表1は、サンプルSA1~SA7について、炭化物生成量を測定した結果を示している。サンプルSA1として、洗浄を行っていないたばこ残渣(すなわち、未洗浄のたばこ残渣)の成形体を用いた。サンプルSA2として、中性の水でたばこ残渣を洗浄して、洗浄後のたばこ残渣のペーハーが9.6になったものを成形した成形体を用いた。サンプルSA3として、酸性の洗浄液でたばこ残渣を洗浄して、洗浄後のたばこ残渣のペーハーが7.5になったものを成形した成形体を用いた。サンプルSA4として、酸性の洗浄液でたばこ残渣を洗浄して、洗浄後のたばこ残渣のペーハーが4.1になったものを成形した成形体を用いた。
【0103】
サンプルSA5として、未洗浄のたばこ残渣の成形体の全表面をポリビニルアルコール(PVA)でコーティングしたものを用いた。サンプルSA6として、中性の水で洗浄してペーハーが9.6になったたばこ残渣の成形体の全表面をPVAでコーティングしたものを用いた。サンプルSA7として、酸性の洗浄液で洗浄してペーハーが4.1になったたばこ残渣の成形体の全表面をPVAでコーティングしたものを用いた。
【0104】
なお、サンプルSA1~SA7のうち、SA3、SA4及びSA7が実施例に相当し、SA1、SA2、SA5及びSA6が比較例に相当する。
【0105】
【表1】
【0106】
表1においてコーティングが施されていないSA1~SA4の間で比較すると、洗浄を行ったSA2~SA4は、洗浄を行っていないSA1に比較して、炭化物生成量が少ないことが分かる。また、洗浄後のたばこ残渣のペーハーが8.0未満であるSA3とSA4の炭化物生成量は、洗浄後のたばこ残渣のペーハーが9.6であるSA2に比較して、少ないことが分かる。また、SA3とSA4とを比較すると分かるように、洗浄後のたばこ残渣のペーハーが低いSA4の方がSA3に比較して、炭化物生成量が少ないことが分かる。
【0107】
また、表1において、コーティングが施されていないSA1~SA4と、コーティングが施されたSA5~SA7とを比較すると分かるように、コーティングが施されたSA5~SA7は、全体的に、SA1~SA4よりも炭化物生成量が少ないことが分かる。
【0108】
以上のことから、ペーハーが7.0以下の酸性の洗浄液で洗浄することでたばこ残渣のペーハーを8.0未満にすると、炭化物生成量が減少することが実験で確認された。また、ペーハーが7.0以下の酸性の洗浄液で洗浄してペーハーが8.0未満になったたばこ残渣の全表面をコーティングすると、炭化物生成量がより効果的に減少することが実験で確認された。
【0109】
以上の実験結果から、ペーハーが7.0以下の酸性の洗浄液で洗浄してペーハーが8.0未満になったたばこ残渣を用いて成形体61を製造することで、負荷40への焦げの発生を抑制でき、さらに、この成形体61の全表面をコーティング材62でコーティングすることで、負荷40への焦げの発生をさらに抑制できることが裏付けられた。
【0110】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態や変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0111】
10 吸引具
12 霧化ユニット
40 電気的な負荷
50 液体収容部
60 たばこ消費材
61 成形体
62 コーティング材
Le エアロゾル液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10