(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】塗布装置及び塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05C 1/04 20060101AFI20240925BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240925BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20240925BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240925BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240925BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240925BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B05C1/04
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C11/10
B05D3/00 D
B05D1/26 Z
B05D1/28
(21)【出願番号】P 2023552264
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2022006886
(87)【国際公開番号】W WO2023157285
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】信田 直美
(72)【発明者】
【氏名】内藤 勝之
(72)【発明者】
【氏名】齊田 穣
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/029861(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/181445(WO,A1)
【文献】特開2009-183914(JP,A)
【文献】特開2006-256051(JP,A)
【文献】特開2021-182618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00- 3/20
7/00-21/00
B05D1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布部材と対向可能な塗布バーと、
前記塗布バーに向けて液を供給することが可能な複数のノズルと、
複数の保持部であって、前記複数の保持部の1つは、前記複数のノズルの1つを保持し、
前記複数の保持部を構成する各保持部は、それぞれが前記複数のノズルのうちの1つを保持し、当該ノズルの前記塗布バーを基準にした位置を制御可能である、前記複数の保持部と、
前記塗布バーを基準にした前記複数のノズルのそれぞれの位置に対応する量を検出可能な検出部と、を備えた塗布装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記複数のノズルの少なくとも1つの、前記塗布バーとの接触を検出可能である、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記検出部は、抵抗検出部を含み、
前記抵抗検出部は、前記複数のノズルのそれぞれと、前記塗布バーと、の間の電気抵抗を検出可能である、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項4】
複数の端子をさらに備え、
前記複数の端子の1つは、前記複数のノズルの前記1つと電気的に接続され、
前記複数の端子の別の1つは、前記複数のノズルの別の1つと電気的に接続された、請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記検出部は、音検出部を含み、
前記音検出部は、前記複数のノズルのそれぞれから生じる音を検出可能である、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記検出部は、応力検出部を含み、
前記応力検出部は、前記複数のノズルのそれぞれに加わる応力を検出可能である、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記応力検出部は
、複数の応力検出素子を含み、
前記複数の応力検出素子の1つは、前記複数の保持部の前記1つに設けられ、
前記複数の応力検出素子の別の1つは、前記複数の保持部の別の1つに設けられた、請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記検出部は、光検出部を含み、
前記光検出部は、前記複数のノズルのそれぞれから得られる光を検出可能である、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記検出部は、撮像部を含み、
前記撮像部は、前記複数のノズルのそれぞれの像を検出可能である、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項10】
制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部で検出された前記量に基づいて、前記複数の保持部を制御して、前記複数の保持部に、前記塗布バーを基準にした前記複数のノズルのそれぞれの位置を制御させることが可能である、請求項1~9のいずれか1つに記載の塗布装置。
【請求項11】
支持部をさらに備え、
前記支持部は、前記複数の保持部を支持し、
前記支持部は、前記塗布バーを基準にした前記複数の保持部の相対的な位置を変更可能である、請求項1~10のいずれか1つに記載の塗布装置。
【請求項12】
支持部をさらに備え、
前記支持部は、前記複数の保持部を支持し、
前記支持部は、前記複数の保持部を制御して、前記複数のノズルの延びる方向を変更可能である、請求項1~10のいずれか1つに記載の塗布装置。
【請求項13】
前記被塗布部材と前記塗布バーとの間に、前記複数のノズルから供給された前記液によるメニスカスが形成可能である、請求項1~11のいずれか1つに記載の塗布装置。
【請求項14】
被塗布部材と対向可能な塗布バーを基準にした複数のノズルのそれぞれの位置に対応する量を検出し、
前記量に基づいて前記複数のノズルをそれぞれ保持する複数の保持部を制御して、前記塗布バーを基準にした前記複数のノズルのそれぞれの位置を制御して、前記塗布バーに前記複数のノズルから液を供給して前記被塗布部材に前記液を塗布する、塗布方法。
【請求項15】
前記液の前記塗布において、前記複数のノズルは、前記塗布バーと接触する、請求項14に記載の塗布方法。
【請求項16】
前記量の前記検出は、前記複数のノズルのそれぞれと、前記塗布バーと、の間の電気抵抗を検出することを含む、請求項14に記載の塗布方法。
【請求項17】
前記量の前記検出は、前記複数のノズルのそれぞれから生じる音を検出することを含む、請求項14に記載の塗布方法。
【請求項18】
前記量の前記検出は、前記複数のノズルのそれぞれに加わる応力を検出することを含む、請求項14に記載の塗布方法。
【請求項19】
前記量の前記検出は、前記複数のノズルのそれぞれから得られる光を検出することを含む、請求項14に記載の塗布方法。
【請求項20】
前記量の前記検出は、前記複数のノズルのそれぞれの像を検出することを含む、請求項14に記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布バーを用いて液を塗布する塗布装置がある。均一な塗布膜を形成できる塗布装置が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、均一な塗布膜を形成できる塗布装置及び塗布方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、塗布装置は、塗布バー、複数のノズル、複数の保持部、及び、検出部を含む。前記塗布バーは、被塗布部材と対向可能である。前記複数のノズルは、前記塗布バーに向けて液を供給することが可能である。前記複数の保持部の1つは、前記複数のノズルの1つを保持する。前記複数の保持部の1つは、前記塗布バーを基準にした前記複数のノズルの前記1つの位置を制御可能である。前記検出部は、前記塗布バーを基準にした前記複数のノズルのそれぞれの位置に対応する量を検出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的側面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る塗布方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
図2は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的側面図である。
図1及び
図2に示すように、実施形態に係る塗布装置110は、塗布バー10、複数のノズル21、複数の保持部22、及び、検出部50を含む。
【0009】
塗布バー10は、被塗布部材80と対向可能である。複数のノズル21は、塗布バー10に向けて液84を供給することが可能である。複数のノズル21から排出された液84により、被塗布部材80に塗布膜85が形成される。
【0010】
複数の保持部22の1つは、複数のノズル21の1つを保持する。複数の保持部22の1つは、塗布バー10を基準にした複数のノズル21の1つの位置を制御可能である。複数の保持部22により、複数のノズル21のそれぞれの位置が固定される。位置は、塗布バー10を基準にした位置である。
【0011】
検出部50は、塗布バー10を基準にした複数のノズル21のそれぞれの位置に対応する量を検出可能である。検出される量は、例えば、電気抵抗、音、応力、光、及び像の少なくともいずれかを含んで良い。検出される量は、複数のノズル21における塗布バー10との接触状態に関する量を含む。接触状態は、複数のノズル21のそれぞれの、塗布バー10との接触面積を含む。接触状態は、複数のノズル21のそれぞれにおける、塗布バーとの角度を含んで良い。
【0012】
実施形態においては、複数のノズル21のそれぞれの位置に対応する量の検出結果に基づいて、複数のノズル21のそれぞれの状態を、複数の保持部22により制御可能である。塗布バー10を基準にした、複数のノズル21のそれぞれの空間的な位置関係を均一にできる。これにより、均一な塗布膜85が得られる。実施形態においては、均一な塗布膜85を形成できる塗布装置を提供できる。
【0013】
実施形態において、塗布時において、複数のノズル21のそれぞれは、塗布バー10と接する。複数のノズル21から液84が供給されるときに、複数のノズル21のそれぞれは塗布バー10と接する。これにより、複数のノズル21と塗布バー10との位置関係が安定になる。これにより、塗布状態をある程度均一にできる。
【0014】
しかしながら、複数のノズル21のそれぞれが塗布バー10と接していたときでも、複数のノズル21において、塗布バー10との接触状態が異なると、塗布膜85の均一性が不十分な場合がある。
【0015】
実施形態においては、検出部50により、複数のノズルのそれぞれにおける、塗布バー10との接触状態を検出できる。例えば、検出部50は、接触または非接触の検出だけでなく、接触の面積に対応する量などを検出可能である。複数のノズルのそれぞれにおける、塗布バー10との接触状態に関する量を検出することで、より均一な塗布膜85が得られる。検出部50により、接触の角度が検出されても良い。
【0016】
例えば、複数のノズル21のそれぞれと塗布バー10との接触面積または接触角度などが変化すると、複数のノズル21のそれぞれと塗布バー10との間の電気抵抗が変化する。接触面積または接触角度などが変化すると、複数のノズル21から発生する音に変化が生じる。接触面積または接触角度などが変化すると、複数のノズル21のそれぞれが受ける応力が変化する。接触面積または接触角度などが変化すると、複数のノズル21のそれぞれからの光(例えば反射光)が変化する。接触面積または接触角度などが変化すると、複数のノズル21の形状が変化し、複数のノズル21のそれぞれの像が変化する。
【0017】
検出部50は、これらの変化を検出可能である。例えば、複数のノズル21に関するこれらの量を検出し、検出された量が、複数のノズル21で均一になるように、複数の保持部22が制御される。これにより、複数のノズル21の塗布バー10との接触状態を均一にできる。
【0018】
図1に示すように、塗布装置110は、制御部70を含んでも良い。制御部70は、検出部50で検出された上記の量に基づいて、複数の保持部22を制御する。これにより、塗布バー10を基準にした複数のノズル21のそれぞれの位置(接触状態)が適切に制御される。
【0019】
検出部50は、複数のノズル21の少なくとも1つの、塗布バー10との接触を検出可能でも良い。
【0020】
図2に示すように、被塗布部材80と塗布バー10との間に、複数のノズル21から供給された液によるメニスカス84Mが形成される。メニスカス84Mが、被塗布部材80の表面に接触する。被塗布部材80と塗布バー10との間の相対的な位置を変化させることで、被塗布部材80に液84により塗布膜85が形成される。
【0021】
図1及び
図2に示すように、この例では、塗布装置110は、第1搬送部66a及び第2搬送部66bを含む。これらの搬送部は、例えば、ローラである。これらの搬送部により、シート状の被塗布部材80が、搬送方向80Dに沿って移動する。被塗布部材80の一部に、メニスカス84Mが接触する。この例では、ロールtoロールの塗布が行われる。
【0022】
塗布バー10は1つの方向に沿って延びる。1つの方向は、例えばY軸方向である。Y軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Y軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をZ軸方向とする。
【0023】
搬送方向80Dは、Y軸方向と交差する。この例では、搬送方向80Dは、X軸方向である。Z軸方向は、例えば高さ方向に対応する。複数のノズル21は、搬送方向80Dに実質的に沿って延びて良い。複数のノズル21は、X-Z平面内において、搬送方向80Dに対して傾斜して良い。
【0024】
この例では、容器65の中に液84が蓄えられる。液84は、供給部61により、供給管25を介して、複数のノズル21に供給される。供給部61は、例えばポンプ61pである。この例では、複数のポンプ61pが設けられる。この例では、複数のポンプ61pの1は、複数の供給管25と接続される。複数の供給管25の1つは、複数のノズル21の1つと接続される。複数のポンプ61pの1つにより、複数のノズル21に液84が供給される。
【0025】
図1及び
図2に示すように、塗布装置110は、支持部24を含んでも良い。支持部24は、複数の保持部22を支持する。支持部24は、複数の保持部22を制御して、複数のノズル21の延びる方向を変更可能である、例えば、支持部24の延びる方向の角度(Z軸方向を中心とする回転方向に沿う角度)が変更可能でも良い。支持部24の延びる方向の角度を変化させることで、複数のノズル21の延びる方向を一括して変更可能でも良い。
【0026】
支持部24は、塗布バー10を基準にした複数の保持部22の相対的な位置を変更可能である。相対的な位置は、例えば、X軸方向及びZ軸方向に関する位置を含む。相対的な位置は、例えば、複数の保持部22が並ぶ方向の角度を含む。
【0027】
図1及び
図2に示すように、塗布装置110は、乾燥部68を含んで良い。乾燥部68は、ガスまたは熱などを塗布膜85に向けて供給可能である。ガスは、例えば、加熱された空気などでも良い。塗布膜85の乾燥が促進される。例えば、塗布膜85が乾燥して固体になることで、目的とする膜が得られて良い。乾燥部68は、例えば、エアノズルまたは遠赤外ランプなどを含んで良い。
【0028】
図1に例示する塗布装置110においては、検出部50は、抵抗検出部51を含む。抵抗検出部51は、複数のノズル21のそれぞれと、塗布バー10と、の間の電気抵抗を検出可能である。抵抗検出部51は、例えば、抵抗測定回路、電流測定回路または電圧測定回路を含んで良い。
【0029】
例えば、塗布装置110は、複数の端子(端子T1~T4)などを含む。複数の端子の1つは、複数のノズル21の1つと電気的に接続される。複数の端子の別の1つは、複数のノズル21の別の1つと電気的に接続される。
【0030】
抵抗検出部51は、複数の端子を介して複数のノズル21と電気的に接続される。抵抗検出部51は、塗布バー10と電気的に接続される。このような構成により、抵抗検出部51は、複数のノズル21のそれぞれと、塗布バー10と、の間の電気抵抗を検出する。
【0031】
電気抵抗が過度に高いと、非接触、または、接触状態が不十分である。電気抵抗が過度に低いと、過度な接触が生じており、例えば、複数のノズル21または塗布バー10が損傷し、安定した塗布が困難である。電気抵抗が適切な範囲であることで、複数のノズル21において適切な接触状態が均一に得られ、均一な塗布膜85が得られる。
【0032】
1つの例において、適切な電気抵抗の範囲は、10Ω以上50Ω以下である。複数のノズル21のそれぞれがこの範囲であることで、均一な塗布膜が得られる。
【0033】
図3は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
図3において、図を見やすくするために、複数の端子(端子T1~T4)、及び、それらに接続された配線が省略されている。
図3に示すように、制御部70は、複数の保持部22のそれぞれに制御信号(制御信号Sc1~Sc4など)を供給可能である。制御信号は、検出部50で検出された量(接触状態に応じた量)に基づいている。これにより、複数の保持部22に保持された複数のノズル21のそれぞれの接触状態が制御される。
【0034】
このように、制御部70は、検出部50で検出された上記の量に基づいて、複数の保持部22を制御可能である。制御部70は、複数の保持部22に、塗布バー10を基準にした複数のノズル21のそれぞれの位置(接触状態)を制御させることが可能である。
【0035】
以下、検出部の別の例について説明する。
図4は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
図4に示すように、実施形態に係る塗布装置111において、検出部50は、音検出部52を含む。音検出部52は、複数のノズル2のそれぞれから生じる音を検出可能である。音は、超音波を含んで良い。塗布装置111におけるこれ以外の構成は、塗布装置110の構成と同様で良い。
【0036】
図4に示すように、音検出部52は、例えば、複数の音検出素子(素子52a~52dなど)を含んで良い。複数の音検出素子の1つは、複数のノズル21の1つから出る音を検出する。複数の音検出素子の別の1つは、複数のノズル21の別の1つから出る音を検出する。このような構成により、複数のノズル21のそれぞれから生じる音が検出される。音の大きさ、及び、音に含まれる周波数成分などが音検出部52により、検出される。
【0037】
例えば、音に関するパラメータ(大きさ及び周波数成分など)に関して下限しきい値及び上限しきい値が定められて良い。制御部70は、検出された音としきい値とを比較可能である。比較の結果に応じた(制御信号Sc1~Sc4など)が制御部70から複数の保持部22に供給される。複数の保持部22により複数のノズル21の接触状態が制御される。均一な塗布膜85が得られる。
【0038】
図5は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
図5に示すように、実施形態に係る塗布装置112において、検出部50は、応力検出部53を含む。応力検出部53は、複数のノズル21のそれぞれに加わる応力を検出可能である。塗布装置112におけるこれ以外の構成は、塗布装置110の構成と同様で良い。
【0039】
例えば、応力検出部53は、複数の応力検出素子(素子53a~53dなど)を含んで良い。複数の応力検出素子の1つは、複数の保持部22の1つに設けられる。複数の応力検出素子の別の1つは、複数の保持部22の別の1つに設けられる。複数の応力検出素子により、複数のノズル21のそれぞれに加わる応力が検出される。
【0040】
例えば、複数の応力検出素子(素子53a~53dなど)は、複数の端子(端子T1~T4など)を介して、応力検出部53の回路部と電気的に接続される。
【0041】
例えば、応力に関して下限しきい値及び上限しきい値が定められて良い。制御部70は、検出された応力としきい値とを比較可能である。比較の結果に応じた(制御信号Sc1~Sc4など)が制御部70から複数の保持部22に供給される。複数の保持部22により複数のノズル21の接触状態が制御される。均一な塗布膜85が得られる。
【0042】
複数の応力検出素子は、例えば、圧電素子などを含んで良い。例えば、複数の保持部22は、複数のノズル21の位置を変化させるアクチュエータなどを含んでも良い。アクチュエータが複数の応力検出素子の機能を有しても良い。例えばアクチュエータに印加される駆動電圧によりアクチュエータが動作して、複数のノズル21が制御されて良い。駆動電圧は、サーボ制御されても良い。複数のノズル21における応力に応じて駆動電圧がサーボ制御されることで、複数のノズル21の接触状態が均一にできる。
【0043】
図6は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
図6に示すように、実施形態に係る塗布装置113において、検出部50は、光検出部54を含む。光検出部54は、複数のノズル21のそれぞれから得られる光を検出可能である。塗布装置113におけるこれ以外の構成は、塗布装置110の構成と同様で良い。
【0044】
例えば、光検出部54は、複数の受光素子(素子54a~54dなど)を含んでも良い。例えば光が複数のノズル21に照射される。光は、複数のノズル21で反射する。反射した光は、複数のノズル21のそれぞれの接触状態に応じている。複数のノズル21からの光を複数の受光素子で検出することで、複数のノズル21のそれぞれの接触状態を検出できる。光検出部54は、複数の発光素子を含んでも良い。複数の発光素子は、複数の受光素子に対応して設けられる。
【0045】
例えば、光に関して下限しきい値及び上限しきい値が定められて良い。制御部70は、検出された光としきい値とを比較可能である。比較の結果に応じた(制御信号Sc1~Sc4など)が制御部70から複数の保持部22に供給される。複数の保持部22により複数のノズル21の接触状態が制御される。均一な塗布膜85が得られる。
【0046】
図7は、第1実施形態に係る塗布装置を例示する模式的平面図である。
図7に示すように、実施形態に係る塗布装置114において、検出部50は、撮像部55を含む。撮像部55は、複数のノズル21のそれぞれの像を検出可能である。塗布装置113におけるこれ以外の構成は、塗布装置110の構成と同様で良い。
【0047】
複数のノズル21のそれぞれの像は、複数のノズル21のそれぞれの接触状態を含む。例えば、撮像部55は、撮像素子55aを含む。撮像素子55aは、複数のノズル21のそれぞれの像を撮像する。撮像部55は、撮像素子55aで得られた像を画像解析する。画像解析の結果により、複数のノズル21のそれぞれの接触状態に関する情報が得られる。
【0048】
画像解析により得られたパラメータ関して下限しきい値及び上限しきい値が定められて良い。制御部70は、検出された像としきい値とを比較可能である。比較の結果に応じた(制御信号Sc1~Sc4など)が制御部70から複数の保持部22に供給される。複数の保持部22により複数のノズル21の接触状態が制御される。均一な塗布膜85が得られる。
【0049】
実施形態において、複数のノズル21は、例えば、針状である。例えば、液84の排出量を高い精度で制御し易い。例えば、複数のノズル21の端部が塗布バー10に接触し易い。例えば、高い柔軟性が得易い。高い柔軟性により、例えば、複数のノズル21の損傷を抑制し易い。複数のノズル21のそれぞれの長さは、例えば10mm以上100mm以下である。複数のノズル21のそれぞれの内径は、例えば0.1mm以上2mm以下である。複数のノズル21それぞれの端部の端面と、複数のノズル21のそれぞれの延びる方向と、の間の角度は、例えば約90度(例えば75度以上105度以下)である。例えば、塗布バー10の損傷が抑制し易い。複数のノズル21は、導電性である。
【0050】
複数のノズル21のそれぞれは、例えば、ステンレス鋼製のロック基を含んで良い。供給管25は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンを含んで良い。複数のノズル21と、供給管25と、は、着脱可能なジョイントにより接続されて良い。
【0051】
塗布バー10の断面形状は、任意である。塗布バー10の断面形状は、例えば、円形、偏平円形または多角形で良い。断面形状の一部が曲線状で、他の部分が直線状でも良い。例えば、塗布バー10の、被塗布部材80と対向する面の断面形状は、曲線状で良い。塗布バー10の断面形状が円状である場合、円の半径は、例えば5mm以上50mm以下である。塗布バー10の長さは、例えば、100mm以上5000mm以下である。
【0052】
塗布バー10は、導電性である。塗布バー10は、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、チタン、ニッケル及び銅よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。塗布バー10の加工が容易になる。1つの例において、塗布バー10の表面は、例えば、鏡面である。別の例において、塗布バー10の表面は、凹凸を含んでも良い。
【0053】
1つの例において、ポンプ61pの数は、4である。1つのポンプ61pに接続された管は、4つのノズル21に接続される。複数のノズル21の数は、16である。複数のノズル21は、複数の保持部22にそれぞれ保持される。複数の保持部22は、1つの支持部24により指示される。支持部24は、例えば、片持ちバーである。支持部24の複数の部分により支持されて良い。複数の保持部22の1つは、複数のノズル21を変位させるアクチュエータを含んで良い。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態は、塗布方法に係る。
図8は、第2実施形態に係る塗布方法を例示するフローチャートである。
図8に示すように、実施形態に係る塗布方法は、塗布バー10を基準にした複数のノズルのそれぞれの位置に対応する量を検出すること(ステップS10)を含む。塗布バー10は、被塗布部材80と対向可能である。上記の量は、複数のノズル21の、塗布バー10との接触状態に関する。
【0055】
塗布方法は、上記の量に基づいて複数のノズル21をそれぞれ保持する複数の保持部22を制御する。例えば、検出された上記の量Vdを、下限しきい値Vs1及び上限しきい値Vs2と比較する(ステップS20)。量Vdが、下限しきい値Vs1以上上限しきい値Vs2以下でない場合は、複数の保持部22を制御する(ステップS30)。ステップS30の後、ステップS10に戻る。ステップS10、S20及びS30を含む処理が繰り返して実施されて良い。
【0056】
ステップS20において、量Vdが、下限しきい値Vs1以上上限しきい値Vs2以下の場合は、ステップS40に進む。ステップS40において、塗布バー10に複数のノズル21から液84を供給して被塗布部材80に液84を塗布する。
【0057】
実施形態に係る塗布方法においては、塗布バー10を基準にした複数のノズルのそれぞれの位置に対応する量(例えば、接触状態)が検出される。検出された量に基づいて、複数の保持部22が制御されて複数のノズル21の状態が制御される。これにより、均一な塗布膜85が得られる。実施形態によれば、均一な塗布膜を形成できる塗布方法が提供できる。
【0058】
実施形態において、液84の塗布において、複数のノズル21は、塗布バー10と接触して良い。上記の量の検出は、複数のノズル21のそれぞれと、塗布バー10と、の間の電気抵抗を検出することを含んで良い。上記の量の検出は、複数のノズル21のそれぞれから生じる音を検出することを含んで良い。上記の量の検出は、複数のノズル21のそれぞれに加わる応力を検出することを含んで良い。上記の量の検出は、複数のノズル21のそれぞれから得られる光を検出することを含んで良い。上記の量の検出は、複数のノズルのそれぞれの像を検出することを含んで良い。これらの検出結果に応じて複数のノズル21の少なくとも1つの位置または角度が制御される。
【0059】
実施形態に係る塗布装置110、及び、実施形態に係る塗布方法により、太陽電池が形成されて良い。
【0060】
被塗布部材80は、例えば、PETフィルムである。PETフィルム上に電極が設けられている。電極は、例えば、光透過性である。電極は、ITO(Indium Tin Oxide)膜/Ag合金/ITO膜の積層構造を有する。電極は、例えば、ロールtoロール対応のスパッタ装置により形成されて良い。例えば、複数の電極が設けられて良い。複数の電極の1つの幅は、例えば、約20mmである。複数の電極どうしの間隔は、例えば50μmである。
【0061】
1つの例において、液84により、ホール輸送層が形成される。この場合、液84は、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))及びPSS(ポリスチレンスルホン酸)を含む。液84は、水溶液である。複数のノズル21の延びる方向と、水平方向と、の間の角度は20度である。被塗布部材80の移動速度は、例えば、5m/minである。
【0062】
実施形態において、ホール輸送層のための塗布の後に、別の塗布が行われても良い。別の塗布における液84は、例えば、半導体材料を含む。別の液は、例えば、PTB7([ポリ{4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル-1t-alt-3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェン-4,6-ジイル}])と、PC70BM([6,6]フェニルC71ブチル酸メチルエスター)と、を含む。この液84は、例えば、モノクロロベンゼンをさらに含む。この別の塗布における液84は、例えば、太陽電池の半導体膜となる。
【0063】
実施形態に係る塗布装置110、及び、実施形態に係る塗布方法により、有機半導体を用いた有機薄膜太陽電池、または、有機/無機ハイブリッド太陽電池が製造されて良い。高性能で大面積の太陽電池が製造できる。
【0064】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んで良い。
(構成1)
被塗布部材と対向可能な塗布バーと、
前記塗布バーに向けて液を供給することが可能な複数のノズルと、
複数の保持部であって、前記複数の保持部の1つは、前記複数のノズルの1つを保持し、前記複数の保持部の1つは、前記塗布バーを基準にした前記複数のノズルの前記1つの位置を制御可能である、前記複数の保持部と、
前記塗布バーを基準にした前記複数のノズルのそれぞれの位置に対応する量を検出可能な検出部と、を備えた塗布装置。
【0065】
(構成2)
前記検出部は、前記複数のノズルの少なくとも1つの、前記塗布バーとの接触を検出可能である、構成1に記載の塗布装置。
【0066】
(構成3)
前記検出部は、抵抗検出部を含み、
前記抵抗検出部は、前記複数のノズルのそれぞれと、前記塗布バーと、の間の電気抵抗を検出可能である、構成1に記載の塗布装置。
【0067】
(構成4)
複数の端子をさらに備え、
前記複数の端子の1つは、前記複数のノズルの前記1つと電気的に接続され、
前記複数の端子の別の1つは、前記複数のノズルの別の1つと電気的に接続された、構成3に記載の塗布装置。
【0068】
(構成5)
前記検出部は、音検出部を含み、
前記音検出部は、前記複数のノズルのそれぞれから生じる音を検出可能である、構成1に記載の塗布装置。
【0069】
(構成6)
前記検出部は、応力検出部を含み、
前記応力検出部は、前記複数のノズルのそれぞれに加わる応力を検出可能である、構成1に記載の塗布装置。
【0070】
(構成7)
前記応力検出部は、前記複数の応力検出素子を含み、
前記複数の応力検出素子の1つは、前記複数の保持部の前記1つに設けられ、
前記複数の応力検出素子の別の1つは、前記複数の保持部の別の1つに設けられた、構成6に記載の塗布装置。
【0071】
(構成8)
前記検出部は、光検出部を含み、
前記光検出部は、前記複数のノズルのそれぞれから得られる光を検出可能である、構成1に記載の塗布装置。
【0072】
(構成9)
前記検出部は、撮像部を含み、
前記撮像部は、前記複数のノズルのそれぞれの像を検出可能である、構成1に記載の塗布装置。
【0073】
(構成10)
制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部で検出された前記量に基づいて、前記複数の保持部を制御して、前記複数の保持部に、前記塗布バーを基準にした前記複数のノズルのそれぞれの位置を制御させることが可能である、構成1~9のいずれか1つに記載の塗布装置。
【0074】
(構成11)
支持部をさらに備え、
前記支持部は、前記複数の保持部を支持し、
前記支持部は、前記塗布バーを基準にした前記複数の保持部の相対的な位置を変更可能である、構成1~10のいずれか1つに記載の塗布装置。
【0075】
(構成12)
支持部をさらに備え、
前記支持部は、前記複数の保持部を支持し、
前記支持部は、前記複数の保持部を制御して、前記複数のノズルの延びる方向を変更可能である、構成1~10のいずれか1つに記載の塗布装置。
【0076】
(構成13)
前記被塗布部材と前記塗布バーとの間に、前記複数のノズルから供給された前記液によるメニスカスが形成可能である、構成1~11のいずれか1つに記載の塗布装置。
【0077】
(構成14)
被塗布部材と対向可能な塗布バーを基準にした複数のノズルのそれぞれの位置に対応する量を検出し、
前記量に基づいて前記複数のノズルをそれぞれ保持する複数の保持部を制御して、前記塗布バーを基準にした前記複数のノズルのそれぞれの位置を制御して、前記塗布バーに前記複数のノズルから液を供給して前記被塗布部材に前記液を塗布する、塗布方法。
【0078】
(構成15)
前記液の前記塗布において、前記複数のノズルは、前記塗布バーと接触する、構成14に記載の塗布方法。
【0079】
(構成16)
前記量の前記検出は、前記複数のノズルのそれぞれと、前記塗布バーと、の間の電気抵抗を検出することを含む、構成14に記載の塗布方法。
【0080】
(構成17)
前記量の前記検出は、前記複数のノズルのそれぞれから生じる音を検出することを含む、構成14に記載の塗布方法。
【0081】
(構成18)
前記量の前記検出は、前記複数のノズルのそれぞれに加わる応力を検出することを含む、構成14に記載の塗布方法。
【0082】
(構成19)
前記量の前記検出は、前記複数のノズルのそれぞれから得られる光を検出することを含む、構成14に記載の塗布方法。
【0083】
(構成20)
前記量の前記検出は、前記複数のノズルのそれぞれの像を検出することを含む、構成14に記載の塗布方法。
【0084】
実施形態によれば、均一な塗布膜を形成できる塗布装置及び塗布方法が提供される。
【0085】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、塗布装置に含まれる、塗布バー、及びノズルなどの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0086】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0087】
その他、本発明の実施の形態として上述した塗布装置及び塗布方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての塗布装置及び塗布方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0088】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10…塗布バー、 21…ノズル、 22…保持部、 24…支持部、 25…供給管、 50…検出部、 51…抵抗検出部、 52…音検出部、 52a~55d…素子、 53…応力検出部、 53a~53d…素子、 54…光検出部、 54a~54a…素子、 55…撮像部、 55a…撮像素子、 61…供給部、 61p…ポンプ、 65…容器、 66a、66b…搬送部、 68…乾燥部、 70…制御部、 80…被塗布部材、 80D…搬送方向、 84…液、 84M…メニスカス、 85…塗布膜、 110~114…塗布装置、 Sc1~Sc4…制御信号、 T1~T4…端子、 Vd…量、 Vs1…下限しきい値、 Vs2…上限しきい値