(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】基板搬送装置、部品実装装置、基板搬送方法、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
H05K13/04 P
(21)【出願番号】P 2023576581
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2022003602
(87)【国際公開番号】W WO2023145070
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昂太郎
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-38930(JP,A)
【文献】特開2012-94571(JP,A)
【文献】特開2013-143544(JP,A)
【文献】特開2016-25279(JP,A)
【文献】国際公開第2014/207861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して第1可動範囲内で移動可能な第1ヘッドユニットを有し、前記第1ヘッドユニットを用いて第1実装ステージ内に位置決めされた第1基板に部品を実装する、部品実装装置に装備される基板搬送装置であって、
前記配列方向と平行な搬送方向に前記第1基板を搬送した後で、当接部材と機械的に当接させずに前記第1基板を前記第1実装ステージ内で停止させる第1ストッパレス搬送部と、
前記第1ストッパレス搬送部を制御する制御部と、を備え、
前記搬送方向において、前記第1可動範囲の最上流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、前記第1可動範囲の最下流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とに挟まれた第1ヘッド非制約範囲が、前記第1実装ステージと重なる領域を第1非制約領域と定義したとき、
前記制御部は、前記第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で前記第1基板を停止させたときに前記第1基板が前記第1非制約領域から前記搬送方向にはみ出ると判定すると、前記第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に前記第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で前記第1基板が停止するように、前記第1ストッパレス搬送部を制御することを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板搬送装置であって、
前記制御部は、前記第1基準停止位置で前記第1基板を停止させたときに前記第1基板が前記第1非制約領域から前記搬送方向にはみ出ないと判定すると、前記第1基板が前記第1基準停止位置で停止する、または前記第1基板が前記第1非制約領域からはみ出ない範囲で前記第1基準停止位置をオフセットさせた位置で停止するように、前記第1ストッパレス搬送部を制御する基板搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板搬送装置であって、
前記部品実装装置が、
前記搬送方向において前記第1実装ステージの下流側に配置された第2実装ステージ内に位置決めされた第2基板に対しても、前記第1ヘッドユニットを用いて部品を実装するとともに、
先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して前記第1可動範囲と同じ第2可動範囲内で移動可能な第2ヘッドユニットをさらに有し、前記第1実装ステージおよび前記第2実装ステージにそれぞれ位置決めされた前記第1基板および前記第2基板に対し、前記第2ヘッドユニットを用いて部品を実装するとき、
前記第1ストッパレス搬送部により前記第1実装ステージから搬送されてきた前記第2基板を、当接部材と機械的に当接させずに前記第2実装ステージ内で停止させる第2ストッパレス搬送部をさらに備え、
前記搬送方向において前記第1ヘッド非制約範囲が前記第2実装ステージと重なる領域を第2非制約領域と定義したとき、
前記制御部は、前記第2非制約領域内に設定した第2基準停止位置で前記第2基板を停止させたときに前記第2基板が前記第2非制約領域から前記搬送方向にはみ出ると判定すると、前記第2基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に前記第2非制約領域内からはみ出る第2超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で前記第2基板が停止するように、前記第2ストッパレス搬送部を制御する基板搬送装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の基板搬送装置であって、
前記部品実装装置が、前記搬送方向において前記第1実装ステージの下流側に配置された第2実装ステージ内に位置決めされた第2基板に対しても、前記第1ヘッドユニットを用いて部品を実装するとともに、先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して前記第1可動範囲と異なる第2可動範囲内で移動可能な第2ヘッドユニットをさらに有し、前記第1実装ステージおよび前記第2実装ステージにそれぞれ位置決めされた前記第1基板および前記第2基板に対し、前記第2ヘッドユニットを用いて部品を実装するとき、
前記第1ストッパレス搬送部により前記第1実装ステージから搬送されてきた前記第2基板を、当接部材と機械的に当接させずに前記第2実装ステージ内で停止させる第2ストッパレス搬送部をさらに備え、
前記搬送方向において、前記第2可動範囲の最上流位置に前記第2ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最下流のヘッドが位置する上流端位置と、前記第2可動範囲の最下流位置に前記第2ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最上流のヘッドが位置する下流端位置とに挟まれた範囲を第2ヘッド非制約範囲と定義し、
前記制御部は、
前記第1ヘッド非制約範囲が前記搬送方向において前記第2ヘッド非制約範囲よりも狭いときには、前記搬送方向において前記第1ヘッド非制約範囲が前記第2実装ステージと重なる領域を第2非制約領域とし、前記第2非制約領域内に設定した第2基準停止位置で前記第2基板を停止させたときに前記第2基板が前記第2非制約領域から前記搬送方向にはみ出ると判定すると、前記第2基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に前記第2非制約領域内からはみ出る第2超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で前記第2基板が停止するように、前記第2ストッパレス搬送部を制御する一方、
前記第2ヘッド非制約範囲が前記搬送方向において前記第1ヘッド非制約範囲よりも狭いときには、前記搬送方向において前記第2ヘッド非制約範囲が前記第1実装ステージと重なる領域を前記第1非制約領域とし、前記第2非制約領域内に設定した第2基準停止位置で前記第2基板を停止させたときに前記第2基板が前記第2非制約領域から前記搬送方向にはみ出ると判定すると、前記第2基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に前記第2非制約領域内からはみ出る第2超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で前記第2基板が停止するように、前記第2ストッパレス搬送部を制御する基板搬送装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の基板搬送装置であって、
前記部品実装装置が、先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して前記第1可動範囲と異なる第2可動範囲内で移動可能な第2ヘッドユニットをさらに有し、前記搬送方向において前記第1実装ステージの下流側に配置された第2実装ステージ内に位置決めされた第2基板に前記第2ヘッドユニットを用いて部品を実装するとき、
前記第1ストッパレス搬送部により前記第1実装ステージから搬送されてきた前記第2基板を、当接部材と機械的に当接させずに前記第2実装ステージ内で停止させる第2ストッパレス搬送部をさらに備え、
前記搬送方向において、前記第2可動範囲の最上流位置に前記第2ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最下流のヘッドが位置する第2上流端位置と、前記第2可動範囲の最下流位置に前記第2ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最上流のヘッドが位置する第2下流端位置とに挟まれた範囲を第2ヘッド非制約範囲と定義し、前記搬送方向において前記第2ヘッド非制約範囲が前記第2実装ステージと重なる領域を第2非制約領域と定義したとき、
前記制御部は、前記第2非制約領域内に設定した第2基準停止位置で前記第2基板を停止させたときに前記第2基板が前記第2非制約領域から前記搬送方向にはみ出ると判定すると、前記第2基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に前記第2非制約領域内からはみ出る第2超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で前記第2基板が停止するように、前記第2ストッパレス搬送部を制御する基板搬送装置。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか一項に記載の基板搬送装置であって、
前記制御部は、前記第2基準停止位置で前記第2基板を停止させたときに前記第2基板が前記第2非制約領域から前記搬送方向にはみ出ないと判定すると、前記第2基板が前記第2基準停止位置で停止する、または前記第2基板が前記第2非制約領域からはみ出ない範囲で前記第2基準停止位置をオフセットさせた位置で停止するように、前記第2ストッパレス搬送部を制御する基板搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板搬送装置であって、
前記制御部は、
前記第1基板および前記第2基板がそれぞれ前記第1非制約領域および前記第2非制約領域からはみ出ないと判定すると、
前記搬送方向における前記第1基板の上流端が前記第1非制約領域の上流端位置と一致した状態で前記第1基板が停止するように前記第1ストッパレス搬送部を制御するとともに、
前記搬送方向における前記第2基板の下流端が前記第2非制約領域の下流端位置と一致した状態で前記第2基板が停止するように前記第2ストッパレス搬送部を制御する基板搬送装置。
【請求項8】
請求項6に記載の基板搬送装置であって、
前記制御部は、
前記第1基板および前記第2基板がそれぞれ前記第1非制約領域および前記第2非制約領域からはみ出ないと判定すると、
前記搬送方向における前記第1基板の下流端が前記第1非制約領域の下流端位置と一致した状態で前記第1基板が停止するように前記第1ストッパレス搬送部を制御するとともに、
前記搬送方向における前記第2基板の上流端が前記第2非制約領域の上流端位置と一致した状態で前記第2基板が停止するように前記第2ストッパレス搬送部を制御する基板搬送装置。
【請求項9】
先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して第1可動範囲内で移動可能な第1ヘッドユニットを有し、前記配列方向と平行な方向において互いに離間して配置された第1実装ステージおよび第2実装ステージに跨って位置決めされた長尺基板に前記第1ヘッドユニットを用いて部品を実装する、部品実装装置に装備される基板搬送装置であって、
前記配列方向と平行な搬送方向に前記長尺基板を搬送した後で、当接部材と機械的に当接させずに前記第1実装ステージおよび第2実装ステージに跨った状態で前記長尺基板を停止させる基板搬送部と、
前記基板搬送部を制御する制御部と、を備え、
前記搬送方向において、前記第1可動範囲の最上流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、前記第1可動範囲の最下流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とに挟まれた第1ヘッド非制約範囲が前記第1実装ステージと重なる領域の最上流位置と前記第2実装ステージと重なる領域の最下流位置とで挟まれた領域を第1非制約領域と定義したとき、
前記制御部は、前記第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で前記長尺基板を停止させたときに前記長尺基板が前記第1非制約領域から前記搬送方向にはみ出ると判定すると、前記第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に前記第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で前記長尺基板が停止するように、前記基板搬送部を制御することを特徴とする基板搬送装置。
【請求項10】
先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して第1可動範囲内で移動可能な第1ヘッドユニットを有し、前記第1ヘッドユニットを用いて第1実装ステージ内に位置決めされた第1基板に部品を実装する部品実装装置であって、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の基板搬送装置を備えることを特徴とする部品実装装置。
【請求項11】
先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して第1可動範囲内で移動可能な第1ヘッドユニットを有し、前記配列方向と平行な方向において互いに離間して配置された第1実装ステージおよび第2実装ステージに跨って位置決めされた長尺基板に前記第1ヘッドユニットを用いて部品を実装する、部品実装装置であって、
請求項9に記載の基板搬送装置を備えることを特徴とする部品実装装置。
【請求項12】
先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して第1可動範囲内で移動可能な第1ヘッドユニットを有し、前記第1ヘッドユニットを用いて第1実装ステージ内に位置決めされた第1基板に部品を実装する、部品実装装置において、前記第1基板を前記配列方向と平行な搬送方向に搬送する基板搬送方法であって、
前記搬送方向において、前記第1可動範囲の最上流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、前記第1可動範囲の最下流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とに挟まれた第1ヘッド非制約範囲が、前記第1実装ステージと重なる領域を第1非制約領域として取得する第1工程と、
前記第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で前記第1基板を停止させたときに前記第1基板が前記第1非制約領域から前記搬送方向にはみ出るか否かを判定する第2工程と、
前記第2工程により前記第1基板が前記第1非制約領域内からはみ出ると判定されるときには、前記第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に前記第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置に前記第1基板を搬送して位置決めする第3工程と、
を備えることを特徴とする基板搬送方法。
【請求項13】
先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して第1可動範囲内で移動可能な第1ヘッドユニットを有し、前記配列方向と平行な方向において互いに離間して配置された第1実装ステージおよび第2実装ステージに跨って位置決めされた長尺基板に前記第1ヘッドユニットを用いて部品を実装する、部品実装装置において、前記
長尺基板を前記配列方向と平行な搬送方向に搬送する基板搬送方法であって、
前記搬送方向において、前記第1可動範囲の最上流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、前記第1可動範囲の最下流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とに挟まれた第1ヘッド非制約範囲が前記第1実装ステージと重なる領域の最上流位置と前記第2実装ステージと重なる領域の最下流位置とで挟まれた領域を第1非制約領域として取得する第1工程と、
前記第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で前記長尺基板を停止させたときに前記長尺基板が前記第1非制約領域から前記搬送方向にはみ出るか否かを判定する第2工程と、
前記第2工程により前記長尺基板が前記第1非制約領域内からはみ出ると判定されるときには、前記第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に前記第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置に前記長尺基板を搬送して位置決めする第3工程と、
を備えることを特徴とする基板搬送方法。
【請求項14】
先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して第1可動範囲内で移動可能な第1ヘッドユニットを有し、前記第1ヘッドユニットを用いて第1実装ステージ内に位置決めされた第1基板に部品を実装する、部品実装装置において、前記第1基板を前記配列方向と平行な搬送方向に搬送するためのプログラムであって、
前記搬送方向において、前記第1可動範囲の最上流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、前記第1可動範囲の最下流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とに挟まれた第1ヘッド非制約範囲が、前記第1実装ステージと重なる領域を第1非制約領域として取得する第1工程と、
前記第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で前記第1基板を停止させたときに前記第1基板が前記第1非制約領域から前記搬送方向にはみ出るか否かを判定する第2工程と、
前記第2工程により前記第1基板が前記第1非制約領域内からはみ出ると判定されるときには、前記第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に前記第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置に前記第1基板を搬送して位置決めする第3工程と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする、プログラム。
【請求項15】
先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら前記配列方向と平行な方向に前記複数のヘッドを一括して第1可動範囲内で移動可能な第1ヘッドユニットを有し、前記配列方向と平行な方向において互いに離間して配置された第1実装ステージおよび第2実装ステージに跨って位置決めされた長尺基板に前記第1ヘッドユニットを用いて部品を実装する、部品実装装置において、前記
長尺基板を前記配列方向と平行な搬送方向に搬送するためのプログラムであって、
前記搬送方向において、前記第1可動範囲の最上流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、前記第1可動範囲の最下流位置に前記第1ヘッドユニットが位置したときに前記複数のヘッドのうち前記搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とに挟まれた第1ヘッド非制約範囲が前記第1実装ステージと重なる領域の最上流位置と前記第2実装ステージと重なる領域の最下流位置とで挟まれた領域を第1非制約領域として取得する第1工程と、
前記第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で前記長尺基板を停止させたときに前記長尺基板が前記第1非制約領域から前記搬送方向にはみ出るか否かを判定する第2工程と、
前記第2工程により前記長尺基板が前記第1非制約領域内からはみ出ると判定されるときには、前記第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に前記第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置に前記長尺基板を搬送して位置決めする第3工程と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする、プログラム。
【請求項16】
請求項14または15に記載のプログラムを記録した非一過性の記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のヘッドを所定の配列方向に配列した、いわゆるインライン構造を有するヘッドユニットを用いて基板への部品の実装を行う部品実装装置に適した基板搬送技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インライン構造を有するヘッドユニット(インラインヘッドユニットと称することもある)を用いた部品実装装置が知られている(特許文献1)。この部品実装装置では、ヘッドの配列方向と平行な方向に基板が搬送され、部品実装を行う位置に位置決めされる。この位置決めを行うために、基板搬送部が設けられている。部品搬送部はコンベア部を有しており、当該コンベア部によって部品実装装置の外部から基板を搬入し、基板を上記配列方向と平行な搬送方向に搬送する。また、コンベア部により搬送される基板を目標位置に位置決めするために、当該基板と機械的に当接するストッパが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記基板搬送部では、種々の基板サイズに対応するために、複数のストッパが設けられている。各ストッパは搬送されてくる基板と機械的に当接して位置決めするように構成されている。しかも、複数のストッパは、搬送方向において互いに異なる目標位置で基板の搬送経路に対して出退自在に配置されている。そして、コンベア部により搬送されてくる基板のサイズに対応したストッパが搬送経路に進出し、基板と当接して位置決めする。例えば特定サイズまでの基板については、第1ストッパが作動して第1目標位置で基板を位置決めするが、特定サイズよりも1mmでも長い基板については、第1ストッパから搬送方向に離れた次の第2目標位置に配置された第2ストッパにより位置決めされる。このため、後で
図4を参照しつつ詳述するように、インラインヘッドユニットを構成する全部を用いて部品実装を行うことができない、換言すると、一部のヘッドについては物理的に部品実装に使用できないという制約(以下「ヘッド制約」という)が生じる。このヘッド制約は、部品実装に要する時間(以下「実装サイクルタイム」という)の増大を招く主要因のひとつである。したがって、ヘッド制約を受けるヘッドの本数を低減させたいという要望があった。しかしながら、従来の部品実装装置では、目標位置が固定されているため、ヘッド制約を受けるヘッドの本数を変更することができない。このため、例えば搬送方向における基板サイズが特定サイズよりも1mm長くなると、第2ストッパを用いて基板の位置決めを行う必要がある。その結果、搬送方向における第1ストッパと第2ストッパの間隔程度まで基板サイズが長くなった場合と同様のヘッド制約を受け、それと同様の実装サイクルタイムが必要となる。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、インラインヘッドユニットを用いた部品実装装置において、搬送方向における基板の大型化に伴う実装サイクルタイムの増大を抑止して効率的な部品実装が可能となるように、基板を搬送して位置決めすることができる基板搬送技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら配列方向と平行な方向に複数のヘッドを一括して第1可動範囲内で移動可能な第1ヘッドユニットを有し、第1ヘッドユニットを用いて第1実装ステージ内に位置決めされた第1基板に部品を実装する部品実装装置、当該部品実装装置に装備される基板搬送装置、当該部品実装装置において第1基板を配列方向と平行な搬送方向に搬送する基板搬送方法、第1基板を配列方向と平行な搬送方向に搬送するためのプログラムおよび記録媒体である。
【0007】
本発明の第1態様である基板搬送装置は、配列方向と平行な搬送方向に第1基板を搬送した後で、当接部材と機械的に当接させずに第1基板を第1実装ステージ内で停止させる第1ストッパレス搬送部と、第1ストッパレス搬送部を制御する制御部と、を備え、搬送方向において、第1可動範囲の最上流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、第1可動範囲の最下流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とで挟まれた第1ヘッド非制約範囲が、第1実装ステージと重なる領域を第1非制約領域と定義したとき、制御部は、第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で第1基板を停止させたときに第1基板が第1非制約領域から搬送方向にはみ出ると判定すると、第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で第1基板が停止するように、第1ストッパレス搬送部を制御することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の第1態様である部品実装装置は、上記基板搬送装置を備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の第1態様である基板搬送方法は、搬送方向において、第1可動範囲の最上流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、第1可動範囲の最下流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とに挟まれた第1ヘッド非制約範囲が、第1実装ステージと重なる領域を第1非制約領域として取得する第1工程と、第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で第1基板を停止させたときに第1基板が第1非制約領域から搬送方向にはみ出るか否かを判定する第2工程と、第2工程により第1基板が第1非制約領域内からはみ出ると判定されるときには、第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置に第1基板を搬送して位置決めする第3工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の第1態様であるプログラムは、搬送方向において、第1可動範囲の最上流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、第1可動範囲の最下流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とに挟まれた第1ヘッド非制約範囲が、第1実装ステージと重なる領域を第1非制約領域として取得する第1工程と、第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で第1基板を停止させたときに第1基板が第1非制約領域から搬送方向にはみ出るか否かを判定する第2工程と、第2工程により第1基板が第1非制約領域内からはみ出ると判定されるときには、第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置に第1基板を搬送して位置決めする第3工程と、をコンピュータに実現させることを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明の第1態様である記録媒体は、上記プログラムを記録した非一過性の記録媒体である。
【0012】
このように構成された第1態様に係る発明では、第1ヘッドユニットがいわゆるインライン構造を有しているため、ヘッド制約が発生する。そこで、当該ヘッド制約を受けない第1非制約領域が取得される。そして、第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で第1基板を停止させたときに第1基板が第1非制約領域から搬送方向にはみ出る場合には、第1基準停止位置をオフセットさせる。そのオフセットの方向は、はみ出る方向と反対の方向であり、しかもオフセット量は第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きい値である。これによって、第1非制約領域からの第1基板の超過量は減少し、部品実装する際にヘッド制約を受けるヘッドの本数も少なくなる。その結果、第1基板の大型化に伴う実装サイクルタイムの増大を抑止して効率的な部品実装が可能となる。
【0013】
ここで、第1基準停止位置で第1基板を停止させたときに第1基板が第1非制約領域から搬送方向にはみ出ない場合には、第1基板を第1基準停止位置で停止させる、または第1非制約領域からはみ出ない範囲で第1基準停止位置をオフセットさせた位置で第1基板を停止させるように構成してもよい。これにより、第1基板は第1非制約領域内に収まり、部品実装する際にヘッド制約を受けず、優れた実装サイクルタイムで部品実装を行うことができる。
【0014】
また、部品実装装置が、搬送方向において第1実装ステージの下流側に配置された第2実装ステージ内に位置決めされた第2基板に対しても、第1ヘッドユニットを用いて部品を実装するとともに、先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら配列方向と平行な方向に複数のヘッドを一括して第1可動範囲と同じ第2可動範囲内で移動可能な第2ヘッドユニットをさらに有し、第1実装ステージおよび第2実装ステージにそれぞれ位置決めされた第1基板および第2基板に対し、第2ヘッドユニットを用いて部品を実装するときには、次のような構成を追加採用してもよい。すなわち、第1ストッパレス搬送部により第1実装ステージから搬送されてきた第2基板を、当接部材と機械的に当接させずに第2実装ステージ内で停止させる第2ストッパレス搬送部をさらに設けてもよい。そして、搬送方向において第1ヘッド非制約範囲が第2実装ステージと重なる第2非制約領域内に設定した第2基準停止位置で第2基板を停止させたときに第2基板が第2非制約領域から搬送方向にはみ出る場合には、第2基準停止位置をオフセットさせる。そのオフセットの方向は、第2基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向であり、しかもオフセット量は第2非制約領域内からはみ出る第2超過量以下でかつゼロよりも大きい値である。これによって、第2非制約領域からの第2基板の超過量は減少し、部品実装する際にヘッド制約を受けるヘッドの本数も少なくなる。その結果、第2基板の大型化に伴う実装サイクルタイムの増大を抑止して効率的な部品実装が可能となる。
【0015】
また、第2可動範囲が第1可動範囲と異なることがある。この場合には、次のように構成するのが望ましく、これによって実装サイクルタイムの増大を抑止して効率的な部品実装が可能となる。すなわち、第1ヘッド非制約範囲と第2ヘッド非制約範囲との大小関係により、以下のように制御するのが望ましい。第1ヘッド非制約範囲が搬送方向において第2ヘッド非制約範囲よりも狭いときには、搬送方向において第1ヘッド非制約範囲が第2実装ステージと重なる領域を第2非制約領域とし、第2非制約領域内に設定した第2基準停止位置で第2基板を停止させたときに第2基板が第2非制約領域から搬送方向にはみ出ると判定すると、第2基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に第2非制約領域内からはみ出る第2超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で第2基板が停止するように、第2ストッパレス搬送部を制御するのが好適である。一方、第2ヘッド非制約範囲が搬送方向において第1ヘッド非制約範囲よりも狭いときには、搬送方向において第2ヘッド非制約範囲が第1実装ステージと重なる領域を第1非制約領域とし、第2非制約領域内に設定した第2基準停止位置で第2基板を停止させたときに第2基板が第2非制約領域から搬送方向にはみ出ると判定すると、第2基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に第2非制約領域内からはみ出る第2超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で第2基板が停止するように、第2ストッパレス搬送部を制御するのが好適である。
【0016】
また、第2可動範囲が第1可動範囲と異なるとともに、第1ヘッドユニットが第1基板への部品実装を担う一方、第2ヘッドユニットが第2基板への部品実装を担うことがある。このような場合には、次のように構成するのが望ましく、これによって実装サイクルタイムの増大を抑止して効率的な部品実装が可能となる。すなわち、搬送方向において第2ヘッド非制約範囲が第2実装ステージと重なる第2非制約領域内に設定した第2基準停止位置で第2基板を停止させたときに第2基板が第2非制約領域から搬送方向にはみ出ると判定すると、第2基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に第2非制約領域内からはみ出る第2超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で第2基板が停止するように、第2ストッパレス搬送部を制御するのが好適である。
【0017】
また、第2基準停止位置で第2基板を停止させたときに第2基板が第2非制約領域から搬送方向にはみ出ない場合には、第2基板が第2基準停止位置で停止する、または第2基板が第2非制約領域からはみ出ない範囲で第2基準停止位置をオフセットさせた位置で停止するように、第2ストッパレス搬送部を制御してもよい。これにより、第2基板は第2非制約領域内に収まり、部品実装する際にヘッド制約を受けず、優れた実装サイクルタイムで部品実装を行うことができる。
【0018】
さらに、第1基板および第2基板をそれぞれ第1非制約領域内および第2非制約領域内で収めるという条件を満足しつつ第1基準停止位置および第2基準停止位置から以下のようにオフセットしてもよい。例えば搬送方向における第1基板の上流端が第1非制約領域の上流端位置と一致した状態で第1基板を停止させるとともに、搬送方向における第2基板の下流端が第2非制約領域の下流端位置と一致した状態で第2基板を停止させることで、搬送方向における第1基板と第2基板の間隔を広げることができる。逆に、搬送方向における第1基板の下流端が第1非制約領域の下流端位置と一致した状態で第1基板を停止するとともに、搬送方向における第2基板の上流端が第2非制約領域の上流端位置と一致した状態で第2基板を停止させることで、上記間隔を狭めることができる。
【0019】
また、本発明の第2態様は、先端にノズルが装着されたヘッドを所定の配列方向に沿って複数本配列しながら配列方向と平行な方向に複数のヘッドを一括して第1可動範囲内で移動可能な第1ヘッドユニットを有し、配列方向と平行な方向において互いに離間して配置された第1実装ステージおよび第2実装ステージに跨って位置決めされた長尺基板に第1ヘッドユニットを用いて部品を実装する部部品実装装置、当該部品実装装置に装備される基板搬送装置、当該部品実装装置において第1基板を配列方向と平行な搬送方向に搬送する基板搬送方法、第1基板を配列方向と平行な搬送方向に搬送するためのプログラムおよび記録媒体である。
【0020】
本発明の第2態様である基板搬送装置は、配列方向と平行な搬送方向に長尺基板を搬送した後で、当接部材と機械的に当接させずに第1実装ステージおよび第2実装ステージに跨った状態で長尺基板を停止させる基板搬送部と、基板搬送部を制御する制御部と、を備え、搬送方向において、第1可動範囲の最上流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、第1可動範囲の最下流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とで挟まれた第1ヘッド非制約範囲が第1実装ステージと重なる領域の最上流位置と第2実装ステージと重なる領域の最下流位置とで挟まれた領域を第1非制約領域と定義したとき、制御部は、第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で長尺基板を停止させたときに長尺基板が第1非制約領域から搬送方向にはみ出ると判定すると、第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置で長尺基板が停止するように、基板搬送部を制御することを特徴としている。
【0021】
また、本発明の第2態様である部品実装装置は、上記基板搬送装置を備えることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の第2態様である基板搬送方法は、搬送方向において、第1可動範囲の最上流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、第1可動範囲の最下流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とに挟まれた第1ヘッド非制約範囲が第1実装ステージと重なる領域の最上流位置と第2実装ステージと重なる領域の最下流位置とで挟まれた領域を第1非制約領域として取得する第1工程と、第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で長尺基板を停止させたときに長尺基板が第1非制約領域から搬送方向にはみ出るか否かを判定する第2工程と、第2工程により長尺基板が第1非制約領域内からはみ出ると判定されるときには、第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置に長尺基板を搬送して位置決めする第3工程と、を備えることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の第2態様であるプログラムは、搬送方向において、第1可動範囲の最上流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最下流のヘッドが位置する第1上流端位置と、第1可動範囲の最下流位置に第1ヘッドユニットが位置したときに複数のヘッドのうち搬送方向における最上流のヘッドが位置する第1下流端位置とに挟まれた第1ヘッド非制約範囲が第1実装ステージと重なる領域の最上流位置と第2実装ステージと重なる領域の最下流位置とで挟まれた領域を第1非制約領域として取得する第1工程と、第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で長尺基板を停止させたときに長尺基板が第1非制約領域から搬送方向にはみ出るか否かを判定する第2工程と、第2工程により長尺基板が第1非制約領域内からはみ出ると判定されるときには、第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向に第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きいオフセット量だけオフセットさせた位置に長尺基板を搬送して位置決めする第3工程と、をコンピュータに実現させることを特徴としている。
【0024】
さらに、本発明の第2態様である記録媒体は、上記プログラムを記録した非一過性の記録媒体である。
【0025】
このように構成された第2態様に係る発明では、第1態様に係る発明と同様に、第1ヘッドユニットがいわゆるインライン構造を有しているため、ヘッド制約が発生する。そこで、当該ヘッド制約を受けない第1非制約領域が取得される。そして、第1非制約領域内に設定した第1基準停止位置で長尺基板を停止させたときに長尺基板が第1非制約領域から搬送方向にはみ出る場合には、第1基準停止位置をオフセットさせる。そのオフセットの方向は、第1基準停止位置をはみ出る方向と反対の方向であり、しかもオフセット量は第1非制約領域内からはみ出る第1超過量以下でかつゼロよりも大きい値である。これによって、第1非制約領域からの長尺基板の超過量は減少し、部品実装する際にヘッド制約を受けるヘッドの本数も少なくなる。その結果、長尺基板の大型化に伴う実装サイクルタイムの増大を抑止して効率的な部品実装が可能となる。
【発明の効果】
【0026】
上記のように構成された発明では、基板の大型化により非制約領域から基板がはみ出す場合であっても、オフセット処理に非制約領域からの基板の超過量を減少させることができ、実装サイクルタイムの増大を抑止して部品実装を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る基板搬送装置の第1実施形態を装備する部品実装装置を示す平面図である。
【
図2】
図1中のヘッド支持部材を切り欠き、
図1に示す部品実装装置における基板支持部を示す平面図である。
【
図3】
図1に示す部品実装装置を制御するための電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の部品実装装置に装備されるヘッドユニットの構成を示す図である。
【
図5】基板の停止位置とヘッド制約との関係を説明するための模式図である。
【
図6】
図1に示す部品実装装置における基準停止位置を設定する動作を示すフローチャートである。
【
図7】本発明に係る基板搬送装置の第1実施形態の第1変形例におけるオフセット動作を模式的に示す図である。
【
図8】本発明に係る基板搬送装置の第1実施形態の第2変形例におけるオフセット動作を模式的に示す図である。
【
図9】本発明に係る基板搬送装置の第1実施形態の第3変形例におけるオフセット動作を模式的に示す図である。
【
図10】本発明に係る基板搬送装置の第2実施形態を装備する部品実装装置を示す平面図である。
【
図11】
図10中のヘッド支持部材を切り欠き、
図10に示す部品実装装置における基板支持部を示す平面図である。
【
図12A】本発明に係る基板搬送装置の第2実施形態における動作を模式的に示す図である。
【
図12B】本発明に係る基板搬送装置の第2実施形態におけるオフセット動作を模式的に示す図である。
【
図12C】本発明に係る基板搬送装置の第2実施形態の第1変形例におけるオフセット動作を模式的に示す図である。
【
図12D】本発明に係る基板搬送装置の第2実施形態の第2変形例におけるオフセット動作を模式的に示す図である。
【
図12E】本発明に係る基板搬送装置の第2実施形態の第3変形例におけるオフセット動作を模式的に示す図である。
【
図13】本発明に係る基板搬送装置の第3実施形態におけるオフセット動作を模式的に示す図である。
【
図14】本発明に係る基板搬送装置の第4実施形態におけるオフセット動作を模式的に示す図である。
【
図15】本発明に係る基板搬送装置の第5実施形態におけるオフセット動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は本発明に係る基板搬送装置の第1実施形態を装備する部品実装装置を示す平面図である。
図2は
図1中のヘッド支持部材を切り欠き、
図1に示す部品実装装置における基板支持部を示す平面図である。
図3は
図1に示す部品実装装置を制御するための電気的構成を示すブロック図である。
図1、
図2および以下の図では、鉛直方向に平行なZ方向、それぞれ水平方向に平行なX方向およびY方向からなるXYZ直交座標を適宜示す。
【0029】
部品実装装置100は、基台1と、基板搬送部2と、基板支持部3とを備えている。この基板搬送部2は、本発明に係る基板搬送装置の第1実施形態に相当しており、基台1の上に設けられた一対のコンベア21、21を有する。コンベア21、21は、装置全体を制御する制御ユニット4の駆動制御部43からの搬送指令に応じて作動し、X方向に延びる基板搬送経路に沿って基板Sを搬送する。より具体的には、コンベア21、21は、装置外部から基板Sを搬入し、X方向(搬送方向)に搬送する。そして、基板支持部3の上方に位置する目標位置(後で説明する基準停止位置に相当)に基板Sが搬送されると、コンベア21、21は駆動制御部43からの停止指令にしたがって基板搬送を停止する。これにより、基板Sは、搬送方向Xにおいて部品実装に適した目標位置に位置決めされる。このように、コンベア21、21は、ストッパ等の当接部材と機械的に当接させずに基板Sを基板搬送経路上に正確に停止させる機能を有しており、本発明の「第1ストッパレス搬送部」の一例に相当している。なお、上記目標位置は、搬送方向Xにおける基板Sの寸法(以下「基板サイズ」と称する)に応じて適宜変更される。これによって、ヘッド制約を受けるヘッド本数の最小化が図られている。目標位置の技術的意味および目標位置の変更については、後で詳述する。
【0030】
基板支持部3は、
図2に示すように、基板搬送経路の下方に位置するように、基台1に設けられている。基板支持部3は、目標位置に位置決めされた基板Sを下方から支持する機能を有している。基板支持部3は、
図2に示すように、ベース部材31と、バックアップピン32と、ピン昇降部(
図3中の符号33)とを有している。
【0031】
ベース部材31は基板Sの目標位置を下方から覆うように配置されており、部品実装装置100で取り扱う基板Sの最大サイズと同程度の平面サイズを有している。このベース部材31の上面の直上空間が基板Sを位置決めして部品実装を行う実装ステージSTに相当している。
図2中の符号PP1、PP2がそれぞれ実装ステージSTの上流端位置および下流端位置を示している。そして、これら上流端位置PP1および下流端位置PP2の間で目標位置が設定され、コンベア21、21により基板Sは位置決めされる。
【0032】
また、実装ステージST上の基板Sを下方から支持するために、複数のバックアップピン32がベース部材31に設けられている。各バックアップピン32は、上下方向に長い形状をした、段付きピンであり、下側に小径部位を形成し、上側(先端側)に支持部位を形成している。支持部位は、小径部位よりも更に細径であり、上方に真っ直ぐに延びている。支持部位は、基板Sを支持する機能を果たすものであり、上端面は水平な支持面となっている。
【0033】
ピン昇降部33は、ベース部材31と接続されている。このピン昇降部33は、駆動制御部43から上昇指令を受けると、ベース部材31とバックアップピン32とを一体的に上昇させる。これによって、実装ステージSTに位置決めされた基板Sがバックアップピン32により下方から支持される。
【0034】
このように構成された基板支持部3の上方には、
図1に示すように、インラインヘッドユニット(以下、単に「ヘッドユニット」と称する)5を水平方向X、Yに移動させるためのヘッド駆動機構6が設けられている。ヘッド駆動機構6は、Y方向に延びる一対のY軸レール61、61と、Y方向に延びるY軸ボールネジ62と、Y軸ボールネジ62を回転駆動するY軸モーターMyとが設けられ、ヘッド支持部材63が一対のY軸レール61、61にY方向に移動可能に支持された状態でY軸ボールネジ62のナットに固定されている。ヘッド支持部材63には、X方向に延びるX軸ボールネジ64と、X軸ボールネジ64を回転駆動するX軸モーターMxとが取り付けられており、ヘッドユニット5がヘッド支持部材63にX方向に移動可能に支持された状態でX軸ボールネジ64のナットに固定されている。したがって、Y軸モーターMyによりY軸ボールネジ62を回転させてヘッドユニット5をY方向に移動させ、あるいはX軸モーターMxによりX軸ボールネジ64を回転させてヘッドユニット5をX方向に移動させることができる。
【0035】
一対のコンベア21、21のY方向の両側それぞれでは、2つの部品供給部7がX方向に並んでいる。各部品供給部7に対しては、X方向に並ぶ複数のテープフィーダー71が着脱可能に装着されている。各テープフィーダー71には、集積回路、トランジスター、コンデンサ等の小片状の部品(チップ電子部品)を所定間隔おきに収納したテープが巻かれたリールが配置されている。テープフィーダー71は、テープをヘッドユニット5側に間欠的に送り出すことによって、テープ内の部品を部品供給位置72に供給する。この部品供給位置72に供給された部品がヘッドユニット5により基板Sに実装される。
【0036】
図4は
図1の部品実装装置に装備されるヘッドユニットの構成を示す図である。ヘッドユニット5は、X方向に並ぶ複数(本実施形態では10本)のヘッド51を有する。各ヘッド51はZ方向(鉛直方向)に延びた長尺形状を有し、その下端に係脱可能に取り付けられたノズルによって部品を吸着・保持可能に構成されている。つまり、ヘッド51はテープフィーダー71の上方へ移動して、テープフィーダー71により供給された部品を吸着する。続いて、ヘッド51は目標位置に位置決めされた基板Sの上方に移動して部品の吸着を解除することで、基板Sに部品を実装する。
【0037】
このように構成されたヘッドユニット5がX方向において移動できる可動範囲MRはX軸ボールネジ64の長さによって決まっており、当該可動範囲MRを超えて移動できない。例えばヘッドユニット5がX方向の上流側(同図の右手側)に移動したとき、その移動限界は同図の1点鎖線に示す通りである。したがって、可動範囲MRの最上流位置にヘッドユニット5が位置したときに複数のヘッド51のうち搬送方向Xにおける最下流のヘッド51aが位置する上流端位置PH1の直下位置に基板Sが存在する場合、いずれのヘッド51も基板Sの上方に位置可能である。つまり、いずれのヘッド51を用いても基板Sに部品を実行することができる。ここで、仮に基板Sの上流端が上流端位置PH1よりも上流側(同図における右手側)に位置すると、最下流のヘッド51aを基板Sの上流端の上方に位置させることができない。そのため、ヘッド51aを使用して基板Sの上流端に部品を実装することができない、つまりヘッド制約を受ける。このヘッド制約は、基板Sの上流端が実装ステージSTの上流端位置PP1に近づくにしたがって増大し、ヘッド制約を受けるヘッド51の本数が増える。
【0038】
このようなヘッド制約は、下流側(同図の左手側)においても同様である。すなわち、ヘッドユニット5がX方向の下流側に移動したとき、その移動限界は同図の2点鎖線に示す通りである。したがって、可動範囲MRの最下流位置にヘッドユニット5が位置したときに複数のヘッド51のうち搬送方向Xにおける最上流のヘッド51jが位置する下流端位置PH2の直下位置に基板Sが存在する場合、いずれのヘッド51も基板Sの上方に位置可能である。つまり、いずれのヘッド51を用いても基板Sに部品を実行することができる。ここで、仮に基板Sの下流端が下流端位置PH2よりも下流側(同図における左手側)に位置すると、最上流のヘッド51jを基板Sの下流端の上方に位置させることができない。そのため、ヘッド51jを使用して基板Sの下流端に部品を実装することができない、つまりヘッド制約を受ける。このヘッド制約は、基板Sの下流端が実装ステージSTの下流端位置PP2に近づくにしたがって増大し、ヘッド制約を受けるヘッド51の本数が増える。
【0039】
一方、基板Sが搬送方向Xにおいて上流端位置PH1と下流端位置PH2との間に位置している限りにおいては、上記ヘッド制約を受けることなく、基本的には全ヘッド51を使用して部品実装を行うことができる。そこで、以下の説明の便宜から、搬送方向Xにおいて上流端位置PH1および下流端位置PH2で挟まれた範囲を「ヘッド非制約範囲AR」と称する。
【0040】
上記説明をまとめると、部品実装装置100により基板Sに部品を良好に実装するためには、基本的に搬送方向Xにおいて、上記ヘッド非制約範囲ARと実装ステージSTとが重なる領域(以下「非制約領域」という)NRに基板Sを入るように位置決めする必要がある。なお、第1実施形態では、
図4に示すように、ヘッド非制約範囲AR全体が実装ステージST内に含まれており、非制約領域NRはヘッド非制約範囲ARと一致している。そして、搬送方向Xにおいて、基板S全体を非制約領域NR(=上流端位置PH1と下流端位置PH2とで挟まれた範囲)に入るように位置決めすると、ヘッド制約を受けることなく部品実装を行うことができ、実装サイクルタイムの最小化を図ることができる。これに対し、基板Sの上流端部および下流端部の少なくとも一方が非制約領域NRからはみ出るように、基板Sが位置決めされると、非制約領域NRからはみ出した量、いわゆる超過量が多くなるにしたがってヘッド制約を受けるヘッド51の本数が増える。これが実装サイクルタイムを増大させる要因となっていた。
【0041】
この点をより明確にするため、比較的長い基板Sを位置決めする際に、従来のように当接部材と機械的に当接させて基板Sを位置決めするメカストッパを用いる場合(比較例1)と、予め設定された基準停止位置に基板を停止させる場合(比較例2)と、後で詳述するように超過量に応じて基準停止位置を搬送方向にオフセットする場合(第1実施形態)とを比較しながら説明する。
【0042】
図5は基板の停止位置とヘッド制約との関係を説明するための模式図である。同図の(a)欄は、従来装置と同様に、搬送方向Xにおいて互いに異なる位置PS1、PS2でメカストッパにより基板Sを位置決めする装置の動作(比較例1)を模式的に示している。この比較例1では、上流側のメカストッパにより基板Sを停止させる位置PS1を基準停止位置とし、基板サイズが比較的長い基板Sが搬送されてきた場合、同欄に示すように、上流側のメカストッパが基板搬送経路から下方に後退する一方で、下流側のメカストッパが基板搬送経路に進出して基板Sを位置決めする。つまり、基板Sの下流端が位置PS2に位置するように下流側のメカストッパは基板Sを機械的に位置決めする。このため、基板サイズが比較的長い場合には、基板Sの下流端部は非制約領域NRの下流端位置PH2を超過領域ERだけ超え、非制約領域NRからはみ出してしまう。また、同図の(b)欄に示すように、コンベア21、21が、基板Sを搬送し、上流側のメカストッパと同様に、基板Sの下流端が基準停止位置PS1に位置するように基板Sを位置決めする場合(比較例2)、基板Sの上流端部が非制約領域NRの上流端位置PH1を超過領域ERだけ超え、非制約領域NRからはみ出してしまう。なお、基準停止位置PS1は、基本的にはコンベア21、21による基板Sの停止誤差を考慮し、非制約領域NRの両端位置PH1、PH2よりも内側に設定されている。ここでは、搬送方向Xにおいて距離DRだけ下流端位置PH2よりも上流端位置PH1側にシフトした位置に基準停止位置PS1が設定されている。
【0043】
これに対し、第1実施形態では、同図の(c)欄に示すように、比較例2において生じる超過領域ERの長さと同じオフセット量OFだけ基準停止位置PS1をはみ出た方向(同図では-X方向)と反対方向(同図では+X方向)にオフセットする。これによって、基板サイズが搬送方向Xにおける非制約領域NRの長さ(以下「非制約範囲長さ」という)程度であれば、基板Sの全部が非制約領域NRに収まる。また、基板サイズが非制約範囲長さよりも長い場合であっても、搬送方向Xにおいて基板Sの一部は非制約領域NRからはみ出るものの、その超過領域ERは、比較例1、2に比べて少なくなる。したがって、ヘッド制約を受けるヘッド51の本数は比較例1、2よりも少なくなり、実装サイクルタイムの増大を抑制することができる。
【0044】
そこで、本実施形態では、このような技術事項に基づき、制御ユニット4は、上記超過量が少なくなるように実装ステージSTにおける基板Sの停止位置を制御している。これによって、制御ユニット4は、ヘッド制約を受けるヘッド51の本数の最小化を図っている。
【0045】
制御ユニット4は、
図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)やメモリーで構成されたプロセッサーである演算処理部41と、HDD(Hard Disk Drive)などで構成された記憶部42とを有している。さらに、制御ユニット4は、部品実装装置100の駆動系(コンベア21、21、ピン昇降部33、X軸モーターMx、Y軸モーターMy等)を制御する駆動制御部43と、部品実装装置100の撮像系(部品認識カメラ等)を制御する撮像制御部44と、読取部45とを有している。特に、読取部45は、部品実装装置100の各部を制御するための制御プログラムおよび基板Sの停止位置を制御することで上記超過量の低減を図るための停止設定プログラムを記録媒体RMaから読み出し、記憶部42に書き込む機能を有している。この記録媒体RMaは、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等のコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体である。
【0046】
この制御ユニット4は、図示を省略する通信回線を介してホストコンピュータ900と接続されており、ホストコンピュータ900の演算処理部901で作成された生産プログラムをホストコンピュータ900から受け取る。また、部品実装装置100は、記録媒体RMaから読み出したプログラムに従って、基板搬送部2をはじめとし、部品実装装置100の各部を制御して部品実装を行う。特に、本実施形態では、制御ユニット4は、生産プログラムにしたがった部品実装処理に先立って、
図6に示す基準停止位置の設定処理を設定プログラムにしたがって行い、基板サイズが切替基準情報を超える場合に基準停止位置をオフセットさせる。以下、
図5および
図6を参照しつつ基準停止位置の設定処理について説明する。
【0047】
図6は
図1に示す部品実装装置における基準停止位置を設定する動作を示すフローチャートである。制御ユニット4の演算処理部41は、基準停止位置の停止設定プログラムにしたがって、装置各部を以下のように制御する。まず、演算処理部41は、基板搬送部2により搬送される基板Sの基板サイズLxと、予め設定されている基準停止位置PS1とを取得する(ステップS1)。また、演算処理部41は、搬送方向Xにおける非制約領域NRの両端位置、つまり上流端位置PH1および下流端位置PH2を取得する(ステップS2)。
【0048】
これらの情報に基づいて演算処理部41は、切替基準情報Lfを算出する(ステップS3)。この切替基準情報Lfは、基板Sの先端、つまり搬送方向Xにおける下流端が基準停止位置PS1に位置するように基板Sを停止させたときに基板S全体が非制約領域NRに収まるか否かの判断基準となる情報、つまり予め設定されている基準停止位置PS1と上流端位置PH1とで挟まれた範囲FRの距離に相当している。より具体的には、演算処理部41は、次式
Lf=PS1-PH1
に基づいて算出されるX方向における長さ情報を切替基準情報Lfとして記憶する。ここで、切替基準情報Lfに対し、基板サイズLxが上回っている場合には、
図5の(b)欄に示すように、基準停止位置PS1で位置決めされた基板Sの後端、つまり搬送方向Xにおける上流端が上流端位置PH1よりも上流側に位置する。すなわち、当該基板Sの後端部が非制約領域NRから上流側(同図の右手側)に超過領域ERだけ超過している。逆に、切替基準情報Lfに対し、基板サイズLxが同じまたは下回っている場合には、上記のように基準停止位置PS1で停止された基板Sの後端(搬送方向Xにおける上流端)が上流端位置PH1または上流端位置PH1よりも下流側に位置する。すなわち、超過領域ERは発生せず、当該基板Sの全体が非制約領域NRに収まった状態で実装ステージSTに位置決めされる。
【0049】
そこで、演算処理部41は、次式
Le=Lx-Lf
に基づいて搬送方向Xにおける超過領域ERの長さ、つまり超過量Leを算出し(ステップS4)、ゼロよりも大きいか否かを判定する(ステップS5)。このステップS5で「YES」と判定すると、演算処理部41はオフセット量OFを超過量Leに設定する(ステップS6)。一方、ステップS5で「NO」と判定すると、演算処理部41はオフセット量OFをゼロに設定する(ステップS7)。
【0050】
こうしてオフセット量OFの設定が完了すると、演算処理部41は基準停止位置PS1を搬送方向Xにおいてオフセット量OFだけ下流側にオフセットする(ステップS8)。すなわち、
図5の(b)および(c)欄に示すように、基板Sが非制約領域NRから上流側にはみ出している場合、はみ出した方向と反対方向(本実施形態では下流側)への基準停止位置PS1のオフセットにより基板Sの後端が上流端位置PH1と一致する。これによって、基準停止位置PS1に位置決めされた基板Sが搬送方向Xにおいて非制約領域NRからはみ出した超過領域ERの長さはオフセット前よりも短くなる。つまり、ヘッド制約を受けるヘッド51の本数が低減される。
【0051】
一方、オフセット量OFがゼロに設定されている場合、上記オフセット動作を実行しないのと等価であり、予め設定されている基準停止位置PS1が維持され、当該基準停止位置PS1で基板Sは位置決めされる。つまり、基板S全体が非制約領域NR(=非制約領域NR)に収まるように位置決めされる。
【0052】
以上のように、第1実施形態では、予め設定されている基準停止位置PS1で基板Sを位置決めした際に、基板Sが非制約領域NRからはみ出るときには、上記のように基準停止位置PS1をオフセットしている。このため、基板Sの大型化に伴い基板Sが非制約領域NRからはみ出すものの、超過領域ERがオフセット前よりも狭まり、ヘッド制約を受けるヘッド51の本数も少なくなる。その結果、基板Sの大型化に伴う実装サイクルタイムの増大を抑止して効率的な部品実装が可能となる。
【0053】
また、基板Sの基板サイズLxが切替基準情報Lf以下であり、比較的小さい場合には、非制約領域NRに収められた状態で部品実装が実行される。つまり、ヘッド制約を受けることなく、部品実装を行うことができるため、優れた実装サイクルタイムが得られる。 なお、第1実施形態では、演算処理部41は、ステップS5で「YES」と判定した際のオフセット量OFを超過量Leに設定しているが、オフセット量OFはこれに限定されるものでない。すなわち、オフセット量OFをゼロよりも大きく、かつ超過量Leよりも短い距離、例えば超過量Leの半分の値(=Le/2)をオフセット量OFとして設定しても同様の作用効果が得られる(
図7参照)。
【0054】
また、上記実施形態では、
図5に基づき説明したように、基準停止位置PS1に基板Sの下流端が一致するように基板Sの位置決めを行っている。つまり、非制約領域NRの下流端位置PH2に近接して設定された基準停止位置PS1をオフセット処理することで上記作用効果を達成している。以下の発明内容の説明の便宜から、このタイプのオフセット処理を本明細書では、「下流側オフセット処理」と称することとする。ここで、着目すべき点は、基板搬送部2により基板Sを搬送することから、下流側オフセット処理と異なる態様でオフセット処理を行ってもよい点である。つまり、基準停止位置PS1を非制約領域NRの上流端位置PH1に近接して設定し、当該基準停止位置PS1に基板Sの上流端が一致するように基板Sの位置決めを行う場合にも、本発明を適用することができる。例えば
図8に示すように、非制約領域NRの上流端位置PH1に近接して設定された基準停止位置PS1をオフセット処理することで上記作用効果を達成するように構成してもよい。このタイプのオフセット処理を、下流側オフセット処理と区別するために、「上流側オフセット処理」と称する。この上流側オフセット処理の内容は、基準停止位置PS1が非制約領域NRの上流端位置PH1に近接して設定されている点を除き、下流側オフセット処理と同一であり、上流側オフセット処理の動作は
図6に示すものと同一である。
【0055】
要は、非制約領域NR内に設定した基準停止位置PS1で基板Sを停止させたときに基板Sが非制約領域NRから搬送方向Xにおいて超過量Leはみ出す場合には、はみ出す方向と反対の方向に基準停止位置PS1からゼロよりも大きくかつ超過量Le以下のオフセット量OFだけオフセットさせた位置(オフセット後の基準停止位置PS1)で基板Sが停止するように、基板搬送部2を制御することで、上記作用効果が得られる。
【0056】
また、ヘッドユニット5を構成するヘッド51に装着されるノズルの組み合わせ、いわゆるヘッドバリエーションが変更されると、ヘッド非制約範囲ARが代わりに、これに伴って非制約領域NRの長さが変動することがある。したがって、ヘッドバリエーションが変更される毎に、
図6に示す処理を実行するのが望ましい。
【0057】
さらに、上記第1実施形態では、予め設定されている基準停止位置PS1で基板Sを停止させたときに基板Sが非制約領域NRから搬送方向Xにはみ出ないとき(ステップS5で「NO」のとき)、オフセットを行わずに上記基準停止位置PS1で停止しているが、基板Sが非制約領域NRからはみ出ない範囲で上記基準停止位置PS1をオフセットさせた位置で停止するように、コンベア21、21を制御するように構成してもよい。この点は後で説明する変形例や実施形態においても同様である。
【0058】
このように第1実施形態では、基板搬送部2と、制御ユニット4との組み合わせが本発明の「基板搬送装置」として機能し、ステップS2がヘッド非制約範囲ARおよび非制約領域NRを特定するための情報(上流端位置PH1および下流端位置PH2)を取得する工程であり、本発明の「第1工程」の一例に相当している。また、ステップS5が本発明の「第2工程」の一例に相当し、ステップS6、S7およびオフセット後の基準停止位置PS1への基板Sの搬送・位置決めが本発明の「第3工程」の一例に相当している。また、ヘッドユニット5が本発明の「第1ヘッドユニット」の一例に相当し、ヘッドユニット5の可動範囲MRが本発明の「第1可動範囲」の一例に相当している。また、基準停止位置PS1が本発明の「第1基準停止位置」の一例に相当している。また、ヘッド非制約範囲ARおよび非制約領域NRが、それぞれ本発明の「第1ヘッド非制約範囲」および「第1非制約領域」の一例に相当するとともに、非制約領域NRの上流端位置PH1および下流端位置PH2が、それぞれ本発明の「第1上流端位置」および「第1下流端位置」の一例に相当している。また、超過領域ERの長さLeが本発明の「第1超過量」の一例に相当している。
【0059】
なお、上記第1実施形態では、記録媒体RMaに停止設定プログラムを記録しておき、記録媒体RMaを介して制御ユニット4に提供しているが、記録媒体RMa以外に、電気通信回線を介して提供してもよい。また、第1実施形態では、生産プログラムに基づく部品実装処理に先立って、停止設定プログラムにしたがって基準停止位置の設定処理を行っているが、ホストコンピュータ900側で基準停止位置の設定処理を行うように構成してもよい。すなわち、記録媒体RMaや通信回線などを介して提供される停止設定プログラムに基づきホストコンピュータ900の演算処理部901が基準停止位置の設定処理を行い、その処理結果を生産プログラムに反映させてもよい。当該生産プログラムをホストコンピュータ900が部品実装装置100に提供することで第1実施形態と同様に作用効果が得られる。これらの点については、以下の実施形態においても同様である。
【0060】
また、第1実施形態では、単一の実装ステージSTで部品実装を行う部品実装装置100に対して本発明を適用しているが、例えば
図9に示すように、複数の実装ステージST1、ST2を搬送方向Xに並設した部品実装装置にも適用することができる。
【0061】
図9は本発明に係る基板搬送装置の第1実施形態の第3変形例を模式的に示す図である。この部品実装装置100では、実装ステージST1、ST2が搬送方向Xに互いに離間して設けられている。このため、2つの非制約領域NR1、NR2が存在する。すなわち、これら非制約領域NR1、NR2は、それぞれ本発明の「第1非制約領域」および「第2非制約領域」の一例に相当するものであり、ヘッド非制約範囲ARと第1実装ステージST1とが重なる領域が非制約領域NR1であり、ヘッド非制約範囲ARと第2実装ステージST2とが重なる領域が非制約領域NR2である。したがって、非制約領域NR1、NR2毎にオフセット処理を行う必要がある。より具体的には、第1実装ステージST1では
図8に示す「上流側オフセット処理」を実行して基板S1を位置決めし、第2実装ステージST2では
図5の(b)および(c)欄に示す「下流側オフセット処理」を実行して基板S2を位置決めするのが好適である。このようなオフセット処理によって、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0062】
また、
図9に示す部品実装装置100では、単一のヘッドユニット5により実装ステージST1、ST2に位置決めされた基板S1、S2に対して部品実装を行っているが、例えばヘッドユニットをさらに1個追加した装置にも本発明を適用することができる(
図10、
図11)。
【0063】
図10は本発明に係る基板搬送装置の第2実施形態を装備する部品実装装置を示す平面図である。
図11は
図10中のヘッド支持部材を切り欠き、
図10に示す部品実装装置における基板支持部を示す平面図である。
図10および
図11に示す部品実装装置200が、部品実装装置100と大きく相違する点は、2つの基板支持部3a、3bを設けることで2つの実装ステージST1、ST2が設けられている点と、それに対応して基板搬送部2の構成を変更した点と、2つのヘッドユニット5a、5bが設けられている点とである。なお、その他の構成は基本的に
図1および
図2に示す部品実装装置100と同一であるため、以下においては相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0064】
部品実装装置200では、
図11に示すように、2つの基板支持部3a、3bが搬送方向Xに互いに離間して配置されており、基板支持部3a、3bの直上空間がそれぞれ上流側の第1実装ステージST1および下流側の第2実装ステージST2に相当している。
図11中の符号PP11、PP12がそれぞれ上流実装ステージST1の上流端位置および下流端位置を示している。そして、これら上流端位置PP11および下流端位置PP12の間で上流側の目標位置(後で詳述する基準停止位置PS1に相当)が設定され、基板搬送部2により基板Sは位置決めされる。また、
図11中の符号PP21、PP22がそれぞれ下流実装ステージST2の上流端位置および下流端位置を示している。そして、これら上流端位置PP21および下流端位置PP22の間で下流側の目標位置(後で詳述する基準停止位置PS2に相当)が設定され、基板搬送部2により基板Sは位置決めされる。
【0065】
基板搬送部2は、一対のコンベア21、21と、一対のコンベア22、22と、一対のコンベア23、23と、一対のコンベア24、24とを有している。これらのコンベア21~24は搬送方向Xにこの順で配設されている。そして、駆動制御部43から搬送指令に応じてコンベア21~24が作動し、装置外部から基板Sを搬入し、X方向(搬送方向)に搬送する。そして、実装ステージST1の目標位置(後で説明する基準停止位置PS1に相当)に基板Sが搬送されると、コンベア22、22は駆動制御部43からの停止指令にしたがって基板搬送を停止する。これにより、実装ステージST1では、基板Sが搬送方向Xにおいて部品実装に適した目標位置に位置決めされる。また、コンベア22、22から搬送されてきた基板Sが実装ステージST2の目標位置(後で説明する基準停止位置PS2に相当)に搬送されると、コンベア23、23は駆動制御部43からの停止指令にしたがって基板搬送を停止する。これにより、実装ステージST2では、基板Sが搬送方向Xにおいて部品実装に適した目標位置に位置決めされる。このように、コンベア22、22は、ストッパ等の当接部材と機械的に当接させずに基板Sを基板搬送経路上に正確に停止させる機能を有しており、本発明の「第1ストッパレス搬送部」の一例に相当している。また、コンベア23、23は、ストッパ等の当接部材と機械的に当接させずに基板Sを基板搬送経路上に正確に停止させる機能を有しており、本発明の「第2ストッパレス搬送部」の一例に相当している。なお、実装ステージST1、ST2での基板の位置決めについては、それぞれ第1実施形態と同様にして実行されるが、その詳細については後で述べる。また、実装ステージST1、ST2で位置決めされる基板Sを区別するため、適宜、実装ステージST1で位置決めされる基板Sを「基板S1」と称する一方、実装ステージST2で位置決めされる基板Sを「基板S2」と称する。
【0066】
第2実施形態では、ヘッドユニット5aが(-Y)方向側の部品供給部7に対応して設けられるとともに、ヘッドユニット5bが(+Y)方向側の部品供給部7に対応して設けられている。部品実装装置200は、ヘッドユニット5a、5bを支持するために、それぞれX方向に延設されたヘッド支持部材63a、63bを備えている。ヘッド支持部材63aには、X方向に延びるX軸ボールネジ64と、X軸ボールネジ64を回転駆動するX軸モーターMxaとが取り付けられている。そして、ヘッドユニット5aがヘッド支持部材63aにX方向に移動可能に支持された状態でX軸ボールネジ64のナットに固定されている。このため、制御ユニット4の駆動制御部43からの駆動指令に応じてX軸モーターMxaが作動すると、ヘッドユニット5aは搬送方向Xと平行に移動する。また、ヘッド支持部材63Bも同様に構成されており、制御ユニット4の駆動制御部43からの駆動指令に応じてX軸モーターMxbが作動すると、ヘッドユニット5bは搬送方向Xと平行に移動する。なお、部品実装装置200では、ヘッドユニット5a、5bの移動範囲は同一値に設定されており、上記第1実施形態と同様に、実装ステージST1の上流端位置P11の上流位置から実装ステージST2の下流端位置P22の下流位置までの比較的広い範囲を移動可能となっている。ただし、後で詳述するが、ヘッドユニット5a、5bはインライン構造を有しているため、それぞれヘッド非制約範囲AR1、AR2を有している。しかも、
図9に示す装置と同様に、搬送方向Xにおいて互いに離間して配置された2つの実装ステージST1、ST2を有している。したがって、2つの非制約領域NR1、NR2が存在する。すなわち、ヘッド非制約範囲AR1と第1実装ステージST1とが重なる非制約領域NR1と、ヘッド非制約範囲AR2と第2実装ステージST2とが重なる非制約領域NR2とが存在する。
【0067】
このように構成されたヘッド支持部材63a、63bは、Y軸モーター(図示省略のリニアモータ)によってY軸レール66に沿ってY方向に移動可能である。すなわち、ヘッド支持部材63a、63bの両端部には、界磁コイルがリニアモータの可動子として取り付けられている。一方、Y軸レール66では、複数の永久磁石がY方向に沿って配列されてリニアモータの固定子として機能する。そして、ヘッド支持部材63aの可動子に電流が供給されると、ヘッド支持部材63aがヘッドユニット5aを伴ってY方向に移動する。また、ヘッド支持部材63bの可動子に電流が供給されると、ヘッド支持部材63bがヘッドユニット5bを伴ってY方向に移動する。こうして、ヘッドユニット5a、5bのそれぞれは、基板搬送部2の上方をXY方向に移動可能となっている。
【0068】
ヘッドユニット5a、5bは、
図1に示すヘッドユニット5と同様の構成を有している。すなわち、ヘッドユニット5aはX方向に並ぶ複数(本実施形態では10本)のヘッド51を有する。ヘッドユニット5aの(-Y)方向側の部品供給部7への移動に伴ってヘッド51が同部品供給部7に装着されたテープフィーダー71の上方へ移動して、テープフィーダー71により供給された部品を吸着する。続いて、ヘッドユニット5aの実装ステージST1、ST2への移動に伴ってヘッド51が実装ステージST1、ST2に位置決めされた基板Sの上方に移動して部品の吸着を解除することで、基板Sに部品を実装する。一方、ヘッドユニット5bの(+Y)方向側の部品供給部7への移動に伴ってヘッド51が同部品供給部7に装着されたテープフィーダー71の上方へ移動して、テープフィーダー71により供給された部品を吸着する。続いて、ヘッドユニット5bの実装ステージST1、ST2への移動に伴ってヘッド51が実装ステージST1、ST2に位置決めされた基板Sの上方に移動して部品の吸着を解除することで、基板Sに部品を実装する。なお、ここでは、ヘッドユニット5a、5bに装着されたヘッド51のバリエーションが同一であり、しかもヘッドユニット5a、5bの可動範囲はそれぞれ本発明の「第1可動範囲」および「第2可動範囲」に相当するが、これらは同一である。このため、ヘッド非制約範囲AR1、AR2は同一値ARである。
【0069】
このようにして実装ステージST1、ST2において位置決めされた基板S1、S2に対する部品実装が実行される。この部品実装装置200においても、実装ステージST1、ST2で基板Sを位置決めするための目標位置を固定化すると、
図5の(b)欄で示したように、基板Sの大型化によって比較的大きな超過領域ERが発生し、実装サイクルタイムが増大する。
【0070】
そこで、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、演算処理部41が、実装ステージST1について、次式
Le=Lx-Lf
に基づいて搬送方向Xにおける超過領域ERの長さ、つまり超過量Leを算出し、ゼロよりも大きいか否かを判定する。つまり、非制約領域NR1内に設定した基準停止位置PS1で基板S1を停止させたときに基板S1が非制約領域NR1から搬送方向Xにはみ出るか否かを演算処理部41が判定する。そして、例えば
図12Aに示すように、基板S1が非制約領域NR1内に収まっている場合には、基板S1の
上流端を予め設定した基準停止位置PS1と一致する状態で基板S1を停止させる(オフセット量OF=ゼロ)。この点については、第2実装ステージSpT2についても同様である。すなわち、非制約領域NR2内に設定した基準停止位置PS2で基板S2を停止させたときに基板S2が非制約領域NR2から搬送方向Xにはみ出ないため、
図12Aに示すように、基板S2の
下流端を予め設定した基準停止位置PS2と一致する状態で基板S2を停止させる。
【0071】
一方、超過量Leがゼロを超えている、つまり非制約領域NR1内に設定した基準停止位置PS1で基板S1を停止させたときに基板S1が非制約領域NR1から搬送方向Xにはみ出る場合には、
図12Bに示すように、上流側オフセット処理が実行される。この点については、第2実装ステージST2についても同様である。すなわち、非制約領域NR2内に設定した基準停止位置PS2で基板S2を停止させたときに基板S2が非制約領域NR2から搬送方向Xにはみ出るため、
図12Bに示すように、下流側オフセット処理が実行される。その結果、基板Sの大型化に伴う実装サイクルタイムの増大を抑止して効率的な部品実装が可能となる。なお、第2実装ステージST2側での超過領域ERの長さLeが本発明の「第2超過量」の一例に相当している。
【0072】
また、第2実施形態では、
図12Aに示すように、基板Sの基板サイズLxが切替基準情報Lf以下であり、比較的小さい場合には、基板S1、S2はそれぞれ非制約領域NR1、NR2内に位置決めされた状態で部品実装が実行される。つまり、ヘッド制約を受けることなく、部品実装を行うことができるため、優れた実装サイクルタイムが得られる。
【0073】
この第2実施形態では、基板Sの基板サイズLxが切替基準情報Lf以下の場合、オフセット量OFをゼロに設定し、予め設定した基準停止位置PS1、PS2からオフセットしていないが、
図12Cないし
図12Eに示すように、適宜オフセットしてもよい。
【0074】
図12Cは本発明に係る基板搬送装置の第2実施形態の第1変形例におけるオフセット動作を模式的に示す図である。この第1変形例では、基板Sの基板サイズLxが切替基準情報Lf以下であるもの、搬送方向Xにおける基板S1の上流端が非制約領域NR1の上流端位置PH1と一致した状態で基板S1が停止するようにコンベア22が制御される。また、搬送方向Xにおける基板S2の下流端が非制約領域NR2の下流端位置PH2と一致した状態で基板S2が停止するようにコンベア23が制御される。このように、基準停止位置PS1、PS2がオフセットされている。これによって、搬送方向Xにおける基板S1、S2の間隔Wが広がる。その結果、搬送方向Xと平行な方向におけるヘッドユニット5a、5b同士の干渉を回避するための待ち時間が少なくなり、実装サイクルタイムのロスを削減することができる。
【0075】
図12Dは本発明に係る基板搬送装置の第2実施形態の第2変形例におけるオフセット動作を模式的に示す図である。この第2変形例では、基板Sの基板サイズLxが切替基準情報Lf以下であるもの、コンベア22、23の接続近傍位置に部品認識カメラCa、Cbが配置されていることに対応したものである。すなわち、搬送方向Xにおける基板S1の下流端が非制約領域NR1の下流端位置PH12と一致した状態で基板S1が停止するようにコンベア22が制御される。また、搬送方向Xにおける基板S2の上流端が非制約領域NR2の上流端位置PH21と一致した状態で基板S2が停止するようにコンベア23が制御される。このように、基準停止位置PS1、PS2がオフセットされている。これによって、搬送方向Xにおける基板S1、S2の間隔Wが狭まる。その結果、ヘッドユニット5a、5bがそれぞれ部品認識カメラCa、Cbを経由して基板Sに移動する距離が短縮され、実装サイクルタイムの向上に有利に作用する。
【0076】
図12Eは本発明に係る基板搬送装置の第2実施形態の第3変形例におけるオフセット動作を模式的に示す図である。この第3変形例では、ヘッドユニット5a、5bに装着されたヘッド51のバリエーションに対応したものである。例えばヘッドユニット5aが基板S1への部品実装を担当する場合、
図12Eに示すように、ヘッドユニット5aに装着されたヘッド51を用いた基板S1への部品実装の好適な位置に基板S1を位置決めするのが望ましい。そこで、第3変形例では、上記好適な位置に基板S1が位置決めされるように基準停止位置PS1がオフセットされ、オフセット後の基準停止位置PS1に基板S1の上流端が一致するように位置決めされる。この点については、ヘッドユニット5bが基板S2への部品実装を担当する場合も同様である。このようなオフセット処理によって、ヘッドユニット5aによる基板S1への部品実装と、ヘッドユニット5bによる基板S2への部品実装とが効率的に行われ、実装サイクルタイムの向上に有利に作用する。
【0077】
上記した第2実施形態およびその変形例では、基板S1、S2がそれぞれ本発明の「第1基板」および「第2基板」の一例に相当し、基準停止位置PS1、PS2がそれぞれ本発明の「第1基準停止位置」および「第2基準停止位置」の一例に相当している。
【0078】
上記第2実施形態では、ヘッド非制約範囲AR1、AR2は同一値ARであったが、例えばヘッドユニット5a、5bに装着されたヘッド51のバリエーションが大きく相違している等の理由によりヘッド非制約範囲AR1、AR2が異なる場合も存在する。また、
図12Cや
図12Dに示す変形例のようにヘッドユニット5a、5bが実装ステージST1、ST2の両方にアクセスしたり、
図12Eに示すようにヘッドユニット5a、5bがそれぞれ実装ステージST1、ST2のみにアクセスしたりすることがある。そこで、ヘッド非制約範囲AR1、AR2が相互に異なるとともにヘッドユニット5a、5bが実装ステージST1、ST2の両方にアクセスする場合(第3実施形態)と、ヘッド非制約範囲AR1、AR2が相互に異なるとともにヘッドユニット5a、5bがそれぞれ実装ステージST1、ST2のみにアクセスする場合(第4実施形態)とについて、順次説明する。
【0079】
図13は本発明に係る基板搬送装置の第3実施形態におけるオフセット動作を模式的に示す図である。同図では、ヘッド非制約範囲AR2がヘッド非制約範囲AR1よりも狭く、しかも搬送方向Xにおいてヘッド非制約範囲AR1に包含されている。しかも、同図中の太矢印で示すように、ヘッドユニット5a、5bが実装ステージST1、ST2の両方にアクセスして部品実装を行う。そこで、本実施形態では、ヘッド非制約範囲AR2が非制約領域を決定するための基準となる。つまり、ヘッド非制約範囲AR2と実装ステージST1、ST2の重なる領域がそれぞれ非制約領域NR1、NR2に相当する。なお、基準停止位置PS1、PS2のオフセット処理については、上記第2実施形態および変形例と同一であるため、説明を省略する。
【0080】
図14は本発明に係る基板搬送装置の第4実施形態におけるオフセット動作を模式的に示す図である。この第4実施形態が第3実施形態と大きく相違している点は、同図中の太矢印で示すように、ヘッドユニット5a、5bがそれぞれ実装ステージST1、ST2のみにアクセスする点である。この第4実施形態では、実装ステージST1、ST2毎に非制約領域を決定するための基準が異なっている。つまり、ヘッドユニット5aが実装ステージST1での部品実装の専用構成であるため、ヘッドユニット5aのヘッド非制約範囲AR1と実装ステージST1の重なる領域が非制約領域NR1に相当する。一方、ヘッドユニット5bが実装ステージST2での部品実装の専用構成であるため、ヘッドユニット5bのヘッド非制約範囲AR2と実装ステージST2の重なる領域が非制約領域NR2に相当する。なお、基準停止位置PS1、PS2のオフセット処理については、上記第2実施形態および変形例と同一であるため、説明を省略する。
【0081】
以上のように、第3実施形態および第4実施形態では、ヘッド非制約範囲AR1、AR2が相互に異なっているものの、上記第2実施形態および変形例と同様に、搬送方向Xにおける基板の大型化に伴う実装サイクルタイムの増大を抑止して効率的な部品実装が可能となる。また、基板Sの基板サイズLxが切替基準情報Lf以下であり、比較的小さい場合には、非制約領域NR1、NR2に収められた状態で部品実装が実行される。つまり、ヘッド制約を受けることなく、部品実装を行うことができるため、優れた実装サイクルタイムが得られる。さらに、
図12Cないし
図12Eに示すように、上記比較的小さな基板S1、S2の配置を工夫することで、実装サイクルタイムの削減を図ることができる。
【0082】
図15は本発明に係る基板搬送装置の第5実施形態におけるオフセット動作を模式的に示す図である。この部品実装装置200の基本構成は第2実施形態と同一である。ただし、搬送方向Xにおける実装ステージST1、ST2の寸法よりも長い、いわゆる長尺基板Sについて部品実装を行うため、基板搬送部2のコンベア21~23が同期して作動し、長尺基板Sが実装ステージST1、ST2に跨って位置決めされる。そこで、第5実施形態では、搬送方向Xにおいてヘッド非制約範囲ARが実装ステージST1と重なる領域の最上流位置PH1と実装ステージST2と重なる領域の最下流位置PH2とで挟まれた領域を非制約領域NRとして設定している。
【0083】
予め設定されている基準停止位置PS1で長尺基板Sを位置決めした際に、例えば
図15の(a)欄に示すように、長尺基板Sが非制約領域NRに収まっている場合には、非制約領域NRに収められた状態で部品実装が実行される。つまり、ヘッド制約を受けることなく、部品実装を行うことができるため、優れた実装サイクルタイムが得られる。
【0084】
一方、長尺基板Sが非制約領域NRからはみ出るときには、
図15の(b)欄に示すように、第1実施形態と同様に基準停止位置PS1をオフセットしている。このため、長尺基板Sの大型化に伴い長尺基板Sが非制約領域NRからはみ出すものの、超過領域ERがオフセット前よりも狭まり、ヘッド制約を受けるヘッド51の本数も少なくなる。その結果、長尺基板Sの大型化に伴う実装サイクルタイムの増大を抑止して効率的な部品実装が可能となる。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、10本のヘッド51を一列に配置したインライン構造を有するヘッドユニット5、5a、5bを有する部品実装装置100、200に対して本発明を適用しているが、ヘッド51の本数は「10」に限定されるものでない。また、搬送方向Xに平行な方向に配列されたヘッド列が搬送方向Xと直交するY方向に複数個配列されたインライン構造を有するヘッドユニットを用いた部品実装装置に対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
この発明は、複数のヘッドを所定の配列方向に配列した、いわゆるインライン構造を有するヘッドユニットを用いて基板への部品の実装を行う部品実装装置において基板を搬送する基板搬送技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
2…基板搬送部(基板搬送装置)
4…制御ユニット(制御部)
5,5a…(第1)ヘッドユニット
5b…第2ヘッドユニット
21、22…コンベア(第1ストッパレス搬送部)
23…コンベア(第2ストッパレス搬送部)
41…演算処理部(制御部)
51…ヘッド
51a…(最下流の)ヘッド
51j…(最上流の)ヘッド
100,200…部品実装装置
900…ホストコンピュータ
AR,AR1…第1ヘッド非制約範囲
AR2…第2ヘッド非制約範囲
ER…超過領域
MR…第1可動範囲
NR,NR1…第1非制約領域
NR2…第2非制約領域
OF…オフセット量
PH1、PH1a、PH1b…(ヘッド非制約範囲、非制約領域の)上流端位置
PH2、PH2a、PH2a…(ヘッド非制約範囲、非制約領域の)下流端位置
PP11…(第1実装ステージの)上流端位置
PP12…(第1実装ステージの)下流端位置
PP21…(第2実装ステージの)上流端位置
PP22…(第2実装ステージの)下流端位置
PS1…第1基準停止位置
PS2…第2基準停止位置
RMa…記録媒体
S,S1,S2…基板、長尺基板
ST1…第1実装ステージ
ST2…第2実装ステージ
X…搬送方向、配列方向