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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
E01F7/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024032079
(22)【出願日】2024-03-04
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】吉田 眞輝
(72)【発明者】
【氏名】井坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】川端 聡史
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5779734(JP,B1)
【文献】特開2021-155978(JP,A)
【文献】特開2014-001584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/00~7/04
E04H 17/00~17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を隔てて立設した複数の支柱と、支柱の上部および下部に上辺と下辺を係留して隣り合う支柱間に横架した崩落物の捕捉機能を有する合成繊維製の防護ネットとを具備し、複数の中間支柱の間に防護ネット製の阻止面を形成した中間区間と、中間支柱と端末支柱との間に防護ネット製の阻止面を形成した端末区間とを有する防護柵であって、
前記端末支柱と該端末支柱の外方に設けた側方アンカーとの間に枠ロープ製の端末疑似阻止面を配置し、
前記端末疑似阻止面の枠ロープが端末支柱に沿って配置した側辺と、該側辺の両端から連続して形成した一対の控え辺とを有し、
前記一対の控え辺を共通の側方アンカーまたは個別の側方アンカーに固定し、
受撃時に端末疑似阻止面の枠ロープが端末区間内へ向けて延伸するように、前記端末疑似阻止面の枠ロープの一部と、防護ネットの端末辺との間を連結したことを特徴とする、
防護柵。
【請求項2】
前記支柱の上部および下部に係留素子を設け、該係留素子を介して防護ネットの上下辺と端末疑似阻止面の枠ロープとを摺動可能に係留したことを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項3】
前記防護ネットが支柱の上部および下部に係留する枠ロープと、該枠ロープに内接して一体に設けたネット材からなることを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項4】
前記端末疑似阻止面の枠ロープと防護ネットの枠ロープの伸び率がほぼ等しい関係にあることを特徴とする、請求項3に記載の防護柵。
【請求項5】
前記端末疑似阻止面を防護ネットの延長方向に沿って配置したことを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項6】
前記端末疑似阻止面を防護ネットの横断方向に沿って配置したことを特徴とする、請求項1に記載の防護柵
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石、土砂、雪崩などの崩落物を捕捉する防護柵に関し、特に合成繊維製の防護ネットを具備した防護柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
落石や土砂等の崩落物を捕捉するために、間隔を隔てて立設した複数の支柱(中間支柱と端末支柱)と、支柱間に張り巡らせた防護ネットを具備した防護柵が知られている(特許文献1)。
防護ネットには、ワイヤーロープや金網を組み合わせた高強度の金属製の防護ネットと、取扱性と耐食性等に優れた合成繊維製の防護ネットが知られている。
この種の防護柵は、複数の中間支柱の間に防護ネット製の阻止面を形成した中間区間と、端末支柱と中間支柱の間に防護ネット製の阻止面を形成した端末区間とを有している。
阻止面を構成する防護ネットの端末部は、端末支柱の全長に亘って固定してある。
【0003】
一般的に防護柵は、受撃時における端末区間の負担荷重が中間区間と比べて大きいことが知られている。
そのため、端末区間の強度を高める手段が種々提案されている。
端末区間の強度を高める手段として、端末支柱を中間支柱と比べて高強度に設計することが知られている。
特許文献2には、端末支柱にサポート支柱を斜めに設置して端末区間を補強することが開示されている。
特許文献3には、端末区間の支柱頭部間に上弦材を架設すると共に、隣り合う一対の支柱の上下部間にブレース材をX状に連結して端末区間を補強することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-24378号公報
【文献】特開2017-14760号公報
【文献】特開2023-146863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の防護柵はつぎの解決すべき課題を有している。
<1>端末支柱を高強度に設計する手法は、防護柵の高騰化の一因となっている。
<2>高剛性のサポート支柱を追加設置する特許文献2の補強構造は、端末支柱を防護柵の長手方向だけでなく前後方向へも補強効果を発揮するため、端末支柱の変形に起因したエネルギー吸収効果が低下する。
さらに、サポート支柱が端末区間の阻止面内に位置するため、サポート支柱に直撃した落石が飛び跳ねて二次災害を誘発する危険もある。
<3>上弦材とブレース材を組み合わせた特許文献3の補強構造は、端末区間の構成資材数が増えるので資材コストが嵩むだけでなく、端末区間の組み立てに多くの時間と労力を要して施工性が悪くなる。
<4>例えば、端末区間に受撃すると、防護ネットの端末部と端末支柱との連結箇所に荷重が集中して防護ネットが破損するおそれがある。
<5>特許文献1,2に記載の手段により防護柵の端末区間を補強できたとしても、端末区間の阻止面による衝撃吸収性能を高めることにはつながらない。
端末区間における阻止面の変形量が中間区間と比べて小さく、端末区間の阻止面による衝撃吸収性能が中間区間に対して低い関係にあるからである。
そのため、端末区間の衝撃吸収性能を改善できる技術の提案が求められている。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、既述した従来技術の課題を解決可能な防護柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、間隔を隔てて立設した複数の支柱と、支柱の上部および下部に上辺と下辺を係留して隣り合う支柱間に横架した崩落物の捕捉機能を有する合成繊維製の防護ネットとを具備し、複数の中間支柱の間に防護ネット製の阻止面を形成した中間区間と、中間支柱と端末支柱との間に防護ネット製の阻止面を形成した端末区間とを有する防護柵であって、前記端末支柱と該端末支柱の外方に設けた側方アンカーとの間に枠ロープ製の端末疑似阻止面を配置し、受撃時に端末疑似阻止面の枠ロープが端末区間内へ向けて延伸するように、前記端末疑似阻止面の枠ロープの一部と、防護ネットの端末辺との間を連結した。
本発明の他の形態において、前記支柱の上部および下部に係留素子を設け、該係留素子を介して防護ネットの上下辺と端末疑似阻止面の枠ロープとを摺動可能に係留した。
本発明の他の形態において、前記防護ネットは支柱の上部および下部に係留する枠ロープと、該枠ロープに内接して一体に設けたネット材からなる。
本発明の他の形態において、前記端末疑似阻止面の枠ロープと防護ネットの枠ロープの伸び率がほぼ等しい関係にある。
本発明の他の形態において、前記端末疑似阻止面の枠ロープが端末支柱に沿って配置した側辺と、該側辺の両端から連続して形成した一対の控え辺とを有し、前記一対の控え辺を共通の側方アンカーまたは個別の側方アンカーに固定する。
本発明の他の形態において、前記端末疑似阻止面を防護ネットの延長方向に沿って配置してもよいし前記端末疑似阻止面を防護ネットの横断方向に沿って配置してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>受撃時に端末疑似阻止面の枠ロープが端末区間内へ向けて延伸するように、端末疑似阻止面の枠ロープの一部と、防護ネットの端末辺との間を連結することで、端末区間における防護ネットを中間区間と同様に挙動させることができる。
したがって、防護ネットの端末部を破断させずに、端末区間における衝撃吸収性能を向上させることができる。
<2>端末区間における防護ネットは、端末区間に隣接した他の防護ネットと端末疑似阻止面に対して衝撃力を分散して吸収できるので、端末支柱に作用する荷重負担を軽減できる。
したがって、端末支柱を中間支柱と比べて高強度に設計する必要がなくなり、端末支柱を経済的に製作できる。
<3>端末疑似阻止面の枠ロープと防護ネットの枠ロープの伸び率をほぼ同じに設定しておけば、端末区間に位置する防護ネットと端末疑似阻止面に設けた枠ロープの延伸量が均等になる。
そのため、端末区間における防護ネットのはらみ変形をバランスよく円滑に行うことができる。
<4>端末区間に受撃した場合には、中間区間に受撃した場合と同様に防護ネットで崩落物を捕捉することができる。
<5>本発明では、受撃時における端末支柱の荷重負担は中間支柱と同程度となって、端末支柱の荷重負担を大幅に軽減できる。
したがって、端末支柱を中間支柱と比べて高強度にしたり、端末支柱にサポート支柱を設置して端末区間を補強したりする必要がなくなり、防護柵を経済的に設計することができる。
<6>端末疑似阻止面は、防護ネットの延長方向に配置できるだけでなく、防護ネットの横断方向に沿って配置することも可能である。
そのため、端末疑似阻止面の設置の自由度が増し、防護柵の現場状況に応じて端末疑似阻止面を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一部を省略した本発明に係る防護柵のモデル図
図2】防護ネットの一部を省略した中間支柱の位置における防護柵の拡大図
図3】防護ネットの一部を省略した端末支柱の位置における防護柵の拡大図
図4】中間区間における防護ネットの捕捉作用を説明するための防護柵のモデル図
図5図4におけるV-Vの断面図
図6】端末区間における防護ネットの捕捉作用を説明するための防護柵のモデル図
図7図6におけるVII-VIIの断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
図面を参照しながら本発明の実施例について詳しく説明する。
【0011】
<1>防護柵の概要
図1~3を参照しながら説明すると、本発明に係る防護柵は、所定の間隔を隔てて自立可能に立設した複数の支柱10(中間支柱10aと端末支柱10b)と、複数の支柱10の斜面谷側に横架した防護ネット20と、防護ネット20の端末辺に連結して端末支柱10bの外方に延設した端末疑似阻止面30とを具備する。
【0012】
<2>支柱
支柱10は中間支柱10aと端末支柱10bを含み、両支柱10a,10bの基本構造は同一である。
本発明では、端末支柱10bの強度を中間支柱10aより高く設定する必要がなく、中間支柱10aおよび端末支柱10bは同一の強度でよい。
【0013】
<2.1>中間区間と端末区間
以降の説明にあたり、隣り合う一対の中間支柱10aの区間を中間区間20aと定義し、中間支柱10aと端末支柱10bとの間を端末区間20bと定義して説明する。
【0014】
<2.2>支柱の例示
支柱10は、例えば鋼管、H鋼、コンクリート充填鋼管、コンクリート柱管等の高剛性の柱体である。
【0015】
<2.3>支柱の立設形態
支柱10の立設形態としては、支柱10の下部を支持基礎40(現地地盤、コンクリート基礎)中に埋設して立設する形態の他に、支柱10の下部を埋設せずに支持基礎40の表面に着地させた形態で立設してもよい。
【0016】
<2.4>係留素子
支柱10の上下部には防護ネット20を取り付けるための係留素子11を具備する。
防護ネット20の上下辺は、係留素子11を介して支柱10の上下部に取り付ける。
本例では、係留素子11としてシャックルを用いた形態について説明するが、係留素子11はシャックルに限定されず、防護ネット20の上下辺を係留可能な構造要素であればよい。
防護ネット20はその上下辺を支柱10に係留するだけであって、支柱10の全長に亘って固定されていない。
【0017】
<2.5>控えロープ
必要に応じて各支柱10の頭部に、控えロープ(図示省略)の上部を接続すると共に、控えロープの下端を山側アンカーや側方アンカーに接続して、各支柱10の傾倒を抑制する。
【0018】
<3>防護ネット
防護ネット20は崩落物を捕捉するための阻止面であり、ロープ材またはネット材の何れか一方、またはこれらを組み合わせた合成繊維製のネット状物で構成する。
本例で例示した防護ネット20は、矩形を呈する枠ロープ21と、枠ロープ21の内方に一体に形成したネット材22とを具備する。
防護ネット20は、係留素子11を介して枠ロープ21の四つ角が隣り合う一対の支柱10の上下部間にそれぞれ係留されている。
【0019】
防護ネット20は一枚もののネット材であるが、防護ネット20の受撃面側に目合いの小さなネット材や硬質のネット材を重合して配置してもよい。
【0020】
<3.1>防護ネットの全長
防護ネット20の全長はスパン単位でもよいし、複数スパンに亘る全長を有する形態でもよい。
本例では、スパン単位で形成した複数の防護ネット20の枠ロープ21の左右の側辺21a.21a間に連結ロープ23を巻き付けて防護ネット20に連続性を持たせた形態について説明する。
【0021】
<3.2>枠ロープ
防護ネット20の枠ロープ21は、無端構造(エンドレス構造)を呈していて、図1に示すように、左右一対の側辺21aと上辺21bおよび下辺21cを有する。
【0022】
枠ロープ21の素材としては、例えば複数本のポリエステル製のストランドを編み込んで中空構造に編成した一定長の伸長が可能な合成繊維製のブレードロープが使用可能である。
枠ロープ21としてブレードロープを使用する場合、ブレードロープの端部を互いに挿し込み合うことで簡単に無端構造にすることができる。
【0023】
<3.3>ネット材
ネット材22は菱形または方形の網目を有する合成繊維製のネット材であり、枠ロープ21に内接して一体に形成してある。
ネット材22の編地としては、ラッセル編や無結節網等が適用可能である。
【0024】
ネット材22の素材としては、例えばナイロン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリプロピレン繊維、低圧ポリエチレン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維等の何れか一種、またはニ種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
<3.4>吊りロープとリング体
本例では防護ネット20を横架する際に吊りロ―プ12とリング体13を用いて垂下する形態について説明する。
吊りロ―プ12と隣り合う各支柱10の頭部間に横架してある。
吊りロ―プ12には複数のリング体13が係留してあって、リング体13を介して防護ネット20の上辺の枠ロープ21を吊りロ―プ12に垂下している。
なお、吊りロ―プ12やリング体13は、必須ではなく省略する場合もある。
【0026】
<4>端末疑似阻止面
端末疑似阻止面30は、端末区間20bの防護ネット20による崩落物の捕捉作用を支援するために機能する疑似的な阻止面である。
端末疑似阻止面30は、端末区間20bの防護ネット20の延長方向に隣接して設けて、端末区間20bの防護ネット20との間で荷重伝達が可能である。
端末疑似阻止面30は、ネット要素を具備せず、枠ロープ31のみで構成する。
【0027】
<4.1>端末疑似阻止面の枠ロープ
端末疑似阻止面30を構成する枠ロープ31は、端末支柱10bに沿って配置した側辺31aと、側辺31aの両端から連続して形成した一対の控え辺31b,31bとを有する。
端末疑似阻止面30の枠ロープ31は、防護ネット20の枠ロープ21と同様に伸縮性の素材で形成してある。
【0028】
<4.2>端末疑似阻止面と防護ネットの枠ロープの伸び率の関係
端末疑似阻止面30の枠ロープ31と防護ネット20の枠ロープ21の伸び率は、ほぼ等しい関係にある。
これは、端末区間20bの防護ネット20に受撃したときに、枠ロープ31が伸びて端末区間20bに位置する防護ネット20による谷側へ向けたたわみ変形を阻害しないようにするためである。
【0029】
<4.3>枠ロープの配置形態
枠ロープ31は、端末支柱10bの上下の係留素子11,11に対して摺動可能に係留する。枠ロープ31の両端部は側方アンカー41に固定する。
枠ロープ31を用いて端末疑似阻止面30を形成するに際し、端末支柱10bと平行に配置した区間に側辺31aを形成し、側辺31aの上下部から側方アンカー41までの区間に控え辺31b,31bを形成する。
【0030】
<4.4>側方アンカー
本例では、端末支柱10bの外方であって、防護ネット20の延長先上に側方アンカー41を設け、各控え辺31b,31bの基端を共通の側方アンカー41に固定した形態について説明する。
【0031】
枠ロープ31は無端構造の使用に限定されず、枠ロープ31を構成する一対の控え辺31b,31bの基端を個別に設けた複数の側方アンカーに固定してもよい。
【0032】
<4.5>枠ロープの本数
枠ロープ31は1本のロープ材で構成してもよいし、複数本のロープ材で構成してよい。
枠ロープ31を複数本のロープ材で構成する場合は、独立した複数本のロープ材を組み合わせて使用する形態と、一本ものの長尺ロープ材を多重に巻き掛けて使用する形態がある。
【0033】
<5>防護ネットの係留構造
中間区間20aにおける防護ネット20の上下辺は、係留素子11,11を介して中間支柱10aの上下部に係留してある。
【0034】
端末区間20bにおける防護ネット20は、その上下辺が、中間支柱10aと端末支柱10bの上下部に係留するだけであって、端末区間20bに位置する防護ネット20は端末支柱10bの全長に亘って固定されていない。
【0035】
<6>中間区間における防護ネットの連結構造
中間区間20aに位置する防護ネット20の左右辺(枠ロープ21の側辺21a)の間は、連結ロープ23を介して荷重伝達が可能に連結してある。
【0036】
<7>端末区間における防護ネットの連結構造
端末区間20bに位置する防護ネット20の一端(左端)は、連結ロープ23を介して中間区間20aに位置する防護ネット20の右端(枠ロープ21の側辺21a)と荷重伝達が可能に連結してある。
端末区間20bに位置する防護ネット20の他端(右方の端末辺)は、連結ロープ23を介して端末疑似隣接面30の左辺(枠ロープ31の側辺31a)と荷重伝達が可能に連結してある。
【0037】
<8>防護ネットによる阻止面と端末疑似阻止面の関係
中間区間20aおよび端末区間20bに設けた防護ネット20は、崩落物Wを直接捕捉する阻止面として機能する。
【0038】
端末疑似阻止面30は、ネット要素を具備しないため、枠ロープ31のみで崩落物Wを捕捉する阻止面としての機能を持たない。
端末疑似阻止面30は、防護ネット20の端末辺と連結することで、端末区間20bに位置する防護ネット20の捕捉機能をサポートするので、疑似的な阻止面としての機能を有している。
【0039】
[防護柵の捕捉作用]
図4~7を参照しながら防護柵による崩落物Wの捕捉作用について説明する。
【0040】
<1>中間区間における捕捉作用(図4,5)
中間区間20aに崩落物Wが衝突すると、中間区間20aに位置する阻止面である防護ネット20の張力が増して斜面谷側へ向けて変形する。
防護ネット20に一定以上の張力が作用すると、防護ネット20がネットの長手方向(横方向)に向けて伸長する。
【0041】
複数の防護ネット20は連続性を有していることから、中間区間20aに位置する防護ネット20が斜面谷側へ向けて変形すると、受撃した防護ネット20の左右に隣接した他の防護ネット20,20へと衝撃力が伝達されて、隣接する他の防護ネット20,20が受撃した中間区間20a内に引き込まれる。
【0042】
他の防護ネット20,20が中間区間20a内に引き込まれることで、受撃した中間区間20aに位置する防護ネット20の全長が実質的に長くなる。
【0043】
崩落物Wの衝撃力は、中間区間20aに位置する防護ネット20と、左右に隣接する他の防護ネット20,20のたわみ変形により吸収されると共に、最終的に受撃区間の両側に位置する中間支柱10a,10aによって支持される。
【0044】
このように特定スパンの中間区間20aに崩落物Wが衝突した場合には、中間区間20aに位置する防護ネット20を中心として、左右に隣接する他の防護ネット20を巻き込みながらたわみ変形をするので、防護柵は本来の捕捉機能を発揮できる。
【0045】
<2>端末区間における捕捉作用(図4,5)
端末区間20bに崩落物Wが衝突した場合には、端末区間20bに位置する阻止面である防護ネット20の張力が増して斜面谷側へ向けて変形する。
端末区間20bに位置する防護ネット20に一定以上の張力が作用すると、防護ネット20がネットの長手方向(横方向)に向けて伸長する。
【0046】
仮に、端末疑似阻止面30が存在しなければ、端末区間20bに位置する防護ネット20がネットの長手方向(横方向)に向けて伸長する際に、端末区間20bに位置する防護ネット20の左辺側は延伸を許容するものの、防護ネット20の右方の端末辺は端末支柱10bに固定されているために延伸が期待できない。
そのため、端末区間20bの右方の端末辺と端末支柱10bとの間に大きな応力が集中して防護ネット20が破損するおそれがある。
【0047】
本発明では、受撃時に端末疑似阻止面30の枠ロープ31が端末区間10b内へ向けて延伸するように、端末疑似阻止面30の枠ロープ3の一部と、防護ネット20の端末辺との間を連結した。
そのため、端末区間20bの受撃時において、受撃した防護ネット20の左右両側が延伸して端末区間20bにおける阻止面の面積が実質的に大きくなって、端末区間20bに位置する防護ネット20が本来の捕捉機能を発揮できる。
【0048】
<2.1>端末区間で発生した衝撃力の吸収
本発明では、端末区間20bに位置する防護ネット20の左辺側と端末辺側(右辺側)の両側が延伸を許容するため、端末区間20bの防護ネット20に作用した衝撃力を、左右の接続要素である中間区間に位置する防護ネット20と、端末疑似阻止面30を構成する枠ロープ31とに分散して吸収することができる。
端末疑似阻止面30の枠ロープ31に生じた張力は、側方アンカー41により支持される。
【0049】
<2.2>防護ネットの端末辺と端末支柱の関係
防護ネット20の端末辺は、端末支柱10bの上下部に係留されているだけであって、端末支柱10bの全長に亘って固定した構造になっていない。
そのため、端末区間20bに位置する防護ネット20の端末辺と端末支柱10bとの間に過大な応力が集中しない。
【0050】
<2.3>防護ネットと端末疑似阻止面の延伸量の関係
既述したように、端末区間20bの受撃時において、受撃した防護ネット20の左右両側が延伸する。
端末疑似阻止面30の枠ロープ31と防護ネット20の枠ロープ21の伸び率がほぼ同じに設定してあれば、端末区間20bに位置する防護ネット20と端末疑似阻止面に設けた枠ロープ31の延伸量が均等になる。
そのため、端末区間20bにおける防護ネット20のはらみ変形をバランスよく円滑に行うことができる。
【0051】
<2.4>中間区間の阻止面の挙動と端末区間の阻止面の挙動
既述したように、左右両側に隣接した他の防護ネット20の伸びによって中間区間20aにおける阻止面(防護ネット20)は、左右両側の延伸が可能である。
同様に、左右両側に隣接した他の防護ネット20と端末疑似阻止面30の枠ロープ31の伸びによって端末区間20bにおける阻止面(防護ネット20)も左右両側の延伸が可能である。
したがって、中間区間20aに受撃した場合も、端末区間20bに受撃した場合も阻止面である防護ネット20の挙動は同じとなる。
【0052】
<3>端末支柱の荷重負担
端末疑似阻止面30を具備しない従来の防護柵にあっては、受撃時における端末区間の負担荷重が中間区間と比べて大きいことから、その対策として端末支柱を中間支柱と比べて高強度にするか、端末支柱にサポート支柱を斜めに設置して端末区間を補強していた。
【0053】
本発明では、防護ネット20の端末辺が端末支柱10bの上下部に係留されているだけであって、防護ネット20の端末辺が端末支柱10bの全長に亘って固定した構造にはなっていない。
そのため、受撃時における端末支柱10bの荷重負担は中間支柱10aと同程度となって、端末支柱10bの荷重負担を大幅に軽減できる。
したがって、端末支柱10bを中間支柱10aと比べて高強度にしたり、端末支柱10bにサポート支柱を設置して端末区間を補強したりする必要がなくなり、防護柵を経済的に設計することができる。
【0054】
[実施例2]
以降に他の実施例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例1と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0055】
<1>端末疑似阻止面の他の配置形態
先の実施例では、端末疑似阻止面30を、端末区間20bに設けた防護ネット20の延長方向に沿って配設した形態について説明したが、端末疑似阻止面30の配置形態はこれに限定されない。
端末疑似阻止面30を防護ネット20の横断方向(貫通方向)に沿って配置してもよい。
すなわち、端末支柱10bの斜面谷側または斜面山側に側方アンカー41を設け、端末支柱10bに係留した枠ロープ31の控え辺31b,31bを側方アンカー41に固定する。
本例では、防護柵を平面視したときに端末疑似阻止面30を防護ネット20に対して屈曲して形成し、その屈曲角度は適宜選択が可能である。
【0056】
<2>本実施例の作用効果
本実施例における基本的な作用効果は、既述した実施例1と同様である。
特に本実施例では、防護ネット20の延長方向に側方アンカー41を設置できない現場でも、防護ネット20の横断方向に向けて側方アンカー41を設置して対応ができるため、端末疑似阻止面30の設置の自由度が増す。
【符号の説明】
【0057】
10・・・・支柱
10a・・・中間支柱
10b・・・端末支柱
11・・・・係留素子
12・・・・吊りロ―プ
13・・・・リング体
20・・・・防護ネット
21・・・・枠ロープ
22・・・・ネット材
23・・・・連結ロープ
20a・・・中間区間
20b・・・端末区間
30・・・・端末疑似阻止面
31・・・・枠ロープ
40・・・・支持基礎
41・・・・側方アンカー
【要約】
【課題】簡易な手法により、防護ネットの端末部を破断させずに、端末区間における衝撃吸収性能を向上できる防護柵を提供すること。
【解決手段】間隔を隔てて立設した複数の支柱10(10a,10b)と、合成繊維製の防護ネット20とを具備した防護柵であって、端末支柱10bと該端末支柱10bの外方に設けた側方アンカー41との間に枠ロープ31製の端末疑似阻止面30を配置し、受撃時に端末疑似阻止面の枠ロープ31が端末区間20b内へ向けて延伸するように、端末疑似阻止面30の枠ロープ31の一部と、防護ネット20の端末辺との間を連結した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7