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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】焼成用治具およびフレーム
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/64 20060101AFI20240925BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C04B35/64
F27D3/12 S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024053005
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-05-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智実
(72)【発明者】
【氏名】関川 義博
(72)【発明者】
【氏名】白井 啓介
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/014835(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/008503(WO,A1)
【文献】中国実用新案第203719423(CN,U)
【文献】特開2004-075519(JP,A)
【文献】特開2011-117669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/64
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレー状のフレームと、
前記フレームの上方に配置される耐火メッシュと
を備えており、
前記フレームは、
当該フレームの外形をなす外枠と、
前記外枠を架橋するリブと、
前記外枠と前記リブとに囲まれたガス通過孔と、
前記リブから上方に向かって突出する第1突起と
を備えており、
前記リブ上面の総面積を100%としたときの前記第1突起の形成領域の面積は、15%以上であり、
前記耐火メッシュに前記第1突起を挿通させる開口部が設けられており、当該開口部を介して前記第1突起が前記耐火メッシュの上面よりも上方に突出している、焼成用治具。
【請求項2】
トレー状のフレームと、
前記フレームの上方に配置される耐火メッシュと
を備えており、
前記フレームは、
当該フレームの外形をなす外枠と、
前記外枠を架橋する複数のリブと、
前記外枠と前記リブとに囲まれたガス通過孔と、
前記リブから上方に向かって突出する第1突起と
を備えており、
前記第1突起は、
前記リブの延伸方向に沿って連続して延びた壁状の突起であり、
複数の前記リブが交差した部分に形成されておらず、
前記耐火メッシュに前記第1突起を挿通させる開口部が設けられており、当該開口部を介して前記第1突起が前記耐火メッシュの上面よりも上方に突出している、焼成用治具。
【請求項3】
前記第1突起は、上端に向かって細くなるテーパー状の突起である、請求項1または2に記載の焼成用治具。
【請求項4】
前記第1突起は、前記リブの延伸方向に沿って連続して延びている、請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項5】
前記フレームは、前記外枠から上方に向かって突出する第2突起をさらに備えており、
前記第2突起は、前記耐火メッシュの切り欠きを介して当該耐火メッシュの上面よりも上方に突出する、請求項1または2に記載の焼成用治具。
【請求項6】
前記フレームは、前記外枠及び/又は前記リブから上方に向かって突出する3本以上の支柱を備えており、
前記支柱の高さは、前記第1突起の高さよりも高い、請求項1または2に記載の焼成用治具。
【請求項7】
前記耐火メッシュの外周縁部に、当該耐火メッシュの中央部の高さよりも高い堰止部が設けられている、請求項1または2に記載の焼成用治具。
【請求項8】
前記堰止部は、前記耐火メッシュの外周縁部を折り重ねた部分である、請求項7に記載の焼成用治具。
【請求項9】
前記堰止部は、前記耐火メッシュの外周縁部を上方に向けて折り曲げた部分である、請求項7に記載の焼成用治具。
【請求項10】
耐火メッシュを上方に配置させる焼成用治具用のフレームであって、
当該フレームの外形をなす外枠と、
前記外枠を架橋するリブと、
前記外枠と前記リブとに囲まれたガス通過孔と、
前記リブから上方に向かって突出する第1突起と
を備えており、
前記リブ上面の総面積を100%としたときの前記第1突起の形成領域の面積は、15%以上である、フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、焼成用治具と、当該焼成用治具に用いられるフレームとに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層セラミックコンデンサー(MLCC)等の電子部品は、0.1mmオーダーのサイズに小型化されている。この小型電子部品は、200cm~1000cm程度の広さのトレー状の焼成用治具の上面に載せて焼成される。この小型電子部品の焼成では、まず、焼成用治具の上面に多数の焼成対象(焼成前の電子部品)を供給する。そして、山状に積もった焼成対象をならして平坦にする。これによって、焼成用治具の上面に数百個~数万個の焼成対象が分散配置される。そして、焼成炉内に焼成用治具を収容して焼成する。これによって、多数の電子部品を同時に生産できる。
【0003】
この電子部品生産用の焼成用治具は、例えば、ガス通過孔を有するフレームと、当該フレームの上方に配置される耐火メッシュとを備えている。かかる構成の焼成用治具では、耐火メッシュの上面に多数の焼成対象が分散配置される。この焼成用治具を使用すると、焼成中の高温ガスがガス通過孔と耐火メッシュを通過するため、耐火メッシュ上の焼成対象を効率良く加熱できる。このような焼成用治具の一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-48950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の焼成用治具を用いて多数の焼成対象を同時に焼成すると、焼成対象の一部が焼成不良となる焼成ムラが生じることがあった。この場合、再焼成や不良品の選別などが必要になるため、製造効率が大幅に低下する要因となる。ここに開示される技術は、上述の問題を解決するためになされたものであり、多数の焼成対象を同時に焼成した際の焼成ムラを抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、多数の焼成対象の間で焼成ムラが生じる原因について実験と検討を重ねた結果、以下の知見を得た。上記構成の焼成用治具では、耐火メッシュの上面に多数の焼成対象を載置するため、薄い耐火メッシュに大きな重量が加わる。また、使用中の焼成用治具は、高温環境に晒されるため、剛性が低下しやすい。これらによって、焼成中の耐火メッシュが沈み込むおそれがある。このため、一般的な焼成用治具のフレームには、耐火メッシュを下方から支持する梁状部材(リブ)が形成されている。しかしながら、リブ上方の領域では、リブによって高温ガスの流通が遮られる。また、リブには熱が蓄積されやすいため、リブ上方に載置された焼成対象は冷めにくくなる。これらの結果、リブ上方の領域と他の領域との間で加熱効率の差異が生じる。そして、数百個以上の焼成対象を同時に焼成する大量生産では、リブ上方の領域を避けて焼成対象を分散配置することが難しい。このため、従来の焼成用治具を用いて多数の焼成対象を同時に焼成すると、焼成後の結果物に焼成ムラが生じやすくなる。
【0007】
ここに開示される焼成用治具は、上述の知見に基づいてなされたものである。この焼成用治具は、トレー状のフレームと、フレームの上方に配置される耐火メッシュとを備えている。そして、この焼成用治具のフレームは、当該フレームの外形をなす外枠と、外枠を架橋するリブと、外枠とリブとに囲まれたガス通過孔と、リブから上方に向かって突出する第1突起とを備えている。そして、ここに開示される焼成用治具では、耐火メッシュに第1突起を挿通させる開口部が設けられており、当該開口部を介して第1突起が前記耐火メッシュの上面よりも上方に突出している。
【0008】
上記構成の焼成用治具では、リブ上の第1突起が耐火メッシュの上面よりも上方に突出している。これによって、多数の焼成対象を耐火メッシュ上に分散配置した際に、リブ上方の領域に焼成対象が載置されることを防止できる。この結果、ガス通過孔上方の領域で焼成対象の大部分を焼成できるため、多数の焼成対象を同時に焼成した際の焼成ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る焼成用治具の斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る焼成用治具の平面図である。
図3図3は、図2中のIII-III矢視断面図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る焼成用治具の側面図である。
図5図5は、図2に示す焼成用治具のフレームの平面図である。
図6図6は、図2に示す焼成用治具の耐火メッシュの平面図である。
図7図7は、図4に示す焼成用治具を積み重ねた積層体の側面図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る焼成用治具の平面図である。
図9図9は、第3の実施形態に係る焼成用治具の平面図である。
図10図10は、図9中のX-X矢視断面図である。
図11図11は、第4の実施形態に係る焼成用治具の断面図である。
図12図12は、比較対象の焼成用治具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄(焼成用治具の製造方法、焼成対象の焼成条件など)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。すなわち、ここで開示される技術は、本明細書の開示事項と本分野の技術常識とに基づいて実施できる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」との表記は、A以上B以下を意味する。
【0011】
<第1の実施形態>
以下、図1図7を参照しながら、ここに開示される焼成用治具の第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る焼成用治具の斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る焼成用治具の平面図である。図3は、図2中のIII-III矢視断面図である。図4は、第1の実施形態に係る焼成用治具の側面図である。図5は、図2に示す焼成用治具のフレームの平面図である。図6は、図2に示す焼成用治具の耐火メッシュの平面図である。図7は、図4に示す焼成用治具を積み重ねた積層体の側面図である。図中の符号X、Y、Zは、それぞれ、幅方向、奥行方向、高さ方向を表している。また、符号L、R、F、Rr、U、Dは、それぞれ、左、右、前、後、上、下を表している。
【0012】
図1図4に示すように、本実施形態に係る焼成用治具1は、トレー状のフレーム10と、フレーム10の上方Uに配置される耐火メッシュ20とを備えている。この焼成用治具1を使用した電子部品の焼成処理では、まず、耐火メッシュ20の上面20aに多数の焼成対象(焼成前の電子部品)を供給する。そして、山状に積もった焼成対象をならして平坦にする。これによって、耐火メッシュ20の上面20aに数百個~数万個の焼成対象が分散配置される。そして、焼成炉内に焼成用治具1を収容して焼成する。これによって、多数の電子部品を同時に生産できる。以下、焼成用治具1の具体的な構成について説明する。
【0013】
(1)フレーム
上記の通り、フレーム10は、トレー状の枠体である。フレーム10の材料は、焼成処理に耐え得る耐火性を有していればよく、従来公知の耐火材を特に制限なく使用できる。かかる耐火材の一例として、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)、炭化ケイ素(SiC)、ムライト(3Al・2SiO)などのセラミック材料(典型的には、JIS R2001に規定の耐火材)が挙げられる。また、フレーム10には、焼成温度よりも融点が高温である金属材料や合金材料を使用することもできる。このような金属材料としては、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などが挙げられる。また、合金材料としては、上記の金属を含む合金を使用できる。
【0014】
本実施形態に係るフレーム10は、外枠11と、リブ12と、ガス通過孔13と、第1突起14とを備えている。さらに、このフレーム10は、第2突起15と、支柱16とを備えている。以下、図5を参照しながら、フレーム10の詳細な構造について説明する。
【0015】
(1-1)外枠
外枠11は、フレーム10の外形をなす部分である。図5に示す外枠11は、平面形状が四角形の枠体である。この四角形の外枠11は、第1枠体11a~第4枠体11dからなる4つの枠体を相互に連結することによって形成される。具体的には、図5中の左方Lには、奥行方向Yに沿って延びる第1枠体11aが形成されている。一方、右方Rには、第1枠体11aと対向するように奥行方向Yに沿って延びる第2枠体11bが形成されている。また、図5中の前方Fには、幅方向Xに沿って延びる第3枠体11cが形成されている。一方、後方Rrには、第3枠体11cと対向するように幅方向Xに沿って延びる第4枠体11dが形成されている。そして、第1枠体11aの前方Fの端部は、第3枠体11cの左方Lの端部と接続されている。一方、第1枠体11aの後方Rrの端部は、第4枠体11dの左方Lの端部と接続されている。また、第2枠体11bの前方Fの端部は、第3枠体11cの右方Rの端部と接続されている。一方、第2枠体11bの後方Rrの端部は、第4枠体11dの右方Rの端部と接続されている。これによって、平面矩形の外枠11が形成される。但し、外枠の平面形状は、図5に示すような矩形に限定されない。例えば、ここに開示される焼成用治具は、多角形の外枠や円環状の外枠を採用することもできる。
【0016】
なお、外枠11の太さt1は、2.5mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、7.5mm以上が特に好ましい。これによって、フレーム10の強度を充分に確保することができる。一方、外枠11の太さt1が増加するにつれて、平面視におけるガス通過孔13の面積が狭くなるため、焼成効率が低下する傾向がある。また、外枠11の太さt1が増加すると、当該外枠11の熱容量が増加するため、焼成対象が冷却されにくくなる。これらのる観点から、外枠11の太さは、20mm以下が好ましく、17.5mm以下がより好ましく、15mm以下がさらに好ましく、12.5mm以下が特に好ましい。
【0017】
(1-2)リブ
リブ12は、外枠11を架橋する部材である。具体的には、リブ12は、所定の間隔を空けて対向している第1枠体11a~第4枠体11dの各々を連結する梁状部材である。例えば、図5に示すフレーム10は、第1リブ12aと第2リブ12bとを備えている。第1リブ12aは、第1枠体11aと第2枠体11bとを架橋するように幅方向Xに沿って延びている。また、第2リブ12bは、第3枠体11cと第4枠体11dとを架橋するように奥行方向Yに沿って延びている。また、第1リブ12aと第2リブ12bは、フレーム10の中央部において交差している。以下の説明では、この第1リブ12aと第2リブ12bとが交差する部分を「交差領域CA」と称する。
【0018】
本実施形態におけるリブ12は、図1図3に示すように、耐火メッシュ20を下方Dから支持する。これによって、耐火メッシュ20の変形を防止できる。具体的には、上述の通り、小型電子部品の焼成では、焼成用治具1の上(耐火メッシュ20の上面20a)に焼成対象を供給する。このとき、フレーム10の外枠11の間(典型的には耐火メッシュ20の中央部)に数百個~数万個の焼成対象が供給されると、薄い耐火メッシュに大きな重量が加わる。また、使用中の焼成用治具は、高温環境に晒されるため、剛性が低下しやすい。これらによって、焼成中に耐火メッシュ20が沈み込むおそれがある。これに対して、リブ12によって耐火メッシュ20を下方Dから支持すれば、耐火メッシュ20の変形を抑制できる。なお、以下では、説明の便宜上、リブ12によって耐火メッシュ20が支持されている領域(すなわち、リブ12の上方Uの領域)のことを「支持領域SA」と称する。
【0019】
なお、リブ12の太さt2は、2.5mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、7.5mm以上が特に好ましい。これによって、支持領域SAの広さを充分に確保できるため、耐火メッシュ20の変形をより好適に防止できる。一方、リブ12の太さは、20mm以下が好ましく、17.5mm以下がより好ましく、15mm以下がさらに好ましく、12.5mm以下が特に好ましい。これによって、平面視におけるガス通過孔13の面積を充分に確保できるため焼成効率が向上する。
【0020】
また、上述した通り、図5に示すフレーム10では、第1リブ12aと第2リブ12bとが設けられている。しかし、リブの数は、ここに開示される技術を限定するものではない。リブの数は、耐火メッシュの変形抑制と焼成効率との関係を考慮して適宜増減できる。具体的には、リブの数を増加させると、耐火メッシュの変形が抑制されやすくなる一方で、ガス通過孔の面積の減少による焼成効率の低下が生じる。一方、リブの数を減少させると、焼成効率が向上する一方で、耐火メッシュの変形が生じやすくなる。かかる観点から、フレームに形成されるリブの数は、1個~10個(より好適には1個~6個、特に好適には1個~4個)が好ましい。
【0021】
(1-3)ガス通過孔
ガス通過孔13は、外枠11とリブ12とに囲まれた開口部である。図3に示すように、ガス通過孔13は、フレーム10を貫通している。本実施形態に係る焼成用治具1では、図3に示すように、このガス通過孔13と耐火メッシュ20を介して、高温ガスGが高さ方向Zに沿って流通する。また、焼成対象の中には、焼成中に水分や有機成分が蒸発してガスを生じさせるものがある。焼成用治具1に通過孔13と耐火メッシュ20を設けると、このような焼成中のガスも容易に排気できる。これらによって、耐火メッシュ20の上面20aに載置された焼成対象を効率良く加熱できる。
【0022】
なお、本実施形態では、平面形状が四角形のガス通過孔13が4つ形成されている(図2及び図5参照)。具体的には、図5に示すフレーム10の左上(左方Lかつ後方Rr)には、第1ガス通過孔13aが形成されている。この第1ガス通過孔13aは、第1枠体11aと第4枠体11dと第1リブ12aと第2リブ12bに囲まれた開口部である。また、図5中の右上(右方Rかつ後方Rr)には、第2ガス通過孔13bが形成されている。この第2ガス通過孔13bは、第2枠体11bと第4枠体11dと第1リブ12aと第2リブ12bに囲まれた開口部である。次に、図5中の左下(左方Lかつ前方F)には、第3ガス通過孔13cが形成されている。この第3ガス通過孔13cは、第1枠体11aと第3枠体11cと第1リブ12aと第2リブ12bに囲まれた開口部である。そして、図5中の右下(右方Rかつ前方F)には、第4ガス通過孔13dが形成されている。この第4ガス通過孔13dは、第2枠体11bと第3枠体11cと第1リブ12aと第2リブ12bに囲まれた開口部である。
【0023】
なお、ガス通過孔13の総面積(第1ガス通過孔13a~第4ガス通過孔13dの合計面積)は、50cm以上が好ましく、75cm以上がより好ましく、100cm以上がさらに好ましく、125cm以上が特に好ましい。これによって、高温ガスの流路を充分に確保できるため、焼成効率をさらに向上できる。一方、ガス通過孔13の総面積は、800cm以下が好ましく、775cm以下がより好ましく、750cm以下がさらに好ましく、725cm以下が特に好ましい。これによって、フレーム10の強度を充分に確保できる。なお、第1ガス通過孔13a~第4ガス通過孔13dの各々の面積は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0024】
(1-4)第1突起
図1及び図3に示すように、本実施形態におけるフレーム10は、リブ12から上方Uに向かって突出する第1突起14を備えている。この第1突起14は、リブ12上方の支持領域SAの上に焼成対象が配置されることを抑制する。これによって、多数の焼成対象を同時に焼成した際の焼成ムラを抑制できる。この第1突起14の詳細な機能は後述する。
【0025】
なお、本実施形態における第1突起14は、リブ12の延伸方向に沿って連続して延びた壁状の突起である(図1、2、5参照)。具体的には、幅方向Xに延びる第1リブ12aの上には、幅方向Xに沿って延びる第1突起14が2つ形成されている。また、奥行方向Yに延びる第2リブ12bの上には、奥行方向Yに沿って延びる第1突起14が2つ形成されている。これらの壁状の第1突起14によると、支持領域SAの上に焼成対象が載置されることをより好適に抑制できる。
【0026】
なお、第1突起14の太さt3(図5参照)は、上述したリブ12の太さt2の50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、65%以上が特に好ましい。これによって、支持領域SAの上に焼成対象が載置されることを好適に抑制できる。一方で、第1突起14が太くなりすぎると、リブ12の上方に耐火メッシュ20を載せることが難しくなる。かかる観点から、第1突起14の太さt3は、リブ12の太さt2の90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましく、75%以下が特に好ましい。
【0027】
なお、第1突起14は、複数のリブ12が交差した部分(図2中の交差領域CA)に形成されていないことが好ましい。これによって、焼成対象の重量による耐火メッシュ20の変形をより好適に防止できる。具体的には、本実施形態に係る焼成用治具1では、耐火メッシュ20の上面20aよりも上方に第1突起14を突出させるために、耐火メッシュ20に開口部21を形成する必要がある(図3参照)。このとき、図2中の交差領域CAに第1突起が形成されていると、耐火メッシュの中央部を分断する十字状の開口部を形成しなければならない。この十字状の開口部を有する耐火メッシュの上に焼成対象を載置すると、図2中の第1ガス通過孔13a~第4ガス通過孔13dの各々において、焼成対象の重量による耐火メッシュの沈み込みが生じるおそれがある。かかる観点から、第1突起14は、交差領域CAに形成されていないことが好ましい。
【0028】
また、図1及び図3に示すように、第1突起14は、上端に向かって細くなるテーパー状の突起である。これによって、焼成不良の発生をより好適に防止できる。具体的には、耐火メッシュ20の上面20aに焼成対象を供給する際、焼成用治具1の上方Uから数百個の焼成対象を落下させる。このとき、焼成対象の一部が第1突起14の上に乗ると、焼成不良が生じる可能性が高くなる。これに対して、第1突起14をテーパー状にすれば、第1突起14の上に焼成対象が乗ることを防止できる。また、上方Uから落下する焼成対象がテーパー状の第1突起14の側面に接触すると、ガス通過孔13上方の領域に向かって焼成対象が反射する。このため、テーパー状の第1突起14は、支持領域SAに焼成対象が載置されることを防止することにも貢献できる。
【0029】
(1-5)第2突起
次に、本実施形態に係る焼成用治具1は、上記構成の第1突起14の他に、第2突起15も備えている。この第2突起15は、フレーム10の外枠11から上方Uに向かって突出する突起である。第2突起15は、外枠11の上方Uに焼成対象が載置されることを防止できる。これによって、焼成ムラの発生をより好適に抑制することができる。また、第2突起15は、焼成用治具1の搬送中などにおいて、耐火メッシュ20の上面20aから焼成対象が落下することも防止できる。
【0030】
具体的には、第2突起15は、外枠11の延伸方向に沿って連続して延びる壁状の突起である。例えば、第1枠体11aや第2枠体11bは、奥行方向Yに沿って延びている。この第1枠体11aや第2枠体11bの上には、奥行方向Yに沿って延びる第2突起15が形成される。また、第3枠体11cや第4枠体11dは、幅方向Xに沿って延びている。この第3枠体11cや第4枠体11dの上には、幅方向Xに沿って延びる第2突起15が形成される。本実施形態では、これらの壁状の第2突起15によって、焼成用治具1の外周縁部が囲まれている。これによって、外枠11の上方Uの領域に焼成対象が配置されることを抑制できるとともに、焼成用治具1の上から焼成対象が落下することも防止できる。
【0031】
また、第2突起15は、上記第1突起14と同様の構成を有していることが好ましい。例えば、第2突起15は、上端に向かって細くなるテーパー状の突起であることが好ましい。これによって、焼成不良の発生をより好適に防止できる。また、第2突起15は、外枠11とリブ12とが交差した部分に形成されていないことが好ましい。これによって、耐火メッシュ20の分断による強度低下を抑制できる。
【0032】
なお、第2突起15の太さt4(図5参照)は、外枠11の太さt1の50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、65%以上が特に好ましい。これによって、外枠11の上方Uの領域に焼成対象が載置されることをより好適に抑制できる。一方、外枠11に対して第2突起15が太くなりすぎると、外枠11の上に耐火メッシュ20を載置することが難しくなる。かかる観点から、第2突起15の太さt4は、外枠11の太さt1の90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましく、75%以下が特に好ましい。
【0033】
(1-6)支柱
また、本実施形態におけるフレーム10は、外枠11から上方Uに向かって突出する4本の支柱16を備えている(図1図2及び図5参照)。図7に示すように、支柱16を備えた焼成用治具1は、高さ方向Zに沿って容易に積み重ねることができる。これによって、単位面積あたりの電子部品の製造効率をさらに向上できる。なお、支柱16の高さは、第1突起14の高さよりも高いことが好ましい。これによって、上段の焼成用治具1と下段の焼成用治具1との間に、高温ガスが流通する隙間Sを生じさせることができる。この結果、下段の焼成用治具1における焼成効率の低下を抑制できる。
【0034】
なお、支柱は、複数の焼成用治具を積み重ねることができる構成を有していればよく、図1図2及び図5に示す構成に限定されない。例えば、図1図2及び図5に示す焼成用治具1では、外枠11から上方Uに向かって4本の支柱16が突出している。しかし、支柱は、外枠でなく、リブから突出していてもよい。この場合でも、複数の焼成用治具を積み重ねることができる。また、支柱の数も、4本に限定されない。支柱の数が3本以上であれば、複数の焼成用治具を積み重ねることができる。但し、積載時の安定性を考慮すると、支柱の数は4本以上が好ましい。
【0035】
(2)耐火メッシュ
次に、耐火メッシュ20は、フレーム10の上方に配置されている。この耐火メッシュ20は、板状の多孔体である。これによって、焼成中の高温ガスを透過させることができる。焼成中の焼成対象は、この耐火メッシュ20の上面20aに分散配置される。そして、焼成中の高温ガスは、フレーム10のガス通過孔13と耐火メッシュ20を通過し、耐火メッシュ20上の焼成対象に供給される。これによって、焼成対象を効率よく加熱できる。
【0036】
なお、耐火メッシュ20の素材は、焼成処理に耐え得る耐火性を有していればよい。例えば、耐火メッシュ20には、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属材料を使用できる。また、これらの金属を含む合金を使用することもできる。これらの金属材料(又は合金材料)は、優れた耐火性を有すると共に、高い熱伝導性を有しているため、耐火メッシュ20上の焼成対象をより効率よく加熱できる、また、耐火メッシュ20には、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)、炭化ケイ素(SiC)、ムライト(3Al・2SiO)などのセラミック(典型的には、JIS R2001に規定の耐火材)を使用することもできる。これらの中でも、耐熱性と熱伝導性とのバランスを考慮すると、ニッケル製の耐火メッシュ20が特に好ましい。また、耐火メッシュ20は、焼成対象の組成に応じて変更してもよい。例えば、焼成対象にNi製の導電ペーストが使用されている場合、ニッケル製の耐火メッシュ20を使用するとより好ましい。これによって、耐火メッシュ20由来の不純物が焼成対象に混入することを防止できる。
【0037】
また、耐火メッシュ20の孔の平均細孔径は、焼成対象のサイズに応じて適宜調節することが好ましい。例えば、近年では、0.1mmオーダーの小型電子部品が開発されている。これに対して、耐火メッシュ20の孔の平均細孔径は、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。このとき、耐火メッシュ20の孔の平均細孔径の下限値は、25μm以上が好ましく、50μm以下がより好ましく、75μm以下が特に好ましい。これによって、耐火メッシュ20のガス透過性が向上するため、加熱効率をさらに向上できる。但し、耐火メッシュ20の孔の平均細孔径は、上述の数値範囲に限定されるものではない。例えば、1mmオーダーの大型電子部品を焼成する場合には、耐火メッシュ20の孔の平均細孔径は、200μm以上(好適には500μm以上、より好適には1000μm以上)にすることができる。
【0038】
(2-1)開口部
また、耐火メッシュ20には、第1突起14を挿通させる開口部21が設けられている。これによって、フレーム10の第1突起14は、開口部21を介して耐火メッシュ20の上面20aよりも上方に突出する(図3参照)。これによって、リブ12上方の支持領域SAに焼成対象が載置されることを防止できる。具体的には、図6に示す耐火メッシュ20の奥行方向Yの中央部には、幅方向Xに沿って延びる長尺な第1開口部21aが2つ形成されている。この2つの第1開口部21aの各々には、第1リブ12a上の第1突起14が挿通される(図2参照)。また、耐火メッシュ20の幅方向Xの中央部には、奥行方向Yに沿って延びる長尺な第2開口部21bが2つ形成されている。この2つの第2開口部21bの各々には、第2リブ12b上の第1突起14が挿通される。このように、耐火メッシュ20の開口部21に第1突起14を挿通させることによって、第1突起14を耐火メッシュ20の上面20aよりも上方に突出させることができる。また、かかる構成によると、平面方向(幅方向Xおよび奥行方向Y)における耐火メッシュ20の位置ずれも防止できる。
【0039】
(2-2)切り欠き
また、図2及び図6に示すように、耐火メッシュ20の外周縁部には第1切り欠き22が設けられている。具体的には、本実施形態に係る焼成用治具1では、外枠11上の第2突起15が耐火メッシュ20と干渉しないように、耐火メッシュ20の外周縁部の各々に第1切り欠き22が形成されている。この第1切り欠き22を介して、第2突起15を耐火メッシュ20の上面20aよりも上方に突出させることができる(図3参照)。これによって、外枠11上方の領域に焼成対象が載置されることを防止できる。また、本実施形態における耐火メッシュ20の四隅には第2切り欠き23が形成されている。これによって、耐火メッシュ20と支柱16との干渉を防止できる。
【0040】
(3)第1の実施形態の効果
上述の通り、本実施形態に係る焼成用治具1は、リブ12から上方Uに向かって突出する第1突起14を備えている。そして、この第1突起14は、第1突起14は、開口部21を介して耐火メッシュ20の上面20aよりも上方に突出している。これによって、多数の焼成対象を同時に焼成した際の焼成ムラを抑制できる。以下、従来技術と対比しながら具体的に説明する。
【0041】
図12は、比較対象の焼成用治具の平面図である。図12に示す焼成用治具100は、トレー状のフレーム110と、フレーム110の上方に配置される耐火メッシュ120とを備えている。そして、図12に示す焼成用治具100は、フレーム110の外枠112を架橋するリブ114を備えている。この焼成用治具100を用いた焼成処理では、多数の焼成対象を耐火メッシュ120の上面に分散配置させる。このとき、耐火メッシュ120がリブ114によって支持されているため、焼成対象の重量による耐火メッシュ120の変形を防止できる。しかしながら、かかる構成の焼成用治具100の支持領域SAでは、リブ114によって高さ方向(図12の紙面に対して垂直な方向)における高温ガスの流通が遮られる。また、支持領域SAでは、焼成対象から生じたガスが排気されにくくなる。さらに、リブ144には熱が蓄積されやすいため、支持領域SAに載置された焼成対象は冷めにくくなる。これらの結果、ガス通過孔116上と支持領域SA上との間で焼成ムラが生じやすくなる。
【0042】
一方、図1図3に示すように、本実施形態に係る焼成用治具1では、リブ12から第1突起14が突出している。そして、この第1突起14は、開口部21を介して耐火メッシュ20の上面20aよりも上方Uに突出している。このため、耐火メッシュ20の上面20aに多数の焼成対象を分散配置した際に、リブ12上の支持領域SAに焼成対象が載置されにくくなる。この結果、焼成対象の大部分をガス通過孔13の上方で加熱できる。この結果、上述した種々の課題を解決できるため、多数の焼成対象を同時に焼成した際の焼成ムラを抑制できる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る焼成用治具1では、外枠11から第2突起15が突出している。そして、第2突起15は、第2切り欠き23を介して耐火メッシュ20の上面20aよりも上方Uに突出している。これによって、外枠11上に焼成対象が載置されることを防止できる。この結果、ガス通過孔13の上方で加熱される焼成対象の数がさらに増加するため、多数の焼成対象に対する加熱効率をさらに均一化できる。
【0044】
以上、ここに開示される焼成用治具の第1の実施形態について説明した。しかし、ここに開示される技術は、上述した実施形態に限定されるものではない。以下、ここに開示される技術の他の実施形態について説明する。
【0045】
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態に係る焼成用治具の平面図である。上述した第1の実施形態では、フレーム10の外枠11から第2突起15が突出していた(図1図3参照)。しかし、第2突起は、ここに開示される焼成用治具の必須構成ではない。具体的には、第2の実施形態に係る焼成用治具1Aでは、リブ12の上に第1突起14のみが形成されており、外枠11の上に突起が形成されていない(図8参照)。かかる構成を採用した場合でも、多数の焼成対象を同時に焼成した際の焼成ムラを充分に抑制できる。具体的には、一般的な焼成処理では、焼成用治具から焼成対象が落下することを防止するために、焼成用治具の中央部を中心にして焼成対象を分散載置する。このため、一般的な焼成用治具の使用では、耐火メッシュ20の外周縁部(すなわち、外枠11の上方U)に焼成対象が殆ど載置されない。したがって、高温ガスの遮断による焼成不良は、焼成用治具1Aの中央部に存在するリブ12上の支持領域SAにおいて最も発生しやすい。このため、リブ12の上に第1突起14を形成すれば、焼成ムラの発生を充分に抑制することができる。
【0046】
また、第1の実施形態に係る焼成用治具1では、フレーム10から上方Uに向かって突出する支柱16が形成されていた(図1図3参照)。しかし、この支柱も、ここに開示される焼成用治具の必須構成ではない。具体的には、図8に示す焼成用治具1Aでは、フレーム10に支柱が形成されていない。しかし、図8に示す焼成用治具1Aでは、第1突起14の上に他の焼成用治具を積み重ねることができる。かかる構成を採用した場合でも、単位面積あたりの焼成効率を向上させることができる。
【0047】
<第3の実施形態>
図9は、第3の実施形態に係る焼成用治具の平面図である。図10は、図9中のX-X矢視断面図である。上述した通り、第1の実施形態では、外枠11上の領域における焼成不良を抑制するため、外枠11上に第2突起15を形成している(図1図3参照)。しかし、この外枠11上の領域における焼成不良は、第2突起15以外の構成で抑制することもできる。例えば、図9に示すように、第3の実施形態に係る焼成用治具1Bでは、耐火メッシュ20の外周縁部20bに、当該耐火メッシュ20の中央部20cの高さよりも高い堰止部24が設けられている。図10に示すように、この堰止部24は、耐火メッシュ20の外周縁部20bを折り重ねた部分である。かかる構成の堰止部24によると、外枠11上の領域に焼成対象が載置されることを防止できるため、第2突起を設けなくても、外枠11上の領域における焼成不良を抑制できる。
【0048】
<第4の実施形態>
図11は、第4の実施形態に係る焼成用治具の断面図である。図11に示す焼成用治具1Cでは、耐火メッシュ20の外周縁部20bを上方Uに向けて折り曲げることによって堰止部24が形成されている。かかる構成の堰止部24でも、外枠11上の領域に焼成対象が載置されることを防止できるため、当該領域における焼成不良を抑制できる。なお、本実施形態のような耐火メッシュ20を上方Uに向けて折り曲げた堰止部24は、堰止部24の高さを確保しやすいため、外枠11上方の領域における焼成不良をより好適に抑制できる。一方で、堰止部24の強度を考慮すると、図10に示すように耐火メッシュ20を折り重ねた堰止部24を形成した方が好ましい。
【0049】
<他の実施形態>
また、図示は省略するが、ここに開示される焼成用治具は、上述した第1~第4の実施形態以外の形態を採用することもできる。例えば、第1~第4の実施形態における第1突起14は、リブ12の延伸方向に沿って連続して延びた壁状の突起である。しかしながら、第1突起は、壁状の突起に限定されない。例えば、柱状の第1突起をリブの延伸方向に沿って点在させてもよい。かかる構成を採用した場合でも、支持領域に焼成対象が載置されることを充分に抑制できる。
【0050】
具体的には、リブ上面の総面積を100%としたときの第1突起の形成領域の面積は、15%以上(より好適には20%以上、さらに好適には25%以上、特に好適には30%以上)にするとよい。これによって、支持領域に焼成対象が載置されることを充分に抑制できる。一方、焼成ムラの抑制という観点では、第1突起の形成領域の面積の上限は、特に限定されず、100%でもよい。但し、開口部の面積増大による耐火メッシュの強度低下を考慮すると、第1突起の形成領域の面積の上限は、55%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、45%以下がさらに好ましく、40%以下が特に好ましい。
【0051】
また、第1~第4の実施形態における第1突起14は、上端に向かって細くなるテーパー状の突起である。しかしながら、第1突起は、一定の太さを維持したまま上方に突出していてもよい。この場合、数百個の焼成対象を焼成用治具の上方から供給した際に、第1突起の上面に焼成対象が載置される可能性が高くなる。しかし、焼成炉内に収容する前に第1突起の上に乗った焼成対象を払い落とせば、第1突起上での焼成不良を防止できる。但し、このような作業を減らして生産効率を向上させるという観点では、第1~第4の実施形態のように、テーパー状の第1突起を形成した方が好ましい。
【0052】
また、図3図10および図11に示すように、上述した各実施形態における耐火メッシュ20は、フレーム10の上面と接触するように、フレーム10上に載置されている。しかし、耐火メッシュは、フレームの上方に配置されていればよく、フレームの上面と接触している必要はない。例えば、テーパー状の第1突起の根本の幅よりも、耐火メッシュの開口部の幅を小さくすれば、第1突起の根本によって耐火メッシュが係止される。これによって、フレームの上面と耐火メッシュとを離間させることができる。この場合、高温ガスの通気性がさらに向上するため、焼成対象に対する加熱効率をさらに向上できる。
【0053】
図2及び図5に示すように、第1の実施形態では、フレーム10に4つのガス通過孔13が形成されていた。しかし、ガス通過孔の数は、ここに開示される技術を限定するものではない。具体的には、外枠を架橋するリブの数や形状を変更することによって、ガス通過孔の数を調節することができる。この場合でも、各々のリブの上方に第1突起を設け、当該第1突起を挿通可能な開口部を耐火メッシュに形成すればよい。これによって、リブ上方に焼成対象が載置されることを防止できるため、多数の焼成対象を同時に焼成した際の焼成ムラを抑制できる。
【0054】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0055】
なお、ここに開示される技術は以下の項目1~10を含んでいる。以下の項目1~10は、上記した実施形態に限定されない。
【0056】
[項目1]
トレー状のフレームと、
前記フレームの上方に配置される耐火メッシュと
を備えており、
前記フレームは、
当該フレームの外形をなす外枠と、
前記外枠を架橋するリブと、
前記外枠と前記リブとに囲まれたガス通過孔と、
前記リブから上方に向かって突出する第1突起と
を備えており、
前記耐火メッシュは前記第1突起を挿通させる開口部を備えており、当該開口部を介して前記第1突起が前記耐火メッシュの上面よりも上方に突出している、焼成用治具。
【0057】
[項目2]
前記第1突起は、上端に向かって細くなるテーパー状の突起である、項目1に記載の焼成用治具。
【0058】
[項目3]
前記第1突起は、前記リブの延伸方向に沿って連続して延びている、項目1または2に記載の焼成用治具。
【0059】
[項目4]
前記第1突起は、複数の前記リブが交差した部分に形成されていない、項目1~3のいずれか一項に記載の焼成用治具。
【0060】
[項目5]
前記フレームは、前記外枠から上方に向かって突出する第2突起をさらに備えており、
前記第2突起は、前記耐火メッシュの切り欠きを介して当該耐火メッシュの上面よりも上方に突出する、項目1~4のいずれか一項に記載の焼成用治具。
【0061】
[項目6]
前記フレームは、前記外枠及び/又は前記リブから上方に向かって突出する3本以上の支柱を備えており、
前記支柱の高さは、前記第1突起の高さよりも高い、項目1~5のいずれか一項に記載の焼成用治具。
【0062】
[項目7]
前記耐火メッシュの外周縁部に、当該耐火メッシュの中央部の高さよりも高い堰止部が設けられている、項目1~6のいずれか一項に記載の焼成用治具。
【0063】
[項目8]
前記堰止部は、前記耐火メッシュの外周縁部を折り重ねた部分である、項目7に記載の焼成用治具。
【0064】
[項目9]
前記堰止部は、前記耐火メッシュの外周縁部を上方に向けて折り曲げた部分である、項目7に記載の焼成用治具。
【0065】
[項目10]
耐火メッシュを上方に配置させる焼成用治具用のフレームであって、
当該フレームの外形をなす外枠と、
前記外枠を架橋するリブと、
前記外枠と前記リブとに囲まれたガス通過孔と、
前記リブから上方に向かって突出する第1突起と
を備えている、フレーム。
【符号の説明】
【0066】
1 :焼成用治具
10 :フレーム
11 :外枠
12 :リブ
13 :ガス通過孔
14 :第1突起
15 :第2突起
16 :支柱
20 :耐火メッシュ
21 :開口部
22 :第1切り欠き
23 :第2切り欠き
24 :堰止部

【要約】
【課題】多数の焼成対象を同時に焼成した際の焼成ムラを抑制する。
【解決手段】ここで開示される焼成用治具1は、トレー状のフレーム10と、フレーム10の上方に配置される耐火メッシュ20とを備えている。そして、フレーム10は、当該フレーム10の外形をなす外枠11と、外枠11を架橋するリブ12と、外枠11とリブ12とに囲まれたガス通過孔13と、リブ12から上方に向かって突出する第1突起14とを備えている。そして、耐火メッシュ20に第1突起14を挿通させる開口部21が設けられており、当該開口部21を介して第1突起14が耐火メッシュ20の上面よりも上方に突出している。かかる構成によると、リブ12上方の支持領域SAに焼成対象が載置されることを防止できるため、多数の焼成対象を同時に焼成した際の焼成ムラを抑制できる。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12