(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】熱処理システム
(51)【国際特許分類】
F27B 9/36 20060101AFI20240926BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240926BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F27B9/36
F27D17/00 101D
F27D7/02 A
(21)【出願番号】P 2020177865
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598148913
【氏名又は名称】株式会社エコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 典昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴之
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-139010(JP,A)
【文献】特開2018-115776(JP,A)
【文献】米国特許第04148600(US,A)
【文献】特開2019-070496(JP,A)
【文献】実開昭54-110614(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/36
F27D 17/00
F27D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が内部に配置される炉本体と、
前記炉本体に前記被加熱物を加熱する加熱ガスを供給するための供給通路と、
前記炉本体から前記加熱ガスを排出するための排出通路と、
燃料を燃焼させることで前記加熱ガスを生成する燃焼装置と、
前記被加熱物を加熱する電気ヒータと、
前記供給通路、前記炉本体、及び前記排出通路の順で前記加熱ガスを循環させる循環ファンとを備える加熱炉を用いた熱処理システムであって、
前記燃焼装置には、前記加熱炉から放出される前記加熱ガスと、該燃焼装置に供給された酸化剤ガスとの間で熱交換を行う熱交換部が設けられている
熱処理システム。
【請求項2】
前記加熱炉は、
前記炉本体へ前記被加熱物を搬入するとともに該炉本体から前記被加熱物を搬出する搬送装置と、
互いに対向する一対の第1側壁、及び前記一対の第1側壁を繋ぐ一対の第2側壁を含んでいて周囲を囲う仕切板と、
前記仕切板に取り付けられた制御盤とを備え、
前記仕切板のうち前記制御盤が取り付けられた側壁とは異なる側壁には、外部から前記搬送装置へ前記被加熱物を受け渡すための入口部、及び前記搬送装置によって前記被加熱物を外部へ排出するための出口部が形成されており、
前記仕切板のうち前記制御盤が取り付けられた側壁には、前記燃焼装置の制御量を確認するための確認窓が形成されており、
前記加熱炉は、複数連結して設けられている
請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項3】
前記加熱炉として第1加熱炉及び第2加熱炉を含み、
前記第1加熱炉における前記搬送装置を第1搬送装置とし、前記第2加熱炉における前記搬送装置を第2搬送装置としたとき、
前記第1加熱炉の出口部と前記第2加熱炉の入口部とは対向しており、
前記第1搬送装置から前記第2搬送装置へ前記被加熱物を直接受け渡す
請求項2に記載の熱処理システム。
【請求項4】
前記燃焼装置は、
燃料と酸化剤ガスとを燃焼させる第1燃焼部と、
前記第1燃焼部において燃料と酸化剤ガスとの燃焼で発生した一次燃焼ガス、酸化剤ガス、及び燃料を混合して燃焼させる第2燃焼部とを含む
請求項1~3の何れか一項に記載の熱処理システム。
【請求項5】
前記燃焼装置が取り付けられている燃焼部を有し、
前記燃焼部は、内管及び外管を有する二重管構造であって、
前記外管には、前記供給通路が連結されている流出部と、前記排出通路が連結されている流入部と、前記燃焼装置が取り付けられている取付部とが設けられ、
前記内管は、前記流出部に接続されていて筒状に形成された連通端部と、該連通端部から前記取付部側に延びていて、該取付部側の一端が開放されている筒状の開放端部とを有し、
前記開放端部には、前記取付部に取り付けられた前記燃焼装置が前記一端を通じて内部に挿通されている
請求項1~4の何れか一項に記載の熱処理システム。
【請求項6】
前記加熱炉として、前記被加熱物を昇温させる昇温炉と、該昇温炉で昇温した被加熱物の温度を維持する均熱炉との少なくとも2つの加熱炉を含み、
前記昇温炉において前記炉本体に供給される加熱ガスの流速を、前記均熱炉において前記炉本体に供給される加熱ガスの流速よりも速くする
請求項1~5の何れか一項に記載の熱処理システム。
【請求項7】
前記電気ヒータは、前記供給通路及び前記排出通路の少なくとも一方に設けられていて、前記加熱ガスの循環経路において前記燃焼装置とは異なる部位に設けられている
請求項1~6の何れか一項に記載の熱処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被加熱物を加熱する加熱炉を備えた熱処理システムが開示されている。加熱炉は、被加熱物が配置される炉本体を備えている。炉本体には、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合気をバーナによって燃焼させることで生成された高温の加熱ガスが供給される。また、炉本体には、被加熱物を加熱する電気ヒータが設けられている。加熱ガスは、炉本体の内部において被加熱物を加熱する。炉本体に供給された加熱ガスは、排出通路を通じて排出される。排出通路には、熱交換器が配置されている。熱交換器では、加熱ガスと酸化剤ガスとの間での熱交換が行われる。特許文献1に記載の熱処理システムでは、加熱炉から放出される加熱ガスの熱をバーナに供給される酸化剤ガスへと伝えて該酸化剤ガスの温度を高めることで、加熱炉における熱効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の加熱炉は、炉本体の他、バーナ、電気ヒータ、熱交換器、及び排出通路等の各構成部品を備えている。また、バーナへ燃料ガスや酸化剤ガスを供給するための配管も必要である。そのため、特許文献1に記載の熱処理システムは、体格が大きくなる傾向があり、設置スペースの観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、小型化を図ることができる熱処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための熱処理システムは、被加熱物が内部に配置される炉本体と、前記炉本体に前記被加熱物を加熱する加熱ガスを供給するための供給通路と、前記炉本体から前記加熱ガスを排出するための排出通路と、燃料を燃焼させることで前記加熱ガスを生成する燃焼装置と、前記被加熱物を加熱する電気ヒータと、前記供給通路、前記炉本体、及び前記排出通路の順で前記加熱ガスを循環させる循環ファンとを備える加熱炉を用いた熱処理システムであって、前記燃焼装置には、前記加熱炉から放出される前記加熱ガスと、該燃焼装置に供給された酸化剤ガスとの間で熱交換を行う熱交換部が設けられている。
【0007】
上記構成では、燃焼装置に熱交換部を設けることで、燃焼装置と熱交換器とを別々に設けることなくこれらを一体化している。そのため、熱処理システムに燃焼装置と熱交換器とを別々に設ける構成に比して、設置スペースの省スペース化を図ることが可能になる。したがって、上記構成によれば、熱処理システムの小型化に貢献できる。
【0008】
また、上記熱処理システムでは、前記加熱炉は、前記炉本体へ前記被加熱物を搬入するとともに該炉本体から前記被加熱物を搬出する搬送装置と、互いに対向する一対の第1側壁、及び前記一対の第1側壁を繋ぐ一対の第2側壁を含んでいて周囲を囲う仕切板と、前記仕切板に取り付けられた制御盤とを備え、前記仕切板のうち前記制御盤が取り付けられた側壁とは異なる側壁には、外部から前記搬送装置へ前記被加熱物を受け渡すための入口部、及び前記搬送装置によって前記被加熱物を外部へ排出するための出口部が形成されており、前記仕切板のうち前記制御盤が取り付けられた側壁には、前記燃焼装置の制御量を確認するための確認窓が形成されており、前記加熱炉は、複数連結して設けられていることが望ましい。
【0009】
制御盤や確認窓は、熱処理システムの管理者が操作、確認するために設けられている。そのため、加熱炉において、制御盤や確認窓が配置されている側壁側には管理者が通行可能な所定のスペースが必要になる。
【0010】
上記構成では、加熱炉の入口部及び出口部が形成されている側壁には、制御盤が取り付けられておらず、確認窓も形成されていない。そのため、加熱炉の入口部及び出口部が形成されている側壁側において、管理者のためのスペースを設ける必要が無く、複数の加熱炉を連結するときに、一方の加熱炉の出口部が形成された側壁と、他方の加熱炉の入口部が形成された側壁とを接近させて配置することが可能になる。したがって、加熱炉間の間隔が短くなり、加熱炉を複数連結して構成した熱処理システムにおいて小型化を図ることが可能になる。
【0011】
また、上記熱処理システムでは、前記加熱炉として第1加熱炉及び第2加熱炉を含み、前記第1加熱炉における前記搬送装置を第1搬送装置とし、前記第2加熱炉における前記搬送装置を第2搬送装置としたとき、前記第1加熱炉の出口部と前記第2加熱炉の入口部とは対向しており、前記第1搬送装置から前記第2搬送装置へ前記被加熱物を直接受け渡すことが望ましい。
【0012】
上記構成では、加熱炉に設けられている搬送装置によって被加熱物を受け渡すようにしている。そのため、加熱炉間において被加熱物を搬送するための別の搬送装置を省略することができる。したがって、加熱炉を複数連結して構成した熱処理システムにおいて、一層の小型化を図ることが可能になる。
【0013】
また、上記熱処理システムでは、前記燃焼装置は、燃料と酸化剤ガスとを燃焼させる第1燃焼部と、前記第1燃焼部において燃料と酸化剤ガスとの燃焼で発生した一次燃焼ガス、酸化剤ガス、及び燃料を混合して燃焼させる第2燃焼部とを含むことが望ましい。
【0014】
燃料と酸化剤ガスとを別々に供給して拡散燃焼させた場合、生成される燃焼ガスの温度が火炎面において局所的に高温となる現象が発生する。一方、高温の一次燃焼ガスに酸化剤ガスと燃料とを混合して燃焼させた場合、すなわち高温空気燃焼を行った場合、生成される燃焼ガスにおいて局所的に高温となる現象の発生を抑えることができる。
【0015】
上記構成では、第1燃焼部において高温の一次燃焼ガスを発生させた後、第2燃焼部において一次燃焼ガスに酸化剤ガスと燃料とを混合して高温の混合気を生成して燃焼を行う。そのため、燃焼装置の第2燃焼部において生成される二次燃焼ガスが局所的に高温となる現象が抑えられ、温度のばらつきが低減される。こうした二次燃焼ガスは加熱ガスを構成して加熱炉内を循環する。上記構成によれば、二次燃焼ガスが加熱炉内のガスと混合することにより生成される加熱ガスの温度のばらつきが抑えられ、加熱ガスの温度が加熱炉の各構成部における耐熱温度を超えにくくなることから、加熱ガスの温度を上昇させることができる。したがって、より高温の加熱ガスを炉本体へ供給することが可能になり、被加熱物の昇温速度を向上させることができる。
【0016】
また、上記熱処理システムでは、前記燃焼装置が取り付けられている燃焼部を有し、前記燃焼部は、内管及び外管を有する二重管構造であって、前記外管には、前記供給通路が連結されている流出部と、前記排出通路が連結されている流入部と、前記燃焼装置が取り付けられている取付部とが設けられ、前記内管は、前記流出部に接続されていて筒状に形成された連通端部と、該連通端部から前記取付部側に延びていて、該取付部側の一端が開放されている筒状の開放端部とを有し、前記開放端部には、前記取付部に取り付けられた前記燃焼装置が前記一端を通じて内部に挿通されていることが望ましい。
【0017】
上記構成では、炉本体から排出通路へ排出された加熱ガスは、流入部を通じて燃焼部に流入する。燃焼部の内部では、加熱ガスが外管と内管との間を流れて開放端部の一端側へ流動し、開放端部の一端を通じて内管の内部へと流入する。内管の内部に流入した加熱ガスは、連通端部を通過して流出部から供給通路へ流出する。このように、内管及び外管によって燃焼部の内部には、排出通路から流入した加熱ガスを供給通路へ流出させるガス流路が形成されている。そのため、燃焼装置で生成された加熱ガスは、排出通路側へ逆流することなく、供給通路側へ流れていく。また、ガス流路は、加熱炉から放出される加熱ガス、すなわち排出通路から流入した加熱ガスを燃焼装置の熱交換部へ案内する流れも形成している。したがって、上記構成によれば、加熱ガスの流れを円滑にして熱効率を向上させつつも、燃焼装置における保炎性を確保することが可能になる。また、こうしたガス流路を燃焼部の内部に形成していることから、ガス流路を燃焼部の外部に形成する構成に比して、熱処理システムの一層の小型化に貢献できる。
【0018】
また、上記熱処理システムでは、前記加熱炉として、前記被加熱物を昇温させる昇温炉と、該昇温炉で昇温した被加熱物の温度を維持する均熱炉との少なくとも2つの加熱炉を含み、前記昇温炉において前記炉本体に供給される加熱ガスの流速を、前記均熱炉において前記炉本体に供給される加熱ガスの流速よりも速くすることが望ましい。
【0019】
加熱ガスによって炉本体の内部に配置された被加熱物を加熱する場合、加熱ガスの流速を速くするほど単位時間あたりに被加熱物に伝達される熱量は多くなる。そのため、被加熱物を昇温させるときには、加熱ガスの流速を速くすることが望ましい。一方で、昇温した被加熱物の温度を維持するときに加熱ガスの流速を速くすると、被加熱物において加熱ガスが吹き付けられる部分が部分的に昇温されてしまい、被加熱物の全体の温度を均一に保ちにくくなる。
【0020】
上記構成では、昇温炉において炉本体に供給される加熱ガスの流速を、均熱炉において炉本体に供給される加熱ガスの流速よりも速くしている。したがって、上記構成によれば、昇温炉において被加熱物を昇温する際の効率化を図りつつ、均熱炉において被加熱物の温度を維持するときの温度ばらつきを低減した熱処理システムを実現できる。
【0021】
また、上記熱処理システムでは、前記電気ヒータは、前記供給通路及び前記排出通路の少なくとも一方に設けられており、前記加熱ガスの循環経路において、前記燃焼装置とは異なる部位に設けられていることが望ましい。
【0022】
電気ヒータは、循環ファンの駆動に伴い循環する加熱ガスを加熱して、炉本体に収容されている被加熱物を加熱することができる。こうした電気ヒータを燃焼装置とは異なる部位に設けることで、燃焼装置により加熱ガスの生成を行っていないときであっても、電気ヒータを用いて被加熱物を加熱することができる。その結果、被加熱物の加熱態様の自由度を向上させて、加熱処理における柔軟性を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
上記熱処理システムによれば、小型化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態の熱処理システムの概略構成を示す斜視図。
【
図7】燃焼装置における着火位置からの距離と燃焼ガスの温度との関係を示すグラフ。
【
図8】加熱炉の燃焼部における断面構造を示す斜視図。
【
図9】熱処理システムを他の角度からみたときの斜視図。
【
図10】熱処理システムにおけるアルミニウムの熱処理態様を示すグラフ。
【
図11】第1加熱炉における炉本体及びアルミニウムの加熱態様を示すグラフ。
【
図12】第1加熱炉と第2加熱炉との間でのアルミニウムの搬送態様を示す断面図。
【
図13】第2加熱炉における炉本体及びアルミニウムの加熱態様を示すグラフ。
【
図14】第3加熱炉における炉本体及びアルミニウムの加熱態様を示すグラフ。
【
図15】第4加熱炉における炉本体及びアルミニウムの加熱態様を示すグラフ。
【
図16】比較例1、比較例2、及び本実施形態の熱処理システムにおける各々の一次エネルギー消費量を比較して示すグラフ。
【
図17】比較例1、比較例2、及び本実施形態の熱処理システムにおける昇温時間を比較して示すグラフ。
【
図18】熱処理システムの変更例における各加熱炉の配置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
熱処理システムの一実施形態について、
図1~
図17を参照して説明する。なお、本実施形態では、被加熱物としてのアルミニウムAに熱処理を行う熱処理システムを例に説明する。
【0026】
図1に示すように、熱処理システム10は、複数の加熱炉11と、1つの水槽12とを備えている。複数の加熱炉11は、アルミニウムAを溶体化させるための第1加熱炉11A及び第2加熱炉11Bと、アルミニウムAを時効硬化させるための第3加熱炉11C及び第4加熱炉11Dとからなる。水槽12は、アルミニウムAを冷却するために設けられている。熱処理システム10は、第1加熱炉11A、第2加熱炉11B、水槽12、第3加熱炉11C、及び第4加熱炉11Dを一列に並べて配置している。そのため、第1加熱炉11Aに第2加熱炉11Bが連結され、第2加熱炉11Bに水槽12が連結されている。また、水槽12に第3加熱炉11Cが連結され、第3加熱炉11Cに第4加熱炉11Dが連結されている。なお、第1加熱炉11A、第2加熱炉11B、第3加熱炉11C、及び第4加熱炉11Dの構成は同じである。以下では、第1加熱炉11Aの構成について説明し、第2加熱炉11B、第3加熱炉11C、及び第4加熱炉11Dについては、第1加熱炉11Aと共通の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0027】
第1加熱炉11Aは、支持台15を有している。支持台15は、底部16と、該底部16に固定されている複数の脚部17とを有している。底部16には、仕切板18が固定されている。仕切板18は、複数の加熱炉11の並び方向において互いに対向する一対の第1側壁18Aと、一対の第1側壁18Aを繋ぐ一対の第2側壁18Bとを有している。以下では、第1側壁18Aが対向する方向を第1方向といい、第1方向と水平面上で直交する方向を第2方向という。第2側壁18Bは、第2方向において互いに対向している。仕切板18は、平面視において四角枠状に形成されており、第1加熱炉11Aの周囲を囲っている。第1加熱炉11Aは、仕切板18によって内部と外部とが仕切られている。
【0028】
図2に示すように、第1加熱炉11Aには、仕切板18によって囲まれた空間の内部に、燃焼部20が設けられている。燃焼部20は、支持台15の底部16に固定されている。燃焼部20は、円筒状の大径部21と、該大径部21の上方に設けられていて大径部21よりも直径が小さい小径部22とからなる。大径部21の内部には、燃焼室20Aが形成されている。燃焼部20は、その軸方向が鉛直方向に沿って設けられている。
【0029】
第1加熱炉11Aは、小径部22に取り付けられた燃焼装置30を有している。燃焼装置30には、燃料を供給するための燃料配管85や、酸化剤ガスとしての酸素を含む空気を供給するための空気配管90が接続されている。燃焼装置30は、燃料を燃焼させることでアルミニウムAを加熱するための加熱ガスを生成する。
【0030】
空気配管90は、送風ブロア93に連結されている。送風ブロア93の駆動に伴って空気配管90の内部に空気が供給される。なお、空気配管90は、3つの分岐管90Aに分岐していて、各々の分岐管90Aが燃焼装置30に接続されている。3つの分岐管90Aは、第1方向に並んでいるとともに、第2方向において前後にずれて配置されている。このように、3つの分岐管90Aを第1方向から見たときに一部重なるように第2方向にずらして配置することで、第2方向にずらさずに第1方向に並べて配置する場合に比して、第1方向における分岐管90Aの占有長さを短くしている。なお、分岐管90Aには、供給される空気の流量を測定する流量計や、空気の圧力を検出する圧力計などの計器91が設けられている。また、分岐管90Aには、空気の流量を操作するための流量操作弁92も設けられている。
【0031】
燃料配管85は、図示しない燃料タンクに貯蔵されている燃料(例えば、都市ガスや液化天然ガス等)を燃焼装置30に供給する。燃料配管85は、燃焼装置30に連結されている。なお、図示は省略しているが、燃料配管85は途中で分岐しており、燃焼装置30の異なる位置に燃料を供給可能に構成されている。また、同様に図示を省略しているが、燃料配管85にも、供給される燃料の流量を測定する流量計や、燃料の圧力を検出する圧力計などの計器が設けられている。
【0032】
第1加熱炉11Aは、燃焼部20に連結されている供給通路95を有している。供給通路95は、大径部21における上下方向の中央部よりも若干下方の位置に連結されている。供給通路95の他端は、炉本体100に連結されている。供給通路95を通じて燃焼部20から炉本体100にアルミニウムAを加熱する加熱ガスが供給される。
【0033】
図3に示すように、炉本体100は、第2方向において燃焼部20と並んで配置されている。炉本体100は、内部に加熱室100Aが形成された四角箱状に形成されている。炉本体100は、図示しない支持枠によって支持台15上に固定されている。供給通路95は、炉本体100の上部に連結されている。炉本体100の第1方向における長さは、第1加熱炉11Aの第1方向における長さ、すなわち一対の第1側壁18Aの間隔よりは若干短いものの、ほぼ同じ長さとなるように設定されている。
【0034】
図4に示すように、アルミニウムAは、搬送パレットPに載置した状態で炉本体100の内部に配置される。炉本体100は、第1方向(
図4の左右方向)に対向する第1壁部101及び第2壁部102を有している。第1壁部101には、アルミニウムAを搬入するための第1開口101Aが形成されている。第2壁部102には、アルミニウムAを搬出するための第2開口102Aが形成されている。炉本体100には、第1開口101Aを塞ぐ第1蓋壁103と、第2開口102Aを塞ぐ第2蓋壁104とが設けられている。第1蓋壁103及び第2蓋壁104は、図示しない昇降機構によって上下方向にスライド移動可能に設けられている。
【0035】
図3及び
図4に示すように、炉本体100には、搬送装置110が取り付けられている。搬送装置110は、第1方向に並んで配置されている複数のローラ111と、各ローラ111の両端部に設けられたプーリ115と、隣り合うローラ111のプーリ115間に巻かれた複数のベルト116とを有している。各ローラ111は、炉本体100に回転可能に支持されている。複数のローラ111として、第1蓋壁103の前に配置されている第1外部ローラ112、第2蓋壁104の前に配置されている第2外部ローラ113、及び炉本体100の内部に差し込まれた複数(本実施形態では4つ)の内部ローラ114が設けられている。第2外部ローラ113のプーリ115には、図示しない駆動ベルトが巻かれている。駆動ベルトは、図示しないモータによって回転駆動される。駆動ベルトが回転駆動されることで、第2外部ローラ113が回転する。第2外部ローラ113が回転すると、各ベルト116を介して回転動力が伝達されて、第1外部ローラ112及び内部ローラ114がそれぞれ回転する。各ローラ111の上には搬送パレットPが載置されていることから、各ローラ111が回転することにより、搬送パレットPが移動してアルミニウムAが搬送される。なお、本実施形態では、第1壁部101側から第2壁部102側に向けてアルミニウムAを搬送する。
【0036】
図3に示すように、炉本体100の下部には、排出通路120が連結されている。排出通路120は、第2方向に延びていて燃焼部20の下端部に連結されている。そのため、燃焼部20において排出通路120が連結されている部分は、燃焼部20において供給通路95が連結されている部分よりも下方に位置している。排出通路120を通じて炉本体100から燃焼部20へ加熱ガスが排出される。
【0037】
図2及び
図3に示すように、供給通路95には、循環ファン125及び電気ヒータ130が設けられている。循環ファン125は、炉本体100の上部に位置しており、供給通路95において電気ヒータ130よりも炉本体100側に配置されている。循環ファン125は、例えばシロッコファンなどによって構成されている。循環ファン125が駆動されることで、燃焼部20、供給通路95、炉本体100、及び排出通路120の順で加熱ガスが循環する。なお、循環ファン125は、供給される電力に応じて駆動量を適宜変更可能に設けられている。
【0038】
図2に示すように、電気ヒータ130は、燃焼部20及び炉本体100の側方に位置しており、供給通路95において循環ファン125と燃焼部20との間に配置されている。電気ヒータ130は、第1加熱炉11A内の加熱ガスの循環経路において、燃焼装置30とは異なる部位に設けられている。すなわち、燃焼装置30は燃焼部20に設けられており、電気ヒータ130は供給通路95に設けられている。電気ヒータ130は、供給通路95内に設けられたヒータ線130Aと、該ヒータ線130Aへの通電を行う通電部130Bとを有しており、供給通路95を流れるガスを加熱可能に構成されている。
【0039】
次に、燃焼装置30の構成について説明する。
図5に示すように、燃焼装置30は、第1燃焼及び第2燃焼の2段階の燃焼を行うバーナ部31と、熱交換部75とを有している。
【0040】
バーナ部31は、小径部22に挿通されている棒状のスパークロッド32を有している。スパークロッド32は、先端部(
図5の下端部)において火花放電を行う。スパークロッド32の基端部(
図5の上端部)は、連結部40に固定されている。連結部40は、略円柱状に形成されており、その外周面に上述した燃料配管85や空気配管90が接続される複数の連結口40Aが形成されている。なお、燃料配管85は、その端部が3つに分岐しており、これら3つの分岐端部が連結口40Aにそれぞれ接続されている。
【0041】
スパークロッド32の外周側には、若干の隙間を隔てて配置された円筒状の第1内管46が設けられている。第1内管46の基端部は、連結部40に固定されている。第1内管46は、スパークロッド32の先端に近い位置まで延びている。スパークロッド32の外周面と第1内管46の内周面とによって、スパークロッド32の先端部の周囲に燃料を供給するための第1燃料通路65が構成されている。第1燃料通路65には、連結部40に形成された第1接続通路41を通じて燃料配管85の図示しない分岐端部から燃料が供給される。
【0042】
第1内管46の外周側には、第1内管46と所定の隙間を隔てて配置された円筒状の第2内管47が設けられている。第2内管47の基端部は、連結部40に固定されている。第2内管47は、スパークロッド32の先端に近い位置まで延びている。第1内管46の外周面と第2内管47の内周面とによって、スパークロッド32の先端部の周囲に空気を供給するための第1空気通路66が構成されている。第1空気通路66には、連結部40に形成された第2接続通路42を通じて空気配管90から空気が供給される。
【0043】
図6に示すように、第1内管46の先端部には、スペーサ48が連結されている。スペーサ48は、第1内管46とスパークロッド32との間隔を保持する。また、スペーサ48は、第2内管47に連結された3本のスポーク48Aを有しており、第1内管46と第2内管47との間隔を保持する。
【0044】
図5に示すように、第2内管47の外周側には、第2内管47と所定の隙間を隔てて配置された円筒状の第3内管49が設けられている。第3内管49の基端部は、連結部40に固定されている。第3内管49は、第2内管47の先端と同じ位置まで延びている。第2内管47の外周面と第3内管49の内周面とによって、スパークロッド32の先端部の周囲に燃料を供給するための第2燃料通路67が構成されている。第2内管47と第3内管49との間には、第2燃料通路67を流れる燃料を旋回させる旋回ノズル50が設けられている。第2燃料通路67には、連結部40に形成された第3接続通路43を通じて燃料配管85の分岐端部85Aから燃料が供給される。第3内管49の先端部には、外周面に通路溝49Aが形成されている。
【0045】
第3内管49の外周側には、該第3内管49と所定の隙間を隔てて配置された円筒状の第4内管51が設けられている。第4内管51の基端部は、連結部40に固定されている。第4内管51は、スパークロッド32の先端よりも小径部22の奥まで延びている。第3内管49の外周面と第4内管51の内周面とによって、スパークロッド32の先端部の周囲に空気を供給するための第2空気通路68が構成されている。第2空気通路68には、連結部40に形成された第4接続通路44を通じて空気配管90から空気が供給される。
【0046】
バーナ部31には、第3内管49及び第4内管51に固定された円筒状のノズル部55が設けられている。ノズル部55の壁部の厚さは、第1内管46、第2内管47、第3内管49、及び第4内管51の壁部の厚さよりも厚い。ノズル部55は、スパークロッド32の先端よりも奥側まで延びており、大径部21の内域まで達している。ノズル部55は、第3内管49と第4内管51との間に配置された基部56を有している。基部56には、第2空気通路68に連通する第1連通路59が形成されている。第1連通路59は、第3内管49の通路溝49Aに接続されており、第1連通路59は、第2空気通路68と通路溝49Aとを連通する。そのため、第2空気通路68に供給された空気は、第1連通路59を通じて通路溝49Aからスパークロッド32の先端部の周囲に排出される。なお、通路溝49Aは、排出する空気を、旋回ノズル50によって燃料が旋回される方向と同じ方向に旋回させるように構成されている。
【0047】
ノズル部55は、基部56から小径部22の奥側へ延びる中間部57を有している。中間部57は、第4内管51よりも奥側に延びている。ノズル部55は、中間部57よりも奥側に位置して大径部21に配置されている噴孔部58を有している。噴孔部58は、中間部57よりも外周が拡径されている。また、噴孔部58の内周面は、大径部21の奥側にいくほど拡径されたテーパ面58Aを構成している。
【0048】
バーナ部31は、第3内管49と第4内管51との間に配置された円筒状の燃料主管63を有している。燃料主管63は、基端部が連結部40に固定されており、先端部がノズル部55の基部56に固定されている。燃料主管63は、第3内管49及び第4内管51との間に隙間を隔てた状態で配置されている。燃料主管63は、スパークロッド32よりも奥側に燃料を供給するための燃料主通路69の一部を構成している。燃料主通路69には、連結部40に形成された第5接続通路45を通じて燃料配管85の分岐端部85Bから燃料が供給される。
【0049】
ノズル部55には、燃料主管63と連通していて燃料主通路69の一部を構成する第2連通路60が形成されている。第2連通路60は、基部56から中間部57に亘って奥側に直線状に延びる第1直線路60Aと、第1直線路60Aが接続されていて中間部57において円環状に形成された円環通路60Bと、円環通路60Bに接続されていて大径部21の内域まで直線状に延びる複数の第2直線路60Cとからなる。第2直線路60Cは、噴孔部58のテーパ面58Aに開口している。このように、燃料主管63とノズル部55の第2連通路60とによって、燃料主通路69が構成されている。
【0050】
ノズル部55の噴孔部58における外周面には、円筒状のヘッド部64が固定されている。ヘッド部64は、燃焼部20の大径部21の内域に配置されている。
バーナ部31には、第4内管51よりも外側に設けられた円筒状の外管62が設けられている。外管62は、第4内管51と所定の隙間を隔てて配置されている。外管62は、外方に突出した形状のフランジ部62Aを有しており、該フランジ部62Aが燃焼部20における小径部22に形成された固定フランジ22Aに接合されている。これにより、燃焼装置30が小径部22に固定されている。外管62には、空気配管90が接続されている。外管62の先端は、ノズル部55における中間部57の外周に位置している。第4内管51の外周面と外管62の内周面とによって、スパークロッド32よりも奥側に空気を供給するための空気主通路70の一部が構成されている。ノズル部55には、外管62の内域と連通している第3連通路61が形成されている。第3連通路61は、ノズル部55内を中間部57から噴孔部58に跨がって延びており、テーパ面58Aに開口している。第3連通路61の開口は、ノズル部55の中心軸を向くように形成されている。第4内管51の外周面、外管62の内周面、及びノズル部55の第3連通路61によって空気主通路70が構成されている。
【0051】
なお、外管62は、燃焼装置30の熱交換部75を構成している。熱交換部75は、外管62の先端とノズル部55の中間部57とを連結する円環状の第1固定板76を有している。
【0052】
図6に示すように、第1固定板76には複数の孔が形成されており、該孔に熱交換パイプ77の先端部が嵌合している。各熱交換パイプ77の先端は、大径部21の内域に開口している。
【0053】
図5に示すように、各熱交換パイプ77は、第4内管51と外管62との間において互いに隙間を隔てて配置されている。熱交換部75は、各熱交換パイプ77を保持する複数のバッフル78が設けられている。バッフル78は、空気主通路70内において空気の流れを蛇行させる機能を有する。
【0054】
各熱交換パイプ77の基端部は、円環状の第2固定板79に固定されている。第2固定板79と連結部40との間には、合流部80が設けられている。合流部80は、円筒状の周壁80Aと、周壁80Aの連結部40側の端部を繋ぐ封止壁80Bとからなる。合流部80の内域は、熱交換パイプ77の基端部と連通している。合流部80の周壁80Aには、内部のガスを排出するための排気ポート81が形成されている。
【0055】
図2に示すように、排気ポート81には、放出ブロア82が連結されている。放出ブロア82は、例えば、シロッコファンなどによって構成されている。放出ブロア82は、供給される電力に応じて駆動量を適宜変更可能に設けられている。
【0056】
また、
図5に示すように、燃焼装置30には、棒状の光電センサ83が設けられている。光電センサ83は、連結部40に固定されており、その先端部がバーナ部31において発生する燃焼火炎に臨むように配置されている。光電センサ83は、火炎の光量を電気信号として検出する。
【0057】
次に、こうした燃焼装置30における燃焼態様について説明する。
燃焼装置30はまず、バーナ部31によって第1燃焼を発生させる。第1燃焼では、第1燃料通路65を通じて燃料を供給するとともに、第1空気通路66を通じて空気を供給することで、スパークロッド32の先端の周囲に燃料と空気との混合気を生成する。こうした状態でスパークロッド32において火花放電を生じさせることで、混合気を燃焼させて口火Sを発生させる。同時に、第2燃料通路67を通じて燃料を供給するとともに、第2空気通路68を通じて空気を供給することで、スパークロッド32の先端の周囲に燃料と空気とを供給する。このとき、第2燃料通路67は燃料を旋回させて供給するとともに、第2空気通路68は燃料と同じ旋回方向となるように空気を旋回させて供給する。そのため、第2燃料通路67から供給された燃料と、第2空気通路68から供給された空気との混合気は、口火Sによって点火されて燃焼し、ノズル部55における中間部57の内域に旋回火炎Rを発生させる。このように、旋回火炎Rを発生させることにより、口火Sや旋回火炎Rの燃焼持続性が高められる。また、旋回火炎Rを発生させることにより、この燃焼により発生する一次燃焼ガスに渦を生じさせることができる。このように、第1燃焼では、口火Sによって燃料と酸化剤ガスとを点火して燃焼させることで、一次燃焼ガスを発生させる。一次燃焼ガスは、旋回しながらノズル部55の噴孔部58へと流動する。なお、燃焼装置30は、口火Sが発生したことを光電センサ83によって検出すると、スパークロッド32における火花放電を停止する。また、第1空気通路66や第2空気通路68を通じて供給される空気は、酸素ガス濃度が20%程度で温度が300K程度である燃焼装置30の周辺の外気をそのまま供給し使用する。
【0058】
その後、燃焼装置30は、バーナ部31によって二次燃焼を発生させる。すなわち、燃料主通路69を通じてノズル部55の噴孔部58から燃料を供給するとともに、空気主通路70を通じてノズル部55の噴孔部58から空気を供給する。このとき、空気は、ノズル部55の中心軸、すなわち一次燃焼ガスに向かうように供給される。そのため、旋回火炎Rを生じさせる燃焼によって生成された一次燃焼ガスと空気とが混合されて酸素濃度の低い高温の混合気が生成される。その後、この混合気に燃料が混ぜられる。こうした高温の混合気と燃料とを混合させると、点火源によらずに自着火して燃焼する、いわゆる高温空気燃焼が生じる。本実施形態では、ヘッド部64の内域において、一次燃焼ガスと空気との混合によって生じる混合気の酸素濃度を体積濃度で13%以下とし、温度を1200K以上とすることで、燃料を高温空気燃焼であるフレームレス燃焼によって酸化させる。フレームレス燃焼では、視認可能な火炎面を形成することなく燃焼が行われる。フレームレス燃焼では、通常の燃焼に比して、高い熱量を発生させるとともに、窒素酸化物の発生量を少なくすることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、このようにフレームレス燃焼により発生した2次燃焼ガスを加熱ガスとしてヘッド部64から燃焼室20A内へ供給する。こうして燃焼部20に供給された加熱ガスは、循環ファン125の駆動により、燃焼部20内を流れるガスと混合され、供給通路95を通じて炉本体100に流動する。なお、供給通路95を流れる加熱ガスは、電気ヒータ130によっても加熱されることがある。炉本体100に供給された加熱ガスは、排出通路120を通じて燃焼部20へと戻される。そして、再度、供給通路95を通じて燃焼部20から炉本体100へ供給される。このように、加熱ガスは、第1加熱炉11Aの内部を循環する。
【0060】
また、第1加熱炉11Aでは、燃焼部20に戻された加熱ガスを、燃焼装置30の熱交換部75を通じて外部に放出することもできる。すなわち、放出ブロア82が駆動されることで、燃焼部20の大径部21に戻された加熱ガスは、燃焼装置30の熱交換パイプ77に流入する。加熱ガスは、熱交換パイプ77を流動するときに、熱交換パイプ77の外周側を流れる空気主通路70内の空気へ熱を伝達する。これにより、空気主通路70からノズル部55へ供給される空気の温度が上昇し、この空気と一次燃焼ガスとを混合させたときの混合気の温度を1200K以上へ上昇させ易くしている。このように、燃焼装置30の熱交換部75では、排出通路120に排出されて燃焼装置30を通じて放出される加熱ガスと、燃焼装置30に供給されて二次燃焼を生じさせる空気との間で熱交換を行う。その結果、第1加熱炉11Aから捨てられる熱を回収して再利用することができ、第1加熱炉11Aの熱効率を高めることに貢献できる。なお、熱交換パイプ77を通じて合流部80に流れた加熱ガスは、排気ポート81から放出ブロア82を通じて第1加熱炉11Aの上方へ放出される。
【0061】
ところで、第1加熱炉11A内を循環する加熱ガスの温度は、アルミニウムAの昇温時間を短縮する観点から高い方が望ましい。一方で、第1加熱炉11Aを構成する上述した構成部品には、耐熱温度が存在することから、こうした耐熱温度を超えてまで加熱ガスを高温化することは難しい。本実施形態では、循環ファン125の耐熱温度Tr(例えば600℃)が他の構成部品の耐熱温度に比して低いことから、加熱ガスの温度が循環ファン125の耐熱温度Trを超えないように設定している。
【0062】
図7に一点鎖線で示すように、燃料と外気とを拡散燃焼させた場合、生成される燃焼ガスの温度が火炎面において局所的に高温となる。こうした燃焼では、燃焼部20内の加熱ガスは局所的に高温となるものの、燃焼装置30から遠ざかると加熱ガスの温度が急激に低下する。そのため、循環ファン125に対応する第1位置D1において、加熱ガスの温度が耐熱温度Trを超えないように設定した場合、さらに下流側である加熱室100Aに対応する第2位置D2においては加熱ガスの温度が大きく低下する(例えば500℃)。一方で、本実施形態では、上述したフレームレス燃焼によって加熱ガスを生成している。そのため、
図7に実線で示すように、燃焼ガスが局所的に高温となる部分が生じ難く、フレームレス燃焼による発熱量が
図7の一点鎖線で示す燃焼の発熱量と同一である場合、加熱ガスは広範囲で高い温度を維持することとなる。すなわち、フレームレス燃焼では、循環ファン125に対応する第1位置D1において、加熱ガスの温度が耐熱温度Trを超えないように設定した場合であっても、加熱室100Aに対応する第2位置D2において加熱ガスの温度を比較的高い温度に維持できる(例えば590℃)。このように、燃焼装置30においてフレームレス燃焼を行うことで、耐熱温度Trに近い温度まで加熱ガスの温度を上昇させることが可能になり、アルミニウムAへの熱伝達を促進して昇温速度を高めることができる。
【0063】
本実施形態の燃焼装置30では、燃料と酸化剤ガスとを燃焼させる第1燃焼部が、スパークロッド32、連結部40、第1内管46、第2内管47、第3内管49、第4内管51、及びノズル部55によって構成されている。また、一次燃焼ガス、酸化剤ガス、及び燃料を混合して燃焼させる第2燃焼部は、連結部40、第4内管51、ノズル部55、燃料主管63、及び外管62によって構成されている。また、熱交換部75は、外管62、熱交換パイプ77、第1固定板76、バッフル78、第2固定板79、及び合流部80によって構成されている。
【0064】
なお、
図8に示すように、燃焼装置30が取り付けられている燃焼部20は、内管23及び外管24を有する二重管構造である。外管24が上述した大径部21及び小径部22を構成している。小径部22が、燃焼装置30が取り付けられた取付部に相当する。外管24には、供給通路95が連結されている流出部24Aと、排出通路120が連結されている流入部24Bとが設けられている。上述したように、排出通路120は供給通路95よりも下方に連結されていることから、流入部24Bは流出部24Aよりも下方に位置している。
【0065】
内管23は、流出部24Aに接続されていて円筒状に形成された連通端部23Aと、該連通端部23Aから小径部22側、すなわち上方に延びていて、小径部22側の一端(
図8の上端)が開放されている円筒状の開放端部23Bとを有している。開放端部23Bは、小径部22側が拡径された形状に形成されている。開放端部23Bは、燃焼装置30のヘッド部64の外周側まで延びている。そのため、開放端部23Bには、小径部22に取り付けられた燃焼装置30のヘッド部64が上記一端を通じて内部に挿通されている。
【0066】
図8に矢印で示すように、こうした燃焼部20では、炉本体100から排出通路120へ排出された加熱ガスが流入部24Bを通じて大径部21の下端部に流入する。その後、加熱ガスは、外管24と内管23との間を上方へ流れて開放端部23Bの一端側へ流動し、大径部21の上端部分において下方へ折り返されるようにして内管23の内部へと流入する。このとき、加熱ガスは、開放端部23Bの一端を通じて内管23の内部へと流動する。その後、加熱ガスは、内管23の内部を下方に流動し、流出部24Aを通じて供給通路95へ流出する。
【0067】
燃焼部20内のこうしたガスの流れによって、燃焼装置30のヘッド部64の内域において生成された加熱ガス(二次燃焼ガス)は内管23の内部へと案内される。そして、この二次燃焼ガスと第1加熱炉11A内を循環しているガスとが混合されることで加熱ガスが構成されて、該加熱ガスが供給通路95に供給される。このように、内管23及び外管24によって燃焼部20の内部に加熱ガスの流路を構成することで、燃焼装置30によって生成された加熱ガスを供給通路95へ流す流れを形成している。そのため、燃焼装置30で生成された加熱ガスは、排出通路120側へ逆流することなく、供給通路95側へ流れていく。また、燃焼部20では、大径部21の下端部から上端部へ向けて流れるようにガス流路を形成することで、第1加熱炉11Aから放出される加熱ガスを燃焼装置30の熱交換部75へ案内する流れを形成している。
【0068】
図9に示すように、第1加熱炉11Aには、制御盤88が設けられている。制御盤88は、仕切板18の第2側壁18Bの内表面に取り付けられている。より詳細には、一対の第2側壁18Bのうち、空気配管90の計器91及び流量操作弁92、並びに燃料配管85の計器に近い側の第2側壁18Bに制御盤88が取り付けられている。第2側壁18Bにおいて、制御盤88が取り付けられている部分に対応する位置には、管理者が外側から制御盤88を操作、監視、及び点検するための開口が設けられている。制御盤88は、管理者が設定した制御パラメータに合わせて第1加熱炉11Aにおける各種制御を実行する。各種制御としては、例えば、燃焼装置30における燃焼制御、炉本体100の開閉制御、搬送装置110の駆動制御、循環ファン125の駆動制御、電気ヒータ130の駆動制御、及び放出ブロア82の駆動制御等がある。
【0069】
制御盤88が取り付けられている第2側壁18Bには、開口としての確認窓181Bが形成されている。確認窓181Bは、空気配管90の計器91及び流量操作弁92、並びに燃料配管85の計器に対応した位置に形成されている。本実施形態では、各計器及び流量操作弁92は、管理者が確認窓181Bに手を入れる等して操作可能な位置となるように、第2側壁18Bに近い位置に配置されている。管理者は、確認窓181Bを通じて各計器及び流量操作弁92の操作、監視、及び点検を行う。すなわち、こうした作業によって、燃焼装置30の操作、監視、及び点検が行われる。
【0070】
図1に示すように、一対の第1側壁18Aの一方には、入口部181Aが形成されている。入口部181Aは、炉本体100の第1蓋壁103に対応する位置に設けられている。入口部181Aを通じて第1加熱炉11Aの外部から搬送装置110へアルミニウムAを受け渡すことができる。
【0071】
また、
図9に示すように、一対の第1側壁18Aの他方には、出口部182Aが形成されている。出口部182Aは、炉本体100の第2蓋壁104に対応する位置に設けられている。搬送装置110は、出口部182Aを通じてアルミニウムAを外部へ排出することができる。
【0072】
熱処理システム10では、第1加熱炉11A、第2加熱炉11B、水槽12、第3加熱炉11C、及び第4加熱炉11Dを用いてアルミニウムAを次のように処理する。
図10に示すように、まず第1加熱炉11AによってアルミニウムAを溶体化させるための温度T1まで昇温させる。温度T1としては、例えば480℃~530℃であり、本実施形態では500℃に設定している。アルミニウムAを温度T1まで昇温させると、次に第2加熱炉11Bに移動させてアルミニウムAの温度を温度T1となるように維持する。所定時間維持した後、水槽12へ移動させてアルミニウムAを冷却して焼入れする。本実施形態では、アルミニウムAの温度を温度T3(常温~70℃)まで冷却する。なお、水槽12は公知の構成であり、例えばアルミニウムAをロボットハンドやコンベア等によって水槽12内に移動可能に構成されている。一例として、本実施形態では、第2加熱炉11Bの出口部182Aから搬出されたアルミニウムAを搬送パレットPとともに昇降させて水槽12内に水没させることのできる昇降装置を備えた水槽12を採用している。
【0073】
熱処理システム10では、水槽12に移動させて冷却した後、第3加熱炉11CによってアルミニウムAを時効硬化させるための温度T2まで昇温させる。温度T2としては、例えば180℃~240℃であり、本実施形態では220℃に設定している。アルミニウムAを温度T2まで昇温させると、次に第4加熱炉11Dに移動させてアルミニウムAの温度を温度T2となるように維持する。所定時間維持した後、第4加熱炉11DからアルミニウムAを搬出して自然冷却させる。こうしてアルミニウムAに対する一連の熱処理を終了する。
【0074】
このように、熱処理システム10において、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11Cは、アルミニウムAを昇温させる昇温炉として機能する。また、熱処理システム10において、第2加熱炉11B及び第4加熱炉11Dは、昇温炉で昇温したアルミニウムAの温度を維持する均熱炉として機能する。
【0075】
次に、各加熱炉11における温度調節制御について説明する。
図11に実線で示すように、第1加熱炉11Aでは、まず燃焼装置30に燃料と空気とを供給しバーナ部31において一次燃焼及び二次燃焼を行うことで高温の加熱ガスを生成し、炉本体100の内部温度を設定温度まで上昇させる。なお、第1加熱炉11Aの設定温度は、アルミニウムAを溶体化する上記温度T1に合わせて設定されている。そして、炉本体100の内部温度が設定温度まで到達したタイミングt1以降は、炉本体100の内部温度が設定温度に維持されるように燃焼装置30における燃焼態様を制御する。すなわち、燃焼装置30によって炉本体100の内部温度を上昇させる場合には、炉本体100の内部温度を維持する場合に比して発生する熱量を多くする必要がある。そのため、燃焼装置30に供給される燃料量及び空気量は、タイミングt1以前の方がタイミングt1以降よりも多い。また、第1加熱炉11Aでは、循環ファン125の駆動量を加熱ガスの流速が高速となるように設定している。なお、こうした加熱ガスの流速は、アルミニウムAを昇温させる上で好ましい流速となるように予めシミュレーションや実験によって求めて設定することができる。こうした状態で第1加熱炉11Aの炉本体100にアルミニウムAが搬入されると、
図11に一点鎖線で示すように、加熱ガスに曝されることによりアルミニウムAの温度が上昇し、温度T1に達する。アルミニウムAの温度が温度T1まで上昇すると、第1加熱炉11Aから第2加熱炉11BにアルミニウムAを移動させる。
【0076】
図12に示すように、第1加熱炉11Aの炉本体100から第2加熱炉11Bの炉本体100へのアルミニウムAの搬送は次のように行う。なお、第1加熱炉11Aの搬送装置110を第1搬送装置110Aとし、第2加熱炉11Bの搬送装置110を第2搬送装置110Bとする。第1加熱炉11Aの出口部182Aと第2加熱炉11Bの入口部181Aとは対向している。また、第1加熱炉11Aの第1側壁18Aと第2加熱炉11Bの第1側壁18Aとの距離は、第1搬送装置110Aから第2搬送装置110Bへ直接搬送パレットPを移載可能な距離に設定されている。
【0077】
第1加熱炉11Aにおいて、アルミニウムAの温度を温度T1まで昇温すると、第1加熱炉11Aの制御盤88は、炉本体100の第2蓋壁104を移動させて第2開口102Aを開放する。その後、第1加熱炉11Aの制御盤88は、第1搬送装置110Aを駆動し、炉本体100の内部から外部へアルミニウムAを搬出する。第2加熱炉11Bの制御盤88は、第1加熱炉11Aの制御盤88と通信可能に構成されている。そのため、第2加熱炉11Bの制御盤88は、第1加熱炉11Aの炉本体100の第2開口102Aが開放されると、第2加熱炉11Bの炉本体100における第1開口101Aを開放させるように第1蓋壁103を移動させるとともに、第2搬送装置110Bを駆動する。これにより、
図12に実線で示すように、第1搬送装置110Aによって搬送された搬送パレットPは、第2搬送装置110Bへと受け渡される。その後、
図12に二点鎖線で示すように、第2搬送装置110Bによって搬送パレットPは第2加熱炉11Bの炉本体100の内部に収容される。こうして炉本体100の内部に搬送パレットPとともにアルミニウムAが収容されると、第2加熱炉11Bでは第1蓋壁103を移動させて第1開口101Aを閉塞する。なお、第1加熱炉11Aでは、搬送パレットPを第2搬送装置110Bに受け渡した後、第2蓋壁104を移動させて第2開口102Aを閉塞する。このように、第1加熱炉11A及び第2加熱炉11Bとの間でアルミニウムAを移動させるときには、第1搬送装置110Aから第2搬送装置110BへアルミニウムAが直接受け渡される。
【0078】
図13に実線で示すように、第2加熱炉11Bでは、アルミニウムAが搬入される前の段階において、まず燃焼装置30に燃料と空気とを供給しバーナ部31において一次燃焼及び二次燃焼を行うことで高温の加熱ガスを生成し、炉本体100の内部温度を設定温度まで上昇させる。なお、第2加熱炉11Bの設定温度は、第1加熱炉11Aの設定温度と同じである。そして、炉本体100の内部温度が設定温度まで到達したタイミングt2以降では、炉本体100の内部温度が設定温度に維持されるように燃焼装置30における燃焼態様を制御する。すなわち、炉本体100の内部温度が設定温度まで上昇したタイミングt2以降は、タイミングt2以前に比べて、燃焼装置30に供給される燃料量及び空気量を少なくする。
【0079】
図13に一点鎖線で示すように、こうして燃焼装置30によって炉本体100の内部温度を維持している状態で第2加熱炉11Bには第1加熱炉11AからアルミニウムAが搬入される。第2加熱炉11Bに搬入されるアルミニウムAは、第1加熱炉11Aによって温度T1まで昇温された後の状態である。そのため、第2加熱炉11Bでは、アルミニウムAの温度を維持するために必要な熱量は少なくて済む。第2加熱炉11Bでは、タイミングt2以降の燃料量を、第1加熱炉11Aにおいてタイミングt1以降に設定されている燃料量よりも少なくしている。
【0080】
また、第2加熱炉11Bでは、炉本体100に供給される加熱ガスの流速が第1加熱炉11Aにおいて炉本体100に供給される加熱ガスの流速よりも遅い低速となるように循環ファン125の駆動量を設定している。なお、第2加熱炉11Bにおける加熱ガスの流速は、アルミニウムAの全体の温度を均一に維持する上で好ましい流速となるように予めシミュレーションや実験によって求めて設定することができる。
【0081】
図14に実線で示すように、第3加熱炉11Cでは、水槽12において冷却されたアルミニウムAが搬入される前の段階において、まず燃焼装置30に燃料と空気とを供給しバーナ部31において一次燃焼及び二次燃焼を行うことで高温の加熱ガスを生成し、炉本体100の内部温度を設定温度まで上昇させる。なお、第3加熱炉11Cの設定温度は、アルミニウムAを時効硬化させるための上記温度T2に合わせて設定されている。また、第3加熱炉11Cでは、燃焼装置30による昇温の途中で、燃焼装置30への燃料及び空気の供給量を抑制して電気ヒータ130を作動させる。これにより、第3加熱炉11Cでは、燃焼装置30と電気ヒータ130とによって昇温を行う。このように、熱源として燃焼装置30と電気ヒータ130とを併用することで、炉本体100の昇温にかかる一次エネルギー消費量を低減することができる。第3加熱炉11Cにおいて、炉本体100の内部温度が設定温度まで到達したタイミングt3では、燃焼装置30における燃焼を停止して、電気ヒータ130のみを駆動させた状態とする。これにより、タイミングt3以降は、電気ヒータ130によって炉本体100の内部温度が設定温度に維持されるようになる。
【0082】
図14に一点鎖線で示すように、こうして電気ヒータ130による加熱を行っている状態で第3加熱炉11Cには水槽12からアルミニウムAが搬送される。第3加熱炉11Cでは、循環ファン125の駆動量を加熱ガスの流速が高速となるように設定している。本実施形態では、第3加熱炉11Cにおいて炉本体100に供給される加熱ガスの流速が、第1加熱炉11Aにおいて炉本体100に供給される加熱ガスの流速と同じとなるように循環ファン125の駆動量を設定している。こうした状態で第3加熱炉11Cの炉本体100にアルミニウムAが搬入されると、加熱ガスに曝されることによりアルミニウムAの温度が上昇し、温度T2に達する。アルミニウムAの温度が温度T2まで上昇すると、第3加熱炉11Cから第4加熱炉11DにアルミニウムAを移動させる。なお、アルミニウムAを溶体化するための温度T1に比して、アルミニウムAを時効硬化させるための温度T2は低い。そのため、第3加熱炉11CにおいてアルミニウムAを昇温させる際に必要となる熱エネルギーは、第1加熱炉11AにおいてアルミニウムAを昇温させる際に必要となる熱エネルギーよりも少ない。そのため、第3加熱炉11Cにおいて、タイミングt3以降に熱源を電気ヒータ130のみとすることで、必要な熱エネルギーを確保しつつも一次エネルギー消費量を一層低減している。
【0083】
図15に実線で示すように、第4加熱炉11Dでは、アルミニウムAが搬入される前の段階において、まず燃焼装置30に燃料と空気とを供給しバーナ部31において一次燃焼及び二次燃焼を行うことで高温の加熱ガスを生成し、炉本体100の内部温度を設定温度まで上昇させる。なお、第4加熱炉11Dの設定温度は、第3加熱炉11Cの設定温度と同じである。また、第4加熱炉11Dでは、燃焼装置30による昇温の途中で、燃焼装置30への燃料及び空気の供給量を抑制して電気ヒータ130を作動させる。これにより、第4加熱炉11Dでは、燃焼装置30と電気ヒータ130とによって昇温を行う。このように、熱源として燃焼装置30と電気ヒータ130とを併用することで、炉本体100の昇温にかかる一次エネルギー消費量を低減することができる。第4加熱炉11Dにおいて、炉本体100の内部温度が設定温度まで到達したタイミングt4では、燃焼装置30における燃焼を停止させて、電気ヒータ130のみを駆動させた状態とする。これにより、タイミングt4以降は、電気ヒータ130によって炉本体100の内部温度が設定温度に維持されるようになる。
図15に一点鎖線で示すように、こうして電気ヒータ130による加熱を行っている状態で第4加熱炉11Dには第3加熱炉11CからアルミニウムAが搬入される。第3加熱炉11Cから第4加熱炉11DへのアルミニウムAの搬送態様は、上述した第1加熱炉11Aから第2加熱炉11BへのアルミニウムAの搬送態様と同じである。第4加熱炉11Dに搬入されるアルミニウムAは、第3加熱炉11Cによって温度T2まで昇温された後の状態である。そのため、第4加熱炉11Dでは、アルミニウムAの温度を維持するために必要な熱量は少なくて済む。第4加熱炉11Dでは、タイミングt4以降に熱源を電気ヒータ130のみとすることで、必要な熱エネルギーを確保しつつも一次エネルギー消費量を一層低減している。
【0084】
また、第4加熱炉11Dでは、炉本体100に供給される加熱ガスの流速が第3加熱炉11Cにおいて炉本体100に供給される加熱ガスの流速よりも遅い低速となるように循環ファン125の駆動量を設定している。本実施形態では、第4加熱炉11Dにおいて炉本体100に供給される加熱ガスの流速が、第2加熱炉11Bにおいて炉本体100に供給される加熱ガスの流速と同じとなるように循環ファン125の駆動量を設定している。
【0085】
図16を参照して、本実施形態の熱処理システム10における一次エネルギー消費量について説明する。なお、
図16には、各加熱炉11における炉本体100の昇温が完了した状態で第1加熱炉11Aから第4加熱炉11Dまで順に搬送してアルミニウムAに上述した熱処理を施すときの一次エネルギー消費量のグラフを示している。すなわち、各加熱炉11において、アルミニウムAが搬入されてから搬出されるまでに消費される一次エネルギーの量をグラフに示している。第1加熱炉11Aに搬入されるアルミニウムAの初期温度は25℃である。
【0086】
図16には、上述した熱処理システム10に対する比較例として、第1加熱炉11Aから第4加熱炉11Dまでの全ての加熱炉11において、電気ヒータ130を用いずに燃焼装置30のみを用いて熱処理を行った場合を比較例1として示している。比較例1では、第1加熱炉11Aから第4加熱炉11Dの全てにおいて加熱ガスの流速を低速に設定している。
図16には、比較例1における第1加熱炉11Aから第4加熱炉11Dにおける一次エネルギー消費量の総量を100%として示している。また、比較例1において、一次エネルギー消費量の総量に対する各加熱炉11の各々の一次エネルギー消費量の割合も示している。すなわち、比較例1では、一次エネルギー消費量の総量に対する第1加熱炉11Aにおける一次エネルギー消費量の割合を21%(=比較例1の第1加熱炉11Aにおける一次エネルギー消費量/比較例1の一次エネルギー消費量の総量×100)として示している。
【0087】
一方で、上述した熱処理システム10に対する比較例として、第1加熱炉11A及び第2加熱炉11Bは燃焼装置30のみを用い、第3加熱炉11C及び第4加熱炉11Dは電気ヒータ130のみを用いて熱処理を行った場合を比較例2として示している。また、比較例2では、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11Cの昇温炉における加熱ガスの流速を高速に設定し、第2加熱炉11B及び第4加熱炉11Dの均熱炉における加熱ガスの流速を低速に設定している。
図16には、比較例2における、比較例1の一次エネルギー消費量の総量に対する各加熱炉11の一次エネルギー消費量の割合を各別に示している。すなわち、比較例2では、第1加熱炉11Aにおける一次エネルギー消費量の割合は13%(=比較例2の第1加熱炉11Aにおける一次エネルギー消費量/比較例1の一次エネルギー消費量の総量×100)となる。そのため、比較例2では、比較例1に比して、第1加熱炉11Aにおける一次エネルギー消費量を7%低減できていることが分かる。同様に、比較例2では、比較例1に比して、第2加熱炉11Bにおける一次エネルギー消費量を14%低減できており、第3加熱炉11Cにおける一次エネルギー消費量を9%低減できている。また、比較例2では、比較例1に比して、第4加熱炉11Dにおける一次エネルギー消費量を22%低減できている。このように、第2比較例では、第1比較例に比して、熱処理システム全体において一次エネルギー消費量を合計53%低減できている。
【0088】
他方、本実施形態の熱処理システム10は、比較例2の構成において、さらに第1加熱炉11Aにおける加熱ガスの温度を590℃まで上昇させた場合に相当する。なお、比較例1及び比較例2では、第1加熱炉11Aにおける加熱ガスの温度は510℃である。本実施形態の構成では、第1加熱炉11Aにおける一次エネルギー消費量の割合は、7%(=本実施形態の第1加熱炉11Aにおける一次エネルギー消費量/比較例1の一次エネルギー消費量の総量×100)となる。そのため、本実施形態では、第1加熱炉11AにおいてアルミニウムAを溶体化するための温度T1まで昇温するときの一次エネルギー消費量が、比較例1に比して14%低減できているとともに比較例2に比して6%低減できている。第2加熱炉11Bから第4加熱炉11Dの制御態様は比較例2と同じであることから、本実施形態の熱処理システム10全体における一次エネルギー消費量は、第1加熱炉11Aにおける一次エネルギー消費量の差(6%)だけ比較例2に対して低減できており、比較例1に対しては合計59%低減できている。
【0089】
また、
図17を参照して、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11CにおけるアルミニウムAの昇温時間を比較例1、比較例2、及び本実施形態の熱処理システム10において比較する。比較例1では、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11Cの双方において、燃焼装置30のみを用いて熱処理を行うとともに、加熱ガスの流速を低速に設定している。一方、比較例2では、第1加熱炉11Aでは燃焼装置30のみを用いて熱処理を行い、第3加熱炉11Cでは電気ヒータ130のみを用いて熱処理を行う。また、比較例2では、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11Cにおける加熱ガスの流速を高速に設定している。比較例2では、比較例1に比して第1加熱炉11Aにおける昇温時間は2%増加しているものの、第3加熱炉11Cにおける昇温時間は4%減少しており、第1加熱炉11Aと第3加熱炉11Cとの双方の合計では2%減少している。
【0090】
これに対し、本実施形態の熱処理システム10では、比較例2の構成において、さらに第1加熱炉11Aにおける加熱ガスの温度を590℃まで上昇させている。すなわち、熱処理システム10では、第1加熱炉11Aでは燃焼装置30のみを用いて熱処理を行い、第3加熱炉11Cでは電気ヒータ130のみを用いて熱処理を行う。また、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11Cにおける加熱ガスの流速を高速に設定している。そして、第1加熱炉11Aでは、加熱ガスの温度を590℃まで上昇させている。これにより、熱処理システム10では、比較例1に比して、第1加熱炉11Aにおける昇温時間が32%減少しており、第3加熱炉11Cにおける昇温時間の4%低減分と合わせると、昇温時間を合計で36%低減することができている。
【0091】
このように、本実施形態では、熱処理システム10において、一次エネルギー消費量を大幅に低減するとともに、アルミニウムAの昇温時間を大幅に短縮している。
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0092】
(1)本実施形態では、燃焼装置30に、排出通路120に排出された加熱ガスと、該燃焼装置30に供給された空気との間で熱交換を行う熱交換部75を設けている。このように、燃焼装置30に熱交換部75を設けることで、燃焼装置30と熱交換器とを別々に設けることなくこれらを一体化している。そのため、熱処理システム10に燃焼装置30と熱交換器とを別々に設ける構成に比して、設置スペースの省スペース化を図ることが可能になる。したがって、熱処理システム10の小型化に貢献できる。
【0093】
(2)本実施形態では、各加熱炉11の仕切板18において、第1側壁18Aに、外部から搬送装置110へアルミニウムAを受け渡すための入口部181A、及び搬送装置110によってアルミニウムAを外部へ排出するための出口部182Aを形成している。そして、各加熱炉11の仕切板18において、第2側壁18Bに制御盤88を取り付けるとともに、この第2側壁18Bに確認窓181Bを形成している。制御盤88や確認窓181Bは、熱処理システム10の管理者が操作、監視、及び点検するために設けられている。そのため、加熱炉11において、制御盤88や確認窓181Bが配置されている第2側壁18B側には管理者が通行可能な所定のスペースが必要になる。一方で、入口部181A及び出口部182Aが形成されている第1側壁18A側には上記スペースを設ける必要はない。そのため、複数の加熱炉11を連結するときに、一方の加熱炉11の出口部182Aが形成された側壁と、他方の加熱炉11の入口部181Aが形成された側壁とを接近させて配置している。したがって、加熱炉11間の間隔が短くなり、加熱炉11を複数連結して構成した熱処理システム10において小型化を図ることが可能になる。
【0094】
また、加熱炉11間の距離が短くなることで、アルミニウムAを搬送するための移動距離も短くなる。そのため、アルミニウムAの加熱炉11間の移動に伴う放熱量を減少させて熱処理システム10における熱効率を高めることも可能になる。
【0095】
(3)本実施形態では、第1加熱炉11Aの出口部182Aと第2加熱炉11Bの入口部181Aとを対向させて、第1搬送装置110Aから第2搬送装置110BへアルミニウムAを直接受け渡すようにしている。また、第3加熱炉11Cの出口部182Aと第4加熱炉11Dの入口部181Aとを対向させて、第3加熱炉11Cの搬送装置110から第4加熱炉11Dの搬送装置110へアルミニウムAを直接受け渡すようにしている。このように、加熱炉11に設けられている搬送装置110によってアルミニウムAを受け渡す構成とすれば、加熱炉11間においてアルミニウムAを搬送するための別の搬送装置を設ける必要がない。したがって、加熱炉11を複数連結して構成した熱処理システム10において、別の搬送装置を設けるスペースを省略して一層の小型化を図ることが可能になる。
【0096】
(4)燃焼装置30では、燃料と空気とを燃焼させることで発生した一次燃焼ガス、空気、及び燃料を混合させてフレームレス燃焼によって加熱ガスを生成した。フレームレス燃焼では生成される加熱ガスが局所的に高温となる現象が抑えられ、温度のばらつきが低減される。そのため、フレームレス燃焼で生成される二次燃焼ガスと加熱炉11内のガスとを混合して生成した加熱ガスの温度を590℃に設定し、循環ファン125の耐熱温度Trである600℃に近い温度としても、加熱ガスの温度のばらつきが抑えられるため、循環ファン125の耐熱温度Trを超えにくくなる。したがって、より高温の加熱ガスを炉本体100へ供給することが可能になり、アルミニウムAの昇温速度の向上に寄与できる。
図17に示すように、炉本体100に搬入されたアルミニウムAの昇温速度を向上させることができる結果、
図16に示すように、熱処理システム10の一次エネルギー消費量の低減にも貢献できる。
【0097】
(5)燃焼部20を内管23及び外管24を有する二重管構造として、内部にガス流路を形成した。このガス流路は、燃焼装置30によって生成された加熱ガスを内管23を通じて供給通路95へと流動させるとともに、燃焼部20に流入した加熱ガスを外管24と内管23との間に流入させた後、燃焼装置30が配置されている開放端部23Bから内管23へと流動させて再度供給通路95へ流出させる。燃焼部20の内部に形成されたこのようなガス流路によって、燃焼装置30によって生成された加熱ガスを内管23を通じて供給通路95へ流す流れが形成されている。そのため、燃焼装置30で生成された加熱ガスは、排出通路120側へ逆流することなく、供給通路95へ流れていく。また、燃焼部20では、大径部21の下端部から上端部へ向けて流れるようにガス流路を形成することで、加熱炉11から放出される加熱ガスを燃焼装置30の熱交換部75へ案内する流れを形成している。したがって、加熱ガスの流れを円滑にして熱効率を向上させつつも、燃焼装置30におけるヘッド部64内へのガスの流入を抑えて保炎性を確保することが可能になる。また、こうしたガス流路を燃焼部20の内部に形成していることから、ガス流路を燃焼部20の外部に形成する構成に比して、熱処理システム10の一層の小型化に貢献できる。
【0098】
(6)本実施形態では、アルミニウムAを昇温させる昇温炉として第1加熱炉11A及び第3加熱炉11Cを備え、該昇温炉で昇温したアルミニウムAの温度を維持する均熱炉として第2加熱炉11B及び第4加熱炉11Dを備えている。
【0099】
加熱ガスによって炉本体100の内部に配置されたアルミニウムAを加熱する場合、加熱ガスの流速を速くするほど単位時間あたりにアルミニウムAに伝達される熱量は多くなる。そのため、アルミニウムAを昇温させるときには、加熱ガスの流速を速くすることが望ましい。一方で、昇温したアルミニウムAの温度を維持するときに加熱ガスの流速を速くすると、アルミニウムAにおいて加熱ガスが吹き付けられる部分が部分的に昇温されてしまい、アルミニウムAの全体の温度を均一に維持しにくくなる。
【0100】
本実施形態では、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11Cにおいて炉本体100に供給される加熱ガスの流速を、第2加熱炉11B及び第4加熱炉11Dにおいて炉本体100に供給される加熱ガスの流速よりも速くしている。したがって、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11CにおいてアルミニウムAを昇温する際の効率化を図りつつ、第2加熱炉11B及び第4加熱炉11DにおいてアルミニウムAの温度を維持するときの温度ばらつきを低減した熱処理システム10を実現できる。このように、アルミニウムAを昇温する際の効率化を図ることができる結果、
図16に示すように、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11Cにおける一次エネルギー消費量の低減に貢献できる。
【0101】
(7)本実施形態では、電気ヒータ130を供給通路95に設けることで、加熱ガスの循環経路において燃焼装置30とは異なる部位に電気ヒータ130を配置している。
電気ヒータ130は、循環ファン125の駆動に伴い循環する加熱ガスを加熱して、炉本体100に収容されているアルミニウムAを加熱する。こうした電気ヒータ130を燃焼装置30とは異なる部位に設けることで、燃焼装置30により加熱ガスの生成を行っていないときであっても、電気ヒータ130を用いてアルミニウムAを加熱することができる。すなわち、第3加熱炉11C及び第4加熱炉11Dでは、炉本体100の内部温度を上昇させるときにも電気ヒータ130を駆動しているとともに、炉本体100の内部温度を設定温度まで昇温させた後には電気ヒータ130のみで加熱ガスを加熱している。このように各加熱炉11における加熱態様の自由度を向上させて、加熱処理における柔軟性を高めることができる。なお、電気ヒータ130による加熱では、燃焼装置30のように吸排気が必要ないため、省エネの観点では望ましく、
図16に示すように、各加熱炉11における一次エネルギー消費量の低減に貢献できる。
【0102】
また、電気ヒータ130を加熱ガスの循環経路において燃焼装置30とは異なる部位に配置することで、電気ヒータ130を駆動して、該電気ヒータ130が高温となっているときであっても、燃焼装置30を速やかに駆動できる。すなわち、燃焼装置30と電気ヒータ130とを仮に一体として配置した場合、電気ヒータ130が高温となっている状態で燃焼装置30へ燃料供給を行うと、燃焼装置30において誤点火が生じる可能性がある。本実施形態では、こうした誤点火が生じることが抑制されることから、電気ヒータ130を駆動している状態から燃焼装置30を駆動している状態への速やかな移行が可能になる。したがって、電力のデマンドレスポンスへの対応も可能になる。
【0103】
(8)本実施形態では、循環ファン125を炉本体100の上部に配置し、加熱ガスの循環経路において加熱室100Aの入口に近接した位置に設けた。循環ファン125では、加熱ガスを攪拌して流動させることから、均熱化した加熱ガスを加熱室100Aに供給することができる。したがって、アルミニウムAを昇温させる際の温度ばらつきを低減できる。
【0104】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、供給通路95に循環ファン125及び電気ヒータ130を設けた。この際、循環ファン125が炉本体100側に位置するように循環ファン125及び電気ヒータ130を配置した。これらの配置は適宜変更が可能である。例えば、供給通路95において、循環ファン125と炉本体100との間に電気ヒータ130を設けてもよい。また、排出通路120に循環ファン125と電気ヒータ130とを配置することも可能である。この場合、排出通路120において、炉本体100側から循環ファン125及び電気ヒータ130となる順番で配置してもよいし、炉本体100側から電気ヒータ130及び循環ファン125となる順番で配置してもよい。また、供給通路95に循環ファン125を配置するとともに排出通路120に電気ヒータ130を配置してもよいし、供給通路95に電気ヒータ130を配置するとともに排出通路120に循環ファン125を配置してもよい。なお、循環ファン125を流れる加熱ガスの温度を耐熱温度Tr以下としつつも、加熱室100Aにおける加熱ガスの温度を高める上では、循環ファン125が燃焼装置30から最も遠くに配置されるように、循環ファン125を排出通路120に設けることが望ましい。また、電気ヒータ130及び循環ファン125の数は1つに限らず、複数設けるようにしてもよい。
【0105】
・上記実施形態において、炉本体100にも電気ヒータ130を設けて、該電気ヒータ130からの輻射熱によって被加熱物を直接加熱する構成を採用してもよい。
・上記実施形態では、第1加熱炉11A及び第2加熱炉11Bにおいて、炉本体100を昇温させるときに燃焼装置30を用いる例を示したが、炉本体100を昇温させるときに電気ヒータ130と燃焼装置30との両方を用いるようにしてもよい。また、第1加熱炉11Aから第4加熱炉11Dの少なくとも1つにおいて、炉本体100の昇温を電気ヒータ130のみを用いて行うことも可能である。すなわち、電気ヒータ130は、循環ファン125の駆動に伴って加熱炉11内を循環する空気を加熱することで被加熱物を加熱する加熱ガスを生成できる。こうした加熱ガスを炉本体100へ供給することで炉本体100の昇温を図ることができる。
【0106】
また、第3加熱炉11C及び第4加熱炉11Dでは、炉本体100の温度を昇温させた後、一定の温度に維持するときに、燃焼装置30ではなく、電気ヒータ130を用いる例を示した。こうした構成に代えて、炉本体100の温度を維持するために燃焼装置30を用いるようにしてもよい。例えば、電気ヒータ130を使用した場合、契約上設定されている一日の使用可能な最大電力を超えてしまう場合等が想定される。こうした最大電力を超えて電気を使用すると電気使用料金に割増料金が加算されることもある。そのため、こうした場合には、電気使用料金の観点から電気ヒータ130に代えて燃焼装置30を用いた方が望ましい場合もある。
【0107】
・上記実施形態では、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11Cにおいて、被加熱物の温度が所定の温度まで上昇すると次の加熱炉11へ搬送する例を示したが、予め設定した時間経過したときに被加熱物を次の加熱炉11へ搬送するようにしてもよい。
【0108】
・上記実施形態において、燃焼装置30に電気ヒータ130を一体化して設けることも可能である。
・上記実施形態では、加熱炉11における加熱ガスの流速の変化を循環ファン125の駆動量を制御することで実現した。加熱ガスの流速の制御する方法は、こうしたものに限らない。例えば、炉本体100において供給通路95との接続部に、流路断面積を変更可能な制御弁を設けて、該制御弁によって流路断面積を小さくすることで、炉本体100に供給される加熱ガスの流速を一時的に高める等してもよい。
【0109】
・上記実施形態では、第1加熱炉11A及び第3加熱炉11Cにおいて炉本体100に供給される加熱ガスの流速を、第2加熱炉11B及び第4加熱炉11Dにおいて炉本体100に供給される加熱ガスの流速よりも速くしている。こうした構成は適宜変更が可能である。例えば、溶体化処理における加熱ガスの流速を、時効硬化処理における加熱ガスの流速よりも速くする等してもよい。すなわち、第1加熱炉11Aにおける加熱ガスの流速を、第2加熱炉11B及び第3加熱炉11Cの双方における加熱ガスの流速よりも速くするとともに、第2加熱炉11Bにおける加熱ガスの流速を、第4加熱炉11Dにおける加熱ガスの流速よりも速くすることも可能である。また、例えば、第1加熱炉11Aにおいて炉本体100を昇温するときは加熱ガスの流速を低速とし、被加熱物を昇温するときには加熱ガスの流速を高速とする等、1つの加熱炉11において状況に応じて加熱ガスの流速を変化させるようにしてもよい。なお、全ての加熱炉11における加熱ガスの流速を同じ速度として、加熱ガスの流速を加熱炉11間で変化させない構成とすることも可能である。
【0110】
・上記実施形態では、燃焼装置30においてフレームレス燃焼を発生させて加熱ガスを生成したが、必ずしもフレームレス燃焼を行う必要はない。例えば、フレームレス燃焼よりも酸化剤ガス濃度の高い高温空気燃焼によって加熱ガスを生成してもよいし、燃料と酸化剤ガスとを点火して燃焼させた一次燃焼ガスを加熱ガスとして生成するようにしてもよい。
【0111】
・上記実施形態では、加熱炉11及び水槽12を直列に配置した例を示したが、熱処理システムにおける加熱炉11の配置はこうしたものに限らない。
例えば、
図18に示すように、熱処理システム200では、第1方向に直列に配置した第1加熱炉11A及び第2加熱炉11Bと、第1方向に直列に配置した第3加熱炉11C及び第4加熱炉11Dとを、第2方向に離間させて2列に並べて配置する。水槽12は、これら列の間において第2加熱炉11B及び第3加熱炉11C側に配置する。熱処理システム200には、第2加熱炉11Bの出口部182Aから水槽12に被加熱物を搬送するための第21搬送装置201と、水槽12から第3加熱炉11Cの入口部181Aに被加熱物を搬送するための第22搬送装置202とが設けられている。
【0112】
図19に矢印で示すように、こうした構成では、第1加熱炉11Aの入口部181Aから搬入された被加熱物は、第1加熱炉11Aから第2加熱炉11Bを通過して第21搬送装置201へ搬送される。第21搬送装置201では、第2加熱炉11Bから搬送された被加熱物を水槽12へ向けて搬送する。そのため、第1加熱炉11A及び第2加熱炉11Bにおける搬送方向に対して、第21搬送装置201における搬送方向は90°回転した方向となる。第21搬送装置201から水槽12に搬送された被加熱物は、第22搬送装置202へと搬出される。第22搬送装置202では、水槽12から搬送された被加熱物を第3加熱炉11Cの入口部181Aへ搬送する。そのため、水槽12から第22搬送装置202への搬送方向に対して、第22搬送装置202から第3加熱炉11Cへの搬送方向は90°回転した方向となる。第3加熱炉11Cの入口部181Aから搬入された被加熱物は、第3加熱炉11Cから第4加熱炉11Dへと搬送され、第4加熱炉11Dの出口部182Aから搬出される。第3加熱炉11C及び第4加熱炉11Dにおける搬送方向は、第1加熱炉11A及び第2加熱炉11Bにおける搬送方向に対して180°回転した方向となる。このように、熱処理システム200では、被加熱物を平面視においてU字状の経路で搬送して熱処理を施すことができる。なお、
図18に示すように、こうした構成であっても、第2側壁18Bの内、他の加熱炉11の第2側壁18Bに対向していない側の第2側壁18Bに制御盤88や確認窓181Bを配置することが望ましい。
【0113】
・加熱炉11間で被加熱物を搬送するときに、一方の搬送装置110から他方の搬送装置110へ直接受け渡す構成を採用したが、こうした構成は必須ではない。例えば、加熱炉11間に別の搬送装置を設けて、別の搬送装置によって被加熱物を加熱炉11間で搬送するようにしてもよい。
【0114】
・搬送装置110の構成としては、上述したものに限らない。例えば、ロボットアームや、ベルトコンベアなどの公知の構成を採用してもよい。また、加熱炉11に搬送装置110を設けずに、被加熱物を人力で加熱炉11に搬送するようにしてもよい。
【0115】
・上記実施形態では、加熱炉11毎に制御盤88を設けたが、こうした構成は変更が可能である。例えば、加熱炉11毎に制御盤88を設けずに、全ての加熱炉11を統括して制御する1つの制御盤を別途設けるようにしてもよい。なお、こうした構成であっても、統括制御するための制御盤は仕切板18の第2側壁18Bに設けることが望ましい。
【0116】
・制御盤88を第2側壁18Bの内周面に取り付けた構成としたが、制御盤88を第2側壁18Bの外周面に取り付けるようにしてもよい。
・上記実施形態において、制御盤88及び確認窓181Bを入口部181A及び出口部182Aが形成された第1側壁18Aに設けるようにしてもよい。また、入口部181A及び出口部182Aを第2側壁18Bに設けるようにしてもよい。
【0117】
・上記実施形態において、仕切板18の少なくとも一部を省略してもよい。例えば、一対の第1側壁18Aを省略する等してもよい。また、仕切板18において、第1側壁18A及び第2側壁18Bの少なくとも1つを平板状ではなく湾曲板状に形成することも可能である。
【0118】
・上記実施形態では、加熱ガスの温度を590℃まで上昇させるようにしたが、比較例2のように加熱ガスの温度を510℃まで上昇させる構成としてもよい。すなわち、熱処理システムとしては、比較例2のような熱処理制御を実行するものも含む。また、熱処理システムとして、上述した加熱炉11を用いて比較例1のような熱処理制御を行ってもよいことはいうまでもない。そのため、熱処理システム10としては、比較例1のような熱処理制御を実行するもの含む。すなわち、比較例1及び比較例2のような熱処理制御を行う熱処理システムを採用したとしても、加熱炉11の構成として本実施形態と同様の構成を採用することで、上記(1)の作用及び効果を得ることは可能である。
【0119】
・上記実施形態では、燃焼部20を二重管構造としたが、内管23を省略してもよい。また、燃焼部20を省略し、燃焼装置30を供給通路95等の他の部位に設けるようにしてもよい。
【0120】
・上記実施形態では、焼入れを含む熱処理を実行する熱処理システム10を例に説明したが、熱処理の態様は適宜変更が可能である。例えば、焼入れを行わない熱処理を実行する熱処理システムに、上記実施形態と同様の構成を適用することも可能である。なお、こうした場合には、水槽12は省略できる。また、加熱炉11の数は、4つに限らず、1つ以上であればその数を任意に変更できる。
【0121】
・上記実施形態では、被加熱物としてアルミニウムを例に説明したが、被加熱物はこうしたものに限らない。例えば、被加熱物としてアルミニウム以外の金属、ガラス、樹脂等を用いて熱処理を行ってもよい。また熱処理として、溶体化処理だけでなく、アニール処理や乾燥処理等を実行することもできる。
【符号の説明】
【0122】
10…熱処理システム
11…加熱炉
11A…第1加熱炉(昇温炉)
11B…第2加熱炉(均熱炉)
11C…第3加熱炉(昇温炉)
11D…第4加熱炉(均熱炉)
12…水槽
15…支持台
16…底部
17…脚部
18…仕切板
18A…第1側壁
181A…入口部
182A…出口部
18B…第2側壁
181B…確認窓
20…燃焼部
20A…燃焼室
21…大径部
22…小径部(取付部)
22A…固定フランジ
23…内管
23A…連通端部
23B…開放端部
24…外管
24A…流出部
24B…流入部
30…燃焼装置
31…バーナ部
32…スパークロッド
40…連結部
40A…連結口
41…第1接続通路
42…第2接続通路
43…第3接続通路
44…第4接続通路
45…第5接続通路
46…第1内管
47…第2内管
48…スペーサ
48A…スポーク
49…第3内管
49A…通路溝
50…旋回ノズル
51…第4内管
55…ノズル部
56…基部
57…中間部
58…噴孔部
58A…テーパ面
59…第1連通路
60…第2連通路
60A…第1直線路
60B…円環通路
60C…第2直線路
61…第3連通路
62…外管
62A…フランジ部
63…燃料主管
64…ヘッド部
65…第1燃料通路
66…第1空気通路
67…第2燃料通路
68…第2空気通路
69…燃料主通路
70…空気主通路
75…熱交換部
76…第1固定板
77…熱交換パイプ
78…バッフル
79…第2固定板
80…合流部
80A…周壁
80B…封止壁
81…排気ポート
82…放出ブロア
83…光電センサ
85…燃料配管
85A,85B…分岐端部
88…制御盤
90…空気配管
90A…分岐管
91…計器
92…流量操作弁
93…送風ブロア
95…供給通路
100…炉本体
100A…加熱室
101…第1壁部
101A…第1開口
102…第2壁部
102A…第2開口
103…第1蓋壁
104…第2蓋壁
110…搬送装置
110A…第1搬送装置
110B…第2搬送装置
111…ローラ
112…第1外部ローラ
113…第2外部ローラ
114…内部ローラ
115…プーリ
116…ベルト
120…排出通路
125…循環ファン
130…電気ヒータ
130A…ヒータ線
130B…通電部
200…熱処理システム
201…第21搬送装置
202…第22搬送装置
A…アルミニウム(被加熱物)
P…搬送パレット
S…口火
R…旋回火炎R