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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】吹出ユニット、及び、空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/20 20060101AFI20240926BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20240926BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F24F1/0007 401C
F24F1/0007 401B
F24F13/14 B
F24F13/14 D
F24F13/08 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020125665
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021832
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】小松 彰
(72)【発明者】
【氏名】仁木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 脩一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 徹
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-265440(JP,A)
【文献】特開2017-013783(JP,A)
【文献】特開2022-021831(JP,A)
【文献】特許第7348481(JP,B2)
【文献】実開昭51-025853(JP,U)
【文献】実開昭63-165439(JP,U)
【文献】国際公開第2012/046438(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/189992(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0068044(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0007
F24F 13/08
F24F 13/14
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路(S)の室内への吹出口(P)に配置され、前記通風路を通じて供給された空気を前記室内へ吹出す吹出ユニット(1)であって、
前記吹出口(P)は、対向する2辺を有し、
前記吹出口(P)の対向する2辺の内の1辺に配置され、第1辺(11a)を有し、前記第1辺から離れた回転軸(15)を中心として回転することにより、前記第1辺が前記吹出口から前記通風路内へ移動する板部材(10)と、
前記吹出口の対向する2辺の内の他の1辺に配置され、前記板部材の前記第1辺に沿って延び、かつ、前記通風路内から前記第1辺に向かって傾斜した第1面(21)を有するガイド部(20)と、
を備え、
前記板部材及び前記ガイド部の前記第1面は、前記通風路から前記吹出口に向かう空気の第1風向を第2風向に変化させ、
前記板部材が回転することにより前記第2風向が変化する、吹出ユニット。
【請求項2】
前記板部材の前記第1辺が前記吹出口にある状態において、前記吹出口に直交し、かつ、前記板部材から前記ガイド部の方向に沿った断面を見た場合、
前記板部材は、前記第1辺の第1端部(11)とは異なる、前記通風路の第1壁面(31)に面する第2端部(12)を有し、
前記回転軸は、前記第2端部から前記板部材の長さの1/3の部分を通り、かつ、前記吹出口に直交する直線と、前記第1壁面との間に配置される、
請求項1記載の吹出ユニット。
【請求項3】
前記板部材は、前記回転軸を有し、
前記回転軸は、前記第2端部の近傍に配置される、
請求項2記載の吹出ユニット。
【請求項4】
前記ガイド部の前記第1面は、前記第1風向の空気が当たるように傾斜している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の吹出ユニット。
【請求項5】
前記ガイド部の前記第1面は、前記第1風向に対して20°以上65°以下傾斜している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の吹出ユニット。
【請求項6】
前記板部材の前記第1端部と前記第2端部との間の長さLは、前記第1端部から前記第2端部へ向かう方向における前記吹出口の長さWに対して、
W/4<L<W/2
の関係を満たす、
請求項2または3に記載の吹出ユニット。
【請求項7】
前記通風路の一部を構成するチャンバーボックスをさらに備え、
前記チャンバーボックスは、天井裏又は側壁裏に配置され、前記吹出口を構成する開口部を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の吹出ユニット。
【請求項8】
前記板部材の回転の角度を制御する制御部(40)をさらに備え、
前記制御部は、前記板部材の回転の角度と、前記ガイド部の前記第1面とにより、前記第2風向を変化させる、
請求項1~7のいずれか1項に記載の吹出ユニット。
【請求項9】
通風路から調和空気を室内へ供給する空気調和装置であって、
前記通風路の室内への吹出口に配置された、請求項1~8のいずれか1項に記載の吹出ユニットを備える、
空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通風路の室内への吹出口に配置され、通風路を通じて供給された空気を室内へ吹出す吹出ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2007-155309号公報)には、空気調和機の空気吹出口に設けられた風向調整フラップが開示されている。特許文献1の風向調整フラップは回転軸に対して角度調整が可能なように設けられており、風向調整フラップに連結された風向調整用モータを制御することにより、空気の吹出方向を調整している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、風向調整フラップの回転軸は、回転軸の方向に対し垂直な方向の断面において、風向調整フラップの中心部分に配置されている。このような構成では、風向調整フラップを回転させると、上記断面において、風向調整フラップの両端側から空気が吹き出してしまい、精度の高い風向調整を行うことが難しい。本開示は、簡易な構造で、風向調整自由度の高い吹出口を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の吹出ユニットは、通風路の室内への吹出口に配置され、通風路を通じて供給された空気を室内へ吹出す。吹出ユニットは、板部材と、ガイド部とを備える。板部材は、吹出口に配置され、第1辺を有する。板部材は、第1辺から離れた回転軸を中心として回転することにより、第1辺が吹出口から通風路内へ移動する。ガイド部は、吹出口の板部材とは別の位置に配置され、板部材の第1辺に沿って延び、かつ、通風路内から第1辺に向かって傾斜した第1面を有する。板部材及びガイド部の第1面は、通風路から吹出口に向かう空気の第1風向を第2風向に変化させ、板部材が回転することにより第2風向が変化する。
【0005】
第1観点の吹出ユニットは、簡易な構造で、吹出口から吹き出される空気の方向を変更することができる。
【0006】
第2観点の吹出ユニットは、第1観点の吹出ユニットであって、板部材の前記第1辺が吹出口にある状態において、吹出口に直交し、かつ、板部材からガイド部の方向に沿った断面を見た場合、板部材は、第1辺の第1端部とは異なる、通風路の第1壁面に面する第2端部を有し、回転軸は、第2端部から板部材の長さの1/3の部分を通り、かつ、吹出口に直交する直線と、第1壁面との間に配置される。
【0007】
第3観点の吹出ユニットは、第2観点の吹出ユニットであって、板部材は、回転軸を有する。回転軸は、第2端部の近傍に配置されている。
【0008】
第4観点の吹出ユニットは、第1観点~第3観点のいずれかの吹出ユニットであって、ガイド部の第1面は、第1風向の空気が当たるように傾斜している。
【0009】
第5観点の吹出ユニットは、ガイド部の第1面は、第1風向に対して20°以上65°以下傾斜している。
【0010】
第6観点の吹出ユニットは、第2観点または第3観点の吹出ユニットであって、板部材の第1端部と第2端部との間の長さLは、第1端部から第2端部へ向かう方向における吹出口の長さWに対して、
W/4<L<W/2
の関係を満たす。
【0011】
第7観点の吹出ユニットは、第1観点~第6観点のいずれかの吹出ユニットであって、通風路の一部を構成するチャンバーボックスをさらに備える。チャンバーボックスは、天井裏又は側壁裏に配置され、吹出口を構成する開口部を有する。
【0012】
第8観点の吹出ユニットは、第1観点~第7観点のいずれかの吹出ユニットであって、板部材の回転の角度を制御する制御部をさらに備える。制御部は、板部材の回転の角度と、ガイド部の第1面とにより、第2風向を変化させる。
【0013】
第9観点の空気調和装置は、通風路から調和空気を室内へ供給する。空気調和装置は、第1観点~第8観点のいずれかの吹出ユニットを備える。吹出ユニットは、通風路の室内への吹出口に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の吹出ユニット1を天井下から見た斜視図である。
図2A】第1実施形態の吹出ユニット1において、板部材10の回転角が水平から45°のときの、吹出ユニット1の鉛直断面図である。
図2B】第1実施形態の吹出ユニット1において、板部材10の回転角が水平から80°のときの、吹出ユニット1の鉛直断面図である。
図3A】第1実施形態の吹出ユニット1において、板部材10の回転角が水平から45°のとき、風向のシミュレーション結果を示す図である。
図3B】第1実施形態の吹出ユニット1において、板部材10の回転角が水平から80°のとき、風向のシミュレーション結果を示す図である。
図4】第1実施形態の吹出ユニット1の板部材10の吹出口Pにある状態と、通風路S側に90°回転した状態とを示す鉛直断面図である。また、各部材の形状パラメータを示す図である。
図5】第1実施形態の吹出ユニット1の制御ブロック図である。
図6】変形例1Aの吹出ユニット1の板部材10pを占めす鉛直断面図である。
図7A】変形例1の吹出ユニット1の鉛直断面図である。
図7B】変形例1の吹出ユニット1の下方から見た斜視図である。
図7C】変形例1の吹出ユニット1を天井下から見た斜視図である。吹出口P1、P2はともに開である。
図8A】変形例1の吹出ユニット1の鉛直断面図である。
図8B】変形例1の吹出ユニット1を下方から見た斜視図である。
図8C】変形例1の吹出ユニット1を天井面2に配置した様子を下方から見た斜視図である。4つの吹出口はすべて開である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
(1)吹出ユニット1の構成
吹出ユニット1は、通風路Sの室内への吹出口Pに配置され、通風路Sを通じて供給される空気を室内3へ吹出す。ここで、供給される空気とは、外気又は室内の空気を、そのまま又は加熱、冷却、除湿、加湿したものなどを含む。吹出口Pは、部屋の天井面又は壁面に配置される。吹出ユニット1は、吹出口Pよりも通風路S側、天井裏や側壁裏に配置される。
【0016】
吹出ユニット1を、図面を用いて説明する。図1は、吹出ユニット1を天井下から見た斜視図である。図2A、2Bは、天井裏に設置された吹出ユニット1の鉛直断面図である。図3A、3Bは、それぞれ、図2A、2Bの吹出ユニット1の空気の流れをシミュレーションした結果を示す図である。図4は、吹出ユニット1の板部材10の回転角度範囲を示す図である。図5は、吹出ユニット1の制御ブロック図である。
【0017】
吹出ユニット1は、板部材10と、ガイド部20と、チャンバーボックス30と、パネル33と、制御部40と、モータ41と、を備えている。チャンバーボックス30は、箱型状であり、ダクトに接続される吸込口と、空気を吹き出す吹出口とを有する。チャンバーボックス30の構成については、後述する。吹出ユニット1は、部屋の天井面2の開口部にチャンバーボックス30の吹出口が位置するよう、天井裏に配置される。チャンバーボックス30が通風路Sの一部を構成し、チャンバーボックス30の吹出口が通風路Sの吹出口Pを構成する。板部材10及びガイド部20は、吹出口Pに配置される。本実施形態では、吹出口Pは、室内側から見た場合、長方形である。パネル33は、天井面の吹出口Pの周囲を覆うように、室内側から天井面に配置される。吹出ユニット1は、板部材10が回転することにより、チャンバーボックス30を通じて供給される空気を室内3へ吹出す。
【0018】
板部材10は、所定の厚みを有する長方形の板であり、その面が天井面に平行になるよう配置されている。板部材10の室内側の面を第1面101とし、通風路S側の面を第2面102とする。板部材10は、長手方向に延び、かつ、ガイド部20に対向する第1辺11aと、第1辺11aと平行に延び、チャンバーボックス30の第1壁面31に面する第2辺12aとを有する。板部材10の長手方向の長さは、吹出口Pの長手方向の長さと略同一である。
【0019】
板部材10の形状は、吹出口Pの形状に応じて適宜変更可能である。板部材10は、長方形でなく、正方形でもよい。板部材10は、角が面取り加工されていてもよい。板部材10の厚みDは均一でなくてもよい。板部材10は、板部材10の中心部分から4辺の端部に向かって厚みが小さくなっていてもよい。
【0020】
図4に示すように板部材10が吹出口Pに配置された状態で、吹出口Pに垂直、かつ、板部材10からガイド部20の方向に沿った断面において(以下、断面Xとする。)、板部材10のガイド部20に近い端を第1端部11とし、チャンバーボックス30の第1壁面31に近い端を第2端部12とする。第1端部11は板部材10の第1辺11aに位置し、第2端部12は板部材10の第2辺12aに位置する。板部材10は、第2端部12側に、回転軸15を有している。回転軸15と第2端部12との距離は、板部材10の第1端部11と第2端部12との距離(長さL)の1/3以下である。より好ましくは、回転軸15と第2端部12との距離は、板部材10の厚みDの1/2以下である。これにより、板部材10が回転した場合に、板部材10とチャンバーボックス30の第1壁面31との間に流れる空気の量を少なくすることができる。また、板部材10が回転した場合に、第2端部12が吹出口Pよりも室内側へ突出することを抑制できる。図4に示すように、板部材10は、回転軸15を中心として、通風路S方向に90°回転可能である。板部材10は、回転軸15を中心として、通風路S方向に0°から45°以上90°未満の角度まで回転可能であってもよい。風向調整可能な範囲で回転できればよい。
【0021】
ガイド部20は、吹出口Pに、板部材10と対向して配置されている。ガイド部20は、断面Xにおいて、板部材10の第1端部11に隣接して配置されている。ガイド部20は、断面Xにおいて、通風路Sに面した第1面21、室内に面した第2面22、チャンバーボックス30の第2壁面32に面した第3面23、板部材10の第1端部11に面した第4面24を有する。具体的には、第1面21は、板部材10の第1端部11に隣接する第1端部から第2端部まで延びている。第2端部は、第1端部よりも通風路Sの室内側とは反対側、かつ、第1端部よりも板部材10の第1端部11側とは反対側に位置する。言い換えれば、第1面21は、第2壁面32側から板部材10側に向かって、通風路S側から室内側に向かって、傾斜している。図4の断面図では直線的(平面的)に傾斜しているが、曲線で(曲面で)傾斜していてもよい。第2面22は、天井面2に平行に配置されており、板部材10が吹出口Pに配置された状態の場合、板部材10の室内側の第1面101と、第2面22とは同一平面上に配置されている。第2面22は、室内側から見た場合、長方形である。第2面22は、長手方向に延び、かつ、板部材10の第1辺11aと平行に延びる第1辺221と、第1辺221と平行に延び、かつ、チャンバーボックス30の第2壁面32に面する第2辺222とを有する。第2面22の長手方向の長さは、吹出口Pの長手方向の長さと略同一であってもよい。第3面23は、第3面23とチャンバーボックス30の第2壁面32との間に空気が流れないように、第2壁面32に接している。第4面24は、第1面21と第2面22とに挟まれ、かつ、第3面23に平行な面である。
【0022】
ガイド部20の第2面22の形状は、吹出口Pの形状に応じて適宜変更可能である。第2面22は、長方形でなく、正方形でもよい。第2面22は、角が面取り加工されていてもよい。
【0023】
図4においては、ガイド部20の第2面22と、板部材10の室内に面した第1面101とは、板部材10が吹出口Pに配置された状態で、同一水平面上に平行に並べられているが、板部材10及びガイド部20の第2面22のいずれか一方が通風路S側に配置されていてもよい。
【0024】
板部材10は、図4に示すように、吹出口Pに配置された状態から、第1壁面31と第2面102とが平行になるまで90°回転可能である。板部材10の回転角によって、風向、風量が変化する。図4の板部材10が実線で示された状態、言い換えると板部材10が吹出口Pにある状態では、板部材10とガイド部20に吹出口Pは閉じられた状態である。
【0025】
チャンバーボックス30は、箱形状であり、ダクトに接続される吸込口と、空気を吹き出す吹出口とを有する。吸込口は、ダクトを介して、換気装置や空気調和装置等の空気処理ユニットに接続されていてもよい。吹出口は、天井面の開口部と略同一の形状である。チャンバーボックス30は、吹出口Pに対して垂直に延びる4つの壁面を有する。4つの壁面の端部により、吹出口Pが構成されている。4つの壁面は、断面Xにおける、板部材10側の第1壁面31と、ガイド部20側の第2壁面32とを含む。チャンバーボックス30の吸込口は、チャンバーボックス30の上部に形成されていてもよいし、壁面に形成されていてもよい。吹出口には、板部材10と、ガイド部20が配置されている。
【0026】
吹出ユニット1は、さらに、パネル33を含んでいる。パネル33は、天井面2の吹出口Pの周囲を覆うように、室内側から天井面2に配置される。パネル33は、所定の厚みを有する枠であり、天井面2から吹出口Pの内側の一部まで延びている。パネル33は、断面Xでは、天井面2から板部材10の第2端部12側の一部を覆っており、天井面2からガイド部20の第2面22の一部を覆っている。パネル33の室内側の面は、板部材10の第1面101及びガイド部20の第2面22よりも室内側に位置する。なお、パネル33の室内側の面と、板部材10の第1面101及びガイド部20の第2面22とは、同一平面上に平行に配置されていてもよい。パネル33は、天井面2のみを覆っていてもよいが、吹出口Pの内側の一部まで延びることにより、板部材10の第2端部12とチャンバーボックス30の第1壁面31との間から空気が吹き出すことを抑制することができる。
【0027】
モータ41は板部材10を回転軸15を中心に回転させる。モータ41は、ステッピングモータであってもよい。モータ41は、チャンバーボックス30の内部に配置されていても外部に配置されていてもよい。
【0028】
制御部40は、モータ41を制御する。制御部40は、コンピュータである。制御部40はプロセッサーと記憶部とを含んでいる。制御部40は、マイクロコンピュータであってもよい。制御部40を配置する場所は、特に限定されない。制御部40は、複数の吹出ユニット1を同時に制御してもよい。
【0029】
制御部40は、ユーザが操作するリモートコントローラの指示によって、制御を行ってもよい。
【0030】
(2)風向調整
吹出ユニット1では、板部材10及びガイド部20の第1面21は、通風路Sから吹出口Pに向かう空気の第1風向を第2風向に変化させる。板部材10が吹出口Pに配置された状態では、板部材10とガイド部20とにより、吹出口Pは閉じられている。板部材10が回転し、板部材10の第1端部11が吹出口Pから通風路Sに移動することにより、吹出口Pは開になり、空気が流れる。通風路Sの空気は、板部材10の第1面101と、ガイド部20の第1面21との間を流れ吹出口Pから室内3へ吹き出される。通風路S内において、空気の流れは、第1壁面31又は第2壁面32と平行な第1風向F1を向いている。板部材10の第1面101と、ガイド部20の第1面21との間を通過することによって、風向は、第2風向F21、F22に変化する。第2風向の向きは、ガイド部20の第1面21の傾斜角、板部材10の回転角に依存する。ガイド部20の第1面21の傾斜角は、予め各吹出ユニット1において、設計され、固定されている。ガイド部20の第1面21の傾斜角は、たとえば、第1風向に対して20°以上65°以下が好ましい。また、第1面21の傾斜各は、水平から25°以上、70°以下、より好ましくは40°以上55°以下であってもよい。板部材10の回転角は、モータ41が板部材10を回転させることにより、変化する。
【0031】
板部材10の回転角により、第2風向は変化する。吹出ユニット1の板部材10の回転の角度を変更させたときに、吹出口Pから室内3に吹出す空気の風向がどのように変化するかを調べるためにシミュレーションを行った。シミュレーション条件としては、系全体を等温場とし、かつ、吹出し風量は10m/minであるとした。シミュレーションを行ったのは、図2A、2Bに示す吹出ユニット1の板部材10の回転角の場合である。シミュレーションの結果を、それぞれ、図3A、3Bに示している。
【0032】
図2A、3A、2B、3Bにおいては、ガイド部20の第1面21の傾斜角は、共通して、水平から35°である。図2A、3Aに示すように、板部材10の回転角が水平から45°のとき、第2風向F21は、水平から40°である。同様に、図2B、3Bに示すように、板部材10の回転角が水平から80°のとき、第2風向F22は、水平から70°である。このシミュレーション結果から、吹出ユニット1においては、板部材10の水平からの回転角が大きいほど、第1風向F1(鉛直方向)から第2風向F21,F22への角度変化は小さい。
【0033】
(3)吹出ユニット1の形状パラメータ
吹出ユニット1の形状パラメータについて説明する。図4は、吹出ユニット1の鉛直断面図(断面X)において形状パラメータを説明する図である。
【0034】
板部材10の第1端部11と第2端部12との間の長さLに関しては、次の条件を満たすものが好ましい。第1端部11から第2端部12へ向かう方向における吹出口Pの長さW(通風路の幅、図4では、第1壁面31と第2壁面32との間隔)に対して、式(1)の条件を満たすのが好ましい。
W/4<L<W/2 (1)
【0035】
言い換えると、板部材10の長さLは、ガイド部20の吹出口Pにおける長さW-Lよりも小さいのが好ましい。
【0036】
また、板部材10の厚みDについては、(2)式の条件を満たすのが好ましい。
0<D<W/8 (2)
【0037】
言い換えると、板部材10の厚みDを一定の範囲とすることにより、風向の制御がより円滑になる。
【0038】
次に、ガイド部20の第4面24の長さH1は、(3)式を満たすのが好ましい。
0≦H<W/8 (3)
【0039】
言い換えると、第4面24の長さHを一定の範囲とすることにより、風向の制御がより円滑になる。
【0040】
また、ガイド部20の第1面21の第1風向F1に沿った距離(斜面高さH)は、(4)式を満たす。
0≦H<W (4)
【0041】
言い換えると、ガイド部20の第1面の傾斜角を一定の範囲とすることにより、風向の制御がより円滑になる。
【0042】
(4)特徴
(5-1)
本実施形態の吹出ユニット1は、通風路Sの室内3への吹出口Pに配置され、通風路Sを通じて供給された空気を室内3へ吹出す。吹出ユニット1は、板部材10と、ガイド部20を有している。板部材10は、回転軸15を中心に回転し、吹出口Pに配置された状態から、通風路Sの内部の状態に移動する。ガイド部20は、通風路Sに面した第1面21を有している。第1面21は、第2壁面32側から第1壁面31側に向かって、通風路S側から室内側に向かって、傾斜している。吹出ユニット1は、板部材10の回転角、及び、ガイド部20の第1面21の傾斜角に応じて、通風路Sから吹出口Pに向かう空気の第1風向F1を第2風向F21、F22に変化させる。さらに、吹出ユニット1は、板部材10の回転の角度を変更することにより、吹出口Pから吹き出される第2風向を変化させる。
【0043】
このような構成により、本実施形態の吹出ユニット1は、簡易な構成で空気の風向の制御を容易に行うことができる。
【0044】
(5-2)
板部材10は、略長方形状であり、図4に示すように、吹出口Pに配置された状態において、ガイド部20側の第1端部11(第1辺11a)と、第1壁面31側の第2端部12と、回転軸15とを有している。回転軸15は、第1端部11よりも第2端部12に近い。回転軸15と第2端部12との距離は、板部材の長さL(第1端部11と第2端部12との距離)の1/3以下である。言い換えると、回転軸15は、第2端部12から板部材10の長さLの1/3の部分を通り、かつ、吹出口Pに直交する直線と、第1壁面31との間に配置されている。
【0045】
吹出口Pの空気の吹出部分は、板部材10とガイド部20の間に、1か所、形成される。第1壁面31と板部材10との間や、ガイド部20と第2壁面32との間には、空気の吹出部分は形成されない。
【0046】
吹き出される空気は、板部材10の第1面101とガイド部20の第1面21の間を通過して、室内3に吹き出される。
【0047】
このような構成により、本実施形態の吹出ユニット1は、簡易な構成で空気の風向の制御を容易に行うことができる。
【0048】
(5-3)
ガイド部20の第1面21は、通風路Sの第1壁面31、第2壁面32に平行な第1風向F1の空気が当たるように傾斜している。第1面21の傾斜角は、第1風向F1に対して20°以上65°以下である。
【0049】
板部材10の吹出口P(水平)側から通風路S側への回転角が大きくなるに従い、第1風向F1から第2方向への角度変化の大きさが小さくなる。
【0050】
(5-4)
本実施形態の板部材10の長さLは、第1端部11から第2端部12へ向かう方向における吹出口Pの長さW(通風度の幅)に対して、W/4<L<W/2の関係を満たす。板部材10の長さLは、ガイド部20の長さW-Lよりも小さい。
【0051】
(5-5)
吹出ユニット1は、さらに、通風路Sの一部を構成するチャンバーボックス30を備えている。チャンバーボックス30は、天井裏又は側壁裏に配置される。チャンバーボックス30は、板部材10側の第1壁面31と、ガイド部20側の第2壁面32を有する。チャンバーボックス30には、吹出口Pを構成する開口部が形成されている。開口部には、板部材10、ガイド部20が配置されている。
【0052】
(6)変形例
(6-1)変形例1A
第1実施形態の吹出ユニット1において、板部材10の回転軸15は、板部材10外にあってもよい。回転軸15は、板部材10の第1面101の延長した平面と第2面102の延長した平面の間になくてもよい。
【0053】
変形例1Aの吹出ユニット1aの構成は、図6に示すように、回転軸15aが板部材10pの外にあり、ガイド部20pの第1面21と第2面22が接している点を除いて、第1実施形態の吹出ユニット1の構成と同じである。
【0054】
変形例1Aの吹出ユニット1aにおいては、図6の断面図において、板部材10pは、第1辺の第1端部11と、通風路Sの第1壁面31に面する第2端部12を有している。板部材10p及び第1壁面31に回転用金具が固定され、回転用金具の回転軸15aを中心に板部材10pは回転する。回転用金具の回転軸15aは、モータ又は手動によって回転可能である。
【0055】
(6-2)変形例1B
変形例1Bの吹出ユニットは、モータと制御部を有さない点を除き、第1実施形態の吹出ユニット1と構成が同じである。変形例1Bの吹出ユニット1は、板部材10の回転角は、通常、同一の状態で使用する。回転角を変更する場合は、手動で変更する。
【0056】
変形例1Bの吹出ユニットは、風向を常時変化させる必要のない状況で利用される。
【0057】
(6-3)変形例1C
第1実施形態の吹出ユニット1では、吹出口Pの空気の吹出部分が、板部材10とガイド部20の間に1か所形成されていたが、変形例1Cでは2か所形成されている。
【0058】
変形例1Cの吹出ユニット1cは、図7A~7Cに示すように、チャンバーボックス30aの吹出口Pに、二つの板部材10a、10bと、ガイド部20aとが配置されている。板部材10aと板部材10bとは、ガイド部20aを挟んで、その長手方向が平行になるように配置されている。板部材10aとガイド部20aとの間に空気の吹出部分である第1吹出口P1が形成され、板部材10bとガイド部20aとの間に第2吹出口P2が形成されている。ガイド部20aは、板部材10a側に第1面21aを有し、板部材10b側に第1面21bを有している。ガイド部20aは、その長手方向の両端において、チャンバーボックス30aに固定されている。図7A、7Bでは、第1面21aと第1面21bは、通風路S側から室内3側に向かって凹んだ曲面であるが、平面であってもよい。第1面21aは、吹出口Pに垂直、かつ、板部材10aから板部材10bの方向に沿った断面(以下、断面Y)において、ガイド部20aの中心部分から板部材10aに近づく方向に、通風路S側から室内3側に傾斜している。第1面21bは、断面Yにおいて、ガイド部20aの中心部分から板部材10bに近づく方向に、通風路S側から室内3側に傾斜している。断面Yにおけるガイド部20aの中心部分、言い換えると第1面21aと第1面21bの間の部分は、吹出口P1、P2側から通風路S側に突出している。板部材10aと板部材10bとは、吹出口Pから通風路Sに向かって、反対周りに回転する。上述した構成以外の吹出ユニット1cの構成は、第1実施形態の吹出ユニット1と同じである。
【0059】
通風路Sに供給された空気は、通風路S内を第1風向F1に流れ、第1吹出口P1と第2吹出口P2に分岐して室内3に吹き出す。第1吹出口P1では、板部材10aの回転により吹出方向である第2風向F23aが変化する。板部材10aの回転角が水平方向から大きくなるに従い、第2風向F23aの第1風向F1からの角度の変化が小さくなる。言い換えると、第2風向F23aの水平からの角度が大きくなる。同様に、第2吹出口P2では、板部材10bの回転により吹出方向である第2風向F23bが変化する。回転角が水平方向から大きくなるに従い、第2風向F23bの第1風向F1からの角度の変化が小さくなる。言い換えると、第2風向F23bの水平からの角度が大きくなる。
【0060】
変形例1Cの吹出ユニット1cにおいては、第2風向F23aと、第2風向F23bは独立に制御できる。言い換えると、板部材10aと板部材10bの回転角は独立に制御できる。また、吹出口P1、P2を両方とも開にすることも、両方とも閉にすることも、吹出口P1、P2の一方を開にして一方を閉にすることもできる。
【0061】
(6-4)変形例1D
第1実施形態の吹出ユニット1では、吹出口Pの空気の吹出部分が、板部材10とガイド部20の間に1か所形成されていたが、変形例1Dでは4か所形成されている。
【0062】
変形例1Dの吹出ユニット1dは、図8A~8Cに示すように、チャンバーボックス30bの吹出口Pに、4つの板部材10a~10dと、ガイド部20bとが配置されている。板部材10aと板部材10cとは、ガイド部20bを挟んで、それらの長手方向が平行になるように配置されている。板部材10bと板部材10dとは、ガイド部20bを挟んで、それらの長手方向が平行になるように配置されている。板部材10a及び板部材10cの長手方向と、板部材10b及び板部材10dの長手方向とは、直交するように配置されている。吹出ユニット1dを室内側から見た場合、矩形状のガイド部20bの第2面の4辺を囲むように、板部材10a~10dが配置されている。板部材10a~10dとガイド部20bとの間に空気の吹出部分である4つの吹出口P1~P4が形成されている。ガイド部20bは、板部材10a~10d側に、それぞれ第1面21a~21dを有する。第1面21a~21dは、ガイド部20bの中心部分から板部材10aに近づく方向に、通風路S側から室内3側に傾斜している。ガイド部20bは、その中心部分がチャンバーボックス30bの内側の上面に、支持部材を介して固定されていてもよい。図8Aでは、第1面21a~21dは、平面であるが、通風路S側から室内3側へ凹んだ曲面であってもよい。上述した構成以外の吹出ユニット1dの構成は、第1実施形態の吹出ユニット1と同じである。
【0063】
変形例1Dの吹出ユニット1dにおいては、通風路Sに供給された空気は、通風路S内を第1風向F1に流れ、吹出口P1~P4に分岐して室内3に吹き出す。吹出口P1~P4では、板部材10a~10dの回転により吹出方向である第2風向F23aが変化する。回転角が水平方向から大きくなるに従い、第2風向F24a~F24dの第1風向F1からの角度の変化が小さくなる。言い換えると、第2風向F24a~F24dの水平からの角度が大きくなる。
【0064】
変形例1Dの吹出ユニット1dにおいては、吹出口P1~P4から室内への空気の吹出方向である第2風向は、吹出口P1~P4毎に独立に制御できる。言い換えると、板部材10a~10dの回転角は独立に制御できる。また、吹出口P1~P4をすべて開にすることも、すべて閉にすることも、吹出口P1~P4の一部を開にして一部を閉にすることもできる。
【0065】
(6-5)変形例1E
変形例1Eの吹出ユニット1eは、空気調和装置の一部である。空気調和装置は、室内の暖房、冷房、除湿、加湿などの空気調和を行う。空気調和装置は、吹出ユニットのほかに、ファン、熱交換器などを含んでいる。吹出ユニット1eは、通風路Sは空気調和装置内部に形成されているため、第1実施形態の吹出ユニット1と異なり、チャンバーボックス30を有さない。吹出口Pは、空気調和装置の吹出口である。吹出ユニット1eは、パネル33もなくてもよい。上述した構成以外の吹出ユニット1eの構成は、第1実施形態の吹出ユニット1と同じである。
【0066】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0067】
1、1a、1c、1d 吹出ユニット
2 天井面
3 室内
10 板部材
11a 第1辺
11 第1端部
12 第2端部
15 回転軸
20 ガイド部
21 第1面
30 チャンバーボックス
31 第1壁面
32 第2壁面
P、P1、P2 吹出口
S 通風路
F1 第1風向
F21、F22 第2風向
L 板部材の長さ
D 板部材の厚さ
W 通風路の幅(吹出口の長さ)
L-W ガイド部の幅
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【文献】特開2007-155309号公報
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C