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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/05 20060101AFI20240926BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20240926BHJP
   B22D 11/04 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B22D11/05 B
B22D11/16 106B
B22D11/04 311F
B22D11/04 311E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020174540
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065814
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】湯本 淳史
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 伯公
(72)【発明者】
【氏名】高屋 慎
(72)【発明者】
【氏名】村上 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄一郎
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/013186(WO,A1)
【文献】特開2009-160645(JP,A)
【文献】特開2020-066018(JP,A)
【文献】特開2018-130742(JP,A)
【文献】特開平08-150440(JP,A)
【文献】特開2012-157872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼を連続鋳造する連続鋳造設備において用いられる連続鋳造用鋳型であって、
一対の長辺銅板と、
前記一対の長辺銅板によって挟み込み、前記長辺銅板の長辺方向に沿って移動可能な一対の短辺銅板と、
を備え、
前記短辺銅板は、
溶鋼が供給される鋳型の内面側に複数のテーパー部が形成されるように、鋳造方向に異なる2以上の勾配を有し、
前記内面側の短辺方向の両端部分に、前記鋳造方向に延設された突出部を有しており、
前記鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率は、1.1%/m以上3.5%/m以下であり、
前記複数のテーパー部のテーパー率は、前記鋳造方向上流側から下流側に向かって徐々に小さく設定され、
前記突出部は、前記鋳型を平面視して、溶鋼と接触する接触部の長さが、前記鋳型の短辺方向長さ及び長辺方向長さの和よりも短く、かつ、その差が3mm以上となるように形成される、連続鋳造用鋳型。
なお、テーパー率R[%/m]は、下記式(1)により表される。
R={(W -W )/W /ΔL}×100 ・・・(1)
ここで、W [m]は対向する短辺銅板の上方位置での間隔、W [m]は対向する短辺銅板の下方位置での間隔、W [m]は対向する短辺銅板の所定の鋳造方向位置での間隔(基準間隔)、ΔL[m]は上方位置と下方位置との鋳造方向長さである。なお、前記基準間隔において、前記鋳造方向位置は、前記鋳造方向において最上流にある前記短辺銅板のテーパー変化点から上方に50mm以上300mm以下の範囲内とする。
【請求項2】
前記鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率は、0.5%/m以上1.9%/m未満であり、かつ、上流側のテーパー部のテーパー率以下である、請求項に記載の連続鋳造用鋳型。
【請求項3】
前記鋳型は、2つの前記テーパー部を有する、請求項1または2に記載の連続鋳造用鋳型。
【請求項4】
前記突出部により前記鋳型の内部側に形成される、前記短辺銅板と前記長辺銅板とを結ぶ面は、前記鋳型を平面視して、
前記短辺銅板と前記長辺銅板とを結ぶ直線、
前記短辺銅板と前記長辺銅板とを結び、前記鋳型のコーナー側に向かって凸の円弧からなる線、
前記鋳型の内部側に凸であって一端が前記長辺銅板に接する円弧と、前記鋳型のコーナー側に向かって凸であって一端が前記短辺銅板に接する円弧とを連結した、前記短辺銅板と前記長辺銅板とを結ぶ線、
または、
前記鋳型の内部側に凸であって一端が前記長辺銅板に接する第1の円弧と、前記鋳型のコーナー側に向かって凸であって一端が前記短辺銅板に接する第2の円弧と、前記第1の円弧の他端と前記第2の円弧の他端とを直線とからなる、前記短辺銅板と前記長辺銅板とを結ぶ線、
のうち、いずれかの形状を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型
【請求項5】
鋼の連続鋳造方法であって、
一対の長辺銅板と、
前記一対の長辺銅板によって挟み込み、前記長辺銅板の長辺方向に沿って移動可能な一対の短辺銅板と、
を備え、
前記短辺銅板は、
溶鋼が供給される鋳型の内面側に複数のテーパー部が形成されるように、鋳造方向に異なる2以上の勾配を有し、
前記内面側の短辺方向の両端部分に、前記鋳造方向に延設された突出部を有しており、
前記鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率は、1.1%/m以上3.5%/m以下であり、
前記複数のテーパー部のテーパー率は、前記鋳造方向上流側から下流側に向かって徐々に小さく設定され、
前記突出部は、前記鋳型を平面視して、溶鋼と接触する接触部の長さが、前記鋳型の短辺方向長さ及び長辺方向長さの和よりも短く、かつ、その差が3mm以上となるように形成されている、連続鋳造用鋳型を用いて、鋼を鋳造する、鋼の連続鋳造方法。
なお、テーパー率R[%/m]は、下記式(1)により表される。
R={(W -W )/W /ΔL}×100 ・・・(1)
ここで、W [m]は対向する短辺銅板の上方位置での間隔、W [m]は対向する短辺銅板の下方位置での間隔、W [m]は対向する短辺銅板の所定の鋳造方向位置での間隔(基準間隔)、ΔL[m]は上方位置と下方位置との鋳造方向長さである。前記基準間隔は、鋳型内の溶融金属のメニスカス位置の平均位置での短辺銅板の間隔[m]とする。
【請求項6】
前記メニスカス位置の平均位置から前記短辺銅板の最初のテーパー変化点までの前記鋳造方向の距離は、50mm以上300mm以下である、請求項に記載の鋼の連続鋳造方法
【請求項7】
スラブ幅1250~2300mm、スラブ厚200~400mmのスラブを連続鋳造する、請求項5または6に記載の鋼の連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼を連続鋳造する連続鋳造設備において用いられる連続鋳造用鋳型、及び、これを用いた鋼の連続鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼の連続鋳造では、鋳型内に溶鋼を注入すると、鋳型に接する溶鋼部分が凝固して凝固シェルが形成され、鋳型の下方に引き抜かれる。鋳型下方の二次冷却帯で溶鋼の凝固がさらに進行し、最終的に連続鋳造鋳片が形成される。鋳型は、溶鋼に接する側が水冷銅板で形成される。スラブを鋳造する連続鋳造装置の連続鋳造鋳型は、2枚の長辺銅板と、2枚の短辺銅板とを用いて形成され、2枚の長辺鋳型板で2枚の短辺銅板を挟むようにして組み立てられる。短辺銅板は、その幅が鋳造する鋳片の厚さにほぼ等しい。
【0003】
鋳型内で凝固が進行しつつある凝固シェルが下方に移動する過程において、凝固シェルは、凝固が進行するとともに凝固収縮する。したがって、鋳型内の溶融金属のメニスカス位置で凝固を開始した凝固シェルは、鋳型の下端に到達したときには収縮しており、凝固中鋳片の幅及び厚さは、メニスカス位置に比較して小さくなっている。スラブの連続鋳造においては、スラブは厚さに比べて幅が広いので、鋳片幅方向の凝固収縮量が大きく、鋳型と凝固シェルとの間に空隙が生じやすい。凝固シェルの凝固収縮に伴い鋳型の下方において鋳型と凝固シェルとの間に空隙が生じると、凝固シェルから鋳型への抜熱が阻害され、十分な鋳型冷却ができなくなるとともに、鋳型による支持を失った凝固シェルが外方に膨れるバルジングを起こすこととなる。
【0004】
そこで、少なくとも鋳型短辺にテーパーを設けることが行われている。テーパーを設けるとは、対向する短辺間の間隔について、鋳型上方のメニスカス位置における間隔に対し、鋳型下端の間隔を狭めることをいう。
【0005】
短辺テーパー量が小さすぎる場合には、凝固シェルと短辺鋳型板との接触が不均一になり、冷却のアンバランスが生じる。その結果、凝固シェル成長の不均一による内部割れや、長辺側凝固シェルコーナー近傍の凝固厚みが特に薄い部位に対応する鋳片表面に縦割れが発生しやすい。また、短辺テーパー量が大きすぎる場合には、凝固シェルと短辺銅板との接触が強くなり、凝固シェルに過大な応力が加わる。その結果、凝固シェルが破断し、シェル破断に伴うブレークアウトが発生する。また、凝固シェルと鋳型との摩擦力増大に伴う鋳型寿命低下を引き起こすこともある。
【0006】
従来の短辺銅板の凝固シェルと接する面は、上部から下部へ向かって平面に加工されている。いわゆるシングルテーパーである。しかし、凝固シェルの凝固収縮速度は、鋳型内の鋳造方向の各位置において一定ではなく、メニスカス近傍では速く、鋳型下端に近づくにつれ遅くなる。したがって、短辺銅板と接する凝固シェルの面は平面ではなく、鋳型の下方に行くにつれて凝固シェルのテーパー量が小さくなるような曲面が形成されていると考えられる。例えば、特許文献1、2には、短辺銅板が鋳造方向に2段階、あるいは3段階以上の多段テーパーを有する鋳型を用いて鋳造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-49385号公報
【文献】特開2009-160645号公報
【文献】特許第5999294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、凝固に際してδ-γ変態を伴う包晶鋼等の難鋳造性鋼種においては、凝固中の相変態により、凝固シェルの凝固収縮が大きい。このため、凝固収縮に追従するように、鋳型の多段のテーパー部のうち、最上段のテーパー部を強テーパー化することが求められている。しかしながら、短辺銅板が多段テーパー形成された鋳型の最上段のテーパー部をさらに強テーパー化して鋳造すると、鋳片のコーナー形状が先鋭化することが判明した。図6に、2種類の形状の鋳型を用いて鋳造された鋳片の断面形状例を示す。
【0009】
まず、鋳型コーナーが直角であり、短辺銅板のテーパー率が1.0%/m以下である鋳型を用いた一般的な連続鋳造では、長辺銅板と短辺銅板とのコーナー部近傍において、溶鋼が長辺側と短辺側それぞれから抜熱される。このため、コーナー部近傍では、長辺銅板及び短辺銅板の幅中心部と比べて凝固がより早く進み、コーナー部が凝固収縮する。一方で、幅中央部では溶鋼静圧によるバルジングが発生し、外側に膨らむように変形する。このため、鋳片は、図6の鋳片形状Aのように、幅中央外側に膨らみ、凝固収縮が大きいコーナー部はやや尖った形状となる。
【0010】
また、鋳型コーナーが直角であり、多段テーパーを有する鋳型において、鋳片と鋳型との間のエアーギャップを減少させるために、最上段のテーパー部を、短辺銅板のテーパー率が1.1%/m以上の強テーパーにしたとする。そうすると、コーナー部近傍の鋳型及び鋳片の抜熱が促進され、鋳片のコーナー部は、図6の鋳片形状Bのように、鋳片形状Aよりも先鋭化が顕著になる。
【0011】
このように、鋳片のコーナー部の形状が先鋭化すると、オフコーナー部の窪みにスケールが溜まりやすくなり、圧延時に傷が生じる可能性が高くなる。このため、最上段のテーパー部を強テーパー化しつつ、鋳片形状を改善させる技術が必要とされている。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、最上段のテーパー部を強テーパー化しつつ、鋳片形状を改善することが可能な、連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、鋼を連続鋳造する連続鋳造設備において用いられる連続鋳造用鋳型であって、一対の長辺銅板と、一対の長辺銅板によって挟み込み、長辺銅板の長辺方向に沿って移動可能な一対の短辺銅板と、を備え、短辺銅板は、溶鋼が供給される鋳型の内面側に複数のテーパー部が形成されるように、鋳造方向に異なる2以上の勾配を有し、内面側の短辺方向の両端部分に、鋳造方向に延設された突出部を有しており、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率は、1.1%/m以上3.5%/m以下であり、突出部は、鋳型を平面視して、溶鋼と接触する接触部の長さが、鋳型の短辺方向長さ及び長辺方向長さの和よりも短く、かつ、その差が3mm以上となるように形成される、連続鋳造用鋳型が提供される。
【0014】
メニスカス位置の平均位置から短辺銅板の最初のテーパー変化点までの鋳造方向の距離は、50mm以上300mm以下としてもよい。
【0015】
また、鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率は、0.5%/m以上1.9%/m未満であり、かつ、上流側のテーパー部のテーパー率以下であってもよい。
【0016】
鋳型は、2つのテーパー部を有するように形成されてもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、鋼の連続鋳造方法であって、一対の長辺銅板と、一対の長辺銅板によって挟み込み、長辺銅板の長辺方向に沿って移動可能な一対の短辺銅板と、を備え、短辺銅板は、溶鋼が供給される鋳型の内面側に複数のテーパー部が形成されるように、鋳造方向に異なる2以上の勾配を有し、内面側の短辺方向の両端部分に、鋳造方向に延設された突出部を有しており、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率は、1.1%/m以上3.5%/m以下であり、突出部は、鋳型を平面視して、溶鋼と接触する接触部の長さが、鋳型の短辺方向長さ及び長辺方向長さの和よりも短く、かつ、その差が3mm以上となるように形成されている、連続鋳造用鋳型を用いて、鋼を鋳造する、鋼の連続鋳造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、最上段のテーパー部を強テーパー化しつつ、鋳片形状を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る連続鋳造設備の概略構成を示す説明図である。
図2】同実施形態に係る鋳型の形状を示す概略断面図である。
図3A】鋳型のコーナー部が直角コーナーであるときの形状を示す模式図である。
図3B】鋳型のコーナー部の一形状例を示す模式図である。
図3C】鋳型のコーナー部の他の形状例を示す模式図である。
図3D】鋳型のコーナー部の他の形状例を示す模式図である。
図3E】鋳型のコーナー部の他の形状例を示す模式図である。
図4】直角コーナーの鋳型(突出部なし)と、突出部が形成された鋳型とについて、各鋳型を用いて鋳造された鋳片の断面形状例を示す模式図である。
図5図2のI-I切断線における断面図である。
図6】2種類の形状の鋳型を用いて鋳造された鋳片の断面形状例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
[1.連続鋳造設備の構成]
まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る鋳型を備える連続鋳造設備の概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係る連続鋳造設備1の概略構成を示す説明図である。図2は、本実施形態に係る鋳型10の形状を示す概略断面図である。なお、図2は、鋳型10を鋳造方向(鉛直方向)の任意の位置で切断した状態を示している。
【0022】
本実施形態に係る連続鋳造設備1は、連続鋳造用の鋳型10を用いて溶鋼2を連続鋳造し、鋳片3を製造するための装置である。図1に示す連続鋳造設備1は、垂直曲げ型の連続鋳造設備1であるが、本発明はかかる例に限定されず、湾曲型又は垂直型等、他の各種の連続鋳造設備に適用可能である。連続鋳造設備1は、鋳型10と、取鍋4と、タンディッシュ5と、浸漬ノズル6と、二次冷却装置7とを備える。
【0023】
取鍋4は、溶鋼2を外部からタンディッシュ5まで搬送するための可動式の容器である。取鍋4は、タンディッシュ5の上方に配置され、取鍋4内の溶鋼2がタンディッシュ5に供給される。タンディッシュ5は、鋳型10の上方に配置され、溶鋼2を貯留して、当該溶鋼2中の介在物を除去する。浸漬ノズル6は、タンディッシュ5の下端から鋳型10に向けて下方に延び、その先端は鋳型10内の溶鋼2に浸漬されている。当該浸漬ノズル6は、タンディッシュ5にて介在物が除去された溶鋼2を鋳型10内に連続供給する。
【0024】
鋳型10は、鋳片3の幅及び厚さに応じて形成された四角筒状の型である。本実施形態に係る鋳型10は、図2に示すように、一対の短辺銅板11と、一対の長辺銅板13とを用いて、一対の短辺銅板11を一対の長辺銅板13の内面13aによって短辺方向(X方向)に両側から挟むように組み立てられている。一対の短辺銅板11は、長辺銅板13の長辺方向(Y方向)に沿って移動可能に構成されている。すなわち、本実施形態に係る鋳型10は、幅可変の鋳型である。なお、鋳型10の形状の詳細な説明は後述する。
【0025】
鋳型10を構成する銅板11、13は、例えば水冷銅板である。かかる銅板11、13の内面11a、13aと接触した溶鋼2は冷却されて、外殻の凝固シェル3aの内部に未凝固部3bを含む鋳片3が製造される。凝固シェル3aが鋳型10下方に向かって移動するにつれて、内部の未凝固部3bの凝固が進行し、外殻の凝固シェル3aの厚さは、徐々に厚くなる。かかる凝固シェル3aと未凝固部3bを含む鋳片3は、鋳型10の下端から引き抜かれる。
【0026】
二次冷却装置7は、鋳型10の下方の二次冷却帯9に設けられ、鋳型10下端から引き抜かれた鋳片3を支持及び搬送しながら冷却する。二次冷却装置7は、鋳片3の厚さ方向両側に配置される複数対の支持ロール8と、鋳片3に対して冷却水を噴射する複数のスプレーノズル(図示せず。)とを有する。二次冷却装置7に設けられる支持ロール8は、鋳片3の厚さ方向両側に対となって配置され、鋳片3を支持しながら搬送する支持搬送手段として機能する。当該支持ロール8により鋳片3を厚さ方向両側から支持することで、二次冷却帯9において凝固途中の鋳片3のブレークアウトやバルジングを防止できる。
【0027】
支持ロール8は、二次冷却帯9における鋳片3の搬送経路(パスライン)を形成する。このパスラインは、図1に示すように、鋳型10の直下では垂直であり(垂直帯9A)、次いで曲線状に湾曲して(湾曲帯9B)、最終的には水平になる(水平帯9C)。支持ロール8は、垂直帯9Aに設けられ、鋳型10から引き抜かれた直後の鋳片3を支持するサポートロール、鋳片3を鋳型10から引き抜く駆動式ロールであるピンチロール、湾曲帯9B及び水平帯9Cに設けられ、パスラインに沿って鋳片3を支持及び案内するセグメントロールからなる。
【0028】
二次冷却帯9を通過した鋳片3は、その後、水平帯9Cの後段に設置された鋳片切断機(図示せず。)によって所定の長さに切断される。切断された鋳片3は、テーブルロール上を移動して次工程の設備に搬送される。以上、連続鋳造設備1の全体構成について説明した。
【0029】
[2.鋳型形状]
[2-1.概要]
連続鋳造設備1の鋳型10について、本実施形態では、最上段のテーパー部を強テーパー化しつつ、鋳片形状を改善させるため、鋳型コーナーにおける短辺銅板11の内面11aに、鋳型内部の空間に向かって突出する突出部を形成する。突出部は、短辺銅板11を変形させ、鋳型10の直角コーナーを埋めた部分をいう。
【0030】
ここで、図3Aに、鋳型10のコーナー部が直角コーナーであるときの形状を示す。また、図3B図3Eに、本実施形態に係る鋳型10のコーナー部の形状例を示す。なお、図3A図3Eは、鋳型10の4つのコーナー部のうち1つのコーナー部を示している。突出部12の形状は、4つのコーナー部全てで同じ形状でもよいし、後工程の要求に合わせて、4つのコーナー部において、異なる形状が含まれてもよい。
【0031】
例えば、突出部12は、図3Bに示すように、鋳型10を平面視して短辺銅板11と長辺銅板13とを結ぶ直線12aによって直角コーナーを埋めるように形成してもよい。図3Bに示すように三角形状に面取りされた形状は、チャンファー形状とも呼ばれる。あるいは、突出部12は、図3Cに示すように、鋳型10を平面視して短辺銅板11と長辺銅板13とを結ぶ円弧12bによって直角コーナーを埋めるように形成してもよい。すなわち、突出部12をR形状としてもよい。
【0032】
さらに、突出部12は、図3Dに示すように、鋳型10を平面視して2つの円弧12c、12dによって直角コーナーを埋めるように形成してもよい。このとき、長辺銅板13に接する円弧12cは鋳型10の内部側に凸とし、長辺銅板13とはなるべく垂直に近い角度で接するように形成してもよい。また、短辺銅板11に接する円弧12dは鋳型10のコーナー側に向かって凸とし、短辺銅板11に対してなるべく小さい角度で接するようにしてもよい。
【0033】
また、突出部12は、図3Eに示すように、鋳型10を平面視して2つの円弧12e、12gと、2つの円弧12e、12gを接続する1つの直線12fとによって直角コーナーを埋めるように形成してもよい。このとき、図3Dと同様、長辺銅板13に接する円弧12eは鋳型10の内部側に凸とし、長辺銅板13とはなるべく垂直に近い角度で接するように形成してもよい。また、短辺銅板11に接する円弧12gは鋳型10のコーナー側に向かって凸とし、短辺銅板11に対してなるべく小さい角度で接するようにしてもよい。
【0034】
図3D図3Eのような鋳型10のコーナー部の形状は、加工が容易であり、コーナー部での変形を抑制できる。
【0035】
図3B図3Eに示したような突出部を有する鋳型10を用いることで、面取りされた鋳片を連続鋳造することができる。図4に、図3Aに示した直角コーナーの鋳型(突出部なし)と、図3Cに示した円弧状の突出部が形成された鋳型とについて、各鋳型を用いて鋳造された鋳片の断面形状例を示す。図4に示すように、直角コーナーの鋳型を用いて鋳造された鋳片のコーナー部は先鋭化していた。一方、突出部を形成した鋳型を用いて鋳造された鋳片のコーナー部は、鋳型のコーナー形状が鋳片に転写され、面取りされた形状となっていた。これより、鋳型コーナーにおける短辺銅板11の内面11aに突出部12を形成することで、鋳片のコーナー部の先鋭化が解消することが確認された。
【0036】
一方で、コーナー部が面取りされた鋳片を鋳造する場合、鋳型のコーナー部に突出部を設けることによって、直角コーナーであるときよりも溶鋼と銅板との接触長が減少し、鋳型コーナー部の抜熱量は低下する。したがって、鋳片のコーナー部の表面温度は上昇する。鋳型のコーナー部に突出部を設けると、抜熱量の低下により鋳型が直角コーナーである場合と比較して、シェル厚が低下する。
【0037】
また、凝固初期において、鋳型が直角コーナーである場合は主にコーナー部の短辺側近傍に発生する隙間が、コーナー部に突出部を設けた場合には、突出部自体と、突出部と短辺銅板面とからなるコーナー部の短辺側近傍とに発生する。すなわち、鋳型のコーナー部に突出部を設けた場合には、隙間の発生する領域が、直角コーナーの場合と比較して拡大する。
【0038】
このような理由から、凝固シェルから鋳型への抜熱が阻害され、十分に凝固シェルを冷却できなくなる。これは、コーナー部に三角形状の突出部を設ける場合に限定されず、例えば、鋳型が直角コーナーの場合よりも溶鋼と銅板との接触長が減少する、図3C図3Eに示したような突出部が鋳型のコーナー部に設けられる場合も同様である。これについては、上述したように、短辺銅板のテーパー部を強テーパー化することで、コーナー部近傍の鋳型及び鋳片の抜熱を促進することができる。したがって、多段テーパーの鋳型に対し、最上段のテーパー部を強テーパー化することと、鋳型内部に突出部を設けることをともに施すことで、それぞれの形状による機能を発揮させることができる。
【0039】
さらに、鋳型内部に突出部を設けた鋳型を用いることで、かかる鋳型を用いて鋳造された鋳片のコーナー部は、直角コーナーの鋳型を用いて鋳造した場合と比べて、鋳片の表面温度が上昇し、鋳片の表面のコーナー割れを防ぐことができる。これは、以下のメカニズムによる。
【0040】
鋳型に注入された溶鋼は、鋳型のコーナー部では長辺側と短辺側それぞれから抜熱される。このため、鋳型のコーナー部は、二面冷却の効果により、長辺銅板の幅中央部と比較して抜熱量が多くなり、表面温度が低下する。鋳型を出た後の二次冷却帯において、鋳片の長辺幅中心部の温度は900℃程度であるが、鋳片のコーナー部の温度は800℃以下となることもある。鋳片のコーナー部の温度が800℃以下となると、コーナー部に割れが発生する。これは、脆化域といわれる延性が失われる温度領域で鋳片が連続鋳造機機内において曲げられるため、引張応力が働くことによる。そこで、鋳型のコーナー部を直角とせず、突出部を設けることで、二面冷却の効果を抑制する(例えば、特許文献3)。これにより、二次冷却帯における鋳片のコーナー部の温度を、長辺幅中央部と同等の温度(すなわち、800℃以上)にすることができる。その結果、コーナー部が長辺幅中央部と比較して過冷却となることがなく、鋳片のコーナー割れを減少させることができる。
【0041】
最上段のテーパー部が強テーパー化され、鋳型内部に突出部が設けられた鋳型を用いた連続鋳造は、凝固中の相変態により凝固シェルの凝固収縮が大きい包晶鋼等の難鋳造性鋼種に対しても有効である。このような形状の鋳型を用いることで、鋳片表面の縦割れやコーナー割れ、内部の割れの発生を予防し、かつ、鋳片の断面形状を改善して圧延時の傷を防止することができ、難鋳造性鋼種の連続鋳造時における鋳片品質を向上することができる。
【0042】
[2-2.基本構成]
上記図2及び図5に基づいて、本実施形態に係る鋳型10の形状について説明する。図5は、図2のI-I切断線における断面図である。なお、図2及び図5では、鋳型10の構成を分かりやすく説明するために、形状を誇張して示している。
【0043】
本実施形態に係る鋳型10は、上述したように、一対の短辺銅板11と、一対の長辺銅板13とから構成される。鋳型10を高さ方向から平面視すると、図2に示すように、鋳型10には、一対の短辺銅板11と一対の長辺銅板13とによって、略矩形状の空間(本発明の「矩形空間」に相当する。)Vが形成されている。本実施形態に係る鋳型10の短辺銅板11の内面11aには、短辺方向の両端部分に、当該空間V内に向かって突出する突出部12が設けられている。突出部12は、鋳型10の高さ方向(Z方向、鋳造方向ともいう。)に沿って延設されている。
【0044】
ここで、短辺銅板11は、鋳型10が複数のテーパー部を有し、多段テーパーとなるように、鋳造方向に異なる2以上の勾配を有する。多段テーパーは、鋳造方向下流側に向かうほど、その勾配(すなわち、テーパー率)が小さくなるように形成される。鋳型10の上段(すなわち、鋳造方向上流側)の凝固初期段階では、凝固シェルの厚さが薄く、溶鋼からの抜熱が多いため、凝固シェルの凝固収縮が大きい。これより、テーパーの勾配を比較的大きくする必要がある。一方で、鋳型10の下端(すなわち、鋳造方向最下流)では、凝固シェルは成長しているため厚く、溶鋼からの抜熱が鋳型上段と比較すると少ない。このため、凝固シェルの凝固収縮が小さく、テーパーの勾配を比較的小さくする必要がある。このようなメカニズムより、鋳型10内の上段のテーパー部の勾配は大きくし、凝固が進む鋳造方向下流側に向かうにつれて、テーパー部の勾配を徐々に小さく設定する。
【0045】
仮に、逆テーパーと呼ばれる、鋳型10の上段のテーパー部の勾配を小さくし、鋳造方向下流側に向かうにつれてテーパー部の勾配を徐々に大きくなるように設定した場合は、以下のような不具合が生じると考えられる。まず、鋳型10の上段では、凝固シェルの凝固収縮が大きいにもかかわらずテーパー部の勾配が小さいため、コーナーのエアーギャップを十分に減少させられない。このため、内部割れが発生し、鋳片の内部品質が低下する。一方で、鋳型10の下端では、凝固シェルの凝固収縮が小さいにもかかわらずテーパー部の勾配が大きいので、鋳片と鋳型とが強く接触し、大きな摩擦力が発生する。鋳型による拘束により、鋳型銅板の摩耗が進行して鋳型寿命が減少するため生産性が低下し、鋳片が破断するブレークアウトの発生も懸念される。したがって、多段テーパーは、鋳造方向下流側に向かうほど、その勾配が小さくなるように形成される。
【0046】
例えば、図2及び図5に示す鋳型10は、短辺銅板11が異なる2つの勾配θ、θを有していることから、2段テーパーとなっている。図2及び図5において、鋳造方向最上流側(すなわち、上方)のテーパーを形成する短辺銅板11の内面11aを第1傾斜面11a1とし、鋳造方向最下流側(すなわち、下方)のテーパーを形成する短辺銅板11の内面11aを第2傾斜面11a2とする。また、鋳型10において、第1傾斜面11a1により形成されるテーパーを第1テーパー部T、第2傾斜面11a2により形成されるテーパーを第2テーパー部Tとする。
【0047】
このとき、鋳造方向最上流側のテーパー部(すなわち、第1テーパー部T)のテーパー率Rは、1.1%/m以上3.5%/m以下とする。なお、テーパー率R[%/m]は、下記式(1)により表される。
【0048】
R={(W-W)/W/ΔL}×100 ・・・(1)
【0049】
上記式(1)において、W[m]は対向する短辺銅板11の上方位置での間隔、W[m]は対向する短辺銅板11の下方位置での間隔、W[m]は対向する短辺銅板11の任意の鋳造方向位置での間隔(以下、「基準間隔」ともいう。)、ΔL[m]は上方位置と下方位置との鋳造方向長さである。なお、上方位置での間隔W及び下方位置での間隔Wは、同一勾配を有するテーパー部において鋳造方向の上方位置及び下方位置での間隔であればよく、その鋳造方向位置は任意に選択してもよい。
【0050】
例えば、第1テーパー部Tにおいて、上方位置での間隔Wを鋳型10の上端での間隔Wとし、下方位置での間隔Wを第1テーパー部Tの下端での間隔Wとしてもよい。このとき、ΔLは、第1テーパー部Tの鋳造方向長さXとなる。同様に、第2テーパー部Tにおいて、上方位置での間隔Wを第2テーパー部Tの上端での間隔Wとし、下方位置での間隔Wを鋳型10の下端での間隔Wとしてもよい。このとき、ΔLは、第2テーパー部Tの鋳造方向長さXとなる。ここでは、基準間隔Wは、メニスカス位置の平均位置での短辺銅板11の間隔Wとした。
【0051】
第1テーパー部Tのテーパー率が1.1%/mよりも小さいと、鋳型10のコーナー部で、鋳型10と鋳片との間にギャップが発生し、凝固シェルの成長が阻害される。そうすると、鋳片のコーナー部付近で凝固シェルの厚みが薄くなり、鋳型10を出た後に、鋳片に溶鋼静圧によりバルジングが生じて引張応力が発生する。この際、凝固シェルが薄い部分は強度が低いため、内部割れを生じさせる可能性があり、製品品質に影響を及ぼすこともあり得る。そこで、第1テーパー部Tのテーパー率は1.1%/m以上とする。
【0052】
一方、最上段のテーパーが3.5%/mよりも大きいと、鋳型10と鋳片とが強く接触する。そうすると、凝固シェルに大きな摩擦拘束力が働き、凝固シェルが破れる可能性がある、凝固シェルが破れると、未凝固の溶鋼が外部へ流れ出すブレークアウトが発生する。このため、第1テーパー部Tのテーパー率は3.5%/m以下とする。
【0053】
ここで、表1に、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率と、鋳片の内部割れ及びブレークアウトの発生有無とを調べた結果を示す。表1では、図1図2及び図5に示した連続鋳造設備を用いて、スラブ幅1250~2300mm、スラブ厚200~400mmのスラブを鋳造する際に、鋳造方向最上流側のテーパー部(すなわち、第1テーパー部T)のテーパー率を変化させ、そのときのスラブの内部割れ及びブレークアウトの発生有無を調べた結果を示している。鋳型10の突出部12の形状は、鋳型10を平面視して、溶鋼と接触する接触部の長さCが36mm、鋳型10の短辺方向長さCが30mm、鋳型10の長辺方向長さCの20mmの三角形状とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1の結果からも、スラブの内部割れ及びブレークアウトが発生しないようにするには、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率を、1.1%/m以上3.5%/m以下とすればよいことがわかる。なお、表1のテーパー率は、上記式(1)を用いて算出した。このとき、基準間隔Wは、メニスカス位置の平均位置での短辺銅板11の間隔Wとした。
【0056】
また、本実施形態に係る鋳型10には、突出部12が設けられている。突出部12を設けることで、鋳片のコーナー部が長辺幅中央部と比較して過冷却となる現象を防ぐことができる。突出部12の形状は、例えば図2及び図3Bに示すように、鋳型10を平面視して三角形状としてもよい。しかし、本発明はかかる例に限定されず、例えば図3C図3Eに示すように、突出部12は他の形状であってもよい。突出部12は、それぞれ、鋳型10を平面視して、溶鋼と接触する接触部の長さCが、鋳型10の短辺方向長さC及び長辺方向長さCの和よりも短く、かつ、その差が3mm以上となるように形成されていればよい。すなわち、1つの突出部12の接触部の長さCは、下記式(2)を満たしている。
【0057】
3[mm]≦{(C+C)-C} ・・・(2)
【0058】
例えば、図3Bに示した突出部12の直線12aの長さC、及び、図3Cに示した突出部12の円弧12bの長さCは、溶鋼と接触する接触部の長さCそのものである(C=C)。また、図3Dに示した突出部12では、溶鋼と接触する接触部の長さCは、円弧12cの長さCと円弧12dの長さCとの和により表される(C=C+C)。さらに、図3Eに示した突出部12では、溶鋼と接触する接触部の長さCは、円弧12eの長さC、円弧12gの長さC及び直線12fのCの和により表される(C=C+C+C)。このように1つの突出部12の接触部の長さCを表したとき、鋳型10のコーナー部の4つの突出部12は、それぞれ、上記式(2)を満たすように形成される。
【0059】
上記式(2)の関係は、溶鋼と接触する接触部の長さCと、鋳型10の短辺方向長さC及び長辺方向長さCの和とを変化させ、数値シミュレーションを用いた凝固解析を実施したときの結果に基づく。接触部の長さCが、鋳型10の短辺方向長さC及び長辺方向長さCの和よりも短く、その差ΔC(=(C+C)-C)が3mm未満の場合は、コーナー部表面温度が増加せず、突出部12の効果が発現しなかった。これより、溶鋼と接触する接触部の長さCを、鋳型10の短辺方向長さC及び長辺方向長さCの和よりも短くし、かつ、その差ΔCを3mm以上とする。
【0060】
なお、差ΔCが3mm以上となると、コーナー部表面温度は徐々に増加したが、20mmを超えると、その差ΔCをさらに大きくしてもコーナー部表面温度の増加代は飽和した。一方で、鋳造断面が狭まると歩留まりが低下する(すなわち、生産性が悪化する)。したがって、差ΔC(=(C+C)-C)は、20mm以下としてもよい。
【0061】
ここで、表2に、溶鋼と接触する接触部の長さCと、鋳型10の短辺方向長さC及び長辺方向長さCの和との差ΔC(=(C+C)-C)を変化させたときの、スラブの品質について調べた結果を示す。表2では、図1図2及び図5に示した連続鋳造設備を用いて、スラブ幅1250~2300mm、スラブ厚200~400mmのスラブを鋳造する際に用いる鋳型の突出部12の形状を変化させ、スラブの表面割れの発生有無を調べた結果を示している。なお、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率は2.0%/mとした。テーパー率は、上記式(1)を用いて算出した。このとき、基準間隔Wは、メニスカス位置の平均位置での短辺銅板11の間隔Wとした。
【0062】
また、スラブの表面割れは、以下のように評価した。
A:表面割れ発生なし
B:ほぼ表面割れ発生なし
C:微小な表面割れが発生するが、除去可能で製品の品質に問題なし
D:表面割れが顕著に発生し、製品の品質に問題あり
【0063】
【表2】
【0064】
表2の結果からも、スラブの表面割れが発生しないようにするには、溶鋼と接触する接触部の長さCを、鋳型10の短辺方向長さC及び長辺方向長さCの和よりも短くし、かつ、その差ΔCを3mm以上とすればよいことがわかる。また、差ΔCが20mmを超えると、その差ΔCをさらに大きくしてもコーナー部表面温度の増加代は飽和した。これより、歩留り低下を抑制する観点から、差ΔCは20mm以下とすればよい。
【0065】
上記式(2)を満たしていれば、突出部12の接触部は、鋳型10を平面視して、例えば、1または複数の角部を有する形状であってもよく、図3Cまたは図3Dに示したように1または複数の円弧(曲線)にて規定される形状であってもよく、図3Eに示したように直線及び円弧(曲線)の組合せにて規定される形状であってもよい。
【0066】
ここで、鋳型10のコーナー部に突出部12を設けると、コーナーが直角であるときよりも溶鋼と銅板との接触長が減少し、鋳型コーナー部の抜熱量が低下する。したがって、鋳片コーナー部の表面温度が上昇する。一方で、抜熱量の低下によりコーナーが直角である場合と比較して凝固シェルの厚みが低下する。また、凝固初期において鋳型と鋳片との間に生じる空隙は、鋳型のコーナー部に突出部を設けた場合には、直角コーナーの場合と比較して広い領域に発生する。このため、凝固シェルから鋳型への抜熱が阻害され、十分な鋳型冷却ができなくなり、凝固シェルは薄いままとなる。その結果、バルジングが発生して、長辺幅中央部等と比較して凝固シェルの厚みの薄い長辺銅板のコーナー部付近で鋳片の凝固シェルが割れ、内部割れと呼ばれる内部欠陥が生じる可能性がある。
【0067】
内部欠陥の発生を防止するため、鋳型10の短辺銅板にはテーパーが設けられている。しかし、鋳型10に鋳造方向全体にわたって勾配の大きい強テーパーが設けられていると、鋳型10と鋳片との摩擦拘束力が増加し、ブレークアウトが発生する可能性がある。特に、鋳型10に突出部12を設けた場合には、突出部12を設ける短辺銅板11単体で考えた場合、溶鋼と接触する接触部の長さCが鋳型10の短辺方向長さCよりも大きい(すなわち、C>C)となる。このため、鋳型10と鋳片との接触範囲が増え、摩擦拘束力がより増加しやすい。
【0068】
しかし、本実施形態に係る鋳型10は、上述のように、鋳型10の内面側に複数のテーパー部が形成されるように、短辺銅板11に鋳造方向に異なる2以上の勾配が設けられている。これにより、突出部12が設けられていても、凝固収縮の大きな鋳型10の上部において、鋳片のコーナー部の凝固不均一を抑制でき、凝固収縮の小さな鋳型10の下部において、鋳片と鋳型10との強い接触を緩和することができる。
【0069】
さらに、本実施形態に係る鋳型10は、短辺銅板11に、鋳造方向最上流側のテーパー部(すなわち、第1テーパー部T)のテーパー率Rが1.1%/m以上3.5%/m以下となるように、勾配が設けられている。これにより、短辺銅板11の勾配が小さすぎて、長辺銅板13のコーナー部付近にギャップが発生し、凝固シェルの成長が阻害されることを回避できる。また、短辺銅板11の勾配が大きすぎて、鋳型10と鋳片との間の摩擦力が増加し、凝固シェルの破断によるブレークアウトの発生を防ぐことができる。
【0070】
なお、本実施形態に係る鋳型10は、鋳型10の内面側に複数のテーパー部が形成されるように、短辺銅板11に鋳造方向に異なる2以上の勾配を設ける。複数のテーパー部は、鋳造方向下流側に向かうほど、その勾配(すなわち、テーパー率)が小さくなるように形成される。
【0071】
鋳型10の短辺銅板11の内面に鋳造方向に複数の勾配を設ける方法として、例えば、内面を曲面にしたパラボリックテーパーを用いる方法もある。しかし、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率が3.5%/mを超える大きな値となってしまうため、凝固シェルに大きな摩擦拘束力が働き、凝固シェルが破れる可能性がある。凝固シェルが破れると、未凝固の溶鋼が外部へ流れ出すブレークアウト等の操業トラブルを発生させる可能性がある。また、パラボリックテーパーの鋳型ではメニスカス位置の変動によりテーパー率が大きく変動する。このため、浸漬ノズルの詰まり等に起因するメニスカス位置変動発生時にテーパー率の小さい部位が生じてしまい、鋳片に縦割れが発生する。
【0072】
さらに、スラグによる浸漬ノズルの溶損を防ぐために連続して連続鋳造を行う場合、メニスカス位置を変更して鋳造が行われるが、パラボリックテーパーの鋳型では、テーパー率が適切となる範囲が狭いため、連続鋳造を連続して行うことができる回数が少なく、鋳造効率は低下する。このような理由からも、本実施形態に係る鋳型10では、鋳型10の内面側に複数のテーパー部が形成されるように、短辺銅板11に鋳造方向に異なる2以上の勾配を設けている。
【0073】
加えて、内面を曲面にしたパラボリックテーパーを用いる鋳型は、形状が複雑であり、加工が困難であるため、製作コストが増加する。一方、例えば図5に示すように、鋳型10の内面側に2つのテーパー部T、Tを形成することで、鋳型10の形状が複雑とならず、容易な加工で、安価に、短辺銅板11に適切な勾配を設定することができる。
【0074】
このような鋳型10を用いて鋼を連続鋳造することで、溶鋼の凝固の均一性を担保し、鋳片のコーナー割れを抑制することができる。
【0075】
[2-3.追加構成]
上述の鋳型10の基本構成に対し、以下のような構成を追加することで、より溶鋼の凝固の均一性を担保し、鋳片のコーナー割れを抑制することができる。
【0076】
(a)第1テーパー変化点の位置
例えば、メニスカス位置の平均位置Mから短辺銅板11の最初のテーパー変化点(以下、「第1テーパー変化点」ともいう。)Pまでの鋳造方向の距離X(以下、単に「距離X」ともいう。)は、50mm以上300mm以下としてもよい。メニスカス位置は鋳造中に変化することから、ここではメニスカス位置の平均位置Mを基準とする。距離Xを50mm以上とすることで、テーパー率の大きい範囲を長くとることができる。これにより、多段テーパーの最上段のテーパーを大きくすることにより鋳型と鋳片との間のギャップ生成を抑制することができ、凝固シェルの成長を促すという効果を、十分に得ることができる。すなわち、鋳片シェルの厚さが薄くなることを抑制し、内部割れの発生を抑制することができる。これにより、仮に第1テーパー部Tのテーパー率が1.1%/m以上の場合に微小な内部割れが発生したとしても、製品品質は問題とならない程度にその影響を抑えることができる。
【0077】
また、メニスカス位置の平均位置Mから第1テーパー変化点Pまでの鋳造方向の距離Xを300mm以下とすることで、テーパー率の大きい範囲が長くなりすぎて鋳型10と鋳片とが強く接触することを回避できる。これにより、凝固シェルに大きな摩擦拘束力が働き、凝固シェルが破れ、未凝固の溶鋼が流れ出すブレークアウトの発生を抑制することができる。
【0078】
ここで、表3に、メニスカス位置の平均位置Mから第1テーパー変化点Pまでの鋳造方向の距離Xと、鋳片の内部割れ及びブレークアウトの発生有無とを調べた結果を示す。表3では、図1図2及び図5に示した連続鋳造設備を用いて、スラブ幅1250~2300mm、スラブ厚200~400mmのスラブを鋳造する際に、距離Xを変化させ、そのときのスラブの内部割れ及びブレークアウトの発生有無を調べた結果を示している。なお、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率は2.0%/mとした。テーパー率は、上記式(1)を用いて算出した。このとき、基準間隔Wは、メニスカス位置の平均位置での短辺銅板11の間隔Wとした。また、鋳型10の突出部12の形状は、鋳型10を平面視して、溶鋼と接触する接触部の長さCが36mm、鋳型10の短辺方向長さCが30mm、鋳型10の長辺方向長さCの20mmの三角形状とした。
【0079】
【表3】
【0080】
表3の結果からも、スラブの内部割れ及びブレークアウトが発生しないようにするには、メニスカス位置の平均位置Mから短辺銅板11の第1テーパー変化点Pまでの鋳造方向の距離Xは、50mm以上300mm以下とすればよいことがわかる。
【0081】
なお、距離Xを100mmとした場合、第1テーパー部Tのテーパー率が2.3%/m以上であっても、スラブに内部割れは発生しなかった。さらに、距離Xを200mmとしたとき、第1テーパー部Tのテーパー率が1.9%/m以上であっても、スラブに内部割れは発生しなかった。加えて、距離Xを300mmとすることで、第1テーパー部Tのテーパー率が1.1%/m以上であっても、内部割れは発生しなかった。
【0082】
(b)鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率
また、鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率を、0.5%/m以上1.9%/m未満であり、かつ、上流側のテーパー部のテーパー率以下としてもよい。例えば、図5に示す鋳型10では、第2テーパー部Tが鋳造方向最下流側のテーパー部である。ここで、テーパー率は、上記式(1)を用いて算出したものである。基準間隔Wは、メニスカス位置の平均位置での短辺銅板11の間隔Wとした。
【0083】
鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率を0.5%/m以上とすれば、凝固収縮した凝固シェルと鋳型10との間にギャップが発生しにくくなる。その結果、鋳型10を出た後に鋳片をスプレー冷却する冷却水の飛沫、及び、水蒸気がギャップに侵入することがなくなり、鋳型10の銅板の腐食を抑制することができる。
【0084】
一方、鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率を1.9%/m未満とすれば、鋳片の凝固収縮に対してテーパー率が高くなり過ぎず、鋳型10と鋳片とが強く接触することを抑制できる。鋳型10の下部では凝固シェルは十分に成長しているため、凝固シェルが破れてブレークアウトが発生することはほとんどない。しかし、テーパー率が高くなり過ぎないようにすることで、成長した凝固シェルと鋳型10の銅板とが強く接触することがなくなり、鋳型10の銅板の表面の摩耗を抑制することができる。
【0085】
このように、鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率を、0.5%/m以上1.9%/m未満であり、かつ、上流側のテーパー部のテーパー率以下とすることで、鋳型10の銅板の寿命を長くすることができ、銅板の交換の頻度も低減させることができる。
【0086】
ここで、表4に、鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率と、2000チャージ後の鋳型10の銅板の腐食及び摩耗の有無とを調べた結果を示す。表4では、図1図2及び図5に示した連続鋳造設備を用いて、スラブ幅1250~2300mm、スラブ厚200~400mmのスラブを鋳造する際に、鋳造方向最下流側のテーパー部(すなわち、第2テーパー部T)のテーパー率を変化させ、2000チャージ後の鋳型10の銅板の腐食及び摩耗の有無を調べた結果を示している。なお、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率は2.0%/mとした。また、鋳型10の突出部12の形状は、鋳型10を平面視して、溶鋼と接触する接触部の長さCが36mm、鋳型10の短辺方向長さCが30mm、鋳型10の長辺方向長さCの20mmの三角形状とした。
【0087】
【表4】
【0088】
表4の結果からも、鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率を、0.5%/m以上1.9%/m未満であり、かつ、上流側のテーパー部のテーパー率以下とすることで、鋳型10の銅板の腐食及び摩耗の発生が抑制され、鋳型10の銅板の寿命を長くすることができることがわかる。
【0089】
(c)鋳造方向最上流側のテーパー部と最下流側のテーパー部とのテーパー率の関係
また、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率は、鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率の1.1倍以上2.0倍以下としてもよい。例えば、図5に示す鋳型10では、第1テーパー部Tが鋳造方向最上流側のテーパー部であり、第2テーパー部Tが鋳造方向最下流側のテーパー部である。
【0090】
ここで、表5に、鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率に対する鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率(以下、「テーパー比率」ともいう。)と、鋳片の内部割れ及びブレークアウトの発生有無とを調べた結果を示す。表5では、図1図2及び図5に示した連続鋳造設備を用いて、スラブ幅1250~2300mm、スラブ厚200~400mmのスラブを鋳造する際に、テーパー比率を変化させ、そのときのスラブの内部割れ及びブレークアウトの発生有無を調べた結果を示している。なお、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率は2.0%/mとした。テーパー率は、上記式(1)を用いて算出した。このとき、基準間隔Wは、メニスカス位置の平均位置での短辺銅板11の間隔Wとした。また、鋳型10の突出部12の形状は、鋳型10を平面視して、溶鋼と接触する接触部の長さCが36mm、鋳型10の短辺方向長さCが30mm、鋳型10の長辺方向長さCの20mmの三角形状とした。
【0091】
【表5】
【0092】
表5に示すように、テーパー比率を1.1以上とすることで、スラブの内部割れの発生を抑制することができる。また、テーパー比率を2.0以下とすれば、ブレークアウトの発生を抑制することができる。これより、テーパー比率を1.1以上2.0以下とする(すなわち、鋳造方向最上流側のテーパー部のテーパー率を、鋳造方向最下流側のテーパー部のテーパー率の1.1倍以上2.0倍以下とする)ことが望ましいことがわかる。
【実施例
【0093】
図1図2及び図5に示した連続鋳造設備を用いて、スラブ幅1250~2300mm、スラブ厚200~400mmのスラブを鋳造した。このとき、鋳造方向最上流側のテーパー部(第1テーパー部T)のテーパー率、鋳造方向最下流側のテーパー部(第2テーパー部T)のテーパー率、及び、第1テーパー変化点の位置を変化させ、製造されたスラブの品質、操業の安定性、及び、鋳型の銅板寿命について検証した。検証結果を下記表6に示す。なお、スラブの品質、操業の安定性、及び、鋳型の銅板寿命については、以下の評価基準に基づき評価した。テーパー率は、上記式(1)を用いて算出した。このとき、基準間隔Wは、メニスカス位置の平均位置での短辺銅板11の間隔Wとした。また、鋳型10の突出部12の形状は、鋳型10を平面視して、溶鋼と接触する接触部の長さCが36mm、鋳型10の短辺方向長さCが30mm、鋳型10の長辺方向長さCの20mmの三角形状とした。
【0094】
スラブの品質は、製造されたスラブの内部割れの有無により評価した。
A:内部割れ発生なし
B:ほぼ内部割れ発生なし
C:微小な内部割れが発生するが製品の品質に問題なし
D:内部割れが発生し、製品の品質に問題あり
【0095】
操業の安定性については、ブレークアウトの発生有無により評価した。
A:ブレークアウト発生なし、スラブ表面に凝固シェルが破れた小さな跡なし
B:ほぼブレークアウト発生なし、スラブ表面に凝固シェルが破れた小さな跡なし
C:ほぼブレークアウト発生なし、スラブ表面に凝固シェルが破れた小さな跡があったが、後工程で除去可能であり、製品の品質に問題なし
D:ブレークアウト発生
【0096】
鋳型の銅板寿命については、銅板の腐食に起因するものと摩耗に起因するものとについて、それぞれ以下の基準で評価した。
A:2000チャージまで交換不要(生産性に優れる)
B:1500チャージまで交換不要
C:1000チャージまで交換不要(生産性がやや低い)
D:1000チャージ以下で交換が必要(著しく生産性が低い)
【0097】
【表6】
【0098】
表6に示すように、実施例1~14は、鋳造方向最上流側のテーパー部である第1テーパー部Tのテーパー率が1.1%/m以上3.5%/m以下であることから、スラブの品質も問題なく、かつ、安定して操業が行われた。一方、比較例1では、第1テーパー部Tのテーパー率が1.1%/mより小さかったため、ブレークアウトは発生しなかったものの、スラブに内部割れが発生した。また、比較例2では、第1テーパー部Tのテーパー率が3.5%/mより大かったため、スラブの内部割れの発生は比較例1よりも低減されたが、ブレークアウトが発生した。
【0099】
また、実施例4~6、8~14では、メニスカス位置の平均位置から第1テーパー変化点までの鋳造方向の距離(表6の「第1テーパー変化点位置」)は、50mm以上300mm以下であったことから、スラブの内部割れ及びブレークアウトの発生がより低減された結果となった。さらに、実施例8~13では、鋳造方向最下流側のテーパー部である第2テーパー部Tのテーパー率は0.5%/m以上1.9%/m未満であり、かつ、上流側のテーパー部のテーパー率以下であったことから、銅板寿命も長くなり、生産性を高めることができた。
【0100】
なお、比較例3、4として、鋳型内部に形成されたテーパー部が1つの場合(すなわち、シングルテーパーの場合)についても同様の検証を実施した。その結果、比較例3のように、比較的勾配の大きい強テーパーが設けられていると、スラブに内部割れはほとんど発生しなかったが、鋳型と鋳片との摩擦拘束力が増加し、ブレークアウトが発生した。このように、シングルテーパーの場合には、ブレークアウトが発生しまうためテーパー部の勾配を大きく設定することが難しいが、実施例3、4、上記表1の結果より、鋳型内部に複数のテーパー部を設けることで、より大きな勾配のテーパー部を設けることができる。これにより、突出部が設けられていても、凝固収縮の大きな鋳型の上部において、鋳片のコーナー部の凝固不均一を抑制でき、凝固収縮の小さな鋳型の下部において、鋳片と鋳型10との強い接触を緩和することができる。なお、比較例4のように、比較例3よりも勾配を小さくすると、ブレークアウトは発生しなくなったが、スラブに内部割れが生じた。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0102】
10 鋳型
11 短辺銅板
11a 短辺銅板の内面
12 突出部
12a、12f 直線
12b、12c、12d、12e、12g 円弧
13 長辺銅板
13a 長辺銅板の内面
第1テーパー部
第2テーパー部
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6