(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】予熱装置及び予熱方法
(51)【国際特許分類】
C21C 1/06 20060101AFI20240926BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C21C1/06
F27D7/02 A
(21)【出願番号】P 2020214524
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】梅田 基樹
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/186236(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0017928(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110462067(CN,A)
【文献】実開昭53-086411(JP,U)
【文献】特開2005-315519(JP,A)
【文献】特開2007-254864(JP,A)
【文献】実開昭58-075742(JP,U)
【文献】特開昭55-097416(JP,A)
【文献】特開昭61-291890(JP,A)
【文献】実開昭62-110246(JP,U)
【文献】特開昭53-140277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 1/00 - 3/00
C21C 5/02 - 5/06
C21C 5/52 - 5/56
F27D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に開口した受銑口及び溶銑容器を有する溶銑車の前記溶銑容器内を予熱する予熱装置であって、
前記受銑口に挿入されるバーナーと、
前記バーナーの挿入口を備え、前記受銑口を塞ぐことが可能な蓋と、
前記受銑口に挿入された前記バーナーによる燃焼を開始した後、前記溶銑容器内の酸素濃度に基づいて、前記第1方向に沿って前記蓋を移動させて、前記蓋と前記受銑口との相対的な位置を変更する移動制御部と、
を備える、予熱装置。
【請求項2】
前記移動制御部は、予め設定した酸素濃度を設定濃度とするとき、
前記酸素濃度が前記設定濃度よりも小さい場合、前記蓋を前記受銑口から相対的に遠ざける方向へ移動させ、
前記酸素濃度が前記設定濃度よりも大きい場合、前記蓋を前記受銑口に相対的に近づける方向へ移動させる、
請求項1に記載の予熱装置。
【請求項3】
前記第1方向が水平方向と一致するように回転された前記溶銑容器に対して、前記バーナーを移動させる、バーナー移動部、
を備える、請求項1又は請求項2に記載の予熱装置。
【請求項4】
前記移動制御部は、
前記蓋が前記受銑口に接触した時の押圧力が所定値を超えたときに、前記蓋の移動を停止する、
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の予熱装置。
【請求項5】
前記バーナーは、
空気を供給する空気配管と、
燃焼ガスを供給する燃
料配管と、
を有し、
空気比が1以下となるように、前記空気配管から供給する空気の量を、前記燃料配管から供給する燃料ガスの量に応じて制御する、
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の予熱装置。
【請求項6】
前記蓋は、前記受銑口と相対する面に緩衝材を備える、
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の予熱装置。
【請求項7】
第1方向に開口した受銑口及び溶銑容器を有する溶銑車の前記溶銑容器内を予熱する予熱方法であって、
前記受銑口にバーナーを挿入し、
前記バーナーの挿入口を備え、前記受銑口を塞ぐことが可能な蓋を、
前記受銑口に挿入された前記バーナーによる燃焼を開始した後、前記溶銑容器内の酸素濃度に基づいて、前記第1方向に沿って移動させて、前記蓋と前記受銑口との相対的な位置を変更する、
予熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予熱装置及び予熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所において、高炉で製造された1500℃程度の溶銑は、トピードカー(トーピードカー又は混銑車などとも称される。)内に排出され、トピードカー内部に収容された状態で製鋼工場まで搬送された後、トピードカーから取鍋等に移される。その間、トピードカー内において脱珪処理等の溶銑予備処理が行われることもある。溶銑を移したトピードカーは再び高炉に戻り、高炉からの溶銑を収容して、上記稼働が繰り返される。
【0003】
トピードカーの内壁は、高温の溶銑を取り扱うため耐火物で構成されている。この耐火物は、トピードカーの繰り返し稼働によって損傷すると、張り替えが行われる。新しい耐火物は、乾燥及び予熱処理が行われる。また、耐火物を張り替えずに稼働を継続する場合であっても、一旦温度が低下したトピードカーを再び使用する際には耐火物の保護のために予熱される。これらの乾燥、予熱、及び稼働前の保熱には、通常はトピードカーの受銑口からバーナーを挿入して燃焼することが行われる。
【0004】
バーナーによる燃焼は、COG(コークス炉ガス)等の燃焼ガスの量と空気量とを、適切な空気比となるように調整する。乾燥、予熱の際に受銑口は、バーナーを出し入れするためと燃焼排ガスのトピードカー内部からの排出のために、一部が開放されており、侵入する空気によって熱ロスが生じ、バーナーの効率が低下するなどの問題がある。
【0005】
特許文献1には、トピードカー内部を効率よく加熱する装置が開示されている。特許文献1に記載の装置は、トピードカー本体の側方に受銑口が位置するようにトピードカー本体を回転させてバーナーを挿入し、側面からみて受銑口の開口部が予め設定した開口率となるように、受銑口の下側を蓋で覆っている。受銑口の下側を覆う蓋により受銑口の開口率を調整することで、外気の侵入を防ぐとともに、燃焼排ガスを開口している受銑口の上から排出する事ができる。これにより、効率のよい均一な加熱が可能となり、燃料の削減、予熱時間の短縮、コストの削減が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、トピードカー内部の耐火物を加熱する作業は、耐火物を新たに張り替えた後だけではなく、一旦温度が低下したトピードカーを再び使用する際に、耐火物の保護のために予熱を行うことがある。繰り返し使用されたトピードカーの受銑口には、地金などが不規則に付着していることがある。このため、特許文献1のように、蓋を受銑口に押しつける方法の場合、地金により平坦度が悪化した受銑口に蓋を押しつけたとしても、蓋部分の閉止が不十分となり、設定した開口率を達成する事ができないおそれがある。そうすると、外気が侵入するなど、効率よくトピードカー内部の耐火物を加熱することができない。
【0008】
そこで、本発明の目的の一つは、トピードカー内部の耐火物を効率よく予熱する、予熱装置及び予熱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における予熱装置は、
第1方向に開口した受銑口及び溶銑容器を有する溶銑車の前記溶銑容器内を予熱する予熱装置であって、
前記受銑口に挿入されるバーナーと、
前記バーナーの挿入口を備え、前記受銑口を塞ぐことが可能な蓋と、
前記溶銑容器内の酸素濃度に基づいて、前記第1方向に沿って前記蓋を移動させて、前記蓋と前記受銑口との相対的な位置を変更する移動制御部と、
を備える。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における予熱方法は、
第1方向に開口した受銑口及び溶銑容器を有する溶銑車の前記溶銑容器内を予熱する予熱方法であって、
前記受銑口にバーナーを挿入し、
前記バーナーの挿入口を備え、前記受銑口を塞ぐことが可能な蓋を、前記溶銑容器内の酸素濃度に基づいて、前記第1方向に沿って移動させて、前記蓋と前記受銑口との相対的な位置を変更する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トピードカー内部の耐火物を効率よく予熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態の予熱装置を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の予熱装置で予熱しているトピードカーの内部を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の予熱装置で予熱しているトピードカーの内部を示す図である。
【
図4】
図4は、予熱の経過時間、及び、防熱板と受銑口との距離の関係を示す図である。
【
図5】
図5は、予熱の経過時間、及び、溶銑容器内の酸素濃度の関係を示す図である。
【
図6】
図6は、予熱の経過時間、及び、溶銑容器内の温度の関係を示す図である。
【
図7】
図7は、予熱の経過時間、及び、COG供給量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態である予熱装置、及び、その予熱装置による予熱方法について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の予熱装置1を示す図である。
図1では、トピードカー100は、側方から視た断面で表されている。
図2及び
図3は、本実施形態の予熱装置1で予熱しているトピードカー100の内部を示す図である。
図2は、
図1と同様、トピードカー100を側方から視た断面図、
図3は、上方から視た断面図である。
【0015】
トピードカー100は、高炉で製造された溶銑を収容する略長筒状の溶銑容器101を備えている。トピードカー100は、その溶銑容器101を長軸まわりに回転させる構造を備えている。溶銑容器101の内壁には、高温の溶銑に耐え得る耐火物102が貼られている。
【0016】
トピードカー100は、第1方向(以下、開口方向と言う)に開口した受銑口103を備えている。受銑口103は、溶銑容器101の内部と外部とを繋ぐ開口であり、溶銑は受銑口103を介して出し入れされる。なお、
図3に示すように、耐火物102は、受銑口103の内壁にも施工されている。トピードカー100は、高炉から溶銑を受ける際には、開口方向を鉛直方向と一致させて受銑口103が真上を向くように溶銑容器101を回転させ、溶銑を排出する際には受銑口103が本体の斜め下方を向くように回転させる。また、トピードカー100は、後述する予熱装置1による予熱を行う際には、開口方向を水平方向に一致させて、受銑口103が真横を向くように、溶銑容器101を回転させる。
【0017】
予熱装置1は、バーナー2と、防熱板3と、バーナー移動部4と、移動制御部5とを備えている。
【0018】
バーナー2は、リジェネバーナーを除く各種バーナーを用いることができる。バーナー2は、空気配管21と、その内側に配置された燃料配管22との二重管構造になっており、各々の配管で供給された燃料(例えば、COG:コークス炉ガス)と空気とが先端部で混ざることにより燃焼する。バーナー2は、水平方向に沿って延びている。バーナー2は、後述のバーナー移動部4により水平方向に沿って移動可能となっている。バーナー2は、その先端が、受銑口103の開口方向が水平方向に一致した溶銑容器101の内部に出し入れされるようになっている。なお、バーナー2の先端部は、
図3に示すように、T字状に形成されていて、燃料及び空気の流路は、T字型の先端部で分岐している。
【0019】
なお、このバーナー2には、不図示の、ガスを吸引して採取する採取管、及び、温度を測定する熱電対が設けられている。採取管は、バーナー2が溶銑容器101内に挿入された際に、溶銑容器101内のガスを採取するための管である。採取されたガスは、分析されて、溶銑容器101内の酸素濃度を測定するのに用いられる。熱電対は、バーナー2が溶銑容器101内に挿入された際に、溶銑容器101内の温度を測定する温度計である。
【0020】
防熱板3は、受銑口103全部を塞ぐことができる防熱性の蓋である。防熱板3は、後述の移動制御部5により、水平方向に沿って移動可能となっている。防熱板3は、開口方向が水平方向に一致した受銑口103に対して、水平方向に移動するようになっている。また、防熱板3には、バーナー2が挿入可能な挿入口31(
図2、
図3参照)が設けられている。バーナー2は、この挿入口31に挿入された状態で、水平方向に移動するようになっている。
【0021】
防熱板3の、受銑口103と相対する面には、緩衝材3Aが設けられている。溶銑の受銑又は排出に伴い地金が付着する等によって凹凸部が生じて、受銑口103の平坦度が悪化していることがある。受銑口103に地金が付着していると、防熱板3を受銑口103に密着させようとしても、付着した地金に接触することで密着できず、防熱板3と受銑口103との間に間隙が生じる。そこで、緩衝材3Aを設けることで、その間隙をなくすことができる。緩衝材3Aには、例えばセラミックファイバー製のブラケットなどを用いることができる。
【0022】
バーナー移動部4は、受銑口103の開口方向が水平方向と一致した溶銑容器101に対して、バーナー2を水平方向に移動させる。バーナー移動部4は、例えば、レール上を動く台車でバーナー2を支持し、駆動用モータの回転を、滑車を介してバーナー駆動用チェーンで台車に伝えることにより、レールに沿って台車を動かして、バーナー2を移動させる。なお、バーナー2の移動方法は、これに限定されない。
【0023】
移動制御部5は、トピードカー100内の酸素濃度に基づいて、防熱板3を水平方向に移動させて、防熱板3と受銑口103との相対的な位置を変更する。移動制御部5は、レール51と、防熱板3を支持し、レール51上を動く台車52と、台車52に載せられた錘53と、シリンダー54とを備えている。錘53は、台車52における、防熱板3を支持する側と反対側に載置されるカウンターウエイトである。シリンダー54は、そのロッドで錘53を押し引きすることで、台車52をレール51に沿って移動させる。シリンダー54は、受銑口103内の酸素濃度に基づいて駆動する。シリンダー54の駆動は、酸素濃度に基づいて作業員が行ってもよいし、不図示の制御装置が行ってもよい。
【0024】
また、例えば、受銑口103に付着したノロ等の付着物が大き過ぎて、防熱板3と受銑口103との間が小さくならない場合に、設備に機械的最大荷重が加えられた状態のままとなる可能性が有る。そこで、移動制御部5は、安全のために、防熱板3が受銑口103に接触した時の押圧力が所定値を超えたときに、防熱板3の移動を停止する構成が好ましい。押圧力を検知するセンサは、防熱板3に設けられていてもよいし、受銑口103に設けられていてもよい。また、停止した旨を画面表示で報知したり、音で報知したりしてもよい。
【0025】
以下に、上記のように構成された予熱装置1による予熱方法について説明する。
【0026】
トピードカー100が予熱装置1に位置すると、受銑口103の開口方向が水平方向と一致するように、溶銑容器101を回転させる。次に、開口方向が水平方向と一致した受銑口103に対して、バーナー2の先端を溶銑容器101内へ移動させる。そして、燃料と空気とを先端部で混ぜることにより、溶銑容器101内で燃焼させる。このとき、空気比が1以下となるように、空気配管21から供給する空気の量を、燃料配管22から供給する燃料の量に応じて制御する。
【0027】
空気比とは、バーナー2から供給する燃料が完全燃焼するために必要な化学量論的空気量に対する、実際にバーナー2から供給する空気量の比率である。空気比を高くすると完全燃焼は保証される一方で、バーナー2の先端部で急速に燃焼が進行し、溶銑容器101全体には火炎が行き渡らず十分加熱されない。そこで、空気比を1以下に設定することで、燃焼が急激に進行することなく、火炎が長炎化して溶銑容器101全体に熱を伝える事ができる。
【0028】
燃焼を開始した後、バーナー2に設けた採取管より、溶銑容器101内のガスを吸引して採取、分析し、ガス中酸素濃度を測定する。そして、その酸素濃度が予め設定された値となるように、防熱板3を受銑口103に対して相対的に移動させる。より詳しくは、溶銑容器101内の酸素濃度が予め設定した目標値よりも高い場合は、防熱板3を受銑口103に近づける。溶銑容器101内の酸素濃度が目標値よりも低い場合は、防熱板3を受銑口103から遠ざける。
【0029】
防熱板3を移動させるため、受銑口103は密閉されない。このため、予熱時における受銑口103からの侵入空気は不可避である。上記のように、空気比が1以下となるように燃料供給を制御しているが、侵入空気からの酸素が燃焼にも寄与するため、空気比を1以下に設定しても、必ずしも燃料は不完全燃焼するとは限らない。また、侵入空気量が小さすぎると、燃料が不完全燃焼して予熱効率が悪化するとともに、作業環境が悪化する可能性がある。一方、侵入空気量が大きすぎると、燃料は完全燃焼するが、侵入空気による冷却により予熱効率が悪化する。このため、侵入空気量を適正にする必要がある。
【0030】
侵入空気量が適正であるか否かは、予熱時の溶銑容器101内部の酸素濃度により判断できる。事前に酸素濃度の目標値を設定しておき、測定された実際の酸素濃度の測定値と目標値を比較して、測定値を目標値に近づける制御を行う。酸素濃度が設定値よりも高い場合は、侵入空気量が多いことを示しているので、防熱板3と受銑口103との間隔を小さくする。これにより、溶銑容器101内部への侵入空気量は少なくなる。逆に、酸素濃度が設定値よりも低い場合は、不完全燃焼している可能性が大きいので、防熱板3と溶銑容器101との間隔を大きくする。これにより、溶銑容器101内部への侵入空気量は多くなる。
【0031】
このように、溶銑容器101内部の酸素濃度に基づいて、防熱板3と、受銑口103との距離を変えることで、侵入空気量を適切に調整でき、溶銑容器101内における燃焼を効率よく行うことができる。
【0032】
以下に、本発明について行った試験の結果を示す。以下では、バーナー2から供給する燃料は、COGとする。
【0033】
この試験では、約300℃の溶銑容器101に対して、炉内温度が800℃になるまでは、昇温速度が100℃/hになるようにCOG供給量を制御した。さらに、炉内温度が800℃に到達して以降は800℃で保温するように、COG供給量を制御した。また、空気比が0.9となるように酸素流量を制御した。空気比はバーナー2に供給するCOGと空気量とから算出しており、受銑口103からの侵入空気等からの酸素は算定していない。
【0034】
また、この試験では、防熱板3の頻繁な調整は却って燃焼状態の安定を損なうおそれがあるため、酸素濃度が2%を超えると、防熱板3を受銑口103に近づけ、酸素濃度が1%を下回ると、防熱板3を受銑口103から遠ざけるように、防熱板3を移動制御した。通常であれば、酸素濃度が2%を越えてCOは発生しない。酸素濃度が1%を下回ってもCOが発生しない場合もあるが、制御として下限は1%とした。さらに、CO濃度が0.01%発生したら、COが消滅するまで、防熱板3を受銑口103から遠ざけるようにした。
【0035】
このように、COG供給量及び酸素流量を制御し、かつ、防熱板3を移動制御して行った溶銑容器101内の予熱に関して、溶銑容器101内の温度、酸素濃度、及び、溶銑容器101内へのCOG供給量を測定した。
【0036】
なお、比較例として、防熱板3と受銑口103との距離を150mmと一定として、同様に、溶銑容器101内の温度、酸素濃度、及び、溶銑容器101内へのCOG供給量を測定した。この150mmは、燃焼の最も盛んな段階においてもCOガス発生を回避するために設定したものである。
【0037】
図4は、予熱の経過時間、及び、防熱板3と受銑口103との距離(防熱板間距離)の関係を示す図である。
図5は、予熱の経過時間、及び、溶銑容器101内の酸素濃度の関係を示す図である。
図6は、予熱の経過時間、及び、溶銑容器101内の温度の関係を示す図である。
図7は、予熱の経過時間、及び、COG供給量の関係を示す図である。なお、
図4~
図7における(1)~(8)の値はそれぞれ、経過時間において同じ時間で計測された値である。その(1)~(8)での各値を表1に示す。表1では、CO濃度も示している。
【0038】
【0039】
図6から、本発明の方が、比較例よりも速く溶銑容器101内の温度が800℃に到達していることが読み取れる。
【0040】
また、本発明の(1)(2)(4)と、比較例の(5)(6)(8)と比較すると、本発明のCOG供給量は、比較例のよりも削減できていることが読み取れる。これは、本発明の(1)(2)(4)の場合は、比較例の(5)(6)(8)の場合よりも防熱板3を受銑口103に近づけているため、侵入空気量が抑えられているためである。
【0041】
さらに、本発明では、表1の(3)と、(7)との対比から分かるように酸素濃度が1%を超えるように制御することで、COガスの発生を回避することができることが確認できた。
【0042】
以上のように、本実施形態の予熱装置1によると、防熱板3を受銑口103に対して移動させることで、燃料の削減でき、トピードカー内部、具体的には溶銑容器101内部の耐火物102を効率よく予熱することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 予熱装置
2 バーナー
3 防熱板
3A 緩衝材
4 バーナー移動部
5 移動制御部
21 空気配管
22 燃料配管
31 挿入口
51 レール
52 台車
53 錘
54 シリンダー
100 トピードカー
101 溶銑容器
102 耐火物
103 受銑口