(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】鉄含有原料の配合設計方法及び高炉の操業方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20240926BHJP
C22B 1/16 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C21B5/00 301
C21B5/00 316
C22B1/16 P
(21)【出願番号】P 2021049276
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】安田 尚人
(72)【発明者】
【氏名】中野 薫
(72)【発明者】
【氏名】西岡 浩樹
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-131519(JP,A)
【文献】特開2011-099150(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081784(WO,A1)
【文献】特開2015-108184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 3/00 - 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉内の鉄含有原料層を形成する複数種類の鉄含有原料の配合を設計する配合設計方法であって、
下記式(I)で表される、複数種類の前記鉄含有原料の融着開始時還元率の加重平均値Rs
avが下限値Rs
min以上となるように、複数種類の前記鉄含有原料の配合を設計し、
前記下限値Rs
minは、高炉の安定操業の実績に基づいて予め決められた、高炉内の通気抵抗指数、コークス比及び出銑比のうちの少なくとも1つのパラメータと、前記加重平均値Rs
avとの相関関係において、前記パラメータの目標値に対応する前記加重平均値Rs
avであることを特徴とする鉄含有原料の配合設計方法。
【数1】
上記式(I)において、iは鉄含有原料の種類、Rs
iは種類iの鉄含有原料の融着開始時還元率[%]、M
iRは全種類の鉄含有原料に対する種類iの鉄含有原料の配合比率[質量%]である。
【請求項2】
2つ以上の前記パラメータの目標値にそれぞれ対応する前記加重平均値Rs
avのうち、最も高い値を前記下限値Rs
minとして決めることを特徴とする請求項1に記載の鉄含有原料の配合設計方法。
【請求項3】
前記配合設計方法は、さらに、下記式(II)で表される、複数種類の前記鉄含有原料の融着開始時還元率のばらつきσRsが10%以下となるように、複数種類の前記鉄含有原料の配合を設計することを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄含有原料の配合設計方法。
【数2】
上記式(II)において、iは鉄含有原料の種類、Rs
iは種類iの鉄含有原料の融着開始時還元率[%]、Rs
avは複数種類の前記鉄含有原料の融着開始時還元率の加重平均値[%]、M
iRは全種類の鉄含有原料に対する種類iの鉄含有原料の配合比率[質量%]である。
【請求項4】
複数種類の前記鉄含有原料のうちの1種類の鉄含有原料は、銘柄の異なる複数の塊鉱石からなり、
前記塊鉱石の融着開始時還元率Rs
iは、前記銘柄毎の融着開始時還元率であり、
前記塊鉱石の配合比率M
iRは、前記銘柄毎の配合比率である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の鉄含有原料の配合設計方法。
【請求項5】
複数種類の前記鉄含有原料のうちの1種類の鉄含有原料は、銘柄の異なる複数のペレットからなり、
前記ペレットの融着開始時還元率Rs
iは、前記銘柄毎の融着開始時還元率であり、
前記ペレットの配合比率M
iRは、前記銘柄毎の配合比率である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の鉄含有原料の配合設計方法。
【請求項6】
複数種類の前記鉄含有原料のうちの1種類の鉄含有原料は、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる複数の焼結鉱からなり、
前記焼結鉱の融着開始時還元率Rs
iは、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる前記焼結鉱毎の融着開始時還元率であり、
前記焼結鉱の配合比率M
iRは、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる前記焼結鉱毎の配合比率である、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の鉄含有原料の配合設計方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の鉄含有原料の配合設計方法によって、配合が設計された複数種類の鉄含有原料を高炉に装入して鉄含有原料層を形成することを特徴とする高炉の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉内で鉱石層を形成する鉄含有原料の配合設計方法と、この配合設計方法によって配合された鉄含有原料を高炉に装入して鉱石層を形成する高炉の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉では、炉頂部から鉄含有原料としての鉱石原料(焼結鉱、ペレット、塊鉱石など)と、還元材および燃料としてのコークスが交互に装入されるとともに、炉下部の羽口から熱風が微粉炭などの補助燃料と共に吹き込まれる。炉頂部から装入された鉱石原料およびコークス(以下、総称して「装入物」ともいう)は、それぞれ交互に積層する鉱石層およびコークス層を形成する。鉱石原料およびコークスは、高炉内での荷下がりにしたがって、徐々に高炉内を炉下部に向かって降下しながら、炉下部から上昇する還元ガスにより加熱され、昇温される。
【0003】
高炉内で加熱、還元されながら降下する鉱石原料は、炉下部に到達すると軟化、融着を開始し、鉱石融着層を形成する。鉱石融着層では、鉱石原料間の空隙が減少し、還元ガスの通気性が悪化する。このため、還元ガスは、鉱石融着層と隣り合うコークス層を通過して、炉頂に向かい上昇する。なお、高炉内で鉱石融着層が存在する領域(鉱石融着層と隣り合うコークス層を含む)を融着帯と称する。従って、融着帯の形状は、高炉の通気性に与える影響が極めて大きい。
【0004】
そこで、従来は、鉱石原料の被還元性に着目し、高炉内の通気性を管理していた。
【0005】
例えば、特許文献1には、全装入コークスのコークス反応性指数(CRI)の加重平均値、全装入焼結鉱の焼結鉱被還元性指数(RI)の加重平均値、および溶銑1トン当たりの高炉スラグ量を、それぞれ所定の範囲に保つことで、高炉内でのコークスの強度劣化および粉化を抑制し、炉内通気性を確保する高炉の操業方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、高炉装入焼結鉱中のFeO,Al2O3の成分割合、高炉装入物のスラグ比、高炉の羽口から吹き込む熱風中の送風湿分のうち1つまたは複数を調整し、鉄鉱石類の還元率を50%以上に維持することで、炉下部の通気性を改善し、高炉炉況を安定化させて燃料比の低減を図る高炉操業方法が開示されている。
【0007】
その他にも、鉱石原料などの鉄含有原料の高温性状を表す指標(以下、「高温性状評価指標」ともいう)の一つであるS値(焼結鉱を加熱還元して得られる時間-圧損曲線において、圧損が200mmH2O以上である部分の面積)に着目し、これを管理する方法が知られている(特許文献3)。より具体的には、特許文献3には、焼結鉱を高温性状(S値)により2種類に分け、高温性状の劣る焼結鉱を下部層として装入し、その上部に高温性状の優れた焼結鉱を上部層として装入することで、鉱石層全体の被還元性を改善する、焼結鉱の高炉への装入方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-272968号公報
【文献】特開平6-256818号公報
【文献】特開2002-309306号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】鉄と鋼、第83巻(1997年)、第97~102頁、「焼結鉱の軟化溶融性状評価法の開発」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
鉱石原料などの鉄含有原料の高温性状は、融着帯の形状を決定する重要な要因のひとつとなる。従来、高温性状評価指標としては、上述したS値に加え、融着開始温度(Ts)や、滴下開始温度(Te、Td)や、あるいは滴下開始温度及び融着開始温度の差(ΔT=Te-Ts)等が知られている(例えば、非特許文献1)。
【0011】
一方、鉄含有原料の被還元性の観点からは、融着開始温度(Ts)時点の還元率が重要であることから、本発明ではこれを融着開始時還元率(Rs)と定義した。融着開始時還元率(Rs)を用いて、高炉内の鉄含有原料層を形成する鉄含有原料の配合を設計する配合設計方法はこれまで報告されていない。
【0012】
本発明は、融着開始時還元率(Rs)を用いて、高炉内の鉄含有原料層を形成する鉄含有原料の配合を設計する配合設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明の配合設計方法は、(1)高炉内の鉄含有原料層を形成する複数種類の鉄含有原料の配合を設計する配合設計方法であって、下記式(I)で表される、複数種類の前記鉄含有原料の融着開始時還元率の加重平均値Rs
avが下限値Rs
min以上となるように、複数種類の前記鉄含有原料の配合を設計し、前記下限値Rs
minは、高炉の安定操業時の実績に基づいて予め決められた、高炉内の通気抵抗指数、コークス比及び出銑比のうちの少なくとも1つのパラメータと、前記加重平均値Rs
avとの相関関係において、前記パラメータの目標値に対応する前記加重平均値Rs
avであることを特徴とする。
【数1】
上記式(I)において、iは鉄含有原料の種類、Rs
iは種類iの鉄含有原料の融着開始時還元率[%]、M
iRは全種類の鉄含有原料に対する種類iの鉄含有原料の配合比率[質量%]である。
【0014】
(2)2つ以上の前記パラメータの目標値にそれぞれ対応する前記加重平均値Rsavのうち、最も高い値を前記下限値Rsminとして決めることを特徴とする(1)に記載の鉄含有原料の配合設計方法。
【0015】
(3)前記配合設計方法は、さらに、下記式(II)で表される、複数種類の前記鉄含有原料の融着開始時還元率のばらつきσRsが10%以下となるように、複数種類の前記鉄含有原料の配合を設計することを特徴とする(1)又は(2)に記載の鉄含有原料の配合設計方法である。
【数2】
上記式(II)において、iは鉄含有原料の種類、Rs
iは種類iの鉄含有原料の融着開始時還元率[%]、Rs
avは複数種類の前記鉄含有原料の融着開始時還元率の加重平均値[%]、M
iRは全種類の鉄含有原料に対する種類iの鉄含有原料の配合比率[質量%]である。
【0016】
(4)複数種類の前記鉄含有原料のうちの1種類の鉄含有原料は、銘柄の異なる複数の塊鉱石からなり、前記塊鉱石の融着開始時還元率Rsiは、前記銘柄毎の融着開始時還元率であり、前記塊鉱石の配合比率MiRは、前記銘柄毎の配合比率である、ことを特徴とする(1)から(3)のいずれか一つに記載の鉄含有原料の配合設計方法。
【0017】
(5)複数種類の前記鉄含有原料のうちの1種類の鉄含有原料は、銘柄の異なる複数のペレットからなり、前記ペレットの融着開始時還元率Rsiは、前記銘柄毎の融着開始時還元率であり、前記ペレットの配合比率MiRは、前記銘柄毎の配合比率である、ことを特徴とする(1)から(4)のいずれか一つに記載の鉄含有原料の配合設計方法。
【0018】
(6)複数種類の前記鉄含有原料のうちの1種類の鉄含有原料は、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる複数の焼結鉱からなり、前記焼結鉱の融着開始時還元率Rsiは、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる前記焼結鉱毎の融着開始時還元率であり、前記焼結鉱の配合比率MiRは、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる前記焼結鉱毎の配合比率である、ことを特徴とする(1)から(5)のいずれか一つに記載の鉄含有原料の配合設計方法。
【0019】
(7)(1)から(6)のいずれか一つに記載の鉄含有原料の配合設計方法によって、配合が設計された複数種類の鉄含有原料を高炉に装入して鉄含有原料層を形成することを特徴とする高炉の操業方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、融着開始時還元率(Rs)を用いて、高炉内の鉄含有原料層を形成する鉄含有原料の配合を設計する配合設計方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】融着開始時還元率を測定する装置を示す図である。
【
図3】融着開始時還元率を測定する条件を示す図である。
【
図5】補正通気抵抗指数K2
cоr及び加重平均値Rs
av(下限値Rs
min)の相関関係を説明する図である。
【
図6】コークス比CR及び加重平均値Rs
av(下限値Rs
min)の相関関係を説明する図である。
【
図7】出銑比及び加重平均値Rs
av(下限値Rs
min)の相関関係を説明する図である。
【
図8】融着開始時還元率Rsと高炉内の通気性の関係を説明する図である。
【
図9】配合設計の前後において、補正通気抵抗指数K2
cоr及び加重平均値Rs
avの関係を示す図である。
【
図10】配合設計の前後において、コークス比CR及び加重平均値Rs
avの関係を示す図である。
【
図11】配合設計の前後において、出銑比及び加重平均値Rs
avの関係を示す図である。
【
図12】補正通気抵抗指数K2
cоrと融着開始時還元率のばらつきσRsの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明を完成するに至った経緯を、
図1を用いて説明する。
【0023】
図1は、高炉の内部を示す図である。
図1に示すように、高炉1には、装入物2が装入されている。装入物2は、主にコークスと鉄含有原料(後述する鉱石原料を含む)であり、コークスと鉄含有原料が交互に装入されることにより、交互に積層するコークス層3と鉄含有原料層4が形成される。なお、鉄含有原料層4は鉄含有原料のみからなる必要は無い。例えば鉄含有原料層4はコークスを含んでいてもよい。高炉内を加熱、還元されて降下する鉄含有原料層4では、鉄含有原料が軟化と融着を開始し、融着層5が形成される。融着層5から滴下した溶銑9は、炉底10に貯留される。羽口7から高炉内部に吹き込まれた熱風は、羽口前のレースウェイ8で微粉炭とコークスを燃焼し、還元ガス(CO、H
2)を発生し、還元ガス(CO、H
2)は、炉内を上昇する。融着層5では、鉄含有原料が融着しているため、鉄含有原料間の空隙が少なく、還元ガスの通気性が悪い。そのため、還元ガスは、融着層5と隣り合うコークス層6を通り抜け、高炉1内を上昇する。つまり、融着帯での炉内ガスの通気は、融着層5と隣り合うコークス層6に限られるため、融着帯の形状が、高炉1の通気性に重大な影響を与える。なお、融着帯とは、融着層5間のコークス層6を含む、融着層5が存在する領域を指す。
【0024】
本発明者は、鉄含有原料の高温性状が融着帯の形状に影響を及ぼすと考え、高温性状の把握が重要であると考えた。そこで、高温性状を表す指標(高温性状評価指標)に着目して鋭意検討したところ、鉄含有原料層4を形成する複数種類の鉄含有原料の融着開始時還元率Rsを、各鉄含有原料の配合比率(質量%)に応じて加重平均した値Rsav(以下、単に「加重平均値Rsav」ともいう)が、高炉内の通気性に相関することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
なお、本明細書において、融着開始時還元率Rsは、後述する荷重軟化試験において、融着層が形成されたときの鉄含有原料の還元率を指す。融着層が形成された否かは、後述する荷重軟化試験において、鉄含有原料層の圧力損失が所定の値に到達したか否かにより判断することができ、例えば鉄含有原料層の圧力損失が200×9.8Paに到達したときに融着層が形成されたと判断できる。
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0027】
本実施形態の配合設計方法は、鉱石層(上述した鉄含有原料層に相当する)を形成する複数種類の鉱石原料の配合を設計する方法である。鉱石原料とは、鉄分を50質量%以上含有する原料である。本実施形態の配合設計方法により配合が設計される鉱石原料には、少なくとも2種類の鉱石原料が用いられ、例えば、焼結鉱、塊鉱石、及びペレットからなる群から選択される2種類以上の鉱石原料が用いられる。
【0028】
本実施形態の配合設計方法では、複数種類の鉱石原料の融着開始時還元率Rsの加重平均値Rsavが、後述する下限値Rsmin以上となるように、複数種類の鉱石原料の配合を設計する。加重平均値Rsavは、下記式(1)で表される。
【0029】
【数3】
上記式(1)において、Rs
avは複数種類の鉱石原料の融着開始時還元率の加重平均値[%]、iは鉱石原料の種類、Rs
iは種類iの鉱石原料の融着開始時還元率[%]、M
iRは全種類の鉱石原料に対する種類iの鉱石原料の配合比率[質量%]である。
【0030】
上記式(1)における、種類iの鉱石原料の融着開始時還元率Rsiには、鉱石原料の種類毎に測定した融着開始時還元率Rsが用いられる。融着開始時還元率Rsの測定には、非特許文献1に記載される荷重軟化試験が用いられ、以下に示す測定装置及び測定条件が用いられる。
【0031】
(融着開始時還元率Rsの測定装置について)
図2に融着開始時還元率Rsを測定する装置を示す。この測定装置では、
図2に示すように、タンマン電気炉が上下2段に配置され、両炉(上部炉12及び下部炉11)がフランジで連結される。下部炉11の下部からは、ガス17が導入される。下部炉11では、下部炉ヒーター制御手段16により下部炉ヒーターH’が制御され、ガス17が予熱される。そして、高温に予熱されたガス17は、上部の還元炉(上部炉12)に導入される。上部炉12に導入されたガス17は、底を穿孔した黒鉛るつぼ13(内径略85mm)に導入され、2つのコークス層21に挟まれる鉱石層14中の鉱石原料を加熱還元する。コークス層21及び鉱石層14には、荷重機19により荷重が負荷される。上部炉12及び下部炉11にガス17を導入して鉱石原料を加熱還元する際は、上部炉12の反応管(黒鉛るつぼ13と上部炉ヒーターHとの間に設けられる反応管)の外壁温度と試料層(コークス層21及び鉱石層14から構成される層)上部の温度との差が一定になるように、上部炉ヒーター制御手段15により上部炉ヒーターHが制御されて断熱制御が行われる。なお、上部炉ヒーター制御手段15は、後述するように加熱制御も行う。還元後ガス18は、上部炉12の上部から排出される。鉱石層14中の鉱石原料が加熱還元されて生成された溶銑は、滴下溶銑受け20に受けられる。この装置によれば、高温に予熱されたガス17の導入と断熱制御により、実炉における鉱石原料の還元・溶融挙動を正確に把握できる。
【0032】
(融着開始時還元率Rsを測定する条件について)
鉱石層14を形成する鉱石原料には、配合を設計する複数種類の鉱石原料のうちのいずれか1種の鉱石原料が用いられる。配合を設計する鉱石原料の種類毎に、荷重軟化試験が行われることで、鉱石原料の種類毎に融着開始時還元率Rsを測定できる。鉱石層14を形成する鉱石原料には、10mm~15mmに整粒した鉱石原料が用いられる。鉱石層14は、層厚が略70mmとなるように形成される。コークス層21を形成するコークスには、10~15mmに整粒したコークスが用いられる。鉱石層14を挟むコークス層21は、層厚がそれぞれ略20mmとなるように形成される。
【0033】
上述した測定装置に導入されるガス17の組成及び温度の条件については、
図3に示す条件が用いられる。具体的には、下部炉11におけるガス17の昇温速度は、炉最大能力の10℃/分に設定し、ガス17の温度が炉の常用最大温度(1700℃)に到達した後、この温度に保持する。上部炉12におけるガス17の昇温速度は、1000℃までは10℃/分に設定し、1000℃以上では、実炉の平均的昇温速度である5℃/分に設定する。ガス17の組成に関しては、800℃まではN
2を導入し、800℃以上では、還元ガス(CO:29.4体積%-H
2:3.6体積%-N
2:67.0体積%)を導入する。ガス流量は、34Nl/分で一定とし、標準空塔速度10cm/秒を確保する。なお、ガス17の組成は、送風湿度15×10
-3kg/Nm
3,微粉炭比100kg/t-pigのときのボッシュガス組成をもととして、1000℃における鉱石原料の還元率が実態解体調査結果(実炉を解体して調査した結果)にほぼ一致する30%になるように、H
2/COが一定のままN
2を調整することにより決定した。
【0034】
鉱石層14及びコークス層21に負荷される荷重は、
図3に示すように、ガス17の温度が800℃以上であるときに0.098MPaとする。この荷重(0.098MPa)以上で、収縮および通気への荷重依存性が極めて小さいことから、前述した条件を用いる。なお、温度が800℃未満である場合には、鉱石層14及びコークス層21に荷重は負荷されない。上部炉12は、試験開始時は、加熱制御を実施し、1200℃付近より断熱制御に切り替え、試料層(鉱石層14)のほとんどにおいて溶銑が滴下した後、再度、加熱制御に切り替える。
【0035】
図4に、上述した測定装置及び測定条件を用いて、非特許文献1に記載の荷重軟化試験により測定した焼結鉱の高温性状評価指標の一例を示す。本実施形態では、
図4に示す高温性状評価指標のうち、融着層が形成されたとき(鉱石層における圧力損失が200×9.8Paに到達したとき)の還元率、つまり、融着開始時還元率Rsを用いる。
【0036】
なお、
図4には、融着開始時還元率Rsのほか、鉱石層における圧力損失の最大値(最大圧損値△P
max)、融着層が形成されたとき(鉱石層における圧力損失が200×9.8Paに到達したとき)の温度(融着開始温度Ts)、融着層が形成されているとき(鉱石層における圧力損失が200×9.8Pa以上であるとき)の鉱石層の温度幅(温度幅△T)、融着層が形成されているとき(鉱石層における圧力損失が200×9.8Pa以上であるとき(つまり、温度幅△T間))の圧力損失の積分値(S’)、鉱石原料の滴下開始温度(滴下開始温度Td)、および、鉱石層における圧力損失が、融着層が形成されたときの圧力損失(200×9.8Pa)まで低下したときの温度(Te)を高温性状評価指標として示している。
【0037】
本実施形態では、上述した試験を鉱石原料の種類ごとに行い、測定される各鉱石原料の融着開始時還元率Rsを、上記式(1)における融着開始時還元率Rsiとして用いる。
【0038】
上記式(1)における、種類iの鉱石原料の配合比率MiRには、鉱石原料の種類毎に取得した配合比率MR(配合を設計する全種類の鉱石原料100質量%に対する各種類の鉱石原料の質量割合)が用いられる。配合比率MRの取得方法は、特に限定されるものでなく、鉱石原料の種類毎に質量を実測したり、鉱石原料の種類毎に質量を予測したりしてもよい。
【0039】
(下限値Rsminについて)
下限値Rsminは、高炉内の通気抵抗指数K2、コークス比CR及び出銑比のうちの少なくとも1つのパラメータに基づいて決められる。以下、具体的に説明するが、まず、通気抵抗指数K2について説明する。
【0040】
通気抵抗指数K2は、通気抵抗を示す公知の指数(例えば、平成18年,社団法人日本鉄鋼協会、独立行政法人日本学術振興会 製銑第54委員会発行,「鉄鋼物性値便覧 製鉄編」,第250頁を参照)であり、通気抵抗が高くなるほど(言い換えれば、通気性が低下するほど)、通気抵抗指数K2は上昇する。通気抵抗指数K2は、下記式(2)から求めることができる。
【0041】
【数4】
上記式(2)において、K2は通気抵抗指数[-]、P
Bは送風圧力[hPa]、P
Tは炉頂圧力[hPa]、Lは高炉有効高さ(羽口から装入物表面までの高さ)[m]、Vはボッシュガス量[Nm
3/min]、Dは炉床径[m]を示す。
【0042】
次に、通気抵抗指数K2から下限値Rsminを決める方法について説明する。
【0043】
加重平均値Rsav及び通気抵抗指数K2の相関関係を予め決めておけば、通気抵抗指数K2の目標値を特定することにより、この通気抵抗指数K2(目標値)に対応する加重平均値Rsavを下限値Rsminとして決めることができる。加重平均値Rsav及び通気抵抗指数K2の相関関係は、以下に説明する方法によって決めることができる。
【0044】
加重平均値Rsav及び通気抵抗指数K2を座標軸とした座標系において、高炉の操業実績をプロットし、安定操業が行われた際の高炉の操業実績がプロットされた領域(以下、「安定操業領域」という)と、安定操業が行われなかった際の高炉の操業実績がプロットされた領域(以下、「不安定操業領域」という)とを特定する。そして、安定操業領域及び不安定操業領域を区画する境界線を、加重平均値Rsav及び通気抵抗指数K2の相関関係として規定することができる。ここでいう「区画」は、安定操業領域及び不安定操業領域を厳密に区画することを意味するものではなく、安定操業領域及び不安定操業領域を大まかに区画できるものであればよい。
【0045】
なお、安定操業領域及び不安定操業領域の境界線は、例えば以下の手順で作成することができる。安定操業が行われた操業実績のうち、最も通気抵抗指数K2の小さい値をとる操業実績を加重平均値Rsavごとに抽出する。次に、抽出した操業実績及び加重平均値Rsavに基づいて近似式を作成し、これを境界線とする。また、上述したように安定操業領域及び不安定操業領域を厳密に区画する必要は無いため、安定操業領域の特定においては、安定操業が行われたすべての操業実績がプロットされた領域としなくてもよい。安定操業領域及び不安定操業領域を大まかに区画する上では、例えば、安定操業が行われたすべての操業実績のうち、90%以上の操業実績がプロットされた領域を安定操業領域とみなすことができる。
【0046】
図5では、4つの高炉1~4における安定操業時の実績をプロットしているとともに、加重平均値Rs
av及び補正通気抵抗指数K2
cоrの相関関係(一例)を示している。
図5では、通気抵抗指数K2の代わりに、補正通気抵抗指数K2
cоrを用いている。本発明における「通気抵抗指数」には、通気抵抗指数K2や補正通気抵抗指数K2
cоrが含まれる。
【0047】
補正通気抵抗指数K2cоrは、高炉操業におけるコークス比CR及びコークス強度DIに基づいて、上記式(2)で表される通気抵抗指数K2を補正した値である。通気抵抗指数K2は、コークス比CR及びコークス強度DIの影響を受けるため、コークス比CR及びコークス強度DIの影響を除外した上で、加重平均値Rsavとの相関関係を把握することが好ましい。そこで、通気抵抗指数K2の代わりに、補正通気抵抗指数K2cоrを用いた。ここで、通気抵抗指数K2は、コークス比CRが320kg/t(基準値)であり、コークス強度DIが86%(基準値)であるときの値とした。
【0048】
補正通気抵抗指数K2cоrの算出においては、高炉操業でのコークス比CRが基準値(320kg/t)に対して1kg/tだけ増加することに応じて、通気抵抗指数K2に3[-]を加算する補正を行った。また、高炉操業でのコークス比CRが基準値(320kg/t)に対して1kg/tだけ減少することに応じて、通気抵抗指数K2から3[-]を減算する補正を行った。一方、高炉操業でのコークス強度DIが基準値(86%)に対して1%だけ増加することに応じて、通気抵抗指数K2に120[-]を加算する補正を行った。また、高炉操業でのコークス強度DIが基準値(86%)に対して1%だけ減少することに応じて、通気抵抗指数K2から120[-]を減算する補正を行った。
【0049】
図5によれば、加重平均値Rs
av及び補正通気抵抗指数K2
cоrの相関関係は、下限値Rs
minとして示される直線(点線)によって規定される。下限値Rs
minの直線(点線)によれば、補正通気抵抗指数K2
cоrが高いほど、下限値Rs
minが低くなり、補正通気抵抗指数K2
cоrが低いほど、下限値Rs
minが高くなる。下限値Rs
minの直線(点線)に対して補正通気抵抗指数K2
cоrが高い側の領域は、安定操業領域となり、下限値Rs
minの直線(点線)に対して補正通気抵抗指数K2
cоrが低い側の領域には、不安定操業領域が含まれる。なお、
図5でプロットされたすべての操業実績は、安定操業が行われた操業実績であるが、一部の操業実績を除外して、下限値Rs
minの直線(点線)を決めている。
【0050】
図5に示すように加重平均値Rs
av及び補正通気抵抗指数K2
cоrの相関関係(すなわち、下限値Rs
minの直線)を決めておけば、補正通気抵抗指数K2
cоrの目標値に対応する下限値Rs
minを特定することができる。例えば、補正通気抵抗指数K2
cоrの目標値を800[-]とするときには、下限値Rs
minが58[%]となる。
【0051】
なお、
図5に示す例では、加重平均値Rs
av及び補正通気抵抗指数K2
cоrの相関関係を一次関数(下限値Rs
minの直線)として表しているが、これに限るものではない。上述したように、加重平均値Rs
av及び補正通気抵抗指数K2
cоrの相関関係は、安定操業領域及び不安定操業領域を区画する境界線として規定すればよい。
【0052】
次に、コークス比CRから下限値Rsminを決める方法について説明する。
【0053】
加重平均値Rsav及びコークス比CRの相関関係を予め決めておけば、コークス比CRの目標値を特定することにより、このコークス比CR(目標値)に対応する加重平均値Rsavを下限値Rsminとして決めることができる。加重平均値Rsav及びコークス比CRの相関関係は、以下に説明する方法によって決めることができる。
【0054】
加重平均値Rsav及びコークス比CRを座標軸とした座標系において、高炉の操業実績をプロットし、上述したように安定操業領域及び不安定操業領域を特定する。そして、安定操業領域及び不安定操業領域を区画する境界線を、加重平均値Rsav及びコークス比CRの相関関係として規定することができる。
【0055】
安定操業領域及び不安定操業領域の境界線は、例えば以下の手順で作成することができる。安定操業が行われた操業実績のうち、最もコークス比CRの低い値をとる操業実績を加重平均値Rsavごとに抽出する。次に、抽出した操業実績及び加重平均値Rsavに基づいて近似式を作成し、これを境界線とする。
【0056】
図6では、4つの高炉1~4における安定操業時の実績をプロットしているとともに、加重平均値Rs
av及びコークス比CRの相関関係(一例)を示している。
図6によれば、加重平均値Rs
av及びコークス比CRの相関関係は、下限値Rs
minとして示される直線によって規定される。この下限値Rs
minの直線によれば、コークス比CRが330[kg/t]であるときの下限値Rs
minが56[%]であり、コークス比CRが10[kg/t]だけ低下することに応じて、下限値Rs
minが2[%]だけ上昇することになる。
【0057】
図6に示す下限値Rs
minの直線によれば、コークス比CRが高いほど、下限値Rs
minが低くなり、コークス比CRが低いほど、下限値Rs
minが高くなる。下限値Rs
minの直線に対してコークス比CRが高い側の領域は、安定操業領域となり、下限値Rs
minの直線に対してコークス比CRが低い側の領域には、不安定操業領域が含まれる。なお、
図6でプロットされたすべての操業実績は、安定操業が行われた操業実績であるが、一部の操業実績を除外して、下限値Rs
minの直線(点線)を決めている。
【0058】
図6に示すように加重平均値Rs
av及びコークス比CRの相関関係(すなわち、下限値Rs
minの直線)を決めておけば、コークス比CRの目標値に対応する下限値Rs
minを特定することができる。例えば、コークス比CRの目標値を290[kg/t]とするときには、下限値Rs
minが64[%]となる。
【0059】
なお、
図6に示す例では、加重平均値Rs
av及びコークス比CRの相関関係を一次関数(下限値Rs
minの直線)として表しているが、これに限るものではない。上述したように、加重平均値Rs
av及びコークス比CRの相関関係は、安定操業領域及び不安定操業領域を区画する境界線として規定すればよい。
【0060】
次に、出銑比から下限値Rsminを決める方法について説明する。
【0061】
加重平均値Rsav及び出銑比の相関関係を予め決めておけば、出銑比の目標値を特定することにより、この出銑比(目標値)に対応する加重平均値Rsavを下限値Rsminとして決めることができる。加重平均値Rsav及び出銑比の相関関係は、以下に説明する方法によって決めることができる。
【0062】
加重平均値Rsav及び出銑比を座標軸とした座標系において、高炉の操業実績をプロットし、上述したように安定操業領域及び不安定操業領域を特定する。そして、安定操業領域及び不安定操業領域を区画する境界線を、加重平均値Rsav及び出銑比の相関関係として規定することができる。
【0063】
安定操業領域及び不安定操業領域の境界線は、例えば以下の手順で作成することができる。安定操業が行われた操業実績のうち、最も出銑比の高い値をとる操業実績を加重平均値Rsavごとに抽出する。次に、抽出した操業実績及び加重平均値Rsavに基づいて近似式を作成し、これを境界線とする。
【0064】
図7では、4つの高炉1~4における安定操業時の実績をプロットしているとともに、加重平均値Rs
av及び出銑比の相関関係(一例)を示している。
図6によれば、加重平均値Rs
av及び出銑比の相関関係は、下限値Rs
minとして示される直線によって規定される。この下限値Rs
minの直線によれば、出銑比が1.8[-]であるときの下限値Rs
minが56[%]であり、出銑比が0.1[-]だけ上昇することに応じて、下限値Rs
minが1[%]だけ上昇することになる。
【0065】
下限値Rs
minの直線によれば、出銑比が高いほど、下限値Rs
minが高くなり、出銑比が低いほど、下限値Rs
minが低くなる。下限値Rs
minの直線に対して出銑比が低い側の領域は、安定操業領域となり、下限値Rs
minの直線に対して出銑比が高い側の領域には、不安定操業領域が含まれる。なお、
図7でプロットされたすべての操業実績は、安定操業が行われた操業実績であるが、一部の操業実績を除外して、下限値Rs
minの直線(点線)を決めている。
【0066】
図7に示すように加重平均値Rs
av及び出銑比の相関関係(すなわち、下限値Rs
minの直線)を決めておけば、出銑比の目標値に対応する下限値Rs
minを特定することができる。例えば、出銑比の目標値を2.0[-]とするときには、下限値Rs
minが58[%]となる。
【0067】
なお、
図7に示す例では、加重平均値Rs
av及び出銑比の相関関係を一次関数(下限値Rs
minの直線)として表しているが、これに限るものではない。上述したように、加重平均値Rs
av及び出銑比の相関関係は、安定操業領域及び不安定操業領域を区画する境界線として規定すればよい。
【0068】
下限値Rsminは、通気抵抗指数K2、コークス比CR及び出銑比のうちの2つ以上のパラメータに基づいて決めることができる。この場合には、上述した方法に基づいて、パラメータ毎に下限値Rsminが決められ、パラメータの数だけ下限値Rsmin(候補値)が発生する。これらの下限値Rsmin(候補値)のうち、最も高い値を示す下限値Rsminを本実施形態の配合設計方法における下限値Rsminとして採用することができる。これにより、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように鉱石原料の配合設計を行ったとき、加重平均値Rsavをすべての下限値Rsmin(候補値)以上とすることができる。なお、本実施形態の配合設計方法における下限値Rsminとして、複数の下限値Rsmin(候補値)の平均値とすることもできる。
【0069】
(鉱石原料の配合設計について)
本実施形態の配合設計方法では、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように、複数種類の鉱石原料の配合を設計する。後述する実施例で説明するように、加重平均値Rsavが異なるように設計した配合の鉱石原料を、鉱石層を形成するための原料(以下、「高炉原料」ともいう)として実炉で用いたところ、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上であれば高炉内の通気抵抗が低位で安定した。
【0070】
加重平均値Rsavは、上記式(1)から理解できるように、配合比率MiRや融着開始時還元率Rsiを変化させることで調整できる。配合比率MiRは、各鉱石原料の配合量を変更することにより変化させることができる。また、融着開始時還元率Rsiは、鉱石原料の種類を変更することにより変化させることができる。従って、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように、鉱石原料の配合を設計するとは、言い換えれば、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となる鉱石原料の配合比率及び鉱石原料の種類を決定することを意味する。
【0071】
下記表1に、加重平均値Rs
avを求めるときの鉱石原料の配合の一例を示す。なお、
図4に示す結果は、下記表1に示す焼結鉱を用いて得た結果である。また、下記表1に示すσRsは、複数種類の鉱石原料の融着開始時還元率Rsのばらつきであり、その詳細については後述する。
【0072】
【0073】
本実施形態の配合設計方法は、以下に示すように、高炉で使用している鉱石原料の配合比率を変更する際や、高炉で使用している鉱石原料の種類を変更する際に用いることができる。
【0074】
高炉で使用している鉱石原料の配合比率を変更する場合には、例えば、既に使用している各鉱石原料の融着開始時還元率Rsを予め測定しておき、変更予定の配合比率としたときに、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるか否かを判断する。加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上であれば、変更予定の鉱石原料の配合比率を採用して配合を設計(決定)する。加重平均値Rsavが下限値Rsminを下回る場合には、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように配合比率を再度見直して配合を設計する。なお、加重平均値Rsavが下限値Rsminを下回る場合には、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように鉱石原料の種類を見直して配合を設計してもよい。
【0075】
高炉で使用している鉱石原料の種類を変更する場合には、変更予定の鉱石原料の融着開始時還元率Rs(変更しない鉱石原料がある場合には、その鉱石原料の融着開始時還元率Rsについても)を予め測定しておき、配合比率を変えずに鉱石原料の種類を変更したときに、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるか否かを判断する。加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上であれば、既に使用している配合比率を変えずに、その種類の変更を採用して配合を設計(決定)する。加重平均値Rsavが下限値Rsminを下回る場合には、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように鉱石原料の配合比率を見直して配合を設計する。なお、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように、変更する鉱石原料の種類を再度見直して配合を設計してもよい。
【0076】
本実施形態の配合設計方法で配合が設計される鉱石原料は、高炉原料として用いられる。高炉原料は、本実施形態の配合設計方法で配合が設計される鉱石原料のみにより構成されてもよいが、鉱石原料の他に、例えば、コークスや、フェロコークスや、含炭塊成鉱や、副原料を含有してもよい。この場合にも、上述したように、複数種類の鉱石原料だけ(コークス、フェロコークス、含炭塊成鉱、副原料を除く)に着目して、加重平均値Rs
avが下限値Rs
min以上となるように鉱石原料の配合を設計すればよい。本実施形態の配合設計方法で配合が設計された鉱石原料を高炉原料として高炉操業に用いることにより、高炉内の通気性が向上する。その理由について、
図8を用いて説明する。
【0077】
図8は、融着開始時還元率Rsと高炉内の通気性の関係を説明する図である。前述したように、融着層は、通気性が悪いため、融着層には還元ガスがほとんど流れず、融着層と隣り合うコークス層を通り抜ける。鉱石層から融着層が形成される過程では、主な還元形態が還元ガスによる間接還元(FeO+CO(g)→Fe+CO
2(g)(発熱反応))から固体炭素による直接還元(FeO+C→Fe+CO(g)(吸熱反応))に遷移する。融着開始時還元率Rsが上昇することは、融着層が形成されるまでの間接還元率(発熱反応)が上昇し、炉下部における直接還元率(吸熱反応)が低下することを意味する。このため、融着開始時還元率Rsが上昇すれば、炉下部における吸熱量が低下(吸熱反応が低下)し、鉱石原料の昇温が促進される。鉱石原料の昇温が促進されると、鉱石(鉄)に対する浸炭が促進され、溶銑の滴下が促進される。その結果、融着帯のうち炉中心側の領域が縮小し、還元ガスが融着層の間を通り抜けやすくなる。そして、高炉原料として用いる鉱石原料の融着開始時還元率Rsの加重平均値Rs
avが下限値Rs
min以上である場合には、その現象が顕著に生じて、高炉内の通気性が向上しやすくなると考えられる。
【0078】
本実施形態の配合設計方法では、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となることに加え、さらに、下記式(3)で表される、複数種類の鉱石原料の融着開始時還元率RsのばらつきσRs(以下、単に「ばらつきσRs」ともいう)が10%以下となるように、複数種類の鉱石原料の配合を設計することが好ましい。なお、ばらつきσRsが10%以下との条件もまた、後述する実施例に基づき本発明者が定めたものである。
【0079】
【数5】
上記式(3)において、σRsは複数種類の鉱石原料の融着開始時還元率Rsのばらつき[%]、iは鉱石原料の種類、Rs
iは種類iの鉱石原料の融着開始時還元率[%]、Rs
avは複数種類の鉱石原料の融着開始時還元率Rs
iの加重平均値[%]、M
iRは全種類の鉱石原料に対する種類iの鉱石原料の配合比率[質量%]である。
【0080】
上記式(3)における、加重平均値Rsav,融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRは、上記式(1)における加重平均値Rsav,融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRと、それぞれ同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0081】
ばらつきσRsは、加重平均値Rsavと同様に、各鉱石原料の配合量や鉱石原料の種類を変化させることで調整できる。つまり、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となることに加え、ばらつきσRsが10%以下となるように、鉱石原料の配合を設計することは、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上であることに加えてばらつきσRsが10%以下となるように、鉱石原料の配合比率及び鉱石原料の種類を決定することを意味する。
【0082】
加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となることに加え、ばらつきσRsが10%以下となることで、ばらつきσRsが10%を超える場合と比較して、さらに、高炉内の通気性が向上しやすくなる。
【0083】
また、上述した本実施形態では、鉱石原料の種類毎に、融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRを設定しているが、塊鉱石やペレットなどの各種類の鉱石原料には複数の銘柄が存在し、種類が同じ鉱石原料(塊鉱石やペレット)であっても、異なる銘柄同士で融着開始時還元率Rsが異なることがある。このため、本実施形態の配合設計方法において、塊鉱石及びペレットのうち少なくとも1種類の鉱石原料として、複数の銘柄の鉱石原料を用いる場合、当該種類の鉱石原料の融着開始時還元率Rs及び配合比率MRとして、銘柄毎に設定した融着開始時還元率Rs及び配合比率MRをそれぞれ用いることが好ましい。
【0084】
具体的には、例えば、鉱石原料として焼結鉱、塊鉱石及びペレットを用いる場合であって、塊鉱石として、銘柄aの塊鉱石と銘柄bの塊鉱石を用いる場合、銘柄aの塊鉱石と銘柄bの塊鉱石のそれぞれで設定された融着開始時還元率Rs及び配合比率MRが上記式(1),(3)における融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRとなる。すなわち、上記式(1),(3)に示す添え字iは、鉱石原料の種類を区別するだけでなく、1つの種類に属する複数の銘柄を区別するものとして定義される。
【0085】
また、例えば、鉱石原料として焼結鉱、塊鉱石及びペレットを用いる場合であって、ペレットとして、銘柄aのペレットと銘柄bのペレットを用いる場合、銘柄aのペレットと銘柄bのペレットのそれぞれで設定された融着開始時還元率Rs及び配合比率MRが上記式(1),(3)における融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRとなる。すなわち、上記式(1),(3)に示す添え字iは、鉱石原料の種類を区別するだけでなく、1つの種類に属する複数の銘柄を区別するものとして定義される。
【0086】
なお、銘柄としては、鉱石原料の産地(鉱山)や製造者の社名を付けたものなどがある。また、銘柄ごとに設定される配合比率MRは、全種類及び全銘柄(種類毎)の鉱石原料100質量%に対する各銘柄の鉱石原料の質量割合であって、全銘柄の塊鉱石に対する各銘柄の塊鉱石の質量割合(つまり、塊鉱石100質量%に対する各銘柄の塊鉱石の質量割合)や、全銘柄のペレットに対する各銘柄のペレットの質量割合(つまり、ペレット100質量%に対する各銘柄のペレットの質量割合)ではない。
【0087】
同様に、焼結鉱には、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる複数の焼結鉱が存在し、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる焼結鉱同士で融着開始時還元率Rsが異なることがある。焼結原料が異なる場合としては、焼結原料自体の成分や粒度が異なる場合や、焼結原料の配合比率が異なる場合がある。焼結原料が異なると、例えば焼結鉱の成分が異なることになるため、融着開始時還元率Rsが異なることがある。一方、焼成条件としては、例えば、燃料比がある。焼成条件が異なると、焼結鉱の気孔構造等が異なることになるため、融着開始時還元率Rsが異なることがある。
【0088】
このため、本実施形態の配合設計方法において、焼結鉱として、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる複数の焼結鉱を用いる場合、上記式(1),(3)に示す融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRとして、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる焼結鉱毎に設定した融着開始時還元率Rs及び配合比率MRをそれぞれ用いることが好ましい。また、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる焼結鉱毎に設定する配合比率MRは、全種類の鉱石原料100質量%に対して焼結原料・焼成条件の異なる各焼結鉱の質量割合であって、焼結原料・焼成条件の異なる全焼結鉱に対して焼結原料・焼成条件の異なる各焼結鉱の質量割合ではない。
【0089】
同じ種類の鉱石原料であっても、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる鉱石原料(焼結鉱)や、銘柄の異なる鉱石原料(塊鉱石,ペレット)毎に、融着開始時還元率Rs及び配合比率MRを設定することで、鉱石原料の実際の高温性状(融着開始時還元率Rs)が、より正確に反映された加重平均値Rsav及びばらつきσRsが求めやすくなる。
【0090】
焼結原料及び/又は焼成条件の異なる鉱石原料(焼結鉱)や、銘柄の異なる鉱石原料(塊鉱石,ペレット)について加重平均値Rsav及びばらつきσRsを調整して配合設計を行う際には、種類毎の鉱石原料の配合比率のほか、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる鉱石原料(焼結鉱)や銘柄の異なる鉱石原料(塊鉱石,ペレット)毎の配合比率を変更することができるとともに、鉱石原料の種類のほか、焼結原料及び/又は焼成条件や銘柄を変更することができる。
【0091】
(高炉の操業方法)
本実施形態の配合設計方法によって配合が設計された複数種類の鉱石原料は、高炉操業において、高炉に装入されることにより、高炉内で鉱石層(本発明における鉄含有原料層に相当する)を形成する。
【0092】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0093】
本実施形態は、鉄含有原料層を形成する複数種類の鉄含有原料の配合を設計する方法である。鉄含有原料とは、鉄分を15質量%以上含有する原料であり、具体的には、焼結鉱、ペレット及び塊鉱石に加えて、含炭塊成鉱及びフェロコークスなどを含む。鉄含有原料は、鉱石原料を包含する概念である。また、鉄含有原料の種類とは、焼結鉱、ペレット、塊鉱石、含炭塊成鉱及びフェロコークスなどの分類を指す。
【0094】
上述したように、融着層は、鉄含有原料層に含まれる鉱石原料が軟化及び融着することで形成されるが、鉄含有原料層に鉱石原料以外の鉄含有原料が含まれる場合、その鉄含有原料も融着層の形成に関与することがある。つまり、融着帯の形状に影響を及ぼすことがある。そこで、本実施形態では、鉄含有原料の種類ごとに融着開始時還元率Rsを設定し、その加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように、複数種類の鉄含有原料の配合を設計する。
【0095】
本実施形態の配合設計方法で配合を設計する鉄含有原料には、2種類以上の鉄含有原料が用いられ、例えば、焼結鉱、塊鉱石、ペレット、フェロコークス、及び含炭塊成鉱からなる群から選択される2種類以上の鉄含有原料を用いることができる。
【0096】
本実施形態の配合設計方法では、下記式(4)で表される、複数種類の鉄含有原料の融着開始時還元率Rsの加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように、複数種類の鉄含有原料の配合を設計する。下限値Rsminは、第1実施形態で説明したように、通気抵抗指数K2(又は補正通気抵抗指数K2cоr)、コークス比CR及び出銑比のうちのいずれか1つに基づいて決めることもできるし、通気抵抗指数K2(又は補正通気抵抗指数K2cоr)、コークス比CR及び出銑比のうちの2つ以上のパラメータに基づいて決めることもできる。
【0097】
【数6】
上記式(4)において、Rs
avは複数種類の鉄含有原料の融着開始時還元率Rs
iの加重平均値[%]、iは鉄含有原料の種類、Rs
iは種類iの鉄含有原料の融着開始時還元率[%]、M
iRは全種類の鉄含有原料に対する種類iの鉄含有原料の配合比率[質量%]である。
【0098】
上記式(4)における、種類iの鉄含有原料の融着開始時還元率Rsiには、鉄含有原料の種類毎に測定した融着開始時還元率Rsが用いられる。鉄含有原料の融着開始時還元率Rsの測定には、第1実施形態と同様に、非特許文献1に記載される荷重軟化試験を用いることができる。非特許文献1に記載される荷重軟化試験や、その試験に用いる装置及び条件は、第1実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、上記式(4)における、種類iの鉄含有原料の配合比率MiRは、第1実施形態の配合比率MiR(上記式(1)の配合比率MiR)の求め方と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0099】
上記式(4)で表される加重平均値Rsavは、各鉄含有原料の配合量や、鉄含有原料の種類を変化させることで調整できる。したがって、本実施形態において、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように、鉄含有原料の配合を設計することは、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように、鉄含有原料の配合比率及び鉄含有原料の種類を決定することを意味する。
【0100】
本実施形態の配合設計方法は、第1実施形態の配合設計方法と同様に、高炉で使用する鉄含有原料の配合比率を変更する際や、高炉で使用する鉄含有原料の種類を変更する際に用いることができる。具体的な方法は、第1実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0101】
本実施形態の配合設計方法で配合が設計された鉄含有原料は、鉄含有原料層を形成するための原料(高炉原料)として用いられる。高炉原料は、本実施形態の配合設計方法で配合が設計される鉄含有原料のみにより構成されてもよいが、鉄含有原料の他に、例えば、コークスや副原料を含有してもよい。この場合にも、上述したように、複数種類の鉄含有原料だけ(コークスや副原料を除く)に着目して、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となるように鉄含有原料の配合を設計すればよい。本実施形態の配合設計方法で配合が設計された鉄含有原料を高炉原料として高炉操業に用いることにより、高炉内の通気性が向上する。これは、第1実施形態で説明したように、炉中心側の融着帯が縮小し、炉内の還元ガスが融着層と隣り合うコークス層を通り抜けやすくなる現象が顕著に生じることが原因の一つとして考えられる。
【0102】
本実施形態の配合設計方法では、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上であることに加えて、さらに、下記式(5)で表される、複数種類の鉄含有原料の融着開始時還元率RsiのばらつきσRs(以下、単に「ばらつきσRs」ともいう)が、10%以下となるように、複数種類の鉄含有原料の配合を設計することが好ましい。
【0103】
【数7】
上記式(5)において、σRsは複数種類の鉄含有原料の融着開始時還元率Rsのばらつき[%]、iは鉄含有原料の種類、Rs
iは種類iの鉄含有原料の融着開始時還元率[%]、Rs
avは複数種類の鉄含有原料の融着開始時還元率Rs
iの加重平均値[%]、M
iRは全種類の鉄含有原料に対する種類iの鉄含有原料の配合比率[質量%]である。
【0104】
上記式(5)における、加重平均値Rsav,融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRは、上記式(4)における加重平均値Rsav,融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRと、それぞれ同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0105】
ばらつきσRsは、各鉄含有原料の配合量や鉄含有原料の種類を変化させることで調整できる。つまり、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となることに加え、ばらつきσRsが10%以下となるように、鉄含有原料の配合を設計することは、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上となることに加えてばらつきσRsが10%以下となるように、鉄含有原料の配合比率及び鉄含有原料の種類を決定することを意味する。
【0106】
鉄含有原料の配合について、加重平均値Rsavが下限値Rsmin以上であることに加え、ばらつきσRsが10%以下であることで、ばらつきσRsが10%を超えるである場合と比較して、さらに、高炉内の通気性が向上しやすくなる。
【0107】
また、本実施形態の配合設計方法では、第1実施形態と同様に、同じ種類の鉄含有原料であっても、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる鉄含有原料(焼結鉱)や、銘柄の異なる鉄含有原料(塊鉱石,ペレット,含炭塊成鉱,フェロコークス)を用いる場合、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる鉄含有原料や銘柄の異なる鉄含有原料毎に、融着開始時還元率Rs及び配合比率MRを設定することが好ましい。この場合、鉄含有原料の実際の高温性状(融着開始時還元率Rs)が、より正確に反映された加重平均値Rsav及びばらつきσRsが求めやすくなる。
【0108】
(高炉の操業方法)
本実施形態の配合設計方法によって配合が設計された複数種類の鉄含有原料は、高炉操業において、高炉に装入されることにより、高炉内で鉄含有原料層を形成する。
【実施例】
【0109】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0110】
高炉原料として用いる鉱石原料について、融着開始時還元率の加重平均値Rsavが異なる複数の配合を設計した。設計した配合の鉱石原料を高炉原料として、内容積3000~5500m3クラスの3つの高炉A~Cでそれぞれ用いた。なお、各高炉において、鉱石原料は、焼結鉱、塊鉱石及びペレットを用いた。
【0111】
(配合設計1)
高炉Aにおいて、高炉原料(鉱石原料)の配合設計を行った。この配合設計を行うに際し、まず、加重平均値Rs
av及び補正通気抵抗指数K2
cоrの相関関係(
図5参照)を用い、補正通気抵抗指数K2
cоrの目標値に対応する下限値Rs
minを特定した。ここで、補正通気抵抗指数K2
cоrの目標値を550[-]としたところ、下限値Rs
minは65[%]となった。
【0112】
加重平均値Rs
avが下限値Rs
min(65%)以上となるように、鉱石原料の配合設計を行った。具体的には、上述した3種類の鉱石原料のうち、融着開始時還元率Rsが低い塊鉱石の配合比率MRを低下させるとともに、配合設計前の焼結鉱よりも融着開始時還元率Rsが高い焼結鉱に変更した。配合設計前の加重平均値Rs
avは、下限値Rs
min(65%)よりも低かったが、配合設計後の加重平均値Rs
avは、下限値Rs
min(65%)よりも高くなった。すなわち、配合設計後の加重平均値Rs
avは、配合設計前の加重平均値Rs
avに対して2~5%だけ上昇した。この配合設計によって、
図9に示すように補正通気抵抗指数K2
cоrが著しく減少した。
図9に示す結果によれば、配合設計によって、高炉の通気性が向上することを確認できた。
【0113】
(配合設計2)
高炉Aにおいて、高炉原料(鉱石原料)の配合設計を行った。この配合設計を行うに際し、まず、加重平均値Rs
av及びコークス比CRの相関関係(
図6参照)を用い、コークス比CRの目標値に対応する下限値Rs
minを特定した。ここで、コークス比CRの目標値を285[kg/t]としたところ、下限値Rs
minは65[%]となった。
【0114】
加重平均値Rsavが下限値Rsmin(65%)以上となるように、鉱石原料の配合設計を行った。具体的には、上述した3種類の鉱石原料のうち、融着開始時還元率Rsが低い塊鉱石の配合比率MRを低下させるとともに、配合設計前の焼結鉱よりも融着開始時還元率Rsが高い焼結鉱に変更した。配合設計前の加重平均値Rsavは、下限値Rsmin(65%)よりも低かったが、配合設計後の加重平均値Rsavは、下限値Rsmin(65%)よりも高くなった。すなわち、配合設計後の加重平均値Rsavは、配合設計前の加重平均値Rsavに対して2~5%だけ上昇した。この配合設計によって、コークス比CRを低下させることができ、このコークス比CRの低下は、高炉内の通気性の向上に起因するものである。
【0115】
(配合設計3)
高炉Cにおいて、高炉原料(鉱石原料)の配合設計を行った。この配合設計を行うに際し、まず、加重平均値Rs
av及び出銑比の相関関係(
図7参照)を用い、出銑比の目標値に対応する下限値Rs
minを特定した。ここで、出銑比の目標値を2.7[-]としたところ、下限値Rs
minは65[%]となった。
【0116】
加重平均値Rsavが下限値Rsmin(65%)以上となるように、鉱石原料の配合設計を行った。具体的には、上述した3種類の鉱石原料のうち、配合設計前の焼結鉱よりも融着開始時還元率Rsが高い焼結鉱に変更するとともに、変更後の焼結鉱の配合比率を増加させた。配合設計前の加重平均値Rsavは、下限値Rsmin(65%)よりも低かったが、配合設計後の加重平均値Rsavは、下限値Rsmin(65%)よりも高くなった。すなわち、配合設計後の加重平均値Rsavは、配合設計前の加重平均値Rsavに対して4~5%だけ上昇した。この配合設計によって、出銑比を上昇させることができ、この出銑比の上昇は、高炉内の通気性の向上に起因するものである。
【0117】
一方、高炉B,Cのそれぞれでは、配合設計後の加重平均値Rs
avが同程度であるにも関わらず、高炉Cよりも高炉Bの方が補正通気抵抗指数K2
cоrが大きい傾向にあった。そこで、高炉B,Cにおける鉱石原料の配合に関し、鉱石原料の融着開始時還元率のばらつきσRsと、補正通気抵抗指数K2
cоrの関係を調べた。結果を
図12に示す。
【0118】
図12に示すように、高炉Cでは、全ての配合について、ばらつきσRsが10%以下であったのに対し、高炉Bでは、大部分の配合について、ばらつきσRsが10%を超えていた。この結果から、加重平均値Rs
avが下限値Rs
min以上であることに加え、ばらつきσRsが10%以下となるように鉱石原料の配合を設計することで、ばらつきσRsが10%を超えるように鉱石原料の配合を設計する場合と比較して、高炉内の通気性がさらに向上しやすいことが理解できた。
【符号の説明】
【0119】
1 高炉
2 装入物
3 コークス層
4 鉄含有原料層
5 融着層
6 融着層と隣り合うコークス層
7 羽口
8 レースウェイ
9 滴下した溶銑
10 炉底
11 下部炉
12 上部炉
13 黒鉛るつぼ
14 鉱石層
15 上部炉ヒーター制御手段
16 下部炉ヒーター制御手段
17 ガス
18 還元後ガス
19 荷重機
20 滴下溶銑受け
21 コークス層
H 上部炉ヒーター
H’ 下部炉ヒーター