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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】薬剤仕分装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/20 20180101AFI20240926BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G16H40/20
A61J3/00 310K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022040983
(22)【出願日】2022-03-16
(62)【分割の表示】P 2020071876の分割
【原出願日】2015-08-20
(65)【公開番号】P2022069588
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2014169815
(32)【優先日】2014-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014230988
(32)【優先日】2014-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】仲達 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉屋 幸久
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-102396(JP,A)
【文献】特開2010-211538(JP,A)
【文献】国際公開第2010/029606(WO,A1)
【文献】特開2003-063654(JP,A)
【文献】国際公開第2011/067897(WO,A1)
【文献】特開2013-215343(JP,A)
【文献】池田 和之,医療機関における医薬品バーコードの活用 今後の課題と展望,月刊自動認識 第26巻 第7号 ,日本,日本工業出版株式会社,2013年06月10日,第11-16頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61J 1/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の薬剤の種類に対応する薬剤識別情報とは異なり当該処理対象の薬剤に割り当てられる一意的識別情報と病棟の識別情報と前記薬剤識別情報とが対応付けられた返却薬剤データを登録する第1処理部と、
少なくとも前記薬剤識別情報又は前記病棟の識別情報について入力される抽出条件を満たす前記返却薬剤データを抽出し、当該抽出された返却薬剤データの前記薬剤識別情報及び前記病棟の識別情報を、当該返却薬剤データの前記一意的識別情報ごとに異なる行に一覧で表示する第2処理部と、
を備える管理システム。
【請求項2】
前記第1処理部は、前記薬剤が収容される収容部から格納部に薬剤を移送するロボットを備える前記管理システムで用いられる前記収容部ごとに前記病棟の識別情報を対応付けて登録する、
請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記第1処理部は、前記薬剤が収容される収容部に対応する前記病棟の識別情報と当該収容部に収容される前記薬剤の一意的識別情報とを対応付けて登録する、
請求項1又は2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記管理システムは、前記収容部に収容される前記薬剤について少なくとも前記薬剤識別情報を認識する第3処理部を更に備え、
前記処理対象の薬剤は、前記第3処理部により前記薬剤識別情報が認識された薬剤であり、
前記第1処理部は、前記第3処理部により認識された前記薬剤の前記薬剤識別情報と、当該薬剤に割り当てられる一意的識別情報と、ユーザ操作に応じて選択される前記病棟の識別情報とを対応付ける、
請求項3に記載の管理システム。
【請求項5】
一又は複数のプロセッサが、
処理対象の薬剤の種類に対応する薬剤識別情報とは異なり当該処理対象の薬剤に割り当てられる一意的識別情報と病棟の識別情報と前記薬剤識別情報とが対応付けられた返却薬剤データを対応付けて登録する第1ステップと、
少なくとも前記薬剤識別情報又は前記病棟の識別情報について入力される抽出条件を満たす前記返却薬剤データを抽出し、当該抽出された返却薬剤データの前記薬剤識別情報及び前記病棟の識別情報を、当該返却薬剤データの前記一意的識別情報ごとに異なる行に一覧で表示する第2ステップと、
を実行する管理方法。
【請求項6】
一又は複数のプロセッサに、
処理対象の薬剤の種類に対応する薬剤識別情報とは異なり当該処理対象の薬剤に割り当てられる一意的識別情報と病棟の識別情報と前記薬剤識別情報とが対応付けられた返却薬剤データを対応付けて登録する第1ステップと、
少なくとも前記薬剤識別情報又は前記病棟の識別情報について入力される抽出条件を満たす前記返却薬剤データを抽出し、当該抽出された返却薬剤データの前記薬剤識別情報及び前記病棟の識別情報を、当該返却薬剤データの前記一意的識別情報ごとに異なる行に一覧で表示する第2ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤仕分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に処方された薬剤が、処方変更等の理由により医療機関内の薬剤処方を管理する部署に返却される場合がある(返品薬剤)。特許文献1には、返品薬剤の処理作業の効率化と、この作業におけるヒューマンエラー防止のための、返品薬剤を自動的に認識して格納する返品薬剤仕分装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-215343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、返品薬剤は、種類、形状、大きさ、使用期限等の性状が種々異なる。しかし、特許文献1に開示されたものを含め、従来の返品薬剤仕分装置では、性状が種々異なる返品薬剤をその後の払出作業の効率等の要因を考慮した高い自由度を確保して格納することについて、特段の考慮が払われていない。より具体的には、性状が種々異なる返品薬剤を、例えば処方情報に応じた自由な払い出しが可能となるように、高い自由度を確保して格納することについて、特段の考慮が払われていない。
【0005】
本発明は、種類、形状、大きさ、使用期限等の性状が種々異なり、かつ非整列状態で供給された薬剤を、自動的に認識して高い自由度を確保して格納することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態1に係る薬剤仕分装置は、
薬剤の大きさを認識する第1の認識部と、
前記薬剤の種類を認識する第2の認識部と、
認識された前記薬剤を格納する格納部と、
前記格納部に格納された薬剤の格納位置および前記薬剤の種類を記憶する記憶部とを備え、
前記記憶部に記憶される格納位置および前記第1の認識部により得られた前記大きさに基づいて、格納される薬剤の格納位置を決定し、第2の認識部により得られた種類と、前記格納位置とを関連付けて前記記憶部に記録する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の薬剤仕分装置によれば、薬剤の向き及び姿勢と、形状、大きさ、種類、使用期限のような性状とを自動的に認識し、例えば処方情報に応じた自由な払い出しが可能であるような、高い自由度を確保して薬剤を格納できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムにおける薬剤返戻制御装置が格納するデータベースのレイアウトを示す図である。(A)は返品薬払出装置在庫用テーブルのレイアウトを示す図である。(B)は返品薬払出装置払出用テーブルのレイアウトを示す図である。(C)は返品薬払出装置回収用テーブルのレイアウトを示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムにおける指示端末に接続するローカルデータベースのレイアウトを示す図である。
図4】返品薬払出装置、及び返品薬払出装置を含む払出ラインシステムの、構成図である。
図5図5(1)は、払出時における、処理の流れを示す図である。図5(2)は、回収時における、処理の流れを示す図である。
図6】本発明の実施の形態1における、払出処理のフローチャートである。
図7図7(a)は、本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムのメイン画面図である。図7(b)は、返品薬管理システムのメイン画面図にて、各種設定ボタンをタッチした際に示されるボタンである。
図8】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの薬剤回収画面図である。
図9】返品薬管理システムの薬品回収処理の対象データを抽出するためのフローチャートである。
図10】返品薬払出装置回収用テーブルにレコードを作成する処理例のフローチャートである。
図11】本発明の実施の形態1における、回収処理のフローチャートである。
図12】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの自動回収設定(パターン設定)画面図である。
図13】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの自動回収設定画面図(一覧図)である。
図14】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの薬品有効期限登録一覧画面図である。
図15】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの薬品有効期限登録画面図である。
図16】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの、各種設定におけるその他設定画面図である。
図17】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの、返却薬品設定画面図である。
図18】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの返却許可設定画面図である。
図19】返却許可設定画面による返却許可設定に基づく処理のフローチャートである。
図20】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの返却トレイ病棟登録画面図である。
図21】本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システムの入出庫照会画面図である。
図22】本発明の実施の形態1に係る払出ラインシステムにより出力される病棟別薬品集計表の図である。
図23】薬品集計表におけるマークを付す処理のフローチャートである。
図24図24(a)は、本発明の実施の形態1に係る払出ラインシステムにより出力される回収リライトカードの図である。図24(b)は、回収リライトカードを出力する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る好適な実施形態を説明する。
【0010】
なお、以下の実施形態の説明では、返品薬管理システム(薬剤仕分装置)に収容される薬剤として、病院等における未使用の返品薬を取り挙げている。ここで、本発明に係る実施形態においては、収容される薬剤は未使用の返品薬に限定されない。つまり、収容される薬剤は、製薬メーカから納入された新しい薬剤を収納箱から取出してランダムに収容したものであってもよい。更に、そのランダムに収容することとは、同一薬品を整列させることなく収容することや、複数種の新たな未使用薬品を同時に収容することなどであってもよい。
【0011】
[実施の形態1]
1.構成
1.1.返品薬管理システム(薬剤仕分装置)の構成
図1は、本発明の実施の形態1に係る返品薬管理システム(薬剤仕分装置)の概略の構成を示す図である。実施の形態1に係る返品薬管理システムは、返品薬払出装置(収容薬払出装置)2、指示端末4、及び薬剤返戻制御装置(薬剤収容制御装置)6により構成される。
【0012】
図1に示す指示端末4は、制御部(プロセッサ)、入力部、表示部、記憶部、外部機器インタフェース部、及び通信インタフェース部を備える。制御部(プロセッサ)は、演算処理及びシステム全体の制御を行う。制御部は、CPU、MPU等のプロセッサを含み、所定のプログラムを実行することにより、後述する機能を実現する。入力部は、装置に対する入力データを生成する若しくは受け取る部位であり、通常、キーボード、マウス、タッチパネル等により構成される。表示部は、プロセッサ(制御部)による処理結果等を表示する部位であり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等により構成される。記憶部は、制御部(プロセッサ)で稼働するプログラムやモデル生成に必要なパラメータデータ等を記憶している。外部機器インタフェース部は、プリンタ等の外部機器とのインタフェースとして動作する部位である。通信インタフェース部は、外部ネットワークと通信するためのインタフェースとして動作する部位である。これらのプロセッサ(制御部)、入力部、表示部、記憶部、外部機器インタフェース部、及び通信インタフェース部は、適切なバスにより相互に接続されている。指示端末4は、デスクトップパソコン、ノートパソコン、ワークステーション、又はタブレット端末のような情報処理装置で構成される。更に、指示端末4は、薬剤に関するデータの記憶部としてのローカルデータベース3を備える。
【0013】
また、薬剤返戻制御装置(薬剤収容制御装置)6は、制御部(プロセッサ)、入力部、表示部、記憶部、外部機器インタフェース部、及び通信インタフェース部を備える。制御部(プロセッサ)は、演算処理及びシステム全体の制御を行う。制御部は、CPU、MPU等のプロセッサを含み、所定のプログラムを実行することにより、後述する機能を実現する。入力部は、装置に対する入力データを生成する若しくは受け取る部位であり、通常、キーボード、マウス、タッチパネル等により構成される。表示部は、プロセッサ(制御部)による処理結果等を表示する部位であり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等により構成される。記憶部は、制御部(プロセッサ)で稼働するプログラムやモデル生成に必要なパラメータデータ等を記憶している。外部機器インタフェース部は、プリンタ等の外部機器とのインタフェースとして動作する部位である。通信インタフェース部は、外部ネットワークと通信するためのインタフェースとして動作する部位である。これらのプロセッサ(制御部)、入力部、表示部、記憶部、外部機器インタフェース部、及び通信インタフェース部は、適切なバスにより相互に接続されている。薬剤返戻制御装置6は、デスクトップパソコン、ノートパソコン、ワークステーション、又はタブレット端末のような情報処理装置で構成される。薬剤返戻制御装置6は、更に、薬剤に関するデータの記憶部としての複数のテーブル7a、7b、7c・・・を格納するデータベース5と接続する。
【0014】
データベース5は、返品薬払出装置在庫用テーブル7a、返品薬払出装置払出用テーブル7b、返品薬払出装置回収用テーブル7c、返品薬払出装置共有設定テーブル、及び、薬品マスタ等(図2参照)の、薬剤関連データテーブルを含む。一方、指示端末4に付属するローカルデータベース3は、返品薬在庫テーブル9等(図3参照)の、薬剤関連データテーブルを含む。
【0015】
返品薬払出装置在庫用テーブル7aは、返品薬払出装置2内に格納される返品薬剤の内容を表すテーブル(データベース)であり、返品薬払出装置2の返却動作時に新規のレコードが発生する。図2(A)に、返品薬払出装置在庫用テーブル7aのレイアウトを示す。
【0016】
返品薬払出装置払出用テーブル7bは、払出動作の対象となる返品薬払出装置2内に存在する返品薬剤及び払出内容を示すテーブル(データベース)であり、返品薬払出装置2の返却動作時に新規のレコードが発生する。図2(B)に、返品薬払出装置払出用テーブル7bのレイアウトを示す。
【0017】
返品薬払出装置回収用テーブル7cは、回収される返品薬払出装置2内に存在する返品薬剤及び回収理由などを示すテーブル(データベース)であり、返品薬払出装置2の回収動作時に新規のレコードが発生する。図2(C)に、返品薬払出装置回収用テーブル7cのレイアウトを示す。
【0018】
なお、本実施形態における「回収」動作は、特定の条件に該当する薬剤を格納部15からまとめて払い出す動作であり、その特定の条件には「有効期限が切れたこと」や「特定の薬種であること」など種々の条件が含まれる。従って、「回収」動作は、処方データに基づいて行われる薬剤の「払出」動作とは明確に異なる動作である。なお、「有効期限」は「使用期限」と言い換えられることがあるが、両語は同義である。
【0019】
薬品マスタは、薬品コードをキー項目(キーフィールド)とし、各薬品の特性データ・属性データを備えるマスタファイルである。なお、本実施形態の薬品マスタは、各病院が採用する薬品についてのマスタファイルであればよい。
【0020】
ローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9は、返品薬払出装置2の格納部15における格納位置(アドレス)などを示すローカルファイルであり、返品薬払出装置2の返却動作時に新規のレコードが発生する。図3に、返品薬在庫テーブル9のレイアウトを示す。
【0021】
格納情報記憶部は、格納部15への薬剤の格納状況を記憶する記憶領域であり、指示端末4の記憶部に含まれてもよいし、薬剤返戻制御装置(薬剤収容制御装置)6の記憶部に含まれてもよい。
【0022】
返品薬払出装置(収容薬払出装置)2は、薬剤返戻制御装置6及び指示端末4と必要なデータを遣り取りしつつ、返品薬管理システム(薬剤仕分装置)に収容された未使用の返品薬剤を、(後でも説明する)認識部14により認識してその認識に従い返品薬剤を自らの(後でも説明する)格納部15に仕分けして格納する。つまり、返品薬払出装置2は認識部14の認識動作に基づき、(返品薬払出装置2への返却日時と連番で構成される)「薬品識別コード」、「返品薬払出装置そのもののユニットの番号」、(個々の薬品に付される)「薬品バーコード」、「有効期限」、「薬品の径と全長」、「薬品の向き及び姿勢」などの薬剤の性状に係るデータを把握し、これらデータに基づいて返品薬管理システムに対して、格納部15における格納位置を検索するように通知する。返品薬管理システムは、返品薬払出装置2からのデータに基づいて、返品薬払出装置2の格納部15における充填位置、即ち、空き位置と置き方を、格納情報記憶部を用いて検索する。
【0023】
返品薬剤の格納部15における空き位置と置き方について説明する。後でも述べるように、格納部15には、鉛直方向に複数の棚が設けられ、各棚には格納トレイが配置される。各棚の格納トレイには複数の列が設けられ、更に、各列は複数の横(方向の)位置を備える。格納トレイは、Sサイズ(の薬剤)用のもの、Mサイズ(の薬剤)用のもの、及びLサイズ(の薬剤)用のものに分類されている。返品薬管理システムは、返品薬払出装置2から返品薬剤のサイズ(のデータ)を受け取ると、返品薬剤がS、M、Lのいずれのサイズであるかを判断し、それに対応した格納トレイを特定する。その上で、返品薬管理システムは、格納情報記憶部を用いて、当該サイズの薬剤を配置できる領域(薬剤間のマージン領域も含む)があるかどうかを見つけようとし(即ち、検索し)、あれば充填位置情報(即ち、(後でも説明する)「棚、列、横位置」のデータ)が決定されることになる。このとき(後で説明する)マスクが設定された位置については、検索の対象外となる。
【0024】
指示端末4は、検索の結果決定した充填位置情報、即ち、(後でも説明する)「棚、列、横位置」データを「薬品識別コード」や「返品薬払出装置そのもののユニットの番号」のデータと共に、返品薬払出装置2に通知する。返品薬払出装置2は、受け取った充填位置情報により、格納部15への返品薬剤の仕分及び格納を行う。
【0025】
格納部15への返品薬剤の仕分及び格納後には、返品薬管理システムは、格納情報記憶部において、充填位置にマスクをかける。これにより、以後、同じ位置に重ねて薬剤が配置(格納)されることは無くなる。このように、格納情報記憶部において、格納トレイの薬剤が配置されている位置ではマスクが設定され、薬剤が(払出等により)存在しない位置ではマスクが外され該位置は配置(充填)可能領域として存在する。以上のように、返品薬管理システムは、配置可能領域の検索に当たっては、配置しようとする薬剤が最も効率的に配置(格納)され得る場所を見つけようとする。よって、格納部15にて無駄な格納スペースが生じることが無い。
【0026】
また、薬剤返戻制御装置6は、返品薬払出装置2から受け取る「薬品バーコード」から薬品コードを抽出し、この薬品コードをキー項目としてデータベース5における薬品マスタを検索して、薬品の種類、名称、区分(冷所保管、抗がん剤、劇薬、等)などのデータを把握する。更に、返品薬払出装置2の格納部15への格納発生を示すデータが、返品薬払出装置2から薬剤返戻制御装置6及び指示端末4に即座に通知されて、薬剤返戻制御装置6は、(後でも説明するように)、返品薬払出装置在庫用テーブル7a(図2(A)参照)と返品薬払出装置払出用テーブル7b(図2(B)参照)にレコードを作成し、指示端末4は、ローカルデータベース3内の返品薬在庫テーブル9(図3参照)にレコードを作成する。このとき、ローカルデータベース3内の返品薬在庫テーブル9には、格納される薬剤に係るデータと格納部15における充填位置に係るデータとが関連付けて格納される。
【0027】
薬剤払出時には、薬剤返戻制御装置6は、払い出す薬剤の条件を指定した払出指示を生成して返品薬払出装置2へ送信する。返品薬払出装置2は、薬剤返戻制御装置6から受信した払出指示に従い払出動作を行う。
【0028】
なお、返品薬払出装置2を含む(後で説明する)払出ラインシステム101(図4参照)全体が、例えば夜間停止しているときでも、返品薬払出装置2の返却動作及びそれに対応する指示端末4の動作だけが稼働していることがある。その場合、ローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9の内容のみ更新されることになる。従って、翌朝、払出ラインシステム101全体が再起動する際には、データベース5に格納されるテーブル(返品薬払出装置在庫用テーブル7a、返品薬払出装置払出用テーブル7b、返品薬払出装置回収用テーブル7c等)と、指示端末4に付属するローカルデータベース3(返品薬在庫テーブル9等)との、同期をとる処理が行われる。
【0029】
返品薬払出装置2と指示端末4、及び、返品薬払出装置2と薬剤返戻制御装置6は、夫々、RS-232C等を介して接続している。また、指示端末4と薬剤返戻制御装置6は、LAN等を介して接続している。
【0030】
1.2.払出ラインシステムの構成
図4上部に示す図は、本実施形態の返品薬払出装置2を含む払出ラインシステム101の全体構成図である。返品薬剤の払出や回収のためのトレイが、払出ラインシステム101内を通過する。払出ラインシステム101は、ユーザの仕様により種々の機器構成が考えられるが、例えば、図4では、供給リフタ103、ボトル払出機105、返品薬払出装置2、ランダム払出機107、特殊払出機109、冷所払出機111、袋詰機113、プリンタユニット115、排出リフタ(リライト付き)117、及び積上リフタ119等により構成されている。
【0031】
供給リフタ103は、払出ラインシステム101を左から右へ流れるトレイを充填する装置である。ボトル払出機105は、輸液バック(生理食塩水)を払い出す装置である。ランダム払出機107は、アンプルを払出す装置である。特殊払出機109は、特殊形状のアンプル(5連アンプルなど)を払出す装置である。冷所払出機111は、冷所保管が必要なアンプル専用の払出装置である。袋詰機113は、この袋詰機113に至るまでに払出された薬品を袋(薬袋)に充填する装置である。プリンタユニット115は、注射箋(処方に基づく、トレイ内に払出された薬品のリスト)や(薬袋や薬自体に添付される)投与対象患者情報を付したラベルをプリントする装置である。ランダム払出機107や特殊払出機109は、新品のアンプル(即ち、非返品薬剤)を払い出す。なお、払出ラインシステム101におけるランダム払出機107や特殊払出機109は、どのような払出機でも構成され得る。
【0032】
払出ラインシステム101は、図4に示すものと異なるように構成されてもよく、例えば、返品薬払出装置2を2台以上、含んでもよい。また、払出ラインシステム101は、カセット式注射薬払出機を含み得る。カセット式注射薬払出機には通常、特定の薬品をその薬品専用のカセットに整列して収容する方式と、特定の薬品をその薬品専用のカセットにランダムに収容する方式とがある。前述のランダム払出機107は、特定の薬品をその薬品専用のカセットにランダムに収容する方式のものである。
【0033】
前記カセット式注射薬払出機は、カセットに詰められたアンプルをそのカセットから払出す装置である。薬剤を格納するカセットは、カセット式注射薬払出機内に差し込まれて保持される。カセットは、カセット式注射薬払出機の縦(鉛直)方向及び水平方向に多数配置される。カセットの内部には、個々のカセットに対応する薬剤が格納される。カセット式注射薬払出機は、薬剤返戻制御装置6や指示端末4から特定の薬剤を払い出す信号を受信すると、その特定の薬剤を格納するカセットからその特定の薬剤を払い出す。
【0034】
なお、上述のカセット式注射薬払出機に仮想上対応する仮想カセット(の概念)が構築されていることがある。後で説明する、返品薬払出装置2の格納部15は、現実のカセットにより構築されるものでは無いが、仮想上若しくは論理上、カセットの概念に従って薬剤を格納することができる。
【0035】
前述の薬品マスタは、薬品(薬品コード)毎に、在庫上限、在庫定数、及び、在庫下限のデータを備えることができる。返品薬払出装置2の格納部15において、個々の薬剤(薬品)は様々な格納位置(格納アドレス)に格納されるが、薬品毎に纏めると、同じ薬品は仮想上、格納部15の備える全体格納領域内に或る領域を備えることになる。この同じ薬品毎の領域を、(個数上の)在庫上限、在庫定数、及び、在庫下限により制約を加えて管理するのが、仮想カセットの考え方である。
【0036】
ここで、「在庫定数」は、その薬品しか置けない仮想上の割り付け領域に対応する個数である。この「在庫定数」は仮想カセットの概念における基本的数値である。「在庫定数」は「最大実装量」と言うことがある。次に、「在庫上限」は、その薬品が格納部15内にて仮想上占有して構わない個数の上限値である。ただし、仮想上その上限値により占有され得る領域には、他の薬品が入り込む可能性がある。更に、「在庫下限」は、薬品残量が僅かであることを外部に通知するための境界値である。「在庫下限」は「充填基準量」と言うことがある。
【0037】
薬品マスタにおける薬品(薬品コード)毎のレコードおいては、在庫上限、在庫定数、及び、在庫下限の全てが設定されてもよいし、いずれも設定されなくてもよい。以上のように、仮想カセットの考え方に従って返品薬払出装置2の格納部15に格納される薬品、及び、カセット式注射薬払出機のカセットに格納される薬品を、以下、「カセット薬品」と称することがある。
【0038】
1.3.返品薬払出装置の構成
図4下部に示す図は、実施の形態1に係る返品薬管理システムにおける返品薬払出装置2の概略のブロック図である。返品薬払出装置2は、未使用の(アンプルやバイアルなどの)返品薬剤を格納する返却動作、格納された返品薬剤を払い出す払出動作、及び、格納された返品薬剤を回収する回収動作を行うことができる。返品薬払出装置2は、受入部12、認識部14、格納部15、及び払出部16を含む。
【0039】
受入部12は、例えば、7個の返却トレイ(図20参照)を受け入れられるように構成されている。返却トレイは、例えば、病院の個々の病棟において使用されなかったアンプルやバイアルなどの返品薬剤を先ず収容するトレイである。認識部14は、薬剤仕分装置内に収容された薬剤を認識する。即ち、認識部14は、個々の返却トレイに乗せられた返品薬剤の向き、姿勢、形状、径及び全長、並びに、薬品コード及び有効期限などのデータを画像処理により認識する。認識部14により認識された返品薬剤は、格納部15に格納される。
【0040】
アンプルやバイアルなどの返品薬剤は、返品薬払出装置2に含まれる第1のロボットの備える第1の吸着ノズル及び第1の吸着パッドに吸着されつつ、第1のロボットによって返却トレイから認識部14まで移送される。更に、それらの返品薬剤は、返品薬払出装置2に含まれる第2のロボットの備える第2の吸着ノズル及び第2の吸着パッドに吸着されつつ、第2のロボットによって認識部14から格納部15まで移送される。第1の吸着ノズル及び第2の吸着ノズルは、真空源から供給される真空により返品薬剤を解放可能に吸着するのであり、先端に夫々ゴム製の第1の吸着パッド及び第2の吸着パッドが取り付けられている。
【0041】
払出部16は、薬剤返戻制御装置6からの処方指示に従って、格納部15に格納された薬剤を、払出ラインシステム101内部を通過するトレイに払い出す。また、払出部16は、格納部15に格納された薬剤を、指示端末4から入力され薬剤返戻制御装置6により生成される回収指示(ダミー処方指示)に従って、払出ラインシステム101内部を通過するトレイへ回収する。
【0042】
2.動作
2.1.返品薬払出装置の返却動作
返品薬払出装置2は、返品薬剤が乗せられた返却トレイを受入部12にて受け入れ、それら返品薬剤を認識部14により認識し、その認識に従い返品薬剤を格納部15に仕分けして格納することで、返品薬剤の返却動作を行う。なお、返品薬管理システムの利用者は返却動作の開始指示を返品薬払出装置2、又は指示端末4のいずれにおいても行うことができるように、返品薬管理システムは構成されている。
【0043】
返品薬払出装置2の受入部12は、アンプルやバイアルなどの返品薬剤が乗せられた、例えば、7個の返却トレイを受け入れる。これら7個の返却トレイの各々は、図20に示すように、受入部12内で積層して一時的に格納される。
【0044】
積層して一時的に格納される7個の返却トレイのうち、最も下部の返却トレイを、NG(No Good)トレイとして機能させることもできる。すなわち、返品薬払出装置2は、返品薬剤として格納部15にそもそも入れる必要が無いと判断されるものを「NG」とし、このNGトレイに移す、という動作をすることもできる。NGトレイに移される対象として、例えば、以下の3種類が挙げられる。
[1]薬品形状が一般的なアンプルやバイアルの形状でないもの
[2]後述の「返却許可設定」画面にて「返却不可薬品」として設定したもの
[3]薬剤返戻制御装置6に接続するデータベースに含まれる薬品マスタに登録されていない薬品であるもの
個々の返品薬剤がこれら[1]~[3]に該当するか否かは、認識部14及び指示端末4の制御部が判定する。特に[2]や[3]に該当するか否かの判定の際には、薬剤返戻制御装置6に接続するデータベースが参照される([2]については後でも説明する。)。なお、最も下部の返却トレイ以外の返却トレイが、NGトレイとして機能してもよい。このとき、最も下部の返却トレイは非NGトレイとして機能してもよい。
【0045】
個々の返却トレイ(NGトレイは除く)に乗せられた返品薬剤は、認識部14において、画像処理により認識される。その際、薬品コードを含むバーコードや、有効期限などのデータが取得される。
【0046】
なお、返却される個々の薬品には「薬品識別コード」が割り振られる。この「薬品識別コード」は、例えば、「返却トレイの返品薬払出装置への返却日時」+「連番」で構成される、一意的識別コードである。
【0047】
返品薬払出装置2は、認識されたデータを薬剤返戻制御装置6及び指示端末4に送信する。送信されたデータに基づいて、薬剤返戻制御装置6は、返品薬払出装置在庫用テーブル7a(図2(A)参照)と返品薬払出装置払出用テーブル7b(図2(B)参照)にレコードを作成し、指示端末4は、ローカルデータベース3内の返品薬在庫テーブル9(図3参照)にレコードを作成する。
【0048】
認識部14により認識された返品薬剤は、格納部15に仕分けされて格納される。格納部15には、鉛直方向に複数の棚が設けられており、各棚には複数の列が設けられている。更に、各列は複数の横(方向の)位置を備える。つまり、格納部15では、(棚、列、横位置)により、薬剤の格納位置(格納アドレス)が一意的に決定される。この(棚、列、横位置)の情報は、「充填棚番号」、「充填列番号」及び「充填横位置」のフィールドとして、ローカルデータベース3である、図3に示す返品薬在庫テーブル9のレコード内に記録される。
【0049】
2.2.返品薬払出装置の払出動作
前述のように、返品薬払出装置2の払出部16は、薬剤返戻制御装置6からの処方指示に従って、格納部15に格納された薬剤を、払出ラインシステム101内部を通過するトレイに払い出す。
【0050】
薬剤返戻制御装置6は、外部システム(例えば、病院総合システム)から処方データを受け付け、返品薬払出装置払出用テーブル7b(図2(B)参照)を参照して、対象の薬品コードを含むレコードが存在する場合優先的にその薬剤を払い出すよう「割り付け処理」を行う。割り付け処理後、薬剤返戻制御装置6は、返品薬払出装置2に対して、薬品コードや払出本数などを含む払出指示データを送る。その他の、返品薬払出装置2に存在しない薬品については、薬剤返戻制御装置6は、払出ラインシステム101上のランダム払出機107や冷所払出機111から払出を行うようにランダム払出機107や冷所払出機111に払出指示データを送る。
【0051】
送られた払出指示データ(薬品コード、本数)を基にして、返品薬払出装置2、更に返品薬管理システムは、ローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9(図3参照)の各レコードにおける、薬品コードを検索して、抽出する薬剤を再決定(再抽出)する。このとき返品薬在庫テーブル9の各レコードの「有効期限」の項目が参照される。これは、後で説明するように、有効期限不明である返品薬及び有効期限の近い返品薬が優先して払い出しされることがあるためである。なお、薬剤返戻制御装置6の割り付け処理後、他の処方指示のキャンセル等が発生する可能性があるため、返品薬払出装置2は再決定(再抽出)を行う。具体的な抽出(払出)作業の際には、「充填棚番号、充填列番号、充填横位置」のフィールドのデータが利用される。
【0052】
ある薬品について、払出の本数よりも格納部15での在庫の本数の方が多い場合、薬剤返戻制御装置6及び返品薬払出装置2は、次のようにして払出の優先順位を決定する。まず、返品薬払出装置在庫用テーブル7aや返品薬在庫テーブル9の「有効期限」が不明である(即ち、「有効期限」に関するデータが空白である)場合、それが優先される。次に、返品薬払出装置在庫用テーブル7aや返品薬在庫テーブル9の「有効期限」が近いものが、「有効期限」の遠いものよりも優先される。返品薬払出装置2が払出ラインシステム101に複数のユニットで組み込まれている場合に、複数の返品薬払出装置2間で有効期限が同じ返品薬剤が存在する、ということも想定される。この場合には、複数の返品薬払出装置2間で(即ち、ユニット間で)、優先順位が決定されていればよい。なお、後でも説明するように、「有効期限」が不明である薬剤が払出の対象とならないことがある。その場合には上述のように「有効期限」の内容による優先度やユニット間での優先度に従って、払出の優先度が決定されればよい。
【0053】
図5(1)は、払出時における、処理の流れを示す図である。図5(1)における締めモニタ86は薬剤返戻制御装置6の機能である。締めモニタ86は、外部システムにより更新される処方データ85を監視する。締めモニタ86は、更新された処方データ85に基づいて、返品薬払出装置払出用テーブル7bのレコードに対して割り付け処理を行う。これにより、薬剤返戻制御装置6は払出指示データ87を生成し、生成された払出指示データ87を受けて、返品薬払出装置2、ランダム払出機107及び冷所払出機111等はアンプルピッキング処理(払出)91を実施し、払出ラインシステム101は集計表89を作成する。
【0054】
図6は、図5(1)に示す、返品薬払出装置2及び返品薬管理システムの払出処理の具体的なフローチャートである。先ず、薬剤返戻制御装置6は、外部システムからの処方データ85を纏めて定期的に処理する(締め処理)(ST41)。薬剤返戻制御装置6は、返品薬払出装置払出用テーブル7bに対象の薬品のレコードが有るか否かチェックし(ST42)、有ればその薬品のレコードに対して割付処理を行う(ST43)。無ければ、薬剤返戻制御装置6は、処方データ85を、返品薬払出装置2以外の払出機(例えば、ランダム払出機107や冷所払出機111)に送信する。なお、締め処理(ST41)は、割付処理(ST43)の直後に行われるように構成されていてもよい。
【0055】
薬剤返戻制御装置6が、返品薬払出装置払出用テーブル7bに対象の薬品のレコードが有ることを確認して(ST42・YES)その薬品のレコードに対して割付処理を行ったら(ST43)、返品薬払出装置2に払出指示データ87を送る(ST44)。一方、返品薬払出装置2は、ローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9から該当薬品コードのレコードを再決定(再抽出)する。このとき、前述のように返品薬在庫テーブル9の各レコードの「有効期限」の項目が参照される(ST45)。決定(抽出)されたデータにより薬剤の「充填棚、充填列、充填横位置」を認識して、返品薬払出装置2は払出を行う(ST46)。
【0056】
返品薬払出装置2の払出を受けて、薬剤返戻制御装置6は、返品薬払出装置払出用テーブルの当該レコードの「払出完了日時(払出完了日付、払出完了時間)」を更新する(ST47)。返品薬管理システムは、返品薬在庫テーブル9の当該レコードの「払出完了日時(払出完了日付、払出完了時間)」を更新する(ST48)。このとき同時に、返品薬管理システムは、返品薬在庫テーブル9の当該レコードの「払出理由」のフィールドを、「払出」を示すデータに設定する。なお、返品薬払出装置2の払出を受けて、返品薬管理システムは、格納情報記憶部において、薬剤が払出により存在しなくなった位置についてはマスクを外す。よって、格納情報記憶部にて該位置は、配置(充填)可能領域となる。
【0057】
2.3.返品薬管理システムの動作
返品薬管理システムの動作について説明する。図7(a)は、実施の形態1に係る返品薬管理システムにおける返品薬管理システムのメイン画面図である。メイン画面を含む返品薬管理システムの操作画面は、指示端末4が表示し動作させる。ユーザは、このメイン画面上で様々な処理(機能)を選択することができる。返品薬管理システムは、ユーザの選択に従った処理を実行する。返品薬管理システムが実行し得る、主たる処理(機能)の例として以下のものが挙げられる。
[1]薬品回収処理
[2]有効期限登録処理
[3]返却許可設定処理
[4]病棟登録処理
[5]各種表示処理
以下、それぞれの処理について、返品薬管理システムの動作を説明する。
【0058】
2.3.1.薬品回収処理
2.3.1.1.薬品回収画面によるもの
薬品回収処理は、(a)薬品回収処理条件の設定、(b)回収対象薬品の抽出、及び、(c)回収実行の順序で行われる。
【0059】
図7(a)に示すメイン画面において、薬品回収ボタン30がタッチ(若しくは、クリック)されると、図8に示す薬品回収画面に移行する。薬品回収画面は、その左部において、回収の抽出条件設定部56を含む。抽出条件設定部56にて、ユーザにより詳細条件が入力され、若しくは、詳細条件に関するチェックボックスがチェックされ((a)薬品回収処理条件の設定)、抽出実行ボタンがクリックされると、指示端末4は、画面の右上部に抽出条件に適合する薬品(のデータ)を表示する。
【0060】
データの抽出及び抽出データの表示は、返品薬払出装置在庫用テーブル7a(若しくはローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9)の各レコード、及び、薬剤返戻制御装置6に接続するデータベース5に含まれる薬品マスタに基づいて行われる。図9を用いて、薬品回収処理の対象データを抽出するための処理を具体的に説明する。
【0061】
指示端末4の制御部は、返品薬払出装置在庫用テーブル7aの各レコードを読み出す(ST02、ST03)。次に、指示端末4の制御部は、抽出条件が、薬品マスタに格納されるデータに関するものか、又は、返品薬払出装置在庫用テーブル7a(若しくは返品薬在庫テーブル9)(の各レコード)に格納されるデータに関するものか、を判断する(ST04)。
【0062】
薬品回収画面で設定された抽出条件が薬品マスタに格納されるデータに関するものである場合、指示端末4の制御部は、返品薬払出装置在庫用テーブル7aの各レコードに含まれる薬品コードをキー項目として薬品マスタを検索する(ST05)。指示端末4の制御部は、検索された薬品マスタの各レコードにおけるフィールドデータ(例えば、薬種フラグなど)の内容が抽出条件に適合すれば、返品薬払出装置在庫用テーブル7aからの抽出・表示を行う(ST06、ST07、ST08、ST09)。
【0063】
例えば、図8の薬品回収画面における抽出条件として「向精神薬」が選択されており、返品薬払出装置在庫用テーブル7aの或るレコードに含まれる薬品コードをキー項目として検索した薬品マスタのレコードの「薬種フラグ」に「1」が設定されているのであれば、指示端末4の制御部は、検索された薬品マスタのレコードにおけるフィールドデータの内容が抽出条件に適合したとして、返品薬払出装置在庫用テーブル7aの当該レコードの抽出表示を行う。
【0064】
一方、薬品回収画面で設定された抽出条件が返品薬払出装置在庫用テーブル7a(若しくは返品薬在庫テーブル9)(の各レコード)に格納されるデータに関するものである場合(例えば、抽出条件が「長期滞留」「有効期限切れ」「有効期限間近」等である場合)、返品薬払出装置在庫用テーブル7a(若しくは返品薬在庫テーブル9)のフィールド(例えば、「有効期限」や「作成日付」などのフィールド)に基づいて抽出・表示が行われる(ST10、ST11、ST12、ST13)((b)回収対象薬品の抽出)。以上の処理を返品薬払出装置在庫用テーブルの全レコードについて行う(ST03、ST14)。
【0065】
図10は、抽出条件が「有効期限間近」であるときの、図9のステップST10における具体的処理を、主として示すフローチャートである。つまり、図10に示すフローチャートは、ローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9の各レコードが、そのレコードにおける「有効期限」項目のデータに基づいて、「有効期限間近」という回収抽出条件に当てはまるか、をチェックする処理を行っている。なお、このフローチャートでは、返品薬払出装置在庫用テーブル7aと、ローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9とは、同期するものとして両データファイルを扱っている。
【0066】
まず、「有効期限間近日数」データが設定され格納される(ST22)。有効期限間近日数」データの設定は、例えば、図7(a)のメイン画面の各種設定ボタンに係る機能の一つにより設定されてもよい。設定されたデータは、例えば、薬剤返戻制御装置6と接続する返品薬払出装置共有設定テーブルに格納されてもよい。次に、ユーザにより、図8に示す薬品回収画面における、回収の抽出条件設定部56の「有効期限間近」のチェックボックスが、選択される。
【0067】
「有効期限間近」のチェックボックスが選択されると、指示端末4の制御部は、返品薬在庫テーブル9の各レコードを順に読み出す(ST24)。返品薬在庫テーブル9のレコード中の「有効期限」のデータ、及び、返品薬払出装置共有設定テーブルに格納される「有効期限間近日数」データを用いて、指示端末4の制御部は、有効期限間近であるか否かの計算(判定)をする(ST26)。有効期限が間近であると計算(判定)すれば、指示端末4の制御部は、抽出・表示を行う(ST27、ST28)。以上の処理をローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9の全レコードについて行う(ST25、ST29)。
【0068】
なお、前に説明した「カセット薬品」を薬品回収の対象から除外する場合には「カセット薬品除外」のチェックボックスにチェックされることになる。また、「上限超過薬品」ボタン55がタッチ(若しくは、クリック)されていると、(仮想)カセットにおける「在庫上限」を超えている薬品のみを薬品回収の対象とすることになる。 また、「払出対象外」のチェックボックスにチェックされると、実装薬(即ち、「カセット薬品」)以外の非実装薬において、返品薬払出装置2によって払出をしない薬剤を、薬品回収の対象とすることになる。これにより、払出ラインシステム101から払出す薬剤と、手動で調剤する薬剤とを明確に仕分けすることができる。
【0069】
次に、(c)回収実行について説明する。図8に示す薬品回収画面における「回収実行」ボタン57がタッチ(若しくは、クリック)されると、指示端末4の制御部は、返品薬払出装置2に対して回収指示を行う。この際、指示端末4の制御部は、返品薬払出装置在庫用テーブル7aを参照しつつ、薬剤返戻制御装置6に接続するデータベース5に含まれる返品薬払出装置回収用テーブル7c(図2(C)参照)へ新規のデータ(レコード)の書き込みを行う。
【0070】
図5(2)は、回収時における、処理の流れを示す図である。図5(2)における回収監査モニタ88は薬剤返戻制御装置6の機能であり、指示端末4が返品薬払出装置回収用テーブル7c(図2(C)参照)へデータの書き込みを新規に行ったか否かを常時監視する。具体的には、回収監査モニタ88は返品薬払出装置回収用テーブル7c内の「回収連番」フィールドがインクリメントされるかどうかを監視している。返品薬払出装置回収用テーブル7cへのデータの新規の書き込み発生により、薬剤返戻制御装置6の回収監査モニタ88は、ダミー処方指示データ(回収データ)90を生成する。生成されたダミー処方指示データ(回収データ)90は、アンプルピッキング処理(回収作業)92を実施するために、薬剤返戻制御装置6から返品薬払出装置2に送信される。
【0071】
ここでの指示データは回収データであり実際の処方データではないので、「ダミー処方指示データ」と称している。ここで「ダミー処方」とは、外部システム(例えば、前記病院総合システム)から送られてくる患者毎の処方とは異なり、前述の各種抽出条件に基づいて行う薬剤の払い出しのためのダミーの払出指示情報であり、通常の処方に基づく払出と同様の動作を返品薬払出装置2にさせるものである。
【0072】
「ダミー処方指示データ」を受けて、返品薬払出装置2は、ダミー処方指示データに含まれる薬品識別コードを基に、ローカルデータベース3内の返品薬在庫テーブル9を参照・検索し、その薬品識別コードを付された薬品の「充填棚番号、充填列番号、充填横番号」を把握し、把握した「充填棚番号、充填列番号、充填横番号」に基づいて、実際の回収作業を行う((c)回収実行)。
【0073】
図11は、図5(2)に示す回収処理の具体的なフローチャートである。先ず、指示端末4は、薬品回収画面上で設定された抽出条件に基づいて、回収対象薬品データを抽出し、抽出した薬品への回収指示を行う(ST61)。回収指示の直後、指示端末4は、返品薬払出装置在庫用テーブル7aを参照して、返品薬払出装置回収用テーブル7cに新規のレコードの書き込みを行う。薬剤返戻制御装置6における回収監査モニタ88は、返品薬払出装置回収用テーブル7cに新規のレコードが作成されたことをチェックする(ST63)と、ダミー処方指示データ(回収データ)90を発行する(ST64)。ダミー処方指示データ(回収データ)90を受けて、返品薬払出装置2は、返品薬在庫テーブル9から、ダミー処方指示データ(回収データ)90における薬品識別コードのレコードを抽出する(ST65)。返品薬払出装置2は、抽出されたデータにより薬剤の「充填棚、充填列、充填横位置」を認識し、認識された「充填棚、充填列、充填横位置」に基づいて回収作業を行う(ST66)。
【0074】
返品薬払出装置2の回収作業を受けて、薬剤返戻制御装置6は、返品薬払出装置在庫用テーブル7aのうち、ダミー処方指示データにおける薬品識別コードを含むレコードの「払出完了日時(払出完了日付、払出完了時間)」を更新する。同時に、薬剤返戻制御装置6は、返品薬払出装置回収用テーブル7cのうち、ダミー処方指示データにおける薬品識別コードを含むレコードの「払出完了日時(払出完了日付、払出完了時間)」を更新する(ST67)。返品薬管理システムは、返品薬在庫テーブル9の当該レコードの「払出完了日時(払出完了日付、払出完了時間)」を更新する(ST68)。このとき同時に返品薬管理システムは、返品薬在庫テーブル9の当該レコードの「払出理由」のフィールドを、「指示回収」を示すデータに設定する。払出時と同様に、返品薬払出装置2の回収を受けて、返品薬管理システムは、格納情報記憶部において、薬剤が回収により存在しなくなった位置についてはマスクを外す。よって、格納情報記憶部にて該位置は、配置(充填)可能領域となる。
【0075】
2.3.1.2.自動回収設定画面によるもの
なお、指示端末4では、前述の「(a)薬品回収処理条件の設定」を別の画面で行うこともできる。図7(a)に示すメイン画面において、各種設定ボタン34がタッチ(若しくは、クリック)されると、図7(b)に示すような、各種設定画面へ分岐するための設定画面ボタン群(34a~34e)が表示される。ここで「自動回収設定」ボタン34aがタッチ(若しくは、クリック)されると、図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面が表示される。この画面は、所定の日時(時刻)や所定の条件充足時に回収作業を行うように、返品薬払出装置2に予め指示を与えておくための画面である。図12に示す画面では、「所定の日時(時刻)」を画面下部で設定するように構成されている。また、「所定の条件充足」とは、例えば、図12に示すように、「ストック棚が満載になった時」や「返却トレイ内の返品薬が全て返却完了となったタイミング」である。この「ストック棚が満載になった時」や「返却トレイ内の返品薬が全て返却完了となったタイミング」は、図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面における棚満載時ボタン58aや返却完了時ボタン58が「オン」されることにより、設定される。
【0076】
図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面においては、画面の上部の自動回収条件設定部56aを介して、詳細条件が入力されることで、若しくは、詳細条件に関するチェックボックスがチェックされることで、薬品回収処理条件の設定が行われる。
【0077】
図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面の自動回収条件設定部56aの「有効期限間近」チェックボックスがチェックされた上で、図7(a)のメイン画面に戻った場合、指示端末4は、返品薬払出装置在庫用テーブル7a内に対象レコードがあると判定すれば、図7(a)のメイン画面のボタン22の表示を「有効期限間近薬品なし」から「有効期限間近薬品あり」に変え、更にボタン22を点滅させる。ここで、「有効期限間近薬品あり」ボタン22がタッチ若しくはクリックされると、抽出条件に適合する薬品(のデータ)が表示された、図8に示す薬品回収画面が表示される。この後、「回収実行」ボタン57がクリックされると、回収指示が実行される。
【0078】
なお、「回収実行」ボタン57による回収指示がなされない場合も、図12の自動回収設定(パターン設定)画面上で設定された自動回収のための条件・日時に基づいて、返品薬払出装置2への回収指示が実行される。
【0079】
図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面の自動回収条件設定部56aの「長期滞留」などのチェックボックスがチェックされた場合においても、上記と同様の処理が実行される。「上限超過薬品」ボタン56a、「カセット薬品除外」のチェックボックス、及び「払出対象外」のチェックボックスについても、図8の薬品回収画面における夫々のボタンやチェックボックスと同様の機能を備える。
【0080】
このように、図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面では、回収作業を行う基準となる、所定の日時(時刻)や所定の条件が設定される。即ち、これら所定の日時(時刻)や所定の条件の充足時に回収作業が行われる。ここで、本実施形態の薬品回収処理が、返品薬払出装置2の格納部15における薬剤の充填率が所定の閾値以上になれば行われる、というように、返品薬管理システムが構成されてもよい。なお、ここでの「充填率」とは、格納部15に格納可能な最大の薬剤数に対する、格納部15に実際に格納されている薬剤数の比率である。
【0081】
図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面の自動回収条件設定部56aには、「返戻指定」のチェックボックスも設けられている。この「返戻指定」のチェックボックスが示すデータは、当該薬剤が返品薬管理(薬剤仕分)の対象であることを示すものである。この「返戻指定」のチェックボックスがチェックされると、データ上、返戻指定された薬品が自動回収の対象となる。データ上、返戻指定されているか否かは、返品薬払出装置在庫用テーブル9の「指定薬品フラグ」フィールドの内容(即ち、「指定薬品フラグ」が設定されていれば、返戻指定の対象である)により判別される。なお、各薬品について「返戻指定」の対象であるか否かの区分に関しては、例えば、別途、指示端末4において、薬品毎の設定画面が設けられてもよい。
【0082】
更に、図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面の自動回収条件設定部56aには、「非搭載薬」のチェックボックスも設けられている。この「非搭載薬」のチェックボックスが示すデータは、当該薬剤が返品薬管理(薬剤仕分)の対象でない(即ち、返品薬管理システム(薬剤仕分装置)に搭載されない)ことを示すものである。非搭載薬には、例えば、特別な傷病手術でのみ用いられるような使用頻度の低い薬剤や、取扱いについて注意すべき薬剤等が含まれる。この「非搭載薬」のチェックボックスがチェックされると、データ上、非搭載薬であると設定された薬品が自動回収の対象となる。データ上、非搭載薬であると設定されているか否かは、返品薬払出装置在庫用テーブル9の「非搭載薬フラグ」フィールドの内容(即ち、「非搭載薬フラグ」が設定されていれば、非搭載薬である)により判別される。なお、各薬品について「非搭載薬」であるか否かの区分に関しても、例えば、別途、指示端末4において、薬品毎の設定画面が設けられてもよい。
【0083】
上述の、「返戻指定」のチェックボックス、及び、「非搭載薬」のチェックボックスは、図8に示す薬品回収画面の左部の抽出条件設定部56に設けられてもよい。
【0084】
返品薬管理システムにおいて、自動回収のための条件・日時(即ち、自動回収パターン)が、複数設けられるようにしてもよい。前述のように、図7(a)に示すメイン画面において、各種設定ボタン34がタッチ(若しくは、クリック)されると、図7(b)に示すような、各種設定画面へ分岐するための設定画面ボタン群(34a~34e)が表示される。「自動回収設定」ボタン34aがタッチ(若しくは、クリック)されると、図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面が表示されるのであるが、ここで、まず、図13に示すような、複数の自動回収のための条件・日時の一覧を示す「自動回収設定」画面が表示されるようにしてもよい。
【0085】
図13に示す自動回収設定画面では、「パターン追加」ボタン150がタッチ(若しくは、クリック)されると、続いて且つ初めて、図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面が表示される。図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面にて薬品回収処理条件が設定されて「登録」ボタンがタッチ(若しくは、クリック)されると、薬品回収処理条件が登録された上で、図13に示す自動回収設定画面に戻る。この戻った際には、登録された薬品回収処理条件が、一覧に含まれて表示される。このように、図13における「パターン追加」ボタン150のタッチ、及び、図12における薬品回収処理条件の設定・登録が複数回行われると、図13に示す自動回収設定画面には、複数の薬品回収処理条件、即ち、自動回収のための条件・日時(自動回収パターン)が、返品薬管理システムにて設定登録された上で、表示される。なお、図13に示す「パターン変更」ボタンは、自動回収パターンを変更するための画面に進むボタンであり、「パターン削除」ボタンは、自動回収パターンを削除するためのボタンである。選択チェック156の欄は薬品回収処理条件を選択するためのチェック欄である。複数の選択チェック156の欄の選択が為されると、選択された薬品回収処理条件が(例えば、AND条件により)組み合わせられて実際の薬品回収処理条件が決定される。なお、複数の薬品回収処理条件に係るデータは、ローカルデータベース3内の、例えば、返品薬払出装置共有設定テーブルに格納されればよい。具体的には、返却処理完了時に薬品回収処理を行うか(即ち、「所定の条件充足」に薬品回収処理を行うか)又はタイマー設定時に薬品回収処理を行うか(即ち、「所定の日時(時刻)」に薬品回収処理を行うか)、などのデータが格納される。
【0086】
以上のように、返品薬管理システムによる薬品回収処理により、不要な返品薬剤や格納に向かない不適切な返品薬剤が、返品薬払出装置2から適切に適時に取り除かれることになる。このことにより、格納部15にて不必要な在庫や無駄な在庫が生じることが防がれる。従って、返品薬払出装置2の払出作業における効率性や確実性(安全性)が高められる。
【0087】
2.3.1.3.薬品回収処理の変形例について
薬品回収処理の変形例について説明する。図20に示す返品薬払出装置2の受入部12は、7個までの返却トレイを受け入れるように構成されている。返品薬払出装置2の受入部12は、8個以上の返却トレイを受け入れるように構成されることもある。
【0088】
ここで、図12に示す自動回収設定(パターン設定)画面における返却完了時ボタン58が「オン」されており、「返却トレイ内の返品薬が全て返却完了となったタイミング」が自動回収を行うタイミングとして設定されているとする。
【0089】
この場合、返品薬管理システムは、7個の返却トレイ(NGトレイが設定されている場合には、6個の返却トレイ)が返却完了した時点で、即座に返品薬払出装置2に対して自動回収の作業を行うように指示するのでは無く、指示端末4の画面上に「自動回収を行いますか」のポップアップ、及び、「はい」「いいえ」のボタンを表示するようにしてもよい。「はい」のボタンが選択されると、返品薬管理システムは、返品薬払出装置2に対して自動回収の作業を行うように指示する。「いいえ」のボタンが選択された場合には、8個目以降の返却トレイ(NGトレイが設定されている場合には、7個以降の返却トレイ)の返却が完了することによって、返品薬管理システムが返品薬払出装置2に対して自動回収の作業を行うように指示する、というように返品薬管理システムが構成されてもよい。
【0090】
2.3.2.有効期限登録処理
2.3.2.1.不明の有効期限を登録する処理
返品薬管理システムが、返品薬払出装置在庫用テーブル7a内に「有効期限」が不明である(即ち、未入力である)レコードがあると判定すれば、図7(a)のメイン画面のボタン28の表示を「有効期限不明薬品なし」から「有効期限不明薬品あり」へ変え、ボタン28を点滅させる。ここで、「有効期限不明薬品あり」ボタン28がタッチ(若しくはクリック)されれば、「有効期限」フィールドが不明である薬品(のデータ)の一覧リストが表示された、図14に示す薬品有効期限登録一覧画面が表示される。なお、前述のように「有効期限」は「使用期限」と言い換えられることがあるが、両語は同義である。
【0091】
図14に示す薬品有効期限登録一覧画面においても、抽出条件設定部62の設定により、一覧リストの表示を絞ることができる。
【0092】
図14に示す薬品有効期限登録一覧画面の一覧リストにおいて、一つの行がタッチ(若しくは、クリック)されると、図15に示す、薬品有効期限登録画面が表示される。この画面では、返品薬払出装置2の認識部14により取得された、タッチされた行に関連する薬品の画像データが表示される。薬品有効期限登録画面にて、当該薬品の画像データに基づいて、ユーザにより有効期限が入力(登録)される。この登録画面は、登録者のID(識別子)を入力するためのフィールドを含み、そのフィールドを介して登録者のIDが同時に入力(登録)されてもよい。なお、個別の薬品識別コードが割り振られる薬品毎に(即ち、薬品識別コード毎に)、ローカルデータベース3内に薬品の画像データが格納される。
【0093】
返品薬管理システムによる有効期限登録処理により、有効期限が認識されなかった薬剤についても、有効期限を追加登録することができる。これにより、返品薬払出装置2内の有効期限管理対象の薬剤数をより増やすことができ、ひいては不用意な在庫を発生させることがなくなり、また、使用し得た薬剤を使用しないまま有効期限切れにするというような無駄を発生させることもなくなる。
【0094】
2.3.2.2.有効期限を再読み取りする処理
なお、図14に示す薬品有効期限登録一覧画面の「再読取」ボタン63は、返品薬払出装置2の格納部15に格納された返品薬剤を、認識部14の画像処理により再び認識させ、これにより有効期限を含むデータを再取得するためのボタンである。具体的には、薬品有効期限登録一覧画面の一覧リストの一つの行をタッチ(若しくは、クリック)しつつ、「再読取」ボタン63をタッチ(若しくは、クリック)することになる。このようにすることにより、返品薬払出装置2は、タッチされた行に示されている薬剤を、格納部15から認識部14に戻し、認識部14に画像処理による認識を再び行わせる。有効期限を含むデータを再取得後、返品薬払出装置2は、再読み取りされた薬剤を再び、格納部15に格納する。このとき、指示端末4は、返品薬在庫テーブル9の再読取フラグのフィールドに対して、再読み取りを行ったことを示すデータを格納する。
【0095】
上述の、指示端末4に表示される薬品有効期限登録一覧画面の「再読取」ボタン63に係る処理により、有効期限が認識されなかった薬剤について、返品薬払出装置2の認識部14により有効期限を再取得させることができる。これにより、返品薬払出装置2内の有効期限管理対象の薬剤数をより増やすことができ、ひいては不用意な在庫を発生させることがなくなり、また、使用し得た薬剤を使用しないまま有効期限切れにするというような無駄を発生させることもなくなる。
【0096】
また、返品薬在庫テーブル9の再読取フラグのフィールドにて、再読み取りを行ったことを示すデータが格納されている薬剤については、返品薬管理システム及び指示端末4は、上述の「再読取」ボタン63に係る処理を行わせない、という制御を行うこともできる。このような制御を行うことにより返品薬管理システムは不必要で無駄な、再読み取り処理(再認識処理)の繰り返しを回避できる。
【0097】
なお、図14に示す薬品有効期限登録一覧画面においては、有効期限データが不正に変更されることを防ぐために、払出又は回収された薬品に関しては一覧リスト上に表示しないことが好ましい。
【0098】
2.3.2.3.使用期限不明薬品払出設定による払出許可処理
図7(a)に示すメイン画面において、各種設定ボタン34がタッチ(若しくは、クリック)されると、図7(b)に示すような、各種設定画面へ分岐するための設定画面ボタン群(34a~34e)が表示される。ここで「その他設定」ボタン34cがタッチ(若しくは、クリック)されると、図16に示すその他設定画面が表示される。図16に示すその他設定画面の「有効期限不明薬払出オン・オフ」ボタン160によって、有効期限不明薬品の払出を行うのか否かを制御することができる。つまり、「有効期限不明薬払出オン・オフ」ボタン160によって有効期限不明薬払出が「オン」の状態にされると、「有効期限不明薬払出がオン状態であること」が指示端末4の記憶部(ローカルデータベース3の、例えば、返品薬払出装置共有設定テーブル)に記憶され、これにより返品薬払出装置在庫用テーブル7aの「有効期限」が不明であるレコードに係る薬剤も、払出処理の対象となる。また、「有効期限不明薬払出オン・オフ」ボタン160によって有効期限不明薬払出が「オフ」の状態にされると、「有効期限不明薬払出がオフ状態であること」が指示端末4の記憶部(ローカルデータベース3の、例えば、返品薬払出装置共有設定テーブル)に記憶され、これにより返品薬払出装置在庫用テーブル7aの「有効期限」が不明であるレコードに係る薬剤は払出処理の対象とはならない。
【0099】
なお、有効期限(使用期限)不明薬品の払出処理における取り扱いについて設定する画面が、更に用意されている。図17は、そのような有効期限(使用期限)不明薬品のうち任意の薬剤の払出処理における取り扱いについて設定する画面である「返却薬品設定」画面である。図7(b)に示す、各種設定画面へ分岐するための設定画面ボタン群(34a~34e)にて、「メンテナンス」ボタン34eがタッチ(若しくは、クリック)され、更に、「返却薬品設定」ボタン(図示せず)がタッチ(若しくは、クリック)されると、図17に示す返却薬品設定画面が表示される。任意の薬剤を指定し、画面左部の「使用期限(有効期限)無効」部において「払出常時許可」ボタン166が選択されると、図16に示す、その他設定画面の「有効期限不明薬払出オン・オフ」ボタン160の状態に関わりなく、且つ、返品薬払出装置在庫用テーブル7aの「有効期限」の状態に関わりなく、返品薬払出装置在庫用テーブル7aにおけるレコードに係る薬剤が払出処理の対象となる。
【0100】
一方で、画面左部の「使用期限(有効期限)無効」部において「払出許可設定対応」ボタン164が選択されると、図16に示す、その他設定画面の「有効期限不明薬払出オン・オフ」ボタン160の状態に適合させて、返品薬払出装置在庫用テーブル7aにおけるレコードに係る薬剤が払出処理の対象となるか否かが決定される。したがって、返却される薬剤に対し、払出対象ではないが、回収対象と設定することが可能になる。
【0101】
このように、有効期限不明薬品を払出処理でどのように扱うかについて、きめ細やかに設定することができる。
【0102】
2.3.3.返却許可設定処理
図7(a)に示すメイン画面において、各種設定ボタン34がタッチ(若しくは、クリック)されると、図7(b)に示すような、各種設定画面へ分岐するための設定画面ボタン群(34a~34e)が表示される。ここで「返却許可設定」ボタン34bがタッチ(若しくは、クリック)されると、図18に示す返却許可設定画面が表示される。この画面は、返品薬払出装置2に返品してよい薬品を設定するための画面である。つまり、図18に示す設定画面では返品してはならない返却不可薬品の条件を設定することで、ユーザの所望の返却処理を実行することができる。より具体的には、この画面は、所定の時間帯において、及び所定の薬品以外の薬品(すなわち、返却不可薬品でない薬品)に対して、返却作業を行うように返品薬払出装置2に予め指示を与えておく画面である。図18に示す画面では、「所定の時間帯」を画面の下部で設定するように構成されている。また、図18に示す画面は、「返却不可薬品」を画面の上部で設定するように構成されている。例えば、「上限超過薬品」のチェックボックスにチェックされていると、(仮想)カセットにおける「在庫上限」を超えている薬品が返却不可の薬品となる。また、「払出対象外」のチェックボックスにチェックされていると、実装薬(即ち、「カセット薬品」)以外の非実装薬において、返品薬払出装置2によって払出をしない薬品が返却不可の薬品となる。
【0103】
画面の下部にて、時間帯が設定されると、その時間帯にのみ返却作業を行うように返品薬払出装置2は指示される。また、画面の上部にて、返却不可薬品が設定されると、返却トレイ内の返却不可薬品をNGトレイに移すように返品薬払出装置2は指示される。
【0104】
図19は、図18に示す返却許可設定画面で設定された返却許可設定に基づく、返却トレイ上の薬剤に対する返却処理のフローチャートである。まず、返却許可設定画面上で設定された開始時刻になると、本処理が開始する(ST81)。返品薬払出装置2の認識部14は、返却トレイ上の薬剤を一つずつ認識する作業を行う(ST82)。返却許可設定画面の上部において、返却不可薬品についての(条件の)設定が為されていなければ(ST84・NO)、返品薬払出装置2は薬剤を格納部15に格納する。これと同時に、指示端末4の制御部は、後の処理(払出処理、回収処理、及び集計処理など)に備えるために、返品薬払出装置在庫用テーブル7a、返品薬払出装置払出用テーブル7b、及び、(ローカルデータベース3の)返品薬在庫テーブル9にて、夫々、新規のレコードを作成する(ST89)。更に、返品薬払出装置2の認識部14は薬剤の認識作業を継続する(ST82)。
【0105】
返却許可設定画面の上部において、返却不可薬品についての(条件の)設定が有れば(ST84・YES)、指示端末4の制御部は、返品薬払出装置2の認識部14により認識されたバーコードに含まれる薬品コードに基づいて、薬品マスタを読み出す(ST85)。指示端末4の制御部が、薬品マスタにおける項目(フィールド)データにて返却不可条件に適合するものがある(ST86・YES)、若しくは、他に返却不可条件がある(ST87・YES)と判別すれば、返品薬払出装置2は、薬剤をNGトレイに移す。これと同時に、指示端末4の制御部は、後の処理(払出処理、回収処理、及び集計処理など)に備えるために、NGフラグを「1」としNGコメントの書き込みを行った上で、返品薬払出装置在庫用テーブル7a、及び、(ローカルデータベース3の)返品薬在庫テーブル9にて、夫々、レコードを作成する(ST90)。
【0106】
一方で、指示端末4の制御部が、薬品マスタにおける項目(フィールド)データにて返却不可条件に適合するものが無く(ST86・NO)、且つ、他にも返却不可条件が無い(ST87・NO)と判別すれば、返品薬払出装置2は薬剤を格納部15に格納する。これと同時に、指示端末4の制御部は、後の処理(払出処理、回収処理、及び集計処理など)に備えるために、返品薬払出装置在庫用テーブル7a、返品薬払出装置払出用テーブル7b、及び、(ローカルデータベース3の)返品薬在庫テーブル9にて、夫々、新規のレコードを作成する(ST89)。更に、返品薬払出装置2の認識部14は、薬剤の認識作業を継続する(ST82)。
【0107】
図19に示すフローチャートに係る処理は、認識部14の認識対象の薬剤が無くなれば(ST83・YES)、終了する(ST91)。また、図18で設定される終了時刻にて(ST88・YES)、処理が終了する(ST91)。
【0108】
返品薬管理システムによる返却許可設定処理により、本来、返品薬払出装置2に保管されるべき薬剤でない薬剤について、保管管理上、他の保管すべき場所(冷所、劇薬管理庫等)が在ることに対して注意喚起することができるだけでなく、有効期限が間近なものや切れたもの、或いは不明なものまでを返品薬払出装置2内に格納してしまい、本来収容しなければならない薬剤のスペースを潰してしまうというようなことも無くなる。その結果、より効率的で正しい返却処理を実施することができる。
【0109】
2.3.4.病棟登録処理
図7(a)に示すメイン画面において、病棟登録ボタン38がタッチ(若しくは、クリック)されると、図20に示す病棟登録画面が表示される。この画面は、返品薬払出装置2の受入部12内に受け入れられている返却トレイ毎に、返却元の病棟名を登録するための画面である。前述のように、返品薬払出装置2における受入部12は、例えば、最大で7個の返却トレイが受け入れられるように構成されている。即ち、図20の病棟登録画面に示すように、受入部12は、7個のトレイ受入棚を備える。個々のトレイ受入棚に実際に返却トレイが設置されると、それに対応して、図20の病棟登録画面の左部において、返却トレイ画像が表示される。
【0110】
表示された個々の返却トレイに対して、病棟登録画面の右部では、返却トレイの返却元の病棟名を選択の上、登録することができるようになっている。病棟名のデータは、返却される各薬剤のデータと結び付けて、データベース(例えば、返品薬払出装置在庫用テーブル7a)に格納することができる。
【0111】
返品薬管理システムにより返却トレイの病棟名を登録することにより、各病棟別の返品薬剤の状況が迅速かつ明確に把握され得ることになる。特に、病棟名のデータは、統計データとして、具体的な帳票等の作成に利用することができる。
【0112】
2.3.5.各種表示処理
図7(a)に示すメイン画面では、様々な各種情報が表示され得る。例えば、画面左部では、返品薬払出装置2の受入部12において、空いている(即ち、実際に返却トレイが設置されていない)トレイ受入棚の数が表示される(図7(a)では、例として「空5」と表示されている。)。また、最下段のNGトレイに薬剤が移されているか否かが表示される(図では、例として「薬品なし」と表示されている。)。
【0113】
また、画面右部では、返品薬払出装置2の格納部15に格納された薬剤の、大きさ別の(即ち、S、M、L別の)構成比率が、グラフによりリアルタムで表示される。ここでの「大きさ別の構成比率」とは、(S、M、Lの)各サイズに対応する棚における、対応サイズを備える薬剤が占有する率である。
【0114】
また、図7(a)に示すメイン画面では、吸着パッド交換メッセージが表示され得る。例えば、薬剤返戻制御装置(薬剤収容制御装置)6の記憶部には、ゴム製の吸着パッド(第1の吸着パッド、第2の吸着パッド)が装着若しくは交換された年月日が、吸着パッドの使用開始日として夫々記憶されている。返品薬管理システム(薬剤仕分装置)は、吸着パッドの使用開始日から所定の期間(例えば、2ヶ月と20日)が経過すれば、指示端末4のメイン画面に「第1の吸着パッド(又は、第2の吸着パッド)を交換すべき3ヶ月が近づいています。」と表示するように構成されている。更に、返品薬管理システム(薬剤仕分装置)は、吸着パッドの使用開始日から所定の期間(例えば、3ヶ月)が経過すれば、指示端末4のメイン画面に「第1の吸着パッド(又は、第2の吸着パッド)を交換すべき3ヶ月が過ぎました。すぐに交換して下さい。」と表示するように構成されている。
【0115】
更に、薬剤返戻制御装置(薬剤収容制御装置)6の記憶部には、吸着パッド(第1の吸着パッド、第2の吸着パッド)の交換日以降の、吸着ノズル及び吸着パッド(第1の吸着ノズル及び第1の吸着パッド、第2の吸着ノズル及び第2の吸着パッド)の稼働回数(即ち、吸着パッドの吸着回数)が夫々記憶されている。返品薬管理システム(薬剤仕分装置)は、吸着パッドの使用開始日からの稼働回数が所定の回数(例えば、27000回)を超えれば、指示端末4のメイン画面に「第1の吸着パッド(又は、第2の吸着パッド)を交換すべき30000回の使用が近づいています。」と表示するように構成されている。更に、返品薬管理システム(薬剤仕分装置)は、吸着パッドの使用開始日からの稼働回数が所定の回数(例えば、30000回)を超えれば、指示端末4のメイン画面に「第1の吸着パッド(又は、第2の吸着パッド)を交換すべき30000回の使用を超えました。すぐに交換して下さい。」と表示するように構成されている。
【0116】
更に、返品薬払出装置(収容薬払出装置)2の認識部14は、吸着パッドの吸引圧力を定期的にモニタする吸引圧力モニタを備えてもよい。そして、吸引圧力モニタがモニタする吸着パッド(第1の吸着パッド、第2の吸着パッド)の吸引圧力が所定値を下回る事態が発生すると、指示端末4のメイン画面に「第1の吸着パッド(又は、第2の吸着パッド)の吸引圧力が低下しています。交換して下さい。」と表示するように、返品薬管理システム(薬剤仕分装置)が構成されてもよい。
【0117】
以上のようなメイン画面における吸着パッド交換メッセージを、表示させるか否かを設定する画面が返品薬管理システム(薬剤仕分装置)にて構築されており、それを指示端末4にて使用できることが好ましい。同様に、吸着パッドを交換すべき所定の使用期間、吸着パッドを交換すべき所定の稼働回数、及び、吸着パッドを交換すべき所定の最低限の吸引圧力値を設定する画面も返品薬管理システム(薬剤仕分装置)にて構築されており、それを指示端末4にて使用できることが好ましい。
【0118】
また、図7(a)に示すメイン画面では、カセット式注射薬払出機、及び、返品薬払出装置2の格納部15における、カセット薬品の在庫状況を「カセット薬品在庫」ボタン21bにより表示している。まず、カセットにおいて、在庫数がゼロであるカセットが少なくとも一つあれば、「欠品あり」と表示される。「欠品あり」に該当するカセットが無くとも、在庫数が充填基準量(在庫下限)より少なく1以上であるカセットが少なくとも一つあれば、「残少あり」と表示される。「欠品あり」に該当するカセットや「残少あり」に該当するカセットが無く、全てのカセットにおいて、在庫数が最大実装量(在庫定数)と充填基準量(在庫下限)の間にあれば、「適正」と表示される。なお、メイン画面において、払出ラインシステム101の中でのカセットにおける在庫情報を表示するようにしてもよい。
【0119】
2.3.6.入出庫履歴表示処理
図7(a)に示すメイン画面において、照会ボタン32がタッチ(若しくは、クリック)され、更に、「入出庫照会」ボタン(図示せず)がタッチ(若しくは、クリック)されると、図21に示す入出庫照会画面(入出庫履歴画面)が表示される。ここで画面左部の「抽出条件」を入力すれば、データベース5及びローカルデータベース3に格納されるデータに基づいて、抽出条件に適合する入庫データ、即ち返却薬剤データの一覧、又は、出庫データ、即ち払出データ及び回収データの一覧が、表示される。このとき、画面右下部に一覧(抽出条件に適合する返却薬剤データの一覧、又は、抽出条件に適合する払出データ及び回収データの一覧)に含まれるデータ件数が表示される。
【0120】
図21に示す入出庫照会画面(入出庫履歴画面)の右部では、出庫データの一覧が表示されている。なお、出庫データの一覧では「払出理由」の項目が表示される。払出理由には、「払出」と「指示回収」とが含まれる。払出理由の表示は、ローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9における「払出理由」のフィールドに格納されるデータに基づいて行われる。なお、払出処理時には、返品薬払出装置払出用テーブル7bから払出指示データ87が生成されるので(図5(1)参照)、そのことを受けて返品薬管理システムは、ローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9における「払出理由」のフィールドに「払出」を示すデータを格納する。一方、回収処理時には、返品薬払出装置回収用テーブル7cから回収データ(ダミー処方データ)90が生成されるので(図5(2)参照)、そのことを受けて返品薬管理システムは、ローカルデータベース3の返品薬在庫テーブル9における「払出理由」のフィールドに「指示回収」を示すデータを格納する。
【0121】
前述のように図21に示す入出庫照会画面(入出庫履歴画面)の右部では、出庫データの一覧が表示されている。表示された一覧リストにおいて、任意の薬品のデータに関する1行がタッチ(若しくは、クリック)されると、返品薬払出装置2の認識部14により取得された、タッチ(若しくは、クリック)された行に関連する薬品の「有効期限(使用期限)」を含む画像データと、返品薬払出装置在庫用テーブル7a内の「有効期限(使用期限)」データとが、表示されている画面(有効期限登録チェック画面)が表示されるようにしてもよい。この有効期限登録チェック画面を利用することにより、返品薬払出装置2において読み取られた有効期限データが正確であるかチェックをすることができる。
【0122】
なお、表示する一覧リストにおいては、既に払出や回収が為された返品薬払出装置2には無い薬品についてのデータが表示されているため、それら薬品に関しても返品薬払出装置2が読み取った有効期限データが正確であるかチェックをすることができる。また、このような有効期限登録チェック画面は、既に払出や回収が為され返品薬払出装置2には無い薬品についてのデータも表示することから、有効期限データが不正に変更されることを防ぐために、少なくとも既に払出がされ返品薬払出装置2には無い薬品について、この画面から有効期限データの変更ができないように構成されていることが望ましい。
【0123】
2.3.7.複数の薬品が割り当てられたバーコードに関する表示と薬品の選択
一つの薬品バーコードに対して、複数の薬品が割り当てられていることがある。その場合、返品薬管理システムは複数の薬品が割り当てられていることを示す画面を、指示端末4に表示することができる。更に、指示端末4の当該画面では、複数の薬品のうち一つの薬品を選択することができる。選択後、返品薬管理システムは、その薬品バーコードに対応する薬品として、選択された薬品を使用することになる。
【0124】
2.3.8.薬品集計表の出力
返品薬管理システムを含む払出ラインシステム101は、ネットワーク接続されたプリンタから帳票出力することができる。図22は帳票の一つである病棟別薬品集計表70を示している。病棟別薬品集計表70は、払出ラインシステム101から払出を行った薬剤について、払出実施日毎に、病棟別に集計を行い出力される帳票である。表内では薬品別に払い出された本数が表示されている。
【0125】
病棟別薬品集計表70では、薬品別に払い出された本数内に、返品薬払出装置2から払い出されたものが含まれていれば、その旨を示すマーク(図22では、星マーク)72が薬品の本数表示の右側に示される。
【0126】
図23は、薬剤返戻制御装置6が出力する払出指示データ87に基づいて、返品薬管理システムを含む払出ラインシステム101が病棟別薬品集計表70を出力する処理のフローチャートである。返品薬管理システムは、払出実行された後の払出指示データ87を順次取り出す(ST102)。順次取り出す払出実行された後の払出指示データ87について、返品薬管理システムは、払出実施日別・病棟別に、払出薬品毎の本数を集計していく。このとき、返品薬払出装置2から払出実行されたものが払出薬品に含まれていれば、返品薬管理システムは、その払出薬品について「返品薬あり」フラグを記憶する(ST104)。払出実行された後の払出指示データ87が終了すれば(ST103・YES)、返品薬管理システムは集計に係る処理を終了する。
【0127】
続いて、返品薬管理システムを含む払出ラインシステム101は、払出実施日別・病棟別に、払出薬品毎の本数を印刷する(ST105)。このとき、払出薬品毎の本数内に返品薬払出装置2から払出された薬品が含まれているならば、即ち、印刷対象の払出薬品について「返品薬あり」フラグが記憶されているならば、返品薬管理システムを含む払出ラインシステム101は、払出薬品の本数データの近傍にマークを印刷する(ST107)。払出薬品の集計データが終了すれば(ST108・YES)、印刷に係る処理は終了する(ST109)。
【0128】
このように、病棟別薬品集計表70において、薬品別に払い出された本数内に返品薬払出装置2から払い出されたものが含まれている場合に、その旨を示すマークが本数表示の右側に示されれば、払出薬品に返品薬剤が含まれていることが明確になる。
【0129】
更に、払出ラインシステム101から払出された薬剤を収集するトレイに対し、払出された薬剤の情報を示す「注射箋」なる箋(紙片)が付加されることがある。この注射箋に表示される薬品情報においても、上記の病棟別薬品集計表70と同様に、返品薬が含まれていることを示すマークを付すことができる。
【0130】
2.3.9.回収リライトカードの出力
返品薬管理システムが回収動作を行った際には、返却トレイに対して回収リライトカード74を付与する。ここでのリライトカードは、文字情報、図形情報、及びバーコード等の情報を、書換装置により表示変更可能なカードであり、ロイコ方式や白濁方式のものが利用可能である。回収リライトカードとして、これらの方式のリライトカードの代わりに、電子ペーパや液晶ディスプレイが用いられてもよい。
【0131】
返品薬管理システムを含む払出ラインシステム101が返却トレイに対して付与する「回収リライトカード」74には、回収条件が表示される。図24(a)は、回収リライトカード74における回収条件の表示例である。
【0132】
返品薬管理システムは、返品薬払出装置回収用テーブル7cを参照して回収条件を把握する。例えば、長期滞留フラグや有効期限間近フラグなどのフィールドが参照される。即ち、図8(又は図12)に示す薬品回収画面にて入力された抽出条件が、回収リライトカード74に表示される。回収リライトカード74は、例えば、払出ラインシステム101における排出リフタ(リライト付き)117において作成することができる。
【0133】
図24(b)は、図24(a)に示す回収リライトカードを出力する処理のフローチャートである。まず、返品薬払出装置2の回収作業により、薬剤返戻制御装置6の制御部は返品薬払出装置回収用テーブル7cに新規のレコードを作成する(ST122)。返品薬管理システムは、当該レコードによって、回収の理由を取得する(ST123)。排出リフタ(リライト付き)117はリライトカードに当該回収の理由を印刷して、回収のためのトレイと共に出力する(ST124)。
【0134】
このように、回収リライトカード74により回収条件が明確に表示されることにより、回収対象の薬品についての処置が即座に把握されることになる。それのみならず、トレイの取り間違いが防止され得るので、回収した後の作業のミスが軽減され、同時に作業効率も向上する。
【符号の説明】
【0135】
2・・・返品薬払出装置、3・・・ローカルデータベース、4・・・指示端末、5・・・データベース、6・・・薬剤返戻制御装置、12・・・受入部、14・・・認識部、15・・・格納部、16・・・払出部、101・・・払出ラインシステム、103・・・供給リフタ、105・・・ボトル払出機、107・・・ランダム払出機、109・・・特殊払出機、111・・・冷所払出機、113・・・袋詰機、115・・・プリンタユニット、117・・・排出リフタ(リライト付き)、119・・・積上リフタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図24