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特許7560754電源システム及び電源システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】電源システム及び電源システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20240926BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20240926BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240926BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J9/06 120
H02M7/48 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022135638
(22)【出願日】2022-08-29
(65)【公開番号】P2024032143
(43)【公開日】2024-03-12
【審査請求日】2024-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】柏原 弘典
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 吉則
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-47656(JP,A)
【文献】特開2019-187107(JP,A)
【文献】特開2013-179813(JP,A)
【文献】特開平5-176461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 9/00-11/00
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する開閉スイッチと、
前記開閉スイッチを制御するスイッチ制御部と、
前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器と、
前記電力変換器と前記開閉スイッチとの間に設けられたインピーダンス素子と、
前記電力系統の異常を検出した場合に、前記開閉スイッチの開放指令を前記スイッチ制御部に出力する異常検出部と、
前記開閉スイッチが開放された場合に、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御する電圧補償制御を行う電力変換器制御部とを備え、
前記電力変換器制御部は、前記負荷の電圧を補償する補償電圧値に対して、前記インピーダンス素子を介して低下する低下電圧値を加算した電圧値を、前記電力変換器の電圧の目標値である補償電圧目標値とする、電源システム。
【請求項2】
前記電力変換器制御部は、前記開放指令の出力に伴って、前記開閉スイッチに流れる電流を0とするように前記電力変換器をフィードバック制御する電流遮断制御を行い、前記電流遮断制御後に、前記電圧補償制御を行う、請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記電力変換器制御部は、前記電流遮断制御後に、前記電圧補償制御に切り替えるとともに、前記インピーダンス素子を介して低下する低下電圧値を加算する、請求項2記載の電源システム。
【請求項4】
前記開閉スイッチに流れる電流を測定し、その測定値を前記電力変換器制御部に出力するスイッチ電流測定部をさらに備え、
前記電力変換器制御部は、前記電流遮断制御において、前記開閉スイッチに流れる電流を0とする指令値と前記測定値との偏差に基づいて前記電力変換器を比例制御する、請求項2記載の電源システム。
【請求項5】
前記電力変換器制御部は、前記電流遮断制御において、前記開閉スイッチに流れる電流を0とするように、前記電力変換器における電圧の目標値である遮断電圧目標値をし、
前記遮断電圧目標値を所定の範囲内に制限するリミッタ部をさらに備える、請求項4記載の電源システム。
【請求項6】
前記スイッチ制御部は、前記開閉スイッチの開放が完了した場合に、前記電力変換器制御部に対し、前記開閉スイッチの開放完了を示す開放完了信号を出力し、
前記電力変換器制御部は、前記開放完了信号の出力を受けて、前記電流遮断制御から前記電圧補償制御に切り替える、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項7】
前記電力変換器制御部は、前記開放指令が出力されてから所定の時間経過後に、前記電流遮断制御から前記電圧補償制御に切り替える、請求項6に記載の電源システム。
【請求項8】
電力系統の正常時に当該電力系統から負荷に給電し、前記電力系統の異常時に前記電力系統から前記負荷への給電を遮断するととともに、蓄電部から前記負荷に給電する電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、
前記電力系統から前記負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する開閉スイッチと、
前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器と、
前記電力変換器と前記開閉スイッチとの間に設けられたインピーダンス素子と、
前記電力系統の電圧である系統電圧を測定し、その測定値を出力する系統電圧測定部とを備えるものであり、
前記電力系統の異常を検出した場合に、前記負荷の電圧を補償する補償電圧値に対して、前記インピーダンス素子を介して低下する低下電圧値を加算した電圧値を、前記電力変換器の電圧の目標値である補償電圧目標値とすることによって、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御する、電源システムの制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム及び電源システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電源システムでは、電力系統が正常である場合、電力系統から負荷への給電がされている。一方、例えば停電発生といった、電力系統の異常が発生した場合、電力系統から負荷に給電するための電力線に設けられた遮断器を開放することによって、電力系統から負荷への給電を遮断する。遮断器が開放された後、負荷側に接続された分散型電源が負荷に給電することによって、負荷側の電圧である負荷電圧に補償している。
【0003】
この種の電源システムでは、例えば、特許文献1に示すように、負荷電圧を補償する場合に、インバータから負荷への給電を行っている。特許文献1では、停電が発生すると、遮断器である入力リレーが開放されて電力系統と負荷とが遮断される。その後、インバータから出力される出力電圧を維持するように、負荷電圧の位相を基準とした電圧をインバータが出力し、負荷電圧を補償する。その後、系統電圧を復電する場合に、系統電圧の位相を基準とした電圧に切り替えて、入力リレーを投入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-313449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記の電源システムでは、系統電圧を復電する場合に負荷電圧の位相から系統電圧の位相に位相の基準を切り替えると、系統電圧及び負荷電圧が等しくない場合に、負荷電圧を補償する電圧の位相が急変する恐れがある(位相跳躍)。本願発明者らは、負荷電圧を補償しているにもかかわらず、系統電圧及び負荷電圧が等しくない場合がなぜ生じるのかを鋭意検討した。その結果、例えばリアクトルといったインピーダンス素子が電力線とインバータとの間に接続されており、そのインピーダンス素子の電圧の低下分に原因があることを初めて見出した。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、負荷電圧を補償する場合に、インピーダンス素子の電圧の低下分を負荷電圧に補償することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る電源システムは、電力系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する開閉スイッチと、前記開閉スイッチを制御するスイッチ制御部と、前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器と、前記電力変換器と前記開閉スイッチとの間に設けられたインピーダンス素子と、前記電力系統の異常を検出した場合に、前記開閉スイッチの開放指令を前記スイッチ制御部に出力する異常検出部と、前記開閉スイッチが開放された場合に、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御する電圧補償制御を行う電力変換器制御部とを備え、前記電力変換器制御部は、前記負荷の電圧を補償する補償電圧値に対して、前記インピーダンス素子を介して低下する低下電圧値を加算した電圧値を、前記電力変換器の電圧の目標値である補償電圧目標値とするものである。
【0008】
このような電源システムであれば、電力変換器制御部が電圧補償制御を行う際に、負荷の電圧を補償する補償電圧値と、インピーダンス素子を介して低下する低下電圧値とを加算するので、インピーダンス素子の電圧の低下分を負荷電圧に補償することができる。その結果、系統電圧及び負荷電圧が等しくなるので、系統電圧が復電する場合に負荷電圧の位相を系統電圧の位相に切り替える必要なく、開閉スイッチを投入することができるとともに、位相跳躍を防止することができる。
【0009】
前記電力変換器制御部は、前記開放指令の出力に伴って、前記開閉スイッチに流れる電流を0とするように前記電力変換器をフィードバック制御する電流遮断制御を行い、前記電流遮断制御後に、前記電圧補償制御を行うことが好ましい。
【0010】
このような電源システムであれば、電流遮断制御では、電力変換器制御部によって制御された電力変換器が、開閉に流れる電流を0とするように電力線への給電を行う。また、電圧補償制御では、電力変換器制御部によって制御された電力変換器が、負荷の電圧を補償するように電力線への給電を行う。すなわち、開閉スイッチの開放を補助するための給電を行う装置、及び、負荷の電圧を補償するための給電を行う装置が、電力変換器によって共通になるので、電源システムの構成を簡単にすることができる。
また、電力変換器制御部は、開閉スイッチに流れる電流を0とするように電力変換器をフィードバック制御するので、開閉スイッチに流れる電流の電流ゼロ点が強制的に形成される。したがって、電流ゼロ点が形成された場合に開閉スイッチを開放するので、開閉スイッチをより速く開放することができ、電力系統から負荷をより速く遮断することができる。
【0011】
前記電力変換器制御部は、前記電流遮断制御後に、前記電圧補償制御に切り替えるとともに、前記インピーダンス素子を介して低下する低下電圧値を加算することが望ましい。
電力変換器制御部が電流遮断制御を行う場合には、電力変換器制御部は、開閉スイッチに流れる電流を0とする電圧指令値を出力する。電流遮断制御において、低下電圧値を電圧指令値に加算してしまうと、本来、電圧指令値によって出力される電力変換器からの交流電力との間に差が生じ、開閉スイッチに流れる電流が0ではなくなってしまう。その結果、開閉スイッチに流れる電流の電流ゼロ点がより遅く形成されてしまう。そこで、本発明の電力変換器制御部は、電圧補償制御に移行した後に低下電圧値を加算する構成とすることで、電流遮断制御の場合に、開閉スイッチに流れる電流の電流ゼロ点をより速く形成することができる。
【0012】
前記開閉スイッチに流れる電流を測定し、その測定値を前記電力変換器制御部に出力するスイッチ電流測定部をさらに備え、前記電力変換器制御部は、前記電流遮断制御において、前記開閉スイッチに流れる電流を0とする指令値と前記測定値との偏差に基づいて前記電力変換器を比例制御することが挙げられる。
このような構成であれば、開放完了信号の出力によって、電力系統から負荷が完全に遮断された状態となり、この状態において、電力変換器制御部は、電流遮断制御から電圧補償制御へと切り替えることとなる。そして、電力変換器制御部が電圧補償制御を行い、電力変換器が負荷へと給電をするので、負荷の電圧を確実に補償することができる。
【0013】
前記電力変換器制御部は、前記開閉スイッチに流れる電流を0とするように、前記電力変換器における電圧の目標値である遮断電圧目標値を算出し、前記遮断電圧目標値を所定の範囲内に制限するリミッタ部をさらに備えることが挙げられる。
この電力変換器制御部であれば、リミッタ部が遮断電圧目標値を所定の範囲内に制限するので、電力変換器から電力線へと給電する場合に、電力線に過大な電力を供給することを防ぐことができ、電力変換器の過電流を防止することができる。
【0014】
前記スイッチ制御部は、前記開閉スイッチの開放が完了した場合に、前記電力変換器制御部に対し、前記開閉スイッチの開放完了を示す開放完了信号を出力し、前記電力変換器制御部は、前記開放完了信号の出力を受けて、前記電流遮断制御から前記電圧補償制御に切り替えることが望ましい。
このような構成であれば、開放完了信号の出力によって、電力系統から負荷が完全に遮断された状態となり、この状態において、電力変換器制御部は、電流遮断制御から電圧補償制御へと切り替えることとなる。そして、電力変換器制御部が電圧補償制御を行い、電力変換器が負荷へと給電をするので、電力変換器は、負荷電圧を確実に補償することができる。
【0015】
前記電力変換器制御部は、前記開放指令が出力されてから所定の時間経過後に、前記電流遮断制御から前記電圧補償制御に切り替えることが挙げられる。
このような構成であれば、開放指令が出力されてから所定の時間経過後に電圧補償制御に切り替えるので、スイッチ制御部による開放完了信号に不具合が生じた場合であっても、確実に電圧補償制御を開始することができる。例えば、スイッチ制御部が故障して開放完了信号が出力されない場合、又は、開放完了信号が出力されて電力変換器制御部へ到達するまでに遅れが生じた場合でも、電力変換器制御部は、開放指令が出力されてから所定の時間経過後に、電流遮断制御から電圧補償制御に切り替えることができる。
【0016】
また、本発明に係る電源システムの制御方法としては、電力系統の正常時に当該電力系統から負荷に給電し、前記電力系統の異常時に前記電力系統から前記負荷への給電を遮断するととともに、蓄電部から前記負荷に給電する電源システムの制御方法であって、前記電源システムは、電力系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する開閉スイッチと、前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器と、前記電力変換器と前記開閉スイッチとの間に設けられたインピーダンス素子と、前記電力系統の電圧である系統電圧を測定し、その測定値を出力する系統電圧測定部とを備えるものであり、前記電力系統の異常を検出した場合に、前記負荷の電圧を補償する補償電圧値に対して、前記インピーダンス素子を介して低下する低下電圧値を加算した電圧値を、前記電力変換器の電圧の目標値である補償電圧目標値とすることによって、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、負荷電圧を補償する場合に、インピーダンス素子の電圧の低下分を負荷電圧に補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態における電源システムの構成を示す模式図である。
図2】同実施形態における制御ブロックを示す模式図である。
図3】同実施形態におけるリミッタ部の条件を示す模式図である。
図4】同実施形態における電流遮断制御及び電圧補償制御を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る電源システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し、又は、誇張して模式的に描かれている場合がある。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0020】
<1.装置構成>
本実施形態における電源システム100は、図1に示すように、電力系統10と負荷20との間に設けられ、三相回路を構成するものである。この電源システム100は、電力系統10の正常時に電力系統10から負荷20に給電し、電力系統10の短絡事故又は停電等により生じる電力系統10の異常時に電力系統10から負荷20への給電を遮断して、蓄電部4から負荷20に給電する。なお、本実施形態における電源システム100は、三相回路であるが、一相であってもよく、相の数は特に限定されない。
【0021】
具体的に電源システム100は、電力系統10から負荷20への給電を開閉によって切り替える開閉スイッチ3と、蓄電部4の直流電力を交流電力に変換して電力線L1に給電する電力変換器5と、電力変換器5と開閉スイッチ3との間に設けられるインピーダンス素子6と、電源システム100に生じる電圧を測定する電圧測定部7と、電源システム100に流れる電流を測定する電流測定部8と、開閉スイッチ3及び電力変換器5を制御する制御装置9とを備える。
【0022】
開閉スイッチ3は、電力系統10から負荷20に給電するための電力線L1に設けられ、電力線L1の開閉を切り替えるものである。本実施形態において、開閉スイッチ3は、例えば機械式スイッチであり、端子間の接続及び切断を機械的な動作で切り替えることによって、電力系統10から負荷20への給電の供給及び遮断を切り替える。なお、開閉スイッチ3は、半導体スイッチ又はサイリスタスイッチであってもよい。また、開閉スイッチ3は、電力系統10の異常が発生した場合、電力系統10から負荷20への給電をより速く遮断するために、電力系統10よりも負荷20側に設けられることが好ましいが、これに限定されない。
【0023】
蓄電部4は、例えば、二次電池(蓄電池)などの電力貯蔵装置(蓄電デバイス)である。この蓄電部4は、直流電力を貯蔵しており、電力系統10の異常が検出された場合、蓄電部4に貯蔵された直流電力は、電力変換器5へと給電される。
【0024】
電力変換器5は、注入トランスTを介して電力線L1に接続され、蓄電部4の直流電力を交流電力に変換して電力線L1に給電するものであり、例えばインバータである。電力変換器5は、図1に示すように、電力線L1において、開閉スイッチ3と並列に接続されている。
【0025】
インピーダンス素子6は、電力変換器5から出力された交流電力を安定化させるものである。具体的にインピーダンス素子6は、例えば連系リアクトル61であり、図1に示すように、電力変換器5の出力側に直列に接続される。なお、本実施形態では、図1に示すように、連系リアクトル61で生じる電圧を安定化させるために、コンデンサ62が連系リアクトル61の出力側に並列に接続されている。
【0026】
電圧測定部7は、電源システム100に生じる電圧を測定し、その測定値を制御装置9に出力するものである。具体的に電圧測定部7は、電力系統10の電圧である系統電圧を測定する系統電圧測定部71と、負荷20の電圧である負荷電圧を測定する負荷電圧測定部72とを備える。系統電圧測定部71は、図1に示すように、開閉スイッチ3よりも電力系統10側の電力線L1に接続されており、系統電圧をより速く測定することができるように構成される。負荷電圧測定部72は、図1に示すように、開閉スイッチ3よりも負荷20側の電力線L1に接続されている。
【0027】
電流測定部8は、電源システム100に流れる電流を測定し、その測定値Iを制御装置9に出力するものである。電流測定部8は、開閉スイッチ3に流れる電流を測定し、その測定値Iを制御装置9に出力するスイッチ電流測定部81を備える。スイッチ電流測定部81は、図1に示すように、電力変換器5と電力線L1との接続点の間に設けられる。さらに、電流測定部8は、インピーダンス素子6から流れる電流を測定し、その測定値Iinvを制御装置9に出力するインピーダンス電流測定部82を備える。インピーダンス電流測定部82は、インピーダンス素子6の出力側と注入トランスTとの間に設けられ、本実施形態では、連系リアクトル61の出力側から流れた電流を測定している。
【0028】
制御装置9は、電力系統10の異常が発生した場合に、開閉スイッチ3及び電力変換器5を制御するものである。制御装置9は、電力系統10の異常を検出する異常検出部91と、系統電圧及び負荷電圧を比較して系統電圧の復電を判断する比較判断部92と、開閉スイッチ3を制御するスイッチ制御部93と、電力変換器5を制御する電力変換器制御部94とを備える。
【0029】
異常検出部91は、電力系統10の異常を検出した場合に、開閉スイッチ3を開放させる開放指令Cを出力するものである。本実施形態において異常検出部91は、系統電圧測定部71が測定した電圧に基づいて、電力系統10の異常を検出する。具体的に異常検出部91は、複数サイクルに亘って系統電圧が整定値未満となった場合に、電力系統10の異常と判断する。なお、本実施形態の整定値は、瞬低又は停電を検出するための電圧値である。
【0030】
比較判断部92は、系統電圧及び負荷電圧を比較して、両者が等しいと判断した場合に、スイッチ制御部93に対し、開閉スイッチ3を投入する投入信号を出力するとともに、電力変換器制御部94に対し、電力変換器5を停止する停止信号を出力するものである。具体的に比較判断部92は、系統電圧測定部71が測定した系統電圧の位相と負荷電圧測定部72が測定した負荷電圧の位相とを比較し、両者の位相が等しい場合に、投入信号及び停止信号を出力する。
【0031】
スイッチ制御部93は、開閉スイッチ3のオンとオフとを切り替える制御を行うものである。本実施形態において、スイッチ制御部93は、異常検出部91によって出力された開放指令Cを受けて、開閉スイッチ3を開放する制御を行う。開閉スイッチ3の開放が完了した場合、スイッチ制御部93は、電力変換器制御部94に対し、開閉スイッチ3の開放完了を示す開放完了信号Sを出力する。
【0032】
そして、電力変換器制御部94は、異常検出部91が出力した開放指令Cに伴って、開閉スイッチ3に流れる電流を0とするように電力変換器5をフィードバック制御する電流遮断制御を行い、電流遮断制御の後に、負荷20の電圧を補償するように電力変換器5を制御する電圧補償制御を行うものである。具体的に電力変換器制御部94は、図2に示すように、電流遮断制御を行う電流遮断制御部941と、電流遮断制御部941による制御を所定の範囲内に制限するリミッタ部942と、電圧補償制御を行う電圧補償制御部943と、電流遮断制御部941又は電圧補償制御部943による出力に基づいて、電力変換器5を制御する出力制御部944と、インピーダンス素子6による低下電圧値Vを補償するインピーダンス補償部945とを備える。
【0033】
電流遮断制御部941は、開放指令Cの出力に伴って、開閉スイッチ3に流れる電流を0とするように電力変換器5をフィードバック制御する電流遮断制御を行うものである。本実施形態において、電流遮断制御部941は、図2に示すように、スイッチ電流測定部81が出力した測定値Iと、開閉スイッチ3に流れる電流を0とする指令値Irefとの偏差ΔIに基づいて、比例ゲインKpを用いた比例制御を行い、電力変換器5における電圧の目標値である遮断電圧目標値Voutを算出する。なお、本実施形態において、比例ゲインKpは、(1)式を満足している。
Kp≧V/S(V:定格電圧、S:電力変換器5の定格容量) (1)
【0034】
リミッタ部942は、電流遮断制御部941に備えられ、遮断電圧目標値Voutを、(2)式で表される最大電圧Vmaxの範囲内となるように制御するものである。リミッタ部942は、遮断電圧目標値Voutと最大電圧Vmaxとを比較し、遮断電圧目標値Voutが最大電圧Vmaxの範囲内の場合、リミッタ部942は、遮断電圧目標値Voutを出力制御部944に出力する。一方、遮断電圧目標値Voutが最大電圧Vmaxの範囲を超えている場合、リミッタ部942は、最大電圧Vmaxを出力制御部944に出力する。なお、インピーダンスZは、図3に示すように、連系リアクトル61、コンデンサ62、及び、注入トランスTによって構成される。
max=Imax×Z(Imax:最大電流、Z:インピーダンス) (2)
【0035】
電圧補償制御部943は、電流遮断制御によって低下した負荷20の電圧を補償するように電力変換器5を制御するものである。具体的には、図2に示すように、電圧補償制御部943は、系統電圧測定部71が測定した系統電圧の測定値Vと負荷電圧を定格電圧とする指令値Vrefとの偏差に基づいて、負荷電圧を補償する補償電圧値を算出する。
【0036】
出力制御部944は、電流遮断制御部941又は電圧補償制御部943による出力を受けて、電力変換器5に所定の電圧が生じるように制御するものである。具体的に出力制御部944は、電流遮断制御部941が算出した遮断電圧目標値Vout又は最大電圧Vmaxに基づいて、電力変換器5を制御する。また、出力制御部944は、電圧補償制御部943が算出した補償電圧値に基づいて、電力変換器5を制御する。
【0037】
さらに、出力制御部944は、開放完了信号Sを受けて、電流遮断制御から電圧補償制御へと切り替える切替信号を電流遮断制御部941及び電圧補償制御部943に出力する。一方、出力制御部944が開放完了信号Sを受けるよりも先に、開放指令Cの出力から所定の時間が経過した場合、出力制御部944は、切替信号を電流遮断制御部941及び電圧補償制御部943に出力する。なお、ここで言う所定の時間とは、例えば開放指令Cが出力されてから2msの時間を言うが、この値に限られない。
【0038】
インピーダンス補償部945は、負荷20の電圧を補償する補償電圧値に対して、インピーダンス素子6を介して低下する低下電圧値Vを加算した電圧値を、電力変換器5の電圧の目標値である補償電圧目標値VTとするものである。具体的にインピーダンス補償部945は、インピーダンス電流測定部82が出力した測定値Iinvから低下電圧値Vを算出し、低下電圧値Vを補償電圧値に加算した電圧値を、補償電圧目標値VTとするものである。
【0039】
<2.電源システムの制御動作>
次に電源システム100の制御動作について説明する。
【0040】
(1)電力系統10の正常時
系統電圧測定部71は、電力系統10の電圧を常時測定しており、その測定した電圧を異常検出部91に入力している。異常検出部91は、系統電圧測定部71が測定した電圧と予め定められた整定値とを比較する。
【0041】
電力系統10が正常の場合には、系統電圧測定部71が測定した電圧は整定値以上であり、開閉スイッチ3は閉じた状態となる。これにより、電力系統10から負荷20に交流電力が供給される。
【0042】
(2)電力系統10の異常時
電力系統10が異常の場合には、系統電圧測定部71が測定した電圧は整定値未満となる。このとき、異常検出部91は、開閉スイッチ3を開放するように指令する開放指令Cを制御装置9に出力する。
【0043】
開放指令Cに伴って、電力変換器制御部94が、電力変換器5に対して電流遮断制御を行い、電力変換器5は、蓄電部4からの直流電力を交流電力に変換して、電力線L1に給電する。この交流電力は、開閉スイッチ3に流れる電流を0とするように給電されるので、開閉スイッチ3に流れる電流では、強制的に電流ゼロ点が形成される。電流ゼロ点が形成されると、スイッチ制御部93は、図示しない駆動回路を介して、開閉スイッチ3を開放させる。
【0044】
開閉スイッチ3が開放されて、スイッチ制御部93が開放完了信号Sを出力すると、出力制御部944は、電流遮断制御から電圧補償制御へと切り替える切替信号を電流遮断制御部941及び電圧補償制御部943に対し出力する。なお、開放完了信号Sが出力されるよりも前に、開放指令Cの出力から所定の時間が経過した場合、出力制御部944は、切替信号を強制的に出力する。
【0045】
出力制御部944からの切替信号を受けて、電流遮断制御部941は、電流遮断制御を終了する。一方、電圧補償制御部943は、負荷電圧を補償する補償電圧値を出力するとともに、インピーダンス補償部945は、インピーダンス素子6を介して低下する低下電圧値Vを補償電圧値に加算して、補償電圧目標値VTを出力する。出力された補償電圧目標値VTに基づいて、電力変換器5は、負荷電圧を補償するように制御される。
【0046】
図4に示すように、系統電圧が回復した場合(時刻t1)、比較判断部92は、系統電圧の位相と負荷電圧の位相との比較を開始する。負荷電圧と系統電圧が等しいと比較判断部92が判断した場合、比較判断部92は、スイッチ制御部93に対して、開閉スイッチ3を投入する投入信号を出力する(時刻t2)。また、比較判断部92は、電力変換器制御部94に対して、電力変換器5を停止する停止信号を出力する。本実施形態における電源システム100は、負荷電圧の位相を系統電圧の位相に切り替える必要がないので、電力変換器5に流れる電流が徐々に低下して、電力変換器5が停止する(時刻t3)。
【0047】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、負荷電圧を補償する補償電圧値と、インピーダンス素子を介して低下する低下電圧値Vとを加算するので、インピーダンス素子6の電圧の低下分を負荷電圧に補償することができる。その結果、系統電圧が復電する場合に、系統電圧と負荷電圧とが等しくなるので、負荷電圧の位相を系統電圧の位相に切り替えずに開閉スイッチ3を投入することができるとともに、位相跳躍を防止することができる。
【0048】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0049】
本実施形態において、インピーダンス補償部945は、電圧補償制御部943による補償電圧値の出力を受けて、低下電圧値Vを補償電圧値に加算した電圧値を補償電圧目標値としていたが、補償電圧目標値の算出方法はこれに限られない。例えば、インピーダンス補償部945が低下電圧値Vを算出して、系統電圧の測定値Vに加算し、負荷電圧の指令値Vrefとの偏差を算出してもよい。また、インピーダンス補償部945が低下電圧値Vを算出するのと同時に、電圧補償制御部943が、系統電圧の測定値V、及び、負荷電圧の指令値Vrefを算出し、これらに基づいて、補償電圧目標値VTを算出してもよい。
【0050】
本実施形態におけるインピーダンス補償部945は、連系リアクトル61を介した低下電圧値Vを算出するものであったが、連系リアクトル61だけでなく、コンデンサ62及び注入トランスTを介して低下する電圧値を含めて、低下電圧値Vを算出するものであってもよい。このような低下電圧値であれば、連系リアクトル61を介した低下電圧値Vを算出するよりも正確に、系統電圧から低下した電圧分のみを負荷電圧に対して補償することができる。
【0051】
本実施形態における異常検出部91は、系統電圧の変化に基づいて電力系統10の異常を検出するものであったが、異常の検出はこれに限られない。例えば、異常検出部91は、電力系統10における電流又は周波数の変化に基づいて、電力系統10の異常を検出するものであってもよい。これに伴い、異常検出部91の整定値は、電力系統10の電圧値に限られず、電力系統10における電流値又は周波数であってもよい。
【0052】
本実施形態における出力制御部944は、開放完了信号Sの出力よりも先に開放指令Cが出力されてから所定の時間が経過した場合、強制的に電流遮断制御から電圧補償制御に切り替えるものであったが、開放指令Cの出力された時間を始点としなくともよい。例えば、電力系統10の異常を検出した時間、もしくは、電流遮断制御部941が制御を開始した時間、もしくは開閉スイッチ3に流れる電流の測定値Iが0になった時間のいずれかの時間を始点として、その始点とした時間から所定の時間経過後に、出力制御部944が、強制的に電流遮断制御から電圧補償制御に切り替えるものであってもよい。
【0053】
本実施形態において、電力系統10から負荷20への給電は、交流電力としていたが、電力系統10から負荷20への給電は、直流電力としてもよい。
【0054】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
100・・・電源システム
10 ・・・電力系統
20 ・・・負荷
3 ・・・開閉スイッチ
4 ・・・蓄電部
5 ・・・電力変換器
6 ・・・インピーダンス素子
7 ・・・電圧測定部
71 ・・・系統電圧測定部
72 ・・・負荷電圧測定部
8 ・・・電流測定部
81 ・・・スイッチ電流測定部
82 ・・・インピーダンス電流測定部
9 ・・・制御装置
91 ・・・異常検出部
92 ・・・比較判断部
93 ・・・スイッチ制御部
94 ・・・電力変換器制御部
L1 ・・・電力線
C ・・・開放指令
S ・・・開放完了信号
・・・低下電圧値
・・・補償電圧目標値
図1
図2
図3
図4