(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C03C 13/02 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
C03C13/02
(21)【出願番号】P 2022514310
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048604
(87)【国際公開番号】W WO2021205699
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2020071189
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】漆崎 優
(72)【発明者】
【氏名】細川 貴庸
(72)【発明者】
【氏名】野中 貴史
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特許第6468409(JP,B1)
【文献】国際公開第98/16482(WO,A1)
【文献】特開2019-81909(JP,A)
【文献】特開平11-43352(JP,A)
【文献】特開2004-107112(JP,A)
【文献】特表2010-507557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全量に対し、52.0質量%以上57.5質量%以下の範囲のSiO
2と、
23.8質量%以上25.5質量%以下の範囲のB
2O
3と、8.0質量%以上13.0質量%以下の範囲のAl
2O
3と、0質量%以上2.0質量%以下の範囲のMgOと、0質量%以上6.0質量%以下の範囲のCaOと、0.5質量%以上6.5質量%以下の範囲のSrOと、0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲のTiO
2とを含み、
前記B
2O
3の含有率(質量%)に対するAl
2O
3の含有率(質量%)の割合(Al
2O
3/B
2O
3)が、0.35~0.54の範囲にあり、
前記SiO
2の含有率(質量%)SI、前記B
2O
3の含有率(質量%)B、前記MgOの含有率(質量%)M、前記CaOの含有率(質量%)C、前記SrOの含有率(質量%)SR、及び、前記TiO
2の含有率(質量%)Tが下記式(1)を満たすことを特徴とするガラス繊維用ガラス組成物。
6.90≦ 100×(B/SI)
2×{SR/(C+SR)}
2/3×{T/(M+T)}
1/2 ≦12.30 ・・・(1)
【請求項2】
請求項1に記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SI、B、M、C、SR及びTが下記式(2)を満たすことを特徴とするガラス繊維用ガラス組成物。
9.56≦ 100×(B/SI)
2×{SR/(C+SR)}
2/3×{T/(M+T)}
1/2 ≦11.77 ・・・(2)
【請求項3】
請求項2に記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SI、B、M、C、SR及びTが下記式(3)を満たすことを特徴とするガラス繊維用ガラス組成物。
10.00≦ 100×(B/SI)
2×{SR/(C+SR)}
2/3×{T/(M+T)}
1/2 ≦11.35 ・・・(3)
【請求項4】
請求項3に記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SI、B、M、C、SR及びTが下記式(4)を満たすことを特徴とするガラス繊維用ガラス組成物。
10.15≦ 100×(B/SI)
2×{SR/(C+SR)}
2/3×{T/(M+T)}
1/2 ≦10.85 ・・・(4)
【請求項5】
請求項4に記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SI、B、M、C、SR及びTが下記式(5)を満たすことを特徴とするガラス繊維用ガラス組成物。
10.35≦ 100×(B/SI)
2×{SR/(C+SR)}
2/3×{T/(M+T)}
1/2 ≦10.78 ・・・(5)
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維。
【請求項7】
請求項6に記載のガラス繊維を含む、ことを特徴とするガラス繊維織物。
【請求項8】
請求項6に記載のガラス繊維を含む、ことを特徴とするガラス繊維強化樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維用ガラス組成物、当該ガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維、当該ガラス繊維を含むガラス繊維織物、及び、当該ガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、所望の組成を有するガラス繊維用ガラス組成物となるように調合されたガラス原料をガラス溶融炉で溶融して溶融ガラス(ガラス繊維用ガラス組成物の溶融物)とし、該溶融ガラスを数個から数千個のノズルチップを形成したノズルプレートを有する容器(ブッシング)から吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化して繊維状とする(以下、この操作を「紡糸」と言うことがある)ことにより製造されている。前記ブッシングは、例えば、白金等の貴金属により形成されている。
【0003】
従来、ガラス繊維は、樹脂成形品の強度を向上させるために種々の用途で広く用いられおり、該樹脂成形品は、サーバー、スマートフォンやノートパソコン等の電子機器の筐体又は部品に用いられることが増えている。
【0004】
一般に、ガラスは交流電流に対してエネルギーを熱として吸収するので、前記樹脂成形品を前記電子機器の筐体又は部品に用いると、該樹脂成形品が発熱するという問題がある。
【0005】
ここで、ガラスに吸収される誘電損失エネルギーはガラスの成分及び構造により定まる誘電率及び誘電正接に比例し、下記式(A)で表される。
【0006】
W=kfv2×ε1/2×tanδ ・・・(A)
ここで、Wは誘電損失エネルギー、kは定数、fは周波数、v2は電位傾度、εは誘電率、tanδは誘電正接を表す。式(A)から、誘電率及び誘電正接が大きい程、また周波数が高い程、誘電損失が大きくなり、前記樹脂成形品の発熱が大きくなることがわかる。
【0007】
近年、前記電子機器の筐体又は部品に用いられる交流電流の周波数(前記式(A)のf)が高まっていることを受けて、誘電損失エネルギーを低減するために、前記電子機器の筐体又は部品に用いられるガラス繊維に、より低い誘電率及びより低い誘電正接が求められている。特に、1/2乗される誘電率よりも、前記式(A)に与える影響が大きいことから、低い誘電正接が求められている。
【0008】
かかる求めに応じて、本出願人は、低い誘電率及び低い誘電正接を備え、かつ、効率的なガラス繊維化を可能とするために、分相の発生が抑制され、さらに、高温での粘性が低減された、ガラス繊維用ガラス組成物として、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、52.0~59.5質量%の範囲のSiO2と、17.5~25.5質量%の範囲のB2O3と、9.0~14.0質量%の範囲のAl2O3と、0.5~6.0質量%の範囲のSrOと、1.0~5.0質量%の範囲のMgOと、1.0~5.0質量%の範囲のCaOとを含み、F2及びCl2を合計で0.1~3.0質量%の範囲で含む、ガラス繊維用ガラス組成物を提案した(特許文献1参照)。なお、分相とは、単一相のガラスが熱等により、組成の異なるガラス相を形成する相分離現象である。分相が発生した場合には、ガラス繊維の化学的耐久性が低下し、分相の発生が特に顕著な場合には、溶融ガラスの繊維化が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のガラス繊維用ガラス組成物から形成されたガラス繊維は、100個以上のノズルチップを形成したノズルプレートを要するブッシングを備えたガラス溶融炉を用いて工業的に大量生産した場合、紡糸中にガラス繊維の切断が発生し、製造効率が低下するという不都合がある。
【0011】
本発明者らは、前記不都合が起きる理由について、鋭意検討を重ね、紡糸中のガラス繊維の切断が、脈理の発生によるものであることを見出した。ここで、100個未満のノズルチップを形成したノズルプレートを有する小さなブッシングを備えたガラス溶融炉では、ブッシングの大きさに合わせてガラス溶融炉の容積が小さく、ガラス溶融炉内の温度やガラス原材料の揮発量が比較的均一である。一方、100個以上のノズルチップを形成したノズルプレートを要する大きなブッシングを備えたガラス溶融炉を用いる場合には、ブッシングの大きさに合わせてガラス溶融炉の容積も大きいため、ガラス溶融炉内の温度やガラス原材料の揮発量のばらつきが生じることがあり、これらのばらつきに起因して、ガラス組成に偏りが生じる。この偏りによって生まれた異種のガラスが溶融の過程で筋状になり、ガラス中の屈折率の差として現れるものが脈理である。脈理が発生した場合には、溶融ガラスをブッシングから吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばす際に、脈理が発生した部分に組成差があるために粘性差が生まれ、この粘性差が溶融ガラスの延伸を阻害するため、紡糸中のガラス繊維切断が生じ易くなるものと推定される。
【0012】
本発明は、かかる不都合を解消して、低誘電正接を備え、分相の発生が抑制され、高温での粘性が低減され、さらに脈理の発生が低減された、ガラス繊維用ガラス組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該ガラス繊維用ガラス組成物から形成されるガラス繊維、当該ガラス繊維を含むガラス繊維織物、及び、当該ガラス繊維を用いたガラス繊維強化樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、52.0質量%以上57.5質量%以下の範囲のSiO2と、23.8質量%以上25.5質量%以下の範囲のB2O3と、8.0質量%以上13.0質量%以下の範囲のAl2O3と、0質量%以上2.0質量%以下の範囲のMgOと、0質量%以上6.0質量%以下の範囲のCaOと、0.5質量%以上6.5質量%以下の範囲のSrOと、0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲のTiO2とを含み、前記B2O3の含有率(質量%)に対するAl2O3の含有率(質量%)の割合が、0.35~0.54の範囲にあり、前記SiO2の含有率(質量%)SI、前記B2O3の含有率(質量%)B、前記MgOの含有率(質量%)M、前記CaOの含有率(質量%)C、前記SrOの含有率(質量%)SR、及び、前記TiO2の含有率(質量%)Tが下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0014】
6.90≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦12.30 ・・・(1)
本発明のガラス繊維用ガラス組成物によれば、上述の範囲のSiO2、B2O3、Al2O3、MgO、CaO、SrO、及び、TiO2を含み、かつ、B2O3の含有率に対するAl2O3の含有率の割合が上述の範囲であって、上記式(1)を満たす場合に、低誘電正接を備え、分相の発生が抑制され、高温での粘性が低減され、さらに、脈理の発生が低減される。
【0015】
なお、ここで、低誘電正接を備えるとは、誘電正接が、周波数10GHzにおいて0.0018以下であることを意味する。また、高温での粘性が低減されるとは、1000ポイズ温度(溶融ガラスの粘度が1000ポイズ(100Pa・s)となる温度)が、1375℃以下となることを意味する。
【0016】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SI、B、M、C、SR及びTが下記式(2)を満たすことが好ましい。
9.56≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦11.77 ・・・(2)
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(2)を満たすことで、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、より確実に低誘電正接を備え、分相の発生がより確実に抑制され、高温での粘性がより確実に低減され、さらに、脈理の発生がより確実に低減される。
【0017】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SI、B、M、C、SR及びTが下記式(3)を満たすことがさらに好ましい。
【0018】
10.00≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦11.35 ・・・(3)
前記SI、B、M、C、SR及びTが上記式(3)を満たすことで、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、より低い誘電正接を備え、より確実に分相の発生が抑制され、より確実に高温での粘性が低減され、さらに、脈理の発生がより低減される。
【0019】
なお、ここで、より低い誘電正接を備えるとは、誘電正接が、周波数10GHzにおいて0.0017以下であることを意味する。
【0020】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SI、B、M、C、SR及びTが下記式(4)を満たすことが特に好ましい。
【0021】
10.15≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦10.85 ・・・(4)
前記SI、B、M、C、SR及びTが上記式(4)を満たすことで、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、より低い誘電正接をより確実に備え、より確実に分相の発生が抑制され、高温での粘性がより低減され、さらに、より確実に脈理の発生がより低減される。
【0022】
なお、ここで、高温での粘性がより低減されるとは、1000ポイズ温度(溶融ガラスの粘度が1000ポイズ(100Pa・s)となる温度)が、1370℃未満となることを意味する。
【0023】
さらに、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SI、B、M、C、SR及びTが下記式(5)を満たすことが最も好ましい。
【0024】
10.35≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦10.78 ・・・(5)
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(5)を満たすことで、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、より低い誘電正接をより確実に備え、より確実に分相の発生が抑制され、より確実に高温での粘性がより低減され、さらに、より確実に脈理の発生がより低減される。
【0025】
本発明のガラス繊維は、前述の本発明のガラス繊維用ガラス組成物からなる。本発明のガラス繊維は、例えば、前述の本発明のガラス繊維用ガラス組成物を溶融し、得られた溶融物を1~8000個のノズルチップ又は孔を形成したノズルプレートを有するブッシングから吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化して繊維状に形成することで得ることができる。したがって、本発明のガラス繊維は、前述の本発明のガラス繊維用ガラス組成物と同一のガラス組成を備える。
【0026】
本発明のガラス繊維織物は、前述の本発明のガラス繊維を含む。
【0027】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、前述の本発明のガラス繊維を含む。本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、例えば、樹脂(熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂)、ガラス繊維、その他の添加剤を含むガラス繊維強化樹脂組成物において、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、10~90質量%のガラス繊維を含む。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0029】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、52.0質量%以上57.5質量%以下の範囲のSiO2と、23.8質量%以上25.5質量%以下の範囲のB2O3と、8.0質量%以上13.0質量%以下の範囲のAl2O3と、0質量%以上2.0質量%以下の範囲のMgOと、0質量%以上6.0質量%以下の範囲のCaOと、0.5質量%以上6.5質量%以下の範囲のSrOと、0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲のTiO2とを含み、前記B2O3の含有率(質量%)に対するAl2O3の含有率(質量%)の割合が、0.35~0.54の範囲にあり、前記SiO2の含有率(質量%)SI、前記B2O3の含有率(質量%)B、前記MgOの含有率(質量%)M、前記CaOの含有率(質量%)C、前記SrOの含有率(質量%)SR、及び、前記TiO2の含有率(質量%)Tが上記式(1)を満たす。また、前記ガラス繊維用ガラス組成物によれば、上述の範囲のSiO2、B2O3、Al2O3、MgO、CaO、SrO、及び、TiO2を含み、かつ、B2O3の含有率に対するAl2O3の含有率の割合が上述の範囲であって、上記式(1)を満たす場合に、低誘電正接を備え、分相の発生が抑制され、高温での粘性が低減され、さらに、脈理の発生が低減される。
【0030】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiO2の含有率が52.0質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から形成されるガラス繊維の機械的強度が大きく低下し、当該ガラス繊維が有する、ガラス繊維強化樹脂組成物における補強材としての機能が損なわれる。また、当該ガラス繊維が酸性環境下におかれた際に劣化し易くなる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiO2の含有率が57.5質量%超であると、高温での粘性が高くなるため、ガラス原材料を溶融させる温度が高くなり、製造コストの観点から、100個以上のノズルチップを形成したノズルプレートを要するブッシングを備えたガラス溶融炉を用いた、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。
【0031】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するSiO2の含有率は、52.5質量%以上55.5質量%以下であることが好ましく、53.1質量%以上55.0質量%以下であることがより好ましく、53.3質量%以上54.7質量%以下であることがさらに好ましく、53.5質量%以上54.3質量%以下であることが特に好ましく、53.6質量%以上54.2質量%以下であることが最も好ましい。
【0032】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、B2O3の含有率が23.8質量%未満であると、ガラス繊維用ガラス組成物の誘電正接を十分に低減することができない。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、B2O3の含有率が25.5質量%超であると、他の成分の含有量によらず、分相の発生を十分に抑制できない。
【0033】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するB2O3の含有率は、23.8質量%以上24.8質量%以下であることが好ましく、23.8質量%以上24.7質量%以下であることがより好ましく、23.8質量%以上24.6質量%以下であることがさらに好ましく、23.8質量%以上24.5質量%以下であることが特に好ましく、23.8質量%以上24.4質量%以下であることが最も好ましい。
【0034】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Al2O3の含有率が8.0質量%未満であると、他の成分の含有量によらず、分相の発生を十分に抑制できない。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Al2O3の含有率が13.0質量%超であると、ガラス繊維用ガラス組成物の誘電正接を十分に低減することができない。
【0035】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対する、Al2O3の含有率は、11.1質量%以上12.9質量%以下であることが好ましく、11.4質量%以上12.8質量%以下であることがより好ましく、11.6質量%以上12.7質量%以下であることがさらに好ましく、11.9質量%以上12.6質量%以下であることが特に好ましく、12.0質量%以上12.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0036】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、MgOの含有率が2.0質量%超であると、他の成分の含有量によらず、脈理の発生を十分に低減できない。
【0037】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するMgOの含有率は、0質量%以上1.4質量%以下であることが好ましく、0質量%以上1.1質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上0.9質量%であることがさらに好ましく、0質量%以上0.7質量%以下であることが特に好ましく、0質量%以上0.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0038】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、CaOの含有率が6.0質量%超であると、分相の発生を抑制しつつ、ガラス繊維用ガラス組成物の誘電正接を十分に低減できない。
【0039】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対する、CaOの含有率は、1.5質量%以上5.5質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上5.3質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以上5.2質量%以下であることがさらに好ましく、2.8質量%以上5.1質量%以下であることが特に好ましく、3.0質量%以上5.0質量%以下であることが殊に好ましく、3.0質量%以上4.9質量%以下であることが最も好ましい。
【0040】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SrOの含有率が0.5質量%未満又は6.5質量%超であると、ガラス繊維用ガラス組成物の誘電正接を十分に低減することができない。
【0041】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するSrOの含有率は、1.5質量%以上6.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上5.5質量%以下であることがより好ましく、2.2質量%以上5.3質量%以下であることがさらに好ましく、2.3質量%以上5.2質量%以下であることが特に好ましく、2.5質量%以上4.7質量%以下であることが殊に好ましく、2.8質量%以上4.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0042】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、TiO2の含有率が0.1質量%未満であると、高温での粘性が高くなるため、ガラス原材料を溶融させる温度が高くなり、製造コストの観点から、100個以上のノズルチップを形成したノズルプレートを要するブッシングを備えたガラス溶融炉を用いた、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、TiO2の含有率が3.0質量%超であると、ガラス繊維用ガラス組成物の誘電正接を十分に低減することができない。
【0043】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するTiO2の含有率は、0.2質量%以上2.8質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上2.7質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上2.6質量%以下であることがさらに好ましく、0.4質量%以上2.5質量%以下であることが特に好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下であることが最も好ましい。
【0044】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、F2及びCl2を合計で0.1質量%以上2.0質量%以下の範囲で含んでもよい。F2及びCl2は、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物にこの範囲で含まれることで、高温での粘性低減に寄与する。一方、F2及びCl2が合計で2.0質量%超含有されると、ガラス繊維用ガラス組成物の化学的耐久性が悪化するおそれがある。
【0045】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がF2及びCl2を含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するF2及びCl2の合計含有率は、0.2質量%以上1.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以上1.4質量%以下であることがさらに好ましく、0.7質量%以上1.3質量%以下であることが特に好ましく、0.8質量%以上1.2質量%以下であることが殊に好ましく、0.8質量%以上1.0質量%以下であることが最も好ましい。
【0046】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がF2を含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するF2の含有率は、0.2質量%以上1.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以上1.4質量%以下であることがさらに好ましく、0.7質量%以上1.3質量%以下であることが特に好ましく、0.8質量%以上1.2質量%以下であることが殊に好ましく、0.8質量%以上1.0質量%以下であることが最も好ましい。
【0047】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物が、F2を0.4質量%以上含む場合には、Cl2を実質的に含まなくてもよい(すなわち、Cl2の含有率が0.01質量%未満であってもよい)。
【0048】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0~3.0質量%の範囲でZnOを含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がZnOを含む場合、ZnOの含有率が3.0質量%超であると、失透物が発生し易くなり、安定したガラス繊維製造ができなくなる。
【0049】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がZnOを含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するZnOの含有率は、2.5質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0質量%以上1.0質量%以下の範囲でFe2O3を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がFe2O3を含む場合、ガラス繊維中に含まれる気泡を抑制するという観点からは、Fe2O3の含有率を0.1質量%以上0.6質量%以下の範囲とすることが有効である。
【0051】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0質量%以上1.0質量%以下の範囲でSnO2を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がSnO2を含む場合、ガラス繊維中に含まれる気泡を抑制するという観点からは、SnO2の含有率を0.1質量%以上0.6質量%以下の範囲とすることが有効である。
【0052】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、Na2O、K2O及びLi2Oの合計含有率が、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、1.0質量%未満であり、かつ、各成分の含有率が0.4質量%未満であれば、Na2O、K2O又はLi2Oを含んでもよい。ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Na2O、K2O及びLi2Oの合計含有率が1.0質量%以上、又は、各成分の含有率が0.4質量%以上であると、ガラス繊維用ガラス組成物の誘電率及び誘電正接が大幅に悪化する。
【0053】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ZrO2の含有率が、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0.4質量%未満であれば、ZrO2を含んでもよい。ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、ZrO2の含有率が0.4質量%以上であると、失透物が発生し易くなり、安定したガラス繊維製造ができなくなる。
【0054】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、Cr2O3の含有率が、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0.05質量%未満であれば、Cr2O3を含んでもよい。ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Cr2O3の含有率が0.05質量%以上であると、失透物が発生し易くなり、安定したガラス繊維製造ができなくなる。
【0055】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、原材料に起因する不純物として、Ba、P、Mn、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ce、Y、Laの酸化物を合計で、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、1.0質量%未満含んでもよい。特に本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物が、不純物として、BaO、P2O5、CeO2、Y2O3、又はLa2O3を含む場合、その含有量はそれぞれ独立に0.40質量%未満であることが好ましく、0.20質量%未満であることがより好ましく、0.10質量%未満であることがさらに好ましく、0.05質量%未満であることが特に好ましく、0.01質量%未満であることが最も好ましい。
【0056】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物が、原材料に起因する不純物として、Bi2O3、Gd2O3、Pr2O3、Sc2O3、又はYb2O3を含む場合、その含有量はそれぞれ独立に、0.10質量%未満であることが好ましく、0.05質量%未満であることがより好ましく、0.01質量%未満であることがさらに好ましい。
【0057】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、SiO2、B2O3、Al2O3、MgO、CaO、SrO及びTiO2の合計含有率は、97.0質量%以上であり、97.5質量%以上であることが好ましく、98.0質量%以上であることがより好ましく、98.5質量%以上であることがさらに好ましく、98.8質量%以上であることが特に好ましく、99.0質量%であることが最も好ましい。
【0058】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前記B2O3の含有率(質量%)に対するAl2O3の含有率(質量%)の割合(Al2O3/B2O3)は、0.35~0.54の範囲にある。B2O3の含有率及びAl2O3の含有率の範囲が上述の範囲であって、Al2O3/B2O3が、0.35未満であると、分相の発生を十分に抑制できない。一方、B2O3の含有率及びAl2O3の含有率の範囲が上述の範囲であって、Al2O3/B2O3が、0.54超であると、誘電正接を十分に低減できないか、脈理の発生を十分に低減することができない。
【0059】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前記B2O3の含有率(質量%)に対するAl2O3の含有率(質量%)の割合(Al2O3/B2O3)は、0.49~0.53の範囲にあることが好ましく、0.50~0.53の範囲にあることがより好ましく、0.50~0.52の範囲にあることがさらに好ましい。
【0060】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiO2の含有率(質量%)SI、前記B2O3の含有率(質量%)B、前記MgOの含有率(質量%)M、前記CaOの含有率(質量%)C、前記SrOの含有率(質量%)SR、及び、前記TiO2の含有率(質量%)Tが下記式(1)を満たす。
【0061】
6.90≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦12.30 ・・・(1)
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(1)を満たすことで、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、低誘電正接を備え、分相の発生が抑制され、高温での粘性が低減され、さらに、脈理の発生が低減される。
【0062】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SI、B、M、C、SR及びTは、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0063】
9.56≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦11.77 ・・・(2)
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(2)を満たすことで、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、より確実に低誘電正接を備え、分相の発生がより確実に抑制され、高温での粘性がより確実に低減され、さらに、脈理の発生がより確実に低減される。
【0064】
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(2)を満たす場合において、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、53.1質量%以上55.0質量%以下の範囲のSiO2と、23.8質量%以上24.8質量%以下の範囲のB2O3と、11.1質量%以上12.9質量%以下の範囲のAl2O3と、0質量%以上1.4質量%以下の範囲のMgOと、1.5質量%以上5.5質量%以下の範囲のCaOと、1.5質量%以上6.0質量%以下の範囲のSrOと、0.4質量%以上2.5質量%以下の範囲のTiO2とを含み、前記B2O3の含有率(質量%)に対するAl2O3の含有率(質量%)の割合(Al2O3/B2O3)が、0.49~0.53の範囲にあることが好ましい。
【0065】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SI、B、M、C、SR及びTは、下記式(3)を満たすことがさらに好ましい。
【0066】
10.00≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦11.35 ・・・(3)
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(3)を満たすことで、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、より低い誘電正接を備え、より確実に分相の発生が抑制され、より確実に高温での粘性が低減され、さらに、脈理の発生がより低減される。
【0067】
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(3)を満たす場合において、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、53.1質量%以上55.0質量%以下の範囲のSiO2と、23.8質量%以上24.8質量%以下の範囲のB2O3と、11.1質量%以上12.9質量%以下の範囲のAl2O3と、0質量%以上1.4質量%以下の範囲のMgOと、2.5質量%以上5.5質量%以下の範囲のCaOと、2.5質量%以上4.7質量%以下の範囲のSrOと、0.4質量%以上2.5質量%以下の範囲のTiO2とを含み、前記B2O3の含有率(質量%)に対するAl2O3の含有率(質量%)の割合(Al2O3/B2O3)が、0.50~0.53の範囲にあることが好ましい。
【0068】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SI、B、M、C、SR及びTが下記式(4)を満たすことが特に好ましい。
【0069】
10.15≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦10.85 ・・・(4)
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(4)を満たすことで、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、より低い誘電正接をより確実に備え、より確実に分相の発生が抑制され、高温での粘性がより低減され、さらに、より確実に脈理の発生がより低減される。
【0070】
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(4)を満たす場合において、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、53.1質量%以上54.3質量%以下の範囲のSiO2と、23.8質量%以上24.5質量%以下の範囲のB2O3と、11.6質量%以上12.7質量%以下の範囲のAl2O3と、0質量%以上1.1質量%以下の範囲のMgOと、2.5質量%以上5.5質量%以下の範囲のCaOと、2.5質量%以上4.7質量%以下の範囲のSrOと、0.4質量%以上2.5質量%以下の範囲のTiO2とを含み、前記B2O3の含有率(質量%)に対するAl2O3の含有率(質量%)の割合(Al2O3/B2O3)が、0.50~0.53の範囲にあることが好ましい。
【0071】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SI、B、M、C、SR及びTが下記式(5)を満たすことが最も好ましい。
【0072】
10.35≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦10.78 ・・・(5)
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(5)を満たすことで、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、より低い誘電正接をより確実に備え、より確実に分相の発生が抑制され、より確実に高温での粘性がより低減され、さらに、より確実に脈理の発生がより低減される。
【0073】
前記SI、B、M、C、SR及びTが前記式(5)を満たす場合において、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、53.1質量%以上54.2質量%以下の範囲のSiO2と、23.8質量%以上24.4質量%以下の範囲のB2O3と、11.6質量%以上12.5質量%以下の範囲のAl2O3と、0質量%以上1.1質量%以下の範囲のMgOと、2.5質量%以上5.0質量%以下の範囲のCaOと、3.0質量%以上4.7質量%以下の範囲のSrOと、0.5質量%以上2.5質量%以下の範囲のTiO2とを含み、前記B2O3の含有率(質量%)に対するAl2O3の含有率(質量%)の割合(Al2O3/B2O3)が、0.50~0.52の範囲にあることが好ましい。
【0074】
なお、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前述した各成分の含有率の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
【0075】
測定方法としては、初めにガラスバッチ(ガラス原料を混合して調合したもの)、又は、ガラス繊維(ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~650℃のマッフル炉で0.5~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる)を白金ルツボに入れ、電気炉中で、ガラスバッチにおいては1550℃の温度に、ガラス繊維においては1400℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化してガラス粉末を得る。軽元素であるLiについてはガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素はガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有率を求めることができる。
【0076】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融固化後において前述の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融した後、冷却して固化することにより得ることができる。
【0077】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、1000ポイズ温度は、1330~1400℃の範囲であり、好ましくは、1340~1390℃の範囲であり、より好ましくは、1345~1380℃の範囲であり、さらに好ましくは、1350~1375℃の範囲である。また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物において、液相温度(溶融ガラスの温度を低下させたときに最初に結晶の析出が生じる温度)は、1050~1240℃の範囲であり、好ましくは、1100~1210℃の範囲であり、より好ましくは、1130~1200℃の範囲であり、さらに好ましくは、1150~1195℃の範囲である。また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物において、1000ポイズ温度と液相温度との間の温度範囲(作業温度範囲)は、200℃以上であり、好ましくは、200~400℃の範囲であり、より好ましくは、210~360℃の範囲である。
【0078】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物から、本実施形態のガラス繊維を形成する際には、まず、前述のように調合したガラス原料をガラス溶融炉に供給し、前記1000ポイズ温度以上の温度域、具体的には1450~1550℃の範囲の温度で溶融する。そして、前記温度に溶融された溶融ガラスを、所定の温度に制御された、100~8000個のノズルチップ又は孔から吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化することによりガラス繊維が形成される。
【0079】
ここで、1個のノズルチップ又は孔から吐出され、冷却・固化されたガラス単繊維(ガラスフィラメント)は、通常、真円形の断面形状を有し、3.0~35.0μmの直径を有する。低い誘電特性を求められる用途には、前記ガラスフィラメントは、3.0~6.0μmの直径を有することが好ましく、3.0~4.5μmの範囲の直径を有することがより好ましい。一方、前記ノズルチップが、非円形形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有する場合には、温度条件を制御することで、非円形(例えば、楕円形、長円形)の断面形状を有するガラスフィラメントが得られる。ガラスフィラメントが楕円形又は長円形の断面形状を有する場合、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)は、例えば、2.0~10.0の範囲にあり、断面積を真円に換算したときの繊維径(換算繊維径)が3.0~35.0μmの範囲にある。
【0080】
本実施形態のガラス繊維は、通常、前記ガラスフィラメントが、10~8000本集束されたガラス繊維束(ガラスストランド)の形状をとり、1~10000tex(g/km)の範囲の重量を備える。なお、複数のノズルチップ又は孔から吐出されたガラスフィラメントは、1本のガラス繊維束に集束されることも、複数本のガラス繊維束に集束されることもある。
【0081】
本実施形態のガラス繊維は、前記ガラスストランドにさらに種々の加工をして得られる、ヤーン、織物、編物、不織布(チョップドストランドマットや多軸不織布を含む。)、チョップドストランド、ロービング、パウダー等の種々の形態を取り得る。
【0082】
本実施形態のガラス繊維は、ガラスフィラメントの集束性の向上、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上、ガラス繊維と樹脂又は無機材料中との混合物中におけるガラス繊維の均一分散性の向上等を目的として、その表面を有機物で被覆されてもよい。このような有機物としては、デンプン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン(特にカルボン酸変性ポリプロピレン)、(ポリ)カルボン酸(特にマレイン酸)と不飽和単量体との共重合体等を挙げることができる。また、本実施形態のガラス繊維は、これらの樹脂に加えて、シランカップリング剤、潤滑剤、界面活性剤等を含む樹脂組成物で被覆されていてもよい。また、本実施形態のガラス繊維は、上記の樹脂を含まず、シランカップリング剤、界面活性剤等を含む処理剤組成物で被覆されていてもよい。このような樹脂組成物又は処理剤組成物は、樹脂組成物又は処理剤組成物に被覆されていない状態の本実施形態のガラス繊維の質量を基準として、0.03~2.0質量%の割合で、ガラス繊維を被覆する。なお、有機物によるガラス繊維の被覆は、例えば、ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて樹脂溶液又は樹脂組成物溶液をガラス繊維に付与し、その後、樹脂溶液又は樹脂組成物溶液の付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。また、織物の形態をとる本実施形態のガラス繊維を、処理剤組成物溶液中に浸漬し、その後処理剤組成物の付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。
【0083】
ここで、シランカップリング剤としては、アミノシラン(γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等)、クロルシラン(γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン(β-(3,4 -エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、メルカプトシラン(γ-メルカプトトリメトキシシラン等)、ビニルシラン(ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等)、(メタ)アクリルシラン(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)が挙げられる。本実施形態では、前記シランカップリング剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0084】
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油(牛脂等)及びこの水素添加物、植物油(大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等)及びこの水素添加物、動物性ワックス(蜜蝋、ラノリン等)、植物性ワックス(キャンデリラワックス、カルナバワックス等)、鉱物系ワックス(パラフィンワックス、モンタンワックス等)、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールの縮合物(ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等)、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等)、第4級アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等)が挙げられる。本実施形態では、前記潤滑剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0085】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。本実施形態では、前記界面活性剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0086】
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0087】
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン塩(酢酸塩や塩酸塩等)、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩が挙げられる。
【0088】
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩が挙げられる。
【0089】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩などのアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタインなどのベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0090】
本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を含む。具体的には、本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を、少なくとも経糸又は緯糸の一部として、それ自体公知の織機により製織することより得ることができる。前記織機としては、例えば、エアージェット又はウォータージェット等のジェット式織機、シャトル式織機、レピア織機等を挙げることができる。また、前記織機による織り方としては、例えば、平織、朱子織、ななこ織、綾織等を挙げることができ、製造効率の観点から平織が好ましい。本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を経糸及び緯糸として用いることが好ましい。
【0091】
本実施形態のガラス繊維織物において、前述の本実施形態のガラス繊維は、フィラメント径3.0~9.0μmのガラスフィラメントが、35~400本集束されて、0~1.0回/25mmの撚りを備え、0.9~69.0tex(g/1000m)の質量を備えることが好ましい。
【0092】
本実施形態のガラス繊維織物において、前述の本実施形態のガラス繊維を経糸又は緯糸として用いる場合、経糸織密度は、40~120本/25mmであることが好ましく、緯糸織密度は、40~120本/25mmであることが好ましい。
【0093】
本実施形態のガラス繊維織物は、製織された後で、脱油処理、表面処理、及び開繊処理を施されてもよい。
【0094】
脱油処理としては、ガラス繊維織物を雰囲気温度が350℃~400℃の加熱炉内に40~80時間配置し、ガラス繊維に付着している有機物を加熱分解する処理が挙げられる。
【0095】
表面処理としては、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む溶液中にガラス繊維織物を浸漬し、余分な水を絞液した後、80~180℃の温度範囲で、1~30分間、加熱乾燥させる処理が挙げられる。
【0096】
開繊処理としては、例えば、ガラス繊維織物の経糸に30~200Nの張力をかけながら、水流圧力による開繊、液体を媒体とした高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による開繊、ロールによる加圧での開繊等を行い、経糸及び緯糸の糸幅を拡幅する処理が挙げられる。
【0097】
本実施形態のガラス繊維織物は、7.0~190.0g/m2の範囲を備え、8.0~200.0μmの範囲の厚さを備えることが好ましい。
【0098】
本実施形態のガラス繊維織物の経糸の糸幅は、110~600μmであることが好ましく、緯糸の糸幅は、110~600μmであることが好ましい。
【0099】
本実施形態のガラス繊維織物は、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む表面処理層を備えてもよい。本実施形態のガラス繊維織物が該表面処理層を含む場合、該表面処理層は、表面処理層を含むガラス繊維織物の全量に対して、例えば、0.03~1.50質量%の範囲の質量を備えることができる。
【0100】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、前述の本実施形態のガラス繊維を含む。具体的には、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、樹脂(熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂)、ガラス繊維、その他の添加剤を含むガラス繊維強化樹脂組成物において、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、10~90質量%のガラス繊維を含む。また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、90~10質量%の樹脂を含み、その他の添加剤を0~40質量%の範囲で含む。
【0101】
ここで、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0102】
具体的に、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。
【0103】
ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0104】
ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等が挙げられる。
【0105】
メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等が挙げられる。
【0106】
ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、または、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、または、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等が挙げられる。
【0107】
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ナイロン4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0108】
ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等が挙げられる。
【0109】
ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、エチレングリコールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0110】
ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,4-ブタンジオールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0111】
ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,3-プロパンジオールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0112】
ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法により得られる重合体が挙げられる。
【0113】
ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等が挙げられる。
【0114】
ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,3-ジメチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-クロロメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ〔2-(4’-メチルフェニル)-1,4-フェニレンエーテル〕、ポリ(2-ブロモ-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-ブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等が挙げられる。
【0115】
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖末端にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基等の官能基を導入したもの、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖側鎖にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基、メタクリル基等の官能基を導入したもの等が挙げられる。
【0116】
ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等が挙げられる。
【0117】
液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等が挙げられる。
【0118】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等が挙げられる。
【0119】
アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィンまたはスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等が挙げられる。
【0120】
オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等が挙げられる。
【0121】
環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等が挙げられる。
【0122】
ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、またはその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等が挙げられる。
【0123】
セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。
【0124】
また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリイミド(PI)、ユリア(UF)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【0125】
具体的に、不飽和ポリエステル樹脂としては、脂肪族不飽和ジカルボン酸と脂肪族ジオールをエステル化反応させることで得られる樹脂が挙げられる。
【0126】
ビニルエステル樹脂としては、ビス系ビニルエステル樹脂、ノボラック系ビニルエステル樹脂が挙げられる。
【0127】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂やフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0128】
メラミン樹脂としては、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体が挙げられる。
【0129】
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、または、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられ、この中の一種、もしくは、2種以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0130】
ユリア樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂が挙げられる。
【0131】
前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0132】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、低い誘電特性を求められる用途に用いられることから、前記樹脂としては、エポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)が好ましい。
【0133】
前記その他の添加剤としては、ガラス繊維以外の強化繊維(例えば、炭素繊維、金属繊維)、ガラス繊維以外の充填剤(例えば、ガラスパウダー、タルク、マイカ)、難燃剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、核剤、抗菌剤、顔料等を挙げることができる。
【0134】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、本実施形態の前記ガラス繊維織物に、それ自体公知の方法により、前記樹脂を含浸させ、半硬化させたプリプレグであってもよい。
【0135】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、発泡成形法(超臨界流体も含む)、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等の公知の成形法で成形して種々のガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。また、前記プリプレグを硬化させることによっても、ガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
【0136】
このような成形品の用途としては、例えば、電子機器筐体、電子部品(プリント配線基板)、車両外装部材(バンパー、フェンダー、ボンネット、エアダム、ホイールカバー等)、車両内装部材(ドアトリム、天井材等)、車両エンジン周り部材(オイルパン、エンジンカバー、インテークマニホールド、エキゾーストマニホールド等)、マフラー関連部材(消音部材等)、高圧タンク等を挙げることができる。
【0137】
なお、本実施形態のガラス繊維は、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物以外にも、石膏やセメントといった無機材料の補強材としても好適に用いることができる。例えば、石膏(とりわけ、厚さ4~60mmの石膏ボード)の補強材として用いられる場合、前記の範囲を備えるガラス繊維は、石膏の全質量に対して、0.1~4.0質量%の範囲で含まれることができる。
【0138】
次に本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0139】
まず、溶融固化後のガラス組成が、表1に示された実施例1~2、参考例1~3及び比較例1~5の各組成となるように、ガラス原料を混合し、ガラスバッチを得た。
【0140】
次に、実施例1~2、参考例1~3又は比較例1~5のガラス繊維用ガラス組成に対応するガラスバッチを、1550℃、6時間で溶融し、均質なガラスカレットを得た。次いで、80mm径の白金ルツボに入れ、1500℃、4時間溶融したものを、ルツボから取り出し、ガラスバルクを得た。次いで、得られたガラスバルクを、580℃、8時間で焼き鈍し、試験片を得た。得られた試験片について、以下に示す方法で、誘電正接、及び、分相特性を測定又は評価した。また、試験片作成過程で得られるガラスカレットを用いて、1000ポイズ温度を測定した。
【0141】
また、実施例1~2、参考例1~3又は比較例1~5のガラス繊維用ガラス組成に対応するガラスバッチ又は前記のガラスカレットを、ガラス溶融炉中で、1550℃で溶融し、得られた溶融物を200個のノズルチップを形成したノズルプレートを有するブッシングから吐出し、冷却、固化して、ガラスビーズを得た。得られたガラスビーズを580℃、8時間の条件で徐冷し、徐冷されたガラスビーズ少なくとも40個を用いて、以下に示す方法で、脈理特性を評価した。
【0142】
評価結果を表1に示す。
【0143】
[誘電正接の測定方法]
試験片を研磨し、80mm×3mm(厚さ1mm)の研磨試験片を作成した。次いで、得られた研磨試験片を、絶乾後、23℃、湿度60%の室内に24時間保管した。次いで、得られた研磨試験片につき、JIS C 2565:1992に準拠し、株式会社エーイーティー製空洞共振器法誘電率測定装置ADMS01Oc1(商品名)を用いて、10GHzにおける誘電正接(散逸率Df)を測定した。
【0144】
[分相特性の評価方法]
円盤状の試験片を、黒色の板と白色の板との境界上に静置し、試験片の上面から、試験片を通して、黒色の板と白色の板との境界面を観察した。試験片内に白濁(分相)が見られず、前記境界面が明確に観察できる場合に「A」、試験片内にわずかに白濁が見られるが、前記境界面が明確に観察できる場合に「B」、試験片内の白濁により境界面が明確に観察できない場合に「C」と評価した。
【0145】
[1000ポイズ温度の測定方法]
回転粘度計付高温電気炉(芝浦システム株式会社製)を用い、白金ルツボ中でガラスカレットを溶融し、回転式ブルックフィールド型粘度計を用いて溶融温度を変化させながら連続的に溶融ガラスの粘度を測定し、回転粘度が1000ポイズのときに対応する温度を測定することにより求めた。
【0146】
[脈理特性の評価方法]
倍率20~50倍の光学顕微鏡にてガラスビーズを観察し、脈理を持つガラスビーズの個数を計測した。観察した全数のうち、脈理を持つガラスビーズが40%以下の場合に「A」、40%超60%以下の場合に「B」、60%超の場合に「C」と評価した。
【0147】
【表1】
表1に示されるように、実施例1~
2に表される、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、52.0質量%以上57.5質量%以下の範囲のSiO
2と、
23.8質量%以上25.5質量%以下の範囲のB
2O
3と、8.0質量%以上13.0質量%以下の範囲のAl
2O
3と、0質量%以上2.0質量%以下の範囲のMgOと、0質量%以上6.0質量%以下の範囲のCaOと、0.5質量%以上6.5質量%以下の範囲のSrOと、0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲のTiO
2とを含み、前記B
2O
3の含有率(質量%)に対するAl
2O
3の含有率(質量%)の割合(Al
2O
3/B
2O
3)が、0.35~0.54の範囲にあり、前記SiO
2の含有率(質量%)SI、前記B
2O
3の含有率(質量%)B、前記MgOの含有率(質量%)M、前記CaOの含有率(質量%)C、前記SrOの含有率(質量%)SR、及び、前記TiO
2の含有率(質量%)Tが下記式(1)を満たす、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、低誘電正接(0.0018以下の誘電正接)を備え、分相の発生が抑制され、高温での粘性が低減され(1375℃以下の1000ポイズ温度を備え)、さらに、脈理の発生が低減されていた。
【0148】
6.90≦ 100×(B/SI)2×{SR/(C+SR)}2/3×{T/(M+T)}1/2 ≦12.30 ・・・(1)
一方、比較例1~5のガラス繊維用ガラス組成物では、前記式(1)を満たさないため、誘電正接が高い(誘電正接が0.0018超)か、分相が発生するか、高温での粘性が低減されていない(1000ポイズ温度が1375℃超)か、又は、脈理が発生するかという不都合のいずれかが発生していた。
[実施例3]
溶融固化後のガラス組成が、実施例1と同一の組成となるように、ガラス原料を混合し、ガラスバッチを得た。次いで、前記ガラスバッチを1550℃で溶融し、得られた溶融物を、200個のノズルチップを形成したノズルプレートを有するブッシングから吐出し、所定の速度で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却固化して、真円状の円形断面を備え、繊維径5μmのガラス繊維(ガラスフィラメント)を形成させた。得られた200本のガラスフィラメントにアプリケーターで集束剤を付与して集束させて、コレットに巻取り、ガラス繊維束を得た。一連の操作(紡糸)を、6時間継続したところ、ガラス繊維の切断は発生しなかった。
[比較例6]
溶融固化後のガラス組成が、比較例5と同一の組成となるように、ガラス原料を混合し、ガラスバッチを得た。次いで、前記ガラスバッチを1550℃で溶融し、得られた溶融物を、200個のノズルチップを形成したノズルプレートを有するブッシングから吐出し、所定の速度で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却固化して、真円状の円形断面を備え、繊維径5μmのガラス繊維(ガラスフィラメント)を形成させた。得られた200本のガラスフィラメントにアプリケーターで集束剤を付与して集束させて、コレットに巻取り、ガラス繊維束を得た。一連の操作(紡糸)を、6時間継続したところ、15回のガラス繊維の切断が発生した。
【0149】
実施例3及び比較例6より、本発明のガラス繊維用ガラス組成物であれば、ガラス繊維及びガラス繊維束を、これらの切断を抑制して、製造可能なことが確認された。また、紡糸を6時間継続した場合のガラス繊維の切断回数が7回以下であれば、工業的な製造に耐えるところ、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は十分にこの水準を満たすことが確認された。なお、工業的にガラス繊維を製造する場合、紡糸を6時間継続した場合のガラス繊維の切断回数は、5回以下が好ましく、3回以下がより好ましく、1回以下がさらに好ましい。