(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】電気化学デバイス用合剤自立膜、電極、及び、電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240926BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240926BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240926BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240926BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20240926BHJP
H01G 11/46 20130101ALI20240926BHJP
H01G 11/26 20130101ALI20240926BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/131
H01G11/38
H01G11/46
H01G11/26
(21)【出願番号】P 2024006317
(22)【出願日】2024-01-18
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2023006026
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢汰
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈人
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】永井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】井上 僚
(72)【発明者】
【氏名】寺田 純平
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-524884(JP,A)
【文献】特開2003-123840(JP,A)
【文献】特開2022-103142(JP,A)
【文献】特開2009-155558(JP,A)
【文献】特開2023-108001(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3118917(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/62
H01M 4/525
H01M 4/131
H01G 11/38
H01G 11/46
H01G 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、テトラフルオロエチレ
ン系ポリマ
ーと、下記一般式(1)で示される化合物及び下記一般式(2)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む電気化学デバイス用合剤自立膜。
一般式(1):(H-(CF
2)
m-1-COO)
pM
1
(式中、mは4~20である。M
1は、H、金属原子、NR
5
4(R
5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(2):(H-(CF
2)
n-SO
3)
qM
2
(式中、nは4~20である。M
2はH、金属原子、NR
5
4(R
5は前記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、M
1は、H又はNH
4であり、前記一般式(2)において、M
2は、H又はNH
4である請求項1記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである請求項1又は2に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量は、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対し、99.95質量%以上である請求項1又は2に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項5】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対する化合物(1)の含有量が1質量ppb以上、1000質量ppb以下であり、化合物(2)の含有量が5000質量ppb以下である請求項1又は2に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項6】
電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、
テトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、延伸可能であり、0.1%質量減少温度が400℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項7】
電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、
テトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、延伸可能であり、1.0%質量減少温度が492℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項8】
電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、
テトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、延伸可能であり、熱不安定指数(TII)が20以上である電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項9】
電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、
テトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、標準比重が2.200以下であり、0.1%質量減少温度が400℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項10】
電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、
テトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、標準比重が2.200以下であり、1.0%質量減少温度が492℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項11】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、標準比重が2.130以上であり、1.0%質量減少温度が470℃以上である請求項10に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項12】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである請求項10又は11に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項13】
テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対し、99.95質量%以上である請求項10又は11に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項14】
厚みが300μm以下である請求項1、2、6~11のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項15】
厚みが50μm以上、200μm以下である請求項14に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項16】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、下記一般式(3)で示される化合物を実質的に含まない請求項1、2、6~11のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
一般式(3):(H-(CF
2)
8-SO
3)
qM
2
(式中、M
2はH、金属原子、NR
5
4(R
5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【請求項17】
一般式(3)で示される化合物の含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対して25質量ppb以下である請求項16に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項18】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、下記一般式(4)で示される化合物及び下記一般式(4’)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対して1000質量ppb以下である請求項1、2、6~11のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
一般式(4):(H-(CF
2)
15-COO)
pM
1
(式中、M
1は、H、金属原子、NR
5
4(R
5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(4’):(H-(CF
2)
16-COO)
pM
1
(式中、M
1は、H、金属原子、NR
5
4(R
5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【請求項19】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、下記一般式(5)で示される化合物及び下記一般式(5’)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対して1000質量ppb以下である請求項1、2、6~11のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
一般式(5):(H-(CF
2)
13-COO)
pM
1
(式中、M
1は、H、金属原子、NR
5
4(R
5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(5’):(H-(CF
2)
14-COO)
pM
1
(式中、M
1は、H、金属原子、NR
5
4(R
5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【請求項20】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーは、テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む請求項1、2、6~11のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項21】
前記バインダーは、フィブリル径(中央値)が100nm以下の繊維状構造を有する請求項1、2、6~11のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項22】
前記固体電解質は、硫化物系固体電解質又は酸化物系固体電解質である請求項1、2、6~11のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項23】
前記電極活物質は、リチウム・ニッケル系複合酸化物である請求項1、2、6~11のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜。
【請求項24】
請求項1、2、6~11のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜を含む電極。
【請求項25】
請求項24に記載の電極を備える電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学デバイス用合剤自立膜、電極、及び、電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、高電圧、高エネルギー密度で、自己放電が少ない、メモリー効果が少ない、超軽量化が可能である、等の理由から、ノート型パソコン、携帯電話、スマートフォン、タブレットパソコン、ウルトラブック等小型で携帯に適した電気・電子機器等に用いられるとともに、更には、自動車用等の駆動用車載電源や定置用大型電源等に至るまでの広範な電源として実用化されつつある。二次電池には、更なる高エネルギー密度化が求められており、電池特性の更なる改善が求められている。
【0003】
特許文献1には、カソード及びアノードのうち少なくとも一方が、ポリテトラフルオロエチレン混合バインダー材を含むエネルギー貯蔵装置が記載されている。
【0004】
特許文献2~6には、ポリテトラフルオロエチレンを電池のバインダーとして使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-517862号公報
【文献】国際公開第2021/181887号
【文献】国際公開第2021/181888号
【文献】国際公開第2021/192541号
【文献】国際公開第2022/138942号
【文献】国際公開第2022/138939号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、支持体を用いなくても強度及び柔軟性に優れる電気化学デバイス用合剤自立膜、並びに、それを用いた電極、及び、電気化学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示(1)は電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、テトラフルオロエチレ系ポリマーンと、下記一般式(1)で示される化合物及び下記一般式(2)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む電気化学デバイス用合剤自立膜である。
一般式(1):(H-(CF2)m-1-COO)pM1
(式中、mは4~20である。M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(2):(H-(CF2)n-SO3)qM2
(式中、nは4~20である。M2はH、金属原子、NR5
4(R5は前記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【0008】
本開示(2)は前記一般式(1)において、M1は、H又はNH4であり、前記一般式(2)において、M2は、H又はNH4である本開示(1)記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0009】
本開示(3)は前記テトラフルオロエチレン系ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである本開示(1)又は(2)に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0010】
本開示(4)は前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量は、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対し、99.95質量%以上である本開示(1)~(3)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0011】
本開示(5)は前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対する化合物(1)の含有量が1質量ppb以上、1000質量ppb以下であり、化合物(2)の含有量が5000質量ppb以下である本開示(1)~(4)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0012】
本開示(6)は電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、延伸可能であり、0.1%質量減少温度が400℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0013】
本開示(7)は電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、延伸可能であり、1.0%質量減少温度が492℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0014】
本開示(8)は電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、延伸可能であり、熱安定指数(TII)が20以上である電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0015】
本開示(9)は電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、標準比重が2.200以下であり、0.1%質量減少温度が400℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0016】
本開示(10)は電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、
前記バインダーは、テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、標準比重が2.200以下であり、1.0%質量減少温度が492℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0017】
本開示(11)は前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、標準比重が2.130以上であり、1.0%質量減少温度が470℃以上である本開示(10)に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0018】
本開示(12)は前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物がテトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである本開示(10)又は(11)に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0019】
本開示(13)はテトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対し、99.95質量%以上である本開示(10)~(12)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0020】
本開示(14)は厚みが300μm以下である本開示(1)~(13)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0021】
本開示(15)は厚みが50μm以上、200μm以下である本開示(14)に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0022】
本開示(16)は前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、下記一般式(3)で示される化合物を実質的に含まない本開示(1)~(15)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
一般式(3):(H-(CF2)8-SO3)qM2
(式中、M2はH、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【0023】
本開示(17)は一般式(3)で示される化合物の含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対して25質量ppb以下である本開示(16)に記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0024】
本開示(18)は前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、下記一般式(4)で示される化合物及び下記一般式(4’)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対して1000質量ppb以下である本開示(1)~(17)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
一般式(4):(H-(CF2)15-COO)pM1
(式中、M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(4’):(H-(CF2)16-COO)pM1
(式中、M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【0025】
本開示(19)は前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物は、下記一般式(5)で示される化合物及び下記一般式(5’)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー組成物に対して1000質量ppb以下である本開示(1)~(18)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
一般式(5):(H-(CF2)13-COO)pM1
(式中、M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(5’):(H-(CF2)14-COO)pM1
(式中、M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【0026】
本開示(20)は前記テトラフルオロエチレン系ポリマーは、テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む本開示(1)~(19)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0027】
本開示(21)は前記バインダーは、フィブリル径(中央値)が100nm以下の繊維状構造を有する本開示(1)~(20)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0028】
本開示(22)は前記固体電解質は、硫化物系固体電解質又は酸化物系固体電解質である本開示(1)~(21)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0029】
本開示(23)は前記電極活物質は、リチウム・ニッケル系複合酸化物である本開示(1)~(22)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜である。
【0030】
本開示(24)は本開示(1)~(23)のいずれかに記載の電気化学デバイス用合剤自立膜を含む電極である。
【0031】
本開示(25)は本開示(24)に記載の電極を備える電気化学デバイスである。
【発明の効果】
【0032】
本開示によれば、支持体を用いなくても強度及び柔軟性に優れる電気化学デバイス用合剤自立膜、並びに、それを用いた電極、及び、電気化学デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施例における固体電解質合剤シートのイオン伝導度測定に用いた圧力セルの断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO2-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO2-、及び、
RaNRbSO2-
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、H又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0035】
また、本開示において、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、及び、ジ芳香族オキシホスフィニル基を包含する。
【0036】
上記脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、カルバモイルメチル基等が挙げられる。
【0037】
上記芳香族基は、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記芳香族基としては、炭素数6~12、好ましくは総炭素原子数6~10のアリール基、例えば、フェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アセチルアミノフェニル基、4-メタンスルホニルフェニル基等が挙げられる。
【0038】
上記ヘテロ環基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記ヘテロ環基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~10の5~6員ヘテロ環、例えば2-テトラヒドロフリル基、2-ピリミジル基等が挙げられる。
【0039】
上記アシル基は、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアシル基、例えばアセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、3-ピリジンカルボニル基等が挙げられる。
【0040】
上記アシルアミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよく、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~8のアシルアミノ基、総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等が挙げられる。
【0041】
上記脂肪族オキシカルボニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族オキシカルボニル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(t)-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0042】
上記カルバモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよい。上記カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、総炭素数2~9のアルキルカルバモイル基、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2~5のアルキルカルバモイル基、例えばN-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基等が挙げられる。
【0043】
上記脂肪族スルホニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族スルホニル基としては、総炭素原子数1~6、好ましくは総炭素原子数1~4のアルキルスルホニル基、例えばメタンスルホニル基等が挙げられる。
【0044】
上記芳香族スルホニル基は、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記芳香族スルホニル基としては、総炭素原子数6~10のアリールスルホニル基、例えばベンゼンスルホニル基等が挙げられる。
【0045】
上記アミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよい。
【0046】
上記アシルアミノ基は、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは総炭素原子数2~8のアシルアミノ基、より好ましくは総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等が挙げられる。
【0047】
上記脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基は、例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、2-ピリジンスルホンアミド基等であってもよい。
【0048】
上記スルファモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよい。上記スルファモイル基としては、スルファモイル基、総炭素原子数1~9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7~13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~12のヘテロ環スルファモイル基、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1~7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3~6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6~11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~10のヘテロ環スルファモイル基、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、4-ピリジンスルファモイル基等が挙げられる。
【0049】
上記脂肪族オキシ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基等を有していてもよい。上記脂肪族オキシ基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~6のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0050】
上記芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基は、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、好ましくは総炭素原子数1~4の脂肪族基、総炭素原子数1~4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1~4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2~4の脂肪族オキシカルボニル基を有していてもよい。
【0051】
上記脂肪族チオ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、総炭素原子数1~8、より好ましくは総炭素原子数1~6のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、カルバモイルメチルチオ基、t-ブチルチオ基等が挙げられる。
【0052】
上記カルバモイルアミノ基は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等を有していてもよい。上記カルバモイルアミノ基としては、カルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~12のヘテロ環カルバモイルアミノ基、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のヘテロ環カルバモイルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ基、4-ピリジンカルバモイルアミノ基等が挙げられる。
【0053】
本明細書において、炭化水素系界面活性剤が有する有機基は、フッ素を含まない有機基であることが好ましい。
【0054】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0055】
本開示は、電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、上記バインダーは、テトラフルオロエチレン(TFE)系ポリマー組成物を含み、上記TFE系ポリマー組成物は、TFE系ポリマーと、下記一般式(1)で示される化合物及び下記一般式(2)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む電気化学デバイス用合剤自立膜(以下、本開示の自立膜(1)ともいう。)を提供する。
一般式(1):(H-(CF2)m-1-COO)pM1
(式中、mは4~20である。M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(2):(H-(CF2)n-SO3)qM2
(式中、nは4~20である。M2はH、金属原子、NR5
4(R5は上記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【0056】
本開示は、電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、上記バインダーは、TFE系ポリマー組成物を含み、上記TFE系ポリマー組成物は、延伸可能であり、0.1%質量減少温度が400℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜(以下、本開示の自立膜(2)ともいう。)も提供する。
【0057】
本開示は、電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、上記バインダーは、TFE系ポリマー組成物を含み、上記TFE系ポリマー組成物は、延伸可能であり、1.0%質量減少温度が492℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜(以下、本開示の自立膜(3)ともいう。)も提供する。
【0058】
本開示は、電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、上記バインダーは、TFE系ポリマー組成物を含み、上記TFE系ポリマー組成物は、延伸可能であり、熱安定指数(TII)が20以上である電気化学デバイス用合剤自立膜(以下、本開示の自立膜(4)ともいう。)も提供する。
【0059】
本開示は、電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、上記バインダーは、TFE系ポリマー組成物を含み、上記TFE系ポリマー組成物は、標準比重が2.200以下であり、0.1%質量減少温度が400℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜(以下、本開示の自立膜(5)ともいう。)も提供する。
【0060】
本開示は、電極活物質及び/又は固体電解質と、バインダーとを含有する電気化学デバイス用合剤自立膜であって、上記バインダーは、TFE系ポリマー組成物を含み、上記TFE系ポリマー組成物は、標準比重が2.200以下であり、1.0%質量減少温度が492℃以下である電気化学デバイス用合剤自立膜(以下、本開示の自立膜(6)ともいう。)も提供する。
【0061】
本明細書では、特に断りのない限り、本開示の自立膜(1)~(6)をまとめて「本開示の自立膜」というものとする。
【0062】
本開示の自立膜は、特定のバインダーを含有するので、基材等の支持体を用いなくても強度及び柔軟性に優れる。このため、本開示の自立膜は、単独で取り扱うことができ、取り扱い性に優れる。
【0063】
本開示において、自立膜とは、基材等の支持体がなくても独立して膜形状を維持することができる膜を意味する。自立膜は、単独での取り扱いが可能な状態の膜であり、支持体上に蒸着等によって形成された状態の膜(支持膜)とは異なる。
ただし、その用途や使用態様において接着等の適宜の接合手段により各種基材や基材に接合、積層されていても良いし、各種支持体に支持されていても良い。
膜が自立膜であるか否かは、以下の方法により判断する。
膜厚が10μm以上1000μm以下の時に、膜を10×10cmにカッターで切り出し、重心をピンセット(株式会社エンジニア製、PTS07)で摘んだ時にヒビや割れが生じたり、折れ曲がったりすることがない場合に、自立膜であると判断する。
【0064】
本開示の自立膜は、厚みが300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが更に好ましく、180μm以下であることが更により好ましく、150μm以下であることが特に好ましく、また、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましく、30μm以上であることが更により好ましく、40μm以上であることが更により好ましく、50μm以上であることが特に好ましい。
本開示の自立膜は、上記のように厚みが薄くても充分な強度及び柔軟性を有するので、電池の小型化・軽量化が可能となる。
【0065】
本開示の自立膜(1)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、下記一般式(1)で示される化合物(以下、化合物(1)ともいう。)及び下記一般式(2)で示される化合物(以下、化合物(2)ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む。本開示の自立膜(2)~(6)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、上記化合物を含むものであってよい。
一般式(1):(H-(CF2)m-1-COO)pM1
(式中、mは4~20である。M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(2):(H-(CF2)n-SO3)qM2
(式中、nは4~20である。M2はH、金属原子、NR5
4(R5は上記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【0066】
上記M1及びM2としての上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)又はアルカリ土類金属(2族)が挙げられ、具体的には、Na、K、Li等が例示される。
4つのR5は、同一でも異なっていてもよい。R5としては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましい。
上記M1及びM2は、H、アルカリ金属又はNH4であることが好ましく、H又はNH4であることがより好ましい。
【0067】
一般式(1)において、mは6以上が好ましく、8以上がより好ましく、11以上が更に好ましく、13以上が更により好ましく、15以上が特に好ましく、また、18以下が好ましく、16以下がより好ましい。
一般式(2)において、nは6以上が好ましく、8以上がより好ましく、11以上が更に好ましく、13以上が更により好ましく、15以上が特に好ましく、また、18以下が好ましく、16以下がより好ましい。
【0068】
上記TFE系ポリマー組成物が化合物(1)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(1)の含有量は、上記TFE系ポリマー組成物に対して10質量ppm以下であってよく、5000質量ppb以下であることが好ましく、1000質量ppb以下であることがより好ましく、500質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0069】
上記TFE系ポリマー組成物が化合物(2)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(2)の含有量は、上記TFE系ポリマー組成物に対して10質量ppm以下であってよく、5000質量ppb以下であることが好ましく、1000質量ppb以下であることがより好ましく、500質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0070】
化合物(1)及び/又は(2)を含むTFE系ポリマー組成物は、炭化水素系界面活性剤を用いることにより得られる。すなわち、本開示の自立膜におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、TFE系ポリマーと、化合物(1)及び/又は(2)とともに、炭化水素系界面活性剤を含んでいてもよい。上記TFE系ポリマー組成物中の炭化水素系界面活性剤の含有量は特に限定されないが、通常、100質量ppm~10質量%である。
上記炭化水素系界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0071】
本開示の自立膜におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、下記一般式(3)で示される化合物(以下、化合物(3)ともいう。)を実質的に含まないことが好ましい。
一般式(3):(H-(CF2)8-SO3)qM2
(式中、M2はH、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【0072】
化合物(3)を実質的に含まないとは、化合物(3)の含有量が上記TFE系ポリマー組成物に対して25質量ppb以下であることを意味する。化合物(3)の含有量は、上記TFE系ポリマー組成物に対して20質量ppb以下であることが好ましく、15質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb以下であることが更に好ましい。下限は特に限定されないが、0質量ppbであってよく、0.1質量ppbであってもよく、1質量ppbであってもよい。
【0073】
本開示の自立膜におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、下記一般式(4)で示される化合物(以下、化合物(4)ともいう。)及び下記一般式(4’)で示される化合物(以下、化合物(4’)ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、上記TFE系ポリマー組成物に対して1000質量ppb以下であることが好ましい。
一般式(4):(H-(CF2)15-COO)pM1
(式中、M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(4’):(H-(CF2)16-COO)pM1
(式中、M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は上記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【0074】
上記TFE系ポリマー組成物が化合物(4)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(4)の含有量は、上記TFE系ポリマー組成物に対して500質量ppb以下であることがより好ましく、250質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0075】
上記TFE系ポリマー組成物が化合物(4’)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(4’)の含有量は、上記TFE系ポリマー組成物に対して500質量ppb以下であることがより好ましく、250質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0076】
本開示の自立膜におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、下記一般式(5)で示される化合物(以下、化合物(5)ともいう。)及び下記一般式(5’)で示される化合物(以下、化合物(5’)ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、上記TFE系ポリマー組成物に対して1000質量ppb以下であることが好ましい。
一般式(5):(H-(CF2)13-COO)pM1
(式中、M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(5’):(H-(CF2)14-COO)pM1
(式中、M1は、H、金属原子、NR5
4(R5は上記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【0077】
上記TFE系ポリマー組成物が化合物(5)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(5)の含有量は、上記TFE系ポリマー組成物に対して500質量ppb以下であることがより好ましく、250質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0078】
上記TFE系ポリマー組成物が化合物(5’)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(5’)の含有量は、上記TFE系ポリマー組成物に対して500質量ppb以下であることがより好ましく、250質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0079】
化合物(1)、(2)、(3)、(4)、(4’)、(5)及び(5’)の含有量は、後述する実施例に記載するように、液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて測定した値である。
【0080】
本開示の自立膜におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体であってもよいし、TFEに基づく重合単位(TFE単位)と、変性モノマーに基づく重合単位(以下「変性モノマー単位」とも記載する)とを含むTFE共重合体であってもよい。上記TFE単位と変性モノマー単位とを含む共重合体は、変性モノマー単位が10質量%以下であり、変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってよい。上記変性PTFEは、99.0質量%以上のTFE単位と、1.0質量%以下の変性モノマー単位とを含むものであってよい。また、上記変性PTFEは、TFE単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
上記TFE系ポリマーとしては、結着力、合剤シートの強度及び柔軟性が向上する点で、上記TFE共重合体が好ましく、変性PTFEがより好ましい。
TFEの単独重合体とは、全重合単位中TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく重合単位の含有量が0.0001質量%未満のものを指す。
【0081】
上記TFE共重合体は、延伸性、結着力、合剤シートの強度及び柔軟性が向上する点で、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~10質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、5.0質量%が好ましく、3.0質量%がより好ましく、1.0質量%が更に好ましく、0.90質量%が更により好ましく、0.80質量%が更により好ましく、0.50質量%が更により好ましく、0.40質量%が更により好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が更により好ましく、0.15質量%が更により好ましく、0.10質量%が更により好ましく、0.08質量%が更により好ましく、0.05質量%が特に好ましく、0.03質量%が最も好ましい。
本明細書において、上記変性モノマー単位とは、TFE系ポリマーの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味する。
【0082】
上述した各重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0083】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のパーハロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル:パーフルオロアリルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン、エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0084】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(A):
CF2=CF-ORf (A)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0085】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0086】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0087】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(A)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0088】
【0089】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0090】
【0091】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0092】
(パーフルオロアルキル)エチレン〔PFAE〕としては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン〔PFBE〕、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
【0093】
パーフルオロアリルエーテルとしては、例えば、一般式(B):
CF2=CF-CF2-ORf1 (B)
(式中、Rf1は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0094】
上記Rf1は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基又は炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。上記パーフルオロアリルエーテルとしては、CF2=CF-CF2-O-CF3、CF2=CF-CF2-O-C2F5、CF2=CF-CF2-O-C3F7、及び、CF2=CF-CF2-O-C4F9からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF2=CF-CF2-O-C2F5、CF2=CF-CF2-O-C3F7、及び、CF2=CF-CF2-O-C4F9からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF2=CF-CF2-O-CF2CF2CF3が更に好ましい。
【0095】
上記変性モノマーとしては、延伸性、結着力及び合剤シートの柔軟性が向上する点で、PAVE、HFP、VDF及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、HFP、VDF及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PMVE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0096】
上記TFE系ポリマーは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するTFE系ポリマーとしては、例えば、粒子中に高分子量のTFE系ポリマーのコアと、より低分子量のTFE系ポリマー又はTFE共重合体のシェルとを含むTFE系ポリマーが挙げられる。
また、例えば、粒子中に高分子量のPTFEのコアと、より低分子量のPTFE又は変性のPTFEのシェルとを含む変性PTFEが挙げられる。このような変性PTFEとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるPTFEが挙げられる。
【0097】
上記TFE系ポリマーは、強度に一層優れる合剤シートを形成することができる点で、吸熱ピーク温度が320℃以上であることが好ましく、325℃以上であることがより好ましく、330℃以上であることが更に好ましく、335℃以上であることが更により好ましく、340℃以上であることが更により好ましく、342℃以上であることが更により好ましく、344℃以上であることが特に好ましい。上記吸熱ピーク温度は、また、350℃以下であることが好ましい。
上記吸熱ピーク温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴がないフッ素樹脂について10℃/分の昇温速度で示差走査熱量測定〔DSC〕を行って得られた融解熱曲線における極小点に対応する温度である。1つの融解ピーク中に極小点が2つ以上ある場合は、それぞれを吸熱ピーク温度とする。
【0098】
上記TFE系ポリマーは、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0099】
上記TFE系ポリマーは、強度に一層優れる合剤シートを形成することができる点で、数平均分子量(Mn)が0.5×106以上であることが好ましく、1.0×106以上であることがより好ましく、1.5×106以上であることが更に好ましく、2.0×106以上であることが更により好ましく、3.0×106以上であることが特に好ましい。上記数平均分子量は、また、20.0×106以下であることが好ましく、15.0×106以下であることがより好ましく、12.0×106以下であることが更に好ましく、10.0×106以下であることが更により好ましく、8.0×106以下であることが特に好ましい。
上記数平均分子量は、フッ素樹脂を溶融後に示差走査型熱量計(DSC)の降温測定を行って見積もった結晶化熱から、下記の文献に記載の方法に従って求めた分子量である。測定は5回行い、最大値及び最小値を除いた3つの値の平均値を採用する。
文献:Suwa,T.;Takehisa,M.;Machi,S.,J.Appl.Polym.Sci.vol.17,pp.3253(1973).
【0100】
本開示の自立膜におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物中の上記TFE系ポリマーの含有量は、上記TFE系ポリマー組成物に対し、95.0質量%以上であってよく、98.0質量%以上であることが好ましく、99.0質量%以上であることがより好ましく、99.5質量%以上であることが更に好ましく、99.9質量%以上であることが特に好ましく、99.95質量%以上であることが最も好ましい。
【0101】
本開示の自立膜におけるバインダー中の上記TFE系ポリマー組成物の含有量は、上記バインダーに対し、95.0質量%以上であってよく、98.0質量%以上であることが好ましく、99.0質量%以上であることがより好ましく、99.5質量%以上であることが更に好ましく、99.9質量%以上であることが特に好ましく、99.95質量%以上であることが最も好ましい。
【0102】
本開示の自立膜(1)、(3)、(4)及び(6)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、0.1%質量減少温度が400℃以下であってよい。本開示の自立膜(2)及び(5)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、0.1%質量減少温度が400℃以下である。
0.1%質量減少温度が400℃以下であるTFE系ポリマー組成物は、炭化水素系界面活性剤を用いることにより得られる。
上記0.1%質量減少温度は、350℃以上であってよい。
上記0.1%質量減少温度は、下記方法にて測定した値である。
300℃以上の温度に加熱した履歴のないTFE系ポリマーの組成物約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納してTG・DTA(示差熱・熱重量同時測定装置)を測定する。0.1%質量減少温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させ、0.1mass%の重量減少した点に対応する温度とする。
【0103】
本開示の自立膜(1)、(2)、(4)及び(5)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、1.0%質量減少温度が492℃以下であってよい。本開示の自立膜(3)及び(6)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、1.0%質量減少温度が492℃以下である。
1.0%質量減少温度が492℃以下であるTFE系ポリマー組成物は、炭化水素系界面活性剤を用いることにより得られる。
上記1.0%質量減少温度は、400℃以上であってよく、420℃以上であってもよく、450℃以上であってもよく、470℃以上であってもよい。
上記1.0%質量減少温度は、下記方法にて測定した値である。
300℃以上の温度に加熱した履歴のないTFE系ポリマーの組成物約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納してTG・DTA(示差熱・熱重量同時測定装置)を測定する。1.0%質量減少温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させ、1.0mass%の重量減少した点に対応する温度とする。
【0104】
本開示の自立膜(1)~(3)、(5)及び(6)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、TIIが20以上であることが好ましい。本開示の自立膜(4)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、熱安定指数(TII)が20以上である。
TIIが20以上であるTFE系ポリマー組成物は、炭化水素系界面活性剤を用いることにより得られる。TIIは、25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、35以上であることが更に好ましく、40以上であることが特に好ましい。TIIは、また、50以下であることが好ましい。
上記TIIは、ASTM D 4895-89に準拠して測定する。
【0105】
本開示の自立膜(1)、(5)及び(6)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、延伸可能であることが好ましい。本開示の自立膜(2)~(4)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、延伸可能である。延伸可能であると、結着力、合剤シートの強度及び柔軟性が一層向上する。
TFE系ポリマー組成物が延伸可能であるとは、以下の延伸試験において破断しないことを意味する。
上記のRR100でのペースト押出により得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去する。次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔が1.5インチ(38mm)となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱する。次いでクランプを所望のストレッチ(総ストレッチ)に相当する分離距離となるまで所望の速度(ストレッチ速度)で離し、延伸試験(ストレッチ試験)を実施する。このストレッチ方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従う。『ストレッチ』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さに対する比率として表される。ストレッチ方法においてストレッチ速度は、1000%/秒であり、上記総ストレッチは2400%である。
【0106】
本開示の自立膜(1)~(4)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、標準比重(SSG)が2.200以下であることが好ましい。本開示の自立膜(5)及び(6)におけるバインダーに用いるTFE系ポリマー組成物は、SSGが2.200以下である。SSGが2.200以下であると、延伸性、結着力、合剤シートの強度及び柔軟性が向上する。
上記SSGは、2.190以下であることがより好ましく、2.180以下であることが更に好ましく、2.175以下であることが更により好ましく、2.170以下であることが殊更に好ましく、2.165以下であることが特に好ましい。
上記SSGは、また、2.130以上であることが好ましい。
上記SSGは、ASTM D 4895に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。
【0107】
本開示の自立膜におけるバインダーは、フィブリル径(中央値)が100nm以下の繊維状構造を有することが好ましい。上記フィブリル径(中央値)は、90nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることが更に好ましく、70nm以下であることが更により好ましく、65nm以下であることが更により好ましく、62nm以下であることが特に好ましい。このようにフィブリル径が細いバインダーが電気化学デバイス用合剤中に存在し、これが電気化学デバイス用合剤を構成する成分の粉体(電極活物質や固体電解質)同士を結着させる作用を奏することによって、合剤シートの強度及び柔軟性を一層向上させることができる。
なお、フィブリル化を進めすぎると、柔軟性が失われる傾向にある。下限は特に限定されるものではないが、強度の観点から、例えば、5nmであることが好ましく、10nmであることがより好ましく、15nmであることが更に好ましく、20nmであることが特に好ましい。
【0108】
上記フィブリル径(中央値)は、以下の方法によって測定した値である。
(1)走査型電子顕微鏡(S-4800型日立製作所製)を用いて、電気化学デバイス用合剤シートの拡大写真(7000倍)を撮影し画像を得る。
(2)この画像に水平方向に等間隔で2本の線を引き、画像を三等分する。
(3)上方の直線上にある全てのフィブリル化したバインダーについて、フィブリル化したバインダー1本あたり3箇所の直径を測定し、平均した値を当該フィブリル化したバインダーの直径とする。測定する3箇所は、フィブリル化したバインダーと直線との交点、交点からそれぞれ上下に0.5μmずつずらした場所を選択する(未繊維化のバインダー一次粒子は除く。)。
(4)上記(3)の作業を、下方の直線上にある全てのフィブリル化したバインダーに対して行う。
(5)1枚目の画像を起点に画面右方向に1mm移動し、再度撮影を行い、上記(3)及び(4)によりフィブリル化したバインダーの直径を測定する。これを繰り返し、測定した数が80本を超えた時点で終了とする。
(6)上記測定した全てのフィブリル化したバインダーの直径の中央値をフィブリル径の大きさとする。
【0109】
本開示の自立膜におけるバインダーは、上記TFE系ポリマーを含むTFE系ポリマー組成物から形成することができる。
【0110】
上記バインダーを形成するためのTFE系ポリマー組成物は、水分を実質的に含まないことが好ましい。これにより、合剤シートの強度及び柔軟性を向上させることができ、また、電池特性の劣化を抑制することもできる。また、組み合わせる電極活物質や固体電解質を広く選択することができるので、生産工程上有利である。水分を実質的に含まないとは、上記TFE系ポリマー組成物に対する水分含有量が0.050質量%以下であることを意味する。
上記水分含有量は、0.040質量%以下であることが好ましく、0.020質量%以下であることがより好ましく、0.010質量%以下であることが更に好ましく、0.005質量%以下であることが更により好ましく、0.002質量%以下であることが特に好ましい。
上記水分含有量は、以下の方法により測定する。
TFE系ポリマー組成物を150℃で2時間加熱した前後の質量を測定し、以下の式に従って算出する。試料を3回取り、それぞれ算出した後、平均を求め、当該平均値を採用する。
水分含有量(質量%)=[(加熱前のTFE系ポリマー組成物の質量(g))-(加熱後のTFE系ポリマー組成物の質量(g))]/(加熱前のTFE系ポリマー組成物の質量(g))×100
【0111】
上記TFE系ポリマー組成物は、分子量1000以下の含フッ素化合物(ただし、上述した化合物(1)及び(2)は除く。)を実質的に含まないことが好ましい。上記含フッ素化合物を実質的に含まないとは、上記含フッ素化合物の量が、上記TFE系ポリマー組成物に対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb未満であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが更により好ましく、3質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb未満であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、定量下限未満の量であってよい。
【0112】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物の量は、以下の方法により測定する。
試料を1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60分間の超音波処理を行ない、抽出液を得る。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮後の抽出液中の含フッ素化合物をLC/MS/MS測定する。得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素化合物の構造式との一致を確認する。標準物質の5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描く。上記検量線を用いて、抽出液中の含フッ素化合物のLC/MSクロマトグラムのエリア面積を、含フッ素化合物の含有量に換算する。
なお、この測定方法における定量下限は10質量ppbである。
【0113】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物の量は、以下の方法によっても測定することができる。
試料を1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60℃で2時間、超音波処理を行ない、室温で静置した後、固形分を除き、抽出液を得る。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮後の抽出液中の含フッ素化合物をLC/MS/MS測定する。得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素化合物の構造式との一致を確認する。濃度既知の含フッ素化合物のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計を用いて測定を行い、それぞれの濃度範囲において、メタノール標準溶液濃度とピークの積分値から一次近似を用い、検量線を作成する。上記検量線から、抽出液に含まれる含フッ素化合物の含有量を測定し、試料に含まれる含フッ素化合物の含有量を換算する。
なお、この測定方法における定量下限は1質量ppbである。
【0114】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物としては、例えば、分子量1000g/mol以下の親水基を有する含フッ素化合物が挙げられる。上記含フッ素化合物の分子量は、800以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。
含フッ素界面活性剤の存在下で行う重合により得られる重合粒子には、TFE系ポリマー以外に、含フッ素界面活性剤が含まれることが通常である。本明細書において、含フッ素界面活性剤は、重合時に使用されるものである。
上記分子量1000以下の含フッ素化合物は、重合の際に添加されていない化合物、例えば、重合途中で副生する化合物であってよい。
なお、上記分子量1000以下の含フッ素化合物は、アニオン性部とカチオン性部とを含む場合は、アニオン性部の分子量が1000以下であるフッ素を含む化合物を意味する。上記分子量1000以下の含フッ素化合物には、TFE系ポリマーは含まれないものとする。
【0115】
上記親水基としては、例えば、-COOM、-SO2M、又は、-SO3Mであってよく、-COOM、-SO3M(各式中、Mは、H、金属原子、NR1
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R1は、H又は有機基である。)等のアニオン性基が挙げられる。
【0116】
上記含フッ素界面活性剤としては、アニオン性部分の分子量が1000以下のフッ素を含む界面活性剤(アニオン性含フッ素界面活性剤)を用いることもできる。上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。例えば、F(CF2)n1COOMの場合には、「F(CF2)n1COO」の部分である。
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N0):
Xn0-Rfn0-Y0 (N0)
(式中、Xn0は、H、Cl又は及びFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分枝鎖状又は環状で、一部又は全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Y0はアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
Y0のアニオン性基は、-COOM、-SO2M、又は、-SO3Mであってよく、-COOM、又は、-SO3Mであってよい。
Mは、H、金属原子、NR1
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R1は、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、例えば、Na、K又はLiである。
R1としては、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
Mは、H、金属原子又はNR1
4であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR1
4であってよく、H、Na、K、Li又はNH4であってよい。
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
【0117】
上記含フッ素界面活性剤は、1種の含フッ素界面活性剤であってもよいし、2種以上の含フッ素界面活性剤を含有する混合物であってもよい。
【0118】
上記含フッ素界面活性剤としては、例えば、以下の式で表される化合物が挙げられる。含フッ素界面活性剤は、これらの化合物の混合物であってよい。
F(CF
2)
7COOM、
F(CF
2)
5COOM、
CF
3O(CF
2)
3OCHFCF
2COOM、
C
3F
7OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOM、
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COOM、
CF
3CF
2OCF
2CF
2OCF
2COOM、
C
2F
5OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOM、
CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOM、
CF
2ClCF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2COOM、
CF
2ClCF
2CF
2OCF
2CF(CF
3)OCF
2COOM、
CF
2ClCF(CF
3)OCF(CF
3)CF
2OCF
2COOM、
CF
2ClCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2COOM、及び、
【化3】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR
1
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。R
1は、H又は有機基である。)。
本開示のTFE系ポリマー組成物は、上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないことが好ましい。
【0119】
上記の各式において、Mは、H、金属原子又はNR1
4であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR1
4であってよく、H、Na、K、Li又はNH4であってよい。
R1は、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
【0120】
本開示のTFE系ポリマー組成物が上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないものであると、合剤シートの強度及び柔軟性を一層向上させることができる。
上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記TFE系ポリマー組成物に対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb未満であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが更により好ましく、3質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb未満であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、定量下限未満の量であってよい。
【0121】
本開示のTFE系ポリマー組成物は、下記一般式:
[Cn-1F2n-1COO-]M+
(式中、nは9~14の整数、好ましくは9~12の整数、M+はカチオンを表す。)で表される含フッ素化合物を実質的に含まないことも好ましい。これにより、合剤シートの強度及び柔軟性を一層向上させることができる。
上記式中のカチオンM+を構成するMは、上述したMと同様である。
上記式で表される含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記TFE系ポリマー組成物に対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb未満であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが更により好ましく、3質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb未満であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、定量下限未満の量であってよい。
【0122】
上記TFE系ポリマー組成物は、非溶融二次加工性を有することが好ましい。上記非溶融二次加工性とは、ASTM D-1238及びD-2116に準拠して、融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質、言い換えると、溶融温度領域でも容易に流動しない性質を意味する。
【0123】
上記TFE系ポリマー組成物は、結着力、合剤シートの強度及び柔軟性が向上する点で、リダクションレシオ(RR)100における押出圧力が10MPa以上であることが好ましく、12MPa以上であることがより好ましく、15MPa以上であることが更に好ましく、16MPa以上であることが更により好ましく、17MPa以上であることが特に好ましい。
RR100における押出圧力は、また、加工性が向上する点で、50MPa以下であることが好ましく、40MPa以下であることがより好ましく、35MPa以下であることが更に好ましく、30MPa以下であることが更により好ましく、25MPa以下であることが更により好ましく、21MPa以下であることが更により好ましく、20MPa以下であることが特に好ましい。
【0124】
RR100における押出圧力は、特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し、下記方法で求める。
TFE系ポリマー組成物100gに、潤滑剤(商品名:アイソパーH(登録商標)、エクソン社製)21.7gを添加し、室温にてガラスビン中で3分間混合する。次いで、ガラスビンを、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置し、潤滑化樹脂を得る。潤滑化樹脂をオリフィス(直径2.5mm、ランド長11mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得る。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とする。ペースト押出において押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除することにより、押出圧力を算出する。
【0125】
上記TFE系ポリマー組成物は、結着力、合剤シートの強度及び柔軟性が向上する点で、RR300における押出圧力が18MPa以上であることが好ましく、23MPa以上であることがより好ましく、25MPa以上であることが更に好ましく、28MPa以上であることが更により好ましく、30MPa以上であることが殊更に好ましく、32MPa以上であることが特に好ましい。
RR300における押出圧力は、また、加工性が向上する点で、45MPa以下であることが好ましく、40MPa以下であることがより好ましい。
【0126】
RR300における押出圧力は、以下の方法により測定する。
TFE系ポリマー組成物50gと押出助剤としての炭化水素油(商品名:アイソパーE、エクソンモービル社製)11.00gとをポリエチレン容器内で3分間混合する。室温(25±2℃)で、押出機のシリンダーに上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに0.47MPaの負荷をかけて1分間保持する。次にラム速度18mm/minでオリフィスから押出する。オリフィスの断面積に対するシリンダーの断面積の比(リダクションレシオ)は300である。押出操作の後半において、圧力が平衡状態になったときの荷重(N)をシリンダー断面積で除した値を押出圧力(MPa)とする。
【0127】
上記TFE系ポリマー組成物は、結着力、合剤シートの強度及び柔軟性が向上する点で、破断強度が10.0N以上であることが好ましく、13.0N以上であることがより好ましく、16.0N以上であることが更に好ましく、19.0N以上であることが更により好ましく、22.0N以上であることが更により好ましく、25.0N以上であることが更により好ましく、28.0N以上であることが更により好ましく、30.0N以上であることが更により好ましく、32.0N以上であることが更により好ましく、35.0N以上であることが特に好ましい。破断強度は高ければ高いほどよいが、100.0N以下であってよく、80.0N以下であってもよく、50.0N以下であってもよい。
上記破断強度は、下記方法で求めた値である。
上記延伸試験で得られた延伸ビード(ビードをストレッチすることによって作製されたもの)について、5.0cmのゲージ長である可動ジョーにおいて挟んで固定し、25℃で300mm/分の速度で引っ張り試験を行い、破断した時の強度を破断強度として測定する。
【0128】
上記TFE系ポリマー組成物は、結着力、合剤シートの強度及び柔軟性が一層向上する点で、24倍に延伸可能であることが好ましい。
24倍に延伸可能であるとは、上記の延伸試験の延伸中に破断しないことを意味する。
【0129】
上記TFE系ポリマー組成物の形態は限定されないが、分散媒を多量に使用することなく電極活物質や固体電解質と混合できる点で、粉末であることが好ましい。
なお、上記TFE系ポリマー組成物は、粉末以外の形態であってもよく、例えば、分散液であってもよい。
【0130】
上記TFE系ポリマー組成物は、平均一次粒子径が100~350nmであることが好ましい。平均一次粒子径が上記範囲内にあることにより、上記TFE系ポリマーの分子量が高く、結着力及び合剤シートの柔軟性が向上する。
上記平均一次粒子径は、330nm以下であることがより好ましく、320nm以下であることが更に好ましく、300nm以下であることが更により好ましく、280nm以下であることが更により好ましく、250nm以下であることが特に好ましく、また、150nm以上であることがより好ましく、170nm以上であることが更に好ましく、200nm以上であることが更により好ましい。
上記平均一次粒子径は、以下の方法により測定する。
TFE系ポリマー水性分散液を水で固形分濃度0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向を測定して決定した数基準長さ平均粒子径とを測定して、検量線を作成する。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率から数平均粒子径を決定し、平均一次粒子径とする。
また、平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定できる。動的光散乱法においては、固形分濃度を約1.0質量%に調整したTFE系ポリマー水性分散液を作製し、ELSZ-1000S(大塚電子社製)を使用して25℃、積算70回にて測定する。溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・sとする。
【0131】
上記TFE系ポリマー組成物は、平均二次粒子径が350μm以上であってよく、400μm以上であることが好ましく、450μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが更に好ましく、550μm以上であることが更により好ましく、600μm以上であることが特に好ましく、また、1000μm以下であることが好ましく、900μm以下であることがより好ましく、800μm以下であることが更に好ましく、700μm以下であることが更により好ましい。
上記平均二次粒子径は、JIS K 6891に準拠して測定する。
【0132】
上記TFE系ポリマー組成物は、取り扱い性に優れる点で、平均アスペクト比が2.0以下であってよく、1.8以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.6以下であることが更に好ましく、1.5以下であることが更により好ましく、1.4以下であることが更により好ましく、1.3以下であることが殊更に好ましく、1.2以下であることが特に好ましく、1.1以下であることが最も好ましい。上記平均アスペクト比は、また、1.0以上であってよい。
上記平均アスペクト比は、TFE系ポリマー組成物、又は、固形分濃度が約1質量%となるように希釈したTFE系ポリマー水性分散液を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した200個以上の粒子について画像処理を行い、その長径と短径の比の平均より求める。
【0133】
上記TFE系ポリマー組成物は、成形性が良好で、破断強度が高い合剤シートが得られる点で、アスペクト比が1.5以上の繊維状粒子を、全TFE系ポリマー粒子に対して、20~60%の割合で含むことが好ましい。
上記繊維状粒子の全粒子に対する割合は、以下のようにして算出することができる。
(1)上記繊維状粒子を含むTFE系ポリマー粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像する。撮影倍率は、例えば、300~1000倍とすることができる。
(2)撮像した画像をコンピュータに取り込み、ImageJ等の画像解析ソフトで、全粒子を上記繊維状粒子と、アスペクト比が1.5未満の粒子とに分ける。
(3)上記繊維状粒子の個数を、全粒子の個数、即ち、上記繊維状粒子とアスペクト比が1.5未満の粒子の個数の合計で除して、全粒子に対する上記繊維状粒子の割合を算出する。
上記アスペクト比が1.5以上の繊維状粒子は、例えば、上記TFE系ポリマー組成物を電極活物質や固体電解質と混合する際に形成される。
【0134】
上記TFE系ポリマー組成物は、取り扱い性に優れる点で、見掛密度が0.40g/ml以上であることが好ましく、0.43g/ml以上であることがより好ましく、0.45g/ml以上であることが更に好ましく、0.48g/ml以上であることが更により好ましく、0.50g/ml以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、0.70g/mlであっても構わない。
上記見掛密度は、JIS K 6892に準拠して測定する。
【0135】
上記TFE系ポリマー組成物は、例えば、炭化水素系界面活性剤を用いた乳化重合によりTFE系ポリマーの水性分散液を得る工程(A)、上記水性分散液を凝析して湿潤粉末を得る工程(B)、及び、上記湿潤粉末を乾燥(熱処理)する工程(C)を含む製造方法によって好適に製造することができる。
炭化水素系界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0136】
上記炭化水素系界面活性剤は、カルボン酸型炭化水素系界面活性剤であることが好ましい。上記カルボン酸型炭化水素系界面活性剤としては、カルボキシ基(-COOH)又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するものであれば限定されず、例えば、後述する特定の炭化水素系界面活性剤、その他の界面活性能を有する化合物の中から、カルボキシ基又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオンに置換された基を有する炭化水素系界面活性剤を使用することができる。
【0137】
上記炭化水素系界面活性剤は、スルホン酸型炭化水素系界面活性剤であることも好ましい。上記スルホン酸型炭化水素系界面活性剤としては、-SO3H基、-OSO3H基、又はこれらの基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するものであれば限定されず、例えば、後述する特定の炭化水素系界面活性剤、その他の界面活性能を有する化合物の中から、-SO3H基、-OSO3H基、又はこれらの基の水素原子が無機陽イオンに置換された基を有する炭化水素系界面活性剤を使用することができる。
【0138】
上記炭化水素系界面活性剤は、乳化性能が良好となる点で、水溶性を示すことが好ましい。炭化水素系界面活性剤が水溶性を示すとは、85℃において炭化水素系界面活性剤が溶解する対水最大濃度が100質量ppm以上であることを意味する。上記対水最大濃度は500質量ppm以上であることが好ましく、1000質量ppm以上であることがより好ましく、2000質量ppm以上であることが更に好ましく、3000質量ppm以上であることが更により好ましく、5000質量ppm以上であることが更により好ましく、1質量%以上であることが更により好ましく、3質量%以上であることが更により好ましく、5質量%以上であることが更により好ましく、10質量%以上であることが特に好ましく、また、50質量%以下であってよい。
【0139】
工程(A)は、特定の炭化水素系界面活性剤の存在下、テトラフルオロエチレンのみの乳化重合、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとの乳化重合を水性媒体中で行う工程、及び、上記工程において、特定の炭化水素系界面活性剤を連続的に添加する工程を含むことが好ましい。
【0140】
特定の炭化水素系界面活性剤を連続的に添加するとは、例えば、特定の炭化水素系界面活性剤を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なく又は分割して、添加することである。特定の炭化水素系界面活性剤は、例えば、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を1つ以上有する炭化水素系界面活性剤、又は、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を1つ以上有する炭化水素系界面活性剤にラジカル処理または酸化処理を行った炭化水素系界面活性剤である。上記ラジカル処理とは、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を1つ以上有する炭化水素系界面活性剤にラジカルを発生させる処理であればよく、例えば、反応器に、脱イオン水、炭化水素系界面活性剤を加え、反応器を密閉し、系内を窒素で置換し、反応器を昇温・昇圧した後、重合開始剤を仕込み、一定時間撹拌した後、反応器を大気圧になるまで脱圧を行い、冷却を行う処理である。上記酸化処理とは、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を1つ以上有する炭化水素系界面活性剤に酸化剤を添加させる処理である。酸化剤としては、例えば、酸素、オゾン、過酸化水素水、酸化マンガン(IV)、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、硝酸、二酸化硫黄などが挙げられる。上記製造方法により、従来の含フッ素界面活性剤を使用せずとも、従来の含フッ素界面活性剤を使用する製造方法と同等の分子量を有するTFE系ポリマーを製造可能である。
【0141】
上記製造方法において、上記特定の炭化水素系界面活性剤を連続的に添加する工程は、水性媒体中に形成されるTFE系ポリマーの固形分含有量が0.60質量%未満であるときに、炭化水素系界面活性剤を水性媒体中に添加し始めるものであることが好ましい。0.5質量%以下であるときに、上記特定の炭化水素系界面活性剤を水性媒体中に添加し始めるものであることが好ましい。上記特定の炭化水素系界面活性剤は、上記固形分含有量が0.3質量%以下であるときに添加し始めることがより好ましく、0.2質量%以下であるときに添加し始めることが更に好ましく、0.1質量%以下であるときに添加し始めることが更により好ましく、重合開始とともに、添加し始めることが特に好ましい。上記固形分含有量は、水性媒体及びTFE系ポリマーの合計に対する濃度である。
【0142】
上記の特定の炭化水素系界面活性剤を連続的に添加する工程において、上記特定の炭化水素系界面活性剤の添加量は、水性媒体100質量%に対して0.01~10質量%であることが好ましい。より好ましい下限は0.05質量%であり、更に好ましい下限は0.1質量%であり、より好ましい上限は5質量%であり、更に好ましい上限は1質量%である。
【0143】
上記の特定の炭化水素系界面活性剤の存在下、テトラフルオロエチレンのみの乳化重合、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとの乳化重合を水性媒体中で行う工程において、上記特定の炭化水素系界面活性剤の量は、多いことが好ましく、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%であることが好ましい。より好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい上限は1質量%である。0.0001質量%未満であると、分散力が不充分となるおそれがあり、10質量%を超えると、量に見合った効果が得られず、却って重合速度の低下や反応停止が起こるおそれがある。上記特定の炭化水素系界面活性剤の量は、使用するモノマーの種類、目的とするTFE系ポリマーの分子量等によって適宜決定される。
【0144】
上記特定の炭化水素系界面活性剤としては、式:R-X(式中、Rは、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を1つ以上有する炭素数1~2000のフッ素非含有有機基であり、Xは、-OSO
3X
1、-COOX
1又は-SO
3X
1(X
1は、H、金属原子、NR
1
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R
1はH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。))で示される界面活性剤、及び、後述する界面活性剤(e)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。Rは、炭素数が500以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましく、30以下であることが更により好ましい。
上記特定の炭化水素系界面活性剤としては、下記式(a):
【化4】
(式中、R
1aは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素原子に結合した水素原子がヒドロキシ基又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよく、炭素数が2以上の場合はカルボニル基を含んでもよく、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を形成していてもよい。R
2a及びR
3aは、独立に、単結合又は2価の連結基である。R
1a、R
2a及びR
3aは、炭素数が合計で6以上である。X
aは、H、金属原子、NR
4a
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R
4aはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。R
1a、R
2a及びR
3aは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(a)、下記式(b):
【化5】
(式中、R
1bは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を形成していてもよい。R
2b及びR
4bは、独立に、H又は置換基である。R
3bは、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基である。nは、1以上の整数である。p及びqは、独立に、0以上の整数である。X
bは、H、金属原子、NR
5b
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R
5bはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。R
1b、R
2b、R
3b及びR
4bは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。Lは、単結合、-CO
2-B-*、-OCO-B-*、-CONR
6b-B-*、-NR
6bCO-B-*、又は、-CO-(但し、-CO
2-B-、-OCO-B-、-CONR
6b-B-、-NR
6CO-B-に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1から10のアルキレン基であり、R
6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1~4のアルキル基である。*は、式中の-OSO
3X
bに結合する側を指す。)で示される界面活性剤(b)、下記式(c):
【化6】
(式中、R
1cは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素原子に結合した水素原子がヒドロキシ基又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよく、炭素数が2以上の場合はカルボニル基を含んでもよく、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を形成していてもよい。R
2c及びR
3cは、独立に、単結合又は2価の連結基である。R
1c、R
2c及びR
3cは、炭素数が合計で5以上である。A
cは、-COOX
c又は-SO
3X
c(X
cは、H、金属原子、NR
4c
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R
4cはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R
1c、R
2c及びR
3cは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(c)、下記式(d):
【化7】
(式中、R
1dは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を形成していてもよい。R
2d及びR
4dは、独立に、H又は置換基である。R
3dは、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基である。nは、1以上の整数である。p及びqは、独立に、0以上の整数である。A
dは、-SO
3X
d又は-COOX
d(X
dは、H、金属原子、NR
5d
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R
5dはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R
1d、R
2d、R
3d及びR
4dは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。Lは、単結合、-CO
2-B-*、-OCO-B-*、-CONR
6d-B-*、-NR
6dCO-B-*、又は、-CO-(但し、-CO
2-B-、-OCO-B-、-CONR
6d-B-、-NR
6dCO-B-に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1から10のアルキレン基であり、R
6dは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1~4のアルキル基である。*は、式中のA
dに結合する側を指す。)で示される界面活性剤(d)、及び、下記式(e):
【化8】
(式中、R
1e~R
5eはH又は一価の置換基を表し、但し、R
1e及びR
3eのうち、少なくとも1つは、一般式:-Y
e-R
6eで示される基、R
2e及びR
5eのうち、少なくとも1つは、一般式:-X
e-A
eで示される基、又は、一般式:-Y
e-R
6eで示される基を表す。
また、X
eは、各出現において同一又は異なって、2価の連結基、又は、結合手;
A
eは、各出現において同一又は異なって、-COOM
e、-SO
3M
e又は-OSO
3M
e(M
eは、H、金属原子、NR
7e
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R
7eは、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基));
Y
eは、各出現において同一又は異なって、-S(=O)
2-、-O-、-COO-、-OCO-、-CONR
8e-及び-NR
8eCO-からなる群より選択される2価の連結基、又は、結合手、R
8eはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基);
R
6eは、各出現において同一又は異なって、カルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を炭素-炭素原子間に含んでもよい炭素数2以上のアルキル基;
を表す。
R
1e~R
5eのうち、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(e)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0145】
界面活性剤(a)について説明する。
【0146】
式(a)中、R1aは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合、2つの炭素原子間にカルボニル基(-C(=O)-)を含んでもよい。また、上記アルキル基は、炭素数が2以上の場合、上記アルキル基の末端に上記カルボニル基を含むこともできる。すなわち、CH3-C(=O)-で示されるアセチル基等のアシル基も、上記アルキル基に含まれる。
また、上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含むこともできるし、環を形成することもできる。上記複素環としては、不飽和複素環が好ましく、含酸素不飽和複素環がより好ましく、例えば、フラン環等が挙げられる。R1aにおいて、2価の複素環が2つの炭素原子間に挿入されていてもよいし、2価の複素環が末端に位置して-C(=O)-と結合してもよいし、1価の複素環が上記アルキル基の末端に位置してもよい。
【0147】
なお、本明細書において、上記アルキル基の「炭素数」には、カルボニル基を構成する炭素原子の数及び上記複素環を構成する炭素原子の数も含めるものとする。例えば、CH3-C(=O)-CH2-で示される基は炭素数が3であり、CH3-C(=O)-C2H4-C(=O)-C2H4-で示される基は炭素数が7であり、CH3-C(=O)-で示される基は炭素数が2である。
【0148】
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R101a(式中、R101aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0149】
式中、R2a及びR3aは、独立に、単結合又は2価の連結基である。
R2a及びR3aは、独立に、単結合又は炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又は炭素数3以上の環状のアルキレン基であることが好ましい。
R2a及びR3aを構成する上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
【0150】
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R102a(式中、R102aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
【0151】
R1a、R2a及びR3aは、炭素数が合計で6以上である。合計の炭素数としては、8以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。
R1a、R2a及びR3aは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
【0152】
式(a)中、Xaは、H、金属原子、NR4a
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R4aはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。4つのR4aは、同一でも異なっていてもよい。R4aにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R4aとしては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Xaとしては、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR4a
4が好ましく、水に溶解しやすいことから、H、Na、K、Li又はNH4がより好ましく、水に更に溶解しやすいことから、Na、K又はNH4が更に好ましく、Na又はNH4が特に好ましく、除去が容易であることから、NH4が最も好ましい。XaがNH4であると、上記界面活性剤の水性媒体への溶解性が優れるとともに、TFE系ポリマー中又は最終製品中に金属成分が残留しにくい。
【0153】
R1aとしては、カルボニル基を含まない炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、カルボニル基を含まない炭素数3~8の環状のアルキル基、1~10個のカルボニル基を含む炭素数2~45の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、カルボニル基を含む炭素数3~45の環状のアルキル基、又は、炭素数が3~45の1価又は2価の複素環を含むアルキル基が好ましい。
【0154】
また、R
1aとしては、下記式:
【化9】
(式中、n
11aは0~10の整数であり、R
11aは炭素数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~5の環状のアルキル基であり、R
12aは炭素数0~3のアルキレン基である。n
11aが2~10の整数である場合、R
12aは各々同じであっても異なっていてもよい。)で示される基がより好ましい。
【0155】
n11aとしては、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましく、1~3の整数が更に好ましい。
【0156】
R11aとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
R11aとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R103a(式中、R103aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
R11aとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0157】
R12aは炭素数0~3のアルキレン基である。上記炭素数は1~3が好ましい。
R12aとしての上記アルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状であってよい。
R12aとしての上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。R12aとしては、エチレン基(-C2H4-)又はプロピレン基(-C3H6-)がより好ましい。
R12aとしての上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R104a(式中、R104aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
R12aとしての上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
【0158】
R2a及びR3aとしては、独立に、カルボニル基を含まない炭素数1以上のアルキレン基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~3のアルキレン基がより好ましく、エチレン基(-C2H4-)又はプロピレン基(-C3H6-)が更に好ましい。
【0159】
界面活性剤(a)としては、次の界面活性剤が例示できる。各式中、Xaは上述のとおりである。
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
界面活性剤(a)は、例えば、国際公開第2020/022355号に記載される製造方法により製造することができる。
【0169】
次に界面活性剤(b)について説明する。
【0170】
式(b)中、R1bは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含むこともできるし、環を形成することもできる。上記複素環としては、不飽和複素環が好ましく、含酸素不飽和複素環がより好ましく、例えば、フラン環等が挙げられる。R1bにおいて、2価の複素環が2つの炭素原子間に挿入されていてもよいし、2価の複素環が末端に位置して-C(=O)-と結合してもよいし、1価の複素環が上記アルキル基の末端に位置してもよい。
【0171】
なお、本明細書において、上記アルキル基の「炭素数」には、上記複素環を構成する炭素原子の数も含めるものとする。
【0172】
R1bとしての上記アルキル基が有してもよい上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0173】
R1bとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0174】
R1bとしては、置換基を有してもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3~10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更により好ましく、メチル基(-CH3)又はエチル基(-C2H5)が特に好ましく、メチル基(-CH3)が最も好ましい。
【0175】
式(b)中、R2b及びR4bは、独立に、H又は置換基である。複数個のR2b及びR4bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0176】
R2b及びR4bとしての上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0177】
R2b及びR4bとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0178】
R2b及びR4bとしての上記アルキル基としては、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、メチル基(-CH3)又はエチル基(-C2H5)が特に好ましい。
【0179】
R2b及びR4bとしては、独立に、H又はカルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、H又は置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、H、メチル基(-CH3)又はエチル基(-C2H5)が更により好ましく、Hが特に好ましい。
【0180】
式(b)中、R3bは、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基である。R3bは、複数個存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
【0181】
上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキレン基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0182】
上記アルキレン基としては、置換基を有してもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又は置換基を有してもよい炭素数3~10の環状のアルキレン基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキレン基が好ましく、置換基を有さない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-C2H4-)、イソプロピレン基(-CH(CH3)CH2-)又はプロピレン基(-C3H6-)が更に好ましい。
【0183】
R1b、R2b、R3b及びR4bは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよいが、環を形成していないことが好ましい。
【0184】
式(b)中、nは、1以上の整数である。nとしては、1~40の整数が好ましく、1~30の整数がより好ましく、5~25の整数が更に好ましく、5~9、11~25の整数が特に好ましい。
【0185】
式(b)中、p及びqは、独立に、0以上の整数である。pとしては、0~10の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。qとしては、0~10の整数が好ましく、0~5の整数がより好ましい。
【0186】
n、p及びqは、合計が5以上の整数であることが好ましい。n、p及びqの合計は8以上の整数であることがより好ましい。n、p及びqの合計はまた、60以下の整数であることが好ましく、50以下の整数であることがより好ましく、40以下の整数であることが更に好ましい。
【0187】
式(b)中、Xbは、H、金属原子、NR5b
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R5bはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。4つのR5bは、同一でも異なっていてもよい。R5bにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R5bとしては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。Xbは金属原子又はNR5b
4(R5bは上記のとおり)であってよい。
Xbとしては、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR5b
4が好ましく、水に溶解しやすいことから、H、Na、K、Li又はNH4がより好ましく、水に更に溶解しやすいことから、Na、K又はNH4が更に好ましく、Na又はNH4が特に好ましく、除去が容易であることから、NH4が最も好ましい。XbがNH4であると、上記界面活性剤の水性媒体への溶解性が優れるとともに、TFE系ポリマー中又は最終製品中に金属成分が残留しにくい。
【0188】
式(b)中、Lは、単結合、-CO2-B-*、-OCO-B-*、-CONR6b-B-*、-NR6bCO-B-*、又は、-CO-(但し、-CO2-B-、-OCO-B-、-CONR6b-B-、-NR6CO-B-に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基であり、R6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1~4のアルキル基である。上記アルキレン基は、炭素数が1~5であることがより好ましい。また、上記R6は、H又はメチル基であることがより好ましい。*は、式中の-OSO3Xbに結合する側を指す。
【0189】
Lは単結合であることが好ましい。
【0190】
界面活性剤(b)としては、下記式:
【化18】
(式中、R
1b、R
2b、L、n及びX
bは、上記のとおり。)で示される化合物が好ましい。
【0191】
上記界面活性剤(b)は、1H-NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0~5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が10%以上であることが好ましい。
【0192】
上記界面活性剤(b)は、1H-NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0~5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が上記範囲内にあることが好ましい。この場合、上記界面活性剤は分子中にケトン構造を有することが好ましい。
【0193】
上記界面活性剤(b)において、上記積分値は、15以上がより好ましく、95以下が好ましく、80以下がより好ましく、70以下が更に好ましい。
【0194】
上記積分値は、重水溶媒にて室温下に測定する。重水を4.79ppmとする。
【0195】
界面活性剤(b)としては、例えば、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
(CH3)3CC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
(CH3)2CHC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
(CH2)5CHC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OCH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)NHCH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2NHC(O)CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)OCH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OC(O)CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3H、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Li、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3K、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3NH4、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH(CH3)2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
(CH3)3CC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
(CH3)2CHC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
(CH2)5CHC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OCH2CH2OSO3Na、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)NHCH2CH2OSO3Na、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2NHC(O)CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)OCH2CH2OSO3Na、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OC(O)CH2CH2OSO3Na、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)OSO3Na、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3H、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Li、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3K、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3NH4、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OSO3Na等が挙げられる。
【0196】
界面活性剤(b)は、例えば、国際公開第2020/022355号に記載される製造方法により製造することができる。
【0197】
次に、界面活性剤(c)について説明する。
【0198】
式(c)中、R1cは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合、2つの炭素原子間にカルボニル基(-C(=O)-)を含んでもよい。また、上記アルキル基は、炭素数が2以上の場合、上記アルキル基の末端に上記カルボニル基を含むこともできる。すなわち、CH3-C(=O)-で示されるアセチル基等のアシル基も、上記アルキル基に含まれる。
また、上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含むこともできるし、環を形成することもできる。上記複素環としては、不飽和複素環が好ましく、含酸素不飽和複素環がより好ましく、例えば、フラン環等が挙げられる。R1cにおいて、2価の複素環が2つの炭素原子間に挿入されていてもよいし、2価の複素環が末端に位置して-C(=O)-と結合してもよいし、1価の複素環が上記アルキル基の末端に位置してもよい。
【0199】
なお、本明細書において、上記アルキル基の「炭素数」には、カルボニル基を構成する炭素原子の数及び上記複素環を構成する炭素原子の数も含めるものとする。例えば、CH3-C(=O)-CH2-で示される基は炭素数が3であり、CH3-C(=O)-C2H4-C(=O)-C2H4-で示される基は炭素数が7であり、CH3-C(=O)-で示される基は炭素数が2である。
【0200】
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R101c(式中、R101cはアルキル基)で示される基が挙げられる。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0201】
式(c)中、R2c及びR3cは、独立に、単結合又は2価の連結基である。
R2c及びR3cは、独立に、単結合又は炭素数1以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基又は炭素数3以上の環状のアルキレン基であることが好ましい。
R2c及びR3cを構成する上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
【0202】
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R102c(式中、R102cはアルキル基)で示される基が挙げられる。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
【0203】
R1c、R2c及びR3cは、炭素数が合計で5以上である。合計の炭素数としては、7以上が好ましく、9以上がより好ましく、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。
R1c、R2c及びR3cは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
【0204】
式(c)中、式中、Acは、-COOXc又は-SO3Xc(Xcは、H、金属原子、NR4c
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R4cはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R4cにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R4cとしては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Xcとしては、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR4c
4が好ましく、水に溶解しやすいことから、H、Na、K、Li又はNH4がより好ましく、水に更に溶解しやすいことから、Na、K又はNH4が更に好ましく、Na又はNH4が特に好ましく、除去が容易であることから、NH4が最も好ましい。XcがNH4であると、上記界面活性剤の水性媒体への溶解性が優れるとともに、TFE系ポリマー中又は最終製品中に金属成分が残留しにくい。
【0205】
R1cとしては、カルボニル基を含まない炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、カルボニル基を含まない炭素数3~8の環状のアルキル基、1~10個のカルボニル基を含む炭素数2~45の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、カルボニル基を含む炭素数3~45の環状のアルキル基、又は、炭素数が3~45の1価又は2価の複素環を含むアルキル基が好ましい。
【0206】
また、R
1cとしては、下記式:
【化19】
(式中、n
11cは0~10の整数であり、R
11cは炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~5の環状のアルキル基であり、R
12cは炭素数0~3のアルキレン基である。n
11cが2~10の整数である場合、R
12cは各々同じであっても異なっていてもよい。)で示される基がより好ましい。
【0207】
n11cとしては、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましく、1~3の整数が更に好ましい。
【0208】
R11cとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
R11cとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R103c(式中、R103cはアルキル基)で示される基が挙げられる。
R11cとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0209】
R12cは炭素数0~3のアルキレン基である。上記炭素数は1~3が好ましい。
R12cとしての上記アルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状であってよい。
R12cとしての上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。R12cとしては、エチレン基(-C2H4-)又はプロピレン基(-C3H6-)がより好ましい。
R12cとしての上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R104c(式中、R104cはアルキル基)で示される基が挙げられる。
R12cとしての上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
【0210】
R2c及びR3cとしては、独立に、カルボニル基を含まない炭素数1以上のアルキレン基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~3のアルキレン基がより好ましく、エチレン基(-C2H4-)又はプロピレン基(-C3H6-)が更に好ましい。
【0211】
上記界面活性剤(c)としては、次の界面活性剤が例示できる。各式中、Acは上述のとおりである。
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
界面活性剤(c)は、例えば、国際公開第2020/022355号に記載される製造方法により製造することができる。
【0221】
次に、界面活性剤(d)について説明する。
【0222】
式(d)中、R1dは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含むこともできるし、環を形成することもできる。上記複素環としては、不飽和複素環が好ましく、含酸素不飽和複素環がより好ましく、例えば、フラン環等が挙げられる。R1dにおいて、2価の複素環が2つの炭素原子間に挿入されていてもよいし、2価の複素環が末端に位置して-C(=O)-と結合してもよいし、1価の複素環が上記アルキル基の末端に位置してもよい。
【0223】
なお、本明細書において、上記アルキル基の「炭素数」には、上記複素環を構成する炭素原子の数も含めるものとする。
【0224】
R1dとしての上記アルキル基が有してもよい上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0225】
R1dとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0226】
R1dとしては、置換基を有してもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3~10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更により好ましく、メチル基(-CH3)又はエチル基(-C2H5)が特に好ましく、メチル基(-CH3)が最も好ましい。
【0227】
式(d)中、R2d及びR4dは、独立に、H又は置換基である。複数個のR2d及びR4dは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0228】
R2d及びR4dとしての上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0229】
R2d及びR4dとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0230】
R2d及びR4dとしての上記アルキル基としては、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、メチル基(-CH3)又はエチル基(-C2H5)が特に好ましい。
【0231】
R2d及びR4dとしては、独立に、H又はカルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、H又は置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、H、メチル基(-CH3)又はエチル基(-C2H5)が更により好ましく、Hが特に好ましい。
【0232】
式(d)中、R3dは、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基である。R3dは、複数個存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
【0233】
上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキレン基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0234】
上記アルキレン基としては、置換基を有してもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又は置換基を有してもよい炭素数3~10の環状のアルキレン基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキレン基が好ましく、置換基を有さない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-C2H4-)、イソプロピレン基(-CH(CH3)CH2-)又はプロピレン基(-C3H6-)が更に好ましい。
【0235】
R1d、R2d、R3d及びR4dは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
【0236】
式(d)中、nは、1以上の整数である。nとしては、1~40の整数が好ましく、1~30の整数がより好ましく、5~25の整数が更に好ましい。
【0237】
式(d)中、p及びqは、独立に、0以上の整数である。pとしては、0~10の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。qとしては、0~10の整数が好ましく、0~5の整数がより好ましい。
【0238】
n、p及びqは、合計が6以上の整数であることが好ましい。n、p及びqの合計は8以上の整数であることがより好ましい。n、p及びqの合計はまた、60以下の整数であることが好ましく、50以下の整数であることがより好ましく、40以下の整数であることが更に好ましい。
【0239】
式(d)中、Adは、-SO3Xd又は-COOXd(Xdは、H、金属原子、NR5d
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R5dはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R5dにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R5dとしては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。Xdは金属原子又はNR5d
4(R5dは上記のとおり)であってよい。
Xdとしては、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR5d
4が好ましく、水に溶解しやすいことから、H、Na、K、Li又はNH4がより好ましく、水に更に溶解しやすいことから、Na、K又はNH4が更に好ましく、Na又はNH4が特に好ましく、除去が容易であることから、NH4が最も好ましい。XdがNH4であると、上記界面活性剤の水性媒体への溶解性が優れるとともに、TFE系ポリマー中又は最終製品中に金属成分が残留しにくい。
【0240】
式(d)中、Lは、単結合、-CO2-B-*、-OCO-B-*、-CONR6d-B-*、-NR6dCO-B-*、又は、-CO-(但し、-CO2-B-、-OCO-B-、-CONR6d-B-、-NR6dCO-B-に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基であり、R6dは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1~4のアルキル基である。上記アルキレン基は、炭素数が1~5であることがより好ましい。また、上記R6dは、H又はメチル基であることがより好ましい。*は、式中のAdに結合する側を指す。
【0241】
Lは単結合であることが好ましい。
【0242】
上記界面活性剤は、1H-NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0~5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が10以上であることが好ましい。
【0243】
上記界面活性剤は、1H-NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0~5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が上記範囲内にあることが好ましい。この場合、上記界面活性剤は分子中にケトン構造を有することが好ましい。
【0244】
上記界面活性剤において、上記積分値は、15以上がより好ましく、95以下が好ましく、80以下がより好ましく、70以下が更に好ましい。
【0245】
上記積分値は、重水溶媒にて室温下に測定する。重水を4.79ppmとする。
【0246】
上記界面活性剤(d)としては、例えば、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2COOK、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
(CH3)3CC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
(CH3)2CHC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
(CH2)5CHC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
CH3CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
CH3CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
CH3CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2CH2COONa、
CH3CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2CH2COONa、
CH3CH2CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2CH2COONa、
CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)CH2CH2COONa、
CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)CH2COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OCH2CH2COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)NHCH2COOK、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2NHC(O)CH2COOK、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)OCH2COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OC(O)CH2COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)COONa、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)COOH、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)COOLi、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)COONH4、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)COONa、CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(CH3)2COOK、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
(CH3)3CC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
(CH3)2CHC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
(CH2)5CHC(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OCH2CH2CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)NHCH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2NHC(O)CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(O)OCH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OC(O)CH2SO3Na、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3H、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3K、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3Li、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SO3NH4、
CH3C(O)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2C(CH3)2SO3Na
等が挙げられる。
【0247】
界面活性剤(d)は、例えば、国際公開第2020/022355号に記載される製造方法により製造することができる。
【0248】
次に、界面活性剤(e)について説明する。
【0249】
式(e)中、R1e~R5eはH又は一価の置換基を表し、但し、R1e及びR3eのうち、少なくとも1つは、一般式:-Ye-R6eで示される基、R2e及びR5eのうち、少なくとも1つは、一般式:-Xe-Aeで示される基、又は、一般式:-Ye-R6eで示される基を表す。R1e~R5eのうち、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
【0250】
R1eとしての上記アルキル基が有してもよい上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0251】
R1eとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0252】
R1eとしては、置換基を有してもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3~10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更により好ましく、メチル基(-CH3)又はエチル基(-C2H5)が特に好ましく、メチル基(-CH3)が最も好ましい。
【0253】
一価の置換基としては、一般式:-Ye-R6eで示される基、一般式:-Xe-Aeで示される基、-H、置換基を有していてもよいC1-20のアルキル基、-NH2、-NHR9e(R9eは有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、-OH、-COOR9e(R9eは有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))又は-OR9e(R9eは有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))が好ましい。上記アルキル基の炭素数は1~10が好ましい。
【0254】
R9eとしては、C1-10のアルキル基又はC1-10のアルキルカルボニル基が好ましく、C1-4のアルキル基又はC1-4のアルキルカルボニル基がより好ましい。
【0255】
式中、Xeは、各出現において同一又は異なって、2価の連結基、又は、結合手を表す。
R6eがカルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基のいずれをも含まない場合は、Xeはカルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を含む2価の連結基であることが好ましい。
【0256】
Xeとしては、-CO-、-S(=O)2-、-O-、-COO-、-OCO-、-S(=O)2-O-、-O-S(=O)2-、-CONR8e-及び-NR8eCO-からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む2価の連結基、C1-10のアルキレン基、又は、結合手が好ましい。R8eはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)を表す。
【0257】
R8eにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R8eとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましく、Hが更により好ましい。
【0258】
式(e)中、Aeは、各出現において同一又は異なって、-COOMe、-SO3Me又は-OSO3Me(Meは、H、金属原子、NR7e
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7eはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。4つのR7eは、同一でも異なっていてもよい。)を表す。式(e)において、Aeは-COOMeであることが好適な態様の一つである。
【0259】
R7eにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R7eとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
【0260】
Meとしては、H、金属原子又はNR7e
4が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR7e
4がより好ましく、H、Na、K、Li又はNH4が更に好ましく、Na、K又はNH4が更により好ましく、Na又はNH4が特に好ましく、NH4が最も好ましい。
【0261】
式(e)中、Yeは、各出現において同一又は異なって、-S(=O)2-、-O-、-COO-、-OCO-、-CONR8e-及び-NR8eCO-からなる群より選択される2価の連結基、又は、結合手、R8eはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)を表す。
【0262】
Yeとしては、結合手、-O-、-COO-、-OCO-、-CONR8e-及び-NR8eCO-からなる群より選択される2価の連結基が好ましく、結合手、-COO-及び-OCO-からなる群より選択される2価の連結基がより好ましい。
【0263】
R8eにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R8eとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましく、Hが更により好ましい。
【0264】
式(e)中、R6eは、各出現において同一又は異なって、カルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を炭素-炭素原子間に含んでもよい炭素数2以上のアルキル基を表す。上記R6eの有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)の炭素数は、2~20が好ましく、2~10がより好ましい。
【0265】
R6eのアルキル基は、炭素-炭素原子間にカルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を1又は2以上含むことができるが、上記アルキル基の末端にこれらの基を含まない。上記R6eのアルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0266】
R6eとしては、
一般式:-R10e-CO-R11eで示される基、
一般式:-R10e-COO-R11eで示される基、
一般式:-R11eで示される基、
一般式:-R10e-NR8eCO-R11eで示される基、又は、
一般式:-R10e-CONR8e-R11eで示される基、
(式中、R8eはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)を表す。R10eはアルキレン基、R11eは置換基を有してもよいアルキル基)が好ましい。
R6eとしては、一般式:-R10e-CO-R11eで示される基がより好ましい。
【0267】
R8eにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R8eとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましく、Hが更により好ましい。
【0268】
R10eのアルキレン基の炭素数は、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、20以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、8以下が特に好ましい。また、R10eのアルキレン基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、3~10が更に好ましい。
【0269】
R11eのアルキル基の炭素数は、1~20であってよく、1~15が好ましく、1~12がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~8が更により好ましく、1~6が殊更好ましく、1~3が尚更に好ましく、1又は2が特に好ましく、1が最も好ましい。また、上記R11eのアルキル基は、1級炭素、2級炭素、3級炭素のみで構成されていることが好ましく、1級炭素、2級炭素のみで構成されるのが特に好ましい。すなわち、R11eとしては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が好ましく、特にメチル基が最も好ましい。
【0270】
式(e)において、R2e及びR5eのうち、少なくとも1つは、一般式:-Xe-Aeで示される基であり、該Aeは-COOMeであることも好適な態様の一つである。
【0271】
界面活性剤(e)としては、一般式(e-1)で示される化合物、一般式(e-2)で示される化合物又は一般式(e-3)で示される化合物が好ましく、一般式(e-1)で示される化合物又は一般式(e-2)で示される化合物がより好ましい。
【0272】
一般式(e-1):
【化28】
(式中、R
3e~R
6e、X
e、A
e及びY
eは、上記のとおり。)
【0273】
一般式(e-2):
【化29】
(式中、R
4e~R
6e、X
e、A
e及びY
eは、上記のとおり。)
【0274】
一般式(e-3):
【化30】
(式中、R
2e、R
4e~R
6e、X
e、A
e及びY
eは、上記のとおり。)
【0275】
一般式:-Xe-Aeで示される基としては、
-COOMe、
-R12eCOOMe、
-SO3Me、
-OSO3Me、
-R12eSO3Me、
-R12eOSO3Me、
-OCO-R12e-COOMe、
-OCO-R12e-SO3Me、
-OCO-R12e-OSO3Me、
-COO-R12e-COOMe、
-COO-R12e-SO3Me、
-COO-R12e-OSO3Me、
-CONR8e-R12e-COOMe、
-CONR8e-R12e-SO3Me、
-CONR8e-R12e-OSO3Me、
-NR8eCO-R12e-COOMe、
-NR8eCO-R12e-SO3Me、
-NR8eCO-R12e-OSO3Me、
-OS(=O)2-R12e-COOMe、
-OS(=O)2-R12e-SO3Me、又は
-OS(=O)2-R12e-OSO3Me
(式中、R8e及びMeは、上記のとおり。R12eはC1-10のアルキレン基。)が好ましい。
上記R12eのアルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
【0276】
一般式:-Ye-R6eで示される基としては、
一般式:-R10e-CO-R11eで示される基、
一般式:-OCO-R10e-CO-R11eで示される基、
一般式:-COO-R10e-CO-R11eで示される基、
一般式:-OCO-R10e-COO-R11eで示される基、
一般式:-COO-R11eで示される基、
一般式:-NR8eCO-R10e-CO-R11eで示される基、又は、
一般式:-CONR8e-R10e-NR8eCO-R11eで示される基
(式中、R8e、R10e及びR11eは上記のとおり。)が好ましい。
【0277】
式中、R4e及びR5eとしては、独立に、H又はC1-4のアルキル基が好ましい。
上記R4e及びR5eのアルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0278】
一般式(e-1)におけるR3eとしては、H又は置換基を有していてもよいC1-20のアルキル基が好ましく、H又は置換基を有していないC1-20のアルキル基がより好ましく、Hが更に好ましい。
上記R3eのアルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0279】
一般式(e-3)におけるR2eとしては、H、OH又は置換基を有していてもよいC1-20のアルキル基が好ましく、H、OH又は置換基を有していないC1-20のアルキル基がより好ましく、H又はOHが更に好ましい。
上記R2eのアルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0280】
界面活性剤(e)は、公知の製造方法により製造することができる。
【0281】
上記特定の炭化水素系界面活性剤は、カルボン酸型炭化水素系界面活性剤であることも好ましい。上記カルボン酸型炭化水素系界面活性剤としては、カルボキシ基(-COOH)又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するものであれば限定されず、例えば、上述した特定の炭化水素系界面活性剤の中から、カルボキシ基又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオンに置換された基を有する炭化水素系界面活性剤を使用することができる。
上記カルボン酸型炭化水素系界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のフッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0282】
上記カルボン酸型炭化水素系界面活性剤として好ましくは、上記式(c)で示される界面活性剤(c)、及び、上記式(d)で示される界面活性剤(d)からなる群より選択される少なくとも1種のうち、カルボキシ基(-COOH)又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するものが好ましい。
【0283】
上記特定の炭化水素系界面活性剤は、スルホン酸型炭化水素系界面活性剤であることもまた好ましい。上記スルホン酸型炭化水素系界面活性剤としては、-SO3H基、-OSO3H基、又はこれらの基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するものであれば限定されず、例えば、上述した特定の炭化水素系界面活性剤の中から、-SO3H基、-OSO3H基、又はこれらの基の水素原子が無機陽イオンに置換された基を有する炭化水素系界面活性剤を使用することができる。
上記スルホン酸型炭化水素系界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のフッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0284】
本開示のTFE系ポリマー組成物は、上記特定の炭化水素系界面活性剤を少なくとも1種用いれば、効率よく製造することが可能である。また、本開示のTFE系ポリマー組成物は、上記特定の炭化水素系界面活性剤を2種以上同時に用いて製造してもよいし、揮発性を有するもの又はTFE系ポリマーからなる成形体等に残存してもよいものであれば、上記特定の炭化水素系界面活性剤以外のその他の界面活性能を有する化合物を同時に使用して製造してもよい。
【0285】
上記その他の界面活性能を有する化合物としては、例えば、特表2013-542308号公報、特表2013-542309号公報、特表2013-542310号公報に記載されているもの等を使用することができる。
【0286】
その他の界面活性能を有する化合物は、同じ分子上に親水性部分及び疎水性部分を有する界面活性剤、例えば、炭化水素系界面活性剤(ただし、上記特定の炭化水素系界面活性剤を除く)であってよい。これらは、カチオン性、非イオン性またはアニオン性であってよい。
上記化合物は、炭素原子に結合した水素原子のフッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0287】
カチオン性界面活性剤は、通常、アルキル化臭化アンモニウムなどのアルキル化ハロゲン化アンモニウムなどの正に帯電した親水性部分と、長鎖脂肪酸などの疎水性部分を有する。
上記カチオン性界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のフッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0288】
アニオン性界面活性剤は、通常、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩などの親水性部分と、アルキルなどの長鎖炭化水素部分である疎水性部分とを有する。
上記アニオン性界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のフッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0289】
非イオン性界面活性剤は、通常、帯電した基を含まず、長鎖炭化水素である疎水性部分を有する。非イオン性界面活性剤の親水性部分は、エチレンオキシドとの重合から誘導されるエチレンエーテルの鎖などの水溶性官能基を含む。
上記非イオン性界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のフッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0290】
非イオン性界面活性剤の例
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセロールエステル、それらの誘導体。
【0291】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等。
【0292】
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等。
【0293】
ポリオキシエチレンアルキルエステルの具体例:ポリエチレングリコールモノラウリレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート等。
【0294】
ソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等。
【0295】
ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等。
【0296】
グリセロールエステルの具体例:モノミリスチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール等。
【0297】
上記誘導体の具体例:ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル-ホルムアルデヒド凝縮物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート等。
【0298】
上記エーテル及びエステルは、10~18のHLB値を有してよい。
【0299】
非イオン性界面活性剤としては、Dow Chemical Company製のTriton(登録商標)Xシリーズ(X15、X45、X100等)、Tergitol(登録商標)15-Sシリーズ、Tergitol(登録商標)TMNシリーズ(TMN-6、TMN-10、TMN-100等)、Tergitol(登録商標)Lシリーズ、BASF製のPluronic(登録商標)Rシリーズ(31R1、17R2、10R5、25R4(m~22、n~23))、Iconol(登録商標)TDAシリーズ(TDA-6、TDA-9、TDA-10)等が挙げられる。
【0300】
アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、Resolution Performance Products社製のVersatic(登録商標)10、BASF社製のAvanel Sシリーズ(S-70、S-74等)等が挙げられる。
【0301】
その他の界面活性能を有する化合物としては、R-L-M(式中、Rが、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Lが、-ArSO3
-、-SO3
-、-SO4-、-PO3
-又は-COO-であり、Mが、H、金属原子、NR5
4(R5は、同一でも異なっていてもよく、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。-ArSO3
-は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。R5は、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましい。
具体的には、ラウリル酸に代表されるようなCH3-(CH2)n-L-M(式中、nが、6~17の整数である。LおよびMが、上記と同じ)によって表されるものが挙げられる。
Rが、12~16個の炭素原子を有するアルキル基であり、L-Mが、硫酸塩又はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるものの混合物も使用できる。
その他の界面活性能を有する化合物としては、R6(-L-M)2(式中、R6が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキレン基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Lが、-ArSO3
-、-SO3
-、-SO4-、-PO3
-又は-COO-であり、Mが、H、金属原子、NR5
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R5は、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)、-ArSO3
-は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
その他の界面活性能を有する化合物としては、R7(-L-M)3(式中、R7が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキリジン基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキリジン基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Lが、-ArSO3
-、-SO3
-、-SO4-、-PO3
-又は-COO-であり、Mが、H、金属原子、NR5
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R5はH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。-ArSO3
-は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
【0302】
シロキサン炭化水素系界面活性剤としては、Silicone Surfactants,R.M.Hill,Marcel Dekker,Inc.,ISBN:0-8247-00104に記載されているものが挙げられる。シロキサン界面活性剤の構造は、明確な疎水性部分および親水性部分を含む。疎水性部分は、1つ以上のジヒドロカルビルシロキサン単位を含み、ここで、シリコーン原子上の置換基が、完全に炭化水素である。
ヒドロカルビル基の炭素原子が、フッ素などのハロゲンによって置換され得る場合に、水素原子によって完全に置換されるという意味では、これらのシロキサン界面活性剤は、炭化水素界面活性剤とみなすこともでき、すなわち、ヒドロカルビル基の炭素原子上の一価置換基は水素である。
上記シロキサン界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のフッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0303】
シロキサン炭化水素系界面活性剤の親水性部分は、スルフェート、スルホネート、ホスホネート、リン酸エステル、カルボキシレート、カーボネート、スルホサクシネート、タウレート(遊離酸、塩またはエステルとしての)、ホスフィンオキシド、ベタイン、ベタインコポリオール、第4級アンモニウム塩などのイオン性基を含む1つ以上の極性部分を含んでもよい。イオン性疎水性部分は、イオン的に官能化されたシロキサングラフトも含み得る。
このようなシロキサン炭化水素系界面活性剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン-グラフト-(メタ)アクリル酸塩、ポリジメチルシロキサン-グラフト-ポリアクリレート塩およびポリジメチルシロキサングラフト化第4級アミンが挙げられる。
シロキサン界面活性剤の親水性部分の極性部分は、ポリエチレンオキシド(PEO)、および混合されたポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドポリエーテル(PEO/PPO)などのポリエーテル;単糖類および二糖類;およびピロリジノンなどの水溶性複素環によって形成される非イオン性基を含み得る。エチレンオキシド対プロピレンオキシド(EO/PO)の比率は、混合されたポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドポリエーテルにおいて変化され得る。
【0304】
シロキサン炭化水素系界面活性剤の親水性部分は、イオン性部分と非イオン性部分との組合せも含み得る。このような部分としては、例えば、イオン的に末端官能化されたまたはランダムに官能化されたポリエーテルまたはポリオールが挙げられる。本開示の実施に好ましいのは、非イオン性部分を有するシロキサン、すなわち、非イオン性シロキサン炭化水素系界面活性剤である。
【0305】
シロキサン炭化水素系界面活性剤の構造の疎水性および親水性部分の配置は、ジブロックポリマー(AB)、トリブロックポリマー(ABA)(ここで、「B」は、分子のシロキサン部分を表す)、またはマルチブロックポリマーの形態をとってもよい。あるいは、シロキサン炭化水素系界面活性剤は、グラフトポリマーを含んでいてもよい。
【0306】
シロキサン炭化水素系界面活性剤については、米国特許第6,841,616号明細書にも開示されている。
【0307】
シロキサンベースのアニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Lubrizol Advanced Materials,Inc.社製のNoveon(登録商標)Consumer Specialtiesから入手可能なSilSenseTMPE-100シリコーン、SilSenseTMCA-1シリコーン等が挙げられる。
【0308】
アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、Akzo Nobel Surface Chemistry LLC社製のスルホサクシネート界面活性剤Lankropol(登録商標)K8300等も挙げられる。
スルホサクシネート界面活性剤としては、スルホコハク酸ジイソデシルNa塩、(Clariant社製のEmulsogen(登録商標)SB10)、スルホコハク酸ジイソトリデシルNa塩(Cesapinia Chemicals社製のPolirol(登録商標)TR/LNA)等が挙げられる。
【0309】
その他の界面活性能を有する化合物としては、Omnova Solutions,Inc.社製のPolyFox(登録商標)界面活性剤(PolyFoxTMPF-156A、PolyFoxTMPF-136A等)も挙げられる。
【0310】
その他の界面活性能を有する化合物としては、アニオン性の炭化水素系界面活性剤であることが好ましい。アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては上述したものを採用できるが、例えば、下記の炭化水素系界面活性剤を好適に採用できる。
【0311】
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、例えば、下記式(α):
R100-COOM (α)
(式中、R100は、1個以上の炭素原子を含有する1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。Mは、H、金属原子、NR101
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R101はH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)で示される化合物(α)が挙げられる。R101の有機基としてはアルキル基が好ましい。R101としてはH又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
界面活性能の観点から、R100の炭素数は2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、水溶性の観点から、R100の炭素数は、29個以下であることが好ましく、23個以下がより好ましい。
上記Mの金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。Mとしては、H、金属原子又はNR101
4が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR101
4がより好ましく、H、Na、K、Li又はNH4が更に好ましく、Na、K又はNH4が更により好ましく、Na又はNH4が特に好ましく、NH4が最も好ましい。
【0312】
上記化合物(α)としては、R102-COOM(式中、R102が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基、若しくは、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基であり、これらはエーテル結合を含んでもよい。炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Mは上記と同じ。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
具体的には、CH3-(CH2)n-COOM(式中、nが、2~28の整数である。Mは上記と同じ)によって表されるものが挙げられる。
【0313】
上記化合物(α)は、乳化安定性の観点で、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を含まないものであってもよい。
上記カルボニル基を含まない炭化水素含有界面活性剤としては、例えば、下記式(A1):
R103-COO-M (A1)
(式中、R103は、6~17個の炭素原子を含有するアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基であり、これらはエーテル結合を含んでもよい。Mは、H、金属原子、NR101
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。R101は、同一又は異なって、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。)の化合物が好ましく例示される。
上記式(A1)において、R103は、アルキル基又はアルケニル基(これらはエーテル基を含んでいてもよい)であることが好ましい。上記R103におけるアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。上記R103の炭素数は限定されないが、例えば、2~29である。
【0314】
上記アルキル基が直鎖状である場合、R103の炭素数は3~29であることが好ましく、5~23であることがより好ましい。上記アルキル基が分岐状である場合、R103の炭素数は5~35であることが好ましく、11~23であることがより好ましい。
上記アルケニル基が直鎖状である場合、R103の炭素数は2~29であることが好ましく、9~23であることがより好ましい。上記アルケニル基が分岐状である場合、R103の炭素数は2~29であることが好ましく、9~23であることがより好ましい。
【0315】
上記アルキル基及びアルケニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ビニル基等が挙げられる。
【0316】
上記化合物(α)としては、例えば、ブチル酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、(9,12,15)-リノレン酸、(6,9,12)リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、8、11-エイコサジエン酸、ミード酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、α-エレオステアリン酸、β-エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、及びこれらの塩が挙げられる。
特に、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、及び、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記塩としては、カルボキシ基の水素が上述した式Mの金属原子、NR11
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムであるものが挙げられるが特に限定されない。
【0317】
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、また、例えば、下記式(β):
R100-SO3M (β)
(式中、R100は、1個以上の炭素原子を含有する1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。Mは、H、金属原子、NR101
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R101はH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)で示される化合物(β)も挙げられる。R101の有機基としてはアルキル基が好ましい。R101としてはH又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
界面活性能の観点から、R100の炭素数は2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、水溶性の観点から、R100の炭素数は、29個以下であることが好ましく、23個以下がより好ましい。
上記Mの金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。Mとしては、H、金属原子又はNR101
4が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR101
4がより好ましく、H、Na、K、Li又はNH4が更に好ましく、Na、K又はNH4が更により好ましく、Na又はNH4が特に好ましく、NH4が最も好ましい。
【0318】
上記化合物(β)としては、R102-SO3M(式中、R102が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基、若しくは、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基であり、これらはエーテル結合を含んでもよい。炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Mは上記と同じ。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
具体的には、CH3-(CH2)n-SO3M(式中、nが、2~28の整数である。Mは上記と同じ)によって表されるものが挙げられる。
【0319】
上記化合物(β)は、乳化安定性の観点で、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を含まないものであってもよい。
上記カルボニル基を含まない炭化水素含有界面活性剤としては、例えば、下記式(B1):
R103-SO3-M (B1)
(式中、R103は、6~17個の炭素原子を含有するアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基であり、これらはエーテル結合を含んでもよい。Mは、H、金属原子、NR101
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。R101は、同一又は異なって、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。)の化合物が好ましく例示される。
上記式(B1)において、R103は、アルキル基又はアルケニル基(これらはエーテル基を含んでいてもよい)であることが好ましい。上記R103におけるアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。上記R103の炭素数は限定されないが、例えば、2~29である。
【0320】
上記アルキル基が直鎖状である場合、R103の炭素数は3~29であることが好ましく、5~23であることがより好ましい。上記アルキル基が分岐状である場合、R103の炭素数は5~35であることが好ましく、11~23であることがより好ましい。
上記アルケニル基が直鎖状である場合、R103の炭素数は2~29であることが好ましく、9~23であることがより好ましい。上記アルケニル基が分岐状である場合、R103の炭素数は2~29であることが好ましく、9~23であることがより好ましい。
【0321】
上記アルキル基及びアルケニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ビニル基等が挙げられる。
【0322】
上記化合物(β)としては、例えば、脂肪族系、不飽和脂肪族系、芳香族系等のスルホン酸、脂肪族系、不飽和脂肪族系、芳香族系等の硫酸エステル、及びこれらの塩が挙げられる。
上記スルホン酸としては、例えば、1-ヘキサンスルホン酸、1-オクタンスルホン酸、1-デカンスルホン酸、1-ドデカンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、DBS、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸が挙げられ、上記硫酸エステルとしては、例えば、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、ラウレス硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸が挙げられる。
上記化合物(β)としては、特に、飽和脂肪族、芳香族の硫酸エステル、及び、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、ラウレス硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸、及び、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
上記塩としては、スルホン酸基の水素が上述した式Mの金属原子、NR11
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムであるものが挙げられるが特に限定されない。
【0323】
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、下記式(1-0A):
【化31】
(式中、R
1A~R
5Aは、H、炭素-炭素原子間にエステル基を含んでもよい1価の炭化水素基、又は、一般式:-X
A-Aで示される基である。但し、R
2A及びR
5Aの少なくとも1つは、一般式:-X
A-Aで示される基を表す。
X
Aは、各出現において同一又は異なって、2価の炭化水素基、又は、結合手;
Aは、各出現において同一又は異なって、-COOM(Mは、H、金属原子、NR
7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R
7は、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基));
R
1A~R
5Aのうち、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(1-0A)等も挙げられる。
【0324】
一般式(1-0A)中、R1A~R5Aにおいて、炭素-炭素原子間にエステル基を含んでもよい1価の炭化水素基の炭素数は1~50であることが好ましく、5~20であることがより好ましい。R1A~R5Aのうち、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。上記炭素-炭素原子間にエステル基を含んでもよい1価の炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。
式中、XAにおいて、2価の炭化水素基の炭素数は1~50であることが好ましく、5~20であることがより好ましい。上記2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルカンジイル基等が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
【0325】
一般式(1-0A)中、R2A及びR5Aのいずれか1つが、上記一般式:-XA-Aで示される基であることが好ましく、R2Aが上記一般式:-XA-Aで示される基であることがより好ましい。
【0326】
一般式(1-0A)中、好適な態様としては、R2Aが、一般式:-XA-Aで示される基であり、R1A、R3A、R4A及びR5AがHである態様である。この場合、XAは結合手又は炭素数1~5のアルキレン基であることが好ましい。
【0327】
一般式(1-0A)中、好適な態様としてはまた、R2Aが、一般式:-XA-Aで示される基であり、R1A及びR3Aが-YA-R6で示される基であり、YAは、各出現において同一又は異なって、-COO-、-OCO-、又は、結合手であり、R6は各出現において同一又は異なって、炭素数2以上のアルキル基である態様である。この場合、R4A及びR5AがHであることが好ましい。
【0328】
一般式(1-0A)で表される炭化水素系界面活性剤としては、例えば、グルタル酸又はその塩、アジピン酸又はその塩、ピメリン酸又はその塩、スベリン酸又はその塩、アゼライン酸又はその塩、セバシン酸又はその塩等が挙げられる。
また、一般式(1-0A)で表される脂肪族型のカルボン酸型炭化水素系界面活性剤は2鎖2親水基型合成界面活性剤であってもよく、例えば、ジェミニ型界面活性剤として、ジェミニサ-フ(中京油脂株式会社)、Gemsurf α142(炭素数12 ラウリル基)、Gemsurf α102(炭素数10)、Gemsurf α182(炭素数14)等が挙げられる。
【0329】
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、下記式I:
R-(XZ)n (I)
(式中、Rは、1つ以上の飽和又は不飽和、非環式又は環式の脂肪族基を含む疎水性炭化水素部分である。1つ以上の脂肪族基中のCH3、CH2及びCH基の合計に対するCH3基の合計の百分率は少なくとも約70%であり、疎水性部分はシロキサン単位を含まない。各Xは、同じであっても異なっていてもよく、イオン性親水性部分を表す。各Zは、同じであっても異なっていてもよく、イオン性親水性部分の1つ以上の対イオンを表す。nは、1~3である。)で示される化合物Iも挙げられる。
【0330】
化合物Iは、フルオロモノマーの乳化重合において重合開始剤及び/又は成長するフルオロポリマーラジカルとの低い反応性を示す。
【0331】
化合物Iは、次式:
【化32】
(式中、Y
+は、水素、アンモニウム、四級アンモニウム、窒素複素環、アルカリ金属、又はアルカリ土類である。)で示される置換部分を含むことが好ましい。
【0332】
化合物Iは、下記式II:
【化33】
(式中、R
2’及びR
2’’’は、同じであるか又は異なり、4~16個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、非環式又は環式の脂肪族基であり、R
2’及びR
2’’’基中のCH
3、CH
2及びCH基の合計に対するCH
3基の合計の百分率は少なくとも約70%であるか、又はR
2’及びR
2’’’は、互いに結合して、エーテル又はエステル結合を含有し得る飽和又は不飽和脂肪族環を形成し得る。ただし、環中のCH
3、CH
2及びCH基の合計に対するCH
3基の合計の百分率は少なくとも約70%である。R
1は、水素、メトキシ、エトキシ又はフェノキシである。Y
+は、水素、アンモニウム、四級アンモニウム、窒素複素環、アルカリ金属、又はアルカリ土類である。)で示される化合物IIであることが好ましい。
【0333】
化合物IIとしては、例えば、以下の化合物が好ましい。
【化34】
上記式中のY
+は、水素、アンモニウム、又はアルカリ金属であってよい。
【0334】
化合物Iは、下記式III:
【化35】
(式中、R
3、R
4’、及びR
4’’は、同じであるか又は異なり、水素あるいは4~16個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、非環式又は環式の脂肪族基であり、R
3、R
4’、及びR
4’’基におけるCH
3、CH
2及びCH基の合計に対するCH
3の合計の百分率が少なくとも約70%である。ただし、R
3、R
4’、及びR
4’’のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R
4’及びR
4’’が水素である場合、R
3は水素ではなく、R
3が水素である場合、R
4’及びR
4’’は水素ではない。Y
+は、水素、アンモニウム、四級アンモニウム、窒素複素環、アルカリ金属、又はアルカリ土類である。)で示される化合物IIIであることも好ましい。
【0335】
化合物IIIとしては、例えば、以下の化合物が好ましい。
【化36】
上記式中のY
+は、水素、アンモニウム、又はアルカリ金属であってよい。
【0336】
本開示の製造方法においては、上記炭化水素系界面活性剤を2種以上同時に用いてもよい。
【0337】
本開示のTFE系ポリマー組成物は、上記特定の炭化水素系界面活性剤を使用しない場合でも、炭化水素系界面活性剤及び重合開始剤の存在下、pHが4.0以上の水性媒体中で、テトラフルオロエチレンのみ、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとを重合してTFE系ポリマーを得る重合工程を含む製造方法により得ることができる。
従来、TFE系ポリマーを製造するための重合工程は酸性を示す重合開始剤が使用されていたため、重合で使用される水性媒体のpHは4.0未満であった。本開示者等が鋭意検討したところ、意外なことに、重合に用いる水性媒体のpHを4.0以上にすることによって重合の安定性が向上し、分子量が高いTFE系ポリマーを製造することができることが見出された。
上記製造方法は、pHが4.0以上の水性媒体中でテトラフルオロエチレンのみ、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとを重合する。上記pHは4.0以上であればよく、4.0超が好ましく、4.5以上がより好ましく、5.0以上が更に好ましく、5.5以上が更により好ましく、6.0以上が殊更に好ましく、6.5以上が特に好ましく、7.0以上が特に好ましく、7.5以上が特に好ましく、8.0以上が特に好ましい。上記pHの上限値は特に限定されないが、例えば、13.0以下であってよい。重合槽の腐食の観点からは、12.0以下であることが好ましく、11.5以下であることがより好ましく、11.0以下であることがより好ましい。
上記pHは、pHメーターにより測定することができる。
【0338】
上記製造方法において、水性媒体のpHを4.0以上にする方法は限定されないが、例えば、アルカリ性水溶液を使用したり、アルカリ性を示す水性分散液を使用したり、pH調整剤を使用したりすることによってpHを4.0以上にすることができるが、特に限定されるものではない。
また、水性媒体に溶解させた時に酸性を示す重合開始剤を使用する場合でも、更に、水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物を加えることでpHを4.0以上に調整することもできる。上記アルカリ化合物としては、水に溶けて電離し、OH-を生じる化合物であればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;アミン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記重合工程は、アルカリ化合物を水性媒体に添加する工程を含んでもよい。
【0339】
上記製造方法は、重合工程の全ての期間において水性媒体のpHが4.0以上であってもよい。また、重合工程の中盤においてpHが4.0以上であってもよいし、重合工程の後半でpHが4.0以上であってもよい。また、重合工程の中盤及び後半でpHが4.0以上であってもよい。
例えば、上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が3質量%以上である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることが好ましい。言い換えると、上記製造方法は、炭化水素系界面活性剤及び重合開始剤の存在下、水性媒体中でテトラフルオロエチレンのみ、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとを重合してTFE系ポリマーを得る重合工程を含み、上記水性媒体は、ポリマー固形分濃度が3質量%以上である時にpHが4.0以上であることが好ましい。上記水性媒体は、ポリマー固形分濃度が5質量%以上である時にpHが4.0以上であることがより好ましく、ポリマー固形分濃度が8質量%以上である時にpHが4.0以上であることが更に好ましく、ポリマー固形分濃度が10質量%以上である時にpHが4.0以上であることが更により好ましく、ポリマー固形分濃度が15質量%以上である時にpHが4.0以上であることが殊更に好ましく、ポリマー固形分濃度が18質量%以上である時にpHが4.0以上であることが特に好ましく、20質量%以上である時にpHが4.0以上であることがより好ましく、25質量%以上である時にpHが4.0以上であることが更に好ましい。
また、上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が25質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが好ましく、20質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることがより好ましく、18質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが更に好ましく、15質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが更により好ましく、10質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが殊更に好ましく、8質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが特に好ましく、5質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることがより好ましく、3質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが更に好ましい。
また、上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が15質量%未満である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることも好ましい。上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が3質量%以上、15質量%未満である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることがより好ましく、5質量%以上、15質量%未満である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることがより好ましく、8質量%以上、15質量%未満である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることが更に好ましく、10質量%以上、15質量%未満である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることが更により好ましい。
また、上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が10質量%以上、15質量%までの間、水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが好ましく、8質量%以上、15質量%までの間、水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることがより好ましく、5質量%以上、15質量%までの間、水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが更に好ましい。
上記水性媒体のpHは、いずれの場合においても、4.0超が好ましく、4.5以上がより好ましく、5.0以上が更に好ましく、5.5以上が更により好ましく、6.0以上が殊更に好ましく、6.5以上が特に好ましく、7.0以上がより好ましく、7.5以上が更に好ましく、8.0以上が更により好ましい。
【0340】
上記重合工程は、重合開始の時点から、ポリマー固形分濃度が3質量%(好ましくは5質量%、より好ましくは8質量%、更に好ましくは10質量%、更により好ましくは15質量%、殊更に好ましくは18質量%、殊更により好ましくは20質量%、特に好ましくは25質量%)の時点迄の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、殊更に好ましくは99%以上、特に好ましくは100%)の期間で水性媒体のpHが4.0以上であることが好ましい。
上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が10質量%(好ましくは8質量、より好ましくは5質量%、更に好ましくは3質量%、更により好ましくは重合開始)の時点から、ポリマー固形分濃度が15質量%の時点迄の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、殊更に好ましくは99%以上、特に好ましくは100%)の期間で水性媒体のpHが4.0以上であることが好ましい。
上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が15質量%の時点から、ポリマー固形分濃度が18質量%(好ましくは20質量%、より好ましくは25質量%)の時点迄の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、殊更に好ましくは99%以上、特に好ましくは100%)の期間で水性媒体のpHが4.0以上であることが好ましい。
上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が25質量%(好ましくは20質量、より好ましくは18質量%、更に好ましくは15質量%、更により好ましくは10質量%、殊更に好ましくは8質量%、特に好ましくは5質量%、より好ましくは3質量%、更に好ましくは重合開始)の時点から、重合終了時点迄の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、特に好ましくは100%)の期間で水性媒体のpHが4.0以上であることが好ましい。
上記水性媒体のpHは、いずれの場合においても、4.0超が好ましく、4.5以上がより好ましく、5.0以上が更に好ましく、5.5以上が更により好ましく、6.0以上が殊更に好ましく、6.5以上が特に好ましく、7.0以上がより好ましく、7.5以上が更に好ましく、8.0以上が更により好ましい。
【0341】
上記製造方法において、上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素を含まない炭化水素系界面活性剤であり、アニオン性の炭化水素系界面活性剤であることが好ましく、カルボン酸型の炭化水素系界面活性剤であることがより好ましい。アニオン性炭化水素系界面活性剤及びカルボン酸型の炭化水素系界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、上述したその他の界面活性能を有する化合物の中で例示した化合物(α)等を好適に使用できる。
【0342】
上記製造方法において、上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素を含まない炭化水素系界面活性剤であり、アニオン性の炭化水素系界面活性剤であることが好ましく、スルホン酸型の炭化水素系界面活性剤であることもまた、好ましい。アニオン性炭化水素系界面活性剤及びスルホン酸型の炭化水素系界面活性剤としては特に限定されない。例えば、上述したその他の界面活性能を有する化合物の中で例示した化合物(β)等を好適に使用できる。
【0343】
本開示のTFE系ポリマー組成物は、上記特定の炭化水素系界面活性剤を使用しない場合でも、アニオン性の炭化水素系界面活性剤及び重合開始剤の存在下、水性媒体中で、テトラフルオロエチレンのみ、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとを重合してTFE系ポリマーを得る重合工程を含み、上記炭化水素系界面活性剤が、該炭化水素系界面活性剤の塩を含む工程によっても得ることができる。言い換えると、上記重合工程におけるアニオン性の炭化水素系界面活性剤の少なくとも一部が塩の形態である。
本開示者等が鋭意検討したところ、意外なことに、アニオン性の炭化水素系界面活性剤が、アニオン性の炭化水素系界面活性剤の塩を含むことによって重合の安定性が向上し、分子量が大きいTFE系ポリマーを製造することができることが見出された。
これは、塩を含むことによりアニオン性の界面活性剤の水溶性が向上し、乳化性能を示しやすくなることによるものであると考えられる。
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤については後述する。
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤が、該炭化水素系界面活性剤の塩を含むことは、導電率の測定により確認することができる。
上記製造方法において、上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤は、アニオン性の炭化水素系界面活性剤の塩の濃度が、アニオン性の炭化水素系界面活性剤の総質量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が更により好ましく、90質量%以上が殊更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
上記塩の割合は、溶液濃度と導電率により測定することができる。
上記製造方法において、上記炭化水素系界面活性剤は、カルボン酸型の炭化水素系界面活性剤であることがより好ましい。上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素を含まない。
アニオン性の炭化水素系界面活性剤の塩において、酸の水素原子を置き換える陽イオン(但し、水素原子を除く)は、例えば、金属原子、NRy
4(Ryは、各々、同一でも異なっていてもよく、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。上記RyはH又はアルキル基が好ましく、H又は炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
アニオン性の炭化水素系界面活性剤の塩における上記陽イオンとしては、金属原子、又は、NRy
4が好ましく、NRy
4がより好ましく、NH4が更に好ましい。
導電率は、温度の影響が大きく変化することから、恒温槽を用いて、サンプル液温を25℃に保ち、pHメーターのセルの温度も同じにしてから導電率を測定する。
【0344】
上記製造方法において、上記重合工程は、実質的に有機酸の形態の上記炭化水素系界面活性剤の非存在下で重合するものであることが好ましい。実質的に有機酸の形態の前記炭化水素系界面活性剤の非存在下で重合するものであることによって、重合の安定性がより向上し、高分子量のTFE系ポリマーを得ることができる。
実質的に有機酸の形態の上記炭化水素系界面活性剤の非存在下とは、有機酸の濃度が得られた水性分散液の質量に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が殊更好ましく、0.01質量%以下が特に好ましい。
本明細書中で「有機酸」とは、酸性を示す有機化合物を意味する。有機酸としては、-COOH基を有するカルボン酸や、-SO3H基を有するスルホン酸等が挙げられ、有機酸を含む水溶液のpHを調整するのが容易であるとの観点からカルボン酸が好ましい。
また、「有機酸の形態」とは、有機酸に含まれる酸性基(例えば、-COOH基、-SO3H基等)のHが遊離していない形態である。
上記製造方法において、上記炭化水素系界面活性剤は、アニオン性の炭化水素系界面活性剤である。
【0345】
上記重合工程において、重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、水性媒体に対して50ppm超であることが好ましい。重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、好ましくは60ppm以上であり、より好ましくは70ppm以上であり、更に好ましくは80ppm以上であり、更により好ましくは100ppm以上である。上限は特に限定されないが、例えば、10000ppmであることが好ましく、5000ppmであることがより好ましい。重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、上記範囲であることによって、より平均一次粒子径が小さく、より安定性に優れる水性分散液を得ることができる。
なお、重合は、反応器中の気体TFEがTFE系ポリマーになり、反応器中の圧力降下が起こる時に開始したということができる。米国特許第3,391,099号明細書(Punderson)には、重合プロセスの2つの別個の段階、まず、核形成部位としてのポリマー核の形成、および次に、確立された粒子の重合を含む成長段階からなる、水性媒体中のテトラフルオロエチレンの分散重合が開示されている。なお、重合は通常、重合されるモノマーと重合開始剤との両方が反応器に充填された時に開始される。また、本開示では、核形成部位の形成に関する添加剤を核形成剤とする。
【0346】
上記重合工程は、炭化水素系界面活性剤を含む組成物を重合開始後に添加する添加工程を含むことが好ましい。上記添加工程によって、重合の安定性がより向上し、より高分子量のTFE系ポリマーが得られる。
上記炭化水素系界面活性剤は、例えば、固体(例えば、炭化水素系界面活性剤の粉末)の形態であってもよいし、液体の形態であってもよい。
上記組成物は、炭化水素系界面活性剤を含むものであればよく、炭化水素系界面活性剤のみからなるものであってもよいし、炭化水素系界面活性剤と液状媒体とを含む炭化水素系界面活性剤の溶液又は分散体であってもよい。従って、上記添加工程は、炭化水素系界面活性剤単体又は炭化水素系界面活性剤を含む組成物を重合開始後に添加する工程ということもできる。
炭化水素系界面活性剤は1種類に限定されず、2種類以上の混合物であってもよい。
上記液状媒体としては、水性媒体及び有機溶媒のいずれでもよく、水性媒体及び有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。
上記組成物として具体的には、炭化水素系界面活性剤が水性媒体に溶解した水溶液、炭化水素系界面活性剤が水性媒体に分散した水性分散液等が挙げられる。
【0347】
上記添加工程において添加される炭化水素系界面活性剤は、水性媒体に対して、0.0001~10質量%であることが好ましい。水性媒体に対して、より好ましくは、0.001質量%以上であり、更に好ましくは、0.01質量%以上であり、特に好ましくは、0.05質量%以上である。また、水性媒体に対して、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは、3質量%以下であり、特に好ましくは、1質量%以下である。
【0348】
重合の安定性が向上し、より高分子量のTFE系ポリマーが得られることから、上記組成物は、炭化水素系界面活性剤を含み、pHが5.0以上である水溶液であることが好ましい。
上記水溶液のpHは、6.0以上がより好ましく、6.5以上が更に好ましく、7.0以上が更により好ましく、7.5以上が殊更に好ましく、8.0以上が特に好ましい。また、pHの上限は特に限定されないが、12.0以下であってよく、また、11.0以下であってもよい。
【0349】
上記添加工程における炭化水素系界面活性剤は、アニオン性炭化水素系界面活性剤であることが好ましく、カルボン酸型の炭化水素系界面活性剤であることがより好ましい。
アニオン性炭化水素系界面活性剤及びカルボン酸型の炭化水素系界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、上述したその他の界面活性能を有する化合物の中で例示した化合物(α)等を好適に使用できる。
【0350】
上記重合工程及び添加工程で使用するカルボン酸型の炭化水素系界面活性剤としては、上記界面活性剤(e)、上述した式:R6(-L-M)2によって表されるアニオン性界面活性剤、及び、上述した式:R7(-L-M)3によって表されるアニオン性界面活性剤のうち、カルボキシ基(-COOH)又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するもの、上記化合物(α)、上記界面活性剤(1-0A)、並びに、これらの界面活性剤にラジカル処理または酸化処理を行ったものからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記カルボン酸型の炭化水素系界面活性剤は、1種で用いてもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
上記化合物(α)には、上述した式:R102-COOM(式中、R102及びMは上記と同じ。)によって表されるアニオン性の炭化水素系界面活性剤(好ましくは、式(A1)で表される化合物)だけでなく、上述した式:R-L-M(式中、R、L及びMは上記と同じ)によって表されるアニオン性界面活性剤、上記界面活性剤(c)及び上記界面活性剤(d)のうち、カルボキシ基(-COOH)又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するもの等も含まれる。
【0351】
上記カルボン酸型の炭化水素系界面活性剤は、上記化合物(α)が好ましく、上記式(A1)で表される化合物、上記式(c)においてAcが-COOXcである化合物、上記式(d)においてAdが-COOXdである化合物、上記式(e)においてAeが-COOMeである化合物、上記式(1-0A)においてAが-COOMである化合物、並びに、これらの化合物にラジカル処理または酸化処理を行ったものからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、上記式(A1)で表される化合物及び該化合物にラジカル処理または酸化処理を行ったものからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
特に、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、及び、これらの塩、並びに、これらの化合物にラジカル処理または酸化処理を行ったものからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。上記塩としては、カルボキシ基の水素が上述した式Mの金属原子、NR101
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムであるものが挙げられるが特に限定されない。
【0352】
上記製造方法は、実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に、テトラフルオロエチレンを重合するものであることが好ましい。
上記製造方法において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対して含フッ素界面活性剤が10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下、更により好ましくは10質量ppb未満であり、更により好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは1質量ppb未満である。
「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、また、含フッ素界面活性剤の意図的な添加がないことも意味する。
【0353】
上記含フッ素界面活性剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
上記アニオン性含フッ素界面活性剤は、例えば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよい。
【0354】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、アニオン性部分の分子量が1000以下、好ましくは800以下のフッ素を含む界面活性剤であってよい。
なお、上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。例えば、後述する式(I)で表されるF(CF2)n1COOMの場合には、「F(CF2)n1COO」の部分である。
【0355】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。上記LogPOWは、1-オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
上記LogPOWは、カラム;TOSOH ODS-120Tカラム(φ4.6mm×250mm、東ソー(株)製)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO4水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
【0356】
上記含フッ素界面活性剤として具体的には、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003-119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、国際公開第2007/119526号、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号、米国特許出願公開第2014/0228531号、国際公開第2013/189824号、国際公開第2013/189826号に記載されたもの等が挙げられる。
【0357】
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N0):
Xn0-Rfn0-Y0 (N0)
(式中、Xn0は、H、Cl又は及びFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分枝鎖状または環状で、一部または全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Y0はアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
Y0のアニオン性基は、-COOM、-SO2M、又は、-SO3Mであってよく、-COOM、又は、-SO3Mであってよい。
Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、例えば、Na、K又はLiである。
R7としては、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
Mは、H、金属原子又はNR7
4であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR7
4であってよく、H、Na、K、Li又はNH4であってよい。
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
【0358】
上記一般式(N
0)で表される化合物としては、
下記一般式(N
1):
X
n0-(CF
2)
m1-Y
0 (N
1)
(式中、X
n0は、H、Cl及びFであり、m1は3~15の整数であり、Y
0は、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N
2):
Rf
n1-O-(CF(CF
3)CF
2O)
m2CFX
n1-Y
0 (N
2)
(式中、Rf
n1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、m2は、0~3の整数であり、X
n1は、F又はCF
3であり、Y
0は、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N
3):
Rf
n2(CH
2)
m3-(Rf
n3)
q-Y
0 (N
3)
(式中、Rf
n2は、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、m3は、1~3の整数であり、Rf
n3は、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、qは0又は1であり、Y
0は、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N
4):
Rf
n4-O-(CY
n1Y
n2)
pCF
2-Y
0 (N
4)
(式中、Rf
n4は、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y
n1及びY
n2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、pは0又は1であり、Y
0は、上記定義したものである。)で表される化合物、及び、
下記一般式(N
5):
【化37】
(式中、X
n2、X
n3及びX
n4は、同一若しくは異なってもよく、H、F、又は、炭素数1~6のエーテル結合を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基である。Rf
n5は、炭素数1~3のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキレン基であり、Lは連結基であり、Y
0は、上記定義したものである。但し、X
n2、X
n3、X
n4及びRf
n5の合計炭素数は18以下である。)で表される化合物が挙げられる。
【0359】
上記一般式(N0)で表される化合物としてより具体的には、下記一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、下記一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、下記一般式(III)で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、下記一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、下記一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、下記一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、下記一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、下記一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、下記一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、及び、下記一般式(XII)で表される化合物(XII)、が挙げられる。
【0360】
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、下記一般式(I)
F(CF2)n1COOM (I)
(式中、n1は、3~14の整数であり、Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、H又は有機基である。)で表されるものである。
【0361】
上記ω-Hパーフルオロカルボン酸(II)は、下記一般式(II)
H(CF2)n2COOM (II)
(式中、n2は、4~15の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0362】
上記パーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III)
Rf1-O-(CF(CF3)CF2O)n3CF(CF3)COOM (III)
(式中、Rf1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0363】
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、下記一般式(IV)
Rf2(CH2)n4Rf3COOM (IV)
(式中、Rf2は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rf3は、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0364】
上記アルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V)
Rf4-O-CY1Y2CF2-COOM (V)
(式中、Rf4は、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y1及びY2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0365】
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、下記一般式(VI)
F(CF2)n5SO3M (VI)
(式中、n5は、3~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0366】
上記ω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)は、下記一般式(VII)
H(CF2)n6SO3M (VII)
(式中、n6は、4~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0367】
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)は、下記一般式(VIII)
Rf5(CH2)n7SO3M (VIII)
(式中、Rf5は、炭素数1~13のパーフルオロアルキル基であり、n7は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0368】
上記アルキルアルキレンカルボン酸(IX)は、下記一般式(IX)
Rf6(CH2)n8COOM (IX)
(式中、Rf6は、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、n8は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0369】
上記フルオロカルボン酸(X)は、下記一般式(X)
Rf7-O-Rf8-O-CF2-COOM (X)
(式中、Rf7は、炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf8は、炭素数1~6の直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0370】
上記アルコキシフルオロスルホン酸(XI)は、下記一般式(XI)
Rf9-O-CY1Y2CF2-SO3M (XI)
(式中、Rf9は、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状であって、塩素を含んでもよい、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y1及びY2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0371】
上記化合物(XII)は、下記一般式(XII):
【化38】
(式中、X
1、X
2及びX
3は、同一若しくは異なってもよく、H、F及び炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf
10は、炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、Lは連結基であり、Y
0はアニオン性基である。)で表されるものである。
Y
0は、-COOM、-SO
2M、又は、-SO
3Mであってよく、-SO
3M、又は、COOMであってよい(式中、Mは上記定義したものである。)。
Lとしては、例えば、単結合、炭素数1~10のエーテル結合を含みうる部分又は完全フッ素化されたアルキレン基が挙げられる。
【0372】
上述したように上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、カルボン酸系含フッ素界面活性剤、スルホン酸系含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0373】
本開示のTFE系ポリマー組成物は、ラジカル捕捉剤及び重合開始剤の分解剤からなる群より選択される少なくとも1種を添加する添加工程を含む製造方法により好適に製造できる。上記添加工程は、上述した乳化重合を水性媒体中で行う工程中に行われる。ラジカル捕捉剤又は重合開始剤の分解剤を添加することで、重合中のラジカル濃度を調整することができる。ラジカル濃度を低下させる観点からはラジカル捕捉剤が好ましい。
【0374】
上記ラジカル捕捉剤としては、重合系内の遊離基に付加もしくは連鎖移動した後に再開始能力を有しない化合物が用いられる。具体的には、一次ラジカルまたは成長ラジカルと容易に連鎖移動反応を起こし、その後単量体と反応しない安定ラジカルを生成するか、あるいは、一次ラジカルまたは成長ラジカルと容易に付加反応を起こして安定ラジカルを生成するような機能を有する化合物が用いられる。
一般的に連鎖移動剤と呼ばれるものは、その活性は連鎖移動定数と再開始効率で特徴づけられるが連鎖移動剤の中でも再開始効率がほとんど0%のものがラジカル捕捉剤と称される。
上記ラジカル捕捉剤は、例えば、重合温度におけるTFEとの連鎖移動定数が重合速度定数より大きく、かつ、再開始効率が実質的にゼロ%の化合物ということもできる。「再開始効率が実質的にゼロ%」とは、発生したラジカルがラジカル捕捉剤を安定ラジカルにすることを意味する。
好ましくは、重合温度におけるTFEとの連鎖移動定数(Cs)(=連鎖移動速度定数(kc)/重合速度定数(kp))が0.1より大きい化合物であり、上記化合物は、連鎖移動定数(Cs)が0.5以上であることがより好ましく、1.0以上であることが更に好ましく、5.0以上であることが更により好ましく、10以上であることが特に好ましい。
【0375】
本開示における上記ラジカル捕捉剤としては、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族アミン類、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、キノン化合物、テルペン、チオシアン酸塩、及び、塩化第二銅(CuCl2)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
芳香族ヒドロキシ化合物としては、非置換フェノール、多価フェノール、サリチル酸、m-又はp-のサリチル酸、没食子酸、ナフトール等が挙げられる。
上記非置換フェノールとしては、о-、m-又はp-のニトロフェノール、о-、m-又はp-のアミノフェノール、p-ニトロソフェノール等が挙げられる。多価フェノールとしては、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシン、ナフトレゾルシノール等が挙げられる。
芳香族アミン類としては、о-、m-又はp-のフェニレンジアミン、ベンジジン等が挙げられる。
上記キノン化合物としては、о-、m-又はp-のベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、アリザリン等が挙げられる。
チオシアン酸塩としては、チオシアン酸アンモン(NH4SCN)、チオシアン酸カリ(KSCN)、チオシアン酸ソーダ(NaSCN)等が挙げられる。
上記ラジカル捕捉剤としては、なかでも、芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく、非置換フェノール又は多価フェノールがより好ましく、ハイドロキノンが更に好ましい。
【0376】
上記ラジカル捕捉剤の添加量は、標準比重を小さくする観点から、重合開始剤濃度の3~500%(モル基準)に相当する量が好ましい。より好ましい下限は5%(モル基準)であり、更に好ましくは8%(モル基準)であり、更に好ましくは10%(モル基準)であり、更により好ましくは15%(モル基準)であり、殊更に好ましくは20%(モル基準)であり、特に好ましくは25%(モル基準)であり、特に好ましくは30%(モル基準)であり、特に好ましくは35%(モル基準)である。より好ましい上限は400%(モル基準)であり、更に好ましくは300%(モル基準)であり、更により好ましくは200%(モル基準)であり、殊更に好ましくは100%(モル基準)である。
【0377】
重合開始剤の分解剤としては、使用する重合開始剤を分解できる化合物であればよく、例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、ジイミン塩、シュウ酸、シュウ酸塩、銅塩、及び、鉄塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
上記重合開始剤の分解剤の添加量は、重合開始剤(後述するレドックス開始剤)として組み合わされる酸化剤の量に対して、25~300質量%の範囲で添加する。好ましくは25~150質量%、更に好ましくは50~100質量%である。
上記重合開始剤の分解剤の添加量は、標準比重を小さくする観点から、重合開始剤濃度の3~500%(モル基準)に相当する量が好ましい。より好ましい下限は5%(モル基準)であり、更に好ましくは8%(モル基準)であり、更に好ましくは10%(モル基準)であり、更に好ましくは13%(モル基準)であり、更により好ましくは15%(モル基準)である。より好ましい上限は400%(モル基準)であり、更に好ましくは300%(モル基準)であり、更により好ましくは200%(モル基準)であり、殊更に好ましくは100%(モル基準)である。
【0378】
ラジカル捕捉剤及び重合開始剤の分解剤からなる群より選択される少なくとも1種は、水性媒体中に形成されるTFE系ポリマーの濃度が5質量%以上である時に添加することが好ましい。より好ましくは、10質量%以上である時である。
また、水性媒体中に形成されるTFE系ポリマーの濃度が40質量%以下である時に添加することが好ましい。より好ましくは、35質量%以下である時であり、更に好ましくは、30質量%以下である時である。
【0379】
上記添加工程は、ラジカル捕捉剤及び重合開始剤の分解剤からなる群より選択される少なくとも1種を連続的に添加する工程であってもよい。
ラジカル捕捉剤及び重合開始剤の分解剤からなる群より選択される少なくとも1種を連続的に添加するとは、例えば、ラジカル捕捉剤及び重合開始剤の分解剤からなる群より選択される少なくとも1種を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なく又は分割して、添加することである。
【0380】
上記重合工程は、更に核形成剤の存在下に、テトラフルオロエチレンを重合するものであってもよい。
【0381】
上記核形成剤としては、例えば、フルオロポリエーテル、非イオン性界面活性剤、及び、連鎖移動剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
この場合、上記重合工程は、炭化水素系界面活性剤及び上記核形成剤の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することによりTFE系ポリマーを得る工程であることが好ましい。
【0382】
上記フルオロポリエーテルとしては、パーフルオロポリエーテルが好ましい。
【0383】
上記フルオロポリエーテルは、式(1a)~(1d)で表される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
(-CFCF3-CF2-O-)n (1a)
(-CF2-CF2-CF2-O-)n (1b)
(-CF2-CF2-O-)n-(-CF2-O-)m (1c)
(-CF2-CFCF3-O-)n-(-CF2-O-)m (1d)
(式(1a)~(1d)中、m及びnは1以上の整数である。)
【0384】
上記フルオロポリエーテルとしては、フルオロポリエーテル酸又はその塩が好ましく、上記フルオロポリエーテル酸は、カルボン酸、スルホン酸、スルホンアミド、又は、ホスホン酸であることが好ましく、カルボン酸であることがより好ましい。フルオロポリエーテル酸又はその塩のなかでも、フルオロポリエーテル酸の塩が好ましく、フルオロポリエーテル酸のアンモニウム塩がより好ましく、フルオロポリエーテルカルボン酸のアンモニウム塩が更に好ましい。
【0385】
上記フルオロポリエーテル酸又はその塩は、分子の主鎖中の酸素原子が、1~3個の炭素原子を有する飽和フルオロカーボン基により分離されているいずれかの鎖構造を有することが可能である。2種以上のタイプのフルオロカーボン基が分子中に存在し得る。
【0386】
上記フルオロポリエーテル酸又はその塩としては、下記式:
CF3-CF2-CF2-O(-CFCF3-CF2-O-)nCFCF3-COOH、
CF3-CF2-CF2-O(-CF2-CF2-CF2-O-)n-CF2-CF2COOH、又は、
HOOC-CF2-O(-CF2-CF2-O-)n-(-CF2-O-)mCF2COOH
(式中、m及びnは前記と同じ。)
で表わされる化合物又はそれらの塩であることが好ましい。
【0387】
これらの構造は、J.Appl.Polymer Sci.、57、797(1995年)においてKasaiにより検討されている。ここに開示されているとおり、このようなフルオロポリエーテルは、一端または両端に、カルボン酸基またはその塩を有することが可能である。同様に、このようなフルオロポリエーテルは、一端または両端に、スルホン酸またはホスホン酸基またはその塩を有し得る。加えて、両端に酸官能基を有するフルオロポリエーテルは、異なる基を各端部に有し得る。単官能性フルオロポリエーテルについて、分子の他端は通常は過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有していてもよい。
【0388】
一端または両端に酸基を有するフルオロポリエーテルは、少なくとも2つのエーテル酸素、好ましくは少なくとも4つのエーテル酸素、およびさらにより好ましくは少なくとも6つのエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも1つ、より好ましくはこのようなフルオロカーボン基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも50%が2または3個の炭素原子を有する。また、好ましくは、フルオロポリエーテルは合計で少なくとも15個の炭素原子を有し、例えば、上記の繰り返し単位構造中のnまたはn+mの好ましい最小値は、少なくとも5である。酸基を一端または両端に有する2種以上のフルオロポリエーテルを、本開示による方法において用いることが可能である。典型的には、単一種の特定のフルオロポリエーテル化合物の製造において特別な注意が払われない限り、フルオロポリエーテルは、平均分子量に対する分子量範囲内の様々な割合で複数種の化合物を含有し得る。
【0389】
上記フルオロポリエーテルは、数平均分子量が800g/mol以上であることが好ましい。フルオロポリエーテル酸又はその塩は、水性媒体中への分散が困難であるおそれがあることから、数平均分子量が6000g/mol未満であることが好ましい。フルオロポリエーテル酸又はその塩は、数平均分子量が800~3500g/molであることがより好ましく、1000~2500g/molであることが更に好ましい。
【0390】
上記フルオロポリエーテルの量は、水性媒体に対して5~3000ppmであることが好ましく、5~2000ppmであることがより好ましく、さらに好ましい下限は10ppm、さらに好ましい上限は、100ppmである。
【0391】
上記核形成剤としての非イオン性界面活性剤としては、上述した非イオン性界面活性剤が挙げられ、フッ素を含有しない非イオン性界面活性剤であることが好ましい。例えば、上記非イオン性界面活性剤としては、下記一般式(i)
R3-O-A1-H (i)
(式中、R3は、炭素数8~18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1級又は2級アルキル基であり、A1は、ポリオキシアルキレン鎖である。)により表される化合物が挙げられる。
R3の炭素数は10~16が好ましく、12~16がより好ましい。R3の炭素数が18以下であると水性分散液の良好な分散安定性が得られやすい。またR3の炭素数が18を超えると流動温度が高いため取扱い難い。R3の炭素数が8より小さいと水性分散液の表面張力が高くなり、浸透性やぬれ性が低下しやすい。
【0392】
ポリオキシアルキレン鎖はオキシエチレンとオキシプロピレンとからなるものであってもよい。オキシエチレン基の平均繰り返し数5~20およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2からなるポリオキシアルキレン鎖であり、親水基である。オキシエチレン単位数は、通常提供される広いまたは狭い単峰性分布、またはブレンドすることによって得られるより広いまたは二峰性分布のいずれかを含み得る。オキシプロピレン基の平均繰り返し数が0超の場合、ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に配列しても、ランダム状に配列してもよい。
水性分散液の粘度および安定性の点からは、オキシエチレン基の平均繰り返し数7~12およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2より構成されるポリオキシアルキレン鎖が好ましい。特にA1がオキシプロピレン基を平均して0.5~1.5有すると低起泡性が良好であり好ましい。
【0393】
より好ましくは、R3は、(R’)(R’’)HC-であり、ここで、R’及びR’’は、同じか又は異なる直鎖、分岐鎖、又は環式のアルキル基であり、炭素原子の合計量は、少なくとも5個、好ましくは7~17個である。好ましくは、R’またはR’’のうちの少なくとも一つは、分岐状または環状炭化水素基である。
【0394】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、C13H27-O-(C2H4O)10-H、C12H25-O-(C2H4O)10-H、C10H21CH(CH3)CH2-O-(C2H4O)9-H、C13H27-O-(C2H4O)9-(CH(CH3)CH2O)-H、C16H33-O-(C2H4O)10-H、HC(C5H11)(C7H15)-O-(C2H4O)9-H等が挙げられる。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、例えば、Genapol X080(製品名、クラリアント社製)、ノイゲンTDS-80(商品名)を例とするノイゲンTDSシリーズ(第一工業製薬社製)、レオコールTD-90(商品名)を例とするレオコールTDシリーズ(ライオン社製)、ライオノール(登録商標)TDシリーズ(ライオン社製)、T-Det A138(商品名)を例とするT-Det Aシリーズ(Harcros Chemicals社製)、タージトール(登録商標)15Sシリーズ(ダウ社製)等が挙げられる。
【0395】
上記非イオン界面活性剤は、平均約4~約18個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、平均約6~約12個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、またはその混合物であることも好ましい。この種類の非イオン性界面活性剤は、例えば、TERGITOL TMN-6、TERGITOL TMN-10、及びTERGITOL TMN-100X(いずれも製品名、Dow Chemical社製)としても市販されている。
【0396】
また、非イオン性界面活性剤の疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れかであってもよい。
例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系非イオン性化合物としては、例えば、下記一般式(ii)
R4-C6H4-O-A2-H (ii)
(式中、R4は、炭素数4~12の直鎖状又は分岐鎖状の1級若しくは2級のアルキル基であり、A2は、ポリオキシアルキレン鎖である。)で示される化合物が挙げられる。記ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系非イオン性化合物として具体的には、トライトン(登録商標)X-100(製品名、Dow Chemical社製)等が挙げられる。
【0397】
上記非イオン性界面活性剤としてはポリオール化合物も挙げられる。具体的には、国際公開第2011/014715号に記載されたもの等が挙げられる。
ポリオール化合物の典型例としては、ポリオール単位として1個以上の糖単位を有する化合物が挙げられる。糖単位は、少なくとも1個の長鎖を含有するように変性されてもよい。少なくとも1つの長鎖部分を含有する好適なポリオール化合物としては、例えば、アルキルグリコシド、変性アルキルグリコシド、糖エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。糖としては、単糖、オリゴ糖、及びソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。単糖としては、五炭糖及び六炭糖が挙げられる。単糖の典型例としては、リボース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アラビノース、キシロースが挙げられる。オリゴ糖としては、2~10個の同一又は異なる単糖のオリゴマーが挙げられる。オリゴ糖の例としては、サッカロース、マルトース、ラクトース、ラフィノース、及びイソマルトースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0398】
典型的に、ポリオール化合物として使用するのに好適な糖としては、4個の炭素原子と1個のヘテロ原子(典型的に、酸素又は硫黄であるが、好ましくは酸素原子)との五員環を含有する環状化合物、又は5個の炭素原子と上述のような1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子との六員環を含有する環状化合物が挙げられる。これらは、炭素環原子に結合している少なくとも2個の又は少なくとも3個のヒドロキシ基(-OH基)を更に含有する。典型的に、糖は、エーテル又はエステル結合が長鎖残基と糖部分との間に作製されるように、炭素環原子に結合しているヒドロキシ基(及び/又はヒドロキシアルキル基)の水素原子のうちの1個以上が、長鎖残基によって置換されているという点で変性されている。
糖系ポリオールは、1個の糖単位又は複数の糖単位を含有してもよい。1個の糖単位又は複数の糖単位は、上述のような長鎖部分で変性されてもよい。糖系ポリオール化合物の特定の例としては、グリコシド、糖エステル、ソルビタンエステル、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0399】
ポリオール化合物の好ましい種類は、アルキル又は変性アルキルグルコシドである。これらの種類の界面活性剤は、少なくとも1個のグルコース部分を含有する。
【化39】
(式中、xは、0、1、2、3、4、又は5を表し、R
1及びR
2は、独立して、H又は少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を表すが、但しR
1及びR
2のうちの少なくとも1個はHではない)によって表される化合物が挙げられる。R
1及びR
2の典型例としては、脂肪族アルコール残基が挙げられる。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。
上記の式は、ピラノース形態のグルコースを示すアルキルポリグルコシドの特定の例を表すが、他の糖又は同じ糖であるが異なる鏡像異性体又はジアステレオマー形態である糖を用いてもよいことが理解される。
アルキルグルコシドは、例えば、グルコース、デンプン、又はn-ブチルグルコシドと脂肪族アルコールとの酸触媒反応によって入手可能であり、これからは、典型例に、様々なアルキルグルコシドの混合物が得られる(Alkylpolygylcoside,Rompp,Lexikon Chemie,Version 2.0,Stuttgart/New York,Georg Thieme Verlag,1999)。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。また、アルキルグルコシドは、Cognis GmbH,Dusseldorf,Germanyから商品名GLUCOPON又はDISPONILとして市販されている。
【0400】
その他の非イオン性界面活性剤として、BASFからPluronic(登録商標)Rシリーズとして供給される二官能基ブロックコポリマー、BASF CorporationからIconol(登録商標)TDAシリーズとして供給されるトリデシルアルコールアルコキシレート、炭化水素含有シロキサン界面活性剤、好ましくは炭化水素界面活性剤であり、ここで、上記のヒドロカルビル基は、フッ素などのハロゲンによって置換され得る場合に、水素原子によって完全に置換され、それによって、これらのシロキサン界面活性剤は、炭化水素界面活性剤とみなすこともでき、すなわち、ヒドロカルビル基上の一価置換基は水素である。
【0401】
また、上記製造方法において、上記特定の炭化水素系界面活性剤と、所望により用いるその他の界面活性能を有する化合物に加え、各化合物を安定化するため添加剤を使用することができる。上記添加剤としては、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤などが挙げられる。
【0402】
安定化助剤としては、パラフィンワックス、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイルなどが好ましい。安定化助剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。安定化助剤としては、パラフィンワックスがより好ましい。パラフィンワックスとしては、室温で液体でも、半固体でも、固体であってもよいが、炭素数12以上の飽和炭化水素が好ましい。パラフィンワックスの融点は、通常40~65℃が好ましく、50~65℃がより好ましい。
【0403】
安定化助剤の使用量は、使用する水性媒体の質量基準で0.1~12質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましい。安定化助剤は十分に疎水的で、TFEの乳化重合後にTFE系ポリマー水性乳化液と完全に分離されて、コンタミ成分とならないことが望ましい。
【0404】
上記製造方法において、乳化重合は、重合反応器に、水性媒体、上記炭化水素系界面活性剤、モノマー及び必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行うことができる。重合反応開始後に、目的に応じて、モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤及び上記界面活性剤等を追加添加してもよい。上記炭化水素系界面活性剤を重合反応が開始した後に添加してもよい。
【0405】
上記乳化重合において、重合温度、重合圧力は、使用するモノマーの種類、目的とするTFE系ポリマーの分子量、反応速度によって適宜決定される。通常、重合温度は、5~150℃であり、10℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。また、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。
重合圧力は、0.05~10MPaGである。重合圧力は、0.3MPaG以上がより好ましく、0.5MPaG以上が更に好ましい。また、5.0MPaG以下がより好ましく、3.0MPaG以下が更に好ましい。
特に、得量を向上させる観点からは、1.0MPaG以上が好ましく、1.2MPaG以上がより好ましく、1.5MPaG以上が更に好ましく、1.8MPaG以上が更により好ましく、2.0MPaG以上が特に好ましい。
【0406】
上記乳化重合において、炭化水素系界面活性剤は、水性媒体中に形成されるTFE系ポリマーの濃度が0.60質量%未満であるときに添加することが好ましい。より好ましくは、上記濃度が0.50質量%以下であり、更に好ましくは0.36質量%以下であり、更により好ましくは0.30質量%以下であり、殊更に好ましくは0.20質量%以下であり、特に好ましくは0.10質量%以下であり、重合開始とともに、添加することが最も好ましい。上記濃度は、水性媒体及びTFE系ポリマーの合計に対する濃度である。
また、上記乳化重合において、重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、水性媒体に対して1ppm以上であることが好ましい。重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、好ましくは10ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、更に好ましくは100ppm以上であり、更により好ましくは200ppm以上である。上限は特に限定されないが、例えば、100000ppmであることが好ましく、50000ppmであることがより好ましい。重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、上記範囲であることによって、より平均一次粒子径が小さく、より安定性に優れる水性分散液を得ることができる。
【0407】
上記重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、モノマーの種類、目的とするTFE系ポリマーの分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0408】
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
【0409】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
油溶性ラジカル重合開始剤としては、フッ素原子を含まないものが好ましい。
【0410】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t-ブチルパーマレエート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
【0411】
例えば、30℃以下の低温で重合を実施する場合等では、重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム、臭素酸塩等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0412】
上記レドックス開始剤としては、酸化剤が、過マンガン酸又はその塩、過硫酸塩、三酢酸マンガン、セリウム(IV)塩、若しくは、臭素酸又はその塩であり、還元剤が、ジカルボン酸又はその塩、若しくは、ジイミンであることが好ましい。
より好ましくは、酸化剤が、過マンガン酸又はその塩、過硫酸塩、若しくは、臭素酸又はその塩であり、還元剤が、ジカルボン酸又はその塩である。
【0413】
上記レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム、三酢酸マンガン/シュウ酸、三酢酸マンガン/シュウ酸アンモニウム、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸アンモニウム等の組合せが挙げられる。
レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウムを用いる場合、重合槽にシュウ酸アンモニウムを仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
なお、本明細書のレドックス開始剤において、「過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム」と記載した場合、過マンガン酸カリウムとシュウ酸アンモニウムとの組合せを意味する。他の化合物においても同じである。
上記レドックス開始剤としては、レドックス開始剤水溶液のpHを4.0以上とすることができる酸化剤又は還元剤を使用することが好ましい。上記レドックス開始剤水溶液とは、酸化剤の0.50質量%濃度水溶液、または、還元剤の0.50質量%濃度水溶液を意味する。
すなわち、酸化剤の0.50質量%濃度水溶液、及び、還元剤の0.50質量%濃度水溶液の少なくとも一方のpHが4.0以上であればよく、酸化剤の0.50質量%濃度水溶液、及び、還元剤の0.50質量%濃度水溶液の両方のpHが4.0以上であることが好ましい。
上記レドックス開始剤水溶液(酸化剤の0.50質量%濃度水溶液、又は、還元剤の0.50質量%濃度水溶液)のpHは、それぞれ、5.0以上がより好ましく、5.5以上が更に好ましく、6.0以上が特に好ましい。
【0414】
上記レドックス開始剤は特に、塩である酸化剤と塩である還元剤との組み合わせであることが好ましい。
例えば、上記塩である酸化剤は、過硫酸塩、過マンガン酸塩、セリウム(IV)塩及び臭素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、過マンガン酸塩が更に好ましく、過マンガン酸カリウムが特に好ましい。
また、上記塩である還元剤は、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩及び臭素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、シュウ酸塩が更に好ましく、シュウ酸アンモニウムが特に好ましい。
【0415】
上記レドックス開始剤として具体的には、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム、臭素酸カリウム/亜硫酸アンモニウム、三酢酸マンガン/シュウ酸アンモニウム、及び、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム、臭素酸カリウム/亜硫酸アンモニウム、及び、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0416】
上記重合工程でレドックス開始剤を用いることによって、得られるTFE系ポリマーの分子量を高くすることができる。そのため、SSGを小さくすることができ、延伸可能なものとすることができる。
また、上記重合工程でレドックス開始剤を用いることによって、水性分散液中に生成されるTFE系ポリマーの粒子数を多くすることができる。また、TFE系ポリマーの得量を高くすることもできる。
レドックス開始剤を使用する場合、重合初期に酸化剤と還元剤を一括で添加してもよいし、重合初期に還元剤を一括で添加し、酸化剤を連続して添加してもよいし、重合初期に酸化剤を一括で添加し、還元剤を連続して添加してもよいし、酸化剤と還元剤の両方を連続して添加してもよい。
重合開始剤としてレドックス開始剤を使用する場合、水性媒体に対して、酸化剤の添加量が5~10000ppmであることが好ましく、10~1000ppmであることがより好ましく、還元剤の添加量が5~10000ppmであることが好ましく、10~1000ppmであることがより好ましい。
また、上記重合工程でレドックス開始剤を用いる場合、重合温度は、100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましい。また、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。
【0417】
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱で除熱を行いながら、反応温度を上昇させてもよい範囲であり、より好ましい上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。より具体的には、例えば、水性媒体に対して1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、50ppm以上が更に好ましい。また、100000ppm以下が好ましく、10000ppm以下がより好ましく、5000ppm以下が更に好ましい。
【0418】
上記水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0419】
上記乳化重合において、更に、目的に応じて、公知の連鎖移動剤を添加し、重合速度、分子量の調整を行うこともできる。
【0420】
上記連鎖移動剤としては、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素などの各種ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサンなどがあげられる。
【0421】
連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーの重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
RaIxBry
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Raは炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0422】
ヨウ素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0423】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0424】
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるフルオロモノマー全量に対して、1~50,000ppmであり、好ましくは1~20,000ppmである。
【0425】
上記連鎖移動剤は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合開始後に一括して添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
【0426】
上記製造方法によりTFE系ポリマー水性分散液を得ることができる。上記TFE系ポリマー水性分散液は、通常、TFE系ポリマーと、化合物(1)及び/又は(2)と、水性媒体とを含む。TFE系ポリマー水性分散液の固形分濃度は限定されないが、例えば、1.0~70質量%であってよい。上記固形分濃度は、8.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がより好ましく、また、60.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以下がより好ましい。
上記製造方法において、付着量は、最終的に得られたTFE系ポリマーに対して、3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が更に好ましく、0.7質量%以下が更により好ましく、0.6質量%以下が特に好ましい。
【0427】
工程(B)における凝析は、公知の方法により行うことができる。
上記TFE系ポリマーの水性分散液に対して凝析を行う場合、通常、ポリマーラテックス等の重合により得た水性分散液を、水を用いて10~25質量%のポリマー濃度(好ましくは10~20質量%のポリマー濃度)になるように希釈し、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で反応中の撹拌よりも激しく撹拌して行う。上記凝析は、メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。上記凝析は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0428】
凝析方法としては、撹拌による凝析法、超音波凝析法、ウルトラファインバブルを用いた凝析法、アルカリを用いた凝析法、酸を用いた凝析法、酸化剤を用いた凝析法、有機溶剤を用いた凝析法、および、ラジカル発生剤を用いた凝析法からなる群より選択される少なくとも1種の凝析法が好ましい。本開示の製造方法においては、また、水性分散液を撹拌しながら、超音波凝析法、ウルトラファインバブルを用いた凝析法、アルカリを用いた凝析法、酸を用いた凝析法、酸化剤を用いた凝析法、有機溶剤を用いた凝析法、および、ラジカル発生剤を用いた凝析法からなる群より選択される少なくとも1種の凝析法を用いて、非溶融加工性TFE系ポリマーを凝析させることも好ましい。
【0429】
後述するように、熱処理を比較的低温で行うと、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を十分に低減することができず、それによって、安定した押出圧力で押出成形することができる非溶融加工性TFE系ポリマーが得られないことがある。一方で、熱処理温度が高すぎると、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を低減することができるものの、得られる非溶融加工性TFE系ポリマーの押出圧力が高くなりすぎる。熱処理を比較的低温で行い、なおかつ、上記の方法により凝析を行うことによって、親水基を有する含フッ素化合物の十分な除去と、低い押出圧力の安定化とを、見事に両立させることができる。
【0430】
非溶融加工性TFE系ポリマーを凝析させる水性分散液の温度は、3~95℃であってよく、5℃以上であってよく、10℃以上であってよく、85℃以下であってよく、75℃以下であってよく、60℃以下であってよい。
【0431】
撹拌による凝析法においては、非溶融加工性TFE系ポリマー粒子が凝析する程度に水性分散液を強く撹拌する。撹拌は、たとえば、撹拌機付きの容器を用いて行うことができる。撹拌による凝析法による凝析は、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0432】
超音波凝析法においては、非溶融加工性TFE系ポリマー粒子が凝析する程度の強い超音波を水性分散液に対して照射する。
【0433】
超音波の出力は、好ましくは100W以上であり、より好ましくは200W以上であり、さらに好ましくは300W以上であり、尚さらに好ましくは400W以上であり、特に好ましくは500W以上であり、好ましくは3000W以下であり、より好ましくは1000W以下であり、さらに好ましくは800W以下である。
【0434】
超音波の周波数は、好ましくは15kHz以上であり、より好ましくは20kHz以上であり、さらに好ましくは25kHz以上であり、尚さらに好ましくは30kHz以上であり、特に好ましくは40kHz以上であり、好ましくは100kHz以下であり、より好ましくは80kHz以下であり、さらに好ましくは50kHz以下である。
【0435】
超音波の照射時間は、好ましくは60秒以上であり、より好ましくは300秒以上であり、好ましくは20分以下である。
【0436】
超音波の照射は、市販の超音波発生装置を用いて行うことができる。超音波照射装置としては、市販の超音波発信装置(例えば、超音波ホモジナイザー)、超音波発信器、循環式超音波照射機、超音波振動子、超音波洗浄器などが挙げられる。
【0437】
超音波を照射する具体的な方法としては、例えば、超音波ホモジナイザーのノズル部分を水性分散液に浸して行う方法や、TFE系ポリマー水性分散液を導入した容器に投げ込み式の超音波振動子を浸して照射する方法、予め水性媒体などを仕込んだ超音波洗浄器にTFE系ポリマー水性分散液が入った容器を導入し照射する方法、槽型に製作された超音波洗浄器や超音波発信器にTFE系ポリマー分散液を導入し照射する方法、棒状超音波照射体を備えた槽にTFE系ポリマー水性分散液を導入し、超音波を照射する方法等が挙げられる。水性分散液を撹拌しながら、水性分散液に超音波を照射することも好ましい。
【0438】
ウルトラファインバブルを用いた凝析法においては、非溶融加工性TFE系ポリマー粒子が凝析する程度の量のウルトラファインバブルを水性分散液中に発生させる。ウルトラファインバブルとは、直径が1μm以下の気泡である。ウルトラファインバブルは、たとえば、水性分散液に超音波を照射し、キャビテーションを起こすことによって、発生させることができる。ウルトラファインバルを発生させた水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0439】
ウルトラファインバブルによる処理の時間は、好ましくは60秒以上であり、より好ましくは300秒以上であり、好ましくは20分以下である。
【0440】
アルカリを用いた凝析法においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等のアルカリを用いることができる。アンモニアとしては、炭酸水素アンモニウムまたは炭酸アンモニウムが好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。アルカリを含有する水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0441】
親水基を有する含フッ素化合物として、アニオン性基を有する含フッ素化合物を含有する水性分散液に対して、アルカリを用いて凝析を行った場合には、含フッ素化合物のアニオン性基が塩型に変換されることにより含フッ素化合物の水溶性が高くなるので、凝析により得られる湿潤粉末の洗浄によって湿潤粉末中から含フッ素化合物を除去しやすい利点がある。洗浄後も湿潤粉末中に残留する塩型のアニオン性基を有する含フッ素化合物は、揮発しにくいことから、湿潤粉末の熱処理によっても除去しにくい傾向があるが、熱処理前に湿潤粉末を、酸を用いて洗浄しておくと、含フッ素化合物の含有量を一層円滑に低減することができる。したがって、アルカリを用いて凝析を行った後、得られた湿潤粉末を酸を用いて洗浄し、洗浄した湿潤粉末を熱処理することも、好適な実施形態の一つである。
【0442】
酸を用いた凝析法においては、有機酸または無機酸を用いることができる。酸としては、熱処理時に残留しにくい観点から無機酸が好ましく、特に、硝酸、硫酸、発煙硫酸、過塩素酸および塩酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、硝酸、硫酸および塩酸からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。上記有機酸としては、コハク酸、シュウ酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸等などが挙げられる。酸の添加量は限定されず、水性分散液のpH等によって適宜設定すればよい。酸を含有する水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0443】
酸化剤を用いた凝析法においては、無機酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。無機酸としては、亜硝酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、過硫酸、塩酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、フッ素化水素酸、臭素酸、ヨウ素酸、リン酸、ホウ酸、クロム酸、ニクロム酸、過マンガン酸などが挙げられる。無機酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、銀塩などが挙げられる。酸化剤としては、硝酸およびその塩、ならびに、過塩素酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、硝酸塩および過塩素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムおよび過塩素酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。2以上の酸化剤を組み合わせて用いてもよい。たとえば、無機酸と無機酸塩とを組み合わせて用いてもよいし、硝酸と硝酸塩(たとえば、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなど)を組み合わせて用いてもよい。酸化剤を含有する水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0444】
酸化剤の添加量は、水性分散液中の非溶融加工性TFE系ポリマーに対して、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。一実施形態において、水性分散液に酸化剤を添加し、撹拌を行うことにより、非溶融加工性TFE系ポリマーを凝析させる。
【0445】
有機溶剤を用いた凝析法においては、たとえば、以下の有機溶剤を用いることができる。
アルコール;
酢酸、プロピオン酸、エトキシ酢酸、吉草酸などのカルボン酸;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、炭酸ジメチルなどのエステル;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、3-メチル-2-シクロペンテノンなどのケトン;
ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル
【0446】
有機溶剤としては、なかでも、アルコールが好ましい。アルコールは、一価アルコール、二価アルコールおよび三価アルコールのいずれであってもよい。アルコールとしては、一価アルコールが好ましい。アルコールの炭素数は、好ましくは2~7であり、より好ましくは3以上であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは4以下である。有機溶剤としては、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノールおよび1-ペンタノールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノールおよび1-ペンタノールからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、1-プロパノール、2-ブタノールおよび1-ペンタノールからなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
【0447】
有機溶剤の添加量は、水性分散液中の非溶融加工性TFE系ポリマーに対して、好ましくは1.0質量%以上に相当する重量である。凝析に用いる有機溶剤の量は、より好ましくは5.0質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50倍に相当する重量以下の量、より好ましくは10倍に相当する重量以下の量、更に好ましくは5倍に相当する重量以下の量である。有機溶剤を含有する水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0448】
ラジカル発生剤を用いた凝析法においては、水溶性ラジカル発生剤を好適に用いることができる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、酸化剤と還元剤との組み合わせなどが挙げられ、無機過酸化物、有機過酸化物および酸化剤と還元剤との組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。一実施形態において、水性分散液にラジカル発生剤を添加し、水性分散液をラジカル発生剤の分解温度以上に加熱して、非溶融加工性TFE系ポリマーを凝析させる。ラジカル発生剤を含有する水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0449】
無機過酸化物としては、水溶性無機過酸化物が好ましい。無機過酸化物としては、過酸化水素、過塩素酸塩、過ホウ酸塩、過リン酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩などが挙げられ、過硫酸塩が好ましい。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、過硫酸アンモニウムがより好ましい。
【0450】
有機過酸化物としては、水溶性有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシドなどのパーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0451】
ラジカル発生剤として、酸化剤と還元剤との組み合わせて用いることができる。酸化剤と還元剤とを組み合わせて用いることにより、酸化剤と還元剤とのレドックス反応によってラジカル発生剤からラジカルを発生させることができるので、熱処理の際の温度を低下させることができる。
【0452】
酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウムなどが挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。酸化剤の分解速度を上げるため、銅塩、鉄塩を添加することも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0453】
ラジカル発生剤を含有する水性分散液の加熱温度は、ラジカル発生剤が分解してラジカルが発生する温度(分解温度)以上であれば特に限定されないが、好ましくは35℃以上であり、より好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上であり、特に好ましくは50℃以上であり、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは110℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下であり、特に好ましくは90℃以下である。
【0454】
本開示の製造方法においては、非溶融加工性TFE系ポリマーの凝析により生じた凝析物を回収することにより湿潤粉末を得た後、湿潤粉末を洗浄することが好ましい。洗浄の回数は、1回であってよいし、2回以上であってよい。
【0455】
洗浄方法としては、撹拌による洗浄法、超音波洗浄法、ウルトラファインバブルを用いた洗浄法、アルカリを用いた洗浄法、酸を用いた洗浄法、および、ラジカル発生剤を用いた洗浄法からなる群より選択される少なくとも1種の洗浄法が好ましい。
【0456】
後述するように、熱処理を比較的低温で行うと、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を十分に低減することができず、それによって、安定した押出圧力で押出成形することができる非溶融加工性TFE系ポリマーが得られないことがある。一方で、熱処理温度が高すぎると、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を低減することができるものの、得られる非溶融加工性TFE系ポリマーの押出圧力が高くなりすぎる。熱処理を比較的低温で行い、なおかつ、上記の方法により洗浄を行うことによって、親水基を有する含フッ素化合物の十分な除去と、低い押出圧力の安定化とを、見事に両立させることができる。さらに、熱処理を比較的低温で行い、上記の方法により凝析を行い、なおかつ、上記の方法により洗浄を行うことによって、親水基を有する含フッ素化合物の十分な除去と、低い押出圧力の安定化とを、一層容易に、見事に両立させることができる。
【0457】
湿潤粉末を洗浄する際の温度は、3~95℃であってよい。湿潤粉末を洗浄する際の温度は、5℃以上または10℃以上であってよい。湿潤粉末を洗浄する際の温度は、85℃以下、75℃以下または60℃以下であってよい。
【0458】
撹拌による洗浄法においては、湿潤粉末を水中に投入し、水を撹拌する。撹拌は、たとえば、撹拌機付きの容器を用いて行うことができる。洗浄は複数回行うことが好ましい。複数回洗浄を行う場合、最終の洗浄は30℃以下で行うことがより好ましい。
【0459】
超音波洗浄法においては、湿潤粉末を液体中に投入し、液体に対して超音波を照射する。液体としては、水またはアルコールが挙げられる。アルコールとしては、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノールおよび1-ペンタノールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、メタノールがより好ましい。
【0460】
超音波の出力は、好ましくは100W以上であり、より好ましくは200W以上であり、さらに好ましくは300W以上であり、尚さらに好ましくは400W以上であり、特に好ましくは500W以上であり、好ましくは3000W以下であり、より好ましくは1000W以下であり、さらに好ましくは800W以下である。
【0461】
超音波の周波数は、好ましくは15kHz以上であり、より好ましくは20kHz以上であり、さらに好ましくは25kHz以上であり、尚さらに好ましくは30kHz以上であり、特に好ましくは40kHz以上であり、好ましくは100kHz以下であり、より好ましくは80kHz以下であり、さらに好ましくは50kHz以下である。
【0462】
超音波の照射時間は、好ましくは60秒以上であり、より好ましくは300秒以上であり、好ましくは180分以下であり、より好ましくは150分以下であり、さらに好ましくは120分以下であり、特に好ましくは20分以下である。
【0463】
超音波の照射は、市販の超音波発生装置を用いて行うことができる。超音波照射装置としては、市販の超音波発信装置(例えば、超音波ホモジナイザー)、超音波発信器、循環式超音波照射機、超音波振動子、超音波洗浄器などが挙げられる。
【0464】
粉末および液体に対して超音波を照射する具体的な方法としては、例えば、超音波ホモジナイザーのノズル部分を液体に浸して行う方法や、液体を導入した容器に投げ込み式の超音波振動子を浸して照射する方法、予め水性媒体などを仕込んだ超音波洗浄器に液体が入った容器を導入し照射する方法、槽型に製作された超音波洗浄器や超音波発信器に液体を導入し照射する方法、棒状超音波照射体を備えた槽に液体を導入し、超音波を照射する方法等が挙げられる。
【0465】
ウルトラファインバブルを用いた洗浄法においては、湿潤粉末を水中に投入し、ウルトラファインバブルを、水中に発生させる。ウルトラファインバブルとは、直径が1μm以下の気泡である。ウルトラファインバブルは、たとえば、水に超音波を照射し、キャビテーションを起こすことによって、発生させることができる。
【0466】
ウルトラファインバブルによる洗浄の時間は、好ましくは60秒以上であり、より好ましくは300秒以上であり、好ましくは20分以下である。
【0467】
アルカリを用いた洗浄法においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等のアルカリを用いることができる。アンモニアとしては、炭酸水素アンモニウムまたは炭酸アンモニウムが好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0468】
親水基を有する含フッ素化合物として、アニオン性基を有する含フッ素化合物を含有する湿潤粉末に対して、アルカリを用いて洗浄を行った場合には、含フッ素化合物のアニオン性基が塩型に変換されることにより含フッ素化合物の水溶性が高くなるので、得られる湿潤粉末の洗浄によって湿潤粉末中から含フッ素化合物を除去しやすい利点がある。洗浄後も湿潤粉末中に残留する塩型のアニオン性基を有する含フッ素化合物は、揮発しにくいことから、湿潤粉末の熱処理によっても除去しにくい傾向があるが、熱処理前に湿潤粉末を、酸を用いて洗浄しておくと、含フッ素化合物の含有量を一層円滑に低減することができる。したがって、湿潤粉末をアルカリを用いて洗浄し、次に湿潤粉末を酸を用いて洗浄し、洗浄した湿潤粉末を熱処理することも、好適な実施形態の一つである。
【0469】
酸を用いた洗浄法においては、有機酸または無機酸を用いることができるが、熱処理時に残留しにくい観点から無機酸が好ましく、特に、硝酸、硫酸、発煙硫酸、過塩素酸および塩酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、硝酸、硫酸および塩酸からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。上記有機酸としては、コハク酸、シュウ酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸等などが挙げられる。酸の添加量は限定されず、粉末を含む水のpH等によって適宜設定すればよい。一実施形態において、湿潤粉末および酸を水に投入し、水を撹拌することにより、洗浄を行う。
【0470】
ラジカル発生剤を用いた洗浄法においては、水溶性ラジカル発生剤を好適に用いることができる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、酸化剤と還元剤との組み合わせなどが挙げられ、無機過酸化物、有機過酸化物および酸化剤と還元剤との組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。一実施形態において、湿潤粉末およびラジカル発生剤を水に投入し、水をラジカル発生剤の分解温度以上に加熱し、撹拌することにより、洗浄を行う。
【0471】
洗浄に用いるラジカル発生剤として、ラジカル発生剤を用いた凝析法において用いることができるラジカル発生剤を用いることができる。
【0472】
水の加熱温度は、ラジカル発生剤が分解してラジカルが発生する温度(分解温度)以上であれば特に限定されないが、好ましくは35℃以上であり、より好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上であり、特に好ましくは50℃以上であり、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは110℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下であり、特に好ましくは90℃以下である。
【0473】
本開示の製造方法においては、湿潤粉末を洗浄した後、洗浄した湿潤粉末に対して、熱処理を行うことが好ましい。上記熱処理は、工程(C)として実施することもできる。
【0474】
熱処理する湿潤粉末の水分含有量は、湿潤粉末に対し10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、また、150質量%以下であることが好ましく、100質量%以下であることがより好ましい。
【0475】
熱処理の温度は、好ましくは10~280℃である。熱処理の温度は、100℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上または160℃以上であってよい。熱処理の温度は、230℃以下、210℃以下、200℃以下、190℃以下、185℃以下または180℃以下であってよい。本開示の製造方法においては、このように、比較的低温で熱処理を行うことが好ましい。比較的低温で熱処理を行うことによって、親水基を有する含フッ素化合物の含有量が低減されており、低い押出圧力および安定した押出圧力で押出成形することができる非溶融加工性TFE系ポリマーを製造することができる。
【0476】
熱処理の時間は、好ましくは5~3000分間である。熱処理の時間は、10分間以上、15分間以上、20分間以上、30分間以上、50分間以上、100分間以上、150分間以上または200分間以上であってよい。熱処理の時間は、2500分間以下または2000分間以下であってよい。本開示の製造方法においては、比較的低温で比較的長時間の熱処理を行うことが好ましい。
【0477】
熱処理は、空気中で行うことができる。また、熱処理を、酸素リッチガスまたはオゾン含有ガス中で行うと、親水基を有する含フッ素化合物の含有量の低減を一層促進させることができる。
【0478】
熱処理の方法としては、湿潤粉末に熱風を接触させることにより行う方法、または、水蒸気の存在下に湿潤粉末を加熱することにより行う方法が好ましい。熱処理を比較的低温で行うと、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を十分に低減することができず、それによって、安定した押出圧力で押出成形することができる非溶融加工性TFE系ポリマーが得られないことがある。一方で、熱処理温度が高すぎると、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を低減することができるものの、得られる非溶融加工性TFE系ポリマーの押出圧力が高くなりすぎる。湿潤粉末を上記した温度範囲内で熱処理することに加えて、熱風または水蒸気を用いて熱処理を行うことによって、親水基を有する含フッ素化合物の十分な除去と、低い押出圧力の安定化とを、見事に両立させることができる。
【0479】
熱風を用いた熱処理は、湿潤粉末に熱風を吹き付けることにより行うことができる。一実施形態において、湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、配置した湿潤粉末に対して、熱風を吹き付ける。別の一実施形態においては、湿潤粉末を乾燥機内に配置し、乾燥機内で熱風を循環させることにより、熱風を吹き付ける。
【0480】
湿潤粉末に吹き付ける熱風の風速は、0.01m/s以上、0.03m/s以上、0.05m/s以上、0.10m/s以上、0.20m/s以上、0.30m/s以上または0.40m/s以上であってよい。また、湿潤粉末に吹き付ける熱風の風速は、10m/s以下、5.0m/s以下、3.0m/s以下、2.0m/s以下または1.0m/s以下であってよい。
【0481】
湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、配置した湿潤粉末に対して、熱風を吹き付ける熱処理方法(本開示において、「通気乾燥処理」ということがある)における処理時間は、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、60分以上または80分以上であってよく、300分以下または200分以下であってよい。
【0482】
湿潤粉末に吹き付ける熱風の温度は、熱処理の温度として上記したとおりである。通気乾燥処理における処理温度(熱風の温度)は、150℃超、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、175℃以上または180℃以上であってよい。また、通気乾燥処理における処理温度(熱風の温度)は、260℃以下、235℃以下、230℃以下、225℃以下、220℃以下、215℃以下または210℃以下であってよい。
【0483】
通気乾燥処理において、たとえば、処理温度(熱風の温度)を250℃超280℃以下とし、なおかつ、処理時間を50分以下とすることができる。また、通気乾燥処理において、たとえば、処理温度(熱風の温度)を200℃超250℃以下とし、なおかつ、処理時間を100分以下とすることができる。また、通気乾燥処理において、たとえば、処理温度(熱風の温度)を150℃超200℃以下とし、なおかつ、処理時間を200分以下とすることができる。
【0484】
通気乾燥処理における熱風の風速は、0.01m/s以上、0.03m/s以上、0.05m/s以上または0.10m/s以上であってよい。また、通気乾燥処理における熱風の風速は、10m/s以下、5.0m/s以下、3.0m/s以下、2.0m/s以下または1.0m/s以下であってよい。
【0485】
熱処理工程で電気炉を使用する場合では、電気炉内に、ガス、空気または水蒸気を供給する量、電気炉内に、ガス、空気または水蒸気を循環させる量、電気炉外に、ガス、空気または水蒸気を排出する量などを調節することができる。
【0486】
電気炉から排出するガス、空気または水蒸気の量の割合は、電気炉内で循環する量に対して3容量%以上、5%容量以上または10%容量以上であってよく、95容量%以下、80容量%以下または75%容量以下であってよい。
【0487】
通気乾燥処理における電気炉から排出するガス、空気または水蒸気の量の割合は、電気炉内で循環する量に対して、3容量%以上、5%容量以上または10%容量以上であってよく、50容量%以下、40容量%以下または30容量%以下であってよい。
【0488】
熱風循環式乾燥処理における電気炉から排出するガス、空気または水蒸気の量の割合は、電気炉内で循環するに対して、10容量%以上、20%容量以上または30%容量以上であってよく、95容量%以下、80容量%以下または75容量%以下であってよい。
【0489】
熱処理温度が200℃超えの場合には、電気炉から排出するガス、空気または水蒸気の量の割合は、電気炉内で循環する量に対して、3容量%以上、5%容量以上または10%容量以上であってよく、50容量%以下、40容量%以下または30容量%以下であってよい。
【0490】
熱処理温度が200℃以下の場合には、電気炉から排出するガス、空気または水蒸気の量の割合は、電気炉内で循環するに対して、10容量%以上、20%容量以上または30%容量以上であってよく、95容量%以下、80容量%以下または75容量%以下であってよい。
【0491】
湿潤粉末を乾燥機内に配置し、乾燥機内で熱風を循環させることにより、熱風を吹き付ける熱処理方法(本開示において、「熱風循環式乾燥処理」ということがある)における処理時間は、120分以上、180分以上、240分以上または300分以上であってよく、1500分以下または1200分以下であってよい。
【0492】
湿潤粉末に吹き付ける熱風の温度は、熱処理の温度として上記したとおりである。また、熱風循環式乾燥処理における処理温度(熱風の温度)は、150℃超、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、175℃以上または180℃以上であってよく、235℃以下、230℃以下、225℃以下、220℃以下、215℃以下または210℃以下であってよい。
【0493】
熱風循環式乾燥処理における熱風の風速は、0.10m/s以上、0.50m/s以上または1.0m/s以上であってよく、10m/s以下または5.0m/s以下であってよい。
【0494】
熱処理は、湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置した状態で、行うことができる。底面及び/又は側面に通気性のある容器は、熱処理温度に耐え得るものであればよいが、ステンレス等の金属製であることが好ましい。
【0495】
底面及び/又は側面に通気性のある容器としては、底面及び/又は側面に通気性を有するトレー(バット)が好ましく、底面及び/又は側面がメッシュで作製されたトレー(メッシュトレー)が更に好ましい。上記メッシュは、織網とパンチングメタルのいずれかであることが好ましい。メッシュが織網である場合の織り方としては、例えば、平織、綾織、平畳織、綾畳織が挙げられる。さらに、メッシュと織地を組み合わせる方法も挙げられる。
【0496】
上記織地は、オーブン内のトレー乾燥で用いられる穴開き鍋のライナーか或はオーブン内で運転される連続ベルトのような形態であってもよく、連続ベルトの場合の工程段階は連続実施である、即ち該ベルト通路の1つの末端の所に該凝集物を連続的に置きそしてこのベルト通路の反対側末端から精製されたTFE系ポリマー微粉を連続的に取り出すが、ここでは、該凝集物の浅い床が該通路に沿って1つの末端から反対側の末端に移動しながら連続的に加熱空気にさらされる。いずれの形態においても、この織地は該凝集物のための直接的な支持体であり、追加的ポリマーの精製で再使用可能である。
【0497】
この織地は如何なる構造のものであってもよく、例えば使用する織地の形態に応じて要求される寸法一体性を与えるニット、スパンボンデッド(spunbonded)または織物などであってもよい。ニットまたは織物構造の場合この織地を糸から作成し、そしてスパンボンデッド構造の場合一般に繊維から作成する。この織地を構成する糸または繊維は、場合しだいで、該精製段階中該加熱空気を通すが該TFE系ポリマー凝集物/微粉粒子を上に保持する(即ち該TFE系ポリマー微粉を通さない)開口部を、この織地を構成する糸または繊維の間に与える。この織地内の開口部は該TFE系ポリマー微粉を保持する目的で小さくなければならないが、上記開口部はまた、精製を適度な熱風接触時間で行うに充分な速度で該加熱空気および蒸発した汚染物を通すに充分なほど大きくなければならない。
【0498】
上記メッシュの目開きは、2000μm以下(ASTM規格の10メッシュ以上)が好ましく、595μm以下(30メッシュ以上)がより好ましく、297μm以下(50メッシュ以上)が更に好ましく、177μm以下(80メッシュ以上)が更により好ましく、149μm以下(100メッシュ以上)が殊更に好ましく、74μm以下(200メッシュ以上)が特に好ましい。また、25μm以上(500メッシュ以下)が好ましい。
【0499】
上記メッシュがパンチングメタルである場合の開孔率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。また、95%以下が好ましい。
【0500】
湿潤粉末の配置量は、10g/cm2以下であることが好ましく、8g/cm2以下であることがより好ましく、5g/cm2以下であることが更に好ましく、3g/cm2以下であることが特に好ましく、また、0.01g/cm2以上であることが好ましく、0.05g/cm2以上であることがより好ましく、0.1g/cm2以上であることが更に好ましい。
【0501】
水蒸気を用いた熱処理は、湿潤粉末に高温のスチームを吹き付けることにより行うことができる。一実施形態において、湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、配置した湿潤粉末に対して、高温のスチームを吹き付ける。
【0502】
水蒸気を用いた熱処理は、常圧下または加圧下に行うことができる。水蒸気を用いた熱処理を行う際の圧力は、0.10~4.0MPaであってよい。加圧下で行う熱処理の圧力は、0.10MPa超であってよく、0.2MPa以下であってよい。
【0503】
水蒸気を用いた熱処理を、減圧下に行ってもよい。減圧下で行う熱処理の圧力は、0.10MPa未満または0.09MPa以下であってよく、0.01MPa以上であってよい。
【0504】
水蒸気を用いた熱処理における処理時間は、5分以上、10分以上、15分以上、30分以上または40分以上であってよく、10時間以下、8時間以下、6時間以下または4時間以下であってよい。
【0505】
湿潤粉末に吹き付ける水蒸気の温度は、熱処理の温度として上記したとおりである。また、水蒸気を用いた熱処理における処理温度(水蒸気の温度)は、100℃以上、120℃以上、140℃以上、160以上または170℃以上であってよく、350℃以下、300℃以下、250℃以下、230℃以下または210℃以下であってよい。
【0506】
水蒸気を用いた熱処理における加熱蒸気発生量は、1kg/h以上、3kg/h以上、5kg/h以上または10kg/h以上であってよく、500kg/h以下、300kg/h以下、100kg/h以下、50kg/h以下または30kg/h以下であってよい。
【0507】
熱処理は、電気炉又はスチーム炉を用いて行うことができる。例えば、並行流箱型電気炉、通気式箱型電気炉、通気式コンベア式電気炉、トンネル電気炉、バンド電気炉、ターボ縦型電気炉、輻射式コンベア式電気炉、流動層電気炉、通気回転電気炉、溝型撹拌電気炉、多段円盤電気炉、真空電気炉、円筒電気炉、振動電気炉、凍結電気炉、ドラム電気炉、溝型電気炉、逆円錐型電気炉、押出し電気炉、水蒸気加熱管束回転電気炉、赤外線電気炉、過熱水蒸気電気炉、高周波電気炉、マイクロウェーブ電気炉、攪拌式電気炉、気流式電気炉、熱風循環式電気炉等の電気炉、又は、上記に対応するスチーム炉(上記各電気炉の装置名における電気炉をスチーム炉に読み替えた装置)を用いて行うことができる。
【0508】
熱処理により、湿潤粉末を乾燥させることも好ましい。常圧下または加圧下で水蒸気の存在下に湿潤粉末を加熱する場合などには、湿潤粉末が十分に乾燥されないことが通常であるので、熱処理後に湿潤粉末を乾燥して、非溶融加工性TFE系ポリマー粉末を得ることが好ましい。
【0509】
湿潤粉末の熱処理、または、熱処理および乾燥により、通常は、水分含有量が湿潤粉末に対し0.01質量%以下または0.005質量%以下である非溶融加工性TFE系ポリマー粉末を得ることができる。
【0510】
工程(C)において、上記乾燥は、通常、上記湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にファインパウダー型のTFE系ポリマーに好ましくない影響を与える。これは、この種のTFE系ポリマーからなる粒子が小さな剪断力によっても簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。
上記乾燥の温度は、押出圧力が低下する観点では、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、230℃以下が更に好ましく、210℃以下が更により好ましく、190℃以下が更により好ましく、170℃以下が特に好ましい。破断強度が向上する観点では、10℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上が更に好ましく、170℃以上が更により好ましく、190℃以上が更により好ましく、210℃以上が特に好ましい。上記強度比を一層高くするために、この温度範囲で適宜調整することが好ましい。
【0511】
工程(C)においては、工程(B)で得られた湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、130~300℃の温度で2時間以上の時間熱処理することが好ましい。このように極めて限定された条件下で熱処理することにより、上記分子量1000以下の含フッ素化合物を水とともに効率よく除去することができ、当該含フッ素化合物及び水分の含有量を上述の範囲内とすることができる。
【0512】
工程(C)における熱処理の温度は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、180℃以上であることが更により好ましく、200℃以上であることが更に好ましく、220℃以上であることが特に好ましく、また、280℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましい。
【0513】
工程(C)における熱処理の時間は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、5時間以上であることが好ましく、10時間以上であることがより好ましく、15時間以上であることが更に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、100時間であることが好ましく、50時間であることがより好ましく、30時間であることが更に好ましい。
【0514】
工程(C)における風速は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、0.01m/s以上であることが好ましく、0.03m/s以上であることがより好ましく、0.05m/s以上であることが更に好ましく、0.1m/s以上であることが更により好ましい。また、粉末の飛び散りを抑制する観点で、50m/s以下が好ましく、30m/s以下がより好ましく、10m/s以下が更に好ましい。
【0515】
工程(C)における熱処理は、電気炉又はスチーム炉を用いて行うことができる。例えば、並行流箱型電気炉、通気式箱型電気炉、通気式コンベア式電気炉、バンド電気炉、輻射式コンベア式電気炉、流動層電気炉、真空電気炉、攪拌式電気炉、気流式電気炉、熱風循環式電気炉等の電気炉、又は、上記に対応するスチーム炉(上記各電気炉の装置名における電気炉をスチーム炉に読み替えた装置)を用いて行うことができる。水分を一層効率よく除去できる点で、並行流箱型電気炉、通気式箱型電気炉、通気式コンベア式電気炉、バンド電気炉、流動層電気炉、熱風循環式電気炉、上記に対応するスチーム炉(上記各電気炉の装置名における電気炉をスチーム炉に読み替えた装置)が好ましい。
【0516】
工程(C)における熱処理は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、上記湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置して行うことが好ましい。上記底面及び/又は側面に通気性のある容器は、上記熱処理温度に耐え得るものであればよいが、ステンレス等の金属製であることが好ましい。
上記底面及び/又は側面に通気性のある容器としては、底面及び/又は側面に通気性を有するトレー(バット)が好ましく、底面及び/又は側面がメッシュで作製されたトレー(メッシュトレー)が更に好ましい。
上記メッシュは、織網とパンチングメタルのいずれかであることが好ましい。
上記メッシュの目開きは、2000μm以下(ASTM規格の10メッシュ以上)が好ましく、595μm以下(30メッシュ以上)がより好ましく、297μm以下(50メッシュ以上)が更に好ましく、177μm以下(80メッシュ以上)が更により好ましく、149μm以下(100メッシュ以上)が殊更に好ましく、74μm以下(200メッシュ以上)が特に好ましい。また、25μm以上(500メッシュ以下)が好ましい。
上記メッシュが織網である場合の織り方としては、例えば、平織、綾織、平畳織、綾畳織が挙げられる。
上記メッシュがパンチングメタルである場合の開孔率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。また、95%以下が好ましい。
【0517】
工程(C)において、上記湿潤粉末の配置量は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、10g/cm2以下であることが好ましく、8g/cm2以下であることがより好ましく、5g/cm2以下であることが更に好ましく、3g/cm2以下であることが特に好ましく、また、0.01g/cm2以上であることが好ましく、0.05g/cm2以上であることがより好ましく、0.1g/cm2以上であることが更に好ましい。
【0518】
工程(C)において熱処理する湿潤粉末の水分含有量は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、上記湿潤粉末に対し10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、また、150質量%以下であることが好ましく、100質量%以下であることがより好ましい。
【0519】
本開示の自立膜において、上記バインダーの含有量は、上記自立膜に対し、0.1質量%以上であってよく、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、更により好ましくは0.5質量%以上であり、また、50質量%以下であってよく、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更により好ましくは8質量%以下、更により好ましくは6質量%以下、更により好ましくは5質量%以下、更により好ましくは4質量%以下、更により好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下、最も好ましくは2質量%未満である。バインダーの割合が低すぎると、活物質や電解質を十分保持できずに合剤シートの機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
本開示の自立膜は、バインダー量が少なくても充分な強度及び柔軟性を有するので、活物質や導電助剤等の電池特性を向上させる材料をより多く含むことができる。
【0520】
本開示の自立膜は電池、キャパシタ等の電気化学デバイスに用いられる。
電池としては、リチウムイオン電池等の二次電池等が挙げられる。
キャパシタとしては特に限定されないが、電気化学キャパシタであることが好ましい。電気化学キャパシタとしては、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、レドックスキャパシタ等が挙げられる。ハイブリッドキャパシタとしては、例えば、ナトリウムイオンキャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、マグネシウムイオンキャパシタが挙げられる。これらの中でも特に電気二重層キャパシタが好ましい。
【0521】
本開示の自立膜は、電池用として好適に使用することができ、リチウムイオン電池等の二次電池用としてより好適に使用することができる。二次電池用として使用される場合、電解液を使用する二次電池(電解液含有二次電池)の電極に用いられるものであってもよく、固体二次電池の電極に用いられるものであってもよく、固体二次電池の固体電解質層に用いられるものであってもよい。
なお、本明細書において、固体二次電池は、固体電解質を含む二次電池であればよく、電解質として固体電解質及び液体成分を含む半固体二次電池であってもよいし、電解質として固体電解質のみを含む全固体二次電池であってもよい。
【0522】
電解液含有二次電池の電極に用いられる場合、上記自立膜は、通常、電極活物質を含む。
固体二次電池の電極に用いられる場合、上記自立膜は、通常、電極活物質及び固体電解質を含む。
固体二次電池の固体電解質層に用いられる場合、上記自立膜は、通常、固体電解質を含む。
【0523】
上記電極活物質としては、正極活物質及び負極活物質が挙げられる。
【0524】
正極活物質としては、電気化学的にアルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限されないが、例えば、アルカリ金属と少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、アルカリ金属含有遷移金属複合酸化物、アルカリ金属含有遷移金属リン酸化合物等が挙げられる。なかでも、正極活物質としては、特に、高電圧を産み出すアルカリ金属含有遷移金属複合酸化物が好ましい。上記アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。好ましい態様において、アルカリ金属イオンは、リチウムイオンであり得る。即ち、この態様において、アルカリ金属イオン二次電池は、リチウムイオン二次電池である。
【0525】
上記アルカリ金属含有遷移金属複合酸化物としては、例えば、
式:MaMn2-bM1
bO4
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり;0.9≦a;0≦b≦1.5;M1はFe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種の金属)で表されるアルカリ金属・マンガンスピネル複合酸化物(リチウム・マンガンスピネル複合酸化物等)、
式:MNi1-cM2
cO2
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり;0≦c≦0.5;M2はFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種の金属)で表されるアルカリ金属・ニッケル複合酸化物(リチウム・ニッケル複合酸化物等)、又は、
式:MCo1-dM3
dO2
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり;0≦d≦0.5;M3はFe、Ni、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種の金属)で表されるアルカリ金属・コバルト複合酸化物(リチウム・コバルト複合酸化物等)が挙げられる。
上記において、Mは、好ましくは、Li、Na及びKからなる群より選択される1種の金属であり、より好ましくはLi又はNaであり、更に好ましくはLiである。
【0526】
なかでも、エネルギー密度が高く、高出力な二次電池を提供できる点から、MCoO2、MMnO2、MNiO2、MMn2O4、MNi0.8Co0.15Al0.05O2、又はMNi1/3Co1/3Mn1/3O2等が好ましく、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
MNihCoiMnjM5
kO2 (3)
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり、M5はFe、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種を示し、(h+i+j+k)=1.0、0≦h≦1.0、0≦i≦1.0、0≦j≦1.5、0≦k≦0.2である。)
【0527】
上記アルカリ金属含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、下記一般式(4):
MeM4
f(PO4)g (4)
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり、M4はV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群より選択される少なくとも1種を示し、0.5≦e≦3、1≦f≦2、1≦g≦3である。)で表される化合物が挙げられる。上記において、Mは、好ましくは、Li、Na及びKからなる群より選択される1種の金属であり、より好ましくはLi又はNaであり、更に好ましくはLiである。すなわち、上記アルカリ金属含有遷移金属リン酸化合物としては、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましい。
【0528】
上記リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等のリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の元素で置換したもの等が挙げられる。上記リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、オリビン型構造を有するものが好ましい。
【0529】
その他の正極活物質としては、リチウム・ニッケル系複合酸化物が挙げられる。上記リチウム・ニッケル系複合酸化物としては、下記一般式(5):
LiyNi1-xMxO2 (5)
(式中、xは、0.01≦x≦0.7、yは、0.9≦y≦2.0であり、Mは金属原子(但しLi及びNiを除く)を表す)で表される正極活物質が好ましい。
【0530】
その他の正極活物質としては、MFePO4、MNi0.8Co0.2O2、M1.2Fe0.4Mn0.4O2、MNi0.5Mn1.5O2、MV3O6、M2MnO3等も挙げられる。特に、M2MnO3、MNi0.5Mn1.5O2等の正極活物質は、4.4Vを超える電圧や、4.6V以上の電圧で二次電池を作動させた場合であっても、結晶構造が崩壊しない点で好ましい。従って、上記に例示した正極活物質を含む正極材を用いた二次電池等の電気化学デバイスは、高温で保管した場合でも、残存容量が低下しにくく、抵抗増加率も変化しにくい上、高電圧で作動させても電池性能が劣化しないことから、好ましい。
【0531】
その他の正極活物質として、M2MnO3とMM6O2(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり、M6は、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体材料等も挙げられる。
【0532】
上記固溶体材料としては、例えば、一般式Mx[Mn(1-y)M7
y]Ozで表わされるアルカリ金属マンガン酸化物である。ここで式中のMは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり、M7は、M及びMn以外の少なくとも一種の金属元素からなり、例えば、Co,Ni,Fe,Ti,Mo,W,Cr,Zr及びSnからなる群より選択される一種又は二種以上の元素を含んでいる。また、式中のx、y、zの値は、1<x<2、0≦y<1、1.5<z<3の範囲である。中でも、Li1.2Mn0.5Co0.14Ni0.14O2のようなLi2MnO3をベースにLiNiO2やLiCoO2を固溶したマンガン含有固溶体材料は、高エネルギー密度を有するアルカリ金属イオン二次電池を提供できる点から好ましい。
【0533】
また、正極活物質にリン酸リチウムを含ませると、連続充電特性が向上するので好ましい。リン酸リチウムの使用に制限はないが、前記の正極活物質とリン酸リチウムを混合して用いることが好ましい。使用するリン酸リチウムの量は上記正極活物質とリン酸リチウムの合計に対し、下限が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、上限が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0534】
また、上記正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
【0535】
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加、乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により該正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法を用いることもできる。
【0536】
表面付着物質の量としては、上記正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、上限として、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での電解質の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
【0537】
正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が挙げられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成していてもよい。
【0538】
正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.5g/cm3以上、より好ましくは0.8g/cm3以上、更に好ましくは1.0g/cm3以上である。該正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に、必要な分散媒量が増加すると共に、導電材やバインダーの必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく、特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における電解質を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、上限は、好ましくは4.0g/cm3以下、より好ましくは3.7g/cm3以下、更に好ましくは3.5g/cm3以下である。
上記タップ密度は、正極活物質粉体5~10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップした時の粉体充填密度(タップ密度)g/cm3として求める。
【0539】
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは0.8μm以上、最も好ましくは1.0μm以上であり、また、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、更に好ましくは25μm以下、最も好ましくは22μm以下である。上記下限を下回ると、高タップ密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたす等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ上記正極活物質を2種類以上混合することで、正極作製時の充填性を更に向上させることができる。
【0540】
上記メジアン径d50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA-920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
【0541】
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、上記正極活物質の平均一次粒子径としては、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上であり、上限は、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下、最も好ましくは2μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下したりするために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる場合がある。
上記平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0542】
正極活物質のBET比表面積は、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.2m2/g以上、更に好ましくは0.3m2/g以上であり、上限は好ましくは50m2/g以下、より好ましくは40m2/g以下、更に好ましくは30m2/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極活物質層形成時の加工性に問題が発生しやすい場合がある。
上記BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研社製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
【0543】
本開示の電気化学デバイスが、ハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウムイオン二次電池として使用される場合、高出力が要求されるため、上記正極活物質の粒子は二次粒子が主体となることが好ましい。上記正極活物質の粒子は、二次粒子の平均粒子径が40μm以下で、かつ、平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を、0.5~7.0体積%含むものであることが好ましい。平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を含有させることにより、電解質との接触面積が大きくなり、電極合剤と電解質との間でのリチウムイオンの拡散をより速くすることができ、その結果、電池の出力性能を向上させることができる。
【0544】
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
【0545】
正極の製造のために、前記の正極活物質を単独で用いてもよく、異なる組成の2種以上を、任意の組み合わせ又は比率で併用してもよい。この場合の好ましい組み合わせとしては、LiCoO2とLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2等の三元系との組み合わせ、LiCoO2とLiMn2O4若しくはこのMnの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせ、あるいは、LiFePO4とLiCoO2若しくはこのCoの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせが挙げられる。
【0546】
上記正極活物質の含有量は、電池容量が高い点で、正極合剤の50~99.5質量%が好ましく、80~99質量%がより好ましい。また、正極活物質層中の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上である。また上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。正極活物質層中の正極活物質の含有量が低いと電気容量が不十分となる場合がある。逆に含有量が高すぎると正極の強度が不足する場合がある。
【0547】
負極活物質としては特に限定されず、例えば、リチウム金属、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び、難黒鉛化性炭素等の炭素質材料を含むもの、ケイ素及びケイ素合金等のシリコン含有化合物、Li4Ti5O12等から選択されるいずれか、又は2種類以上の混合物等を挙げることができる。なかでも、炭素質材料を少なくとも一部に含むものや、シリコン含有化合物を特に好適に使用することができる。
【0548】
本開示において用いる負極活物質は、ケイ素を構成元素に含むことが好適である。ケイ素を構成元素に含むものとすることで、高容量な電池を作製することができる。
【0549】
ケイ素を含む材料としては、ケイ素粒子、ケイ素の微粒子がケイ素系化合物に分散した構造を有する粒子、一般式SiOx(0.5≦x≦1.6)で表される酸化ケイ素粒子、又はこれらの混合物が好ましい。これらを使用することで、より初回充放電効率が高く、高容量でかつサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極合剤が得られる。
【0550】
本開示における酸化ケイ素とは、非晶質のケイ素酸化物の総称であり、不均化前の酸化ケイ素は、一般式SiOx(0.5≦x≦1.6)で表される。xは0.8≦x<1.6が好ましく、0.8≦x<1.3がより好ましい。この酸化ケイ素は、例えば、二酸化ケイ素と金属ケイ素との混合物を加熱して生成した一酸化ケイ素ガスを冷却・析出して得ることができる。
【0551】
ケイ素の微粒子がケイ素系化合物に分散した構造を有する粒子は、例えば、ケイ素の微粒子をケイ素系化合物と混合したものを焼成する方法や、一般式SiOxで表される不均化前の酸化ケイ素粒子を、アルゴン等不活性な非酸化性雰囲気中、400℃以上、好適には800~1,100℃の温度で熱処理し、不均化反応を行うことで得ることができる。特に後者の方法で得た材料は、ケイ素の微結晶が均一に分散されるため好適である。上記のような不均化反応により、ケイ素ナノ粒子のサイズを1~100nmとすることができる。なお、ケイ素ナノ粒子が酸化ケイ素中に分散した構造を有する粒子中の酸化ケイ素については、二酸化ケイ素であることが望ましい。なお、透過電子顕微鏡によってシリコンのナノ粒子(結晶)が無定形の酸化ケイ素に分散していることを確認することができる。
【0552】
ケイ素を含む粒子の物性は、目的とする複合粒子により適宜選定することができる。例えば、平均粒径は0.1~50μmが好ましく、下限は0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上が更に好ましい。上限は30μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。上記平均粒径は、レーザー回折法による粒度分布測定における重量平均粒径で表すものである。
【0553】
BET比表面積は、0.5~100m2/gが好ましく、1~20m2/gがより好ましい。BET比表面積が0.5m2/g以上であれば、電極に加工した際の接着性が低下して電池特性が低下するおそれがない。また100m2/g以下であれば、粒子表面の二酸化ケイ素の割合が大きくなり、リチウムイオン二次電池用負極材として用いた際に電池容量が低下するおそれがない。
【0554】
上記ケイ素を含む粒子を炭素被覆することで導電性を付与し、電池特性の向上が見られる。導電性を付与するための方法として、上記ケイ素を含む粒子と黒鉛等の導電性のある粒子とを混合する方法、上記ケイ素を含む粒子の表面を炭素被膜で被覆する方法、及びその両方を組み合わせる方法が挙げられるが、炭素被膜で被覆する方法が好ましく、化学蒸着(CVD)する方法がより好ましい。
【0555】
上記負極活物質の含有量は、得られる電極合剤の容量を増やすために、電極合剤中40質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。また上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
【0556】
上記固体電解質は、硫化物系固体電解質であっても、酸化物系固体電解質であってもよい。特に、硫化物系固体電解質を使用する場合、柔軟性があるという利点がある。
【0557】
上記硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、Li2S-P2S5、Li2S-P2S3、Li2S-P2S3-P2S5、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、LiI-Li2S-SiS2-P2S5、Li2S-SiS2-Li4SiO4、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li3PS4-Li4GeS4、Li3.4P0.6Si0.4S4、Li3.25P0.25Ge0.76S4、Li4-xGe1-xPxS4(X=0.6~0.8)、Li4+yGe1-yGayS4(y=0.2~0.3)、LiPSCl、LiCl、Li7-x-2yPS6-x-yClx(0.8≦x≦1.7、0<y≦-0.25x+0.5)、Li10SnP2S12等から選択されるいずれか、又は2種類以上の混合物を使用することができる。
【0558】
上記硫化物系固体電解質は、リチウムを含有するものであることが好ましい。リチウムを含有する硫化物系固体電解質は、リチウムイオンをキャリアとして使用する固体電池に使用されるものであり、高エネルギー密度を有する電気化学デバイスという点で特に好ましいものである。
【0559】
上記酸化物系固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
【0560】
具体的な化合物例としては、例えば、LixaLayaTiO3〔xa=0.3~0.7、ya=0.3~0.7〕(LLT)、LixbLaybZrzbMbb
mbOnb(MbbはAl,Mg,Ca,Sr,V,Nb,Ta,Ti,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。)、LixcBycMcc
zcOnc(MccはC,S,Al,Si,Ga,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxcは0≦xc≦5を満たし、ycは0≦yc≦1を満たし、zcは0≦zc≦1を満たし、ncは0≦nc≦6を満たす。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadPmdOnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦2、0≦zd≦2、0≦ad≦2、1≦md≦7、3≦nd≦15)、Li(3-2xe)Mee
xeDeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)、LixfSiyfOzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、LixgSygOzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、Li3BO3-Li2SO4、Li2O-B2O3-P2O5、Li2O-SiO2、Li6BaLa2Ta2O12、Li3PO(4-3/2w)Nw(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO4、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.51Li0.34TiO2.94、La0.55Li0.35TiO3、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi2P3O12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2-xhSiyhP3-yhO12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLi7La3Zr2O12(LLZ)等が挙げられる。また、LLZに対して元素置換を行ったセラミックス材料も知られている。例えば、LLZに対して、一部をAlで置換したLi6.24La3Zr2Al0.24O11.98、Li6.25Al0.25La3Zr2O12や、Taで置換したLi6.6La3Zr1.6Ta0.4O12、Nbで置換したLi6.75La3Zr1.75Nb0.25O12等が挙げられる。他にはLLZに対して、Mg(マグネシウム)とA(Aは、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)から構成される群より選択される少なくとも1つの元素)との少なくとも一方の元素置換を行ったLLZ系セラミックス材料も挙げられる。また、Li、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD1(D1は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。具体例として、例えば、Li2O-Al2O3-SiO2-P2O5-TiO2-GeO2、Li2O-Al2O3-SiO2-P2O5-TiO2等が挙げられる。
【0561】
上記酸化物系固体電解質は、リチウムを含有するものであることが好ましい。リチウムを含有する酸化物系固体電解質は、リチウムイオンをキャリアとして使用する固体電池に使用されるものであり、高エネルギー密度を有する電気化学デバイスという点で特に好ましいものである。
【0562】
上記酸化物系固体電解質は、結晶構造を有する酸化物であることが好ましい。結晶構造を有する酸化物は、良好なLiイオン伝導性という点で特に好ましいものである。結晶構造を有する酸化物としては、ペロブスカイト型(La0.51Li0.34TiO2.94等)、NASICON型(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3等)、ガーネット型(Li7La3Zr2O12(LLZ)等)等が挙げられる。なかでも、NASICON型が好ましい。
【0563】
酸化物系固体電解質の体積平均粒子径は特に限定されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。なお、酸化物系固体電解質粒子の平均粒子径の測定は、以下の手順で行う。酸化物系固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調整する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析-動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
【0564】
本開示の自立膜が電極合剤である場合は、更に、導電助剤を含むことが好ましい。
上記導電助剤としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、フラーレン、VGCF等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0565】
導電助剤は、電極合剤中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量がこの範囲よりも低いと導電性が不十分となる場合がある。逆に、含有量がこの範囲よりも高いと電池容量が低下する場合がある。
【0566】
本開示の自立膜が電極合剤である場合は、熱可塑性ポリマーを含んでいてもよい。熱可塑性ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデンやビニリデンフルオライド共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。熱可塑性ポリマーは樹脂でもエラストマーでも良い。また、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
。
【0567】
電極活物質に対する熱可塑性ポリマーの割合は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また、通常3.0質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下の範囲である。熱可塑性ポリマーを添加することで、電極の機械的強度を向上させることができる。また、この範囲を上回ると、電極合剤に占める電極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や活物質間の抵抗が増大する問題が生じる場合がある。
【0568】
本開示の自立膜は、電気化学デバイス用の合剤シートとして好適に使用することができる。特に、本開示の電気化学デバイス用合剤は、電池用に好適であり、リチウムイオン二次電池用により好適である。
【0569】
本開示の自立膜(合剤シート)は、電極活物質、固体電解質等の粉体成分と、バインダー(上記TFE系ポリマー組成物)とを用いて製造することができる。
溶媒に電極活物質、固体電解質等の粉体成分を分散させて集電箔等の支持体に塗布乾燥する方法ではなく、下記のような粉体からの成形方法を用いることにより自立膜とすることができる。
【0570】
以下に、合剤シートの具体的な製造方法の一例を示す。上記合剤シートは、電極活物質及び/又は固体電解質を含む粉体成分及びバインダー、必要に応じて導電助剤を含む原料組成物を混合する工程(1)、上記工程(1)によって得られた原料組成物をバルク状に成形する工程(2)、及び、上記工程(2)によって得られたバルク状の原料組成物をシート状に圧延する工程(3)を有する製造方法によって得ることができる。
【0571】
上記工程(1)において原料組成物を混合した段階では、原料組成物は、粉体成分、バインダー等が単に混ざっているだけで定まった形のない状態で存在している。具体的な混合方法としては、W型混合機、V型混合機、ドラム型混合機、リボン混合機、円錐スクリュー型混合機、1軸混練機、2軸混練機、ミックスマラー、撹拌ミキサー、プラネタリーミキサー等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0572】
上記工程(1)において、バインダー混合条件は、3000rpm以下とすることが好適である。好ましくは10rpm以上、より好ましくは15rpm以上、更に好ましくは20rpm以上であり、また、好ましくは2000rpm以下、より好ましくは1500rpm以下、更に好ましくは1000rpm以下の範囲である。上記の範囲を下回ると、混合に時間がかかることとなり生産性に影響を与える。また、上回ると、フィブリル化が過度に進行し、強度及び柔軟性の劣る合剤シートとなるおそれがある。
【0573】
上記工程(2)において、バルク状に成形するとは、原料組成物を1つの塊とするものである。バルク状に成形する具体的な方法として、押出成形、プレス成形等が挙げられる。また、「バルク状」とは、特に形状が特定されるものではなく、1つの塊状になっている状態であればよく、ロッド状、シート状、球状、キューブ状等の形態が含まれる。
【0574】
上記工程(3)における具体的な圧延方法としては、ロールプレス機、平板プレス機、カレンダーロール機等を用いて圧延する方法が挙げられる。
【0575】
また、工程(3)の後に、得られた圧延シートに、より大きい荷重を加えて、更に薄いシート状に圧延する工程(4)を有することも好ましい。工程(4)を繰り返すことも好ましい。このように、圧延シートを一度に薄くするのではなく、段階に分けて少しずつ圧延することで柔軟性がより良好となる。工程(4)の回数としては、2回以上10回以下が好ましく、3回以上9回以下がより好ましい。具体的な圧延方法としては、例えば、2つあるいは複数のロールを回転させ、その間に圧延シートを通すことによって、より薄いシート状に加工する方法等が挙げられる。
【0576】
また、フィブリル径を調整する観点で、工程(3)又は工程(4)の後に、圧延シートを粗砕したのち再度バルク状に成形し、シート状に圧延する工程(5)を有することも好ましい。工程(5)を繰り返すことも好ましい。工程(5)の回数としては、1回以上12回以下が好ましく、2回以上11回以下がより好ましい。
【0577】
工程(5)において、圧延シートを粗砕してバルク状に成形する具体的な方法として、シートを折りたたむ方法、あるいはロッド若しくは薄膜シート状に成形する方法、チップ化する方法等が挙げられる。本開示において、「粗砕する」とは、次工程でシート状に圧延するために、工程(3)又は工程(4)で得られた圧延シートの形態を別の形態に変化させることを意味するものであり、単に圧延シートを折りたたむような場合も含まれる。
【0578】
また、工程(5)の後に、工程(4)を行うようにしてもよく、繰り返し行ってもよい。また、工程(2)ないし、(3)、(4)、(5)において1軸延伸若しくは2軸延伸を行っても良い。また、工程(5)での粗砕程度によってもフィブリル径を調整することができる。
【0579】
上記工程(3)、(4)又は(5)において、圧延率は、好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上であり、また、好ましくは80%以下、より好ましくは65%以下、更に好ましくは50%以下の範囲である。上記の範囲を下回ると、圧延回数の増大とともに時間がかかることとなり生産性に影響を与える。また、上回ると、フィブリル化が過度に進行し、強度及び柔軟性の劣る電極合剤シートとなるおそれがある。なお、ここでいう圧延率とは、試料の圧延加工前の厚みに対する加工後の厚みの減少率を指す。圧延前の試料は、バルク状の原料組成物であっても、シート状の原料組成物であってもよい。試料の厚みとは、圧延時に荷重をかける方向の厚みを指す。
【0580】
上記合剤シートは、
工程(a):粉体成分とバインダーとを混合して合剤を形成するステップと、
工程(b):合剤をカレンダリング又は押出成形してシートを製造するステップと
を含み、
工程(a)の混合は、
(a1)粉体成分とバインダーとを均質化して粉末にする工程と、
(a2)工程(a1)によって得られた粉末状の原料混合物を混合して合剤を調製する工程と
を含むことを特徴とする製造方法によっても、好適に製造することができる。
【0581】
例えば、PTFEは、約19℃及び約30℃で2つの転移温度を有する。19℃未満では、PTFEは形状を維持した状態で容易に混合することができる。しかし、19℃を超えると、PTFE粒子の構造が緩くなり、機械的せん断に対してより敏感になる。30℃を超える温度では、より高度なフィブリル化が生じるようになる。
【0582】
このため、(a1)の均質化は、19℃以下、好ましくは0℃~19℃の温度で実施することが好ましい。
すなわち、このような(a1)においては、フィブリル化を抑制しながら、混合して均質化することが好ましい。
次いで行う工程である(a2)における混合は、30℃以上の温度で行うことで、フィブリル化を促進させることが好ましい。
【0583】
上記工程(a2)は、好ましくは30℃~150℃、より好ましくは35℃~120℃、更により好ましくは40℃~80℃の温度で行われる。
一実施形態では、上記工程(b)のカレンダリング又は押し出しは、30℃から150℃の間、好ましくは35℃から120℃の間、より好ましくは40℃から100℃の間の温度で実行される。
【0584】
上記工程(a)の混合は剪断力を付与しながら行うことが好ましい。
具体的な混合方法としては、W型混合機、V型混合機、ドラム型混合機、リボン混合機、円錐スクリュー型混合機、1軸混練機、2軸混練機、ミックスマラー、撹拌ミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、高速ミキサー等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0585】
混合条件は、回転数と混合時間を適宜設定すればよい。例えば、回転数は、15000rpm以下とすることが好適である。好ましくは10rpm以上、より好ましくは50rpm以上、更に好ましくは100rpm以上であり、また、好ましくは12000rpm以下、より好ましくは10000rpm以下、更に好ましくは8000rpm以下の範囲である。上記の範囲を下回ると、混合に時間がかかることとなり生産性に影響を与える。また、上回ると、フィブリル化が過度に進行し、強度の劣る電極合剤シートとなるおそれがある。
工程(a1)では工程(a2)よりも弱い剪断力で行うことが好ましい。
また工程(a1)では工程(a2)よりも短い時間で行うことが望ましい。
【0586】
上記工程(a2)において、原料組成物は液体溶媒を含まないことが好ましいが、少量の潤滑剤を使用してもよい。すなわち、上記工程(a1)によって得られた粉末状の原料混合物に対して、潤滑剤を添加して、ペーストを調製してもよい。
【0587】
上記潤滑剤としては特に限定されず、水、エーテル化合物、アルコール、イオン液体、カーボネート、脂肪族炭化水素(ヘプタン、キシレン等の低極性溶剤)、イソパラフィン系炭化水素化合物及び石油留分(ガソリン(C4-C10)、ナフサ(C4-C11)、灯油/パラフィン(C10-C16)、及びそれらの混合物)等を挙げることができる。
【0588】
上記潤滑剤は、水分含有量が1000ppm以下であることが好ましい。
水分含有量が1000ppm以下であることによって、電気化学デバイスの劣化を低減させるという点で好ましい。上記水分含有量は、500ppm以下であることが更に好ましい。
【0589】
上記潤滑剤を用いる場合は、酪酸ブチル等の極性の低い溶剤、又はエーテル化合物であることが特に好ましい。
【0590】
上記潤滑剤を用いる場合は、その量は、工程(a1)に供する組成物の総重量に対して、5.0~35.0重量部、好ましくは10.0~30.0重量部、より好ましくは15.0~25.0重量部であってよい。
【0591】
上記原料組成物は、実質的に液体媒体を含有しないことが好ましい。従来の電極合剤形成方法は、バインダーが溶解した溶媒を使用して、電極合剤成分である粉体を分散させたスラリーを調製し、当該スラリーの塗布・乾燥によって電極合剤シートを調製することが一般的であった。この場合、バインダーを分散又は溶解する溶媒を使用する。しかし、従来一般に使用されてきたバインダー樹脂を溶解することができる溶媒はN-メチルピロリドン等の特定の溶媒に限定される。極性が高く、乾燥工程を経るため溶媒の使用による工程及びコストが生じる。また、これらは電解液及び固体電解質といった電解質と反応して、電解質を劣化させるため、スラリー調製時や乾燥後の残留成分が電池性能の低下原因となることがある。また、ヘプタン等の低極性溶媒では溶解するバインダー樹脂が非常に限定されるうえ、引火点が低く、取り扱いが煩雑になることがある。
【0592】
合剤シート形成時に溶媒を使用せず、水分の少ない粉体状のバインダーを用いることで、電解質の劣化が少ない電池を製造することができる。更に、上記のような製造方法においては、微細な繊維構造を有するバインダーを含有する合剤シートを製造することができると共に、また、スラリーを作製しないことで、製造プロセスの負担を軽減することができる。
【0593】
工程(b)は、カレンダリング又は押出しである。カレンダリング、押出しは、周知の方法によって行うことができる。これによって、合剤シートの形状に成形することができる。
工程(b)は、(b1)前記工程(a)によって得られた合剤をバルク状に成形する工程と、(b2)バルク状の合剤をカレンダリング又は押出成形する工程を含むことが好ましい。
【0594】
バルク状に成形するとは、合剤を1つの塊とするものである。
バルク状に成形する具体的な方法として、押出成形、プレス成形等が挙げられる。
また、「バルク状」とは、特に形状が特定されるものではなく、1つの塊状になっている状態であればよく、ロッド状、シート状、球状、キューブ状等の形態が含まれる。上記塊の大きさは、その断面の直径又は最小の一辺が10000μm以上であることが好ましい。より好ましくは20000μm以上である。
【0595】
上記工程(b2)におけるカレンダリング又は押出成形の具体的な方法としては、ロールプレス機、カレンダーロール機等を用いて、電極合剤を圧延する方法が挙げられる。
【0596】
上記工程(b)は、30~150℃で行うことが好ましい。上述したように、PTFEは、30℃付近にガラス転移温度を有することから、30℃以上において容易にフィブリル化するものである。よって、工程(b)は、このような温度で行うことが好ましい。
【0597】
そして、カレンダリング又は押出は、剪断力がかかるため、これによってPTFEがフィブリル化して、成形がなされる。
【0598】
工程(b)のあとに、得られた圧延シートに、より大きい荷重を加えて、更に薄いシート状に圧延する工程(c)を有することも好ましい。工程(c)を繰り返すことも好ましい。このように、圧延シートを一度に薄くするのではなく、段階に分けて少しずつ圧延することで柔軟性がより良好となる。
工程(c)の回数としては、2回以上10回以下が好ましく、3回以上9回以下がより好ましい。
具体的な圧延方法としては、例えば、2つあるいは複数のロールを回転させ、その間に圧延シートを通すことによって、より薄いシート状に加工する方法等が挙げられる。
【0599】
また、シート強度を調整する観点で、工程(b)又は工程(c)の後に、圧延シートを粗砕したのち再度バルク状に成形し、シート状に圧延する工程(d)を有することも好ましい。工程(d)を繰り返すことも好ましい。工程(d)の回数としては、1回以上12回以下が好ましく、2回以上11回以下がより好ましい。
【0600】
工程(d)において、圧延シートを粗砕してバルク状に成形する具体的な方法として、圧延シートを折りたたむ方法、あるいはロッドもしくは薄膜シート状に成形する方法、チップ化する方法等が挙げられる。本開示において、「粗砕する」とは、次工程でシート状に圧延するために、工程(b)又は工程(c)で得られた圧延シートの形態を別の形態に変化させることを意味するものであり、単に圧延シートを折りたたむような場合も含まれる。
【0601】
また、工程(d)の後に、工程(c)を行うようにしてもよく、繰り返し行ってもよい。
また、工程(a)ないし、(b)、(c)、(d)において1軸延伸もしくは2軸延伸を行っても良い。
また、工程(d)での粗砕程度によってもシート強度を調整することができる。
【0602】
上記工程(b)、(c)又は(d)において、圧延率は、好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上であり、また、好ましくは80%以下、より好ましくは65%以下、更に好ましくは50%以下の範囲である。上記の範囲を下回ると、圧延回数の増大とともに時間がかかることとなり生産性に影響を与える。また、上回ると、フィブリル化が過度に進行し、強度及び柔軟性の劣る電極合剤シートとなるおそれがある。
なお、ここでいう圧延率とは、試料の圧延加工前の厚みに対する加工後の厚みの減少率を指す。圧延前の試料は、バルク状の原料組成物であっても、シート状の原料組成物であってもよい。試料の厚みとは、圧延時に荷重をかける方向の厚みを指す。
上記工程(c)~(d)は30℃以上で行うのが好ましく、60℃以上がより好ましい。また、150℃以下で行うのが好ましい。
【0603】
上記合剤シートは、電気化学デバイス用の電極合剤シートとして使用することができる。負極、正極のいずれとすることもできる。特に、上記電極合剤シートは、リチウムイオン二次電池に好適である。
【0604】
本開示は、上述した本開示の電気化学デバイス用合剤自立膜を含む電極も提供する。上記電極は、本開示の自立膜と、集電体とを含むことが好ましい。本開示の電極は、強度及び柔軟性に優れる。
【0605】
本開示の電極は、正極であってもよく、負極であってもよい。
【0606】
上記正極は、集電体と、上記正極活物質を含む電極合剤シートとから構成されることが好適である。正極用集電体の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼、ニッケル等の金属、又は、その合金等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。なかでも、金属材料、特にアルミニウム又はその合金が好ましい。
【0607】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属箔が好ましい。なお、金属箔は適宜メッシュ状に形成してもよい。金属箔の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。金属箔がこの範囲よりも薄いと集電体として必要な強度が不足する場合がある。逆に、金属箔がこの範囲よりも厚いと取り扱い性が損なわれる場合がある。
【0608】
また、集電体の表面に導電助剤が塗布されていることも、集電体と正極活物質層の電気接触抵抗を低下させる観点で好ましい。導電助剤としては、炭素や、金、白金、銀等の貴金属類が挙げられる。
【0609】
正極の製造は、常法によればよい。例えば、上記電極合剤シートと集電体とを接着剤を介して積層し、真空乾燥する方法等が挙げられる。
【0610】
正極合剤シートの密度は、好ましくは2.80g/cm3以上、より好ましくは3.00g/cm3以上、更に好ましくは3.20g/cm3以上であり、また、好ましくは3.80g/cm3以下、より好ましくは3.75g/cm3以下、更に好ましくは3.70g/cm3以下の範囲である。この範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下し高出力が得られない場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し高出力が得られない場合がある。
【0611】
正極の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、集電体の金属箔厚さを差し引いた合剤層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、また、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下である。
【0612】
上記負極は、集電体と、上記負極活物質を含む電極合剤シートとから構成されることが好適である。負極用集電体の材質としては、銅、ニッケル、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属、又は、その合金等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。なかでも、金属材料、特に銅、ニッケル、又はその合金が好ましい。
【0613】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属箔が好ましい。なお、金属箔は適宜メッシュ状に形成してもよい。金属箔の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。金属箔がこの範囲よりも薄いと集電体として必要な強度が不足する場合がある。逆に、金属箔がこの範囲よりも厚いと取り扱い性が損なわれる場合がある。
【0614】
負極の製造は、常法によればよい。例えば、上記電極合剤シートと集電体とを接着剤を介して積層し、真空乾燥する方法等が挙げられる。
【0615】
負極合剤の密度は、好ましくは1.3g/cm3以上、より好ましくは1.4g/cm3以上、更に好ましくは1.5g/cm3以上であり、また、好ましくは2.0g/cm3以下、より好ましくは1.9g/cm3以下、更に好ましくは1.8g/cm3以下の範囲である。この範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下し高出力が得られない場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し高出力が得られない場合がある。
【0616】
負極の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、集電体の金属箔厚さを差し引いた合剤層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、また、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下である。
【0617】
本開示は、上述した本開示の電極を備える電気化学デバイスも提供する。
【0618】
本開示の電気化学デバイスは、電池であってもよく、二次電池であってもよく、電解液を使用する二次電池であってもよく、固体二次電池であってもよい。
【0619】
上記電解液を使用する二次電池は、公知の二次電池において使用される電解液、セパレータ等を使用することができる。以下、これらについて詳述する。
【0620】
上記電解液としては、非水電解液が好ましく用いられる。非水電解液としては、公知の電解質塩を公知の電解質塩溶解用有機溶媒に溶解したものが使用できる。
【0621】
電解質塩溶解用有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の公知の炭化水素系溶媒;フルオロエチレンカーボネート、フルオロエーテル、フッ素化カーボネート等のフッ素系溶媒の1種若しくは2種以上が使用できる。
【0622】
電解質塩としては、例えばLiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2等が挙げられ、サイクル特性が良好な点から特にLiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2又はこれらの組合せが好ましい。
【0623】
電解質塩の濃度は、0.8モル/リットル以上、更には1.0モル/リットル以上であることが好ましい。上限は電解質塩溶解用有機溶媒にもよるが、通常1.5モル/リットルである。
【0624】
上記電解液を使用する二次電池は、更に、セパレータを備えることが好ましい。上記セパレータの材質や形状は、電解液に安定であり、かつ、保液性に優れていれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。なかでも、上記電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0625】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。ポリプロピレン/ポリエチレン2層フィルム、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層フィルム等、これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なかでも、上記セパレータは、電解液の浸透性やシャットダウン効果が良好である点で、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等であることが好ましい。
【0626】
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、8μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、電解液電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
【0627】
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
【0628】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製のバインダーを用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂をバインダーとして多孔層を形成させることが挙げられる。
【0629】
外装ケースの材質は用いられる電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0630】
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0631】
上記電解液を使用する二次電池の形状は任意であり、例えば、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等の形状が挙げられる。なお、正極、負極、セパレータの形状及び構成は、それぞれの電池の形状に応じて変更して使用することができる。
【0632】
上記固体二次電池は、全固体二次電池であることが好ましい。上記固体二次電池は、リチウムイオン電池であることが好ましく、硫化物系固体二次電池であることも好ましい。
上記固体二次電池は、正極、負極、並びに、当該正極及び当該負極の間に介在する固体電解質層を備えることが好ましい。
上記固体二次電池において、本開示の自立膜を電極層に用いてもよく、固体電解質層に用いてもよい。
本開示の自立膜を含む固体電解質層(好ましくは固体電解質層シート)も、本開示の好適な態様である。
【0633】
上記固体二次電池は、正極及び負極の間にセパレータを備えていてもよい。上記セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜;及びポリプロピレン等の樹脂製の不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。
【0634】
上記固体二次電池は、更に電池ケースを備えていてもよい。上記電池ケースの形状としては、上述した正極、負極、固体電解質層等を収納できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等を挙げることができる。
【0635】
上記固体二次電池は、例えば、正極、固体電解質層シート、負極を順に積層し、プレスすることにより製造することができる。
【0636】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0637】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0638】
各種物性は下記方法にて測定した。
【0639】
<ポリマー固形分濃度>
TFE系ポリマー水性分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
【0640】
<平均一次粒子径>
TFE系ポリマー水性分散液を水で固形分濃度が0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して決定した数基準長さ平均一次粒子径とを測定して、検量線を作成した。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率から平均一次粒子径を決定した。
【0641】
<水分含有量>
約20gのTFE系ポリマー組成物を150℃、2時間加熱した前後の質量を測定し、以下の式に従って算出した。試料を3回取り、それぞれ算出した後、平均を求め、当該平均値を採用した。
水分含有量(質量%)=[(加熱前のTFE系ポリマー組成物の質量(g))-(加熱後のTFE系ポリマー組成物の質量(g))]/(加熱前のTFE系ポリマー組成物の質量(g))×100
【0642】
<標準比重(SSG)>
ASTM D4895 89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定した。
【0643】
<熱不安定指数(TII)>
ASTM D 4895-89に準拠して測定した。
【0644】
<変性モノマーの含有量>
HFP含有量は、TFE系ポリマー組成物をプレス成形することで薄膜ディスクを作製し、薄膜ディスクをFT-IR測定した赤外線吸光度から、982cm-1における吸光度/935cm-1における吸光度の比に0.3を乗じて求めた。
【0645】
<吸熱ピーク温度>
吸熱ピーク温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴のないTFE系ポリマーの組成物約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納して、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて測定した。吸熱ピーク温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させることにより示差熱(DTA)曲線を得て、得られた示差熱(DTA)曲線における極小値に対応する温度とした。
【0646】
<0.1%質量減少温度>
300℃以上の温度に加熱した履歴のないTFE系ポリマーの組成物約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納してTG・DTA(示差熱・熱重量同時測定装置)を測定した。0.1%質量減少温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させ、0.1mass%の重量減少した点に対応する温度とした。
【0647】
<1.0%質量減少温度>
300℃以上の温度に加熱した履歴のないTFE系ポリマーの組成物約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納してTG・DTA(示差熱・熱重量同時測定装置)を測定した。1.0%質量減少温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させ、1.0mass%の重量減少した点に対応する温度とした。
【0648】
<押出圧力>
押出圧力は、特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し、下記方法で求めた。
TFE系ポリマー組成物100gに、潤滑剤(商品名:アイソパーH(登録商標)、エクソン社製)21.7gを添加し、室温にてガラスビン中で3分間混合した。次いで、ガラスビンを、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置し、潤滑化樹脂を得た。潤滑化樹脂をオリフィス(直径2.5mm、ランド長11mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得た。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とした。ペースト押出において押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除することにより、押出圧力を算出した。
【0649】
<延伸試験>
延伸試験は、特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し、下記方法で実施した。
上記のペースト押出により得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去した。次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔が1.5インチ(38mm)となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱した。次いでクランプを所望のストレッチ(総ストレッチ)に相当する分離距離となるまで所望の速度(ストレッチ速度)で離し、延伸試験(ストレッチ試験)を実施した。このストレッチ方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従った。『ストレッチ』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さに対する比率として表される。ストレッチ方法においてストレッチ速度は、1000%/秒であり、上記総ストレッチは2400%であった。上記延伸試験において破断しなかったものを延伸可能とした。
【0650】
<フッ素を含む特定の化合物の含有量>
液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて下記条件で測定した。
【0651】
〔一般式(1)で示される化合物の含有量測定方法〕
組成物からの抽出
組成物1gにメタノール10g(12.6mL)を加え、60分間の超音波処理を行い、一般式(1)で示される化合物を含む上澄み液を抽出した。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮した抽出液を得た。
【0652】
抽出液に含まれる一般式(1)で示される化合物の含有量測定
抽出液に含まれる一般式(1)で示される化合物の含有量はパーフルオロオクタン酸に換算することにより求めた。
【0653】
パーフルオロオクタン酸の検量線
1ng/mL~100ng/mLの濃度既知のパーフルオロオクタン酸のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計(Waters, LC-MS ACQUITY UPLC/TQD)を用いて測定を行った。それぞれのサンプル濃度とピークの積分値から一次近似を用い、下記関係式(1)によりa、bを求めた。
A=a×X+b (1)
A:パーフルオロオクタン酸のピーク面積
X:パーフルオロオクタン酸の濃度(ng/mL)
【0654】
【0655】
【0656】
抽出液に含まれる炭素数が4以上、20以下の一般式(1)で示される化合物の含有量
液体クロマトグラフ質量分析計を用い、炭素数が4以上20以下の一般式(1)で示される化合物を測定した。抽出した液相について、MRM法を用いて各炭素数の一般式(1)で示される化合物のピーク面積を求めた。
【0657】
【0658】
抽出液中の炭素数(m+1)の一般式(1)で示される化合物の含有量は下記式(3)を用いて算出した。式(3)のa、bは式(1)より求めた。
XCm=((ACm-b)/a)×((50×m+45)/413) (3)
XCm:抽出溶液中の炭素数(m+1)の一般式(1)で示される化合物の含有量(ng/mL)
ACm:抽出溶液中の炭素数(m+1)の一般式(1)で示される化合物のピーク面積
この測定における定量限界は1ng/mLである。
【0659】
組成物中に含まれる炭素数(m+1)の一般式(1)で示される化合物の含有量
組成物中に含まれる炭素数(m+1)の一般式(1)で示される化合物の含有量は下記式(4)により求めた。
YCm=XCm×12.6 (4)
YCm:組成物中に含まれる炭素数(m+1)の一般式(1)で示される化合物の含有量(ppb対TFE系ポリマー)
定量下限は10質量ppbである。
【0660】
〔一般式(2)で示される化合物の含有量測定方法〕
組成物からの抽出
組成物1gにメタノール10g(12.6mL)を加え、60分間の超音波処理を行い、一般式(2)で示される化合物を含む上澄み液を抽出した。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮した抽出液を得た。
【0661】
抽出液に含まれる一般式(2)で示される化合物の含有量測定
抽出液に含まれる一般式(2)で示される化合物の含有量はパーフルオロオクタンスルホン酸に換算することにより求めた。
【0662】
パーフルオロオクタンスルホン酸の検量線
1ng/mL~100ng/mLの濃度既知のパーフルオロオクタンスルホン酸のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計(Waters, LC-MS ACQUITY UPLC/TQD)を用いて測定を行った。それぞれのサンプル濃度とピークの積分値から一次近似を用い、下記関係式(1)によりa、bを求めた。
A=a×X+b (1)
A:パーフルオロオクタンスルホン酸のピーク面積
X:パーフルオロオクタンスルホン酸の濃度(ng/mL)
【0663】
【0664】
【0665】
抽出液に含まれる炭素数が4以上、20以下の一般式(2)で示される化合物の含有量
液体クロマトグラフ質量分析計を用い、炭素数が4以上20以下の一般式(2)で示される化合物を測定した。抽出した液相について、MRM法を用いて各炭素数の一般式(2)で示される化合物のピーク面積を求めた。
【0666】
【0667】
抽出液中の炭素数nの一般式(2)で示される化合物の含有量は下記式(3)を用いて算出した。式(3)のa、bは式(1)より求めた。
XSn=((ASn-b)/a)×((50×n+81)/499) (3)
XSn:抽出溶液中の炭素数nの一般式(2)で示される化合物の含有量(ng/mL)
ASn:抽出溶液中の炭素数nの一般式(2)で示される化合物のピーク面積
この測定における定量限界は1ng/mLである。
【0668】
組成物中に含まれる炭素数nの一般式(2)で示される化合物の含有量
組成物中に含まれる炭素数nの一般式(2)で示される化合物の含有量は下記式(4)により求めた。
YSn=XSn×12.6 (4)
YSn:組成物中に含まれる炭素数nの一般式(2)で示される化合物の含有量(ppb対TFE系ポリマー)
定量下限は10質量ppbである。
【0669】
<フィブリル径(中央値)>
(1)走査型電子顕微鏡(S-4800型日立製作所製)を用いて、電気化学デバイス用合剤シートの拡大写真(7000倍)を撮影し画像を得た。
(2)この画像に水平方向に等間隔で2本の線を引き、画像を三等分した。
(3)上方の直線上にある全てのフィブリル化したバインダーについて、フィブリル化したバインダー1本あたり3箇所の直径を測定し、平均した値を当該フィブリル化したバインダーの直径とした。測定する3箇所は、フィブリル化したバインダーと直線との交点、交点からそれぞれ上下に0.5μmずつずらした場所を選択した(未繊維化のバインダー一次粒子は除く。)。
(4)上記(3)の作業を、下方の直線上にある全てのフィブリル化したバインダーに対して行った。
(5)1枚目の画像を起点に画面右方向に1mm移動し、再度撮影を行い、上記(3)及び(4)によりフィブリル化したバインダーの直径を測定した。これを繰り返し、測定した数が80本を超えた時点で終了とした。
(6)上記測定した全てのフィブリル化したバインダーの直径の中央値をフィブリル径の大きさとした。
【0670】
<自立膜試験>
膜厚が10μm以上1000μm以下の時に、膜を10×10cmにカッターで切り出し、重心をピンセット(株式会社エンジニア製、PTS07)で摘んだ時にヒビや割れが生じたり、折れ曲がったりすることがない場合に、自立膜であると判断した。
【0671】
調製例1
16gの脱イオン水に0.273gのラウリン酸を入れて攪拌しながら2.77gのアンモニア2.8%濃度水溶液を徐々に加えて水溶液Cを得た。
100gの脱イオン水に10gのラウリン酸を入れて攪拌しながら25gのアンモニア10%濃度水溶液を徐々に加えて水溶液Dを得た。このときのpHは、9.6を示した。
【0672】
製造例1
内容積3LのSUS製の撹拌機付き反応器に1748gの脱イオン水、90gのパラフィンワックス、調製例1で得られた水溶液C、0.5gのシュウ酸アンモニウムを加えた。この時の水性分散液のpHは9.0であった。反応器を密閉し、系内を窒素で置換を行ない、酸素を取り除いた。反応器を70℃に昇温し、2.0gのHFPを加え、更に、TFEにて昇圧し、2.70MPaとした。重合開始剤として、0.5質量%濃度の過マンガン酸カリウム水溶液を反応器に連続的に仕込み始めたところ、圧力の低下が起こり、反応が開始した。反応圧を2.70MPa一定となるようにTFEを仕込んだ。80gのTFEを仕込んだ時に撹拌を停止し、反応圧が大気圧になるまで脱圧を行なった。
直ちに、反応器にTFEを充填し、反応圧を2.70MPaとし、撹拌を再開して、反応を継続した。同時に、調製例1で得られた水溶液Dを反応器に連続的に仕込み始めた。680gのTFEを仕込んだ時に、撹拌を停止し、反応器を大気圧になるまで脱圧を行なった。反応終了までに56.0gの過マンガン酸カリウム水溶液と26.2gの水溶液Dを仕込んだ。水性分散液を反応器から取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、TFE系ポリマー水性分散液を得た。得られたTFE系ポリマー水性分散液のpHは8.8、固形分濃度は27.1質量%、一次粒子径は220nmであった。
【0673】
作製例1
製造例1で得られたTFE系ポリマー水性分散液を脱イオン水にて固形分濃度が13質量%となるように希釈し撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約52質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm2)、240℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、TFE系ポリマー組成物Aを得た。
得られたTFE系ポリマー組成物Aの水分含有量は0.001質量%、標準比重は2.170、熱不安定指数は44、HFP含有量は0.002質量%、0.1質量%減少温度は391℃、1.0質量%減少温度は491℃、吸熱ピーク温度は342℃であった。押出圧力は27.0MPa、延伸可能であった。
得られたTFE系ポリマー組成物A中に含まれる炭素数m(4~20)の一般式(1)で示される化合物の含有量、炭素数n(4~20)の一般式(2)で示される化合物の含有量は、定量下限未満(10質量ppb未満)であった。
【0674】
作製例2
熱処理温度を210℃に変更する以外は作製例1と同様にしてTFE系ポリマー組成物Bを得た。
得られたTFE系ポリマー組成物Bの水分含有量は0.002質量%、標準比重は2.170、熱不安定指数は44、HFP含有量は0.002質量%、0.1質量%減少温度は391℃、1.0質量%減少温度は491℃、吸熱ピーク温度は342℃であった。押出圧力は24.9MPa、延伸可能であった。
得られたTFE系ポリマー組成物Bの物性を下記表7及び8に示す。
【0675】
作製例3
メッシュトレーを平板トレー(底面及び側面に通気性のないトレー)に、熱処理温度を180℃に変更する以外は作製例2と同様にしてTFE系ポリマー組成物Cを得た。
得られたTFE系ポリマー組成物Cの水分含有量は0.025質量%、標準比重は2.170、熱不安定指数は44、HFP含有量は0.002質量%、0.1質量%減少温度は386℃、1.0質量%減少温度は490℃、吸熱ピーク温度は342℃であった。押出圧力は20.8MPa、延伸可能であった。
得られたTFE系ポリマー組成物Cの物性を下記表7及び8に示す。
【0676】
調製例2
10-ウンデセン-1-オール(16g)、1,4-ベンゾキノン(10.2g)、DMF(160mL)、水(16mL)及びPdCl2(0.34g)の混合物を90℃で12時間加熱撹拌した。
その後減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣を分液及びカラムクロマトグラフィーで精製し、11-ヒドロキシウンデカン-2-オン(15.4g)を得た。
11-ヒドロキシウンデカン-2-オン(13g)、三酸化硫黄トリエチルアミン錯体(13.9g)、テトラヒドロフラン(140mL)の混合物を50℃下12時間撹拌した。ナトリウムメトキシド(3.8g)/メタノール(12mL)溶液を反応液に滴下した。
析出固体を減圧濾過し、酢酸エチルで洗浄し、10-オキソウンデシル硫酸ナトリウム(15.5g)(以下、界面活性剤Aという)を得た。
内容積1Lの攪拌機付きガラス製の反応器に、588.6gの脱イオン水、70.0gの界面活性剤Aを加え、反応器を密閉し、系内を窒素で置換を行い、酸素を取り除いた。反応器を90℃に昇温し、窒素で0.4MPaGに昇圧する。41.4gの過硫酸アンモニウム(APS)を仕込み、3時間撹拌した。撹拌を停止し、反応器を大気圧になるまで脱圧を行い、冷却を行い、界面活性剤水溶液Bを得た。
【0677】
製造例2
内容積6Lの攪拌機付きSUS製の反応器に、3600gの脱イオン脱気水、180gのパラフィンワックス、及び0.540gの界面活性剤Aを加え、反応器を密閉し、系内を窒素で置換を行い、酸素を取り除いた。反応器を70℃に昇温し、TFEを反応器に充填して、反応器を2.70MPaにする。重合開始剤として0.620gの過硫酸アンモニウム(APS)、1.488gのジコハク酸パーオキサイド(DSP)を仕込んだ。反応圧が2.70MPa一定となるようにTFEを仕込んだ。TFEを仕込み始めたと同時に界面活性剤水溶液Bを連続的に仕込み始めた。TFEを540g仕込んだ時に、0.76gのハイドロキノンを溶かした脱イオン脱気水を20g添加し、TFEを1200g仕込んだ時に撹拌を停止し、反応器が大気圧になるまで脱圧を行なった。反応終了までに界面活性剤水溶液Bは103g仕込んだ。内容物を反応器より取り出して、冷却後、パラフィンワックスを分離し、TFE系ポリマー水性分散液を得た。
得られたTFE系ポリマー水性分散液の固形分含有量は25.9質量%であり、平均一次粒子径は、290nmであった。
【0678】
作製例4
製造例2で得られたTFE系ポリマー水性分散液を脱イオン水にて固形分濃度が13質量%となるように希釈し撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約52質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm2)、210℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、TFE系ポリマー組成物Dを得た。
得られたTFE系ポリマー組成物Dの水分含有量は0.001質量%、標準比重は2.151、熱不安定指数は42、0.1質量%減少温度は397℃、1.0質量%減少温度は492℃、吸熱ピーク温度は344℃であった。押出圧力は18.9MPa、延伸可能であった。得られたTFE系ポリマー組成物Dの物性を下記表7及び8に示す。
【0679】
作製例5
製造例1で得られたTFE系ポリマー水性分散液を脱イオン水にて固形分濃度が13質量%となるように希釈し撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:1.2g/cm2)、高温過熱蒸気発生装置を備えた炉内に180℃の過熱水蒸気を20kg/hrの速度で導入し、180℃の炉内で、7時間熱処理し、TFE系ポリマー組成物Eを得た。
得られたTFE系ポリマー組成物Eの水分含有量は0.002質量%、標準比重は2.170、熱不安定指数は44、0.1質量%減少温度は391℃、1.0質量%減少温度は491℃、吸熱ピーク温度は342℃であり、延伸可能であった。
(H-(CF2)m-1-COO)H(式中、mは12、14である。)の含有量は、TFE系ポリマー組成物Eに対して10質量ppb未満、(H-(CF2)n-SO3)H(式中、nは4~20である。)の含有量は10質量ppb未満であった。
【0680】
【0681】
【0682】
作製例1~5で得られた各TFE系ポリマー組成物を用いて以下の方法で評価した。
【0683】
電解液含有電池評価
下記の手順で実施例1~5、および実施例A1の合剤シート作製と合剤シート評価、電池評価を行った。
<正極合剤シートの作製>
活物質と導電助剤を秤量し、V型混合機に材料を投入し、37rpmで10分間混合し活物質と導電助剤からなる混合物を得た。その後、混合物に秤量したバインダー(TFE系ポリマー組成物)を投入し、5℃の恒温槽にて十分に冷却させた。活物質、導電助剤とバインダーからなる混合物をヘンシェルミキサーに投入し、1000rpmで3分間処理することで混合物の均質化を行った。
その後、混合物を50℃の恒温槽にて十分に昇温させた後に、ヘンシェルミキサーにて1500rpmで10分間処理することでフィブリル化を促進し、電極合剤を得た。
平行に配置された金属ロール(温度:80℃、回転速度:1m/min)に電極合剤を投入し、圧延することで電極合剤シートを得た。再度、得られた圧延シートを2つに折りたたむことにより粗砕して、金属ロール(温度:80℃、回転速度:1m/min)に電極合剤を投入し、圧延することでより強度のある電極合剤シートを得た。
その後、ロールプレス機に電極合剤シートを投入し、ギャップを調整した。最終的な正極合剤層の厚みは90μmになるように調整した。
表9に材料種と組成を示す。
また、得られた電極合剤シートはいずれも自立膜であった。
【0684】
【表9】
denka Li-400:デンカ社製カーボンブラック
【0685】
<正極合剤シートの強度測定(引張試験)>
上記正極合剤シートを切り出し4mm幅の短冊状の試験片を作製した。引張試験機を使用して、100mm/分の条件下にて測定した。チャック間距離は30mmとした。破断するまで変位を与え、測定した結果の最大応力を各サンプルの強度とした。引張強度が高く、シート強度が良好なものからA~Eでランク付けした。
A:0.2N/mm2以上
B:0.17N/mm2以上~0.2N/mm2未満
C:0.15N/mm2以上~0.17N/mm2未満
D:0.1N/mm2以上~0.15N/mm2未満
E:0.1N/mm2未満
結果を表10に示す。
【0686】
<正極合剤シートの柔軟性評価(曲げ試験)>
作製した電極合剤シートを幅4cm、長さ10cmに切り取り試験片とした。次に、これらの試験片をΦ10mmの丸棒に巻き付けた後、目視で試験片を確認し、傷や割れといった破損の有無を確認した。破損が見られない場合、更に細いΦ5mmの丸棒で試験を行い、破損を確認した。やはり、破損が見られない場合、更に細いΦ2mmの丸棒で試験を行い、破損を確認した。その結果をA~Dで分類した。
A:Φ2mm棒で破損なし
B:Φ2mm棒で破損あり
C:Φ5mm棒で破損あり
D:Φ10mm棒で破損あり
結果を表10に示す。
【0687】
<正極の作製>
上記正極合剤シートを、以下のようにして20μmのアルミ箔と接着させた。
接着剤には、N-メチルピロリドン(NMP)にポリビニデンフルオライド(PVDF)を溶解させ、カーボンブラックを80:20で分散させたスラリーを用いた。アルミ箔に上述した接着剤を塗布し、ホットプレートにて120℃、15分間乾燥させ、接着層つき集電体を形成した。
その後、正極合剤シートを接着層つき集電体の上に置き、100℃に加熱したロールプレス機にて正極合剤シートと集電体の貼り合わせを行い、所望のサイズに切り出し、タブ付を行って正極とした。
【0688】
<負極の作製>
炭素質材料(グラファイト)98質量部に、増粘剤及びバインダーとして、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)1質量部及びスチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)1質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを所望のサイズに切り出し、タブ付を行って負極とした。
【0689】
<電解液の作製>
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(EC:EMC=30:70(体積比))をサンプル瓶に量り取り、ここにフルオロエチレンカーボネート(FEC)とビニレンカーボネート(VC)を1質量%ずつ溶解させて混合液を調製した。この混合液に、電解液中の濃度が1.0モル/Lとなるように、LiPF6塩を23℃で混合することにより、非水電解液を得た。
【0690】
<アルミラミネートセルの作製>
上記の正極を厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルム(セパレータ)を介して負極と対向させ、上記で得られた非水電解液を注入し、上記非水電解液がセパレータ等に充分に浸透した後、封止し予備充電、エージングを行い、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0691】
<電池評価>
上記で製造したリチウムイオン二次電池を、25℃において、0.33Cに相当する電流で4.3Vまで定電流-定電圧充電(以下、CC/CV充電と表記する。)(0.1Cカット)した後、0.33Cの定電流で3Vまで放電し、これを1サイクルとして、3サイクル目の放電容量から初期放電容量を求めた。
初期放電容量の評価が終了した電池を再度、25℃において4.3VまでCC/CV充電(0.1Cカット)し、アルキメデス法により電池の体積を求めた。電池の体積を求めた後、60℃、30日間の条件で高温保存を行った。高温保存終了後、十分に冷却した後25℃において電池の体積を求め、保存試験前後の電池の体積差からガス発生量を求めた。
ガス発生量を求めた後、25℃において0.33Cで3Vまで放電を行い、残存容量を求めた。
初期放電容量に対する高温保存後の残存容量の割合を求め、これを残存容量率(%)とした。
(残存容量)/(初期放電容量)×100=残存容量率(%)
結果を表10に示す。
【0692】
【0693】
固体電池用電極合剤シート評価
下記の手順で実施例6~12、実施例B1~3の正極合剤シート作製と評価を行った。作製及び評価はアルゴン雰囲気下にて行われた。
<正極合剤シートの作製>
活物質と導電助剤を秤量し、V型混合機に材料を投入し、37rpmで10分間混合し活物質と導電助剤からなる混合物を得た。その後、混合物に秤量したバインダー(TFE系ポリマー組成物)と固体電解質を投入し、5℃の恒温槽にて十分に冷却させた。活物質、導電助剤、バインダー、固体電解質とからなる混合物をヘンシェルミキサーに投入し、300rpmで2分間処理することで混合物の均質化を行った。
その後、混合物を40℃の恒温槽にて十分に昇温させた後に、ヘンシェルミキサーにて1000rpmで3分間処理することでフィブリル化を促進し、電極合剤を得た。
平行に配置された金属ロール(温度:80℃、回転速度:1m/min)に電極合剤を投入し、圧延することで電極合剤シートを得た。再度、得られた圧延シートを2つに折りたたむことにより粗砕して、金属ロール(温度:80℃、回転速度:1m/min)に電極合剤を投入し、圧延することでより強度のある電極合剤シートを得た。
その後、ロールプレス機に電極合剤シートを投入し、ギャップを調整した。最終的な正極合剤層の厚みは100μmになるように調整した。
表11に材料種と組成を示す。
また、得られた電極合剤シートはいずれも自立膜であった。
【0694】
【表11】
SuperP Li:Imerys社製カーボンブラック
【0695】
<正極合剤シートの強度測定(引張試験)>
上記正極合剤シートを切り出し8mm幅の短冊状の試験片を作製した。引張試験機を使用して、100mm/分の条件下にて測定した。チャック間距離は30mmとした。破断するまで変位を与え、測定した結果の最大応力を各サンプルの強度とした。引張強度が高く、シート強度が良好なものからA~Eでランク付けした。
A:0.2N/mm2以上
B:0.17N/mm2以上~0.2N/mm2未満
C:0.15N/mm2以上~0.17N/mm2未満
D:0.1N/mm2以上~0.15N/mm2未満
E:0.1N/mm2未満
結果を表12に示す。
【0696】
<正極合剤シートの柔軟性評価(曲げ試験)>
作製した電極合剤シートを幅4cm、長さ10cmに切り取り試験片とした。次に、これらの試験片をΦ10mmの丸棒に巻き付けた後、目視で試験片を確認し、傷や割れといった破損の有無を確認した。破損が見られない場合、更に細いΦ5mmの丸棒で試験を行い、破損を確認した。やはり、破損が見られない場合、更に細いΦ2mmの丸棒で試験を行い、破損を確認した。その結果をA~Dで分類した。
A:Φ2mm棒で破損なし
B:Φ2mm棒で破損あり
C:Φ5mm棒で破損あり
D:Φ10mm棒で破損あり
結果を表12に示す。
【0697】
【0698】
固体電解質合剤シート評価
下記の手順で実施例13~21、実施例C1~3の固体電解質合剤シート作製と評価を行った。作製及び評価はアルゴン雰囲気下にて行われた。
<固体電解質合剤シートの作製>
秤量したバインダー(TFE系ポリマー組成物)を5℃の恒温槽にて十分に冷却させた後、ヘンシェルミキサーに投入し、300rpmで2分間処理することで粉砕処理を行った。
粉砕したバインダーと固体電解質をそれぞれ秤量し、5℃の恒温槽にて十分に冷却させた。ヘンシェルミキサーに投入し、300rpmで1分間処理することで混合物の均質化を行った。
その後、混合物を40℃の恒温槽にて十分に昇温させた後に、ヘンシェルミキサーにて1000rpmで1分間処理することでフィブリル化を促進し、電解質合剤を得た。
並行に配置された金属ロール(温度:80℃、回転速度:1m/min)に電極合剤を投入し、圧延することで電解質合剤シートを得た。再度、得られた圧延シートを2つに折りたたむことにより粗砕して、金属ロール(温度:80℃、回転速度:1m/min)に電解質合剤を投入し、圧延することでより強度のある電解質合剤シートを得た。
その後、ロールプレス機に電解質合剤シートを投入し、ギャップを調整した。最終的な電解質合剤シートの厚みは150μmになるように調整した。
表13に材料種と組成を示す。
また、得られた電解質合剤シートはいずれも自立膜であった。
【0699】
【0700】
<固体電解質合剤シートの強度測定及び柔軟性評価>
上述の正極合剤シートと同様の方法で評価した。結果を表14に示す。
【0701】
<固体電解質合剤シートのイオン伝導度>
固体電解質合剤シートを適当な大きさに切り出し、両面に金を蒸着した。その後、パンチでΦ10mmの円形に打ち抜いた固体電解質合剤シートを圧力セルに納め、セルのネジを8Nで締め、セルの上下から電極をとった。用いた圧力セルの断面の概略図を
図1に示す。
この試料について、東陽テクニカ製インピーダンス装置を用い、25℃、AC振幅変調10mV、周波数5×10
6~0.1Hzの条件でイオン伝導度を測定した。
結果を表14に示す。
【0702】
【符号の説明】
【0703】
1:ネジ
2:ナット
3:絶縁シート
4:固体電解質合剤シート
5:金蒸着
6:上部電極
7:下部電極