(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
H01S 5/343 20060101AFI20240926BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01S5/343 610
H01S5/183
(21)【出願番号】P 2020193169
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 泰斗
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-141048(JP,A)
【文献】特表2011-517099(JP,A)
【文献】特開2011-077395(JP,A)
【文献】特開2020-024982(JP,A)
【文献】特開2011-096981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0033561(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010012711(DE,A1)
【文献】特開2005-353654(JP,A)
【文献】Katsumi Kishino et.al.,InGaN-based Nanocoumn Emitters Suitable for Display Applications,IEEE Xplore,米国,IEEE,2014年,MB1.1
【文献】Katsumi Kishino and Koji Yamano,Green-Light Nonocolumn Light Emitting Diodes With Triangular-Lattice Uniform Arrays of InGaN-Based Nanocolumns,IEEE Journal of Quantum Electronics,米国,IEEE,2014年07月,Vol.50, No.7,p538-547
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状部を有する積層体を有し、
前記柱状部は、
n型半導体層と、
第1p型半導体層と、
前記n型半導体層と前記第1p型半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第1p型半導体層と接する第2p型半導体層と、
を有し、
前記第1p型半導体層は、前記発光層と前記第2p型半導体層との間に設けられ、
前記第1p型半導体層は、c面と、ファセット面と、を有し、
前記第2p型半導体層は、
前記c面に設けられたc面領域と、
前記ファセット面に設けられたファセット面領域と、
を有し、
前記c面領域は、前記第1p型半導体層との界面において負の分極電荷を有し、
前記ファセット面領域は、前記界面において正の分極電荷を有
し、
前記発光層は、InGaN層であり、
前記柱状部の径は、50nm以上500nm以下である、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記c面領域の前記界面における負の分極電荷の密度は、前記ファセット面領域の前記界面における正の分極電荷の密度よりも大きい、発光装置。
【請求項3】
柱状部を有する積層体を有し、
前記柱状部は、
n型半導体層と、
第1p型半導体層と、
前記n型半導体層と前記第1p型半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第1p型半導体層と接する第2p型半導体層と、
を有し、
前記第1p型半導体層は、前記発光層と前記第2p型半導体層との間に設けられ、
前記第1p型半導体層は、c面と、ファセット面と、を有し、
前記第2p型半導体層は、
前記c面に設けられたc面領域と、
前記ファセット面に設けられたファセット面領域と、
を有し、
前記c面領域は、前記第1p型半導体層との界面において負の分極電荷を有し、
前記ファセット面領域は、前記界面において負の分極電荷を有し、
前記ファセット面領域の前記界面における負の分極電荷の密度は、前記c面領域の前記界面における負の分極電荷の密度よりも小さ
く、
前記発光層は、InGaN層であり、
前記柱状部の径は、50nm以上500nm以下である、発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記第1p型半導体層は、GaN層であり、
前記第2p型半導体層は、InGaN層である、発光装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において
、
前記第2p型半導体層のInの原子濃度は、前記発光層のInの原子濃度よりも小さい、発光装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記発光層は、c面を有する、発光装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1p型半導体層の前記c面の面積は、前記発光層の前記c面の面積よりも小さい、発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、
前記積層体に設けられ、前記第2p型半導体層と接する電極を有する、発光装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。中でも、ナノコラムを適用した半導体レーザーは、ナノコラムによるフォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が実現できると期待されている。このようなナノコラムは、n型半導体層と、p型半導体層と、n型半導体層とp型半導体層との間に設けられた発光層と、を有する。
【0003】
例えば特許文献1には、c面領域およびファセット面領域を備えた発光層を有する複数の柱状部が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような柱状部を有する発光装置において、例えば、発光層としてInGaN層を成長させる場合、InGaN層は、柱状部の中央に選択的に成長される傾向にある。そのため、柱状部の中央に選択的に電流を注入することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
柱状部を有する積層体を有し、
前記柱状部は、
n型半導体層と、
第1p型半導体層と、
前記n型半導体層と前記第1p型半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第1p型半導体層と接する第2p型半導体層と、
を有し、
前記第1p型半導体層は、前記発光層と前記第2p型半導体層との間に設けられ、
前記第1p型半導体層は、c面と、ファセット面と、を有し、
前記第2p型半導体層は、
前記c面に設けられたc面領域と、
前記ファセット面に設けられたファセット面領域と、
を有し、
前記c面領域は、前記第1p型半導体層との界面において負の分極電荷を有し、
前記ファセット面領域は、前記界面において正の分極電荷を有する。
【0007】
本発明に係る発光装置の一態様は、
柱状部を有する積層体を有し、
前記柱状部は、
n型半導体層と、
第1p型半導体層と、
前記n型半導体層と前記第1p型半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第1p型半導体層と接する第2p型半導体層と、
を有し、
前記第1p型半導体層は、前記発光層と前記第2p型半導体層との間に設けられ、
前記第1p型半導体層は、c面と、ファセット面と、を有し、
前記第2p型半導体層は、
前記c面に設けられたc面領域と、
前記ファセット面に設けられたファセット面領域と、
を有し、
前記c面領域は、前記第1p型半導体層との界面において負の分極電荷を有し、
前記ファセット面領域は、前記界面において負の分極電荷を有し、
前記ファセット面領域の前記界面における負の分極電荷の密度は、前記c面領域の前記界面における負の分極電荷の密度よりも小さい。
【0008】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図2】本実施形態に係る発光装置の第2p型半導体層の第1p型半導体層との界面近傍を模式的に示す断面図。
【
図3】本実施形態に係る発光装置の第2p型半導体層の第1p型半導体層との界面近傍を模式的に示す断面図。
【
図4】本実施形態に係る発光装置の第2p型半導体層のc面領域において誘起される正孔密度の概算を示すグラフ。
【
図5】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図6】本実施形態の第1変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図7】本実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図8】本実施形態の第3変形例に係る発光装置の第2p型半導体層の第1p型半導体層との界面近傍を模式的に示す断面図。
【
図9】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1. 発光装置
まず、本実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。
【0012】
発光装置100は、
図1に示すように、例えば、基板10と、積層体20と、第1電極40と、第2電極42と、を有している。
【0013】
基板10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板などである。
【0014】
積層体20は、基板10に設けられている。図示の例では、積層体20は、基板10上に設けられている。積層体20は、例えば、バッファー層22と、柱状部30と、を有している。
【0015】
本明細書では、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、発光層34を基準とした場合、発光層34から第1p型半導体層36に向かう方向を「上」とし、発光層34からn型半導体層32に向かう方向を「下」として説明する。また、積層方向と直交する方向を「面内方向」ともいう。また、「積層体20の積層方向」とは、柱状部30のn型半導体層32と発光層34との積層方向のことである。
【0016】
バッファー層22は、基板10上に設けられている。バッファー層22は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層などである。バッファー層22上には、柱状部30を形成するためのマスク層50が設けられている。マスク層50は、例えば、酸化シリコン層、チタン層、酸化チタン層、酸化アルミニウム層などである。
【0017】
柱状部30は、バッファー層22上に設けられている。柱状部30は、バッファー層22から上方に突出した柱状の形状を有している。言い換えれば、柱状部30は、バッファー層22を介して基板10から上方に突出している。柱状部30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30の平面形状は、例えば、正六角形などの多角形、円である。
【0018】
柱状部30の径は、例えば、50nm以上500nm以下である。柱状部30の径を500nm以下とすることによって、高品質な結晶の発光層34を得ることができ、かつ、発光層34に内在する歪を低減することができる。これにより、発光層34で発生する光を高い効率で増幅することができる。
【0019】
なお、「柱状部の径」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、柱状部30の径は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。
【0020】
柱状部30は、複数設けられている。隣り合う柱状部30の間隔は、例えば、1nm以上500nm以下である。複数の柱状部30は、積層方向からみて、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の柱状部30は、例えば、三角格子状に配置されている。なお、複数の柱状部30の配置は、特に限定されず、正方格子状に配置されていてもよい。複数の柱状部30は、フォトニック結晶の効果を発現することができる。
【0021】
なお、「柱状部のピッチ」とは、所定の方向に沿って隣り合う柱状部30の中心間の距離である。「柱状部の中心」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部30の中心は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0022】
柱状部30は、例えば、n型半導体層32と、MQW(Multiple Quantum Well)層33と、第1p型半導体層36と、第2p型半導体層37と、を有している。
【0023】
n型半導体層32は、バッファー層22上に設けられている。n型半導体層32は、基板10と発光層34との間に設けられている。n型半導体層32は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0024】
n型半導体層32は、c面2と、ファセット面4と、を有している。c面2は、例えば、基板10の上面と平行である。ファセット面4は、c面2に対して傾斜している。n型
半導体層32は、c面2およびファセット面4において、MQW層33と接している。
【0025】
MQW層33は、n型半導体層32上に設けられている。MQW層33は、n型半導体層32と第1p型半導体層36との間に設けられている。MQW層33は、c面2と、ファセット面4と、を有している。MQW層33は、c面2およびファセット面4において、第1p型半導体層36と接している。MQW層33は、発光層34と、バリア層35と、を有している。MQW層33は、発光層34およびバリア層35から構成されたMQW構造を有している。
【0026】
発光層34は、n型半導体層32と第1p型半導体層36との間に設けられている。発光層34は、2つのバリア層35の間に設けられている。発光層34は、例えば、i型のInGaN層である。すなわち、不純物が意図的にドープされていないInGaN層である。発光層34は、c面2を有している。図示の例では、発光層34は、ファセット面4を有していない。発光層34は、電流が注入されることで光を発生させる。図示の例では、発光層34は、3つ設けられている。
【0027】
バリア層35は、発光層34を挟んで設けられている。バリア層35は、例えば、i型のGaN層である。すなわち、不純物が意図的にドープされていないGaN層である。バリア層35は、MQW層33のc面2およびファセット面4を構成している。図示の例では、バリア層35は、4つ設けられている。
【0028】
なお、発光層34およびバリア層35の数は、特に限定されない。例えば発光層34の数は1つでもよく、この場合、柱状部30は、MQW層33の代わりに、SQW(Single
Quantum Well)層を有する。
【0029】
第1p型半導体層36は、MQW層33上に設けられている。第1p型半導体層36は、発光層34と第2p型半導体層37との間に設けられている。第1p型半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層である。第1p型半導体層36は、c面2と、ファセット面4と、を有している。第1p型半導体層36は、c面2およびファセット面4において、第2p型半導体層37と接している。図示の例では、第1p型半導体層36のc面2の面積は、発光層34のc面2の面積と同じである。n型半導体層32および第1p型半導体層36は、MQW層33に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0030】
第2p型半導体層37は、第1p型半導体層36上に設けられている。第2p型半導体層37は、第1p型半導体層36と接している。第2p型半導体層37は、第1p型半導体層36と第2電極42との間に設けられている。第2p型半導体層37の厚さは、第1p型半導体層36の厚さよりも小さい。第2p型半導体層37の厚さは、例えば、0.1nm以上20nm以下、好ましくは0.5nm以上10nm以下である。第2p型半導体層37は、c面2と、ファセット面4と、を有している。第2p型半導体層37は、c面2およびファセット面4において、第2電極42と接している。
【0031】
第2p型半導体層37は、例えば、Mgがドープされたp型のInGaN層である。第2p型半導体層37および発光層34がInGaN層である場合、第2p型半導体層37のInの原子濃度(at%)は、発光層34のInの原子濃度よりも小さい。第2p型半導体層37のInの原子濃度は、例えば、1at%以上20at%以下であり、好ましくは、5at%以上15at%以下である。第2p型半導体層37のInの原子濃度が1at%以上であれば、第2p型半導体層37の第1p型半導体層36との界面において、正孔を誘起させることができる。第2p型半導体層37のInの原子濃度が20at%以下であれば、生じた欠陥による第2p型半導体層37のn型化を抑制することができる。I
nの原子濃度は、例えば、アトムプローブ分析法によって測定することができる。
【0032】
第2p型半導体層37は、c面領域38と、ファセット面領域39と、を有している。c面領域38は、第1p型半導体層36のc面2に設けられている。c面領域38は、積層方向からみて、柱状部30の中央に設けられている。c面領域38は、積層方向からみて、発光層34と重なっている。ファセット面領域39は、第1p型半導体層36のファセット面4に設けられている。ファセット面領域39は、積層方向からみて、柱状部30の側壁側に設けられている。ファセット面領域39は、積層方向からみて、例えば、発光層34と重なっていない。
【0033】
ここで、
図2および
図3は、第2p型半導体層37の第1p型半導体層36との界面6近傍を模式的に示す断面図である。
図2は、c面領域38の界面6近傍を図示している。
図3は、ファセット面領域39の界面6近傍を図示している。界面6は、ヘテロ接合の界面である。
【0034】
第2p型半導体層37のc面領域38は、
図2に示すように、界面6において負の分極電荷Mを有する。第1p型半導体層36のc面2上に第2p型半導体層37をエピタキシャル成長させると、第1p型半導体層36と第2p型半導体層37との格子定数の差に起因して第2p型半導体層37のc面領域38に歪が生じる。そして、c面領域38に生じた歪によって、界面6に、負の分極電荷Mが生じる。負の分極電荷Mが生じると、c面領域38において正孔Hが誘起される。c面領域38は、p型の半導体層であるため、正孔Hが誘起されると、c面領域38は、低抵抗となる。
【0035】
第2p型半導体層37のファセット面領域39は、
図3に示すように、界面6において正の分極電荷Pを有する。第1p型半導体層36のファセット面4上に第2p型半導体層37をエピタキシャル成長させると、第1p型半導体層36と第2p型半導体層37との格子定数の差に起因して第2p型半導体層37のファセット面領域39に歪が生じる。そして、ファセット面領域39に生じた歪によって、界面6に、正の分極電荷Pが生じる。正の分極電荷Pが生じると、ファセット面領域39において電子Eが誘起される。ファセット面領域39は、p型の半導体層であるため、電子Eが誘起されると、c面領域38は、高抵抗となる。
【0036】
なお、界面6における分極電荷の正負は、TEM(Transmission Electron Microscope)によって第2p型半導体層37の断面の構造解析を行うことにより、確認することができる。
【0037】
c面領域38の第1p型半導体層36との界面6における負の分極電荷Mの密度は、ファセット面領域39の第1p型半導体層36との界面6における正の分極電荷Pの密度よりも小さい。なお、界面6における分極電荷の密度は、TEMによって第2p型半導体層37の断面の構造解析を行うことにより、測定することができる。
【0038】
ここで、
図4は、第2p型半導体層37のc面領域38において誘起される正孔密度の概算を示すグラフである。
図4の概算では、第2p型半導体層37をInGaN層とし、厚さ2nmのInGaN層全体に正孔が分布していると仮定した。
図4に示すように、c面領域38では、1×10
19cm
-3を超える正孔密度が見積もられる。なお、一般的なp型GaN層の正孔密度は、1×10
17cm
-3オーダーである。また、ファセット面領域39の電子密度は、1×10
18cm
-3オーダーであると予想される。
【0039】
発光装置100では、p型半導体層36,37、不純物がドープされていないi型のMQW層33、およびn型半導体層32により、pinダイオードが構成される。発光装置
100では、第1電極40と第2電極42との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光層34に電流が注入されて発光層34において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層34で発生した光は、面内方向に伝搬し、複数の柱状部30によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成して、発光層34で利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に出射する。
【0040】
なお、図示はしないが、基板10とバッファー層22との間、または基板10の下に反射層が設けられていてもよい。該反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。該反射層によって、発光層34において発生した光を反射させることができ、発光装置100は、第2電極42側からのみ光を出射することができる。
【0041】
第1電極40は、
図1に示すように、積層体20に設けられている。図示の例では、第1電極40は、バッファー層22上に設けられている。バッファー層22は、第1電極40とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極40は、n型半導体層32と電気的に接続されている。図示の例では、第1電極40は、バッファー層22を介して、n型半導体層32と電気的に接続されている。第1電極40は、発光層34に電流を注入するための一方の電極である。第1電極40としては、例えば、バッファー層22側から、Cr層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。
【0042】
第2電極42は、積層体20に設けられている。図示の例では、第2電極42は、第2p型半導体層37上に設けられている。第2電極42は、第2p型半導体層37と接している。第2電極42は、第1p型半導体層36と電気的に接続されている。図示の例では、第2電極42は、第2p型半導体層37を介して、第1p型半導体層36と電気的に接続されている。第2p型半導体層37は、第2電極42とオーミックコンタクトしていてもよい。第2p型半導体層37は、例えば、コンタクト層である。第2電極42は、発光層34に電流を注入するための他方の電極である。第2電極42としては、例えば、ITO(indium tin oxide)などを用いる。
【0043】
発光装置100は、例えば、以下の作用効果を奏することができる。
【0044】
発光装置100では、第1p型半導体層36は、c面2と、ファセット面4と、を有し、第2p型半導体層37は、第1p型半導体層36のc面2に設けられたc面領域38と、第1p型半導体層36のファセット面4に設けられたファセット面領域39と、を有する。c面領域38は、第1p型半導体層36との界面6において負の分極電荷Mを有し、ファセット面領域39は、第1p型半導体層36との界面6において正の分極電荷Pを有する。そのため、発光装置100では、c面領域38の界面6では、負の分極電荷Mによって正孔Hが誘起されて、低抵抗となる。一方、ファセット面領域39の界面6では、正の分極電荷Pによって電子Eが誘起されて、高抵抗となる。p型の半導体層は、n型の半導体層に比べて、抵抗が高いので、面内方向に広がる電流が少ない。したがって、発光層34が位置する柱状部30の中央に選択的に電流を注入することができ、発光層34が位置しない柱状部30の側壁側に注入される電流を減少させることができる。その結果、効率よく発光層34に電流を注入することができる。
【0045】
発光装置100では、c面領域38の第1p型半導体層36との界面6における負の分極電荷Mの密度は、ファセット面領域39の第1p型半導体層36との界面6における正の分極電荷Pの密度よりも大きい。そのため、発光装置100では、c面領域38の第1p型半導体層36との界面6における負の分極電荷の密度がファセット面領域39の第1p型半導体層36との界面6における正の分極電荷の密度よりも小さい場合に比べて、例えば、c面領域38において多くの正孔Hを誘起させることができる。
【0046】
発光装置100では、第1p型半導体層36は、GaN層であり、第2p型半導体層37は、InGaN層である。そのため、発光装置100では、GaN層とInGaN層との格子定数の差に起因する歪によって、c面領域38は、界面6において負の分極電荷Mを有することができ、ファセット面領域39は、界面6において正の分極電荷Pを有することができる。
【0047】
発光装置100では、発光層34は、InGaN層であり、第2p型半導体層37のInの原子濃度は、発光層34のInの原子濃度よりも小さい。そのため、発光装置100では、第2p型半導体層のInの原子濃度が発光層のInの原子濃度よりも大きい場合に比べて、発光層34に光を閉じ込めることができる。
【0048】
発光装置100では、発光層34は、c面2を有する。そのため、発光装置100では、発光層がc面を有さずにファセット面を有する場合に比べて、欠陥による非発光再結合を抑制することができる。
【0049】
発光装置100では、積層体20に設けられ、第2p型半導体層37と接する第2電極42を有する。そのため、発光装置100では、第2電極42と発光層34との間の電流が、柱状部30の中央に選択的に流れるように、電流を狭窄させることができる。
【0050】
なお、第2p型半導体層37は、不純物がドーピングされていなくてもよい。不純物をドーピングがされていなくても、第2p型半導体層37のc面領域38では、上記のように負の分極電荷Mによって正孔Hが誘起されるため、p型の第2p型半導体層37が形成される。
【0051】
また、発光装置100は、レーザーに限らず、LED(Light Emitting Diode)であってもよい。
【0052】
2. 発光装置の製造方法
次に、本実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図5は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0053】
図5に示すように、基板10上に、バッファー層22をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0054】
次に、バッファー層22上に、マスク層50を形成する。マスク層50は、例えば、電子ビーム蒸着法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などによる成膜、およびパターニングによって形成される。パターニングは、フォトリソグラフィーおよびエッチングによって行われる。
【0055】
図1に示すように、マスク層50をマスクとしてバッファー層22上に、n型半導体層32、MQW層33、第1p型半導体層36、および第2p型半導体層37を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。
【0056】
以上の工程により、複数の柱状部30を形成することができる。
【0057】
次に、バッファー層22上に第1電極40を形成し、第2p型半導体層37上に第2電
極42を形成する。第1電極40および第2電極42は、例えば、真空蒸着法などにより形成される。なお、第1電極40および第2電極42の形成順序は、特に限定されない。
【0058】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0059】
3. 発光装置の変形例
3.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200を模式的に示す断面図である。
【0060】
以下、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200において、上述した本実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、以下に示す本実施形態の第2,第3変形例に係る発光装置において、同様である。
【0061】
上述した発光装置100では、
図1に示すように、第1p型半導体層36のc面2の面積は、発光層34のc面2の面積と同じであった。
【0062】
これに対し、発光装置200では、
図6に示すように、第1p型半導体層36のc面2の面積は、発光層34のc面2の面積よりも小さい。そのため、発光装置200では、第1p型半導体層36のc面2の面積が発光層34のc面2の面積と同じ場合に比べて、発光層34が位置しない柱状部30の側壁側に注入される電流を減少させることができる。
【0063】
例えば、第1p型半導体層36をエピタキシャル成長させる際に、成膜温度、組成などを調整することにより、第1p型半導体層36のc面2の面積を、発光層34のc面2の面積よりも小さくさせることができる。
【0064】
3.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図7は、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300を模式的に示す断面図である。
【0065】
上述した発光装置100では、
図1に示すように、第2電極42は、第2p型半導体層37と接していた。
【0066】
これに対し、発光装置300では、
図7に示すように、第2電極42は、第2p型半導体層37と接しておらず、第3p型半導体層330と接している。
【0067】
発光装置300では、柱状部30は、第3p型半導体層330を有している。第3p型半導体層330は、第2p型半導体層37上に設けられている。第3p型半導体層330は、第2p型半導体層37と接している。第3p型半導体層330は、第2p型半導体層37と第2電極42との間に設けられている。
【0068】
第3p型半導体層330は、c面2と、ファセット面4と、を有している。第3p型半導体層330は、c面2およびファセット面4において、第2電極42と接している。第3p型半導体層330は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層である。第2電極42は、第3p型半導体層330および第2p型半導体層37を介して、第1p型半導体層36と電気的に接続されている。第3p型半導体層330は、第2電極42とオーミックコンタクトしていてもよい。第3p型半導体層330は、例えば、コンタクト層である。第3p型半導体層330は、例えば、MOCVD法、MBE法などのエピタキシャル成長によって形成される。
【0069】
発光装置300では、上述した発光装置100と同様に、発光層34が位置する柱状部30の中央に選択的に電流を注入することができる。
【0070】
さらに、発光装置300では、柱状部30は、第2p型半導体層37と第2電極42との間に設けられ、第2電極42と接する第3p型半導体層330を有する。そのため、発光装置300では、第2電極42と接するp型半導体層の設定の自由度を高めることができる。
【0071】
3.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図8は、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400の第2p型半導体層37の第1p型半導体層36との界面6近傍を模式的に示す断面図である。
図8は、ファセット面領域39の界面6近傍を図示している。
【0072】
上述した発光装置100では、
図3に示すように、第2p型半導体層37のファセット面領域39は、界面6において正の分極電荷Pを有していた。
【0073】
これに対し、発光装置400では、
図8に示すように、第2p型半導体層37のファセット面領域39は、界面6において負の分極電荷Mを有している。ファセット面領域39の界面6における負の分極電荷Mの密度は、c面領域38の界面6における負の分極電荷Mの密度よりも小さい。そのため、ファセット面領域39において正孔Hが誘起されたとしても、ファセット面領域39における正孔Hの密度は、c面領域38における正孔Hの密度よりも小さくなる。したがって、発光装置400では、上述した発光装置100と同様に、発光層34が位置する柱状部30の中央に選択的に電流を注入することができる。
【0074】
なお、発光装置400の製造方法では、例えば発光装置100の製造方法に比べて、第1p型半導体層36のc面2に対する、第1p型半導体層36のファセット面4の傾き角が、小さくなるような成長条件で第1p型半導体層36を成長させる。このように、第1p型半導体層36のc面2に対するファセット面4の傾き角によって、ファセット面領域39の界面6における分極電荷の正負を制御することができる。上記の第1p型半導体層36の成長条件以外は、発光装置400の製造方法は、基本的に発光装置100の製造方法と同じである。
【0075】
4. プロジェクター
次に、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。
図9は、本実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。
【0076】
プロジェクター900は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0077】
プロジェクター900は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。なお、便宜上、
図9では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0078】
プロジェクター900は、さらに、筐体内に備えられている、第1光学素子902Rと、第2光学素子902Gと、第3光学素子902Bと、第1光変調装置904Rと、第2光変調装置904Gと、第3光変調装置904Bと、投射装置908と、を有している。第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置908は、例えば、投射レンズであ
る。
【0079】
赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rによって集光される。なお、第1光学素子902Rは、集光以外の機能を有していてもよい。後述する第2光学素子902Gおよび第3光学素子902Bについても同様である。
【0080】
第1光学素子902Rによって集光された光は、第1光変調装置904Rに入射する。第1光変調装置904Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第1光変調装置904Rによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0081】
緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gによって集光される。
【0082】
第2光学素子902Gによって集光された光は、第2光変調装置904Gに入射する。第2光変調装置904Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第2光変調装置904Gによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0083】
青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bによって集光される。
【0084】
第3光学素子902Bによって集光された光は、第3光変調装置904Bに入射する。第3光変調装置904Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第3光変調装置904Bによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0085】
また、プロジェクター900は、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bから出射された光を合成して投射装置908に導くクロスダイクロイックプリズム906を有することができる。
【0086】
第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。クロスダイクロイックプリズム906は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置908によりスクリーン910上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0087】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置908は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン910に投射してもよい。
【0088】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラー
デバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0089】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0090】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクター以外にも用いることが可能である。プロジェクター以外の用途には、例えば、屋内外の照明、ディスプレイのバックライト、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源がある。また、上述した実施形態に係る発光装置は、微小な発光素子をアレイ状に配置して画像表示させるLEDディスプレイの発光素子にも適用することができる。
【0091】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0092】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0093】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0094】
発光装置の一態様は、
柱状部を有する積層体を有し、
前記柱状部は、
n型半導体層と、
第1p型半導体層と、
前記n型半導体層と前記第1p型半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第1p型半導体層と接する第2p型半導体層と、
を有し、
前記第1p型半導体層は、前記発光層と前記第2p型半導体層との間に設けられ、
前記第1p型半導体層は、c面と、ファセット面と、を有し、
前記第2p型半導体層は、
前記c面に設けられたc面領域と、
前記ファセット面に設けられたファセット面領域と、
を有し、
前記c面領域は、前記第1p型半導体層との界面において負の分極電荷を有し、
前記ファセット面領域は、前記界面において正の分極電荷を有する。
【0095】
この発光装置によれば、発光層が位置する柱状部の中央に選択的に電流を注入することができる。
【0096】
発光装置の一態様において、
前記c面領域の前記界面における負の分極電荷の密度は、前記ファセット面領域の前記界面における正の分極電荷の密度よりも大きくてもよい。
【0097】
この発光装置によれば、c面領域の第1p型半導体層との界面における負の分極電荷の
密度がファセット面領域の第1p型半導体層との界面における正の分極電荷の密度よりも小さい場合に比べて、例えば、c面領域において多くの正孔を誘起させることができる。
【0098】
発光装置の一態様は、
柱状部を有する積層体を有し、
前記柱状部は、
n型半導体層と、
第1p型半導体層と、
前記n型半導体層と前記第1p型半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第1p型半導体層と接する第2p型半導体層と、
を有し、
前記第1p型半導体層は、前記発光層と前記第2p型半導体層との間に設けられ、
前記第1p型半導体層は、c面と、ファセット面と、を有し、
前記第2p型半導体層は、
前記c面に設けられたc面領域と、
前記ファセット面に設けられたファセット面領域と、
を有し、
前記c面領域は、前記第1p型半導体層との界面において負の分極電荷を有し、
前記ファセット面領域は、前記界面において負の分極電荷を有し、
前記ファセット面領域の前記界面における負の分極電荷の密度は、前記c面領域の前記界面における負の分極電荷の密度よりも小さい。
【0099】
この発光装置によれば、発光層が位置する柱状部の中央に選択的に電流を注入することができる。
【0100】
発光装置の一態様において、
前記第1p型半導体層は、GaN層であり、
前記第2p型半導体層は、InGaN層であってもよい。
【0101】
この発光装置によれば、GaN層とInGaN層との格子定数の差に起因する歪によって、c面領域は、第1p型半導体層との界面において負の分極電荷を有することができ、ファセット面領域は、第1p型半導体層との界面において正の分極電荷を有することができる。
【0102】
発光装置の一態様において、
前記発光層は、InGaN層であり、
前記第2p型半導体層のInの原子濃度は、前記発光層のInの原子濃度よりも小さくてもよい。
【0103】
この発光装置によれば、第2p型半導体層のInの原子濃度が発光層のInの原子濃度よりも大きい場合に比べて、発光層に光を閉じ込めることができる。
【0104】
発光装置の一態様において、
前記発光層は、c面を有してもよい。
【0105】
この発光装置によれば、発光層がc面を有さずにファセット面を有する場合に比べて、欠陥による非発光再結合を抑制することができる。
【0106】
発光装置の一態様において、
前記第1p型半導体層の前記c面の面積は、前記発光層の前記c面の面積よりも小さく
てもよい。
【0107】
この発光装置によれば、第1p型半導体層のc面の面積が発光層のc面の面積と同じ場合に比べて、発光層が位置しない柱状部の側壁側に注入される電流を減少させることができる。
【0108】
発光装置の一態様において、
前記積層体に設けられ、前記第2p型半導体層と接する電極を有してもよい。
【0109】
この発光装置によれば、第2電極と発光層との間の電流が、柱状部の中央に選択的に流れるように、電流を狭窄させることができる。
【0110】
プロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【符号の説明】
【0111】
2…c面、4…ファセット面、6…界面、10…基板、20…積層体、22…バッファー層、30…柱状部、32…n型半導体層、33…MQW層、34…発光層、35…バリア層、36…第1p型半導体層、37…第2p型半導体層、38…c面領域、39…ファセット面領域、40…第1電極、42…第2電極、50…マスク層、100…発光装置、100R…赤色光源、100G…緑色光源、100B…青色光源、200,300…発光装置、330…第3p型半導体層、400…発光装置、900…プロジェクター、902R…第1光学素子、902G…第2光学素子、902B…第3光学素子、904R…第1光変調装置、904G…第2光変調装置、904B…第3光変調装置、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投射装置、910…スクリーン