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特許7560846粉末またはペースト形態の調味料で調味するための下味付きゲル化こんにゃく
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】粉末またはペースト形態の調味料で調味するための下味付きゲル化こんにゃく
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20240926BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240926BHJP
【FI】
A23L19/00 102Z
A23L27/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019208955
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021078423
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501426736
【氏名又は名称】ハイスキー食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】菱谷 哲嗣
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-289408(JP,A)
【文献】特開2008-220254(JP,A)
【文献】特開平11-103795(JP,A)
【文献】特開2007-159535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、肉エキス、魚エキス、貝エキス、および野菜エキスよりなる群より選ばれる2種以上の調味料からなるうま味を呈する調味料、塩味を呈する調味料および甘味を呈する調味料からなる下味調味料で、通常の調味こんにゃくの味としては不十分で、他の味を追加して完成できる淡い味の下味付けされたpH11以上の、通常のこんにゃくと同様に常温保存が可能である下味付きゲル化こんにゃくであって、アルカリこんにゃくの脱アルカリ作用と調味付け作用をもった、浸透圧による離水を生じさせない粉末形態の調味料を直に混ぜ合わせて調味するための下味付きゲル化こんにゃく、および
(b)アルカリこんにゃくの脱アルカリ作用と調味付け作用をもった、浸透圧による離水を生じさせない粉末形態の調味料、
の組合せを特徴とするこんにゃく加工食品
【請求項2】
上記(a)の下味付きゲル化こんにゃくは、下味調味料入りのpH11以上のアルカリ水に浸漬された淡味の味付けされた状態にある通常のpH11以上のゲル化こんにゃく、または、こんにゃく粉と下味調味料とのこんにゃく糊を原料とするpH11以上のゲル化こんにゃくである、請求項1のこんにゃく加工食品
【請求項3】
上記(a)のうま味を呈する調味料が、少なくともイノシン酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムを含む2種以上の調味料である、請求項1または2に記載のこんにゃく加工食品。
【請求項4】
上記(a)の下味調味料が、うま味を呈する調味料、塩味を呈する調味料および甘味を呈する調味料の各調味料を合わせて、淡味に調味する量の配合量のものである、請求項1ないし3のいずれかに記載のこんにゃく加工食品
【請求項5】
上記(a)のpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくは、pHが11~12の下味付きゲル化こんにゃくである、請求項1ないし4のいずれかに記載のこんにゃく加工食品
【請求項6】
上記(a)のpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくは、形状が三角状、角状、糸状、丸状、粒状、摩砕状および板状よりなる群より選ばれる、請求項1ないし5のいずれかに記載のこんにゃく加工食品
【請求項7】
上記(a)のpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくは、色調が、海藻粉を使用しない白いこんにゃく、海藻粉で着色した黒色系こんにゃく、および油性の天然色素を練り込んだ着色したこんにゃくよりなる群より選ばれる、請求項1ないし6のいずれかに記載のこんにゃく加工食品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリこんにゃくの脱アルカリ作用と調味付け作用をもった粉末またはペースト形態の調味料で調味するための、特定の下味調味料で淡味の味付けされたpH11以上の下味付きゲル化こんにゃく、および、該ゲル化こんにゃくと粉末またはペースト形態の調味料の組合せを特徴とするこんにゃく加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
こんにゃくは主成分であるグルコマンナンがアルカリである水酸化カルシウムによって凝固する性質を利用して作られる。こんにゃくは調理にはアク抜きや味が染みるのに時間がかかりこんにゃくを食べたいが調理が面倒である。こんにゃくは、残存するアルカリ成分が調理利用の簡便さをほど遠いものとしており、おいしいけれど不便な食材である一面をもっている。
こんにゃくを使うメニューはおでん、煮物などが主流であるが、近年、低カロリーであることが着目されて、画一化された食材の使い方に飽き足らず、それぞれの食生活の状況に応じた適切な選択のために消費者自らが自由に調整し得る調理食品が求められるようになった。
こんにゃく売り場に素材としての販売においては、こんにゃくの食材形態は昔から何ら変化はない。こんにゃくにおいては、食べる前に少し手を加えて食べるには、その都度調理素材を調製して実施しなくてはならず、そうした使用態様に対応できる商品形態、あるいは包装形態にはなっていないのが現状である。
【0003】
こんにゃくの主成分は多糖類のグルコマンナンであり、難消化性で食物繊維からなることからダイエットや便秘に効果があるといわれている。また体内では、コレステロールや血糖値の低下、体脂肪の減少にも役立つとされている。特に、腸での難消化性は、俗にいう腹もちがよく、食事の摂取量の減少につながる。これらの効用は、消費の減少が続いているこんにゃくの用途を拡大するとともに、より多くの人にヘルシーな食品を提供することになり、食生活の健全化にも寄与している。その一つに、アルカリでゲル化されたこんにゃく素材を有効成分とする血糖値の上昇抑制用こんにゃく加工飲食品が提案されている(特許文献1)。
【0004】
こうした状況の中で、こんにゃくを他の食品素材と組み合わせて使用できるようにするために、こんにゃくを粒状などの形態で提供することが試みられている。こんにゃく食品をハンバーグ、ソーセージはどの加工食品中に、食物繊維量の増大やカロリー低下を目的として混入できるようにするにはチップ状または粒状とすることが好ましいが、こんにゃくは多量の水分を含むものであり常温では腐敗し易く、貯蔵には冷蔵庫を要し、また他の食品材料と混ぜ合わせたときに、チップや粒体が含有する水分により影響を受けることがあった。
そこで、乾燥した粒状またはチップ状のこんにゃくの製造がいくつか提案されている。例えば、吸水性が良好で軟化し易く他の食品素材との馴染みがよいこんにゃくを製造するにあたり、ゲル状のこんにゃくに石灰水などのアルカリ水を混練し、その混練こんにゃくを太さ2~4mm、60~15本の線状体に押出形成し、養生したのちに粉砕機により細かく砕いて砕片となし、その砕片を加熱して再凝固させて独立した粒状のこんにゃくとなした後、洗浄脱水して40~65℃の温度範囲の熱風により、含水率4~10%になるまで乾燥する粒状または粉状の乾燥こんにゃくの製造方法(特許文献2)や、長さ0.5mm、幅3mmに粉砕し、元の水分の10~60%に乾燥したこんにゃく食品(特許文献3)などが提案されている。また、乾燥こんにゃくの製造には、破砕したこんにゃくの組織内の水分を除去するために、-10℃以下の冷却と200℃以上の乾燥とを併用して製造する長さ6mm以下粒状物に成形したファイバー状こんにゃく(特許文献4)が提案されている。
【0005】
その他の粒状こんにゃくを利用した食品としては、例えば、多価アルコール、糖アルコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖などとグルコマンナンなどから選ばれた天然糖類からなる高強度ゲル状ブロックを混入した食品であって、ブロックの強度が食品素材よりも大きいゲル状ブロックを混入したヨーグルト、ジュース、ジャム、ゼリーなどに混入して好ましい食感を付与した食品(特許文献5)が提案されている。
【0006】
消費者の不便と感じる部分を何とか解消できないだろうか。味染みが悪い。あく抜きが必要であるという主な要因は水酸化カルシウムにあると考え、本発明者は脱アルカリに成功し、高品質の調味こんにゃくを考案し、自動化して製造できる方法を、すでに特許にしている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-46854号公報
【文献】特許第3395966号公報
【文献】特開平2-231045号公報
【文献】特開平8-89184号公報
【文献】特開昭63-3767号公報
【文献】特許第3829211号公報
【文献】特許第3905830号公報
【文献】特許第5390077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こんにゃくは、味のしみ込みが遅いことが知られている。早く味が内部にまで浸透するこんにゃく、または味が浸透しているこんにゃくという要望がある。おでんこんにゃく用にではあるが、長時間加熱することなく味をしみ込ませるために、こんにゃく粉とうま味、塩味および甘味を呈する各調味料を溶解した湯を混和撹拌してこんにゃく糊とし、水酸化カルシウムを加えて、ゲル化させたpH11以上の調味こんにゃくが開発されている(特許文献7)。
本発明は、そのような下味付きゲル化こんにゃくを発展させて、調理に時間をかけずにこんにゃくをもっと簡単においしく食べるためのいろいろの調理加工食品として展開するために、既存の食材であるこんにゃくを対象として簡単においしい調味こんにゃくになる、こんにゃくの提供の仕方に工夫のあるこんにゃく調理加工品の提供を目的とする。
そのためには、いろいろの使用態様に対応できる商品形態、包装形態でこんにゃく調理食品を提供すること、食材としてのこんにゃくの画一化された使い方ではなく、好みに応じた調味に自由に調整し得るこんにゃく調理食品を提供することが求められる。
さらにまた、好みに応じた調味に自由に調整し得るこんにゃく調理食品を離水などの問題がない安定した状態で提供すること、より具体的には、特有の食感を保持し、香味に影響もなく、常温および低温流通で、3ヶ月以上の賞味期間を目標とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の(1)~(7)に記載のpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくを要旨としている。
(1)(a)グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、肉エキス、魚エキス、貝エキス、および野菜エキスよりなる群より選ばれる2種以上の調味料からなるうま味を呈する調味料、塩味を呈する調味料および甘味を呈する調味料からなる下味調味料で、通常の調味こんにゃくの味としては不十分で、他の味を追加して完成できる淡い味の下味付けされたpH11以上の、通常のこんにゃくと同様に常温保存が可能である下味付きゲル化こんにゃくであって、アルカリこんにゃくの脱アルカリ作用と調味付け作用をもった、浸透圧による離水を生じさせない粉末形態の調味料を混ぜ合わせて調味するための下味付きゲル化こんにゃく、および
(b)アルカリこんにゃくの脱アルカリ作用と調味付け作用をもった、浸透圧による離水を生じさせない粉末形態の調味料、
の組合せを特徴とするこんにゃく加工食品。
(2)上記(a)の下味付きゲル化こんにゃくは、下味調味料入りのpH11以上のアルカリ水に浸漬された淡味の味付けされた状態にある通常のpH11以上のゲル化こんにゃく、または、こんにゃく粉と下味調味料とのこんにゃく糊を原料とするpH11以上のゲル化こんにゃくである、上記(1)のこんにゃく加工食品
(3)上記(a)のうま味を呈する調味料が、少なくともイノシン酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムを含む2種以上の調味料である、上記(1)または(2)に記載のこんにゃく加工食品
(4)上記(a)の下味調味料が、うま味を呈する調味料、塩味を呈する調味料および甘味を呈する調味料の各調味料を合わせて、淡味に調味する量の配合量のものである、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のこんにゃく加工食品
(5)上記(a)のpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくは、pHが11~12の下味付きゲル化こんにゃくである、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のこんにゃく加工食品
(6)上記(a)のpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくは、形状が三角状、角状、糸状、丸状、粒状、摩砕状および板状よりなる群より選ばれる、上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のこんにゃく加工食品
(7)上記(a)のpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくは、色調が、海藻粉を使用しない白いこんにゃく、海藻粉で着色した黒色系こんにゃく、および油性の天然色素を練り込んだ着色したこんにゃくよりなる群より選ばれる、上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のこんにゃく加工食品
【発明の効果】
【0011】
本発明により、こんにゃくだからできる低カロリーの食品を、アク抜きする必要なく、嫌な臭いも無く、淡味の下味がついており調味料粉末またはペーストをまぶす(混ぜる)だけで脱アルカリと調味が時間をかけることなく提供することができる。こんにゃくに淡味の下味が付いている場合、粉末またはペースト調味料をまぶした時、浸透圧が合致しているため、浸透圧による離水が生じないか、生じてもわずかである。そのため、予めこんにゃくに淡味の下味をつけておくことにより、この淡味の下味付きこんにゃくに粉末またはペースト調味料をまぶすだけで、こんにゃく内の下味調味料成分に粉末またはペースト調味料成分がこんにゃく表面から一部浸透して、両成分の混和が起こり、こんにゃく内部全体が味付けされた味付きこんにゃくを短時間で創出するものである。
こんにゃくの調理が粉末あるいはペースト調味料をまぶすだけでできるため、簡単に手作り風の調味こんにゃくに仕上げることができ、かつ調味料粉末またはペーストがよくなじんで好みに応じた調味に自由に調整し得る簡単でおいしい調味こんにゃくを提供することができる。
また、既存の食材であるこんにゃくを画一化された食材の使い方ではなく、いろいろの態様で使用できる食材として提供することができる、また、簡単に手作り風の調味こんにゃくに仕上げることができ、かつ調味料がよくなじんで好みに応じた調味に自由に調整し得るこんにゃく調理食品を提供することができる。
さらにまた、好みに応じた調味に自由に調整し得るこんにゃく調理食品を離水などの問題がない安定した状態で提供することができる。本発明の下味調味料で淡味の味付けされたpH11以上の下味付きゲル化こんにゃく、ならびに、該ゲル化こんにゃくと脱アルカリするための粉末またはペースト調味料との組合せのこんにゃく加工食品は、形状にもよるが、数分間で、全体に味が付いたこんにゃくができる簡便さに特徴がある。
淡味下味付きこんにゃくの流通はpH11以上になるように調整して、充填包装されているので、常温が可能である点も特徴点である。pH11前後の強アルカリ液で浸漬包装され常温および低温流通で、3ヶ月以上の賞味期間を目標としている通常のこんにゃくと同様に、常温保存が可能である。
また、本発明は、こんにゃく本来の味を生かした歯ごたえを持ち、味のしみ込みもよい刺身こんにゃくを脱アルカリするための粉末またはペースト調味料の組合せで提供することができる。
さらにまた、本発明は電子レンジ加熱調理対応の淡味下味付きこんにゃくを脱アルカリするための粉末またはペースト調味料の組合せで提供することができる。容器内で淡味下味付きこんにゃくと粉末またはペースト調味料を混合したのち、レンジで1~5分間の加熱を行うと、急速に淡味下味付きこんにゃく内に粉末またはペースト調味料の調味成分が浸透して、しかも香味の優れた種々な味付きこんにゃくが得られる。また、組み合わせる粉末またはペースト調味料の工夫によって、多種の和え物、炒め物、煮物などを作ることができる。さらに、野菜、肉類の乾燥具材との組み合わせで、新しいこんにゃくメニューの開発が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1のこんにゃくを粉末で脱アルカリするテストにおいて、糸こんにゃくに脱アルカリ用粉末を加え、時間経過によるpH、温度、Brix、塩分を測定した結果を示した表と混ぜる前と混ぜた後の写真である。
図2】実施例2のこんにゃくに粉末調味料を合わせるテストにおいて、こんにゃくに各種の粉末調味料を加え、時間経過によるpH、塩分、Brixを測定した結果を示した表と混ぜる前と混ぜた後のこんにゃく加工食品の写真である。
図3】実施例3のこんにゃくを粉末で脱アルカリするテストにおいて、こんにゃくを摩砕したものを牛乳の代わりに使用して、カスタードをつくり、こんにゃくを摩砕したものに市販のカスタードミックスを加え、時間経過によるpH、塩分、Brixを測定した結果を示した表とカスタードの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、アルカリこんにゃくの脱アルカリ作用と調味付け作用をもった粉末またはペースト形態の調味料で調味するための、下味調味料で淡味の味付けされたpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくに係る。また、本発明は、pH11以上の下味付きゲル化こんにゃく、および脱アルカリするための調味料(アルカリこんにゃくの脱アルカリ作用と調味付け作用をもった調味料)の粉末またはペースト形態の調味料、の組合せを特徴とするこんにゃく加工食品に係る。
本発明のpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくは、(1)下味調味料入りのpH11以上のアルカリ水に浸漬された淡味の味付けされた状態ある通常のpH11以上のゲル化こんにゃく、または、こんにゃく粉と下味調味料とのこんにゃく糊を原料とするpH11以上のゲル化こんにゃくである。すなわち、(1)こんにゃく糊から通常の手法で製造された後、淡味に調味する調味料入りの調味液と混合して下味付けが行われる、あるいは、(2)予めこんにゃく糊に淡味に調味する調味料を練り込んでおくほかは、通常の手法で製造される。前記(1)、(2)のいずれでもよく、両方でもよい。いずれにせよ下味付きゲル化こんにゃくは、pH11以上になるように調整して、充填包装されているので、3ヶ月以上の賞味期間を目標としている通常のこんにゃくと同様に、常温での流通が可能である。また、pHが11~12のこんにゃくになっているため歯ごたえがよいのも通常のこんにゃくと同様である。
【0014】
本発明で用いる原料は通常のこんにゃく原料であり、こんにゃく芋、こんにゃく芋精粉を用いる。副原料は通常のこんにゃく副原料であり、水酸化カルシウムなどアルカリ凝固剤、着色料、調味料を用いる。
【0015】
通常のこんにゃくの作り方を説明すると、水または40~50℃程度の微温湯100リットルにこんにゃく粉2500gをかき混ぜながら少しずつ加える。そのまま15~30分かき混ぜ続けると、全体に粘りがでて糊状になる。これを1~2時間放置すると、マンナンが完全に膨潤して均質な糊状になる。これにアルカリ(水酸化カルシウムなど)を加え、素早くよくかき混ぜて型箱に入れ、40~50分放置するとかなり固まるので、これを所定の形に切り、別に予め沸騰させておいた湯の中に入れ、加熱凝固させる。これを冷水中に漬けておくと、こんにゃくから過剰のアルカリが溶出して、あく味がなくなる。
【0016】
市販こんにゃくの製法はこんにゃくイモまたはイモを乾燥、粉砕して得た精粉を原料として、主成分であるグルコマンナンがアルカリ、主として水酸化カルシウムによって、凝固する性質を利用して作られる。こんにゃくはこの時に使用したアルカリの残存が原因で、悪臭成分のトリメチルアミンを増幅し、苦味もあり、pHも高い。通常、こんにゃくはそのままの状態で調味される場合が多く、良質の調味こんにゃくは得られない。
【0017】
こんにゃく中に残存したアルカリは調味に際して、煮物、炒め物、和え物などの調味成分に反応して、香味を悪化させる作用をする。調味こんにゃくの製法はごく一部においてこんにゃく中のアルカリを熱湯で溶出、除去したのち、調味料で煮物や炒め物に調理される場合もある。しかし、熱湯での方法は長時間の処理においてもアルカリの除去は不十分である。しかも手作業で効率が悪いことから実施しない場合が多い。
【0018】
本発明者らは、こんにゃく中にアルカリが残存したpH11以上の状態でも、うま味成分として、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等と肉、魚、貝、野菜エキス等を用いて淡味の下味をつけると、粉末またはペースト調味料と混ぜるだけで、該調味料の香味を損なうことなく、こんにゃく中に浸透させ、高品質の調味こんにゃくとなることを見いだした。本発明の淡味の下味用の調味料は、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、肉エキス、魚エキス、貝エキス、および野菜エキスよりなる群より選ばれる2種以上の調味料からなる。上記2種以上の調味料が少なくともイノシン酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムを含む2種以上の調味料であることが好ましい。甘味成分と塩味成分を合わせるとよい。甘味成分はブドウ糖、砂糖、その他糖類とステビア加工品等、塩味成分は食塩を用いる。
こんにゃく糊から通常の手法で製造されたゲル化こんにゃくを用いる場合、保存液(水)に浸漬する際、その中に淡味の下味用の調味料を入れて保存すると、ゲル化こんにゃくには下味が付けられる。あるいは、予めこんにゃく糊に淡味に調味する調味料を練り込んでおき、通常の手法でゲル化こんにゃくを製造しても、下味調味料で淡味の味付けされたpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくが得られる。
【0019】
こんにゃく製造時の留意点は様々な調味料を使用するが、最終的にアルカリが不足してpHが11より小さくなると、製品化後に歯ごたえが軟化することである。また、有害微生物による腐敗の原因になる。こんにゃく芋粉中のマンナン成分は腸内で消化されにくい多糖類であり、アルカリを加えてゲル化(固化)させてpHが11~12のこんにゃくにすると歯ごたえはプリンプリン、コリコリなどと表現されるのが通常である。また、使用する調味料は有害微生物の栄養になりにくい成分であり、また強アルカリ、高温状態においても、分解、変質しないものを選出しなければならない。
【0020】
pH11以上になるように調整して、充填包装されるための調味液に含まれる、および/または、予めこんにゃく糊に練り込んでおく、調味料の添加量は、pH11以上のゲル化こんにゃくの淡味の味付けに必要な量とすることが望ましい。pH11以上の下味付きゲル化こんにゃくの流通はpH11以上になるように調整して、充填包装されているので、常温が可能である。pH11以上の下味付きゲル化こんにゃくそのものを粉末またはペースト調味料がしみ込みやすくするには、充填包装されるための調味液に含まれる、および/または、予めこんにゃく糊に練り込んでおく、うま味を呈する調味料、塩味を呈する調味料および甘味を呈する下味調味料の、各調味料を合わせて、淡味に調味する量を配合して、淡味の味付けをしておく。ここで淡味とは、通常の調味こんにゃくの味としては、不十分で他の味を追加して完成できる淡い味をいう。
【0021】
通常のこんにゃくの作り方において、こんにゃく粉の濃度は1.5%~4%であるが、目的とする既存の加工食品の物性などを考慮して澱粉、グルテン、卵白粉などが加えられ、また、食品の食感、味、色彩などを考慮して各種の添加剤が加えられる。整形したこんにゃくは、無着色のものあるいは着色したものである。無着色のものは、海藻粉を使用しない白いこんにゃく、海藻粉で着色した黒色系こんにゃくに大別される。着色したこんにゃくは調味液中には溶出しにくい油性の天然色素を練り込んだものである。例えば、こんにゃく内から水および調味液に溶出しない天然色素として黄色(カロチン)、赤色(パプリカ、トマト)、黒色(イカスミ)、青色(クチナシ)および/または緑色(マリーゴールド、クチナシ)を練り込んで種々に着色したこんにゃくである(特許文献8)
本発明で用いる原料は通常のこんにゃく原料であり、こんにゃく芋、こんにゃく芋精粉を用いる。副原料は通常のこんにゃく副原料であり、水酸化カルシウムなどアルカリ凝固剤、着色料、調味料を用いる。
【0022】
pH11以上の下味付きゲル化こんにゃくの製造方法の概略は以下の(イ)、(ロ)の通りである。
(イ)こんにゃく精粉3kgと海藻粉300gに水97リットルを加えてゆっくり撹拌した後、1.5時間放置した。次に、得られたこんにゃくのりに1.3%の水酸化カルシウム10リットルを撹拌しながら加え、缶枠内に流し80~90℃で一晩放置して黒いこんにゃくを得た。このこんにゃくのpHは11~12であり、さらに同じpHのアルカリ液に淡味に調味する調味料を添加した下味調味料入りアルカリ液で袋詰めされ、殺菌(80℃、1時間)して製品になる。
(ロ)こんにゃく粉3kgにイノシン酸ナトリウム40g、コハク酸ナトリウム100g、食塩1.0kg、ステビア20gを溶解した湯(40~50℃)100リットルを加え、ゆっくりと混合、撹拌して糊状とし、2時間放置後、こんにゃく糊に1.7%の水酸化カルシウム液10リットルを加えて、均一になるように練り、ゲル化させながら型箱に入れ、沸騰させた湯で、加熱凝固させた。その後、こんにゃくは、長方形(厚さ2cm、横3cm、縦6cm)に整形した。なお、黒色こんにゃくは上記の湯中に海藻粉を400g加えた。
【0023】
充填包装に用いる容器は食品包装に普通に使用される合成樹脂フィルム製の袋状のものが好ましいが、安全なものであれば特に限定されない。
【0024】
<pH11以上の下味付きゲル化こんにゃくを脱アルカリするための調味料、好ましくは粉末またはペースト調味料>
本発明の脱アルカリするための調味料(好ましくは粉末調味料、ペースト調味料)は、アルカリこんにゃくの脱アルカリ作用と調味付け作用をもった粉末またはペースト形態の調味料であり、pH11以上の下味付きゲル化こんにゃくにふりかけて必要に応じて和えて、ゲル化こんにゃくのアルカリを中和するのに必要な酸味を呈する、かつ、調味するための調味料である。
まず、粉末調味料を例に挙げて、調味の機能(調味付け作用)について説明する。
粉末調味料とは、1種以上の調味料成分を含有する。調味料成分は、例えば、発酵調味料(醤油、味噌、酢、酒等)、タンパク質分解物(アミノ酸類)、酵母エキス、塩、甘味料(ブドウ糖、庶糖等)、香辛料(コショウ、唐辛子等)、油脂類(植物油、動物油)、抽出エキス(畜産物、農産物、又は海産物由来)等である。
本発明においては、粉末調味料はpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくの脱アルカリと調味を併せて行うための調味料であるから、pH11以上の下味付きゲル化こんにゃくのアルカリを中和するのに必要な酸味と塩味を呈する調味料を基本組成とする、酸味と塩味の強度のバランス、均一性に優れた脱アルカリ用粉末調味料を用いる。目的のこんにゃく加工食品の種類によっては、塩味を甘味に代替した基本組成とすることができる。
【0025】
塩味を呈する調味料としては、食塩、醤油などを含有することができる。
食塩は、塩化ナトリウムを主な成分として食用に適するものであればいずれのものでもよい。例えば、岩塩、海水塩、天日塩等が挙げられ、それらの精製塩を用いてもよい。含有する全食塩のうち一部を造粒塩中に含有することができる。ここで、造粒とは、粉末、溶融液、溶液、スラリー等の原料を処理してほぼ均一な形状と大きさの粒子を作ることを言い、塩を他の原料と共に造粒したものを造粒塩という。用いる造粒塩には、さらに酸味料を含有する。造粒塩の製造方法としては、噴霧乾燥造粒、噴射乾燥造粒、打錠成形、転動造粒、押出造粒等の方法が挙げられるが、押出造粒によって得られた造粒塩は表面の凹凸が多く、他の原料とからみやすいため味の均一性の観点から好適である。
醤油は、各種の穀物を原料とする醤油に由来する、食塩以外の成分を指す。穀物を原料とする醤油とは、大豆、小麦、大麦、米などの穀物原料を用いて製造される醤油をいい、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、濃厚醤油、再仕込醤油、白醤油などが挙げられる。また、例えば、製造途中の醤油および生醤油が挙げられる。醤油は、代表的には、蛋白質含有原料として蒸煮大豆と炒熬割砕小麦を混和し、これに醤油用種麹菌を接種、培養して醤油麹を調製し、これに適当量の食塩水を加えて諸味を調製し、一定期間発酵、熟成させて熟成諸味を調製し、最後に圧搾、濾過、火入れ(殺菌)、清澄して製造される。乾燥粉末化して粉末調味料を得ることができる。乾燥粉末化する手段としては、公知の各種手段を採用することができ、例えば、スプレードライ法、ドラムドライ法およびフリーズドライ法等を挙げることができるが、中でもスプレードライ法が好ましい。スプレードライ法に用いられる装置としては、例えば、加圧ノズル式スプレードライヤー、二流体ノズル式スプレードライヤー、回転円盤(ディスクアトマイザー)式スプレードライヤーおよび噴霧乾燥・造粒兼用乾燥機などが挙げられる。具体的には、例えば、調味液が醤油である場合、通常の醤油の乾燥粉末化条件と変わるところはなく、好ましくは入口熱風温度120~200℃、出口温度80~100℃の条件にて粉末化する。得られた粉末調味料は、吸湿安定性も高く、保存中の固結が生じにくいものとなる。塩味を呈する調味料における食塩の含有量は、その望む任意の値をとることができる。
【0026】
<pH11以上の下味付きゲル化こんにゃくのアルカリを中和するのに必要な酸味を呈する調味料>
酸味を呈する調味料は、食用に適した酸味料であればいずれのものでもよいが、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、グルコン酸、粉末酢、リン酸、塩酸等の有機酸が挙げられる。酸味料の量は、10%水分散液としたときのpHが2.5以上5.0以下、好ましくはpHを3.0以上4.6以下とするとよい。なお、pHの測定方法は、水で粉末調味料の10%水分散液を作成し、常温にて1分間撹拌した状態の液のpHを測定したものであり、含まれる原材料によっては不溶成分が残っている状態であってもよい。
【0027】
<他の原料>
粉末調味料またはペースト調味料には、上述の成分以外の原料を、目的とする料理の種類に応じて適宜選択し、配合することができる。具体的には、例えば、砂糖、オリゴ糖、乳糖、デンプン、デキストリン、高甘味度甘味料、乾燥野菜、胡麻、果皮、海苔、香料、粉末油脂、バジル、オレガノ、ローズマリー、パセリ等の乾燥ハーブ、胡椒、ガーリック、ジンジャー等の香辛料等が挙げられる。また粉末調味料の固形状態を保持できる範囲で液状の香料や油脂を適宜少量添加してもよい。
粉末調味料を例に挙げると、具体的には、醤油を乾燥粉末化した粉末醤油、および植物性の各種蛋白質加水分解調味料の粉末を基本とするものが挙げられ、特に制限されない。粉末調味料は、添加物の添加によって、吸湿安定性を高めることができる。添加物とは、粉末調味料の固結防止のために使用されている一般的な添加剤であり、例えば、デキストリン、酸化澱粉および可溶性澱粉等の糖類が挙げられる。従来から粉化性および吸湿安定性が貧弱であり、保存中の固結が生じ易く、また添加物の使用により本来の呈味が得られにくい性質を有する粉末醤油に対して有効である。添加物を使用しない形態、特に粉末醤油の場合、添加物により醤油本来の呈味成分が希釈されることがないので、濃厚な呈味を有する粉末醤油が得られ、好ましい。
【0028】
粉末調味料の粉末の大きさは、例えば市販のサラダ用粉末調味のように、調味料全体を篩(JIS Z 8801に規定される篩)にかけたときに目開き1.4mmパス0.5mmオンの大きさである粉末画分が粉末調味料全体の60%以上であるとよく、さらに65%以上がより好ましい。粉末の大きさを前記範囲の比較的均一なサイズにすることによって、こんにゃくに和え易く、酸味と塩味の強度のバランス、均一性の本願発明の効果を有し易い。また、すでに市販されている粉末調味料として、そのほかにも粉末煮物用調味料、粉末米飯用調味料、粉末麺用調味料、粉末スナック調味料など多種類が挙げられるが、本発明においては、それらの既知の粉末調味料をアレンジして、存在感のある調味を味わうことができるこんにゃく用粉末調味料であって、中和に必要な酸味を有し、酸味と塩味の強度のバランス、均一性に優れたこれまでにあるこんにゃく料理、あるいはこれまでにない新しいこんにゃく料理の提案し、かつ、その味わい方や楽しみ方を提供する。
本発明の実施例においては、味日本株式会社の各種粉末調味料「粉末味付け調味料(和風)、粉末味付け調味料(アジアン風)、粉末味付け調味料(中華風)、粉末味付け調味料(韓国風)、うどんスープ、焼きそばソース、粉末味付け調味料(明太和え)、粉末味付け調味料(胡麻和え)、粉末味付け調味料(トマトソース)、エスビー食品株式会社の「料理用カレー」、株式会社永谷園の「冷え知らずさんの生姜野菜ポタージュ」などを用いたが、それらに限定されるものではない。
【0029】
<粉末調味料の製造方法>
本発明の粉末調味料の製造方法は、常法に則り製造すればよく、例えば、食塩と酸味料をデキストリン等の賦形剤と混合し造粒を行い、造粒塩を成形した後、他の粉末原料と均一に混合し製造することができる。真空凍結乾燥粉末化された、リンゴ,オレンジ,ベリー類等の果実およびパセリ、ネギ、キャベツ等の真空凍結乾燥粉末野菜と、粉末アーモンド、粉末香辛料と清酒や果実酒を酢酸発酵によって作られた醸造酢を粉末化した粉末醸造酢や粉末みそ、醤油、グルタミン酸等の調味料と粉末香料とを均等混合して包装製品化することができる。必要に応じて瓶やパウチ等の容器に充填してもよい。
以上、粉末形態の調味料で説明したが、ペースト形態の調味料も同様に用いることができる。いわゆる濃縮タイプの調味料であり、食用油脂を含むことが多いが、ほかは粉末油脂と組成は同様である。
塩分を含み下味付きこんにゃくと浸透圧が合致しているため、浸透圧による離水も生じないが、たとえわずかに生じてもマヨネーズがそうであるようにエマルジョンであるから、よくなじみ粉末形態の調味料と同様に用いることができる。例えば、鶏のだしをベースに、こがしニンニク油などの香味油と調味料を配合したペースト状の調味料「組成:食塩、食用油脂、香味油、ポークエキス、砂糖、チキンエキス、野菜エキス、香辛料、酵母エキス、酵母エキス発酵調味料/調味料(アミノ酸等)、乳化剤、香料、(一部に小麦・大豆・鶏肉・豚肉・ごまを含む)」などいろいろの調味料が市販されており、それらを使用することができる。
【0030】
〈下味調味料で淡味の味付けされたpH11~12のこんにゃく〉
下味付けとは、前もって調味した淡味をいう。通常の調味こんにゃくの味としては、不十分で他の味を追加して完成できる淡い味をいう。下味付けの調味液はこんにゃくの食塩が零から3%以下になるように調整した食塩量と有機酸、アミノ酸系調味料、糖などが主体である。
こんにゃく粉と、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、肉エキス、魚エキス、貝エキス、および野菜エキスよりなる群より選ばれ、少なくともイノシン酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムを含む2種以上の調味料からなるうま味を呈する調味料、塩味を呈する調味料および甘味を呈する調味料の各調味料を溶解した湯を混和撹拌してこんにゃく糊とし、水酸化カルシウムを加えて、ゲル化させ、pH11以上の常温流通の調味こんにゃくを得、それを脱アルカリすることなくそのアルカリが残存した状態でアルカリこんにゃくの脱アルカリ作用と調味付け作用をもった粉末またはペースト形態の調味料で調味する。
こんにゃくに調味料をまぶしたりするとこんにゃくから水がにじみ出ることで、従来のこんにゃくは食塩あるいは砂糖が0%で下味調味料で淡味の味付けされたpH11~12のこんにゃくは食塩あるいは砂糖が1%程度含む場合もあることで差がある。粉末またはペースト調味料は一般に1~2%の食塩を含んでおり、該ゲル化こんにゃくとの差がほとんどなく、浸透圧が合致しているため、浸透圧による離水も生じない。一方、従来のこんにゃくは食塩あるいは砂糖の影響により離水を生じる。
粉末またはペースト調味料による他の味を追加して完成した味にすることができる。調理に時間をかけずにこんにゃくをもっと簡単においしく食べる。こんにゃくだからできる低カロリーの食品を、アク抜きする必要なく、嫌な臭いも無く下味がついているので調理に時間をかけることなくおいしくたべることができる。
【0031】
〈下味調味料で淡味の味付けされたpH11以上の下味付きゲル化こんにゃく、およびアルカリこんにゃくの脱アルカリ作用と調味付け作用をもった粉末またはペースト形態の調味料の包装形態について〉
下味付きゲル化こんにゃくと粉末またはペースト形態の調味料の組合せは、別添した小袋詰めの粉末またはペースト調味料を液切した下味付きゲル化こんにゃくと食前に混合し、多様な食味を賞味することができる。食べる前に少し手を加えて食べることもできる。別添した小袋詰めの粉末またはペースト調味料は、本発明の下味付きゲル化こんにゃく下と組み合わせて使用でき、食前に混合して多様な食味を賞味するものであれば特に限定されない。
【0032】
以下、本発明について、実施例、及び試験例(コントロール)に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
(pH、塩分、Brixの測定方法)
こんにゃくをミルミキサー〔ミルミキサーMR-280(W) (株)山善製〕で30秒間粉砕し、ペースト状にしたものを、pHはpH計〔pHメータD-51 (株)堀場製作所製〕で測定、塩分は塩分計〔ポケット塩分計PAL-SALT (株)アタゴ製)で測定、Brixは糖度計〔デジタル糖度計IPR-201α アズワン(株)製〕で測定する。
【実施例1】
【0033】
〈こんにゃくを粉末で脱アルカリ〉
1.実験目的:粉体のみで脱アルカリが可能か、確認する。
2.実験内容
(1)脱アルカリに必要な資材を粉体に混合する。
以下の配合割合の混合物(粉体)を得る。
砂糖 3.55%、リンゴ酸 0.37%、リンゴ酸Na 0.12%、
乳酸Ca 0.08%、こんにゃく 95.88%
(2)糸こんにゃくと粉体を合わせる。
(3)イ)混ぜてすぐ、ロ)混ぜて10分間静置後、ハ)混ぜて10分間静置後のタイミングで、こんにゃくをミキサーで粉砕したもののpH、塩分、
Brixを測定する。
3.実験結果
測定結果を図1の表に示す。図1の表より、混ぜる前pHは11.26であったが、混ぜてすぐ3.79になっており、混ぜてすぐpHが下がったことが分かる。
【実施例2】
【0034】
〈こんにゃくに粉末調味料を合わせるテスト〉
1.実験目的:こんにゃくに粉末調味料を加え、時間経過によるpHの変化を確認する。
2.実験内容
(ア)こんにゃくを液切りする。
(イ)粉末調味料を混ぜ合わせる。
(ウ)イ)混ぜてすぐ、ロ)混ぜて10分間静置後、ハ)混ぜてすぐにレンジ加熱(600W、1分)のタイミングで、キッチンペーパーでこんにゃくについた余分な調味料を軽く除いてから、ミキサーで粉砕したもののpH、塩分、Brixを測定する。
1.実験に使用した原材料
[こんにゃく]
〈a〉実験番号1-9:下味付きアルカリ麺(マンナンヌードルAL 140g(1袋))
<原料> 精製したこんにゃく粉(精粉ともいう)、又は生こんにゃく粉〔(株)荻野商店製〕、TSイエロー・SEL2〔(株)タイショーテクノス製、色素〕、L-アスコルビン酸ナトリウム〔扶桑化学工業(株)輸入、酸化防止剤〕、水酸化カルシウム〔田中石灰工業(株)製、蒟蒻用凝固剤〕、食塩(ナイカイ塩業株式会社製)
5’-イノシン酸ナトリウム〔味の素(株)製〕、コハク酸二ナトリウム〔(株)日本触媒製〕、乳酸カルシウム〔(株)武蔵野化学研究所製〕
〈製法〉
(こんにゃく)こんにゃく粉20kgにL-アスコルビン酸ナトリウム1kg、TSイエロー・SEL2 3kgを溶解した水700リットルを加え、ゆっくりと混合、撹拌して糊状とし、2時間放置後、こんにゃく糊に2%の水酸化カルシウム液7リットルを加えて、均一になるように練り、ゲル化させながら糸状に成形し加熱凝固させた。
(調味液)食塩2%、5’-イノシン酸ナトリウム0.1%、乳酸カルシウム0.05%の水溶液になるように原料を調合し、撹拌溶解し、加熱して調味液を製造した。
(こんにゃく・調味液充填)こんにゃく180gと調味液120gを小袋に充填し包装した。
〈b〉実験番号10-12:下味付ききんぴらこんにゃく140g(1袋)
<原料> 精製したこんにゃく粉(精粉ともいう)、又は生こんにゃく粉〔(株)荻野商店製〕、水酸化カルシウム〔田中石灰工業(株)製、蒟蒻用凝固剤〕、食塩(ナイカイ塩業株式会社製)、5’-イノシン酸ナトリウム〔味の素(株)製〕、コハク酸二ナトリウム〔(株)日本触媒製〕、乳酸カルシウム〔(株)武蔵野化学研究所製〕
〈製法〉
(こんにゃく)こんにゃく粉20kgに水700リットルを加え、ゆっくりと混合、撹拌して糊状とし、2時間放置後、こんにゃく糊に2%の水酸化カルシウム液7リットルを加えて、均一になるように練り、ゲル化させながらきんぴら形状に成形し加熱凝固させた。
(調味液)食塩2%、5’-イノシン酸ナトリウム0.1%、乳酸カルシウム0.05%の水溶液になるように原料を調合し、撹拌溶解し、加熱して調味液を製造した。
(こんにゃく・調味液充填)こんにゃく180gと調味液120gを小袋に充填し包装した。
〈c〉実験番号13-14:下味付きマンナンタピオカ10mm(無色)140g)
<原料> 精製したこんにゃく粉(精粉ともいう)、又は生こんにゃく粉〔(株)荻野商店製〕、加工澱粉〔松谷化学工業(株)製〕、ゲル化剤〔田中石灰工業(株)製、蒟蒻用凝固剤〕、食塩(ナイカイ塩業株式会社製)、5’-イノシン酸ナトリウム〔味の素(株)製〕、コハク酸二ナトリウム〔(株)日本触媒製〕、乳酸カルシウム〔(株)武蔵野化学研究所製〕
〈製法〉
(こんにゃく)こんにゃく粉12kgに加工澱粉12kg、ゲル化剤0.1kg、水600リットルを加え、ゆっくりと混合、撹拌して糊状とし、2時間放置後、こんにゃく糊に2%の水酸化カルシウム液60リットルを加えて、均一になるように練り、ゲル化させながら粒状に成形し加熱凝固させた。
(調味液)食塩2%、5’-イノシン酸ナトリウム0.1%、コハク酸二ナトリウ0.05%、乳酸カルシウム0.05%の水溶液になるように原料を調合し、撹拌溶解し、加熱して調味液を製造した。
(こんにゃく・調味液充填)こんにゃく180gと調味液120gを小袋に充填し包装した。
【0035】
[粉末調味料]
下記の(1)~(14)の粉末調味料を用意した。
(1)粉末味付け調味料(和風)11.8g(1袋)、味日本(株)製
組成「砂糖、粉末しょうゆ、ビーフエキスパウダー、食塩、豚肉鶏肉加工品、わけぎ、白菜エキスパウダー、椎茸、デキストリン、乳糖、黒糖、鰹節粉末、たん白加水分解物、香味食用油脂/調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、セルロース、酸味料、甘味料(スクラロース)、炭酸Ca、微粒二酸化ケイ素、V.B1、酸化防止剤(V.E、ローズマリー抽出物)、香料、(一部に小麦・乳成分・卵・大豆・牛肉・豚肉・鶏肉・ゼラチンを含む)」
(2)粉末味付け調味料(アジアン風)11.9g(1袋)、味日本(株)製
組成「砂糖、魚醤パウダー、食塩、デキストリン、卵加工品(全卵粉末、植物油脂、還元でん粉分解物)、粉末しょうゆ、乳糖、えび、オイスターソースパウダー、にら、たん白加水分解物、レモンパウダー、赤唐辛子、香菜、食用植物油脂、ガーリックパウダー/調味料(アミノ酸等)、甘味料(甘草)、着色料(カラメル、紅麹、カロチン)、リン酸塩(Na)、微粒二酸化ケイ素、酸化防止剤(V.E)、香辛料抽出物、膨脹剤、(一部に小麦・乳成分・卵・えび・大豆を含む)」
(3)粉末味付け調味料(中華風)12.1g(1袋)、味日本株式会社製
組成「砂糖、粉末みそ、食塩、人参、ごま、ねぎ、ポークエキスパウダー、赤ピ-マン、鶏肉加工品、赤唐辛子、粉末しょうゆ、酵母エキスパウダー、香辛料、乳糖、オイスターソースパウダー、チキンエキスパウダー、ごま油/調味料(アミノ酸等)、増粘剤(加工デンプン、キサンタン)、着色料(カラメル、カロチノイド)、微粒二酸化ケイ素、酸味料、セルロース、甘味料(スクラロース)、酸化防止剤(V.E、ローズマリー抽出物)、炭酸Ca、加工デンプン、香辛料抽出物、(一部に小麦・乳成分・卵・大豆・ごま・鶏肉・豚肉を含む)」
(4)粉末味付け調味料(韓国風) 9.2g(1袋)、味日本(株)製
組成「粉末しょうゆ、食塩、ごま、デキストリン、人参、豚肉鶏肉加工品、ビーフエキスパウダー、椎茸、ガーリックパウダー、コチュジャン風味パウダ-、にら、オニオンエキスパウダー、乳糖、赤唐辛子、あさりエキスパウダー、酵母エキスパウダー、たん白加水分解物、ごま油、ペッパー/調味料(アミノ酸等)、酸味料、カラメル色素、甘味料(甘草、スクラロース)、セルロース、増粘剤(キサンタン)、酸化防止剤(V.E、ローズマリー抽出物)、香辛料抽出物、香料、(一部に乳成分・小麦・卵・大豆・ごま・牛肉・ゼラチン・豚肉・鶏肉を含む)」
(5)料理用カレー 5g、エスビー食品(株)製
組成「カレー粉、食塩、乳糖、砂糖、調味料(アミノ酸等)、増粘剤(グァーガム)
(6)グルソー5g
組成「グルタミン酸ナトリウム」
(7)冷え知らずさんの生姜野菜ポタージュ、(株)永谷園製
組成「ポテトパウダー、クリーミングパウダー(乳成分を含む)、デキストリン、食塩、でん粉、トマト、砂糖、酵母エキス、チキンエキス、オニオンエキス、ジンジャーパウダー、セロリエキス(小麦・大豆を含む)、チーズ、タンポポエキス、うきみ(パセリ)/糊料(キサンタン)、ピロリン酸第二鉄、香辛料、葉酸」
(8)うどんスープ 9g(1袋)、味日本(株)製
組成「食塩、糖類(ぶどう糖、砂糖)、魚介エキス、粉末醤油、蛋白加水分解物、みりん、椎茸エキス、ねぎエキス、調味料(アミノ酸等)、香料、甘味料(甘草)、カラメル色素、(原材料の一部に小麦を含む)」
(9)焼きそばスープ 10g(1袋)、味日本(株)製
組成「砂糖、食塩、粉末ソース、小麦粉、オニオンパウダー、粉末しょうゆ、香辛料、食用動植物油脂、ビーフパウダー、調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、酸味料、甘味料(甘草)、香辛料抽出物、(原材料の一部に乳成分を含む)」
(10)粉末味付け調味料(明太和え)7.2g(1袋)、味日本(株)製
組成「乾燥たらこ(国内製造)、砂糖、食塩、デキストリン、粉末しょうゆ、鰹節粉末、香辛料、たん白加水分解物、魚醤パウダー、パセリ、乳糖/調味料(アミノ酸等)、増粘剤(加工デンプン、キサンタン)、着色料(パプリカ粉末、紅麹)、香料、酸化防止剤(V.E)、(一部に乳成分・小麦・大豆・さけ・ゼラチンを含む)」
(11)粉末味付け調味料(胡麻和え)9.0g(1袋)、味日本(株)製
組成「すりごま(国内製造)、粉末みそ、食塩、砂糖、粉末しょうゆ、ごま、人参、鰹エキスパウダー、ねぎ、酵母エキスパウダー、鰹節粉末、乳糖、ごま油/調味料(アミノ酸等)、増粘剤(加工デンプン、キサンタン)、甘味料(甘草、スクラロース)、膨脹剤、微粒二酸化ケイ素、カラメル色素、酸化防止剤(V.E)、(一部に乳成分・小麦・大豆・ごま・魚醤(魚介類)を含む)」
(12)粉末味付け調味料(トマトソース)5.4g(1袋)、味日本(株)製
組成「ポテトパウダー、クリーミングパウダー(乳成分を含む)、デキストリン、食塩、でん粉、トマト、砂糖、酵母エキス、チキンエキス、オニオンエキス、ジンジャーパウダー、セロリエキス(小麦・大豆を含む)、チーズ、タンポポエキス、うきみ(パセリ)/糊料(キサンタン)、ピロリン酸第二鉄、香辛料、葉酸」
(13)粉末味付け調味料(韓国風) 9.2g(1袋)、味日本(株)製
組成「上記(4)と同じ。」
(14)料理用カレー 5g、エスビー食品(株)製
組成「上記(5)と同じ。」
【0036】
1.実験結果
結果を示す図2の表には、粉末調味料(1)ないし(14)を混ぜてすぐ、混ぜて10分間静置後、混ぜてすぐにレンジ加熱(600W、1分)の、キッチンペーパーでこんにゃくについた余分な調味料を軽く除いてから、ミキサーで粉砕したもののpH、塩分、Brixを測定した結果が示されている。
図2の表から明らかなように、粉末調味料を混ぜてすぐに、pHは中性に向かって低下していた。そして、時間の経過とともにpHの低下は進んだ。加熱すると、pHの低下は早くなった。粒こんにゃくでも麺でも、形状や表面積の違いにかかわらず、同様にできた。粉末調味料を混ぜると、こんにゃくは離水する。(うどんスープを混ぜたものは、離水により丁度ぶっかけうどんのような液量になり、あじもよかった。)
【実施例3】
【0037】
〈こんにゃくを粉末で脱アルカリ〉
1.実験目的:こんにゃくを摩砕したものを牛乳の代わりに使用して、カスタードをつくる。
2.実験内容
[実験に使用した原材料]
〈摩砕こんにゃく〉特許文献7の長時間加熱することなくおでんこんにゃくに味をしみ込ませる方法における塩を砂糖に変えたもの。
組成「こんにゃく精粉(国産)、砂糖/水酸化カルシウム(蒟蒻用凝固剤)、イノシン酸Na、乳酸Ca、コハク酸二Na」
〈摩砕こんにゃくの製法〉
(こんにゃく)こんにゃく粉20kgに水700リットルを加え、ゆっくりと混合、撹拌して糊状とし、2時間放置後、こんにゃく糊に2%の水酸化カルシウム液7リットルを加えて、均一になるように練り、ゲル化させながら糸状に成形し加熱凝固させた。
(調味液)上白糖2%、5’-イノシン酸ナトリウム0.1%、乳酸カルシウム0.05%の水溶液になるように原料を調合し、撹拌溶解し、加熱して調味液を製造した。
(こんにゃく・調味液充填)こんにゃく180gと調味液120gを小袋に充填した。
(こんにゃくの摩砕)液切をしたこんにゃくを摩砕して用いる。
〈市販のカスタードミックス〉
組成「ぶどう糖、乳等を主要原料とする食品、植物油脂、砂糖、粉末水飴、コーンシロップ、食塩/加工でん粉、カゼインナトリウム、リン酸K、着色料(カロチノイド)、乳化剤、香料、増粘剤(キサンタンガム)、(一部に乳成分・大豆を含む)」
[実験の手順]
(1)保存液に砂糖・イノシン酸・コハク酸・乳酸カルシウムを配合した糸こんにゃくを作製する。
(2)上記(1)をミルミキサーで摩砕する。
(3)牛乳の代わりに上記(2)を、市販の粉末カスタードミックスと混合する。
[実験の結果]
(1)粉末を混ぜると、こんにゃくのpHはアルカリ(11.14)→中性領域(8.21)に下がった。
(2)市販のカスタードミックスを使用しても、牛乳で作ったものと遜色のない味・物性ができた。牛乳よりも摩砕こんにゃくの方がカロリーが低いため、粉末を調整すれば、低カロリーカスタードを作製可能。
(3)カスタードだけではなく、あんこ・ジャム・チョコなどのフィリングにも応用可能である。
10人のパネラーによる評価をまとめたものを図3に示す。
評価 ○→美味しい △→普通 ×→美味しくない
【産業上の利用可能性】
【0038】
通常のこんにゃくと同様に、常温保存が可能である下味調味料で淡味の味付けされたpH11以上の下味付きゲル化こんにゃくを市場に流通させることで、おいしいけれど不便な食材であるとされた「こんにゃく」は、アク抜きする必要なく、嫌な臭いも無く、淡味の下味がついており調味料粉末またはペーストをまぶす(混ぜる)だけで脱アルカリと調味が時間をかけることなく、こんにゃくだからできる低カロリーの食品を提供することができることとなった。こんにゃく売り場に素材としての販売において、こんにゃくの食材形態が変化することが期待される。

図1
図2
図3