(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】基礎型枠、基礎型枠連結構造および基礎施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20240926BHJP
E04B 2/86 20060101ALI20240926BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20240926BHJP
E04B 1/68 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E02D27/01 D
E04B2/86 611J
E04B2/86 611L
E04B2/86 601L
E04B2/86 601D
E04B1/76 500E
E04B1/68 A
(21)【出願番号】P 2020135447
(22)【出願日】2020-08-08
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019148200
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221982
【氏名又は名称】東北資材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】藤原 則夫
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-186328(JP,A)
【文献】特開平11-029993(JP,A)
【文献】特開2015-021375(JP,A)
【文献】特開2019-044336(JP,A)
【文献】特開2001-032421(JP,A)
【文献】実開平07-011612(JP,U)
【文献】実開昭60-022608(JP,U)
【文献】特開平10-018485(JP,A)
【文献】特開平11-100852(JP,A)
【文献】特開2016-148149(JP,A)
【文献】登録実用新案第3125802(JP,U)
【文献】実開平05-064313(JP,U)
【文献】特開平03-202528(JP,A)
【文献】特開2001-200088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E04B 2/86
E04B 1/76
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の発泡樹脂成形体の少なくとも一方の表面に面材が貼着されており、前記発泡樹脂成形体の厚み方向に前記面材とともに開孔された貫通孔が、前記発泡樹脂成形体の長手方向の同一高さに複数設けられている型枠板を備え、
該型枠板を一対と、
該型枠板同士の間隔を一定に保つためのセパレーターと、
前記型枠板と前記セパレーターとを連結固定するための押さえ金物と、
を有し、
前記セパレーターは、棒状のシャフト部材と、該シャフト部材の両端部近傍に板状のストッパー部材が一体に設けられており、該ストッパー部材と、前記シャフト部材の両端との間には、オスのネジ山が形成されており、
前記押さえ金物は、板状の基部と、該基部の略中心より垂直に立設されたねじ部を備え、
前記面材が貼着されていない面が対向するように一定間隔をあけて平行配置される一対の前記型枠板の貫通孔に、前記面材が貼着されていない面から前記セパレーターの両端に螺合された挿入部材が挿通され、前記面材が貼着された面から前記押さえ金物の基部が前記面材の表面に密着するまでねじ部が挿通され、前記ストッパー部材が前記型枠板の前記発泡樹脂成形体と当接するまで前記挿入部材が挿通され、該挿入部材と前記ねじ部とが螺合により締結され、前記型枠板と前記セパレーターと、前記押さえ金物とが連結されていることを特徴とする基礎型枠。
【請求項2】
請求項1に記載の構成に加えて、一対の対向する立設面部と、底面部とを備え、該底面部より前記立設面部の各々と対向するよう立設された少なくとも一対の立ち上がり片を備える、前記型枠板の倒伏を防ぐための固定金物を有し、該固定金物は、一対の前記型枠板の底面部に設置されて、前記立設面部と前記立ち上がり片との間に前記型枠板を挟持することを特徴とする基礎型枠。
【請求項3】
平行配置された一対の前記型枠板の間隔が120mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基礎型枠。
【請求項4】
前記挿入部材の長さが前記型枠板の厚みを超えないことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の基礎型枠。
【請求項5】
前記型枠板における前記面材の表面に微細な凹凸構造が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の基礎型枠。
【請求項6】
前記凹凸構造が、前記面材と複合化された不織布により形成されていることを特徴とする請求項5に記載の基礎型枠。
【請求項7】
前記発泡樹脂成形体に機能性薬剤の被膜が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の基礎型枠。
【請求項8】
前記発泡樹脂成形体の厚みが20~200mmであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の基礎型枠。
【請求項9】
隣り合う請求項1から8のいずれか一項に記載の2以上の基礎型枠と、
平板状の板部と、該板部の上端部がその長手方向の全長にわたって折り返された折り返し片と、前記板部の下端部から上端部方向に向けて徐々に開口幅が狭くなる切り欠き部とを有し、前記基礎型枠同士を相互に連結するための開き止め部材と、
2以上の前記基礎型枠の型枠板側端面の当接部分を上方より固定可能な断面略コの字状
のジョイント部材と、
前記型枠板の側端面に形成されたスリットに挿入可能な継ぎ目用止水板と、
を有し、
2以上の前記基礎型枠が、その長手方向の端部において当接され、直列に連結しており、隣り合う基礎型枠の端部近傍に螺合された前記押さえ金物のねじ部が、前記切り欠き部に挿嵌されるように開き止め部材が装着され、前記型枠板の側端面に形成されたスリットに前記継ぎ目用止水板が挿入され、前記型枠板の当接部分が前記ジョイント部材を用いて上方より嵌着固定されていることを特徴とする基礎型枠連結構造。
【請求項10】
請求項9に記載の構成に加えて、
略棒状の本体部と、貫通孔を備えた締め付け金物と、ナットと、
を有する型枠緊結金具を備え、
前記本体部が、前記型枠板の前記面材が貼着された面から挿通され、前記本体部の一端が前記面材が貼着されていない面から挿通された前記押さえ金物によって固定されており、前記本体部の他端側には前記貫通孔を解して締め付け金物が取り付けられており、
前記締め付け金物と前記型枠板との間に該型枠板の長尺方向に配設された横桟または単管が挟持され、
前記ナットは、前記本体部の他端側から螺合しており、前記締め付け金物によって、前記横桟または単管が固定されていることを特徴とする基礎型枠連結構造。
【請求項11】
請求項9または10に記載の構成に加えて、
前記セパレーターと、前記押さえ金物と、基礎の角部に対応する位置に、一対の略L字形または略逆L字型の型枠板と、
を有する角部基礎型枠を備え、
該角部基礎型枠の両端部と前記基礎型枠の端部とを連結してなることを特徴とする基礎型枠連結構造。
【請求項12】
少なくとも以下の工程を含むことを特徴とする
請求項11に記載の基礎型枠連結構造を用いた基礎施工方法。
<1>地面に外周基礎部、内部地中梁およびピット部に当たる溝を掘り、該溝内に砕石を敷設して突き固め、捨てコンクリートを打設する工程;
<2>該捨てコンクリートの表面に、縦筋、横筋またはあらかじめフレーム状に組み立てられた鉄筋を配筋し、該鉄筋と前記セパレーターとが干渉しないよう、基礎の角部および直線部分に対応する前記角部基礎型枠と前記基礎型枠とを当接させて設置する工程;
<3>隣り合う前記基礎型枠の端部近傍に螺合された前記押さえ金物のねじ部が、前記切り欠き部に挿嵌されるように開き止め部材を装着し、前記型枠板の側端面に形成されたスリットに前記継ぎ目止水板を挿入し、前記型枠板の当接部分を前記ジョイント部材を用いて上方より嵌着固定する工程;
<4>工程<1>から<3>において連結、構築した基礎型枠連結構造内にコンクリートを打設し、隣接する基礎型枠の対向する型枠板間に連続的にコンクリートを充填し、該コンクリートを硬化させて前記基礎型枠と一体化する工程。
【請求項13】
前記工程<4>に続いて、前記基礎型枠の屋外側に面する前記面材に、モルタルの塗布、仕上げ塗料の塗布および仕上げシートの貼付からなる群より選択される少なくとも一種の処理を行うことを特徴とする請求項12に記載の基礎施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅建築用および大型建造物の建設用の基礎を施工するための型枠板、これを用いた基礎型枠、基礎型枠連結構造および基礎施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般住宅および商業施設などの大型建造物の基礎を施工する際には、地面を掘削して溝を掘り、この溝内に砂利を敷設した状態で捨てコンクリートを打設した後、該捨てコンクリート上に所定のパターンで鉄筋を配筋し、単管およびクランプを用いて鉄筋を囲むように型枠板を支持、固定して基礎型枠を形成し、該基礎型枠内にコンクリートを打設する施工方法が広く採用されている。上記の型枠板としては、一般的に、木製あるいは鋼鉄製のものが使用されているが、木製の型枠板は使用後に除去、廃棄処分されるので、資源の有効利用の面で改善の余地が残されている。一方、鋼鉄製の型枠板は重量物であるため、近年高齢化や女性の増加が進む建築・建設作業現場において、現場作業員の肉体的負担の軽減が求められている。
【0003】
ところで、寒冷地においては、建物の断熱性の向上を目的として、従来の住宅の外壁と内壁の間に断熱材を配置する壁断熱に加えて、建物の基礎部分に断熱材を貼り付けるなどして屋外や地面からの冷気を遮断するとともに屋内からの熱の損失を抑える基礎断熱と呼ばれる施工法が採用されている。基礎断熱を施す場合には、前記型枠板を基礎表面から除去した後に、発泡樹脂製の断熱材を別途貼り付けていた。そのため、作業工程が煩雑なものとなり、作業コストが増大するという問題があった。
【0004】
そこで、最近では、捨てコンクリート上に発泡樹脂成形体からなる型枠ブロックを設置し、該型枠ブロックの型枠部分にコンクリートを打設してコンクリートが硬化した後、型枠ブロックを除去することなく基礎に埋め込み、型枠ブロックそのものを基礎用の断熱材として使用する施工方法が提案され、実用化されている。このような型枠ブロックとして、本発明者らは、一定間隔をあけて平行配置される1対の発泡樹脂成形体からなる型枠板と、両型枠板を連結する1または2以上のセパレーターとが、該セパレーターの両端部が型枠板内部に包埋するように一体成型されてなる一体式基礎型枠を提案している(特許文献1)。この一体式基礎型枠では、型枠板の長手方向の一方の側端面には位置決め用の凸部と、他方の側端面には隣接する型枠板の位置決め用の凸部に嵌合する凹部を備え、一体式基礎型枠が前記位置決め用の凹凸部において水平方向に直列に連結可能とされている。このような構成を備えていることにより、特許文献1に記載の一体式基礎型枠は、施工現場において基礎型枠の組立作業に必要とされる労力を省くことができ、軽量で取り扱いが容易でありながら、十分な強度を備え、基礎断熱に寄与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の一体式基礎型枠は、従来の発泡樹脂成形体製の基礎型枠における連結部分のつなぎ目の構造的な強度について、改善の余地が残されていた。また、近年、作業の省力化を目的として、鉄筋の横筋および縦筋を工場においてあらかじめフレーム状に組立てたものを住宅建築現場などに搬入し、建て込む工法が主流になりつつあるが、特許文献1に記載の基礎型枠ブロックでは、型枠板とスペーサーとがあらかじめ一体成形されているので、スペーサーと鉄筋の縦筋とが干渉してしまうことがあった。そのため、基礎の設計上の自由度の向上をはじめ、さらなる改良が求められている。
【0007】
本発明者らは上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、発泡樹脂成形体を主材とする型枠板について、異なる性質の材料を複合させることにより、1)型枠板自体の強度を向上させ、2)型枠板の防水性を向上させて水濡れによる断熱性の低下を抑制し、3)型枠板に配合した防蟻剤や難燃剤等の機能性薬剤が水濡れにより流失するのを防ぐことを可能とした。また、基礎の割付図面に基づき、工場での製造段階から鉄筋の配筋位置と干渉しないように設計された、発泡樹脂成形体を主材とするオーダーメイドの基礎型枠を提供することを可能とした。さらに、施工現場で組み立てる方式の基礎型枠でありながら、型枠板の構造を改良するとともに、特殊な形状の金属製セパレーターと該セパレーターの固定金具を新規開発することにより、基礎型枠同士の連結部分のつなぎ目の構造強度を飛躍的に向上させることに成功した。
【0008】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、施工現場での二次加工の必要がなく、軽量で取り扱いが容易でありながら、十分な強度を備え、しかも防蟻剤や難燃剤等の機能性薬剤の保持性能が良好であり、断熱性能の低下が抑制された基礎断熱に寄与する型枠板を提供することを課題としている。また、本発明は、この型枠板を用いた、組み立てが容易でありながら型枠内に打設したコンクリートの圧力に耐え得る強固な構造の基礎型枠、基礎型枠連結構造を提供することを課題としている。さらにまた、本発明は、前記のとおり型枠板、これを用いた基礎型枠、基礎型枠連結構造を用いた基礎施工方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の型枠板は、以下のことを特徴として、かつ、好ましい形態としている。
(1)板状の発泡樹脂成形体の少なくとも一方の表面に面材が貼着されており、前記発泡樹脂成形体の厚み方向に前記面材とともに開孔された貫通孔が、前記発泡樹脂成形体の長手方向の同一高さに複数設けられていることを特徴とする。
(2)前記面材の表面に微細な凹凸構造が設けられていることを特徴とする(1)に記載の型枠板。
(3)前記凹凸構造が、防水前記面材と複合化された不織布により形成されていることを特徴とする(2)に記載の型枠板。
(4)前記発泡樹脂成形体に機能性薬剤の被膜が形成されていることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の型枠板。
(5)前記発泡樹脂成形体の厚みが20~200mmであることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の型枠板。
【0010】
また、本発明の型枠板を用いた基礎型枠は、以下のことを特徴として、かつ、好ましい形態としている。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の型枠板を一対と、
棒状のシャフト部材と、該シャフト部材の両端に螺合により着脱自在とされた一対の挿入部材を備えるセパレーターと、
板状の基部と、該基部の略中心よりねじ部が垂直に立設された押さえ金物と、
を有し、
前記面材が貼着されていない面が対向するように一定間隔をあけて平行配置される一対の前記型枠板の貫通孔に、前記面材が貼着されていない面から前記セパレーターの両端に螺合された挿入部材が挿通され、前記面材が貼着された面から前記押さえ金物のねじ部が挿通され、前記挿入部材と螺合により締結され、前記型枠板と前記セパレーターと、前記押さえ金物とが連結されていることを特徴とする。
(7)(6)に記載の構成に加えて、一対の対向する立設面部と、底面部とを備え、該底面部より前記立設面部の各々と対向するよう立設された少なくとも一対の立ち上がり片を備える、前記型枠板の倒伏を防ぐための固定金物を有し、該固定金物は、一対の前記型枠板の底面部に設置されて、前記立設面部と前記立ち上がり片との間に前記型枠板を挟持することを特徴とする。
(8)平行配置された一対の前記型枠板の間隔が120mm以上であることを特徴とする(6)または(7)に記載の基礎型枠。
(9)前記挿入部材の長さが前記型枠板の厚みを超えないことを特徴とする(6)から(8)のいずれかに記載の基礎型枠。
【0011】
さらにまた、本発明の型枠板を用いた基礎型枠連結構造は、以下のことを特徴として、かつ、好ましい形態としている。
(10)隣り合う(6)から(9)のいずれかに記載の2以上の基礎型枠と、
平板状の板部と、該板部の上端部がその長手方向の全長にわたって折り返された折り返し片と、前記板部の下端部から上端部方向に向けて徐々に開口幅が狭くなる切り欠き部とを有し、前記基礎型枠同士を相互に連結するための開き止め部材と、
2以上の前記基礎型枠の型枠板側端面の当接部分を上方より固定可能な断面略コの字状のジョイント部材と、
前記型枠板の側端面に形成されたスリットに挿入可能な継ぎ目用止水板と、
を有し、
隣り合う2以上の前記基礎型枠が、その長手方向の端部において当接され、直列に連結しており、隣り合う基礎型枠の端部近傍に螺合された前記押さえ金物のねじ部が、前記切り欠き部に挿嵌されるように開き止め部材が装着され、前記型枠板の側端面に形成されたスリットに前記継ぎ目止水板が挿入され、前記型枠板の当接部分が前記ジョイント部材を用いて上方より嵌着固定されていることを特徴とする。
(11)(10)に記載の構成に加えて、
貫通孔を備えた締め付け金物と、ナットと、
を有する型枠緊結金具を備え、
前記本体部が、前記型枠板の前記面材が貼着された面から挿通され、前記本体部の一端が前記面材が貼着されていない面から挿通された前記押さえ金物によって固定されており、前記本体部の他端側には前記貫通孔を解して締め付け金物が取り付けられており、
前記締め付け金物と前記型枠板との間に該型枠板の長尺方向に配設された横桟または単管が挟持され、
前記ナットは、前記本体部の他端側から螺合しており、前記締め付け金物によって、前記横桟または単管が固定されていることを特徴とする基礎型枠連結構造。
(12)(10)または(11)に記載の構成に加えて、
前記セパレーターと、前記押さえ金物と、基礎の角部に対応する位置に、一対の略L字形または略逆L字型の型枠板と、
を有する角部基礎型枠を備え、
該角部基礎型枠の両端部と前記基礎型枠の端部とを連結してなることを特徴とする基礎型枠連結構造。
【0012】
また、本発明の基礎施工方法は、以下のことを特徴として、かつ、好ましい形態としている。
(13)少なくとも以下の工程を含むことを特徴とする(10)から(12)のいずれかに記載の基礎型枠連結構造を用いた基礎施工方法。
【0013】
<1>地面に外周基礎部、内部地中梁およびピット部に当たる溝を掘り、該溝内に砕石を敷設して突き固め、捨てコンクリートを打設する工程;
<2>該捨てコンクリートの表面に、縦筋、横筋またはあらかじめフレーム状に組み立てられた鉄筋を配筋し、該鉄筋と前記セパレーターとが干渉しないよう、基礎の角部および直線部分に対応する前記角部基礎型枠と前記基礎型枠とを当接させて設置する工程; <3>隣り合う前記基礎型枠の端部近傍に螺合された前記押さえ金物のねじ部が、前記切り欠き部に挿嵌されるように開き止め部材を装着し、前記型枠板の側端面に形成されたスリットに前記継ぎ目止水板を挿入し、前記型枠板の当接部分を前記ジョイント部材を用いて上方より嵌着固定する工程;
<4>工程<1>から<3>において連結、構築した基礎型枠連結構造内にコンクリートを打設し、隣接する基礎型枠の対向する型枠板間に連続的にコンクリートを充填し、該コンクリートを硬化させて前記基礎型枠と一体化する工程。
(14)前記工程<4>に続いて、前記基礎型枠の屋外側に面する前記面材に、モルタルの塗布、仕上げ塗料の塗布および仕上げシートの貼付からなる群より選択される少なくとも一種の処理を行うことを特徴とする(13)に記載の基礎施工方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の型枠板によれば、施工現場での二次加工の必要がなく、軽量で取り扱いが容易でありながら、十分な強度を備え、しかも防蟻剤や難燃剤等の機能性薬剤の保持性能が良好であり、断熱性能の低下が抑制された基礎断熱に寄与する型枠板が実現される。また、この型枠板を用いた本発明の基礎型枠、基礎型枠連結構造によれば、組み立てが容易でありながら型枠内に打設したコンクリートの圧力に耐え得る強固な構造の基礎型枠、基礎型枠連結構造が実現される。さらにまた、本発明の基礎施工方法によれば、前記のとおり型枠板、これを用いた基礎型枠、基礎型枠連結構造を用いた基礎施工方法を用いることにより、防蟻性や難燃性等の機能性の低下および断熱性能の低下が抑制され、長期にわたり優れた性能を発揮する基礎を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)は、本発明の型枠板の一実施形態を示す斜視図である。(B)は、(A)の右側面図である。
【
図2】基礎型枠連結構造の角部を構成する略L字型の型枠板の平面図である。(A)は、上から見て略L字になるLタイプの型枠板を模式的に示した平面図である。(B)は、(A)のLタイプとは対称的な略逆L字形状のRタイプの型枠板を模式的に示した平面図である。
【
図3】本発明の型枠板を用いた基礎型枠の一実施形態を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の型枠板を用いた基礎型枠を組み立てた状態を模式的に示す側面図である。
【
図5】(A)は、本発明の基礎型枠におけるセパレーターの一実施形態を示す概略斜視図である。(B)は、(A)のA-A’断面図である。
【
図6】(A)は、本発明の基礎型枠における押さえ金物の一実施形態を示す正面図である。(B)は、(A)の底面図である。
【
図7】本発明の基礎型枠における固定金物の一実施形態を示す斜視図である。
【
図8】(A)は、
図7の平面図である。(B)は、
図7のB-B’断面図である。(C)は、固定金物の他の実施形態を示す平面図である。
【
図9】
図7、
図8の固定金物を併用した本発明の基礎型枠の一実施形態を模式的に示した断面図である。
【
図10】(A)は、本発明の基礎型枠における桟木固定金具の一実施形態を示す断面図である。(B)は、(A)の桟木固定金具を用いた本発明の基礎型枠構造において、縦桟および横桟を配設した態様を模式的に示した平面図である。
【
図11】本発明の基礎型枠における型枠緊結金具の一実施形態を示す概略斜視図である。
【
図12】本発明の基礎型枠連結構造を模式的に示す斜視図である。
【
図13】(A)は、本発明の基礎型枠連結構造における開き止め部材の一実施形態を示す正面図である。(B)は、(A)の左側面図である。
【
図14】本発明の基礎型枠連結構造において、開き止め部材嵌着時に基礎型枠および押さえ部材にかかる力の向きを示した正面模式図である。
【
図15】本発明の基礎型枠連結構造におけるジョイント部材の一実施形態を示す斜視図である。
【
図16】本発明の基礎型枠を用いた布基礎の施工における、砕石敷設および捨てコンクリート打設工程の一実施形態を示す断面図である。
【
図17】(A)は、本発明の基礎型枠を用いた布基礎の施工における鉄筋の配筋工程の一実施形態を示す斜視図である。(B)は、(A)の側面図である。
【
図18】本発明の基礎型枠を用いた布基礎の施工における基礎型枠連結構造の設置工程の一実施形態を示す斜視図である。
【
図19】本発明の基礎型枠を用いたベタ基礎の施工における基礎型枠の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図20】(A)は、本発明の基礎型枠及び基礎型枠連結構造における高さ調整部材の一実施形態を示す正面図である。(B)は高さ調整部材の底板の底面図である。
【
図21】本発明の基礎型枠を用いた土間床の施工における基礎型枠の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面に基づいてさらに詳しく説明する。
【0017】
本発明の型枠板1は、例えば、
図1(A)(B)に示したように、板状の発泡樹脂成形体2の少なくとも一方の表面に面材3が貼着されており、発泡樹脂成形体2の厚み方向に面材3とともに開孔された貫通孔4が、発泡樹脂成形体2の長手方向に同一高さとなるように複数設けられている。
【0018】
面材3とは、発泡樹脂成形体2の少なくとも一方の表面の全面を覆うものであり、かつ発泡樹脂成形体2に貼着された密着されるものである。面材3は、硬質であってもよいし、軟質であってもよい。このような面材3は、防水性を具備していることが好ましく、これにより、発泡樹脂成形体2の強度、特に面強度を向上させることができるとともに、発泡樹脂成形体2の防水性の向上や、防蟻性や難燃性などの機能性の低下を抑制することができる。加えて、面材3を発泡樹脂成形体2の両面に貼着させることにより、面材3を片面のみに貼着させた場合より発泡樹脂成形体2の厚みを抑えても、同等の防水性、防蟻性や難燃性などの機能性を発揮するため、型枠板1の厚みを薄くすることができる。
【0019】
型枠体1は、発泡樹脂成形体2の表面に面材3が貼着されていることにより、1)型枠板自体の強度、特に面強度を向上させることができ、2)型枠板の防水性を向上させて水濡れによる断熱性の低下を抑制することができ、しかも、3)後記のとおり、型枠板に配合した防蟻剤や難燃剤等の機能性薬剤が水濡れにより流失するのを防ぐことができる。
【0020】
面材としては、例えば、ベニヤ板などの木質板、石膏ボードなどの無機系板材、不織布や樹脂フィルム等を主材とする仕上げシート、防水シート、撥水性塗料等の塗膜等が例示される。中でも、型枠板の防水性を向上させる観点から、面材として防水シートを特に好適に使用することができる。
【0021】
防水シートの材質については、所期の防水性を備えている限り特に限定されることはなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニルなどの樹脂や、ブチル系ゴムなどのゴム製のフィルムなどが例示される。
【0022】
発泡樹脂成形体2への面材3の貼着は、後記の機能性薬剤の効果を妨げない限り特に限定されることはなく、例えば、同時成形や、コールドプレス成形による貼着、ウレタン系接着剤やエポキシ系接着剤などの接着剤を用いた貼着等の方法が例示される。中でも、コールドプレス成形による貼着が好ましく考慮される。
【0023】
また、面材3の表面には、微細な凹凸構造が設けられていることが好ましく考慮される。型枠板1の建物の外壁面側の表面に、このような微細な凹凸構造を有する面材3が貼着されていると、仕上げとしてのモルタルや基礎保護材等の塗布時にモルタルや基礎保護材等の食いつきが良好となる。
【0024】
このような面材3表面の凹凸構造については、面材の製造時に、あらかじめ形成されたものであってもよいし、面材と複合化された不織布により形成されたものであってもよい。不織布を用いる場合、メッシュ状の不織布を用いることが特に好ましく考慮される。
【0025】
また、面材3の表面に、さらに仕上げシートを貼付する態様も好ましく考慮される。仕上げシートとしては、基礎の表面仕上げとして通常用いられているものであれば特に限定されることはなく、例えば、Fシート(株式会社エヌ・エス・ピー製)等の不織布の基材に弾性樹脂や養生保護フィルムが積層された複合材料製のシート等が例示される。
【0026】
発泡樹脂成形体2は、設置時に自立することができ、しかも型枠板として使用した際に、打設されたコンクリートの重量により倒伏や破断することがないよう、充分な強度と厚みを備えている。このような発泡樹脂成形体の密度としては、例えば、20kg/m3以上、好ましくは30kg/m3以上の範囲であることが好ましく考慮される。
【0027】
また、発泡樹脂成形体の厚みは20~200mmの範囲であることが好ましく考慮される。より好ましくは、厚みが60mm以上であることが例示される。発泡樹脂成形体の厚みが上記範囲内であれば、北海道や東北地方のような寒冷地においても所期の基礎断熱性能を発揮することができる。
【0028】
このような発泡樹脂成形体の密度や厚みは、施工地域の気候特性に応じて適宜変更可能である。
【0029】
型枠板1の長手方向の長さは、例えば、30~240cmの範囲であることが例示される。また、型枠板1の高さは、例えば、30~120cmの範囲であることが例示される。
【0030】
型枠板1として用いる発泡樹脂成形体を構成する樹脂の種類については、通常、発泡樹脂ボードの原料に使用される熱可塑性樹脂であって、軽量で、比較的強度があり、成形性、安定性が良好なものである限り、特に限定されることはない。例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。ポリオレフィン樹脂は、樹脂中のオレフィン成分が50質量%以上の樹脂を意味するものであり、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体等のポリプロピレン樹脂等を挙げることができる。
【0031】
また、ポリスチレン樹脂は、樹脂中のスチレン成分が50質量%以上の樹脂を意味するものであり、例えば、ポリスチレン、ブタジエン変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、ポリオレフィン樹脂中にてスチレン系単量体を含浸重合させたポリスチレン樹脂とポリオレフィン樹脂との複合樹脂(スチレン成分50質量%以上)等を挙げることができる。
【0032】
また、アクリル樹脂は、樹脂中のアクリル成分が50質量%以上の樹脂を意味するものであり、例えば、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体(スチレン成分50質量%未満)、ポリメタクリル酸メチル等を挙げることができる。
【0033】
これらの中でも、二次発泡性や融着性の観点からポリスチレン樹脂を好適に用いることができる。また、上記のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂等を二種以上併用して用いることもできる。
【0034】
また、型枠板2として用いる発泡樹脂成形体については、機能性薬剤の被膜が形成されていることが好ましく考慮される。
【0035】
機能性薬剤としては、発泡樹脂成形体の成形を阻害しない限り、特に限定されることはない。例えば、防蟻剤、防虫剤、難燃剤、消臭剤、芳香剤、抗菌剤、VOC吸着剤および低摩擦剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが例示される。
【0036】
防蟻剤としては、有効性、持続性、人体および環境への安全性に問題が無い限り、限定されるものではない。前記の観点からホウ酸ナトリウム系の化合物が好ましい。具体的に、ホウ酸ナトリウム系化合物としては、例えば、メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、およびこれらの水和物等が例示される。これらのホウ酸ナトリウム系化合物は、単体または2種類以上を混合して用いることができる。
【0037】
ホウ酸ナトリウム系化合物を発泡樹脂成形体の原料であるポリスチレンビーズに処理することによって防蟻性を賦与した発泡ポリスチレン断熱材およびその製造方法としては、発泡性ポリスチレンビーズにホウ酸ナトリウム系化合物、例えば、八ホウ酸ナトリウム四水和物を混合添加して、特殊な処理工程を経て発泡させ型内成形する方法が提案されている(例えば、特許第2961133号公報および特許第3308956号公報を参照)。
【0038】
例えば、前記製造方法によって得られる防蟻性を賦与した発泡ポリスチレン断熱材の断面は、個々の発泡ポリスチレンビーズ粒の融着粒界およびその近傍にホウ酸ナトリウムが層状ないしは薄膜状に沈着した状態をとる。このため、防蟻剤が発泡ポリスチレン断熱材の表面部分のみでなく全体に均一に分布しており、長期に渡り薬剤が発泡ポリスチレン断熱材内部に保持される。また、雨水等により発泡ポリスチレン断熱材内部から薬剤が浸出するおそれが極めて少ない。
【0039】
このような発泡樹脂成形体2の表面に、面材3が貼着された複合素材には、
図1(A)(B)に示したように、二次加工として、その厚み方向に貫通孔4が開孔されており、しかも貫通孔4は、発泡樹脂成形体2の長手方向に同一高さとなるように複数設けられている。この貫通孔4は、後記の基礎型枠を構成するセパレーターの挿入部材を挿入するためのものであり、発泡樹脂成形体2に面材3が貼着された後に穿設される。そして、貫通孔4は、工場出荷時にあらかじめ設けられているため、施工現場において現場加工する必要がない。勿論、型枠板1の現場加工を禁止するものではないので、必要に応じて、施工現場において新たな貫通孔4を設けたり、既存の貫通孔4を穴埋めするなどの二次加工をすることも可能である。
【0040】
貫通孔4の直径については、後記のセパレーターの挿入部材の水平断面における対角線ないし長径の長さより、わずかに小さいことが好ましく考慮され、例えば、13~15mmの範囲であることが例示される。貫通孔4の直径が前記挿入部材の直径より小さいことにより、貫通孔4と前記挿入部材との隙間から、打設したコンクリートが漏出するのを抑制することができる。
【0041】
また、型枠板1の長手方向の側端面1aには、
図1(A)(B)に示すように、型枠板1の高さ方向の上端から下端に達する少なくとも一本のスリット1bが形成されている。このスリット1bは、後記の基礎型枠連結構造において、直列に連結する他の型枠板1’の長手方向の側端面1a’に設けられたスリット1b’と併せて用いられ、スリット1b,1b’に型枠板1の高さと略同一長さの継ぎ目用止水板、いわゆる「のろ止め」を挿通し、型枠内からの水分やコンクリートの漏出を抑制することができる。スリット1bと継ぎ目用止水板については、後に詳述する。
【0042】
型枠板1は、後記の基礎型枠連結構造の角部などにおいて、直線状に平行配置されるのみならず、屈曲または湾曲して平行配置されていてもよい。より具体的には、基礎型枠の角部を構築する際に、略直角に屈曲して略L字型を形成している型枠板1’を用いることができる。略L字型の型枠板1’は、
図2(A)(B)に示すように、上から見て略L字になるLタイプと、対称的な略逆L字形状のRタイプの2種類が用いられる。これらの型枠板1’は、施工現場で真物の型枠板1を加工してもよいが、現場での二次加工の負担を軽減する観点から、工場出荷時にあらかじめ基礎の設計図面に対応した形状に一体成形したものを提供することが望ましい。
【0043】
また、近年、角部に曲面を備える建造物も多く見受けられる。このため、1対の型枠板1を湾曲させて平行配置することにより、角部に曲面を備える基礎型枠を得ることができる。この場合も、上記の略直角に屈曲した型枠板1’と同様に、施工現場で真物の型枠板1を加工してもよいが、現場での二次加工の負担を軽減する観点から、工場出荷時にあらかじめ基礎の設計図面に対応した形状に一体成形したものを提供することが望ましい。
【0044】
このような型枠板1を一対と、棒状のシャフト部材5aと、シャフト部材5aの両端に螺合により着脱自在とされた一対の挿入部材5bを備えるセパレーター5と、板状の基部6aとし、基部6aの略中心よりねじ部6bが垂直に立設された押さえ金物6と、を有する基礎型枠7が本発明の基礎型枠である。
【0045】
図3および
図4に示したように、基礎型枠7においては、面材3が貼着されていない面2aが対向するように一定間隔をあけて平行配置される一対の型枠板1の貫通孔4に、面材3が貼着されていない面2aからセパレーター5の両端に螺合された挿入部材5bが挿通され、面材3が貼着された面2bから押さえ金物6のねじ部6bが挿通され、挿入部材5bと螺合により締結され、型枠板1とセパレーター5と、押さえ金物6とが連結されている。
【0046】
基礎型枠7において、平行配置される一対の型枠板1の間隔は、120mm以上であることが好ましく考慮される。この120mmの間隔は、鉄筋のかぶり厚確保の観点から施工後の基礎の厚みとして最低限度の値を示している。
【0047】
セパレーター5は、
図5(A)(B)に示すように、棒状のシャフト部材5aと、シャフト部材5aの両端に螺合により着脱自在とされた一対の挿入部材5bを備えている。
【0048】
図5(A)(B)に示したセパレーターの一実施形態においては、シャフト部材5aは、断面略円形の棒状の金属製の部材であり、その両端部近傍に略円盤状のストッパー部材51aが一体に設けられており、ストッパー部51aと、両端部との間には、オスのネジ山52aが形成されている。ストッパー部51aの、型枠板1と当接する面の面積については、基礎の構築・施工に支障がない限り特に限定されないが、より大きいほうが基礎型枠7の安定性が増すため好ましい。一対のストッパー部51a間の距離は、前記のとおりの基礎の厚みを確保できるように120mm以上であることが好ましく考慮される。
【0049】
一方、挿入部材5bは、中空部分51bを有する略柱状の金属製の部材であり、中空部分51bの内壁面には、メスのネジ山が形成されている。挿入部材5bの形状としては、例えば、円柱状や六角柱状であることが例示され、その水平断面における直径または長径は、型枠板1の貫通孔4の直径と同程度であることが好ましく考慮される。挿入部材5bの長さは、型枠板1の厚みを超え、かつ中空部分51bにシャフト部材5aのオスのネジ山52aが形成された端部を挿入、螺合した後であっても後記の押さえ金物6のねじ部6bがその根元まで挿通、収容可能な長さを有していることが好ましく考慮される。
【0050】
このような挿入部材5bの中空部分51bに、シャフト部材5aの両端部に設けられたオスのネジ山52aを挿入、螺合することにより、セパレーター5となる。
【0051】
挿入部材5bとしては、例えば、市販の六角高ナット(長ナット)、スペーサーナットなどを用いることが例示される。これらのナットは、様々な長さの規格が存在し、型枠板1の厚みに応じて適宜選択可能である。
【0052】
シャフト部材5aおよび挿入部材5bの材質については、強度、防錆性に優れた材質であれば特に限定されることはない。例えば、鋼鉄、ステンレス等が例示される。また、化学処理等の方法によって、金属表面に防錆加工が施されたものを利用することも好ましい。
【0053】
セパレーター5は、一対の型枠板1間に、その長手方向に一定間隔おきに1または2以上設けられている。セパレーター5のシャフト部材5aは棒状であって、面状ではないので、セパレーター5が型枠板1間に配置されていても、型枠板1間に打設されたコンクリートがセパレーター5によって分断されることなく、強固に一体化した基礎を施工することができる。特に、型枠板1の長手方向の両端部から10cm程度の箇所には、必ずセパレーター5を配置することが望ましい。
【0054】
セパレーター5が複数設置される場合のピッチは、基礎の構築・施工に支障がない限り、特に限定されないが、100mm以上600mm以下の範囲内であることが好ましい。セパレーター5が複数設置される場合の相互の間隔が、上記範囲内であれば、製造コストと強度のバランスがとれた基礎型枠7を得ることができる。
【0055】
なお、シャフト部材5aの断面形状およびストッパー部材5bの形状については、
図6に示した実施形態に限定されることはなく、例えば、三角形や四角形等の多角形であってもよいし、その他の幾何学形状や楕円形であってもよい。
【0056】
型枠板1の面材3が貼着されていない面2aから貫通孔4に挿入したセパレーター5は、押さえ金物6によって固定される。
【0057】
図6(A)(B)に示した押さえ金物6の一実施形態においては、押さえ金物6は、略円形の金属板を基部6aとし、基部6aの略中心よりねじ部6bが垂直に立設されている。型枠板1の面材3が貼着された面2bから、貫通孔4に押さえ金物6のねじ部6bが挿通され、先に面材3が貼着されていない面2aから貫通孔4に挿入された挿入部材5bの中空部分51bに螺合により締結され、型枠板1とセパレーター5と、押さえ金物6とが連結固定される。このとき、押さえ金物6の基部6aは、型枠板1の表面に密着するまで螺合することが望ましい。
【0058】
押さえ金物6の基部6aは、板状の部材であることから、押さえ金物6を螺合することにより、押さえ金物6の基部6aが点ではなく、面で型枠板1を押圧することにより、基礎型枠7内にコンクリートを打設した際に、型枠板1に掛かる圧力に十分に抵抗することが可能であり、強固な基礎型枠構造を維持することができる。
【0059】
また、本実施形態においては、押さえ金物6の基部6aが略円形の金属板であることから、複数のセパレーター5および押さえ金物6を取り付けた場合であっても、押さえ金物6の基部6b同士が相互に干渉するおそれがない。
【0060】
押さえ金物6の基部6aの直径または長径は、40~100mmであることが好ましく考慮される。直径または長径が上記の範囲内であれば、複数のセパレーター5および押さえ金物6を取り付けた場合であっても、押さえ金物6の基部6b同士が相互に干渉するおそれがない。また、直線状に配置された、いわゆる真物の基礎型枠7ではなく、基礎の角部に対応する形状の基礎型枠7’においては、押さえ金物6の基部6aの直径または長径を、上記範囲の下限値の40mmに近づけることにより、略L字型の内面側屈曲部分であっても、押さえ金物6の基部6b同士が相互に干渉するのを避けることができる。
【0061】
押さえ金物6のねじ部6bの長さは、挿入部材5bの中空部分51bにおいて、挿入、螺合されているシャフト部材5aと干渉せず、かつ、押さえ金物6を確実に螺合、固定できる程度あれば、特段制限されることはない。例えば、型枠板1の板厚に応じて、20~50mmの範囲が例示される。
【0062】
このような押さえ金物6の材質については、強度、防錆性に優れた材質であれば特に限定されることはない。例えば、鋼鉄、ステンレス等が例示される。また、化学処理等の方法によって、金属表面に防錆加工が施されたものを利用することも好ましい。
【0063】
本発明の基礎型枠7においては、型枠板1の全ての貫通孔4に対し、セパレーター5および押さえ金物6を挿入、螺合して、貫通孔を封止することが望ましい。構造上あるいは耐力上問題がないと考えられる箇所においては、セパレーター5および押さえ金物6の代わりに、樹脂製材料、コーキング材等を用いて貫通孔を封止する態様も考慮される。
【0064】
また、本発明の基礎型枠7においては、上記の構成に加えて、
図7および
図8(A)(B)に示したように、一対の対向する立設面部8aと、底面部8bを備え、該底面部8bより立設面部8aの各々と対向するよう立設された少なくとも一対の立ち上がり片8cを備える、型枠板1のズレや倒伏を防ぐための固定金物8を有することが好ましく考慮される。固定金物8は、
図9に示したように、一対の型枠板1の底面部1aに設置されて、立設面部8aと立ち上がり片8cとの間に型枠板1を挟持することができる。より具体的には、施工現場の捨てコン上に固定金物8を設置し、底面部8bに市販のコンクリート釘などの固定具を打ち込んで固定した後、立設面部8aと立ち上がり片8cとの間に型枠板1を挟持させることが例示される。なお、
図8(C)に示したように、固定金具の立ち上がり片8’cが一対である固定金物8’の実施形態もバリエーションの一つとして考慮される。
【0065】
また、本発明の基礎型枠7においては、型枠板1の上面部に桟木固定金具9を係止し、縦桟10および横桟11を組んで基礎型枠7を外側から補強する態様も考慮される。
【0066】
図10(A)に示した一実施形態において、桟木固定金具9は、略S字状に屈曲された金物であって、型枠板1の上面部に係止するための幅広かつ断面略コの字状の型枠板係止部91と、横桟11を載置するための狭幅かつ断面略コの字状の横桟受部92とを備えている。
【0067】
型枠板係止部91の幅(桟木固定金具9の長手方向における幅)は、型枠板1の厚みと略同一であり、型枠板1の上面部にその上方より型枠板係止部91を嵌着、・BR>W止することにより着脱自在とされている。
【0068】
図10(B)に示したように、横桟受部92の幅(桟木固定金具9の長手方向における幅)は、横桟の幅と略同一であり、横桟受部92に型枠板1と平行配置となるように横桟11を載置し、型枠板1と横桟11との間に生じた間隙Sに縦桟10を挿通してフレーム状に桟木を組み上げることができる。このような桟木により基礎型枠7の支持、固定をさらに強化することができる。
【0069】
また、桟木固定金具9の横桟受部92は底面形状を丸底とし、木材の横桟11の代わりに単管を用いる態様も考慮される。この場合、木材の縦桟10の代わりに単管を用い、単管同士の固定にはクランプを用いることが考慮される。
【0070】
さらにまた、本発明の基礎型枠7においては、上記の桟木固定金具9の代わりに、型枠緊結金具91を用いて、縦桟10および横桟11を組んで基礎型枠7を外側から補強する態様も考慮される。
図11に示した一実施形態において、型枠緊結金具91は、型枠板1の貫通孔4’に挿通して用いる略棒状の本体部91aと、縦桟10および横桟11等の桟材や、単管および鋼管等の管材を型枠板1との間に挟持固定するための締め付け金物91bと、締め付け金物91aを前記桟材や管材に押圧固定するためのナット91cとを備えている。
【0071】
本実施形態において、型枠緊結金具91の本体部91aは、例えば、その全長に亘ってネジ山911aが形成されており、一方の端部912aに六角高ナット913aを螺合して用いることができる。締め付け金物91bは、略中央に貫通孔911bが設けられるとともに、型枠板1と対向する側に円弧状の保持部912bが形成されている。貫通孔911bの直径は、本体部91aの直径よりわずかに大きく、貫通孔911bに型枠緊結金具91の本体部91aを挿入することができる。保持部912bの形状は、型枠構造7の補強に用いる前記桟材や管材の断面形状に応じて適宜設計変更が可能である。
【0072】
このような型枠緊結金具91の取り付け方法としては、まず、本体部91aの六角高ナット913aが螺合された側の端部912aを、型枠板1の面材3が貼着されていない面2aから貫通孔4’に挿入し、型枠板1の面材3が貼着された面2bから、貫通孔4’に型枠緊結金具91取り付け用の押さえ金物6’のねじ部6’bを挿通し、六角高ナット913aの中空部分914aにねじ部6’bを螺合することにより締結する方法が例示される。このとき、押さえ金物6’の基部6’aは、型枠板1の表面に密着するまで螺合することが望ましい。
【0073】
次いで、型枠緊結金具91の本体部91aを挟持するように前記桟材や管材を型枠板1の外側面に当接させ、ナット91cを締結することにより、締め付け金物91bと型枠板1とにより、前記桟材や管材を固定する。このように、型枠緊結金具9を併用することにより、木製の型枠板と比較してやや強度面に劣る発泡樹脂製の型枠板であっても、充分な構造的強度を発揮することができる。
【0074】
なお、型枠緊結金具91を挿通するために型枠板1に設けられた貫通孔4’は、セパレーター5および押さえ金物6を挿通するための貫通孔4とは別異のものであることが好ましく、その穿設位置としては、貫通孔4の穿設位置より高く、型枠板1の上端に相対的に近い位置であることが好ましく考慮される。このように、型枠板1の上端に近い位置に型枠緊結金具91を介して前記桟材や管材を固定することにより、基礎型枠構造をしっかりと補強することができ、その結果として、型枠内に充填したコンクリートの側圧により型枠板が外側に向って倒伏することをより確実に抑止することができる。
【0075】
本発明の基礎連結構造12は、
図12に示したように、前記のとおりの基礎型枠7を連結してなるものである。すなわち、基礎連結構造12は、隣り合う2以上の基礎型枠7と、平板状の板部13aと、該板部13aの上端部がその長手方向の全長にわたって折り返された折り返し片13bと、板部13aの下端部から上端部方向に向けて徐々に開口幅が狭くなる切り欠き部13cとを有し、基礎型枠7同士を相互に連結するための開き止め部材13とを有している。
【0076】
開き止め部材13は、
図13に示したように、板状の材料がその長手方向の全長にわたって折り返されており、平板状の板部13aと、折り返し片13bとが形成されている。また、開き止め部材13では、板部13aの下端部から上端部に向けて略くさび状の切り欠き部13cが形成されている。
【0077】
開き止め部材13は、隣り合う2以上の基礎型枠7の連結部分において、それぞれの基礎型枠7の端部に位置する押さえ金物6のねじ部6bが、切り欠き部13cの上端に収容されるように、型枠板1の外側面に沿って鉛直下向きにスライドさせることにより着脱自在とされている。押さえ金物6のねじ部6bが、切り欠き部13cの上端に接近するにつれて切り欠き部13cの幅が狭まるので、
図14に示したように、押さえ金物6のねじ部6bに対し、図中矢印αで示したように、互いに接近する方向に力が加えられる。そのため、隣り合う基礎型枠7の端部同士が密着し、隣り合う基礎型枠7を強固に連結することができる。
【0078】
切り欠き部13cの上端同士の距離は、基礎型枠を強固に連結することができる限り、特段限定されることはないが、例えば、20cm程度の距離であることが例示される。
【0079】
また、基礎型枠連結構造12は、2以上の基礎型枠7の型枠板1側端面1aの当接部分を上方より固定可能な断面略コの字状のジョイント部材14と、型枠板1の側端面1aに形成されたスリット1bに挿入可能な継ぎ目用止水板15と、を有している。
【0080】
ジョイント部材14は、
図15に示したように、板状の材料が断面略コの字状に折り曲げられてなる部材であり、一対の対抗する立設面14a、14b間の幅は、型枠板1の厚みと略同一とされている。なお、
図15に示した実施形態においては、図中左側の折り返し片14aが図中右側の折り返し片14bより長いが、図中右側の折り返し片14bの方が長くてもよいし、同じ長さであってもよい。
【0081】
ジョイント部材の材料としては、強度、防錆性に優れた材質であれば特に限定されることはない。例えば、熱硬化性樹脂、樹脂、鋼鉄、ステンレス等が例示される。また、化学処理等の方法によって、金属表面に防錆加工が施されたものを利用することも好ましい。
【0082】
そして、基礎型枠連結構造12においては、2以上の基礎型枠7が、その長手方向の端部において当接され、直列に連結しており、隣り合う基礎型枠7、7’の端部近傍に螺合された押さえ金物6のねじ部6bが、切り欠き部13cに挿嵌されるように開き止め部材13が装着され、型枠板1の側端面1aに形成されたスリット1bに継ぎ目止水板15が挿入され、型枠板1の当接部分がジョイント部材14を用いて上方より嵌着固定されている。
【0083】
前記のとおり、型枠板1の長手方向の側端面1aには、
図1(A)(B)に示したように、型枠板1の高さ方向の上端から下端に達する少なくとも一本のスリット1bが形成されている。そして、基礎型枠連結構造12において、隣り合う型枠板1、1の長手方向の側端面1aに設けられたスリット1b,1bに、
図12に示したように、型枠板1、1の高さと略同一長さの継ぎ目用止水板15、いわゆる「ノロ止め」を挿通し、型枠内からの水分やコンクリートの漏出を抑制することができる。継ぎ目用止水板15は、型枠内からの水分やコンクリートの漏出のみならず、型枠板1の面材3貼着面側に型枠板1の支持固定を目的として設置された桟木のアクが型枠内のコンクリートの表面に移行することを抑制したり、コンクリートの打設から硬化までの間に発生してしまう空隙である「ス」やクラックなどの発生を抑制し、基礎の強度劣化を抑制することができる。
【0084】
継ぎ目用止水板15の材質としては、透水性がなく、コンクリート由来のアルカリによって劣化しない材料であれば特段制限されることはなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの樹脂製であることが例示される。
【0085】
また、従来ノロ止めとして用いられているブチルテープなどの止水材を、隣り合う基礎型枠7の連結部位に貼着してもよい。
【0086】
また、本発明の基礎型枠連結構造は、前記のとおりの基礎型枠連結構造12の構成に加えて、セパレーター5と、押さえ金物6と、基礎の角部に対応する位置に一対の略L字形または略逆L字型の型枠板1’と、を有する角部基礎型枠16を備え、該角部基礎型枠16の両端部と基礎型枠7の端部とを連結してなる態様も好ましく考慮される。
【0087】
さらにまた、本発明の基礎型枠連結構造においては、対向する型枠板1、1の高さを同一としてもよいし、建物内壁側に位置する型枠板1の高さを建物外壁側に位置する型枠板1の高さよりも低くする態様も考慮される。これにより、耐圧盤式土間スラブ基礎の施工も容易となる。
【0088】
本発明の基礎型枠7および基礎型枠連結構造12は、一般住宅向けの基礎としての実施形態に限定されるものではなく、商標施設などの大型施設の基礎や、擁壁等の壁体に埋め込み施工することが可能であり、幅広い分野に応用可能である。
【0089】
以上の特徴から、本発明の基礎型枠7および基礎型枠連結構造12は、施工現場において組立作業に割く労力を省くことができ、軽量で取り扱いが容易でありながら、十分な強度を備え、基礎断熱に寄与することが可能な基礎型枠および基礎型枠連結構造を提供することを可能にするものである。
【0090】
このような基礎型枠連結構造を用いた基礎施工方法は、少なくとも以下の工程<1>~<4>を含むことを特徴とする。
【0091】
<1>地面に外周基礎部、内部地中梁およびピット部に当たる溝を掘り、該溝内に砕石を敷設して突き固め、捨てコンクリートを打設する工程;
<2>該捨てコンクリートの表面に、縦筋、横筋またはあらかじめフレーム状に組み立てられた鉄筋を配筋し、該鉄筋と前記セパレーターとが干渉しないよう、基礎の角部および直線部分に対応する前記角部基礎型枠と前記基礎型枠とを当接させて設置する工程; <3>隣り合う前記基礎型枠の端部近傍に螺合された前記押さえ金物のねじ部が、前記切り欠き部に挿嵌されるように開き止め部材を装着し、前記型枠板の側端面に形成されたスリットに前記継ぎ目止水板を挿入し、前記型枠板の当接部分を前記ジョイント部材を用いて上方より嵌着固定する工程;
<4>工程<1>から<3>において連結、構築した基礎型枠連結構造内にコンクリートを打設し、隣接する基礎型枠の対向する型枠板間に連続的にコンクリートを充填し、該コンクリートを硬化させて前記基礎型枠と一体化する工程。
【0092】
上記各工程について以下に布基礎の施工方法を例に詳細に説明する。
【0093】
まず、工程<1>として、
図16に示すように、地面Gに外周基礎部に当たる溝17を掘り、溝17内に砕石18を敷設して十分に突き固め、捨てコンクリート19を打設する。同様に、内部地中梁、ピット部に当たる溝17’を掘り、溝17’内に砕石18を敷設して十分に突き固め、捨てコンクリート19を打設する。
【0094】
次に、工程<2>として、
図17(A)(B)に示すように、捨てコンクリート19の表面に鉄筋20として、縦筋支えアンカー筋20a、下端主筋20b、縦筋20c、横筋20dを配筋する。このとき、縦筋支えアンカー筋20aのない部分については、下端主筋20bのコンクリートかぶり厚さ60mmを確保するため、スペーサーブロックを設置して、捨てコンクリート19から一定高さ浮き上がらせた状態で下端主筋20bを配筋することが考慮される。また、縦筋21cは、基礎型枠7の隣り合うセパレーター5の間の任意の位置、特に、セパレーター5の近傍に位置するように配筋することが望ましい。縦筋支えアンカーに縦筋20cを取付け、縦筋20cを下端主筋20aおよび横筋20dと結束し、鉄筋を自立させる。横筋20dは、縦筋20cを支持するために、縦筋20cの高さの略中点を目安に設置することが望ましい。
【0095】
なお、工程<2>においては、
図17(A)(B)に示したように、上記の縦筋支えアンカー筋20a、下端主筋20b、縦筋20c、横筋20dの代わりに、これらの鉄筋が溶接によってあらかじめフレーム状に組み立てられたフレーム鉄筋20eを配筋することも好ましく考慮される。
【0096】
続いて、基礎型枠7の幅の墨出しを行い、必要に応じて固定金物8やガイドレールをコンクリート釘で固定し、設置することも考慮される。このとき、固定金物8や前記ガイドレールの立設面部8aを外墨に合わせ、固定金物8や前記ガイドレールの水平面を外墨よりも外側に向けて設置することが好ましい。また、基礎型枠連結構造12の角部、T字部および十字部においては、必ず基礎型枠連結構造12の形状に沿って固定金物8を設置することが望ましく、基礎型枠連結構造12全体を囲うように前記ガイドレールを敷設することも好ましく考慮される。さらに、基礎型枠7がずれることがないように、直線部分には長尺もののガイドレールを設置し、コンクリート釘で固定する態様も考慮される。
【0097】
基礎型枠7の配置については、あらかじめ作成した割付図に従い、捨てコンクリート19上に敷設した固定金物8およびガイドレールに沿って、角部基礎型枠16を角部、T字部および十字部から設置する。このとき、角部、T字部および十字部には、必ずLタイプまたはRタイプの型枠板1’を真物の状態で割り付けておく。このように、あらかじめ作成した割付図に基づいて、型枠板1、1’を工場で製造しておくことにより、スペーサー5と鉄筋20、特に縦筋20cとの干渉を回避することが可能である。
【0098】
続いて、直線部の基礎型枠7を設置する。直線部の基礎型枠7においても、可能な限り真物で割り付けておき、原則的に、右回りに基礎型枠7を設置していくことが好ましい。
図18は、Lタイプの角部型枠板1’と直線部の基礎型枠7との連結常態を模式的に示した斜視図である。このように、基礎型枠連結構造12の全体において、縦筋20cは、基礎型枠7、7’のスペーサー部材5とは干渉することがない。
【0099】
なお、基礎型枠7の長さの調整が必要な場合は、角部、T字部および十字部を避け、角部、T字部および十字部の間の直線部において基礎型枠7をカットして、長さを調節することが好ましい。その際には、必ず型枠板の端部から10cm程度の位置に貫通孔4が配置されるようにすることが重要である。この場合、事前に設置してある縦筋支えアンカー筋20aおよび縦筋20cが基礎型枠7のセパレーター5と接触しないことを確認する必要がある。
【0100】
続く工程<3>として、隣り合う基礎型枠7の端部近傍に螺合された押さえ金物6のねじ部6bが、切り欠き部13cに挿嵌されるように開き止め部材13を型枠板1の面材3が貼着された面に当接させつつ、上方より下方に向かってスライドさせて嵌着し、型枠板1の側端面1aに形成されたスリット1bに上方より継ぎ目止水板15を挿入し、型枠板1の当接部分を、ジョイント部材14を用いて上方より嵌着固定する。これにより、隣り合う基礎型枠7同士がその端部において密接するとともに、スリット1bに挿通された継ぎ目止水板15によりノロ止めも抑制される。
【0101】
このようにして、基礎型枠連結構造12を組み立てた後、地盤GL表面より400mm以上高い位置で、型枠の天端レベルを確認する。型枠のレベルが所定の数値に達していない場合や、水平が取れていない場合は、基礎型枠7の下端に、型枠板1の内側(型枠板1の対向面側)よりパッキン材を差し込み、型枠の天端レベルを調整して、固定することが考慮される。
【0102】
工程<4>として、基礎型枠連結構造12の外部および内部の地盤を埋め戻し、内部については砕石19を敷設して十分に突き固める。そして、外周基礎部の天端より下に基礎天端レベル墨を設け、基礎型枠連結構造内12にコンクリート21を打設し、基礎天端上のコンクリートをコテで均す。打設したコンクリート21は、基礎型枠連結構造12の型枠板の間に連続的に充填され、これにより布基礎を構成するコンクリート21と基礎型枠連結構造12とが一体化されることになる。
【0103】
なお、水道の給排水管や床暖房配管等の引き込み工事は、建物外周の基礎型枠連結構造12の組立が完了した時点で施工することが考慮される。また、床暖房用温水配管の設置工事は、耐圧盤の配筋施工後に行うことが好ましく考慮される。
【0104】
また、寒冷地等、凍結深度の規定がある地域では、その基準深さまで外周部基礎の立上の下端を深く掘り下げる必要がある。この場合、通常用途のものより高さのある型枠板1をあらかじめ製造し、基礎型枠7を構築することが考慮される。
【0105】
なお、本実施例では、一般住宅用の基礎(布基礎)に埋め込み施工される基礎型枠として本発明の基礎型枠7および基礎型枠連結構造12を適用したが、独立基礎、ベタ基礎、耐圧盤式土間スラブ基礎、擁壁等の壁体に埋め込み施工される基礎型枠に対しても本発明の基礎型枠7および基礎連結構造12を同様に適用することが可能である。
【0106】
例えば、本発明の型枠板、基礎型枠および基礎型枠連結構造を用いて施行したベタ基礎の概略断面図を
図19に示す。
ベタ基礎22を施工する際には、
図19中に示したように、建物内部側の型枠板1の下方に、高さ調整金物23を取り付け、下方から支持することにより、ベタ基礎22の立ち上がり部分22aと底板部分22bとを一体にコンクリート打設、施工することができる。
【0107】
高さ調整金物23は、
図20(A)に示したように、断面略コの字形状の型枠板支持部材23aと、型枠板支持部材23aと連結することにより型枠板1の高さを調整可能な本体部23bとを具備している。
型枠板支持部材23aは、例えば、長方形の金属板を屈曲することにより形成されており、対向する一対の立側面231aと立側面231aの下端をつなぐ底面232aを備えている。底面232aに型枠板1の下面を載置するとともに、対抗する一対の立側面231aにより型枠板1を挟持固定することができる。また、型枠板支持部材23aの底面232aには貫通孔233aが設けられており、この貫通孔233aに後述の本体部23bのシャフト231bを挿通することができる。
本体部23bは、底板232bと、底板232bの略中央より垂直に立設され、外周部にネジ山が設けられたシャフト231bと、シャフト231bのネジ山に螺合されたナット233bを備えている。
底板232bは、
図20(B)に示したように略矩形状で、四隅の近傍に固定具挿入用の貫通孔234bが穿設されており、捨てコンクリート上に底板232bを載置した後、貫通孔234bにコンクリート釘等の固定具を打ち込んで固定することができる。
シャフト231bに螺合されるナット233bとしては、例えば、六角高ナットを用いることが例示される。ナット233bの停止位置を調節することにより、型枠板支持部材23aの停止位置を調整することができ、これにより型枠板の高さを調整することが可能となる。
【0108】
また、
図21に示したように、本発明の型枠板、基礎型枠および基礎型枠連結構造を用いて土間床24を施工することも可能である。
さらにまた、例えば、本発明の基礎型枠7および基礎連結構造12を用いて、耐圧盤式土間スラブ基礎を施工する際には、工程<4>において、コンクリート21を打設する前に、基礎型枠連結構造12により囲まれた建物内壁側の領域に敷設された砕石19の上に、発泡樹脂成形体からなる板状の耐圧盤断熱材を平らに施工し、外周基礎部の上端主筋および耐圧盤スラブ筋の配筋を行うことが例示される。また、内部地中梁についても配筋することが例示される。
【0109】
さらに、工程<4>に続いて、基礎型枠7の屋外側に面する前記面材に、モルタルの塗布、仕上げ塗料の塗布および仕上げシートの貼付からなる群より選択される少なくとも一種の処理を行うことも好ましく考慮される。
【0110】
このように本発明の基礎型枠7を用いた基礎施工方法では、捨てコンクリート19を除いて、コンクリート21の打設は一回で済み、埋め戻しおよび残土処理も事前に終えているため、残材処理および整地をもって基礎工事が完了する。したがって、従来の基礎施工工事の工期と比較して、最大2週間程度の工期短縮が可能であり、それにともない大幅なコストダウンを図ることが可能となる。
【0111】
また、本発明の基礎型枠7を用いた基礎施工方法では、基礎の耐圧盤の厚さ方向の途中部に、断熱性を有する基礎型枠7が隙間なく連続的に配置されているため、建築物の基礎の断熱性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0112】
1、1’ 型枠板
1a、1a’ 側端面
1b、1b’ スリット
2 発泡樹脂成形体
3 面材
4 貫通孔
5 セパレーター
5a シャフト部材
51a ストッパー部
52a オスのネジ山
5b 挿入部材
51b 中空部分
6 押さえ金物
6a 基部
6b ねじ部
7 基礎型枠
8 固定金物
8a 立設面部
8b 底面部
8c 立ち上がり片
9 桟木固定金具
9a 型枠板係止部
9b 横桟受部
91 型枠緊結金具
91a 本体部
91b 締め付け部材
91c ナット
10 縦桟
11 横桟
12 基礎連結構造
13 開きとめ部材
13a 板部
13b 折り返し片
13c 切り欠き部
14 ジョイント部材
15 継ぎ目用止水板
16 角部基礎型枠
16a 外板
16b 内板
17 溝
18 砕石
19 捨てコンクリート
20 鉄筋
20a 縦筋支えアンカー筋
20b 下端主筋
20c 縦筋
20d 横筋
20e フレーム鉄筋
21 コンクリート
22 ベタ基礎
22a 立ち上がり部分
22b 底板部分
23 高さ調整金物
23a 型枠板支持部材
231a 立側面
232a 底面
233a 貫通孔
23b 本体部
231b シャフト
232b 底板
233b ナット
24 土間床
S 間隙
GL 地面