(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】非石油系潤滑油添加剤、非石油系潤滑油、グリース組成物、非石油系燃料油添加剤および非石油系燃料油
(51)【国際特許分類】
C10M 125/10 20060101AFI20240926BHJP
C10M 169/04 20060101ALI20240926BHJP
C10L 1/12 20060101ALI20240926BHJP
C10L 1/02 20060101ALI20240926BHJP
C10M 101/04 20060101ALN20240926BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20240926BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240926BHJP
C10N 30/10 20060101ALN20240926BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240926BHJP
C10N 20/06 20060101ALN20240926BHJP
C10N 10/08 20060101ALN20240926BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20240926BHJP
【FI】
C10M125/10
C10M169/04
C10L1/12 ZNM
C10L1/02
C10M101/04
C10N50:10
C10N40:25
C10N30:10
C10N30:00 Z
C10N20:06 Z
C10N10:08
C10N10:12
(21)【出願番号】P 2020170440
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】511247334
【氏名又は名称】株式会社VAB
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】宮本 清英
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019910(JP,A)
【文献】特開2010-209304(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116495(WO,A1)
【文献】特開2019-172754(JP,A)
【文献】特開2002-265966(JP,A)
【文献】特開2003-160790(JP,A)
【文献】特表2010-502821(JP,A)
【文献】特開2004-083796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
C10L1/00-1/32
B01J35/39
C10L10/00-10/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒機能を有する二酸化チタン粒
子を有効成分とし、非石油系潤滑油に直接添加して使用することを特徴とする非石油系潤滑油添加剤
であって、
前記非石油系潤滑油に前記二酸化チタン粒子が0.005重量%以上かつ0.3重量%未満添加して使用される、非石油系潤滑油添加剤。
【請求項2】
前記非石油系潤滑油は、バイオマス由来のバイオ燃料、ワックスエステル類、バイオマス由来の遊離脂肪酸、バイオディーゼル燃料油、バイオジェット燃料、廃食用油、排水油脂、または、廃プラスチック油化油、またはこれら2以上を組み合わせた油を基油とする潤滑油である、請求項1に記載の非石油系潤滑油添加剤。
【請求項3】
前記
二酸化チタン粒子は、コーティング処理が施されていない、請求項1または2に記載の非石油系潤滑油添加剤。
【請求項4】
前記
二酸化チタン粒子は、平均粒径が1nm~300nmのナノ粒子である請求項1ないし3のいずれかに記載の非石油系潤滑油添加剤。
【請求項5】
さらにオイルを含む請求項1ないし
4のいずれかに記載の非石油系潤滑油添加剤。
【請求項6】
燃費を向上、または、振動音を低減するための添加剤である、請求項1ないし
5のいずれかに記載の非石油系潤滑油添加剤。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれかに記載の非石油系潤滑油添加剤が混合された、非石油系潤滑油。
【請求項8】
請求項
7に記載の非石油系潤滑油が混合されたグリース組成物。
【請求項9】
光触媒機能を有する二酸化チタン粒
子を有効成分とし、非石油系燃料油に直接添加して使用することを特徴とする非石油系燃料油添加剤
であって、
前記二酸化チタン粒子は、平均粒径が1nm~300nmのナノ粒子である、非石油系燃料油添加剤。
【請求項10】
前記非石油系燃料油は、生物由来の非石油系燃料油、バイオマス由来のバイオ燃料、ワックスエステル類、バイオマス由来の遊離脂肪酸、バイオディーゼル燃料油、バイオジェット燃料、廃食用油、排水油脂、または、廃プラスチック油化油、またはこれら2以上を組み合わせた油を基油とする、請求項
9に記載の非石油系燃料油添加剤。
【請求項11】
前記
二酸化チタン粒子は、コーティング処理が施されていない、請求項
9または
10に記載の非石油系燃料油添加剤。
【請求項12】
非石油系燃料油に前記
二酸化チタン粒子を0.00001重量%以上かつ0.01重量%未満添加して使用される、請求項
9ないし
11のいずれかに記載の非石油系燃料油添加剤。
【請求項13】
酸性ガスの排出量を低減するため、あるいは、燃焼効率を向上させるための添加剤である、請求項
9ないし
12のいずれかに記載の非石油系燃料油添加剤。
【請求項14】
請求項
9ないし
13のいずれかに記載の非石油系燃料油添加剤が添加された、非石油系燃料油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非石油系潤滑油添加剤、非石油系潤滑油、グリース組成物、非石油系燃料油添加剤および非石油系燃料油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化チタンが太陽光などの紫外線の作用により光触媒機能を発揮させることが知られており、太陽光(紫外線)が照射される物品の表面にアナターゼ型の二酸化チタンの層を形成させるなどして、太陽光(紫外線)の当たる環境下において二酸化チタンが使用されていた。
一方、発明者は、内燃機関の内部、産業機器の内部、精密機器の内部、あるいは機械機器の内部においても、機械の摺動によりプラズマが発生し、発生したプラズマにより二酸化チタン粒子が光触媒機能を発揮することを見出し、二酸化チタン粒子を燃料油に添加することで、燃料油の燃焼効率が上昇し、酸性ガスの排出量を低減することを開示している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、鉱油または合成油などの石油系燃料油に二酸化チタンを主成分とする燃料油添加剤を添加する例を開示しているが、鉱油または合成油などの石油系燃料油と、バイオディーゼル燃料や廃食用油、排水油脂などの非石油系燃料油とでは、純度や組成、特性などが異なり、非石油系燃料油においても、石油系燃料油と同様に、二酸化チタンを主成分とする燃料油添加剤が、同様の機能を発揮するかは不明であった。
【0005】
本発明は、光触媒機能を有する二酸化チタン粒子、酸化タングステン粒子、または、シリカ粒子である光触媒粒子を、非石油系潤滑油や非石油系燃料油に添加した場合に、燃費の向上や酸性ガスの排出量の低減を図ることができることを見出し創作したものであり、非石油系潤滑油や非石油系燃料油に添加した場合に、燃費の向上や酸性ガスの排出量の低減を図ることができる非石油系潤滑油添加剤、非石油系潤滑油、グリース組成物、非石油系燃料油添加剤および非石油系燃料油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)ないし(6)の非石油系潤滑油添加剤を要旨とする。
(1)光触媒機能を有する二酸化チタン粒子を有効成分とし、非石油系潤滑油に直接添加して使用することを特徴とする非石油系潤滑油添加剤であって、前記非石油系潤滑油に前記二酸化チタン粒子が0.005重量%以上かつ0.3重量%未満添加して使用される、非石油系潤滑油添加剤。
(2)前記非石油系潤滑油は、バイオマス由来のバイオ燃料、ワックスエステル類、バイオマス由来の遊離脂肪酸、バイオディーゼル燃料油、バイオジェット燃料、廃食用油、排水油脂、または、廃プラスチック油化油、またはこれら2以上を組み合わせた油を基油とする潤滑油である、上記(1)に記載の非石油系潤滑油添加剤。
(3)前記二酸化チタン粒子は、コーティング処理が施されていない、上記(1)または(2)に記載の非石油系潤滑油添加剤。
(4)前記二酸化チタン粒子は、平均粒径が1nm~300nmのナノ粒子である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の非石油系潤滑油添加剤。
(5)さらにオイルを含む、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の非石油系潤滑油添加剤。
(6)燃費を向上、または、振動音を低減するための添加剤である、上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の非石油系潤滑油添加剤。
【0007】
本発明は、以下の(7)の非石油系潤滑油を要旨とする。
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の非石油系潤滑油添加剤が混合された、非石油系潤滑油。
【0008】
本発明は、以下の(8)のグリース組成物を要旨とする。
(8)上記(7)に記載の非石油系潤滑油が混合されたグリース組成物。
【0009】
本発明は、以下の(9)ないし(13)の非石油系燃料油添加剤を要旨とする。
(9)光触媒機能を有する二酸化チタン粒子を有効成分とし、非石油系燃料油に直接添加して使用することを特徴とする非石油系燃料油添加剤であって、前記二酸化チタン粒子は、平均粒径が1nm~300nmのナノ粒子である、非石油系燃料油添加剤。
(10)前記非石油系燃料油は、生物由来の非石油系燃料油、バイオマス由来のバイオ燃料、ワックスエステル類、バイオマス由来の遊離脂肪酸、バイオディーゼル燃料油、バイオジェット燃料、廃食用油、排水油脂、または、廃プラスチック油化油、またはこれら2以上を組み合わせた油を基油とする、上記(9)に記載の非石油系燃料油添加剤。
(11)前記二酸化チタン粒子は、コーティング処理が施されていない、上記(9)または(10)に記載の非石油系燃料油添加剤。
(12)非石油系燃料油に前記二酸化チタン粒子を0.00001重量%以上かつ0.01重量%未満添加して使用される、上記(9)ないし(11)のいずれかに記載の非石油系燃料油添加剤。
(13)酸性ガスの排出量を低減するため、あるいは、燃焼効率を向上させるための添加剤である、上記(9)ないし(12)のいずれかに記載の非石油系燃料油添加剤。
【0010】
本発明は、以下の(14)の非石油系燃料油を要旨とする。
(14)上記(9)ないし(13)のいずれかに記載の非石油系燃料油添加剤が添加された、非石油系燃料油。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、非石油系潤滑油や非石油系燃料油に添加した場合に、燃費の向上や酸性ガスの排出量の低減を図ることができる非石油系潤滑油添加剤、非石油系潤滑油、グリース組成物、非石油系燃料油添加剤および非石油系燃料油を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤および非石油系燃料油添加剤は、非石油系潤滑油または非石油系燃料油に添加して使用される添加剤である。非石油系潤滑油および非石油系燃料油とは、鉱物油や合成油などの石油系の潤滑油・燃料油を除く潤滑油・燃料油であり、たとえば、(1)バイオマス由来の植物油、動物油、バイオエタノールなどのバイオ燃料、(2)ユーグレナなどの微細藻類から抽出されるワックスエステル類、(3)バイオマス由来の油脂の精製で副生する遊離脂肪酸、(4)廃食用油、排水油脂、ユーグレナ、動植物などに由来するバイオディーゼル燃料、(5)バイオジェット燃料、(6)廃食用油、(7)排水油脂、(8)廃プラスチックを油化した油、(9)上記(1)~(8)のいずれか2以上を組み合わせた油を用いた潤滑油や燃料油が挙げられる。また、上記植物油または動植油としては、天然油脂、天然油脂の水素化処理物、天然油脂のエステル交換物、および天然油脂のエステル交換物の水素化処理物から選ばれた1種または2種以上が挙げられる。天然油脂としては、天然界に広く存在する各種の動植物油脂を用いることができるが、脂肪酸とグリセリンとのエステルを主成分とする植物油、たとえばサフラワー油、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、綿実油、ヤシ油、米糠油、ゴマ油、ヒマシ油、亜麻仁油、オリーブ油、桐油、椿油、落花生油、カポック油、カカオ油、木蝋、ヒマワリ油、コーン油などが好適に使用される。また、上記動植物油脂には、牛脂や、特定の微細藻類が生産する油脂類または炭化水素等なども含まれる。特定の微細藻類とは、体内の栄養分の一部を炭化水素または油脂の形に変換する性質を有する藻類を意味し、たとえば、クロレラ、イカダモ、スピルリナ、ユーグレナ、ボツリオコッカスブラウニー、シュードコリシスチスエリプソイディアが挙げられる。クロレラ、イカダモ、スピルリナ、ユーグレナは油脂類を、ボツリオコッカスブラウニー、シュードコリシスチスエリプソイディアは炭化水素を生産することが知られている。
【0013】
本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を添加した非石油系潤滑油は、たとえば、車両、船舶、飛行機、暖房器具、火力発電所などの内燃機関や機械連結部に使用することができる。また、本発明に係る非石油系燃料油を添加した非石油系燃料油は、車両、船舶、飛行機、暖房器具、火力発電所などの内燃機関に使用することができる。本発明に係る非石油系潤滑油添加剤を添加した非石油系潤滑油は、非石油系潤滑油を5%以上含む潤滑油であればよく、たとえば非石油系潤滑油と石油系潤滑油との混合潤滑油であってもよい。同様に、本発明に係る非石油系燃料油添加剤を添加した非石油系燃料油は非石油系燃料油を5%以上含む油であればよく、たとえば非石油系燃料油と石油系燃料油との混合燃料油であってもよい。
【0014】
(非石油系潤滑油添加剤)
本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤は、二酸化チタン粒子、酸化タングステン、シリカ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、または酸化スズなど、光触媒機能を有する粒子(以下、光触媒粒子ともいう)を有効成分として含有することを特徴とする。特に、光触媒粒子として、二酸化チタン粒子、酸化タングステン粒子およびシリカ粒子が好ましく、二酸化チタン粒子がより好ましい。なお、二酸化チタン粒子としては、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
【0015】
上記光触媒粒子は紫外線により光触媒機能を発揮することが知られているが、潤滑油が循環する内燃機関や機械接合部内においては、太陽光(紫外線)が届かない暗所であるため、紫外線による光触媒機能は発揮されない。しかしながら、本発明者らは、内燃機関などで使用される非石油系潤滑油に本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を添加した場合に、燃費を向上させることができることや、エンジン音を低減することができることを見出した。これは、これら機械の摺動によりプラズマが発生し、発生したプラズマにより、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤に含まれる光触媒粒子が光触媒機能を発揮したため(桜井俊男著「潤滑の物理化学」の151-152ページ 幸書房出版)、あるいは、機械の摩擦により摩擦発光(トリボルミネセンス)という現象が生じることが知られておりこの摩擦発光により光触媒機能が発揮したためと考えられる。そして、光触媒粒子の光触媒機能により、潤滑油の重合反応や酸化反応が抑制され、また、これら重合反応や酸化反応により生成された生成物の分解が行われることで、燃費の向上や、機械振動の低減が実現したものと考えられる。
【0016】
本実施形態に係る光触媒粒子は、平均粒径が1nm~300nmのナノ粒子、より好ましくは1nm~100nmのナノ粒子である。このように光触媒粒子をナノ粒子とすることで、本発明に係る非石油系潤滑油添加剤を潤滑油に添加した場合に、光触媒機能に加えて、光触媒粒子が金属表面の凹凸部を研磨し、また、光触媒粒子が金属表面の凹凸部に入り込むことで、金属表面(機械表面)を鏡面に近づけることができる。これにより、金属表面の油膜比(油膜厚さ(μm)/平均面粗さ(μm)=Λ(ラムダ値))が大きくなり、機械部品同士の摩擦を抑制することもできる。
【0017】
本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤は粉状であり、運搬性や品質保持性が良好となっている。使用者は、使用直前に、少量の非石油系潤滑油に本実施形態に係る粉状の非石油系潤滑油添加剤を必要量添加し、2~3分撹拌した後、対象の非石油系潤滑油に混入させることで、内燃機関においてオイルスラッジの抑制などの機能を発揮させることができる。たとえば、対象の非石油系潤滑油5Lに本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を添加する場合、本実施形態に係る粉状の非石油系潤滑油添加剤1g~1.5g程度を、100~300ml程度の少量の非石油系潤滑油に添加し攪拌した後に、攪拌した少量の非石油系潤滑油を、対象の非石油系潤滑油5Lに添加することが好ましい。
【0018】
本実施形態に係る光触媒粒子には、分散や沈降防止などのためのコーティング処理が施されていない。これは、光触媒粒子の光触媒機能を十分に発揮できるようにするためである。ただし、本実施形態に係る光触媒粒子は、ナノ粒子であるために凝縮性が高く、また潤滑油に比べ、比重が大きいので沈降性が高い。そのため、本実施形態に係る潤滑油添加剤には、光触媒粒子の分散性を向上させるための分散剤と、光触媒粒子の沈降を抑制するための沈降抑制剤とを含ませることができる。
【0019】
非石油系潤滑油添加剤に添加される分散剤は、光触媒粒子の表面に吸着することで、光触媒粒子間の凝集を有効に防ぎ、これにより、非石油系潤滑油における光触媒粒子の分散性を向上させることができる。このような分散剤は、特に限定されず、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミノ系、アクリル系、スチレン・アクリル系、スチレン・マレイン酸共重合体等の高分子型分散剤や、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の界面活性剤型分散剤などを使用することができる。
【0020】
また、非石油系潤滑油添加剤に添加される沈降抑制剤は、分散剤に梱包された光触媒粒子を、非石油系潤滑油中に浮遊、または懸濁状態とすることで、光触媒粒子の沈降を抑制することができる。このような沈降抑制剤も、特に限定されず、アマイド、エタノール、イソプロパノール、酢酸ブチル、アルキルシクロヘキサン、および酸化ポリエチレンなどを使用することができる。
【0021】
さらに、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤では、光触媒粒子にコーティング処理を施していないが、沈降抑制効果や分散効果を促進するために、有機チタンなどにより光触媒粒子をコーティングする構成とすることもできる。
【0022】
次に、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤の使用方法について説明する。本実施形態では、非石油系潤滑油中における光触媒粒子が0.005重量%以上かつ0.3重量%未満となるように、非石油系潤滑油添加剤が非石油系潤滑油に添加される。これは、非石油系潤滑油中の光触媒粒子が0.005重量%未満では、光触媒粒子による光触媒効果が有効に発揮されず、一方、光触媒粒子が0.3重量%以上では光触媒粒子による摩耗効果が大きくなりすぎてしまい、却って機械を劣化させてしまう恐れがあるためである。特に、潤滑油中の光触媒粒子の濃度は、0.01~0.1重量%であることが好適であり、さらに好適には0.03~0.04重量%であることが望ましい。
【0023】
(添加剤組成物)
本発明の非石油系潤滑油添加剤の別の実施形態は、上述した非石油系潤滑油添加剤とオイルとを含む液状の組成物である。このように、非石油系潤滑油添加剤を液状の添加剤組成物とすることで、この添加剤組成物を潤滑油に添加した場合に、粉状の非石油系潤滑油添加剤と比べて、光触媒粒子を潤滑油により効果的に拡散させることができる。添加剤組成物に用いるオイルは、特に限定されないが、添加する潤滑油(たとえばエンジンオイル)に用いられるベースオイルを使用することができる。また、添加剤組成物を添加する前の潤滑油の一部を、添加剤組成物に用いるオイルとすることもできる。なお、添加剤組成物に用いるオイルとしては、上述した非石油系潤滑油とすることもできるし、鉱油または合成油を使用することもできる。たとえば、鉱油として、パラフィン系原油、ナフテン系原油、芳香族系原油などからの潤滑油留分を使用することができ、合成油として、ポリアルファオレフィンなどのポリオレフィン系合成油、ジエステルなどのエステル系合成油、およびアルキルナフタレンなどを使用することができる。
【0024】
本実施形態に係る添加剤組成物は、光触媒粒子を0.1~5重量%含む。本実施形態に係る添加剤組成物も、非石油系潤滑油に添加する場合には、上述した粉状の非石油系潤滑油添加剤と同様に、非石油系潤滑油中における光触媒粒子の濃度が0.005重量%以上かつ0.3重量%未満となるように、より好適には非石油系潤滑油における光触媒粒子の濃度が0.01~0.1重量%となるように、さらに好適には光触媒粒子の濃度が0.03~0.04重量%となるように、この添加剤組成物を非石油系潤滑油に添加することができる。
【0025】
本実施形態に係る添加剤組成物は、上述した分散剤を1~5容量%含むことができる。本実施形態に係る光触媒粒子は、1~300nmのナノ粒子であるため、オイルを含む添加剤組成剤とした場合に凝集が起こり易い。そこで、添加剤組成物に分散剤を添加することで、オイルを含む添加剤組成物中において、さらには、添加剤組成物を添加した潤滑油中において、光触媒粒子の凝集を有効に抑制することができ、光触媒粒子を非石油系潤滑油全体に拡散させることができる。その結果、非石油系潤滑油中で光触媒粒子の光触媒機能を十分に発揮させることができる。
【0026】
また、本実施形態に係る添加剤組成物は、上述した沈降抑制剤を1~5容量%含むことができる。通常、光触媒粒子は、比重が比較的高く、沈降し易い性質がある。本実施形態では、沈降抑制剤を非石油系潤滑油添加剤に添加することで、オイルを含む添加剤組成物中において、さらには、添加剤組成物を添加した非石油系潤滑油中において、光触媒粒子が沈降してしまうことを防止することができる。その結果、使用者が添加剤組成物を非石油系潤滑油に添加する場合に添加剤組成物中の光触媒粒子を比較的均等な濃度で潤滑油に添加することができ、また、非石油系潤滑油中において光触媒粒子を比較的均等に分散させることができ、光触媒粒子の光触媒機能をより効果的に発揮させることができる。
【0027】
(非化石系潤滑油)
本実施形態に係る非化石系潤滑油は、上述した非化石系潤滑油添加剤(上述した添加剤組成物も含む)が混合された非化石系潤滑油である。非化石系潤滑油添加剤を混合する前の非化石系潤滑油は、特に限定されず、たとえば一般に販売、利用されている非化石系潤滑油を使用することができる。本実施形態では、非化石系潤滑油中の光触媒粒子の濃度が0.005重量%以上かつ0.3重量%未満となるように、より好適には非化石系潤滑油中の光触媒粒子の濃度が0.01~0.1重量%となるように、さらに好適には非化石系潤滑油中の光触媒粒子の濃度が0.03~0.04重量%となるように、非化石系潤滑油添加剤が潤滑油に混合されている。そして、このように非化石系潤滑油添加剤を混合した非化石系潤滑油を、内燃機関、産業機器、精密機器、機械機器などに充填して用いることができる。
【0028】
(グリース組成物)
本実施形態に係るグリース組成物は、上述した非化石系潤滑油を混合したグリース組成物である。当該グリース組成物のうち非化石系潤滑油以外の成分は、特に限定されず、一般的に用いられている成分を使用することができる。本実施形態に係るグリース組成物は、光触媒粒子を含有する非化石系潤滑油を含むため、産業機器、精密機器および機械機器などに適用する場合に、これら機器で生じたプラズマによる光触媒機能により、グリース組成物中の非化石系潤滑油の酸化を抑制することができる。これにより、上述したオイルスラッジ抑制機能に加えて、グリース組成物が非化石系潤滑油を保持する性能をより長い期間維持することができるなど、グリース組成物の長寿命化を図ることができる。
【0029】
(試験例1)
本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を用いて、車両の走行試験を行った。具体的には、光触媒粒子として、平均粒径が1nm~300nmで、アナターゼ型のみから構成され、コーティング処理が施されていない二酸化チタン粒子を含有する、非石油系潤滑油添加剤を作成した。また、下記表に示すように、エンジンオイルとして100%のひまわり油を用意した。そして、3リットルのひまわり油100%をそのままエンジンオイルとして使用した例を比較例とし、3リットルのひまわり油100%に上記非石油系潤滑油添加剤(本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤)を二酸化チタン粒子の濃度が1gとなるように添加したエンジンオイルを実施例とした。なお、実施例では、100mLの100%ひまわり油に本実施形態に係る非化石系潤滑油添加剤を二酸化チタンが1gとなる濃度で添加してよく振った後に、2.9Lのひまわり油に、非化石系潤滑油添加剤を添加したひまわり油100mLを添加して調整した。
【0030】
そして、比較例のエンジンオイルを用いて走行した場合と、実施例のエンジンオイルを用いて走行した場合とで、車両の平均燃費およびエンジン音について計測を行った。なお、走行試験は、それぞれ同じ車体を用いて、同じ一般道路(バイパス道路)を同じ時速50kmで走行しながら、燃費計測器(テクトム燃費マネージャーFCM-NX1)を用いて燃費を計測するとともに、騒音計(METERK MK09サウンドレベルメーター)を用いてエンジン音を計測した。計測結果を下記表1に示す。
【表1】
【0031】
上記表1に示すように、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を添加していない比較例に比べて、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を添加した実施例では、走行開始後、13km時点での平均燃費が1.39km/L高く5.21%向上し、23km時点での平均燃費が2.31km/L高く9.19%向上し、25km時点での平均燃費が2.21km/L高く8.87%向上し、26km時点での平均燃費が1.81km/L高く7.4%向上した。このように、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を非石油系潤滑油に添加することで、平均燃費が5~10%程度向上することが分かった。
【0032】
また、平均エンジン音についても、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を添加していない比較例に比べて、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を添加した実施例では、エンジン音が1.3dBA低くなった。このように、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を非石油系潤滑油に添加することで、エンジン音(騒音)が低下することが分かった。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤は、太陽光(紫外線)が届かない内燃機関の内部、産業機器の内部、精密機器の内部、または機械機器の内部で使用する非石油系潤滑油に添加される添加剤であり、光触媒機能を有する光触媒粒子を有効成分とする。そして、本実施形態に係る非石油系潤滑油添加剤を非石油系潤滑油に添加することで、太陽光(紫外線)が届かない内燃機関の内部、産業機器の内部、精密機器の内部、または機械機器の内部であっても、光触媒粒子の光触媒機能により、燃費を高め、また、エンジン音などの騒音を低減することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る光触媒粒子は、コーティング処理が施されていないため、光触媒粒子による光触媒機能をより発揮することができる。また、本実施形態では、非石油系潤滑油に光触媒粒子が0.005重量%以上かつ0.3重量%となるように添加されることで、光触媒粒子による光触媒機能をより効果的に機能させることができ、オイルスラッジを適切に抑制することができる。加えて、光触媒粒子は平均粒径が1nm~300nmのナノ粒子であるため、光触媒粒子を含有する非石油系潤滑油添加剤を非石油系潤滑油に添加した場合に、光触媒機能に加えて、金属表面の凹凸部を研磨し、また、金属表面の凹凸部に入り込むことで、金属表面を鏡面に近づけることができ、摩擦力を低減することもできる。
【0035】
さらに、本実施形態では、粉状の上記非石油系潤滑油添加剤を、別の液体状の潤滑油添加剤と混合して、液体状の非石油系潤滑油添加剤とすることで、光触媒粒子を非石油系潤滑油により効果的に拡散させることができる。また、上記非石油系潤滑油添加剤を添加された非石油系潤滑油として提供することもできる。
【0036】
(非石油系燃料油添加剤)
次に、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤について説明する。本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤も、上記非石油系潤滑油添加剤と同様に、二酸化チタン粒子、酸化タングステン、シリカ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、または酸化スズなど、光触媒機能を有する光触媒粒子を有効成分として含有することを特徴とする。また、光触媒粒子として、二酸化チタン粒子、酸化タングステン粒子およびシリカ粒子が好ましく、二酸化チタン粒子がより好ましい。なお、二酸化チタン粒子としては、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
【0037】
本発明者らは、内燃機関で燃焼される非石油系燃料油に本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を添加した場合に、非石油系燃料油の燃焼効率が増加し、排出ガス中の酸性ガス、たとえば一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOX)などの排出量が低減されることを見出し、本発明を創作した。これは、燃焼室での燃焼(爆発)により生じた火炎(光)により、燃料油添加剤に含まれる光触媒粒子が光触媒として機能し、非石油系燃料油のオイルスラッジを抑制、分解することで、燃費が向上したものと考えられる。特に、燃焼室内で二酸化チタンが光触媒として働くことで、燃料油を低分子化することができ、燃料油の燃焼を促進することができる。これにより、燃料油の完全燃焼を促進することができ、不完全燃焼により生じる酸性ガスの排出を抑制することができるとともに、燃費を向上することができたものと考える。
【0038】
本実施形態に係る光触媒粒子は、平均粒径が1nm~300nmのナノ粒子、より好ましくは1nm~100nmのナノ粒子である。このように光触媒粒子をナノ粒子とすることで、非石油系燃料油添加剤を非石油系燃料油に添加した場合に、光触媒機能に加えて、光触媒粒子が金属表面の凹凸部を研磨し、また、光触媒粒子が金属表面の凹凸部に入り込むことで、金属表面(機械表面)を鏡面に近づけることができる。これにより、金属表面の油膜比(油膜厚さ(μm)/平均面粗さ(μm)=Λ(ラムダ値))が大きくなり、機械部品同士の摩擦を抑制することもできる。
【0039】
本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤は粉状であり、運搬性や品質保持性が良好となっている。使用者は、使用直前に、少量の水抜き剤や洗浄剤を別容器に分取し、これに粉状の非石油系燃料油添加剤を必要量添加し、2~3分撹拌した後、非石油系燃料油に混入することで、オイルスラッジの抑制などの機能を発揮させることができる。たとえば、非石油系燃料油50Lに本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を添加する場合、本実施形態に係る粉状の非石油系燃料油添加剤0.3g~1g程度を、まず、100~300ml程度の少量の水抜き剤や洗浄剤に添加し攪拌した後に、攪拌した少量の非石油系燃料油を、対象の非石油系燃料油50Lに添加することが好ましい。
【0040】
本実施形態に係る光触媒粒子には、分散や沈降防止などのためのコーティング処理は施されていない。これは、光触媒粒子の光触媒機能を十分に発揮できるようにするためである。ここで、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤は内燃機関内に添加されるためピストンやエンジンシャフトの動作によりある程度撹拌され分散されることとなる。ただし、本実施形態に係る光触媒粒子は、上述した非石油系潤滑油添加剤と同様に、ナノ粒子であるために凝縮性が高く、また非石油系燃料油に比べ、比重が大きいので沈降性が高い。そのため、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤には、光触媒粒子の分散性を向上させるための分散剤と、光触媒粒子の沈降を抑制するための沈降抑制剤とを含ませることができる。
【0041】
非石油系燃料油添加剤に添加される分散剤は、光触媒粒子の表面に吸着することで、光触媒粒子間の凝集を有効に防ぎ、これにより、非石油系燃料油での光触媒粒子の分散性を向上させることができる。このような分散剤は、特に限定されず、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミノ系、アクリル系、スチレン・アクリル系、スチレン・マレイン酸共重合体等の高分子型分散剤や、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の界面活性剤型分散剤などを使用することができる。
【0042】
また、非石油系燃料油添加剤に添加される沈降抑制剤は、分散剤に梱包された光触媒粒子を、非石油系燃料油中に浮遊、または懸濁状態とすることで、光触媒粒子の沈降を抑制することができる。このような沈降抑制剤も、特に限定されず、アマイド、エタノール、イソプロパノール、酢酸ブチル、アルキルシクロヘキサン、および酸化ポリエチレンなどを使用することができる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤では、光触媒粒子にコーティング処理を施していないが、沈降抑制効果や分散効果を促進するために、有機チタンなどにより光触媒粒子をコーティングする構成とすることもできる。
【0044】
次に、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤の使用方法について説明する。本実施形態では、非石油系燃料油における光触媒粒子が0.00001重量%以上かつ0.01重量%未満となるように、非石油系燃料油添加剤が非石油系燃料油に添加される。これは、非石油系燃料油中の光触媒粒子が0.00001重量%未満では、光触媒粒子による光触媒効果が有効に発揮されず、一方、光触媒粒子が0.01重量%以上では、沈殿する光触媒粒子の量が増えるため光触媒粒子の量に対して効果が低減してしまい、またコストも高くなるためである。なお、非石油系燃料油中の光触媒粒子の濃度は、0.00001~0.01重量%であることが好適であり、さらに好適には0.0001~0.005重量%であることが望ましい。
【0045】
(添加剤組成物)
本発明の非石油系燃料油添加剤の別の実施形態は、上述した光触媒粒子を含む非石油系燃料油添加剤と、いわゆる水抜き剤や洗浄剤など本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤とは別の液体状の燃料油添加剤とを含む組成物である。本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を液体状の組成物とすることで、この添加剤組成物を非石油系燃料油に添加した場合に、粉状の非石油系燃料油添加剤のまま添加する場合と比べて、光触媒粒子を非石油系燃料油により効果的に拡散させることができる。なお、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤とは別の液体状の燃料油添加剤としては、いわゆる水抜き剤や洗浄剤の他、非石油系燃料油に添加可能な、堆積物改良剤、アンチノック剤、酸化防止剤、金属付活性剤、防錆剤、腐食防止剤、着色剤、着臭剤、芳香剤、帯電防止剤、低温流動性向上剤、セタン価向上剤、潤滑性向上剤、識別剤、消泡剤、氷結防止剤、煤煙防止剤、助燃剤、スラッジ分散剤などが挙げられる。
【0046】
本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤は、光触媒粒子を0.3~1.4重量%含む。本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤も、非石油系燃料油に添加する場合には、非石油系燃料油中における光触媒粒子の濃度が0.00001重量%以上かつ0.01重量%未満となるように、より好適には非石油系燃料油における光触媒粒子の濃度が0.0001~0.005重量%となるように、この添加剤組成物を非石油系燃料油に添加することができる。
【0047】
本実施形態に係る添加剤組成物は、上述した分散剤を1~5容量%含むことができる。本実施形態に係る光触媒粒子は、1~300nmのナノ粒子であるため、添加剤組成剤とした場合に凝集が起こり易い。そこで、添加剤組成物に分散剤を添加することで、添加剤組成物中において、さらには、添加剤組成物を添加した非石油系燃料油中において、光触媒粒子の凝集を有効に抑制することができ、光触媒粒子を非石油系燃料油全体に拡散させることができる。その結果、非石油系燃料油中で光触媒粒子の光触媒機能を十分に発揮させることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る添加剤組成物は、上述した沈降抑制剤を1~5容量%含むことができる。通常、光触媒粒子は、比重が比較的高く、沈降し易い性質がある。本実施形態では、沈降抑制剤を非石油系燃料油添加剤に添加することで、添加剤組成物中において、さらには、添加剤組成物を添加した非石油系燃料油中において、光触媒粒子が沈降してしまうことを防止することができる。その結果、使用者が添加剤組成物を非石油系燃料油に添加する場合に添加剤組成物中の光触媒粒子を比較的均等な濃度で燃料油に添加することができ、また、非石油系燃料油中において光触媒粒子を比較的均等に分散させることができ、光触媒粒子の光触媒機能をより効果的に発揮させることができる。
【0049】
(非石油系燃料油)
本実施形態に係る非石油系燃料油は、上述した非石油系燃料油添加剤(上述した添加剤組成物も含む)を非石油系燃料油に混合した非石油系燃料油である。非石油系燃料油添加剤を混合する前の非石油系燃料油は、特に限定されず、バイオ燃料、廃食用油、排水油脂、バイオディーゼル燃料、廃プラスチック油化燃料などを使用することができる。本実施形態では、非石油系燃料油中の光触媒粒子の濃度が0.00001重量%以上かつ0.01重量%未満となるように、より好適には非石油系燃料油中の光触媒粒子の濃度が0.0001~0.005重量%となるように、非石油系燃料油添加剤が非石油系燃料油に混合されている。そして、このように非石油系燃料油添加剤を混合した非石油系燃料油を、内燃機関に充填して用いることができる。
【0050】
(試験例2)
本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を用いて排ガス試験を行った。具体的には、光触媒粒子として、平均粒径が1nm~300nmで、アナターゼ型のみから構成され、コーティング処理が施されていない二酸化チタン粒子を含有する、非石油系燃料油添加剤を作成した。また、下記表に示すように、非石油系燃料油として廃食用油、市販バイオディーゼル油(商品名「バイオUSS-OIL」、信愛エナジー合同会社)を用意し、上記非石油系燃料油添加剤を添加していない比較例1,2と、上記非石油系燃料油添加剤を添加した実施例1-1~2-3とを調製した。より具体的には、上記非石油系燃料油添加剤(本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤)を添加していない廃食用油を比較例1とし、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤添加剤を添加していない市販バイオディーゼル油を比較例2として、各比較例を用意した。また、比較例1の廃食用油に、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を二酸化チタンが0.4mg/Lとなる濃度で添加して実施例1-1を作成し、非石油系燃料油添加剤を二酸化チタンが0.6mg/Lとなる濃度で添加して実施例1-2を作成し、非石油系燃料油添加剤を二酸化チタンが1.2mg/Lとなる濃度で添加して実施例1-3を作成した。さらに、比較例2の市販バイオディーゼル燃料に本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を二酸化チタンが0.4mg/Lとなる濃度で添加して実施例2-1を作成し、非石油系燃料油添加剤を二酸化チタンが0.6mg/Lとなる濃度で添加して実施例2-2を作成した。また、比較例2の市販バイオディーゼル燃料にEアミンを添加するとともに、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を二酸化チタンが0.6mg/Lとなる濃度で添加して実施例2-3を作成した。そして、ヤンマー発電機2KW(YDG200S-BE)に各サンプルの非石油系燃料油を充填して動作させ、RIELLO Auto5.1(排ガス試験機)を用いて、排出されたO
2濃度、CO
2濃度、およびNOx濃度を測定した。なお、廃食用油を用いた比較例1および実施例1-1~1-3については、廃食用油を60℃まで加熱して試験を行った。
【表2】
【0051】
上記表2に示すように、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を添加していない廃食用油(比較例1)と比べて、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を廃食用油に添加した実施例1-1~1-3では、排出するNOx濃度が低下することが分かった。特に、廃食用油に二酸化チタンの濃度を0.4%とした実施例1-1では、NOx濃度が47ppmから32ppmへと低減し、高い排ガス抑制機能を発揮することが分かった。さらに、実施例1-1~1-3では、比較例1と比較して、CO2濃度が2%から1.4%と減少した一方、O2濃度が18.32%から19.09-19.11%まで上昇した。このことから本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を用いることで、非石油系燃料油に生じたCO2が酸化チタンの光触媒作用により分解され、O2が生じたものと推測され、O2の発生により燃焼効率がより高くなると推測された。
【0052】
(試験例3)
次に、試験例3について説明する。試験例3では、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を添加していない動物油脂燃料を比較例3として用意し、比較例3の動物油脂燃料に本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を二酸化チタンが0.3g/Lとなる濃度で添加して実施例6を作成した。なお、本試験例において使用した動物油脂燃料は、飲食店から回収した牛、豚、鳥の油をミックスしたラード油である。そして、試験例2と同様に、ヤンマー発電機2KW(YDG200S-BE)に各サンプルの燃料油を入れて動作させ、排ガス試験機としてRIELLO Auto5.1を用いて、排出されたO
2濃度、CO濃度、CO
2濃度、およびNOx濃度を測定した。下記表3に、試験例3の排ガス試験の結果を示す。
【表3】
【0053】
上記表3に示すように、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を添加した実施例3では、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を添加していない比較例3と比べて、NOx濃度が36ppmから17ppmへと52.7%低減した。また、CO2濃度は2.4%から1.7%に29.1%低減し、CO濃度は0.06%から0.02%に低減したのに対して、O2濃度は17.76%から18.66%へと増加した。このことから、動物油脂燃料においても、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤の光触媒機能により、非石油系燃料油に生じたCO2が分解されO2が増えたことで、燃焼効率が上昇し、CO濃度が減少したものと推測される。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤は、太陽光(紫外線)が届かない内燃機関の内部、産業機器の内部、精密機器の内部、または機械機器の内部で使用する非石油系燃料油に添加される添加剤であり、光触媒機能を有する光触媒粒子を有効成分とする。そして、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤を非石油系燃料油に添加することで、太陽光(紫外線)が届かない内燃機関の内部、産業機器の内部、精密機器の内部、または機械機器の内部であっても、光触媒粒子の光触媒機能により、燃焼効率を高め、CO2、CO、NOxなどの酸性ガスの排出量を低減することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る光触媒粒子は、コーティング処理が施されていないため、光触媒粒子による光触媒機能をより発揮することができる。また、本実施形態では、非石油系燃料油に光触媒粒子が0.00001重量%以上かつ0.001重量%未満となるように添加することで、光触媒粒子による光触媒機能をより効果的に機能させることができ、オイルスラッジを適切に抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、粉状の上記非石油系燃料油添加剤を、別の液体状の燃料油添加剤と混合して、液体状の燃料油添加剤とすることで、光触媒粒子を非石油系燃料油により効果的に拡散させることができる。また、上記非石油系燃料油添加剤を添加された非石油系燃料油として提供することもできる。
【0057】
さらに、本実施形態に係る非石油系燃料油添加剤では、光触媒粒子の働きにより、非石油系燃料油を低分子化することができ、非石油系燃料油の燃焼を促進する助燃効果も奏する。また、光触媒粒子の光触媒機能により、オイルスラッジを分解、分散するオイルスラッジ分散効果、および、カーボン、ワニス、ガム質などの分解する洗浄効果も奏することができる。また、非石油系燃料油の燃焼を促進することでエンジンのトルクや馬力を向上する効果も奏する。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
たとえば、上述した実施形態では、光触媒機能を有する二酸化チタン粒子として、アナターゼ型の二酸化チタン粒子を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、光触媒機能を有する二酸化チタン粒子として、ルチル型の二酸化チタン粒子を用いる構成としてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、光触媒機能を有する金属酸化物として、二酸化チタンを有効成分と含有する非石油系潤滑油および非石油系燃料油を例示して説明したが、光触媒機能を有する金属酸化物は、二酸化チタンに限定されず、酸化タングステン、シリカ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、または酸化スズを有効成分として含有する潤滑油添加剤または燃料油添加剤としてもよい。また、酸化タングステン、シリカ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、または酸化スズと、二酸化チタンとの混合物を有効成分として含有する構成とすることもできる。