IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭サナック株式会社の特許一覧

特許7560872ロボットの動作制御データ生成装置及び動作制御データ生成方法
<>
  • 特許-ロボットの動作制御データ生成装置及び動作制御データ生成方法 図1
  • 特許-ロボットの動作制御データ生成装置及び動作制御データ生成方法 図2
  • 特許-ロボットの動作制御データ生成装置及び動作制御データ生成方法 図3
  • 特許-ロボットの動作制御データ生成装置及び動作制御データ生成方法 図4
  • 特許-ロボットの動作制御データ生成装置及び動作制御データ生成方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ロボットの動作制御データ生成装置及び動作制御データ生成方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240926BHJP
   G05B 19/416 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B25J9/22 Z
G05B19/416 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021019437
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122312
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 裕大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅宏
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001381(JP,A)
【文献】特開平09-258813(JP,A)
【文献】特開平09-114511(JP,A)
【文献】特開平08-141953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業区間でエンドエフェクタを一定速度で移動させながら作業対象物に対して所定の作業を行うロボットの動作制御データを生成する動作制御データ生成装置であって、
互いに平行な複数の前記作業区間を表す作業区間データが記憶される記憶部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記一定速度で移動する前記エンドエフェクタを所定の加速度で加速又は減速させた場合に前記エンドエフェクタが所定の速度に達する距離を加減速距離として求める第1の処理と、
前記作業区間データが表す前記作業区間の終点を加減速開始位置とし、又は、前記作業区間の終点から前記エンドエフェクタの移動方向に所定距離離間した位置を加減速開始位置とし、前記加減速開始位置から前記移動方向に前記加減速距離だけ離間した位置を、前記エンドエフェクタの加減速終了位置として求める第2の処理と、
前記作業区間の始点から前記加減速開始位置まで前記エンドエフェクタが前記一定速度で移動し、前記加減速開始位置から前記加減速終了位置まで前記エンドエフェクタが前記所定の加速度で加速又は減速し、前記加減速終了位置を起点として前記作業区間の終点から次の前記作業区間の始点までの距離の1/2の距離を半径とする半円状の折り返し経路を前記エンドエフェクタが前記所定の速度で移動するように前記動作制御データを生成する第3の処理と、
を実行する、ロボットの動作制御データ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットの動作制御データ生成装置であって、
前記制御部は、前記第3の処理において、前記折り返し経路の終点から次の前記作業区間の始点に向かって前記加減速距離だけ離間した位置まで前記エンドエフェクタが前記所定の加速度で減速又は加速するように前記動作制御データを生成する、ロボットの動作制御データ生成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のロボットの動作制御データ生成装置であって、
前記所定の加速度は、前記エンドエフェクタが直線上を移動するときに加減速可能な最大加速度である、ロボットの動作制御データ生成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のロボットの動作制御データ生成装置であって、
前記所定の速度は前記1/2の距離を半径とする円上を前記エンドエフェクタが移動するときに移動可能な最大速度である、ロボットの動作制御データ生成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のロボットの動作制御データ生成装置であって、
前記制御部は、前記第3の処理において、前記エンドエフェクタが前記作業区間の始点に到達するより前に前記エンドエフェクタに前記作業の開始を指示するように前記動作制御データを生成する、ロボットの動作制御データ生成装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のロボットの動作制御データ生成装置であって、
前記所定の作業は、前記作業対象物に液材を噴射する作業である、ロボットの動作制御データ生成装置。
【請求項7】
作業区間でエンドエフェクタを一定速度で移動させながら作業対象物に対して所定の作業を行うロボットの動作制御データを生成する動作制御データ生成方法であって、
前記一定速度で移動する前記エンドエフェクタを所定の加速度で加速又は減速させた場合に前記エンドエフェクタが所定の速度に達する距離を加減速距離として求める第1の工程と、
互いに平行な複数の作業区間を表す作業区間データが表す前記作業区間の終点を加減速開始位置とし、又は、前記作業区間の終点から前記エンドエフェクタの移動方向に所定距離離間した位置を加減速開始位置とし、前記加減速開始位置から前記移動方向に前記加減速距離だけ離間した位置を、前記エンドエフェクタの加減速終了位置として求める第2の工程と、
前記作業区間の始点から前記加減速開始位置まで前記エンドエフェクタが前記一定速度で移動し、前記加減速開始位置から前記加減速終了位置まで前記エンドエフェクタが前記所定の加速度で加速又は減速し、前記加減速終了位置を起点として前記作業区間の終点から次の前記作業区間の始点までの距離の1/2の距離を半径とする半円状の折り返し経路を前記エンドエフェクタが前記所定の速度で移動するように前記動作制御データを生成する第3の工程と、
を含む、ロボットの動作制御データ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの動作制御データ生成装置及び動作制御データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業区間でエンドエフェクタを一定速度で移動させながら作業対象物に対して所定の作業を行うロボットとして、作業対象物に液材を噴射するロボット、作業対象物を溶接するロボットなどが知られている。作業対象物に噴射する液材としては、液体塗料、粉体塗料、離型剤、潤滑剤、シーリング材などが例示される。
【0003】
ロボットに作業を行わせる場合は、一般にオペレータがロボットに動作を教示している。例えば特許文献1に記載のロボット制御装置では、教示オペレータがマニピュレータ2を移動させながら、塗装ガン8(エンドエフェクタに相当)の移動軌跡を生成するための教示点Pk、塗料オンする点Ai、塗料オフする点Biを教示する。当該ロボット制御装置は、塗料オフ領域では塗装ガン8の動作速度を一定加速度でVoffまで加速し、塗料オン領域を一定速度Voffで移動させる。そして、当該ロボット制御装置は、所定時間経過して塗装ガン8が塗料オン領域を通過すると、動作速度を一定減速度でVonまで減速する。
【0004】
上述したように、同文献に記載のロボット制御装置では、教示オペレータは塗料オンする点Ai及び塗料オフする点Biに加えて、複数の教示点Pkも教示する。同文献の図2に示されているように、当該ロボット制御装置は塗装ガン8を教示点Pk+1の近傍まで右に向かって直線的に移動させ、教示点Pk+1の近傍で小さな半径の円に沿って下に向きを変える。そして、当該ロボット制御装置は塗装ガン8を下に向かって直線的に移動させ、次の教示点Pk+2の近傍で小さな半径の円に沿って左方向に向きを変える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-188686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように特許文献1に記載のロボット制御装置では教示オペレータが教示点Pkを教示する。しかしながら、教示オペレータが教示点Pkを教示する場合、以下のような問題がある。
【0007】
例えば同文献の図2に示されている教示点Pk+1を教示オペレータが教示する場合、塗料オフする点B1に近い位置に教示点Pk+1を設定すると、点B1を通過した塗装ガン8を所定の加速度で減速させた場合に、塗装ガン8が教示点Pk+1の近傍に達しても右方向への移動速度が十分に低下せず、教示点Pk+1を通り過ぎる可能性がある。この場合、ロボット制御装置は、教示点Pk+1の近傍で右方向への移動速度が十分に低下しているようにするために、塗装ガン8が点B1に到達するより前に塗装ガン8の減速を開始しなければならない。点B1に到達するより前に塗装ガン8の減速を開始すると、塗料オン領域で塗装ガン8の移動速度が変化し、均一な塗膜厚を確保できないという問題がある。
【0008】
このため、教示オペレータは、塗装ガン8を所定の加速度で減速した場合に教示点Pk+1の近傍で塗装ガン8が十分に減速しているために必要な距離を自身で判断し、点B1から当該判断した距離以上離れた位置に教示点Pk+1を設定する必要がある。しかしながら、必要な距離を教示オペレータが正確に判断することは一般に困難である。このため、教示オペレータは安全を見て点B1から必要以上に遠い位置(すなわち上述した必要な距離以上に離れた位置)に教示点Pk+1を設定する可能性がある。しかしながら、必要以上に遠い位置に教示点Pk+1を設定すると塗装ガン8の移動距離が長くなり、作業時間のロスが生じるという問題がある。
【0009】
また、同文献の塗装ガン8は教示点Pk+1の近傍で小さな半径の円に沿って下に向きを変えるため、教示点Pk+1の近傍で右方向への移動速度を0に近い速度まで減速する必要がある。このため減速に必要な距離が長くなり、作業時間のロスが生じる。また、下に向かって直線的に伸びる区間を移動するときは左右方向への移動速度が0であることから、教示点Pk+2の近傍で左方向に向かって移動を開始するときには速度が0の状態から加速する必要がある。このため、左方向への移動速度が目的の速度に到達するまでに長い距離が必要となり、作業時間のロスが生じる。
【0010】
更に、同文献のロボット制御装置では、教示オペレータは塗料オンする点Aiや塗料オフする点Biだけでなく、複数の教示点Pkも教示しなければならない。このため、塗料オンする点Aiや塗料オフする点Biだけを教示する場合に比べて教示オペレータの手間が大きいという問題もある。
【0011】
本明細書では、作業区間でエンドエフェクタを一定速度で移動させつつ作業時間のロスを低減することを少ない教示の手間で実現できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本明細書で開示するロボットの動作制御データ生成装置は、作業区間でエンドエフェクタを一定速度で移動させながら作業対象物に対して所定の作業を行うロボットの動作制御データを生成する動作制御データ生成装置であって、互いに平行な複数の前記作業区間を表す作業区間データが記憶される記憶部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記一定速度で移動する前記エンドエフェクタを所定の加速度で加速又は減速させた場合に前記エンドエフェクタが所定の速度に達する距離を加減速距離として求める第1の処理と、前記作業区間データが表す前記作業区間の終点を加減速開始位置とし、又は、前記作業区間の終点から前記エンドエフェクタの移動方向に所定距離離間した位置を加減速開始位置とし、前記加減速開始位置から前記移動方向に前記加減速距離だけ離間した位置を、前記エンドエフェクタの加減速終了位置として求める第2の処理と、前記作業区間の始点から前記加減速開始位置まで前記エンドエフェクタが前記一定速度で移動し、前記加減速開始位置から前記加減速終了位置まで前記エンドエフェクタが前記所定の加速度で加速又は減速し、前記加減速終了位置を起点として前記作業区間の終点から次の前記作業区間の始点までの距離の1/2の距離を半径とする半円状の折り返し経路を前記エンドエフェクタが前記所定の速度で移動するように前記動作制御データを生成する第3の処理と、を実行する。
【0013】
上記の動作制御データ生成装置によると、上述した一定速度、所定の加速度及び所定の速度から加減速距離を求め、加減速開始位置から加減速距離だけ離間した位置を加減速終了位置とするので、必要以上に遠い位置に加減速終了位置が設定されないようにすることができる。このため、オペレータが安全を見て遠い位置に加減速終了位置を設定する場合に比べてエンドエフェクタの移動経路が短くなり、作業時間のロスを低減できる。
【0014】
更に、上記の動作制御データ生成装置によると、エンドエフェクタは上述した半円状の折り返し経路を移動するので、小さな半径の円(作業区間の終点から次の作業区間の始点までの距離の1/2の距離より小さい距離を半径とする円)に沿って移動する場合に比べて所定の速度(折り返し経路を移動するときの速度)を速くすることができる。このため、エンドエフェクタを所定の速度まで減速させるために必要な距離が短くなる。そして、エンドエフェクタが折り返し経路の終点に到達したときには所定の速度から加速を開始すればよいため、速度0から加速する場合に比べて速度が一定速度に到達するまでの移動距離も短くてよい。このため作業時間のロスを低減できる。
【0015】
更に、上記の動作制御データ生成装置によると、作業区間の終点、又は、作業区間の終点から所定距離離間した位置を加減速開始位置とするので、エンドエフェクタが作業区間の終点に到達するより前にエンドエフェクタが加減速を開始しないようにすることができる。このため作業区間でエンドエフェクタを一定速度で移動させることができる。
【0016】
更に、上記の動作制御データ生成装置によると、オペレータは作業区間を教示すればよく、特許文献1に記載の教示点Pkについては教示が不要であるので、オペレータの手間を低減できる。
よって上記の動作制御データ生成装置によると、作業区間でエンドエフェクタを一定速度で移動させつつ作業時間のロスを低減することを少ない教示の手間で実現できる。
【0017】
(2)前記制御部は、前記第3の処理において、前記折り返し経路の終点から次の前記作業区間の始点に向かって前記加減速距離だけ離間した位置まで前記エンドエフェクタが前記所定の加速度で減速又は加速するように前記動作制御データを生成してもよい。
【0018】
上記の動作制御データ生成装置によると、エンドエフェクタが次の作業区間の始点に到達したときにエンドエフェクタの速度が一定速度に達しているようにすることができる。
【0019】
(3)前記所定の加速度は、前記エンドエフェクタが直線上を移動するときに加減速可能な最大加速度であってもよい。
【0020】
上記の動作制御データ生成装置によると、加減速開始位置から加減速終了位置までエンドエフェクタを最大加速度で加速又は減速させるので、エンドエフェクタの速度が所定の速度に達するまでの移動距離を最短にできる。このため、作業時間のロスをより低減できる。
【0021】
(4)前記所定の速度は前記1/2の距離を半径とする円上を前記エンドエフェクタが移動するときに移動可能な最大速度であってもよい。
【0022】
上記の動作制御データ生成装置によると、半円状の折り返し経路を最短時間で移動できる。このため、作業時間のロスをより低減できる。
【0023】
(5)前記制御部は、前記第3の処理において、前記エンドエフェクタが前記作業区間の始点に到達するより前に前記エンドエフェクタに前記作業の開始を指示するように前記動作制御データを生成してもよい。
【0024】
作業区間データによって表される作業区間の始点にエンドエフェクタが到達したタイミングでエンドエフェクタに作業の開始を指示すると、エンドエフェクタに作業の開始を指示してから実際に作業が開始されるまでのタイムラグによって、実際に作業が開始される位置が、作業区間データによって表される作業区間の始点を通り過ぎた位置になる可能性がある。
上記の動作制御データ生成装置によると、上述したタイムラグを見越して、エンドエフェクタが作業区間の始点に到達するより前に作業の開始を指示するので、実際に作業が開始される位置を、作業区間データによって表される作業区間の始点に一致させること、あるいは作業区間の始点より前にすることができる。
【0025】
(6)前記所定の作業は、前記作業対象物に液材を噴射する作業であってもよい。
【0026】
上記の動作制御データ生成装置によると、作業区間でエンドエフェクタを一定速度で移動させることができるので、作業区間で液材を均一に噴射できる。
【0027】
本明細書によって開示される発明は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態1に係る塗装用ロボットの模式図
図2】制御装置の電気的構成を示すブロック図
図3】塗装ガンの移動経路の一例を示す模式図
図4】塗装ガンの速度の変化を示すグラフ
図5】動作制御データの生成のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0029】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図5によって説明する。以降の説明では図3に示す左右方向をX方向、上下方向をY方向、X方向とY方向との両方に直交する方向(紙面に垂直な方向)をZ方向と定義する。
【0030】
(1)塗装用ロボットの構成
図1を参照して、実施形態1に係る塗装用ロボット10(ロボットの一例)について説明する。塗装用ロボット10は被塗物(作業対象物の一例)に塗料40(液材の一例)を噴射することによって被塗物を塗装するロボットである。塗装用ロボット10は多軸のマニピュレータ11、ティーチングペンダント12及び制御装置13(動作制御データ生成装置の一例)を備えている。
【0031】
マニピュレータ11は床面に固定される固定ベース11A、鉛直軸回りに回転可能に固定ベース11Aに設けられている旋回ベース11B、旋回ベース11Bを回転駆動する図示しないサーボモータ、一端側が旋回ベース11Bに軸支されて軸回りに回動する第1アーム11C、第1アーム11Cを回転駆動する図示しないサーボモータ、一端側が第1アーム11Cの他端側に軸支されて軸回りに回動する第2アーム11D、第2アーム11Dを回転駆動する図示しないサーボモータ、第2アーム11Dの他端側に設けられ、3自由度(ヨー方向、ロール方向、ピッチ方向)の回転運動が可能な手首部11E、手首部11Eの先端側に取り付けられている塗装ガン11F、塗装ガン11Fの3次元の位置を検出する図示しないセンサなどを備えている。塗装ガン11Fはエンドエフェクタの一例である。エンドエフェクタは手先効果器と称されることもある。
【0032】
上述したセンサは、例えば各サーボモータが備えるエンコーダである。エンコーダによって各サーボモータの回転をカウントすることにより、塗装ガン11Fの3次元の位置を検出できる。
マニピュレータ11は上述した構成によって合計6自由度を有している。塗装ガン11Fはマニピュレータ11の動作範囲内であれば任意の位置及び姿勢をとることができる。
【0033】
ティーチングペンダント12はオペレータが塗装用ロボット10に動作を教示するための装置である。ティーチングペンダント12はオペレータが所持する小型の端末であり、制御装置13と有線接続(又は無線接続)されている。ティーチングペンダント12は塗料40の噴射区間(作業区間の一例)の始点を教示するための始点教示ボタンや、噴射区間の終点を教示するための終点教示ボタンなどを備えている。ティーチングペンダント12を用いた動作の教示についての説明は後述する。
【0034】
図2を参照して、制御装置13の電気的構成について説明する。制御装置13は制御部14、操作部15、記憶部16及びインタフェース部17を備えている。制御部14はCPU14A及びRAM14Bを備えている。操作部15は液晶ディスプレイなどの表示装置、及び、タッチパネル、キーボード、マウスなどの入力装置を備えている。記憶部16はハードディスクなどの記憶媒体を有している。記憶部16には塗装用ロボット10の動作を制御するための動作制御プログラムや動作制御データ等が記憶されている。インタフェース部17は制御部14にマニピュレータ11やティーチングペンダント12を接続するためのインタフェースである。制御装置13は記憶部16に記憶されている動作制御プログラムを実行することによってマニピュレータ11の動作を制御する。
【0035】
(2)ティーチングデータの作成
図3において一点鎖線50は被塗物30の平坦面30Aを塗装するときの塗装ガン11Fの移動経路の一例を示している。移動経路50においてP0は塗装ガン11Fの原点位置を示している。移動経路50においてAiからBiまでは塗装ガン11Fが塗料40を噴射する噴射区間であり、その他の区間は塗料40を噴射しない非噴射区間である。
【0036】
図3に示す例では水平方向に延びる複数の噴射区間が上下方向に並列に並んでおり、塗装ガン11Fが噴射区間を移動するときの移動方向が交互に変わる。塗装ガン11Fは、噴射区間を移動するとき、塗膜厚にムラが生じないように一定速度Vで移動しながら塗装するものとする。
【0037】
ティーチングデータ(作業区間データの一例)は上述した各噴射区間の始点Aiと終点Biとが記録されているデータである。ティーチングデータには塗装ガン11Fの向きなどの他のデータも記録されるが、ここでは他のデータについての説明は省略する。
ここではPTP(Point To Point)ティーチングによってティーチングデータを作成する場合を例に説明する。PTPティーチングでは、オペレータは噴射区間の始点Aiとする位置に塗装用ロボット10の塗装ガン11Fを手作業で移動させ、その状態でティーチングペンダント12の始点教示ボタンを押下する。オペレータが始点教示ボタンを押下すると、その時の塗装ガン11Fの位置がセンサによって取得され、噴射区間の始点Aiとしてティーチングデータに記録される。
【0038】
次に、オペレータは噴射区間の終点とする位置に塗装ガン11Fを手作業で移動させ、その状態で終点教示ボタンを押下する。オペレータが終点教示ボタンを押下すると、その時の塗装ガン11Fの位置がセンサによって取得され、噴射区間の終点Biとしてティーチングデータに記録される。これを繰り返すことによってティーチングデータが作成される。
【0039】
(3)動作制御データの生成
制御部14はティーチングデータに基づいて動作制御データを生成する。動作制御データは、塗装ガン11Fの移動経路50、移動経路50上の各区間における塗装ガン11Fの加速度、噴射開始位置、噴射停止位置などが設定されているデータである。動作制御データの生成では、制御部14は以下に説明する第1の処理、第2の処理及び第3の処理を実行する。
【0040】
(3-1)第1の処理
図4を参照して、第1の処理について説明する。第1の処理は、速度Vで移動する塗装ガン11Fを所定の加速度A[m/s]で減速させた場合に、塗装ガン11Fの速度が所定の速度V(<V)まで減速する距離(以下、減速距離Dという)を計算によって求める処理である。減速距離Dは加減速距離の一例である。
【0041】
上述した速度Vはオペレータによって指定される。所定の加速度Aは塗装ガン11Fが直線上を移動するときの加減速可能な最大加速度である。最大加速度は塗装用ロボット10の特性に応じて予め決まっている。所定の速度Vは前の噴射区間の終点Biと次の噴射区間の始点Ai+1との距離の1/2の距離Rを半径とする円上を塗装ガン11Fが移動するときの移動可能な最大速度(便宜上、最大円速度という)である。距離Rが決まると塗装用ロボット10の特性に応じて最大円速度Vが一意に決まる。
【0042】
図3を参照して、上述した減速距離Dの計算について具体的に説明する。制御部14は以下の式1によって距離Rを計算する。式1において(x、y、z)は噴射区間の終点Biの3次元座標であり、(x、y、z)は次の噴射区間の始点Ai+1の3次元座標である。
【数1】
【0043】
ここで、被塗物30の平坦面30Aが鉛直線を含む平面である場合は、距離Rは単純にYとYとの差の1/2の距離である。しかしながら、被塗物30の平坦面30Aは鉛直線に対して傾いている場合もある。このため、制御部14は3次元空間上の2点間の距離を2で除算することによって距離Rを求める。制御部14は求めた距離Rから最大円速度Vを特定する。
そして、制御部14は以下の式2から式4によって減速距離Dを計算する。具体的には、加速度Aは式2に示すように表される。
【数2】
/
【0044】
式2を変形することにより、塗装ガン11Fが減速距離Dを移動する時間tは式3に示すように表される。
【数3】
【0045】
距離、速度、加速度及び時間の関係は以下の式4によって表される。
【数4】
【0046】
制御部14は式3によって時間tを求め、速度V、最大加速度A及び時間tを式4に代入することによって減速距離Dを計算する。
【0047】
(3-2)第2の処理
図3を参照して、第2の処理について説明する。第2の処理は、1つの噴射区間の終点Biから塗装ガン11Fの移動方向に所定距離離間した位置を減速開始位置Gi(加減速開始位置の一例)とし、減速開始位置Giから移動方向に減速距離Dだけ離間した位置を、塗装ガン11Fの減速終了位置Ei(加減速終了位置の一例)として求める処理である。
ここで、噴射区間の終点Biから所定距離離間した位置を減速開始位置Giとしている理由は、終点Biに到達した塗装ガン11Fが減速を開始するまでにある程度のマージンを持たせるためである。
【0048】
(3-3)第3の処理
図3を参照して、第3の処理について説明する。第3の処理は、噴射区間の始点Aiから減速開始位置Giまで塗装ガン11Fが速度Vで移動し、減速開始位置Giから減速終了位置Eiまで塗装ガン11Fが最大加速度Aで減速し、前述した距離Rを半径とする半円状の折り返し経路Hiを塗装ガン11Fが最大円速度Vで移動するように動作制御データを生成する処理である。
図3において加速終了位置Ki(i≧2)は、直前の折り返し経路Hi-1の終点から次の噴射区間の始点Aiに向かって減速距離Dだけ離間した位置である。制御部14は、折り返し経路Hi-1の終点から次の噴射区間の手前の加速終了位置Kiまで塗装ガン11Fが最大加速度Aで加速するように動作制御データを生成する。
【0049】
以下、第3の処理について具体的に説明する。第3の処理では、制御部14は動作制御データに塗装ガン11Fの移動経路50、移動経路50上の各区間における塗装ガン11Fの加速度、噴射開始位置及び噴射停止位置を設定する。
【0050】
(3-3-1)塗装ガンの移動経路の設定
塗装ガン11Fの移動経路50の設定では、制御部14は以下の(A1)から(A8)を設定する。
【0051】
(A1)制御部14は、最初の噴射区間の始点A1から、塗装ガン11Fが当該最初の噴射区間を移動するときの移動方向とは逆側(図3において左側)に向かって所定距離離間した位置を最初の加速終了位置K1として設定する。
【0052】
(A2)制御部14は速度0の塗装ガン11Fを最大加速度Aで速度Vまで加速するために必要な距離を計算し、最初の加速終了位置K1から上述した逆側に向かって当該計算した距離だけ離間した位置を塗装ガン11Fの原点位置P0として設定する。
【0053】
(A3)制御部14は噴射区間の終点Biから塗装ガン11Fの移動方向に所定距離離間した位置を減速開始位置Giとして設定する。
【0054】
(A4)制御部14は第2の処理で求めた位置(すなわち減速開始位置Giから塗装ガン11Fの移動方向に減速距離Dだけ離間した位置)を減速終了位置Eiとして設定する。以降の説明では減速開始位置Giから減速終了位置Eiまでの区間を減速区間という。
【0055】
(A5)制御部14は、減速終了位置Eiを起点とする折り返し経路Hiであって、前述した1/2の距離Rを半径とする半円状の折り返し経路Hiを設定する。
【0056】
(A6)制御部14は折り返し経路Hiの終点を加速開始位置Siとして設定する。
【0057】
(A7)制御部14は加速開始位置Si(折り返し経路Hiの終点)から次の噴射区間の始点Ai+1に向かって減速距離Dだけ離間した位置を加速終了位置Ki+1として設定する。以降の説明では加速開始位置Siから加速終了位置Ki+1までの区間を加速区間という。
【0058】
(A8)制御部14は速度Vの塗装ガン11Fを速度0まで最大加速度Aで減速するために必要な距離を計算し、最後の減速開始位置G6から、塗装ガン11Fが最後の噴射区間を移動するときの移動方向(図3において左側)に向かって当該計算した距離だけ離間した位置を塗装ガン11Fの停止位置P1として設定する。
【0059】
(3-3-2)移動経路上の各区間における塗装ガンの加速度の設定
塗装ガン11Fの加速度の設定では、制御部14は以下の(B1)から(B6)を設定する。
【0060】
(B1)制御部14は原点位置P0から最初の加速終了位置K1までの区間の加速度を最大加速度Aに設定する。原点位置P0から最初の加速終了位置K1までの距離は速度0の塗装ガン11Fを最大加速度Aで加速したときに速度Vに達する距離であるので、塗装ガン11Fが最初の加速終了位置K1に到達したとき、塗装ガン11Fは速度Vに達している。
【0061】
(B2)制御部14は加速終了位置Kiから減速開始位置Giまでの区間の加速度を0に設定する。加速度0のため、塗装ガン11Fは当該区間を速度Vで定速移動する。
【0062】
(B3)制御部14は減速区間(減速開始位置Giから減速終了位置Eiまでの区間)の加速度を最大加速度Aに設定する。減速区間の距離は速度Vで移動する塗装ガン11Fを最大加速度Aで減速したときに塗装ガン11Fの速度が速度Vまで低下する距離であるので、塗装ガン11Fが減速終了位置Eiに到達したとき、塗装ガン11Fの速度は速度Vまで低下している。
【0063】
(B4)制御部14は折り返し経路Hiの加速度を0に設定する。加速度0のため、塗装ガン11Fは折り返し経路Hiを最大円速度Vで定速移動する。
【0064】
(B5)制御部14は加速区間(加速開始位置Siから加速終了位置Ki+1)の加速度を最大加速度Aに設定する。加速開始位置Siから加速終了位置Ki+1までの距離は速度Vで移動する塗装ガン11Fを最大加速度Aで加速したときに塗装ガン11Fの速度が速度Vに達する距離であるので、塗装ガン11Fが加速終了位置Ki+1に到達したとき、塗装ガン11Fの速度は速度Vに達している。
【0065】
(B6)制御部14は最後の噴射区間の減速開始位置G6から停止位置P1までの区間(塗装ガン11Fを減速させる区間)の加速度を最大加速度Aに設定する。
【0066】
(3-3-3)噴射開始位置及び噴射停止位置の設定
制御部14は、塗装ガン11Fに噴射を指示してから実際に塗料40が噴射され始めるまでのタイムラグを見越して、オペレータが教示した噴射区間の始点Aiより前に噴射開始位置を設定する。どの程度前に噴射開始位置を設定するかは塗装用ロボット10の特性などに応じて適宜に決定可能である。オペレータが教示した始点Aiより前に噴射開始位置を設定するので、実際に塗装を行うときは、オペレータが教示した始点Aiに塗装ガン11Fが到達するより前に塗装ガン11Fに噴射が指示される。
【0067】
噴射停止位置Biについても同様である。ただし、噴射を停止するタイミングが多少遅れても塗装品質への影響は少ないため、噴射停止位置についてはオペレータが教示した終点Biをそのまま設定してもよい。
【0068】
(3-4)動作制御データの生成のフロー
図5を参照して、動作制御データの生成のフローについて説明する。動作制御データの生成はオペレータが操作部15を操作して動作制御データの生成を指示すると開始される。オペレータは動作制御データの生成を指示するとき、前述した速度Vを指定するものとする。なお、速度Vは予めティーチングデータに設定されていてもよい。
【0069】
S101では、制御部14は前述した式1により、噴射区間の終点Biと次の噴射区間の始点Ai+1との距離の1/2の距離Rを計算する。
S102では、制御部14は距離Rを半径とする円上を塗装ガン11Fが移動するときの移動可能な最大円速度Vを求める。
【0070】
S103では、制御部14は前述した式3及び式4によって減速距離Dを求める。
S104では、制御部14は塗装ガン11Fの減速終了位置Eiを求める。
S105では、制御部14は動作制御データに塗装ガン11Fの移動経路50を設定する。具体的には、制御部14は前述した(A1)から(A8)を設定する。
【0071】
S106では、制御部14は動作制御データに各区間の加速度を設定する。具体的には、制御部14は前述した(B1)から(B6)を設定する。
S107では、制御部14は動作制御データに塗装ガン11Fの噴射開始位置及び噴射停止位置を設定する。
【0072】
(4)実施形態の効果
制御装置13によると、速度V、最大加速度V及び最大円速度Vから減速距離Dを求め、減速開始位置Giから減速距離Dだけ離間した位置を減速終了位置Eiとするので、必要以上に遠い位置に減速終了位置Eiが設定されないようにすることができる。このため、オペレータが安全を見て遠い位置に減速終了位置Eiを設定する場合に比べて移動経路50が短くなり、作業時間のロスを低減できる。
【0073】
更に、制御装置13によると、塗装ガン11Fは半径Rの半円状の折り返し経路Hiを移動するので、小さな半径の円に沿って移動する場合に比べて折り返し経路Hiを移動するときの速度Vを速くすることができる。このため、塗装ガン11Fを速度Vまで減速させるために必要な距離が短くなる。そして、塗装ガン11Fが折り返し経路Hiの終点(加速開始位置Si)に到達したときには速度Vから加速を開始すればよいため、速度0から加速する場合に比べて速度Vに到達するまでの移動距離も短くてよい。このため作業時間のロスを低減できる。
【0074】
更に、制御装置13によると、噴射区間の終点Biから所定距離離間した位置を減速開始位置Giとするので、塗装ガン11Fが終点Biに到達するより前に塗装ガン11Fが減速を開始しないようにすることができる。このため、噴射区間で塗料40を均一に噴射できる。
【0075】
更に、制御装置13によると、オペレータは噴射区間を教示すればよく、特許文献1に記載の教示点Pkについては教示が不要であるので、オペレータの手間を低減できる。
よって制御装置13によると、噴射区間で塗料40を均一に噴射しつつ作業時間のロスを低減することを少ない教示の手間で実現できる。
【0076】
制御装置13によると、折り返し経路Hiの終点(加速開始位置Si)から加速終了位置Ki+1まで塗装ガン11Fが最大加速度Aで加速するように動作制御データを生成するので、塗装ガン11Fが次の噴射区間の始点Ai+1に到達したときに塗装ガン11Fが速度Vに達しているようにすることができる。
【0077】
制御装置13によると、減速開始位置Giから減速終了位置Eiまで塗装ガン11Fを最大加速度Aで減速させるので、塗装ガン11Fの速度が最大円速度Vに達するまでの移動距離を最短にできる。このため、作業時間のロスをより低減できる。
【0078】
制御装置13によると、所定の速度Vは1/2の距離Rを半径とする円上を塗装ガン11Fが移動するときに移動可能な最大速度であるので、半円状の折り返し経路を最短時間で移動できる。このため、作業時間のロスをより低減できる。
【0079】
制御装置13によると、実際に塗料40の噴射が開始される位置を、ティーチングデータによって表される噴射区間の始点Aiに一致させること、あるいは噴射区間の始点Aiより前にすることができる。これにより、噴射区間の塗膜厚をより確実に均一化できる。
【0080】
制御装置13によると、噴射区間で塗装ガン11Fを一定速度Vで移動させることができるので、噴射区間で塗料を均一に噴射できる。このため均一な塗膜厚を確保できる。
【0081】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0082】
(1)上記実施形態では速度Vが最大円速度Vより大きい場合を例に説明したが、速度Vは最大円速度Vより小さくてもよい。例えば噴射する塗料40の種類によっては塗装ガン11Fを最大円速度Vより遅い速度で移動させる場合もある。その場合は噴射区間を通過した後に塗装ガン11Fが最大円速度Vまで加速され、最大円速度Vで折り返し経路を移動した後、速度Vまで減速されることになる。
【0083】
(2)上記実施形態では噴射区間の終点Biから塗装ガン11Fの移動方向に所定距離離間した位置を減速開始位置Giとしているが、終点Biを減速開始位置Giとしてもよい。このようにすると噴射区間の終点Biから減速開始位置Giまでの区間が不要になるので移動経路50をより短くできる。
【0084】
(3)上記実施形態では所定の加速度Aとして直線上を移動するときに加減速可能な最大加速度を例に説明したが、所定の加速度Aは必ずしも最大加速度Aでなくてもよい。
【0085】
(4)上記実施形態では所定の速度Vとして半径Rの円上を移動するときに移動可能な最大速度を例に説明したが、所定の速度Vは必ずしも最大速度でなくてもよい。
【0086】
(5)上記実施形態ではオペレータがティーチングペンダント12を用いて教示する場合を例に説明したが、教示用の模擬的な手吹き塗装ガンを用いて教示してもよい。例えばオペレータが教示用の手吹き塗装ガンのトリガを引くとカメラで塗装ガンの位置を検出してその位置を噴射区間の始点として記録し、オペレータがトリガを戻すとカメラで塗装ガンの位置を検出してその位置を噴射区間の終点として記録してもよい。
【0087】
ここで、前述したティーチングペンダント12を用いた教示ではオペレータが塗装ガン11Fを手作業で移動させる。塗装用ロボット10の塗装ガン11Fを手作業で移動させる場合は、各噴射区間の幅や隣り合う噴射区間の間隔を揃えることや、複数の噴射区間を完全に平行にすることが比較的容易である。これに対し、教示用の手吹き塗装ガンを用いる場合は各噴射区間の幅がばらついていたり、隣り合う噴射区間の間隔がばらついていたり、各噴射区間が完全に平行でなかったりすることもある。その場合は、各噴射区間の幅及び隣り合う噴射区間の間隔が等しく、且つ、全ての噴射区間が平行になるように制御装置13がティーチングデータを補正してもよい。
【0088】
(6)上記実施形態では塗装用ロボット10の制御装置13が動作制御データを生成する場合を例に説明したが、外部のコンピュータで動作制御データを生成し、生成した動作制御データを制御装置13の記憶部16に記憶させてもよい。
【0089】
(7)上記実施形態ではエンドエフェクタとして塗装用ロボット10が備える塗装ガン11Fを例に説明したが、エンドエフェクタはこれに限られない。例えば、エンドエフェクタは作業対象物に粉体塗料、離型剤、潤滑剤、シーリング材などの液材を噴射するものであってもよいし、作業対象物を溶接するものであってもよい。
【0090】
(8)上記実施形態ではロボットがマニピュレータ11を備えている場合を例に説明したが、ロボットは必ずしもマニピュレータ11を備えていなくてもよい。
【0091】
(9)上記実施形態は以下の付記項に示す発明として把握することもできる。
[付記項1]
作業区間でエンドエフェクタを移動させながら作業対象物に対して所定の作業を行うロボットの動作制御データを生成する動作制御データ生成装置であって、
前記作業区間を表す作業区間データが記憶される記憶部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記作業区間データが表す前記作業区間の始点に前記エンドエフェクタが到達するより前に前記エンドエフェクタに作業の開始を指示するように前記動作制御データを生成する、ロボットの動作制御データ生成装置。
【符号の説明】
【0092】
10:塗装用ロボット(ロボットの一例)
11F:塗装ガン(エンドエフェクタの一例)
13:制御装置(動作制御データ生成装置の一例)
14:制御部
16:記憶部
Gi:減速開始位置(加減速開始位置の一例)
Ei:減速終了位置(加減速終了位置の一例)
Ai:噴射区間の始点
Bi:噴射区間の終点
Hi:折り返し経路
図1
図2
図3
図4
図5