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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】手動式油圧作動装置
(51)【国際特許分類】
   B26B 13/26 20060101AFI20240926BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B26B13/26
B25F5/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021054184
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022151216
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000128692
【氏名又は名称】株式会社オグラ
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】鎮野 悟
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058146(JP,A)
【文献】実開昭59-160172(JP,U)
【文献】米国特許第06679340(US,B1)
【文献】特開2013-052454(JP,A)
【文献】特開平08-155860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 13/26
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
作動部を有する工具と、
作業者により操作される操作レバーと、
前記操作レバーに設けられたピストンと、
前記作動部を移動させるための往復移動可能なスライド部材と、
複数の油室と、
複数の前記油室間で移動する圧油が通る油路と、
を備え、
作業者により前記操作レバーが操作されると前記ピストンが往復移動し、このことにより複数の前記油室間で圧油が前記油路を通って移動することにより前記スライド部材が移動し、よって前記作動部が移動するようになっており、
前記操作レバーを操作することにより行われる前記作動部の移動に抗する力が当該作動部に与えられたときに、前記スライド部材を移動させるために複数の前記油室のうち一の前記油室に送られる圧油の量が減少する構成となっており、
前記ピストンは、第1ピストンおよび第2ピストンを有しており、
作業者により前記操作レバーが操作されると前記第1ピストンおよび前記第2ピストンが一体的に移動し、前記第1ピストンの近傍には第1ピストン室が設けられており、前記第2ピストンの近傍には第2ピストン室が設けられており、
前記ピストンが往復移動すると、複数の前記油室のうちある前記油室から前記第1ピストン室および前記第2ピストン室に圧油が送られた後、前記第1ピストン室および前記第2ピストン室から別の前記油室に圧油が送られるようになっており、
前記操作レバーを操作することにより行われる前記作動部の移動に抗する力が当該作動部に与えられたときに、複数の前記油室のうちある前記油室から前記第2ピストン室に送られた圧油は元の前記油室に戻される構成となっている、手動式油圧作動装置。
【請求項2】
前記第1ピストンにおける前記第1ピストン室に面する端面の面積は前記第2ピストンにおける前記第2ピストン室に面する端面の面積よりも小さくなっている、請求項記載の手動式油圧作動装置。
【請求項3】
前記油路にはチェックバルブが設けられており、前記操作レバーを操作することにより行われる前記作動部の移動に抗する力が当該作動部に与えられたときに、前記第1ピストン室から前記別の前記油室に送られる圧油が前記チェックバルブに作用することにより前記第2ピストン室から前記別の前記油室への圧油の前記油路が前記チェックバルブにより遮られる構成となっている、請求項または記載の手動式油圧作動装置。
【請求項4】
前記第2ピストン室から元の前記油室に圧油を戻すための戻し油路が設けられており、前記戻し油路への入口を塞ぐ圧力解放バルブが設けられており、
前記操作レバーを操作することにより行われる前記作動部の移動に抗する力が当該作動部に与えられたときに、前記第1ピストン室から前記別の前記油室に送られる圧油が前記圧力解放バルブに作用することにより前記戻し油路への前記入口が開かれる構成となっている、請求項記載の手動式油圧作動装置。
【請求項5】
前記第1ピストン室から元の前記油室に圧油を戻すための別の戻し油路が設けられており、前記別の戻し油路への入口を塞ぐリリーフバルブが設けられており、
前記操作レバーを操作することにより行われる前記作動部の移動に抗する更に大きな力が当該作動部に与えられたときに、前記第1ピストン室から前記別の前記油室に送られる圧油が前記リリーフバルブに作用することにより前記別の戻し油路への前記入口も開かれる構成となっている、請求項記載の手動式油圧作動装置。
【請求項6】
前記操作レバーは軸を中心として所定の角度の範囲内で回転可能となっている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の手動式油圧作動装置。
【請求項7】
前記作動部は一対の切断部材であり、各前記切断部材は軸を中心として所定の角度の範囲内で回転可能となっている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の手動式油圧作動装置。
【請求項8】
前記油室は、第1油室、第2油室および第3油室を含み、
前記スライド部材にはフランジ部材が取り付けられており、前記フランジ部材は前記第2油室と前記第3油室との間に設けられており、
作業者により前記操作レバーが操作されると前記ピストンが移動することにより前記第1油室から前記第2油室または前記第3油室に圧油が送られることにより前記フランジ部材が移動するようになっている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の手動式油圧作動装置。
【請求項9】
前記第1油室から圧油が送られる油室を前記第2油室および前記第3油室の間で切り替える切替バルブおよび前記切替バルブを操作するための操作ノブが設けられている、請求項記載の手動式油圧作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が操作レバーを操作することにより工具が作動するような手動式油圧作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば交通事故で車内に閉じ込められた人を救出する際や、地震災害で建物内に閉じ込められた人を救出する際に、可搬型の油圧作動装置が用いられる。このような油圧作動装置として、特許文献1に開示されるような、カッターやスプレッダー等の先端工具が、圧力油を発生させるモータ付きポンプ部に直接取り付けられる装置や、特許文献2に開示されるような、先端工具とモータ付きポンプ部とが油圧ホースにより接続される装置が従来から知られている。また、レスキューの用途に用いられる可搬式の油圧作動装置として、操作レバーを作業者が何度も往復移動させることにより先端工具が作動するような手動式のものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-78988号公報
【文献】特開2005-201285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手動式の油圧作動装置では、例えばカッターにより鉄筋等の丸棒を切断したりスプレッダーにより一対の対象部材をこじ開けたりする瞬間に先端工具に大きな力がかかり、先端工具に送られる圧油の圧力も大きくなるため、作業者が操作レバーを操作するのに必要な力が非常に大きくなってしまい、作業者にとって大きな負荷になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、操作レバーを操作することにより行われる作動部の移動に抗する力が当該作動部に与えられたときに、作業者が操作レバーを移動させるのに必要な力が小さくなり、よって作業者の負荷を軽減することができる手動式油圧作動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の手動式油圧作動装置は、
本体部と、
作動部を有する工具と、
作業者により操作される操作レバーと、
前記操作レバーに設けられたピストンと、
前記作動部を移動させるための往復移動可能なスライド部材と、
複数の油室と、
複数の前記油室間で移動する圧油が通る油路と、
を備え、
作業者により前記操作レバーが操作されると前記ピストンが往復移動し、このことにより複数の前記油室間で圧油が前記油路を通って移動することにより前記スライド部材が移動し、よって前記作動部が移動するようになっており、
前記操作レバーを操作することにより行われる前記作動部の移動に抗する力が当該作動部に与えられたときに、前記スライド部材を移動させるために複数の前記油室のうち一の前記油室に送られる圧油の量が減少する構成となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の手動式油圧作動装置によれば、操作レバーを操作することにより行われる作動部の移動に抗する力が当該作動部に与えられたときに、作業者が操作レバーを移動させるのに必要な力が小さくなり、よって作業者の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態による切断装置を示す正面図である。
図2図1に示す状態から一対の切断部材が閉じたときの状態を示す正面図である。
図3図1に示す切断装置の内部構成を概略的に示す概略構成図である。
図4図1に示す切断装置の一対の切断部材を開状態から閉じる際に操作レバーが第1位置にあるときの切断装置の内部の圧油の状態を示す概略構成図である。
図5図4に示す切断装置の内部構成のA-A矢視による断面図である。
図6】操作レバーが第1位置から第2位置に移動したときの切断装置の内部の圧油の状態を示す概略構成図である。
図7図6に示す切断装置の内部構成のB-B矢視による断面図である。
図8図1等に示す切断装置において一対の切断部材が鉄筋等の丸棒に接触したときの切断装置の内部の圧油の状態を示す概略構成図である。
図9図8に示す切断装置の内部構成のC-C矢視による断面図である。
図10図1に示す切断装置の一対の切断部材を閉状態から開く際に操作レバーが第1位置にあるときの切断装置の内部の圧油の状態を示す概略構成図である。
図11図1に示す切断装置の一対の切断部材を閉状態から開く際に一対の切断部材が対象部材に接触したときの切断装置の内部の圧油の状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態による切断装置(油圧作動装置)は、レスキュー等の用途に使用されるものであり、切断部により鉄筋等の丸棒を切断したり対象部材をこじ開けたりすることができるものである。図1乃至図11は、本実施の形態による切断装置を示す図である。なお、図3乃至図11において、圧油や戻り油の油路を見やすくするために、これらの油路の周囲の箇所における断面を示すためのハッチの描写を省略している。
【0010】
本実施の形態による切断装置10は、作業者が操作レバー24を図1において実線で示す第1位置と二点鎖線で示す第2位置との間で複数回往復移動させるだけで工具30が作動するものである。具体的には、工具30は軸32を中心として回転する一対の切断部材31を有しており、作業者が操作レバー24を図1において実線で示す第1位置と二点鎖線で示す第2位置との間で複数回往復移動させると、軸32を中心して一対の切断部材31がそれぞれ反対方向に回転することにより、一対の切断部材31が開いたり閉じたりするようになっている。また、切断装置10には一対の切断部材31の移動方向を決めるための操作ノブ28が設けられており、操作ノブ28を回転させることにより一対の切断部材31の移動方向を図1に示すような開状態から閉じる方向または図2に示すような閉状態から開く方向に切り替えることができるようになっている。また、本実施の形態の切断装置10では、一対の切断部材31が開状態から閉じる方向に移動して鉄筋等の丸棒W1(図4図6図8参照)に接触したり、一対の切断部材31が閉状態から開く方向に移動して対象部材W2(図10図11参照)に接触したりすると、作業者が操作レバー24を往復移動させるのに必要な力が軽減されるようになっている。このような切断装置10の構成の詳細について以下に説明する。
【0011】
図1乃至図3に示すように切断装置10は、本体部20と、本体部20に取り付けられた第1ハンドル22と、操作レバー24と、棒状の第2ハンドル26と、操作ノブ28と、工具30とを備えている。作業者が切断装置10を持ち運ぶ際に当該作業者は第1ハンドル22を握るようになっている。また、操作レバー24は軸25を中心として図1において実線で示す第1位置と二点鎖線で示す第2位置との間で回転可能となっている。作業者が切断装置10により鉄筋等の丸棒W1を切断したり一対の対象部材W2の間をこじ開けたりする際に、当該作業者は一方の手(例えば、左手)で第2ハンドル26を握るとともに他方の手(例えば、右手)で操作レバー24を第1位置と第2位置との間で複数回往復移動させるようになっている。また、操作ノブ28は図1等の矢印に示す方向に沿って90°の範囲内の領域で第3位置と第4位置との間で回転可能となっている。操作ノブ28が第3位置に位置しているときには、作業者が操作レバー24を第1位置と第2位置との間で複数回往復移動させると一対の切断部材31は開状態から閉じる方向に移動するようになっている。一方、操作ノブ28を第3位置から90°回転させて第4位置に位置させると、作業者が操作レバー24を第1位置と第2位置との間で複数回往復移動させると一対の切断部材31は閉状態から開く方向に移動するようになっている。
【0012】
工具30の構成について図1乃至図3を用いて説明する。一対の切断部材31の各々は、軸32を中心として図1に示す開位置と図2に示す閉位置との間で回転するようになっている。より詳細には、図3に示すように、本体部20の内部には、中空のロッド部材33と、ロッド部材33を収容するスライド部材34とがそれぞれ設けられている。スライド部材34は、ロッド部材33を収容した状態で図3における左右方向にスライド可能となっている。スライド部材34の先端には軸36が設けられており、この軸36には一対の接続部材38の各々の一端が取り付けられている。ここで、各接続部材38はスライド部材34に対して軸36を中心として回転可能となっている。また、各接続部材38の他端には軸40が設けられており、各軸40には各切断部材31の基端箇所が取り付けられている。ここで、各切断部材31は各接続部材38に対して各軸40を中心として回転可能となっている。このような構成により、スライド部材34がロッド部材33を収容した状態で図3における左方向に移動すると、各接続部材38が軸36を中心として互いに離間する方向に回転し、各軸40が互いに離間する方向に移動するため、一対の切断部材31は軸32を中心として開状態から閉じる方向に回転する。一方、スライド部材34がロッド部材33を収容した状態で図3における右方向に移動すると、各接続部材38が軸36を中心として互いに接近する方向に回転し、各軸40が互いに接近する方向に移動するため、一対の切断部材31は軸32を中心として閉状態から開く方向に回転する。
【0013】
次に、スライド部材34を図3における左右方向に移動させる構成について図3図4等を用いて説明する。操作レバー24の根元にはピストン50が設けられており、軸25を中心として操作レバー24が第1位置と第2位置との間で往復移動するとピストン50は図3図4等における上下方向に往復移動するようになっている。また、ピストン50は、第1ピストン51および第2ピストン52から構成されており、これらの第1ピストン51および第2ピストン52は一体的に図3図4等における上下方向に往復移動するようになっている。ここで、操作レバー24の根元には円柱形状の第2ピストン52が設けられており、この第2ピストン52における操作レバー24から遠い側の端面には円柱形状の第1ピストン51が取り付けられている。また、第1ピストン51の軸心および第2ピストン52の軸心が略同一となるような位置で第1ピストン51が第2ピストン52に取り付けられている。また、第1ピストン51の下方には第1ピストン室54が設けられており、第2ピストン52の下方には第2ピストン室56が設けられている。また、第1ピストン51の直径は第2ピストン52の直径よりも小さくなっている。このため、第1ピストン51の底面(第1ピストン室54に面する端面)の面積は第2ピストン52の底面(第2ピストン室56に面する端面)の面積よりも小さくなる。また、第1ピストン室54の容積は第2ピストン室56の容積よりも小さくなっている。
【0014】
図3および図4等に示すように、本体部20の内部には第1油室60、第2油室72および第3油室74が設けられている。そして、軸25を中心として操作レバー24を第1位置と第2位置との間で往復移動させるとピストン50が図3等における上下方向に往復移動することによって第1油室60から第2油室72または第3油室74に圧油が送られたり第2油室72または第3油室74から第1油室60に圧油が戻されたりするようになっている。より詳細には、図3および図4等に示すように、第2油室72の内部にスライド部材34が配置されている。また、スライド部材34の内部に中空のロッド部材33が収容されているが、このロッド部材33の内部空間と第2油室72とが連通している。また、スライド部材34の基端箇所にはフランジ部材35が取り付けられており、このフランジ部材35により第2油室72と第3油室74とが区画されている。スライド部材34やフランジ部材35が図3図4等における左方向に移動すると第2油室72の容積が減少するとともに第3油室74の容積が増加する。一方、スライド部材34やフランジ部材35が図3図4等における右方向に移動すると第2油室72の容積が増加するとともに第3油室74の容積が減少する。一対の切断部材31が図1図3図4等に示す開位置に位置しているときには第2油室72の容積が最大になるとともに第3油室74の容積が最小となる。一方、一対の切断部材31が図2図10等に示す開位置に位置しているときには第2油室72の容積が最小になるとともに第3油室74の容積が最大となる。
【0015】
図4等に示すように、本体部20の内部には複数の油路62、64、66、68、70、76、78等が設けられている。第1油路62は第1油室60から第2ピストン室56に、第2油路64は第1油室60から第1ピストン室54に、それぞれ圧油を送るようになっている。ここで、第1油室60と第1油路62との間、および第1油室60と第2油路64との間には逆止弁がそれぞれ設けられており、第1油路62や第2油路64から第1油室60に圧油が戻らないようになっている。また、後述する切替バルブ90が図4乃至図9に示す位置にあるときには、第1ピストン室54から第2油路64に送られた圧油および第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油が合流して第4油路68に送られ、この第4油路68から第6油路76を経由して第3油室74に送られるようになっている。また、後述する切替バルブ90が図4乃至図9に示す位置にあるときには、第2油室72から排出された圧油が第5油路70から第1油室60に戻されるようになる。
【0016】
一方、後述する切替バルブ90が図10および図11に示す位置にあるときには、第1ピストン室54から第2油路64に送られた圧油および第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油が合流して第7油路78に送られ、この第7油路78から第5油路70を経由して第2油室72に送られるようになっている。また、後述する切替バルブ90が図10および図11に示す位置にあるときには、第3油室74から排出された圧油が第6油路76から第1油室60に戻されるようになる。
【0017】
次に、切替バルブ90の構成の詳細について説明する。切替バルブ90は操作ノブ28に取り付けられた細長い円柱形状のものからなり、作業者により操作ノブ28が回転させられると切替バルブ90も回転するようになっている。また、切替バルブ90には2つの貫通穴92、94が形成されており、各貫通穴92、94の延びる方向は90°異なっている。言い換えると、切替バルブ90の断面において各貫通穴92、94は互いに直交する方向に延びている。上述したように操作ノブ28が第3位置に位置しているときには、切替バルブ90は図4乃至図9に示す位置となり、第2油路64や第3油路66が第1貫通穴92により第4油路68と連通するようになる。この場合、第2油路64や第3油路66と、第7油路78とは連通しなくなる。一方、操作ノブ28が第4位置に位置しているときには、切替バルブ90は図10および図11に示す位置となり、第2油路64や第3油路66が第2貫通穴94により第7油路78と連通するようになる。この場合、第2油路64や第3油路66と、第4油路68とは連通しなくなる。このようにして、操作ノブ28を回転させることにより、第1ピストン室54や第2ピストン室56から圧油が送られる油室が第2油室72と第3油室74との間で切り替えられるようになる。
【0018】
図5は、図4に示す切断装置10の内部構成のA-A矢視による断面図である。図5に示すように、第2ピストン52の近傍には圧力解放バルブ80が設けられている。圧力解放バルブ80には、第2油路64に面するフランジ81が取り付けられている。また、フランジ81の上方にはバネ部材82が設けられており、このバネ部材82により圧力解放バルブ80に対して図5における下方に押圧する力が常に加えられるようになっている。また、圧力解放バルブ80の先端にはピン部材84が設けられている。このピン部材84の下方には、圧油を第1油室60に戻すための戻し油路87が設けられている。通常時は、バネ部材82により圧力解放バルブ80に対して図5における下方に押圧する力が常に加えられることによりピン部材84が戻し油路87への入口を塞ぎ、第3油路66から戻し油路87に圧油が送られないようになっている。また、圧力解放バルブ80の近傍にはチェックバルブ86が設けられており、通常時はこのチェックバルブ86が第3油路66を塞がないようになっている。このことにより、第1ピストン室54から第2油路64に送られた圧油および第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油が合流して第4油路68または第7油路78に送られるようになる。
【0019】
また、図5等に示すように、圧力解放バルブ80の下方においてリリーフバルブ88が第2油路64設けられており、このリリーフバルブ88の下方には、圧油を第1油室60に戻すための戻し油路89が設けられている。また、リリーフバルブ88にはバネ部材88aが取り付けられており、このバネ部材88aによりリリーフバルブ88に対して図5における上方に押圧する力が常に加えられるようになっている。通常時はリリーフバルブ88により戻し油路89への入口が塞がれるため、第2油路64から戻し油路89により第1油室60に圧油が戻されることはない。一方、リリーフバルブ88に大きな圧力がかかることによりバネ部材88aによる押圧力に抗してリリーフバルブ88が図5における下方向に移動すると、戻し油路89への入口が開かれるため、第2油路64から戻し油路89により第1油室60に圧油が戻されるようになる。
【0020】
次に、このような構成からなる本実施の形態の切断装置10の動作について説明する。まず、一対の切断部材31を開状態から閉じる方向に移動させることにより鉄筋等の丸棒W1を一対の切断部材31の間で切断する動作について説明する。
【0021】
最初に、作業者は操作ノブ28を回すことにより当該操作ノブ28を第3位置に位置させる。そして、図1に示すように一対の切断部材31が開状態にあるときに、作業者が一方の手(例えば、左手)で第2ハンドル26を握るとともに他方の手(例えば、右手)で操作レバー24を第1位置と第2位置との間で複数回往復移動させると、ピストン50が図3図4等における上下方向に移動することにより第1油室60から第3油室74に圧油が送られ、第3油室74に送られた圧油によってフランジ部材35が図3図4等における左方向に押される。このことにより、フランジ部材35に取り付けられたスライド部材34がロッド部材33を収容した状態で図3図4等における左方向に移動する。そうすると、各接続部材38が軸36を中心として互いに離間する方向に回転し、各軸40が互いに離間する方向に移動するため、一対の切断部材31は軸32を中心として開状態から閉じる方向に回転する。
【0022】
このような動作についてより詳細に説明すると、図4に示すような第1位置から図6に示すような第2位置まで操作レバー24が作業者により移動させられると、ピストン50が図4図6等における上方向に移動する。このことにより、図6に示すように、第1油室60内の圧油が第1油路62を経由して第2ピストン室56に送られるとともに第2油路64を経由して第1ピストン室54に送られる。図6において、第1油室60から第1ピストン室54および第2ピストン室56に送られた圧油を、第1油室60内や第2油室72内にある圧油とは異なる表示方法(具体的には、斜線)で示す。次に、作業者が操作レバー24を第6に示すような第2位置から図4に示すような第1位置に戻すと、ピストン50が図4図6等における下方向に移動するが、第1油室60と第1油路62との間、および第1油室60と第2油路64との間には逆止弁がそれぞれ設けられているため、第1ピストン室54や第2ピストン室56の内部にある圧油は第1油室60に戻されない。代わりに、第1ピストン室54から圧油が第2油路64に送られるとともに第2ピストン室56から圧油が第3油路66に送られ、これらの第2油路64および第3油路66にそれぞれ送られた圧油が合流して切替バルブ90の貫通穴92を通ることにより第4油路68に送られる。そして、第4油路68から第6油路76を経由して第3油室74に圧油が送られる。このようにして、第3油室74に送られた圧油によってフランジ部材35が図3図4等における左方向に押されるようになる。作業者が操作レバー24を図4に示す第1位置と図6に示す第2位置との間で複数回往復移動させることにより、フランジ部材35が徐々に図3図4等における左方向に移動し、よって一対の切断部材31が徐々に閉じるようになる。
【0023】
そして、図8に示すように一対の切断部材31が鉄筋等の丸棒W1に接触すると、スライド部材34やフランジ部材35を図8における左方向に移動させるのに大きな力が必要になる。この場合は、第1ピストン室54や第2ピストン室56から第3油室74に送られる圧油の圧力が大きくなる。すなわち、第3油室74内の圧油の圧力は、第1油室60や第2油室72内の圧油の圧力よりも大きくなる。図8において、圧力が大きくなった圧油を、圧力が大きくなっていない圧油とは異なる表示方法(具体的には、黒地に白の水玉模様)で示している。この場合は、図9において、第1ピストン室54から第2油路64に送られる圧油の圧力も大きくなるので、この圧油によりバネ部材82による押圧力に抗してフランジ81が図9における上方向に移動し、ピン部材84も図9における上方向に移動する。このことにより、戻し油路87への入口が開かれ、第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油はこの第3油路66から戻し油路87により第1油室60に戻される。また、第1ピストン室54から第2油路64に送られる圧油の圧力が大きくなることにより、この圧油によりチェックバルブ86が図9における左方向に押され、チェックバルブ86により第3油路66が塞がれる。このことにより、第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油は第1ピストン室54から第2油路64に送られた圧油と合流しなくなる。ここで、第1ピストン51の底面の面積が第2ピストン52の底面の面積よりも小さいため、ピストン50が図8等における下方に移動したときに、第1ピストン室54から第2油路64に送られた圧油の圧力のほうが第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油の圧力よりも大きくなる。このため、チェックバルブ86には図9等において第2油路64内の圧油によって右側から左方向に加えられる力がより大きくなるため、チェックバルブ86により第3油路66が塞がれる状態が維持される。
【0024】
このことにより、図8に示すように一対の切断部材31が鉄筋等の丸棒W1に接触すると、ピストン50が上下方向に往復移動したときに、第1ピストン室54から第2油路64に送られた圧油は切替バルブ90の貫通穴92を通ることにより第4油路68に送られ、第4油路68から第6油路76を経由して第3油室74に圧油が送られるが、第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油は第3油室74に送られることなく第1油室60に戻されるようになる。ここで、第1ピストン室54の容積は第2ピストン室56の容積よりも小さいため、ピストン50を上下方向に一回往復移動させたときの第3油室74に送られる圧油の量も十分に少なくなる。このことにより、スライド部材34やフランジ部材35の移動量も少なくなる。また、第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油は第1油室60に戻され、第1ピストン室54から第2油路64に送られた圧油のみが第3油室74に送られるため、第1ピストン室54および第2ピストン室56の両方から第3油室74に圧油を送る場合と比較して圧油の圧力が小さくなる。このため、作業者が操作レバー24を第2位置から第1位置に戻すのに必要な力も小さくなり、作業者の負荷を軽減することができる。
【0025】
なお、例えば一対の切断部材31に接触している丸棒W1が硬すぎる等により、第1ピストン室54から第3油室74に送られる圧油の圧力が更に大きくなると、第2油路64内の圧油の圧力も更に大きくなるため、バネ部材88aによる押圧力に抗して圧油がリリーフバルブ88を図9等における下方に押圧する。このようにして、リリーフバルブ88に大きな圧力がかかることによりバネ部材88aによる押圧力に抗してリリーフバルブ88が図9における下方向に移動すると、戻し油路89への入口が開かれるため、第3油路66から戻し油路89により第1油室60に圧油が戻される。この場合は、第1ピストン室54内の圧油および第2ピストン室56内の圧油は全て第1油室60に戻され、第3油室74には圧油が送られなくなる。このことにより、第3油室74内の圧油が過圧となってしまい切断装置10が故障してしまうことを防止することができる。
【0026】
次に、一対の切断部材31を閉状態から開く方向に移動させることにより一対の対象部材W2の隙間を一対の切断部材31によりこじ開ける動作について説明する。
【0027】
最初に、作業者は操作ノブ28を回すことにより当該操作ノブ28を第4位置に位置させる。そして、図10に示すように一対の切断部材31が閉状態にあるときに、作業者が一方の手(例えば、左手)で第2ハンドル26を握るとともに他方の手(例えば、右手)で操作レバー24を第1位置と第2位置との間で複数回往復移動させると、ピストン50が図10等における上下方向に移動することにより第1油室60から第2油室72に圧油が送られ、第2油室72に送られた圧油によってフランジ部材35が図10等における右方向に押される。このことにより、フランジ部材35に取り付けられたスライド部材34がロッド部材33を収容した状態で図10等における右方向に移動する。そうすると、各接続部材38が軸36を中心として互いに接近する方向に回転し、各軸40が互いに接近する方向に移動するため、一対の切断部材31は軸32を中心として閉状態から開く方向に回転する。
【0028】
このような動作についてより詳細に説明すると、作業者により操作レバー24が第1位置から第2位置まで移動させられると、ピストン50が図10等における上方向に移動する。このことにより、第1油室60内の圧油が第1油路62を経由して第2ピストン室56に送られるとともに第2油路64を経由して第1ピストン室54に送られる。次に、作業者が操作レバー24を第2位置から第1位置に戻すと、ピストン50が図10等における下方向に移動するが、第1油室60と第1油路62との間、および第1油室60と第2油路64との間には逆止弁がそれぞれ設けられているため、第1ピストン室54や第2ピストン室56の内部にある圧油は第1油室60に戻されない。代わりに、第1ピストン室54から圧油が第2油路64に送られるとともに第2ピストン室56から圧油が第3油路66に送られ、これらの第2油路64および第3油路66にそれぞれ送られた圧油が合流して切替バルブ90の第2貫通穴94を通ることにより第7油路78に送られる。そして、第7油路78から第5油路70を経由して第2油室72に圧油が送られる。図10において、第1ピストン室54や第2ピストン室56から第2油室72に送られる圧油を、第1油室60や第3油室74に貯留されている圧油とは異なる表示方法(具体的には、斜線)で示している。このようにして、第2油室72に送られた圧油によってフランジ部材35が図10等における右方向に押されるようになる。作業者が操作レバー24を第1位置と第2位置との間で複数回往復移動させることにより、フランジ部材35が徐々に図10等における右方向に移動し、よって一対の切断部材31が徐々に開くようになる。
【0029】
そして、図11に示すように一対の切断部材31が対象部材W2に接触すると、スライド部材34やフランジ部材35を図11における右方向に移動させるのに大きな力が必要になる。この場合は、第1ピストン室54や第2ピストン室56から第2油室72に送られる圧油の圧力が大きくなる。すなわち、第2油室72内の圧油の圧力は、第1油室60や第3油室74内の圧油の圧力よりも大きくなる。図11において、圧力が大きくなった圧油を、圧力が大きくなっていない圧油とは異なる表示方法(具体的には、黒地に白の水玉模様)で示している。この場合は、第1ピストン室54から第2油路64に送られる圧油の圧力も大きくなる。このため、一対の切断部材31により鉄筋等の丸棒W1を切断するときの切断装置10の内部構成を示す図9と同様に、第1ピストン室54から第2油路64に送られる圧油によりバネ部材82による押圧力に抗してフランジ81が図9における上方向に移動し、ピン部材84も図9における上方向に移動する。このことにより、戻し油路87への入口が開かれ、第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油はこの第3油路66から戻し油路87により第1油室60に戻される。また、第1ピストン室54から第2油路64に送られる圧油の圧力が大きくなることにより、この圧油によりチェックバルブ86が図9における左方向に押され、チェックバルブ86により第3油路66が塞がれる。このことにより、第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油は第1ピストン室54から第2油路64に送られた圧油と合流しなくなる。
【0030】
このことにより、図11に示すように一対の切断部材31が対象部材W2に接触すると、ピストン50が上下方向に往復移動したときに、第1ピストン室54から第2油路64に送られた圧油は切替バルブ90の貫通穴92を通ることにより第7油路78に送られ、第7油路78から第5油路70を経由して第2油室72に圧油が送られるが、第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油は第2油室72に送られることなく第1油室60に戻されるようになる。ここで、第1ピストン室54の容積は第2ピストン室56の容積よりも小さいため、ピストン50を上下方向に一回往復移動させたときの第3油室74に送られる圧油の量も十分に少なくなる。このことにより、スライド部材34やフランジ部材35の移動量も少なくなる。また、第2ピストン室56から第3油路66に送られた圧油は第1油室60に戻され、第1ピストン室54から第2油路64に送られた圧油のみが第2油室72に送られるため、第1ピストン室54および第2ピストン室56の両方から第2油室72に圧油を送る場合と比較して圧油の圧力が小さくなる。このため、作業者が操作レバー24を第2位置から第1位置に戻すのに必要な力も小さくなり、作業者の負荷を軽減することができる。
【0031】
なお、例えば一対の切断部材31に接触している対象部材W2がこじ開けられない等により、第1ピストン室54から第2油室72に送られる圧油の圧力が更に大きくなると、第2油路64内の圧油の圧力も更に大きくなるため、バネ部材88aによる押圧力に抗して圧油がリリーフバルブ88を図9等における下方に押圧する。このようにして、リリーフバルブ88に大きな圧力がかかることによりバネ部材88aによる押圧力に抗してリリーフバルブ88が図9における下方向に移動すると、戻し油路89への入口が開かれるため、第3油路66から戻し油路89により第1油室60に圧油が戻される。この場合は、第1ピストン室54内の圧油および第2ピストン室56内の圧油は全て第1油室60に戻され、第2油室72には圧油が送られなくなる。このことにより、第2油室72内の圧油が過圧となってしまい切断装置10が故障してしまうことを防止することができる。
【0032】
以上のような構成からなる本実施の形態の切断装置10によれば、本体部20と、作動部(具体的には、切断部材31)を有する工具30と、作業者により操作される操作レバー24と、操作レバー24に設けられたピストン50と、作動部を移動させるための往復移動可能なスライド部材34と、複数の油室(具体的には、第1油室60、第2油室72、第3油室74)と、複数の油室間で移動する圧油が通る油路(具体的には、各油路62、64、66、68、70、76、78)とがそれぞれ設けられている。また、作業者により操作レバー24が操作されるとピストン50が往復移動し、このことにより複数の油室間で圧油が油路を通って移動することによりスライド部材34が移動し、よって作動部が移動するようになっている。そして、操作レバー24を操作することにより行われる作動部の移動に抗する力が(例えば鉄筋等の丸棒W1や対象部材W2により)当該作動部に与えられたときに、スライド部材34を移動させるために複数の油室のうち一の油室(具体的には、第2油室72または第3油室74)に送られる圧油の量が減少する構成となっている。このことにより、作業者が操作レバー24を移動させるのに必要な力も小さくなり、作業者の負荷を軽減することができる。
【0033】
また、本実施の形態の切断装置10においては、ピストン50は、第1ピストン51および第2ピストン52を有しており、作業者により操作レバー24が操作されると第1ピストン51および第2ピストン52が一体的に移動し、第1ピストン51の近傍には第1ピストン室54が設けられており、第2ピストン52の近傍には第2ピストン室56が設けられている。また、ピストン50が往復移動すると、複数の油室のうちある油室(具体的には、第1油室60)から第1ピストン室54および第2ピストン室56に圧油が送られた後、第1ピストン室54および第2ピストン室56から別の油室(具体的には、第2油室72または第3油室74)に圧油が送られるようになっている。そして、操作レバー24を操作することにより行われる作動部の移動に抗する力が当該作動部に与えられたときに、複数の油室のうちある油室(具体的には、第1油室60)から第2ピストン室56に送られた圧油は元の油室(すなわち、第1油室60)に戻される構成となっている。このことにより、スライド部材34を移動させるために第1ピストン室54のみから第2油室72または第3油室74に圧油が送られるようになるため、第2油室72または第3油室74に送られる圧油の量を減少させることができる。
【0034】
また、本実施の形態の切断装置10においては、第1ピストン51における第1ピストン室54に面する端面の面積は第2ピストン52における第2ピストン室56に面する端面の面積よりも小さくなっている。
【0035】
また、本実施の形態の切断装置10においては、油路(具体的には、第3油路66)にはチェックバルブ86が設けられており、操作レバー24を操作することにより行われる作動部の移動に抗する力が当該作動部に与えられたときに、第1ピストン室54から別の油室(具体的には、第2油室72または第3油室74)に送られる圧油がチェックバルブ86に作用することにより第2ピストン室56からこの別の油室への圧油の油路(具体的には、第3油路66)がチェックバルブ86により遮られる構成となっている。このことにより、第2ピストン室56から第2油室72または第3油室74に圧油が送られなくなる。
【0036】
また、本実施の形態の切断装置10においては、第2ピストン室56から元の油室(具体的には、第1油室60)に圧油を戻すための戻し油路87が設けられており、戻し油路87への入口を塞ぐ圧力解放バルブ80が設けられている。また、操作レバー24を操作することにより行われる作動部の移動に抗する力が当該作動部に与えられたときに、第1ピストン室54から別の油室(具体的には、第2油室72または第3油室74)に送られる圧油が圧力解放バルブ80に作用することにより戻し油路87への入口が開かれる構成となっている。このことにより、第2ピストン室56から排出された圧油を戻し油路87により元の油室(具体的には、第1油室60)に戻すことができる。
【0037】
また、本実施の形態の切断装置10においては、第1ピストン室54から元の油室(具体的には、第1油室60)に圧油を戻すための別の戻し油路89が設けられており、別の戻し油路89への入口を塞ぐリリーフバルブ88が設けられている。また、操作レバー24を操作することにより行われる作動部の移動に抗する更に大きな力が当該作動部に与えられたときに、第1ピストン室54から別の油室(具体的には、第2油室72または第3油室74)に送られる圧油がリリーフバルブ88に作用することにより別の戻し油路89への入口も開かれる構成となっている。このことにより、第1ピストン室54から排出された圧油も別の戻し油路89により元の油室(具体的には、第1油室60)に戻すことができるため、第2油室72または第3油室74に圧油が送られなくなる。よって第2油室72内または第3油室74内の圧油が過圧となってしまい切断装置10が故障してしまうことを防止することができる。
【0038】
また、本実施の形態の切断装置10においては、操作レバー24は軸25を中心として所定の角度の範囲内で回転可能となっている。このことにより、作業者は軸25を中心として操作レバー24を揺動させるだけで作動部を移動させることができる。
【0039】
また、本実施の形態の切断装置10においては、作動部は一対の切断部材31であり、各切断部材31は軸32を中心として所定の角度の範囲内で回転可能となっている。この場合には、一対の切断部材31の間で鉄筋等の丸棒W1を切断したり、一対の対象部材W2をこじ開けたりすることができるようになる。
【0040】
また、本実施の形態の切断装置10においては、第1油室60、第2油室72および第3油室74が設けられており、スライド部材34にはフランジ部材35が取り付けられている。また、フランジ部材35は第2油室72と第3油室74との間に設けられており、作業者により操作レバー24が操作されるとピストン50が移動することにより第1油室60から第2油室72または第3油室74に圧油が送られることによりフランジ部材35が移動するようになっている。このことにより、第1油室60から圧油が送られる油室を第2油室72および第3油室74の間で切り替えることにより、作動部の移動方向を調整することができる。
【0041】
また、本実施の形態の切断装置10においては、第1油室60から圧油が送られる油室を第2油室72および第3油室74の間で切り替える切替バルブ90および切替バルブ90を操作するための操作ノブ28が設けられている。この場合は、作業者は操作ノブ28を操作するだけで作動部の移動方向を調整することができるため、操作者にとって利便性の高いものとなる。
【0042】
なお、本発明による手動式油圧作動装置は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0043】
例えば、本発明による手動式油圧作動装置の工具は、軸32を中心として回転する一対の切断部材31を有するものに限定されることはない。工具として、対象物に対して作用を行う作動部を有するものであれば、一対の切断部材31を有するもの以外の様々なものを用いることができる。例えば、工具として、筒状部材からピストン部材が外部に進退することにより一対の対象部材の間をこじ開ける構成のものが用いられてもよい。
【0044】
また、操作レバーは軸25を中心として回転するものに限定されることはない。ピストン50を往復移動させることができるものであれば、操作レバーとして例えば軸25を中心として回転するものではなく直線状に往復移動するものが用いられてもよい。
【0045】
また、本体部20の内部に設けられる油室は第1油室60、第2油室72、第3油室74からなる3つの油室に限定されることはない。他の構成の手動式油圧作動装置として、本体部20の内部に2つの油室が設けられ、ピストンが往復移動を行うと一方の油室から他方の油室に圧油が送られることによりスライド部材が一方向に移動するような構成のものが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 切断装置
20 本体部
22 第1ハンドル
24 操作レバー
25 軸
26 第2ハンドル
28 操作ノブ
30 工具
31 切断部材
32 軸
33 ロッド部材
34 スライド部材
35 フランジ部材
36 軸
38 接続部材
40 軸
50 ピストン
51 第1ピストン
52 第2ピストン
54 第1ピストン室
56 第2ピストン室
60 第1油室
62 第1油路
64 第2油路
66 第3油路
68 第4油路
70 第5油路
72 第2油室
74 第3油室
76 第6油路
78 第7油路
80 圧力解放バルブ
81 フランジ
82 バネ部材
84 ピン部材
86 チェックバルブ
87 戻し油路
88 リリーフバルブ
88a バネ部材
89 戻し油路
90 切替バルブ
92 第1貫通穴
94 第2貫通穴
W1 丸棒
W2 対象部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11