(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】加工用砥石及びコアドリル
(51)【国際特許分類】
B24D 11/00 20060101AFI20240926BHJP
B24D 5/00 20060101ALI20240926BHJP
B24D 5/08 20060101ALI20240926BHJP
B24D 5/12 20060101ALI20240926BHJP
B24D 13/04 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B24D11/00 M
B24D5/00 P
B24D5/08
B24D5/12 Z
B24D11/00 B
B24D13/04
(21)【出願番号】P 2022565059
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031489
(87)【国際公開番号】W WO2022113449
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2020197878
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398046921
【氏名又は名称】株式会社ナノテム
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 篤
(72)【発明者】
【氏名】大橋 恭介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大地
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大和
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-262772(JP,A)
【文献】特開2001-179641(JP,A)
【文献】登録実用新案第3182351(JP,U)
【文献】特開昭62-188675(JP,A)
【文献】米国特許第06145410(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0014739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工用シートを含む加工用砥石であって、
前記加工用シートは、
繊維質からなる芯材と、
互いに離れた位置において前記芯材に固定される複数の加工部と、
前記芯材における前記複数の加工部の間に充填される充填材と、を備え、
前記複数の加工部は、円板状の前記加工用砥石の外周側に位置し、前記加工用砥石の回転方向において互いに離れた位置に配置され、
前記複数の加工部は、
円板状の前記充填材の表面に形成される第1の加工部と、
前記充填材の裏面に形成される第2の加工部と、を備え、
前記第1の加工部と前記第2の加工部は前記回転方向において交互に並べられる、
加工用砥石。
【請求項2】
加工用シートが回転方向に複数並べられた加工用砥石であって、
前記加工用シートは、
繊維質からなる芯材と、
互いに離れた位置において前記芯材に固定される複数の加工部と、
前記芯材における前記複数の加工部の間に充填される充填材と、を備え、
前記回転方向に隣り合う2つの前記加工用シートの前記加工部は互いに前記加工用砥石の回転軸に沿う方向にずれた位置に設けられる、
加工用砥石。
【請求項3】
加工用シートが回転方向に複数並べられた加工用砥石であって、
前記加工用シートは、
繊維質からなる芯材と、
互いに離れた位置において前記芯材に固定される複数の加工部と、
前記芯材における前記複数の加工部の間に充填される充填材と、を備え、
前記回転方向に隣り合う2つの前記加工用シートの前記加工部は互いに前記加工用砥石の径方向にずれた位置に設けられる、
加工用砥石。
【請求項4】
加工用シートを含むコアドリルであって、
前記加工用シートは、
繊維質からなる芯材と、
互いに離れた位置において前記芯材に固定される複数の加工部と、
前記芯材における前記複数の加工部の間に充填される充填材と、を備え、
前記芯材は円筒状に形成され、
前記複数の加工部は前記芯材の周方向に沿って並べられる、
コアドリル。
【請求項5】
前記充填材は、前記芯材が埋め込まれた円筒状に形成され、前記コアドリルの回転軸に沿う方向の端部に前記複数の加工部を保持する接着層である、
請求項
4に記載のコアドリル。
【請求項6】
前記コアドリルは、
前記芯材である第1芯材と、
前記第1芯材よりも内周側に位置する前記第1芯材とは異なる前記芯材である第2芯材と、
前記第1芯材が埋め込まれ、前記複数の加工部である複数の第3の加工部を保持する前記充填材である第1充填材と、
前記第2芯材が埋め込まれ、前記複数の第3の加工部とは異なる前記複数の加工部である複数の第4の加工部を保持する前記第1充填材とは異なる前記充填材である第2充填材と、を備える、
請求項
5に記載のコアドリル。
【請求項7】
前記加工部は、
前記芯材に固定される結合材と、
前記結合材内に位置し、ワークを加工する複数の砥粒と、を備える、
請求項1~3の何れか1項に記載の加工用砥石。
【請求項8】
前記加工部は、
前記芯材に固定される結合材と、
前記結合材内に位置し、ワークを加工する複数の砥粒と、を備える、
請求項4~6の何れか1項に記載のコアドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工用砥石及びコアドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載の外周切断刃、特許文献2に記載のフラップ砥石、特許文献3に記載のサンドペーパー、特許文献4に記載の軸付き砥石、特許文献5に記載のコアドリル等の各種の加工ツールが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-202591号公報
【文献】特開昭55-065081号公報
【文献】特表2011-526845号公報
【文献】特開2009-34732号公報
【文献】特開2019-151015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1~5に記載の加工ツールにおいて、切れ味に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、切れ味を向上させることができる加工用砥石及びコアドリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る加工用砥石は、加工用シートを含む加工用砥石であって、前記加工用シートは、繊維質からなる芯材と、互いに離れた位置において前記芯材に固定される複数の加工部と、前記芯材における前記複数の加工部の間に充填される充填材と、を備え、前記複数の加工部は、円板状の前記加工用砥石の外周側に位置し、前記加工用砥石の回転方向において互いに離れた位置に配置され、前記複数の加工部は、円板状の前記充填材の表面に形成される第1の加工部と、前記充填材の裏面に形成される第2の加工部と、を備え、前記第1の加工部と前記第2の加工部は前記回転方向において交互に並べられる。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る加工用砥石は、加工用シートが回転方向に複数並べられた加工用砥石であって、前記加工用シートは、繊維質からなる芯材と、互いに離れた位置において前記芯材に固定される複数の加工部と、前記芯材における前記複数の加工部の間に充填される充填材と、を備え、前記回転方向に隣り合う2つの前記加工用シートの前記加工部は互いに前記加工用砥石の回転軸に沿う方向にずれた位置に設けられる。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る加工用砥石は、加工用シートが回転方向に複数並べられた加工用砥石であって、前記加工用シートは、繊維質からなる芯材と、互いに離れた位置において前記芯材に固定される複数の加工部と、前記芯材における前記複数の加工部の間に充填される充填材と、を備え、前記回転方向に隣り合う2つの前記加工用シートの前記加工部は互いに前記加工用砥石の径方向にずれた位置に設けられる。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係るコアドリルは、加工用シートを含むコアドリルであって、前記加工用シートは、繊維質からなる芯材と、互いに離れた位置において前記芯材に固定される複数の加工部と、前記芯材における前記複数の加工部の間に充填される充填材と、を備え、前記芯材は円筒状に形成され、前記複数の加工部は前記芯材の周方向に沿って並べられる。
【0016】
また、前記充填材は、前記芯材が埋め込まれた円筒状に形成され、前記コアドリルの回転軸に沿う方向の端部に前記複数の加工部を保持する接着層である、ようにしてもよい。
【0017】
また、前記コアドリルは、前記芯材である第1芯材と、前記第1芯材よりも内周側に位置する前記第1芯材とは異なる前記芯材である第2芯材と、前記第1芯材が埋め込まれ、前記複数の加工部である複数の第3の加工部を保持する前記充填材である第1充填材と、前記第2芯材が埋め込まれ、前記複数の第3の加工部とは異なる前記複数の加工部である複数の第4の加工部を保持する前記第1充填材とは異なる前記充填材である第2充填材と、を備える、ようにしてもよい。
また、前記加工部は、前記芯材に固定される結合材と、前記結合材内に位置し、ワークを加工する複数の砥粒と、を備える、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加工用砥石及びコアドリルの切れ味を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る加工用シートの平面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る砥石の平面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る砥石の部分的な斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態の変形例に係る砥石の部分的な斜視図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態の変形例に係る砥石の部分的な斜視図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る砥石の底面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る砥石の側面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る加工用シートの正面図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係る砥石の底面図及びその部分的な拡大図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態の変形例に係る砥石の斜視図及びその部分的な拡大図である。
【
図13A】本発明の第5の実施形態に係る加工用柱部材の平面図である。
【
図13B】本発明の第5の実施形態に係る加工用柱部材の正面図である。
【
図14】本発明の第5の実施形態に係る砥石の部分的な斜視図である。
【
図15】本発明の第5の実施形態の変形例に係る加工用柱部材の平面図である。
【
図16】本発明の第5の実施形態の変形例に係る加工用柱部材の平面図である。
【
図17】本発明の第6の実施形態に係るコアドリルの底面図である。
【
図18】本発明の第6の実施形態に係るコアドリルの側面図である。
【
図20】本発明の第6の実施形態の変形例に係るコアドリルの部分的な底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る加工用シートについて図面を参照して説明する。
図1に示すように、加工用シート10は、繊維質の芯材11と、芯材11に固定された複数の加工部15と、を備える。芯材11は、例えば、ガラスクロス、ガラスメッシュ、不織布又はカーボンファイバー等の繊維質からなる。芯材11には芯材11の厚さ方向に貫通した孔が形成されている。芯材11は可撓性を有する。芯材11のメッシュ数は、例えば、#10~#200が好ましい。メッシュ数は、長さ1インチ当りの網目の数で表される。芯材11のメッシュ数が大きすぎると、網目が細かくなりすぎて、加工部15の後述する結合材13が芯材11内に浸入しづらく、加工部15が芯材11に強固に固定されづらくなる。一方、芯材11のメッシュ数が小さすぎると、網目が粗くなって、加工部15が固着する芯材11を構成する線状部の本数が少なくなって、加工部15が芯材11に強固に固定されづらくなる。このような観点から、メッシュ数は、#10~#200に設定されることが好ましい。
【0021】
複数の加工部15は、加工用シート10の面方向に互いに離れた位置に設けられ、ワークを研磨又は研削等の加工を行う。複数の加工部15は、例えば、マトリックス状に配置されている。加工部15は、本例では、矩形状に形成されている。加工部15は、後述する複数の砥粒14を含むニッケル、銅等の金属材を芯材11にメッキすることにより形成される。なお、複数の加工部15の形状は、これに限らず、円形状、実線又は破線を含む線形状に形成されてもよい。
図2に示すように、複数の加工部15は、芯材11の両面に形成されている。なお、これに限らず、複数の加工部15は、芯材11の両面の何れか一方のみに形成されてもよいし、芯材11の表面と裏面で異なる位置に形成されてもよい。
【0022】
図2に示すように、加工部15は、ワークを加工する複数の砥粒14と、複数の砥粒14を結合する結合材13と、を備える。複数の砥粒14は、結合材13内に分布している。砥粒14は、例えば、ダイヤモンドである。なお、砥粒14は、ダイヤモンドに限らず、立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒であってもよいし、CBN砥粒とダイヤモンドを混合させてもよい。さらには、複数の砥粒14は、シリコンカーバイド(SiC)、又は溶融アルミナ(Al
2O
3)、若しくはこれらを混合したものであってもよい。結合材13は、結合材13の内部に複数の砥粒14を保持する。結合材13は、ニッケル、鉄、アルミニウム、銅等の金属、アルミニウム合金、青銅等の合金、フエノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂又はセラミック等により形成されている。結合材13は、芯材11の厚さ方向の両側と芯材11の内部の孔内に形成されている。結合材13は、芯材11の内部の孔内に入ることでアンカー効果により芯材11に固定される。言い換えると、芯材11は、結合材13内に埋め込まれている。加工用シート10によるワークの加工により、砥粒14が脱落しても結合材13が削れて新たな砥粒14が露出する。これにより、加工用シート10の切れ味の低下が抑制される。
砥粒14は、本例では、加工用シート10の厚さ方向に複数の層で形成されているが、これに限らず、1層で形成されてもよい。
【0023】
本実施形態においては、複数の加工部15の間は芯材11が外部に露出していたが、これに限らず、
図2の破線で示すように、複数の加工部15の間に充填材18が形成されてもよい。充填材18は、芯材11の内部の孔内に入ることにより芯材11に固定される。充填材18の厚さは、加工部15よりも薄いことが好ましい。充填材18は、結合材13と同様に、フエノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、金属又は合金からなる。充填材18により、加工用シート10の全体に適度な硬さが生じる。また、加工用シート10には、芯材11として例えばガラスクロスが内在しているため、加工用シート10の強度が高まり、耐熱性も高い。加工用シート10は、後述する加工用砥石210,310,410,510,610及びコアドリル710に利用される。
【0024】
(効果)
以上、説明した第1の実施形態及びその変形例によれば、以下の効果を奏する。
加工用シート10は、繊維質材からなる芯材11と、互いに離れた位置において芯材11に固定される複数の加工部15と、を備える。
この構成によれば、加工用シート10は、従来のサンドペーパーに比べて、加工用シート10の全域に占める加工部15の面積が小さいため、加工圧が増加し切れ味、すなわち加工レートが高まる。また、加工部15の面積が少なくて済むため、加工部15に含まれる砥粒14の使用量を減らすことができる。
特に、複数の加工部15の間における芯材11を露出した状態とすることにより、加工用シート10の可撓性が高く、ワークの形状に合わせて湾曲させやすい。また、加工用シート10は、従来のサンドペーパーよりも切れ味を維持できる。
【0025】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る加工用シート及び加工用砥石について図面を参照して説明する。
図3及び
図4に示すように、加工用砥石210は円板状をなし、外周側でワーク等を切断する。加工用砥石210は、例えば、ダイシングブレードである。例えば、加工用砥石210は、第1の実施形態の加工部15と同様の材質からなる複数の加工部215と、第1の実施形態の芯材11と同様の材質からなる芯材211と、第1の実施形態の変形例の充填材18と同様の材質からなる充填材218と、を備える。芯材211は、加工用砥石210の全域に亘って円形に形成されている。複数の加工部215は、加工用砥石210の外周側に位置し、加工用砥石210の回転方向Cに離れた位置に配置される。複数の加工部215は等角度間隔に配置されている。各加工部215は、加工用砥石210の径方向Rに長い形状、本例では長方形状をなす。加工部215は、第1の実施形態と同様に、複数の砥粒14と、結合材13と、を備える。
本例では、
図5に示すように、加工部215は、加工用砥石210の両面に形成されている。加工用砥石210の表面の加工部215と加工用砥石210の裏面の加工部215は同じ位置に設けられる。これにより、加工用砥石210の表面の加工部215と加工用砥石210の裏面の加工部215が一体化する。このため、加工部215がより強固に芯材211に固定される。
図4に示すように、加工部215は充填材218よりも厚く形成され、加工用砥石210の両面において加工部215は充填材218よりも高さが高く形成されている。
【0026】
図4に示すように、充填材218は、芯材211における複数の加工部215の間に充填され、芯材211の厚さ方向の両側と芯材211の内部の孔内に形成されている。充填材218には、砥粒14の目立てを行う図示しないアルミナ等の目立て粒が混合されてもよい。
【0027】
本実施形態においては、
図5に示すように、加工部215は、充填材218の両面に同じ位置に形成されているが、これに限らない。例えば、
図6及び
図7に示すように、充填材218の表面に形成される加工部215aと充填材218の裏面に形成される加工部215bが回転方向Cに沿って交互に設けられていてもよい。
図6に示すように、加工部215aと加工部215bが回転方向Cに隙間なく並べられてもよい。また、
図7に示すように、加工部215aと加工部215bが回転方向Cに隙間を持って並べられてもよい。
図6及び
図7の構成によれば、加工用砥石210による加工時に、加工用砥石210の動作が安定する。
【0028】
(効果)
以上、説明した第2の実施形態及びその変形例によれば、以下の効果を奏する。
加工用砥石210は、加工部215,215a,215b、芯材211及び充填材218を備える加工用シートを含む。複数の加工部215,215a,215bは、円板状の加工用砥石210の外周側に位置し、加工用砥石210の回転方向Cに互いに離れた位置に配置される。
この構成によれば、加工時に、加工用砥石210の回転方向Cにおいて周期的に加工部215,215a,215bがワークに接触するため、加工用砥石210の切れ味が向上する。
また、加工用砥石210は、金属からなるワークを切断する場合でも、加工部215,215a,215b以外の充填材218がワークに周期的に接触するため、火花を飛ばしづらい。
さらに、加工部215,215a,215bは加工用砥石210の外周側にのみ形成されるため、加工部215,215a,215bの形成範囲を必要最小限とすることができる。これにより、加工部215,215a,215bに含まれる砥粒の量を減らすことができる。
また、加工用砥石210には、芯材211として例えばガラスクロスが内在しているため、加工用砥石210の強度が高まり、耐熱性も高い。
さらに、充填材218を加工部215,215a,215bよりも柔らかい材質、例えば樹脂とすることにより、加工用砥石210のワークへの接触を柔らかくすることができる。これにより、加工時の加工用砥石210の振動を抑制することができる。
また、繊維質の芯材211を基材として加工部215を形成するため、剛体の基材が不要となる。このため、加工用砥石210を薄くすることができ、加工用砥石210の切れ味が向上する。
【0029】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る加工用シート及び加工用砥石について図面を参照して説明する。
図8に示すように、加工用砥石310は、外周面で加工を行う円柱状のフラップ砥石である。加工用砥石310は、複数の加工用シート301と、複数の加工用シート301の間に形成される緩衝材319と、を備える。複数の加工用シート301は、加工用砥石310の径方向Rに延び、加工用砥石310の回転方向Cに隙間を持って並べられている。
【0030】
図10に示すように、加工用シート301は、第1の実施形態の加工部15と同様の材質からなる複数の加工部315と、第1の実施形態の芯材11と同様の材質からなる芯材311と、第1の実施形態の充填材18と同様の材質からなる充填材318と、を備える。加工用シート301は矩形板状をなす。複数の加工部315は、それぞれ径方向Rに沿って延び、加工用シート301の径方向Rの外側の端部に到達するように形成される。複数の加工部315は、径方向Rに直交する加工用砥石310の回転軸Oに沿う方向に並べられている。充填材318は、芯材311における複数の加工部315の間に形成され、それぞれ径方向Rに沿って延び、回転軸Oに沿う方向に並べられている。
【0031】
図9に示すように、複数の加工用シート301は加工用シート301a,301bを備える。2つの加工用シート301a,301bは回転方向Cの全周に亘って交互に並べられる。回転方向Cに隣り合う2つの加工用シート301a,301bの複数の加工部315は、回転方向Cに重複する領域を減らすように加工用砥石310の回転軸Oに沿う方向にずれた位置に設けられている。加工用シート301aの複数の加工部315は加工用シート301bの複数の充填材318に回転方向Cに対向して位置し、加工用シート301bの複数の加工部315は加工用シート301aの複数の充填材318に回転方向Cに対向して位置する。言い換えると、加工用シート301aの複数の加工部315の配置周期の位相と加工用シート301bの複数の加工部315の配置周期の位相が加工用砥石310の回転軸Oに沿う方向において所定角度、例えば、180°ずらすように配置される。
【0032】
本実施形態においては、各加工部315は加工用シート301の径方向Rの全域に亘って形成されていたが、これに限らず、各加工部315の径方向Rの内側の部分、すなわちワークから遠い部分が省略されて、この省略された部分に充填材318が形成されてもよい。この構成によれば、加工部315の形成範囲を必要最小限とすることができる。
また、本実施形態において、緩衝材319が省略されてもよい。
【0033】
(効果)
以上、説明した第3の実施形態及びその変形例によれば、以下の効果を奏する。
加工用砥石310は、加工用砥石310の回転方向Cに並べられた複数の加工用シート301a,301bを含む。回転方向Cに隣り合う2つの加工用シート301a,301bの加工部315は互いに加工用砥石310の回転軸Oに沿う方向にずれた位置に設けられる。
この構成によれば、加工用砥石310によるワークの加工のムラを減らすことができる。また、加工部315によるワークの加工圧が高まり、加工用砥石310の切れ味を向上させることができる。
また、充填材318を加工部315よりも柔らかい材質、例えば樹脂で形成することにより、加工用砥石310のワークへの接触を柔らかくすることができ、ワークの凹凸形状に追従して弾性的に変形可能となる。また、加工時の加工用砥石310の振動を抑制することができる。
【0034】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る加工用シート及び加工用砥石について図面を参照して説明する。
図11に示すように、本実施形態の加工用砥石410は、底面にて加工を行う底面加工砥石である。加工用砥石410は、第3の実施形態の加工用砥石310と同様に、複数の加工用シート401と、複数の加工用シート401の間に形成される緩衝材419と、を備える。
【0035】
図11の下部に拡大して示すように、加工用シート401は、加工部415及び充填材418が径方向Rに交互に並べられて構成される。複数の加工用シート401は加工用シート401a,401bを備える。2つの加工用シート401a,401bは回転方向Cの全周に亘って交互に並べられる。回転方向Cに隣り合う2つの加工用シート401a,401bの複数の加工部415は回転方向Cに重複しないように径方向Rにずれた位置に設けられている。加工用シート401aの複数の加工部415は加工用シート401bの複数の充填材418に回転方向Cに対向して位置し、加工用シート401bの複数の加工部415は加工用シート401aの複数の充填材418に回転方向Cに対向して位置する。言い換えると、加工用シート401aにおける複数の加工部415の配置周期の位相と加工用シート401bにおける複数の加工部415の配置周期の位相が径方向Rにおいて所定角度、例えば、180°ずらすように配置される。
加工部415は、回転軸Oに沿う方向の加工用シート401の全域に亘って形成されてもよいし、回転軸Oに沿う方向の加工用砥石410の加工面である底面の近くにのみ形成されてもよい。
【0036】
本実施形態の加工用砥石410は緩衝材419を備えていたが、これに限らず、緩衝材419は省略されてもよい。この場合、複数の加工用シート401が回転方向Cに沿って重なるように配置されてもよい。例えば、
図12に示すように、テーパ式多羽根ディスクである加工用砥石510は、加工用砥石410と同様に底面で加工を行う。加工用砥石510は、円板状の基材517と、基材517の表面に一部が互いに重なり合うように回転方向Cに並べられる複数の加工用シート501と、を備える。
図12の下部に拡大して示すように、加工用シート501は、上述した加工用シート401と同様に、加工部515及び充填材518が径方向Rに交互に並べられて構成される。加工用シート501は、径方向Rに長い長方形板状をなし、基材517の表面に対して傾斜している。
【0037】
加工用シート501の複数の加工部515は、径方向Rに互いに離れた位置に形成される。複数の加工用シート501は加工用シート501a,501bを備える。2つの加工用シート501a,501bは回転方向Cの全周に亘って交互に並べられる。回転方向Cに隣り合う2つの加工用シート501a,501bの複数の加工部515が回転方向Cに重複しないように径方向Rにずれた位置に設けられている。加工用シート501aの複数の加工部515は加工用シート501bの複数の充填材518に回転方向Cに対向して位置し、加工用シート501bの複数の加工部515は加工用シート501aの複数の充填材518に回転方向Cに対向して位置する。言い換えると、加工用シート501aにおける複数の加工部515の配置周期の位相と加工用シート501bにおける複数の加工部515の配置周期の位相が径方向Rにおいて所定角度、例えば、180°ずらすように配置される。
【0038】
(効果)
以上、説明した第4の実施形態及びその変形例によれば、以下の効果を奏する。
加工用砥石410,510は、加工用砥石410,510の回転方向Cに並べられた複数の加工用シート401a,401b,501a,501bを含む。回転方向Cに隣り合う2つの加工用シート401a,401b,501a,501bの加工部415,515は互いに加工用砥石410,510の径方向Rにずれた位置に設けられる。
この構成によれば、加工用砥石410,510によるワークの加工のムラを減らすことができる。また、加工部415,515よるワークの加工圧が高まり、加工用砥石410,510の切れ味を向上させることができる。
また、充填材418,518を加工部415,515よりも柔らかい材質、例えば樹脂で形成することにより、加工用砥石410,510のワークへの接触を柔らかくすることができ、ワークの凹凸形状に追従して弾性的に変形可能となる。また、加工時の加工用砥石410,510の振動を抑制することができる。
【0039】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る加工用シート、加工用砥石及び加工用柱部材について図面を参照して説明する。
図14に示すように、加工用砥石610は、外周面でワークを切断する。このワークは草も含む。加工用砥石610は、複数の加工用柱部材630と、複数の加工用柱部材630が固定される台座617と、を備える。台座617は円板状をなす。加工用柱部材630は、加工面Wa(
図13B参照)に対して交わる向きで台座617の外周面に固定されている。
【0040】
図13A及び
図13Bに示すように、加工用柱部材630は、第2の実施形態の加工部215と同様の材質からなる複数の加工部615と、第2の実施形態の芯材211と同様の材質からなる芯材611と、第2の実施形態の充填材218と同様の材質からなる充填材618と、を備える。
加工用柱部材630は、複数の平板が連結された屈曲板状をなす。本例では、加工用柱部材630はハット型をなす。各加工部615は、加工用柱部材630の角部以外の平板部に位置する。複数の加工部615は、加工用柱部材630の長手方向に互いに離れた位置に設けられる。加工部615は、加工用柱部材630の短手方向である幅方向の全域に形成される。なお、本例に限らず、
図13Bに一点鎖線で示すように、加工部615aは、加工用柱部材630の幅方向において加工面Waに近い側にのみ形成されてもよい。
【0041】
図14に示すように、2つの加工用柱部材630の開口側が対向する向きで、2つの加工用柱部材630を組み合わせることにより筒状部635が形成されている。例えば、2つの加工用柱部材630の長手方向の両端同士が接着される。筒状部635内には、台座617の外周面に形成される図示しない凸部が嵌まる。また、筒状部635内には、クーラント液又は切粉が通過可能に形成されてもよい。筒状部635は、本例では、6角形筒状であるが、これに限らず、その他の多角形筒状又は円筒状であってもよい。
【0042】
本実施形態における加工用柱部材630の形状は適宜変更可能である。例えば、
図15に示すように、加工用柱部材730は、本実施形態の2つの加工用柱部材630をその長手方向に連結した形状であってもよい。また、
図16に示すように、加工用柱部材830は、V字、L字又はへ字状をなし、各加工部615を非角部である平板部に設けてもよい。さらに、加工用柱部材は、単体で筒状をなしていてもよい。
また、加工用柱部材630は、底面で加工する砥石に利用されてもよい。この場合、加工用柱部材630は、砥石の底面に交わる方向、例えば、砥石の底面に垂直に立設する方向に設けられていてもよい。例えば、この砥石は、底面に筒状部が並ぶように形成されてもよい。
さらに、加工用柱部材630は、外周面で加工する砥石に利用されてもよい。この場合、加工用柱部材630は、砥石の外周面に交わる方向、例えば、砥石の外周面に垂直に立設する方向に設けられてもよい。例えば、この砥石は、外周面に筒状部が並ぶように形成されてもよい。
【0043】
(効果)
以上、説明した第5の実施形態及びその変形例によれば、以下の効果を奏する。
加工用柱部材630は、加工部615、芯材611及び充填材618を備える加工用シートを含む。加工用柱部材630は、加工面Waに対して交わる方向に立設される屈曲板状をなす。各加工部615は、加工用柱部材630の角部以外の部位に設けられる。
この構成によれば、加工部615が加工用柱部材630の非角部に設けられることにより、加工用柱部材630による加工が安定する。
また、充填材618を加工部615よりも柔らかい材質、例えば樹脂とすることにより、加工用柱部材630のワークへの接触を柔らかくすることができる。また、加工用柱部材630の角部に、加工部615よりも柔らかい充填材618が配置されるため、加工用柱部材630の角部を中心に加工用柱部材630が変形容易となる。さらに、加工用柱部材630には、芯材611として例えばガラスクロスが内在しているため、加工用柱部材630の強度が高まり、耐熱性も高い。
また、各加工部615は、加工面Waに対して交わる方向に延びるように形成され、加工面Waに沿う方向に互いに離れた位置に設けられる。
この構成によれば、加工部615のワークに対する加工圧が高まり、加工用柱部材630の切れ味を向上させることができる。
【0044】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る加工用シート及びコアドリルについて図面を参照して説明する。
図17~
図19に示すように、加工用砥石であるコアドリル710は、回転軸Oを中心に回転させられた状態でコンクリート等からなるワークに接触することによりワークに穴を形成する。コアドリル710は、
図17及び
図18に示すように、第1の実施形態の加工部15と同様の材質からなる複数の加工部715a,715bと、
図19に示すように、第1の実施形態の充填材18と同様の材質からなる接着層の一例である充填材718a,718bと、第1の実施形態の芯材11と同様の材質からなる芯材711a,711bと、を備える。
【0045】
図19に示すように、充填材718aは、充填材718bの外周側に円筒状に形成されている。充填材718aには、円筒状の芯材711aが埋め込まれている。充填材718aは、充填材718bの外周側に複数の加工部715aを保持する。
充填材718bは、充填材718aの内周側に円筒状に形成されている。充填材718bには、円筒状の芯材711bが埋め込まれている。充填材718bは、充填材718bの内周側に複数の加工部715bを保持する。
なお、充填材718a,718bは一体で形成されてもよいし、別体で形成されてもよい。また、充填材718aと芯材711aの組み合わせ、及び充填材718bと芯材711bの組み合わせの何れか一方の組み合わせが省略されてもよい。
充填材718a,718bは、例えば、芯材711a,711bに銀ロウ等によりロウ付けすることにより、芯材711a,711bにロウ材を付着させ、ロウ材が固まることにより加工部715a,715bを保持する。芯材711a,711bは繊維質であるため、溶融したロウ材を保持することができる。よって、芯材711a,711bにより溶融したロウ材が流れ落ちることが抑制される。
【0046】
図17に示すように、加工部715aは、回転方向Cに沿って並べられるようにコアドリル710の外周面に配置されている。加工部715bは、回転方向Cに沿って並べられるようにコアドリル710の内周面に配置されている。
加工部715a,715bは、コアドリル710のワークに近い先端側に位置し、回転軸Oに沿う方向に長い形状、例えば、長方形状をなす。加工部715aと加工部715bは、回転方向Cに一致する位置に設けられている。
【0047】
本実施形態では、加工部715aと加工部715bは、回転方向Cに一致する位置に設けられていたが、これに限らず、
図20に示すように、加工部715aと加工部715bは、回転方向Cにずれた位置に設けられていてもよい。
【0048】
(効果)
以上、説明した第6の実施形態及びその変形例によれば、以下の効果を奏する。
(1)コアドリル710は、加工用シートを含み、この加工用シートは、複数の芯材711a,711bと、複数の加工部715a,715bと、充填材718a,718bと、を備える。芯材711a,711bは円筒状に形成されている。複数の加工部715a,715bは芯材711a,711bの周方向である回転方向Cに沿って並べられる。
この構成によれば、従来のチップソーが取り付けられたコアドリルに比べて、コアドリル710を薄く形成することができ、ワークへの加工圧が高まり、コアドリル710の切れ味を向上させることができる。また、コアドリル710によるワークの加工時に発生する騒音、粉塵及び振動を低減することができる。
【0049】
(2)充填材718a,718bは、芯材711a,711bが埋め込まれた円筒状で形成され、コアドリル710の回転軸Oに沿う方向の端部に複数の加工部715a,715bを保持する接着層である。
この構成によれば、コアドリル710の強度を高めることができる。
【0050】
(3)コアドリル710は、第1芯材の一例である芯材711aと、芯材711aよりも内周側に位置する第2芯材の一例である芯材711bと、芯材711aが埋め込まれ、複数の第3の加工部の一例である加工部715aを保持する第1充填材の一例である充填材718aと、芯材711bが埋め込まれ、複数の第4の加工部の一例である加工部715bを保持する第2充填材の一例である充填材718bと、を備える。
この構成によれば、コアドリル710に加工部715aと加工部715bが設けられることにより、コアドリル710が安定的にワークを加工することができる。
【0051】
(4)加工部715aと加工部715bは、互いに回転方向Cに一致する位置に設けられ、径方向Rにおいて充填材718a,718bを挟み込む。
この構成によれば、コアドリル710の強度を高めることができる。
【0052】
なお、本開示は以上の変形例も含む実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態及び上記各変形例における加工部は、複数の砥粒14を含んでいたが、複数の砥粒14が省略されて、金属のみから形成されてもよい。
【0053】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0054】
本出願は、2020年11月30日に出願された日本国特許出願特願2020-197878号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2020-197878号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0055】
10,301,301a,301b,401,401a,401b,501,501a,501b…加工用シート、11,211,311,611,711a,711b…芯材、13…結合材、14…砥粒、15,215,215a,215b,315,415,515,615,715a,715b…加工部、18,218,318,618,718a,718b…充填材、210,310,410,510,610…加工用砥石、319,419…緩衝材、517…基材、617…台座、630,730,830…加工用柱部材、710…コアドリル、C…回転方向、O…回転軸、R…径方向、Wa…加工面