(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240926BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H05K13/04 B
(21)【出願番号】P 2023003724
(22)【出願日】2023-01-13
【審査請求日】2024-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田澤 秀博
【審査官】金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112179344(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-21/449
H01L 21/52 -21/607
H05K 3/30
H05K 13/30 -13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、
前記電子部品を初期位置においてピックアップして前記対象物の上の目標位置においてボンディングするボンディングツールと、
少なくとも第1方向及び前記第1方向と交差する第2方向に前記ボンディングツールを移動させる駆動部と、
時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、前記駆動部を制御する制御部と、
所定の軌跡に沿って前記ボンディングツールを前記初期位置から前記目標位置まで移動させるための、前記制御部の制御パラメータを記憶する記憶部と
を備え、
前記制御パラメータは、
前記ボンディングツールの前記初期位置から前記目標位置までの移動に要する総移動時間と、
前記総移動時間の基準となる基準総移動時間と、
前記ボンディングツールの前記第1方向における移動開始時点と前記第2方向における移動開始時点との間の移動開始時間差、及び、前記ボンディングツールの前記第1方向における移動終了時点と前記第2方向における移動終了時点との間の移動終了時間差、のうち少なくとも一方の時間差と、
前記少なくとも一方の時間差の基準となる基準時間差と
を含み、
前記基準時間差に対する前記少なくとも一方の時間差の比率は、前記基準総移動時間に対する前記総移動時間の比率に応じて設定され
、
前記少なくとも一方の時間差は、前記総移動時間に対して比例関係を有するように設定される、
ボンディング装置。
【請求項2】
前記制御部は、
第1時間変数型多項式によって生成される、前記第1方向における位置指令に基づいて、前記駆動部を制御し、
前記第1時間変数型多項式とは独立した第2時間変数型多項式によって生成される、前記第2方向における位置指令に基づいて、前記駆動部を制御する、
請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
前記第1時間変数型多項式の最大次数は、前記第2時間変数型多項式の最大次数よりも大きい、
請求項
2に記載のボンディング装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1時間変数型多項式として下記式によって生成される、前記第1方向における位置指令に基づいて、前記駆動部を制御する、
請求項
2に記載のボンディング装置。
【数1】
Z:t
Z時点での前記第1方向における位置
S
z:前記第1方向における最終到達位置の座標
C
z0,C
z1,…,C
z(n-1),C
zn:係数(nは2以上の整数)
t
z:前記第1方向における移動の開始時点からの経過時間
T
z:前記第1方向における移動の開始時点から終了時点までの移動時間
【請求項5】
前記制御部は、前記第2時間変数型多項式として下記式によって生成される、前記第2方向における位置指令に基づいて、前記駆動部を制御する、
請求項
2に記載のボンディング装置。
【数2】
Y:t
Y時点での前記第2方向における位置
S
y:前記第2方向における最終到達位置の座標
C
y0,C
y1,…,C
y(m-1),C
ym:係数(mは2以上の整数)
t
y:前記第2方向における移動の開始時点からの経過時間
T
y:前記第2方向における移動の開始時点から終了時点までの移動時間
【請求項6】
前記ボンディングツールの前記第1方向における移動開始時点は、前記第2方向における移動開始時点よりも早く設定され、
前記ボンディングツールの前記第1方向における移動終了時点は、前記第2方向における移動終了時点よりも遅く設定される、
請求項1から
5のいずれか一項に記載のボンディング装置。
【請求項7】
前記第1方向は鉛直方向であり、
前記第2方向は水平方向である、
請求項
6に記載のボンディング装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記第1方向及び前記第2方向に加えて、前記第1方向及び前記第2方向の両方と交差する第3方向にさらに前記ボンディングツールを移動させ、
前記基準時間差は、前記ボンディングツールの前記第1方向、前記第2方向及び前記第3方向のそれぞれの移動開始時点の間の少なくとも1つの移動開始時間差、及び、前記ボンディングツールの前記第1方向、前記第2方向及び前記第3方向のそれぞれの移動終了時点の間の少なくとも1つの移動終了時間差、のうち少なくとも一つの時間差の基準である、
請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項9】
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置を用いたボンディング方法であって、
前記ボンディング装置は、
前記電子部品を初期位置においてピックアップして前記対象物の上の目標位置においてボンディングするボンディングツールと、
少なくとも第1方向及び前記第1方向と交差する第2方向に前記ボンディングツールを移動させる駆動部と、
時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、前記駆動部を制御する制御部と、
所定の軌跡に沿って前記ボンディングツールを前記初期位置から前記目標位置まで移動させるための、前記制御部の制御パラメータを記憶する記憶部と
を備え、
前記制御パラメータは、
前記ボンディングツールの前記初期位置から前記目標位置までの移動に要する総移動時間と、
前記総移動時間の基準となる基準総移動時間と、
前記ボンディングツールの前記第1方向における移動開始時点と前記第2方向における移動開始時点との間の移動開始時間差、及び、前記ボンディングツールの前記第1方向における移動終了時点と前記第2方向における移動終了時点との間の移動終了時間差、のうち少なくとも一方の時間差と、
前記少なくとも一方の時間差の基準となる基準時間差と
を含み、
前記ボンディング方法は、
前記基準時間差に対する前記少なくとも一方の時間差の比率を、前記基準総移動時間に対する前記総移動時間の比率に応じて設定することと、
前記少なくとも一方の時間差に基づいて、前記ボンディングツールを前記初期位置から前記目標位置まで移動させることと
を含
み、
前記少なくとも一方の時間差は、前記総移動時間に対して比例関係を有するように設定される、
ボンディング方法。
【請求項10】
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置を動作させるボンディングプログラムであって、
前記ボンディング装置は、
前記電子部品を初期位置においてピックアップして前記対象物の上の目標位置においてボンディングするボンディングツールと、
少なくとも第1方向及び前記第1方向と交差する第2方向に前記ボンディングツールを移動させる駆動部と、
時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、前記駆動部を制御する制御部と、
所定の軌跡に沿って前記ボンディングツールを前記初期位置から前記目標位置まで移動させるための、前記制御部の制御パラメータを記憶する記憶部と
を備え、
前記制御パラメータは、
前記ボンディングツールの前記初期位置から前記目標位置までの移動に要する総移動時間と、
前記総移動時間の基準となる基準総移動時間と、
前記ボンディングツールの前記第1方向における移動開始時点と前記第2方向における移動開始時点との間の移動開始時間差、及び、前記ボンディングツールの前記第1方向における移動終了時点と前記第2方向における移動終了時点との間の移動終了時間差、のうち少なくとも一方の時間差と、
前記少なくとも一方の時間差の基準となる基準時間差と
を含み、
コンピュータに、
前記基準時間差に対する前記少なくとも一方の時間差の比率を、前記基準総移動時間に対する前記総移動時間の比率に応じて設定することと、
前記少なくとも一方の時間差に基づいて、前記ボンディングツールを前記初期位置から前記目標位置まで移動させることと
を実行させ
、
前記少なくとも一方の時間差は、前記総移動時間に対して比例関係を有するように設定される、
ボンディングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボンディング装置は、電子部品をピックアップして基板にボンディングするボンディングツールと、ボンディングツールを移動させる駆動部と、ボンディングツールが所定の軌跡に沿って移動するように駆動部を制御する制御部とを備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、制御対象物を所定の軌跡に沿って移動させる数値制御方法が開示されている。ここでは、まず、軌跡を空間多項式で近似すると共に、該多項式を時間関数としての多項式に変換する。次に、変換された時間関数としての多項式を各制御軸について分配し、各軸に分配された時間関数としての多項式に基づいて、各制御軸における制御指令を生成する。次に、制御指令に基づいて、各制御軸を制御して、制御対象物を軌跡に沿って移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、時間関数多項式によって生成される位置指令に基づいて、少なくとも二方向に同時に保持ツールを移動させる場合、当該二方向のそれぞれについての移動開始時点に時間差を設ける場合や、移動終了時点に時間差を設ける場合がある。このような移動開始時間差や移動終了時間差を定数に設定すると、ボンディングツールの総移動時間を変更したときに、保持ツールの軌跡が変動するという問題が生じる。
【0006】
本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ボンディングツールの軌跡の好適な調整を図ることができるボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様に係るボンディング装置は、電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、電子部品を初期位置においてピックアップして対象物の上の目標位置においてボンディングするボンディングツールと、少なくとも第1方向及び第1方向と交差する第2方向にボンディングツールを移動させる駆動部と、時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、駆動部を制御する制御部と、所定の軌跡に沿ってボンディングツールを初期位置から目標位置まで移動させるための、制御部の制御パラメータを記憶する記憶部とを備え、制御パラメータは、ボンディングツールの初期位置から目標位置までの移動に要する総移動時間と、総移動時間の基準となる基準総移動時間と、ボンディングツールの第1方向における移動開始時点と第2方向における移動開始時点との間の移動開始時間差、及び、ボンディングツールの第1方向における移動終了時点と第2方向における移動終了時点との間の移動終了時間差、のうち少なくとも一方の時間差と、少なくとも一方の時間差の基準となる基準時間差とを含み、基準時間差に対する少なくとも一方の時間差の比率は、基準総移動時間に対する総移動時間の比率に応じて設定される。
【0008】
本願発明の他の一態様に係るボンディング方法は、電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置を用いたボンディング方法であって、ボンディング装置は、電子部品を初期位置においてピックアップして対象物の上の目標位置においてボンディングするボンディングツールと、少なくとも第1方向及び第1方向と交差する第2方向にボンディングツールを移動させる駆動部と、時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、駆動部を制御する制御部と、所定の軌跡に沿ってボンディングツールを初期位置から目標位置まで移動させるための、制御部の制御パラメータを記憶する記憶部とを備え、制御パラメータは、ボンディングツールの初期位置から目標位置までの移動に要する総移動時間と、総移動時間の基準となる基準総移動時間と、ボンディングツールの第1方向における移動開始時点と第2方向における移動開始時点との間の移動開始時間差、及び、ボンディングツールの第1方向における移動終了時点と第2方向における移動終了時点との間の移動終了時間差、のうち少なくとも一方の時間差と、少なくとも一方の時間差の基準となる基準時間差とを含み、ボンディング方法は、基準時間差に対する少なくとも一方の時間差の比率を基準総移動時間に対する総移動時間の比率に応じて設定することと、少なくとも一方の時間差に基づいて、ボンディングツールを初期位置から目標位置まで移動させることとを含む。
【0009】
本願発明の他の一態様に係るボンディングプログラムは、電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置を動作させるボンディングプログラムであって、ボンディング装置は、電子部品を初期位置においてピックアップして対象物の上の目標位置においてボンディングするボンディングツールと、少なくとも第1方向及び第1方向と交差する第2方向にボンディングツールを移動させる駆動部と、時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、駆動部を制御する制御部と、所定の軌跡に沿ってボンディングツールを初期位置から目標位置まで移動させるための、制御部の制御パラメータを記憶する記憶部とを備え、制御パラメータは、ボンディングツールの初期位置から目標位置までの移動に要する総移動時間と、総移動時間の基準となる基準総移動時間と、ボンディングツールの第1方向における移動開始時点と第2方向における移動開始時点との間の移動開始時間差、及び、ボンディングツールの第1方向における移動終了時点と第2方向における移動終了時点との間の移動終了時間差、のうち少なくとも一方の時間差と、少なくとも一方の時間差の基準となる基準時間差とを含み、コンピュータに、基準時間差に対する少なくとも一方の時間差の比率を、基準総移動時間に対する総移動時間の比率に応じて設定することと、少なくとも一方の時間差に基づいて、ボンディングツールを初期位置から目標位置まで移動させることとを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、ボンディングツールの軌跡の好適な調整を図ることができるボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るボンディング装置の構成を示す図である。
【
図2】吸着コレットの時間に対する速度の変化を示すグラフである。
【
図3】一実施形態に係るボンディング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本願発明の実施形態について説明する。本実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0013】
<ボンディング装置>
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、本願発明の一実施形態に係るボンディング装置1の構成について説明する。
図1は、一実施形態に係るボンディング装置の構成を示す図である。
図2は、吸着コレットの時間に対する速度の変化を示すグラフである。
図2に示すグラフにおいて、縦軸は速度を1で正規化した値を示し、横軸は時間を1で正規化した値を示す。
【0014】
なお、
図1には、位置関係及び移動方向等を説明するために、便宜的にX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標を付している。X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向とする。X軸方向は紙面に垂直方向、Y軸方向は紙面の左右方向、Z軸方向は紙面の上下方向である。
【0015】
ボンディング装置1は、ダイ(半導体チップ)12をリードフレーム21にボンディングするボンディング装置である。ダイ12は電子部品の一例に相当し、リードフレーム21は対象物の一例に相当する。ボンディング装置1は、Z軸方向が鉛直方向、且つ、X軸方向及びY軸方向が水平方向となるように用いられる。
【0016】
なお、電子部品はこれに限定されるものではなく、例えば、能動素子、受動素子又はMEMSデバイスなどであってもよい。また、対象物は基板の一種であるリードフレーム21に限定されるものではなく、例えば、インタポーザ基板、半導体基板又はキャリアプレートなどの基板であってもよく、ダイなどの電子部品であってもよい。
【0017】
ボンディング装置1は、ピックアップ部10、ボンディングステージ20、ボンディングヘッド30、撮像部40、駆動部50及び制御装置90を備えている。
【0018】
ピックアップ部10は、ダイ12の集合基板であるウェハ11を搬送し、ボンディングヘッド30へとダイ12を供給する。ピックアップ部10は、電子部品を供給する電子部品供給部の一例に相当する。電子部品供給部は、例えば、トレイフィーダ、パーツフィーダ又はテープフィーダなどであってもよい。
【0019】
ボンディングステージ20は、リードフレーム21を供給する。また、ボンディングステージ20は、搬送されてきたリードフレーム21にダイ12をボンディングするためのステージである。ボンディングステージ20は、リードフレーム21を搬送するための移動ステージを兼ねてもよい。ボンディングステージ20は、Y軸方向においてピックアップ部10と並んで設けられている。ボンディングステージ20は、対象物への電子部品のボンディングが実行されるボンディング部の一例に相当する。対象物が基板である場合、ボンディング装置1は、例えば、マガジンに収納された基板を供給する基板供給部、基板をマガジンから取り出してボンディング部へ搬送するローダ、電子部品が実装された基板をボンディング部から搬送してマガジンに収容するアンローダ、基板をスライドして搬送するガイドレール、又は、基板を整列させる基板インデックスなどの図示しない構成要素を有しもよい。
【0020】
ボンディングヘッド30は、ダイ12をピックアップ及びリリースする。また、ボンディングヘッド30は、ダイ12をリードフレーム21にボンディングする。ボンディングヘッド30は、ピックアップ部10の上方の初期位置P1と、ボンディングステージ20の上方の目標位置P2との間を往復する。ボンディングヘッド30は、その上部において駆動部50に接続されている。ボンディングヘッド30は、吸着コレット33を備えている。
【0021】
吸着コレット33は、ダイ12を吸着して保持する保持ツールである。吸着コレット33は、ボンディングヘッド30の駆動部50とは反対側の端部に設けられている。吸着コレット33は、ダイ12を初期位置P1においてピックアップしてリードフレーム21の上の目標位置P2においてボンディングしてリリースする。吸着コレット33は、ボンディングツールの一例に相当する。
【0022】
なお、ボンディングツールは、電子部品のピックアップ及びボンディングが可能であれば、吸着コレットに限定されるものではない。ボンディングツールは、例えば、電子部品を電気的に吸着する静電チャックであってもよく、電子部品を機械的に支持するメカニカルチャックであってもよい。
【0023】
なお、図示を省略しているが、ボンディングヘッド30は、ダイ12を吸着するためにエアを吸引する吸引ツール、ダイ12を加熱する加熱ツール、ダイ12を冷却する冷却ツール、及び、非酸化性雰囲気を形成するパージガスを供給するパージガス供給ツールなどをさらに備えてもよい。
【0024】
撮像部40は、初期位置P1と目標位置P2との間を往復する吸着コレット33の先端部を撮像するイメージセンサの一種である。撮像部40は、吸着コレット33によるダイ12の保持状態をダイ12の搬送中に評価するための撮像画像を取得する。撮像部40によって撮像された撮像画像は、後述する画像解析部95に送られる。
【0025】
駆動部50は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向にボンディングヘッド30を移動させる直交ロボットである。駆動部50は、X軸アクチュエータ51、Y軸アクチュエータ52及びZ軸アクチュエータ53を有している。X軸アクチュエータ51はボンディングヘッド30をX軸方向に沿って移動させ、Y軸アクチュエータ52はボンディングヘッド30をY軸方向に沿って移動させ、Z軸アクチュエータ53はボンディングヘッド30をZ軸方向に沿って移動させる。駆動部50は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれにおけるボンディングヘッド30の移動を独立に制御される。
【0026】
ボンディングヘッド30がダイ12を初期位置P1においてピックアップしてから目標位置P2においてボンディングするまでの間、駆動部50は、例えば、ボンディングヘッド30をX軸方向において固定し、Y軸方向及びZ軸方向に沿って移動させる。このとき、駆動部50は、撮像部40の光軸上の焦点又は焦点近傍を通過する所定の軌跡に沿ってボンディングヘッド30を移動させる。ピックアップされたダイ12がピックアップ部10上の他のダイ12に接触しないよう、ボンディングヘッド30は、先にZ軸方向の移動を開始してから、時間差を付けてY軸方向の移動を開始する。同様に、ボンディングするときにダイ12がリードフレーム21やボンディング済みの他のダイ12に接触しないよう、ボンディングヘッド30は、先にY軸方向の移動を終了してから、時間差を付けてZ軸方向の移動を終了する。
【0027】
なお、ピックアップからボンディングまでの間、駆動部50は、ボンディングヘッド30を、Y軸方向及びZ軸方向に加えて、X軸方向にさらに移動させてもよい。この場合であっても、ボンディングヘッド30がダイ12をピックアップしてからボンディングするまでの間に、ボンディングヘッド30が最初に移動を開始する方向、及び、ボンディングヘッド30が最後に移動を終了する方向、はZ軸方向である。
【0028】
なお、駆動部は、直交ロボットに限定されるものではなく、例えばロボットマニピュレータ等であってもよい。
【0029】
制御装置90は、ボンディングヘッド30、撮像部40及び駆動部50を制御する。制御装置90は、例えば、記憶部91、算出部92、指令生成部93、制御部94及び画像解析部95を備えている。制御装置90の各部は、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによって構成される。すなわち、制御装置90は、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア又はこれらの協働によって実行される。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを備えている。メモリには本発明のプログラムが格納されている。CPUは、メモリに格納されたプログラムを実行することによって、記憶部91、算出部92、指令生成部93、制御部94及び画像解析部95の機能を実現するように構成されている。
【0030】
記憶部91は、制御部94が駆動部50を制御するための位置指令を生成する時間変数型多項式を記憶する。当該位置指令は、移動開始時間からの経過時間に対する吸着コレット33の位置を指令する情報である。
【0031】
時間変数型多項式は、互いに独立した第1時間変数型多項式及び第2時間変数型多項式を含む。第1時間変数型多項式は、Z軸方向における吸着コレット33の位置を指令する位置指令を生成するための関数である。第1時間変数型多項式は、Z軸方向における移動開始時点Tz1からの時間を変数とし、その時間における吸着コレット33のZ軸方向における位置を導出する。第1時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、制御部94は、駆動部50のZ軸アクチュエータ53を制御する。第2時間変数型多項式は、Y軸方向における吸着コレット33の位置を指令する位置指令を生成するための関数である。第1時間変数型多項式は、Y軸方向における移動開始時点Ty1からの時間を変数とし、その時間における吸着コレット33のY軸方向における位置を導出する。第2時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、制御部94は、駆動部50のY軸アクチュエータ52を制御する。
【0032】
例えば、第1時間変数型多項式の最大次数は、第2時間変数型多項式の最大次数よりも大きい。これは、第1時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて制御されるZ軸方向の移動が、第2時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて制御されるY軸方向の移動よりも複雑なためである。具体的には、初期位置P1から目標位置P2へ移動するとき、吸着コレット33のY軸方向における移動は+Y軸方向の片方向であるが、吸着コレット33のZ軸方向における移動は+Z軸方向及び-Z軸方向の双方向である。このように、移動経路が複雑な方向における時間変数型多項式の次数を大きくすることで、吸着コレット33の軌跡を滑らかにすることができる。
【0033】
第1時間変数型多項式は、例えば下記式で表される。一例として、第1時間変数型多項式は、下記式においてn=9とした9次式である。
【数1】
Z:t
z時点での第1方向における位置
S
z:Z軸方向における最終到達位置の座標
C
z0,C
z1,…,C
z(n―1),C
zn:係数(nは2以上の係数)
t
z:Z軸方向における移動開始時点Tz1からの経過時間
T
z:Z軸方向における移動開始時点Tz1から移動終了時点Tz2までの移動時間
【0034】
第2時間変数型多項式は、例えば下記式で表される。一例として、第2時間変数型多項式は、下記式においてm=7とした7次式である。
【数2】
Y:t
y時点での第2方向における位置
S
y:Y軸方向における最終到達位置の座標
C
y0,C
y1,…,C
y(m-1),C
ym:係数(mは2以上の係数)
t
y:Y軸方向における移動開始時点Ty1からの経過時間
T
y:Y軸方向における移動開始時点Ty1から移動終了時点Ty2までの移動時間
【0035】
記憶部91は、所定の軌跡に沿って吸着コレット33を初期位置P1から目標位置P2まで移動させるための、制御部94の制御パラメータをさらに記憶する。当該制御パラメータは、例えば、第1及び第2時間変数型多項式の係数、総移動時間T、基準総移動時間、基準移動時間差、ダイ12の大きさや形状、並びに、リードフレーム21の大きさやボンディング位置などである。
【0036】
記憶部91に記憶される第1及び第2時間変数型多項式の係数は、係数Cz0,Cz1,…,Cz(n―1),Czn及び係数Cy0,Cy1,…,Cy(m-1),Cymの係数データセットである。係数Cz0,Cz1,…,Cz(n―1),Czn及び係数Cy0,Cy1,…,Cy(m-1),Cymの組み合わせによって、吸着コレット33の軌跡は決定される。記憶部91に記憶される係数データセットは、1組の係数データセットであってもよく、複数組の係数データセットであってもよい。
【0037】
総移動時間Tは、吸着コレット33の初期位置P1から目標位置P2までの移動に要する時間の長さである。言い換えると、ダイ12をピックアップしてからボンディングするまでの間に、吸着コレット33がZ軸方向及びY軸方向の少なくとも一方向において移動している時間の長さである。
図2に示すように、Z軸方向において最初に移動開始し且つ最後に移動終了する本実施形態おいて、総移動時間Tは、Z軸方向における移動開始時点Tz1から、Z軸方向における移動終了時点Tz2までの時間の長さTz2-Tz1と表される。総移動時間Tの代わりに、吸着コレット33の移動速度が制御パラメータとして入力されてもよい。
【0038】
基準総移動時間は、総移動時間Tの基準となる時間の長さである。基準総移動時間は、例えば、量産段階において生産効率や不良品の発生率などを考慮して設定される、標準的な総移動時間である。
【0039】
なお、総移動時間及び基準総移動時間の代わりに、吸着コレットの平均移動速度及び基準平均移動速度が制御パラメータとして入力されてもよい。この場合、入力された平均移動速度及び基準平均移動速度に基づいて、総移動時間及び基準総移動時間を算出してもよい。
【0040】
基準時間差は、後述する移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2の基準となる時間の長さである。基準時間差は、移動開始時間差ΔT1の基準となる基準移動開始時間差と、移動終了時間差ΔT2の基準となる基準移動終了時間差とを含む。基準移動開始時間差及び基準移動終了時間差は、例えば、基準総移動時間でボンディング装置1を稼働したときの生産効率や不良品の発生率などを考慮して設定される、標準的な移動開始時間差及び移動終了時間差である。
【0041】
第1時間変数型多項式、第2時間変数型多項式、第1及び第2時間変数型多項式の係数、総移動時間T、基準総移動時間、並びに、基準時間差は、例えば、制御装置90の図示を省略した入力部によって入力される。入力部は、例えば、キーボード、マウス又はタッチパネルなどである。
【0042】
算出部92は、移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2を算出する。
【0043】
移動開始時間差ΔT1は、吸着コレット33が初期位置P1から移動を開始するときの、Z軸方向における移動開始時点Tz1と、Y軸方向における移動開始時点Ty1との時間差である。
図2に示すように、Z軸方向において最初に移動開始する本実施形態において、移動開始時間差ΔT1は、Z軸方向における移動開始時点Tz1から、Y軸方向における移動開始時点Ty1までの時間の長さTy1-Tz1として表される。
【0044】
移動終了時間差ΔT2は、吸着コレット33が目標位置P2において移動を終了するときの、Z軸方向における移動終了時点Tz2と、Y軸方向における移動終了時点Ty2との時間差である。
図2に示すように、Z軸方向において最後に移動終了する本実施形態において、移動終了時間差ΔT2は、Y軸方向における移動終了時点Ty2から、Z軸方向における移動終了時点Tz2までの時間の長さTz2-Ty2として表される。
【0045】
算出部92は、基準時間差に対する移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2の比率が、基準総移動時間に対する総移動時間Tの比率に応じるように、移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2を算出する。すなわち、基準総移動時間に対して総移動時間Tが短い場合、基準時間差に対して移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2を短くする。また、基準総移動時間に対して総移動時間Tが長い場合、基準時間差に対して移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2を長くする。特に、移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2が、総移動時間Tに対して比例関係を有するように算出されることが望ましい。
【0046】
算出部92において算出された移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2は、制御パラメータの一部として、記憶部91に記憶される。
【0047】
指令生成部93は、記憶部91に記憶された第1時間変数型多項式及び制御パラメータによって、吸着コレット33のZ軸方向における位置指令を生成する。指令生成部93は、記憶部91に記憶された第2時間変数型多項式及び制御パラメータによって、吸着コレット33のY軸方向における位置指令を生成する。
【0048】
制御部94は、ボンディングヘッド30、撮像部40及び駆動部50を制御する。
【0049】
制御部94は、ボンディングヘッド30の吸着コレット33を制御して、吸着コレット33にダイ12をピックアップ又はリリースさせる。具体的には、ボンディングヘッド30が初期位置P1に到着したときに、制御部94は、吸着コレット33の吸引を開始し、ダイ12を吸着コレット33に吸着させる。ボンディングヘッド30が目標位置P2に到着したときに、制御部94は、吸着コレット33の吸引を終了し、ダイ12を吸着コレット33から離脱させる。
【0050】
制御部94は、撮像部40を制御して、吸着コレット33が撮像部40の光軸上の焦点又は焦点近傍を通過するときに、吸着コレット33の動画又は静止画を撮像させる。制御部94は、往路及び復路の両方で吸着コレット33を撮像させる。往路とは、吸着コレット33が初期位置P1から目標位置P2に移動する経路であり、吸着コレット33の所定の軌跡に相当する。復路とは、吸着コレット33が目標位置P2から次のダイ12上に移動する経路である。
【0051】
制御部94は、X軸アクチュエータ51を制御して、吸着コレット33をX軸方向において移動させる。制御部94は、Y軸アクチュエータ52を制御して、吸着コレット33をY軸方向において移動させる。制御部94は、Z軸アクチュエータ53を制御して、吸着コレット33をZ軸方向において移動させる。具体的には、制御部94は、指令生成部93において第1時間変数型多項式によって生成されたZ軸方向の位置指令に基づいて、Z軸アクチュエータ55を制御し、吸着コレット33をZ軸方向に移動させる。また、制御部94は、指令生成部93において第2時間変数型多項式によって生成されたY軸方向の位置指令に基づいて、Y軸アクチュエータ52を制御し、吸着コレット33をY軸方向に移動させる。
【0052】
画像解析部95は、撮像部40によって撮像された画像を解析する。画像解析部95は、往路及び復路の両方における、吸着コレット33の画像を解析する。
【0053】
往路の吸着コレット33の画像を解析するとき、画像解析部95は、吸着コレット33によるダイ12の保持状態を評価する。画像解析部95は、往路の吸着コレット33にダイ12が保持されているか否かを評価する。画像解析部95は、往路の吸着コレット33にダイ12が保持されていないと評価した場合、吸着コレット33が初期位置P1においてダイ12をピックアップし損ねたと判断する。この場合、制御部94は、吸着コレット33を初期位置P1に移動させ、吸着コレット33にダイ12のピックアップを行わせる。画像解析部95は、往路の吸着コレット33にダイ12が保持されていると評価した場合、吸着コレット33の正常な保持位置からのダイ12のズレの有無及び程度を評価する。吸着コレット33の正常な保持位置からのダイ12のズレの程度に応じて、指令生成部93は、吸着コレット33の位置指令を補正する。
【0054】
復路の吸着コレット33の画像を解析するとき、画像解析部95は、ダイ12が保持されているか否かを評価する。画像解析部95は、復路の吸着コレット33にダイ12が保持されていると評価した場合、吸着コレット33が目標位置P2においてダイ12をリリースし損ねたと判断する。この場合、制御部94は、吸着コレット33を目標位置P2に移動させ、吸着コレット33にダイ12のリリースを再実施する。または、制御部94は、ボンディング装置1の動作を停止するとともにオペレータに通知して当該ダイの廃棄を促す。画像解析部95が復路の吸着コレット33にダイ12が保持されていないと評価した場合、制御部94は、吸着コレット33に次のダイ12をピックアップさせるべく、吸着コレット33をピックアップ部10の上方に移動させる。
【0055】
なお、本実施形態においては移動開始時間差及び移動終了時間差の両方を設定しているが、移動開始時間差だけを設定してもよく、移動終了時間差だけを設定してもよい。また、移動開始時間差及び移動終了時間差は算出部によって算出される態様に限定されるものではなく、他の制御パラメータ同様に外部から入力されもよい。
【0056】
<ボンディング方法>
次に、
図3を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るボンディング装置1を用いたボンディング方法について説明する。
図3は、一実施形態に係るボンディング方法を示すフローチャートである。
【0057】
まず、第1時間変数型多項式及び第2時間変数型多項式を記憶し(S11)、基準総移動時間及び基準時間差を記憶する(S12)。第1時間変数型多項式、第2時間変数型多項式、基準総移動時間及び基準時間差は、図示を省略した入力部によって入力され、記憶部91に記憶される。第1時間変数型多項式、第2時間変数型多項式、基準総移動時間及び基準時間差などの入力データは、例えば、ダイ12及びリードフレーム21の品種などのボンディング条件の決定後に、ボンディング条件に応じて入力される。但し、ボンディング条件の決定前に複数のボンディング条件に対応する複数の入力データが入力され、ボンディング条件の決定後に、記憶された複数の入力データの中から入力データが適宜選択されてもよい。
【0058】
次に、総移動時間Tを記憶する(S13)。総移動時間Tは、図示を省略した入力部によって入力され、記憶部91に記憶される。例えば、第1の総移動時間から第2の総移動時間へと変更するときに第2の総移動時間が入力される。但し、第2の総移動時間は、第1の総移動時間でボンディング装置1を稼働させる前に入力された複数の総移動時間から適宜選択されてもよい。なお、総移動時間Tが基準総移動時間と同じである場合、総移動時間Tの入力及び記憶は省略されてもよい。
【0059】
次に、移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2を算出する(S14)。移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2は、算出部92によって、総移動時間Tに基づいて算出される。例えば、基準移動開始時間差に対する移動開始時間差ΔT1の比率が、基準総移動時間に対する総移動時間Tの比率と等しくなるよう、移動開始時間差ΔT1は算出される。同様に、基準移動終了時間差に対する移動終了時間差ΔT2の比率が、基準総移動時間に対する総移動時間Tの比率と等しくなるよう、移動終了時間差ΔT2は算出される。すなわち、移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2は、総移動時間Tに対して比例関係を有する。算出された移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2は、記憶部91に送られて記憶される。
【0060】
なお、基準移動開始時間差に対する移動開始時間差ΔT1の比率が、基準総移動時間に対する総移動時間Tの比率に応じて設定されるのであれば、移動開始時間差ΔT1と総移動時間Tとの関係は比例関係に限定されるものではない。但し、総移動時間及び移動開始時間差に起因した吸着コレット33の軌跡の変動を抑制するためには、総移動時間Tが基準総移動時間よりも小さいとき、移動開始時間差ΔT1は、基準移動開始時間差よりも小さく設定されることが望ましい。逆に、総移動時間Tが基準総移動時間よりも大きいとき、移動開始時間差ΔT1は、基準移動開始時間差よりも大きく設定されることが望ましい。移動終了時間差ΔT2も同様である。
【0061】
次に、位置指令を生成し(S15)、吸着コレット33を移動させる(S16)。指令生成部93は、記憶部91に記憶された、第1時間変数型多項式、第2時間変数型多項式、総移動時間T、移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2に基づいて、Z軸方向の位置指令及びY軸方向の位置指令を生成する。制御部94は、指令生成部93において生成されたZ軸方向の位置指令に基づいて、駆動部50のZ軸アクチュエータ53を制御し、吸着コレット33をZ軸方向に移動させる。制御部94は、指令生成部93において生成されたY軸方向の位置指令に基づいて、駆動部50のY軸アクチュエータ52を制御し、吸着コレット33をY軸方向に移動させる。
【0062】
以上説明したように、ボンディング装置1において、基準時間差に対する移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2の比率が、基準総移動時間に対する総移動時間の比率に応じて設定される。
【0063】
この態様によれば、総移動時間Tの変更に応じて位置指令を生成した場合に吸着コレット33の軌跡を決定する一因である移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2を、総移動時間Tに応じて設定することで、吸着コレット33の軌跡を好適に調整することができる。例えば、総移動時間Tを基準総移動時間から短縮又は伸長した場合における吸着コレット33の軌跡を、基準総移動時間に基づいて移動させた場合の吸着コレット33の軌跡に近似させることができる。したがって、総移動時間Tを変更したときに、吸着コレット33の軌跡の変動に起因した、吸着コレット33とボンディング装置1の他の構成要素との衝突を避けることができる。
【0064】
また、撮像部40において撮像した撮像画像に基づき、吸着コレット33によるダイ12の保持状態を評価する場合においては、吸着コレット33軌跡の変動に起因した評価不良を抑制することができる。具体的には、吸着コレット33の軌跡の変動によって、撮像部40の光軸上での吸着コレット33の通過位置が、撮像部40の焦点から離間することを抑制できる。このため、撮像画像が不鮮明となり充分な画像解析ができないという事態を避けることができ、吸着コレット33によるダイ12の保持状態の評価不良を抑制することができる。
【0065】
一態様として、移動開始時間差ΔT1及び移動終了時間差ΔT2は、総移動時間Tに対して比例関係を有する。
【0066】
これによれば、総移動時間Tを変更した場合における吸着コレット33の軌跡を、基準総移動時間に基づいて移動させた場合の吸着コレット33の軌跡にさらに近似させることができる。
【0067】
一態様として、制御部94は、第1時間変数型多項式によって生成されるZ軸方向における位置指令に基づいてZ軸アクチュエータ53を制御し、第2時間変数型多項式によって生成されるY軸方向における位置指令に基づいてY軸アクチュエータ52を制御する。第1時間変数型多項式及び第1時間変数型多項式は互いに独立し、第1時間変数型多項式の最大次数は、第2時間変数型多項式の最大次数よりも大きい。
【0068】
これによれば、Y軸方向よりも複雑なZ軸方向における吸着コレット33の移動を、滑らかにすることができる。
【0069】
吸着コレット33のZ軸方向における移動開始時点Tz1は、Y軸方向における移動開始時点Ty1よりも早く設定され、吸着コレット33のZ軸方向における移動終了時点Tz2は、Y軸方向における移動終了時点Ty2よりも遅く設定される。
【0070】
この態様によれば、ダイ12のピックアップ時に吸着コレット33をY軸方向よりも先にZ方向に移動開始し、ボンディング時に吸着コレット33をZ軸方向よりも先にY軸方向に移動終了する。したがって、吸着コレット33によるダイ12のピックアップ時又はボンディング時に、他のダイ12やリードフレーム21との衝突によるダイ12の損傷を避けることができる。このように、移動開始と移動終了との両方の時間差を設定する軌道に沿って吸着コレット33を移動させる場合でも、本実施形態によれば、吸着コレット33の軌道を好適に調整することができる。
【0071】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0072】
[付記1]
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、電子部品を初期位置においてピックアップして対象物の上の目標位置においてボンディングするボンディングツールと、少なくとも第1方向及び第1方向と交差する第2方向にボンディングツールを移動させる駆動部と、時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、駆動部を制御する制御部と、所定の軌跡に沿ってボンディングツールを初期位置から目標位置まで移動させるための、制御部の制御パラメータを記憶する記憶部とを備え、制御パラメータは、ボンディングツールの初期位置から目標位置までの移動に要する総移動時間と、総移動時間の基準となる基準総移動時間と、ボンディングツールの第1方向における移動開始時点と第2方向における移動開始時点との間の移動開始時間差、及び、ボンディングツールの第1方向における移動終了時点と第2方向における移動終了時点との間の移動終了時間差、のうち少なくとも一方の時間差と、少なくとも一方の時間差の基準となる基準時間差とを含み、基準時間差に対する少なくとも一方の時間差の比率は、基準総移動時間に対する総移動時間の比率に応じて設定される、ボンディング装置。
【0073】
この態様によれば、ボンディングツールの軌跡を決定する一因である少なくとも一方の時間差を、総移動時間に応じて設定することで、ボンディングツールの軌跡を好適に調整することができる。例えば、総移動時間を基準総移動時間から短縮又は伸長した場合におけるボンディングツールの軌跡を、基準総移動時間に基づいて移動させた場合のボンディングツールの軌跡に近似させることができる。したがって、総移動時間を変更したときに、ボンディングツールの軌跡の変動に起因した、ボンディングツールとボンディング装置の他の構成要素との衝突を避けることができる。また、ボンディングツールによる電子部品の保持状態を搬送中に評価する場合においては、ボンディングツールの軌跡の変動に起因した評価不良を抑制することができる。
【0074】
[付記2]
少なくとも一方の時間差は、総移動時間に対して比例関係を有するように設定される、[付記1]に記載のボンディング装置。
【0075】
この態様によれば、総移動時間を変更した場合におけるボンディングツールの軌跡を、基準総移動時間に基づいて移動させた場合のボンディングツールの軌跡にさらに近似させることができる。
【0076】
[付記3]
制御部は、第1時間変数型多項式によって生成される、第1方向における位置指令に基づいて、駆動部を制御し、第1時間変数型多項式とは独立した第2時間変数型多項式によって生成される、第2方向における位置指令に基づいて、駆動部を制御する、[付記1]又は[付記2]に記載のボンディング装置。
【0077】
[付記4]
第1時間変数型多項式の最大次数は、第2時間変数型多項式の最大次数よりも大きい、[付記3]に記載のボンディング装置。
【0078】
この態様によれば、第1方向におけるボンディングツールの移動を、第2方向における移動よりも複雑で滑らかにすることができる。
【0079】
[付記5]
制御部は、第1時間変数型多項式として下記式によって生成される、第1方向における位置指令に基づいて、駆動部を制御する、[付記3]又は[付記4]に記載のボンディング装置。
【数1】
Z:t
Z時点での第1方向における位置
S
z:第1方向における最終到達位置の座標
C
z0,C
z1,…,C
z(n-1),C
zn:係数(nは2以上の整数)
t
z:第1方向における移動の開始時点からの経過時間
T
z:第1方向における移動の開始時点から終了時点までの移動時間
【0080】
[付記6]
制御部は、第2時間変数型多項式として下記式によって生成される、第2方向における位置指令に基づいて、駆動部を制御する、[付記3]から[付記5]のいずれか一つに記載のボンディング装置。
【数2】
Y:t
Y時点での第2方向における位置
S
y:第2方向における最終到達位置の座標
C
y0,C
y1,…,C
y(m-1),C
ym:係数(mは2以上の整数)
t
y:第2方向における移動の開始時点からの経過時間
T
y:第2方向における移動の開始時点から終了時点までの移動時間
【0081】
[付記7]
ボンディングツールの第1方向における移動開始時点は、第2方向における移動開始時点よりも早く設定され、ボンディングツールの第1方向における移動終了時点は、第2方向における移動終了時点よりも遅く設定される、[付記1]から[付記6]のいずれか一つに記載のボンディング装置。
【0082】
[付記8]
第1方向は鉛直方向であり、第2方向は水平方向である、[付記1]から[付記7]のいずれか一つに記載のボンディング装置。
【0083】
この態様によれば、電子部品のピックアップ時にボンディングツールを水平方向よりも先に鉛直方向に移動開始し、ボンディング時にボンディングツールを鉛直方向よりも先に水平方向に移動終了する。したがって、ボンディングツールによる電子部品のピックアップ時又はボンディング時に、他の電子部品や対象物との衝突による電子部品の損傷を避けることができる。このように、移動開始と移動終了との両方の時間差を設定する軌道に沿ってボンディングツールを移動させる場合でも、ボンディングツールの軌道を好適に調整することができる。
【0084】
[付記9]
駆動部は、第1方向及び第2方向に加えて、第1方向及び第2方向の両方と交差する第3方向にさらにボンディングツールを移動させ、基準時間差は、ボンディングツールの第1方向、第2方向及び第3方向のそれぞれの移動開始時点の間の少なくとも1つの移動開始時間差、及び、ボンディングツールの第1方向、第2方向及び第3方向のそれぞれの移動終了時点の間の少なくとも1つの移動終了時間差、のうち少なくとも一つの時間差の基準である、[付記1]から[付記8]のいずれか一つに記載のボンディング装置。
【0085】
この態様によれば、ボンディングツールを3方向に移動させる場合であっても、ボンディングツールの軌道を好適に調整することができる。
【0086】
[付記10]
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置を用いたボンディング方法であって、ボンディング装置は、電子部品を初期位置においてピックアップして対象物の上の目標位置においてボンディングするボンディングツールと、少なくとも第1方向及び第1方向と交差する第2方向にボンディングツールを移動させる駆動部と、時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、駆動部を制御する制御部と、所定の軌跡に沿ってボンディングツールを初期位置から目標位置まで移動させるための、制御部の制御パラメータを記憶する記憶部とを備え、制御パラメータは、ボンディングツールの初期位置から目標位置までの移動に要する総移動時間と、総移動時間の基準となる基準総移動時間と、ボンディングツールの第1方向における移動開始時点と第2方向における移動開始時点との間の移動開始時間差、及び、ボンディングツールの第1方向における移動終了時点と第2方向における移動終了時点との間の移動終了時間差、のうち少なくとも一方の時間差と、少なくとも一方の時間差の基準となる基準時間差とを含み、ボンディング方法は、基準時間差に対する少なくとも一方の時間差の比率を基準総移動時間に対する総移動時間の比率に応じて設定することと、少なくとも一方の時間差に基づいて、ボンディングツールを初期位置から目標位置まで移動させることとを含む、ボンディング方法。
【0087】
[付記11]
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置を動作させるボンディングプログラムであって、ボンディング装置は、電子部品を初期位置においてピックアップして対象物の上の目標位置においてボンディングするボンディングツールと、少なくとも第1方向及び第1方向と交差する第2方向にボンディングツールを移動させる駆動部と、時間変数型多項式によって生成される位置指令に基づいて、駆動部を制御する制御部と、所定の軌跡に沿ってボンディングツールを初期位置から目標位置まで移動させるための、制御部の制御パラメータを記憶する記憶部とを備え、制御パラメータは、ボンディングツールの初期位置から目標位置までの移動に要する総移動時間と、総移動時間の基準となる基準総移動時間と、ボンディングツールの第1方向における移動開始時点と第2方向における移動開始時点との間の移動開始時間差、及び、ボンディングツールの第1方向における移動終了時点と第2方向における移動終了時点との間の移動終了時間差、のうち少なくとも一方の時間差と、少なくとも一方の時間差の基準となる基準時間差とを含み、コンピュータに、基準時間差に対する少なくとも一方の時間差の比率を、基準総移動時間に対する総移動時間の比率に応じて設定することと、少なくとも一方の時間差に基づいて、ボンディングツールを初期位置から目標位置まで移動させることとを実行させる、ボンディングプログラム。
【0088】
以上説明したように、本願発明の一態様によれば、ボンディングツールの軌跡の好適な調整を図ることができるボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラムを提供することができる。
【0089】
以上説明した実施形態は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、本願発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1…ボンディング装置
10…ピックアップ部
11…ウェハ
12…ダイ
20…ボンディングステージ
21…リードフレーム
30…ボンディングヘッド
33…吸着コレット
40…撮像部
50…駆動部
51…X軸アクチュエータ
52…Y軸アクチュエータ
53…Z軸アクチュエータ
90…制御装置
91…記憶部
92…算出部
93…指令生成部
94…制御部
95…画像解析部
ΔT1…移動開始時間差
ΔT2…移動終了時間差
T…総移動時間
Tz1,Ty1…移動開始時点
Tz2,Ty2…移動終了時点