(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】トングの製造方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/00 20060101AFI20240926BHJP
B21C 37/02 20060101ALI20240926BHJP
B21H 7/00 20060101ALI20240926BHJP
B21H 9/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B21B1/00 Z
B21C37/02 Z
B21H7/00 Z
B21H9/00 C
B21H9/00 D
(21)【出願番号】P 2023158514
(22)【出願日】2023-09-22
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505376628
【氏名又は名称】株式会社田辺金具
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 和朗
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7340677(JP,B1)
【文献】特開2010-089121(JP,A)
【文献】特開平01-224106(JP,A)
【文献】特開2022-181167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
B21H 7/00- 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材金属板を保持して移動する保持搬送機と
、
上ロールと、前記上ロールに対向して配置された下ロールと、を有するロール圧延機
と、
前記保持搬送機と前記ロール圧延機を制御する制御装置と、を備える素材圧延装置を使用したトングの製造方法であって、
前記上ロールは、回転軸方向から見た場合に真円形状を有し、
前記下ロールは、回転軸方向から見た場合に真円形状を有し、
前記上ロールの圧延面部は、前記回転軸方向と直交する方向から見た場合に、外方向に凸の円弧形状を有し、
前記下ロールの圧延面部は、前記回転軸方向と直交する方向から見た場合に、外方向に凸の円弧形状を有し、
前記保持搬送機の往復動の回数、速度、移動距離、前記上ロール及び前記下ロールの回転速度、回転回数、回転角度を設定すると、
前記保持搬送機
が、前記上ロールと前記下ロールの隙間に前記素材金属板を
自動で搬送
する工程と、
前記上ロールと前記下ロール
が自動で前記素材金属板を挟
む工程と、
前記保持搬送機
が設定された回数、速度、移動距離で自動で往復動する
工程と、
前記保持搬送機の往復動に伴って、前記上ロールと前記下ロールが
設定された回転速度、回転回数、回転角度で自動で回転する
工程と、が行われることにより前記素材金属板
のうち、前記トングの折曲部となる部分が圧延加工されることを特徴とするトングの製造方法。
【請求項2】
前記保持搬送機が往復動している間は、前記素材金属板が前記上ロールと前記下ロールに接していることを特徴とする請求項1に記載のトングの製造方法。
【請求項3】
前記素材金属板の形状を検出する画像センサを備え、
前記圧延加工後に前記画像センサにより前記素材金属板の形状を検出することを特徴とする請求項1に記載のトングの製造方法。
【請求項4】
前記制御装置により前記ロール圧延機が制御され、前記保持搬送機が往復動している間に、前記上ロールと前記下ロールとの間隔が
自動で変化することを特徴とする請求項1に記載のトングの製造方法。
【請求項5】
ロール圧延機が、前記上ロールを前記下ロールに近づく方向と離れる方向に
移動させる移動装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のトングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や食材のような把持対象物を把持して取り出すトングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本願出願人は、特許文献1に記載のようなトングを製造しているが、弾性弯曲状部(5)の厚みを薄くするため、製造工程において圧延加工を行っている。圧延加工は、回転可能に配設された上下2つのロールの間に弾性弯曲状部(5)となる部分を複数回通し、薄く加工するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、弾性弯曲状部(5)を所定の厚さにまで薄くするためには、1つのトングを製造するために上下に配設されたロールの間を数回~数十回通す必要があった。そのため、多くのトングを製造する場合には、手作業で圧延加工を行うと非常に多くの時間がかかっていた。
【0005】
そこで、本発明は以上の問題を解決し、圧延工程を自動化した製造装置によるトングの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトングの製造方法は、素材金属板を保持して移動する保持搬送機と、上ロールと、前記上ロールに対向して配置された下ロールと、を有するロール圧延機と、前記保持搬送機と前記ロール圧延機を制御する制御装置と、を備える素材圧延装置を使用したトングの製造方法であって、前記上ロールは、回転軸方向から見た場合に真円形状を有し、前記下ロールは、回転軸方向から見た場合に真円形状を有し、前記上ロールの圧延面部は、前記回転軸方向と直交する方向から見た場合に、外方向に凸の円弧形状を有し、前記下ロールの圧延面部は、前記回転軸方向と直交する方向から見た場合に、外方向に凸の円弧形状を有し、前記保持搬送機の往復動の回数、速度、移動距離、前記上ロール及び前記下ロールの回転速度、回転回数、回転角度を設定すると、前記保持搬送機が、前記上ロールと前記下ロールの隙間に前記素材金属板を自動で搬送する工程と、前記上ロールと前記下ロールが自動で前記素材金属板を挟む工程と、前記保持搬送機が設定された回数、速度、移動距離で自動で往復動する工程と、前記保持搬送機の往復動に伴って、前記上ロールと前記下ロールが設定された回転速度、回転回数、回転角度で自動で回転する工程と、が行われることにより前記素材金属板のうち、前記トングの折曲部となる部分が圧延加工されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トングの折曲部の圧延加工を自動で行うことができ、手作業と比較して圧延工程の時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態における素材圧延装置の正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における圧延加工直前の素材金属板と上ロールと下ロールを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態における圧延加工中の素材金属板と上ロールと下ロールを示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態における(A)第1の保持搬送機が前側に移動した状態の素材金属板と上ロールと下ロールを示す図、(B)第1の保持搬送機が後側に移動した状態の素材金属板と上ロールと下ロールを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態における制御装置を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態における表示画面の圧延条件1/2を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態における表示画面の圧延条件2/2を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態における表示部を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態におけるトングの製造工程表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明における好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0010】
図1及び
図2は、本発明に係るトングの製造方法に使用する素材圧延装置1の一実施形態を示している。素材圧延装置1は、素材供給機2と、ロール圧延機3と、プレスカット機4と、複数の搬送機から構成される搬送装置5と、制御装置6と、を有する。
【0011】
完成品であるトング7(
図10参照)は、素材である細長い矩形状の金属板である素材金属板8を、素材圧延装置1により圧延加工を施し、切断、坪押し、折り曲げ、研摩、洗浄等の工程を経て製造される。本実施形態は、オールステンレスのトング7の製造方法であり、素材金属板8は、厚さ2.2mmのステンレス鋼が使用される。
【0012】
素材供給機2には、素材金属板8をストックしておくストッカ11が設けられている。ストッカ11は、素材金属板8が水平方向に移動することを規制する複数の規制棒12と、素材金属板8を載置する底側受部13と、を有する。素材金属板8は複数の規制棒12の間に配置され、上下に複数枚重ねられた状態でストックされる。
【0013】
素材供給機2にストックされた素材金属板8は、搬送装置5を構成する第1の吸着搬送機14により取り出される。第1の吸着搬送機14は、ストッカ11に収容されている最も上の素材金属板8を吸着して上方向に持ち上げ、ストッカ11から取り出す。
【0014】
素材供給機2とロール圧延機3の間には、非接触型の第1の変位センサ15が設けられている。第1の吸着搬送機14は、素材金属板8を水平方向に搬送し、第1の変位センサ15は素材金属板8が通過する際に、素材金属板8の厚さを検出する。素材金属板8の厚さを検査することで、素材金属板8が誤って複数枚貼り付いた状態で搬送されていないかをチェックする。第1の変位センサ15の検出結果から素材金属板8が複数枚であると判定された場合には、第1の吸着搬送機14による搬送が停止する。このとき、報知手段(図示せず)によりランプの点灯や音声や画像によるエラー情報が報知される。第1の第1の変位センサ15の検出結果により素材金属板8が1枚であると判定された場合には、第1の吸着搬送機14は中心位置決め機16に素材金属板8を受け渡す。中心位置決め機16は、素材金属板8を左右方向から挟持することで、素材金属板8の左右方向の中心位置の位置決めをする。以降の工程においては、素材金属板8の左右方向の中心位置が保持された状態で素材金属板8が移送される。左右方向の中心位置の位置決めがされた素材金属板8は、中心位置決め機16から第1の吸着搬送機14に受け渡される。素材金属板8を受け取った第1の吸着搬送機14は、搬送装置5を構成する第1の保持搬送機17に素材金属板8を受け渡す。
【0015】
ロール圧延機3は、上ロール18と、下ロール19と、上ロール駆動部20と、下ロール駆動部21と、素材金属板8の厚さを検出する非接触型の第2の第2の変位センサ22と、素材金属板8の外形状を検出する画像センサ23と、上ロール保守部24と、下ロール保守部25と、を有している。
【0016】
第1の保持搬送機17は、第1の吸着搬送機14から素材金属板8を受け取ると、素材金属板8の左右端部を強固に保持し、上ロール18と下ロール19の隙間Sに素材金属板8を搬送する。
【0017】
図5に示すように、上ロール18と下ロール19は、軸方向から見た場合に真円形状を有している。また、上ロール18と下ロール19は、
図3及び
図4に示すように、軸方向と直交する方向から見た場合に、素材金属板8に接する圧延面部26、27が外方向に僅かに凸の円弧形状を有している。上ロール18と下ロール19は同一形状であり、上ロール18の回転軸28(中心軸)と下ロール19の回転軸29(中心軸)は、垂直方向に延びる仮想直線L1(
図5参照)上に位置している。また、上ロール18の幅方向中心部P1と下ロール19の幅方向中心部P2は、垂直方向に延びる仮想直線L2上に位置している。すなわち、上ロール18と下ロール19は、前後左右方向の位置が同一となっており、上下方向の位置のみが異なっている。
【0018】
上ロール18は、上ロール駆動部20が備える駆動モータ(図示せず)により、回転軸28を中心に回転可能となっている。下ロール19も同様に、下ロール駆動部21が備える駆動モータ(図示せず)により、回転軸29を中心に回転可能となっている。また、上ロール18は、移動装置30により上下方向に移動可能である。本実施形態の下ロール19は移動装置を備えていないため上下方向に移動しないが、上ロール18のように移動装置を備え、上下方向に移動可能としてもよい。移動装置30により上ロール18を移動させることで、上ロール18と下ロール19の間隔Tを任意の長さに調節可能である。
【0019】
移動装置30により上ロール18が下降すると、上ロール18と下ロール19の隙間Sに配置された素材金属板8は、上ロール18と下ロール19により挟まれる。この状態で、第1の保持搬送機17が前後方向に複数回往復動すると共に、上ロール18と下ロール19が回転し、素材金属板8の左右方向(長手方向)の中央部分が圧延される。上ロール18と下ロール19の回転は同期されており、同時に回転を開始し、同時に回転を停止する。また、同一の速度で回転し、同一の回転範囲(回転角度)で回転する。また、第1の保持搬送機17による往復動と、上ロール18及び下ロール19の回転も同期されており、第1の保持搬送機17が進行方向(前方向)に移動するときには、
図5(A)に示す側面視において、上ロール18は時計回りに回転し、下ロール19は反時計回りに回転する。一方、第1の保持搬送機17が後退方向(後方向)に移動するときには、
図5(B)に示す側面視において、上ロール18は反時計回りに回転し、下ロール19は時計回りに回転する。素材金属板8の圧延部8Aは、徐々に左右に延出して延出部8Bが形成されると共に、徐々に薄くなる。そのため、第1の保持搬送機17の往復動の増加に応じて上ロール18が徐々に下降し、上ロール18と下ロール19の間隔Tが徐々に狭くなる。予め設定された往復動の回数が終了すると、上ロール18が上昇する。
【0020】
圧延加工時に、第1の保持搬送機17の往復動の回数や速度、上ロール18と下ロール19の隙間Sの間隔Tや、上ロール18と下ロール19の回転量(回転角度)や回転速度等は、後述する制御装置6の操作盤36により設定することができる。
【0021】
1回目の圧延加工が終了すると、素材金属板8は第1の保持搬送機17に保持された状態で搬送され、第2の変位センサ22と画像センサ23を通過する。
【0022】
第2の変位センサ22は、上ロール18と下ロール19により圧延された素材金属板8の圧延部8Aの厚さを検出する。第2の変位センサ22の検出結果により、圧延部8Aが所定の厚さとなっている場合には、画像センサ23に搬送され、所定の厚さ以外の厚さである場合には、第1の保持搬送機17による素材金属板8の搬送が停止する。このとき、報知手段(図示せず)によりランプの点灯や音声や画像によるエラー情報が報知される。
【0023】
画像センサ23は、圧延された素材金属板8の外形状を検出する。画像センサ23の検出結果から、素材金属板8の外形状が所定の形状でないと判定された場合には、第1の保持搬送機17による素材金属板8の搬送が停止する。このとき、報知手段(図示せず)によりランプの点灯や音声や画像によるエラー情報が報知される。素材金属板8の外形状が所定の形状であると判定された場合には、素材金属板8は第1の保持搬送機17により搬送され、次の工程に進む。
【0024】
上ロール保守部24は、定期的に上ロール18の圧延面部29に塗油したり、圧延面部29を拭いたり、磨いたりする。すなわち、上ロール18の圧延面部29を正常に維持するために自動的にメンテナンスを行う。下ロール保守部25も同様に、定期的に下ロール19の圧延面部30に塗油したり、圧延面部30を拭いたり、磨いたりし、下ロール19の圧延面部30を正常に維持するために自動的にメンテナンスを行う。また、圧延加工が終了した素材金属板8が第1の保持搬送機17により搬送された後、上ロール18と下ロール19は所定量回転し、次回の圧延加工時に素材金属板8(圧延部8A)に接する圧延面部26、27の位置が変わるようになっている。そのため、長期間の使用により圧延面部26、27が部分的に偏よって摩耗することを防止している。なお、本実施形態では1回毎に素材金属板8に接する圧延面部26、27の位置を変更しているが、所定回数毎に素材金属板8に接する圧延面部26、27の位置を変更してもよい。また、位置を変更する場合には、上ロール18と下ロール19を同一量変更してもよく、それぞれ異なる量変更してもよい。
【0025】
プレスカット機4は、ロール圧延機3により1回目の圧延加工が施され、圧延部8Aのうち左右方向に延出した延出部8Bを所定量切断する。搬送装置5を構成する第2の吸着搬送機31は、1回目の圧延加工が施された素材金属板8を第1の保持搬送機17から受け取る。第2の吸着搬送機31は、素材金属板8をプレスカット機4方向に搬送し、素材金属板8を第2の保持搬送機32に受け渡す。素材金属板8を強固に保持した第2の保持搬送機32は、プレスカット機4の切断位置まで素材金属板8を搬送して停止する。その後、プレスカット機4の切断機33が下降し、左右の延出部8Bを所定量切断する。
【0026】
切断機33で左右の延出部8Bを切断された素材金属板8は、第2の保持搬送機32から第2の吸着搬送機31に受け渡される。第2の吸着搬送機31は、素材金属板8をロール圧延機3方向に搬送し、素材金属板8を第1の保持搬送機17に受け渡す。第1の保持搬送機17は、素材金属板8を上ロール18と下ロール19の隙間Sに搬送する。上ロール18が下降し、素材金属板8が上ロール18と下ロール19により挟まれ、第1の保持搬送機17が前後方向に複数回往復動し、素材金属板8の圧延部8Aに対して2回目の圧延加工が施される。
【0027】
2回目の圧延加工が施された素材金属板8は、第1の保持搬送機17により保持された状態で搬送され、第2の変位センサ22と画像センサ23を通過する。第2の変位センサ22の検出結果により、素材金属板8の圧延部8Aが所定の厚さとなっている場合には、画像センサ23に搬送され、所定の厚さ以外の厚さである場合には、第1の保持搬送機17による素材金属板8の搬送が停止し、報知手段(図示せず)によりエラー情報が報知される。画像センサ23の検出結果から、素材金属板8の外形状が所定の形状でないと判定された場合には、第1の保持搬送機17による素材金属板8の搬送が停止し、報知手段(図示せず)によりエラー情報が報知される。素材金属板8の外形状が所定の形状であると判定された場合には、素材金属板8は第1の保持搬送機17により搬送され、次の工程に進む。
【0028】
素材金属板8は、第1の保持搬送機17から第2の吸着搬送機31に受け渡される。第2の吸着搬送機31は、素材金属板8を第2の保持搬送機32に受け渡し、保持搬送機32は、素材金属板8をプレスカット機4の先まで搬送し、第3の吸着搬送機34に受け渡す。第3の吸着搬送機34は、搬送装置5を構成するコンベア装置35上に載置された収容箱36に素材金属板8を収容する。収容箱36に素材金属板8が所定数収容されると、収容箱36はコンベア装置35により所定の場所まで搬送される。
【0029】
図2及び
図6に示すように、制御装置6は、素材圧延装置1の電源のオン/オフや、ロール圧延機3の上ロール18と下ロール19の隙間Sの間隔Tの調節や、上ロール18と下ロール19の回転速度・回転範囲(回転角度)や、圧延加工時の第1の保持搬送機17の往復動の回数等の各種設定を行う操作盤37を備えている。そのため、素材金属板8の厚さや大きさ等に応じて各種設定を行うことで、様々な種類のトング7の圧延加工を施すことができる。すなわち、同一の素材圧延装置1により様々な大きさや厚さのトング7の圧延加工を行うことができる。
【0030】
表示画面38には、
図7及び
図8に示すような各種設定が表示される。例えば、
図7に示す、製造するトング7の製品名称である品種No.の表示H1、素材金属板8の長手方向の長さの表示H2、素材金属板8の短手方向の幅の表示H3、素材金属板8の厚みの表示H4等の品種情報や、圧延目標値の表示H5、1回目の圧延速度の表示H6、2回目の圧延速度の表示H7、昇降する上ロール18の位置の表示H8、圧延加工時の移動回数の表示H9、上ロール18と下ロール19の回転角度の表示H10等の圧延条件や、
図8に示す、上ロール保守部24及び下ロール保守部25による油塗り回数の表示H11、磨き回数の表示H12、設定された基準位置に対する圧延中心の位置の表示H13、画像センサ23により検出した割れ幅の異常値の表示H14、画像センサ23により検出した割れ深さの異常値の表示H15等の圧延条件等が表される。なお、表示H9は「2」と表示されている場合には1往復、「4」と表示されている場合には2往復すること示している。
【0031】
制御装置6は、画像センサ23により撮影した画像を表示する表示部39を備えており、素材金属板8の形状を作業者が確認することができるようになっている。
図9に示すように、表示部39には、素材金属板8の圧延部8A、延出部8Bと柄7Cとなる部分の一部が表示される。また、表示部39には素材金属板8の柄7Cとなる部分の短手方向の長さであるワーク幅と、基準位置からの前後方向のずれ幅と、素材金属板8に発生した割れ幅と、素材金属板8に発生した割れの深さである割れ深さと、が表示される。
図7においては、ワーク幅が22.341mm、ずれ幅が0.338mm、割れ幅が0.000mm、割れ深さが無し、と表示されている。ワーク幅、ずれ幅、割れ幅の何れかが事前に設定された値を外れた場合には、第1の保持搬送機17による素材金属板8の搬送が停止し、エラー情報が報知される。このとき、表示部39に表示された素材金属板8の形状を視認することができる。
【0032】
図10に示すように、トング7の全製造工程は概ね以下の通りであり、上記素材圧延装置1では、工程1~工程3が行われる。工程1~工程3は完全自動化されている。収容箱35に収容された素材金属板8は、工程4を行う切断装置(図示せず)に搬送される。
工程1:素材金属板8の長手方向中央部分に対して1回目の圧延加工を施す。
工程2:圧延部8Aの左右の延出部8Bを所定量切断する。
工程3:素材金属板8の圧延部8Aに対して2回目の圧延加工を施す。
工程4:素材金属板8をトング7の仮形状に切断する。
工程5:一方の挟持部7Aに圧延加工を施す。
工程6:一方の挟持部7Aをプレス機により切断して外形を成形する。
工程7:他方の挟持部7Bに圧延加工を施す。
工程8:他方の挟持部7Bをプレス機により切断して外形を成形する。
工程9:柄7Cにプレス加工を施す。
工程10:全体を研摩する。
工程11:全体を洗浄する。
工程12:一方の挟持部7Aを湾曲させるため、プレス加工を施す。
工程13:他方の挟持部7Bを湾曲させるため、プレス加工を施す。
工程14:プレス機により圧延部8Aを折り曲げて折曲部7Dを形成する。
工程15:挟持部7A、7Bを研摩する。
工程16:全体を洗浄し、トング7が完成する。
工程17:トング7を包装する。
【0033】
以上のように、本実施形態のトング7の製造方法は、素材金属板8を保持して移動する第1の保持搬送機17とロール圧延機3を備える素材圧延装置1を使用したトング7の製造方法であって、ロール圧延機3は、上ロール18と、上ロール18に対向して配置された下ロール19と、を有し、第1の保持搬送機17は、上ロール18と下ロール19の隙間Sに素材金属板8を搬送し、素材金属板8が上ロール18と下ロール19により挟まれ、第1の保持搬送機17が往復動すると共に、上ロール18と下ロール19が回転することにより素材金属板8が圧延加工される。これにより、トング7の折曲部7Dとなる部分に自動で圧延加工を施すことができる。その結果、手作業で圧延加工を行う場合と比較して作業時間を大幅に短縮することができる。
【0034】
また、本実施形態のトング7の製造方法は、上ロール18は、回転軸28方向から見た場合に真円形状を有し、下ロール19は、回転軸29方向から見た場合に真円形状を有し、上ロール18の圧延面部26は、回転軸28方向と直交する方向から見た場合に、外方向に僅かに凸の円弧形状を有し、下ロール19の圧延面部27は、回転軸29方向と直交する方向から見た場合に、外方向に僅かに凸の円弧形状を有する。そのため、素材金属板8の圧延部8Aの長手方向中央部分が最も薄くなり、トング7の柄7Cとなる部分側に向かって徐々に厚くなるように圧延加工を施すことができる。これにより、トング7の挟持部7A、7Bの開閉操作時に適度な弾性力を発生させることができる。
【0035】
また、本実施形態のトング7の製造方法は、素材圧延装置1が、第1の保持搬送機17とロール圧延機3を制御する制御装置6を備え、制御装置6により、第1の保持搬送機17の往復動の回数、速度、移動距離、上ロール18及び下ロール19の回転速度、回転回数、回転角度が設定される。そのため、制御装置6により、素材金属板8の厚さや完成品であるトング7の形状に対応した設定をすることで、様々な種類のトング7の素材金属板8に対して適切に圧延加工を施すことができる。
【0036】
また、本実施形態のトング7の製造方法は、第1の保持搬送機17が往復動している間は、素材金属板8が上ロール18と下ロール19に接している。そのため、素材金属板8の両面に均等に圧延加工を施すことができる。
【0037】
また、本実施形態のトング7の製造方法は、素材金属板8の形状を検出する画像センサ23を備え、圧延加工後に画像センサ23により素材金属板8の形状を検出する。そのため、圧延加工後の素材金属板8の形状を確認し、適切に圧延加工が行なわれているか否かを判断することができる。
【0038】
また、本実施形態のトング7の製造方法は、第1の保持搬送機17が往復動している間に、上ロール18と下ロール19との間隔Tが変化する。そのため、素材金属板8が圧延加工により徐々に薄くなると共に、上ロール18と下ロール19との間隔Tを狭くすることにより、素材金属板8の圧延部8Aを所望の厚さに圧延することができる。
【0039】
また、本実施形態のトング7の製造方法は、ロール圧延機3が、上ロール18を下ロール19に近づく方向と離れる方向に移動させる移動装置30を備える。そのため、上ロール18と下ロール19の隙間Sの間隔Tを調節することができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、板厚が薄いトング7を製造する場合には、素材金属板8が薄いため、折り曲げ部の圧延加工を1回のみ行うようにしてもよい。その場合、プレスカット機4による圧延部分の左右の延出部8Bの切断は不要となる。
【符号の説明】
【0041】
1 素材圧延装置
3 ロール圧延機
6 制御装置
8 素材金属板
17 第1の保持搬送機(保持搬送機)
18 上ロール
19 下ロール
26 圧延面部
27 圧延面部
S 隙間
【要約】
【課題】圧延工程を自動化した製造装置によるトングの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のトングの製造方法は、素材金属板8を保持して移動する第1の保持搬送機17とロール圧延機3を備える素材圧延装置1を使用したトングの製造方法であって、ロール圧延機3は、上ロール18と、上ロール18に対向して配置された下ロール19と、を有し、第1の保持搬送機17は、上ロール18と下ロール19の隙間に素材金属板8を搬送し、素材金属板8が上ロール18と下ロール19により挟まれ、第1の保持搬送機17が往復動すると共に、上ロール18と下ロール19が回転することにより素材金属板8が圧延加工される。
【選択図】
図1