(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】毛髪処理剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/42 20060101AFI20240926BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240926BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240926BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/46
A61Q5/00
A61Q5/04
(21)【出願番号】P 2024034344
(22)【出願日】2024-03-06
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524087688
【氏名又は名称】株式会社VERY VERY
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【氏名又は名称】吉田 玲子
(74)【代理人】
【識別番号】100230961
【氏名又は名称】黒澤 万希
(72)【発明者】
【氏名】田才 竜雄
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-056836(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0230935(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0025675(KR,A)
【文献】特開2004-292318(JP,A)
【文献】特開2016-017069(JP,A)
【文献】国際公開第2018/164164(WO,A1)
【文献】特開昭61-254513(JP,A)
【文献】米国特許第05338540(US,A)
【文献】国際公開第2019/030872(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレアおよびヒドロキシプロピルウレアから選択される少なくとも1種の化合物、および還元剤を含有する
毛髪処理剤であって、
前記毛髪処理剤が縮毛矯正剤であり、
前記還元剤が、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオ乳酸アンモニウム、チオグリセリン、システアミン、システアミンHCl、チオグリコール酸グリセリル、チオグリコール酸システアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記化合物が、前記毛髪処理剤の総重量に対して、0.5重量%以上
1.5重量%以下の範囲内で含有され、
前記還元剤が、前記毛髪処理剤の総重量に対して、
2重量%以上6重量%以下の範囲内で含有され、
前記毛髪処理剤のアルカリ度が、
0mL以上1mL以下の範囲内にあることを特徴とする、毛髪処理剤。
【請求項2】
前記還元剤が、チオグリコール酸アンモニウムである、請求項1記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
前記毛髪処理剤のpHが、5.8以上8.2以下の範囲内にある、請求項1記載の毛髪処理剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の毛髪処理剤を毛髪に塗布する処理剤塗布工程、
前記毛髪処理剤を前記毛髪に塗布した状態で放置する処理剤放置工程、
処理剤放置工程後の前記毛髪を水洗する水洗工程、
水洗した前記毛髪を乾燥させる乾燥工程、および
整髪用アイロンにより120℃以上180℃以下の範囲内で乾燥後の前記毛髪を矯正する矯正工程を含み、
前記水洗工程において、水洗時間を5分以上とすることを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤および前記毛髪処理剤を用いる毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、縮毛矯正剤には、アンモニアやモノエタノールアミン等のアルカリ剤およびチオグリコール酸アンモニウム等の還元剤が含まれている(例えば、特許文献1参照)。毛髪処理においては、アルカリ剤を用いて、還元剤を毛髪内に浸透させて、前記還元剤による毛髪中のシスチン結合の切断が毛髪形状の変形(毛髪矯正)を可能としていた。
【0003】
しかし、アルカリ剤の作用は毛髪への負担(ダメージ)を伴い、絡まりや切れ毛、施術後の毛髪の硬化で不自然な仕上がりとなる場合もあった。また、施術対象の毛髪のカラー、ブリーチ、パーマ等の処理履歴によっては、毛髪がアルカリ剤に耐え切れず、いわゆるビビリ毛になることもしばしばあった。そのため、毛髪へのダメージを抑制しつつ、クセ毛の抑制や縮毛の矯正を行うことができる毛髪処理剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、アルカリ剤を必須とすることなく、従来品のアルカリ性縮毛矯正剤と比べて良好な矯正効果が得られ、かつ処理によるダメージの削減が可能である毛髪処理剤および前記毛髪処理剤を用いる毛髪処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の毛髪処理剤は、尿素、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレアおよびヒドロキシプロピルウレアから選択される少なくとも1種の化合物、および還元剤を含有する毛髪処理剤であって、
前記毛髪処理剤が縮毛矯正剤であり、
前記還元剤が、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオ乳酸アンモニウム、チオグリセリン、システアミン、システアミンHCl、チオグリコール酸グリセリル、チオグリコール酸システアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記化合物が、前記毛髪処理剤の総重量に対して、0.5重量%以上1.5重量%以下の範囲内で含有され、
前記還元剤が、前記毛髪処理剤の総重量に対して、2重量%以上6重量%以下の範囲内で含有され、
前記毛髪処理剤のアルカリ度が、0mL以上1mL以下の範囲内にあることを特徴とする。
【0007】
本発明の毛髪処理剤において、前記還元剤が、チオグリコール酸アンモニウムであることが好ましい。
【0008】
さらに、前記毛髪処理剤のpHが、5.8以上8.2以下の範囲内にあることが好ましい。
【0010】
本発明の毛髪処理方法は、前記本発明の毛髪処理剤を毛髪に塗布する処理剤塗布工程、
前記毛髪処理剤を前記毛髪に塗布した状態で放置する処理剤放置工程、
処理剤放置工程後の前記毛髪を水洗する水洗工程、
水洗した前記毛髪を乾燥させる乾燥工程、および
整髪用アイロンにより120℃以上180℃以下の範囲内で乾燥後の前記毛髪を矯正する矯正工程を含み、
前記水洗工程において、水洗時間を5分以上とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アルカリ剤を必須とすることなく、従来品のアルカリ性縮毛矯正剤と比べて良好な矯正効果が得られ、かつ処理によるダメージの削減が可能である毛髪処理剤および前記毛髪処理剤を用いる毛髪処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明者らは、毛髪処理剤の成分として、尿素、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレアおよびヒドロキシプロピルウレアから選択される少なくとも1種の化合物(以下、尿素等と呼ぶこともある。)に着目した。尿素等は、浸透剤(膨潤剤)として知られていて、稀に使用されている毛髪処理剤はあるが、アルカリ剤の配合が必須であって、助剤的な位置付けであった。本発明によると、アルカリ剤を使用しない場合であっても、従来品のアルカリ性縮毛矯正剤と比べ良好な矯正効果が得られ、かつ処理によるダメージを削減することが可能となった。
【0013】
<毛髪処理剤の構成成分>
本発明の毛髪処理剤は、尿素、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレアおよびヒドロキシプロピルウレアから選択される少なくとも1種の化合物、および還元剤を特定の割合で含有する。以下、詳細に説明する。
【0014】
[尿素、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレアおよびヒドロキシプロピルウレアから選択される少なくとも1種の化合物]
尿素、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレアおよびヒドロキシプロピルウレアから選択される少なくとも1種の化合物は、毛髪処理剤の総重量に対して、0.5重量%以上3重量%以下の範囲内で含有されている。前記含有量は、下限値は1.5重量%以上であることが好ましく、上限値は2重量%以下であることが好ましいが、施術対象の毛髪の状態(髪質やダメージ度合い)に合わせて、前記範囲内で調整することが好ましい。前記化合物は、毛髪を柔らかくする効果がある。毛髪は、硬すぎると後述の還元剤が効きにくいため、前記化合物を毛髪処理剤に添加することで、毛髪を柔らかくし、還元剤を効果的に作用させて良好に縮毛矯正を行うことができる。前記含有量が0.5重量%未満では、毛髪の十分な伸長効果を得ることができず、3重量%を超えると、毛髪を過度に損傷させてしまう場合がある。
【0015】
[還元剤]
還元剤は、毛髪処理剤の総重量に対して、1重量%以上11重量%以下の範囲内で含有されている。前記還元剤の含有量は、施術対象の毛髪の状態(髪質やダメージ度合い)に合わせて、前記範囲内で調整することが好ましい。前記含有量が1重量%未満では、毛髪の十分な伸長効果を得ることができず、11重量%を超えると、毛髪を過度に損傷してしまう場合がある。また、還元剤の濃度が上がると、施術後の毛髪が直線的になりやすい。そのため、自然な丸みのあるストレート感や、経時で新たに生えてくる癖毛(自毛)とも馴染みの良い縮毛矯正を行いたい場合には、還元剤濃度は低くすることが好ましい。
【0016】
還元剤は、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオ乳酸アンモニウム、チオグリセリン、システアミン、システアミンHCl、チオグリコール酸グリセリル、チオグリコール酸システアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本発明の毛髪処理剤において、前記還元剤が、チオグリコール酸アンモニウムであることが好ましい。
【0017】
本発明にかかる毛髪処理剤は、上記成分以外にも、化粧品や医薬品等に一般的に用いられる他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲内で任意に添加することができる。このような成分として、例えばカチオン性高分子、アミノ酸、ペプチド、プロテイン、金属イオン封鎖剤、油分、粉末成分、界面活性剤、pH調整剤、増粘剤、粉末成分、香料、粉末成分、色素等を含有することができる。
【0018】
毛髪処理剤の組成やpH、およびアルカリ度は、施術対象の毛髪の状態(髪質やダメージ度合い)に合わせて、前記範囲内で調整すればよい。毛髪の状態とは、カラーリングの有無、年齢、髪の太さ等で判断され、これらの状態に応じて、毛髪処理剤の組成やpH、およびアルカリ度を調整する。本発明の毛髪処理剤は、pHが、5.8以上8.2以下の範囲内にあることが好ましい。pHが5.8未満では、還元剤の働きがさらに弱くなるため、後述する処理剤放置工程において放置時間が30分以上かかったり、加温の必要が出てきてしまう。一方、pHが8.2を超えると、毛髪にダメージを与えてしまう場合がある。前記pH範囲内において、例えば、前記毛髪の状態が、ダメージ度合いが強いものであれば、中性域に近い範囲のpHの毛髪処理剤を用いることが好ましく、健康毛であれば、低pH域の毛髪処理剤を用いるのが好ましい。毛髪処理剤のpHを上記範囲に調整するためには、アルカリ剤等を用いることができる。アルカリ剤としては、特に限定されるものではないが、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、炭酸水素ナトリウム、アルギニン(塩基性アミノ酸)を用いることができる。本発明の毛髪処理剤では、従来品と比較して、アルカリ剤の含有量を著しく抑えることができる。アルカリ剤の含有量が少なくても、十分なストレート効果を持続することができ、髪が硬くならないので、自然なストレート感のある縮毛矯正を行うことができる。
【0019】
本発明の毛髪処理剤は、アルカリ度は、3mL以下であることが好ましい。ここで、「アルカリ度」とは、1gの毛髪処理剤を中和するために必要な0.1N(0.1mol/L)塩酸標準溶液の容量(単位mL)である。アルカリ度は、下限値は0.3mLを超えることがより好ましく、上限値は1mL以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明にかかる毛髪処理剤の剤型は、所望の効果が充分に発揮されるのであれば特に限定されず、液状、乳液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状などの剤型を採りうるが、液だれの発生や塗布時の毛髪への付着性等の観点から、乳液状、クリーム状であることが望ましい。
【0021】
<毛髪処理方法>
本発明の毛髪処理方法は、(1)上記毛髪処理剤を毛髪に塗布し、(2)塗布した状態で毛髪を放置して毛髪処理剤を毛髪に十分に作用させ、(3)毛髪を水洗して毛髪処理剤を洗い流し、(4)毛髪を乾燥させ、(5)整髪用アイロンで毛髪を矯正する工程を必須に含む。
【0022】
[処理剤塗布工程]
本発明の毛髪処理剤は、濡れた髪に適用することも可能であるが、シャンプー前の乾いた髪(ドライ毛)に適用することが好ましい。濡れた髪に塗布すると、尿素の濃度が薄まるので、乾いた髪に塗布することが好ましい。髪が余程汚れていない限り、毛髪処理剤塗布前のシャンプーは不要である。シャンプーを行った後に塗布する場合には、付着した水分をタオルで取り除き、ヘアドライヤー等で乾燥させ乾いた髪に適用することが好ましい。
【0023】
[処理剤放置工程]
毛髪処理剤の塗布後、室温(約25℃)にて10~30分間放置し、毛髪処理剤を毛髪に作用させる。放置時間が10分間未満では、毛髪の十分な伸長効果を得ることができず、一方、放置時間が30分間を超えても、放置時間に見合った毛髪矯正効果のさらなる向上は期待できない。
【0024】
[水洗工程]
毛髪を水又はぬるま湯ですすぎ、毛髪処理剤を毛髪から洗い流す。毛髪から毛髪処理剤を洗い流すことにより、その後の毛髪の乾燥や、取り扱いが容易になる。本水洗工程においては、水洗時間を5分以上とすることが必要である。本発明の毛髪処理剤は、尿素等の化合物を添加することで、従来品よりも低いpH(pH5.8~pH8.2)で安全にストレート効果が得られるが、pHが低い分5分以上の水洗を行う。十分なストレート効果を出すには、十分な還元作用(ジスルフィド結合の結合の還元開裂)が必要である。本発明の毛髪処理剤は、pHが低いため、還元作用が弱いが、水洗時間を5分以上とすることで、十分な還元作用を得ることができる。なお、毛量が多いほど、また、水洗時の水量が少ないほど水洗時間は長くすることが好ましい。水洗時間は、5分~10分の範囲内とすることが好ましい。
【0025】
[乾燥工程]
水洗後、水分をタオルで拭き取った後に、ヘアドライヤーで乾燥させる。
【0026】
[矯正工程]
毛髪の状態に応じて、120~180℃の範囲内に熱した整髪用アイロンで毛髪に機械力および熱を加えながら毛髪をストレート状に伸ばす。尿素等の化合物が添加された本発明の毛髪処理剤を用いることで、アイロン温度を従来(140~200℃)より低くすることができる。本発明の毛髪処理剤を用いることで、低い温度範囲のアイロン温度であっても、十分なストレート効果を得ることができる。
【0027】
本発明に係る毛髪処理方法によれば、尿素、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレアおよびヒドロキシプロピルウレアから選択される少なくとも1種の化合物、および還元剤の含有量を特定の範囲内とすることにより、従来品のアルカリ性縮毛矯正剤と比べて、良好な矯正効果(毛髪伸長効果)が得られ、かつ処理によるダメージの削減を可能とすることができる。また、乾燥工程および矯正工程の前に水洗工程で毛髪処理剤を洗い流すことで、乾燥が容易になり、矯正工程での毛髪の取り扱い性にも優れる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
[実施例1]
尿素を総重量に対して1.75重量%、チオグリコール酸アンモニウムを総重量に対して7重量%含有するクリーム状の毛髪処理剤を調製した。得られた毛髪処理剤のpHは8.2、アルカリ度は1mLであった。この毛髪処理剤を用い、日本ヘアカラー協会(JHCA)が提唱するへアカラーリング・レベルスケールで、3~5レベルの黒髪(ダメージの少ない髪)に対して、次の処理を行った。
【0030】
乾いている前記毛髪(黒髪)に、前記処理剤の塗布を行った。毛髪処理剤の塗布後、室温(約25℃)にて30分間放置し、毛髪処理剤を毛髪に作用させた。ついで、毛髪を38℃のぬるま湯で10分間すすぎ、毛髪処理剤を毛髪から洗い流し、水分をタオルで拭き取った後に、ヘアドライヤーで乾燥させた。次に、180℃に熱した整髪用アイロンで機械力および熱を加えながら、乾燥させた毛髪をストレート状に伸ばした。本発明の毛髪処理剤を用いることで、アイロン温度が140℃と低い温度であっても、十分なストレート効果を得ることができた。また、処理後の毛髪は、濡らしたときの弾力も強く、処理によるダメージはほとんどなかった。
【0031】
[実施例2]
尿素を総重量に対して0.5重量%、チオグリコール酸アンモニウムを総重量に対して3.5重量%含有するクリーム状の毛髪処理剤を調製した。得られた毛髪処理剤のpHは7.0、アルカリ度はほぼ0mLであった。この毛髪処理剤を用い、日本ヘアカラー協会(JHCA)が提唱するへアカラーリング・レベルスケールで、12~14レベルの茶髪~金髪(ダメージの大きい髪)に対して、次の処理を行った。
【0032】
乾いている前記毛髪(ダメージの大きい髪)に、前記処理剤の塗布を行った。毛髪処理剤の塗布後、室温(約25℃)にて20分間放置し、毛髪処理剤を毛髪に作用させた。ついで、毛髪を38℃のぬるま湯水で10分間すすぎ、毛髪処理剤を毛髪から洗い流し、水分をタオルで拭き取った後に、ヘアドライヤーで乾燥させた。次に、140℃に熱した整髪用アイロンで機械力および熱を加えながら、乾燥させた毛髪をストレート状に伸ばした。本発明の毛髪処理剤を用いることで、従来のアルカリ性縮毛矯正剤を用いての施術が難しかったダメージの大きい髪に対して、安全に十分なストレート効果を得たうえ、処理後の毛髪は処理によるダメージはほとんどなかった。
【0033】
同様に毛髪処理を行ったところ、次の表1に示す状態の毛髪と毛髪処理剤組成との組み合わせにおいて、良好な結果が得られた。表1に示す毛髪処理剤のアルカリ度は、0mL~1mLの範囲内にある。なお、本実施例では、尿素等の化合物としては尿素を用いたが、尿素に代えて、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレアおよびヒドロキシプロピルウレアを用いても、同様の結果が得られる。
【0034】
【0035】
[比較例1]
アルカリ性縮毛矯正剤を用いた。この縮毛矯正剤は、尿素が含まれておらず、チオグリコール酸アンモニウムが総重量に対して10重量%、pH9.5、アルカリ度は6mLの毛髪処理剤である。この毛髪処理剤を用い、日本ヘアカラー協会(JHCA)が提唱するへアカラーリング・レベルスケールで、3~5レベルの黒髪(ダメージの少ない髪)に対して、次の処理を行った。
【0036】
前記毛髪(黒髪)を、シャンプーで予め洗浄した後に、付着した水分をタオルで取り除いた。このタオルドライ毛に前記処理剤塗布を行った。毛髪処理剤の塗布後、室温(約25℃)にて30分間放置し、毛髪処理剤を毛髪に作用させた。ついで、毛髪を38℃のぬるま湯で3分間すすぎ、毛髪処理剤を毛髪から洗い流し、水分をタオルで拭き取った後に、ヘアドライヤーで乾燥させた。次に、180℃に熱した整髪用アイロンで機械力および熱を加えながら、乾燥させた毛髪をストレート状に伸ばした。比較例1の毛髪処理剤を用いた場合、アイロン温度が140℃では十分に髪を伸ばすことができず、アイロン温度を180℃以上にすることが必要だった。また、処理後の毛髪は、弾力が全く残っておらず、所々ビビリ毛ができてしまった。
【0037】
[比較例2]
酸性縮毛矯正剤を用いた。この縮毛矯正剤は、尿素が含まれておらず、チオグリコール酸アンモニウムが総重量に対して7重量%、pH5.5、アルカリ度は0mLの毛髪処理剤である。この毛髪処理剤を用い、日本ヘアカラー協会(JHCA)が提唱するへアカラーリング・レベルスケールで、3~5レベルの黒髪(ダメージの少ない髪)に対して、次の処理を行った。
【0038】
前記毛髪(黒髪)を、シャンプーで予め洗浄した後に、付着した水分をタオルで取り除いた。このタオルドライ毛に前記処理剤塗布を行った。毛髪処理剤の塗布後、室温(約25℃)にて30分間放置し、毛髪処理剤を毛髪に作用させた。ついで、毛髪を38℃のぬるま湯で10分間すすぎ、毛髪処理剤を毛髪から洗い流し、水分をタオルで拭き取った後に、ヘアドライヤーで乾燥させた。次に、180℃に熱した整髪用アイロンで機械力および熱を加えながら、乾燥させた毛髪をストレート状に伸ばした。比較例2の毛髪処理剤を用いた場合、思うようなストレート効果は出ないうえ、1~2週間後の髪は大部分が元の癖のある髪に戻ってしまった(癖戻り)。
【0039】
以上のように、本発明では、アルカリ剤を必須とすることなく、従来品のアルカリ性縮毛矯正剤と比べて良好な矯正効果が得られ、かつ処理によるダメージの削減が可能である毛髪処理剤および毛髪処理方法を提供することができる。
【要約】
【課題】 アルカリ剤を必須とすることなく、従来品のアルカリ性縮毛矯正剤と比べて良好な矯正効果が得られ、かつ処理によるダメージの削減が可能である毛髪処理剤および前記毛髪処理剤を用いる毛髪処理方法を提供する。
【解決手段】 尿素、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレアおよびヒドロキシプロピルウレアから選択される少なくとも1種の化合物、および還元剤を含有し、前記化合物が、前記毛髪処理剤の総重量に対して、0.5重量%以上3重量%以下の範囲内で含有され、前記還元剤が、前記毛髪処理剤の総重量に対して、1重量%以上11重量%以下の範囲内で含有されていることを特徴とする毛髪処理剤。
【選択図】 なし