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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】再構成装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20240926BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20240926BHJP
【FI】
G01N23/04 340
G01N23/046
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019092535
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020187044
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-09-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【弁理士】
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】欅 泰行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】松本 隆彦
【審判官】榎本 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-185601(JP,A)
【文献】特開2019-34078(JP,A)
【文献】特開2003-190144(JP,A)
【文献】国際公開第2010/101208(WO,A1)
【文献】特開2001-13089(JP,A)
【文献】特開2015-213748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N23/00-23/2276
A61B6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に複数の角度からX線を照射して取得した投影データに基づいて、前記被写体の断層像を再構成する再構成装置であって、
前記投影データに対して画像再構成演算を実行する再構成部と、
前記被写体の断層像および透視像の表示領域が同一画面上に設けられた、前記再構成部による画像再構成演算を再度行うための領域である再構成領域を設定するための設定用GUI画面を表示装置に表示させる表示制御部と、
前記設定用GUI画面に対するユーザ操作を受け付ける入力部と、
ユーザからの入力により、前記投影データに対して前記再構成領域を設定する領域設定部と、を備え、
前記X線の光軸を第1軸、前記第1軸と同一平面上で直交する軸を第2軸、前記第1軸および前記第2軸を含む平面に対し鉛直となる回転ステージの回転軸を第3軸とし、
前記表示制御部は、前記断層像として、前記領域設定部によって設定されている前記再構成領域の前記第3軸上の中心における中央断層像、最上端における上端断層像、および、最下端における下端断層像を、前記設定用GUI画面の断層像の表示領域に同時に表示させ、かつ、前記領域設定部によって設定されている前記再構成領域の前記第3軸上の前記中心、前記最上端および前記最下端のそれぞれの位置を示すラインを、前記設定用GUI画面の透視像の表示領域に表示されている透視像上に表示させ、
前記第3軸上の前記中心は、該第3軸上における再構成中心座標であって、前記領域設定部は、前記入力部を用いたユーザからの入力に基いて、前記第3軸上の前記再構成中心座標を変更可能とするとともに、前記第3軸上の前記中心から前記最上端までの長さと、前記第3軸上の前記中心から前記最下端までの長さが等しくなるように、前記再構成領域として、前記第3軸上の前記中心、前記最上端および前記最下端を設定し、
前記領域設定部は、さらに、前記入力部を用いたユーザからの入力に基づいて、前記再構成領域として、前記第1軸および前記第2軸を含む平面における範囲を設定する再構成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の再構成装置において、
前記領域設定部は、透視像上に表示されている前記第3軸上の前記中心の位置を示すラインと、該第3軸上の前記最上端または前記最下端のいずれかの位置を示すラインとを該第3軸の方向に移動させることにより前記再構成領域を設定する、再構成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、再構成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品等の内部構造を非破壊のもとに観察する装置として、従来から被写体の断層像を得るための産業用X線CT(Computed Tomography)装置が知られている。X線CT装置は、互いに対向配置させたX線源とX線検出器との間に、被写体を載置する回転ステージを配置し、被写体の各方向からのX線投影データを収集する。X線CT装置には、X線CT装置の動作制御、および、収集した投影データに対して再構成演算を実行するためのソフトウェアがインストールされたコンピュータが接続されている。このようなX線CT装置においては、CT撮影により取得した投影データを記憶装置に保存し、この投影データを利用して、様々な画像再構成を行うことができるようになっている。例えば、拡大再構成とも呼ばれる画像再構成は、初期設定での画像再構成により構築された画像より拡大した画像を得たいときに行われる。画像再構成演算を実行するソフトウェアにはGUI(Graphical User Interface)が設けられ、コンピュータに接続した表示部に、画像表示領域および操作ボタン等を配置したGUI画面を表示し、ユーザによる制御ソフトウェア操作を補助している。ユーザは、画像再構成演算を再度行いたい領域をマウスなどのポインティングデバイスおよび/またはキーボードなどの文字入力デバイスを利用して設定する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-185601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなX線CT装置用の制御ソフトウェアでは、画像再構成演算を再度行うときの領域設定の自由度が低く、余分な領域も計算することになり、計算時間が長くなっていた。
【0005】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、画像再構成演算を再度行う領域の設定をより柔軟に行うことが可能な再構成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の態様は、被写体に複数の角度からX線を照射して取得した投影データに基づいて、前記被写体の断層像を再構成する再構成装置であって、前記投影データに対して画像再構成演算を実行する再構成部と、前記被写体の断層像および透視像の表示領域が同一画面上に設けられた、前記再構成部による画像再構成演算を再度行うための領域である再構成領域を設定するための設定用GUI画面を表示装置に表示させる表示制御部と、前記設定用GUI画面に対するユーザ操作を受け付ける入力部と、ユーザからの入力により、前記投影データに対して前記再構成領域を設定する領域設定部と、を備え、前記X線の光軸を第1軸、前記第1軸と同一平面上で直交する軸を第2軸、前記第1軸および前記第2軸を含む平面に対し鉛直となる回転ステージの回転軸を第3軸とし、前記表示制御部は、前記断層像として、前記領域設定部によって設定されている前記再構成領域の前記第3軸上の中心における中央断層像、最上端における上端断層像、および、最下端における下端断層像を、前記設定用GUI画面の断層像の表示領域に同時に表示させ、かつ、前記領域設定部によって設定されている前記再構成領域の前記第3軸上の前記中心、前記最上端および前記最下端のそれぞれの位置を示すラインを、前記設定用GUI画面の透視像の表示領域に表示されている透視像上に表示させ、前記第3軸上の前記中心は、該第3軸上における再構成中心座標であって、前記領域設定部は、前記入力部を用いたユーザからの入力に基いて、前記第3軸上の前記再構成中心座標を変更可能とするとともに、前記第3軸上の前記中心から前記最上端までの長さと、前記第3軸上の前記中心から前記最下端までの長さが等しくなるように、前記再構成領域として、前記第3軸上の前記中心、前記最上端および前記最下端を設定する。
【発明の効果】
【0007】
この発明の第1の態様よれば、再構成演算を再度行うための領域を、第1軸および第2軸を含む平面における範囲と、第3軸上の再構成中心の位置により規定される範囲とにより設定することから、再構成演算を再度行う領域の設定をより柔軟に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施形態に係るX線CT装置の概要図である。
図2】この発明の実施形態に係るX線CT装置の主要な制御系を説明するブロック図である。
図3】再構成演算を再度実行する場合の条件設定画面の表示例である。
図4】数値入力領域の表示例である。
図5】画像上からX-Y平面の再構成領域を設定する場合を説明する図である。
図6】画像上からZ軸方向の再構成領域を設定する場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の実施形態に係るX線CT装置の概要図である。
【0010】
X線CT装置は、X線を利用してCT撮影を実行するものである。X線を発生させるX線源11と、X線源11に対向配置されたX線検出器12と、被写体100を載置するための回転ステージ13と、X線CT装置全体の制御を行う制御装置30を備える。制御装置30は、パーソナルコンピュータ40と、X線コントローラ31と、ステージコントローラ32とから構成される。
【0011】
X線源11とX線検出器12との間には、回転軸Rを中心に回転する回転ステージ13が配置されている。回転ステージ13は、ステージ移動機構15により定盤16上をX線光軸に沿う方向に移動する。回転ステージ13とX線源11との距離をステージ移動機構15により変更することで、X線検出器12で検出される被写体100の投影像の拡大率が変更される。なお、本明細書において、図1に記載されているように、第1軸をX線光軸に沿うX軸とし、第2軸をX軸と同一平面上で直交するY軸とし、第3軸をX―Y平面に鉛直となる回転ステージ13の回転軸Rに沿うZ軸とする。
【0012】
X線源11は、X線を照射するX線管を有する。このX線源11は、X線焦点から被写体100に向けて円錐状のビーム(コーンビーム)を照射する。被写体100の材質やX線透過特性に応じて、X線管に供給する管電圧、管電流をX線コントローラ31により制御する。X線コントローラ31は、パーソナルコンピュータ40の制御下に置かれている。被写体100を透過してX線検出器12により検出されたX線は、投影データとしてパーソナルコンピュータ40に取り込まれる。X線検出器12としては、FPD(Flat Panel Detector)、または、イメージインテンシファイアとCCDカメラを組み合わせてなる2次元検出器が採用できる。パーソナルコンピュータ40では、投影データに基づいて画像再構成のプログラムの実行により回転軸Rに直交するX-Y平面に沿った面でスライスした被写体100の断層像が構築される。
【0013】
回転ステージ13およびステージ移動機構15は、それぞれ独立の駆動モータを有し、それらの駆動モータは、ステージコントローラ32から供給される駆動信号によって制御される。ステージコントローラ32は、パーソナルコンピュータ40の制御下に置かれている。
【0014】
図2は、この発明の実施形態に係るX線CT装置の主要な制御系を説明するブロック図である。
【0015】
パーソナルコンピュータ40は、RAM、ROMなどのメモリ41と、各種の演算処理を実行するCPUなどの演算装置42と、CT撮影により取得された投影データ等を保存する記憶装置43と、X線コントローラ31やステージコントローラ32に制御信号を送信するための通信部44を備える。メモリ41、演算装置42、記憶装置43および通信部44は、相互のデータ通信を可能とする内部バス59により接続されている。パーソナルコンピュータ40には、表示部48と、各種指令を装置に与えるためのマウスやキーボードなどの入力部49が、通信部44を介して接続されている。表示部48と入力部49が接続されたパーソナルコンピュータ40は、この発明の再構成装置として機能する。
【0016】
メモリ41には、演算装置42を動作させて機能を実現するプログラムが格納されている。図2においては、パーソナルコンピュータ40にインストールされているプログラムを機能ブロックとして示している。この実施形態では、機能ブロックとして、表示部48への画面表示および画面遷移を制御する機能を実現する表示制御部51と、投影データに対して画像再構成を実行する領域を設定する機能を実現するための領域設定部52と、画像再構成の機能を実現する再構成部53とを備える。
【0017】
この明細書においては、CT撮影により取得した投影データを生データとし、生データを用いて画像再構成された状態のものを画像データとして区別している。記憶装置43は、生データを保存する領域である生データ記憶部45と、画像データを保存する領域である画像データ記憶部46とを含む。なお、記憶装置43は、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶媒体であってもよく、SSD(Solid State Drive)のような半導体メモリであってもよい。そして、記憶装置43は、この実施形態のように内部バス59によって接続されるものに限定されない。すなわち、記憶装置43は、外部記憶装置としてパーソナルコンピュータ40に直接的に、または、ネットワーク回線を介して間接的に接続するものであってもよい。また、生データ記憶部45と画像データ記憶部46とは、それぞれ物理的に分離した記憶装置であってもよい。
【0018】
上述した構成のX線CT装置によりCT撮影を実行すると、投影データが生データ記憶部45に保存されるともに、画像再構成が実行され、被写体100の断層像が表示部48に表示されるとともに、所定のスライス面での断層像が画像データ記憶部46に保存される。
【0019】
図3は、再構成演算を再度実行する場合の条件設定画面を示す表示例である。
【0020】
この実施形態の条件設定画面は、設定用GUI画面として設計されている。画面内には、画像表示領域70と、数値入力領域80とが配置され、生データや画像データの読み込みボタン86、設定した範囲での再構成実行ボタン87、条件設定画面を閉じるボタン88などの機能ボタンが配置されている。なお、画像表示領域70に表示させる画像は、ユーザが読み込みボタン86を選択し、画面をデータ選択画面に遷移させることで、記憶装置43に保存している過去にCT撮影した生データおよび画像データから選ぶことができる。
【0021】
画像表示領域70内には、中央断層像表示領域71、上端断層像表示領域72、下端断層像表示領域73、透視像表示領域74が配置される。従来の装置の画像表示では、中央断層像と透視像とが表示されるだけであったのに対し、この実施形態では、上端断層像表示領域72、下端断層像表示領域73を設けている。なお、表示される断層像は、画面上に表示させる範囲であるディスプレイFOV(Field of view)で予め決められた画像再構成領域で構築された断面画像である。中央断層像表示領域71に表示される中央断層像は、画像再構成中心(Z)での断面画像である。また、上端断層像表示領域72に表示される断層像は、画像再構成領域のFOV(Z)最上部の断面画像であり、下端断層像表示領域73に表示される断層像は、画像再構成領域のFOV(Z)最下部の断面画像である。ユーザはFOVのZ軸最上部と最下部の画像を提示されることで、断層像が得られる最上端、最下端の確認を一目で行うことが可能となる。なお、この条件設定画面で設定するFOVは、ディスプレイFOVであり、投影データの収集視野であるスキャンFOVの範囲内で変更できる。
【0022】
数値入力領域80には、再構成範囲を数値設定するための再構成範囲入力領域81のほか、画像サイズなどの画像形状に関する設定値を入力するための領域82、スライス幅やスムージングなどの画像の見え方に関係する設定値を入力するための領域83、記憶装置43の空き容量を表示する領域84、任意にコメントを入力する領域85が設けられている。再構成範囲入力領域81および他の領域82、83、84、85には、それぞれの目的に応じてGUI部品が配置されている。
【0023】
図4は、再構成範囲入力領域81の表示例である。
【0024】
再構成範囲入力領域81には、画像再構成中心座標(X)、画像再構成中心座標(Y)、画像再構成中心座標(Z)のそれぞれの座標と画像の回転角度、および、FOV(XY)、FOV(Z)の数値を、ユーザが入力部49を介して入力可能なテキストフィールドが設けられたGUI部品が配置されている。ユーザは、キーボードによる数値の直接入力、または、マウスによりスピンボタンの上矢印または下矢印をクリックすることにより所望の数値を入力することができる。なお、MAX_FOV(XY)およびMAX_FOV(Z)の数値表示フィールドは、FOV(XY)およびFOV(Z)の数値入力領域80に入力可能な最大値を表示するものである。
【0025】
図5は、画像上からX-Y平面の再構成領域を設定する場合を説明する図である。図6は、画像上からZ軸方向の再構成領域を設定する場合を説明する図である。
【0026】
図5は、図3の中央断層像表示領域71を拡大して示したものである。この図5を参照しつつ、ユーザが入力部49としてマウスなどのポインティングデバイスを操作して、X-Y平面の再構成領域を設定する場合を説明する。
【0027】
中央断層像表示領域71には、過去のCT撮影と並行して画像再構成が実行され、画像データ記憶部46に保存されている中央断層像と、X-Y平面上での画像再構成を再度実行する範囲を規定する矩形の枠75とが重畳されて表示される。枠75内には十字ライン76の中心がX-Y平面の再構成中心座標となる。ユーザは、マウスで矩形の枠75の枠線上または枠内を指定して矢印91に示すようにドラッグすることにより枠75を伸縮させ、視野サイズの拡大縮小、すなわち、再構成領域の拡大縮小を行うことができる。このとき変更されたX-Y平面の再構成領域は、図4に示す、FOV(XY)のテキストフィールドに反映される。また、ユーザは、マウスで十字ライン76の中心付近を指定して矢印92に示すようにドラッグすることにより、再構成中心座標(X)、(Y)を変更することができる。このときの座標は、図4に示す再構成中心(X)、再構成中心(Y)のテキストフィールドに反映される。さらに、ユーザは、マウスで十字ライン76の線上を指定して矢印93に示すようにドラッグすることにより、枠75を回転させることができる。このときの回転角度は、図4に示した画像回転角度のテキストフィールドに反映される。
【0028】
図6は、図3の透視像表示領域74を拡大して示したものである。この図6を参照しつつ、ユーザが入力部49としてマウスなどのポインティングデバイスを操作して、Z軸方向(上下方向)の再構成領域を設定する場合を説明する。
【0029】
透視像表示領域74には、生データ記憶部45に保存されている過去のCT撮影の透視像と、図6の紙面縦方向をZ軸方向として、画像再構成演算を再度実行するときのZ軸方向の範囲を規定する中央ライン77および端ライン78とが重畳して表示される。図中に実線で示す中央ライン77の位置は、再構成中心座標(Z)を決める位置である。ユーザは、マウスで中央ライン77を指定して矢印95に示すようにドラッグすることにより、中央ライン77を上下に移動させることができる。中央ライン77の変更は、図4に示す再構成中心(Z)のテキストフィールドに反映される。図中に一点鎖線で示す端ライン78の位置は、中央ライン77に対して上下に等幅となる位置であり、Z軸における画像再構成の対象範囲の上端と下端を表す。ユーザは、マウスで2つの端ライン78のどちらか一方の線上を指定して矢印96で示すようにドラッグすることにより、2つの端ライン78の位置を中央ライン77に対して等幅な状態を維持しながら移動させ、画像再構成のためのZ軸方向の範囲の拡大縮小を行うことができる。このときの中央ライン77と上下の端ライン78で規定される範囲は、図4に示すFOV(Z)のテキストフィールドに反映される。
【0030】
再構成領域の設定の終了後、ユーザがマウスを操作して再構成実行ボタン87を押すことにより、設定された領域を対象として、生データからの画像再構成演算が実行される。また、ユーザは、再構成設定画面を終了するときには、マウスを操作して閉じボタン88を押して、ウィンドウを閉じる。
【0031】
従来は、図6に示す中央ライン77は、中央位置を示すものとして表示され、Z軸の再構成中心座標を変更するために移動させることができなかったため、画像再構成におけるZ軸方向の範囲の設定の自由度が低かった。この実施形態では、Z軸の再構成中心を容易に移動させることができるため、画像再構成演算を再度行うときの領域設定の自由度が向上している。従来と異なり、X軸、Y軸だけでなくZ軸の再構成中心座標を変更することを可能としたことで、画像再構成演算を再度行う領域の設定をより柔軟に行うことができる。また、この実施形態では、Z軸における再構成範囲の上端と下端を表す2つの端ライン78で、単にスライス範囲を設定するだけでなく、中央ライン77を移動させて決めるZ軸の中心を基準に範囲を設定できることから、ユーザが設定した中心からの内部構造の広がりの理解に有用な情報が得られる。
【0032】
このように、この実施形態に係るX線CT装置および再構成装置は、画像再構成演算を実行する領域を、X―Y平面での指定だけではなく、Z軸方向でも指定することができ、任意の領域で再度の再構成演算を可能とするものである。再構成中心座標を、X軸、Y軸、Z軸で設定できることから、ユーザが最も明瞭に見たいと思う位置に再構成中心を合わせて、再度の画像再構成演算を行うことができる。この実施形態では、領域を指定する際に、GUIの機能を用いて、画面上で指令を与えることができることから、画像再構成演算を再度行う領域の変更を、ユーザが感覚的に素早く行うことが可能となる。また、この実施形態では、画像再構成演算の対象領域をX軸、Y軸、Z軸の3軸で3次元的に設定することで絞り込んでいる。このため、余分な領域を効率的に省くことができ、画像再構成演算に係る時間を短縮できるとともに、より解像度の高い拡大断面像を得ることができる。
【0033】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0034】
(第1項)一態様に係る再構成装置は、被写体に複数の角度からX線を照射して取得した投影データに基づいて、前記被写体の断層像を再構成する再構成装置であって、前記投影データに対して画像再構成演算を実行する再構成部と、前記被写体の断層像および透視像の表示領域が同一画面上に設けられた、前記再構成部による画像再構成演算を再度行うための領域である再構成領域を設定するための設定用GUI画面を表示装置に表示させる表示制御部と、前記設定用GUI画面に対するユーザ操作を受け付ける入力部と、ユーザからの入力により、前記投影データに対して前記再構成領域を設定する領域設定部と、を備え、前記X線の光軸を第1軸、前記第1軸と同一平面上で直交する軸を第2軸、前記第1軸および前記第2軸を含む平面に対し鉛直となる回転ステージの回転軸を第3軸とし、前記表示制御部は、前記断層像として、前記領域設定部によって設定されている前記再構成領域の前記第3軸上の中心における中央断層像、最上端における上端断層像、および、最下端における下端断層像を、前記設定用GUI画面の断層像の表示領域に同時に表示させ、かつ、前記領域設定部によって設定されている前記再構成領域の前記第3軸上の前記中心、前記最上端および前記最下端のそれぞれの位置を示すラインを、前記設定用GUI画面の透視像の表示領域に表示されている透視像上に表示させ、前記第3軸上の前記中心は、該第3軸上における再構成中心座標であって、前記領域設定部は、前記入力部を用いたユーザからの入力に基いて、前記第3軸上の前記再構成中心座標を変更可能とするとともに、前記第3軸上の前記中心から前記最上端までの長さと、前記第3軸上の前記中心から前記最下端までの長さが等しくなるように、前記再構成領域として、前記第3軸上の前記中心、前記最上端および前記最下端を設定する。
【0035】
第1項に記載の再構成装置によれば、再構成演算を再度行うための領域を、第1軸および第2軸を含む平面における範囲と、第3軸上の再構成中心の位置により規定される範囲とにより設定することから、再構成演算を再度行う領域の設定をより柔軟に行うことが可能となる。
【0037】
また項に記載の再構成装置によれば、第3軸の再構成中心の位置を基準として、第3軸方向の範囲を等幅に設定できることから、ユーザが設定した中心からの内部構造の広がりの理解に有用な情報が得られる。
【0038】
なお、上述した記載はこの発明の実施形態の説明のためのものであり、この発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0039】
11 X線源
12 X線検出器
13 回転ステージ
15 ステージ移動機構
16 定盤
30 制御装置
31 X線コントローラ
32 ステージコントローラ
40 パーソナルコンピュータ
41 メモリ
42 演算装置
43 記憶装置
44 通信部
45 生データ記憶部
46 画像データ記憶部
48 表示部
49 入力部
51 表示制御部
52 領域設定部
53 再構成部
59 内部バス
70 画像表示領域
71 中央断層像表示領域
72 上端断層像表示領域
73 下端断層像表示領域
74 透視像表示領域
80 数値入力領域
81 再構成範囲入力領域
82 領域
83 領域
84 領域
85 領域
86 読み込みボタン
87 再構成実行ボタン
88 閉じボタン
91 矢印
92 矢印
93 矢印
95 矢印
96 矢印
100 被写体



図1
図2
図3
図4
図5
図6