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  • 特許-液化ガス貯留船 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】液化ガス貯留船
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/08 20060101AFI20240926BHJP
   B63B 27/24 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B63B25/08 N
B63B27/24 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020061456
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021160400
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】浦口 良介
(72)【発明者】
【氏名】川筋 雄作
(72)【発明者】
【氏名】和泉 徳喜
(72)【発明者】
【氏名】今井 達也
(72)【発明者】
【氏名】下垣 貴志
(72)【発明者】
【氏名】松本 旭
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特許第6134211(JP,B2)
【文献】特表2003-517390(JP,A)
【文献】特開2019-151191(JP,A)
【文献】欧州特許第2682337(EP,B1)
【文献】特開平05-157197(JP,A)
【文献】米国特許第3851611(US,A)
【文献】特開2004-028238(JP,A)
【文献】米国特許第3820491(US,A)
【文献】特開2011-007320(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2020-0012566(KR,A)
【文献】米国特許第3397662(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/08
B63B 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体に設置された液化ガスを貯留するタンクであって、上方に突出するドーム部を有するタンクと、
前記タンクの内部から前記ドーム部を貫通して前記タンクの外部へ延設された配管と、
前記ドーム部に固定された、前記配管の前記タンクの外部に延設された部分を支持する支持構造体と、
を備え、
前記ドーム部の少なくとも一部が前記船体から上方に露出しており、
前記支持構造体は、前記ドーム部と共に前記船体に対して相対移動可能である、液化ガス貯留船。
【請求項2】
請求項1に記載の液化ガス貯留船において、前記支持構造体の少なくとも前記ドーム部に固定される部分が低温用鋼から形成されている、液化ガス貯留船。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液化ガス貯留船において、前記支持構造体が、少なくとも一部にトラス構造を有している液化ガス貯留船。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の液化ガス貯留船において、前記支持構造体が、前記配管が載置される載置部を有しており、前記載置部が、平面視において、前記ドーム部から突出した領域を有する液化ガス貯留船。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の液化ガス貯留船において、前記支持構造体が、前記配管が載置される載置部を有しており、前記載置部に、前記配管を挿通させる挿通開口が形成されている液化ガス貯留船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスを貯留する機能を有する船舶である液化ガス貯留船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液化天然ガスや液化水素等の液化ガスを貯留する液化ガス貯留船(例えば液化ガス運搬船)では、液化ガスの輸送管等の配管を、タンク内においてはタンク本体から上方に突設したドーム部に集約し、このドーム部を貫通させて外部に延設している(例えば、特許文献1参照。)。配管のタンク外部に延設された部分は、一般的に、タンクカバーのような船体に取り付けた支持構造体によって支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-157868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、支持構造体を船体側に固定した場合、船体の変形や揺動、低温の液化ガスを貯留することによるタンクの膨張収縮等によって、タンク側の輸送管導出部と船体側の輸送管支持構造体との間で大きな相対変位が生じ、配管に曲げ応力が加えられることになる。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、液化ガス貯留船において、タンクのドーム部を貫通する配管とこれを支持する構造体との間の相対変位を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る液化ガス貯留船は、
船体と、
前記船体に設置された液化ガスを貯留するタンクであって、上方に突出するドーム部を有するタンクと、
前記タンクの内部と外部の間で前記液化ガスを輸送するための輸送管であって、前記タンクの内部から前記ドーム部を貫通して前記タンクの外部へ延設された輸送管と、
前記ドーム部に固定された、前記輸送管の前記タンクの外部に延設された部分を支持する支持構造体と、
を備えている。
【0007】
この構成によれば、配管を支持する支持構造体が、配管が取り付けられているタンクのドーム部に設けられているので、支持構造体を船体のタンクカバー等に設ける場合に比べて、配管と支持構造体との間の相対変位を大幅に抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、液化ガス貯留船において、タンクのドーム部を貫通する配管とこれを支持する構造体との間の相対変位を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る液化ガス貯留船の概略構成を示す側面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図2のドーム部近傍を拡大して示す断面図である。
図4図1の液化ガス貯留船の支持構造体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に本発明の一実施形態に係る液化ガス貯留船1を示す。この液化ガス貯留船1は、水上に浮かべられる船体3と、船体3に設置された液化ガスを貯留するタンク5と、タンク5に設けられた配管(この例ではタンク5の内部と外部の間で液化ガスを輸送するための輸送管7)と、輸送管7のタンク5外部へ延設された部分を支持する支持構造体9とを備えている。
【0011】
なお、本明細書において「液化ガス貯留船」とは、液化ガスを貯留する機能を有する船舶を指す。本実施形態における液化ガス貯留船1は液化ガス運搬船である。もっとも、液化ガス運搬船以外にも、例えば液化ガス燃料船や、液化ガスを他の船舶に供給するバンカリング船等が液化ガス貯留船に含まれる。
【0012】
本実施形態では、液化ガス貯留船1の船体3に2つのタンク5が設置されている。これら2つのタンク5は、船体3の船長方向に並んでいる。ただし、船体3に搭載されるタンク5の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。各タンク5の構成は同一であるので、本明細書では、1つのタンク5のみについて説明する。
【0013】
タンク5に貯留される液化ガスは、例えば、液化石油ガス(LPG、約-45℃)、液化エチレンガス(LEG、約-100℃)、液化天然ガス(LNG、約-160℃)、液化水素(LH2、約-250℃)、液化ヘリウム(LHe、約-270℃)である。本実施形態では、タンク5に液化水素が貯留される。
【0014】
本実施形態では、図2に示すように、タンク5は、内槽および外槽を有する二重殻タンク5として構成されている。例えば、内槽と外槽との間は真空断熱層である。もっとも、タンク5の構成はこの例に限定されない。例えば、タンク5は、断熱材で覆われた一重殻タンク5であってもよい。断熱材は、例えば、複数の真空断熱パネルで構成されてもよいし、複数の発泡パネルで構成されてもよい。
【0015】
タンク5は、船体3から上方に露出する部分を有しており、少なくとも当該部分が船体3に対して変位可能に取り付けられている。具体的には、本実施形態では、タンク5は、液化ガスを収容する部分である本体部11と、本体部11から上方に突出するドーム部13とを有している。本体部11は、船体3によって覆われている。この例では、本体部11は、タンクカバー15によって覆われている。具体的には、タンクカバー15は、船体3の一部である上甲板17に実質的に相対移動不能に固定されている。したがって、タンクカバー15も、船体3の一部として形成されている。タンクカバー15の天壁には、ドーム部13を挿通させる開口が形成されている。タンクカバー15の開口を通って、ドーム部13がタンクカバー15の上方に突出、つまり露出している。
【0016】
本実施形態では、このような構成により、タンク5は船体3から上方に露出する部分(この例ではドーム部13の上側部分)を有している。図示の例では、ドーム部13の突出方向は、鉛直方向にほぼ平行であるが、鉛直方向に対して若干傾いていてもよい。また、この例では、図1に示すように、本体部11は水平方向に延びる円筒形状を有しているが、本体部11の形状はこの例に限定されず、例えば球形や直方体形状であってもよい。
【0017】
船体3には、各タンク5が設置される凹部21が形成されており、この凹部21がタンク5の間で隔壁23によって2つのセル25に分割されている。各セル25の底壁に、本体部11の軸方向に互いに離間する位置で本体部11を支持する一対のサドル27が配置されている。各サドル27は底壁から突設されており、タンク5は、サドル27上に設置されることにより、船体3のセル25を形成する各壁から離間した状態で支持されている。本実施形態では、このような構成により、タンク5が船体3に、タンク5の船体3から上方に露出する部分(この例ではドーム部13の上側部分)が船体3に対して変位可能に取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、ドーム部13は、ほぼ鉛直方向に沿って延びる円筒形状の側壁13aと、側壁13aの上側開口部を閉じる略半球形状の蓋体13bとを有している。ドーム部13に、タンク5に対して液化ガスの輸送(積み下ろし)を行なうための複数の輸送管7が取り付けられている。なお、同図では、簡略化のため、1つの輸送管7のみを示している。輸送管7は、タンク5の内部からドーム部13を貫通してタンク5の外部へ延設されている。以下の説明では、輸送管7のタンク5の外部へ延設された部分を特に「輸送管外方部7a」と呼ぶ場合がある。本実施形態では、輸送管7はドーム部13の蓋体13bをほぼ鉛直方向に貫通している。また、この例では、輸送管7は二重管として形成されている。もっとも、輸送管7は一重管であってもよい。輸送管外方部7aには、液化ガスの流れを制御するためのバルブ(図示せず)が設けられている。
【0019】
なお、本実施形態では、ドーム部13を貫通してタンク5の外部へ延設された配管の一例として、上記の輸送管7について説明するが、このような配管には、気化したガスの輸送管等、各種の配管が含まれる。
【0020】
ドーム部13は、タンク5の熱収縮によって、タンクカバー15に対して下方に変位する。ドーム部13は、図示しない支持構造によって、タンクカバー15に接続されている。
【0021】
本実施形態において、輸送管外方部7aを支持する支持構造体9は、タンク5のドーム部13に固定されている。すなわち、支持構造体9は、タンク5のドーム部13に対して実質的に相対移動不能に取り付けられている。具体的には、図示の例では、支持構造体9は、ドーム部13の蓋体13b上に固定されている。
【0022】
支持構造体9は、最下部に位置し、ドーム部13に固定される部分となる取付部9aと、最上部に位置し、輸送管外方部7aが載置される部分となる平板状の載置部9bと、取付部9aと載置部9bの間に位置し、載置部9bを取付部9aに対して連結および支持する支持部9cとを有している。図4に示すように、載置部9bには、輸送管7を挿通させるための挿通開口33が形成されている。図示の例では載置部9bの中央部分に挿通開口33が形成されている。もっとも、載置部9bにおいて挿通開口33を形成する位置はこれに限定されない。支持構造体9の載置部9bに挿通開口33を設けることにより、輸送管外方部7aの配設構成を簡素化できる。もっとも、載置部9bに挿通開口33を形成することは必須ではない。
【0023】
本実施形態では、支持構造体9の載置部9bは、平面視において、ドーム部13から突出した領域を有している。具体的には、図示の例では、支持構造体9の載置部9bは、平面視において、ドーム部13を完全に覆っている。もっとも、載置部9bは、その一部分のみが、平面視においてドーム部13から突出した領域を有していてもよい。この構成により、輸送管外方部7aの配設構成の自由度が確保される。もっとも、平面視において、ドーム部13から突出した領域を有することは必須ではない。
【0024】
本実施形態においては、支持構造体9の全体が低温用鋼から形成されている。もっとも、支持構造体9のうち少なくとも図3に示す取付部9aが低温用鋼から形成されていてもよい。この構成により、液化ガスを貯留するタンクの影響を受けて支持構造体9の取付部9aが低温になった場合にも強度が確保される。支持構造体9に用いられる低温用鋼としては、例えばオーステナイト系ステンレス鋼が挙げられるが、これに限定されない。もっとも、支持構造体9を低温用鋼から形成することは必須ではない。
【0025】
本実施形態において、支持構造体9の少なくとも一部(この例では支持部9c)がトラス構造を有している。トラス構造は、支持部9cの一部にのみ用いられていてもよいし、支持構造体9の他の一部に用いられていてもよい。この構成によれば、ドーム部13上の限られた領域に設置される支持構造体9の強度を確保し、輸送管7を確実に支持することができる。もっとも、支持構造体9がトラス構造を有していることは必須ではない。
【0026】
なお、支持構造体9は、タンク5のドーム部13に固定、つまりタンク5のドーム部13に対して実質的に相対移動不能に取り付けられていれば、蓋体13b上以外の部分に取り付けられていてもよい。
【0027】
以上説明した本実施形態に係る液化ガス貯留船1によれば、配管(輸送管7)を支持する支持構造体9が、輸送管7が取り付けられているタンク5のドーム部13に設けられているので、支持構造体9を船体3のタンクカバー15等に設ける場合に比べて、輸送管7と支持構造体9との間の相対変位が大幅に抑制される。
【0028】
なお、液化ガス貯留船1が備えるタンク5の方式は、上記で説明した独立タンク5タイプに限定されない。
【0029】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 液化ガス貯留船
3 船体
5 タンク
7 輸送管(配管)
7a 輸送管外方部
9 支持構造体
13 ドーム部
図1
図2
図3
図4