(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ショベル、作業機械の障害物報知システムおよびショベルの障害物報知方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020074754
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中沢 浩一
(72)【発明者】
【氏名】江口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】栗原 毅
(72)【発明者】
【氏名】下屋 芳之
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101419(JP,A)
【文献】特開2015-125686(JP,A)
【文献】特開2014-085832(JP,A)
【文献】国際公開第2018/220774(WO,A1)
【文献】特開平11-139229(JP,A)
【文献】特開2014-199546(JP,A)
【文献】特開2015-153318(JP,A)
【文献】特開2017-066860(JP,A)
【文献】特開2017-101420(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001665(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/158255(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/061183(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131955(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/111859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショベルであって、
走行体と、
前記走行体に旋回可能に支持される旋回体と、
前記旋回体に設けられ、前記ショベルの周囲を撮像する複数のカメラと、
制御装置と、
表示部と、
を備え、
前記制御装置は、
複数の前記カメラから取得した撮像画像から、前記ショベルを中心とした俯瞰画像を生成し、
複数の前記カメラから取得した撮像画像から、前記ショベルの周囲に障害物が存在するか否かを判定し、
前記ショベルの周囲に障害物が存在する場合、前記障害物の検出位置に対応する位置に、前記障害物の存在を報知するマーカを前記俯瞰画像に重畳し、
前記マーカを重畳させた前記俯瞰画像を前記表示部に表示し、
前記ショベルのオペレータのアクションを検出し、
検出された前記アクションが安全確認時に実行される確認アクションであるか否かを判定し、
検出された前記アクションが前記確認アクションであるか否かの判定に基づいて、前記俯瞰画像上の前記障害物の検出位置に対応する位置に重畳した前記マーカの態様を変更
し、
前記確認アクションがなされていない前記障害物が存在する場合に、スピーカからアラームを出力し、
存在すると判定されたすべての障害物について、前記確認アクションがなされた場合に、前記アラームの態様を変更する
ショベル。
【請求項2】
前記制御装置は、
複数の障害物が存在すると判定された場合、前記複数の障害物のうち前記確認アクションが確認された障害物に係る前記マーカの態様を変更する
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記確認アクションは、前記障害物が存在する方向を指し示すアクションを含む
請求項1から
請求項2の何れか1項に記載のショベル。
【請求項4】
作業機械の周囲に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部と、
前記作業機械のオペレータのアクションを検出するアクション検出部と、
検出された前記アクションが安全確認時に実行される確認アクションであるか否かを判定するアクション判定部と、
前記アクションが前記確認アクションであると判定された場合に、前記障害物を示す報知の態様を変更する報知部と
を備え
前記確認アクションは、前記障害物が存在する方向を呼称するアクションを含
み、
前記報知部は、
前記確認アクションがなされていない前記障害物が存在する場合に、前記確認アクションがなされていない前記障害物の位置を示すマーカを重畳させた俯瞰画像を表示し、
前記確認アクションがなされていない前記障害物が存在する場合に、スピーカからアラームを出力し、
存在すると判定されたすべての障害物について、前記確認アクションがなされた場合に、前記アラームの態様を変更する
作業機械の障害物報知システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
オペレータによる確認方向を特定し、
特定した前記確認方向に対応する領域に配置された前記マーカの態様を変更する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項6】
走行体と、前記走行体に旋回可能に支持される旋回体と、前記旋回体に設けられ周囲を撮像する複数のカメラと、表示部と、を備えるショベルにおける障害物報知方法であって、
複数の前記カメラから取得した撮像画像から、前記ショベルを中心とした俯瞰画像を生成するステップと、
複数の前記カメラから取得した撮像画像から、前記ショベルの周囲に障害物が存在するか否かを判定
するステップと、
前記ショベルの周囲に障害物が存在する場合、前記障害物の検出位置に対応する位置に、前記障害物の存在を報知するマーカを前記俯瞰画像に重畳
するステップと、
前記マーカを重畳させた前記俯瞰画像を前記表示部に表示
するステップと、
前記ショベルのオペレータのアクションを検出
するステップと、
検出された前記アクションが安全確認時に実行される確認アクションであるか否かを判定
するステップと、
検出された前記アクションが前記確認アクションであるか否かの判定に基づいて、前記俯瞰画像上の前記障害物の検出位置に対応する位置に重畳した前記マーカの態様を変更するステップと、
前記確認アクションがなされていない前記障害物が存在する場合に、スピーカからアラームを出力するステップと、
存在すると判定されたすべての障害物について、前記確認アクションがなされた場合に、前記アラームの態様を変更するステップと、
を備えるショベルの障害物報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の障害物報知システムおよび作業機械の障害物報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業機械の周辺の人を検知する周辺監視システムに係る技術が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、周辺監視システムは、周囲の障害物を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周辺監視システムは、障害物を検出すると、障害物が存在することをディスプレイやスピーカなどから報知する。作業機械のオペレータは、周辺監視システムによる報知を受け、障害物が存在することを確認し、また安全が確保されていることを確認する。
【0005】
ところで、オペレータは、確認済みの障害物についての報知を終わらせる場合、キャンセルボタン等の押下により、周辺監視システムに報知の終了を指示する必要がある。そのため、オペレータは、障害物の存在が報知されるたびに、障害物の確認作業を行い、報知の終了を指示する必要があり、操作が煩雑であった。
本開示の目的は、確認済みの障害物に係る報知の態様を容易に変更することができる作業機械の障害物報知システムおよび作業機械の障害物報知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、作業機械の障害物報知システムは、作業機械の周囲に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部と、前記作業機械のオペレータのアクションを検出するアクション検出部と、検出された前記アクションが安全確認時に実行される確認アクションであるか否かを判定するアクション判定部と、前記アクションが前記確認アクションであると判定された場合に、前記障害物を示す報知の態様を変更する報知部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、作業機械の障害物報知システムは、確認済みの障害物に係る報知の態様を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る作業機械の構成を示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る作業機械が備える複数のカメラの撮像範囲を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る運転室の内部の構成を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係るアクション辞書データが記憶する情報の例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る表示画面の例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態に係る制御装置の第1の動作例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る制御装置の第2の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第1の実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
【0010】
《作業機械100の構成》
図1は、第1の実施形態に係る作業機械100の構成を示す概略図である。
作業機械100は、施工現場にて稼働し、土砂などの施工対象を施工する。第1の実施形態に係る作業機械100は、例えば油圧ショベルである。作業機械100は、走行体110、旋回体120、作業機130および運転室140を備える。
走行体110は、作業機械100を走行可能に支持する。走行体110は、例えば左右一対の無限軌道である。
旋回体120は、走行体110に旋回中心回りに旋回可能に支持される。
作業機130は、油圧により駆動する。作業機130は、旋回体120の前部に上下方向に駆動可能に支持される。運転室140は、オペレータが搭乗し、作業機械100の操作を行うためのスペースである。運転室140は、旋回体120の左前部に設けられる。
ここで、旋回体120のうち作業機130が取り付けられる部分を前部という。また、旋回体120について、前部を基準に、反対側の部分を後部、左側の部分を左部、右側の部分を右部という。
【0011】
《旋回体120の構成》
旋回体120には、作業機械100の周囲を撮像する複数のカメラ121が設けられる。
図2は、第1の実施形態に係る作業機械100が備える複数のカメラ121の撮像範囲を示す図である。
具体的には、旋回体120には、旋回体120の周囲のうち左後方領域Raを撮像する左後方カメラ121A、旋回体120の周囲のうち後方領域Rbを撮像する後方カメラ121B、旋回体120の周囲のうち右後方領域Rcを撮像する右後方カメラ121C、旋回体120の周囲の右前方領域Rdを撮像する右前方カメラ121Dが設けられる。なお、複数のカメラ121の撮像範囲の一部は、互いに重複していてもよい。
複数のカメラ121の撮像範囲は、作業機械100の全周のうち、運転室140から視認可能な左前方領域Reを除く範囲をカバーする。なお、第1の実施形態に係るカメラ121は、旋回体120の左後方、後方、右後方、および右前方を撮像するが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態に係るカメラ121の数および撮像範囲は、
図1および
図2に示す例と異なっていてよい。
【0012】
なお、左後方カメラ121Aは、
図2の後方範囲Rbに示すように、旋回体120の左側方領域、及び左後方領域の範囲を撮像するものであるが、そのどちらか一方の領域を撮像するものであってもよい。同様に、右後方カメラ121Cは、
図2の右後方範囲Rcに示すように、旋回体120の右側方領域、及び右後方領域の範囲を撮像するものであるが、そのどちらか一方の領域を撮像するものであってもよい。同様に、右前方カメラ121Dは、
図2の右前方範囲Rdに示すように、旋回体120の右前方領域、及び右側方領域の範囲を撮像するものであるが、そのどちらか一方の領域を撮像するものであってもよい。また、他の実施形態においては、複数のカメラ121を用いて、作業機械100の全周囲を撮像範囲とするようにしてもよい。例えば、左前方範囲Reを撮像する左前方カメラを備えて、作業機械100の全周囲を撮像範囲としてもよい。
【0013】
《作業機130の構成》
作業機130は、ブーム131、アーム132、バケット133、ブームシリンダ131C、アームシリンダ132C、およびバケットシリンダ133Cを備える。
【0014】
ブーム131の基端部は、旋回体120にブームピン131Pを介して取り付けられる。
アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にアームピン132Pを介して取り付けられる。
バケット133は、土砂などを掘削するための刃と掘削した土砂を収容するための収容部とを備える。バケット133の基端部は、アーム132の先端部にバケットピン133Pを介して取り付けられる。
【0015】
ブームシリンダ131Cは、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ131Cの基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ131Cの先端部は、ブーム131に取り付けられる。
アームシリンダ132Cは、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ132Cの基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ132Cの先端部は、アーム132に取り付けられる。
バケットシリンダ133Cは、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ133Cの基端部は、アーム132に取り付けられる。バケットシリンダ133Cの先端部は、バケット133に接続されるリンク部材に取り付けられる。
【0016】
《運転室140の構成》
図3は、第1の実施形態に係る運転室140の内部の構成を示す図である。
運転室140内には、運転席141、操作装置142、マイク143、深度センサ144および制御装置145が設けられる。
【0017】
操作装置142は、オペレータの手動操作によって走行体110、旋回体120および作業機130を駆動させるための装置である。操作装置142は、左操作レバー142LO、右操作レバー142RO、左フットペダル142LF、右フットペダル142RF、左走行レバー142LT、右走行レバー142RTを備える。
【0018】
左操作レバー142LOは、運転席141の左側に設けられる。右操作レバー142ROは、運転席141の右側に設けられる。
【0019】
左操作レバー142LOは、旋回体120の旋回動作、及び、アーム132の掘削/ダンプ動作を行うための操作機構である。具体的には、作業機械100のオペレータが左操作レバー142LOを前方に倒すと、アーム132がダンプ動作する。また、作業機械100のオペレータが左操作レバー142LOを後方に倒すと、アーム132が掘削動作する。また、作業機械100のオペレータが左操作レバー142LOを右方向に倒すと、旋回体120が右旋回する。また、作業機械100のオペレータが左操作レバー142LOを左方向に倒すと、旋回体120が左旋回する。なお、他の実施形態においては、左操作レバー142LOを前後方向に倒した場合に旋回体120が右旋回または左旋回し、左操作レバー142LOが左右方向に倒した場合にアーム132が掘削動作またはダンプ動作してもよい。
【0020】
右操作レバー142ROは、バケット133の掘削/ダンプ動作、及び、ブーム131の上げ/下げ動作を行うための操作機構である。具体的には、作業機械100のオペレータが右操作レバー142ROを前方に倒すと、ブーム131の下げ動作が実行される。また、作業機械100のオペレータが右操作レバー142ROを後方に倒すと、ブーム131の上げ動作が実行される。また、作業機械100のオペレータが右操作レバー142ROを右方向に倒すと、バケット133のダンプ動作が行われる。また、作業機械100のオペレータが右操作レバー142ROを左方向に倒すと、バケット133の掘削動作が行われる。なお、他の実施形態においては、右操作レバー142ROを前後方向に倒した場合に、バケット133がダンプ動作または掘削動作し、右操作レバー142ROを左右方向に倒した場合にブーム131が上げ動作または下げ動作してもよい。
【0021】
左フットペダル142LFは、運転席141の前方の床面の左側に配置される。右フットペダル142RFは、運転席141の前方の床面の右側に配置される。左走行レバー142LTは、左フットペダル142LFに軸支され、左走行レバー142LTの傾斜と左フットペダル142LFの押し下げが連動するように構成される。右走行レバー142RTは、右フットペダル142RFに軸支され、右走行レバー142RTの傾斜と右フットペダル142RFの押し下げが連動するように構成される。
【0022】
左フットペダル142LFおよび左走行レバー142LTは、走行体110の左側履帯の回転駆動に対応する。具体的には、作業機械100のオペレータが左フットペダル142LFまたは左走行レバー142LTを前方に倒すと、左側履帯は前進方向に回転する。また、作業機械100のオペレータが左フットペダル142LFまたは左走行レバー142LTを後方に倒すと、左側履帯は後進方向に回転する。
【0023】
右フットペダル142RFおよび右走行レバー142RTは、走行体110の右側履帯の回転駆動に対応する。具体的には、作業機械100のオペレータが右フットペダル142RFまたは右走行レバー142RTを前方に倒すと、右側履帯は前進方向に回転する。また、作業機械100のオペレータが右フットペダル142RFまたは右走行レバー142RTを後方に倒すと、右側履帯は後進方向に回転する。
【0024】
マイク143は、運転室140内に設置され、運転室140内の
音声を集音する。なお、他の実施形態においては、マイク143は、運転室140に設置されず、ヘッドセットのようにオペレータに装着されてもよい。
深度センサ144は、運転室140内に前側から運転席141を向くように設置される。深度センサ144は、運転室140内の深度を計測し、三次元の深度データを生成する。深度センサ144の例としては、赤外線カメラやLiDARなどが挙げられる。なお、深度センサ144は、運転者が検知されるように設置されればよく、他の実施形態においては運転室140の外に設けられてもよい。
【0025】
制御装置145は、作業機械100が有する複数の機能に係る情報を表示するディスプレイ145Dを備える。制御装置145は、表示システムの一例である。また、ディスプレイ145Dは、表示部の一例である。第1の実施形態に係る制御装置145の入力手段は、ハードキーである。なお、他の実施形態においては、タッチパネル、マウス、またはキーボード等を入力手段として用いてもよい。
【0026】
《制御装置145の構成》
図4は、第1の実施形態に係る制御装置145の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置145は、プロセッサ210、メインメモリ230、ストレージ250、インタフェース270を備えるコンピュータである。また、制御装置145は、ディスプレイ145Dおよびスピーカ145Sを備える。また、第1の実施形態に係る制御装置145は、ディスプレイ145Dおよびスピーカ145Sと一体に設けられるが、他の実施形態においては、ディスプレイ145Dおよびスピーカ145Sの少なくとも1つが制御装置145と別個に設けられていてもよい。なお、ディスプレイ145Dと制御装置145とが別個に設けられる場合、ディスプレイ145Dは運転室140の外に設けられてもよい。この場合、ディスプレイ145Dはモバイルディスプレイであってよい。また、作業機械100が遠隔操作によって駆動する場合、ディスプレイ145Dは作業機械100と遠隔に設けられた遠隔操作室に設けられてもよい。同様に、スピーカ145Sと制御装置145とが別個に設けられる場合、スピーカ145Sは運転室140の外に設けられてもよい。また、作業機械100が遠隔操作によって駆動する場合、スピーカ145Sは作業機械100と遠隔に設けられた遠隔操作室に設けられてもよい。
【0027】
なお、制御装置145は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、制御装置145の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで作業機械の障害物報知システムとして機能するものであってもよい。作業機械100は、制御装置145として機能する複数のコンピュータを備えてもよい。制御装置145を構成する一部のコンピュータが作業機械100の内部に搭載され、他のコンピュータが作業機械100の外部に設けられてもよい。
なお、上述の1台の制御装置145も、作業機械の障害物報知システムの一例である。他の実施形態においては、作業機械の障害物報知システムを構成する一部の構成が作業機械100の内部に搭載され、他の構成が作業機械100の外部に設けられてもよい。例えば、ディスプレイ145Dは作業機械100と遠隔に設けられた遠隔操作室に設ける構成とした作業機械の障害物報知システムとしてもよい。また他の実施形態においては、作業機械の障害物報知システムを構成する1または複数のコンピュータがすべて作業機械100の外部に設けられてもよい。
【0028】
カメラ121、マイク143、深度センサ144、ディスプレイ145Dおよびスピーカ145Sは、インタフェース270を介してプロセッサ210に接続される。
ストレージ250の例としては、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ250は、制御装置145のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース270または通信回線を介して制御装置145に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ250は、作業機械100の周囲監視を実現するためのプログラムを記憶する。また、ストレージ250には、ディスプレイ145Dに表示させるためのアイコンを含む複数の画像が予め記憶されている。
【0029】
プログラムは、制御装置145に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ250に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、制御装置145は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ210によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0030】
また、ストレージ250は、障害物を検知するための障害物辞書データD1と、確認アクションを示すアクション辞書データD2とを記憶する。
障害物辞書データD1は、例えば障害物が写る複数の既知の画像それぞれから抽出された特徴量の辞書データであってよい。特徴量の例としては、HOG(Histograms of Oriented Gradients)やCoHOG(Co-occurrence HOG)などが挙げられる。
【0031】
アクション辞書データD2は、安全確認時にオペレータによって実行される確認アクションを示すデータを記憶する。確認アクションとは、障害物を確認するためのオペレータのアクションである。アクションの例としては、オペレータの発声、ジェスチャなどが挙げられる。また、確認アクションの例としては、障害物が存在する方向を指で指し示すこと、障害物が存在する方向の呼称が挙げられ、その両方により確認するのが好ましい。
【0032】
図5は、第1の実施形態に係るアクション辞書データD2が記憶する情報の例を示す図である。例えば、第1の実施形態に係るアクション辞書データD2は、称呼パターン、ジェスチャパターン、および確認方向を、関連付けて記憶する。
【0033】
アクション辞書データD2は、「左後ろ、よし」という称呼パターンと、人差し指が運転室の正面方向から左側へ80度以上160度未満傾いた方向を向くことを示すジェスチャパターンとに関連付けて、確認方向「左後方領域Ra」を記憶する。
アクション辞書データD2は、「後方、よし」という称呼パターンと、人差し指が運転室の正面方向から右側へ20度以上50度未満傾いた方向を向くことを示すジェスチャパターンとに関連付けて、確認方向「後方領域Rb」を記憶する。なお、人差し指が運転室の正面方向から右側へ20度以上50度未満傾いた方向を向くことを示すジェスチャパターンは、
図3に示すように運転席141の右側に設けられたディスプレイ145Dを指し示すジェスチャを示す。
アクション辞書データD2は、「右後ろ、よし」という称呼パターンと、人差し指が正面方向から右側へ80度以上160度未満傾いた方向を向くことを示すジェスチャパターンとに関連付けて、確認方向「右後方領域Rc」を記憶する。
アクション辞書データD2は、「右前、よし」という称呼パターンと、人差し指が正面方向から右側へ0度以上90度未満傾いた方向を向くことを示すジェスチャパターンとに関連付けて、確認方向「右前方領域Rd」を記憶する。
【0034】
なお、
図5に示すジェスチャパターンは一例であって、障害物の確認動作を示すジェスチャであれば他のものでもよい。また、
図5に示すジェスチャパターンに係る角度の数値は一例であり、この値に限られない。また、
図5に示す称呼パターンは一例であって、障害物の確認を示す称呼であれば他のものでもよい。
【0035】
プロセッサ210は、プログラムを実行することで、取得部211、俯瞰画像生成部212、障害物検出部213、アクション検出部214、アクション判定部215、表示画面生成部216、表示制御部217、アラーム制御部218を備える。
【0036】
取得部211は、作業機械100が備える各種センサから計測データを取得する。具体的には、取得部211は、複数のカメラ121から撮像画像を取得し、マイク143から音声信号を取得し、深度センサ144から深度データを取得する。
【0037】
俯瞰画像生成部212は、取得部211が取得した複数の撮像画像を変形し、合成することで、作業機械100を中心として、現場を上方から平面視した俯瞰画像を生成する。俯瞰画像生成部212は、変形後のそれぞれの撮像画像の一部を切り出して、切り出した撮像画像を合成することで、俯瞰画像を生成してもよい。俯瞰画像生成部212が生成する俯瞰画像の中央には、作業機械100を上方から平面視した画像が予め貼り付けられている。俯瞰画像は、作業機械100の周囲が写る周囲画像の一例である。
【0038】
障害物検出部213は、取得部211が取得した各撮像画像から障害物を検出する。すなわち、障害物検出部213は、作業機械100の周囲に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部の一例である。障害物の例としては、人、車両、岩石などが挙げられる。また、障害物検出部213は、障害物が検出された場合に、左後方領域Ra、後方領域Rb、右後方領域Rc、右前方領域Rdのうち障害物が存在する領域を特定する。
【0039】
障害物検出部213は、例えば以下の手順で障害物を検出する。障害物検出部213は、取得部211が取得した各撮像画像から特徴量を抽出する。障害物検出部213は、抽出した特徴量と障害物辞書データとに基づいて、撮像画像から障害物を検出する。障害物の検出方法の例としては、パターンマッチング、機械学習に基づく物体検出処理などが挙げられる。
なお、第1の実施形態においては、障害物検出部213は、画像の特徴量を用いて人の検出を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、障害物検出部213は、LiDAR(Light Detection and Ranging)の計測値などに基づいて障害物を検出してもよい。
【0040】
アクション検出部214は、取得部211が取得したマイク143の音声信号および深度センサ144に基づいて、オペレータのアクションを検出する。例えば、アクション検出部214は、音声認識技術によりマイク143の音声信号からオペレータの発声内容を示す称呼文字列を生成する。また、アクション検出部214は、ボーントラッキング技術により深度センサ144の撮像画像からオペレータの骨格姿勢を示す三次元データ(スケルトンデータ)を生成する。以下、アクション検出部214によって検出されたアクションを示すデータを、アクションデータという。
【0041】
アクション判定部215は、アクション検出部214が取得したアクションデータが示すアクションが、安全確認時に実行される確認アクションであるか否かを判定する。具体的には、アクション判定部215は、アクション検出部214が取得した称呼文字列および骨格姿勢が、アクション辞書データD2が記憶する称呼パターンおよびジェスチャパターンにマッチするか否かを判定する。
アクション判定部215は、アクションデータにマッチするジェスチャパターンが存在する場合、オペレータによる確認方向を特定する。すなわち、アクション判定部215は、アクション辞書データD2においてアクションデータにマッチするジェスチャパターンに関連付けられた確認方向を読み出す。
【0042】
なお、他の実施形態に係るアクション判定部215は、撮像画像そのものを入力としてアクションの判定を行ってもよい。例えば、アクション判定部215は、パターンマッチングや、機械学習された判別器などを用いて、撮像画像に基づいて確認アクションであるか否かの判定を行ってもよい。この場合、アクション検出部214は、取得部211が取得した撮像画像をアクションデータとして検出してもよい。なお、撮像画像は深度センサ144に代えて、カメラによって取得するようにしてもよい。
【0043】
表示画面生成部216は、俯瞰画像生成部212が生成した俯瞰画像G11に重畳させて、障害物の検出位置に対応する位置に、障害物の位置を示すマーカG12を配置した表示画面データG1を生成する。表示画面データG1へのマーカG12の配置は、障害物の存在の報知の一例である。表示画面生成部216は、アクション判定部215が確認方向を特定したときに、当該確認方向に対応する領域に配置されたマーカG12を削除する。マーカG12の削除は、報知の態様の変更の一例である。なお、他の実施形態においては、マーカG12の削除に代えて、マーカG12の色を変更してもよい。
表示画面の例については後述する。
【0044】
表示制御部217は、表示画面生成部216が生成した表示画面データG1をディスプレイ145Dに出力する。これにより、ディスプレイ145Dは表示画面データG1を表示する。表示制御部217は、報知部の一例である。
【0045】
アラーム制御部218は、障害物検出部213が障害物を検出したときに、スピーカ145Sにアラームの音声信号を出力する。これにより、スピーカ145Sはアラームを鳴らし始める。アラームは、障害物の存在の報知の一例である。アラーム制御部218は、障害物が検出されたすべての領域についてアクション判定部215が確認方向を特定したときに、スピーカ145Sに音声信号の供給を停止する。これにより、スピーカ145Sはアラームを停止する。アラームの停止は、報知の態様の変更の一例である。なお、他の実施形態においては、アラームの停止に代えて、アラームの音量を変更してもよい。例えば、障害物が検出されたすべての領域について確認方向を特定した場合に、アラームの音量を下げてもよい。アラーム制御部218は、報知部の一例である。
【0046】
《表示画面について》
図6は、第1の実施形態に係る表示画面の例を示す図である。
図6に示すように、表示画面データG1には、俯瞰画像G11、マーカG12、アラームアイコンG13、および単カメラ画像G14が含まれる。なお、他の実施形態においては、マーカG12およびアラームアイコンG13の何れか一方が表示画面データG1に含まれてもよい。
【0047】
マーカG12は、障害物の位置を示す。マーカG12の形状は、例えば、円、楕円、正多角形、多角形などが挙げられる。
アラームアイコンG13は、アラームの状態を表す。アラームアイコンG13は、アラームが鳴っているときに例えば赤色に表示される。アラームアイコンG13は、アラームが鳴っていないときに例えば灰色に表示される。
単カメラ画像G14は、1つのカメラ121が撮像した単カメラ画像である。なお、オペレータは、作業機械100の運転室140から後方を確認することが容易ではないが、表示画面データG1に後方カメラ121Bが撮像した単カメラ画像、又は俯瞰画像G11が表示されることで、ディスプレイ145Dの指差呼称によって後方の確認をすることができる。
【0048】
《障害物の報知方法》
図7は、第1の実施形態に係る制御装置145の動作を示すフローチャートである。
制御装置145が周囲監視処理を開始すると、メインメモリ230に、左後方領域Ra、後方領域Rb、右後方領域Rc、および右前方領域Rdそれぞれについて障害物が確認済みであるか否かを示す確認済みフラグを格納する記憶領域を確保し、
図7に示す処理を繰り返し実行する。確認済みフラグは、例えば、0または1の値を取り、0は未確認、1は確認済みを示す。確認済みフラグの初期値は0である。
【0049】
取得部211は、複数のカメラ121、マイク143、および深度センサ144から計測データを取得する(ステップS1)。すなわち、取得部211は、複数のカメラ121から撮像画像を取得し、マイク143から音声信号を取得し、深度センサ144から深度データを取得する。
【0050】
次に、俯瞰画像生成部212は、ステップS1で取得した複数の撮像画像を変形し、合成することで、作業機械100を中心として、現場を上方から平面視した俯瞰画像G11を生成する(ステップS2)。次に、障害物検出部213は、ステップS1で取得した各撮像画像について障害物の検出処理を実行し、障害物が検出されたか否かを判定する(ステップS3)。
【0051】
撮像画像において障害物が検出された場合(ステップS3:YES)、障害物検出部213は、左後方領域Ra、後方領域Rb、右後方領域Rc、右前方領域Rdのうち障害物が検出された領域を特定する(ステップS4)。すなわち、障害物検出部213は、左後方カメラ121Aの撮像画像において障害物が検出された場合、障害物が検出された領域が左後方領域Raであると判定する。障害物検出部213は、後方カメラ121Bの撮像画像において障害物が検出された場合、障害物が検出された領域が後方領域Rbであると判定する。障害物検出部213は、右後方カメラ121Cの撮像画像において障害物が検出された場合、障害物が検出された領域が右後方領域Rcであると判定する。障害物検出部213は、右前方カメラ121Dの撮像画像において障害物が検出された場合、障害物が検出された領域が右前方領域Rdであると判定する。
【0052】
障害物検出部213は、障害物が検出されなかった領域に係る確認済みフラグをすべて0にリセットする(ステップS5)。障害物が検出された領域に係る確認済みフラグの値は維持される。すなわち、障害物が検出された領域のうち既に指差呼称によって確認済みの領域に係る確認済みフラグの値は1を維持し、障害物が検出された領域のうち未確認の領域に係る確認済みフラグの値は0を維持する。これにより、未確認の障害物が撮像画像において検出されなくなると、当該領域に係る確認済みフラグは1から0にリセットされる。
【0053】
アクション検出部214は、ステップS1で取得したマイク143の音声信号および深度センサ144に基づいて、アクションデータを検出する(ステップS6)。つまり、アクション検出部214は、オペレータのアクションを示す称呼文字列およびスケルトンデータを検出する。なお、スピーカ145Sからアラームが鳴っていると、アクション検出部214による音声信号の音声認識処理の精度が低下する可能性がある。そのため、アクション検出部214が音声信号にヒトの声が含まれていることを検知し、ヒトの声が検知されたときにアラーム制御部218がスピーカ145Sから出力するアラームの音量を低減してもよい。アクション判定部215は、アクション辞書データD2を参照し、称呼文字列がアクション辞書データD2に記憶される何れかの称呼パターンにマッチするか否かを判定する(ステップS7)。
【0054】
称呼文字列がアクション辞書データD2に記憶される何れかの称呼パターンにマッチした場合(ステップS7:YES)、アクション判定部215は、ステップS6で取得したスケルトンデータから人差し指の向く方向を特定し、スケルトンデータが当該称呼パターンに関連付けられたジェスチャパターンにマッチするか否かを判定する(ステップS8)。
【0055】
スケルトンデータがジェスチャパターンにマッチした場合(ステップS8:YES)、アクション判定部215は、ステップS5で検出されたアクションが安全確認時に実行される指差呼称であると判定する。アクション判定部215は、ステップS7に係る故障パターンおよびステップS8に係るジェスチャパターンに関連付けられた確認方向を読み出し、当該確認方向に関連付けられた確認済みフラグの値を1に書き換える(ステップS9)。
他方、称呼文字列が何れの称呼パターンにもマッチしない場合(ステップS7:NO)、またはスケルトンデータがジェスチャパターンにマッチしない場合(ステップS8:NO)、指差呼称が適切になされていないため、確認済みフラグの値を維持する。
【0056】
アラーム制御部218は、ステップS3で検出された障害物のうち未確認の障害物が1つ以上あるか否かを判定する(ステップS10)。例えば、アラーム制御部218は、確認済みフラグが0を示す領域に存在する障害物を未確認と判定する。未確認の障害物が存在する場合(ステップS10:YES)、アラーム制御部218は、アラームの音声信号をスピーカ145Sに出力する(ステップS11)。他方、ステップS3で障害物が検出されていない場合、または検出された障害物のすべてが、確認済みフラグが1を示す領域に存在する場合(ステップS10:NO)、アラーム制御部218は、アラームの音声信号の出力を停止する(ステップS12)。
【0057】
表示画面生成部216は、表示画面生成部216は、ステップS2で生成した俯瞰画像G11のうち、ステップS10で特定した未確認の障害物に対応する位置に、マーカG12を配置する(ステップS13)。なお、表示画面生成部216は、確認済みの障害物、すなわちステップS4で検出された障害物のうち確認済みフラグが1を示す領域に存在するものに対応する位置には、マーカG12を配置しない。つまり、前回生成された表示画面データG1に配置されたマーカG12のうち、ステップS9で特定された確認方向に配置されたマーカG12は、今回生成される表示画面データG1において表示されなくなる。
【0058】
表示画面生成部216は、俯瞰画像G11と、ステップS1で取得した単カメラ画像G14と、アラームの状態を示すアラームアイコンG13とを配置した表示画面データG1を生成する(ステップS14)。表示制御部217は、生成した表示画面データG1をディスプレイ145Dに出力する(ステップS15)。
【0059】
上記の処理を繰り返し実行することで、制御装置145は、俯瞰画像G11に重畳して検出された障害物にマーカG12を付し、指差呼称によって確認がなされると当該マーカG12を削除することができる。また、制御装置145は、障害物が検出されるとスピーカ145Sからアラームを鳴らし、指差呼称によってすべての障害物の確認がなされると当該アラームを停止することができる。
【0060】
なお、
図7に示すフローチャートは一例であり、他の実施形態においては必ずしもすべてのステップを実行しなくてもよい。例えば、他の実施形態において、アラームによる報知をしない場合には、ステップS10-12の処理を実行しなくてもよい。また例えば、他の実施形態において、表示による報知をしない場合には、ステップS13-15の処理を実行しなくてもよい。また、他の実施形態において、確認アクションの判断を、称呼またはジェスチャの何れか一方のみで行う場合には、ステップS7またはS8の判定を行わなくてもよい。また、
図7に示すフローチャートでは、ステップS1にて複数の撮像画像、音声信号、および深度データを取得するが、このタイミングに限られず、音声信号および深度データは、ステップS6によるアクションデータの検出前に取得されればよい。また、
図7に示すフローチャートでは、ステップS10-S12の音声信号の出力または停止の処理の後に、ステップS13において未確認の障害物の位置にマーカを配置するが、他の実施形態においてはステップS11で音声信号を出力するタイミングにおいて、未確認の障害物の位置にマーカを配置してもよい。すなわち、他の実施形態においては、未確認の障害物が1つ以上ある場合にのみ、ステップS13の処理を行ってもよい。
【0061】
《動作例》
以下、図を用いながら第1の実施形態に係る制御装置145の動作例について説明する。
図8は、第1の実施形態に係る制御装置145の第1の動作例を示す図である。
制御装置145の障害物検出部213は、ステップS3で作業機械100の周囲において障害物を検出すると、ステップS4で検出された領域を特定する。ここで、例えば右前方カメラ121Dの撮像画像において障害物が検出された場合、障害物検出部213は、障害物が検出された領域が右前方領域Rdであると特定する。このとき、すべての確認済みフラグは0であるため、表示画面生成部216は、ステップS13において、
図8に示すように、俯瞰画像G11の障害物の位置にマーカG12を配置する。また、このときアラーム制御部218はスピーカ145Sに音声信号を出力するため、アラームアイコンG13は例えば赤色で表示される。
【0062】
オペレータは、スピーカ145Sから発せられるアラームを聞き、ディスプレイ145Dを視認することで、右前方領域Rdに障害物が存在することを認識する。オペレータは、当該障害物の確認のために、指差呼称を行う。すなわち、オペレータは、
図8に示すように、「右前、よし」と称呼し、右前方領域Rdの障害物を指し示す。
【0063】
このとき、制御装置145のアクション検出部214は、ステップS6において、マイク143の音声信号から「右前、よし」との文字列を検出し、また深度センサ144から右前方向を指し示すスケルトンデータを検出する。検出されたアクションデータは、右前方領域Rdに係る確認アクションのパターンにマッチする。そのため、アクション検出部214は、ステップS9において右前方領域Rdに係る確認済みフラグを1に書き換える。右前方領域Rdに係る確認済みフラグが1であるため、表示画面生成部216は、ステップS13において、俯瞰画像G11の障害物の位置にマーカG12を配置しない。また、アラーム制御部218はスピーカ145Sに音声信号の出力を停止するため、アラームアイコンG13は例えば灰色で表示される。
【0064】
このように、第1の実施形態に係る制御装置145は、オペレータによる指差呼称のアクションによって、障害物の報知を停止させることができる。
【0065】
図9は、第1の実施形態に係る制御装置145の第2の動作例を示す図である。
制御装置145の障害物検出部213は、ステップS3で作業機械100の周囲において障害物を検出すると、ステップS4で検出された領域を特定する。ここで、例えば右前方カメラ121Dの撮像画像および後方カメラ121Bの撮像画像において障害物が検出された場合、障害物検出部213は、障害物が検出された領域が右前方領域Rdおよび後方領域Rbであると特定する。このとき、すべての確認済みフラグは0であるため、表示画面生成部216は、ステップS13において、
図9に示すように、俯瞰画像G11の各障害物の位置にマーカG12を配置する。また、このときアラーム制御部218はスピーカ145Sに音声信号を出力するため、アラームアイコンG13は例えば赤色で表示される。
【0066】
オペレータは、スピーカ145Sから発せられるアラームを聞き、ディスプレイ145Dを視認することで、右前方領域Rdおよび後方領域Rbに障害物が存在することを認識する。オペレータは、まず右前方領域Rdの障害物の確認のために、指差呼称を行う。すなわち、オペレータは、
図9に示すように、「右前、よし」と称呼し、右前方領域Rdの障害物を指し示す。
【0067】
制御装置145のアクション検出部214は、ステップS6において、マイク143の音声信号から「右前、よし」との文字列を検出し、また深度センサ144から右前方向を指し示すスケルトンデータを検出する。検出されたアクションデータは、右前方領域Rdに係る確認アクションのパターンにマッチする。そのため、アクション検出部214は、ステップS9において右前方領域Rdに係る確認済みフラグを1に書き換える。右前方領域Rdに係る確認済みフラグが1であるため、表示画面生成部216は、ステップS13において、右前方領域Rdの障害物の位置にマーカG12を配置しない。他方、後方領域Rbに係る確認済みフラグは0のままであるため、表示画面生成部216は、ステップS13において、後方領域Rbの障害物の位置にマーカG12を配置する。また、アラーム制御部218は、確認済みフラグが0の領域に障害物が検出されているため、音声信号の出力を継続する。そのため、アラームアイコンG13の色は維持される。
【0068】
次に、オペレータは、後方領域Rbの障害物の確認のために、指差呼称を行う。すなわち、オペレータは、
図9に示すように、「後方、よし」と称呼し、ディスプレイ145Dに表示される後方カメラ121Bの単カメラ画像G14を指し示す。
【0069】
制御装置145のアクション検出部214は、ステップS6において、マイク143の音声信号から「後方、よし」との文字列を検出し、また深度センサ144からディスプレイ145Dの方向を指し示すスケルトンデータを検出する。検出されたアクションデータは、後方領域Rbに係る確認アクションのパターンにマッチする。そのため、アクション検出部214は、ステップS9において後方領域Rbに係る確認済みフラグを1に書き換える。これにより、右前方領域Rdおよび後方領域Rbに係る確認済みフラグが1となるため、表示画面生成部216は、ステップS13において、障害物の位置にマーカG12を配置しない。また、アラーム制御部218は、障害物が検出された領域に係る確認済みフラグがすべて1であるため、音声信号の出力を停止する。そのため、アラームアイコンG13は例えば灰色で表示される。
【0070】
このように、第1の実施形態に係る制御装置145は、オペレータによる指差呼称がなされていない障害物に係る報知を維持する。これにより、制御装置145は、障害物の確認漏れを防ぐことができる。
【0071】
《作用・効果》
第1の実施形態に係る制御装置145は、作業機械100の周囲に障害物が存在すると判定された場合に、当該障害物の存在の報知を開始し、オペレータのアクションが安全確認時に実行される確認アクションであると判定された場合に、報知の態様を変更する。これにより、オペレータは、障害物の確認のために必要な確認アクションを実行するだけで、確認済みの障害物に係る報知の態様を変更することができる。
【0072】
第1の実施形態に係る制御装置145は、作業機械100を中心とした複数の領域それぞれに障害物が存在するか否かを判定し、複数の領域のうち、確認アクションに係る領域に基づいて報知を終了する。これにより、オペレータによる障害物の確認漏れが発生することを防ぐことができる。
【0073】
《他の実施形態》
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0074】
上述した実施形態では、作業機械100が障害物を検出するための複数のカメラ121、ジェスチャを検出するためのマイク143および深度センサ144、ならびにアラームを出力するためのスピーカ145Sを備えるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、上記構成の少なくとも1つが作業機械100の外部に設けられてもよい。例えば、他の実施形態に係る制御装置145は、現場に設置されたスピーカおよびカメラ、ならびに他の作業機械100が備えるスピーカおよびカメラの計測データに基づいて、、障害物の検出、ジェスチャの検出、およびアラームの出力の少なくとも1つを行ってもよい。
【0075】
なお、上述した実施形態に係る確認アクションは指差呼称であるが、他の実施形態においてはこれに限られない。
また、上述した実施形態に係る制御装置145は、確認アクションがなされたときに報知を終了するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては確認アクションがなされたときに、マーカG12の色を変え、またアラームの音量を低下させてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態に係る制御装置145は、ディスプレイ145DへのマーカG12の表示、アラームアイコンG13の表示、およびスピーカ145Sからのアラームによって障害物の報知を行うが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置145は、作業機械100の介入制御により障害物の報知を行ってもよい。例えば、制御装置145は、障害物が存在する方向への旋回体120の旋回を制限し、当該障害物に対する確認アクションが検出された場合に、当該制限を解除してもよい。
【0077】
また、上述した実施形態に係る制御装置145は、音声信号から文字列を抽出し、当該文字列に基づいて称呼のマッチングを行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置145は、称呼パターンごとに、当該称呼パターンの音声によって学習された学習済みモデルを記憶しておき、類似度が最も高い学習済みモデルを特定することで、称呼のマッチングを行ってもよい。
【0078】
また、上述した実施形態に係る制御装置145は、称呼とジェスチャのマッチングにより確認方向を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置145は、称呼パターンのマッチングをしなくてもよい。この場合、ジェスチャパターンのみによって確認方向を特定してもよいし、ジェスチャパターンのマッチングと、オペレータによる発生の有無との組み合わせによって確認方向を特定してもよい。
また、例えば、他の実施形態に係る制御装置145は、ジェスチャパターンのマッチングをしなくてもよい。この場合、称呼パターンのみによって確認方向を特定してもよいし、称呼パターンのマッチングと、指の形状のマッチングとの組み合わせによって確認方向を特定してもよい。
【0079】
また、上述した実施形態において、後方領域に係るジェスチャパターンは、ディスプレイ145Dを指し示すことを示すものであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、人差し指の方向が後方を向くことを示すジェスチャパターンであってもよい。また、他の実施形態においては、他の領域に係るジェスチャパターンは、ディスプレイ145Dを指し示すことを示すものであってもよい。
また、上述した実施形態において、各領域に係るジェスチャパターンが異なるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、各領域のジェスチャパターンが共通のジェスチャパターンであってもよい。例えば、各領域が映るディスプレイ145Dに対して、人差し指を指し示すなどの、確認動作を示すジェスチャであってもよい。
また、上述した実施形態において、各領域に係る称呼パターンが異なるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、各領域の称呼パターンが「よし」、「確認よし」などの共通の称呼パターンであってもよい。
また、上述した実施形態において、安全確認時に実行される確認アクションは、障害物を直接目視して確認することを含むが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る確認アクションは、ディスプレイ145Dに表示される障害物の画像や、マーカG12などの目視および、ディスプレイ145Dに対する確認動作を含むものであってもよい。
【0080】
また、上述した実施形態に係る作業機械100は、油圧ショベルであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業機械100は、例えば、ダンプトラック、ブルドーザ、ホイルローダなどの他の作業機械であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
100…作業機械 110…走行体 120…旋回体 121…カメラ 130…作業機 143…マイク 144…深度センサ 145…制御装置 145D…ディスプレイ 145S…スピーカ 211…取得部 212…俯瞰画像生成部 213…障害物検出部 214…アクション検出部 215…アクション判定部 216…表示画面生成部 217…表示制御部 218…アラーム制御部