(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ケーブル端子及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H01R13/42 E
(21)【出願番号】P 2020099507
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 梨沙
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 英樹
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-095379(JP,A)
【文献】実開平06-036235(JP,U)
【文献】米国特許第04655525(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/10
H01R13/11
H01R13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板によって形成され、ケーブルの端部に設けられているケーブル端子と、
前記ケーブル端子を収容し、前記ケーブル端子が後側から前側に向かって挿入可能な端子収容室が形成されているハウジングと、
前記ハウジングに装着されるリテーナと
を有し、
前記ケーブル端子は、
前記ケーブルを保持するケーブル保持部と、前後方向に沿った中心線に沿って形成されている後板部とを有し、前記ケーブル保持部は前記後板部の左側と右側とから延び前記ケーブルを保持するように曲げられている部分である、端子後部と、
前記中心線に沿って形成されている前板部を有している端子前部と、
前記前板部と前記後板部との間に形成され後方に向かうに従って
前記前板部よりも前記中心線に近づくように
前記前板部から傾斜している傾斜部とを有し、
前記ハウジングに形成されている前記端子収容室の内面と前記後板部との間に隙間が形成され、
前記リテーナは、前記隙間に挿入されて前記傾斜部の後方に位置し前記ケーブル端子にあたり前記ケーブル端子の後方への移動を規制している位置決めポストを有している
コネクタ。
【請求項2】
金属板によって形成され、ケーブルの端部に設けられているケーブル端子と、
前記ケーブル端子を収容し、前記ケーブル端子が後側から前側に向かって挿入可能な端子収容室が形成されているハウジングと、
前記ハウジングに装着されるリテーナと
を有し、
前記ケーブル端子は、
前記ケーブルを保持するケーブル保持部と、前後方向に沿った中心線に沿って形成されている後板部とを有し、前記ケーブル保持部は前記後板部の左側と右側とから延び前記ケーブルを保持するように曲げられている部分である、端子後部と、
前記中心線に沿って形成されている前板部を有している端子前部と、
前記前板部と前記後板部との間に形成され後方に向かうに従って前記中心線に近づくように傾斜している傾斜部とを有し、
前記ハウジングに形成されている前記端子収容室の内面と前記後板部との間に隙間が形成され、
前記リテーナは、前記隙間に挿入されて前記傾斜部の後方に位置し前記ケーブル端子にあたり前記ケーブル端子の後方への移動を規制している位置決めポストを有し、
前記金属板に穴が形成され、
前記穴の内縁の少なくとも一部は前記傾斜部に位置し、
前記位置決めポストは、前記穴の内縁にあたり前記ケーブル端子の後方への移動を規制する
コネクタ。
【請求項3】
金属板によって形成され、ケーブルの端部に設けられているケーブル端子と、
前記ケーブル端子を収容し、前記ケーブル端子が後側から前側に向かって挿入可能な端子収容室が形成されているハウジングと、
前記ハウジングに装着されるリテーナと
を有し、
前記ケーブル端子は、
前後方向に沿った中心線に沿って形成されている前板部を有している端子前部と、
前記中心線に沿って形成されている後板部を有している端子後部と、
前記前板部と前記後板部との間に形成され後方に向かうに従って前記中心線に近づくように傾斜している傾斜部とを有し、
前記リテーナは、前記傾斜部の後方に位置し前記ケーブル端子にあたり前記ケーブル端子の後方への移動を規制している位置決めポストを有し、
前記金属板にこれを貫通する穴が形成され、
前記穴の内縁の少なくとも一部は前記傾斜部に位置し、
前記位置決めポストは、前記穴の内縁にあたり前記ケーブル端子の後方への移動を規制する
コネクタ。
【請求項4】
前記位置決めポストは、前記傾斜部の後方に位置し前記後板部に沿って直線的に伸びている延伸部を有している
請求項1
乃至3のいずれかに記載されるコネクタ。
【請求項5】
前記端子前部は、前記前板部の左縁と右縁とからそれぞれ伸びている左右の側板部を有し、
前記傾斜部は、前記左右の側板部から後方に伸びていて前記端子後部に接続している側部を含んでいる
請求項1
乃至3のいずれかに記載されるコネクタ。
【請求項6】
前記ケーブル端子は、前記前板部の左縁と右縁とからそれぞれ伸びている左右の側板部と、前記側板部から伸びており前記中心線を挟んで前記前板部とは反対側に位置している底板部とを有している
請求項1
乃至3のいずれかに記載されるコネクタ。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記底板部の縁の後方に位置し、前記ケーブル端子の後方への移動を規制するロックアームを有している
請求項
6に記載されるコネクタ。
【請求項8】
金属板によって形成され、ケーブルの端部に設けられ、ハウジングに形成された端子収容室に挿入するためのケーブル端子であって、
前後方向に沿った中心線に沿って形成されている前板部を有している端子前部と、
前記中心線に沿って形成されている後板部を有し、前記ケーブル端子が前記端子収容室に挿入されたときに、前記ハウジングに装着されるリテーナに形成された位置決めポストを挿入するための隙間を、前記後板部と前記端子収容室の内面との間に形成する端子後部と、
前記前板部と前記後板部との間に形成され後方に向かうに従って前記中心線に近づくように傾斜し、前記隙間に挿入される前記位置決めポストの前方に位置する傾斜部と
を有し、
前記傾斜部に、前記金属板を貫通する穴の内縁の少なくとも一部が位置している
ケーブル端子。
【請求項9】
請求項1
乃至3のいずれかに記載のコネクタと、
前記コネクタと、前記前後方向において組み合わせ可能な相手コネクタと
を有しているコネクタ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブル端子とケーブル端子が装着されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ケーブル端子が挿入される端子収容室を有するハウジングと、ケーブル端子の抜け(すなわち、端子収容室からの後方への移動)を規制するリテーナとを有しているコネクタが開示されている。ケーブル端子は係止部を有している。リテーナは、前方に伸びている端子係止片を有している。端子係止片はケーブル端子の係止部の後側にあたり、ケーブル端子の後方への移動を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコネクタにおいては、端子係止片はリテーナの基部から前方に伸び、ケーブル端子の後部の上側に配置されている。そして、端子係止片の前部は下方に曲がり、その先端がケーブル端子の係止部の後側に当たっている。この構造では、端子係止片の高さが高くなる。その結果、コネクタの高さが大きくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示で提案するコネクタの一例は、金属板によって形成され、ケーブルの端部に設けられているケーブル端子と、前記ケーブル端子を収容し、前記ケーブル端子が後側から前側に向かって挿入可能な端子収容室が形成されているハウジングと、前記ハウジングに装着されるリテーナとを有している。前記ケーブル端子は、前後方向に沿った中心線に沿って形成されている前板部を有している端子前部と、前記中心線に沿って形成されている後板部を有している端子後部と、前記前板部の前記後板部との間に形成され後側に向かうに従って前記中心線に近づくように傾斜している傾斜部とを有している。前記リテーナは、前記傾斜部の後方に位置し前記ケーブル端子にあたり前記ケーブル端子の後方への移動を規制している位置決めポストを有している。この構造によれば、ケーブル端子に対する位置決めポストの位置を低くできる。
【0006】
本開示で提案するケーブル端子の一例は、金属板によって形成され、ケーブルの端部に設けられているケーブル端子であって、前後方向に沿った中心線に沿って形成されている前板部を有している端子前部と、前記中心線に沿って形成されている後板部を有している端子後部と、前記前板部の前記後板部との間に形成され後方に向かうに従って前記中心線に近づくように傾斜している傾斜部とを有している。前記傾斜部に、前記金属板を貫通する穴の内縁の少なくとも一部が位置している。このコネクタによれば、コネクタの高さを低減できる。また、金属板に貫通穴が形成されているので、リテーナの位置決めポストからケーブル端子に効率的に力を作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示で提案するコネクタを含むコネクタ組立体の一例を示す分解斜視図である。
【
図3C】
図3AにあるIIIc-IIIc線で示す切断面で得られるケーブル端子の断面図である。
【
図3D】ケーブル端子が有している端子前部の平面図である。
【
図4A】コネクタの断面図である。ケーブル端子が端子収容室の適正位置に配置され、リテーナがハウジングに装着されている様子を示している。
【
図4B】コネクタの断面図である。ケーブル端子が挿入される過程を示している。
【
図5】
図4Aと同じ状態にあるコネクタの側面図である。リテーナがハウジングに装着されている様子を示している。
【
図7B】
図7AのVIIb-VIIb線で示す切断面で得られるハウジングの断面図である。
【
図8】変形例にかかるコネクタ組立体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示で提案するコネクタの例について説明する。以下では、
図1で示すX1方向及びX2方向をそれぞれ右方及び左方と称し、
図1で示すY1方向及びY2方向をそれぞれ前方及び後方と称し、
図1で示すZ1方向及びZ2方向をそれぞれ上方及び下方と称する。これらの方向は、コネクタの各部の相対的な位置関係を説明するために使用されており、他の装置に搭載されている時のコネクタの姿勢を限定するものではない。
【0009】
[全体]
図1で示すように、コネクタ組立体は、前後方向において組み合わせ可能なコネクタ10と相手コネクタ90とを有している。
図1で示すように、コネクタ10は、複数のケーブル端子20と、ケーブル端子20を保持しているハウジング30と、ハウジング30に装着されるリテーナ40とを有している。相手コネクタ90は複数の端子91と端子91を保持しているハウジング92とを有している。
【0010】
相手コネクタ90は、例えば、左右方向で並ぶ2つの端子91を有する。相手コネクタ90は、例えば回路基板(不図示)上に配置されるコネクタであり、端子91は、その端部に、回路基板の導体パターンに接続される接続部91aを有してよい。
【0011】
相手コネクタ90のハウジング92は、コネクタ10に向かって開いた箱状の嵌合部92a(
図2参照)を有してよい。嵌合部92aの内側に端子91の接触部が収容されている。この嵌合部92aの内側にコネクタ10のハウジング30が嵌まり、複数のケーブル端子20が複数の端子91にそれぞれ接する。ハウジング30は、相手コネクタ90のハウジング92と係合するロック機構を有してよい。
図2で示すように、ハウジング30は、ロック機構として、例えばロックレバー33を有する。ロックレバー33の前端に形成されているフックがハウジング92の上側に形成されている被係合部92bに引っかかる。このことによって、コネクタ10と相手コネクタ90の分離が規制される。
【0012】
コネクタ10が有しているケーブル端子20の数と、相手コネクタ90が有している端子91の数は2つより多くてもよいし、1つでもよい。また、複数のケーブル端子20は左右方向だけでなく、上下方向に並んでもよい。同様に、相手コネクタ90の端子91も左右方向だけでなく、上下方向に並んでもよい。また、相手コネクタ90は、回路基板上に配置されるコネクタではなく、例えばケーブルの端部に取り付けられるコネクタであってもよい。この場合、相手コネクタは、後において示すように、本開示のリテーナを装着できるハウジングとケーブル端子を備えるコネクタであってもよい(
図8参照)。
【0013】
[コネクタの概要]
ハウジング30にはケーブル端子20を収容している端子収容室S(
図7B参照)が形成されている。端子収容室Sはハウジング30を前後方向に貫通しており、ケーブル端子20はハウジング30の後側から前側に向かって端子収容室Sに挿入される。コネクタ10は左右方向で並んでいる2本のケーブル端子20を有している。ハウジング30には、左右方向で並んでいる同数の端子収容室Sが形成されている。
【0014】
ケーブル端子20には、後述する被ストッパ部21e(
図3C参照)が形成されている。
図4Aで示すように、ハウジング30は、その下部にロックアーム31を有している。ロックアーム31は被ストッパ部21eに引っかかり、ケーブル端子20の後方への移動を規制する。以下では、ロックアーム31が引っかかるケーブル端子20の位置(
図4Aで示すケーブル端子20の位置)を適正位置と称する。また、被ストッパ部21eを「第2被ストッパ部」と称する。
【0015】
ケーブル端子20には被ストッパ部24a(
図3C参照)が形成されている。コネクタ10の例において、被ストッパ部24aはケーブル端子20に形成された穴Haの内縁の一部である。リテーナ40は、前方に延びている位置決めポスト41(
図1参照)を有している。位置決めポスト41は被ストッパ部24aの後方に位置し、ケーブル端子20の後方への移動(端子収容室Sにおける適正位置からの抜け)を規制している。また、ケーブル端子20を端子収容室Sに挿入する過程において、ケーブル端子20が端子収容室Sにおける適正位置に到達しなかった場合、リテーナ40がハウジング30に装着されると、位置決めポスト41が被ストッパ部24aを前方に押し、ケーブル端子20を適正位置に到達させる。すなわち、位置決めポスト41はケーブル端子20とハウジング30との間の半嵌合を防止している。以下において、被ストッパ部24aを「第1被ストッパ部」と称する。また、ケーブル端子20を端子収容室Sに挿入する過程において、ケーブル端子20が端子収容室Sにおける適正位置に到達しておらず、第2被ストッパ部21eがストッパ部31aより後方に位置している場合、リテーナ40がハウジング30に装着されると、位置決めポスト41が被ストッパ部24aを接触してケーブル端子20を挿入方向に押し、第2被ストッパ部21eがストッパ部31aを押下し、ストッパ部31aを乗り越える。
【0016】
図2及び
図5で示すように、ハウジング30は被係合部34を有してよい。被係合部34は、例えばハウジング30の左右の側面に形成されてよい。被係合部34は、側面から突出する凸部であってよい。一方、リテーナ40は、その左右の側部に係合部43を有してよい。係合部43は、
図5で示すように、例えばハウジング30の側面に向かって延びている、側面視において略U字形状の部位である。被係合部34と係合部43とが係合しているとき、被係合部34は係合部43の内側に配置され、リテーナ40のハウジング30に対する後方への移動(すなわちリテーナ40とハウジング30の分離)を規制する。
【0017】
係合部43と被係合部34の形状は、ハウジング30とリテーナ40の分離を規制するものであれば、コネクタ10の例に限られない。また、コネクタ10の例とは異なり、リテーナ40の側面に係合部43として凸部が形成され、ハウジング30の側部にリテーナ40に向かって延びている被係合部34が形成されてよい。
【0018】
[ケーブル端子]
ケーブル端子20について詳説する。ケーブル端子20は、金属板(例えば、銅板、アルミニウム板等)からプレス加工によって形成された部材である。プレス加工は、具体的には、打ち抜き加工や、曲げ加工、絞り加工などを含む。
【0019】
図3Aで示すように、ケーブル端子20は、前後方向に沿った中心線C1(
図3C参照)に沿って形成されている前上板部21aを有している端子前部21と、中心線C1に沿って形成されている後上板部23aを有している端子後部23とを有している。
【0020】
図3Aで示すように、端子前部21は、前上板部21aの右縁と左縁とから下がっている側板部21bを有してよい。前上板部21aと側板部21bは中心線C1を取り囲んでいる。ケーブル端子20は、左右の側板部21bの前端から前方に延びている接触部21cを有してよい。左右の接触部21cは互いに向き合うように形成され、左右の接触部21cの間隔が拡大或いは縮小するように弾性変形可能であってよい。相手コネクタ90の端子91はこの2枚の接触部21cの間に挿入され、それらに接触する。
【0021】
接触部21cの上方に前上板部21aが位置している。
図3Dで示すように、ケーブル端子20の平面視においては、接触部21cの全体が前上板部21aによって覆われてよい。これによって、接触部21cを前上板部21aによって保護できる。
図3Cで示すように、前上板部21aの前端は接触部21cの前端よりもさらに前方に位置している。これによって、接触部21cの前端を前上板部21cによって保護できる。
【0022】
図3Cで示すように、前上板部21aの前端21hは下方に屈曲している。すなわち、前上板部21cの前端21hはケーブル端子20の中心線C1に向かって屈曲している。ケーブル端子20を端子収容室Sに挿入するとき、端子収容室Sの縁に前上板部21cの前端21hが衝突した場合、前端21hの傾斜によってケーブル端子20を端子収容室Sの内側に案内できる。
【0023】
ケーブル端子20は、さらに左右の側板部21bの下縁からそれぞれ延びている2枚の底板部21dを有している。底板部21dは中心線C1を挟んで前上板部21aとは反対側に位置している。2枚の底板部21dは互いに重なっていてよい。これにより、ケーブル端子20の強度を増すことができる。
【0024】
図3Cで示すように、側板部21bの前後方向での長さW12は、前上板部21aの前後方向での長さW11よりも小さい。底板部21dの前後方向での長さW13は、側板部21bの前後方向での長さW12よりもさらに小さい。底板部21dは、端子前部21の最後部にだけ形成され、左右の接触部21cの間には形成されていなくてよい。こうすることによって、ケーブル端子20の前部の上下方向の幅を低減できる。また、底板部21dは、端子前部21の最後部にだけ形成されているため、底板部21dの前後方向の長さが前上板部21aと比べて短い。しかし、2枚の底板部21dが互いに重なっているため、機械的強度を低下させることなく、その強度を保つことができる。
【0025】
図3Aで示すように、端子前部21の前上板部21aには、前後方向に延びている凸部21gが形成されてもよい。これにより、前上板部21aの強度を向上させることができる。ハウジング30の端子収容室Sの内面は、端子収容室Sに挿入された端子前部21の前上板部21aと対向する上側面を有している。端子収容室Sの内面の上側面には、
図7Aで示すように、前後方向に沿った凹部30eが形成されてよい。凹部30eの右側と左側とには相対的に突出している凸部30fが形成されてよい。端子前部21が端子収容室Sに挿入されると、前上板部21aに形成されている突部21gが凹部30eの内側に配置される。そうすることで、上側と下側とが逆になった姿勢でケーブル端子20を端子収容室Sに差し込むことを防止できる。
【0026】
端子後部23は、後上板部23aの最後部から延びているケーブル保持部23b・23dを有してよい。ケーブル保持部23b・23dは、例えば、金属板を折り曲げることによって形成された部位である。ケーブル保持部23bは、後上板部23aの最後部の右側と左側とから延びている。ケーブル保持部23dはケーブル保持部23bの前方に形成され、後上板部23aの右側と左側とから延びている。最後部のケーブル保持部23bは、ケーブル29の外皮29aに圧着し、これを保持している。ケーブル29の外皮29aはケーブル29の端部において取り除かれており、前側のケーブル保持部23dはケーブル29の導電線と電気的に接続している。
【0027】
図3A及び
図3Cで示すように、後上板部23aの上面(Z1方向に向いた面)の高さは後上板部23aの延伸方向(前後方向)において一定であってよい。これとは異なり、ケーブル保持部23bで保持するケーブル29が、図示する例よりも太い場合、後上板部23aの後部の位置が
図3Cの二点鎖線で示すように、後上板部23aの前部の位置よりも高くなるように、後上板部23aは段差23fを有してもよい。そして、ケーブル保持部23bは、二点鎖線で示すように、より大きな高さ(上下方向での幅)を有してもよい。この場合、ケーブル端子20の後述する傾斜部22aの上部の位置は、後上板部23aの後部(段差23fの上縁)よりも高いのが望ましい。すなわち、ケーブル端子20の後述する傾斜部22aの上部の位置は、後上板部23aの後部を通る水平面よりも高いのが望ましい。こうすることで、傾斜部22aをリテーナ40の位置決めポスト41で前方に押すことができる。
【0028】
[連結部]
図3Aで示すように、ケーブル端子20は前上板部21aと後上板部23aとの間に位置している連結部22を有してよい。連結部22はその上部に傾斜部22aを有している。傾斜部22aは、その前端から後端に向かうに従ってケーブル端子20の中心線C1に近づくように、中心線C1に対して傾斜している。
【0029】
図3Cで示すように、後上板部23aは中心線C1に沿ってまっすぐに延びていてよい。すなわち、後上板部23aは中心線C1と平行であってよい。傾斜部22aの存在によって、後上板部23aの位置は前上板部21aよりも低くなる。すなわち、後上板部23aと中心線C1との距離は、前上板部21aと中心線C1の距離よりも小さくなる。
【0030】
図6Aで示すように、リテーナ40はポスト基部42を有してよい。位置決めポスト41はポスト基部42から前方に延びている。
図4Aで示すように、位置決めポスト41はケーブル端子20の傾斜部22aの後方に位置し、ケーブル端子20の後方への移動(すなわち、端子収容室Sからの抜け)を規制してよい。このように傾斜部22aをケーブル端子20に形成することによって、ケーブル端子20に対する位置決めポスト41の相対位置を低くできる。
【0031】
図3Cで示すように、端子後部23の上下方向での幅W2(ケーブル保持部23bの位置での高さ)は、端子前部21の上下方向での幅W1(底板部21dの位置での高さ)よりも小さくてよい。このように端子後部23の幅W2が端子前部21のW1よりも小さいので、ケーブル保持部23bの位置を端子前部21に対して下げることなく、ケーブル端子20に傾斜部22aを形成し、位置決めポスト41の位置を下げることができる。そのため、コネクタ10の高さを低減できる。すなわち、幅W1・W2の上述した関係と、ケーブル端子20に形成した傾斜部22aと、位置決めポスト41とによって、コネクタ10の高さを低減できる。
【0032】
図4Aで示すように、位置決めポスト41は、ポスト基部42から延びている第1延伸部41aと、第1延伸部41aから前方に延びている第2延伸部41bとを有してよい。第1延伸部41aはポスト基部42から後方へ向けて湾曲もしくは屈曲しながら下方に延びていてよい。第2延伸部41bは第1延伸部41aの下端から前方に直線的に延び、傾斜部22aの後方に位置している。第2延伸部41bの下面41cの全体が前上板部21aの上面21iよりも低い。これによって、第2延伸部41bの位置が低くなり、コネクタ10の高さを低減できる。第2延伸部41bと端子後部23の後上板部23aは平行に配置されてよい。
【0033】
なお、位置決めポスト41の第1延伸部41aは湾曲していなくてもよい。この場合、位置決めポスト41はその基部から直線的に前方に延びていてよい。そして、その直線的に延びている部分の下面が前上板部21aの上面21iよりも低くてよい。後述するようにコネクタ10においては第1延伸部41aの湾曲により第1延伸部41aの弾性変形を許容としている。少なくとも第1延伸部41aが弾性変形可能な構造であれば、第1延伸部41aはいかなるものであってもよく、屈曲状やコイル状のばね構造を有してもよいし、弾性材料で形成されてもよい。
【0034】
[貫通穴]
図3Aで示すように、傾斜部22aの一部または全部には、ケーブル端子20の材料である金属板を貫通する穴Haが形成されてよい。位置決めポスト41の前端41e(
図6参照)は穴Haの内縁にあたり、ケーブル端子20の後方への移動を規制してよい。より詳細には、位置決めポスト41の前端41eは穴Haの内縁の前側24aにあたって、ケーブル端子20を適正位置に挿入したり、ケーブル端子20の後方への移動を規制してよい。穴Haの内縁の前側24aが上述した「第1被ストッパ部」である。
【0035】
この構造によると、穴Haの内縁の前側24aに後方に向いた面(金属板の厚さに応じた高さの面)が形成される。また、位置決めポスト41の前端41e(
図6A参照)には前方に向いた面が形成される。そのため、位置決めポスト41がケーブル端子20を前方に押す力が、効率的にケーブル端子20に作用する。コネクタ10の例では、位置決めポスト41の前端41eは、位置決めポスト41の右部と左部とに比して前方に突出している。
【0036】
なお、
図3Dで示す例では、穴Haは傾斜部22aに形成され、この穴Haの内縁の前側24a(すなわち、第1被ストッパ部)は傾斜部22aと前上板部21aとの境に位置している。これとは異なり、穴Haは傾斜部22aと前上板部21aとにまたがって形成されてよい。すなわち、第1被ストッパ部24aは前上板部21aに位置してよい。
【0037】
ケーブル端子20の例では、穴Haの内縁の後側24bは、傾斜部22aと後上板部23aとの境に異している。これによって、位置決めポスト41を端子収容室Sに挿入し、位置決めポスト41の前端41eを穴Haの内縁の前側24aにあてるとき、位置決めポスト41の前端41eが穴Haの後側に衝突することを防ぐことができる。これとは異なり、穴Haの内縁の後側24bは、傾斜部22aと後上板部23aとの境よりも後方に位置してもよい。反対に、穴Haの内縁の後側24bは、傾斜部22aと後上板部23aとの境よりも前方に位置してもよい。
【0038】
穴Haはケーブル端子20の材料である金属板を貫通する穴でなく、底を有する凹部であってもよい。この場合でも、穴Haはその内縁の前側24a(第1被ストッパ部)を有し、この内縁の前側24aを位置決めポスト41の前端41eが押すことができる。
【0039】
貫通穴Haは傾斜部22aの一部にだけ形成されてよい。ケーブル端子20の例では、傾斜部22aは、貫通穴Haの右側と左側とに位置する、後述する連結肩部22cを有している。また、ケーブル端子20の例では、貫通穴Haの内縁の前側24a(第1被ストッパ部)は、傾斜部22aと前上板部21aとの境に異しているが、この境よりも後方に位置してもよい。また、ケーブル端子20の例では、貫通穴Haの内縁の後側24bは、傾斜部22aと後上板部23aとの境に異しているが、傾斜部22aと後上板部23aとの境よりも前方に位置してもよい。
【0040】
[傾斜部の側部]
図3A及び
図3Dで示すように、連結部22は、左右の側板部21bから後方に延びて後上板部23aに繋がる側部22bを有してよい。後上板部23aは中心線C1を取り囲むように湾曲しており、側部22bは後上板部23aの右部と左部とにそれぞれ接続していてよい。この側部22bによって、貫通穴Haが形成されている傾斜部22aの強度を増すことができる。
【0041】
また、
図3A及び
図3Dで示すように、端子前部21は、前上板部21aと側板部21bとの間に、湾曲している肩部21fを有している。傾斜部22aは、この肩部21fから後方に延びて端子後部23に接続している部分22cを有してよい。以下では、この部分22cを連結肩部と称する。連結肩部22cは、穴Haの内縁のうち右縁と右側の側部22bとの間の部分、及び穴Haの内縁のうち左縁と左側の側部22bとの間の部分である。連結肩部22cの存在により、左右方向での穴Haのサイズが抑えられ、連結部22の強度が確保される。また、連結肩部22cは、側部22bの上部から左右方向での中心に向かって湾曲している。この湾曲も、連結部22の強度を増すことに寄与する。
ケーブル端子20の例とは異なり、連結部22は連結肩部22cを有していなくてもよい。すなわち、貫通穴Haの内縁のうち右縁と左縁は、連結部22の側部22bに及んでいてもよい。
【0042】
さらに、側部22bも中心線C1に対して傾斜していてよい。詳細には、側部22bは、その前端から後端に向かって中心線C1に近づくように傾斜していてよい。すなわち、部分22cおよび側部22bを含む連結部22は、その前方から後方に向けて徐々に中心線C1に向かっている略ノズル状であって且つ一部(
図3Cにおいて下側部分)が切りかかれた略ノズル状の構成を有している。このような連結部22は絞り加工によって形成され得る。
【0043】
図3Cで示すように、端子後部23の右縁(右側の下縁)の前部23cと左縁(左側の下縁)の前部23cは連結部22の側部22dの下縁22eに接続している。端子後部23の左右の縁の前部23cは前方且つ下方に伸びている。これにより、連結部22の上下方向でのサイズを確保し、連結部22の強度を確保できる。また、連結部22の下縁22eの前部は湾曲しながら下がり、側板部21bの後縁に接続している。これにより、連結部22と側板部21bとの接続強度を増すことができる。
【0044】
[第2被ストッパ部]
前述したように、
図3Bで示すように、ケーブル端子20は、側板部21bの下端からからそれぞれ延びており中心線C1を挟んで前上板部21aとは反対側に位置している底板部21dを有してよい。コネクタ10の例では、端子前部21は、左右の側板部21bから延びており互いに重なり合っている2枚の底板部21dを有してもよい。これとは異なり、一方の側板部21bだけに底板部21dが形成されてもよい。この底板部21dは反対側の側板部21bに接続してもよい。
【0045】
ハウジング30のロックアーム31(
図4A参照)は、底板部21dの後方に位置するストッパ部31aを有している。ケーブル端子20が端子収容室Sにおける適正位置にあるときに、ストッパ部31aは底板部21dの後縁(第2被ストッパ部21e)の後方に位置し、ケーブル端子20の後方への移動を規制する。
【0046】
ロックアーム31は、その基部31bを中心として上下動可能である。ケーブル端子20がハウジング30の後側から前側に向かって挿入される過程で、ロックアーム31は、
図4Bで示すように、ケーブル端子20の底板部21dによって下方に押し下げられる。そしてその後、底板部21dがロックアーム31の凸部を乗り越え、ケーブル端子20が、
図4Aで示す適正位置に到達すると、ロックアーム31はその弾性力によって初期位置に復帰する。その結果、ストッパ部31aは底板部21dの後縁(第2被ストッパ部21e)の後方に位置することとなる。
【0047】
図3Cで示すように、傾斜部22は、端子前部21の後縁に接続している。第2被ストッパ部21eが形成されている底板部21dは端子前部21の最後部に形成されている。このため、傾斜部22に形成した穴Haの前側24a(第1被ストッパ部)の前後方向での位置と、底板部21dの後縁21e(第2被ストッパ部)の前後方向での位置は、実質的に一致していてもよい。
【0048】
[リテーナ]
リテーナ40について詳説する。リテーナ40は、複数の位置決めポスト41と、ポスト基部42とを有している。ポスト基部42は、
図6Aで示すように、リテーナ40の左右の壁部44aに掛け渡されている。ポスト基部42には、ケーブル端子20と同数の位置決めポスト41が接続されている。
【0049】
位置決めポスト41は前後方向に動くように弾性変形可能であってよい。例えば、位置決めポスト41は、
図4Aで示すように、ポスト基部42に接続している第1延伸部41aと、第1延伸部41aから前方に延びている第2延伸部41bとを有してよい。第1延伸部41aがポスト基部42を中心として動くことによって、第2延伸部41bの位置が前後方向で変化し得る。位置決めポスト41は、前後方向だけでなく左右方向に動くように弾性変形可能であってよい。リテーナ40の例では、第1延伸部41aがポスト基部42を中心として動くことによって、第2延伸部41bの位置が左右方向で変化し得る。
【0050】
リテーナ40によれば、部材の寸法公差を位置決めポスト41の弾性変形によって吸収できる。その結果、リテーナ40をハウジング30に適切に装着し、またケーブル端子20を適正位置に確実に配置できる。従来のコネクタは、各部品の寸法公差や各部品同士のクリアランス値の累積値の影響により、位置決めポスト41がケーブル端子20の第1被ストッパ部24aを押し、ハウジング30の最前部までケーブル端子20を挿入したときに、リテーナ40の係合部43がハウジング30の被係合部34に係合しないときがある。しかし、本開示のコネクタ10では、ハウジング30の最前部までケーブル端子20が挿入され、ハウジング30の最前部に形成され、端子収容室Sに露出する前ストッパ部35にケーブル端子20の前上板部21aの前端21hが衝突したときであっても、リテーナ40の第1延伸部41aの弾性変形によって第2延伸部41bが後方に動く。その結果、リテーナ40の係合部43をハウジング30の被係合部34に係合させることができる。このように、ケーブル端子20が確実にハウジング30の最前部(適正位置)まで挿入されるので、例えば第2被ストッパ部21e(
図4A参照)とロックアーム31のストッパ部31aとの間のクリアランスを低減でき、コネクタの小型化が可能となる。
【0051】
位置決めポスト41は、ポスト基部42と、位置決めポスト41の前端41eとの間に少なくとも1つの湾曲部又は屈曲部を有しているとよい。そうすることで、位置決めポスト41の弾性変形が可能となる。コネクタ10の例では、ポスト基部42に接続されている第1延伸部41aが、ポスト基部42の後側から、湾曲しながら下方に延びている。第2延伸部41bは第1延伸部41aの下端から前方に延びている。第2延伸部41bは例えば直線に沿って形成される。第2延伸部41bとポスト基部42は、第2延伸部41bの延伸方向に対して直交する方向において見たときに、互いに重なっている。より具体的には、第2延伸部41bとポスト基部42は、平面視において重なっている。
【0052】
図4Aで示すように、第1延伸部41a(湾曲部)の厚さW8は、ポスト基部42の厚さW6よりも小さい。これにより、ポスト基部42の変形が抑えられている一方で、第1延伸部41aの変形が許容され易くなる。リテーナ40の例では、第2延伸部41aの厚さと第1延伸部41aの厚さは実質的に同じであってよい。
【0053】
また、
図4Aで示すように、ポスト基部42の前後方向での幅W7は、上下方向での厚さW6よりも大きい。これにより、位置決めポスト41の前端41eが第1被ストッパ部24a(穴Haの前側の縁)に当たったときに、ポスト基部42が後方に変位することを抑えることができる。
【0054】
図4Aで示すように、ポスト基部42の上面42aの位置は、ハウジング30の最上部の高さよりも低い。コネクタ10の例では、ポスト基部42の上面42aの位置はロックアーム33の最上部33aよりも低い。ポスト基部42のこの配置によって、ポスト基部42の存在がコネクタ10の高さを増す部位となることを防ぐことができる。
【0055】
図4Aで示すように、第1延伸部41a(湾曲部)は、ポスト基部42の後側から伸びており、第1延伸部41aの最後部41fはポスト基部42の後端42bよりも後方に位置している。リテーナ40は、第1延伸部41aに対して右方又は左方に位置し且つ第1延伸部41aの最後部41fよりもさらに後方に位置している部分を有している。これによると、第1延伸部41a(湾曲部)の変形を許容するためのスペースをこの部分によって確保できる。コネクタ10の例では、
図2で示すように、リテーナ40は2本の位置決めポスト41の右側と左側とに位置している側壁部45を有している。
図4Aで示すように、この側壁部45の後面45aは第1延伸部41aの最後部41fよりもさらに後方に位置している。また、側壁部45は側面視において第1延伸部41aの最後部41fと重なっている。すなわち、側壁部45の後面45aの上端は第1延伸部41aの最後部41fよりも上方に位置し、側壁部45の後面45aの下端は第1延伸部41aの最後部41fよりも下方に位置している。これによると、第1延伸部41a(湾曲部)の変形を許容するためのスペースを、側壁部45の後面45aによって確保できる。
【0056】
なお、ここで説明する例とは異なり、リテーナ40は、第1延伸部41aに対して上方又は下方に位置し且つ第1延伸部41aの最後部41fよりもさらに後方に位置している部分を有してもよい。この場合でも、第1延伸部41a(湾曲部)の変形を許容するためのスペースをこの部分によって確保できる。
【0057】
リテーナ40は、上述したように、その左右の側部に係合部43を有してよい。係合部43は、
図6Aで示すように、例えばハウジング30の側面に向かって延びている、側面視において略U字形状の部位である。係合部43は、側壁部45から前方に伸びている上延伸部43bと下延伸部43cとを有している。また、係合部43は、上延伸部43bと下延伸部43cとの先端に形成されそれらを繋ぐ前部43dを有している。位置決めポスト41は、係合部43の前部43dの前面を超えて前方に伸びている。
図6Bで示すように、リテーナ40の側面視において、位置決めポスト41は係合部43の上面(上延伸部43bの上面)と係合部43の下面(下延伸部43cの下面)との間に位置している。より詳細には、位置決めポスト41は、リテーナ40の側面視において、前部43dの後面、すなわち被係合部34の前面と対向する対向面43aと重なっている。位置決めポスト41と係合部43のこの位置関係によると、リテーナ40の係合部43とハウジング30の被係合部34との間の係合力(リテーナ40を前に引っ張る力)が位置決めポスト41を通して第1ストッパ部24aに伝わるときに、リテーナ40に対してモーメントが発生しにくくなる。
【0058】
図6Aで示すように、第2延伸部41bには前方に向かって延びている凸部41dが形成されてよい。言い換えれば、第2延伸部41bの上面の右部と左部が、中央に比して下がっていてよい。これによって、端子収容室Sの内面に形成されている凸部30f(
図7A参照)と第2延伸部41bとの干渉を避けることができる。また、凸部41dによって位置決めポスト41の強度を増すことができる。
【0059】
上述したように、第1延伸部41aはポスト基部42の後側に接続している(
図4A参照)。こうすることによって、ポスト基部42とハウジング30の後面30cとの距離を近づけることができる。その結果、ハウジング30とリテーナ40との相対位置の変化(例えば、左右方向での位置変化)を低減できる。
【0060】
なお、位置決めポスト41の形状はコネクタ10の例に限られない。例えば、第1延伸部41aは斜め下方に直線的に延びていてもよい。そして、第2延伸部41bは第1延伸部41aの下端から前方に延びていてもよい。弾性変形を可能とする湾曲部がポスト基部42の前方に形成されてもよい。
【0061】
[位置決めポストの長さと初期位置]
ハウジング30は、
図4Aで示すように、ケーブル端子20の前方への移動を規制する前ストッパ部35を有している。前ストッパ部35は、例えば、端子収容室Sの前端に形成される壁であってよい。ケーブル端子20が端子収容室Sの最前部まで挿入されると、ケーブル端子20の前上板部21aの前端21hが前ストッパ部35にあたる。
【0062】
リテーナ40がハウジング30に装着されている状態(以下では、リテーナ装着状態と称する)では、位置決めポスト41の前端41eは第1被ストッパ部24a(すなわち、穴Haの内縁の前側)にあたっている。つまり、位置決めポスト41の長さと初期位置は、リテーナ40、ケーブル端子20、ハウジング30の寸法公差に関わらず、リテーナ装着状態においてポスト41の前端41eが第1被ストッパ部24aに接触するように設定されている。こうすることによって、ケーブル端子20を確実に適正位置に配置でき、リテーナ40をハウジング30に装着できる。リテーナ装着状態とは、前ストッパ部35によってケーブル端子20の前方への移動が規制され、リテーナ40の係合部43がハウジング30の被係合部34に係合している状態を意味する。リテーナ装着状態では、係合部43と被係合部34の対向面43a・34a(
図5参照)との間に前後方向のクリアランスがない。なお、位置決めポスト41の長さと初期位置は、リテーナ40等の寸法公差に関わらず、リテーナ装着状態においてポスト41の前端41eが第1被ストッパ部24aを前方に押すように設定されてもよい。すなわち、リテーナ装着状態において、ポスト41の前端41eが第1被ストッパ部24aに接触するとともに、位置決めポスト41は後方に弾性変形しているのが望ましい。そして、位置決めポスト41の弾性力によって、ポスト41の前端41eが第1被ストッパ部24aを前方に押しているのが望ましい。
【0063】
上述したように、リテーナ40は複数の位置決めポスト41を有している。位置決めポスト41の長さと初期位置は、リテーナ装着状態において全ての位置決めポスト41の前端41eがケーブル端子20の第1被ストッパ部24aにあたるように設定されている。
【0064】
リテーナ40は、位置決めポスト41の前端41eを除いて、前方に向いており且つリテーナ装着状態においてハウジング30に接触する面を有していない。例えば、
図4Aで示すように、リテーナ40の前面(具体的には、ポスト基部42の前面42a)はハウジング30の後面30cから離れており、両者の間にクリアランスが確保されている。こうすることによって、リテーナ40の前方への移動は、位置決めポスト41の前端41eが接している第1被ストッパ部24aだけによって規制される。その結果、ケーブル端子20が前ストッパ部35に当たるまでケーブル端子20を位置決めポスト41によって前方に押すことができるので、より確実にケーブル端子20を適正位置に配置できる。
【0065】
[第2被ストッパ部]
図4Aで示すように、第2被ストッパ部21e(底板部21dの後縁)とロックアーム31のストッパ部31aとの間にクリアランスが確保されている。コネクタ10の例においては、位置決めポスト41が弾性変形可能であるために、第2被ストッパ部21eとストッパ部31aとの間のクリアランスは、小さく設定できる。クリアランスは、例えば2枚の底板部21dの厚さと同じ、或いは2枚の底板部21dの厚さより小さくてよい。
【0066】
上述したように、ケーブル端子20には傾斜部22が形成されているため、端子後部23の上面の高さは、前上板部21aの上面の高さよりも低い。位置決めポスト41の第2延伸部41bは端子後部23の上面に沿って直線的に延びている。第2延伸部41bの全体が第1被ストッパ部24aの後方に位置している。リテーナ装着状態において、ポスト基部42はハウジング30より後方に位置し、第2延伸部41bの後部の上方に位置している。
【0067】
図8は変形例にかかるコネクタ組立体を示す図である。このコネクタ組立体は、第1コネクタ10Aと第2コネクタ10Bとを有している。この図の例では、上述したコネクタ1の構造、具体的には、位置決めポスト41や、ケーブル端子20の傾斜部22a、穴Haなどが2つのコネクタ10A・10Bの双方に適用されている。以下では、コネクタ10A・10Bと上述したコネクタ10との相違点を中心にして説明する。説明のない事項はこれら2つのコネクタ10A・10Bにおいても、コネクタ10の構造が適用されてよい。
【0068】
第1コネクタ10Aは、ハウジング130Aと、複数のケーブル端子20と、リテーナ140Aとを有している。
図8で示す例において、第1コネクタ10Aは、6つのケーブル端子20を有している。ハウジング130Aには、上述したハウジング30と同様に、ケーブル端子20が挿入される複数の端子収容室Sが形成されている。ハウジング130Aの構造は、端子収容室Sの数を除いて、上述したハウジング30と同様であってよい。また、リテーナ140Aは、上述したリテーナ40と同様に、複数の位置決めポスト41を有している。リテーナ140Aの構造も、位置決めポスト41の数を除いて、上述したリテーナ40と同様であってよい。
【0069】
第2コネクタ10Bは、ハウジング130Bと、複数のケーブル端子120Bと、リテーナ140Bとを有している。第2コネクタ10Bは、第1コネクタ10Aのケーブル端子20の接触部21c(
図3A参照)の内側にそれぞれ挿入される6つのケーブル端子120Bを有している。ハウジング130Bには、ケーブル端子120Bが挿入される複数の端子収容室が形成されている。また、ハウジング130Bは第1コネクタ10Aのハウジング130Aが内側に嵌まる、第1コネクタ10A側に開いた箱状である嵌合部130aを有している。リテーナ140Bは、上述したリテーナ40・140Aと同様に、複数の位置決めポスト41を有している。一方、ケーブル端子120Bは、この位置決めポスト41の端部が当たる内縁が形成された穴が形成されている。
【0070】
[まとめ]
以上説明したように、本開示で提案するコネクタ10・10A・10Bにおいて、ケーブル端子20・120Bは、前上板部21aと後上板部23aとの間に形成され後側に向かうに従って中心線C1に近づくように傾斜している傾斜部22を有している。リテーナ40は、傾斜部22の後方に位置しケーブル端子20にあたりケーブル端子20の後方への移動を規制している位置決めポスト41を有している。この構造によれば、位置決めポスト41によってハウジング30とケーブル端子20の半嵌合を防止できる。また、ケーブル端子20に対する位置決めポスト41の相対位置を低くできる。なお、傾斜部22aを有するケーブル端子20・120Bの構造は、弾性変形可能でない位置決めポストが形成されたリテーナを有するコネクタに適用されてもよい。
【0071】
本開示で提案するケーブル端子20・120Bは、前上板部21aと後上板部23aとの間に形成され後側に向かうに従って中心線C1に近づくように傾斜している傾斜部22を有している。ケーブル端子20の材料である金属板を貫通する穴Haの内縁の少なくとも一部が傾斜部22に位置している。この構造によれば、傾斜部22にあたる位置決めポスト41の高さを下げることができる。また、位置決めポスト41の前端41eを穴Haの内面に当てることで、位置決めポスト41の力がケーブル端子20に効率的に伝わる。
【0072】
本開示で提案するコネクタ10・10A・10Bにおいて、位置決めポスト41は、前後方向に動くように弾性変形可能である。このコネクタによれば、部材の寸法公差を位置決めポスト41の弾性変形によって吸収できる。その結果、コネクタ10の小型化のために部材間のクリアランスを縮小した場合であっても、ケーブル端子20を適正位置に確実に配置しつつ、リテーナ40をハウジング30に適切に装着できる。なお、位置決めポスト41が弾性変形可能である構造は、ケーブル端子20に傾斜部22が形成されていないコネクタに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10・10A・10B コネクタ、20・120B ケーブル端子、21 端子前部、21a 前上板部、21b 側板部、21c 接触部、21d 底板部、21e 第2被ストッパ部(底板部の後縁)、21f 肩部、21g 凸部、21h 前端、22 傾斜部、22b 側部、23 端子後部、23a 後上板部、23b ケーブル保持部、24a 第1被ストッパ部(貫通穴の内縁の前側)、29 ケーブル、30・130A・130B ハウジング、30c 後面、30e 凹部、30f 凸部、31 ロックアーム、31a ストッパ部、33 ロックレバー、34 被係合部、35 前ストッパ部、40・140A・140B リテーナ、41 位置決めポスト、41a 第1延伸部、41b 第2延伸部、41c 下面、42 ポスト基部、42a 前面、43 係合部、43a 対向面、44a 壁部、90 相手コネクタ、91 端子、91a 接続部、92 ハウジング。