(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】掘削情報処理装置、作業機械、掘削支援装置および掘削情報処理方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240926BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/20 Q
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2020134559
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥脇 立太
(72)【発明者】
【氏名】畠 一尋
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/189260(WO,A1)
【文献】特開2020-020153(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199143(WO,A1)
【文献】特開2019-039207(JP,A)
【文献】特開2019-039280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0167971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削対象物を複数点の位置情報で示す対象物位置情報を取得する取得部と、
バケットの位置と姿勢を示すバケット位置姿勢情報と、前記対象物位置情報とに基づいて、逐次、その時点で前記バケットを抱え込んだ場合に前記バケットによって獲得される掘削土量を推定して出力する掘削土量推定部と、
を備え、
前記掘削土量推定部は、前記バケット内部に溜め込まれている土量であるバケット内土量を推定するとともに、前記バケットが将来掬い取ると予測される土量であるバケット外土量を推定し、前記バケット内土量と前記バケット外土量を合計して前記掘削土量を算出する、
掘削情報処理装置。
【請求項2】
前記掘削土量が目標掘削土量に到達したか否かの判定結果を出力する判定部を、さらに備える
請求項1に記載の掘削情報処理装置。
【請求項3】
前記掘削土量推定部は、前記対象物位置情報から、前記バケットの幅内で、バケットピンを中心として前記バケットを回転させた場合にバケット刃先が描く円の内側に位置する前記点を抽出し、抽出した前記点の位置情報に基づいて前記掘削土量を推定する
請求項1または2に記載の掘削情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の掘削情報処理装置と、
前記バケットと、
を備える作業機械。
【請求項5】
請求項2に記載の掘削情報処理装置と、
前記バケットと、
前記掘削土量が前記目標掘削土量に到達したとき、前記バケットを所定の高さまで移動する作業機械制御装置と、
を備える作業機械。
【請求項6】
掘削対象物を複数点の位置情報で示す対象物位置情報を取得する取得部と、
バケットの位置と姿勢を示すバケット位置姿勢情報と、前記対象物位置情報とに基づいて、逐次、その時点で前記バケットを抱え込んだ場合に前記バケットによって獲得される掘削土量を推定する掘削土量推定部と、
前記掘削土量を表示する表示部と、
を備え、
前記掘削土量推定部は、前記バケット内部に溜め込まれている土量であるバケット内土量を推定するとともに、前記バケットが将来掬い取ると予測される土量であるバケット外土量を推定し、前記バケット内土量と前記バケット外土量を合計して前記掘削土量を算出する、
掘削支援装置。
【請求項7】
掘削対象物を複数点の位置情報で示す対象物位置情報を取得するステップと、
バケットの位置と姿勢を示すバケット位置姿勢情報と、前記対象物位置情報とに基づいて、逐次、その時点で前記バケットを抱え込んだ場合に前記バケットによって獲得される掘削土量を推定して出力するステップと、
前記掘削土量を推定するステップでは、前記バケット内部に溜め込まれている土量であるバケット内土量を推定するとともに、前記バケットが将来掬い取ると予測される土量であるバケット外土量を推定し、前記バケット内土量と前記バケット外土量を合計して前記掘削土量を算出する、
を含む掘削情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削情報処理装置、作業機械、掘削支援装置および掘削情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている掘削装置では、ステレオカメラで撮影した画像からバケットと地面と掘削物とが認識され、認識の結果に基づいて掘削地点が決定される。掘削地点は、掘削動作時にバケットを掘削物に最初に接触させる位置であり、この掘削装置では、掘削量(掘削土量)が多く、地面を削らず、掘削物が崩落しないように決定される。そして、この掘削装置では、この掘削地点からバケットを掬い上げることで掘削が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている掘削装置では、掘削土量が多くなるように決定された掘削地点からバケットを掬い上げることで掘削物が掘削される。特許文献1に記載されている掘削装置では、例えば、掘削土量を任意の値に調整することが困難であるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、掘削土量を任意の値に容易に調整することができる掘削情報処理装置、作業機械、掘削支援装置および掘削情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、掘削対象物を複数点の位置情報で示す対象物位置情報を取得する取得部と、前記バケットの位置と姿勢を示すバケット位置姿勢情報と、前記対象物位置情報とに基づいて、逐次、その時点で前記バケットを抱え込んだ場合に前記バケットによって獲得される掘削土量を推定して出力する掘削土量推定部と、を備える掘削情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の掘削情報処理装置、作業機械、掘削支援装置および掘削情報処理方法によれば、掘削土量を任意の値に容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す作業機位置姿勢計測部30、作業機制御装置110および掘削情報処理装置120の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す油圧ショベル1を簡略化して示す側面図である。
【
図4】
図2に示す作業機械制御装置110と掘削情報処置装置120の動作例を示すシステムフロー図である。
【
図5】
図2に示す掘削土量推定部122の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】
図1に示す3次元位置情報計測部19が計測した点群データ400の例を示す模式図である。
【
図7】
図1に示すバケット8を模式的に示す側面図である。
【
図8】
図1に示す3次元位置情報計測部19が計測した点群データ400の例を模式的に示す側面図である。
【
図9】本実施形態における点群データ400の例を示す模式図である。
【
図10】
図1に示す3次元位置情報計測部19が計測した点群データ400の例を模式的に示す側面図である。
【
図11】
図1に示す3次元位置情報計測部19が計測した点群データ400の例を模式的に示す側面図である。
【
図12】本実施形態における掘削土量の時間推移の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る作業機械としての油圧ショベル1の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す作業機位置姿勢計測部30、作業機制御装置110および掘削情報処理装置120の構成例を示すブロック図である。
図3は、
図1に示す油圧ショベル1を簡略化して示す側面図である。
【0011】
図1に示す油圧ショベル1は、本体部としての車両本体1Bと作業機2とを有する。車両本体1Bは、旋回体である上部旋回体3と走行体としての走行装置5とを有する。上部旋回体3は、機関室3EGの内部に、動力発生装置であるエンジンおよび油圧ポンプ等の装置を収容している。本実施形態において、油圧ショベル1は、動力発生装置であるエンジンに、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関を用いることができる。ただし、動力発生装置は内燃機関に限定されない。油圧ショベル1の動力発生装置は、例えば、内燃機関と発電電動機と蓄電装置とを組み合わせた、いわゆるハイブリッド方式の装置であってもよい。また、油圧ショベル1の動力発生装置は、内燃機関を有さず、蓄電装置と発電電動機とを組み合わせた装置等であってもよい。
【0012】
上部旋回体3は、運転室4を有する。油圧ショベル1のオペレータは、この運転室4に搭乗して油圧ショベル1を操縦する。すなわち、油圧ショベル1のオペレータは、運転室4内において、作業機2を動作させたり、上部旋回体3を旋回させたり、走行装置5によって油圧ショベル1を走行させたりする。運転室4には、各種情報を表示する表示装置40、図示していない、オペレータが操作する作業機2の操縦装置、走行装置5の操縦装置等が設置されている。
図1に示す例において、運転室4は、上部旋回体3の機関室3EGが配置されている側とは反対の側に設置されている。ただし、運転室4と機関室3EGの位置関係はこの例に限定されない。上部旋回体3の上方には、手すり9が取り付けられている。
【0013】
走行装置5は、旋回軸RZを中心として走行装置5に対して旋回可能に上部旋回体3を搭載する。走行装置5は、履帯5aおよび5bを有している。走行装置5は、左右に設けられた油圧モータ5cの一方または両方が駆動する。走行装置5の履帯5aおよび5bが回転することにより、油圧ショベル1を走行させる。作業機2は、上部旋回体3の運転室4の側方側に取り付けられている。走行装置5は、上部旋回体3の旋回角度を計測するセンサを備える。
【0014】
なお、油圧ショベル1は、履帯5aおよび5bの代わりにタイヤを備え、エンジンの駆動力を、トランスミッションを介してタイヤへ伝達して走行が可能な走行装置を備えたものであってもよい。このような形態の油圧ショベル1としては、例えば、ホイール式油圧ショベルがある。
【0015】
上部旋回体3は、作業機2および運転室4が配置されている側が前であり、機関室3EGが配置されている側が後である。上部旋回体3の前後方向がy方向である。前に向かって左側が上部旋回体3の左であり、前に向かって右側が上部旋回体3の右である。上部旋回体3の左右方向は、幅方向またはx方向ともいう。油圧ショベル1または車両本体1Bは、上部旋回体3を基準として走行装置5側が下であり、走行装置5を基準として上部旋回体3側が上である。上部旋回体3の上下方向がz方向である。油圧ショベル1が水平面に設置されている場合、下は鉛直方向、すなわち重力の作用方向側であり、上は鉛直方向とは反対側である。このxyz座標系は、油圧ショベル1(上部旋回体3)を基準とする座標系であり、本実施形態ではローカル座標系という。なお、
図1および他の図に示すx、yおよびzの矢印は、ローカル座標系における各方向を示すものであるが、原点の位置を特定するものではない。
【0016】
作業機2は、ブーム6と、アーム7と、作業具であるバケット8と、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とを有する。ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して上部旋回体3の前部に回動可能に取り付けられている。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に回動可能に取り付けられている。アーム7の先端部には、バケットピン15を介してバケット8が取り付けられている。バケット8は、バケットピン15を中心として回動する。バケット8は、バケットピン15とは反対側に複数の刃8Bが取り付けられている。刃先8Tは、刃8Bの先端である。また、本実施形態では、バケット上縁8Eによる擦り切り面をバケット面8Sという。なお、バケット8は、複数の刃8Bを有していなくてもよい。つまり、
図1に示されるような刃8Bを有しておらず、刃先が鋼板によってストレート形状に形成されたようなバケットであってもよい。
【0017】
図1に示されるブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とは、それぞれ油圧ポンプから吐出される作動油の圧力によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10はブーム6を駆動して、昇降させる。アームシリンダ11は、アーム7を駆動して、アームピン14の周りを回動させる。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動して、バケットピン15の周りを回動させる。
【0018】
また、作業機2は、作業機位置姿勢計測部30を備える。作業機位置姿勢計測部30は、
図2に示すように、第1ストロークセンサ31と、第2ストロークセンサ32と、第3ストロークセンサ33と、作業機位置姿勢情報生成部34とを備えている。第1ストロークセンサ31はブームシリンダ10に、第2ストロークセンサ32はアームシリンダ11に、第3ストロークセンサ33はバケットシリンダ12に、それぞれ設けられている。第1ストロークセンサ31は、ブームシリンダ10の長さであるブームシリンダ長を検出して作業機位置姿勢情報生成部34へ出力する。第2ストロークセンサ32は、アームシリンダ11の長さであるアームシリンダ長を検出して作業機位置姿勢情報生成部34へ出力する。第3ストロークセンサは、バケットシリンダ12の長さであるバケットシリンダ長を検出して作業機位置姿勢情報生成部34へ出力する。
【0019】
ブームシリンダ長、アームシリンダ長及びバケットシリンダ長が決定されれば、作業機2の姿勢が決定される。なお、第1ストロークセンサ31、第2ストロークセンサ32および第3ストロークセンサ33は、角度検出器等であってもよい。
【0020】
作業機位置姿勢情報生成部34は、第1ストロークセンサ31が検出したブームシリンダ長から、ローカル座標系における水平面と直交する方向(z軸方向)に対するブーム6の傾斜角を算出する。作業機位置姿勢情報生成部34は、また、第2ストロークセンサ32が検出したアームシリンダ長から、ブーム6に対するアーム7の傾斜角を算出する。作業機位置姿勢情報生成部34は、また、第3ストロークセンサ33が検出したバケットシリンダ長から、アーム7に対するバケット8の傾斜角を算出する。また、作業機位置姿勢情報生成部34は、作業機2の3次元形状情報(寸法情報)と、ブーム6、アーム7およびバケット8の各傾斜角とに基づいて、作業機2の姿勢および位置をローカル座標系において示す情報である作業機位置姿勢情報を生成して出力する。作業機位置姿勢情報は、バケット8の位置と角度(姿勢)を示す情報を含む。
【0021】
上部旋回体3の上部には、アンテナ21および22が取り付けられている。アンテナ21および22は、油圧ショベル1の現在位置を検出するために用いられる。アンテナ21および22は、例えば作業機制御装置110(またはその周辺回路)に接続されている。作業機制御装置110(またはその周辺回路)は、アンテナ21および22を用いて、RTK-GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite Systems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう)による電波を受信し、油圧ショベル1の現在位置を検出する。アンテナ21および22が受信したGNSS電波に応じた信号は、作業機制御装置110に入力され、グローバル座標系におけるアンテナ21および22の設置位置が算出される。全地球航法衛星システムの一例としては、GPS(Global Positioning System)が挙げられるが、全地球航法衛星システムは、これに限定されるものではない。
【0022】
アンテナ21および22は、
図1に示されるように、上部旋回体3の上であって、油圧ショベル1の左右方向、すなわち幅方向に離れた両端位置に設置されることが好ましい。本実施形態において、アンテナ21および22は、上部旋回体3の幅方向両側にそれぞれ取り付けられた手すり9に取り付けられる。アンテナ21および22が上部旋回体3に取り付けられる位置は手すり9に限定されるものではないが、アンテナ21および22は、可能な限り離れた位置に設置される方が、油圧ショベル1の現在位置の検出精度は向上するので好ましい。また、アンテナ21および22は、オペレータの視界を極力妨げない位置に設置されることが好ましい。
【0023】
また、油圧ショベル1は、3次元位置情報計測部19を備える。3次元位置情報計測部19は、例えば運転室4の上方に設置され、
図3に示すように、バケット8と、土砂、土石等の掘削対象物300とを含む計測範囲SA内に存在する物体(対象物)の3次元位置を複数点(複数の計測点)で計測し、計測点それぞれの3次元位置を点群データに変換し、その点群データを対象物位置情報として出力する。ここで3次元位置情報計測部19は、各計測点の3次元位置を例えばローカル座標系のx、y、z座標で示す点群データを、対象物位置情報として出力する。なお、本実施形態において点群データと対象物位置情報は同義であるとする。ただし、対象物位置情報は、点群データに限らず、例えばソリッドモデル等の3次元モデルを示す情報であってもよい。この点群データは、掘削前後の掘削対象物300の形状(地形)を表す情報を含むとともに、掘削中のバケット8内外の掘削対象物300の形状を表す情報を含む。3次元位置情報計測部19は、例えば、三次元レーザーレンジファインダ、三次元レーザースキャナ、三次元距離センサ、ステレオカメラ等を用いて構成することができる。三次元レーザーレンジファインダ等は、LiDAR(Light Detection and Ranging;ライダー)等とも呼ばれ、一定の範囲にわたる複数の測定方向(x、y、z方向)に対して、測定方向を順次走査させながらパルス状に発光するレーザ光を照射し、例えば反射した散乱光が戻ってくるまでの時間と照射方向に基づき距離と向きとを計測する。本実施形態では、3次元位置情報計測部19がLiDARを用いて構成されているものとする。この場合、3次元位置情報計測部19は、一走査周期毎に各計測点(各反射点)の測定結果を示す点群データを順次、記憶および更新して、対象物位置情報として出力する。対象物位置情報は、掘削対象物300を複数点の位置情報で示す情報である。この対象物位置情報は、例えば、複数の計測点の各座標情報によって各計測点の各位置を示すとともに、隣接する各計測点を結ぶ線や面によって複数の計測点の形状を示す。
図6は、本実施形態の3次元位置情報計測部19が計測した点群データ400の例を示す。点群データ400は、複数の計測点401の3次元位置情報を含む。また、点群データ400は、ブーム6、アーム7、バケット8および掘削対象物300に対応する複数の計測点401の3次元位置情報を含む。なお、3次元位置情報計測部19が出力する点群データは、各計測点の三次元座標値を示す点群データに限らず、各計測点までの距離と向きを示す点群データであってもよい。なお、3次元位置情報計測部19をステレオカメラを用いて構成する場合、例えば、画像認識された複数の所定の特徴点を計測点401とすることができる。
【0024】
また、
図1に示す油圧ショベル1は、
図1および
図2に示す、作業機制御装置110と、掘削情報処理装置(掘削支援装置)120とを備える。作業機制御装置110は、作業機2のブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを制御して、例えばバケット8の位置と姿勢を制御する。本実施形態において、作業機制御装置110は、所定の操縦装置を用いたオペレータの指示に従って手動でバケット8の位置と姿勢を制御したり、予め設定された位置や軌跡に基づきバケット8の位置と姿勢を自動で制御したりする。また、本実施形態において、作業機制御装置110は、掘削作業を自動で制御する機能を有する。掘削作業の自動制御は、例えば、次のような複数の制御の組み合わせで構成することができる。すなわち、掘削作業の自動制御は、例えば、バケット8の掘削開始位置への移動制御、掘削対象物300をバケット8で掘り取る動作の制御である掘削制御(
図3)、掘削対象物300をバケット8で抱え込む動作の制御である抱込制御(
図3)、バケット8の放土位置(あるいは積み込み位置)への移動制御、および、放土制御(積込制御)から構成することができる。本実施形態の作業機制御装置110は、これらの制御のうち、少なくとも、掘削制御と、抱込制御と、掘削制御から抱込制御への切り替え制御とを自動で行う。
【0025】
図2に示す作業機制御装置110は、例えば、マイクロコンピュータ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のコンピュータ、または、コンピュータとその周辺回路あるいは周辺装置等を用いて構成することができる。そして、作業機制御装置110は、コンピュータ、周辺回路、周辺装置等のハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、位置姿勢情報取得部111、掘削制御部112、および抱込制御部113を少なくとも備える。
【0026】
位置姿勢情報取得部111は、作業機位置姿勢計測部30から、作業機位置姿勢情報生成部34が生成して出力した作業機位置姿勢情報を、例えば所定の周期で繰り返し取得する。また、位置姿勢情報取得部111は、取得した作業機位置姿勢情報を、掘削情報処理装置120へ出力する。
【0027】
掘削制御部112は、位置姿勢情報取得部111が取得した作業機位置姿勢情報に基づき、例えばバケット8の刃先8Tの軌跡が、バケット8で掘削対象物300を掘り取る動作において目標とする軌跡に一致するようにバケット8の位置と姿勢を制御する。掘り取る動作において目標とする軌跡は、例えば、掘削土量の目標値や掘削形状の目標値と地形形状等に基づいて、掘削制御部112または図示していない他の制御部で、決定することができる。また、掘削制御部112は、掘削情報処理装置120が出力した抱込判定情報に基づいて、掘削制御から抱込制御への切り替え制御を行う。
【0028】
抱込制御部113は、掘削制御部112からの指示に応じて、例えばバケット8の刃先8Tの軌跡が、バケット8で掘削対象物300を抱え込む動作において目標とする軌跡に一致するようにバケット8の位置と姿勢を制御する。抱え込む動作において目標とする軌跡は、例えば、バケット8が掘削対象物300をさらに掘り取らないようにして、バケット面8Sが鉛直方向と直交する姿勢でかつ所定の高さまで移動するような軌跡とすることができる。
【0029】
また、掘削情報処理装置120は、作業機制御装置110と同様に単体として、または、作業機制御装置110もしくは油圧ショベル1の他の制御装置と一体として、例えば、マイクロコンピュータ、FPGA等のコンピュータ、または、コンピュータとその周辺回路あるいは周辺装置等を用いて構成することができる。そして、掘削情報処理装置120は、コンピュータ、周辺回路、周辺装置等のハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、3次元位置情報取得部(取得部)121、掘削土量推定部122、判定部123および表示部124を備える。
【0030】
3次元位置情報取得部121は、3次元位置情報計測部19から、掘削対象物を複数点の位置情報で示す対象物位置情報(点群データ400)を例えば所定の周期で繰り返し取得し、掘削土量推定部122へ出力する。
【0031】
掘削土量推定部122は、位置姿勢情報取得部111から入力したバケット8の位置と姿勢を示すバケット位置姿勢情報と、3次元位置情報取得部121が取得した対象物位置情報とに基づいて、逐次、その時点でバケット8を抱え込んだ場合にバケット8によって獲得される掘削土量SVAを推定して出力する。掘削土量推定部122は、掘削土量SVAを推定した結果を、例えば、掘削土量SVAの体積の値で表して出力してもよいし、掘削土量SVAの重量の値で表して出力してもよいし、あるいは、掘削土量SVAの体積や重量の、所定の基準値に対する比率を示す値で表して出力してもよい。なお、体積から重量への変換は、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、例えば、1回目の掘削作業後(掬い上げた状態)の掘削土量の重量を、シリンダ圧力や作業機姿勢によって算出し、その算出した重量と推定された掘削土量との関係(比重等)を求め、その関係を用いて、体積を重量へ変換することができる。
【0032】
また、本実施形態において掘削土量推定部122は、
図7に示す、バケット8の内部に溜め込まれている土量であるバケット内土量SVIを推定するとともに、バケット8が将来掬い取ると予測される土量であるバケット外土量SVOを推定し、バケット内土量SVIとバケット外土量SVOを合計して掘削土量SVAを算出する。すなわち、掘削土量推定部122は、掘削土量SVAを、掘削土量SVA=バケット内土量SVI+バケット外土量SVOの式にて算出する。なお、
図7は、掘削動作中のバケット8を模式的に示す側面図(x方向から見た図)である。
図7は、掘削前の地形からバケット8による掘削動作によってバケット8手前の掘削対象物300(地形)が盛り上がっている状態を示す。
【0033】
また、
図7および
図9に示すように、掘削土量推定部122は、対象物位置情報(点群データ400)から、バケット8の幅8W内で、バケットピン15を中心としてバケット8を回転させた場合にバケット刃先8Tが描く円8Aの内側に位置する計測点402を抽出し、抽出した計測点402の位置情報に基づいて掘削土量を推定する。
【0034】
ここで、
図5~
図11を参照して、掘削土量推定部122が掘削土量を推定する際の動作例について説明する。
図5は、掘削動作中に掘削土量推定部122が所定の周期で繰り返し掘削土量を推定する際の1周期分の動作の例を示すフローチャートである。すなわち、掘削土量推定部122は、掘削動作中に
図5に示す処理を所定の周期で繰り返し実行する。また、
図8、
図10および
図11は、掘削制御時に実際に取得された点群データ400の例を模式的に示す側面図(x方向から見た図)である。また、
図9は、点群データ400の例を示す模式図である。
【0035】
図5に示すように、掘削土量推定部122は、まず、位置姿勢情報取得部111から取得した作業機位置姿勢情報から、バケット8の位置および角度情報を取得する(ステップS101)。次に掘削土量推定部122は、対象物位置情報(点群データ400)から、バケット幅8W内の点群を抽出し(ステップS102)、さらに、バケットピン15中心のバケット刃先8Tの円8Aの内側でバケット面8Sより手前の点群を抽出する(ステップS103)。
図9は、点群データ400(複数の計測点401)から、ステップS102およびステップS103で抽出された点群(複数の計測点402)の例を示す。ここで、バケット幅8W内とは、
図9に示すようにバケット8の幅8Wをローカル座標系のy方向に沿って延ばした2本の直線501および502で挟まれた範囲である。また、バケットピン15中心のバケット刃先8Tの円8Aの内側でバケット面8Sより手前の範囲とは、
図7に示す円8Aの内側でバケット面8Sよりバケット8内側に入っていない範囲内である。
【0036】
次に、掘削土量推定部122は、作業機位置姿勢情報と図面情報(寸法情報)に基づき、アーム7、ブラケット、リンク機構等の作業機2から取得される点群(計測点402の一部)を削除する(ステップS104)。
【0037】
次に、掘削土量推定部122は、バケット内土量SVIを推定する(ステップS105)。ステップS105において、掘削土量推定部122は、例えば次のようにしてバケット内土量SVIを推定する。すなわち、例えば、掘削土量推定部122は、まず、ステップS102~ステップS104の処理で点群データ400から抽出された複数の計測点402から、
図9に示すように手前側(運転室4側)の計測点402(代表点Aとする)と、奥側の計測点402(代表点Bとする)の2つを定める。次に、掘削土量推定部122は、
図8に示すように、x方向から見て、代表点Aおよび代表点Bを結んだ直線LABとバケット面8Sとバケット輪郭8Cとで囲まれた下部(鉛直方向下側)の領域(奥行き:バット幅8W)をバケット内土量SVIと推定する。
【0038】
次に、掘削土量推定部122は、バケット外土量SVOを推定する(ステップS106)。ステップS106において、例えば、掘削土量推定部122は、次のようにしてバケット外土量SVOを推定する。すなわち、掘削土量推定部122は、例えば、x方向から見て、ステップS105で定めた代表点Aと代表点Bを結んだ直線LABとバケット面8Sとが交差する場合(
図10)と交差しない場合(
図11)とに分けて2種類の算出手法でバケット外土量SVOを推定する。まず、直線LABとバケット面8Sとが交差する場合、掘削土量推定部122は、
図10に示すように、x方向から見て、代表点Aおよび代表点Bを結んだ直線LABとバケット面8Sと刃先8Tから直線LABに向けて鉛直上向きに延ばした直線LABTとで囲まれた領域(奥行き:バット幅8W)をバケット外土量SVOと推定する。また、直線LABとバケット面8Sが交差しない場合、掘削土量推定部122は、
図11に示すように、x方向から見て、代表点Aと代表点Bとバケットピン15と刃先8Tを頂点とする四角形の領域(奥行き:バット幅8W)をバケット外土量SVOと推定する。
【0039】
次に、掘削土量推定部122は、ステップS105で推定したバケット内土量SVIと、ステップS106で推定したバケット外土量SVOを合計して、掘削土量SVAを算出する(ステップS107)。以上の処理によって、掘削土量推定部122は、掘削動作中に、逐次、その時点でバケット8を抱え込んだ場合にバケット8によって獲得される掘削土量SVAを推定する。
【0040】
また、判定部123は、掘削土量推定部122が推定した掘削土量が目標掘削土量に到達したか否かを判定し、判定結果を抱込判定情報として掘削制御部112へ出力する。目標掘削土量は、1回の掘削動作でバケット8が獲得する掘削対象物300の体積または重量の目標値である。例えば、オペレータが設定したり、掘削制御部112によって自動的に設定したりすることができる。また、例えば、掘削対処物300をダンプトラック等に積み込む作業の場合に複数回の掘削と積み込みを繰り返すとき、例えば最後の1回の掘削土量を調整することで積み込み土量を精度良く積み込み量を制御することができる。
【0041】
表示部124は、運転室4内に設置されている表示装置40に、掘削土量推定部122が推定した掘削土量の値を、数値や時系列のグラフとして表示する。オペレータが掘削作業を手動で行う場合、オペレータは、例えば、表示装置40に表示されている掘削土量の推定結果を参考にして、掘削から抱込への切替操作を行うことができる。この場合、3次元位置情報取得部(取得部)121と、掘削土量推定部122と、表示部124を備える掘削情報処理装置120は、掘削支援装置としての態様を有する。
【0042】
次に、
図4を参照して、
図2に示す作業機械制御装置110と掘削情報処置装置120の動作例について説明する。
図4は、掘削制御と抱込制御とを1回自動で行う場合の
図2に示す作業機械制御装置110と掘削情報処置装置120の動作例を示すシステムフロー図である。
図4に示す動作は、例えば、予め目標掘削土量が設定されていて、また、バケット8が掘削開始位置へ移動された状態で、オペレータが掘削制御の開始を指示した場合に開始される。
図4に示す動作が開始されると、作業機制御装置110では掘削制御部112が、掘削制御を行うとともに(ステップS11)、抱込判定情報に基づき抱込制御に切り替えるか否かを所定の周期で繰り返し判定する(ステップS12)。また、掘削情報処理装置120では、
図4に示す動作が開始されると、所定の周期で繰り返し、掘削土量推定部122が掘削土量を推定するとともに(ステップS21)、判定部123が、掘削土量推定部122によって推定された掘削土量が目標掘削土量に到達したか否かを判定する(ステップS22)。
【0043】
掘削土量が目標掘削土量に到達した場合、判定部123が、掘削土量が目標掘削土量に到達した旨の抱込判定情報を出力する(ステップS22で「YES」の場合)。掘削制御部112は、掘削土量が目標掘削土量に到達した旨の抱込判定情報を受信した場合、抱込制御への切り替えを行うと判定し(ステップS12で「YES」)、抱込制御部113が、抱込制御を行う(ステップS13)。
【0044】
図12は、
図4に示す動作における掘削土量の時間推移の例を示す模式図である。横軸は時間、縦軸は掘削土量である。掘削が開始されると、まず、バケット内土量SVIが徐々に増加し、バケット内土量SVIが一定程度増加したところからバケット外土量SVOが増加し始めている。そして、掘削土量SVAが目標掘削土量に達したところで抱込制御への切り替えが行われている。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、掘削作業中に掘削土量を逐次推定することができるので、掘削土量を任意の値に容易に調整することができる。
【0046】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0047】
例えば、油圧ショベル1は、車両本体1Bと作業機2を、無人で自動制御するものあってもよいし、遠隔操作するものであってもよいし、自動制御と遠隔制御やオペレータによる手動制御を組み合わせて制御するものであってもよい。また、上記実施形態では、ローカル座標系における座標情報を主に用いる場合を例に挙げたが、グローバル座標系に変換した座標情報を用いてもよい。
【0048】
また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…油圧ショベル、2…作業機、8…バケット、8T…刃先、15…バケットピン、19…3次元位置情報計測部、30…作業機位置姿勢計測部、110…作業機制御装置、111…位置姿勢情報取得部、112…掘削制御部、113…抱込制御部、120…掘削情報処理装置、121…3次元位置情報取得部(取得部)、122…掘削土量推定部、123…判定部、124…表示部