(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びこれを備える通信機器、並びに、アンテナ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20240926BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240926BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240926BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20240926BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01L23/12 Q
H01Q21/06
H05K1/03 670
(21)【出願番号】P 2020154124
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】小更 恒
(72)【発明者】
【氏名】張原 康正
(72)【発明者】
【氏名】手塚 謙一
(72)【発明者】
【氏名】五井 智之
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/170722(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/149138(WO,A1)
【文献】特開2018-148290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01L 23/12
H01Q 21/06
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ導体が形成されたアンテナ層と、
前記アンテナ層に積層され、複数の配線パターンが形成された第1の配線層と、を備え、
前記アンテナ層は、積層方向と直交する第1の平面方向に延在するスリットによって、前記積層方向及び前記第1の平面方向と直交する第2の平面方向に分割された第1及び第2のアンテナ領域を有し、
前記スリットは、前記第1の配線層と接する底部において前記第2の
平面方向における幅が拡大されており、
前記複数のアンテナ導体は、前記第1のアンテナ領域に形成された第1のアンテナ導体と、前記第2のアンテナ領域に形成された第2のアンテナ導体を含むことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記積層方向において前記アンテナ層と前記第1の配線層の間に位置する第2の配線層をさらに備え、
前記スリットは、前記第2の配線層に設けられた第1のスリットと、前記アンテナ層に設けられた第2のスリットを含み、
前記第2の配線層は、前記第1のスリットによって前記第2の平面方向に分割され、
前記アンテナ層は、前記第2のスリットによって前記第1及び第2のアンテナ領域に分割され、
前記第1のスリットと前記第2のスリットは前記積層方向に重なり、
前記第1のスリットの前記第2の
平面方向における幅は、前記第2のスリットの前記第2の
平面方向における幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のアンテナ導体の少なくとも一方は、前記第1のスリットと前記積層方向に重なることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の配線層の表面に搭載された半導体ICをさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記複数の配線パターンは、前記半導体ICに接続された電源パターン及び制御信号パターンを含むことを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2の配線層には、前記第1及び第2のアンテナ導体に接続されたRF信号パターンが形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記スリットに沿って前記第1の配線層が折り曲げられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のアンテナ装置を備える通信機器。
【請求項9】
積層方向と直交する第1の平面方向に延在する第1のスリットが内部に形成されるよう、第1
のアンテナ導体及び第2のアンテナ導体が形成されたアンテナ層と複数の配線パターンが形成された第1の配線層を積層する第1の工程と、
前記積層方向において前記第1のスリットと重なり、且つ、前記
積層方向及び前記第1の平面方向と直交する第2の
平面方向における幅が前記第1のスリットよりも狭い第2のスリットを前記アンテナ層に形成することによって、前記アンテナ層を、前記第1のアンテナ導体が形成された第1のアンテナ領域と前記第2のアンテナ導体が形成された第2のアンテナ領域に分割する第2の工程と、を備えることを特徴とするアンテナ装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の工程は、前記第1のスリットによって前記第2の平面方向に分割された第2の配線層を、前記アンテナ層と前記第1の配線層によって挟み込むことにより行うことを特徴とする請求項9に記載のアンテナ装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の工程においては、前記第1のスリットに充填材を充填した状態で、前記第2の配線層を前記アンテナ層と前記第1の配線層で挟み込むことを特徴とする請求項10に記載のアンテナ装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2のスリットを介して前記充填材を除去する第3の工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のアンテナ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ装置及びこれを備える通信機器に関し、特に、複数の方向にビームを放射可能なアンテナ装置及びこれを備える通信機器に関する。また、本発明は、このようなアンテナ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の方向にビームを放射可能アンテナ装置が開示されている。特許文献1に記載されたアンテナ装置は、フレキシブル基板に厚さの薄い領域を設け、厚さの薄い領域に沿ってフレキシブル基板を折り曲げることによって、複数のアンテナ導体をそれぞれ異なる方向に向けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたアンテナ装置において、折り曲げによってフレキシブル基板に加わるストレスを緩和するためには、厚さの薄い領域の幅を十分に確保する必要がある。しかしながら、厚さの薄い領域の幅を大きくすると、基板の利用効率が低下するとともに、折り曲げた際の高さが大きくなるという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、複数の方向にビームを放射可能なアンテナ装置及びこれを備える通信機器において、基板の利用効率を高めるとともに、折り曲げた際の高さを抑えることを目的とする。また、本発明は、このようなアンテナ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるアンテナ装置は、複数のアンテナ導体が形成されたアンテナ層と、アンテナ層に積層され、複数の配線パターンが形成された第1の配線層とを備え、アンテナ層は、積層方向と直交する第1の平面方向に延在するスリットによって、積層方向及び第1の平面方向と直交する第2の平面方向に分割された第1及び第2のアンテナ領域を有し、スリットは、第1の配線層と接する底部において第2の方向における幅が拡大されており、複数のアンテナ導体は、第1のアンテナ領域に形成された第1のアンテナ導体と、第2のアンテナ領域に形成された第2のアンテナ導体を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、スリットに沿って第1の配線層を折り曲げることにより、第1及び第2のアンテナ導体を互いに異なる方向に向けることができる。したがって、第1の配線層を折り曲げた状態で通信機器に搭載すれば、複数の方向にビームを放射することが可能となる。しかも、スリットの幅は底部において選択的に拡大されていることから、アンテナ層の利用効率が高められるとともに、折り曲げた際の高さを抑えることが可能となる。
【0008】
本発明によるアンテナ装置は、積層方向においてアンテナ層と第1の配線層の間に位置する第2の配線層をさらに備え、スリットは、第2の配線層に設けられた第1のスリットと、アンテナ層に設けられた第2のスリットを含み、第2の配線層は第1のスリットによって第2の平面方向に分割され、アンテナ層は第2のスリットによって第1及び第2のアンテナ領域に分割され、第1のスリットと第2のスリットは積層方向に重なり、第1のスリットの第2の方向における幅は、第2のスリットの第2の方向における幅よりも大きくても構わない。これによれば、より多くの配線パターンを形成することが可能となる。
【0009】
本発明において、第1及び第2のアンテナ導体の少なくとも一方は、第1のスリットと積層方向に重なっていても構わない。これによれば、アンテナ層の利用効率がより高められるとともに、折り曲げた際の高さをより抑えることが可能となる。
【0010】
本発明によるアンテナ装置は、第1の配線層の表面に搭載された半導体ICをさらに備えていても構わない。これによれば、アンテナモジュールを構成することが可能となる。この場合、複数の配線パターンは、半導体ICに接続された電源パターン及び制御信号パターンを含んでいても構わないし、第2の配線層には、第1及び第2のアンテナ導体に接続されたRF信号パターンが形成されていても構わない。
【0011】
本発明によるアンテナ装置の製造方法は、積層方向と直交する第1の平面方向に延在する第1のスリットが内部に形成されるよう、第1及び第2のアンテナ導体が形成されたアンテナ層と複数の配線パターンが形成された第1の配線層を積層する第1の工程と、積層方向において第1のスリットと重なり、且つ、第2の方向における幅が第1のスリットよりも狭い第2のスリットをアンテナ層に形成することによって、アンテナ層を、第1のアンテナ導体が形成された第1のアンテナ領域と第2のアンテナ導体が形成された第2のアンテナ領域に分割する第2の工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、底部において選択的に幅が拡大されたスリットを有するアンテナ装置を容易に作製することが可能となる。
【0013】
本発明において、第1の工程は、第1のスリットによって第2の平面方向に分割された第2の配線層を、アンテナ層と第1の配線層によって挟み込むことにより行っても構わない。これによれば、より多くの配線パターンを形成することが可能となる。
【0014】
第1の工程においては、第1のスリットに充填材を充填した状態で、第2の配線層をアンテナ層と第1の配線層で挟み込んでも構わない。これによれば、平坦性を確保した状態で積層することが可能となる。この場合、第2のスリットを介して充填材を除去する第3の工程をさらに備えていても構わない。これによれば、第1のスリットを空洞とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、複数の方向にビームを放射可能なアンテナ装置及びこれを備える通信機器において、基板の利用効率を高めるとともに、折り曲げた際の高さを抑えることが可能となる。また、本発明によれば、このようなアンテナ装置の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態によるアンテナ装置1の構造を説明するための略断面図である。
【
図3】
図3は、アンテナ装置1を折り曲げた状態を示す略断面図である。
【
図4】
図4は、アンテナ装置1を備える通信機器3の模式図である。
【
図5】
図5は、アンテナ装置1の製造方法を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、アンテナ装置1の製造方法を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、アンテナ装置1の製造方法を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、アンテナ装置1の製造方法を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態によるアンテナ装置2の構造を説明するための略断面図である。
【
図10】
図10は、第1の変形例によるアンテナ装置1Aの構成を示す略平面図である。
【
図11】
図11は、第2の変形例によるアンテナ装置1Bの構成を示す略平面図である。
【
図12】
図12は、第3の変形例によるアンテナ装置1Cの構成を示す略平面図である。
【
図13】
図13は、第4の変形例によるアンテナ装置1Dの構成を示す略平面図である。
【
図14】
図14は、第5の変形例によるアンテナ装置1Eの構成を示す略平面図である。
【
図15】
図15は、第6の変形例によるアンテナ装置1Fの構成を示す略平面図である。
【
図16】
図16は、スリットSL1のx方向における端部から離れた位置でスリットSL2が重なる例を示す模式図である。
【
図17】
図17は、スリットSL1のx方向における中央部でスリットSL2が重なる例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるアンテナ装置1の構造を説明するための略断面図である。また、
図2は、アンテナ装置1の略平面図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本実施形態によるアンテナ装置1は、配線層10,20とアンテナ層30を備えており、配線層10の表面に半導体IC6が搭載された構成を有している。
【0020】
配線層10は、フレキシブルな複数の絶縁層11とその表面に形成された複数の配線パターン12を備えている。配線パターン12は、半導体IC6に接続された電源パターンや制御信号パターンを含む。配線パターン12は、積層方向であるz方向からグランドパターン13によって挟まれることによりシールドされている。
【0021】
配線層20は、z方向において配線層10とアンテナ層30の間に位置し、複数の絶縁層21とその表面に形成された複数のRF信号パターン22を備えている。RF信号パターン22は、フィルタなどの回路を構成し、アンテナ層30に含まれるアンテナ導体P1,P2に接続されている。RF信号パターン22は、z方向からグランドパターン23によって挟まれることによりシールドされている。
【0022】
アンテナ層30は、複数の絶縁層31とその表面に形成されたアンテナ導体P1,P2及びグランドパターン32を含む。アンテナ導体P1,P2はxy平面を有し、グランドパターン32とz方向に重なることによってパッチアンテナを構成する。アンテナ導体P1はビア導体33を介して半導体IC6に接続され、アンテナ導体P2はビア導体34~36を介して半導体IC6に接続される。
【0023】
図1及び
図2に示すように、配線層20にはy方向に延在するスリットSL1が設けられている。スリットSL1のy方向における長さは、配線層20のy方向における長さと同じであり、これにより配線層20がx方向に分割されている。スリットSL1のx方向における幅はW1である。スリットSL1のz方向における高さは、配線層20のz方向における高さと同じである。スリットSL1は空洞であることが好ましいが、一部又は全部に充填材が存在しても構わない。この場合、スリットSL1に残存する充填材は、配線層10やアンテナ層30に対する密着性が低い材料である必要がある。
【0024】
同様に、アンテナ層30にはy方向に延在するスリットSL2が設けられている。スリットSL2のy方向における長さは、アンテナ層30のy方向における長さと同じであり、これによりアンテナ層30がx方向にアンテナ領域A1,A2に分割されている。スリットSL2のx方向における幅はW2であり、スリットSL1の幅W1よりも狭い。スリットSL2のz方向における高さは、アンテナ層30のz方向における高さと同じである。
【0025】
スリットSL1とスリットSL2は、z方向に重なっている。
図1及び
図2に示す例では、スリットSL1のx方向における一端部分とスリットSL2が重なっている。スリットSL2によって分割されたアンテナ領域A1,A2には、それぞれアンテナ導体P1,P2が形成されている。特に、アンテナ導体P2の一部は、スリットSL1とz方向に重なりを有している。
【0026】
かかる構成により、本実施形態によるアンテナ装置1は、スリットSL1,SL2に沿って配線層10を折り曲げることができる。
図3に示す例では、配線層10を90°折り曲げており、これにより、アンテナ導体P1,P2が互いに90°異なる方向に向けられている。
図3に示す例では、アンテナ導体P1の放射方向がz方向であり、アンテナ導体P2の放射方向がx方向である。尚、スリットSL1の幅W1を十分な大きさに設定すれば、配線層10を折り曲げた場合に、スリットSL2の内壁からなる面Bをアンテナ層30の底面と同一平面上に位置させることが可能である。
【0027】
ここで、スリットSL1の幅W1とスリットSL2の幅W2が同じであっても配線層10の折曲げは可能であるが、スリットSL1の幅W1が狭いと、配線層10の折曲げ部分に強いストレスが加わり、場合によっては絶縁層11や配線パターン12にクラックや断裂が生じてしまう。配線層10の折曲げ部分に加わるストレスを緩和するためには、配線層10の折曲げ部分の曲率半径をある程度大きくする必要があり、これを実現すべく、スリットSL1の幅W1を拡大している。一方、スリットSL1に合わせてスリットSL2の幅W2を大きくすると、アンテナ領域A2の有効面積が減少することから、スリットSL2の幅W2については、スリットSL1の幅W1よりも小さく設定している。
【0028】
このように、本実施形態によるアンテナ装置1は、スリットSL1,SL2に沿って配線層10を折り曲げることにより、複数の方向にビームを放射することが可能となる。しかも、スリットSL1の幅W1よりもスリットSL2の幅W2が狭いことから、アンテナ領域A2の利用効率が高められるとともに、折り曲げた際の高さを抑えることが可能となる。特に、本実施形態においては、アンテナ導体P2とスリットSL1が重なりを有していることから、全体の平面サイズを大幅に縮小することが可能となる。但し、本発明においてアンテナ導体とスリットが重なりを有している点は必須ではない。アンテナ導体とスリットが重なりを有していない場合であっても、スリットSL2の幅W2を狭くすることにより製造マージンが確保されることから、全体の平面サイズは縮小される。
【0029】
図4は、本実施形態によるアンテナ装置1を備える通信機器3の模式図である。
図4に示す通信機器3は例えばスマートフォンであり、筐体4に収容された基板5と、基板5に搭載されたアンテナ装置1を備えている。そして、アンテナ装置1を折り曲げた状態で基板5に搭載することにより、単一のアンテナ装置1によってビームを2方向に放射することが可能となる。
図4に示す例では、半導体IC6を覆うモールド樹脂と基板5の主面が接着され、折り曲げられた配線層10の表面と基板5の側面が接着される。
【0030】
次に、本実施形態によるアンテナ装置1の製造方法について説明する。
【0031】
まず、
図5に示すように、複数のシート材40を用意し、これらを順次積層する。シート材40は、絶縁層41と、絶縁層41の表面に形成された導体パターン42と、絶縁層41を貫通して設けられたビア導体43を備えている。
図5に示すシート材40の構造はあくまで一例であり、実際に作製すべきアンテナ装置1に応じた構造を有するシート材40が用いられる。シート材40の積層順序については特に限定されず、配線層10、配線層20及びアンテナ層30の順に積層しても構わないし、逆に、アンテナ層30、配線層20及び配線層10の順に積層しても構わない。
【0032】
ここで、配線層20を構成するシート材40については、
図6に示すように、あらかじめスリットSL1が設けられている。そして、配線層20を構成する複数のシート材40を積層した後、スリットSL1に充填材50を充填する。本発明において、スリットSL1に充填材50を充填することは必須でないが、充填材50を用いることにより、
図7に示すように、平坦性を保った状態でシート材40の積層を行うことが可能となる。充填材50としては、シート材40との密着性の低い材料、例えばフッ素系樹脂や粉体を用いることができる他、電解メッキによって形成した銅(Cu)などの金属を用いることも可能である。
【0033】
このようにして複数のシート材40からなる配線層10,20及びアンテナ層30を形成した後、
図8に示すように、スリットSL1と重なる位置にスリットSL2を形成する。スリットSL2の形成は、レーザー加工やダイシングによって行うことができる。これにより、スリットSL1に埋め込まれた充填材50の一部が露出する。そして、スリットSL2を介して充填材50を除去した後、配線層10に半導体IC6搭載すれば、本実施形態によるアンテナ装置1が完成する。
【0034】
充填材50の除去方法としては、充填材50がフッ素系樹脂や粉体からなる場合には、スリットSL1,SL2に沿ってアンテナ装置1を折り曲げ、拡大されたスリットSL2を介して充填材50を除去すればよい。また、充填材50が銅(Cu)などの金属からなる場合には、ウェットエッチングによって除去すればよい。
【0035】
<第2の実施形態>
図9は、本発明の第2の実施形態によるアンテナ装置2の構造を説明するための略断面図である。
【0036】
図9に示すように、本実施形態によるアンテナ装置2は、配線層10及びこれに搭載された半導体IC6が省略されているとともに、スリットSL1がアンテナ層30の底部に設けられている点において、第1の実施形態によるアンテナ装置1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるアンテナ装置1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0037】
本実施形態においては配線層20の表面に複数の端子電極24が設けられている。端子電極24は、スリットSL1,SL2と重ならない位置に設けられており、
図4に示した基板5などのランドパターンに接続される。この場合、半導体IC6は基板5に搭載される。
【0038】
第2の実施形態によるアンテナ装置2が例示するように、スリットの全体をアンテナ層30に形成し、配線層20と接する底部においてスリットのx方向における幅を拡大することにより、幅の拡大された部分をスリットSL1として用いても構わない。
【0039】
<変形例>
図10~
図14は、第1~第5の変形例によるアンテナ装置1A~1Eの構成を示す略平面図である。
【0040】
図10に示すアンテナ装置1Aは、アンテナ領域A1に2つのアンテナ導体P1a,P1bが設けられ、アンテナ領域A2に2つのアンテナ導体P2a,P2bが設けられた構成を有している。
図11に示すアンテナ装置1Bは、アンテナ領域A1に4つのアンテナ導体P1a~P1dが設けられ、アンテナ領域A2に4つのアンテナ導体P2a~P2dが設けられた構成を有している。このように、1つのアンテナ領域に配置するアンテナ導体の数については特に限定されない。
【0041】
図12に示すアンテナ装置1Cは、スリットSL2によってアンテナ層30が3つのアンテナ領域A1~A3に分割され、アンテナ領域A1に4つのアンテナ導体P1a~P1dが設けられ、アンテナ領域A2,A3にそれぞれ2つのアンテナ導体P2a~P2b,P3a~P3bが設けられている。ここで、アンテナ領域A1とアンテナ領域A2を分離するスリットSL2はx方向に延在し、アンテナ領域A1とアンテナ領域A3を分離するスリットSL2はy方向に延在している。これにより、スリットSL2に沿ってアンテナ装置1Cを折り曲げることにより、3方向にビームを放射することが可能となる。
【0042】
図13に示すアンテナ装置1Dは、スリットSL2によってアンテナ層30が3つのアンテナ領域A1~A3に分割され、アンテナ領域A1~A3にそれぞれ2つのアンテナ導体P1a~P1b,P2a~P2b,P3a~P3bが設けられている。ここで、アンテナ領域A1とアンテナ領域A2,A3を分離するスリットSL2はいずれもy方向に延在している。これにより、スリットSL2に沿ってアンテナ装置1Cを折り曲げることにより、3方向にビームを放射することが可能となる。アンテナ領域A2,A3から放射されるビームの方向は互いに180°異なる。
【0043】
図14に示すアンテナ装置1Eは、スリットSL2によってアンテナ層30が5つのアンテナ領域A1~A5に分割され、アンテナ領域A1~A5にそれぞれ4つのアンテナ導体P1a~P1d,P2a~P2d,P3a~P3d,P4a~P4d,P5a~P5dが設けられている。ここで、アンテナ領域A1とアンテナ領域A2,A3を分離するスリットSL2はy方向に延在し、アンテナ領域A1とアンテナ領域A4,A5を分離するスリットSL2はx方向に延在している。これにより、スリットSL2に沿ってアンテナ装置1Cを折り曲げることにより、5方向にビームを放射することが可能となる。アンテナ領域A2,A3から放射されるビームの方向は互いに180°異なり、アンテナ領域A4,A5から放射されるビームの方向は互いに180°異なる。
【0044】
図15は、第6の変形例によるアンテナ装置1Fの構成を示す略平面図である。
図15に示すアンテナ装置1Fは、スリットSL1,SL2が設けられている部分及びその近傍において、基板のy方向における幅が縮小されている点において、上記実施形態によるアンテナ装置1と相違している。これによれば、スリットSL1,SL2に沿った基板の折曲げがより容易となる。
【0045】
尚、スリットSL2は、
図1に示すようにスリットSL1のx方向における端部と重なっている必要はなく、
図16に示すように、スリットSL1のx方向における端部から離れた位置で重なっていても構わないし、
図17に示すように、スリットSL1のx方向における中央部で重なっていても構わない。後者の場合、アンテナ領域A1に設けられるアンテナ導体P1とアンテナ領域A2に設けられるアンテナ導体P2の両方がスリットSL1と重なっていても構わない。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1,2,1A~1F アンテナ装置
3 通信機器
4 筐体
5 基板
6 半導体IC
10,20 配線層
11,21,31 絶縁層
12 配線パターン
13,23,32 グランドパターン
22 RF信号パターン
24 端子電極
30 アンテナ層
31 絶縁層
33~36 ビア導体
40 シート材
41 絶縁層
42 導体パターン
43 ビア導体
50 充填材
A1~A5 アンテナ領域
B スリットの内壁からなる面
P1,P1a~P1d,P2,P2a~P2d,P3a~P3d,P4a~P4d,P5a~P5d アンテナ導体
SL1,SL2 スリット